説明

固体撮像モジュール

【課題】各種制御の調整を簡易化した固体撮像モジュールを提供する。
【解決手段】半導体ベースの光電変換素子を含む撮像素子10と、撮像条件を決定する演算手段12aを含み、撮像条件に基づいて撮像素子を制御する制御部12と、を備え、制御部12は、基本クロックの単位時間当たりの基本クロック数NCLKを設定及び保持するレジスタ12bをさらに備え、演算手段12aは、基本クロック数NCLKに基づいて撮像条件を演算する固体撮像モジュールである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像モジュールの操作性の向上に関する。
【背景技術】
【0002】
CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)やC−MOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の素子を備えた固体撮像モジュールは、制御のベースとなる基本クロックに対する1水平走査期間のクロック数と1垂直走査期間内の水平走査数とによって動作が決定される。
【0003】
また、固体撮像モジュールの動作周期は、各種の規格や蛍光灯の発光周期に基づいて、通常は30フレーム/秒(Fps)、20Fps、5Fps等のフレームレートに規定される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固体撮像モジュールでは、基本クロックの周波数(基本周波数)を使用するユーザ毎(メーカー毎)に設定可能としている。このとき、所望のフレームレートを得るために、1水平走査期間のクロック数と1垂直走査期間内の水平走査数をユーザ毎に固体撮像モジュールに内蔵されたレジスタ等に設定する必要がある。
【0005】
また、機械的なシャッタを採用した固体撮像モジュールでは、モジュール毎に機械的な動作の遅れ時間に対するキャリブレーションが必要となる。しかしながら、補正する際、キャリブレーション時に用いた基本クロックを基準とした補正値しか設定できず、エンドユーザ毎に補正値を調整する必要がある。
【0006】
本発明は、各種制御の調整を簡易化した固体撮像モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、半導体ベースの光電変換素子を含む撮像素子と、撮像条件を決定する演算手段を含み、前記撮像条件に基づいて前記撮像素子を制御する制御部と、を備えた固体撮像モジュールであって、前記制御部は、基本クロックの周波数に対応する値を設定及び保持するレジスタをさらに備え、前記演算手段は、前記レジスタに保持された値に基づいて撮像条件を演算することを特徴とする。
【0008】
ここで、前記レジスタはさらにフレームレートに対応する値を設定及び保持するものであり、前記演算手段は、前記レジスタに保持された値に基づいて1垂直走査期間当たりの水平走査数を算出することが好適である。また、前記レジスタはさらに機械的シャッタの遅れ時間に対応する値を設定及び保持するものであり、前記演算手段は、前記レジスタに保持された値に基づいて機械的シャッタの遅れ時間当たりの水平走査数を算出することが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、固体撮像モジュールに対する各種制御の調整を簡易化し、操作性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施の形態における固体撮像モジュール100は、図1に示すように、固体撮像素子10、制御部12、設定入力部14、出力処理部16及び機械式シャッタ機構18を備えて構成される。
【0011】
本実施の形態では、固体撮像素子10はフレーム転送方式のCCD固体撮像素子としている。固体撮像素子10は、図2に示すように、撮像部10i、蓄積部10s、水平転送部10h及び出力部10dを含んで構成される。
【0012】
撮像部10iは、垂直方向に互いに平行に配置された複数の垂直シフトレジスタを備える。各垂直シフトレジスタの各ビットは受光画素を構成し、撮像時には外部から入射される光の強度に対応して生成される情報電荷を蓄積する。撮像部10iには、各受光画素に対応付けて赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルタをモザイク状に配置することによってカラー画像の撮像を行うことができる。転送時には、フレームクロックパルス発生部から転送電極に印加される垂直クロックパルスφiを受けて、各画素に蓄積された情報電荷が蓄積部10sに向けて転送される。蓄積部10sは、撮像部10iの各垂直シフトレジスタと連続するように互いに平行に配置された垂直シフトレジスタを備える。