説明

固体電解質体の梱包体

【課題】搬送中に薄板状の固体電解質体を保護する梱包体を提供する。
【解決手段】薄板状の固体電解質体を搬送する際の梱包体であって、前記固体電解質体の主要面の基準長さの15%以下の幅で外周辺から内側に設ける把持部を前記固体電解質体の周縁に備え、前記把持部を把持する支持部材と、前記主要面への異物の飛来を防ぐように前記主要面を非接触で包む覆いと、前記支持部材及び前記覆いを結合する結合部材と、を含み、前記覆いは、合成樹脂又は合成樹脂に微小な酸化物が分散された材料からなる。このため、搬送時の衝撃を吸収でき、静電気が帯電し難いので、固体電解質の優れた電気的特性を維持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄板状の固体電解質体の梱包体に関する。さらに詳しくは、薄板状の固体電解質の面積の外周から一定の距離の位置を上下面から挟んで押さえる薄板状の固体電解質体の梱包体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等を始めとする携帯用電子機器の小型化は著しく、このような携帯電子機器に使用されるリチウム電池等の燃料電池の小型化、薄型化が望まれている。そのため、燃料電池に使用される各部品についても小型化、薄型化が望まれる。燃料電池の重要部である固体電解質体については、一般に脆性のセラミックスからなる薄板状に形成されているため、衝撃に弱く、搬送中の衝撃等で簡単に破損するおそれがある。また、固体電解質として機能を主に担保する薄板形状の中央平面部は、粉塵等の異物の付着により異物による機能障害が実際の電池において生じる可能性もある。
【0003】
従って、搬送中の薄板状の板体を保護するために、プラスチック製の袋に入れたり、クッション材を薄板形状の中央平面部に配置するということが行われているが、接触による異物の付着が懸念される場合は、適用できない。
【0004】
同じような脆性なガラス板の場合や、表面接触によるキズ等の発生を避けなければならないシリコンウェーハ等の薄板状の部材の場合、クッション材を薄板形状の中央平面に接触するように紙材やポリプロピレン等の樹脂等が使用されている(例えば、特許文献1)。更に、シクロオレフィン系樹脂又はポリプロピレン系の粘着フィルム等でカバーする場合もある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−226354号公報
【特許文献2】特開2006−143241号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、紙材や樹脂のクッション材による緩衝保護は、クッション材と接触を前提とするため、コンタミを排除できないだけでなく、搬送時の振動よる摺動を避けられず、表面のキズ等の欠陥やクラックの発生等を効果的に防止することはできない。一方、粘着性のフィルムを貼付けて搬送する場合は、搬送中は十分に表面を保護できるが、目的地についてから、粘着フィルムをコンタミの心配なく剥離することは実質的に困難である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、以上のような課題に鑑み、薄板状の固体電解質の中央表面部に対し、非接触で外部からの異物の飛来を防止しつつ、搬送時の衝撃を吸収できる梱包体を提供することができる。このような梱包体は、静電気が帯電し難い材料から構成することができ、固体電解質の表面のキズ等の欠陥やクラックの発生等を抑制できる。
【0007】
より具体的には、以下のようなものを提供することができる。
(1)薄板状の固体電解質体を搬送する際の梱包体であって、前記固体電解質体の主要面の基準長さの15%以下の幅で外周辺から内側に設ける把持部を前記固体電解質体の周縁に備え、前記把持部を把持する支持部材と、前記主要面への異物の飛来を防ぐように前記主要面を非接触で包む覆いと、前記支持部材及び前記覆いを結合する結合部材と、を含み、前記覆いは、合成樹脂又は合成樹脂に微小な酸化物が分散された材料からなることを特徴とする梱包体を提供することができる。
【0008】
