説明

固体燃料ガス化ガス利用プラント

【課題】ガス化ガスを液体燃料の合成及びガスタービン駆動による発電の双方に利用するプラントにおいて、ガス化ガスが通流する各要素間の温度変化の温度振幅を縮小して、かかる温度変化に伴うガス化ガスの熱損失を低減し、ガス化ガスによる液体燃料の合成及びガスタービン駆動による発電に係るプラント効率を向上せしめた固体燃料ガス化ガス利用プラントを提供する。
【解決手段】ガス化炉において酸素を用いて固体燃料をガス化するとともに、液体燃料合成手段からのオフガスによりガスタービンを駆動するように構成された固体燃料ガス化ガス利用プラントにおいて、水を電気分解して水素と酸素を生成する水電気分解装置を設け、該水電気分解装置で生成された水素を前記液体燃料合成手段の上流側のガス化ガス通路に供給するとともに、前記水電気分解装置の操作圧力をガス化炉内の圧力よりも大きく設定して該水電気分解装置で生成された酸素をガス化炉に供給するように構成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭ガス化複合プラント、バイオマス原料ガス化複合プラント等に適用され、石炭、バイオマス原料等の固体燃料をガス化炉に供給し、該ガス化炉において酸素供給手段から供給される酸素を用いて前記固体燃料をガス化し、前記ガス化ガスによりガスタービンを駆動し、あるいはこのガス化ガスを液体燃料合成手段で液体燃料を合成製造するように構成された固体燃料ガス化ガス利用プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
図5は石炭、バイオマス原料等の固体燃料のガス化ガス利用プラントの従来の一例を示す系統図である。
図5において、微粉炭、バイオマス原料等の固体燃料は固体燃料供給手段1によってガス化炉2に供給される。該ガス化炉2においては、空気分離装置で窒素と分離された酸素を炉内に噴出させることにより前記固体燃料をガス化する。該ガス化炉2の出口温度が400℃程度のガス化ガスは、低温でガス化ガス中の硫黄、ハロゲン等を除去するガス精製を行うガス精製装置3に導入される。
該ガス精製装置3においては、作動温度40〜−15℃程度まで降温させて、湿式の低温ガス精製技術(化学吸収法、物理吸収法等)によって、ガス化ガス中の硫黄、ハロゲン等を除去する。かかる有害物が除去されたガス化ガスは、COシフト反応器41に導入される。
【0003】
COシフト反応器41においては、ガス化ガス中の水素不足を補うため、COシフト触媒を使用し、500℃程度の高温反応でCO濃度5%程度までH(水素)に変換した後、250℃程度の下記低温反応でCO濃度1%程度まで変換する。
CO+HO⇔H+CO
前記COシフト反応器41におけるCOシフト反応では、前記式のようにCOと当量の水が反応に必要であり、実際の反応では水が余剰な条件が必要なため、水蒸気供給手段42によってCOシフト反応器41に大量の水蒸気を供給するか、あるいは該COシフト反応器41出口のガス化ガスを冷却器43で冷却して余剰水を凝縮回収した水を循環供給する。
【0004】
前記COシフト反応器41において、COのHシフトがなされたガス化ガスは液体燃料合成反応器6に導入され、該液体燃料合成反応器6においてメタノール等の液体燃料に変換され、液体燃料取出手段7によって取り出される。該液体燃料合成反応器6からの約300℃のオフガスはガスタービン8に供給されて、該ガスタービン8を駆動する。
該ガスタービン8から排出された排ガスは、排熱回収ボイラ9で給水を加熱することにより蒸気を発生せしめた後、排ガス浄化装置等の排ガス排出手段12を経て大気中に排出される。該排熱回収ボイラ9で発生した蒸気は、蒸気タービン10に導入されて該蒸気タービン10を駆動する。該蒸気タービン10の復水は前記排熱回収ボイラ9に戻される。
【0005】
