固体高分子型燃料電池
【課題】酸化剤極のうち下流側領域における余剰な水を通水路の側に効果的に吸引させることができ、酸化剤極のガス流路が水で閉鎖されるフラッディング現象を抑制することができ、発電性能の更なる向上を図るのに有利な固体高分子型燃料電池を提供する。
【解決手段】酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Eは、厚み方向に液相状態の水および水蒸気のうち少なくとも一つが透過する水分透過性をもつ。酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Eにおいて、酸化剤ガスが流れる下流を下流側領域93と定義すると共に、酸化剤ガスが流れる上流を上流側領域91と定義する。酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Eの厚み方向の水分透過性は、上流側領域91よりも下流側領域93で大きく設定されている。
【解決手段】酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Eは、厚み方向に液相状態の水および水蒸気のうち少なくとも一つが透過する水分透過性をもつ。酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Eにおいて、酸化剤ガスが流れる下流を下流側領域93と定義すると共に、酸化剤ガスが流れる上流を上流側領域91と定義する。酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Eの厚み方向の水分透過性は、上流側領域91よりも下流側領域93で大きく設定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイオン伝導性をもつ高分子電解質膜を有する固体高分子型燃料電池に関し、殊に、酸化剤極用のガス流路形成部材を多孔質とした固体高分子型燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型燃料電池は、エネルギや環境等において有利であるため、近年、開発が進められている。固体高分子型燃料電池は、イオン伝導性をもつ高分子電解質膜と、高分子電解質膜の片側に設けられ燃料が供給される燃料極と、高分子電解質膜の他の片側に設けられたる酸化剤極とをもつ。高分子電解質膜は、過剰に乾燥していると、イオン伝導性が低下するため、発電性能が充分に得られない。
【0003】
そこで、従来、燃料電池に供給される前の酸化剤含有ガス、燃料含有ガスに水分を与え、水分を含む酸化剤含有ガス、燃料含有ガスを燃料電池に供給する方式が採用されている。
【0004】
また、別の方式として、従来、燃料極及び酸化剤極のうちの少なくとも一方の外側に設けられているセパレータとも呼ばれるガス流路形成部材を多孔質とし、多孔質のガス流路形成部材の細孔を介して水、水蒸気を高分子電解質膜に供給する方式が採用されている(特許文献1〜特許文献3)。この方式によれば、多孔質のガス流路形成部材は多数の細孔を有しており、この細孔は、水、水蒸気を透過させ得るようにガス流路形成部材の厚み方向に連通する連通孔とされている。
【特許文献1】特開平6−338338号公報
【特許文献2】特許公報第2922132号
【特許文献3】特開平1−309263号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記した後者の方式を採用している固体高分子型燃料電池によれば、前述したように、セパレータとも呼ばれる多孔質のガス流路形成部材は多数の細孔を有している。この細孔は、水、水蒸気を透過させ得るようにガス流路形成部材の厚み方向に連通する連通孔とされている。ここで、細孔の径及び気孔率は、ガス流路形成部材の各部位において基本的には一様とされている。即ち、通水路と前記酸化剤極との間における水分透過性は、ガス流路形成部材の各部位において基本的には一様とされている。産業界では、上記した固体高分子型燃料電池の発電性能の更なる向上が要請されている。
【0006】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、酸化剤極のうち下流側領域における余剰な水を通水路の側に効果的に吸引させることができ、故に酸化剤極のうち下流側領域における余剰水の滞留を抑制することができ、従って酸化剤極のガス流路が水で閉鎖されるフラッディング現象を抑制することができ、発電性能の更なる向上を図るのに有利な固体高分子型燃料電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る固体高分子型燃料電池は、イオン伝導性をもつ高分子電解質膜と、高分子電解質膜の片側に設けられ燃料が供給される燃料極と、高分子電解質膜の他の片側に設けられ酸化剤含有ガスが供給される酸化剤極と、燃料極の外側に設けられ燃料極用のガス流路形成部材と、酸化剤極の外側に設けられ連通孔となりうる細孔をもつ酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材と、酸化剤極用のガス流路形成部材の外側に水が流れる通水路を形成する通水路形成部材と、通水路の水を吸引させて通水路に水を流す通水部とを具備する固体高分子型燃料電池であって、
酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材において、
酸化剤ガスが流れる下流を下流側領域と定義すると共に、酸化剤ガスが流れる上流を上流側領域と定義するとき、
