説明

固体滞留部を設けた縦型反応装置。

【課題】 単純な形状を有する装置に特定の操作方法を採用することにより、流体と固体の効率的な接触により所望の化学反応を促進させる縦型反応装置を提供する。
【解決手段】 化学物質の反応に用いる縦型反応装置であって、その装置の一部に少なくとも一個のテーパ部を設けてなり、その装置に流体及び固体を導入する供給手段と、その流体の流れを調整することにより、テーパ部に固体を滞留させるとともに、その滞留する固体と流体および/または固体とを浮遊状態で接触させる反応手段と、固体残渣及び固体副生成物を装置の底部に滞留させる手段と、反応生成物を回収する手段を備えた固体滞留用テーパ部を設けた縦型反応装置である。この装置を用いることにより、バイオマス、プラスチック、生ゴミ等の有機廃棄物、石炭等の有機物質のガス化による有用ガスの生成及びその有用ガスを原料とする液体燃料の合成に有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス、プラスチック、石炭及び有機廃棄物などから有用ガスを生成するガス化及びそれらの生成ガスを用いる液体燃料の合成などに用いられる化学反応装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、バイオマス、プラスチック、石炭や生ゴミなどの有機廃棄物の有効利用は、エネルギー問題や環境問題を軽減するという観点からも重要視されてきている。ところが、これらの有機物質は、一般にエネルギー密度が低く燃焼温度も低いことから直接燃焼により利用できるエネルギーは小さい。そのため、有機物質をガス化剤と反応させて水素や一酸化炭素などの高エネルギー密度で高燃焼温度のガスを生成し、エネルギー利用効率を高めることが行われている。また、生成ガスはメタノール等の液体燃料合成原料などに用いることができるので、ガス化により付加価値を高めることができる。
【0003】
現在、ガス化方法の一つとして、有機物質を高温でガス化剤と共にガス化する方法(例えば、特許文献1〜4参照)が試みられ、一部の方法は既に実用化されている。しかし、これらの方法は、温度が高くなるにつれて放熱が大きくなり、多くのエネルギーを消費するほか、高温に耐える材質、装置の維持管理や操作が複雑になるという欠点がある。また、ガス化に付随して発生する固体残渣やタールなど副生成物処理などの問題もあり、未だ満足できる方法は知られていない。
【0004】
その他のガス化方法として、有機物質のガス化に触媒を用いて低温でガス化することが試みられている。具体的には、セリウム酸化物担体の表面にロジウム、ルテニウム、パラジウムまたは白金を担持させた触媒を用いて、400〜1000℃の低温でガス化させる方法(例えば、特許文献5参照)、触媒機能をもつ粘土を熱媒体に用い原料と流動接触させてガス化する方法(例えば、特許文献6参照)などが提案されている。これらの触媒を用いるガス化は、反応温度を低温側にシフトさせることにより固体残渣やタールなどの副生成物量を減らすことができるため、エネルギー的にも副生成物処理の面でも装置材質や維持管理の点でも有利である。
【0005】
ところが、原料となる各種有機物質には灰分、硫黄及び燐などが含まれているため、触媒の被毒や耐性低下(失活)の発生などの問題がある。そこで、原料となる各種有機物質に含まれる灰分の中で、望ましくない硫黄及び燐などを分離し、ガスを精製する必要がある。
一般に、有機物質に含まれる炭素分を完全にガス化することは困難であり、炭素分のガス変換率(ガス化率)は通常90〜95%以下であって、残りはチャーとなり、これらを分離し、またガスを精製しなければならない。これらの固形物(固体残渣と総称)はサイクロンやフィルターによる回収、スクラバ(水シャワー)や水中バブリングによる回収などの方法が採られているが、固体残渣を定期的に排出することが不可欠であり、長期間に亘って安定して使用できる方法は未だ知られていない。
【0006】
さらに、反応生成ガスなどからメタノールなどの液体燃料を合成するには、通常、触媒の存在下で行われる。その際、ガスと触媒の接触を向上させるために、担体表面に担持させる方法、金属箔表面に塗布するなどにより接触面積を増大させる方法などが採用されており、また攪拌などの方法も用いられているが、未だ満足な方法は見出されていない。
【0007】
【特許文献1】特開平8−143873号公報
【特許文献2】特開2001−240877号公報
【特許文献3】特開2001−240878号公報
【特許文献4】特開2002−38163号公報
【特許文献5】特開2002−346388号公報
