説明

固体低分子有機物質のX線キャラクタリゼーション

本発明は、特に低分子有機物質、例えば、薬物または薬物製品を特徴づける(キャラクタリゼーションする)方法を提供する。この方法は、固体低分子有機物質を短波長でのX線全散乱分析にかけるステップと、それによって生成されたデータを収集するステップと、データを数学的に変換し、洗練されたセットのデータを提供するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2009年6月3日に出願された米国仮特許出願第61/217,785号、および2009年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/271,688号の利益を主張する。上述した出願の全内容は、本明細書に完全に記載されているように、参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、特に、X線全散乱分析(total scattering analysis)を使用する、固体低分子有機物質のキャラクタリゼーションに関する。
【背景技術】
【0003】
原子スケールレベルでの物質の構造の知見は、物質の性質を一般に理解するのに必須である。物質の性質は、その化学組成だけでなく、個々の分子の化学構造、ならびにこれらの分子が、物質を形成するためにどのように一緒に保持されているかによって決定される。したがって、2つの固体物質の個々の分子が同一であっても、2つの物質の性質、例えば、結晶格子エネルギー、融点、化学反応性、密度、および溶解度などは、物質の固体状態の構造、または分子が、より長い範囲にわたってどのように配置され、もしくはパッキングされているかに依存して広く変化し得る。
【0004】
さらに重要なことに、医薬品の分野では、性質のこれらの差異は、薬物の性能、例えば、安定性、および活性成分または活性部分が薬物製品から吸収され、作用部位で利用可能になる割合および程度を指すバイオアベイラビリティーなどに対して重要な強い影響を有する場合がある。作用部位に投与されないか、または循環系中に直接注射されない薬物について、その薬物のバイオアベイラビリティーは、その溶解度、および患者の胃腸膜を通じたその浸透性によって一般に求められる。薬物の芳しくないバイオアベイラビリティーの主な原因は、通常、溶解度が劣っているためである。分子の空間的配置は、溶解度に影響し、その理由は、薬物が溶解することができる前に、結晶格子構造(もし何かあれば)が溶媒によって崩壊されなければならないためである。例えば、薬物の分子が、結晶格子にしっかりと一緒に保持される場合、薬物は、溶解する可能性が低い。
【0005】
現在、ほとんどの薬物は、結晶粉末の形態で送達される。アモルファス(a−)形態またはナノ結晶(n−)形態などの非結晶形態で調合薬を投与する可能性への関心が高まっている。これは、結晶形態は、非常に不溶性であるが、a−形態またはn−形態は、より高い溶解度を有する場合に魅力的である。しかし、a−形態またはn−形態が容易に可溶性であるというまさにその事実は、これらがより不安定であることも意味する。これらは、薬物を製造、包装、分配、または貯蔵する間に安定な形態に結晶化する場合がある。固体状態形態の変化は、薬物の挙動の予期しない変化に至る場合がある。この変化は、少なからぬ製剤および治療との関連を有するので、医薬産業の主要な懸案事項である。
【0006】
最近、ナノ結晶形態で薬物を投与するための完全に新しい道が探索されている。この場合、固体の構造は、分子のパッキングが長距離で秩序化されている結晶粉末と、パッキングが、10Åほどの範囲にわたる、短距離秩序のみを有するアモルファス状態との間の中間である。この場合、分子の局所的パッキングは、結晶と同様にかなり洗練されているが、構造的コヒーレンスの範囲、または秩序は、数十〜数百ナノメートルのスケールしか持続しない。薬物の安定性および溶解度は、より安定な結晶形態とより不安定なアモルファス形態との中間であることが期待されるため、ナノ結晶のケースは、特別な魅力を提示する。したがって、この道は、薬物のバイオアベイラビリティーと有効期間の間の適正なバランスをもたらすために安定性を調整する可能性を示すはずである。
【0007】
非結晶状態も、新規結晶多形への代替の速度論的経路を提供するとして興味を持たれている。この最近の顕著な例は、アモルファス状態を含めた新規の経路を使用した、最も大いに研究された医薬品分子の1つである、イブプロフェンの以前は知られていなかった多形の発見である。
【0008】
薬物の固体状態構造を特徴づける能力は、薬物の安全性および治療効果を保証するのに極めて重大である。多形を同定(フィンガープリント)し、定量的にその構造を特徴づけるのに最適な従来法は、X線粉末回折(XRPD)である。XRPDパターンは、市販薬物として使用するために承認される構造形態(または複数の形態)を一意的に同定するために、薬物特許において日常的に提出される。単結晶研究は、構造解に好適であるが、XRPDパターンの定量分析も、多形中の原子配置および分子パッキングを得ることができ(1)、リートベルト法を使用して以前に解かれた構造を洗練するのに最適な方法であることが多い(2、3)。単結晶が利用できない場合、またはペレットの相分析など、粉末試料を試験する場合、XRPDを使用しなければならず、非常に成功している。したがって、XRPDは医薬品研究および産業界の両方において欠かせない。
【0009】
従来の結晶学的方法の重大な制限は、これらは、ナノスケールで効力を失い、薬物の異なるa−相およびある特定のn−相のキャラクタリゼーションまたは同定に適切でないことである。現在、アモルファスおよびある特定のナノ結晶の医薬品分子固体の構造的同定およびキャラクタリゼーションのための信頼できる実験方法はまったくない。結晶学の強力なツールは、ナノスケールでの構造について、その威力を失い始めており、時折ナノ構造問題と呼ばれる(4)。従来のXRPDパターンは、これらの場合において幅広く、特徴のないものとなり、異なる局所的な分子パッキング配置同士間で区別するのに有用でない。これらのパターンは、構造が「アモルファス」または「X線アモルファス」であるという一般的な説明以外に、存在する構造相の同定のために使用することができず、これらは、完全な定量的構造的キャラクタリゼーションのために使用することもできない(20)。対相関関数(PDF)を得るために従来のXRPDデータをフーリエ変換することにより(5、6)、より多くの情報を抽出することが可能になることが最近示されている(7)が、これが、完全な定量的構造的キャラクタリゼーションを得るために適用されて成功した明らかな例はまったくない。その理由は、「X線アモルファス」試料からの従来のXRPDデータ中の情報内容は非常に限られており、データのフーリエ変換を伴うPDFはいずれの情報も加えず、したがって、PDFにおける情報内容が、同様に限られているためである。
【0010】
したがって、ある特定のナノ構造物質またはアモルファス医薬物質の原子構造は、結晶物質に使用される従来方法によって入手可能でない。さらに、平均構造において反映されない著しいナノ範囲の構造的歪みを有するある特定の結晶医薬物質も、従来のXRPD方法を使用して研究することができない。したがって、ナノ科学、ならびに薬物のn−形態およびa−形態などのある特定の非結晶形態の薬学的キャラクタリゼーションにおいて、重要な未解決の問題が存在する。したがって、固体小有機化合物、特に医薬化合物の構造を特徴づけるための大きな必要性がある。
【発明の概要】
【0011】
本発明の一実施形態は、固体低分子有機物質を特徴づける(キャラクタリゼーションする)方法である。この方法は、固体低分子有機物質をX線全散乱分析にかけるステップを含む。それによって生成されるデータを収集することができ、収集されたデータは、変換することによって、洗練(リファイン)されたデータセットをもたらすことができる。
【0012】
本発明の別の実施形態は製品(物品)である。この製品は、固体低分子有機物質のX線全散乱分析のデータセットを含む。
【0013】
本発明のさらに別の実施形態は、固体低分子有機物質を比較する方法である。この方法は、(a)第1の固体低分子有機物質をX線全散乱分析にかけ、それによって生成された第1のセットのデータを収集するステップと、(b)第2の固体低分子有機物質をX線全散乱分析にかけ、それによって生成された第2のセットのデータを収集するステップと、(c)任意選択により、第1のセットの生成されたデータを数学的に変換することによって、第1の洗練されたセットのデータを提供し、第2のセットの生成されたデータを数学的に変換することによって、第2の洗練されたセットのデータを提供するステップと、(d)第1のセットの生成されたデータと第2のセットの生成されたデータ、または第1のセットの洗練されたデータと第2のセットの洗練されたデータを比較することによって、それらの差異または類似を判定するステップであって、類似は、第1および第2の固体低分子有機物質が類似の構造を有することを表し、差異は、第1および第2の固体低分子有機物質が異なる構造を有することを表すステップとを含む。
【0014】
本発明のさらなる実施形態は、ナノ結晶の固体低分子有機物質を特徴づける方法である。この方法は、(a)ナノ結晶固体低分子有機物質をX線全散乱分析にかけ、それによって生成された第1のセットのデータを収集するステップと、(b)結晶固体低分子有機物質をX線全散乱分析にかけ、それによって生成された第2のセットのデータを収集するステップであって、結晶固体低分子有機物質は、ナノ結晶固体低分子有機物質と同じ分子構造を有するステップと、(c)第1のセットの生成されたデータ、もしくは第2のセットの生成されたデータ、または第1のセットおよび第2のセットの生成されたデータの両方に数学的な調節を施すことによって、ナノ結晶物質の構造を決定するステップとを含む。
【0015】
本発明のさらなる実施形態は、低分子有機物質の形態での薬物または薬物製品の物理化学的性質に関するデータを規制当局に提出することの改善された方法である。この方法において、改善は、薬物または薬物製品のX線全散乱情報を提出するステップを含む。
【0016】
本発明の別の実施形態は、固体低分子有機物質を特徴づけるためのシステムである。このシステムは、(a)固体低分子有機物質を高周波数X線ビームに曝すように構成されたX線ビーム源デバイスと、(b)X線ビーム源デバイスに結合され、固体低分子有機物質による高周波数X線ビームの回折から生じる全散乱データを収集するように構成された検出器と、(c)検出器に結合され、固体低分子有機物質を高周波数X線ビームに曝すことによって生成されたデータを数学的に変換することによって、洗練されたデータセットを提供するように構成されたプロセッサーとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】カルバマゼピン(CBZ)の異なる形態の異なるX線分析から収集されたデータを比較する図である。パネルの最上行、(図1(a)、1(d)、1(g)、および1(j))は、β結晶形態のCBZからのパターンを含み、中央行(図1(b)、1(e)、1(h)、および1(k))は、非結晶形態のパターンを含み、最下行(図1(c)、1(f)、1(i)、および1(l))は、γ結晶形態のパターンを含む。列は、異なる方法で測定および分析されたデータを示す。第1列(図1(a)、1(b)、および1(c))は、Cu KαX線源からのデータを含む。第2列(図1(d)、1(e)、および1(f))は、第1列中に示された従来のデータをフーリエ変換することによって得られた対相関関数(PDF)を含む。第3列(図1(g)、1(h)、および1(i))は、F(Q)の形式でのシンクロトロン全散乱データを示す。第4列(図1(j)、1(k)、および1(l))は、第3列中のデータをフーリエ変換することによって得られた全散乱PDF、G(r)の形式での全散乱データを含む。非結晶試料は、最初の2列中の従来のXRPDデータから「アモルファス」であると同定することができるが、局所的パッキングの性質は確認することができない。対照的に、第3列および第4列において、非結晶試料は、β形態に類似し、γ形態に類似していないことが直ちに明らかである。
【図2】非結晶試料(薄灰色)、および4.5nmのナノ粒子であるかのように修正されたβ結晶試料(濃灰色)からの全散乱原子対相関関数(TSPDF)の比較を示す図である。2つのプロット間の差異も示されている。
【図3】インドメタシン(IND)の回折パターンおよびPDFを示す図である。パネルの最上行、(図3(a)、3(d)、および3(g))は、α結晶形態のINDからのパターンを含み、中央行(図3(b)、3(e)、および3(h))は、非結晶形態のパターンを含み、最下行(図3(c)、3(f)、および3(i))は、γ結晶形態のパターンを含む。列は、異なる方法で測定および分析されたデータを示す。第1列(図3(a)、3(b)、および3(c))は、院内のCu KαX線源からのデータを含む。第2列、(図3(d)、3(e)、および3(f))は、F(Q)の形式でのシンクロトロン全散乱データを含む。第3列、(図3(g)、3(h)、および3(i))は、第3列中のデータをフーリエ変換することによって得られた全散乱PDF、G(r)の形式での全散乱データを含む。非結晶試料は、第1列中の従来のXRPDデータから「アモルファス」であると同定することができるが、全散乱データは、情報に富んでいる。CBZと異なり、この場合、非結晶INDは、2つの結晶類似体のいずれとも異なる構造を有する。
【図4】固体低分子有機物質を特徴づけるシステムを示す概略図である。
【図5】スミアされた(being smeared)PDFの形式でのアスピリンから収集されたデータを示す図である。
【図6】ストレッチされたPDFの形式でのアスピリンから収集されたデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明によれば、全散乱換算構造関数(reduced structure function)、F(Q)を得るための補正、および対相関関数分析を行うことなどの生成されたデータの数学的変換と連結した高エネルギーX線全散乱により、活性医薬品のアモルファス相およびある特定のナノ構造相からユニークな構造的フィンガープリントが生成される。そのような物質を特徴づけることのこの新しい方法は、これらの形態における定量的研究および薬物の適用への扉を開く。
【0019】
本発明は、分子固体のアモルファス形態およびナノ結晶形態の構造相を同定すること、およびまた、これらの物質から定量的構造的情報および分子パッキング情報を求めることの両方において成功し得る。結果は、意外であり、予期されない。この手法により、アモルファス薬物およびナノ結晶薬物、ならびに他の分子固体の研究ならびに商業化における工業環境ならびに研究環境の両方において有用となる、前例のない質の情報が得られる。
【0020】
本発明の一実施形態は、固体低分子有機物質を特徴づける方法である。この方法は、固体低分子有機物質をX線全散乱分析にかけるステップを含む。それによって生成されたデータを収集することができ、収集されたデータは、変換されることによって、洗練されたデータセットを提供することができる。
【0021】
本明細書で使用する場合、「X線全散乱分析」は、ブラッグ散乱および散漫散乱の両方を含めた広範囲の逆空間にわたって構造に関連した散乱データを提供するために、高エネルギーX線粉末回折を使用することを意味する。ブラッグ散乱は、X線などのエネルギー源でボンバードされたとき秩序結晶構造によって示される、鋭い、別個の回折ピークのセットを意味する。構造が完全に秩序化されていない場合、ブラッグ散乱強度が減少し、ブラッグ散乱強度の外側に位置される散乱強度である散漫散乱強度が出現する。
【0022】
本明細書で使用する場合、「広い範囲の逆空間」は、約8.5インバースオングストローム(inverse angstrom)を少なくとも超える逆格子ベクトルQを意味する。例えば、Qは、約10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、または30インバースオングストローム超であってもよい。例えば、Qは、約0インバースオングストロームほど小さくてもよい。好ましくは、Qは、約1インバースオングストローム〜約30インバースオングストロームであり、約1インバースオングストローム〜約28インバースオングストロームを含み、約1インバースオングストローム〜約26インバースオングストロームを含み、約1インバースオングストローム〜約24インバースオングストロームを含み、約1インバースオングストローム〜約22インバースオングストロームを含み、約1インバースオングストローム〜約20インバースオングストローム、約1インバースオングストローム〜約18インバースオングストローム、および約1インバースオングストローム〜約16インバースオングストロームを含み、約1インバースオングストローム〜約14インバースオングストロームを含み、約1インバースオングストローム〜約12インバースオングストロームを含み、約1インバースオングストローム〜約10インバースオングストロームを含む。Q値は、以下の式を使用して求められる。
【数1】

