説明

固体撮像装置

【課題】 簡単且つ低コストの構成で固体撮像素子の撮像面(受光面)へのα線の入射を効果的に抑制できる固体撮像装置を提供する。
【解決手段】
撮像面Sを有する固体撮像素子10と、撮像面Sの全面を覆うガラスカバー40と、撮像面Sとガラスカバー40の間に形成された、ガラスカバー40を固体撮像素子10に接着する透明な接着剤膜30とを備える。撮像面Sの全面が接着剤膜30によって覆われていて、撮像面Sとガラスカバー40の間にはキャビティは存在しない。撮像面Sを基準とする接着剤膜30の厚さは、30μm〜100μmの範囲に設定されている。撮像面S上にマイクロレンズアレイ18が形成されている場合は、接着剤膜30の屈折率を1.4以下とするのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像装置に関し、さらに言えば、固体撮像素子をチップサイズパッケージ(Chip-Size Package,CSP)に実装して構成されると共に、簡単な構成でα線の入射による信号エラーを回避して画質を改善することができる固体撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像装置は近年、いっそうの小型化・高機能化が進んでいるが、それに伴って携帯電話機、携帯型コンピュータ等の携帯機器、さらには自動車等への搭載が進んでおり、利用分野がますます広がりつつある。
【0003】
固体撮像装置は一般に、透明カバー(ガラスカバー)を含むパッケージ中にチップ状の固体撮像素子を封止して構成され、前記透明カバーから入射した光が前記固体撮像素子の撮像面(受光面)に照射されるようにしている。前記固体撮像素子の電極群は、当該パッケージに設けられた外部電極群に電気的に接続されており、入射光に応じて前記固体撮像素子で生成された電気信号は、前記外部電極群を通じて当該固体撮像装置の外部に導出される。
【0004】
固体撮像装置には、固体撮像素子の撮像面と透明カバーの間に微小の隙間(キャビティ)が存在するものと、存在しないものとがある。キャビティを持つ固体撮像装置は、屈折率の問題がなくなるため好ましいが、透明カバーを含むパッケージ(キャビティ)を気密封止する必要がある、エアギャップ内の気体の膨脹・収縮により気密性が低下する恐れがある、等の難点がある。
【0005】
他方、キャビティを持たない固体撮像装置は、気密封止は不要であるが、撮像面と透明カバーの間に配置される材料(中間材料)の選定に注意が必要である。例えば、中間材料の屈折率をできるだけ低くして空気の屈折率(n=1)に近づける必要がある。また、中間材料と固体撮像素子を構成するシリコンや二酸化シリコンと透明カバーとの熱膨張率の違いに起因する破損を抑制するため、中間材料の熱膨張率や、中間材料と透明カバーとの接着性について考慮しなければならない。中間材料の吸湿性が高いと、固体撮像素子が湿気によって悪影響を受けやすいため、吸湿性についても注意が必要である。
【0006】
ところで、固体撮像装置では、従来より、透明カバーを形成するガラス中に含まれる微量の放射線源(ウラン、トリウム等)から放射されるα線により、電気信号にエラーが生じて画質が劣化することが知られている。そこで、このα線に起因するエラーを防止して画質を改善するため、以前から種々の技術が開発されている。
【0007】
例えば、特許文献1(特開平6−120460号公報)には、上記構成の固体撮像装置において、カバーガラスの一面を放射線吸収材を注入した層で覆うことにより、固体撮像素子の撮像面へのα線の入射を抑制する技術が開示されている。その放射線吸収材注入層としては、鉛を高真空中で加熱気化させて、硼珪酸アルカリ土類ガラス製のカバーガラス中に鉛をイオン注入した層が挙げられている(段落0015〜0019、図1)。
【0008】
特許文献2(特開平6−120463号公報)には、カバーガラスだけではなくセラミックパッケージからもα線が放射されることを考慮し、上記構成の固体撮像装置において、セラミックパッケージの中空部の内壁を放射線吸収膜で覆うことにより、固体撮像素子の撮像面へのα線の入射を抑制する技術が開示されている。その放射線吸収膜としては、鉛をイオン注入して生成される鉛膜が挙げられている(段落0019〜0023、図1)。
【0009】
特許文献3(特開2002−373977号公報)には、光学フィルタを持つ固体撮像装置を小型化・低コスト化するために、上記構成の固体撮像装置において、色ガラスフィルタ(赤外線吸収フィルタ)でパッケージの開口部を塞ぐことにより、カバーガラスと光学フィルタを兼用し、さらに、前記赤外線吸収フィルタの内面(固体撮像素子側の面)に光学ローパスフィルタを接着するという構成が開示されている。同文献には、前記赤外線吸収フィルタの内面にα線遮蔽ガラスを接着して、前記光学ローパスフィルタから放射されるα線が撮像面に入射するのを防止する構成も開示されている。α線遮蔽ガラスの具体例としては、ホーヤ製CG−1が挙げられている(段落0023〜0024、図4)。
【0010】
特許文献4(特開2005−056999号公報)には、カバーガラスと固体撮像素子の撮像面(受光面)との間に空隙を設けると共に、前記カバーガラスとして低α線ガラス(α線の放射量が少ないガラス)を用いた構成が開示されている。この構成は、前記カバーガラスから放射されるα線の量を少なくすることにより、固体撮像素子の撮像面へのα線の入射を抑制するものである。低α線ガラスの例としては、CG−1(登録商標)が挙げられている。前記カバーガラスと前記撮像面(受光面)との間の距離は、ゴミによる悪影響を避けるために、スペーサを用いて所定の値に設定される(段落0011〜0019、0049、0060、図1)。
【特許文献1】特開平6−120460号公報
【特許文献2】特開平6−120463号公報
【特許文献3】特開2002−373977号公報
