説明

固体電解質型燃料電池システム

【課題】起動時に必要なエネルギーを低減でき、しかも迅速な起動が可能であり、移動体や家庭用として好適に適用できる固体電解質型燃料電池スタック、固体電解質型燃料電池モジュール、固体電解質型燃料電池システムを提供すること。
【解決手段】燃料電池スタック1では、第1燃料電池セル17と第2燃料電池セル19の間に、両燃料電池セル17、19を分離する様にセラミック製インターコネクタ21が配置され、それらが積層方向に一体となる様に接合されている。インターコネクタ21は、隔壁35と第1セパレータ37と第2セパレータ39を備える。隔壁35は上板部41と下板部43の間にヒータ45を配置したものである。つまり、ヒータ45は、隔壁35の内部にて隔壁35の長手方向(即ち燃料ガス流路)に沿って伸びる様に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料極及び空気極を有する固体電解質体を備えた複数の燃料電池セルが積層された固体電解質型燃料電池スタック、このスタックを複数備えた固体電解質型燃料電池モジュール、及びこの固体電解質型燃料電池モジュールを用いて発電を行う固体電解質型燃料電池システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、燃料電池として、固体電解質(固体酸化物)を用いた固体酸化物燃料電池(以下SOFCとも記す)が知られている。
このSOFCは、例えば板状の固体電解質体の各面に燃料極と空気極とを備えた燃料電池セルを、多数積層してスタックを形成し、燃料極に燃料ガスを供給するとともに、空気極に空気を供給し、燃料及び空気中の酸素を固体電解質体を介して化学反応させることによって電力を発生させるものである。
【0003】
このSOFCは、プロトン伝導型(PEM)燃料電池と比較して、発電効率が高く、かつ、水素以外の燃料の利用が可能なことから、将来の分散型電源の最有力の候補として考えられている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−146129号公報
【特許文献2】特開2004−319187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、100℃以下の低温でも発電可能なPEM燃料電池と比較し、SOFCの発電には、セル・スタック温度を600℃以上の高温に保つ必要がある。
そのため、SOFCシステムの起動時には、例えばスタックの周囲に配置したヒータを用いて加熱するために大量の電力を必要としたり、スタックを周囲から加熱するために多くの加熱ガスが必要であり、しかも、通常は、その加熱に5時間以上かかるという問題があった。
【0006】
こうした問題は、SOFCシステムを、自動車やトラックなどの移動体に搭載する場合や、電力需要が生活のスタイルにより変動する家庭用コジェネ発電機に適用する場合などに、大きな問題となる。
【0007】
すなわち、こうした用途においては、SOFCシステムの起動、停止、或いは出力の調整が頻繁であるので、また、SOFCシステムの起動に利用できる最大電力や燃料に制限があるので、移動体や家庭用に適用するためには、一層の改善が必要である。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、起動時に必要なエネルギーを低減でき、しかも迅速な起動が可能であり、移動体や家庭用として好適に適用できる固体電解質型燃料電池スタック、固体電解質型燃料電池モジュール、及び固体電解質型燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)請求項1の発明(固体電解質型燃料電池スタック)は、燃料ガスに接する燃料極及び支燃性ガスに接する空気極を有する固体電解質体を備えた燃料電池セルが、複数個積層された固体電解質型燃料電池スタックにおいて、前記スタックの内部に、ヒータを配置したことを特徴とする。
【0010】
本発明の固体電解質型燃料電池スタックは、その内部にヒータを備えているので、従来のガスやヒータによって外部から加熱する装置に比べて、効率良くスタックを加熱することができる。これによって、SOFCシステムの起動時に、少ない電力で速やかに発電に必要な温度まで加熱できるので、特に、SOFCシステムを、自動車やトラックなどの移動体に搭載する場合や、電力需要が生活のスタイルにより変動する家庭用コジェネ発電機に好適に適用できる。
【0011】
つまり、こうした用途においては、SOFCシステムの起動、停止、或いは出力の調整が頻繁であり、また、起動に利用できる最大電力や燃料に制限があるが、本発明では、低電力で速やかに加熱できるので、移動体や家庭用に好適に利用することができる。
【0012】
また、セラミックである固体電解質体を主要な構成とするスタックには、燃料ガスを供給する箇所や燃料ガスの排ガス(燃料排ガス)を排出する箇所に、通常は、ろう付けなどにより金属製のジョイントが接合されているが、その接合部分は、セラミック部分に比べると耐熱性が低い。
【0013】
しかし、本発明は、スタック内部から加熱する構造であるので、スタックの表面側の温度は内部の温度と比べて低い。よって、スタック内部が発電可能な高温に達した場合でも、その接合部分の温度を低く保つことが可能であるので、接合部分の劣化を抑制することができる。
【0014】
尚、前記ヒータは、スタックの燃料ガスの供給側及び排出側よりも、その供給側と排出側とに挟まれた中間領域を高めに加熱するように形成することが好ましい。つまり、ヒータをスタック内部を重点的に加熱するように構成することにより、金属製のジョイントが接合されている燃料ガスの供給側と排気側の温度を低くすることができる。これによって、スタック内部が発電可能な高温に達した場合でも、その接合部分の温度を一層低く保つことができるので、接合部分の劣化を効果的に抑制することができる。
【0015】
(2)請求項2の発明は、前記各燃料電池セル間に、セラミック製のインターコネクタを備えるとともに、前記インターコネクタは、第1燃料電池セルの燃料極に供給する燃料ガスの流路と第2燃料電池セルの空気極に供給する支燃性ガスの流路とを分離する構成(例えば隔壁)と、前記第1燃料電池セルの燃料極と第2燃料電池セルの空気極とを電気的に接続する導通部(例えば電池ビア導通部)とを備えるとともに、前記ヒータを備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明では、各燃料電池セル間に、流路の分離及び電極間の電気的導通を行うインターコネクタを備え、このインターコネクタにヒータが配置されている。
従って、ヒータを、スタック内部において加熱に最適な箇所、即ち燃料電池セルに近接した箇所に配置できる。また、ヒータの形成は、インターコネクタの形成時に行うことができるので、その製造が容易である。
【0017】
尚、前記「第1」、「第2」等の序数は、複数存在する同種の部材を区別するために付したものである(以下同様)。
(3)請求項3の発明は、前記インターコネクタの内部(例えば隔壁の内部)に、前記ヒータを備えたことを特徴とする。