また、本件出願人の出願に係る特許文献1(特開2002−193858号公報)には、バイオマス原料をガス化炉に供給し、該ガス化炉において酸素供給手段から供給される酸素を用いて前記バイオマス原料をガス化し、このガス化ガスをメタノール合成手段で液化してメタノールを精製するように構成されたバイオマス原料からメタノールを精製するプラントであって、水を電気分解して水素と酸素を生成する水電気分解装置を設け、該水電気分解装置で生成された水素を前記メタノール合成手段に供給するとともに、前記水電気分解装置で生成された酸素を前記ガス化炉に供給するように構成したバイオマス原料からのメタノール精製プラントが開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−193858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図5に示される石炭、バイオマス原料等の固体燃料のガス化ガス利用プラントにおいて、該固体燃料を石炭とした場合、液体燃料合成反応器6において液体燃料を合成するためには、ガス化ガス中のCO(一酸化炭素)とH(水素)とのモル比が1:2が望ましい値であるが、石炭ガス化ガスの場合、1:1〜3:1のモル比となり、H(水素)が不足する。
そこで、図5に示される従来のガス化ガス利用プラントにおいては、液体燃料合成反応器6の上流側にCOシフト触媒を使用するCOシフト反応器41を設け、該COシフト反応器41に水蒸気供給手段42によって余剰水を含む大量の水蒸気を供給するかあるいは該COシフト反応器41出口のガス化ガスを冷却器43で冷却し余剰水を凝縮回収した水を循環供給することにより、500℃程度の高温反応でCO濃度5%程度までH(水素)に変換した後、250℃程度の下記低温反応でCO濃度1%程度まで変換することにより前記H(水素)を補充している。
【0008】
従って、図5に示される従来のガス化ガス利用プラントにあっては、ガス化炉2出口のガス化ガスをガス精製装置3において最高作動温度40℃程度まで降温させた後、COシフト反応器41では500℃程度の反応温度まで昇温させてから、さらに250℃程度の低温反応でCO濃度1%程度までH(水素)変換しており、ガス化ガスが通流する各要素の温度操作を、約400℃(ガス化炉2)→40〜−15℃(ガス精製装置3)→500℃→250℃(COシフト反応器41)のように大きな温度振幅で変化させる必要がある。
【0009】
従って、かかる従来のガス化ガス利用プラントにあっては、上記のようなガス化ガスが通流する各要素間の大きな温度振幅での温度変化があるため、ガス化ガスの熱損失が大きくなって、ガス化ガスによる液体燃料の合成及びガスタービン駆動による発電に係るプラント効率が低くなる、という解決すべき課題を抱えている。
【0010】
また、前記特許文献1(特開2002−193858号公報)の技術においては、水を電気分解して水素と酸素を生成する水電気分解装置で生成された水素をメタノール合成手段に供給するとともに、水電気分解装置で生成された酸素を前記ガス化炉に供給するように構成しているので、液体燃料合成手段(メタノール合成手段)での水素の補充が可能で、図5に示従来のガス化ガス利用プラントのようなCOシフト反応器41を用いなくても所要の水素を得ることは可能であるが、特許文献1の技術は、バイオマス原料から液体燃料合成手段(メタノール合成手段)で液体燃料(メタノール)を生成する技術であり、特許文献1には、ガス化ガスを液体燃料の合成及びガスタービン駆動による発電の双方に利用する固体燃料ガス化ガス利用プラントにおいて、前記のような問題を解決する点には言及していない。
【0011】
本発明はこのような従来技術の課題に鑑み、ガス化ガスを液体燃料の合成及びガスタービン駆動による発電の双方に利用するプラントにおいて、ガス化ガスが通流する各要素間の温度変化の温度振幅を縮小してかかる温度変化に伴うガス化ガスの熱損失を低減し、ガス化ガスによる液体燃料の合成及びガスタービン駆動による発電に係るプラント効率を向上せしめた固体燃料ガス化ガス利用プラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は前述の目的を達成するもので、石炭を含む固体燃料をガス化炉に供給し、該ガス化炉において酸素供給手段から供給される酸素を用いて前記固体燃料をガス化し、このガス化ガスを液体燃