【特許文献4】特開2005−056999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上述した特許文献1に開示された技術では、カバーガラスの一面を覆う放射線吸収材を注入した層を形成するために、鉛を高真空中で加熱気化させて硼珪酸アルカリ土類ガラス製のカバーガラス中にイオン注入する、といったプロセスが必要である。したがって、当該層の形成プロセスが必要であるだけでなく、そのプロセスコストも高いので、固体撮像装置の製造コストが増加してしまうという難点がある。
【0012】
上述した特許文献2に開示された技術では、真空蒸着法で放射線吸収膜を形成するので、特許文献1に開示された技術よりもプロセスコストは低いが、放射線吸収膜の形成プロセスが必要であることは変わりがない。したがって、やはり固体撮像装置の製造コストが増加してしまうという難点がある。
【0013】
上述した特許文献3に開示された技術では、赤外線吸収フィルタ(カバーガラス)の内面にα線遮蔽ガラスを接着するので、α線遮蔽ガラスそれ自体のコストと接着プロセスのコストが必要である。したがって、やはり固体撮像装置の製造コストが増加してしまうという難点がある。
【0014】
上述した特許文献4に開示された技術では、カバーガラスとして低α線ガラスを用いており、別個の膜や部材を使用しないので、上述した特許文献1〜3に開示された技術に比べてプロセスコストは低下する。しかし、低α線ガラスそれ自体のコストが問題になる。
【0015】
本発明は、以上述べたような従来技術を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、簡単且つ低コストの構成で固体撮像素子の撮像面(受光面)へのα線の入射を効果的に抑制することができる固体撮像装置を提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的は、高画質で高信頼性の固体撮像装置を提供することにある。
【0017】
ここに明記しない本発明の他の目的は、以下の説明及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(1) 本発明の第1の観点による固体撮像装置は、
撮像面を有する固体撮像素子と、
前記撮像面の全面を覆う透明カバーと、
前記撮像面と前記透明カバーの間に形成された、前記透明カバーを前記固体撮像素子に接着する透明な接着剤膜とを備え、
前記撮像面の全面が前記接着剤膜によって覆われていて、前記撮像面と前記透明カバーの間にはキャビティが存在せず、
前記撮像面を基準とする前記接着剤膜の厚さが30μm〜100μmの範囲に設定されていることを特徴とするものである。
【0019】
本発明の第1の観点による固体撮像装置では、前記透明カバーを前記固体撮像素子に接着する前記接着剤膜の、前記撮像面を基準とする厚さが、30μm〜100μmの範囲に設定されており、この種の接着剤膜の通常の厚さ(5μm〜15μm程度)よりかなり大きい。つまり、接着剤膜は通常、できるだけ薄く設定されるものであるが、本発明はそれとは逆にかなり厚くしている。このため、前記透明カバーから放射されるα線は、前記接着剤膜それ自体によって阻止され、前記撮像面まで到達しない。つまり、上述したようなα線を吸収あるいは遮蔽する材料、すなわち特許文献1の放射線吸収材、特許文献2の放射線吸収膜、特許文献3のα線遮蔽ガラスや特許文献4の低α線ガラスを使用することなく、前記接着剤膜によって前記撮像面(受光面)へのα線の入射を防止することができる。
【0020】
また、前記撮像面の全面が前記接着剤膜によって覆われていて、前記撮像面と前記透明カバーの間にはキャビティが存在しないので、前記接着剤膜の厚さは、マイクロフィルタ、やマイクロレンズに起因する変化を除き、前記撮像面の全面にわたってほぼ同一である。
【0021】
さらに、前記撮像面と前記透明カバーの間のギャップが前記接着剤膜それ自体によって充填されているので、そのギャップを充填する材料を別個に使用することも不要である。このため、当該固体撮像装置は、前記固体撮像素子と前記透明カバーを前記接着剤膜で接着するという簡単な構成であり、したがって製造コストも低くてすむ。
【0022】
よって、簡単且つ低コストの構成で、前記固体撮像素子の前記撮像面(受光面)へのα線の入射を効果的に抑制することができる。その結果、高画質で高信頼性の固体撮像装置が得られる。
【0023】
前記接着剤膜の厚さを30μm〜100μmの範囲に設定したのは、前記接着剤膜の厚さが30μm未満であると、所望のα線入射防止効果が得られない恐れがあるからである。また、α線入射防止効果だけを考えれば、前記接着剤膜の厚さは、30μm以上で大きければ大きいほどよいことになるが、前記接着剤膜の吸湿性に起因して湿気が前記固体撮像素子に入りやすくなるため、大きすぎると耐湿性の低下が問題になる。前記接着剤膜の厚さが100μmを越えると、耐湿性の低下が無視できなくなるため、100μm以下とする必要がある。
【0024】
前記透明カバーの外面や内面あるいは内部に存在するキズや欠陥は、前記固体撮像素子から生成される画像(電気信号)に影響を与えるが、前記接着剤膜の厚さを30μm〜100μmの範囲に設定しているので、前記撮像面と前記透明カバーの間のギャップも30μm〜100μmの範囲になる。したがって、前記キズや欠陥が前記画像(電気信号)に与える影響は緩和ないし解消される。
【0025】
前記接着剤膜としては、前記固体撮像素子が撮像可能な光に対して透明であって、前記透明カバーを前記固体撮像素子に接着することができる接着剤であれば、任意のものを使用することができるが、例えば、協立化学産業株式会社製の変成アクリレート系接着剤である「ワールドロック7702」、「ワールドロック7710」(いずれも商品名)が好適である。
【0026】
(2) 本発明の第1の観点による固体撮像装置の好ましい例では、前記撮像面上に形成され且つ前記接着剤膜中に埋め込まれたマイクロレンズアレイ(microlens array)が形成され、前記接着剤膜の屈折率が1.4以下とされる。一般に、マイクロレンズアレイは、固体撮像装置の小型化に伴う前記固体撮像素子の受光素子領域の縮小を補償するために設けられるものであり、その屈折率は通常、1.5〜1.6である。そこで、前記接着剤膜の屈折率を1.4以下とすることにより、マイクロレンズアレイの光収束作用を有効利用することができる。