蓄積部10sは、垂直クロックパルス発生部から転送電極に印加される垂直クロックパルスφiを受けて、撮像部10iから転送されてくる情報電荷を蓄積すると共に垂直方向へ転送する。水平転送部10hは、蓄積部10sの各垂直シフトレジスタの出力側に配置された水平シフトレジスタを備える。水平転送部10hは、水平クロックパルス発生部から水平転送電極へ印加される水平クロックパルスφhを受けて蓄積部10sから転送出力される情報電荷を出力部10dへ順次転送する。出力部10dは、水平転送部10hの出力側に配置された容量を備える。出力部10dは、リセットクロックパルス発生部及びサンプリングクロックパルス発生部からリセットクロックパルスφr及びサンプリングクロックパルスφsを受けて、水平転送部10hから転送出力される情報電荷をこの容量に蓄積し、蓄積された電荷量に応じた電圧に変換して出力信号として出力する。この出力信号の電圧値が画像信号となる。
【0013】
制御部12は、演算手段12aを含んで構成され、設定入力部14によって内蔵レジスタ12bにセットされたパラメータに基づいて各種の撮像条件を算出し、撮像条件に応じてクロックパルスφi,φh,φr,φsを生成して固体撮像素子10へ出力する。これによって、制御部12は、固体撮像素子10での撮像時間や情報電荷の転送時間を制御する。また、制御部12は、機械式シャッタ機構18へシャッタ信号を出力することによって、固体撮像素子10への光の入射と遮断を制御する。演算手段12aを用いた撮像条件の算出処理については後述する。
【0014】
設定入力部14は、固体撮像モジュール100に対するユーザからの設定値等に入力を受け付ける手段である。設定入力部14は、例えば、カメラに設けられたディスプレイと入力ボタンの組み合わせを含んで構成される。また、液晶等のディスプレイを兼ねたタッチパネルを含んで構成されてもよい。ユーザは、設定入力部14を用いて、固体撮像モジュール100の制御部12に対する撮像条件等の設定を行う。
【0015】
出力処理部16は、固体撮像素子10の出力部10dからの出力信号を受けて、出力信号に対して増幅、色補正、スミア除去、Γ補正等の信号処理を施して画像信号として出力する。
【0016】
機械式シャッタ機構18は、固体撮像素子10の撮像部10iの受光面側に設けられる。機械式シャッタ機構18は、制御部12からのシャッタ信号を受けて、シャッタを機械的に動作させて撮像部10iへの外部からの光の入射と遮断を制御する。
【0017】
以下、制御部12の演算手段12aにおける撮像条件の算出処理について説明する。演算手段12aは、制御部12に内蔵されているレジスタ12bにセットされている基本クロックCLKの単位時間(通常1msec)当たりの基本クロック数NCLKに基づいて撮像条件を算出する。基本クロック数NCLKは、設定入力部14を用いてユーザによってレジスタ12bに予め設定される。
【0018】
なお、基本クロックCLKとは、固体撮像モジュール100における処理の基準となる所定の周期を有するクロック信号であり、例えば、ユーザの使用状況に応じて13.5MHz、5MHz、3MHz等に設定される。基本クロック数NCLKは、基本クロックCLKの周波数が13.5MHzである場合にはそれに対応する値として13500に設定され、5MHzである場合にはそれに対応する値として5000に設定され、3MHzの場合にはそれに対応する値として3000に設定される。
【0019】
また、本実施の形態では、単位時間(通常1sec)当たりの撮像フレーム数NFL及び機械的シャッタの機械遅れ時間TDLYもレジスタ12bに設定される。撮像フレーム数NFL及び機械遅れ時間TDLYは、設定入力部14を用いてユーザによってレジスタ12bに予め設定される。撮像フレーム数NFLは、蛍光灯の発光周期に影響を受けて撮像画面にフリッカーが生じない値に設定されることが好ましく、通常は30Fps(Flame Per Sec)、20Fps、15Fps等に対応した値として設定される。機械的シャッタの機械遅れ時間TDLYは、実際のシャッタ動作の遅れに対して補償したい時間(キャリブレーション時間)をそのまま設定する。例えば、シャッタ動作の遅れを2.2msecだけ補償したい場合には、それに対応する機械遅れ時間TDLYとして2.2msecをレジスタに設定する。
【0020】
演算手段12aは、レジスタ12bに設定及び保持されている基本クロック数NCLK及び撮像フレーム数NFLを読み出し、1垂直走査期間当たりの水平走査数、機械的シャッタのキャリブレーション値等の撮像条件を算出する。例えば、1垂直走査期間当たりの水平走査数Nは、数式(1)に基づいて算出することができる。ここで、NHCLKは1水平期間当たりの基本クロックCLKのクロック数であり、システムによって決まる値であり、レジスタ12bに設定される。なお、撮像フレーム数NFLが秒単位で設定されている場合には、基本クロック数NCLKに合わせて例えばmsec単位に換算して計算を行う。