【0018】
本発明は、ヒータの好適な配置箇所を例示している。これにより、ヒータが劣化しにくく、また、ヒータを備えたスタックの製造が容易である。例えば隔壁の形成時にヒータを形成することができるので、その製造が容易である。
【0019】
(4)請求項4の発明(固体電解質型燃料電池モジュール)は、燃料ガスに接する燃料極及び支燃性ガスに接する空気極を有する固体電解質体を備えた燃料電池セルが、複数個積層された固体電解質型燃料電池スタックを、複数個備えた固体電解質型燃料電池モジュールにおいて、前記複数の固体電解質型燃料電池スタックのうち、少なくとも1個のスタックを、前記請求項1〜3のいずれかに記載の固体電解質型燃料電池スタックとしたことを特徴とする。
【0020】
本発明の固体電解質型燃料電池モジュールは、内部にヒータを備えたスタックを、少なくとも1個有している。
従って、ヒータを備えたスタックを、少ない電力で速やかに加熱して発電可能な状態にすることが可能である。よって、例えばこのスタックから排出される高温の燃料排ガスを利用して他のスタックを加熱することができる。また、他のスタックにもヒータを備えている場合には、このスタックによって発電された電力を他のヒータに供給して、他のスタックを加熱することができる。
【0021】
(5)請求項5の発明は、前記各固体電解質型燃料電池スタックにおいて、少なくとも燃料ガスの供給を、前記各スタック独立して調節可能な構成としたことを特徴とする。
本発明では、燃料ガスの供給を各スタック独立して調整可能である。従って、例えばヒータにより加熱されたスタックから排出される燃料排ガスを、他のスタックに供給して加熱するように調節することができる。
【0022】
(6)請求項6の発明は、第1固体電解質型燃料電池スタックから排出される燃料排ガスを、第2固体電解質型燃料電池スタックに(好ましくはその燃料供給側に)供給可能な構成としたことを特徴とする。
【0023】
本発明では、例えばヒータを備えた第1固体電解質型燃料電池スタックが、例えば発電可能な温度まで加熱された場合には、その燃料排ガスを、第2固体電解質型燃料電池スタックに供給することができる。
【0024】
従って、第2固体電解質型燃料電池スタックがヒータを備えていない場合であっても(或いはヒータを備えていても)、第2固体電解質型燃料電池スタックを効率良く加熱することができる。
【0025】
(7)請求項7の発明は、前記第1固体電解質型燃料電池スタックの燃料排ガスの排気路を、第2固体電解質型燃料電池スタックの燃料ガスの供給路に接続するとともに、前記燃料排ガスを第2固体電解質型燃料電池スタックに供給する経路に、当該経路の開閉を制御する制御弁を備えたことを特徴とする。
【0026】
本発明は、第1固体電解質型燃料電池スタックから排出される燃料排ガスを、第2固体電解質型燃料電池スタックに供給する好ましい形態を例示したものである。
(8)請求項8の発明は、前記複数の固体電解質型燃料電池スタックを、1つの断熱容器内に配置したことを特徴とする。
【0027】
これにより、断熱容器内に配置された全ての固体電解質型燃料電池スタックを効率良く加熱できるので、熱効率の優れた装置となる。尚、前記金属製のジョイントを、断熱容器
の外に配置すると、接合部分の劣化を一層好適に抑制できる。
【0028】
(9)請求項9の発明(固体電解質型燃料電池システム)は、前記請求項4〜8のいずれかに記載の固体電解質型燃料電池モジュールの駆動を制御する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0029】
本発明の固体電解質型燃料電池システムでは、例えばマイコン等の制御手段により、起動時のヒータの制御、燃料ガスの供給の制御、燃料排ガスの流路の制御、発電の制御等を行うことができる。
【0030】
(10)請求項10の発明は、前記固体電解質型燃料電池システムの起動時に、前記ヒータを備えた第1固体電解質型燃料電池スタックのヒータに通電する通電制御手段と、前記第1固体電解質型燃料電池スタックの温度を検知する温度検知手段と、前記検知手段によって検知された温度が所定の温度に達した場合に、前記第1固体電解質型燃料電池スタックが発電可能なように、前記燃料ガス及び支燃性ガスの供給状態を制御するガス供給制御手段と、前記燃料ガスの供給に伴って前記第1固体電解質型燃料電池スタックから排出される高温の燃料排ガスを、第2固体電解質型燃料電池スタックに供給する排ガス供給制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0031】
本発明では、第1固体電解質型燃料電池スタックの温度(例えば発電可能な温度)を検知し、発電可能な温度にて、燃料ガス及び支燃性ガスの供給状態(特に燃料ガスの供給状態)を制御し、第1固体電解質型燃料電池スタックから排出される高温の燃料排ガスを、第2固体電解質型燃料電池スタックに供給する。
【0032】
従って、所定の(例えばヒータの加熱によって発電可能な状態となった)固体電解質型燃料電池スタックから排出される燃料排ガスを利用して、他の固体電解質型燃料電池スタックの加熱を効率良く行うことができる。これによって、自動車やトラックなどの移動体に搭載する場合や、電力需要が生活のスタイルにより変動する家庭用コジェネ発電機に好適に適用できる。つまり、本発明は、起動、停止、或いは出力の調整が頻繁であったり、起動に利用できる最大電力や燃料に制限があるSOFCシステムに好適である。
【0033】
尚、前記ガス供給制御手段としては、例えばSOFCモジュールを空気中に配置し、燃料ガスの供給を制御して発電状態を制御するような制御内容も含まれる。つまり、ガス供給制御手段とは、発電に必要なガス状態を実現できる制御手段である(以下同様)。
【0034】
(11)請求項11の発明は、前記固体電解質型燃料電池システムの起動時に、前記ヒータを備えた第1固体電解質型燃料電池スタックのヒータに通電する通電制御手段と、前記第1固体電解質型燃料電池スタックの温度を検知する温度検知手段と、前記検知手段によって検知された温度が所定の温度に達した場合に、前記第1固体電解質型燃料電池スタックが発電可能なように、前記燃料ガス及び支燃性ガスの供給状態を制御するガス供給制御手段と、前記第1固体電解質型燃料電池スタックの作動によって発電された電力を、前記ヒータを備えた前記第2固体電解質型燃料電池スタックのヒータに供給するヒータ電力供給制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0035】
本発明では、第1固体電解質型燃料電池スタックの温度(例えば発電可能な温度)を検知し、発電可能な温度にて、燃料ガス及び支燃性ガスの供給状態(特に燃料ガスの供給状態)を制御し、第1固体電解質型燃料電池スタックの作動によって発電された電力を、第2固体電解質型燃料電池スタックのヒータに供給する。
【0036】
従って、所定の(例えばヒータの加熱によって発電可能な状態となった)固体電解質型