【0027】
(3) 本発明の第1の観点による固体撮像装置の他の好ましい例では、前記接着剤膜が紫外光硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、または紫外光硬化・熱硬化併用型接着剤を硬化させたものとされる。当該接着剤の成膜・硬化が容易であるからである。
【0028】
(4) 本発明の第2の観点による固体撮像装置は、
撮像面を有する固体撮像素子と、
前記撮像面上にその全面を覆うように形成された透明なSOG(Spin-On-Glass)材料膜と、
前記撮像面上に形成され且つ前記SOG材料膜中に埋め込まれたマイクロレンズアレイと、
前記撮像面の全面を覆う透明カバーと、
前記SOG材料膜と前記透明カバーの間に形成された、前記透明カバーを前記SOG材料膜に接着する透明な接着剤膜とを備え、
前記撮像面の全面が前記SOG材料と前記接着剤膜によって覆われていて、前記撮像面と前記透明カバーの間にはキャビティが存在せず、
前記SOG材料の表面を基準とする前記接着剤膜の厚さが30μm〜100μmの範囲に設定されていることを特徴とするものである。
【0029】
本発明の第2の観点による固体撮像装置では、本発明の第1の観点による固体撮像装置と同様に、前記透明カバーを前記SOG材料膜に接着する前記接着剤膜の、前記SOG材料膜の表面を基準とする厚さが、30μm〜100μmの範囲に設定されているので、前記透明カバーから放射されるα線の前記撮像面への到達は、前記接着剤膜それ自体によって防止される。つまり、上述したようなα線を吸収あるいは遮蔽する材料、すなわち特許文献1の放射線吸収材、特許文献2の放射線吸収膜、特許文献3のα線遮蔽ガラスや特許文献4の低α線ガラスを使用することなく、前記接着剤膜によって前記撮像面(受光面)へのα線の入射を防止することができる。
【0030】
また、前記撮像面の全面が前記SOG材料膜と前記接着剤膜によって覆われていて、前記撮像面と前記透明カバーの間にはキャビティが存在しないので、前記接着剤膜の厚さは前記撮像面の全面にわたってほぼ同一である。
【0031】
さらに、前記撮像面と前記透明カバーの間のギャップが前記SOG材料膜と前記接着剤膜それ自体によって充填されているので、そのギャップを充填する材料を別個に使用することも不要である。このため、当該固体撮像装置は、前記固体撮像素子上の前記SOG材料膜と前記透明カバーを前記接着剤膜で接着するという簡単な構成であり、したがって製造コストも低くてすむ。
【0032】
よって、簡単且つ低コストの構成で、前記固体撮像素子の前記撮像面(受光面)へのα線の入射を効果的に抑制することができる。その結果、高画質で高信頼性の固体撮像装置が得られる。
【0033】
本発明の第2の観点による固体撮像装置は、前記撮像面上に形成された前記マイクロレンズアレイを前記SOG材料膜で覆っているので、前記SOG材料膜の屈折率を適当に選定する(たとえば1.4以下とする)ことにより、前記マイクロレンズアレイの光収束作用を有効利用することができる。このため、前記接着剤膜の屈折率が前記マイクロレンズアレイの屈折率と同等であってもよい(たとえば1.4を越えていて、1.5程度であってもよい)という利点がある。また、前記SOG材料膜の表面が極めて平坦になるので、前記接着剤膜の形成作業が容易であるという利点もある。
【0034】
前記接着剤膜の厚さを30μm〜100μmの範囲に設定した理由は、本発明の第1の観点による固体撮像装置の場合と同じである。
【0035】
前記接着剤膜としては、透明であって、前記透明カバーを前記固体撮像素子に接着することができる接着剤であれば、任意のものを使用することができるが、好ましくは、光透過率が高く(可視光の透過率が90%以上のものが好ましい)、光屈折率が低く(光屈折率が1.2〜1.39程度のものが好ましい)、さらに大気中の水分を透過しにくいもの(撥水機能を持つものが好ましい)を使用するのが好ましい。
【0036】
前記SOG材料膜としては、透明であって、前記透明カバーを前記固体撮像素子に接着することができるSOG材料の膜であれば、任意のものを使用することができるが、好ましくは、有機SOG(例えば日立化成工業株式会社製の「HSRF−R7」(商品名)など)の膜を使用するのが好ましい。しかし、本発明の第1の観点による固体撮像装置で使用した紫外光硬化型接着剤である協立化学産業株式会社製の「ワールドロック7702」や「ワールドロック7710」の膜を使用することも可能である。
【0037】
(5) 本発明の第2の観点による固体撮像装置の好ましい例では、前記SOG材料膜の屈折率が1.4以下とされる。この例では、前記SOG材料膜によってマイクロレンズアレイの光収束作用を有効利用することができるので、前記接着剤膜の屈折率が1.4を越えていてもよいという利点がある。
【0038】
(6) 本発明の第2の観点による固体撮像装置の他の好ましい例では、前記SOG材料膜の厚さが0.3μm〜2.5μmの範囲に設定される。前記SOG材料膜の厚さが0.3μm未満であると、前記マイクロレンズアレイを埋め込むことができない恐れがあるからである。前記SOG材料膜の厚さが2.5μmを越えると、前記SOG材料膜にクラックが生じやすくなるからであり、また、当該固体撮像装置によって生成される画像に欠陥が生じやすくなるなるからである。
【発明の効果】
【0039】
本発明の第1および第2の観点による固体撮像装置では、(a)簡単且つ低コストの構成で固体撮像素子の撮像面(受光面)へのα線の入射を効果的に抑制することができる、(b)高画質で高信頼性の固体撮像装置が得られる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0041】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る固体撮像装置1の概略構成を示す要部断面図である。