酸化剤極と通水路との間において液相状態の水および水蒸気のうちの少なくとも一つが透過する水分透過性は、上流側領域よりも下流側領域で大きく設定されていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明に係る固体高分子型燃料電池によれば、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材において、通水路と酸化剤極との間における前記水分透過性は、下流側領域では上流側領域よりも大きく設定されている。このため酸化剤極のうち下流側領域における余剰な水を、通水路の側に効果的に吸引させることができる。故に酸化剤極のうち下流側領域における余剰水の滞留を抑制することができる。従って酸化剤極のガス流路が水で閉鎖されるフラッディング現象を抑制することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る固体高分子型燃料電池によれば、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材において、通水路と酸化剤極との間における水分透過性は、下流側領域では上流側領域よりも、大きく設定されている。このため酸化剤極のうち下流側領域における余剰な水を通水路の側に効果的に吸引させることができる。故に酸化剤極のうち下流側領域における余剰水の滞留を抑制することができる。従って酸化剤極のガス流路が水で閉鎖されるフラッディング現象を抑制することができ、発電性能の向上に有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係る固体高分子型燃料電池の好ましい形態によれば、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材において、平均細孔径及び気孔率のうちの少なくとも一方は、上流側領域よりも下流側領域では、大きく設定されている形態を採用することができる。これにより通水路と酸化剤極との間における水分透過性は、下流側領域では相対的に大きく設定され、上流側領域では相対的に小さく設定されている。この場合、酸化剤極の下流側領域に滞留している余剰水を、酸化剤極から通水路に向けて効果的に吸引させることができる。故に酸化剤極の下流側領域におけるフラッディング現象を抑制することができる。
【0011】
好ましくは、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材において、平均細孔径及び気孔率のうちの少なくとも一方は、上流側領域において相対的に小さく設定されており、下流側領域において相対的に大きく設定されており、上流側領域から下流側領域にかけて、次第に大きくなるように設定されている形態を例示できる。
【0012】
本発明に係る固体高分子型燃料電池によれば、水分透過性とは、液相状態の水、水蒸気のうちのうちの少なくとも一つの透過性を意味する。平均細孔径が相対的に大きいとは、多孔質のガス流路形成部材における全部の細孔のなかで細孔径が相対的に大きいことを意味し、平均細孔径10〜1000μmの範囲内を例示できる。平均細孔径が相対的に小さいとは、多孔質のガス流路形成部材における全部の細孔のなかで細孔径が相対的に小さいことを意味し、平均細孔径0.1〜10μm未満の範囲内を例示できる。なお細孔の大部分は連通孔であり、ガス流路形成部材に水分透過性を与える。
【0013】
気孔率が相対的に大きいとは、多孔質のガス流路形成部材において気孔率が相対的に大きいことを意味し、気孔率40〜95%の範囲内を例示できる。気孔率が相対的に小さいとは、多孔質のガス流路形成部材において気孔率が相対的に小さいことを意味し、気孔率0.1〜40%未満の範囲内を例示できる。但し、平均細孔径及び気孔率としては、上記した範囲に限定されるものではない。
【0014】
本発明に係る固体高分子型燃料電池によれば、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材において、単位体積当たりにおける撥水剤の割合は、下流側領域よりも上流側領域で大きく設定されている形態を採用することができる。撥水剤の割合が多いと、水の出し入れは容易でなくなる。上記の形態では、撥水剤の割合は、上流側領域で相対的に多く設定され、下流側領域で相対的に少なく設定されている。このためMEAの下流側領域における余剰水を通水路に吸引させるのに有利となり、下流側領域での余剰水の滞留を抑制するのに一層貢献することができる。撥水剤としては、多孔質のガス流路形成部材の表面及び/または細孔内に設けることができる。
【実施例】
【0015】
まず、実施例の説明に先立って、第1参考例から説明する。
【0016】
以下、本発明の本参考例の概念について図1及び図2を参照して説明する。図1は本参考例に係る固体高分子型燃料電池の概念を模式化して示す。本参考例に係る固体高分子型燃料電池は、第1通水路41に水を圧送させる方式を採用している。MEA1(膜・電極接合体)は、プロトン伝導性をもつ高分子電解質材料で形成された高分子電解質膜11と、高分子電解質膜11の厚み方向の片側に設けられ燃料が供給される燃料極12と、高分子電解質膜11の厚み方向の他の片側に設けられ酸化剤含有ガス(一般的には空気)が供給される多孔質でありガス透過性をもつ酸化剤極15とを有する。
【0017】
酸化剤極15は、多孔質でありガス透過性及び導電性をもつようにカーボン繊維などのカーボン材料で形成された第1ガス拡散層16と、高分子電解質膜11側に形成された第1触媒層17とで形成されている。燃料極12は、多孔質でありガス透過性及び導電性をもつようにカーボン繊維などのカーボン材料で形成された第2ガス拡散層13と、高分子電解質膜11側に形成された第2触媒層14とで形成されている。第1触媒層17及び第2触媒層14は、白金等の触媒金属を担持したカーボン微粒子の集合体と、プロトン伝導性をもつ電解質ポリマーとを主要成分として形成されている。
