説明

固体高分子型燃料電池セパレータ用シール材料、セパレータシール及びセパレータ

【課題】圧縮永久歪が小さく、強度が高く、かつセパレータ基材との接着性の良好なゴム硬化物を与える固体高分子型燃料電池セパレータ用シール材料、これを硬化して得られたセパレータシール、及びこのセパレータシールをセパレータ基材の周縁部に形成したセパレータを提供する。
【解決手段】(A)アルケニル基含有する液状オルガノポリシロキサン、(B)一分子中に少なくとも3個の珪素原子と結合する水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(C)BET法による比表面積が50〜400m2/gであるヒュームドシリカ、(D)カーボン粉末、(E)付加反応触媒を含有し、(A)成分のアルケニル基を含有する液状オルガノポリシロキサンが、重量平均分子量が互いに異なる2種以上の液状オルガノポリシロキサンが混合された固体高分子型燃料電池セパレータ用シール材料を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型の燃料電池として使用できる固体高分子型燃料電池のセパレータ用シール材料に係わり、特に長期の使用が可能で成形性にも優れた固体高分子型燃料電池セパレータ用シール材料、並びにこのシール材料により形成されたセパレータシール及びセパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、資源の枯渇に留意する必要がある化石燃料を使用する必要が殆どない上に、発電において騒音を殆ど発生せず、エネルギーの回収率も他のエネルギー発電機関と比べて高くできる等の優れた性質を持つために、ビルや工場の比較的小型の発電プラントとして開発が進められ、一部実用化している。中でも固体高分子型燃料電池は、他タイプの燃料電池と比べて低温で作動するので、電池を構成する部品について材料面での腐食の心配が少ないばかりか、低温作動の割に比較的大電流を放電可能といった特徴をもち、家庭のコージェネレーション用としてだけでなく、車載用の内燃機関の代替電源としても注目を集めている。この固体高分子型燃料電池を構成する部品の中で、セパレータは、一般的に平板の両面又は片面に複数の並行する溝を形成してなるもので、燃料電池セル内のガス拡散電極で発電した電気を外部へ伝達すると共に、発電の過程で前記溝中に生成した水を排水し、当該溝を燃料電池セルへ流入する反応ガスの流通路として確保するという役割を担っている。このような電池用のセパレータとしては、より小型化が要求され、また多数のセパレータを重ね合わせて使用することから耐久性が優れ、長期間使用できるセパレータ用シール材料が要求されている。
【0003】
このようなセパレータ用シール材料としては、各種樹脂から成るパッキング材が検討されているが、成形性、耐熱性、弾性に優れたシリコーンゴム製のシール材が主に使用されている。特開平11−129396号公報(特許文献1)、特開平11−309747号公報(特許文献2)では、シリコーンゴムとしてはより成形性に優れた付加硬化型のシリコーンゴム組成物による硬化ゴムが用いられているが、長期間の弾性を維持するという点では不十分であった。特に燃料電池セパレータ用パッキング材として必要な酸性水溶液中でのシール性を向上させるには、ヒュームドシリカなどの補強性充填材の配合量をできる限り減らす必要があった。ところが、これら補強性充填材の減量は、硬化ゴムの強度を低下させ、成形が困難になるばかりでなく、シール自体が破壊するなどの問題を生じてしまう。それらを解決する方法として分子鎖末端にアルケニル基を有するオイルと分子側鎖にアルケニル基を有するオイルを使用することが、特開2003−257455号公報(特許文献3)で開示されている。ところが、固体高分子型燃料電池セパレータのシール材料としては、これらゴム強度や低圧縮永久歪に加えて、セパレータ基材との接着性が重要な性質となる。特開2004−14150号公報(特許文献4)には、カーボンセパレータ用ガスケット材料として、LLC中の圧縮永久歪が小さいシリコーンゴムが例示されているが、シリコーンゴムの接着性については全く述べられていない。特開2007−146147号公報(特許文献5)には、燃料電池セパレータに好適なプライマーが紹介されているが、ゴム材については付加硬化型とあるのみで、詳細については何ら記されていない。
【0004】
【特許文献1】特開平11−129396号公報
【特許文献2】特開平11−309747号公報
【特許文献3】特開2003−257455号公報
【特許文献4】特開2004−14150号公報
【特許文献5】特開2007−146147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明は、圧縮永久歪が小さく、強度が高く、かつセパレータ基材との接着性の良好なゴム硬化物を与える固体高分子型燃料電池セパレータ用シール材料、これを硬化して得られたセパレータシール、及びこのセパレータシールをセパレータ基材の周縁部に形成したセパレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、
(A)一分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有する液状オルガノポリシロキサン、
(B)一分子中に少なくとも3個の珪素原子と結合する水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)BET法による比表面積が50〜400m2/gであるヒュームドシリカ、
(D)カーボン粉末、
(E)付加反応触媒
を含有し、かつ(A)成分のアルケニル基を含有する液状オルガノポリシロキサンが、重量平均分子量が互いに異なる2種以上の液状オルガノポリシロキサンが混合されたものであることを特徴とするゴム組成物をセパレータシールとして用いることにより、電解質膜による酸性の雰囲気下、あるいはLLCに接触した状態でも、圧縮永久歪が小さくかつゴム自体の強度が高く成形性に優れ、更にセパレータ基材との接着性が良好であるため、長期に亘る優れたシール性が得られることを知見し、本発明をなすに至った。
【0007】
従って、本発明は、