燃料電池スタックによって発電された電力を、他の固体電解質型燃料電池スタックの加熱に用いるので、その加熱を効率良く行うことができる。これによって、自動車やトラックなどの移動体に搭載する場合や、電力需要が生活のスタイルにより変動する家庭用コジェネ発電機に好適に適用できる。つまり、本発明は、起動、停止、或いは出力の調整が頻繁であったり、起動に利用できる最大電力や燃料に制限があるSOFCシステムに好適である。
【0037】
尚、第1固体電解質型燃料電池スタックにて発電した電力及び燃料排ガスを、第2固体電解質型燃料電池スタックに供給すると、第2固体電解質型燃料電池スタックを迅速に加熱できるので、一層好適である。
【0038】
・ここで、固体電解質体は、電池の作動時に燃料極に導入される燃料ガス又は空気極に導入される支燃性ガスのうちの一方の一部をイオンとして移動させることができるイオン伝導性を有する。このイオンとしては、例えば、酸素イオン及び水素イオン等が挙げられる。また、燃料極は、還元剤となる燃料ガスと接触し、セルにおける負電極として機能する。空気極は、酸化剤となる支燃性ガスと接触し、セルにおける正電極として機能する。
【0039】
・固体電解質体の材料としては、例えばZrO2系セラミック、LaGaO3系セラミック、BaCeO3系セラミック、SrCeO3系セラミック、SrZrO3系セラミック、及びCaZrO3系セラミック等が挙げられる。
【0040】
・インターコネクタを構成するセラミックとしては、酸化物系セラミック、窒化物系セラミック、炭化物系セラミック等の各種のセラミックを用いることができる。酸化物系セラミックとしては、アルミナ、ムライト、ジルコニア、スピネル等が挙げられる。また、窒化物系セラミックとしては、窒化ケイ素、サイアロン、窒化チタン、窒化アルミニウム等が挙げられる。更に、炭化物系セラミックとしては、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化アルミニウム等が挙げられる。
【0041】
尚、アルミナを含有するインターコネクタでは、アルミナの含有量は70質量%以上、特に80質量%以上、更に90質量%以上であることが好ましく、100質量%であることがより好ましい。インターコネクタは緻密化されていることが好ましく、例えばアルミナの場合、その相対密度が90%以上、特に93%以上、更に95%以上であることが好ましい。
【0042】
・インターコネクタがアルミナを主成分とする場合、固体電解質体としては、ジルコニア、或いはアルミナを含むジルコニアを採用できる。このようにジルコニアにアルミナを含有させることで、固体電解質体とインターコネクタとをより強固に接合させることができる。
【0043】
また、アルミナを含むジルコニアを採用した場合には、アルミナは0.1〜20質量%、特に0.5〜10質量%、更に1〜6質量%が好ましい。この場合、固体電解質体とインターコネクタとは、例えばアルミナとジルコニアとを含有する中間セラミック層を介して接合されていることが好ましい。この中間セラミック層におけるアルミナの含有量は、例えば30〜60質量%、特に40〜50質量%とすることができる。中間セラミック層を用いることで、固体電解質体とインターコネクタとをより強固に接合させることができる。
【0044】
尚、上記「アルミナを主成分とする」とは、アルミナが70質量%以上、特に80質量%以上、更に90質量%(100質量%であってもよい。)であることを意味する。
・燃料極の材料としては、例えば、Ni及びFe等の金属と、Sc、Y等の希土類元素のうちの少なくとも1種により安定化されたジルコニア等のZrO2系セラミック、CeO2系セラミック及び酸化マンガン等のセラミックのうちの少なくとも1種との混合物などが挙げられる。また、Pt、Au、Ag、Pd、Ir、Ru、Rh、Ni及びFe等の金属が挙げられる。これらの金属は1種のみでもよいし、2種以上の金属の合金でもよい。更に、これらの金属及び/又は合金と、上記セラミックの各々の少なくとも1種との混合物(サーメットを含む)が挙げられる。また、Ni及びFe等の金属の酸化物と、上記セラミックの各々の少なくとも1種との混合物などが挙げられる。
【0045】
・空気極の材料としては、例えば、各種の金属、金属の酸化物、金属の複酸化物等を用いることができる。金属としては、Pt、Au、Ag、Pd、Ir、Ru及びRh等の金属又は2種以上の金属を含有する合金が挙げられる。更に、金属の酸化物としては、La、Sr、Ce、Co、Mn及びFe等の酸化物(La23、SrO、Ce23、Co23、MnO2及びFeO等)が挙げられる。また、複酸化物としては、少なくともLa、Pr、Sm、Sr、Ba、Co、Fe及びMn等を含有する複酸化物(La1-xSrxCoO3系複酸化物、La1-xSrxFeO3系複酸化物、La1-xSrxCo1-yFey3系複酸化物、La1-xSrxMnO3系複酸化物、Pr1-xBaxCoO3系複酸化物及びSm1-xSrxCoO3系複酸化物等)が挙げられる。
【0046】
・燃料極と空気極とは、例えばインターコネクタを貫くように形成された導電性を有する材料(例えば電池ビア導体部の構成材料)により接続される。また、ヒータは、例えばインターコネクタを貫くように形成された導電性を有する材料(例えばヒータビア導電部の構成材料)により電力を印加できるように接続されている。
【0047】
この導電性を有する材料としては、金属及び導電性セラミック等を採用できる。この金属としては、銀、銅、パラジウム、白金、ニッケル、金及びタングステン等が挙げられる。この金属は、単体であってもよいし、2種以上の金属が含有される合金であってもよい。
【0048】
更に、導電性セラミックとしては、La1-xxCrO3(MはCa、Sr等のアルカリ土類金属である。)などが挙げられ、単体でもよく、上記金属との複合体でもよい。また、ビア導体を導電性セラミックにより形成し、且つ燃料極及び空気極との接触面に白金等からなる金属層を設けることで、接触抵抗を低減させた態様とすることもできる。
【0049】
・ヒータの材料としては、白金、タングステン、二硫化モリブデン等を採用できる。
・SOFCスタック等を用いて発電させる場合、燃料極側には燃料ガスを導入し、空気極側には支燃性ガスを導入する。燃料ガスとしては、水素、還元剤となる炭化水素、水素と炭化水素との混合ガス、及びこれらのガスを所定温度の水中を通過させ加湿した燃料ガス、これらのガスに水蒸気を混合させた燃料ガス等が挙げられる。炭化水素は特に限定されず、例えば、天然ガス、ナフサ、石炭ガス化ガス等が挙げられる。この燃料ガスとしては水素が好ましい。これらの燃料ガスは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。また、50体積%以下の窒素及びアルゴン等の不活性ガスを含有していてもよい。
【0050】
支燃性ガスとしては、酸素と他の気体との混合ガス等が挙げられる。更に、この混合ガスには80体積%以下の窒素及びアルゴン等の不活性ガスが含有されていてもよい。これらの支燃性ガスのうちでは安全であって、且つ安価であるため、空気(約80体積%の窒素が含まれている。)が好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】固体電解質型燃料電池スタック及びその燃料供給ジョイント等を示す斜視図である。