【0018】
そして図1に示すように、燃料極12の厚み方向の外側には、燃料極用のガス流路形成部材2が設けられている。燃料極用のガス流路形成部材2は、セパレータとも呼ばれるものであり、緻密体で形成されている。燃料極用のガス流路形成部材2は、耐食性及び導電性を有する材料(一般的にはカーボン材料)で形成されており、燃料極12の第2ガス拡散層13に供給される燃料ガスが流れる溝状のガス流路21をもつ。
【0019】
酸化剤極15の厚み方向の外側には、連通孔となり得る多数の細孔をもつ酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3が設けられている。図1に示すガス流路形成部材3では細孔は○として模式化されている。ガス流路形成部材3では細孔は連通しており、ガス流路形成部材3の厚み方向に水分透過性を有する。酸化剤極用のガス流路形成部材3は、セパレータとも呼ばれるものであり、耐食性及び導電性を有する材料(一般的にはカーボン材料)で形成されており、酸化剤極15の第1ガス拡散層16に供給される酸化剤含有ガス(一般的には空気)が流れる溝状のガス流路31をもつ。図1に示すように、燃料極12と酸化剤極15とは、導電経路60及び負荷61を経て電気的に接続されている。
【0020】
酸化剤極用のガス流路形成部材3において、酸化剤含有ガスが流れる上流側を上流側領域91と定義すると共に、酸化剤含有ガスが流れる下流側を下流側領域93と定義する。酸化剤極用のガス流路形成部材3の厚み方向の外側には、給水源40から供給された冷却用及び加湿用の水が流れる第1通水路41を形成する仕切板状の第1通水路形成部材51が設けられている。第1通水路41は給水口43と吐水口44とをもつ。
【0021】
更に、給水源40からの水を第1通水路41に圧送させて通水させる通水部49が設けられている。通水部49は例えばポンプで形成できる。通水部49は、第1通水路41の給水口43の上流側に設けられており、第1通水路41に水を圧送させ、第1通水路41の給水口43から吐水口44に向けて通水させる。第1通水路41における水の圧力Pmは絶対圧で1atmを越えており、酸化剤含有ガス(一般的には空気)が流れる溝状のガス流路31における圧力P1よりも大きく設定されている(Pm>P1)。基本的にはPmとP1との差圧により、第1通水路41の水をMEA1の酸化剤極15の側に矢印M1方向に向けて補給することができる。
【0022】
さて本参考例によれば、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3の平均細孔径及び気孔率については、酸化剤含有ガス(一般的には空気)が流れる方向に沿って変化するように設定されている。即ち、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3において、平均細孔径及び気孔率の双方は、上流側領域91では下流側領域93よりも大きく設定されている。
【0023】
具体的には、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3において、平均細孔径及び気孔率の双方は、上流側領域91において相対的に大きく設定されており、下流側領域93において相対的に小さく設定されている。即ち、図2において特性線A1は細孔径を示し、特性線A2は気孔率を示す。図2の特性線A1,A2に示すように、上流側領域91から下流側領域93にかけて次第に連続的に且つ傾斜的に小さくなるように設定されている。上記した結果、第1通水路41と酸化剤極15との間における水分透過性は、上流側領域91で相対的に大きく、下流側領域93で相対的に小さくされている。
【0024】
なお、平均細孔径が相対的に大きいとは、平均細孔径10〜1000μmの範囲内を例示できる。平均細孔径が相対的に小さいとは、平均細孔径0.1〜10μmの範囲内を例示できる。気孔率が相対的に大きいとは、気孔率40〜95%の範囲内を例示できる。気孔率が相対的に小さいとは、気孔率0.1〜40%未満の範囲内を例示できる。但し、細孔径及び気孔率としては上記した値に限定されるものではない。
【0025】
燃料電池を運転する際には、酸化剤含有ガス(一般的には空気)が搬送源68により酸化剤極用のガス流路形成部材3の溝状のガス流路31に供給される。この酸化剤含有ガスは溝状のガス流路31から酸化剤極15の第1ガス拡散層16,第1触媒層17に流入する。更に、燃料ガス(水素含有ガス)が搬送源69により燃料極用のガス流路形成部材2の溝状のガス流路21に供給される。燃料ガスは、ガス流路21から燃料極12の第2ガス拡散層13及び第2触媒層14に流入する。そして、第2触媒層14の触媒作用により、燃料ガスの水素からプロトン(水素イオン)と電子(e−)とが生成される。生成されたプロトンは、高分子電解質膜11を厚み方向に透過して酸化剤極15に至る。電子は導電経路60を流れ、導電経路60の負荷61で電気的仕事を行った後に、酸化剤極15に至る。そして酸化剤極15では、酸化剤極15の第1触媒層17の触媒作用により、酸化剤極15に供給された酸化剤含有ガス(一般的に空気)とプロトンと電子とが反応して水が生成される。このような発電反応により熱が発生するが、給水源40からの水が通水部49により第1通水路41に通水されるため、燃料電池は冷却される。
【0026】
上記した発電反応が発現されるMEA1では、酸化剤含有ガスの上流側領域91よりも下流側領域93の方が生成水が相対的に多くなる傾向となる。従ってこのようなMEA1では、一般的には、相対湿度は上流側領域91では相対的に低くなり、下流側領域93では相対的に高くなる。上記したMEA1では、上流側領域91では乾燥が生じることがあり、下流側領域93では余剰水が滞留することがある。