(A)一分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有する液状オルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)一分子中に少なくとも3個の珪素原子と結合する水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 0.5〜20質量部、
(C)BET法による比表面積が50〜400m2/gであるヒュームドシリカ
10〜30質量部、
(D)カーボン粉末 0.1〜3質量部、
(E)付加反応触媒 触媒量
を含有し、(A)成分のアルケニル基を含有する液状オルガノポリシロキサンが、重量平均分子量が互いに異なる2種以上の液状オルガノポリシロキサンが混合されたものであることを特徴とする固体高分子型燃料電池セパレータ用シール材料を提供する。
【0008】
この場合、(A)成分の一分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有する液状オルガノポリシロキサンの珪素原子に結合する全有機基の90モル%以上がメチル基であることが好ましく、(A)成分中のアルケニル基と、(B)成分中のSi−H基とのモル比が、Si−H基/アルケニル基=0.8〜5.0の範囲であることが好ましい。
【0009】
また、(A)成分の重量平均分子量の異なる2種以上の液状オルガノポリシロキサンのうち、最も多く含まれるもの、その次に多く含まれるものの重量平均分子量をそれぞれMw(A−1)、Mw(A−2)とすると、2≦Mw(A−2)/Mw(A−1)≦10の範囲であることが好ましく、更に重量平均分子量の異なる2種以上の液状オルガノポリシロキサンのうち、最も多く含まれるもの、その次に多く含まれるものの重量平均分子量をそれぞれMw(A−1)、Mw(A−2)とすると、10000≦Mw(A−1)<30000、30000≦Mw(A−2)≦100000の範囲であることが好ましい。
【0010】
(D)成分のカーボン粉末については、BET法による比表面積が30〜120m2/g、沃素吸着量が30〜120mg/g、DBP吸油量が100〜200ml/100gの範囲のカーボンブラックであることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、固体高分子型燃料電池セパレータとして、上記シール材料の硬化物からなるセパレータシールを提供する。
【0012】
更に、本発明は、金属薄板又は導電性粉末とバインダーとを含む基材の少なくとも片面の周縁部にシール部が形成されてなる固体高分子型燃料電池セパレータであって、上記シール部が上記シール材料の硬化物からなる固体高分子型燃料電池セパレータを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電解質膜による酸性の雰囲気下、あるいはLLCに接触した状態でも、圧縮永久歪が小さくかつゴム自体の強度が高く、成形性に優れ、更にセパレータ基材との接着性が良好であるため、長期に亘る優れたシール性を与える固体高分子型燃料電池セパレータシールを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の固体高分子型燃料電池セパレータの少なくとも片面周縁部をシールするシール材料(シール用ゴム組成物)は、上記した通り、
(A)一分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有する液状オルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)一分子中に少なくとも3個の珪素原子と結合する水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 0.5〜20質量部、
(C)BET法による比表面積が50〜400m2/gであるヒュームドシリカ
10〜30質量部、
(D)カーボン粉末 0.1〜3質量部、
(E)付加反応触媒 触媒量
を含有する。
【0015】
[(A)成分]
本発明の(A)成分の一分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有する液状オルガノポリシロキサンとしては下記平均組成式(I)で示されるものを用いることができる。
【0016】
1aSiO(4-a)/2 …(I)
(式中、R1は互いに同一又は異種の炭素数1〜10、好ましくは1〜8の置換又は非置換の一価炭化水素基であり、aは1.5〜2.8、好ましくは1.8〜2.5の範囲の正数である。)
【0017】
ここで、上記R1で示される非置換又は置換の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられるが、全R1の90モル%以上がメチル基であることが好ましい。
【0018】
また、R1のうち少なくとも2個はアルケニル基(炭素数2〜8のものが好ましく、更に好ましくは2〜6であり、特に好ましくはビニル基である。)であることが必要であるが、オルガノポリシロキサン中のアルケニル基の含有量は、5.0×10-6mol/g〜5.0×10-3mol/g、特に1.0×10-5mol/g〜1.0×10-3mol/gであることが好ましい。アルケニル基の量が5.0×10-6mol/gより少ないとゴム硬度が低く十分なシール性が得られなくなるおそれがあり、5.0×10-3mol/gより多いと架橋密度が高くなりすぎて、脆いゴムとなってしまうおそれがある。
【0019】
なお、アルケニル基は、分子鎖末端の珪素原子に結合していても、分子鎖途中の珪素原子に結合していても、両者に結合していてもよいが、少なくとも分子鎖両末端の珪素原子に結合しているアルケニル基を有するものであることが好ましい。
【0020】
また、このオルガノポリシロキサンの構造は、基本的には直鎖状構造を有することが好ましいが、部分的には分岐状の構造、環状構造などであってもよい。
【0021】
