説明

固体電解質型燃料電池

【課題】燃料枯れ等の問題を回避しながら、良好な発電効率を得ることができる固体電解質型燃料電池を提供する。
【解決手段】本発明は、要求電力に応じた可変の電力を発電する固体電解質型燃料電池(1)であって、燃料電池モジュール(2)と、燃料電池モジュールから電流を取り出すインバータ(54)と、燃料供給手段(38)と、要求電力に応じて指令電流を設定する指令電流設定手段(110a)と、指令電流よりも高い追従性で要求電力に応答して実発電電流を決定し、この実発電電流を取り出すようにインバータを制御するインバータ制御手段(110b)と、実発電電流に基づいて、指令電流と実発電電流の差が減少されるように、指令電流を減少方向に補正する指令電流補正手段(110c)と、この補正された指令電流に基づいて燃料供給手段を制御する燃料制御手段(110d)と、を有することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質型燃料電池に係わり、特に、要求電力に応じた可変の電力を発電する固体電解質型燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代エネルギーとして、燃料(水素ガス)と空気とを用いて発電して電力を得ることができる燃料電池と、この燃料電池を稼働するための補機類とを備えた燃料電池装置が種々提案されている。
特開平7−307163号公報(特許文献1)には、燃料電池発電装置が記載されている。この燃料電池は、発電する電力が負荷に応じて変更されるように構成されている。
【0003】
ここで、図11を参照して、燃料電池を使用した電力供給システムを説明する。図11は、燃料電池を使用して住宅に電力を供給する従来のシステムの一例を示している。このシステムにおいては、住宅200で消費される電力は、燃料電池202及び系統電力204により賄われている。通常、住宅において消費される最大の消費電力は、燃料電池202で発電可能な最大定格電力よりも大きいので、燃料電池202を利用する住宅200においても系統電力204からその不足分が補われ、住宅には燃料電池202及び系統電力204から電力が供給される。さらに、燃料電池202による発電電力が系統電力204へ逆潮流することがないよう、住宅における消費電力が燃料電池202の最大定格電力を下回っている場合においても、一般に、住宅200の消費電力のうちの一部が系統電力204から供給されるようになっている。
【0004】
系統電力204は、送電線から送られた電力の電圧をカレントトランス206を介して低下させて供給される。燃料電池202は、住宅200が消費している電力のモニター信号をカレントトランス206から取得し、これに基づいて燃料電池202により発電する電力を変更している。即ち、燃料電池202は、カレントトランス206から取得したモニター信号に基づいて、燃料電池202が供給すべき電流を指示する指令電流Iiを決定し、この指令電流Iiを生成することができるよう、燃料供給量等が制御される。また、指令電流Iiは、住宅200の消費電力に関わらず、燃料電池202の最大定格電力に対応する値以下に設定される。
【0005】
燃料電池202に内蔵されている燃料電池モジュール208は、一般に極めて応答が遅いので、住宅200における消費電力の変化に追従して発電電力を変更することは困難である。このため、燃料電池モジュール208に発電量を指示する指令電流Iiの信号は、消費電力の変化に比べ、極めて緩やかに変化するよう、モニター信号にフィルター210を掛けることにより決定される。
【0006】
燃料電池202は、燃料電池モジュール208が指令電流Iiの電流を生成できる能力を持つよう、指令電流Iiに応じた量の燃料を燃料電池モジュール208に供給する。一方、インバータ212は、燃料電池モジュール208から直流電流Icを取り出し、これを交流に変換して住宅200に供給する。また、インバータ212が燃料電池モジュール208から取り出す電流Icは、常に指令電流Iiの値以下に設定され、燃料電池モジュール208の発電能力を超えないようになっている。指令電流Iiに基づいて決定される燃料供給量等に対応した発電能力以上の電流を燃料電池モジュール208から取り出すと、燃料電池モジュール208内の燃料電池セルに燃料枯れが発生し、燃料電池セルの寿命を著しく短縮したり、燃料電池セルを破壊する虞がある。
【0007】
一方、住宅200において消費される電力は急激に変動するため、消費電力が急減すると、住宅200の消費電力は、緩慢に変化される指令電流Iiに対応した電力よりも低くなる。このような状態においては、指令電流Iiに応じた燃料が供給され、燃料電池モジュール208が十分な電流を生成する能力を持っているにも関わらず、インバータ212が燃料電池モジュール208から取り出す電流Icは、指令電流Iiよりも大幅に小さいものとなる。
【0008】
特開平7−307163号公報記載の燃料電池発電装置においては、供給された燃料が改質器等を通って燃料電池セルに行き渡るまでの時間遅れを考慮して、遅れ設定器を設け、燃料電池モジュールから電流を取り出すタイミングを遅らせ、これにより燃料枯れを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−307163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特開平7−307163号公報記載の燃料電池発電装置においては、燃料枯れ等の問題を回避することができるものの、消費される電力が急激に減少された場合には、燃料電池モジュールに供給されている燃料は、取り出される電流に対して過剰なものであり、燃料電池全体の発電効率が低下するという問題がある。
【0011】