【図2】固体電解質型燃料電池スタックの要部を分解して示す斜視図である。
【図3】インターコネクタの隔壁を示す平面図である。
【図4】固体電解質型燃料電池スタックの要部を分解し拡大して示す斜視図である。
【図5】(a)は固体電解質型燃料電池スタックの要部を図3のD2にて破断して示す断面図、(b)は固体電解質型燃料電池スタックの要部を図3のD1にて破断して示す断面図である。
【図6】未焼成燃料電池セル用積層シートを分解して示す模式的な平面図である。
【図7】インターコネクタの隔壁となる未焼成セラミックシートを分解して示す説明図である。
【図8】未焼成セラミックインターコネクタ用積層シートを分解して示す模式的な平面図である。
【図9】複数の未焼成ユニットセル用複合シートが積層されてなる複合体が圧着された圧着体の模式的な斜視図である。
【図10】圧着体を図9のD3にて切断した断面を模式的に示す断面図である。
【図11】固体電解質型燃料電池システムを示す説明図である。
【図12】固体電解質型燃料電池システムの電気的構成を示す説明図である。
【図13】固体電解質型燃料電池システムの制御内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0052】
次に、本発明の最良の形態の例(実施例)について、すなわち、固体電解質型燃料電池スタック、固体電解質型燃料電池モジュール、及び固体電解質型燃料電池システムの実施例について説明する。
【実施例1】
【0053】
[1]まず、固体電解質型燃料電池スタック(SOFCスタック)について説明する。
尚、以下では、「固体電解質型」を省略する
図1に示す様に、燃料電池スタック1は、直方体形状であり、長尺の長方形で板状(短冊状)の燃料電池セル3等を、その厚み方向に多数積層したものである。
【0054】
この燃料電池スタック1は、矢印A方向に燃料ガスを供給するとともに、(矢印A方向と垂直の)矢印B方向に支燃料ガスである空気を供給するものである。また、燃料ガスの供給側の開口端5と排出側の開口端7とは、それぞれ一方が開口した箱状の金属製の燃料供給ジョイント9、11で覆われている。尚、各燃料供給ジョイント9、11には、ガス流路となるガス配管(パイプ)13、15が接続されている。
【0055】
図2に一部を分解して示す様に、燃料電池スタック1では、短冊状の第1燃料電池セル17と同形状の第2燃料電池セル19との間に、両燃料電池セル17、19を分離するように、短冊状のセラミック製インターコネクタ21が配置され、それらが積層方向に一体となるように接合されている。尚、両燃料電池セル17、19及びインターコネクタ21の平面形状は、縦15mm×横100mmの同一形状である。
【0056】
第1燃料電池セル17は、短冊状の第1固体電解質体23を備え、その一面(図2の上面)に第1燃料極25を有するとともに、他面(下面)に第1空気極27を有している。同様に、第2燃料電池セル19は、短冊状の第2固体電解質体29を備え、その一面(図2の上面)に第1燃料極31を有するとともに、他面(下面)に第2空気極33を有している。
【0057】
このうち、各燃料極25、31は、第1固体電解質体23よりも幅が狭く、第1固体電解質体23の長手方向に伸びる帯状の電極である。一方、各空気極27、33は、それぞれ5個のブロックに分離されており、各燃料極25、31と直交するように並列に配置された長方形の電極である。
【0058】
また、インターコネクタ21は、セラミック製の短冊状の隔壁35と、その隔壁35の一面に配置された6個のセラミック製の第1セパレータ37と、他面に配置された一対のセラミック製の第2セパレータ39とを備えている。尚、インターコネクタ21を構成するセラミック材料としては同一の材料を用いることが好ましい。
【0059】
このうち、隔壁35は、上板部41及び下板部43の間にヒータ45が配置された構成である。つまり、ヒータ45は、上板部41及び下板部43に挟まれるようにして隔壁35の内部に形成されている。
【0060】
また、第1セパレータ37は、隔壁35に密着して、隔壁35の長手方向と垂直にそれぞれ平行となるように配置されており、ここでは、5個の第1空気極27の両側(隔壁35の長手方向の両側)に位置するように6箇所に配置されている。一方、第2セパレータ39は、下板部43の長手方向に沿って、第2燃料極31の左右両側(図5参照)に位置するように2個配置されている。
【0061】
この第1セパレータ37によって空気流路aが形成され、第2セパレータ39によって燃料ガス流路fが形成される(図4及び図5(a)参照)。つまり、第1空気極27の下面とインターコネクタ21の上面との間に空間が形成され、これが空気流路aとなる。一方、第2燃料極31の上面とインターコネクタ21の下面との間に空間が形成され、これが燃料ガス流路fとなる。尚、1つのインターコネクタ21において、6個の第1セパレータ37によって5箇所の空気流路aが形成され、2個の第2セパレータ39によって1箇所の燃料ガス流路fが形成される。
【0062】
特に本実施例では、インターコネクタ21の隔壁35の内部にヒータ45が配置されているが、このヒータ45は、図3に示す様に、隔壁35の長手方向に沿って(即ち燃料ガス流路fに沿って)伸びるように配置されている。
【0063】
つまり、ヒータ45は、ヒータ45に電力を供給するための左右のヒータビア導体部47、48からリード部51、53が伸びており、このリード部51、53から先端側(図3右側)に発熱部55が形成されている。詳しくは、燃料ガスが供給される側である図3の左端の第1ブロックB1まではリード部51、53が伸びており、それより先の第2〜4ブロックB2〜B4に発熱部35が形成されており、燃料ガスの排出側の第5ブロックB5には、ヒータ45が形成されていない。尚、第1〜5ブロックB1〜B5とは、5個の空気極27、33(従って空気流路a)に対応した領域を示している。
【0064】
更に、図4に要部を拡大し分解して示す様に、第1燃料電池セル17の下面側の第1空気極27からセル表面に沿って伸びる空気極接続端子57と、第2燃料電池セル19の上面側の第2燃料極31からセル表面に沿って伸びる燃料極接続端子57とは、インターコネクタ21をその板厚方向に貫通する電池ビア導体部59により電気的に接続されている。これにより、第1燃料電池セル17と第2燃料電池セル17とが直列に接続される。
【0065】
前記電池ビア導体部59は、インターコネクタ21の所要箇所に設けられたビアホール60に導電材料を充填し、焼成することにより形成することができる。この電池ビア導体部59は、少なくとも1個形成されておればよいが、第1空気極27と第2燃料極31との電気的な導通の観点からは、多数個形成されていることが好ましく、例えば、2〜8個形成されていることが好ましい。
【0066】
尚、第1空気極27は、第1燃料電池セル17の発電効率の観点からは、インターコネクタ21が接合されている部分以外の全面に設けられていることが好ましく、第2燃料極