このような(A)成分のアルケニル基を有する液状オルガノポリシロキサンは、2種以上の重量平均分子量が互いに異なる液状オルガノポリシロキサンの混合物であることが必須である。また、重量平均分子量の異なる2種以上の液状オルガノポリシロキサンのうち、最も多く含まれるもの、その次に多く含まれるものの重量平均分子量をそれぞれMw(A−1)、Mw(A−2)とすると、2≦Mw(A−2)/Mw(A−1)≦10の範囲であることが好ましく、より好ましくは、2.5≦Mw(A−2)/Mw(A−1)≦6の範囲である。Mw(A−2)/Mw(A−1)が2未満であると、強度が低下してしまうおそれがあり、10を超える場合も、一方が小さすぎて強度が不十分になってしまうか、一方が大きすぎて粘度が高くなり、成形性が悪くなってしまう。また、同じく最も多く含まれるもの、その次に多く含まれるものの重量平均分子量をそれぞれMw(A−1)、Mw(A−2)とすると、10000≦Mw(A−1)<30000、30000≦Mw(A−2)≦100000の範囲であることが好ましく、より好ましくは、15000≦Mw(A−1)<30000、40000≦Mw(A−2)≦80000の範囲である。なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値である。
【0022】
また、上記Mw(A−1)の液状オルガノポリシロキサンの含有量をA、Mw(A−2)の液状オルガノポリシロキサンの含有量をBとした場合、A/B(質量比)は10/9〜10/1、特に10/8〜10/3であることが好ましい。A/Bが小さすぎるとゴム強度が低下してしまう場合があり、大きすぎると圧縮永久歪や接着性が劣ったものとなってしまう場合がある。
【0023】
なお、(A)成分として、上記Mw(A−1)、Mw(A−2)以外の重量平均分子量のオルガノポリシロキサンを含有してもよいが、(A)成分の液状オルガノポリシロキサン全体の重量平均分子量は10000〜100000、特に20000〜50000の範囲であることが好ましい。また、Mw(A−1)、Mw(A−2)以外の重量平均分子量のオルガノポリシロキサンの含有量は、全(A)成分中30質量%以下、特に20質量%以下であることが好ましい。この場合、(A)成分の液状オルガノポリシロキサン中には、重量平均分子量が上記Mw(A−1)、Mw(A−2)以外のオルガノポリシロキサン成分として、重量平均分子量が15万以上の生ゴム状オルガノポリシロキサン成分は含有しないことが好ましい。
【0024】
[(B)成分]
本発明の(B)成分の一分子中に少なくとも3個の珪素原子と結合する水素原子(Si−H基)を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、分子中のSi−H基が、前記(A)成分中の珪素原子に結合したアルケニル基とヒドロシリル付加反応により架橋し、組成物を硬化させるための架橋剤として作用するものである。
【0025】
この(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記平均組成式(II)
2bcSiO{4-(b+c)}/2 …(II)
(式中、R2は互いに同一又は異種の炭素数1〜10、好ましくは1〜8の置換又は非置換の一価炭化水素基である。また、bは0.7〜2.1、cは0.001〜1.0、かつb+c=0.8〜3.0を満足する正数である。)
で示され、一分子中に少なくとも3個(通常、3〜300個)、好ましくは3〜100個、より好ましくは3〜50個の珪素原子に結合した水素原子を有するものが好適に用いられる。
【0026】
ここで、R2の置換又は非置換の一価炭化水素基としては、前述のR1で例示したものと同様のものを挙げることができるが、アルケニル基等の脂肪族不飽和結合を有しないものが好ましい。また、bは好ましくは0.8〜2.0、cは好ましくは0.01〜1.0、b+cは好ましくは1.0〜2.5である。
【0027】
また、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状又は三次元網目状のいずれの構造であってもよく、一分子中の珪素原子の数又は重合度が2〜300(個)、特に4〜150(個)程度の室温(25℃)で液状(通常、25℃で1000mPa・s以下、好ましくは0.1〜500mPa・s程度)のものが好適に用いられる。ここで、この粘度値は回転粘度計による値である。
【0028】
上記(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C65)SiO3/2単位とからなる共重合体などが挙げられる。
【0029】
本発明の(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)成分100質量部に対して0.5〜20質量部、好ましくは0.6〜15質量部であるが、特に、(A)成分中のアルケニル基の総量と(B)成分中の珪素原子と結合する水素原子(Si−H基)の総量とのモル比が、珪素原子と結合する水素原子(Si−H基)/アルケニル基=0.8〜5.0、特に1.0〜3.0になるように配合することが好ましい。この比が0.8より小さい場合や5.0より大きい場合、得られるゴム硬化物の圧縮永久歪が大きくなって、シール性が不十分となってしまうおそれがある。
【0030】
[(C)成分]
(C)成分のヒュームドシリカは、シリコーンゴムに十分な強度を与えるために必須なものである。ヒュームドシリカのBET法による比表面積は、50〜400m2/g、好ましくは100〜350m2/gで、50m2/gより小さいと耐酸性が悪くなってしまい、また400m2/gより大きいと圧縮永久歪が大きくなってしまう。これらヒュームドシリカはそのまま用いても構わないが、表面疎水化処理剤で予め処理したものを使用したり、あるいはシリコーンオイルとの混練時に表面処理剤を添加して処理することにより使用することが好ましい。これら表面処理剤は、アルキルアルコキシシラン、アルキルクロロシラン、アルキルシラザン、シランカップリング剤、チタネート系処理剤、脂肪酸エステルなど公知のものを1種で用いてもよく、また2種以上を同時又は異なるタイミングで用いても構わない。
【0031】
また、これらヒュームドシリカの配合量は、(A)成分100質量部に対して10〜30質量部、特に12〜28質量部であることが好ましい。配合量が10質量部より少ないと十分なゴム強度が得られず、また30質量部より多いと、圧縮永久歪が大きくなり、シール性が悪くなってしまう。
【0032】
[(D)成分]