式中、θはブラッグ角であり、λはX線ビームの波長である。本明細書で使用する場合、「ブラッグ角」は、散乱角の半分を意味し、これは、ビーム軸と散乱強度の間の角度である。
【0023】
「高エネルギーX線粉末回折」は、高周波数X線ビームを使用して実施されるX線粉末回折を意味し、X線ビームの波長は、1.1オングストローム以下である。例えば、高エネルギーX線粉末回折は、その波長が0.8オングストローム以下であるX線ビームを使用して実施することができる。X線源はシンクロトロン放射であることが好ましい。しかし、要諦は、シンクロトロン放射を使用すること自体ではなく、良好な統計データとともに、広範囲のQにわたってデータを収集することである。そのようなデータは、銀線源またはモリブデン線源を有する実験室ベースの回折計など、シンクロトロン放射以外の多くの異なるX線ビーム源から得られることが当業者によって理解される(13)。モリブデン線源を有する機器は、Siemans Corporation(New York、New York)およびGeneral Electric(Fairfield、Connecticut)などの製造者から市販されている。以下の実施例において示されるデータは、18Å−1のQmaxを用いてフーリエ変換された。このQmaxは、銀線源実験室回折計を用いて利用可能である。そのような機器は、Panalytical B.V. (Almelo、オランダ)およびBruker BioSpin Corp.(Billerica、MA)によって現在開発中である。シンクロトロン測定が好ましく、その理由は、要求される統計データを、実験室ベース線源での数時間と比較して、短時間(約30分)でQ範囲全体にわたって得ることができるためである。銀アノードを有する高強度実験室線源における将来の開発は、この状況を相当に矯正することができるであろう。
【0024】
用語「固体」は、変形および体積の変化に対する耐性を特徴とする物質の状態を意味する。「低分子有機物質」は、1つまたは複数の炭素原子(複数可)を含有し、その個々の分子の長さが3nm以下である任意の化学化合物、またはその塩、溶媒和物、もしくは水和物を意味する。好適な実施形態では、低分子有機物質の個々の分子は、長さが2nm以下であり、より好ましくは、長さが1nm未満である。別の好適な実施形態では、低分子有機物質は、1つまたは複数の炭素原子(複数可)および少なくとも1つの他の元素、例えば、水素、窒素、および/または酸素などを含有する。例えば、カルバマゼピン分子は、炭素、水素、窒素、および酸素を含有し、インドメタシン分子は、炭素、水素、窒素、および酸素に加えて塩素を含有する。さらに別の好適な実施形態では、低分子有機物質は、炭素、水素、および少なくとも1つの追加の元素を含有する。さらなる好適な実施形態では、低分子有機物質は、炭素、水素、および窒素、または炭素、水素、および酸素を含有する。さらに別の好適な実施形態では、低分子有機物質は、薬物または薬物製品である。
【0025】
本明細書で使用する場合、用語「薬物」は、(A)公式の米国薬局方、公式の米国ホメオパシー薬局方、もしくは公式の国民医薬品集、またはこれらのいずれかの任意の補遺に認識されている物品;および(B)人または他の動物における疾患の診断、治癒、軽減、治療、または予防に使用するために意図された物品;および(C)人または他の動物の体の構造または任意の機能に影響を及ぼすことが意図された物品(食物以外);および(D)条項(A)、(B)、または(C)に指定された任意の物品の成分として使用するために意図された物品を意味する。
【0026】
用語「薬物製品」は、任意の薬物を含有する任意の物品を意味する。薬物製品は、純粋な化学的実体、または薬物製品を含有する任意の組成物、混合物、もしくは製剤を含む。キャラクタリゼーション、同定、および/または比較の目的のために、薬物製品は、対象とする精製された小固体有機分子の形態にある。
【0027】
X線全散乱分析にかけられる固体低分子有機物質は、粉末、好ましくは微粉、または等方的に、もしくはほぼ等方的に散乱させる任意の他の形態、例えば、アモルファス固体もしくはナノ結晶固体の形態にある。そのような試料は、従来のX線粉末回折に使用される試料に適した任意の方法で調製することができる。試料は、キャピラリー中、プレート上、または任意の他のプラットフォームもしくは容器、またはX線粉末回折機器の製造者によって指示された他の手段に配置することができる。
【0028】
この実施形態の一態様では、本方法は、固体低分子有機物質のX線全散乱分析によって生成されたデータを収集するステップと、生成されたデータを数学的に変換することによって、洗練されたデータセットを提供するステップとをさらに含む。
【0029】
固体低分子有機物質のX線全散乱分析によって生成されたデータを収集するステップは、それだけに限らないが、例えば、様々なブラッグ角にわたる、関連した構造上のX線データを集めるステップ、表示するステップ、および/または記録するステップを含む。例えば、生成ならびに収集することができるデータは、X線ビームの特定のブラッグ角、波長での回折の関連した強度、回折の強度および特定の位置での回折の関連した強度を記録するのに使用される検出器の位置、ならびに/または全散乱データを含む。生成されるデータは、任意の好都合な様式、例えば、フィルム上に、またはコンピューターなどの装置によって、記録、獲得、表示および/または保存することができる。
【0030】
本明細書で使用する場合、洗練されたデータセットを提供するために、生成されたデータを「数学的に変換すること」は、特定の関数によって、変換前のデータ、例えば、生成されたデータが、変換後のデータ、例えば洗練されたデータに関連づけられるように、データを数学的に操作することを意味する。例えば、変換前のデータは、除し、減算し、またはその周期性が2π/dより大きい任意の平滑化関数によって正規化することができる。dは最近近傍距離であり、これは、物質中の2つの原子間の最小距離である。平滑化関数は、範囲にわたって連続的な導関数を有し、周辺で変換前のデータが振動する任意の関数を意味する。一例は、変換前のデータ内でフィットするガウス分布の一部である。他の例は以下に示されている。数学的変換にはフーリエ変換が含まれ、これは、1つの実変数の複素数値関数を別の複素数値関数に変換する操作である。数学的変換は、PDFgetX2などのプログラムを使用して、コンピューターなどの装置によって実施されることが好ましい(16)。しかし、他の同等のプログラムも、数学的変換を実施するのに使用することができることが、当業者によって理解される。そのような同等のプログラムとして、RAD、FIT、PEDX、およびIFOが挙げられる(17〜19)。
【0031】
好適な一実施形態では、生成されたデータは、換算全散乱構造関数(reduced total scattering structure function)に数学的に変換される。本明細書で使用する場合、「換算全散乱構造関数」、F(Q)は、以下の式によって得られる。
【数2】

式中、全散乱構造関数であるS(Q)は、低分子有機物質からの測定強度を含み、以下のような式で定義される。
【数3】

式中、I(Q)は粉末回折強度であり、これは、実験条件によって補正されていても、補正されていなくてもよく、f=Zは、Q=0で評価された原子散乱因子であり、Zは原子番号である。好ましくは、I(Q)は、実験的な人為結果、蛍光、多重散乱、およびコンプトン散乱を除去することによって適切に補正され、試料の自己吸収などの効果について補正され、入射強度、および試料中の散乱体の数によって正規化された粉末回折強度である。表示法<...>は、試料中の原子種にわたって組成的に加重された平均を示す。S(Q)を導出する式を書き表す別の方法は、以下の通りである。
【数4】

式中、cおよびfはそれぞれ、種類iの原子種についての原子濃度およびX線原子構造因子であり、Σc=1である。
【0032】
別の好適な実施形態では、生成されたデータは、実験的に導出される原子対相関関数(PDF)に数学的に変換される。「実験的に導出される原子対相関関数(PDF)」は、正弦フーリエ変換を通じて測定された全散乱データに関連づけられる。一般的な正弦フーリエ変換関数は以下の通りである。
【数5】