【0027】
この点本参考例によれば、第1通水路41と酸化剤極15との間における水分透過性は、上流側領域91では相対的に大きく設定されていると共に、下流側領域93では相対的に小さく設定されている。即ち、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3における平均細孔径及び気孔率の双方は、上流側領域91では相対的に大きく設定されていると共に、下流側領域93では相対的に小さく設定されている。このため第1通水路41に水が圧送されて通水されるとき、第1通水路41の水は、平均細孔径及び気孔率が大きな上流側領域91では、下流側領域93よりもMEA1の酸化剤極15側に相対的に矢印M1方向に向けて透過し易くなる。この結果、乾燥しがちの上流側領域91において、酸化剤極15に対する加湿量を相対的に大きくすることができ、ひいては乾燥しがちの上流側領域91における過剰乾燥を抑制できる。
【0028】
これに対して、上記した発電反応に基づいて水分が余剰になりがちな下流側領域93では、MEA1の高分子電解質膜11に対する加湿量を上流側領域91よりも相対的に小さくすることができる。これにより水分が余剰になりがちな下流側領域93におけるフラッディング現象を抑制することができる。この結果、固体高分子型燃料電池の発電性能を向上させるのに貢献できる。フラッディング現象とは、ガスが通過するガス流路が余剰の水で閉鎖され、ガス流路の流路面積が低下することを意味する。フラッディング現象が発生すると、充分な発電性能を得るには不利となる。
【0029】
(第2参考例)
第2参考例は第1参考例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。以下、第1参考例と相違する部分を中心として説明する。本参考例によれば、図3の特性線A1,A2に示すように、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3において、平均細孔径及び気孔率の双方は、上流側領域91において相対的に大きく設定されており、且つ、下流側領域93において相対的に小さく設定されている。ここで、図3の特性線A1,A2に示すように、平均細孔径及び気孔率の双方は、上流側領域91から下流側領域93にかけて不連続的に変化している。
【0030】
(第3参考例)
図4は第3参考例の概念を模式的に示す。第3参考例は第1参考例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。以下、第1参考例と相違する部分を中心として説明する。本参考例によれば、図4に示すように、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Bにおいて各細孔の平均細孔径は、基本的にはほぼ同一とされており、約5〜10μmを例示することができる。
【0031】
酸化剤極用のガス流路形成部材3Bにおける気孔率については、酸化剤含有ガスが流れる方向に沿って変化するように設定されている。即ち、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Bにおける気孔率は、上流側領域91では下流側領域93よりも大きく設定されている。
【0032】
この結果、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Bにおいて、第1通水路41と酸化剤極15との間における水分透過性は、上流側領域91において相対的に大きく設定されており、且つ、下流側領域93において相対的に小さく設定されている。
【0033】
本参考例によれば、燃料極用のガス流路形成部材2Bは緻密体ではなく、多数の細孔をもつ多孔質体で形成されている。燃料極用のガス流路形成部材2Bにおいて、燃料ガスが流れる上流側を上流側領域91Xと定義すると共に、燃料ガスが流れる下流側を下流側領域93Xと定義する。
【0034】
図4に示すガス流路形成部材3B及びガス流路形成部材2Bでは、細孔は○として模式化されている。ガス流路形成部材3B及びガス流路形成部材2Bでは細孔は連通しており、ガス流路形成部材3B及びガス流路形成部材2Bはそれぞれ厚み方向に水分透過性を有する。
【0035】
図4に示すように、燃料極用のガス流路形成部材2Bの外側には、第2通水路42を形成する第2通水路形成部材52が設けられている。第2通水路42は給水口43,吐水口44をもつ。第2通水路42には、第1通水路41と同様に、給水源40からの水が通水部49の作動により圧送されて流れる。
【0036】
燃料極用のガス流路形成部材2Bにおける気孔率については、燃料ガスが流れる方向に沿って変化するように設定されている。即ち、多孔質の燃料極用のガス流路形成部材2Bにおける気孔率は、上流側領域91Xでは下流側領域93Xよりも大きく設定されている。具体的には、多孔質の燃料極用のガス流路形成部材2Bにおける気孔率は、上流側領域91Xにおいて相対的に大きく設定されており、下流側領域93Xにおいて相対的に小さく設定されている。従って第2通水路42と燃料極12との間における水分透過性は、上流側領域91Xでは相対的に大きく、下流側領域93Xでは相対的に小さく設定されている。
【0037】
以上説明したように本参考例によれば、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Bについては、気孔率は、上流側領域91では相対的に大きく設定されていると共に、下流側領域93では相対的に小さく設定されている。同様に、燃料極用のガス流路形成部材2Bについては、気孔率は、上流側領域91Xでは相対的に大きく設定されていると共に、下流側領域93Xでは相対的に小さく設定されている。