(D)成分のカーボン粉末は、セパレータ基材との接着性を向上させるために必須のものである。このようなカーボン粉末としては、カーボンブラックが好適に用いられる。カーボンブラックとしては、例えばアセチレンブラック、コンダクティブファーネスブラック(CF)、スーパーコンダクティブファーネスブラック(SCF)、エクストラコンダクティブファーネスブラック(XCF)、コンダクティブチャンネルブラック(CC)、1500℃程度の高温で熱処理されたファーネスブラックやチャンネルブラック等を挙げることができる。
【0033】
具体的に、アセチレンブラックとしては、電化アセチレンブラック(電気化学社製),シャウニガンアセチレンブラック(シャウニガンケミカル社製)等が、コンダクティブファーネスブラックとしては、コンチネックスCF(コンチネンタルカーボン社製),バルカンC(キャボット社製)等が、スーパーコンダクティブファーネスブラックとしては、コンチネックスSCF(コンチネンタルカーボン社製),バルカンSC(キャボット社製)等が、エクストラコンダクティブファーネスブラックとしては、旭HS−500(旭カーボン社製),バルカンXC−72(キャボット社製)等が、コンダクティブチャンネルブラックとしては、コウラックスL(デグッサ社製)等が例示され、また、ファーネスブラックの1種であるケッチェンブラックEC及びケッチェンブラックEC−600JD(ケッチェンブラックインターナショナル社製)等を用いることもできる。
【0034】
なお、これらのうちでは、アセチレンブラックが特に好ましく、更にBET比表面積が30〜120m2/g、好ましくは35〜100m2/g、沃素吸着量が30〜120mg/g、好ましくは40〜100mg/g、DBP吸油量が100〜200ml/100g、好ましくは120〜180ml/100gである。これらの範囲を外れると、接着性への効果が得られなくなったり、圧縮永久歪が著しく悪化するなどの悪影響を生じてしまう。なお、沃素吸着量はJIS K1474に準拠した方法による測定値であり、DBP吸油量はJIS K6221に準拠した方法による測定値である。
【0035】
具体的に、カーボンブラックの添加量としては、(A)成分100質量部に対して0.1〜3質量部、特に0.3〜2質量部とすることが好ましい。添加量が0.1質量部未満では十分な接着性を得ることができず、3質量部を超えると圧縮永久歪が悪くなってしまったり、絶縁性が損なわれてしまう(即ち導電化してしまう)。本発明のシール材料は、空気や水素ガスのシール、冷却媒体のシール(LLCなど)に加え、絶縁シールである必要もあるため、硬化後のゴムの抵抗値(体積抵抗率)が、1.0TΩ・m以上となるカーボン粉末の配合量であることが好ましい。
【0036】
[(E)成分]
(E)成分の付加反応触媒は、(A)成分のオルガノポリシロキサンのアルケニル基と(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの珪素原子に結合した水素原子(Si−H基)とを付加反応させるための触媒である。上記付加反応触媒としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコ−ルとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などの白金族金属系触媒が挙げられるが、特に白金系触媒が好ましい。
【0037】
触媒の添加量は、付加反応を促進できればよく、触媒量であり、通常、(A)成分に対して白金族金属量として、0.5〜1000ppm、特に1〜500ppm程度が好ましい。0.5ppm未満では付加反応が十分促進されず、硬化が不十分となる場合があり、1000ppmを超えると、反応性に対する効果が変わらなくなる場合があり、不経済となるおそれがある。
【0038】
[その他の成分]
また、本発明の組成物には、その他の成分として、必要に応じて沈降シリカ、石英粉、珪藻土、炭酸カルシウムのような充填剤や、窒素含有化合物やアセチレン化合物、リン化合物、ニトリル化合物、カルボキシレート、錫化合物、水銀化合物、硫黄化合物等のヒドロシリル化反応制御剤、酸化鉄、酸化セリウムのような耐熱剤、ジメチルシリコーンオイル等の内部離型剤、接着性付与剤、チクソ性付与剤等を配合することも可能である。
【0039】
[セパレータシール]
本発明のセパレータシールは、上記成分を含有するシール材料(付加反応硬化型シリコーンゴム組成物)の硬化物からなるものであり、該シリコーンゴム組成物を公知の方法で硬化して、固体高分子型燃料電池セパレータのシーリングに使用する。
【0040】
本発明のゴム硬化物を用いて燃料電池セパレータシールを得る方法として、具体的には、上記シリコーンゴム組成物を圧縮成型、注入成型、射出成型などによりシール形状に成型してセパレータと組み合わせる方法や、ディッピング、コーティング、スクリーン印刷、インサート成型などによりセパレータ基材とシールが一体化したものとして得る方法などがある。なお、上記シリコーンゴム組成物の硬化条件としては、温度100〜300℃で10秒〜30分の範囲が好ましい。
【0041】
また、本発明に使用されるセパレータ基材としては、金属薄板、又は導電性粉末及びバインダーと共に一体成型された基材が好適に用いられ、このセパレータ基材の周縁部に上述の方法でシールを形成することにより、本発明の固体高分子型燃料電池セパレータを得ることができる。
【0042】
上記導電性粉末としては、例えばリン片状黒鉛等の天然黒鉛、人造黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等に代表される導電性カーボンブラック等を挙げることができるが、導電性粉末であれば特に限定されるものではない。また、バインダーの種類としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ゴム変性フェノール樹脂などが挙げられる。
【0043】
本発明においては、セパレータ基材の周縁部にゴム組成物を圧縮成型、注入成型、射出成型、トランスファー成型、ディッピング、コーティング又はスクリーン印刷などにより形成して硬化させることにより、シリコーンゴム組成物の硬化物をシール部として用いた、基材の周縁部に周方向に沿ってリング状にシール部(セパレータシール)を形成した固体高分子型燃料電池セパレータを得ることができる。
【0044】
なお、シールの厚さ(高さ)は0.1〜2mmの範囲が好ましい。0.1mm未満ではシールの形成がしにくい場合があり、シーリングが有効でなくなるおそれがあり、2mmを超えると小型化しづらくなるおそれがある。