【0042】
(第1実施形態の固体撮像装置の構成)
この固体撮像装置1は、図1に示すように、透明なガラスカバー40を含むチップサイズパッケージ(CSP)中にチップ状の固体撮像素子10を封止して構成されている。この固体撮像装置1は、固体撮像素子10の表面にある撮像面Sとガラスカバー40との間にキャビティを有していない。
【0043】
固体撮像素子10は、複数の受光素子領域21がその表面領域に形成された単結晶シリコン(Si)基板11を備えている。シリコン基板11の表面には、複数の受光素子領域21が形成されており、それらの受光素子領域21の各々には受光素子(図示せず)が形成されている。シリコン基板11の全表面は、透明な層間絶縁膜12で覆われており、その層間絶縁膜12の上には透明な層間絶縁膜13が形成されている。
【0044】
層間絶縁膜13の表面は、固体撮像素子10の撮像面Sであって、そこには、R(赤)、G(緑)、B(青)三色用の(これら三色に黒色を加えた四色用でもよい)マイクロカラーフィルタ17がアレイ状に形成されている。マイクロカラーフィルタ17の上には、同じくアレイ状に配置された複数のマイクロレンズ18a、すなわちマイクロレンズアレイ18が形成されている。これらのマイクロレンズ18aは、撮像面S上において、マイクロカラーフィルタ17のR、G、B各色の要素に対して一つづつ形成されている。マイクロレンズ18aおよびマイクロカラーフィルタ17の各要素は、層間絶縁膜12と13を介して、シリコン基板11中の対応する受光素子領域21にそれぞれ重なり合うように配置されている。
【0045】
R、G、B三色用の三つの隣接する受光素子領域21と、それらと重なり合ったマイクロカラーフィルタ17の三つの要素と三つのマイクロレンズ18aが、一つの画素に対応する。
【0046】
固体撮像素子10は、受光素子領域21の全体を包含する矩形の撮像領域を撮像面S上に画定しており、その撮像領域に照射された光を感知するようになっている。外部の被写体からガラスカバー40を透過して固体撮像装置1の内部に入射した光(入射光)は、マイクロレンズアレイ18とマイクロカラーフィルタ17とを介して受光素子領域21の各々に照射され、受光素子領域21毎に受光強度に応じた電気信号に変換される。それら電気信号には、図示しない信号処理回路によって所定の信号処理が施され、前記被写体の画像が再生される。こうして被写体の撮像が行われる。
【0047】
層間絶縁膜12の表面には、受光素子領域21の外周領域(撮像領域の周辺領域)において、受光素子領域21を取り囲むように複数の表面電極15が形成されている。表面電極15は、矩形リング状の前記外周領域のほぼ全体にわたって、所定間隔で配置されている。表面電極15は、各受光素子領域21で受光素子により生成された電気信号を固体撮像装置1の外部に導出するために使用され、シリコン基板11の表面と層間絶縁膜12の内部に形成された引出用配線(図示せず)を介して、対応する受光素子領域21に電気的に接続されている。
【0048】
各表面電極15の周辺部は、層間絶縁膜13によって覆われているが、それ以外の部分は層間絶縁膜13から露出している。つまり、表面電極15が配置されている矩形リング状の領域(表面電極領域)では、各表面電極15の周辺部以外の部分を露出させる透孔が複数個、所定間隔で配置されている。
【0049】
層間絶縁膜13の表面(すなわち撮像面S)には、マイクロレンズ22とマイクロカラーフィルタ17と表面電極15に起因する凹凸が存在している。
【0050】
層間絶縁膜13の表面(撮像面S)には、SOG材料膜は存在せず、当該表面に直接、透明な接着剤膜30が形成されており、層間絶縁膜13の全面を覆っている。層間絶縁膜13の表面(撮像面S)を基準とした接着剤膜30の厚さt1は、マイクロレンズ22とマイクロカラーフィルタ17の厚さ(高さ)の和よりも大きいので、マイクロレンズ22とマイクロカラーフィルタ17は接着剤膜30中に埋め込まれている。また、各表面電極15上で層間絶縁膜13に形成された透孔も、接着剤膜30によって充填されているため、表面電極15も接着剤膜30中に埋め込まれている。したがってマイクロレンズ22とマイクロカラーフィルタ17と表面電極15によって撮像面Sに形成された凹凸は、接着剤膜30中に埋没していて、接着剤膜30の表面は平坦である。
【0051】
透明なガラスカバー40は、接着剤膜30の平坦な表面に載置されている。換言すれば、ガラスカバー40は、厚さt1の接着剤膜30によって層間絶縁膜13の表面(撮像面S)に接着されて、チップ状の固体撮像素子10と一体化されている。ガラスカバー40は、ここでは透明なボロシリケートガラス(B23/SiO2)板の切断片から構成されている。しかし、これ以外のガラスや他の透明材料を使用してもよいことは言うまでもない。
【0052】
接着剤膜30の厚さt1は、ガラスカバー40に含まれる放射性物質(例えば、ウラニウムや放射性同位元素など)から放射されるα線が受光素子領域21に入射するのを防止するため、30μm〜100μmの範囲の任意の値に設定されている。厚さt1をこの範囲に限定したのは、本発明者の実験によれば、接着剤膜30の厚さが30μm未満であると所望のα線入射防止効果が得られない恐れがあるからである。また、α線入射防止効果だけを考えれば、接着剤膜30の厚さは、30μm以上で大きければ大きいほどよいことになるが、接着剤膜30の吸湿性に起因して湿気が固体撮像素子10の内部に入りやすくなるため、大きすぎると耐湿性の低下が問題になってくる。本発明者の実験によれば、接着剤膜30の厚さが100μmを越えると、耐湿性の低下が無視できなくなるため、100μm以下とする必要がある。
【0053】
また、ガラスカバー40の外面や内面あるいは内部に存在するキズや欠陥は、固体撮像素子10から生成される画像(電気信号)に影響を与えるが、接着剤膜30の厚さt1を30μm〜100μmの範囲に設定することにより、撮像面Sと透明カバー40の間のギャップも30μm〜100μmの範囲になるから、前記キズや欠陥による影響が緩和ないし解消されることも判明している。