【特許文献6】特開2003−41268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来技術の上記した実情に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、単純な形状を有する装置に特定の操作方法を採用することによって、流体と固体の効率的な接触により所望の化学反応を促進させる縦型反応装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、有機物質のガス化による生成ガスや原料ガスと触媒とを効率的に接触させると同時に、触媒と固体残渣やタールなどの副生成物とを分離させて生成ガス組成を改質できる良好なガス化用縦型反応装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、原料ガスと触媒とを効率的に接触させて液体燃料を得る合成反応を促進させる良好な液体燃料合成用縦型反応装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、化学物質の反応に用いる縦型反応装置であって、その装置の一部に少なくとも一個のテーパ部を設けてなり、その装置に流体及び固体を導入する供給手段と、その流体の流れを調整することにより、テーパ部に固体を滞留させるとともに、その滞留する固体と流体および/または固体とを浮遊状態で接触させる反応手段と、固体残渣及び固体副生成物を装置の底部に滞留させる手段と、反応生成物を回収する手段を備えたことを特徴とする固体滞留用テーパ部を設けた縦型反応装置である。
上記の縦型反応装置には、下部より原料ガス及び触媒を導入して液体燃料の合成に用いることが好ましい。また、その液体燃料の合成は、100〜300℃の加熱条件下で行うことが好ましい。さらに、その原料ガスとしては、一酸化炭素及び水素を含むガスであり、生成する液体燃料がメタノールやジメチルエーチル(DME)などであることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、有機物質及びガス化剤を導入して有機物質のガス化に用いる縦型ガス化装置であって、その装置の一部に少なくとも一個の固体滞留用テーパ部を設けてなり、その装置の下部から有機物質、ガス化剤及び触媒を導入する手段と、導入するガス量を調整することにより、触媒を滞留用テーパ部に滞留させ、主生成物の有用ガスとガス化剤及び触媒とを固体の浮遊状態で接触させる手段と、有機物質と副生成する固体残渣を装置の底部に滞留させる手段と、生成した有用ガス成分を装置の上部より回収する手段を備えたことを特徴とする有機物質の縦型ガス化装置である。
そのガス化装置には、有機物質として、加熱状態においてガス化剤と反応してガス化する有機廃棄物を用いることが好ましい。また、そのガス化は650〜1500℃の加熱条件下に行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、有機物質の化学反応を効率的に行うことができる簡易な形状の縦型反応装置であって、有機物質のガス化装置においてはガス化剤の流れ、また液体燃料合成装置においては原料のガスの流れを利用し、ガス流速と縦型反応装置の滞留用テーパ部形状を調整することにより、触媒などの固体と副生成物である固体残渣などを分離または滞留させる装置であり、滞留した触媒はガスと効率的に接触しガス組成改質反応または液体燃料合成反応を促進させることができるので、分離や反応促進のための特別な機構を必要とせず、安価かつ簡単で、高効率に有用なガスや液体燃料を生成できる装置である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、化学物質の反応に用いられ、その一部に少なくとも一個のテーパ部を設けた縦型反応装置(以下、「滞留用テーパ付縦型反応装置」ともいう。)により、流体と固体を効率的に接触させて所望の化学反応を促進させるものであり、
バイオマス、プラスチック、石炭或いは生ゴミなどの廃棄物から選ばれる1種以上の有機物質をガス化剤と触媒などの固体の存在下にガス化して有用ガスに変換する際、または同ガスを触媒存在下に合成して有用な液体燃料に変換する際、被毒作用を有し触媒を失活させる固体残渣を反応装置下部に滞留させるとともに触媒をテーパ部に滞留させることにより、固体残渣を触媒から分離、ガスを触媒に効率的に接触させガス組成改質反応または液体燃料合成反応を促進させるものであり、固体残渣と触媒の分離および触媒のテーパ部への滞留は、ガス化剤流量または原料ガス流量と滞留用テーパ部の形状調整により行う装置である。