ここで、薄板状とは、厚さ方向の長さに比べ、他の長さが特に大きい形態を意味することができる。固体電解質体の主要面の基準長さは、固体電解質体が円板状の場合には該円の直径を、正方形や長方形の板状の場合には対角線、より好ましくは、長辺の長さを採用することができる。詳細は、具体例を挙げて後述する。外周辺から取る幅は、基準長さの15%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、7%以下が更に好ましい。ここで、この把持部は、薄板状の固体電解質体を固定するために最低限必要とされる大きさを有してよい。即ち、この把持部が小さすぎると、挟持手段(例えば、上下から挟む挟持突起、トング、凹部、開口等)によって把持が十分できないだけでなく、把持をしたとしてもその把持部が小さすぎるため、薄板状の固体電解質体をその部分だけで支えきれず、その把持部近傍で破壊してしまうこともある。従って、その固体電解質体をその把持部だけで支えることができる十分な大きさを有し、かつ、挟持手段が機械的に把持可能な形状及び大きさを備えてよい。また、把持部は、固体電解質体の周辺に連続して備えられてもよく、また、分離して複数備えられてもよい。連続して備えられる方が、応力集中が生じ難くより好ましい。
【0009】
また、上述の支持部材は、上記把持部を把持可能な形状及び構造を備え、把持可能に作用する。前記主要面への異物の飛来を防ぐように前記主要面を非接触で包む覆いとは、所定の大きさ(1ミリから数センチ、又はそれ以上)の異物を有効にブロック可能な弾性部材であってよい。これは、合成樹脂又は合成樹脂に微小な酸化物が分散された材料から構成されてよい。このような構成では、固体電解質体の周縁の把持部を支持部材が把持し、覆いが固体電解質体の主要面と非接触で飛来物等をブロック可能であるので、搬送時に外部から衝撃が加えられても覆いとの擦れによる固体電解質体の主要面の破損を回避することができる。
【0010】
(2)前記支持部材は、表面固有抵抗値が1013Ω以下の樹脂からなることを特徴とする上記(1)記載の梱包体を提供することができる。
【0011】
このような構成によれば、固体電解質体に発生する静電気を外部にリーク可能であり、帯電を防止することができる。ここで、上述の表面固有抵抗値は、1013Ω以下が好ましく、1010Ω以下がより好ましく、10Ω以下が更に好ましい。
【0012】
(3)前記支持部材は、圧縮弾性率が1Paから1GPaの弾性体であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の梱包体を提供することができる。
【0013】
把持部を支え、外部衝撃を緩衝可能な圧縮弾性率を備えることが好ましい。圧縮弾性率が低すぎると、把持部を支えきれず、固体電解質体を支持できない。一方、圧縮弾性率が高すぎると、衝撃を緩衝することができず、衝撃は固体電解質体の把持部近傍で大きな剪断力を生じる可能性があり、好ましくない。従って、圧縮弾性率が、好ましくは1Pa以上、より好ましくは10Pa以上、更に好ましくは100Pa以上である。また、圧縮弾性率が、1GPa以下が好ましく、より好ましくは500MPa以下であり、更に好ましくは200MPa以下である。尚、圧縮弾性率とは、圧縮応力に対する弾性率をいう。この弾性率は、材料の応力に対する歪を変化率で表わしたもので、ヤング率とも呼ばれる。
【0014】
前記支持部材は固体電解質体が密着してしまうと、取り出す際に固体電解質体を破壊するおそれがあるため、前記支持部材が固体電解質と接する面は粗面処理をするか、粗面材料を貼り付けることがより好ましい。
【0015】
(4)前記支持部材は、密度が0.1〜2g/cmであることを特徴とする上記(1)から(3)のいずれかに記載の梱包体を提供することができる。
ここでいう密度は、見かけの密度若しくは嵩密度である。一般に材種が同じで、嵩密度が高いと機械的強度は高くなる傾向があるが、これは気孔の体積が減少するからである。同様に密度が高くなると、弾性率も高くなる傾向がある。支持部材は、固体電解質体の把持部を把持し、把持部以外の部分が梱包材等と接触しないように保持するため、ある程度の強度を持つことが好ましい。従って、密度は0.1g/cm以上が好ましく、0.2g/cm以上がより好ましく、0.3g/cm以上が更に好ましい。一方、梱包体に外部から加えられる振動を吸収し、減衰させ、把持した把持部から固体電解質体に振動が伝わり難くすることが好ましい。一般に、有機材料として用いられるものは、真密度が、0.8〜1.5g/cm程度のものが多いが、振動の吸収には材料特性(例えば、エントロピー弾性や粘弾性)だけでなく、構造的なものも期待される。嵩密度は、2g/cm以下が好ましく、1.8g/cm以下がより好ましく、1.6g/cm以下が更に好ましい。
【0016】
(5)前記支持部材は、帯電防止材料からなることを特徴とする上記(1)から(4)のいずれかに記載の梱包体を提供することができる。
【0017】