料合成手段で液化して液体燃料を精製するとともに、該液体燃料合成手段からのオフガスによりガスタービンを駆動するように構成された固体燃料ガス化ガス利用プラントにおいて、水を電気分解して水素と酸素を生成する水電気分解装置を設け、該水電気分解装置で生成された水素を前記液体燃料合成手段の上流側のガス化ガス通路に供給するとともに、前記水電気分解装置の操作圧力を前記ガス化炉内の圧力よりも大きく設定して該水電気分解装置で生成された酸素を前記ガス化炉に供給するように構成したことを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記ガスタービンから抽気された空気及び前記ガス化ガスのエネルギーにより生成される空気のいずれか一方又は双方を用いて前記ガス化炉の起動を行う起動空気供給手段をそなえたことを特徴とする。
この発明において、好ましくは、前記ガス化ガスのエネルギーによって生成される空気を、前記ガスタービンに付設される排熱回収ボイラからの蒸気のエネルギーで駆動されるコンプレッサで生成するように構成する。
【0014】
また本発明は、前記ガスタービン駆動後の排ガスを冷却、圧縮してCOリッチガス及び水を生成する水、CO回収手段を設け、該水、CO回収手段からの水を前記水電気分解装置に供給して電気分解用水に用いるとともに、該水、CO回収手段からのCOリッチガスを前記ガス化炉に供給するように構成されたされたことを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記水電気分解装置で生成された酸素を前記ガス化炉に供給する酸素通路に該酸素で駆動される酸素膨張タービンを設けるとともに、前記水電気分解装置で生成された水素を前記液体燃料合成手段に供給する水素通路に該水素で駆動される水素膨張タービンを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、水電気分解装置で生成された水素を液体燃料合成手段に導入してガス化ガスから液体燃料の生成に供するので、前記従来技術のようなCO(一酸化炭素)をH(水素)に変換するCOシフト反応器が不要となる。
このため、ガス精製装置(操作温度40〜−15℃)を出たガス化ガスの温度を、液体燃料合成の反応温度である約300℃程度まで上昇させれば済み、前記従来技術のように該COシフト反応器の反応温度である500℃程度まで上昇させることが不要となり、従って、ガス化ガスが通流する各要素の温度は、約400℃(ガス化炉)→40〜−15℃(ガス精製装置)→300℃(液体燃料合成手段)となり、前記従来技術よりも温度変化量が小さくなる。
これにより、前記従来技術に比べて、ガス化ガスの熱損失を低減できて、ガス化ガスによる液体燃料の合成及びガスタービン駆動による発電に係るプラント効率が向上する。
【0017】
また、前記のように、前記従来技術におけるCOシフト反応器及び該COシフト反応器への水蒸気供給手段及び冷却器が不要となって、系統の圧力損失が低減されプラント効率が向上するとともに、装置が簡単化され、経済性の向上(低コスト化)できる。
【0018】
また、本発明によれば、前記水電気分解装置で生成された酸素を、前記ガス化炉内に噴出して、前記空気分離装置からの酸素とともに固体燃料のガス化に供するので、該空気分離装置からガス化炉に供給する酸素量を低減できて、該空気分離装置の駆動動力を低減できる。
【0019】
また、前記ガスタービンから抽気された空気及び前記ガス化ガスのエネルギーにより生成される空気のいずれか一方又は双方を用いて前記ガス化炉の起動を行う起動空気供給手段を設け、特に、前記ガス化ガスのエネルギーによって生成される空気を、前記ガスタービンに付設される排熱回収ボイラからの蒸気のエネルギーで駆動されるコンプレッサで生成するように構成すれば、ガス化炉のガス化剤の酸素として、ガスタービンから抽気された圧縮空気、及び蒸気タービンから抽気された蒸気により駆動される起動補助コンプレッサからの圧縮空気等のガス化ガスのエネルギーにより生成される空気を利用するので、空気分離装置の容量をプラントに必要なユーティリテイの容量まで小さくすることが可能となり、装置コストを低減できる。