従って、本発明は、燃料枯れ等の問題を回避しながら、良好な発電効率を得ることができる固体電解質型燃料電池を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明は、要求電力に応じた可変の電力を発電する固体電解質型燃料電池であって、供給された燃料により発電する燃料電池モジュールと、この燃料電池モジュールから電流を取り出し、交流に変換するインバータと、燃料電池モジュールに燃料を供給する燃料供給手段と、要求電力の変化に応答して指令電流を設定する指令電流設定手段と、要求電力の変化に対して指令電流よりも高い追従性で要求電力に応答し、且つ指令電流以下の値になるように実発電電流を決定し、この実発電電流が燃料電池モジュールから取り出されるようにインバータを制御するインバータ制御手段と、実発電電流に基づいて、指令電流と実発電電流の差が減少されるように、指令電流を減少方向に補正する指令電流補正手段と、この補正された指令電流を発生可能な燃料が燃料電池モジュールに供給されるように、燃料供給手段を制御する燃料制御手段と、を有することを特徴としている。
【0013】
このように構成された本発明においては、指令電流設定手段が、要求電力の変化に応答して指令電流を設定する。インバータ制御手段は、要求電力の変化に対して指令電流よりも高い追従性で要求電力に応答し、且つ指令電流以下の値になるように実発電電流を決定すると共に、この実発電電流が燃料電池モジュールから取り出されるようにインバータを制御する。さらに、指令電流補正手段は、実発電電流に基づいて、指令電流と実発電電流の差が減少されるように、指令電流を減少方向に補正する。燃料制御手段は、補正された指令電流を発生可能な燃料が燃料電池モジュールに供給されるように、燃料供給手段を制御する。燃料電池モジュールは供給された燃料により発電し、インバータは燃料電池モジュールから電流を取り出して交流に変換する。
【0014】
このように構成された本発明によれば、指令電流設定手段は、要求電力の変化に応答して指令電流を設定するが、その応答性は、インバータ制御手段により設定される実発電電流の応答性よりも低くされている。この結果、要求電力の変化に応じて燃料電池モジュールへの燃料供給量が過敏に変化されることがないので、燃料電池モジュールの無用な温度降下を招いたり、出力を増加させたいときに燃料電池モジュールの温度上昇が遅れ、十分な電力を供給することができないという問題や、燃料電池モジュールが燃料枯れを起こすという問題を回避することができる。また、同時に、指令電流補正手段が、指令電流よりも応答性が高い実発電電流に基づいて指令電流を減少方向に補正する。このため、常に指令電流以下の値に設定される実発電電流の、指令電流との差が減少され、不要な燃料消費を抑制し、省エネルギーを実現することができると共に、固体電解質型燃料電池の総合効率を向上させることができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、指令電流補正手段は、指令電流と実発電電流の差が所定の偏差電流以上残存するように、指令電流を補正する。
このように構成された本発明によれば、指令電流補正手段は、指令電流と実発電電流の間に所定の偏差電流が残存するように、指令電流と実発電電流の差を減少させるので、再度出力電力を上昇させる際に燃料電池モジュールの温度上昇が遅れ、要求電力の上昇に対する応答が大幅に遅れるのを防止することができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、指令電流補正手段は、燃料電池モジュールの運転状態に応じて、所定の偏差電流を変更する。
このように構成された本発明によれば、偏差電流の値が燃料電池モジュールの運転状態に応じて変更されるので、運転の様々な局面において適切な偏差電流を設定することができる。この結果、偏差電流を減少させることにより不要な燃料消費を減少させる省エネ効果と、要求電力が上昇した際に、燃料電池モジュールが比較的迅速に要求電力に追従して、系統電力の消費を抑制する省エネ効果を両立することができる。
【0017】
本発明において、好ましくは、指令電流補正手段は、指令電流が小さいほど、所定の偏差電流を減少させる。
このように構成された本発明によれば、指令電流が小さいほど偏差電流が減少されるので、燃料電池モジュールの温度が低く、温度を維持するために燃料が必要になる燃料利用率の低い運転状態における運転効率のより一層の低下を防止することができる。
【0018】
本発明において、好ましくは、指令電流補正手段は、要求電力の変化が急激なほど、所定の偏差電流を増大させる。
このように構成された本発明によれば、要求電力の変化が急激な場合には偏差電流が大きくなるので、要求電力の増加局面において、燃料電池モジュールの温度上昇を促進することができ、燃料電池モジュールが比較的迅速に要求電力に追従して、系統電力の消費を抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の固体電解質型燃料電池によれば、燃料枯れ等の問題を回避しながら、発電効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態による燃料電池装置を示す全体構成図である。
【図2】本発明の一実施形態による燃料電池装置の燃料電池モジュールを示す正面断面図である。
【図3】図2のIII-III線に沿った断面図である。
【図4】本発明の一実施形態による燃料電池装置の燃料電池セルユニットを示す部分断面図である。
【図5】本発明の一実施形態による燃料電池装置の燃料電池セルスタックを示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態による燃料電池装置を示すブロック図である。
【図7】本発明の一実施形態による燃料電池装置の起動時の動作を示すタイムチャートである。
【図8】本発明の一実施形態による燃料電池装置の停止時の動作を示すタイムチャートである。
【図9】本発明の一実施形態による燃料電池装置の作用の一例を示すタイムチャートである。
【図10】制御部により実行される制御のフローチャートである。
【図11】燃料電池を使用して住宅に電力を供給する従来のシステムの一例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)を説明する。
図1は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)を示す全体構成図である。この図1に示すように、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)1は、燃料電池モジュール2と、補機ユニット4を備えている。
【0022】