ここで、帯電防止材料とは、材料そのものが導電性を発現する構造を有するものや、予め任意の導電剤などを任意の熱可塑性材料に混合したものを含んでよい。このような材料としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセン、ポリアセチレン、ポリチオフェン、4級アンモニウム塩基含有共重合体、エピハロヒドリン共重合体、ポリエチレンオキサイド−エピハロヒドリン共重合体、ポリエーテルエステル型ポリマー、ポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレングリコール系ポリアミド共重合体、ポリエチレングリコールメタクリレート共重合体、ポリエチレングリコール−ポリアミド共重合体、エチレンオキサイド−プロピレンオキサオド共重合体、ポリエーテルアミドイミド、制電性ABS及び帯電防止PC、シリコーンゴム等が挙げられ、これらのうち1種又はそれ以上を使用することができる。また、これら材料同士あるいは他の材料との共重合体、ポリマーアロイ及びポリマーブレンドされたものも使用することができる。
【0018】
また、導電剤を熱可塑性材料に混合したものも使用できるが、添加する導電剤量が多すぎると機械的特性の劣化が生じやすくなるので好ましくない。所望の電気抵抗値が得られるもので、機械的特性の劣化が少ないものが好ましい。このような導電剤としては、例えば、カーボン、グラファイト、酸化チタン、酸化スズ、アルミニウムをドープした酸化亜鉛、酸化スズで被覆した酸化チタン、酸化スズで被覆した硫酸バリウム、チタン酸カリウム、アルミニウム粉末及びニッケル粉末などの導電性フィラー、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルサルフェート、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルベタイン、過塩素酸塩及びホウ素を含有する有機化合物などの練り込み型の導電剤が、限定されることなく挙げられる。
【0019】
(6)前記覆い及び/又は前記支持部材は、IES−RP−CC003−87−T規準のタンブラー法により測定した1.0μm以上の塵の個数が200個以下となる材料からなることを特徴とする上記(1)から(5)のいずれかに記載の梱包体を提供することができる。
【0020】
一般に塵は、正若しくは負に帯電し、空気中を漂うが、これが固体電解質体の表面に付着すると、電気的な性能を劣化させるおそれがある。従って、上述の測定法で測定される塵の個数は、200以下が好ましく、180以下がより好ましく、170以下が更に好ましい。一方、塵が全くない場合は最も好ましいが、工業的に実現は難しく、コスト等のバランスを考えれば、80以上が現実的なところである。
【0021】
IES−RP−CC003−87−T規準のタンブラー法による発生粒子測定方法として、気流垂直型クリーンベンチ内に設置のタンブラーに試料1枚を入れて、一定速度(約10回/分)で回転させ、約10秒経過後投入口より1分間ICFの吸引量でサンプルエアーを吸引して、パーティクルカウンターによる測定を10回(1枚/回)行い、最大・最小を除いた8枚の平均値を求めるのが好ましい。
【0022】
(7)前記主要面を鉛直にして搬送することを特徴とする上記1から6のいずれかに記載の梱包体を提供することができる。
【0023】
梱包される固体電解質体は、周縁に設けた把持部を支持部材で固定することにより、他の部分を非接触の状態で保持可能である。従って、固体電解質体を方持ち若しくは両持ちにより支持するため、かかる主要面を水平に維持すれば、方持ち支持の場合は支持から最も遠いところが、両持ち支持の場合は中間位置で、自重により、固体電解質体が撓むことになる。このため、支持部材に把持される把持部において、最大の曲げ応力が発生する。この応力は、把持部からの水平距離にその加重をかけて得られるモーメントとなるので、大きな固体電解質体ではかなりの曲げモーメントとなる。しかしながら、主要面を鉛直にして保持した場合は、この距離が理論上は0であり、曲げモーメントは発生しない。また、厳密に鉛直でなくても、距離は短くなるので、曲げモーメントは小さくなり、曲げモーメントにより生じる剪断力は比較的小さくなる。そのため、なるべく鉛直方向に維持して搬送することが好ましい。一方、鉛直にすることにより、自重による圧縮応力は大きくなるが、一般にセラミックスは圧縮応力に強いので、致命的な問題とはならない。
【0024】
(8)前記主要面の表及び裏側であって、前記覆いとの間に、前記主要面から、固体電解質の厚みの2倍以上離れたところに、バックアップ部材を備えることを特徴とする上記(1)から(7)のいずれかに記載の梱包体を提供することができる。
【0025】
ここで、バックアップ部材は、過度の振動等が加えられた場合であって、非接触保持ができなくなった場合に、把持部の破損による固体電解質体全体の破損若しくは非接触状態保持の続行不能状態を防ぐために設けられてよい。即ち、瞬時(若しくは短時間)の接触を許すことにより、過度な負荷を把持部にかけないようにし、破損を防止すると共に、接触によるダメージを最小限に止められるようなバックアップ部材の表面を準備することができる。このような部材としては、特に、塵発生が少なく、帯電性が低い、シリコンスポンジシートなどを例としてあげることができる。