式中、rは径方向の距離であり、cは任意の定数であり、xは0以上であり、yは、0と無限大の間の任意の数値である。
【0033】
上記に示された式は、バックグラウンドおよび/または異常な散乱についての補正などの実験条件に応じて、異なる方法で書き換えることができることが当業者によって理解される。例えば、PDFは、正弦フーリエ変換:
【数6】

を通じて散乱と関連づけることができ、式中、Qminは、いずれの小角散乱強度も除外するが、すべての広角散乱を含むQ値である(10)。
【0034】
この実施形態の別の態様では、固体低分子有機物質は結晶物質である。この実施形態のさらなる態様では、固体低分子有機物質は非結晶物質である。非結晶物質は、ナノ結晶物質またはアモルファス物質であることが好ましい。この実施形態のさらなる態様では、固体低分子有機物質は、歪んだ物質(distorted material)である。
【0035】
本明細書で使用する場合、「結晶物質」は、長距離秩序を有する任意の物質を意味する。その構造は、単位格子(その形状およびサイズ)ならびにその内容(原子座標および温度要因)を定義する少数のパラメーターによって定義することができる。次いで完全な構造は、約100nm超の距離を意味する長距離にわたって、この単位格子を周期的に繰り返すことによって得られる。結晶物質には、結晶構造を有するが、ナノスケールで異なる構造を伴う物質が含まれる。
【0036】
「歪んだ物質」は、長距離秩序を伴うが、平均構造に反映されない著しい構造的な歪みを有する物質を意味する。
【0037】
「非結晶物質」は、結晶物質でも、歪んだ物質でもない任意の物質である。非結晶物質には、それだけに限らないが、アモルファス物質およびナノ結晶物質が含まれる。
【0038】
「アモルファスの物質」は、はっきりした構造を有さないか、または約10オングストローム以下のはっきりした構造を有する物質を意味する。
【0039】
「ナノ結晶物質」は、約10オングストローム〜約1000オングストロームの局所的な、中間の範囲にわたってはっきりした構造を有する物質を意味する。例えば、ナノ結晶物質は、約10〜700オングストローム、10〜600オングストローム、10〜500オングストローム、10〜400オングストローム、10〜300オングストローム、10〜200オングストローム、10〜150オングストローム、および約10〜100オングストロームを含めた、約10〜800オングストロームの範囲にわたってはっきりした構造を有することができる。これは、多くの場合、小さい単位格子および少数のパラメーターによって記述することができるが、秩序は、ナノメートルの長さのスケールにしか及ばない。ナノ結晶のこの定義は、単に非常に小さい(サイズがナノメートル)完全な結晶を越え、粒径はより大きい場合があるが、構造的コヒーレンスは、ナノメートルの長さのスケールである物質を含むことに留意されたい。ある特定のナノ結晶物質は、従来のXRPDを使用して分析される場合、「アモルファス」のように見え、または「X線アモルファス」である。そのようなナノ結晶物質の例は、以下の実施例1〜4に示されている。
【0040】
本発明のさらなる実施形態は製品である。この製品は、上記に開示された方法のいずれかによって製造される。
【0041】
本発明の別の実施形態も製品である。この製品は、固体低分子有機物質のX線全散乱分析のデータセットを含む。固体低分子有機物質は、上記に開示された通りである。
【0042】
本発明のさらに別の実施形態は、固体低分子有機物質を比較する方法である。この方法は、(a)第1の固体低分子有機物質をX線全散乱分析にかけ、それによって生成された第1のセットのデータを収集するステップと、(b)第2の固体低分子有機物質をX線全散乱分析にかけ、それによって生成された第2のセットのデータを収集するステップと、(c)任意選択により、第1のセットの生成されたデータを数学的に変換することによって第1の洗練されたセットのデータを提供し、第2のセットの生成されたデータを数学的に変換することによって第2の洗練されたセットのデータを提供するステップと、(d)第1のセットの生成されたデータと第2のセットの生成されたデータ、または第1セットの洗練されたデータと第2のセットの洗練されたデータを比較することによって、それらの差異または類似を判定するステップであって、類似は、第1および第2の固体低分子有機物質が類似の構造を有することを表し、差異は、第1および第2の固体低分子有機物質が異なる構造を有することを表すステップとを含む。
【0043】
この実施形態の一態様では、この方法は、第1のセットの生成されたデータを数学的に変換することによって第1の洗練されたセットのデータを提供し、第2のセットの生成されたデータを数学的に変換することによって第2の洗練されたセットのデータを提供するステップを含む。
【0044】
好適な一実施形態では、第1のセットの生成されたデータおよび第2のセットの生成されたデータは、換算全散乱構造関数に数学的に変換される。別の好適な実施形態では、第1のセットの生成されたデータおよび第2のセットの生成されたデータは、実験的に導出される原子対相関関数(PDF)に数学的に変換される。換算全散乱構造関数および実験的に導出される原子対相関関数は、上記に開示された通りである。
【0045】
2つ以上のセットのデータの比較、またはデータのグラフ表示は、任意の好都合な方法で実施することができる。比較は、手作業で実施することができる。比較は、コンピューターなどの装置を使用して実施されることが好ましい。データは、逆空間で提示されても、実空間で提示されてもよい。すべてのセットのデータは、x軸上に独立変数、およびy軸上に従属変数を有するグラフの様式で提示することができる。例えば、データは、2θ対強度、θ対強度、Q対強度、Q対F(Q)、およびr対G(r)のプロットとして提示することができる。データは、Q対F(Q)、またはr対G(r)のプロットとして提示されることが好ましい。変数、θ、Q、F(Q)、r、およびG(r)は、上記に定義された通りである。
【0046】
データは、定性的な方法を使用して比較することができる。例えば、2つ以上のセットのデータを、プロット中の特徴の位置および高さ(ピークおよび谷など)の比較を容易にするために、互いに重ね合わせることができる。
【0047】
データは、定量的に比較することもできる。2セットまたはそれ以上のセットのデータを比較するのに適した多くの統計的検定が利用可能である。例えば、2つのセットのデータ間の「一致度(goodness of agreement)」パラメーターを指定することができる。そのようなパラメーターは、
【数7】

として定義されるデータ点の範囲にわたって差異の合計を評価することによって実現することができ、式中、P(1)は、第1のセットのデータ中のi番目の点の値であり、P(2)は、第2のセットのデータ中のi番目の点の値である。言い換えれば、一方のセットのデータは、参照と呼ばれる。独立変数の各点において、参照の従属変数は、他方のセットのデータの対応する従属変数から減算される。減算の結果は、一セットのデータと参照データの間の差異である。減算の結果は、x軸上に独立変数を有し、従属変数が減算の結果である、グラフの様式でさらに提示することができる。
【0048】
さらに、「一致度」パラメーターは、
【数8】