31も、第2燃料電池セル19の発電効率の観点からは、インターコネクタ21が接合されている部分以外の全面に設けられていることが好ましい。
【0067】
また、ヒータビア導体部47、48は、前記図4及び図5(b)に示す様に、燃料電池スタック1をその積層方向に貫く様に、左右一対形成されている。つまり、ヒータビア導体部47、48は、インターコネクタ21の燃料供給側(図4の手前)の第1セパレータ37、隔壁35の燃料供給側の端部、左右の第2セパレータ39の燃料供給側の端部を貫くとともに、第1燃料電池セル17の第1固体電解質体23の燃料供給側の端部、第2燃料電池セル19の第2固体電解質体29の燃料供給側の端部を貫くように形成されている。
【0068】
このヒータビア導体部47、48は、インターコネクタ21や第1固体電解質体23及び第2固体電解質体29などの所要箇所に設けられたビアホール61、62を用いて、電池ビア導体部59と同様にして形成される。
【0069】
尚、図5(b)に示す様に、ビアホール61、62のうち、第1固体電解質体23及び第2固体電解質体29を貫く部分には、絶縁性を確保するために、ヒータビア導体部47、48の外周を覆う様に、環状の絶縁層64が形成されている。
【0070】
[2]次に、上述した燃料電池スタック1の製造方法について説明する。
燃料電池スタック1の製造方法は、以下に述べる様に、未焼成燃料電池セル用積層シート作製工程、未焼成セラミックインターコネクタ用積層シート作製工程、未焼成ユニットセル用複合シート作製工程、複合体形成工程、圧着体形成工程、未焼成燃料電池スタック作製工程、及び燃料電池スタック作製工程、を備える。
(A)未焼成燃料電池セル用積層シートの作製
a)未焼成固体電解質シートの形成
固体電解質として8YSZ(8モル%のY23により安定化されたZrO2)粉末100質量部(以下、「部」という。)、アルミナ粉末1部、有機バインダとしてポリビニルアルコール、及び有機溶媒としてブチルカルビトールを混合し、未焼成固体電解質シート用スラリーを調製した。その後、このスラリーを用いてドクターブレード法によりポリエステルフィルムの表面に、各々110mm×100mm×150μm(厚さ)の寸法の未焼成固体電解質シート71を形成した(図6参照)。
【0071】
また、パンチング(打ち抜き)により、表面における開口径が1000μm(1mm)の5対のビアホール61、62を穿設した。そして、そのビアホール61、63の中に、外径1000μm、内径500μmのドーナツ状に、アルミナを主成分とする絶縁ペーストを塗布乾燥し、その後、導電粉末として80質量%の白金粉末を含有する導体ペーストを、穴埋め印刷によりビアホール61、62(詳しくは、絶縁ペーストを塗布した内側の貫通孔)内に充填した。次いで、120℃で30分間乾燥してペーストに含有される有機溶媒を除去することで、未焼成固体電解質シート71における5対の未焼成ヒータビア導体部73、74を形成した。
【0072】
b)未焼成燃料極用帯状シートの形成
酸化ニッケル(NiO)粉末80部、上記8YSZ粉末20部、分散剤としてジエチルアミン、及び有機溶媒としてトルエンとメチルエチルケトン、を混合し、その後、可塑剤としてジブチルフタレート、有機バインダとしてポリビニルアルコールを更に配合し、混合して未焼成燃料極用スラリーを調製した。次いで、このスラリーを、上記a)において形成した未焼成固体電解質シート71のそれぞれの一面にスクリーン印刷し、12mm×90mm×10μm(厚さ)の寸法の未焼成燃料極用帯状シート73を各々5本並行に形成した。尚、それぞれの帯状の未焼成シートの間隔は6mmとした。
【0073】
c)未焼成空気極用帯状シートの形成
平均粒径2μmの市販のLa0.6Sr0.4(Co0.2Fe0.8)O3(以下、「LSCF」と表記する。)粉末100部に、バインダとしてポリビニルアルコール13部及び有機溶媒としてブチルカルビトール35部を混合して未焼成空気極用スラリーを調製した。その後、このスラリーを、上記a)において形成した未焼成固体電解質シート71の他面にスクリーン印刷し、12mm×90mm×10μm(厚さ)の寸法の未焼成空気極用帯状シート75を各々5本並行に形成した。
【0074】
尚、これらの未焼成空気極用帯状シート75は、それぞれ上記b)において形成した未焼成燃料極用帯状シート73と直交する方向に配列させた。また、各々の帯状の未焼成空気極用シート75の間隔は6mmとした。
【0075】
このようにして、未焼成燃料電池セル用積層シート77を作製した。
(B)未焼成セラミックインターコネクタ用積層シートの作製
a)未焼成積層シートの形成
アルミナ粉末100部、上記8YSZ粉末20部、マグネシア粉末2部及びシリカ粉末2部を混合し、ボールミルにより10時間湿式粉砕し、その後、脱水し、乾燥した。次いで、この混合粉末と、有機バインダとしてメタクリル酸イソブチルエステル及びニトロセルロース、並びに可塑剤としてジオクチルフタレート、更に有機溶媒としてトリクロールエチレン及びn−ブタノールを配合し、ボールミルにより混合して未焼成インターコネクタ用スラリーを調製した。このスラリーを減圧脱泡させ、その後、流延させてシートとし、次いで、有機溶媒を揮発させ、110mm×100mm×50μm(厚さ)の寸法の1対の未焼成セラミックシート79、81(図7参照)を形成した。
【0076】
この一対の未焼成セラミックシート79、81のうち、一方の未焼成セラミックシート81の表面に、図8に示す様なヒータパターン83を形成した。
具体的には、白金スポンジ75重量部、白金ブラック20重量部、アルミナ5重量部の合計100重量部に対して、有機バインダとしてニトロセルロース、溶媒としてn−ブタノールを加え、スクリーン印刷用に粘度を適切に調整した導電ペーストを作成し、この導電ペーストを用いてスクリーン印刷してヒータパターン83を形成した。つまり、同図の左右方向に、後に形成される各インターコネクタ21に対応する様に、5列のヒータパターン83を形成した。
【0077】
次に、ヒータパターン83を間に挟む様にして一対の未焼成セラミックシート79、81を積層し、1枚の未焼成セラミックシート85とした。尚、図8ではヒータパターン83の位置が明瞭となる様に、実線で示している。
【0078】
一方、同様にして同寸法(但し、厚さは150μmである。)の未焼成セラミックシートを2枚形成し、この2枚の未焼成セラミックシートの各々に、パンチングによって、上記(A)、c)で形成した未焼成燃料極用帯状シート73及び未焼成空気極用帯状シート75と同寸法の12mm×90mmの開口部を等間隔に5本並設し、未焼成第1セラミック開口シート87及び未焼成第2セラミック開口シート89を形成した。その後、未焼成セラミックシート85の一面及び他面のそれぞれに、未焼成第1セラミック開口シート87と未焼成第2セラミック開口シート89とを、各々が有する帯状の開口部の方向が直交するように積層した。
【0079】
b)ビア導体部の形成