【0026】
(9)前記固体電解質は、ガラス又はガラスセラミックスを含むことを特徴とする上記(1)から(8)のいずれかに記載の梱包体を提供することができる。
【0027】
ここでガラスセラミックスとは、ガラスを熱処理することによりガラス相中に結晶相を析出させて得られる材料を含むことができる。非晶質固体と結晶からなる材料を含んでもよい。前記結晶析出は、例えば、結晶の核の生成後に十分成長して結晶層が形成されると、X線回折法等により検出可能である。更に、ガラスセラミックスは、空孔がほとんど無いとき、ガラス相すべてを結晶相に相転移させたもの、すなわち、結晶量が100質量%(結晶化度100%)のものを含むことができる。一般に、溶融し難いセラミックスは、結晶粒子間の空孔や結晶粒界が、焼結後にも残存しがちである。しかるに、ここでいうガラスセラミックスは、母ガラスから結晶が析出するので、空孔や結晶粒界を残存しないようにすることもできる。結晶粒子間の空孔や結晶粒界によりイオン伝導は著しく抑制されるので、セラミックスの場合、イオン伝導性は、結晶粒子自体の伝導性よりもかなり低いと考えられる。ガラスセラミックスは結晶化工程の制御により結晶間のイオン伝導度の低下を抑えることができるので、全体として結晶粒子と同程度のイオン伝導性を保つことができる。
【0028】
(10)前記ガラスは酸化物基準のmol%表示で、
LiO 10〜25%、及び
Al及び/又はGa 0〜15%、及び
TiO及び/又はGeO 25〜50%、及び
SiO 0〜15%、及び
26〜40%
の各成分を含有することを特徴とする上記(9)に記載の梱包体。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、固体電解質体の周縁、つまり電池製造時に冶具で固定されて固体電解質として機能しない部分を支持部材が押さえて固定する。一方、固体電解質体の主要面は、覆いにより非接触的に保護される。これにより、固体電解質体の特性を損なうことなく、更に表面状態にコンタミ付着やキズといった不具合を発生させずに、搬送等を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施例について詳しく説明するが、以下の記載は、本発明の実施例を説明するためになされるもので、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。また、同一若しくは同種類の要素については、同一若しくは関連性のある符号を用い、重複する説明は省略する。
【0031】
図1は、本発明の1つの実施例の梱包体を示す斜視図である。図1(a)は、分解斜視図であり、(b)は、固体電解質体20が上部の覆い12及び下部の覆い14の間に保持されている梱包体10の斜視図である。梱包体10は、上部の覆い12及び下部の覆い14の間に、固体電解質体20が挟まれるように配置される。上部の覆い12には、主要面の中央部12aがあり、上部から飛来する異物が固体電解質体20の主要面の中央部20aに衝突しないように保護している。上部の覆い12の下面の四隅近傍には、支持部材16が、接着剤(結合部材に相当)によって貼付けられている。一方、下部の覆い14にも、主要面の中央部14aがあり、下部から飛来する異物が固体電解質体20の主要面の中央部に衝突しないように保護している。下部の覆い14の下面の四隅近傍には、支持部材16が、接着剤(結合部材に相当)によって貼付けられている。ここでは、接着剤を用いたが、連続体から切り出した場合は、覆い12、14と支持部材16の間にある連続体が結合部材に相当する。この梱包体では、固体電解質体20の把持部20bが周縁に形成される。この把持部を支持部材16の支持面16aが接触し固定する。このような構成では、支持部材16間の開口よりコンタミが固体電解質体20の中央部20aへ飛来することが可能である。しかしながら、前記開口は十分小さくかかる飛来の可能性は低く、固体電解質体20は把持部でのみ支持部材16の支持面16aでのみ接触するので、いわゆる接触部が少なく、接触を通じての汚染はされ難い。
【0032】
図2は、本発明の実施例における数種類の薄板状の固体電解質体の平面図である。図2(a)は、円形形状の固体電解質体であり、(b)は、正方形形状の固体電解質体であり、(c)は、長方形形状の固体電解質体である。それぞれ、L1(直径)、L3(対角線)、L5(長辺)が基準長さとしている。そして、それぞれの基準長さの15%の幅(L2、L4、L6)で取った周縁部をハッチングによって表わしている。図2(b)では、基準長さを対角線としているが、一辺の長さとすることもできる。本明細書では、正方形の基準長さとしては、一辺の長さを用いる方が好ましいと考えられる。何れの形状の固体電解質体も、十分な把持部を備えている。