燃料電池モジュール2は、ハウジング6を備え、このハウジング6内部には、断熱材(図示せず但し断熱材は必須の構成ではなく、なくても良いものである。)を介して密封空間8が形成されている。なお、断熱材は設けないようにしても良い。この密閉空間8の下方部分である発電室10には、燃料ガスと酸化剤(空気)とにより発電反応を行う燃料電池セル集合体12が配置されている。この燃料電池セル集合体12は、10個の燃料電池セルスタック14(図5参照)を備え、この燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16(図4参照)から構成されている。このように、燃料電池セル集合体12は、160本の燃料電池セルユニット16を有し、これらの燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されている。
【0023】
燃料電池モジュール2の密封空間8の上述した発電室10の上方には、燃焼室18が形成され、この燃焼室18で、発電反応に使用されなかった残余の燃料ガスと残余の酸化剤(空気)とが燃焼し、排気ガスを生成するようになっている。
また、この燃焼室18の上方には、燃料ガスを改質する改質器20が配置され、前記残余ガスの燃焼熱によって改質器20を改質反応が可能な温度となるように加熱している。さらに、この改質器20の上方には、改質器20の熱を受けて空気を加熱し、改質器20の温度低下を抑制するための空気用熱交換器22が配置されている。
【0024】
次に、補機ユニット4は、水道等の水供給源24からの水を貯水してフィルターにより純水とする純水タンク26と、この貯水タンクから供給される水の流量を調整する水流量調整ユニット28(モータで駆動される「水ポンプ」等)を備えている。また、補機ユニット4は、都市ガス等の燃料供給源30から供給された燃料ガスを遮断するガス遮断弁32と、燃料ガスから硫黄を除去するための脱硫器36と、燃料ガスの流量を調整する燃料流量調整ユニット38(モータで駆動される「燃料ポンプ」等)を備えている。さらに、補機ユニット4は、空気供給源40から供給される酸化剤である空気を遮断する電磁弁42と、空気の流量を調整する改質用空気流量調整ユニット44及び発電用空気流量調整ユニット45(モータで駆動される「空気ブロア」等)と、改質器20に供給される改質用空気を加熱する第1ヒータ46と、発電室に供給される発電用空気を加熱する第2ヒータ48とを備えている。これらの第1ヒータ46と第2ヒータ48は、起動時の昇温を効率よく行うために設けられているが、省略しても良い。
【0025】
次に、燃料電池モジュール2には、排気ガスが供給される温水製造装置50が接続されている。この温水製造装置50には、水供給源24から水道水が供給され、この水道水が排気ガスの熱により温水となり、図示しない外部の給湯器の貯湯タンクへ供給されるようになっている。
また、燃料電池モジュール2には、燃料ガスの供給量等を制御するための制御ボックス52が取り付けられている。
さらに、燃料電池モジュール2には、燃料電池モジュールにより発電された電力を外部に供給するための電力取出部(電力変換部)であるインバータ54が接続されている。
【0026】
次に、図2及び図3により、本発明の実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池モジュールの内部構造を説明する。図2は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池モジュールを示す側面断面図であり、図3は、図2のIII-III線に沿って断面図である。
図2及び図3に示すように、燃料電池モジュール2のハウジング6内の密閉空間8には、上述したように、下方から順に、燃料電池セル集合体12、改質器20、空気用熱交換器22が配置されている。
【0027】
改質器20は、その上流端側に純水を導入するための純水導入管60と改質される燃料ガスと改質用空気を導入するための被改質ガス導入管62が取り付けられ、また、改質器20の内部には、上流側から順に、蒸発部20aと改質部20bを形成され、これらの蒸発部20aと改質部20bには改質触媒が充填されている。この改質器20に導入された水蒸気(純水)が混合された燃料ガス及び空気は、改質器20内に充填された改質触媒により改質される。改質触媒としては、アルミナの球体表面にニッケルを付与したものや、アルミナの球体表面にルテニウムを付与したものが適宜用いられる。
【0028】
この改質器20の下流端側には、燃料ガス供給管64が接続され、この燃料ガス供給管64は、下方に延び、さらに、燃料電池セル集合体12の下方に形成されたマニホールド66内で水平に延びている。燃料ガス供給管64の水平部64aの下方面には、複数の燃料供給孔64bが形成されており、この燃料供給孔64bから、改質された燃料ガスがマニホールド66内に供給される。
【0029】
このマニホールド66の上方には、上述した燃料電池セルスタック14を支持するための貫通孔を備えた下支持板68が取り付けられており、マニホールド66内の燃料ガスが、燃料電池セルユニット16内に供給される。
【0030】
次に、改質器20の上方には、空気用熱交換器22が設けられている。この空気用熱交換器22は、上流側に空気集約室70、下流側に2つの空気分配室72を備え、これらの空気集約室70と空気分配室72は、6個の空気流路管74により接続されている。ここで、図3に示すように、3個の空気流路管74が一組(74a,74b,74c,74d,74e,74f)となっており、空気集約室70内の空気が各組の空気流路管74からそれぞれの空気分配室72へ流入する。
【0031】
空気用熱交換器22の6個の空気流路管74内を流れる空気は、燃焼室18で燃焼して上昇する排気ガスにより予熱される。
空気分配室72のそれぞれには、空気導入管76が接続され、この空気導入管76は、下方に延び、その下端側が、発電室10の下方空間に連通し、発電室10に余熱された空気を導入する。
【0032】
次に、マニホールド66の下方には、排気ガス室78が形成されている。また、図3に示すように、ハウジング6の長手方向に沿った面である前面6aと後面6bの内側には、上下方向に延びる排気ガス通路80が形成され、この排気ガス室通路80の上端側は、空気用熱交換器22が配置された空間と連通し、下端側は、排気ガス室78と連通している。また、排気ガス室78の下面のほぼ中央には、排気ガス排出管82が接続され、この排気ガス排出管82の下流端は、図1に示す上述した温水製造装置50に接続されている。