として定義される、データ点の範囲にわたる平均二乗差異の合計を評価することによって、または
【数9】

として定義されるデータ点の範囲にわたって2乗された差異の合計を評価することによって実現することができ、式中、P(1)は、第1のセットのデータ中のi番目の点の値であり、P(2)は、第2のセットのデータ中のi番目の点の値である。同じ目的を実現するのに使用することができる、いくつかの類似の表現が存在することが、当業者によって理解される。例えば、合計中の各点は、その統計的有意性の尺度によって加重することができ、または評価は、フィッティングおよび減算によって、任意の低周波数バックグラウンドを除去した後に実施することができる。
【0049】
定量的な方法の別の例は、いくつかの最も強いピークの評価に基づく。ここで、ピークは、データがグラフ形式で提示される場合のグラフ中の高い点、またはグラフ形式で提示されない場合のデータの対応する点を指す。「最も強いピーク」は、最大の振幅を有するピークを指す。この方法では、第1のセットの生成されたデータ、または第1のセットの洗練されたデータ中の最も強い1〜30のピークの位置および振幅が求められる。好ましくは最も強い5〜15、より好ましくは最も強い10のピークが求められる。これらのピークは、第2のセットの生成されたデータまたは洗練されたデータ中の対応する数の最も強いピークと比較される。任意選択により、両セットのデータ中の強度の振幅またはピークは、例えば、最も強いピークの振幅にスケーリングすることによって正規化される。
【0050】
2つのセットのデータが類似しているか、または異なっているかの判断は、ピークの位置および振幅の評価に依存する。判断は、もっぱらピークの位置に基づいて行うことができる。例えば、2つのセットのデータは、ピークの位置、または強度が、検査されるデータの全範囲の20%、10%、5%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、または0.01%以下を含めて、検査されるデータの全範囲の30%以下で異なる場合、同じであると判断することができる。判断は、もっぱらピークの振幅に基づいて行うこともできる。例えば、2つのセットのデータは、第2のセットのデータからのピークの振幅が、第1のセットのデータからの対応するピークの振幅の30%以内、好ましくは20%以内、または10%以内である場合、同じであると判断することができる。好ましくは、2つのセットのデータが類似しているか、または異なっているかの判断は、ピークの位置および振幅の両方に依存する。
【0051】
相関測定などの他の統計的方法も、2つ以上のセットのデータ間の差異および類似を分析するのに使用することができる。相関分析には、例えば、ピアソン相関、ケンドール順位相関、およびスピアマン相関が含まれる。一般に、相関分析は、データセットの各対の間で、−1〜1の範囲の相関値Rを与える。1の値は完全な相関を示し、0は無相関を意味し、−1の値は、完全な逆相関関係を示す。2つのセットのデータが非常に相関している場合、これらは非常に類似している。2つのセットのデータが無相関である場合、これらは非常に異なっている。相関技法は極めて強力であり、その理由は、絶対的なスケーリングを無視するが、相対的なスケーリングおよびピーク位置のわずかなシフトに敏感であるためである。
【0052】
さらに、2つ以上のセットのデータ間の差異及び類似を分析するのに、市販のコンピューターソフトウェアプログラムが利用可能である。例えば、任意の選択された試料に対するその類似の順序でのPolySNAP2およびPolySNAP M(University of Glasgow、Glasgow、英国)ランクパターン(25)。これらのソフトウェアプログラムは、類似または差異を記述するのに0と1の間の数値を与え、0は、2つのセットのデータが非常に異なることを示し、1は、2つのセットのデータが同じであることを示す。IBM SPSS Statisticsソフトウェア(SPSS Inc.、Chicago、Illinois)も、ピアソン相関、ケンドール順位相関および/またはスピアマン相関方法を使用して相関係数を提供するために使用することができる。
【0053】
比較は、様々な点、例えば、全データセット、またはデータセットの10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%などにわたって実施することができる。比較は、3〜20オングストローム、または3〜30オングストロームを含めた3オングストローム超などの、分子間相互作用によって支配される範囲に対応するデータにわたって実施することもできる。より大きい範囲、例えば、0.1〜30オングストロームも使用することができる。全データセットが使用されることが好ましい。範囲は、連続していても不連続であってもよい。
【0054】
この実施形態のさらなる態様では、少なくとも1つのセットの生成されたデータの数学的変換は、スケーリングすること、ストレッチすること、スミアすること、またはこれらの組合せを含む。次いでスケーリング、ストレッチ、またはスミアされたデータは、他のセットの変換されたデータと比較することができる。
【0055】
「スケーリング」は、乗数または倍率でデータを乗ずることを意味する。倍率は、定数であってもよい。スケーリングは、手作業で、またはコンピュータープログラムを使用して自動的に実施することができる。例えば、1つのセットのデータを手作業でスケーリングする場合、データ点は、所与の倍率で乗じられる。
【0056】
一方のセットのデータを他方のセットに自動的にスケーリングすることは、多くの方法で行うことができる。1つの方法は、オフセットが0である線形回帰を介して倍率を求めることである。この手順において、倍率は、標準的な線形回帰式、すなわち第1のデータセットの分散によって除された第1および第2のデータセットの共分散によって求められる。
【0057】
スケーリング方法の別の例は、第1のデータセットをスケーリングするのに物理的考慮事項を使用し、この第1のデータセットは、最初にPDFに変換されることが好ましい。この手順では、PDFは、PDFから線形ベースラインを減じ、これに径方向距離であるrを乗じることによって動径分布関数(RDF)に変換される。このベースラインは、手作業で提供され、または低rシグナルの底部を最小二乗回帰を介して線形関数にフィッティングすることによって推定される。推定ベースラインは、推定ベースラインが低rシグナルより大きい最小二乗費用関数にペナルティ関数を加えることによって、低rシグナルの底部を選ぶように事前設定することができる。RDFは、このベースラインを減じ、その結果にrを乗じることによってPDFから得られる。この操作は、両セットのデータについて実施することができる。RDFは、所与の相互作用距離内の原子対の加重平均数を表し、その積分は所与の相互作用距離内の原子対の加重総数である。RDFの形式での第1のセットのデータをスケーリングするために、これは、その積分で除され、他方のRDFの積分で乗じられる。したがってこの手順により、RDFの形式での第1のデータセットがスケーリングされることによって、RDFの形式での第2のセットのデータと同じ数の原子対が表わされる。RDFの形式での第1のセットのデータがスケーリングされると、ベースラインもスケーリングされる。引き続いて、RDFの形式でのデータは、変換されてPDFに戻される。この方法は、両セットのデータについて、良好なベースライン推定を必要とする。したがって、この方法を使用するために、データは、巨視的試料から通常収集され、その理由は、ナノスケールの試料は、線形ベースラインを有さない場合があるためである。
【0058】
「ストレッチング」は、格子パラメーターの変化を模倣するために、コンサーティーナのように、rスケール上で、好ましくはPDFの形式でのデータを伸長または圧縮することを意味する。図6は、ストレッチされたアスピリンのPDFを示す。ストレッチングは、試料がX線全散乱分析にかけられた温度の差異をシミュレートするのに使用することができる。PDFの形式での一方のセットのデータを他方のセットのデータ上にストレッチすることは、第1のセットのデータのr軸を再スケーリングすることによって実施することができる。ストレッチ係数が与えられると、r値は、rスケールを所望量伸長または収縮させるために、(1+ストレッチ係数)で乗じられる。次いでストレッチされたデータは、PDFの形式での他方のセットのデータとの比較をより容易にするために、直線的に内挿されて(リビニングされて(rebinned))、ストレッチされたグリッドからその元のグリッド上に戻される。ストレッチ係数は、例えば、試行錯誤によって手作業で求めることができる。この操作を自動化する場合、倍率は、最小二乗回帰を介して求められ、最小二乗回帰では、2つのセットのデータ間の絶対差が最小限にされる。この操作は、上述したように、PDF形式でのデータ上で、または推定RDFを使用するデータ上で実施することができる。
【0059】
「スミアリング」は、好ましくはPDFの形式での一方のセットのデータにおけるある特定の特徴を、やはり好ましくはPDFの形式での第2のセットのデータにおけるピークの広幅化をシミュレートするために広幅化することを意味する。そのような広幅化は、例えば、試料がX線全散乱分析にかけられた温度の差異をシミュレートするのに使用することができる。図5は、スミアされたアスピリンのPDFを示す。スミアリングは、PDFではなく、推定RDFの形式でのデータに対して実施されることが好ましく、その理由は、RDFのピークはガウシアンであるが、PDFのピークはガウシアンでないためである(しかし、PDFの形式でのデータが直接スミアされる場合、誤差はかなり小さい))。好ましくは、スミア操作を実施するために、PDFは、上述したようにRDFに変換され、次いでデータは、幅として選ばれた広幅化係数を用いて、ガウシアンで畳み込まれる。数値的な畳み込みは、スミアされるデータの図心および積分される振幅が変化しないように実施される。スミアリングは、例えば、上述したような最小二乗回帰を介して自動的に実施することができる。
【0060】
つまり、スケーリング、ストレッチング、およびスミアリングは、スケール、ストレッチ、およびスミア係数についての最適な値が見つけられ、その結果、好ましくはPDFまたはRDFの形式での一方のセットのデータを、やはり好ましくはPDFまたはRDFでの第2のセットのデータに可能な限り近くにモーフィングするような回帰アルゴリズム(例えば、最小二乗法)を使用して自動化することができる。これらの操作は、組み合わせることができることに留意されたい。例えば、各回帰ループの間、一方のセットのデータに、最適化アルゴリズムによって提供されるパラメーターによって、上述したようにスケーリング、ストレッチング、およびスミアリングをその順序で(または別の順序で)行うことができる。PDFからRDFへの変換は、回帰の前に一度実施され、RDFからPDFへの変換は、最適なモーフィングパラメーターが見つけられた後に、上述したように実施されることが好ましい。
【0061】
この実施形態の別の態様では、第1の固体低分子有機物質および第2の固体低分子有機物質は、同じ分子構造を有するが、異なる処理プロトコールにかけられている。本明細書で使用する場合、異なる処理プロトコールは、異なる条件、例えば、温度、圧力、および/または化学環境などの下で処理されていることを意味する。例えば、第2の低分子有機物質は、第1の低分子有機物質の再結晶化形態とすることができる。再結晶プロセスは、例えば、異なる温度アニーリングレジメン、または異なる溶媒系を含むことができる。異なる処理プロトコールは、異なる貯蔵時間および/または貯蔵条件であることが好ましい。より好ましくは、この方法は、第1のセットの生成されたデータと第2のセットの生成されたデータの差異、または第1のセットの洗練されたデータと第2のセットの洗練されたデータの差異、貯蔵時間、または貯蔵条件を、固体低分子有機物質の安定性に相関させるステップをさらに含む。
【0062】
本明細書で使用する場合、「分子構造」は、分子を構成する原子の3次元配置を意味するが、より大きい構造への分子の3次元配置を含まない。「貯蔵時間」は、固体低分子有機物質が作製される時間から、この低分子有機物質からX線全散乱データが収集される時間までの継続時間を意味する。「貯蔵条件」は、固体低分子有機物質が、作製された後に貯蔵される条件を意味する。貯蔵条件として、それだけに限らないが、温度、圧力、pH、湿度、および光、大気の化学組成、またはこれらの組合せが挙げられる。本明細書で使用する場合、「大気の化学組成」は、販売される低分子有機物質が接触している気体物質(複数可)(もしあれば)を意味する。大気のいくつかの限定されない例示的な化学組成には、真空、純粋な窒素、および海水面での空気の組成が含まれる。
【0063】
本明細書で使用する場合、「相関させること」は、関連づけることを意味する。関係は、線形であっても、線形でなくてもよい。そのような相関により、安定性情報および製造プロセスの一貫性を含めた、固体低分子有機物質に関する様々な情報が得られる。
【0064】
例えば、ある特定の時間にわたる固体低分子有機物質の安定性を評価するために、その物質の試料をX線全散乱分析にかけることができる。ある特定の時間の後、その物質の第2の試料をX線全散乱分析にかけることができる。2つのセットの生成されたデータまたは洗練されたデータが同じであると判定される場合、試料は、その時間にわたって安定である。反対に、2つのセットの生成されたデータまたは洗練されたデータが異なっていると判定される場合、試料は、その時間にわたって劣化している。2つのセットのデータを比較する方法は、上記に示された通りである。
【0065】
別の例では、固体低分子有機物質に対する様々な貯蔵条件の効果を評価することができる。物質の2つの異なる試料は、異なる温度下で、すなわち、一方を20℃、および他方を4℃で貯蔵することができる。ある特定の時間の後、両試料をX線全散乱分析にかけることができる。物質が、その時間にわたって4℃で安定であることが分かる場合で、2つのセットの生成されたデータまたは洗練されたデータが同じであると判定される場合、温度の差異は、物質の安定性に対する効果を有さない。物質は、その時間にわたって20℃で貯蔵することもできる。反対に、2つのセットの生成されたデータまたは洗練されたデータが異なると判定される場合、温度の差異は効果を有する。この例は、他の貯蔵条件、例えば、光、湿度、圧力、pH、またはこれらの組合せなどに、変更すべきところは変更して適用することができる。
【0066】
さらに別の例では、X線全散乱分析は、そのような物質についての製造プロセスの一貫性を確証するためにも使用することができる。試料は、同じ合成プロセスを使用して製造された、固体低分子有機物質の2つの異なるロットから採取してもよい。両試料は、X線全散乱分析にかけることができる。2つのセットの生成されたデータまたは洗練されたデータが同じであると判定される場合、物質の製造において一貫性がある。反対に、2つのセットの生成されたデータまたは洗練されたデータが異なっていると判定される場合、製造プロセスは、一貫性がない。この例は、限定することなく、固体低分子有機物質の製造のスケールアップ、製造プロセスにおける異なる溶媒または装置の使用、出発原料および合成スキームの変更を含めた製造プロセスの変更に対して、変更すべきところは変更して適用することができる。
【0067】
本発明のさらなる実施形態は、ナノ結晶固体低分子有機物質を特徴づける方法である。この方法は、(a)ナノ結晶固体低分子有機物質をX線全散乱分析にかけ、それによって生成された第1のセットのデータを収集するステップと、(b)結晶固体低分子有機物質をX線全散乱分析にかけ、それによって生成された第2のセットのデータを収集するステップであって、結晶固体低分子有機物質は、ナノ結晶固体低分子有機物質と同じ分子構造を有するステップと、(c)第1のセットの生成されたデータ、もしくは第2のセットの生成されたデータ、または第1のセットおよび第2のセットの生成されたデータの両方に数学的な調節を施すことによって、ナノ結晶物質の構造を決定するステップとを含む。
【0068】
この実施形態の一態様では、数学的な調節は、PDFを使用して、第1のセットの生成されたデータおよび第2のセットの生成されたデータを数学的に変換することによって、第1のセットの洗練されたデータおよび第2のセットの洗練されたデータを提供するステップと、第2のセットの洗練されたデータに数学的関数を適用することによって、調節された第2のセットのデータを生成し、その結果、調節された第2のセットのデータは、第1のセットの洗練されたデータと実質的に一致するステップであって、数学的関数は、仮想粒子の外側の遠近傍寄与(far neighbor contribution)の消失を模倣し、仮想粒子のサイズは、ナノ結晶のサイズであるステップとを含む。PDFは上記に開示された通りである。
【0069】
一例では、仮想粒子は球状である。仮想球状粒子の外側の遠近傍寄与の消失を模倣する数学的関数は、以下の通りである(11)。
【数10】