【0033】
図3は、図2の(c)を、基準長さを対角線として、15%の長さ分だけ、把持部をハッチングしたものである。しかしながら、上述と同様、長辺の方が好ましいと考えられる。尚、説明が重複するので、ここでは詳しく述べない。
【0034】
図4は、図1の梱包体を少し変形した梱包体の斜視図である。図1では、支持部材16は、非連続であったが、この実施例では、上部覆い12の下面において、支持部材17が連続している。支持部材17の支持面17aに、把持部20bが上面及び下面において接触し、固体電解質体20を固定する。連続体で固定するので安定するだけでなく、隙間から異物が混入することを防止することができる。
【0035】
以上のように、固体電解質体の把持部を支持部材が挟持する構成となっているが、固体電解質体は脆性材料であるので、応力集中し易く、把持部近傍で、剪断力が生じやすい。また、上下の支持部材で挟持することを特徴としているが、この挟持力は、上下の覆いを相互に締め付けるベルト(特に弾性(エラストマー)ベルト)を用いることにより実現可能である。ベルトの弾性力により、上下の支持部材に余圧力が加えられる。このベルト以外にも、スプリングなどによる弾性緩衝体を設けた、ボルトによる上下の支持部材の固定によっても同様な効果を得ることができる。
【0036】
[実施例]
原料としてHPO、Al(PO、LiCO、SiO、TiOを使用し、これらを酸化物換算のモル%で、Pが33.8%、Alが7.6%、LiOが14.5%、TiOが41.3%、SiOが2.8%といった組成になるように秤量して均一に混合した後に、白金ポットに入れ、電気炉中1450℃でガラス融液を撹拌しながら3時間加熱熔解した。その後、ガラス融液を流水中に滴下させることにより、フレーク状のガラスを得た。
【0037】
得られたガラスフレークをボールミルで粉砕、分級し、平均粒径1.1μmのガラス微粒子を得た。更にエタノールによる湿式ビーズミルを用いて微粉砕し、そのスラリーを更にスプレードライで乾燥させることで平均粒径0.5μmのガラス微粒子を得た。
【0038】
このガラス微粒子と水に分散させたバインダとしてアクリル樹脂に分散剤を添加してボールミルにて48h攪拌してスラリーを調製した。このときのスラリーに含まれるガラス微粒子は61.5質量%で、アクリル樹脂は11.0質量%とした。
【0039】
得られたスラリーをコーターにて離型処理を施したPETフィルム上に厚み40μmにて成形し、所定長さで裁断されて、8枚積層し、静水圧プレスにより、加圧し、積層体を作製した。得られた積層体は、焼成炉により焼成して、固体電解質を製造した。この固体電解質体は、縦6cm、横6cm、厚さ280μmであった。このときの基準長さは、6cmであり、把持部の幅は、10%の6mmであった。
【0040】
次に、図1に示すような、梱包体を準備した。梱包体の覆い12、14及び支持部材16は、帯電防止シリコーンゴムを用いて作製した。この材料は、表面抵抗値は、1×10Ωであり、圧縮弾性率は、28.1MPaであり、嵩密度は、1.22である。この材料は、揮発性物質を殆ど含まない。また、IES−RP−CC003−87−T規準のタンブラー法により測定した1.0μm以上の塵の個数が200個以下であった。このIES−RP−CC003−87−T規準のタンブラー法は、気流垂直型クリーンベンチ内に設置のタンブラーに試料1枚を入れて、一定速度(約10回/分)で回転させ、約10秒経過後投入口より1分間ICFの吸引量でサンプルエアーを吸引して、パーティクルカウンターによる測定を10回(1枚/回)行い、最大・最小を除いた8枚の平均値を求めるものである。
【0041】
この材料を縦8cm、横8cm、厚さ2mmで切出し、その一方の面に支持部材として、5mm角のサイコロ形状の部材を接着剤で、この切り出した板の四隅に取付けた。この支持部材付の覆いを2個用意した。これらの間に、上述のように準備した固体電解質体を間に挟んで梱包体を形成した。
【0042】
この梱包体を、連続加振機に設置し、振幅30mm、周波数8Hzとして搬送時の振動のシミュレーションを行った。所定時間経過後に、内部の固体電解質体を取出したところ、何ら損傷はなかった。
【0043】
また、覆い12、14の固体電解質体20側の面にバックアップ部材(図示せず)を備えてもよい。このバックアップ部材は、たとえ電解質体20の主要面の中央部に接触しても、コンタミとなる部材剥離は生じ難い材料から構成される。このバックアップ部材は、梱包体10が過大な衝撃を受け、支持部材16がその衝撃を吸収すべく、大きく変形した場合に、覆い12、14に直接接触することを防ぐ作用効果がある。主要面20aから固体電解質体20の厚みの2倍以上離れた高さに位置するように、覆いに貼付けることができる。