図2に示すように、燃料ガスと空気との燃焼を開始するための点火装置83が、燃焼室18に設けられている。
【0033】
次に図4により燃料電池セルユニット16について説明する。図4は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池セルユニットを示す部分断面図である。
図4に示すように、燃料電池セルユニット16は、燃料電池セル84と、この燃料電池セル84の上下方向端部にそれぞれ接続された内側電極端子86とを備えている。
燃料電池セル84は、上下方向に延びる管状構造体であり、内部に燃料ガス流路88を形成する円筒形の内側電極層90と、円筒形の外側電極層92と、内側電極層90と外側電極層92との間にある電解質層94とを備えている。この内側電極層90は、燃料ガスが通過する燃料極であり、(−)極となり、一方、外側電極層92は、空気と接触する空気極であり、(+)極となっている。
【0034】
燃料電池セル16の上端側と下端側に取り付けられた内側電極端子86は、同一構造であるため、ここでは、上端側に取り付けられた内側電極端子86について具体的に説明する。内側電極層90の上部90aは、電解質層94と外側電極層92に対して露出された外周面90bと上端面90cとを備えている。内側電極端子86は、導電性のシール材96を介して内側電極層90の外周面90bと接続され、さらに、内側電極層90の上端面90cとは直接接触することにより、内側電極層90と電気的に接続されている。内側電極端子86の中心部には、内側電極層90の燃料ガス流路88と連通する燃料ガス流路98が形成されている。
【0035】
内側電極層90は、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレードとの混合体、の少なくとも一種から形成される。
【0036】
電解質層94は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成される。
【0037】
外側電極層92は、例えば、Sr、Caから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンコバルタイト、銀、などの少なくとも一種から形成される。
【0038】
次に図5により燃料電池セルスタック14について説明する。図5は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池セルスタックを示す斜視図である。
図5に示すように、燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16を備え、これらの燃料電池セルユニット16の下端側及び上端側が、それぞれ、セラミック製の下支持板68及び上支持板100により支持されている。これらの下支持板68及び上支持板100には、内側電極端子86が貫通可能な貫通穴68a及び100aがそれぞれ形成されている。
【0039】
さらに、燃料電池セルユニット16には、集電体102及び外部端子104が取り付けられている。この集電体102は、燃料極である内側電極層90に取り付けられた内側電極端子86と電気的に接続される燃料極用接続部102aと、空気極である外側電極層92の外周面全体と電気的に接続される空気極用接続部102bとにより一体的に形成されている。空気極用接続部102bは、外側電極層92の表面を上下方向に延びる鉛直部102cと、この鉛直部102cから外側電極層92の表面に沿って水平方向に延びる多数の水平部102dとから形成されている。また、燃料極用接続部102aは、空気極用接続部102bの鉛直部102cから燃料電池セルユニット16の上下方向に位置する内側電極端子86に向って斜め上方又は斜め下方に向って直線的に延びている。
【0040】
さらに、燃料電池セルスタック14の端(図5では左端の奥側及び手前側)に位置する2個の燃料電池セルユニット16の上側端及び下側端の内側電極端子86には、それぞれ外部端子104が接続されている。これらの外部端子104は、隣接する燃料電池セルスタック14の端にある燃料電池セルユニット16の外部端子104(図示せず)に接続され、上述したように、160本の燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されるようになっている。
【0041】
次に図6により本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)に取り付けられたセンサ類等について説明する。図6は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)を示すブロック図である。
図6に示すように、固体電解質型燃料電池1は、制御部110を備え、この制御部110には、使用者が操作するための「ON」や「OFF」等の操作ボタンを備えた操作装置112、発電出力値(ワット数)等の種々のデータを表示するための表示装置114、及び、異常状態のとき等に警報(ワーニング)を発する報知装置116が接続されている。なお、この報知装置116は、遠隔地にある管理センタに接続され、この管理センタに異常状態を通知するようなものであっても良い。
【0042】
次に、制御部110には、以下に説明する種々のセンサからの信号が入力されるようになっている。
先ず、可燃ガス検出センサ120は、ガス漏れを検知するためのもので、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4に取り付けられている。
CO検出センサ122は、本来排気ガス通路80等を経て外部に排出される排気ガス中のCOが、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4を覆う外部ハウジング(図示せず)へ漏れたかどうかを検知するためのものである。
貯湯状態検出センサ124は、図示しない給湯器におけるお湯の温度や水量を検知するためのものである。
【0043】
電力状態検出センサ126は、インバータ54及び分電盤(図示せず)の電流及び電圧等を検知するためのものである。