【0054】
接着剤膜30に使用される接着剤としては、例えば、協立化学産業株式会社製の紫外光硬化型接着剤「ワールドロック7702」または「ワールドロック7710」が好適に使用できる。これらの接着剤は、変性アクリレート系の流動体であって、スピンコーティング等によって撮像面Sに塗布した後、紫外光を照射して硬化させることにより、接着剤膜30を得ることができる。「ワールドロック7702」と「ワールドロック7710」の硬化後の屈折率nは、それぞれ、約1.38、約1.40である。
【0055】
各表面電極15の直下には、シリコン基板11と層間絶縁膜12を貫通する貫通孔14が形成されている。これらの貫通孔14は、各表面電極15をシリコン基板11の裏面に引き出すためのものである。これら貫通孔14の各々の内壁は、二酸化シリコン(SiO2)膜16bで覆われている。シリコン基板11の裏面は、貫通孔14の開口部を除いてSiO2膜16aで覆われている。SiO2膜16aの上には、所定形状にパターン化された配線膜19が形成されている。各配線膜19は、対応する貫通孔14の近傍に配置されており、その貫通孔14の内部に延在して対応する表面電極15(の裏面)に接触している。このため、各配線膜19の裏側では、対応する貫通孔14の内部に窪みが形成されている。
【0056】
各配線膜19の上には、パターン化された外部電極20が形成されている。各外部電極は、対応する貫通孔14の内部に存在する窪みを充填している。シリコン基板11の表面側にある表面電極15の各々は、こうしてシリコン基板111の裏側にある対応する外部電極20に電気的に接続されている。配線膜19と外部電極20の貫通孔14の内部にある部分は、表面電極15と外部電極20とをシリコン基板11を貫通して電気的に相互接続する「貫通電極」を構成している。
【0057】
各配線膜19の外部電極20から露出している部分は、シリコン基板111の裏側において所望の外部電極20同士を接続する配線として使用される。そのような配線としての機能が不要であれば、各配線膜19のパターンと外部電極20のパターンとは同一とすればよい。
【0058】
固体撮像素子10と接着剤膜30とガラスカバー40とからなる積層体の側面全体は、CSPの一部を構成する絶縁性合成樹脂(遮光性を持つ)(図示せず)によって覆われている。しかし、絶縁性合成樹脂で覆わなくてもよい。
【0059】
以上のような構成を持つ固体撮像装置1では、外部の光は、ガラスカバー40を介して固体撮像装置1の内部に入り、さらに接着剤膜30とマイクロレンズ18aとマイクロカラーフィルタ17を通過して、各受光素子領域21に入射する。この入射光は、各受光素子領域23において光電変換され、入射光の強度に応じた電気信号が生成される。これらの電気信号は、各受光素子領域21に隣接して設けられた増幅素子(図示せず)によって増幅された後、図示しない引出用配線を介して表面電極15まで送られる。これらの電気信号は、さらに、各表面電極15に電気的に接続された配線膜19と外部電極20を介して、固体撮像装置1の裏面まで導出される。
【0060】
(第1実施形態の固体撮像装置の製造方法)
次に、図2〜図10を参照しながら、上記構成を持つ固体撮像装置1の製造方法について説明する。
【0061】
以下に説明する製造方法の各工程は、いずれもウェハーレベルで実行されるものであり、これらウェハープロセスの最終工程では、図10に示すように、シリコンウェハー11A上にマトリックス状に配置された複数の撮像装置部2が同時に形成される。各々の撮像装置部2は、上述した構成の固体撮像装置1が形成される領域である。その後、碁盤状に設定された複数のスクライブライン53に沿ってシリコンウェハー11Aのダイシングを行い、各撮像装置部2を相互に分離する。こうして、図1に示す構成の固体撮像装置1が製造される。
【0062】
まず最初に、公知の方法によって、シリコンウェハー11A上に図2に示す構成を持つ固体撮像素子10すなわち撮像装置部2を複数個形成する。これらの撮像装置部2は、所定の試験を行って良品であることが確認されたものである。図を簡単化するため、図2では一つの撮像装置部2の要部のみを示しているが、実際は、複数の撮像装置部2がマトリックス状にシリコンウェーハ11A上に配置されている。
【0063】
次に、図3に示すように、シリコンウェーハ11Aの表面、正確に言えば層間絶縁膜13の表面(撮像面S)に、接着剤の塗膜30aを形成する。この工程は、大気中で室温にて流動状の接着剤をスピンコーティング法(スプレー法でもよい)により塗布することで行う。こうして、層間絶縁膜13の表面に接着剤の塗膜30aが形成される。この時、塗膜30aの表面は極めて平坦になる。撮像面Sを基準とする塗膜30aの厚さt1’は、硬化後の厚さ(接着剤膜30の厚さ)t1が30μm〜100μmの範囲内の所望の値になるように設定する。ここで使用される接着剤としては、例えば、協立化学産業株式会社製の紫外光硬化型接着剤「ワールドロック7702」または「ワールドロック7710」が好適である。
【0064】
次に、図4に示すように、ウェハー状のボロシリケートガラス板40A(これはシリコンウェハー11Aと同じ形状と大きさを持つ)を接着剤の塗膜30aの表面に載せる。その後、塗膜30aに所定波長の紫外光を所定強度(例えば2000mJ/cm2)で照射して塗膜30aを硬化させると、ガラス板40Aは硬化した塗膜30a(すなわち接着剤膜30)によってシリコンウェーハ11Aの表面に接合される。この時、硬化した塗膜30aすなわち接着剤膜30の厚さt1は、30μm〜100μmの範囲内の所望の値になる。
【0065】