【0020】
また、前記ガスタービン駆動後の排ガスを冷却、圧縮してCOリッチガス及び水を生成する水、CO回収手段を設け、該水、CO回収手段からの水を前記水電気分解装置に供給して電気分解用水に用いるとともに、該水、CO回収手段からのCOリッチガスを前記ガス化炉に供給するように構成すれば、排ガスの出口側に排ガスを冷却、圧縮してCOリッチガス及び水を生成する水、CO回収設備及びCO圧縮貯蔵設備からなる前記水、CO回収手段を設けて、排ガス中のCOを回収するので、プラントからのCOの排出量を低減できる。
【0021】
また、水、CO回収手段からのCOを、ガス化炉のガス化剤として利用できるので、ガス化炉にガス化剤(酸素)を供給するための空気分離装置が不要となる。
さらに、水、CO回収手段からの回収水を水電気分解装置の電解水に利用することにより、水電気分解装置での生成水素量を増加できて、液体燃料の製造量を増加できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明の第1実施例に係る固体燃料のガス化ガス利用プラントの全体構成を示す系統図である。この実施例では、固体燃料として石炭の微粉炭を用いる場合について説明するが、この発明は石炭に限らず、バイオマス原料、その他、ガス化炉でガス化するエネルギー源としての固体燃料全般に適用可能である。
【0024】
図1において、微粉炭で構成される固体燃料は、固体燃料供給手段1によってガス化炉2に供給される。該ガス化炉2においては、空気分離装置4で窒素と分離された酸素(O)及び後述する水電気分解装置5からの酸素を炉内に噴出させることにより、前記固体燃料をガス化してCO+Hからなるガス化ガスを生成する。
該ガス化炉2の出口温度が400℃程度のガス化ガスは、低温でガス化ガス中の硫黄、塩素等を除去するガス精製を行うガス精製装置3に導入される。
該ガス精製装置3においては、ガス化ガスを作動温度40〜−15℃程度まで降温させて、湿式の低温ガス精製技術(化学吸収法、物理吸収法等)によって、該ガス化ガス中の硫黄、ハロゲン等を除去する。かかる有害物が除去されたガス化ガスは、後述する水電気分解装置5で生成された水素(H)を供給された後、液体燃料合成手段を構成する液体燃料合成反応器6に導入される。
【0025】
前記水電気分解装置5は水を水素(H)と酸素(O)に分解する公知の装置であり、該水電気分解装置5(操作温度約100℃)で生成された水素は前記液体燃料合成反応器6の上流側のガス化ガス通路3aに供給されて該液体燃料合成反応器6に導入される。
また、前記水電気分解装置5で生成された酸素は、前記ガス化炉2内に噴出されて前記空気分離装置4からの酸素とともに固体燃料のガス化に供される。
この場合、前記水電気分解装置5の操作圧力を前記ガス化炉2内の圧力よりも大きく設定して該水電気分解装置5で生成された酸素を前記ガス化炉2に供給する。このような圧力レベルを設定することにより、水電気分解装置5で生成された酸素を該ガス化炉2内からの吹き返しを生ずることなくスムーズにガス化炉2に供給できる。
【0026】
前記水電気分解装置5で生成され前記ガス化ガス通路3aに供給された水素は前記液体燃料合成反応器6に導入される。該液体燃料合成反応器6においては、約300℃の操作温度で前記ガス化ガスのメタノール等の液体燃料への合成反応が行われて、該液体燃料が合成製造される。この液体燃料は液体燃料取出手段7によって取り出されて、各種機関の燃料として利用される。
一方、該液体燃料合成反応器6からの約300℃のオフガスはガスタービン8に供給されて、該ガスタービン8を駆動する。
該ガスタービン8から排出された排ガスは、排熱回収ボイラ9で給水を加熱することにより蒸気を発生せしめた後、排ガス浄化装置等の排ガス排出手段12を経て大気中に排出される。また、該排熱回収ボイラ9で発生した蒸気は、蒸気タービン10に導入されて該蒸気タービン10を駆動する。該蒸気タービン10の復水は前記排熱回収ボイラ9に戻される。
【0027】