発電用空気流量検出センサ128は、発電室10に供給される発電用空気の流量を検出するためのものである。
改質用空気流量センサ130は、改質器20に供給される改質用空気の流量を検出するためのものである。
燃料流量センサ132は、改質器20に供給される燃料ガスの流量を検出するためのものである。
【0044】
水流量センサ134は、改質器20に供給される純水(水蒸気)の流量を検出するためのものである。
水位センサ136は、純水タンク26の水位を検出するためのものである。
圧力センサ138は、改質器20の外部の上流側の圧力を検出するためのものである。
排気温度センサ140は、温水製造装置50に流入する排気ガスの温度を検出するためのものである。
【0045】
発電室温度センサ142は、図3に示すように、燃料電池セル集合体12の近傍の前面側と背面側に設けられ、燃料電池セルスタック14の近傍の温度を検出して、燃料電池セルスタック14(即ち燃料電池セル84自体)の温度を推定するためのものである。
燃焼室温度センサ144は、燃焼室18の温度を検出するためのものである。
排気ガス室温度センサ146は、排気ガス室78の排気ガスの温度を検出するためのものである。
改質器温度センサ148は、改質器20の温度を検出するためのものであり、改質器20の入口温度と出口温度から改質器20の温度を算出する。
外気温度センサ150は、固体電解質型燃料電池(SOFC)が屋外に配置された場合、外気の温度を検出するためのものである。また、外気の湿度等を測定するセンサを設けるようにしても良い。
【0046】
これらのセンサ類からの信号は、制御部110に送られ、制御部110は、これらの信号によるデータに基づき、水流量調整ユニット28、燃料流量調整ユニット38、改質用空気流量調整ユニット44、発電用空気流量調整ユニット45に、制御信号を送り、これらのユニットにおける各流量を制御するようになっている。
また、制御ユニット110は、インバータ54に、制御信号を送り、電力供給量を制御するようになっている。
【0047】
次に図7により本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)による起動時の動作を説明する。図7は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の起動時の動作を示すタイムチャートである。
最初は、燃料電池モジュール2を温めるために、無負荷状態で、即ち、燃料電池モジュール2を含む回路を開いた状態で、運転を開始する。このとき、回路に電流が流れないので、燃料電池モジュール2は発電を行わない。
【0048】
先ず、改質用空気流量調整ユニット44から改質用空気を第1ヒータ46を経由して燃料電池モジュール2の改質器20へ供給する。また、同時に、発電用空気流量調整ユニット45から発電用空気を第2ヒータ48を経由して燃料電池モジュール2の空気用熱交換器22へ供給し、この発電用空気が、発電室10及び燃焼室18に到達する。
この直ぐ後、燃料流量調整ユニット38からも燃料ガスが供給され、改質用空気が混合された燃料ガスが、改質器20及び燃料電池セルスタック14、燃料電池セルユニット16を通過して、燃焼室18に到達する。
【0049】
次に、点火装置83により着火して、燃焼室18にある燃料ガスと空気(改質用空気及び発電用空気)とを燃焼させる。この燃料ガスと空気との燃焼により排気ガスが生じ、この排気ガスにより、発電室10が暖められ、また、排気ガスが燃料電池モジュール2の密封空間8内を上昇する際、改質器20内の改質用空気を含む燃料ガスを暖めると共に、空気熱交換器22内の発電用空気も暖める。
【0050】
このとき、燃料流量調整ユニット38及び改質用空気流量調整ユニット44により、改質用空気が混合された燃料ガスが改質器20に供給されているので、改質器20において、式(1)に示す部分酸化改質反応POXが進行する。この部分酸化改質反応POXは、発熱反応であるので、起動性が良好となる。また、この昇温した燃料ガスが燃料ガス供給管64により燃料電池セルスタック14の下方に供給され、これにより、燃料電池セルスタック14が下方から加熱され、また、燃焼室18も燃料ガスと空気が燃焼して昇温されているので、燃料電池セルスタック14は、上方からも加熱され、この結果、燃料電池セルスタック14は、上下方向において、ほぼ均等に昇温可能となっている。この部分酸化改質反応POXが進行しても、燃焼室18では継続して燃料ガスと空気との燃焼反応が持続される。
【0051】
mn+xO2 → aCO2+bCO+cH2 (1)
【0052】
部分酸化改質反応POXの開始後、改質器温度センサ148により改質器20が所定温度(例えば、600℃)になったことを検知したとき、水流量調整ユニット28、燃料流量調整ユニット38及び改質用空気流量調整ユニット44により、燃料ガスと改質用空気と水蒸気とを予め混合したガスを改質器20に供給する。このとき、改質器20においては、上述した部分酸化改質反応POXと後述する水蒸気改質反応SRとが併用されたオートサーマル改質反応ATRが進行する。このオートサーマル改質反応ATRは、熱的に内部バランスが取れるので、改質器20内では熱的に自立した状態で反応が進行する。即ち、酸素(空気)が多い場合には部分酸化改質反応POXによる発熱が支配的となり、水蒸気が多い場合には水蒸気改質反応SRによる吸熱反応が支配的となる。この段階では、既に起動の初期段階は過ぎており、発電室10内がある程度の温度まで昇温されているので、吸熱反応が支配的であっても大幅な温度低下を引き起こすことはない。また、オートサーマル改質反応ATRが進行中も、燃焼室18では燃焼反応が継続して行われている。
【0053】
式(2)に示すオートサーマル改質反応ATRの開始後、改質器温度センサ146により改質器20が所定温度(例えば、700℃)になったことを検知したとき、改質用空気流量調整ユニット44による改質用空気の供給を停止すると共に、水流量調整ユニット28による水蒸気の供給を増加させる。これにより、改質器20には、空気を含まず燃料ガスと水蒸気のみを含むガスが供給され、改質器20において、式(3)の水蒸気改質反応SRが進行する。
【0054】
mn+xO2+yH2O → aCO2+bCO+cH2 (2)
mn+xH2O → aCO2+bCO+cH2 (3)
【0055】