このようにして、ガラスカバー40を形成するガラス板40Aの接合が終了すると、続いて、シリコンウェハー11Aと接着剤膜30とガラス板40Aからなる積層体を、適当な粘着剤を用いてハンドリング用ホルダ(図示せず)に取り付ける。粘着剤を塗布する面はガラス板40Aの表面とする。これは、次に行われるシリコンウェハー11Aの加工(処理)を容易にするためである。ハンドリング用ホルダは、シリコンウェハー11Aよりも少し大きい。
【0066】
そして、シリコンウェハー11Aの全体を薄くするために、所定厚さ(例えば100μm〜50μm)になるまでシリコンウェハー11Aをその裏面側から除去する。この工程は、CMP(Chemical Mechanical Polishing)や公知のドライあるいはウェットエッチングにより行うことができる。機械的研磨法を併用してもよい。この時の状態は図4に示すようになる。
【0067】
次に、薄くされたシリコンウェハー11Aの裏面に、パターン化されたレジスト膜を形成してから、そのレジスト膜をマスク51として、シリコンウェハー11Aをその裏面側から選択的にエッチングする。続いて、同じマスク51を用いて、層間絶縁膜12をその裏面側から選択的にエッチングする。その結果、図5に示すように、マスク51の各透孔51Aに対応する位置に、シリコンウェハー11Aと層間絶縁膜12を貫通する貫通孔14が形成される。これらの貫通孔14の形成位置は、各表面電極15の直下(各表面電極15と重なり合う位置)である。各貫通孔14の表面側の一端(図5では上端)は、対応する表面電極15の裏面まで達している。この工程は、RIE(Reactive Ion Etching)、ICE(Inductively Coupled Etching)等のエッチングにより行うことができる。しかし、レーザー加工、陽極酸化等の方法で行ってもよい。
【0068】
マスク51を剥離した後、シリコンウェハー11Aを熱酸化し、図6に示すように、シリコンウェハー11Aの露出面にSiO2膜16a及び16bを形成する。絶縁膜16aは、貫通孔14のある箇所を除いて、シリコンウェハー11Aの裏面全体を覆っている。SiO216bは、貫通孔14の内壁全体を覆っている。
【0069】
次に、図7に示すように、SiO2膜16a及び16bの表面にパターン化された配線膜19を形成する。配線膜19は、シリコンウェハー11Aの裏面の所定箇所だけでなく、貫通孔14の内壁全体をも覆っている。配線膜19は、スパッタリング、メッキ、ペースト等により金属膜を形成した後、その金属膜をパターニングすることにより、形成することができる。例えば、バリヤ層としてのチタン(Ti)膜を形成し、その上に導電材としての銅(Cu)膜を形成して、TiおよびCuの二層膜とする。
【0070】
その後、配線膜19の表面にソルダーレジストを形成し、これをパターン化して、図8に示すようなマスク52とする。そして、そのマスク52を使用して配線膜19の表面に選択的に金属膜を形成し、図9に示すような外部電極20とする。この工程は、例えば、配線膜19のCu膜をシードメタルとしたメッキ法により実施することができる。その後、マスク52を剥離すると、シリコンウェハー11A上に複数の撮像装置部2が完成する。
【0071】
このようにしてシリコンウェハー11A上に複数の撮像装置部2が形成されると、ダイシングブレードを用いて、碁盤状に形成されたスクライブライン53(図10を参照)に沿ってシリコンウェハー11Aのダイシングを行う。切断後に撮像装置部2が分散しないように、シリコンウェハー11Aの裏面に公知のダイシングテープ(図示せず)を貼り付けておく。この動作を繰り返すことにより、ガラス板40Aと接着剤膜30、そして内部に固体撮像素子10が形成されたシリコンウェハー11Aは、当該スクライブライン53に沿って切断される。その結果、シリコンウェハー11A上にある撮像装置部2が相互に分離される。
【0072】
以上のような工程により、図1の構成を持つ固体撮像装置1が複数個、同時に得られる。固体撮像装置1の側面全体をCSPの一部を構成する絶縁性合成樹脂(図示せず)で覆う必要がないのであれば、これで製造工程が終了する。固体撮像装置1の側面全体をCSPの一部を構成する絶縁性合成樹脂(図示せず)で覆う必要があれば、当該絶縁性合成樹脂で被覆することにより、製造工程が終了する。こうしてCSPを備えた固体撮像装置1が得られる。
【0073】
以上、詳述したように、本発明の第1実施形態に係る固体撮像装置1では、ガラスカバー(透明カバー)40を固体撮像素子1に接着する接着剤膜30の、撮像面Sを基準とする厚さt1が、30μm〜100μmの範囲に設定されており、この種の接着剤膜の通常の厚さよりかなり大きい。このため、ガラスカバー40から放射されるα線は、接着剤膜30それ自体によって阻止され、撮像面S(ひいては受光素子領域21)まで到達しない。つまり、背景技術欄で言及したα線を吸収あるいは遮蔽する材料、すなわち特許文献1の放射線吸収材、特許文献2の放射線吸収膜、特許文献3のα線遮蔽ガラスや特許文献4の低α線ガラスを使用することなく、接着剤膜30によって撮像面S(受光面)へのα線の入射を防止することができる。
【0074】
また、撮像面Sの全面が接着剤膜30によって覆われていて、撮像面Sとガラスカバー40の間にはキャビティが存在しないので、接着剤膜30の厚さt1は、マイクロカラーフィルタ17やマイクロレンズ18aに起因する変化を除き、撮像面Sの全面にわたって同一である。
【0075】
さらに、撮像面Sとガラスカバー40の間のギャップが接着剤膜30それ自体によって充填されているので、そのギャップを充填する材料を別個に使用することも不要である。このため、当該固体撮像装置1は、固体撮像素子10とガラスカバー40を接着剤膜30で接着するという簡単な構成であり、したがって製造コストも低くてすむ。
【0076】
よって、簡単且つ低コストの構成で、固体撮像素子10の撮像面Sへのα線の入射を効果的に抑制することができる。その結果、高画質で高信頼性の固体撮像装置1が得られる。
【0077】
なお、上述した固体撮像素子10には、撮像面Sにマイクロレンズアレイ18が形成されているが、マイクロレンズ・アレイ18は省略してもよい。また、上述した固体撮像素子10は、マイクロカラーフィルタ17を含んでいるが、マイクロカラーフィルタ17は省略してもよい。必要に応じて、各外部電極20の上にハンダボール(図示せず)等の導電部材を追加形成してもよい。