式中、dは、球状粒子の直径であり、Φ(x)は、ヘビサイドステップ関数であり、これは、領域r≦dで値1、およびr>dで値0を有する。
【0070】
実質的な一致は、定性的な方法、または調節された第2のセットのデータと、第1のセットの洗練されたデータとの間の差異を最小限にする定量的な方法によって判定することができる。一例では、調節された第2のセットのデータと、第1のセットの洗練されたデータとの間の差異は、データを比較するための方法に関して本開示において上記に示したような「一致度パラメーター」によって記述することができる。別の例では、調節された第2のセットのデータと、第1のセットの洗練されたデータとの間の差異は、PolySNAP 2およびPolySNAP Mなどの既存の統計ソフトウェアを使用して最小限にすることができる。
【0071】
さらに、この方法は、例えば、ナノ結晶物質として出発し、経時的に結晶物質に結晶化することが知られている試料中の結晶化の百分率についての定量的データを抽出するのに使用することができる。出発物質および劣化した物質は、X線全散乱分析に最初にかけ、数学的に変換することによって、洗練されたセットのデータを提供することができる。次いで試料がX線全散乱分析にかけられ、出発物質および劣化した物質と類似の様式で数学的に変換される。数学的変換の方法は上記に示した通りである。出発物質および劣化した物質からの洗練されたデータは、線形結合されたデータと試料の洗練されたデータとの間、またはモデル化されたデータと試料の洗練されたデータとの間で実質的な一致に到達するまで、上記に示したように線形結合し、またはモデル化することができる。
【0072】
本発明の別の実施形態は、低分子有機物質の形態での薬物または薬物製品の物理化学的性質に関するデータを規制当局に提出することの改善された方法である。この方法において、改善は、薬物または薬物製品のX線全散乱情報を規制当局に提出するステップを含む。
【0073】
用語「規制当局」は、特定の活動範囲において、基準を確立、監視、刷新、または励行する団体を意味する。規制当局には、限定することなく、米国食品医薬品局、欧州医薬品庁、または世界中の、薬物を管理する任意の管理団体が含まれる。
【0074】
用語「X線全散乱情報」は、X線全散乱分析から生成されたデータ、およびそれだけに限らないが、数学的に変換されたデータ、例えば、PDFデータ、換算全散乱構造関数からのデータなど、そのようなデータのグラフ表示、データの説明、およびデータから引き出される任意の結論を含めた、任意のその派生物を意味する。
【0075】
この実施形態の一態様では、規制当局は米国食品医薬品局(FDA)である。
【0076】
この実施形態の別の態様では、提出は、治験新薬申請、新薬販売FDA承認申請(NDA)、簡略新薬申請(ANDA)において、または固体薬物の素性または質を維持することに関して行われる。
【0077】
この実施形態のさらなる態様では、提出は、アモルファス形態またはナノ結晶形態での薬物の承認申請において行われる。本明細書で使用する場合、「承認された薬物」は、例えば、FDAを含めた規制当局によって、販売またはマーケティングのために承認された薬物または薬物製品を意味する。承認された薬物のアモルファス形態またはナノ結晶形態は、承認された薬物と同じ分子構造を有するが、局所的な配置において異なる場合があり、したがって承認された薬物より生物学的に利用可能である場合がある。
【0078】
この実施形態のさらなる態様では、提出は、連邦規制基準(CFR)、具体的には、21CFR211、21CFR312、または21CFR314の要求に従って行われる。CFRは、経時的に変化する場合があり、本明細書に引用されるCFRの特定のセクションは、その後に継がれる条項を含むことが理解される。
【0079】
例えば、X線全散乱分析から集められた安定性情報は、完成医薬品適正製造基準、例えば、21CFR312.23(治験新薬申請)、21CFR314.50(新薬販売FDA承認申請)、21CFR211.137(有効期限日決定)、211.166(安定性試験)、211.170(保存された試料の試験)、および211.194(安定性試験結果を含む、実験室記録の維持)の要求を満たす目的でFDAに提出することができる。
【0080】
X線全散乱分析は、製造プロセス管理においてさらに使用し、治験新薬申請を提出する目的、例えば、21CFR312.23;新薬販売FDA承認申請の目的、例えば、21CFR314.50(d)(1)の要求;ならびに完成医薬品適正製造基準を満たす目的、例えば、21CFR211.84、211.110、211.160、および211.194の要求のためにFDAに提出することができる。
【0081】
さらに、X線全散乱分析は、承認された、または係属中の申請において記載された活性成分と同じである多形を主張する特許のための21CFR314.53の要求に従って提出することができる。
【0082】
X線全散乱分析はまた、21CFR314.94の要求に従って、ANDAにおいてFDAに、ジェネリック製造者によって使用することができる。他の情報の中で、21CFR314.94は、21CFR314.50(d)(1)(i)の要求を含めて、化学的性質、製造、および管理の情報を要求している。
【0083】
本発明の別の実施形態は、固体低分子有機物質を特徴づけるためのシステムである。このシステムは、(a)固体低分子有機物質を高周波数X線ビームに曝すように構成されたX線ビーム源デバイスと、(b)X線ビーム源デバイスに結合され、固体低分子有機物質による高周波数X線ビームの回折から生じる全散乱データを収集するように構成された検出器と、(c)検出器に結合され、固体低分子有機物質を高周波数X線ビームに曝すことによって生成されたデータを数学的に変換することによって、洗練されたデータセットを提供するように構成されたプロセッサーとを備える。図4は、このシステム(100)の概略図であり、この中でX線ビーム源デバイス(110)、検出器(120)、およびプロセッサー(130)が示されている。
【0084】
本明細書で使用する場合、「X線ビーム源デバイス」は、高周波数X線ビームをもたらすデバイスを意味する。「高周波数X線ビーム」は、その波長が、例えば、0.8オングストローム以下などの、1.1オングストローム以下であるX線ビームを意味する。本発明による適当なX線ビーム源デバイスは、限定することなく、銀またはモリブデン線源を有する実験室ベースの回折計を含めて、本明細書に開示された通りである。
【0085】
本明細書で使用する場合、「全散乱データ」は、ブラッグ散乱および散漫散乱の両方を含む、広範囲の逆空間にわたる構造に関連した散乱データを意味する。
【0086】
本明細書で使用する場合、「結合された(coupled)」は、接続された(connected)、または連係された(interfaced)を意味する。システムのコンポーネントは、1つまたは複数の接続デバイスまたはインターフェースデバイス、例えば、システムのコンポーネントと電子的に通信するコンピューターなどによって接続または連係することができる。
【0087】
本発明による適当な検出器には、限定することなく、Chupasら(24)において開示されているような2Dイメージプレート検出器が含まれる。
【0088】
本発明による適当なプロセッサーには、限定することなく、ソフトウェアアプリケーション、例えば、PDFgetX2、RAD、FIT、PEDX、およびIFO(16〜19)などを実行するコンピューターが含まれる。
【0089】
固体低分子有機物質を高周波数X線ビームに曝すことによって生成されるデータには、それだけに限らないが、X線ビームの特定のブラッグ角、波長での回折の関連した強度、回折の強度および特定の位置での回折の関連した強度を記録するのに使用される検出器の位置、ならびに/または全散乱データが含まれる。
【0090】
この実施形態の一態様では、生成されたデータは、換算全散乱構造関数に数学的に変換される。好ましくは、生成されたデータは、実験的に導出される原子対相関関数(PDF)に数学的に変換される。
【0091】
この実施形態の別の態様では、固体低分子有機物質は、薬物または薬物製品である。固体低分子有機物質は、結晶、非結晶、アモルファス、ナノ結晶であっても、歪んでいてもよい。
【0092】
この実施形態のさらなる態様では、システムは、規制当局、好ましくはFDAの要求に従っている。好適な実施形態では、システムは、21CFR Part11の要求に従っている。
【0093】
以下の実施例は、本発明の組成物および方法をさらに例示するために提供されている。これらの実施例は、例示的なだけであり、本発明の範囲を限定することは決して意図されていない。
【実施例】
【0094】
(実施例1)
方法
データは、融解した化合物が液体Nで急速に冷却された融解−急冷法によって調製され、軽く粉砕され、篩にかけられ、直径1mmのKapton(登録商標)(Dupont、Circleville、OH)キャピラリー中に充填されたカルバメザピン(carbamezapine)(CBZ)およびインドメタシン(IND)の試料から収集した。Cu Kα源から収集される実験室データは、2〜40°の2θの範囲、0.016°の2θのステップサイズ、100Kで、1ステップあたり10秒で、キャピラリー透過ジオメトリー、概ね単色にされたCu Kα放射線(λ=1.54056Å)を使用して、Bruker−AXS D8回折計で収集した。
【0095】
結晶物質を穏やかに粉砕して微粉を作製した。結晶物質の形態は、従来のX線粉末回折によって確認した。全散乱データは、高速収集PDF法(14)を使用して、シカゴのAdvanced Photon Source(APS)においてビームライン11ID−Bで収集した。試料を、直径1mmのカプトンチューブ中に密封し、波長λ=0.1370ÅのX線を照射した。大面積2Dイメージプレート検出器(MAR345)を、試料の198mm後ろに、入射ビームを中心に合わせ、このビームに垂直に配置した。十分に高いQ範囲にわたってデータを得るために、短波長が必要であり、これはひいては、実空間において十分に良好な分解能を得るために必要である。Qは、散乱ベクトルの規模である。Q=4πsinθ/λであり、式中、θはブラッグ角である。高いQ範囲内で十分な統計を得るために、各データ点について5〜8回の間で300秒間暴露して、イメージプレートの複数の暴露を行った。さらに処理する前に別個の暴露を一緒に合計し、1試料当たり30分の積分露光時間を得た。
【0096】
これらの条件下で、最大Qmax=20Å−1まで、確実に使用することができるデータを得た。1D粉末回折パターンは、イメージプレートからの画像中のシェラー環の周囲で積分し、プログラムFit2Dを使用してビームの偏光効果を補正することによって得た(15)。全散乱換算構造関数のF(Q)、およびPDFのG(r)を得るためのさらなる処理は、プログラムPDFgetX2を使用して行った(16)。
【0097】
(実施例2)
カルバメザピン(CBZ)の全散乱およびPDF分析
図1にCBZから収集したデータを要約する。図1において、第1行(すなわち、図1(a)、1(d)、1(g)、および1(j))は、β形態の結晶CBZから収集したデータであり、中央行(すなわち、図1(b)、1(e)、1(h)、および1(k))は、非結晶CBZから収集したデータであり、最下行(すなわち、図1(c)、1(f)、1(i)、および1(l))は、γ形態のCBZから収集したデータである。列は、異なる方法で測定し、または表したデータを有する。第1列は、銅(Cu)Kα X線照射を用いて収集した、院内のX線粉末回折計からのデータを示す。第2列は、第1列中のデータをフーリエ変換することによって得たPDFを示す。第3列は、換算全散乱構造関数、F(Q)の形式でプロットした、X線シンクロトロン源からの全散乱データである。最後の列は、以下の式によって第3列中のデータをフーリエ変換することによって得た、各試料のPDFを示す。
【数11】