この装置を用いると、流体の流れによりテーパ部に固体を滞留させ、滞留した固体と流体または固体と固体を反応させることにより、無用または有害な反応を回避しながら、特定の反応を効率良く進行させることができる。例えば、ガス化温度に加熱した滞留用テーパ付縦型反応装置に原料の有機物質及びガス化剤及び触媒を下部から導入し、ガス量を調整することにより有機物質と副生成物渣である固体残渣を反応装置底部に滞留させるとともに触媒を滞留用テーパ部に滞留させ、有機物質や副生成物による触媒の被毒による失活を回避しながら、主生成物の有用ガス及びガス化剤と触媒の反応を促進し、有用ガス成分を効率良く生成し、生成した有用ガス成分を反応装置上部より回収することができる。
【0013】
図1には、本発明におけるテーパ部を設けた縦型反応装置の一例を示す。(a)は1個のテーパ部を設けた縦型反応装置であり、(b)は2個のテーパ部を設けた縦型反応装置である。図2には、本発明におけるテーパ部を設けた縦型反応装置の概略構成図を示す。
本発明の滞留用テーパ付縦型反応装置は、下部は断面積がほぼ一定の直管状で、ほぼ中央部に一個または複数の滞留用テーパ部を有し、上部は断面積がほぼ一定の直管からなるものである。各滞留用テーパ部は下部から上部にかけて緩やかに広がる構造である。有機物質のガス化装置においてはガス化剤を反応装置下部から上部へ流す。また、液体燃料合成装置においては原料ガスを反応装置下部から上部へ流す。滞留用テーパ部で断面積が緩やかに拡大するにつれて、流速が緩やかに遅くなって行く。
【0014】
つまり、滞留用テーパ部の下部での流速をU1、上部での流速をU2とすると、U1>U2である。一般に、ガス中の固体の運動を表すパラメータの一つに終端速度があり、終端速度はガスの粘度と密度、固体の大きさと密度で決まる。触媒の終端速度(UC)が、U1>UC>U2になるような大きさの触媒を使うと、滞留用テーパ部に触媒を滞留させることができる。また、固体残渣の大きさは原料やガス化条件で決まるので、固体残渣の終端速度(UR)がUR>U1になるようにガス化剤の流量や滞留用テーパ部の形状を決めると、固体残渣を縦型反応装置下部に滞留させ、固体残渣と触媒を分離できる。
固体が球形の場合、終端速度は2(ρp−ρ)gdp2/9ηになる。
ここで、ρはガス密度、ηはガス粘性、ρpは固体密度、dpは固体の半径、gは重力加速度である。
【0015】
テーパ部断面積を下部から上部へかけ緩やかに大きくするとともにテーパ部内面を滑らかにすることにより、触媒などが壁面に付着したとしても、壁面に沿って反応装置下部へ滑落し、壁面に堆積することが無く、反応に連続的に寄与することができるような構造とすることができる。
【0016】
複数の滞留用テーパ部を設ける場合、断面積の広いテーパ部を上部に置き、各滞留用テーパ部を直管でつないだ構造とする。ガス組成改質反応または液体燃料合成反応が複数の場合、各反応用触媒の大きさを選ぶことにより各滞留用テーパ部に各触媒を滞留させ、反応を順次促進させることができる。
触媒は各テーパ部に滞留するが、流体中に固体が存在する場合に流体内に発生する渦(カルマン渦など)の影響で触媒は不規則に運動するので、ガスと効率良く接触し、反応が促進される。攪拌のための特別な機構を必要としない。
【0017】
原料として用いる有機物質及び触媒は、ガス化剤及び生成ガスよりも重いため、ガスが流れない場合、重力により有機物質も触媒も縦型反応装置の底部に沈殿する。ガスが反応装置下部から上部へ流れる場合、ガスの流れにより有機物質や触媒は上向きの力を受ける。この力はガス流速、ガスの粘性と密度、固体(有機物質、触媒、固体残渣)の大きさと密度に依存する。ガス流速がある一定値(終端速度)になると、重力と上向きの力が釣り合い、固体はほぼ同じ高さに滞留する。ガス流速(U)はガス量(Q)と反応装置断面積(S)で決まるので(U=Q/S)、反応装置断面積(S)を調整することにより、固体を特定部位に滞留させることができる。ガス流により固体がある部位付近に滞留した場合、ガス流中に渦(カルマン渦など)が発生する。この渦の影響で、固体は不規則に運動し、ガスと固体は効率良く接触する。
【0018】
本発明において、有機物質、ガス化剤及び触媒をガス化炉に導入して合成ガスに転換させる有機物質のガス化および原料ガス及び触媒を液体燃料合成炉に導入して液体燃料に転換させる液体燃料の合成においては、ほぼ中央部に滞留用テーパ部を持つ縦型反応装置を用いることが望ましい。これらに用いられる有機物質原料としては、有機物質であれば如何なるものの使用可能であるが、例えば、木材、草木などのバイオマス、ポリエチレン、ポリプロピレン、PET、ポリアクリル系、ポリスチレンなどの熱可塑性のプラスチック、石炭或いは家庭、工場などから廃棄される生ゴミなどの廃棄物から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0019】