【0078】
(第2実施形態)
図11は、本発明の第2実施形態に係る固体撮像装置1Aの概略構成を示す断面図である。
【0079】
本実施形態の固体撮像装置1Aは、撮像面Sと接着剤膜30との間にSOG材料膜31が追加されている点を除いて、上述した第1実施形態に係る固体撮像装置1と同じ構成を有しているので、同一構成の部分については第1実施形態に係る固体撮像装置1と同一符号を付してその説明を省略する。
【0080】
層間絶縁膜13の表面(撮像面S)には、SOG材料膜31が形成されており、当該表面は全体がSOG材料膜31により覆われている。層間絶縁膜13の表面(撮像面S)を基準としたSOG材料膜31の厚さt2は、マイクロレンズ22とマイクロカラーフィルタ17の厚さ(高さ)の和よりも大きいので、マイクロレンズ22とマイクロカラーフィルタ17はSOG材料膜31中に埋め込まれている。また、各表面電極15上で層間絶縁膜13に形成された透孔も、SOG材料膜31によって充填されているため、表面電極15もSOG材料膜31中に埋め込まれている。したがってマイクロレンズ22とマイクロカラーフィルタ17と表面電極15によって撮像面Sに形成された凹凸は、SOG材料膜31中に埋没していて、SOG材料膜31の表面は平坦である。
【0081】
接着剤膜30は、SOG材料膜31の平坦な表面に形成されており、SOG材料膜31の表面全体を覆っている。SOG材料膜31の表面を基準とした接着剤膜30の厚さt1は、上述した第1実施形態に係る固体撮像装置1と同様に、30μm〜100μmの範囲の任意の値に設定されている。
【0082】
透明なガラスカバー40は、接着剤膜30の平坦な表面に載置されている。換言すれば、ガラスカバー40は、厚さt1の接着剤膜30によって層間絶縁膜13の表面(撮像面S)に接着されて、チップ状の固体撮像素子10と一体化されている。ガラスカバー40は、ここでは透明なボロシリケートガラス板の切断片から構成されているが、これ以外のガラスを使用してもよい。
【0083】
SOG材料膜31に使用されるSOG材料としては、例えば、日立化成工業株式会社製の有機SOG材料「HSG−R7」がある。このSOG材料は、RnSi(OR)4-nという化学式で表され、撮像面Sに塗布した後、加熱・焼成して硬化させることにより、SOG材料膜31を得ることができる。「HSG−R7」の硬化後の屈折率nは、約1.36である。しかし、SOG材料膜31用のSOG材料として、上記第1実施形態で使用した紫外光硬化型接着剤である協立化学産業株式会社製の「ワールドロック7702」や「ワールドロック7710」を使用することも可能である。
【0084】
接着剤膜30に使用される接着剤としては、例えば、住友スリーエム株式会社製の熱硬化型接着剤である「HT−2」、「HT−2Z」、「LC−3000」(いずれも商品名)が使用可能である。これらの接着剤は、変性アクリレート系の流動体であって、撮像面Sに塗布した後、加熱して硬化させることにより、接着剤膜30を得ることができる。「HT−2」、「HT−2Z」、「LC−3000」の硬化後の屈折率nは、いずれも約1.48である。
【0085】
本発明の第2実施形態に係る固体撮像装置1Aでは、ガラスカバー40をSOG材料膜31に接着する接着剤膜30の、SOG材料膜31の表面を基準とする厚さt1が、30μm〜100μmの範囲に設定されているので、ガラスカバー40から放射されるα線の撮像面Sへの到達は、接着剤膜30それ自体によって防止される。つまり、背景技術欄で言及したα線を吸収あるいは遮蔽する材料、すなわち特許文献1の放射線吸収材、特許文献2の放射線吸収膜、特許文献3のα線遮蔽ガラスや特許文献4の低α線ガラスを使用することなく、接着剤膜30で撮像面S(受光面)へのα線の入射を防止することができる。
【0086】
また、撮像面Sの全面がSOG材料膜31と接着剤膜30によって覆われていると共に、マイクロカラーフィルタ17とマイクロレンズアレイ18とをSOG材料膜31中に埋め込んでおり、撮像面Sとガラスカバー40の間にはキャビティが存在しないので、接着剤膜30の厚さt1は撮像面Sの全面にわたって同一である。
【0087】
さらに、撮像面Sとガラスカバー40の間のギャップがSOG材料膜31と接着剤膜30それ自体によって充填されているので、そのギャップを充填する材料を別個に使用することも不要である。このため、当該固体撮像装置1Aは、固体撮像素子10上のSOG材料膜31とガラスカバー40を接着剤膜31で接着するという簡単な構成であり、したがって製造コストも低くてすむ。
【0088】
よって、簡単且つ低コストの構成で、固体撮像素子10の撮像面S(受光面)へのα線の入射を効果的に抑制することができる。その結果、高画質で高信頼性の固体撮像装置1Aが得られる。
【0089】
これらの点は第1実施形態に係る固体撮像装置1と同じであるが、第2実施形態に係る固体撮像装置1Aは、撮像面S上に形成されたマイクロカラーフィルタ17とマイクロレンズアレイ18をSOG材料膜31で覆っているので、SOG材料膜31の屈折率を適当に選定する(たとえば1.4以下とする)ことにより、マイクロレンズアレイ18の光収束作用を有効利用することができる。このため、接着剤膜30の屈折率がマイクロレンズアレイ18の屈折率と同等であってもよい(たとえば1.4を越えていてもよい)という利点がある。また、SOG材料膜31の表面が極めて平坦になるので、接着剤膜30の形成作業が容易であるという利点もある。
【0090】
(他の実施形態)
上述した第1および第2の実施形態は本発明を具体化した例を示すものである。したがって、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を外れることなく種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【0091】