【0045】
以下、図面により本発明の固体高分子型燃料電池セパレータの一例を示すが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0046】
図1は、本発明の実施形態に係る燃料電池10を構成する発電セル12の要部分解斜視説明図であり、図2は、複数の発電セル12を矢印A方向に積層してスタック化された燃料電池10の、図1中、II−II線断面説明図である。
【0047】
図2〜図4に示すように、燃料電池10は、複数の発電セル12を矢印A方向に積層するとともに、積層方向両端にエンドプレート14a、14bが配置される。エンドプレート14a、14bは、図示しないタイロッドを介して固定されることにより、積層されている発電セル12には、矢印A方向に所定の締め付け荷重が付与される。
【0048】
図1に示すように、発電セル12は、電解質膜・電極構造体(電解質・電極構造体)16が、第1及び第2金属セパレータ18、20に挟持されて構成される。第1及び第2金属セパレータ18、20は、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した金属板により構成されており、厚さが、例えば、0.05〜1.0mmの範囲内に設定されている。
【0049】
発電セル12の矢印B方向(図1中、水平方向)の一端縁部には、積層方向である矢印A方向に互いに連通して、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給するための酸化剤ガス入口連通孔30a、冷却媒体を排出するための冷却媒体出口連通孔32b及び燃料ガス、例えば、水素含有ガスを排出するための燃料ガス出口連通孔34bが、矢印C方向(鉛直方向)に配列して設けられる。
【0050】
発電セル12の矢印B方向の他端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、燃料ガスを供給するための燃料ガス入口連通孔34a、冷却媒体を供給するための冷却媒体入口連通孔32a及び酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス出口連通孔30bが、矢印C方向に配列して設けられる。
【0051】
電解質膜・電極構造体16は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜36と、前記固体高分子電解質膜36を挟持するアノード側電極(第1の電極)38及びカソード側電極(第2の電極)40とを備える。アノード側電極38は、カソード側電極40よりも小さな表面積を有している。
【0052】
アノード側電極38及びカソード側電極40は、カーボンペーパ等からなるガス拡散層と、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が前記ガス拡散層の表面に一様に塗布された電極触媒層とを有する。電極触媒層は、固体高分子電解質膜36の両面に接合されている。
【0053】
第1金属セパレータ(第1のセパレータ)18の電解質膜・電極構造体16側の面18aには、例えば、矢印B方向に蛇行しながら鉛直上方向に延在する酸化剤ガス流路(反応ガス流路)42が設けられる(図1及び図5参照)。図6に示すように、第2金属セパレータ(第2のセパレータ)20の電解質膜・電極構造体16側の面20aには、後述するように、燃料ガス入口連通孔34aと燃料ガス出口連通孔34bとに連通し、矢印B方向に蛇行しながら鉛直上方向(矢印C方向)に延在する燃料ガス流路(反応ガス流路)44が形成される。
【0054】
図1及び図2に示すように、第1金属セパレータ18の面18bと第2金属セパレータ20の面20bとの間には、冷却媒体入口連通孔32aと冷却媒体出口連通孔32bとに連通する冷却媒体流路46が形成される。この冷却媒体流路46は、矢印B方向に直線状に延在する。
【0055】
図1及び図5に示すように、第1金属セパレータ18の面18a、18bには、この第1金属セパレータ18の外周端部を周回して、第1シール部材(第1のシール部材)50が一体化される。第1シール部材50はセパレータ基材にゴム組成物を圧縮成型、注入成型、射出成型、トランスファー成型、ディッピング、コーティング又はスクリーン印刷により形成して硬化させることにより得られる。
【0056】
第1シール部材50は、第1金属セパレータ18の面18aに一体化される第1平面部52と、前記第1金属セパレータ18の面18bに一体化される第2平面部54とを備える。第2平面部54は、第1平面部52よりも長尺に構成される。
【0057】
図2及び図3に示すように、第1平面部52は、電解質膜・電極構造体16の外周端部から外部に離間した位置を周回する一方、第2平面部54は、カソード側電極40の所定の範囲にわたって重合する位置を周回する。図5に示すように、第1平面部52は、酸化剤ガス入口連通孔30a及び酸化剤ガス出口連通孔30bが酸化剤ガス流路42に連通して形成される一方、第2平面部54は、冷却媒体入口連通孔32aと冷却媒体出口連通孔32bとが連通して形成される。
【0058】
第2金属セパレータ20の面20a、20bには、この第2金属セパレータ20の外周端部を周回して、第2シール部材(第2のシール部材)56が一体化される。この第2シール部材56は、第2金属セパレータ20の外周端部に近接して面20aに設けられる外側シール58aを備え、この外側シール58aから内方に所定の距離だけ離間して内側シール58bが設けられる。外側シール58a及び内側シール58bは、第2シール部材56のアノード側電極38に対向する一方の面に設けられる。
【0059】
外側シール58a及び内側シール58bは、先端先細り形状(リップ形状)、台形状又は蒲鉾形状等、種々の形状が選択可能である。外側シール58aは、第1金属セパレータ18に設けられている第1平面部52に接触する一方、内側シール58bは、電解質膜・電極構造体16を構成する固体高分子電解質膜36に直接接触する。
【0060】
図6に示すように、外側シール58aは、酸化剤ガス入口連通孔30a、冷却媒体出口連通孔32b、燃料ガス出口連通孔34b、燃料ガス入口連通孔34a、冷却媒体入口連通孔32a及び酸化剤ガス出口連通孔30bを囲繞する。内側シール58bは、燃料ガス流路44を囲繞するとともに、前記内側シール58bと外側シール58aとの間には、電解質膜・電極構造体16の外周端部が配置される。