有機物質のガス化装置には、ガス化剤を反応装置の下部から供給し、生成ガスと未反応ガス化剤を上部より回収する。触媒のサイズとテーパ部形状とガス流量を適宜調整することにより、固体残渣を主に反応装置の下部に滞留させ、また触媒をテーパ部に滞留させることができる。固体残渣は反応装置の下部に滞留することから、固体残渣と触媒を容易に分離できる。また、ガス流によりテーパ部に滞留した触媒は、テーパ部で不規則に動くため、テーパ部において生成ガスは触媒と効率的に接触し、ガス組成改質反応を促進させることができる。
【0020】
また、液体燃料合成装置においては、原料ガスを反応装置下部から供給、未反応ガスを上部より回収し、合成された液体燃料を下部から回収する。触媒のサイズとテーパ部形状とガス流量を調整することにより、触媒をテーパ部に滞留させることができる。ガス流により触媒はテーパ部で不規則に動くので、原料ガスを触媒と効率的に接触させ、液体燃料合成反応を促進させることができる。
【0021】
以下、図面を参照して本発明について具体的に説明する。
図2は、滞留用テーパ付縦型反応装置を有する有機物質ガス化装置の一例の概略構成図である。電気炉により反応装置を加熱し、ガス化に必要な温度にする。図2に示す縦型反応管に、1mm程度に粉砕した有機物質、ガス化剤の水蒸気、触媒を送り込むと、ガス流により触媒はテーパ部分に滞留する。有機物質は反応管下部で反応し、合成ガスと固体残渣を生成する。ガス化剤の流量と反応管下部の断面積を調整し、反応管下部の流速が固体残渣の終端速度(UR)よりも遅くすると、固体残渣は反応管下部に堆積する。合成ガスと未反応のガス化剤は反応管内部を上昇し、テーパ部で触媒により、合成ガスとガス化剤がさらに反応し、ガス組成が改質される。図3には、本発明の縦型ガス化反応装置を用いた一例の有機物質のガス化システムを示す。
【0022】
滞留用テーパ付縦型反応管または滞留用テーパの無い縦型反応管からなるガス化装置を用いて、スギ(木部)またはスギ(木部)と触媒の混合物のガス化を行った。表1は、用いたスギ(木部)の性状(元素分析)を示し、表2は、用いた触媒の性状(触媒成分と含有率)を示す。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】
モデル実験によるガス化剤量(水蒸気量)の決定
常温の透明プラスチック製滞留用テーパ付縦型反応管に、窒素ガスを流し、触媒または固体残渣を入れ、モデル実験を行った。窒素ガス量が約12L/分のとき、触媒が滞留用テーパ部に滞留し、固体残渣は反応管の下部に滞留した。その温度と粘性を補正すると、この窒素ガス量は650℃の水蒸気量約1.4g/分に相当する。
窒素量が約32L/分のとき、滞留用テーパ部に固体残渣が滞留した。温度と粘性を補正すると、この窒素ガス量は650℃の水蒸気量約3.9g/分に相当する。
【0026】
スギまたはスギと触媒の混合物のガス化
ガス化の反応温度を650℃とした。スギの無触媒ガス化適正温度は900〜1000℃であることが知られており、650℃は触媒の作用効果が顕著に現れるガス化温度であった。ガス化剤の水蒸気量は1.4g/分または3.9g/分とした。滞留用テーパ付縦型反応管(段付)または滞留用テーパの無い縦型反応管(ストレート)を用い、水蒸気量と反応管を組み合わせた条件でガス化を行った(条件1〜4)。また、比較のため無触媒および滞留用テーパの無い反応管によるガス化を行った(条件0)。これら各の実験条件を表3に示す。
【0027】
【表3】

【0028】
反応管にガス化剤の水蒸気を設定量流した。原料供給器に原料のスギまたはスギと触媒の混合物を入れて秤量した後、反応管上部に取付けた。反応管内部に上部から下部まで繋がる原料導入管を通し、原料を供給した。原料が導入管を通過する時間は約0.1秒であって、殆ど無反応で反応管下部に供給された。1回のガス化に使用したスギは約11gであり、触媒はスギの20重量%とした。1分あたり約0.7g供給して反応させた。
得られた生成ガスは反応管の上部より全量回収し、H,CO,CO,CH,C及びCの6種についてガスクロマトグラフを用いて分析した。また、固体残渣は、ガス化が終了し反応管が常温まで冷却した後、反応管を分解し、回収した。
【0029】
得られた生成ガスからメタノールを主成分とする液体燃料を合成した。
一般に、メタノール合成は次の化学式で表されるものであり、水素と一酸化炭素がメタノール合成に利用できる有用ガスである。

2H+CO→CHOH
上記式に見るように、望ましいガス組成は[H]/[CO]=2である。表4には、ガス化反応後の結果(H濃度、CO濃度、[H]/[CO] 及び固体残渣量)を示す。
【0030】
【表4】

【0031】
実験0における [H]/[CO] は0.53であり、実験1おける