式中、Qmimは、いずれの小角散乱強度も除外するが、すべての広角散乱を含むQ値である(10)。
【0098】
本研究の主な結果は、図1において自明である。従来のXRPD測定は、非結晶試料の内部構造を区別するのに十分でないが、全散乱測定および得られる全散乱PDFは、非結晶CBZは、β型の局所的パッキングを有することを明らかに示す。
【0099】
列1(すなわち、図1(a)〜1(c))は、従来のXRPDを使用して収集したデータを示す。従来のXRPDは、CBZのβ(図1(a))結晶相とγ(図1(c))結晶相を明白に区別するのに優れていることが明白である。しかし、従来のXRPDは、非結晶試料の内部構造を同定し、特徴づけるのに不十分であり、その理由は、そのXRPDパターンは、幅広く、かなり特徴のないものであるためである(図1(b))。このXRPDパターンに基づくと、非結晶試料を、βもしくはγ形態、またはいくつかの他の形態において見られる型の局所的パッキングを有すると特徴づけることは可能でない。そのようなパターンは一般に、「アモルファス」または「X線アモルファス」として、具体的でない方法での試料の説明をもたらす。
【0100】
Batesら(7)によって提案されたように、従来のXRPDデータは、標準的な方法に従ってフーリエ変換することによってPDFを得ることができる(5、6)。列2(図1(d)〜1(f))は、従来のXRPDを使用して収集したデータのフーリエ変換によって得たPDFデータを示す。しかし、フーリエ変換により、データ中の情報内容は増加せず、局所的パッキングを確認することは依然として可能でない。
【0101】
列3(図1(g)〜1(i))は、第1列の対応するパネルと同様に調製した試料からの、シンクロトロンで収集したデータから求めた全散乱F(Q)を示す。図1(g)と1(i)の間で著しい差異があり、全散乱データは、はるかに低いQ分解能を用いて測定されたにもかかわらず、従来のXRPDデータが結晶試料について有益であるのとまったく同様に、F(Q)も、分子固体の様々な結晶形態を区別するのに有益な関数であることを示す。しかし、さらに重要なことに、非結晶試料の全散乱F(Q)、すなわち図1(h)は、十分広い範囲の運動量移動にわたって測定され、上記に示した方法によって適切に正規化される場合、従来の測定(図1(b))と比較して、今度は情報に富む。全散乱測定の20Å−1という高いQmax値は、0.16Åの実空間の分解能に対応する。
【0102】
結晶相のそれぞれとともに非結晶試料のF(Q)プロットを比較することができる。非結晶試料(図1(h))は、構造においてγ形態(図1(i))ではなく、β形態(図1(g))にはるかにより密接に類似していることが明白である。非結晶試料を作製するための出発物質は、γ形態のCBZであったが、非結晶試料は、γよりβ結晶形態により類似したパッキングを明らかに有する。
【0103】
同じ結果を、第3列におけるF(Q)をフーリエ変換することによって得られた全散乱PDFのG(r)を示す、第4列おいても見ることができる。列4(図1(j)〜1(l))は、全散乱X線データのフーリエ変換によって得られたPDFデータを示す。ここでは、非結晶試料(図1(k))は、構造においてβ形態(図1(j))に類似することが、おそらくさらにより明らかである。β結晶物質のPDFと非結晶試料の間に顕著な類似がある。
【0104】
r=3.0Å〜20Åの範囲のPDF同士間の相関を試験した。すべての試料の非常に局所的構造(すなわち、r<3.0Å)が同じであるので、この範囲を選択した。これらは、例えば、それぞれ1.4Åおよび2.4Åでの最近接および次最近接炭素間結合からなる分子内対である。PolySNAPを使用した、3つの試料(β形態、γ形態、および非結晶CBZ)についての、分子間相互作用によって支配される範囲、すなわち3.0〜20Åにおける全散乱PDFの比較を、以下で表1に示す。
【0105】
【表1】

【0106】
上記結果は、非結晶CBZは、β型の局所的パッキングを有することを示す。PolySNAPプログラムは、スピアマン相関の改良版を使用する。さらに、比較の異なる方法、すなわちピアソン積−運動量(product-momentum)相関を、同じデータセットに対して使用した。以下の式を、ピアソン積−運動量相関、Rを計算するのに使用した。
【数12】

式中、
【数13】

およびσはそれぞれ、1つのデータセットの平均および標準偏差であり、
【数14】

およびσはそれぞれ、別のデータセットの平均および標準偏差であり、nは、各データセット中の値の数である。ピアソン積−運動量相関分析は、コンピュータープログラムによって実施した。ピアソン相関を使用した、3つの試料(β形態、γ形態、および非結晶CBZ)についての、分子間相互作用によって支配される範囲、すなわち3.0〜20Åにおける全散乱PDFの比較を、表2に示す。
【0107】
【表2】

ピアソン積−運動量相関を使用して得られた結果は、PolySNAPを使用して得られたものと一致する。
【0108】
PolySNAP(21)を使用した、3つの試料(β形態、γ形態、および非結晶CBZ)についての、分子間相互作用によって支配される範囲、すなわち3.0〜30Åにおける全散乱PDFのフルプロファイル比較により、非結晶形態およびβ結晶形態の全散乱PDFについて0.8345の相関係数を得た(完全なマッチ=1.0)。次に最も近い類似は、CBZの非結晶形態とγ形態について観察されたが、わずか0.4701の相関係数を生じた。フルプロファイル比較はまた、範囲r 0.1〜30Åにわたって、PolySNAP v.1.7.2(21)を使用して実施した。以下の表3は、プロファイル比較の相関係数を示す。
【0109】
【表3】

【0110】
したがって、全データ範囲を分析することにより、結果は有意に変化せず、パッキングにかかわらず非常に類似した様々なrの範囲を含めることによって、相関分析の分子パッキングの差異を見つけることに対する感度が低下する。
【0111】
したがって、結果は、従来のXRPD測定は、非結晶試料の内部構造を区別するのに十分でないが、全散乱測定および得られるPDFは、非結晶CBZがβ型の局所的パッキングを有することを明らかに示すことを明らかに実証している。
【0112】
(実施例3)
非結晶CBZの構造の同定
図2において、バルクの結晶β−CBZおよび非結晶試料の全散乱PDFの間の一致を示す。顕著なのは、β−CBZ試料に由来する特徴は、全範囲にわたる非結晶試料の全散乱PDFにおいて、定性的に再現されることである。
【0113】
図は以下の方法で作成した。非結晶試料の全散乱PDFは、図1(k)において示したものと正確に同じであり、この図において単に再現されている(薄灰色)。バルクのβ−CBZ試料の全散乱PDFも、図1(j)に示したものに基づくが、これは、ここにプロットする前に調節している(濃灰色)。これは、構造的コヒーレンスの限定された範囲の効果をシミュレートするためにPDFのピークを減衰させることによって調節した。ナノ粒子の内部原子配置が、バルクの結晶類似体の内部原子配置と類似する場合、そのPDFは、粒子の外側の遠近傍相関の低下により、rが増大するとともにPDFのピークの振幅が減衰されることを除いて、結晶物質のPDFと類似する。これは、結晶PDFに、粒子の形状関数の自己相関を乗じることによってモデル化することができる。形状関数は、ナノ粒子の形状を定義し、粒子の表面の内側で値1、および表面の外側で値0を有する。球状粒子について、自己相関関数の形式、またはPDF特性関数(10)は、以下の通りである(11)。
【数15】

dは、球状粒子の直径である。Φ(x)は、ヘビサイドステップ関数であり、これは、領域r≦dで値1、およびr>dで値0を有する。ここで行ったことは、バルクの結晶β−CBZの測定された全散乱PDFを採用し、これに上記に列挙した式を乗じたことであり、この場合、ナノ粒子の直径であるdは、図2に示したように、rの全範囲にわたって妥当な一致が得られるまで、手作業で変更した。この一致は、4.5nmのナノ粒子の直径を使用した場合に得られた。
【0114】
バルク結晶からの減衰されたPDFと、「アモルファス」試料の全散乱PDFとの間の優れた一致は、通常の実験室XRPDを使用して特徴づけることができない、非結晶試料中の局所的パッキングは、4.5nmの構造的コヒーレンスの範囲を有するβ形態のものであることの非常に効果的な証明である。
【0115】
試料が、β形態の別個の4.5nmのナノ結晶で構成されているのか、またはこれが、短距離の分子β様パッキングを有する真に均質なアモルファス構造であるのかを問うことは興味深い。データは前者を示し、その理由は、全散乱PDFにおける特徴の鋭さは、rが増大しても保存される一方で、その振幅は単に減少し、これは、真にアモルファスの試料において見られる挙動ではないためである。したがって、非結晶CBZ試料の構造は、実際にナノ結晶β形態であり、平均粒子直径は4.5nmである。
【0116】
非結晶試料の全散乱PDFは、球についてのPDF特性関数によって減衰されたバルクのβ形態によって十分に説明されるが、試料が、4.5nmの値を中心としたナノ粒子サイズの分散系であるという可能性は、排除することができない。例えば、約10%の多分散性を有する狭い分散系は、1個の球についての特性関数を使用して十分に説明される(12)。
【0117】
(実施例4)
インドメタン(Indomethane)(IND)の全散乱およびPDF分析
INDの全散乱分析の結果を図3に示す。INDは、非結晶形態においても見出すことができる、広く研究された分子である。やはりこの場合、従来のXRPDデータは、非結晶試料がX線アモルファスであることを示すが、局所的構造の徴候をまったく与えない。対照的に、全散乱データは、構造的な情報に富んでいる。
【0118】
興味深いことに、この場合、非結晶試料の局所的構造は、測定した2つの結晶試料のいずれとも異なる。非結晶IND中の局所的パッキングは、α形態でもγ形態でもなく、異なる。PolySNAPでの融解−急冷したαおよびγINDについての全散乱PDFのフルプロファイル比較からの最高相関係数は、0.6259であり、融解−急冷された、α−IND相を返した。これは、CBZの全散乱PDF比較について得られた最高値より有意に低く、すべての他の係数は、0.5未満である。比較を3.0〜20Åのrの範囲にわたって実施する場合(以下の表4に示す)、結果は類似している。
【0119】
【表4】