【0061】
第2金属セパレータ20の面20bには、外側シール58aに対応する外側シール(冷却媒体シール)58cと、内側シール58bに対応する内側シール58dとが設けられる(図7参照)。外側シール58c及び内側シール58dは、上記の外側シール58a及び内側シール58bと同様の形状を有している。
【0062】
図6に示すように、外側シール58aは、酸化剤ガス入口連通孔30aと酸化剤ガス流路42とを連通する入口流路機能部60と、酸化剤ガス出口連通孔30bと前記酸化剤ガス流路42とを連通する出口流路機能部62とを備える。
【0063】
入口流路機能部60は、外側シール58aを矢印C方向に沿って断続的に切り欠くとともに、矢印B方向に延在する複数の受部64により構成される。各受部64間には、酸化剤ガス用の連通路が形成される。出口流路機能部62は、同様に外側シール58aを部分的に切り欠くとともに、矢印B方向に延在する複数の受部66を備える。受部66は、第1平面部52に接触して、各受部66間には酸化剤ガス用の連通路が形成される。
【0064】
入口流路機能部60の受部64と外側シール58cのシール重合部68とは、第2金属セパレータ20の両面20a、20bで互いに重なり合っている。シール重合部68とは、第2金属セパレータ20を挟んで外側シール58aの受部64に重なり合う外側シール58cの一部分をいう。
【0065】
出口流路機能部62は、上記の入口流路機能部60と同様に構成されており、第2金属セパレータ20の両面20a、20bで互いに重なり合う各受部64と外側シール58cのシール重合部70とは、積層方向の荷重に対して積層方向のシール変形量が略同一に設定される(図6参照)。
【0066】
図7に示すように、第2金属セパレータ20の面20bには、冷却媒体入口連通孔32aと冷却媒体流路46とを連通する入口流路機能部72と、冷却媒体出口連通孔32bと前記冷却媒体流路46とを連通する出口流路機能部74とが設けられる。入口流路機能部72は、外側シール58c及び内側シール58dを構成して矢印C方向に断続的に設けられるとともに、矢印B方向に延在する複数の受部76を備える。出口流路機能部74は、同様に、外側シール58c及び内側シール58dを構成して矢印C方向に断続的に設けられるとともに、矢印B方向に延在する複数の受部78を備える。
【0067】
入口流路機能部72は、面20aの外側シール58a及び内側シール58bを構成するシール重合部80a、80bと、第2金属セパレータ20を介装して重なり合っている。
【0068】
同様に、出口流路機能部74を構成する各受部78は、図7に示すように、第2金属セパレータ20の両面20a、20bで外側シール58a及び内側シール58bのシール重合部82a、82bと重なり合っている。
【0069】
図7に示すように、面20bには、燃料ガス入口連通孔34a及び燃料ガス出口連通孔34bの近傍に、入口流路機能部84及び出口流路機能部86が設けられる。入口流路機能部84は、矢印C方向に配列される複数の受部88を設ける一方、出口流路機能部86は、同様に矢印C方向に配列される複数の受部90を備える。
【0070】
各受部88は、第2金属セパレータ20を挟んで外側シール58a及び内側シール58bのシール重合部92a、92bと重なり合っている。各受部90は、同様に第2金属セパレータ20を挟んで外側シール58a及び内側シール58bのシール重合部94a、94bと重なり合っている。
【0071】
入口流路機能部84とシール重合部92a、92b及び出口流路機能部86とシール重合部94a、94bは、それぞれ積層方向の荷重に対して積層方向のシール変形量が略同一に設定され、具体的には、入口流路機能部72と同様の構成を有している。入口流路機能部84及び出口流路機能部86の近傍には、内側シール58dの外方に位置して、それぞれ複数の供給孔部96及び排出孔部98が形成される。供給孔部96と排出孔部98は、第2金属セパレータ20の面20aで内側シール58bの内方にかつ燃料ガス流路44の入口側と出口側とに貫通形成される(図6参照)。
【0072】
なお、本実施形態では、第2金属セパレータ20の面20bに、冷却媒体シールとして外側シール58cが設けられているが、これに限定されるものではなく、第1金属セパレータ18の面18bに、前記冷却媒体シールを設けてもよい。
【実施例】
【0073】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0074】
[実施例1]
両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された液状ジメチルポリシロキサン(1)[重量平均分子量18000、ビニル基含有量0.00012mol/g]30質量部、両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、分子側鎖に結合したビニル基を有する液状ジメチルポリシロキサン(2)[重量平均分子量45000、ビニル基含有量0.00008mol/g]35質量部、BET法による比表面積が200m2/gであるヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、アエロジル200)35質量部、ヘキサメチルジシラザン6質量部、水2.0質量部を室温で30分混合後、150℃に昇温し、3時間撹拌後、冷却した。更に、これにカーボン粉末A(デンカブラックHS−100、電気化学工業(株)製、BET法による比表面積39m2/g、沃素吸着量52mg/g、DBP吸油量140ml/100g)2質量部を配合し、3本ロールに1回通してシリコーンゴムベースを得た。このシリコーンゴムベース100質量部に、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(1)50質量部を入れ、30分撹拌を続けた後、更に架橋剤として両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(3)(重合度38、Si−H基量0.0065mol/g)を2.9質量部[Si−H基/ビニル基=1.5(モル比)]、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05質量部を添加し、15分撹拌して混合物を得た。