[H]/[CO] は0.81で、触媒がガス組成改善効果を持つことが判る。また、実験2の[H]/[CO]は1.12で、テーパ部に触媒が滞留することにより、触媒のガス組成改質効果が促進されたことが判る。
実験1の固体残渣生成率は14.1%、実験2の固体残渣生成率は12.9%であるから、触媒は固体残渣と反応することなく、固体残渣と触媒が分離したことが判る。また、実験3の[H]/[CO] は1.54で、固体残渣生成率は11.9%であり、実験4の[H]/[CO]は1.45で、固体残渣生成率は11.2%で、殆ど同じである。反応管の構造はガス化には殆ど影響せず、ガス組成や固体残渣生成率などのガス化反応は、触媒がテーパ部に滞留するか否かに依存することを実験的に確認した。
【産業上の利用可能性】
【0032】
バイオマス、プラスチック、石炭及び生ゴミなど廃棄物などの有機物質を、ガス化やガスを原料とする液体燃料合成等を行うことにより、エネルギーや化学合成原料に利用することは、既に一部で行われており、石油資源の逼迫とともに、今後益々重要になり、産業への利用も広がることは明らかである。触媒による反応の低温化により、安価な材料を装置に利用できるようにするとともに装置の構造や操作を単純化できるため、今後応用が広がると考えられる。
ところが、ガス化に伴い発生する固体生成物等の副生成物は被毒作用を有し触媒を失活させるため、副生成物を触媒から分離しなければならない。また、生成ガスや原料ガスと触媒を効率良く接触させなければならない。
本発明は、上記した現状において、単純な方法により副生成物と触媒の分離および生成ガスや原料ガスと触媒との効率良い接触を実現する装置を提供するものであって、産業界における利用範囲は拡大するものと予想される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明におけるテーパ部を設けた縦型反応装置の一例を示す。(a)は1個のテーパ部を設けた縦型反応装置であり、(b)は2個のテーパ部を設けた縦型反応装置である。
【図2】本発明の実施例に用いた滞留用テーパ付縦型反応装置の一例の概略構成図である。
【図3】本発明の縦型ガス化反応装置を用いた一例の有機物質のガス化システムである。(a)はガス化システム全景であり、(b)は1個のテーパ部を設けた縦型反応管である。
【図1(a)】

【図1(b)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学物質の反応に用いる縦型反応装置であって、その装置の一部に少なくとも一個のテーパ部を設けてなり、その装置に流体及び固体を導入する供給手段と、その流体の流れを調整することにより、テーパ部に固体を滞留させるとともに、その滞留する固体と流体および/または固体とを浮遊状態で接触させる反応手段と、固体残渣及び固体副生成物を装置の底部に滞留させる手段と、反応生成物を回収する手段を備えたことを特徴とする固体滞留用テーパ部を設けた縦型反応装置。
【請求項2】
原料ガス及び触媒を装置の下部より導入して液体燃料の合成に用いるものである請求項1に記載の縦型反応装置。
【請求項3】
液体燃料の合成は、100〜300℃の加熱条件下に行うものである請求項2に記載の縦型反応装置。
【請求項4】
原料ガスが一酸化炭素及び水素を含むガスであり、液体燃料がメタノールである請求項2または3に記載の縦型反応装置。
【請求項5】
有機物質及びガス化剤を導入して有機物質のガス化に用いる縦型ガス化装置であって、その装置の一部に少なくとも一個の固体滞留用テーパ部を設けてなり、その装置の下部から有機物質、ガス化剤及び触媒を導入する手段と、導入するガス量を調整することにより、触媒を滞留用テーパ部に滞留させ、主生成物の有用ガスとガス化剤及び触媒とを固体の浮遊状態で接触させる手段と、有機物質と副生成する固体残渣を装置の底部に滞留させる手段と、生成した有用ガス成分を装置の上部より回収する手段を備えたことを特徴とする有機物質の縦型ガス化装置。
【請求項6】
有機物質は、加熱状態においてガス化剤と反応してガス化する有機廃棄物である請求項5に記載の有機物質のガス化装置。
【請求項7】
ガス化は、650〜1500℃の加熱条件下に行うものである請求項5または6に記載の有機物質のガス化装置。

【図2】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【公開番号】特開2006−334535(P2006−334535A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−163802(P2005−163802)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】