【0044】
以上のように、本発明によれば、脆性材料である固体電解質体を搬送などによる外部からの振動に起因する衝撃から保護し、かつ、衝撃を有効に吸収することができる。また、固体電解質体の主要面は、非接触で保持されるので、コンタミの心配もない。また、静電気が帯電し難い材料から構成することができ、固体電解質の優れた電気的特性を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施例における梱包体の斜視図である。(a)は分解図、(b)は挟持状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施例において用いられる薄板状の固体電解質体の平面図を示す。(a)は円形、(b)は正方形、(c)は長方形である。
【図3】本発明の一実施例において用いられる薄板状の固体電解質体の斜視図を示す。
【図4】本発明の別の実施例における梱包体の斜視図である。(a)は分解図、(b)は挟持状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
10、11 梱包体
20 固体電解質体
12、14 覆い
16、17 支持部材
20a 主要面
20b 把持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板状の固体電解質体を搬送する際の梱包体であって、
前記固体電解質体の主要面の基準長さの15%以下の幅で外周辺から内側に設ける把持部を前記固体電解質体の周縁に備え、
前記把持部を把持する支持部材と、
前記主要面への異物の飛来を防ぐように前記主要面を非接触で包む覆いと、
前記支持部材及び前記覆いを結合する結合部材と、を含み、
前記覆いは、合成樹脂又は合成樹脂に微小な酸化物が分散された材料からなることを特徴とする梱包体。
【請求項2】
前記支持部材は、表面固有抵抗値が1013Ω以下の樹脂からなることを特徴とする請求項1記載の梱包体。
【請求項3】
前記支持部材は、圧縮弾性率が1Paから1GPaの弾性体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の梱包体。
【請求項4】
前記支持部材は、密度が0.1〜2g/cmであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の梱包体。
【請求項5】
前記支持部材は、帯電防止材料からなることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の梱包構造。
【請求項6】
前記覆い及び/又は前記支持部材は、IES−RP−CC003−87−T規準のタンブラー法により測定した1.0μm以上の塵の個数が200個以下となる材料からなることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の梱包体。
【請求項7】
前記主要面を鉛直にして搬送することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の梱包体。
【請求項8】
前記主要面の表及び裏側であって、前記覆いとの間に、前記主要面から、固体電解質の厚みの2倍以上離れたところに、バックアップ部材を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の梱包体。
【請求項9】
前記固体電解質は、ガラス又はガラスセラミックスを含むことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の梱包体。
【請求項10】
前記ガラスは酸化物基準のmol%表示で、
LiO 10〜25%、及び
Al及び/又はGa 0〜15%、及び
TiO及び/又はGeO 25〜50%、及び
SiO 0〜15%、及び
26〜40%
の各成分を含有することを特徴とする請求項9に記載の梱包構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−105729(P2010−105729A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282548(P2008−282548)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000128784)株式会社オハラ (539)
【Fターム(参考)】