【0075】
この混合物100質量部に白金触媒(Pt濃度1質量%)0.1質量部を混合してシリコーンゴム組成物を得、120℃/10分のプレスキュアにより硬化させ、更に200℃のオーブンで4時間ポストキュアさせたものを、JIS K6249に基づいて、硬さ、引張り強度、切断時伸び、引き裂き強度、圧縮永久歪を測定した結果を表1に示した。また、プライマーを塗布した(信越化学工業(株)製 プライマーNo.101A/B 風乾後150℃×30分焼付け)カーボン充填(60質量%)エポキシ樹脂及びSUS板上に接触させて150℃×5分プレスキュアにより上記組成物を硬化させ(ゴム厚さ0.5mm)、更に200℃で4時間硬化させた後、0.01規定硫酸水溶液中120℃×500時間浸漬し、取り出した後、接着部を剥がしてゴムの凝集破壊率を測定した。結果を表2に記した。更に、図5の構造を持つシールをステンレス鋼板上にインサート成形し、成形性を表3に示した。
【0076】
[実施例2]
両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された液状ジメチルポリシロキサン(4)[重量平均分子量26000、ビニル基含有量0.000088mol/g]80質量部、表面が疎水化処理された比表面積が260m2/gであるヒュームドシリカ(トクヤマ製、レオロシールDM30S)30質量部、ヘキサメチルジシラザン5質量部、水1.0質量部を室温で30分混合後、150℃に昇温し、3時間撹拌後、冷却し、その後、実施例1の液状ジメチルポリシロキシサン(2)50質量部、両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、分子側鎖にビニル基を有する液状ジメチルポリシロキサン(5)[重量平均分子量8000、ビニル基含有量0.0012mol/g]10質量部、及びカーボン粉末B(デンカブラック100%プレス、電気化学工業(株)製、比表面積65m2/g、沃素吸着量88mg/g、DBP吸油量160ml/100g)1質量部を配合し、3本ロールに1回通してシリコーンゴムベースを得た。このシリコーンゴムベース170質量部に、実施例1のメチルハイドロジェンポリシロキサン(3)(重合度38、Si−H基量0.0065mol/g)を7.1質量部[Si−H基/ビニル基=2.0(モル比)]、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05質量部を添加し、15分撹拌して混合物を得た。この混合物100質量部に白金触媒(Pt濃度1質量%)0.1質量部を混合してシリコーンゴム組成物を得、実施例1と同様に硬さ、引張り強度、切断時伸び、引き裂き強度、圧縮永久歪及び接着性の測定を行った結果を表1及び2に示した。
【0077】
更に、図5の構造を持つシールをステンレス鋼板上にインサート成形し、成形性を表3に示した。
【0078】
[比較例1]
両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された液状ジメチルポリシロキサン(1)[重量平均分子量18000、ビニル基含有量0.00012mol/g]30質量部、両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、分子側鎖に結合したビニル基を有する液状ジメチルポリシロキサン(2)[重量平均分子量45000、ビニル基含有量0.00009mol/g]35質量部、BET法による比表面積が200m2/gであるヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、アエロジル200)35質量部、ヘキサメチルジシラザン6質量部、水2.0質量部を室温で30分混合後、150℃に昇温し、3時間撹拌後、冷却した。このシリコーンゴムベース100質量部に、ジメチルポリシロキサン(1)50質量部を入れ、30分撹拌を続けた後、更に架橋剤として両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(3)(重合度38、Si−H基量0.0065mol/g)を2.9質量部[Si−H基/ビニル基=1.5(モル比)]、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05質量部を添加し、15分撹拌して混合物を得た。
【0079】
この混合物100質量部に白金触媒(Pt濃度1質量%)0.1質量部を混合してシリコーンゴム組成物を得、実施例1と同様に硬さ、引張り強度、切断時伸び、引き裂き強度、圧縮永久歪及び接着性の測定を行った結果を表1及び2に示した。
【0080】
更に、図5の構造を持つシールをステンレス鋼板上にインサート成形し、成形性を表3に示した。
【0081】
[比較例2]
両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された液状ジメチルポリシロキサン(4)[重量平均分子量26000、ビニル基含有量0.000088mol/g]80質量部、表面が疎水化処理された比表面積が260m2/gであるヒュームドシリカ(トクヤマ製、レオロシールDM30S)30質量部、ヘキサメチルジシラザン5質量部、水1.0質量部を室温で30分混合後、150℃に昇温し、3時間撹拌後、冷却し、その後、更にジメチルポリシロキシサン(4)60質量部、及びカーボン粉末B(デンカブラック100%プレス、電気化学工業(株)製、BET法による比表面積65m2/g、沃素吸着量88mg/g、DBP吸油量160ml/100g)1質量部を配合し、3本ロールに1回通してシリコーンゴムベースを得た。このシリコーンゴムベース170質量部に、実施例1のメチルハイドロジェンポリシロキサン(3)(重合度38、Si−H基量0.0065mol/g)を3.8質量部[Si−H基/ビニル基=2.0(モル比)]、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05質量部を添加し、15分撹拌して混合物を得た。この混合物100質量部に白金触媒(Pt濃度1質量%)0.1質量部を混合してシリコーンゴム組成物を得、実施例1と同様に硬さ、引張り強度、切断時伸び、引き裂き強度、圧縮永久歪及び接着性の測定を行った結果を表1及び2に示した。
【0082】