【0038】
このため第1通水路41及び第2通水路42に水が圧送されて通水されるとき、第1通水路41及び第2通水路42の水は、気孔率が大きな上流側領域91,91Xでは、下流側領域93,93XよりもMEA1側に矢印M1方向に向けて相対的に透過し易くなる。この結果、乾燥しがちの上流側領域91,91Xにおいて、MEA1に対する加湿量を相対的に大きくすることができる。更に、水が余剰になりがちの下流側領域93,93Xにおいて、MEA1に対する加湿量を相対的に小さくすることができる。
【0039】
(第4参考例)
図5は第4参考例の概念を模式的に示す。第4参考例は、図4に示す第3参考例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。以下、図4に示す第3参考例と相違する部分を中心として説明する。図5に示すガス流路形成部材3B及びガス流路形成部材2Bでは、細孔は○として模式化されている。ガス流路形成部材3B及びガス流路形成部材2Bでは細孔は連通しており、ガス流路形成部材3B及びガス流路形成部材2Bはそれぞれ厚み方向に透過性を有する。
【0040】
本参考例によれば、酸化剤極用のガス流路形成部材3Bの表面及び細孔の表面には、撥水剤8が付設されている。図5は撥水剤8の強さを模式化して図示しており、撥水剤8の厚みを示すものではない。撥水剤8としては、パーフルオロカーボン、フルオロカーボン等を例示できる。酸化剤極用のガス流路形成部材3Bにおいて、単位体積当たりの撥水剤8の割合が多いと、水がはじかれるため、MEA1に対する水の出し入れがしにくくになる。また、撥水剤8の割合が少ないか、あるいは撥水剤8が存在しなければ、撥水剤8の割合が多い場合に比較して、MEA1に対する水の出し入れが容易となる。
【0041】
本参考例によれば、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Bにおける撥水剤8の割合については、酸化剤ガスが流れる方向に沿って変化するように設定されている。即ち、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Bにおける撥水剤8の割合としては、上流側領域91では無しか下流側領域93よりも少なく設定されている。具体的には、酸化剤極用のガス流路形成部材3Bにおける撥水剤8の割合は、上流側領域91において相対的に小さく設定されており(撥水剤が無しを含む)、且つ、下流側領域93において相対的に大きく設定されている。このため、第1通水路41と酸化剤極15との間における水分透過性は、酸化剤極用のガス流路形成部材3Bにおいて、上流側領域91では相対的に大きく設定されており、且つ、下流側領域93では相対的に小さく設定されている。
【0042】
また図5に示すように、燃料極用のガス流路形成部材2Bの表面には、撥水剤8が付設されている。多孔質の燃料極用のガス流路形成部材2Bにおける撥水剤8の割合については、燃料ガスが流れる方向に沿って変化するように設定されている。即ち、燃料極用の多孔質のガス流路形成部材2Bにおける撥水剤8の割合としては、上流側領域91Xでは無しか下流側領域93Xよりも少なく設定されている。具体的には、酸化剤極用のガス流路形成部材2Bにおける撥水剤8の割合は、上流側領域91Xにおいて相対的に小さく設定されており、且つ、下流側領域93Xにおいて相対的に大きく設定されている。このため、第2通水路42と燃料極12との間における水分透過性は、燃料極用のガス流路形成部材2Bにおいて、上流側領域91Xでは相対的に大きく設定されており、且つ、下流側領域93Xでは相対的に小さく設定されている。
【0043】
このような本参考例によれば、通水部49の作動により第1通水路41及び第2通水路42に水が圧送されて通水されるとき、第1通水路41及び第2通水路42の水は、撥水剤8の割合が無しか相対的に少ない上流側領域91,91Xでは、撥水剤8の割合が相対的に多い下流側領域93,93Xよりも、MEA1に向けて矢印M1方向に相対的に透過し易くなる。この結果、上流側領域91,91Xにおける加湿量を大きくでき、上流側領域91,91Xにおける過剰乾燥を抑制できる。
【0044】
上記したように酸化剤含有ガス、燃料ガスが流れる方向に沿って撥水剤8の割合を変化させるにあたり、例えば、撥水剤8を酸化剤極用のガス流路形成部材3B、燃料極用のガス流路形成部材2Bの表面に付設させる際に、ガス流路形成部材3B、ガス流路形成部材2Bをマスキング部材で覆い、マスキング部材を相対移動させることにより、マスキング時間を可変とさせることにより行い得る。
【0045】
なお場合によっては、図5に示す実施例において、ガス流路形成部材3Bに付設される撥水剤8、ガス流路形成部材2Bに付設される撥水剤8のいずれかを廃止することもできる。
【0046】
(第1実施例)
以下、本発明の第1実施例の概念について図6を参照して説明する。本実施例に係る固体高分子型燃料電池は、第1通水路41の水を吸引させることにより第1通水路41に水を流す方式である。本実施例に係るMEA1は、プロトン伝導性をもつ高分子材料で形成された高分子電解質膜11と、高分子電解質膜11の厚み方向の片側に設けられ燃料が供給される燃料極12と、高分子電解質膜11の厚み方向の他の片側に設けられ酸化剤含有ガス(一般的には空気)が供給される多孔質でありガス透過性をもつ酸化剤極15とを有する。
【0047】
酸化剤極15は、多孔質でありガス透過性をもつようにカーボン材料で形成された第1ガス拡散層16と、高分子電解質膜11側に形成された第1触媒層17とで形成されている。燃料極12は、多孔質でありガス透過性をもつようにカーボン材料で形成された第2ガス拡散層13と、高分子電解質膜11側に形成された第2触媒層14とで形成されている。