かかる第1実施例によれば、水電気分解装置5で生成された水素を液体燃料合成反応器6に導入してガス化ガスからの液体燃料の生成に供するので、前記従来技術のようなCO(一酸化炭素)をH(水素)に変換するCOシフト反応器41が不要となる。
このため、ガス精製装置3(操作温度40〜−15℃)を出たガス化ガスの温度を、液体燃料合成反応器6の反応温度である約300℃程度まで上昇させれば済み、前記従来技術のように該COシフト反応器41の反応温度である500℃程度まで上昇させることが不要となり、従って、ガス化ガスが通流する各要素の温度は、約400℃(ガス化炉2)→40〜−15℃(ガス精製装置3)→300℃(液体燃料合成反応器6)となり、前記従来技術よりも温度変化の温度振幅が小さくなる。
これにより、前記従来技術に比べて、ガス化ガスの熱損失を低減できて、ガス化ガスによる液体燃料の合成及びガスタービン駆動による発電に係るプラント効率が向上する。
【0028】
また、前記のように、前記従来技術におけるCOシフト反応器41及び該COシフト反応器41への水蒸気供給手段42及び冷却器43が不要となって、系統の圧力損失が低減紙プラント効率向上とともに、装置が簡単化されるとともに、経済性向上(低コスト化)ができる。
【0029】
また、かかる第1実施例によれば、前記水電気分解装置5で生成された酸素を、前記ガス化炉2内に噴出して、前記空気分離装置4からの酸素とともに固体燃料のガス化に供するので、該空気分離装置4からガス化炉2に供給する酸素量を低減できて、該空気分離装置4の駆動動力を低減できる。
【実施例2】
【0030】
図2は、本発明の第2実施例に係る固体燃料のガス化ガス利用プラントの全体構成を示す系統図である。
この第2実施例においては、前記水電気分解装置5で生成された水素で駆動される水素用動力回収タービン14、及び前記水電気分解装置5で生成された酸素で駆動される酸素用動力回収タービン13を設けている。そして、前記水電気分解装置5で生成された水素の膨張仕事によって水素用動力回収タービン14を駆動することにより、十分に膨張した水素を液体燃料合成反応器6に供給し、そして、前記水電気分解装置5で生成された酸素の膨張仕事によって酸素用動力回収タービン1を駆動することにより、十分に膨張した酸素をガス化炉2に供給する。
この場合、前記水電気分解装置5での水の電気分解圧力は、前記ガス化炉2の圧力を超え、水の亜臨界状態の範囲に保持する。
その他の構成は前記第1実施例と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。
【0031】
かかる第2実施例によれば、水電気分解装置5で水の圧縮による電気分解圧力の上昇により生成された水素で水素用動力回収タービン14を駆動し、該水電気分解装置5で生成された酸素で酸素用動力回収タービン13を駆動することにより、水電気分解装置5のエネルギーを水素用動力回収タービン14及び酸素用動力回収タービン13で回収できて、ガス化ガスによる液体燃料の合成及びガスタービン駆動による発電に係るプラント効率を向上できる。
【実施例3】
【0032】
図3は、本発明の第3実施例に係る固体燃料のガス化ガス利用プラントの全体構成を示す系統図である。
この第3実施例においては、前記ガス化炉2の起動時に、前記ガスタービン8から圧縮空気の一部を抽気し、この空気を開閉弁17をそなえた空気管8aを通して該ガス化炉2に供給している。
また、この第3実施例においては、前記ガス化炉2の起動時に、前記蒸気タービン10から抽気した蒸気をコンプレッサ駆動動力に変換するコンプレッサ駆動手段16に導き、該コンプレッサ駆動手段16によって起動補助コンプレッサ15を駆動し、該起動補助コンプレッサ15からの圧縮空気を開閉弁18をそなえた空気管10aを通して該ガス化炉2に供給している。
前記ガスタービン8からの圧縮空気をガス化炉2に送るときは開閉弁17を開き、起動補助コンプレッサ15からの圧縮空気をガス化炉2に送るときは開閉弁18を開く。
なお、ガスタービンからガス化炉への空気供給手段(8a〜17)および蒸気タービン抽気蒸気による空気供給手段(16〜15〜10a〜18)については、双方またはどちらか1方の手段を構成することでもよい。