さらに、ピアソン相関を、3.0〜20Åのrの範囲にわたって実施した。相関係数を、以下で表5に示す。
【0120】
【表5】

【0121】
したがって、全散乱PDFは、100Kで融解−急冷したIND試料の局所的構造は、αおよびγ結晶形態と大部分は異なることを示す。これは、Tg(315K)(22)より下で、アモルファスINDは、二量体水素結合を伴って、γ形態と類似した局所的構造を有する(23)という結晶化および分光学的調査に基づく示唆と対立する。αおよびγ結晶相の線形結合は、非結晶試料からの全散乱PDFと良好な一致を示さなかった。しかし、この結果は、異なる局所的分子パッキング配置が非結晶相において可能であり、全散乱PDFは、これらを特徴づけることができることを示す。非結晶CBZ試料と同様に、PDFにおける非結晶IND試料の振動は、示したr範囲全体にわたって明らかであり、20Åを越えて明らかに延在し、これは、非結晶IND試料も、真にアモルファスではなく、ナノ結晶であることを示す。
【0122】
これらの結果は、いくつかの重要な意味を有する。第1に、短波長X線を使用する全散乱は、アモルファスまたはナノ結晶分子固体の異なる形態を区別するのに使用することができるデータをもたらす。したがってこれは、X線粉末回折が、構造的形態をフィンガープリントするという役割を結晶粉末について果たす、アモルファス医薬品における役割を果たすことができる手法である。これは、アモルファス形態およびナノ結晶形態の薬物の商業化を大いに促進することになる。これはまた、アモルファス形態およびナノ結晶形態の医薬品および他の分子固体の研究を助けることになり、その理由は、ここで研究した両方の場合、ひいては多くの場合において、分子配座およびパッキングについてのはっきりした構造的モデルを適合させるのに十分な情報が全散乱シグナル中に存在するためである。これは、相安定性、および非結晶固体分子固体における形態に対する過程履歴の効果などの事項の将来の研究に扉を開く。例えば、カルベマゼピン(carbemazepine)の場合では、試験した非結晶形態は、γ−形態前駆体に由来しているにもかかわらず、β−パッキングを有していた。興味深いことに、加熱すると、アモルファス構造は再結晶してγ−CBZになる。したがって、X線全散乱分析は、製薬科学者がアモルファスまたはナノ結晶経路を介して新しい結晶多形を見つけるのに役立つ場合がある。
【0123】
(実施例5)
薬物の安定性試験
薬物Aは多型を示す。薬物Aの所望の形態はナノ結晶形態(α)である。薬物Aのこのナノ結晶形態および他の形態は、溶解度、安定性、および/または融点の観点から異なる性質を有する。これらの性質の差異のために、薬物Aの安全性、性能および/または効力は影響される。残念ながら、溶解の速度を評価する試験などの薬物製品性能試験は、多形比が変化する場合、十分な管理をもたらさない。
【0124】
従来のXRPDでは、薬物Aのα−ナノ結晶形態は、幅広い特徴のないピークとして現れる。対照的に、薬物Aのα−ナノ結晶形態のX線全散乱分析、およびそのような分析から生成されたデータの数学的変換により、明確なピークが示され、したがって、薬物Aのこの固体形態を同定するためのフィンガープリントが得られる。したがって、適切な合否基準、例えば、ピークの位置についての数値的限定、ピークの強度についての数値的範囲、または他の判定基準などを指定することができる。
【0125】
α−ナノ結晶形態の薬物Aを、様々な環境要因、例えば、温度、湿度、および光などに曝し、次いで、X線全散乱分析を含めた様々な試験にかけることによって、薬剤物質または薬物製品の品質が、これらの環境要因の影響下で時間とともにどのように変化するかを検査する。この情報、特にX線全散乱分析からのデータおよびそのデータの数学的変換から、薬物製造者は、薬物についての再試験期間、または薬物製品についての有効期間、および推奨貯蔵条件を確立することができる。
【0126】
X線全散乱分析から集められた安定性情報は、治験新薬申請を提出する目的でFDAに提出することができる。例えば、21CFR312.23は、化学的性質、製造、および管理情報の報告を要求している。調査の各段階において、治験薬の適切な同定、品質、純度、および強度を保証するために、十分な情報を提出することが要求される。新薬物質および薬物製品が、提案された臨床研究の計画された継続時間にわたって、許容できる化学的および物理的制限内にあることを実証するために、治験新薬申請のすべての段階において、安定性データが要求される。
【0127】
X線全散乱分析から集められた安定性情報はまた、新薬販売FDA承認申請の目的でFDAに提出することができる。例えば、21CFR314.50は、「[a]薬剤物質の物理的および化学的特性、ならびに安定性;...ならびに薬剤物質の素性、強度、品質、および純度を保証するのに必要な基準、ならびに例えば、安定性、滅菌性、粒径、および結晶形態に関する試験、分析手順、および合否基準を含む、その物質から製造される薬物製品のバイオアベイラビリティーを含めた薬剤物質の完全な説明」を要求している。X線全散乱分析およびそのような分析によって生成されたデータの数学的変換は、承認プロセスのために、ナノ結晶形態の薬物Aに関する安定性および合否基準を提供するのに使用され、一方、従来のX線粉末回折技法は、この情報を提供することができない。
【0128】
さらに、X線全散乱分析を使用して集められた安定性情報は、完成医薬品適正製造基準、例えば、21CFR211.137(有効期限日決定)、211.166(安定性試験)、211.170(保存された試料の試験)、および211.194(安定性試験結果を含む、実験室記録の維持)の要求を満たす目的でFDAに提出される。
【0129】
(実施例6)
製造プロセスの管理
薬物Bは多型を示す。薬物Bの所望の形態はナノ結晶形態である。製造プロセスにより、薬物Bのこのナノ結晶形態はごく普通に得られない。薬物Bのこのナノ結晶形態および他の形態は、溶解度、安定性、および/または融点の観点から異なる性質を有する。これらの性質の差異のために、薬物Bの安全性、性能および/または効力は影響される。残念ながら、溶解の速度を評価する試験などの薬物製品性能試験は、多形比が変化する場合、十分な管理をもたらさない。
【0130】
従来のXRPDでは、薬物Bのナノ結晶形態は、幅広い特徴のないピークとして現れる。対照的に、薬物Bのナノ結晶形態のX線全散乱分析、およびそのような分析から生成されたデータの数学的変換により、明確なピークが示され、したがって、薬物Bのこの固体形態を同定するためのフィンガープリントが得られる。したがって、製造者は、適切な合否基準、例えば、ピークの位置についての数値的限定、ピークの強度についての数値的範囲、または他の判定基準などを指定することができる。
【0131】
薬物の異なるバッチの代表的な試料を、X線全散乱を含めて試験することによって、固体形態を判定する。基準に適合しないバッチは、不合格にする。
【0132】
この情報は、治験新薬申請を提出する目的、例えば、21CFR312.23;新薬販売FDA承認申請の目的、例えば、21CFR314.50(d)(1)の要求;ならびに完成医薬品適正製造基準を満たす目的、例えば、21CFR211.84、211.110、211.160、および211.194の要求のためにFDAに提出することができる。
【0133】
(実施例7)
特許情報の提出
薬物Cは多型を示す。研究および開発の間、薬物Cの製造者は、薬物Cの3つのナノ結晶形態を生成する。これらの特定のナノ結晶形態は、全散乱X線分析、およびそのような分析から生成されたデータの数学的変換によってのみ区別可能であり、その理由は、3つすべての形態が、従来のXRPDにおいて、類似した幅広い、特徴のないピークを示すためである。製造者は、α−ナノ結晶形態の薬物Cに関して新薬申請を提出する。製造者は、β−およびγ−ナノ結晶形態の薬物Cの試験データも有する(21CFR314.53(b)(2)に示されたものを含む)。試験データは、β−ナノ結晶形態を含有する薬物製品は、新薬申請に記載された薬物製品と同じことを果たすが、薬物Cのγ−ナノ結晶形態は、果たさないことを実証する。薬物Cの製造者は、薬物Cの3つすべてのナノ結晶形態の特許を受けている。
【0134】
製造者は、薬物Cのα−およびβ−ナノ結晶形態の両方の特許情報(これは、これらのナノ結晶形態のX線全散乱分析および/またはそのような分析からのデータの数学的変換を含む)を米国食品医薬品局(FDA)に提出する。例えば、承認された、または係属中の申請において記載された活性成分と同じである多形を主張する特許について、21CFR314.53の要求に従って、この情報を提出することができる。製造者は、これが、薬物製品が新薬申請に記載された薬物製品と同じことを果たす多形を含有することを実証する、21CFR314.53(b)(2)に示されたような試験データを有することを証明する。α−ナノ結晶形態の薬物Cが承認されると、薬物Cのα−およびβ−ナノ結晶形態の両方についての特許情報が、オレンジブックに列挙される。
【0135】
(実施例8)
簡略新薬申請
連邦食品医薬品化粧品法(「法令」)のセクション505(j)(2)は、簡略新薬申請(ANDA)は、とりわけ、ジェネリック薬物製品中の活性成分は、関連リスト収載医薬品(Reference Listed Drug)(RLD)の活性成分「と同じである」ことを示すための情報を含んでいなければならないことを指定する。この法令のセクション505(j)(4)の下で、FDAは、この機関が、とりわけ、ANDAが、活性成分はRLD中の活性成分と同じであることを示すための不十分な情報を含んでいることを見出さない限り、ANDAを承認しなければならない。法令のセクション505(j)を実施させるFDAの規定は、ANDAは、ジェネリックな薬物製品がRLD「と同じ」である場合、考慮および承認に適していると定めている。具体的には、21CFR314.92(a)(1)は、用語「と同じ」は、とりわけ、「活性成分(複数可)において同一」を意味することを定めている。ジェネリックな薬物製品中の薬剤物質は、これが、素性について同じ基準を満たす場合、RLD中の薬剤物質と同じであるとみなされる。RLDの多形体と異なる薬剤物質多形体を使用することは、ANDA申請者が、生物学的同等性および安定性を示すジェネリック薬物製品を製剤化することを排除しない場合があるが、FDAは、ANDA申請者が、異なる多形体は、バイオアベイラビリティー、生物学的同等性、および安定性に影響するので、多形体の影響を引き続き考慮することを推奨している。
【0136】
A.同じ固体状態構造形態を有するジェネリック医薬品
薬物Dは、多型を示す。薬物Dの異なる多形は、異なる溶解度を示す。最終製品の活性成分は、薬物Dのナノ結晶形態であり、これは、従来のXRPD分析の下で幅広い、特徴のないピークを示す。ジェネリック製造者は、X線全散乱分析およびそのような分析から生成されたデータの数学的変換によって求められたのと同じ薬物Dのナノ結晶形態を製造することができる。ジェネリック製造者は、21CFR314.94に従ってANDAを提出する。ANDAは、他の情報の中でも、提案されたジェネリックが、承認された形態と同じ形態を有することを実証する、薬物Dの提案されたジェネリック版のX線全散乱分析を含む。
【0137】
B.異なる固体状態構造形態を有するジェネリック医薬品
薬物Eは多型を示す。薬物Eの異なる多形は、異なる溶解度を示す。薬物Eのα−結晶形態およびβ−結晶形態は、生物薬剤学分類体系(Biopharmaceutics Classification System)(BCS)判定基準(1〜7.5のpH範囲にわたって水250mL以下中で可溶性でない)によって定義される場合、それほど可溶性ではない。薬物Eのβ−ナノ結晶形態は、結晶形態より可溶性であるが、BCS判定基準によって定義される場合、依然としてそれほど可溶性ではない。承認された薬物製品は、薬物Eのβ−ナノ結晶形態を含有する。ジェネリック製造者は、薬物Eのα−ナノ結晶形態を開発および製造することができ、薬物Eのα−ナノ結晶形態は、バイオアベイラビリティーおよび生物学的同等性試験において、薬物Eのβ−ナノ結晶形態と同じであることを示すことができる。
【0138】
米国薬局方(USP)において多形の基準(例えば、融点)はまったく存在しない。薬物製品における多形の基準が確立されるべきであるという十分な関心が存在し、薬物製品性能試験(例えば、溶解試験)は、多形比が変化する場合、十分な管理をもたらさない。したがって、ジェネリック製造者は、薬物Eのα−ナノ結晶形態に関して基準を設定しなければならない。この情報は、上記実施例5および6に例示したように、安定性試験および製造プロセス管理に使用することができる。
【0139】
従来のXRPDでは、薬物Eの両ナノ結晶形態は、幅広い、特徴のないピークを示す。薬物Eの2つのナノ結晶形態のX線全散乱分析、およびそのような分析から生成された数学的変換により、異なるピークが示され、したがって、薬物Eのこれらの固体を同定するためのフィンガープリントが得られる。したがって、ジェネリック製造者は、2つのナノ結晶形態を区別し、薬物Eのα−ナノ結晶形態についての適切な合否基準、例えば、ピークの位置についての数値的限定、ピークの強度についての数値的範囲、または他の判定基準などを指定することができる。
【0140】
承認基準が指定された後、ジェネリック製造者は、上記実施例に示したような安定性および製造プロセス管理を行うことができる。この情報は、要求21CFR314.94に従って、ANDAにおいてFDAに対して、ジェネリック製造者によって使用される。他の情報の中でも、21CFR314.94は、21CFR314.50(d)(1)(i)の要求、すなわち、「[a]薬剤物質の物理的および化学的特性、ならびに安定性;...製造および包装の間に使用されるプロセス管理;ならびに薬剤物質の素性、強度、品質、および純度を保証するのに必要な基準、ならびに例えば、安定性、滅菌性、粒径、および結晶形態に関する試験、分析手順、および合否基準を含む、その物質から製造される薬物製品のバイオアベイラビリティーを含めた薬剤物質の完全な説明」を含めた、化学的性質、製造、ならびに管理情報を要求している。X線全散乱分析から生成されるデータ、およびそのようなデータの数学的変換を用いて、製造者は、これらのFDA要求を満たすことができる。
【0141】
(実施例9)
固体低分子有機物質を特徴づけるための総合システム
固体低分子有機物質を特徴づけるための総合システムを設計することができる。この総合システムは、完全に自動化された測定、分析、および複数の学問分野の環境に適した使用し易いパッケージでの報告のための設計することができる。システムのユーザーが固体低分子有機物質の試料を、システムの適切なチャンバー中に配置し、システムにそのように指示すると、システムは、X線全散乱分析を実施し、それによって生成されたデータを収集し、生成されたデータを数学的に変換することによって、洗練されたデータセットを提供する。ユーザーの選択に応じて、生成されたデータは、換算全散乱構造関数、または実験的に導出される原子対相関に数学的に変換することができる。
【0142】
このシステムは、医薬産業、特に薬物開発において広範な用途を有することができる。これは、薬物または薬物製品についてのユニークなプロファイル(「フィンガープリント」)、そのような薬物または薬物製品がアモルファス、結晶、ナノ結晶であるか、または歪んでいるかをもたらすのに使用することができる。このシステムは、薬物または薬物製品を同定することができるように、既知の化合物のフィンガープリントのライブラリー中の類似のフィンガープリントを探索するようにさらにプログラムすることができる。
【0143】
さらに、このシステムは、21CFR Part11の要求を満たすように設計することができる。システムがオーディットトレールレコードの経過を追うことができるようなソフトウェアをインストールすることができる。オーディットトレールレコードは、セントラルサーバーのデータベース中に記憶され、常に活性であり、バイパスすることができない。オーディットトレールレコードは、以下の情報、すなわち、アプリケーションのログイン/ログオフ、権限のない取扱いの試み、機器セッションの開始/停止、および新規/変更された電子記録を含むことになる。オーディットトレールレコードは、適用可能である場合、以下のデータ、すなわち、イベントのタイプ、ユーザーID、完全な(表示される)ユーザー名、日付/時間、電子記録チェックサム、電子記録識別、さらなるデータ、例えば、試料名称および試料IDなどをさらに含むことになる。オーディットトレールレコードの送信または記憶の間に導入された可能性のある偶発的なエラーを検出するチェックサムアルゴリズムは、当技術分野で公知である。オーディットトレールソフトウェアの報告機能性は、FDAによる信頼できるコピーおよび可読性を保証する。