更に、図5の構造を持つシールをステンレス鋼板上にインサート成形し、成形性を表3に示した。
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】

【0085】
【表3】

【0086】
<表3の補足>
図5の構造を持つシール一体セパレータの成形性を確認するために、ステンレス鋼板から成るセパレータ上にプライマー(信越化学工業(株)製 プライマーNo.101A/B 風乾後150℃×30分焼付け)を塗布した部品を基材としてシールのインサート成形(型温 150℃ キュア時間5分)を実施した。インサート成型後の金型脱型時にゴムが一部分でも千切れた場合を不良とし、不良品の発生率を表3に記した。更に200℃で4時間硬化させた後、接着部を剥がしてゴムの凝集破壊率を確認し、凝集破壊率100%を合格とし不良品の発生率を表3に記した。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の実施形態に係る燃料電池を構成する発電セルの要部分解斜視説明図である。
【図2】前記燃料電池の、図1中、II−II線断面説明図である。
【図3】前記燃料電池の燃料ガス入口連通孔を通る一部断面説明図である。
【図4】前記燃料電池の酸化剤ガス入口連通孔を通る一部断面説明図である。
【図5】前記発電セルを構成する第1金属セパレータの正面説明図である。
【図6】前記発電セルを構成する第2金属セパレータの一方の面の正面説明図である。
【図7】前記発電セルを構成する第2金属セパレータの他方の面の正面説明図である。
【符号の説明】
【0088】
10 燃料電池
12 発電セル
16 電解質膜・電極構造体
18、20 金属セパレータ
30a 酸化剤ガス入口連通孔
30b 酸化剤ガス出口連通孔
32a 冷却媒体入口連通孔
32b 冷却媒体出口連通孔
34a 燃料ガス入口連通孔
34b 燃料ガス出口連通孔
36 固体高分子電解質膜
38 アノード側電極
40 カソード側電極
42 酸化剤ガス流路
44 燃料ガス流路
46 冷却媒体流路
50、56 シール部材
52、54 平面部
58a、58c 外側シール
58b、58d 内側シール
60、72、84 入口流路機能部
62、74、86 出口流路機能部
64、66、76、78、88、90 受部
68、70、80a、80b、82a、82b、92a、92b、94a、94b シール重合部
96 供給孔部
98 排出孔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有する液状オルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)一分子中に少なくとも3個の珪素原子と結合する水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 0.5〜20質量部、
(C)BET法による比表面積が50〜400m2/gであるヒュームドシリカ
10〜30質量部、
(D)カーボン粉末 0.1〜3質量部、
(E)付加反応触媒 触媒量
を含有し、(A)成分のアルケニル基を含有する液状オルガノポリシロキサンが、重量平均分子量が互いに異なる2種以上の液状オルガノポリシロキサンが混合されたものであることを特徴とする固体高分子型燃料電池セパレータ用シール材料。
【請求項2】
(A)成分の一分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有する液状オルガノポリシロキサンの珪素原子に結合する全有機基の90モル%以上がメチル基であることを特徴とする請求項1記載の固体高分子型燃料電池セパレータ用シール材料。
【請求項3】
(A)成分中のアルケニル基と、(B)成分中のSi−H基とのモル比が、Si−H基/アルケニル基=0.8〜5.0の範囲であることを特徴とする請求項1又は2記載の固体高分子型燃料電池セパレータ用シール材料。
【請求項4】
重量平均分子量の異なる2種以上の液状オルガノポリシロキサンのうち、最も多く含まれるもの、その次に多く含まれるものの重量平均分子量をそれぞれMw(A−1)、Mw(A−2)とすると、2≦Mw(A−2)/Mw(A−1)≦10の範囲であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の固体高分子型燃料電池セパレータ用シール材料。
【請求項5】
重量平均分子量の異なる2種以上の液状オルガノポリシロキサンのうち、最も多く含まれるもの、その次に多く含まれるものの重量平均分子量をそれぞれMw(A−1)、Mw(A−2)とすると、10000≦Mw(A−1)<30000、30000≦Mw(A−2)≦100000の範囲であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の固体高分子型燃料電池セパレータ用シール材料。
【請求項6】
(D)成分のカーボン粉末が、BET法による比表面積が30〜120m2/g、沃素吸着量が30〜120mg/g、DBP吸油量が100〜200ml/100gの範囲のカーボンブラックであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の固体高分子型燃料電池セパレータ用シール材料。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項記載のシール材料の硬化物からなる固体高分子型燃料電池セパレータシール。
【請求項8】
体積抵抗率が1.0TΩ・m以上である請求項7記載の固体高分子型燃料電池セパレータシール。
【請求項9】
金属薄板又は導電性粉末とバインダーとを含む基材の少なくとも片面の周縁部にシール部が形成されてなる固体高分子型燃料電池セパレータであって、上記シール部が請求項1乃至6のいずれか1項記載のシール材料の硬化物からなる固体高分子型燃料電池セパレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−158481(P2009−158481A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302737(P2008−302737)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】