尚、この実施例は、前記液体燃料合成反応器6を備えず、前記ガス化ガスを直接にガスタービン8に送り込む固体燃料ガス化ガス利用プラントにも適用できる。
その他の構成は前記第1実施例と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。
【0033】
かかる第3実施例によれば、ガス化炉2のガス化剤の酸素として、ガスタービン8から抽気された圧縮空気及び蒸気タービンから抽気された蒸気により駆動される起動補助コンプレッサ15からの圧縮空気を利用するので、空気分離装置4の容量をプラントに必要なユーティリテイの容量まで小さくすることが可能となり、装置コストを低減できる。
【0034】
尚、この第3実施例において、図3に鎖線で示されるように、前記第2実施例と同様に、前記水電気分解装置5で生成された水素で駆動される水素用動力回収タービン14、及び前記水電気分解装置5で生成された酸素で駆動される酸素用動力回収タービン13を設け、前記水電気分解装置5で生成された水素の膨張仕事によって水素用動力回収タービン14を駆動することにより十分に膨張した水素を液体燃料合成反応器6に供給し、前記水電気分解装置5で生成された酸素の膨張仕事によって酸素用動力回収タービン13を駆動することにより十分に膨張した酸素をガス化炉に供給するように構成することも可能である。
【実施例4】
【0035】
図4は、本発明の第4実施例に係る固体燃料のガス化ガス利用プラントの全体構成を示す系統図である。
この第4実施例においては、排ガスの出口側つまり前記排ガス排出手段12の下流側に、前記ガスタービン8駆動後の排ガスを冷却、圧縮してCOリッチガス及び水を生成する水、CO回収設備20及びCO圧縮貯蔵設備21を設けている。
そして該水、CO回収手段からの水は、水管20aを通して前記水電気分解装置5に供給して電気分解用水に用いる。
また、該CO圧縮貯蔵設備21で圧縮、貯蔵されたCOリッチガスは、ガス管21aを通して前記ガス化炉2に供給してガス化剤として用いられるとともに、ユーティリティ用ガスとして用いられる。
【0036】
以上の第4実施例によれば、排ガスの出口側に排ガスを冷却、圧縮してCOリッチガス及び水を生成する水、CO回収設備20及びCO圧縮貯蔵設備21を設けて、排ガス中のCOを回収するので、プラントからのCOの排出量を低減できる。
また、CO回収設備20及びCO圧縮貯蔵設備21からのCOを、ガス化炉2のガス化剤として利用できるので、ガス化炉2にガス化剤(酸素)を供給するための空気分離装置4が不要となる。
さらに、CO回収設備20及びCO圧縮貯蔵設備21からの回収水を水電気分解装置5の電解水に利用することにより、水電気分解装置5での生成水素量を増加できて、液体燃料の製造量を増加できる。
その他の構成は前記第1実施例と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。
【0037】
尚、この第4実施例において、図4に鎖線で示されるように、前記第2実施例と同様に、前記水電気分解装置5で生成された水素で駆動される水素用動力回収タービン14、及び前記水電気分解装置5で生成された酸素で駆動される酸素用動力回収タービン13を設け、前記水電気分解装置5で生成された水素の膨張仕事によって水素用動力回収タービン14を駆動することにより十分に膨張した水素を液体燃料合成反応器6に供給し、前記水電気分解装置5で生成された酸素の膨張仕事によって酸素用動力回収タービン13を駆動することにより十分に膨張した酸素をガス化炉に供給するように構成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によれば、ガス化ガスを液体燃料の合成及びガスタービン駆動による発電の双方に利用するプラントにおいて、ガス化ガスが通流する各要素間の温度変化の温度振幅を縮小してかかる温度変化に伴うガス化ガスの熱損失を低減し、ガス化ガスによる液体燃料の合成及びガスタービン駆動による発電に係るプラント効率を向上せしめた固体燃料ガス化ガス利用プラントを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1実施例に係る固体燃料のガス化ガス利用プラントの全体構成を示す系統図である。