【0048】
そして、第1参考例と同様に、燃料極12の厚み方向の外側には、燃料極用のガス流路形成部材2が設けられている。燃料極用のガス流路形成部材2はセパレータとも呼ばれるものであり、多孔質体ではなく、緻密体で形成されている。燃料極用のガス流路形成部材2は、耐食性及び導電性を有する材料(一般的にはカーボン材料)で形成されており、燃料極12の第2ガス拡散層13に供給される燃料ガスが流れる溝状のガス流路21をもつ。
【0049】
図6に示すように、酸化剤極15の厚み方向の外側には、多数の細孔をもつ酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Eが設けられている。図6に示すガス流路形成部材3Eでは細孔は○として模式化されている。ガス流路形成部材3Eでは細孔は連通しており、ガス流路形成部材3Eは厚み方向に透過性を有する。
【0050】
酸化剤極用のガス流路形成部材3Eは、セパレータとも呼ばれるものであり、耐食性及び導電性を有する材料(一般的にはカーボン材料)で形成されており、酸化剤極15の第1ガス拡散層16に供給される酸化剤含有ガス(一般的には空気)が流れる溝状のガス流路31をもつ。酸化剤極15と燃料極12とは、導電経路60及び負荷61を経て電気的に接続されている。
【0051】
図6に示すように、酸化剤極用のガス流路形成部材3Eの厚み方向の外側には、冷却用及び加湿用の水が流れる第1通水路41を形成する仕切板状の第1通水路形成部材51が設けられている。
【0052】
更に、第1通水路41に水を通水させる通水部49Eが設けられている。通水部49Eは、第1通水路41の下流側に設けられており、第1通水路41の水を矢印W2方向に吸引させることにより、第1通水路41の給水口43から吐水口44に向けて通水させる。通水部49Eは吸引ポンプで形成できる。第1通水路41における水の圧力Pmは絶対圧で1atm未満であり、酸化剤含有ガス(一般的には空気)が流れる溝状のガス流路31における圧力P1よりも小さく設定されている(Pm<P1)。基本的にはPmとP1との差圧により、MEA1の酸化剤極15に滞留している余剰の水を第1通水路41に矢印M2方向に吸引することができる。
【0053】
さて本実施例によれば、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Eにおける平均細孔径及び気孔率については、酸化剤含有ガスが流れる方向に沿って変化するように設定されている。即ち、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Eにおける平均細孔径及び気孔率の双方は、下流側領域93では上流側領域91よりも大きく設定されている。具体的には、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Eにおける平均細孔径及び気孔率の双方は、下流側領域93において相対的に大きく設定されており、上流側領域91において相対的に小さく設定されており、そして、図7の特性線E1,E2に示すように、上流側領域91から下流側領域93にかけて次第に連続的に且つ傾斜的に大きくなるように設定されている。図7において特性線E1は細孔径を示し、特性線E2は気孔率を示す。
【0054】
この結果、第1通水路41と酸化剤極15との間における水分透過性は、下流側領域93において相対的に大きく設定されており、上流側領域91において相対的に小さく設定されている。
【0055】
燃料電池を運転する際には、第1実施例と同様に、燃料ガス(水素含有ガス)が搬送源69により溝状のガス流路21に供給されると共に、酸化剤含有ガス(一般的には空気)が搬送源68により溝状のガス流路31に供給される。燃料ガスは溝状のガス流路21から燃料極12の第2ガス拡散層13に至り、更に燃料極12に含有されている第2触媒層14の触媒作用により、燃料ガスに含まれている水素からプロトン(水素イオン)と電子(e−)とが生成される。プロトンは高分子電解質膜11を厚み方向に透過して酸化剤極15に至る。電子は導電経路60を流れる。電子は導電経路60の負荷61で電気的仕事を行った後に、酸化剤極15に至る。そして酸化剤極15では、酸化剤極15の第1触媒層17の触媒作用により、酸化剤極15に供給された酸化剤含有ガス(一般的に空気)とプロトンと電子とが反応して水が生成される。このような発電反応が発現されるMEA1では、酸化剤含有ガスの上流側領域91よりも下流側領域93の方が生成水が相対的に多くなる。従ってこのようなMEA1では、相対湿度は上流側領域91では相対的に低くなり、下流側領域93では相対的に高くなる。
【0056】
この点本実施例によれば、前述したように、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Eについては、平均細孔径及び気孔率の双方は、上流側領域91では相対的に小さく設定されていると共に、下流側領域93では相対的に大きく設定されている。即ち、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Eにおいて、平均細孔径及び気孔率の双方は下流側領域93において相対的に大きく設定されており、上流側領域91において相対的に小さく設定されており、図7の特性線E1,E2に示すように、上流側領域91から下流側領域93にかけて次第に連続的に且つ傾斜的に大きくなるように設定されている。
【0057】