【0021】
=NCLK/(NFL×NHCLK)・・・・(1)
【0022】
また、機械遅れ時間TDLY当たりの水平走査数を示す機械的シャッタのキャリブレーション値Vは、数式(2)に基づいて算出することができる。
【0023】
=NCLK×TDLY/NHCLK・・・・(2)
【0024】
制御部12は、演算手段12aにおいて算出された撮像条件(ここでは、1垂直走査期間当たりの水平走査数N)に基づいて、撮像条件に応じてクロックパルスφi,φh,φr,φsを生成して固体撮像素子10へ出力する。これにより、固体撮像素子10からの出力信号について水平同期及び垂直同期をとることができる。また、制御部12は、演算手段12aにおいて算出された撮像条件(ここでは、機械的シャッタのキャリブレーション値V)に基づいて、シャッタ信号の出力タイミングを補正して、機械式シャッタ機構18へシャッタ信号を出力する。
【0025】
以上のように、本実施の形態では、基本クロックCLKの単位時間(通常1msec)当たりの基本クロック数NCLKをレジスタに設定することによって、1垂直走査期間内の水平走査数Nを単位時間(通常1sec)当たりの撮像フレーム数NFLを用いて算出することができ、ユーザは1垂直走査期間内の水平走査数N自体をレジスタ等に設定する必要がなくなる。また、機械的な動作遅れ時間のキャリブレーション値Vを機械的シャッタの機械遅れ時間TDLYを用いて算出することができ、ユーザは、基本クロックCLKを基準とした補正値ではなく、実際に補償したい時間を設定するのみでよい。このように、固体撮像モジュールにおける撮像の制御の調整を簡易化及び容易化することができる。
【0026】
なお、本実施の形態においては、1水平走査期間当たりの基本クロックCLKのクロックNCLKをレジスタ12bに設定する構成としたが、演算手段12aによってNCLKを算出する構成としてもよい。例えば、固体撮像モジュールで用いられる固体撮像素子の垂直方向の画素数と水平方向の画素数とをレジスタ12bに設定及び保存し、レジスタ12bに保持された画素数と単位時間当たりの基本クロックの数NCLKに基づいてNCLKを算出する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態における固体撮像モジュールの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態における固体撮像素子の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
10 固体撮像素子、10i 撮像部、10d 出力部、10h 水平転送部、10s 蓄積部、12 制御部、12a 演算手段、12b レジスタ、14 設定入力部、16 出力処理部、18 機械式シャッタ機構、100 固体撮像モジュール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ベースの光電変換素子を含む撮像素子と、
撮像条件を決定する演算手段を含み、前記撮像条件に基づいて前記撮像素子を制御する制御部と、を備えた固体撮像モジュールであって、
前記制御部は、基本クロックの周波数に対応する値を設定及び保持するレジスタをさらに備え、
前記演算手段は、前記レジスタに保持された値に基づいて撮像条件を演算することを特徴とする固体撮像モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の固体撮像モジュールであって、
前記レジスタはさらにフレームレートに対応する値を設定及び保持するものであり、
前記演算手段は、前記レジスタに保持された値に基づいて1垂直走査期間当たりの水平走査数を算出することを特徴とする固体撮像モジュール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の固体撮像モジュールであって、
前記レジスタはさらに機械的シャッタの遅れ時間に対応する値を設定及び保持するものであり、
前記演算手段は、前記レジスタに保持された値に基づいて機械的シャッタの遅れ時間当たりの水平走査数を算出することを特徴とする固体撮像モジュール。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−28689(P2008−28689A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−198861(P2006−198861)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(506227884)三洋半導体株式会社 (1,155)
【Fターム(参考)】