この水蒸気改質反応SRは吸熱反応であるので、燃焼室18からの燃焼熱と熱バランスをとりながら反応が進行する。この段階では、燃料電池モジュール2の起動の最終段階であるため、発電室10内が十分高温に昇温されているので、吸熱反応が進行しても、発電室10が大幅な温度低下を招くこともない。また、水蒸気改質反応SRが進行しても、燃焼室18では継続して燃焼反応が進行する。
【0056】
このようにして、燃料電池モジュール2は、点火装置83により点火した後、部分酸化改質反応POX、オートサーマル改質反応ATR、水蒸気改質反応SRが、順次進行することにより、発電室10内の温度が徐々に上昇する。次に、発電室10内及び燃料電池セル84の温度が燃料電池モジュール2を安定的に作動させる定格温度よりも低い所定の発電温度に達したら、燃料電池モジュール2を含む回路を閉じ、燃料電池モジュール2による発電を開始し、それにより、回路に電流が流れる。燃料電池モジュール2の発電により、燃料電池セル84自体も発熱し、燃料電池セル84の温度も上昇する。この結果、燃料電池モジュール2を作動させる定格温度、例えば、600℃〜800℃になる。
【0057】
この後、定格温度を維持するために、燃料電池セル84で消費される燃料ガス及び空気の量よりも多い燃料ガス及び空気を供給し、燃焼室18での燃焼を継続させる。なお、発電中は、改質効率の高い水蒸気改質反応SRで発電が進行する。
【0058】
次に、図8により本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の運転停止時の動作を説明する。図8は、本実施形態により固体電解質型燃料電池(SOFC)の運転停止時の動作を示すタイムチャートである。
図8に示すように、燃料電池モジュール2の運転停止を行う場合には、先ず、燃料流量調整ユニット38及び水流量調整ユニット28を操作して、燃料ガス及び水蒸気の改質器20への供給量を減少させる。
【0059】
また、燃料電池モジュール2の運転停止を行う場合には、燃料ガス及び水蒸気の改質器20への供給量を減少させると同時に、改質用空気流量調整ユニット44による発電用空気の燃料電池モジュール2内への供給量を増大させて、燃料電池セル集合体12及び改質器20を空気により冷却し、これらの温度を低下させる。その後、改質器20の温度が所定温度、例えば、400℃まで低下したとき、燃料ガス及び水蒸気の改質器20への供給を停止し、改質器20の水蒸気改質反応SRを終了する。この発電用空気の供給は、改質器20の温度が所定温度、例えば、200℃まで低下するまで、継続し、この所定温度となったとき、発電用空気流量調整ユニット45からの発電用空気の供給を停止する。
【0060】
このように、本実施形態においては、燃料電池モジュール2の運転停止を行うとき、改質器20による水蒸気改質反応SRと発電用空気による冷却とを併用しているので、比較的短時間に、燃料電池モジュールの運転を停止させることができる。
【0061】
次に、図9及び図10を参照して、本発明の実施形態による固体電解質型燃料電池1の作用を説明する。図9は、本実施形態の固体電解質型燃料電池1の作用の一例を示すタイムチャートである。また、図10は、制御部110により実行される制御のフローチャートである。図10のフローチャートに示す処理は、主に、制御部110に内蔵された指令電流設定手段110a、インバータ制御手段110b、指令電流補正手段110c、及び燃料制御手段110dにより実行されるものである。具体的には、これら指令電流設定手段110a、インバータ制御手段110b、指令電流補正手段110c、及び燃料制御手段110dは、制御部110に内蔵されたマイクロプロセッサ、メモリ、及びこれらを作動させるプログラム等により構成される。
【0062】
まず、図9に示すタイムチャートは、住宅等の施設が消費している総需要電力(要求電力)を1段目に表し、総需要電力のうち固体電解質型燃料電池1によって供給される電力、即ち、インバータ54から出力されるインバータ出力電力を2段目に表し、指令電流Iiを3段目に表し、燃料電池モジュール2からインバータ54に取り出される電流である実発電電流Icを4段目に表している。
【0063】
図9の時刻t0〜t1においては、総需要電力は、細かな変動を含みながらも概ね増加傾向にあり、これに伴ってインバータ出力電力も緩やかに増加している。各時刻における総需要電力とインバータ出力電力の差に相当する電力は、系統電力から供給されている。なお、施設が消費する総需要電力は、総需要電力モニター信号Ms(図6)として制御部110に入力される。また、時刻t0〜t1においては、指令電流設定手段110aは、総需要電力の増加傾向に緩やかに追従するように、指令電流Iiを上昇させ、インバータ制御手段110bは、指令電流Iiを越えない範囲で実発電電流Icを緩やかに上昇させている。
【0064】
次いで、時刻t1においては、総需要電力が短期間急激に減少している。これに伴いインバータ制御手段110bは、燃料電池モジュール2からインバータ54に取り出す実発電電流Icを急激に減少させている。なお、インバータ54に取り出される実発電電流Icは、実発電電流モニター信号Mic(図6)として制御部110に入力される。また、インバータ54から出力されるインバータ出力電力も実発電電流Icとほぼ同様に変化されるが、インバータ54に内蔵されたキャパシタ等の作用により、実発電電流Icよりも若干変動が緩やかになっている。その後、インバータ制御手段110bは、総需要電力の増加に追従して、実発電電流Icを緩やかに上昇させている(時刻t1〜t4)。なお、総需要電力に対する実発電電流Icの追従性は、総需要電力に対する指令電流Iiの追従性よりも高く設定されている。
【0065】
一方、指令電流設定手段110aは、総需要電力に基づいて指令電流Iiを決定している。しかしながら、指令電流設定手段110aは、総需要電力の変化を大幅に平滑化して指令電流Iiを決定しているため、時刻t1における総需要電力の短期間の減少は指令電流Iiの設定には殆ど影響を与えることがない。このため、指令電流Iiは単調に増加するように設定される(図9における想像線)。従来の燃料電池においては、このようにして決定された指令電流Iiの値がそのまま使用され、これに基づいて燃料電池モジュール2への燃料供給量が決定されていた。
【0066】