このため本実施例によれば、図6から理解できるように、給水源40から供給された水が第1通水路41において矢印W2方向へ吸引されるとき、酸化剤極15の下流側領域93に溜まっている余剰の水は、上流側領域91よりも相対的に第1通水路41側に矢印M2方向に吸引され易くなる。これにより水分が余剰になりがちな下流側領域93における余剰水が吸引除去され、ひいては下流側領域93におけるフラッディング現象を抑制することができる。この結果、固体高分子型燃料電池の発電性能を向上させるのに貢献できる。
【0058】
(第2実施例)
図8は第2実施例の概念を模式的に示す。本実施例は、図6に示す第1実施例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。以下、図6に示す実施例と相違する部分を中心として説明する。本実施例によれば、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Eにおいて、気孔率は下流側領域93では相対的に大きく設定されており、上流側領域91では相対的に小さく設定されている。そして、図8の特性線E1に示すように、細孔径は、上流側領域91から下流側領域93にかけて不連続的に大きくなるように設定されている。また図8の特性線E2に示すように、気孔率は、上流側領域91から下流側領域93にかけて不連続的に大きくなるように設定されている。
【0059】
(第3実施例)
図9は第3実施例の概念を模式的に示す。本実施例は図6に示す実施例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。以下、図6に示す実施例と相違する部分を中心として説明する。図9に示すガス流路形成部材3F,2Fでは細孔は○として模式化されている。ガス流路形成部材3F,2Fでは細孔は連通しており、ガス流路形成部材3F,2Fは厚み方向に水分透過性を有する。本実施例によれば、図9に示すように、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Fにおいて平均細孔径は基本的には均一とされている。但し、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Fにおける第1通水路41と酸化剤極15との間における水分透過性、具体的には気孔率としては、下流側領域93では相対的に大きく設定されており、上流側領域91では相対的に小さく設定されている。
【0060】
本実施例によれば、図9から明らかなように、燃料極用のガス流路形成部材2Fは緻密体ではなく、多数の細孔を有する多孔質体で形成されている。この燃料極用のガス流路形成部材2Fにおける第1通水路41と燃料極12との間における水分透過性、即ち、多孔質の燃料極用のガス流路形成部材2Fにおける気孔率は、下流側領域93Xでは上流側領域91Xよりも大きく設定されている。
【0061】
具体的には、多孔質の燃料極用のガス流路形成部材2Fにおいて、気孔率は上流側領域91Xにおいて相対的に小さく設定されており、下流側領域93Xにおいて相対的に大きく設定されている。即ち、燃料極用のガス流路形成部材2Fの気孔率は、上流側領域91Xから下流側領域93Xにかけて次第に連続的に且つ傾斜的に大きくなるように設定されている。
【0062】
燃料極用のガス流路形成部材2Fの外側には、第2通水路42を形成する第2通水路形成部材52が設けられている。第2通水路42は給水口43及び吐水口44わ有する。通水部49Fの吸引作動により、第1通水路41と同様に、第2通水路42には給水源40からの冷却用の水が吸引されて流れる。
【0063】
本実施例によれば、図9に示すように、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Fについては、気孔率は、上流側領域91では相対的に小さく設定されていると共に、下流側領域93では相対的に大きく設定されている。同様に、燃料極用のガス流路形成部材2Fについては、気孔率は、上流側領域91Xでは相対的に小さく設定されていると共に、下流側領域93Xでは相対的に大きく設定されている。
【0064】
このため、第2通水部49Fの吸引作動により、給水源40からの水が第1通水路41及び第2通水路42に吸引されて流れるとき、MEA1側に滞留していた余剰の水は、平均細孔径及び気孔率が大きな下流側領域93,93Xでは上流側領域91,91Xよりも、第1通水路41及び第2通水路42の側に矢印M2方向に吸引され易くなる。この結果、余剰水が滞留しがちの下流側領域93,93Xにおいて、余剰水の吸引除去量を相対的に大きくすることができ、下流側領域93,93Xにおけるフラッディング現象を抑制するのに貢献できる。
【0065】
(第4実施例)
図10は第4実施例の概念を模式的に示す。本実施例は図9に示す実施例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。以下、図9に示す実施例と相違する部分を中心として説明する。図10に示すガス流路形成部材3F,2Fでは細孔は○として模式化されている。ガス流路形成部材3F,2Fでは細孔は連通しており、ガス流路形成部材3F,2Fは厚み方向に水分透過性を有する。
【0066】
本実施例によれば、図10に示すように、酸化剤極用のガス流路形成部材3Fの表面及び細孔の内壁面には撥水剤8が付設されている。燃料極用のガス流路形成部材2Fの表面及び細孔の内壁面にも撥水剤8が付設されている。図10は撥水剤8の強さを模式化して図示しており、撥水剤8の厚みを示すものではない。酸化剤極用のガス流路形成部材3F及び燃料極用のガス流路形成部材2Fの単位体積当たりにおいて、撥水剤8の割合が多いと、水がはじかれるため、MEA1に対する水の出し入れがしにくくになる。また、撥水剤8の割合が少ないか、あるいは撥水剤が存在しなければ、撥水剤8の割合が多い場合に比較して、MEA1に対する水の出し入れが容易となる。
【0067】