上記のようにして形成された未焼成積層シート、即ち、未焼成セラミックシート85と未焼成第1及び第2セラミック開口シート87、89とが重なっている部分の所定箇所に、パンチングにより表面における開口径が500μmの(電池ビア導体部用の)ビアホール60を穿設した。その後、導電粉末として80質量%の白金粉末を含有する導体ペーストを、穴埋め印刷によりビアホール60内に充填した。次いで、120℃で30分間乾燥してペーストに含有される有機溶媒を除去することで、未焼成電池ビア導体部91を形成した。
【0080】
また、同様にして、(ヒータビア導体部用の)5対のビアホール61、62を穿設した。その後、同様な導体ペーストをビアホール61、62内に充填し、有機溶媒を除去して、未焼成ヒータビア導体部93、94を形成した。
【0081】
このようにして未焼成セラミックインターコネクタ用積層シート95を作製した。
(C)未焼成ユニットセル用複合シートの作製
3個の未焼成燃料電池用積層シート77と、2個の未焼成セラミックインターコネクタ用積層シート95とを交互に積層した。
【0082】
つまり、未焼成セラミックインターコネクタ用積層シート95の未焼成第1セラミック開口シート87の側に、未焼成燃料電池セル用積層シート77の未焼成空気極用帯状シート75が嵌め込まれるように積層するとともに、未焼成セラミックインターコネクタ用積層シート95の未焼成第2セラミック開口シート89の側に、他の未焼成燃料電池セル用積層シート77の未焼成燃料極用帯状シート73が嵌め込まれるように積層した。以下、同様にして順次積層した。
【0083】
そして、これらの5層からなる積層体の外側に、未焼成セラミック端面シート(図示せず)を積層して未焼成ユニットセル用複合シート(図示せず)を作製した。
(D)複合体の形成
上記(C)で作製した30個の未焼成ユニットセル用複合シートを積層し、仮圧着して複合体とした。各々の未焼成ユニットセル用複合シートは、それぞれ3層の未焼成燃料電池セル用積層シート77を有するため、この複合体は、合計90層の未焼成燃料電池セル用積層シート77を備えることになる。
(E)圧着体形成工程
上記(D)で形成した複合体を、シリコンゴム製の型枠内に配置し、その後、85℃に昇温させ、減圧下、積層方向に98MPaの圧力で圧着し、直方体形状の圧着体97を形成した(図9参照)。尚、図10に圧着体の断面を示す様に、未焼成燃料電池セル用積層シート77と未焼成セラミックインターコネクタ用積層シート95とは、アルミナとジルコニアとを含有する中間セラミック層98を介して接合されている。
(F)未焼成燃料電池スタックの作製
上記(E)で形成した圧着体97を、前記図9に示す様に、平面形状が長方形(短冊状)の燃料電池スタック1の形状に合わせて、圧着方向(同図下方)に、短冊状に切断して未焼成燃料電池スタック99を作製した。
【0084】
具体的には、圧着体97を、ワイヤーソー切断装置のステージに固定し、その後、ステージを上昇させて圧着体97の上端面に切断用ワイヤーを当接させ、研削液を液供給装置より供給しながら、ワイヤーを平均速度400m/分で走行させて一方向に切断し、縦18mm×横110mm×高さ50mmの柱状の未焼成燃料電池スタック99を5本作製した。
【0085】
尚、未焼成燃料電池スタック99の切断に先立ち、圧着体97の4辺の端部も所定幅(2mmの幅)で切断して除去しておく。
(G)燃料電池スタックの作製
上記(F)で作製した未焼成燃料電池スタック99を、焼成炉に収容し、大気雰囲気下、260℃で5時間保持して有機バインダを除去し、引き続いて、炉内の温度を1430℃まで昇温させ、この温度で2時間保持して焼成を行い、燃料電池スタック1を作製した。
【0086】
この燃料電池スタック1には、前記図1に示す様に、その燃料ガスの供給及び排出を行う両開口端5、7に、SUS304製の燃料供給ジョイント9、11を接合する。詳しくは、燃料供給ジョイント9、11の内壁と接する燃料電池スタック1の開口端5、7の外周部に、ニッケルを主成分とするメッキ層(図示せず)を形成し、その表面に、AgとCuの合金を用いたロー付けによって、燃料供給ジョイント9、11を接合する。尚、ロー付けの温度は750℃程度で、ジョイント部の酸化を防止するため、水素雰囲気ないし窒素雰囲気下でロー付けを行うことが望ましい。
【0087】
また、図示しないが、燃料電池スタック1の上部には、燃料電池スタック1により発電された電力を取り出すため及びヒータ45に電力を供給するために、配線パターンが設けられた下端側基板が配置され、下部にも所定の配線パターンが設けられた上端側基板が配置される。
【0088】
[3]次に、燃料電池モジュールを備えた燃料電池システムについて説明する。
本実施例の燃料電池システムは、図11に示す様に、(複数の燃料電池スタック101、103からなる)燃料電池モジュールの各燃料電池スタック101、103を順次起動させるものである。
【0089】
具体的には、例えば、第1燃料電池スタック101の起動時に、ヒータ45により第1燃料電池スタック101を加熱して、その起動を促進し、第1燃料電池スタック101による発電が可能な温度に達したら発電を行って、その電力を第2燃料電池スタック103のヒータ45に供給する。同時に、第1燃料電池スタック101から排出される燃料排ガスを、第2燃料電池スタック103に供給し、第2燃料電池スタック103の加熱を促進するものである。
【0090】
a)まず、燃料電池システムの全体構成について説明する。
本実施例では、燃料電池スタック101、103が複数個配置され、それらが電気的に直列に接続されて、所定の出力250Vが得られる燃料電池モジュールが構成されている。尚、以下では、説明を簡易化するために2個の燃料電池スタック101、103について説明する。
【0091】
まず、第1燃料電池スタック101及び第2燃料電池スタック103は、1つの断熱容器105に収容されており、断熱容器105には空気が充填されて、各燃料電池スタック101、103の空気流路aに空気が供給されるようになっている。
【0092】
第1燃料電池スタック101の燃料供給側(同図右側)には、第1燃料供給ジョイント107が接合され、第1燃料供給ジョイント107には、第1パイプ109が接続されている。この第1パイプ109には、電磁弁である第1開閉弁111が配置されている。また、第1燃料電池スタック101の燃料排出側(同図左側)には、第2燃料供給ジョイント113が接合され、第2燃料供給ジョイント113には、第2パイプ115が接続されている。この第2パイプ115には、電磁弁である第1三方向切替弁117が配置されている。
【0093】
従って、第1燃料電池スタック101では、燃料ガスは、同図右方の燃料供給源から、第1パイプ109及び第1燃料供給ジョイント107を介して、第1燃料電池スタック101の燃料流路fに供給される。また、その排出ガスは、第2燃料供給ジョイント113から第2パイプ115を介して外部に排出されるか、第1三方向切替弁117により、第2燃料電池スタック103側に供給される。
【0094】