これに対して、本実施形態の固体電解質型燃料電池1においては、上記のようにして決定された指令電流Iiの値が、指令電流Iiと実発電電流Icの差が減少されるように、指令電流補正手段110cによって減少方向に補正される(図9における破線)。燃料制御手段110dは、このように補正された指令電流Iiに基づいて燃料供給量を決定し、燃料供給手段である燃料流量調整ユニット38を制御する。
【0067】
次に、図10を参照して、本発明の実施形態による固体電解質型燃料電池1の作用を説明する。
まず、ステップS1においては、指令電流設定手段110aに、総需要電力が総需要電力モニター信号Msとして入力される。次に、ステップS2においては、指令電流設定手段110aは、入力された総需要電力に基づいて指令電流Iiを決定する。指令電流設定手段110aは、過去に入力された総需要電力の積分計算等により、極めて緩やかに変化するように指令電流Iiを決定する。また、指令電流Iiは、燃料電池モジュール2の最大定格電流以下の値に決定される。
【0068】
次に、ステップS3においては、総需要電力のうち、系統電力から供給されている電力が所定値以上か否かが判断される。即ち、インバータ54から出力される電力は系統電力への逆潮流を防止するため、総需要電力よりも所定の電力だけ小さい値になるように設定されている。ステップS3においては、この総需要電力に対するマージンが十分に確保されているか否かが判断される。マージンが十分でない場合には、ステップS4に進む。
【0069】
ステップS4においては、インバータ出力電力が、総需要電力の急激な落ち込み等により総需要電力を超えていないかが判断される。インバータ出力電力が総需要電力を超えている場合にはステップS5に進む。ステップS5において、インバータ制御手段110bは、逆潮流を回避すべく実発電電流Icを低下させる。さらに、この場合には、燃料電池モジュール2が発電している電力が総需要電力に対して大きすぎる状態であるため、指令電流Iiを実発電電流Icまで低下させる。また、インバータ出力電力が総需要電力を超えていない場合にはステップS6に進み、ステップS6では、指令電流Iiの値が従前の値に維持される。
【0070】
一方、ステップS3において、マージンが十分に確保されていると判断された場合には、ステップS7に進む。ステップS7においては、実発電電流Icが指令電流Ii以上であるか否か判断される。実発電電流Icが指令電流Ii以上である場合には、燃料電池モジュール2の発電能力以上にインバータ54が電流を取り出している状態であるため、ステップS13に進み、指令電流Iiを増加させる。
【0071】
また、ステップS7において、実発電電流Icが指令電流Ii以上でないと判断された場合には、ステップS8に進み、ステップS8においては、指令電流Iiと実発電電流Icの差である偏差電流ΔY(=Ii−Ic)が計算される。なお、実発電電流Icは、実発電電流モニター信号Micとして指令電流補正手段110cに入力される。
【0072】
次に、ステップS9において、偏差電流ΔYの値が、所定の偏差電流上限値Y1以上であるか否かが判断される。偏差電流ΔYが偏差電流上限値Y1以上である場合には、ステップS10に進む。偏差電流ΔYが偏差電流上限値Y1以上の場合(図9における時刻t1)は、燃料電池モジュール2の発電能力が実際に燃料電池モジュール2から取り出されている実発電電流Icに比べ大きすぎる状態であるため、ステップS10において、指令電流補正手段110cは、指令電流Iiを所定の電流量Δaだけ減少させる。この電流量Δaは、指令電流Iiの減少による燃料電池モジュール2の急激な温度低下が発生しない値に設定されている。偏差電流ΔYが偏差電流上限値Y1以上になっている間は、図10に示すフローチャートが実行される毎にステップS10の処理が行われ、指令電流Iiの減少状態が継続する(図9における時刻t1〜t2)。
【0073】
次に、指令電流Iiの減少、及び/又は実発電電流Icの増大により、偏差電流ΔYが偏差電流上限値Y1よりも小さくなると、ステップS9からステップS11に処理が移行するようになる。ステップS11において、偏差電流ΔYの値が、所定の偏差電流下限値Y2以上であるか否かが判断される。偏差電流ΔYが偏差電流上限値Y1よりも小さく、偏差電流下限値Y2以上である場合には、ステップS12に進む。ステップS12においては、指令電流Iiの値は従前の値に維持される。このように、指令電流補正手段110cは、指令電流Iiと実発電電流Icの差が減少されるように作用すると共に、この差が0になるまで減少することなく、所定の偏差電流(偏差電流下限値Y2)以上残存するように作用する。偏差電流ΔYが偏差電流下限値Y2以上、偏差電流上限値Y1未満になっている間は、図10に示すフローチャートが実行される毎にステップS12の処理が行われ、指令電流Iiの値が一定に維持される(図9における時刻t2〜t3)。
【0074】
さらに、実発電電流Icの増大により、偏差電流ΔYが偏差電流下限値Y2よりも小さくなると、ステップS11からステップS13に処理が移行するようになる。ステップS13においては、偏差電流ΔYが小さくなりすぎたため、指令電流Iiを所定の電流量Δaだけ増加させる(図9における時刻t3以降)。この電流量Δaは、指令電流Iiの増加による燃料電池モジュール2の急激な温度上昇が発生しない値に設定されている。
【0075】
このように、本実施形態の固体電解質型燃料電池1においては、指令電流設定手段110aが総需要電力に基づいて指令電流Iiを設定すると共に、指令電流補正手段110cは実発電電流Icに基づいて、指令電流Iiと実発電電流Icの差が減少されるように指令電流Iiを補正する。さらに、指令電流補正手段110cは、指令電流Iiと実発電電流Icの差を減少させながらも、その差が偏差電流下限値Y2以上残存するように指令電流Iiを補正する。
【0076】