【0144】
本発明は、本明細書に記載された特定の実施形態によって限定されるべきでない。実際に、本明細書に記載されたものに加えて、本発明の様々な改変が、前述の説明および添付の図面から当業者に明らかとなるであろう。そのような改変は、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図されている。
【0145】
引用文献
本明細書において引用される、以下に示されるものを含む全ての文献は、その全体がここに記載されているよに参照されるものとする。
1. W. I. F. David, K. Shankland, L. B. McCusker, and C. Baerlocher, editors, Structure Determination from Powder Diffraction Data, Oxford University Press, Oxford, 2002.
2. H. M. Rietveld, J. Appl. Crystallogr. 2, 65 (1969).
3. J. Bernstein, Polymorphism in molecular crystals, Oxford University Press, Oxford, 2002.
4. S. J. L. Billinge and I. Levin, Science 316, 561 (2007).
5. B. E. Warren, X-ray diffraction, Dover, New York, 1990.
6. T. Egami and S. J. L. Billinge, Underneath the Bragg peaks: structural analysis of complex materials, Pergamon Press, Elsevier, Oxford, England, 2003.
7. S. Bates, G. Zografi, D. Engers, K. Morris, K. Crowley, and A. Newman, Pharmaceut. Res. 23, 2333 (2006).
8. A. C. Wright, Glass. Phys. Chem. 24, 148 (1998).
9. S. J. L. Billinge, J. Solid State Chem. 181 , 1698 (2008).
10. C. L. Farrow and S. J. L. Billinge, Acta Crystallogr. A 65, 232 (2009).
11. K. Kodama, S. likubo, T. Taguchi, and S. Shamoto, Acta Crystallogr. A 62, 444 (2006).
12. A. S. Masadeh, E. S. Bozin, C. L. Farrow, G. Paglia, P. Juhas, A. Karkamkar, M. G. Kanatzidis, and S. J. L. Billinge, Phys. Rev. B 76, 115413 (2007).
13. S. Bruhne, E. Uhrig, K.-D. Luther, W. Assmus, M. Brunelli, A. S. Masadeh, and S. J. L. Billinge, Z. Kristallogr. 220, 962 (2005).
14. P. J. Chupas, X. Qiu, J. C. Hanson, P. L. Lee, C. P. Grey, and S. J. L. Billinge, J. Appl. Crystallogr. 36, 1342 (2003).
15. A. P. Hammersley, Fit2d v9.129 reference manual v3.1 , ESRF Internal Report ESRF98HA01T, 1998.
16. X. Qiu, J. W. Thompson, and S. J. L. Billinge, J. Appl. Crystallogr. 37, 678 (2004).
17. V. Petkov, A program for analysis of XRD data from amorphous materials for PIC's;, J. Appl. Cryst. 22, 387 (1989).
18. V. Petkov et al. Phys. Rev. Lett. 83, 4089 (1999).
19. V. Petkov et al. Phys. Rev. Lett. 85, 3436 (2000).
20. S. Bates et al., Analysis of Amorphous and Nanocrystalline Solids from Their X-Ray Diffraction Patterns, Pharmaceutical Research, 23, 2333 (2006).
21. G. Barr, W. Dong and C. J. Gilmore, Journal of Applied Crystallography, 2004, 37, 658-664.
22. V. Andronis and G. Zografi, Journal of Non-Crystalline Solids, 2000, 271 , 236- 248.
23. E. Y. Shalaev and G. Zografi, in Amorphous food and pharmaceutical systems, ed. Harry Ed Levine, Royal Society of Chemistry, Cambridge, 2002, pp. 11-30.
24. Chupas et al., Rapid-acquisition pair distribution function (RA-PDF) analysis, J. Appl. Cryst., 2003, 36, 1342-1347.
25. Barr et al., PoIySNAP: a computer program for analysing high-throughput powder diffraction data, J. Appl. Cryst., 2004, 37, 658-664.
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体低分子有機物質を特徴づける方法であって、固体低分子有機物質をX線全散乱分析にかけるステップを含む方法。
【請求項2】
固体低分子有機物質のX線全散乱分析によって生成されたデータを収集するステップと、生成されたデータを数学的に変換することによって、洗練されたデータセットを提供するステップとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
生成されたデータが、換算全散乱構造関数に数学的に変換される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
生成されたデータが、実験的に導出される原子対相関関数(PDF)に数学的に変換される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
固体低分子有機物質が薬物または薬物製品である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
固体低分子有機物質が結晶物質である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
固体低分子有機物質が非結晶物質である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
非結晶物質がナノ結晶物質である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
非結晶物質がアモルファス物質である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
固体低分子有機物質が歪んだ物質である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
固体低分子有機物質を比較する方法であって、
a.第1の固体低分子有機物質をX線全散乱分析にかけ、それによって生成された第1のセットのデータを収集するステップと、
b.第2の固体低分子有機物質をX線全散乱分析にかけ、それによって生成された第2のセットのデータを収集するステップと、
c.任意選択により、第1のセットの生成されたデータを数学的に変換することによって、第1の洗練されたセットのデータを提供し、第2のセットの生成されたデータを数学的に変換することによって、第2の洗練されたセットのデータを提供するステップと、
d.第1のセットの生成されたデータと第2のセットの生成されたデータを比較し、または第1のセットの洗練されたデータと第2のセットの洗練されたデータを比較することによって、それらの差異または類似を判定するステップであって、類似は、第1および第2の固体低分子有機物質が類似の構造を有することを表し、差異は、第1および第2の固体低分子有機物質が異なる構造を有することを表すステップと
を含む方法。
【請求項12】
比較する前に、第1のセットの生成されたデータを数学的に変換することによって、第1の洗練されたセットのデータを提供し、第2のセットの生成されたデータを数学的に変換することによって、第2の洗練されたセットのデータを提供するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第1のセットの生成されたデータおよび第2のセットの生成されたデータが、換算全散乱構造関数に数学的に変換される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
第1のセットの生成されたデータおよび第2のセットの生成されたデータが、実験的に導出される原子対相関関数(PDF)に数学的に変換される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つのセットの生成されたデータの数学的変換が、スケーリング、ストレッチング、スミアリング、またはこれらの組合せを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
第1の固体低分子有機物質および第2の固体低分子有機物質が、同じ分子構造を有するが、異なる処理プロトコールにかけられている、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
異なる処理プロトコールが、異なる貯蔵時間もしくは貯蔵条件、またはこれらの組合せである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
貯蔵条件が、温度、圧力、pH、湿度、光、大気の化学組成、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
第1のセットの洗練されたデータと第2のセットの洗練されたデータの差異、貯蔵時間、または貯蔵条件を、固体低分子有機物質の安定性にさらに相関させる、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
ナノ結晶固体低分子有機物質を特徴づける方法であって、
a.ナノ結晶固体低分子有機物質をX線全散乱分析にかけ、それによって生成された第1のセットのデータを収集するステップと、
b.結晶固体低分子有機物質をX線全散乱分析にかけ、それによって生成された第2のセットのデータを収集するステップであって、結晶固体低分子有機物質は、ナノ結晶固体低分子有機物質と同じ分子構造を有するステップと、
c.第1のセットの生成されたデータ、もしくは第2のセットの生成されたデータ、または第1のセットおよび第2のセットの生成されたデータの両方に数学的な調節を施すことによって、ナノ結晶物質の構造を決定するステップと
を含む方法。
【請求項21】
数学的な調節が、
a.実験的に導出される原子対相関関数(PDF)を使用して、第1のセットの生成されたデータおよび第2のセットの生成されたデータを数学的に変換することによって、第1のセットの洗練されたデータおよび第2のセットの洗練されたデータを提供するステップと、
b.第2のセットの洗練されたデータに数学的関数を適用することによって、調節された第2のセットのデータを生成し、その結果、調節された第2のセットのデータは、第1のセットの洗練されたデータと実質的に一致するステップであって、数学的関数は、仮想粒子の外側の遠近傍寄与の消失を模倣し、仮想粒子のサイズは、ナノ結晶のサイズであるステップと
を含む請求項20に記載の方法。
【請求項22】
低分子有機物質の形態の薬物または薬物製品の物理化学的性質に関するデータを規制当局に提出するステップを含む方法において、改善が薬物または薬物製品のX線全散乱情報を提出するステップを含む方法。
【請求項23】
規制当局が米国食品医薬品局(FDA)である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
提出が、治験新薬申請、新薬販売FDA承認申請(NDA)、簡略新薬申請において、または固体薬物の素性または品質を維持することに関して行われる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
提出が、アモルファス形態またはナノ結晶形態の薬物の承認申請において行われる、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
提出が、21CFR211の要求に従って行われる、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
提出が、21CFR312の要求に従って行われる、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
提出が、21CFR314の要求に従って行われる、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
固体低分子有機物質のX線全散乱分析のデータセットを含む製品。
【請求項30】
請求項1に記載の方法によって製造される製品。
【請求項31】
固体低分子有機物質を特徴づけるためのシステムであって、
a.固体低分子有機物質を高周波数X線ビームに曝すように構成されたX線ビーム源デバイスと、
b.X線ビーム源デバイスに結合され、固体低分子有機物質による高周波数X線ビームの回折から生じる全散乱データを収集するように構成された検出器と、
c.検出器に結合され、固体低分子有機物質を高周波数X線ビームに曝すことによって生成されたデータを数学的に変換することによって、洗練されたデータセットを提供するように構成されたプロセッサーと
を備えるシステム。
【請求項32】
生成されたデータが、換算全散乱構造関数に数学的に変換される、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
生成されたデータが、実験的に導出される原子対相関関数(PDF)に数学的に変換される、請求項31に記載のシステム。
【請求項34】
固体低分子有機物質が薬物または薬物製品である、請求項31に記載のシステム。
【請求項35】
システムが、21CFR Part11の要求に従っている、請求項31に記載のシステム。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2012−529049(P2012−529049A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513926(P2012−513926)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/001567
【国際公開番号】WO2010/141063
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(507013925)ザ トラスティーズ オブ コロンビア ユニバーシティ イン ザ シティ オブ ニューヨーク (5)
【Fターム(参考)】