例えば、上述した第1実施形態では、前記接着剤膜として紫外光硬化型接着剤を硬化させて形成した膜を使用しているが、熱硬化型接着剤または紫外光硬化・熱硬化併用型接着剤を硬化させて形成した膜としてもよい。また、上述した第2実施形態では、前記接着剤膜として熱硬化型接着剤を硬化させて形成した膜を使用しているが、紫外光硬化型接着剤または紫外光硬化・熱硬化併用型接着剤を硬化させて形成した膜としてもよい。
【0092】
また、透明カバーを接着剤膜を用いて撮像面に接合したものであれば、上述した第1〜第2の実施形態で使用された固体撮像素子の構成とは異なる構成の固体撮像素子も使用可能である。また、外部電極は、必ずしも固体撮像素子(シリコン基板)の裏面に配置されている必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の第1実施形態に係る固体撮像装置の概略構成を示す要部断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る固体撮像装置の製造方法を工程毎に示す部分断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る固体撮像装置の製造方法を工程毎に示す部分断面図で、図2の続きである。
【図4】本発明の第1実施形態に係る固体撮像装置の製造方法を工程毎に示す部分断面図で、図3の続きである。
【図5】本発明の第1実施形態に係る固体撮像装置の製造方法を工程毎に示す部分断面図で、図4の続きである。
【図6】本発明の第1実施形態に係る固体撮像装置の製造方法を工程毎に示す部分断面図で、図5の続きである。
【図7】本発明の第1実施形態に係る固体撮像装置の製造方法を工程毎に示す部分断面図で、図6の続きである。
【図8】本発明の第1実施形態に係る固体撮像装置の製造方法を工程毎に示す部分断面図で、図7の続きである。
【図9】本発明の第1実施形態に係る固体撮像装置の製造方法を工程毎に示す部分断面図で、図8の続きである。
【図10】本発明の第1実施形態に係る固体撮像装置の製造方法において、シリコンウェハー上にマトリックス状に配置された複数の撮像装置部を示す平面図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る固体撮像装置の概略構成を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0094】
1、1A 固体撮像装置
2 撮像装置部
10 固体撮像素子
11 シリコン基板
11A シリコンウェハー
12、13 層間絶縁膜
14 貫通孔
15 表面電極
16a、16b SiO2
17 マイクロカラーフィルタ
18 マイクロレンズアレイ
18a マイクロレンズ
19 配線膜
20 外部電極
30 接着剤膜
30a 接着剤の塗膜
31 SOG材料膜
40 ガラスカバー
40A ガラス板
51、52 マスク
53 スクライブライン
S 撮像面
t1 接着剤膜の厚さ
t1’ 接着剤の塗膜の厚さ
t2 SOG材料膜の厚さ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像面を有する固体撮像素子と、
前記撮像面の全面を覆う透明カバーと、
前記撮像面と前記透明カバーの間に形成された、前記透明カバーを前記固体撮像素子に接着する透明な接着剤膜とを備え、
前記撮像面の全面が前記接着剤膜によって覆われていて、前記撮像面と前記透明カバーの間にはキャビティが存在せず、
前記撮像面を基準とする前記接着剤膜の厚さが30μm〜100μmの範囲に設定されていることを特徴とする固体撮像装置。
【請求項2】
前記撮像面上に形成され且つ前記接着剤膜中に埋め込まれたマイクロレンズアレイが形成されており、前記接着剤膜の屈折率が1.4以下とされている請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項3】
前記接着剤膜が、紫外光硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、または紫外光硬化・熱硬化併用型接着剤を硬化させて形成した膜である請求項1または2に記載の固体撮像装置。
【請求項4】
撮像面を有する固体撮像素子と、
前記撮像面上にその全面を覆うように形成された透明なSOG(Spin-On-Glass)材料膜と、
前記撮像面上に形成され且つ前記SOG材料膜中に埋め込まれたマイクロレンズアレイと、
前記撮像面の全面を覆う透明カバーと、
前記SOG材料膜と前記透明カバーの間に形成された、前記透明カバーを前記SOG材料膜に接着する透明な接着剤膜とを備え、
前記撮像面の全面が前記SOG材料膜と前記接着剤膜によって覆われていて、前記撮像面と前記透明カバーの間にはキャビティが存在せず、
前記SOG材料の表面を基準とする前記接着剤膜の厚さが30μm〜100μmの範囲に設定されていることを特徴とする固体撮像装置。
【請求項5】
前記SOG材料膜の屈折率が1.4以下とされている請求項4に記載の固体撮像装置。
【請求項6】
前記SOG材料膜の厚さが0.3μm〜2.5μmの範囲に設定されている請求項4または5に記載の固体撮像装置。
【請求項7】
前記SOG材料膜が、紫外光硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、または紫外光硬化・熱硬化併用型接着剤を硬化させて形成した膜である請求項4〜6のいずれか1項に記載の固体撮像装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−16405(P2009−16405A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−173586(P2007−173586)
【出願日】平成19年6月30日(2007.6.30)
【出願人】(503456832)株式会社ザイキューブ (36)
【Fターム(参考)】