本発明の実施形態の固体電解質型燃料電池1によれば、図9に示すように、指令電流設定手段110aは、総需要電力の変化に応答して指令電流Iiを設定するが、その応答性は、インバータ制御手段110bにより設定される実発電電流Icの応答性よりも低くされている。この結果、総需要電力の変化に応じて燃料電池モジュール2への燃料供給量が過敏に変化されることがないので、燃料電池モジュール2の無用な温度降下を招いたり、出力を増加させたいときに燃料電池モジュール2の温度上昇が遅れ、十分な電力を供給することができないという問題や、燃料電池モジュール2が燃料枯れを起こすという問題を回避することができる。また、同時に、指令電流補正手段110cが、指令電流Iiよりも応答性が高い実発電電流Icに基づいて指令電流Iiを減少方向に補正する。このため、常に指令電流以下の値に設定される実発電電流Icの、指令電流Iiとの差が減少され、不要な燃料消費を抑制し、省エネルギーを実現することができると共に、固体電解質型燃料電池1の総合効率を向上させることができる。
【0077】
また、本実施形態の固体電解質型燃料電池1によれば、指令電流補正手段110cは、指令電流Iiと実発電電流Icの間に偏差電流下限値Y2以上の電流が残存する(図10のステップS11〜S13)ように、指令電流Iiと実発電電流Icの差を減少させる(図10のステップS9、S10)ので、再度出力電力を上昇させる際に燃料電池モジュール2の温度上昇が遅れ、総需要電力の上昇に対する応答が大幅に遅れるのを防止することができる。
【0078】
なお、上述した本発明の実施形態においては、偏差電流下限値Y2の値は一定であったが、変形例として、偏差電流下限値Y2の値を、燃料電池モジュール2の運転状態に応じて変更することもできる。好ましくは、指令電流Iiが小さい状態においては、偏差電流下限値Y2の値を小さく設定する。また、好ましくは、総需要電力が急激に変化している状態においては、偏差電流下限値Y2の値を大きく設定する。
【0079】
このように構成された本発明の実施形態の変形例によれば、偏差電流下限値Y2の値が燃料電池モジュール2の運転状態に応じて変更されるので、運転の様々な局面において指令電流Iiと実発電電流Icの間に適切な偏差をもたせることができる。この結果、指令電流Iiと実発電電流Icの偏差を減少させることにより不要な燃料消費を減少させる省エネ効果と、総需要電力が上昇した際に、燃料電池モジュール2が比較的迅速に総需要電力に追従して、系統電力の消費を抑制する省エネ効果を両立することができる。
【0080】
また、上述した変形例によれば、指令電流Iiが小さいほど偏差電流下限値Y2が減少されるので、燃料電池モジュール2の温度が低く、温度を維持するために燃料が必要になる燃料利用率の低い運転状態における運転効率のより一層の低下を防止することができる。
【0081】
さらに、上述した変形例によれば、総需要電力の変化が急激な場合には偏差電流下限値Y2が大きくなるので、総需要電力の増加局面において、燃料電池モジュール2の温度上昇を促進することができ、燃料電池モジュール2が比較的迅速に総需要電力に追従することが可能になり、系統電力の消費を抑制することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 固体電解質型燃料電池
2 燃料電池モジュール
4 補機ユニット
8 密封空間
10 発電室
12 燃料電池セル集合体
14 燃料電池セルスタック
16 燃料電池セルユニット(固体電解質型燃料電池セル)
18 燃焼室
20 改質器
22 空気用熱交換器
24 水供給源
26 純水タンク
28 水流量調整ユニット(水供給手段)
30 燃料供給源
38 燃料流量調整ユニット(燃料供給手段)
40 空気供給源
44 改質用空気流量調整ユニット
45 発電用空気流量調整ユニット(改質用空気供給手段)
46 第1ヒータ
48 第2ヒータ
50 温水製造装置
52 制御ボックス
54 インバータ
83 点火装置
84 燃料電池セル
110 制御部
110a 指令電流設定手段
110b インバータ制御手段
110c 指令電流補正手段
110d 燃料制御手段
112 操作装置
114 表示装置
116 警報装置
126 電力状態検出センサ
132 燃料流量センサ(燃料供給量検出センサ)
138 圧力センサ(改質器圧力センサ)
142 発電室温度センサ(温度検出手段)
150 外気温度センサ
200 住宅
202 燃料電池
204 系統電力
206 カレントトランス
208 燃料電池モジュール
210 フィルター
212 インバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
要求電力に応じた可変の電力を発電する固体電解質型燃料電池であって、
供給された燃料により発電する燃料電池モジュールと、
この燃料電池モジュールから電流を取り出し、交流に変換するインバータと、
上記燃料電池モジュールに燃料を供給する燃料供給手段と、
上記要求電力の変化に応答して指令電流を設定する指令電流設定手段と、
上記要求電力の変化に対して上記指令電流よりも高い追従性で上記要求電力に応答し、且つ上記指令電流以下の値になるように実発電電流を決定し、この実発電電流が上記燃料電池モジュールから取り出されるように上記インバータを制御するインバータ制御手段と、
上記実発電電流に基づいて、上記指令電流と上記実発電電流の差が減少されるように、上記指令電流を減少方向に補正する指令電流補正手段と、
この補正された指令電流を発生可能な燃料が上記燃料電池モジュールに供給されるように、上記燃料供給手段を制御する燃料制御手段と、
を有することを特徴とする固体電解質型燃料電池。
【請求項2】
上記指令電流補正手段は、上記指令電流と上記実発電電流の差が所定の偏差電流以上残存するように、上記指令電流を補正する請求項1記載の固体電解質型燃料電池。
【請求項3】
上記指令電流補正手段は、上記燃料電池モジュールの運転状態に応じて、上記所定の偏差電流を変更する請求項2記載の固体電解質型燃料電池。
【請求項4】
上記指令電流補正手段は、上記指令電流が小さいほど、上記所定の偏差電流を減少させる請求項3記載の固体電解質型燃料電池。
【請求項5】
上記指令電流補正手段は、上記要求電力の変化が急激なほど、上記所定の偏差電流を増大させる請求項3記載の固体電解質型燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−198589(P2011−198589A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63650(P2010−63650)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】