一方、第2燃料電池スタック103の燃料供給側には、第3燃料供給ジョイント119が接合され、第3燃料供給ジョイント119には、第3パイプ121が接続されている。この第3パイプ121には、電磁弁である第2開閉弁123及び第2三方向切替弁125が配置されている。また、第2燃料電池スタック103の燃料排出側には、第4燃料供給ジョイント125が接合され、第4燃料供給ジョイント125には、第4パイプ127が接続されている。この第4パイプ127には、電磁弁である第3三方向切替弁129が配置されている。
【0095】
従って、第2燃料電池スタック103では、燃料ガスは、同図右方の燃料供給源から、第3パイプ121及び第3燃料供給ジョイント119を介して、第2燃料電池スタック103の燃料流路fに供給され、その排出ガスは、第4燃料供給ジョイント125から第4パイプ127を介して外部等に排出される。
【0096】
更に、本実施例では、第1三方向切替弁117と第2三方向切替弁125とを接続するように第5パイプ131が接続されている。
従って、第1三方向切替弁117により、第1燃料電池スタック101から排出される排ガスの流路を、外部への排出経路133と第5パイプ131への経路とに切り換えることができる。また、第2三方向切替弁125により、燃料ガスの原料供給経路135から第3燃料供給ジョイント119に到る経路(燃料ガスを第2燃料電池スタック103に供給する経路)と、第4パイプ131から第3燃料供給ジョイント119に到る経路(排ガスを第2燃料電池スタック103に供給する経路)とを切り換えることができる。
【0097】
b)次に、燃料電池システムを制御する電気的構成について説明する。
本実施例の燃料電池システムは、図12に示す様に、電子制御装置141により制御される。
【0098】
この電子制御装置141は、周知のマイコン143を主要部とする装置であり、その入力部145には、第1燃料電池スタック101の内部温度を検出する第1温度検出部147と、第2燃料電池スタック103の内部温度を検出する第2温度検出部149と、第1燃料電池スタック101の電圧(又は電流)を測定する第1電圧測定部151と、第2燃料電池スタック103の電圧(又は電流)を測定する第2電圧測定部153とが接続されている。
【0099】
一方、出力部155には、第1燃料電池スタック101のヒータ45の通電制御を行う第1ヒータ制御部(制御回路)157と、第2燃料電池スタック103のヒータ45の通電制御を行う第2ヒータ制御部(制御回路)159と第1、2開閉弁111、123と、第1〜3三方向切替弁117、125、129とが接続されている。
【0100】
ここで、前記温度検出部147としては、周知の温度センサを用いることができるが、ヒータ45の抵抗又は電力を取り出すための導電経路における抵抗から、温度を求めるようしてもよい。
【0101】
c)次に、燃料電池システムにおける制御内容について説明する。
図13のフローチャートに示す様に、まず、ステップ(S)100にて、第1燃料電池スタック101を加熱するために、第1ヒータ制御部157を駆動して、第1燃料電池スタック101内の各セルのヒータ45に通電する。
【0102】
続くS110では、第1燃料電池スタック101の内部温度T1が、所定の起動温度(例えば700℃)を上回ったか否かを判定する。ここで肯定判断されるとS120に進み、そうでない場合は待機する。
【0103】
S120では、第1燃料電池スタック101の内部温度T1が700℃を上回ったので、第1燃料電池スタック101に燃料ガスを供給するために、第1開閉弁111を開く。また、燃料排ガスを第2パイプ115側から第5パイプ側131に供給するように第1三方向切替弁117を切り替えるとともに、同燃料排ガスを第5パイプ側から第3燃料供給ジョイント119側に供給するために第2三方向切替弁125を切り替える。それとともに、第2燃料電池スタック103から排出される燃料排ガスが外部に排出されるように第3三方向切替弁129を切り替える。
【0104】
続くS130では、第1燃料電池スタック101が発電可能か否かを、第1燃料電池スタック101の開放電圧V1が、所定の基準電圧V0を上回るか否かで判定する。ここで肯定判断されるとS140に進み、一方否定判断されるとS180に進む。
【0105】
尚、第1燃料電池スタック101の開放電圧V1が、所定の基準電圧V0を上回ると、第1燃料電池スタック101の作動が開始されたことになる。
S180では、燃料ガスを供給してからの時間tが所定時間t0経過したか否かを判定し、経過しない場合は前記S120に戻る。
【0106】
一方、所定時間t0が経過した場合は、何らかの異常が発生したと見なして、S190にて、第1燃料電池スタック101による発電を停止する。具体的には、例えば第1開閉弁111を閉じる等の処理を行い、一旦本処理を終了する。
【0107】
また、前記S140では、第2燃料電池スタック103を加熱するために、第2ヒータ制御部159を駆動して、第1燃料電池スタック103内の各セルのヒータ45に通電する。
【0108】
続くS150では、第2燃料電池スタック103の内部温度T2が、所定の起動温度(例えば700℃)を上回ったか否かを判定する。ここで肯定判断されるとS160に進み、そうでない場合は待機する。
【0109】
S160では、第2燃料電池スタック103の内部温度T1が700℃を上回ったので、第2燃料電池スタック103に燃料ガスを供給するために、第2開閉弁123を開く。また、燃料排ガスの(第1燃料電池スタック101側への)供給を停止するために、第2パイプ115から排出経路133を介して外部に燃料排ガスを排出するように第1三方向切替弁117を切り替える。また、燃料排ガスの供給を止めて燃料ガスのみを第3燃料供給ジョイント119側に供給するために第2三方向切替弁125を切り替える。
【0110】
続くS170では、第2燃料電池スタック103が発電可能か否かを、第2燃料電池スタック103の開放電圧V2が、所定の基準電圧V0を上回るか否かで判定する。ここで肯定判断されると、以降の各燃料電池スタックの起動の処理に進む、一方否定判断されるとS200に進む。
【0111】
尚、第2燃料電池スタック103の開放電圧V2が、所定の基準電圧V0を上回ると、第1燃料電池スタック101の作動が開始されたことになる。
S200では、燃料ガスを供給してからの時間tが所定時間t0経過したか否かを判定し、経過しない場合は前記S170に戻る。
【0112】
一方、所定時間t0が経過した場合は、何らかの異常が発生したと見なして、S210にて、第2燃料電池スタック103による発電を停止する。具体的には、例えば第2開閉弁123を閉じる等の処理を行い、一旦本処理を終了する。
【0113】
以下、同様に、他の燃料電池スタックの起動のための処理を、燃料電池スタックの数だけ繰り返して順次行う。
[4]次に、本実施例の効果について説明する。
【0114】
本実施例では、第1燃料電池スタック101の内部に配置されたヒータ45に通電し、第1燃料電池スタック101の温度が発電可能な温度に達した場合には、第1燃料電池スタック101に燃料ガスを供給し、第1燃料電池スタック101にて発電を開始している。そして、第1燃料電池スタック101にて発電した電力を、第2燃料電池スタック103のヒータ45に供給して、第2燃料電池スタック103を加熱している。それとともに、第1燃料電池スタック101から排出され高温の燃料排ガスを、第2燃料電池スタック103に供給している。