【図2】本発明の第2実施例を示す図1対応図である。
【図3】本発明の第3実施例を示す図1対応図である。
【図4】本発明の第4実施例を示す図1対応図である。
【図5】固体燃料のガス化ガス利用プラントの従来の一例を示す系統図である。
【符号の説明】
【0040】
1 固体燃料供給手段
2 ガス化炉
3 ガス精製装置
4 空気分離装置
5 水電気分解装置
6 液体燃料合成反応器
8 ガスタービン
8a 空気管
9 排熱回収ボイラ
10 蒸気タービン
10a 空気管
13 酸素用動力回収タービン
14 水素用動力回収タービン
15 起動補助コンプレッサ
16 コンプレッサ駆動手段
20 水、CO回収設備
21 CO圧縮貯蔵設備

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭を含む固体燃料をガス化炉に供給し、該ガス化炉において酸素供給手段から供給される酸素を用いて前記固体燃料をガス化し、このガス化ガスを液体燃料合成手段で液体燃料を合成製造するとともに、該液体燃料合成手段からのオフガスによりガスタービンを駆動するように構成された固体燃料ガス化ガス利用プラントにおいて、水を電気分解して水素と酸素を生成する水電気分解装置を設け、該水電気分解装置で生成された水素を前記液体燃料合成手段の上流側のガス化ガス通路に供給するとともに、前記水電気分解装置の操作圧力を前記ガス化炉内の圧力よりも高く設定して該水電気分解装置で生成された酸素を前記ガス化炉に供給するように構成したことを特徴とする固体燃料ガス化ガス利用プラント。
【請求項2】
前記ガスタービンから抽気された空気及び前記ガス化ガスのエネルギーにより生成される空気のいずれか一方又は双方を用いて前記ガス化炉の起動を行う起動空気供給手段をそなえたことを特徴とする請求項1記載の固体燃料ガス化ガス利用プラント。
【請求項3】
石炭を含む固体燃料をガス化炉に供給し、該ガス化炉において酸素供給手段から供給される酸素を用いて前記固体燃料をガス化し、このガス化ガスによりガスタービンを駆動するように構成された固体燃料ガス化ガス利用プラントにおいて、前記ガスタービンから抽気された空気及び前記ガス化ガスのエネルギーによって生成される空気のいずれか一方又は双方を用いて前記ガス化炉の起動を行う起動空気供給手段をそなえたことを特徴とする固体燃料ガス化ガス利用プラント。
【請求項4】
前記ガス化ガスのエネルギーによって生成される空気を、前記ガスタービンに付設される排熱回収ボイラからの蒸気のエネルギーで駆動されるコンプレッサで生成するように構成されたことを特徴とする請求項2もしくは3のいずれかの項に記載の固体燃料ガス化ガス利用プラント。
【請求項5】
前記ガスタービン駆動後の排ガスを冷却、圧縮してCOリッチガス及び水を生成する水、CO回収手段を設け、該水、CO回収手段からの水を前記水電気分解装置に供給して電気分解用水に用いるとともに、該水、CO回収手段からのCOリッチガスを前記ガス化炉に供給するように構成されたされたことを特徴とする請求項1記載の固体燃料ガス化ガス利用プラント。
【請求項6】
前記水電気分解装置で生成された酸素を前記ガス化炉に供給する酸素通路に該酸素で駆動される酸素膨張タービンを設けるとともに、前記水電気分解装置で生成された水素を前記液体燃料合成手段に供給する水素通路に該水素で駆動される水素膨張タービンを設けたことを特徴とする請求項1、2、5のいずれかの項に記載の固体燃料ガス化ガス利用プラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−163873(P2008−163873A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−355669(P2006−355669)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】