【0115】
従って、本実施例では、従来の外部から加熱する装置に比べて効率良く各燃料電池スタック101、103を加熱することができる。これによって、SOFCシステムの起動時に、少ない電力で速やかに発電に必要な温度まで加熱できるので、特に、SOFCシステムを、自動車やトラックなどの移動体に搭載する場合や、電力需要が生活のスタイルにより変動する家庭用コジェネ発電機に好適に適用できる。
【0116】
つまり、こうした用途においては、SOFCシステムの起動、停止、或いは出力の調整が頻繁であり、また、起動に利用できる最大電力や燃料に制限があるが、本実施例では、低電力で速やかに加熱できるので、移動体や家庭用に好適に利用することができる。
【0117】
また、金属製の燃料供給ジョイント107、113、119、125の接合部分は、セラミック部分に比べると耐熱性が低いが、本実施例では、ヒータ45は、各燃料電池スタック101、103の内部を重点的に加熱するように配置されている。よって、各燃料電池スタック101、103内部が発電可能な高温に達した場合でも、その接合部分の温度を一層低く保つことができるので、接合部分の劣化を効果的に抑制することができる。
【0118】
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
例えば前記実施例では、第1燃料電池スタックにて発電された電力及び燃料排ガスを、第2燃料電池スタックに供給しているが、電力及び燃料排ガスの一方のみを第2燃料電池スタックに供給してもよい。また、第2燃料電池スタックには、ヒータを配置しなくてもよい。
【符号の説明】
【0119】
1、101、103…固体電解質型燃料電池スタック
9、11、107、113、119、125…燃料供給ジョイント
17、19…固体電解質型燃料電池セル
23、29…固体電解質体
25、31…燃料極
27、33…空気極
35…インターコネクタ
45…ヒータ
111、123…開閉弁
117、123、129…三方向切替弁
141…電子制御装置
147、149…温度検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスに接する燃料極及び支燃性ガスに接する空気極を有する固体電解質体を備えた燃料電池セルが、複数個積層された固体電解質型燃料電池スタックにおいて、
前記スタックの内部に、ヒータを配置したことを特徴とする固体電解質型燃料電池スタック。
【請求項2】
前記各燃料電池セル間に、セラミック製のインターコネクタを備えた固体電解質型燃料電池スタックであって、
前記インターコネクタは、第1燃料電池セルの燃料極に供給する燃料ガスの流路と第2燃料電池セルの空気極に供給する支燃性ガスの流路とを分離する構成と、前記第1燃料電池セルの燃料極と第2燃料電池セルの空気極とを電気的に接続する導通部とを備えるとともに、前記ヒータを備えたことを特徴とする前記請求項1に記載の固体電解質型燃料電池スタック。
【請求項3】
前記インターコネクタの内部に、前記ヒータを備えたことを特徴とする前記請求項2に記載の固体電解質型燃料電池スタック。
【請求項4】
燃料ガスに接する燃料極及び支燃性ガスに接する空気極を有する固体電解質体を備えた燃料電池セルが、複数個積層された固体電解質型燃料電池スタックを、複数個備えた固体電解質型燃料電池モジュールにおいて、
前記複数の固体電解質型燃料電池スタックのうち、少なくとも1個のスタックを、前記請求項1〜3のいずれかに記載の固体電解質型燃料電池スタックとしたことを特徴とする固体電解質型燃料電池モジュール。
【請求項5】
前記各固体電解質型燃料電池スタックにおいて、少なくとも燃料ガスの供給を、前記各スタック独立して調節可能な構成としたことを特徴とする前記請求項4に記載の固体電解質型燃料電池モジュール。
【請求項6】
第1固体電解質型燃料電池スタックから排出される燃料排ガスを、第2固体電解質型燃料電池スタックに供給可能な構成としたことを特徴とする前記請求項4又は5に記載の固体電解質型燃料電池モジュール。
【請求項7】
前記第1固体電解質型燃料電池スタックの燃料排ガスの排気路を、第2固体電解質型燃料電池スタックの燃料ガスの供給路に接続するとともに、前記燃料排ガスを第2固体電解質型燃料電池スタックに供給する経路に、当該経路の開閉を制御する制御弁を備えたことを特徴とする前記請求項6に記載の固体電解質型燃料電池モジュール。
【請求項8】
前記複数の固体電解質型燃料電池スタックを、1つの断熱容器内に配置したことを特徴とする前記請求項4〜7のいずれかに記載の固体電解質型燃料電池モジュール。
【請求項9】
前記請求項4〜8のいずれかに記載の固体電解質型燃料電池モジュールの駆動を制御する制御手段を備えたことを特徴とする固体電解質型燃料電池システム。
【請求項10】
前記固体電解質型燃料電池システムの起動時に、前記ヒータを備えた第1固体電解質型燃料電池スタックのヒータに通電する通電制御手段と、
前記第1固体電解質型燃料電池スタックの温度を検知する温度検知手段と、
前記検知手段によって検知された温度が所定の温度に達した場合に、前記第1固体電解質型燃料電池スタックが発電可能なように、前記燃料ガス及び支燃性ガスの供給状態を制御するガス供給制御手段と、
前記燃料ガスの供給に伴って前記第1固体電解質型燃料電池スタックから排出される高温の燃料排ガスを、第2固体電解質型燃料電池スタックに供給する排ガス供給制御手段と、
を備えたことを特徴とする前記請求項9に記載の固体電解質型燃料電池システム。
【請求項11】
前記固体電解質型燃料電池システムの起動時に、前記ヒータを備えた第1固体電解質型燃料電池スタックのヒータに通電する通電制御手段と、
前記第1固体電解質型燃料電池スタックの温度を検知する温度検知手段と、
前記検知手段によって検知された温度が所定の温度に達した場合に、前記第1固体電解質型燃料電池スタックが発電可能なように、前記燃料ガス及び支燃性ガスの供給状態を制御するガス供給制御手段と、
前記第1固体電解質型燃料電池スタックの作動によって発電された電力を、前記ヒータを備えた前記第2固体電解質型燃料電池スタックのヒータに供給するヒータ電力供給制御手段と、
を備えたことを特徴とする前記請求項9又は10に記載の固体電解質型燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−178356(P2012−178356A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−106021(P2012−106021)
【出願日】平成24年5月7日(2012.5.7)
【分割の表示】特願2005−287655(P2005−287655)の分割
【原出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】