本実施例によれば、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Fにおける撥水剤8の割合については、酸化剤含有ガスが流れる方向に沿って変化するように設定されている。同様に、多孔質の燃料極用のガス流路形成部材2Fにおける撥水剤8の割合については、燃料ガスが流れる方向に沿って変化するように設定されている。
【0068】
即ち、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Fにおける撥水剤8の割合としては、下流側領域93では無しか上流側領域91よりも相対的に少なく設定されている。また多孔質の燃料極用のガス流路形成部材2Fにおける撥水剤8の割合としては、下流側領域93Xでは無しか上流側領域91Xよりも相対的に少なく設定されている。
【0069】
このため、通水部49Fの吸引作動により、給水源40からの水が第1通水路41及び第2通水路42に吸引されて通水されるとき、MEA1側に滞留していた余剰の水は、撥水剤8の割合が相対的に少ない下流側領域93,93Xでは、第1通水路41及び第2通水路42に向けて矢印M2方向に吸い出されやすくなる。故に、下流側領域93,93Xにおける余剰水の滞留を抑制することができる。これにより余剰水が滞留しがちな下流側領域93.93Xにおけるフラッディング現象を抑制することができる。この結果、固体高分子型燃料電池の発電性能を向上させるのに貢献できる。
【0070】
(製造例1)
図11及び図12は、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3となり得る製造例1に係る多孔質体200の断面を模式的に示す。製造例1によれば、第1工程において、図11に示すように、一端201側を厚肉で他端203側を薄肉とした多孔質体200を製造する。多孔質体200は多数の細孔を有する。細孔は、気化可能な昇華物質、消失可能な焼失物質等の適度なサイズの消失物質を用い、消失物質を埋設した後に、昇華、焼失等により消失物質を消失させることにより形成できる。第1工程を経た多質体200において、平均細孔径及び気孔率は、これの一端201側から他端203側にかけて基本的には同一である。
【0071】
次に第2工程において、プレス型100によるプレス加圧に基づいて、多孔質体200をこれの厚み方向に圧縮させる。図12に示すように、プレス型100で圧縮された後の多孔質体200によれば、一端201側から他端203側にかけて厚みは基本的には同一である。
【0072】
圧縮後の多孔質体200によれば、一端201側は圧縮率が高く、他端203側は圧縮率が低く設定されている。この結果、圧縮後の多孔質体200によれば、一端201側の密度は高くなり、他端203側の密度は低くなる。従って、一端201側における平均細孔径及び気孔率は相対的に小さく設定されていると共に、他端203側における平均細孔径及び気孔率は相対的に大きく設定されている。
【0073】
図1に示す例に係る酸化剤極用のガス流路形成部材3に製造例1に係る多孔質体200を適用する場合には、圧縮後の多孔質体200のうち平均細孔径及び気孔率が小さく設定されているため密度が相対的に高い一端201側を、酸化剤極用のガス流路形成部材3の下流側領域93に設定することができる。また、平均細孔径及び気孔率が大きく設定されているため密度が相対的に低い他端203側を、酸化剤極用のガス流路形成部材3の上流側領域91に設定することができる。
【0074】
また図6に示す実施例に係る酸化剤極用のガス流路形成部材3に製造例1に係る多孔質体200を適用する場合には、圧縮後の多孔質体200のうち平均細孔径及び気孔率が相対的に小さく設定されているため密度が相対的に高い一端201側を、酸化剤極用のガス流路形成部材3の上流側領域91に設定することができる。また、平均細孔径及び気孔率が相対的に大きく設定されているため密度が相対的に低い他端203側を、酸化剤極用のガス流路形成部材3の下流側領域93に設定することができる。なお、多孔質の燃料極用のガス流路形成部材2についても同様にできる。
【0075】
(製造例2)
図13及び図14は、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3となり得る製造例2に係る多孔質体300の断面を模式的に示す。製造例2によれば、第1工程において、図13に示すように、一端301側から他端303側にかけて厚みが基本的に同一の多孔質体300を製造する。多孔質体300は多数の細孔を有する。この多孔質体300において、平均細孔径及び気孔率は、これの一端301側では小さく設定されており、他端303側では大きく設定されている。
【0076】
次に第2工程において、図14に示すように、プレス型100によるプレス加圧に基づいて、多孔質体300をこれの厚み方向に圧縮させる。圧縮後の多孔質体300によれば、一端301側における平均細孔径及び気孔率は小さく設定されていると共に、他端303側における平均細孔径及び気孔率は大きく設定されている。
【0077】
図1に示す参考例に係る酸化剤極用のガス流路形成部材3に製造例2に係る多孔質体300を適用する場合には、圧縮後の多孔質体300のうち平均細孔径及び気孔率が小さく設定されている一端301側を、酸化剤極用のガス流路形成部材3の下流側領域93に設定することができる。また、平均細孔径及び気孔率が大きく設定されている他端303側を酸化剤極用のガス流路形成部材3の上流側領域91に設定することができる。
【0078】
また図6に示す実施例に係る酸化剤極用のガス流路形成部材3Bに製造例2に係る多孔質体300を適用する場合には、圧縮後の多孔質体300のうち平均細孔径及び気孔率が相対的に小さく設定されている一端301側を酸化剤極用のガス流路形成部材3Bの下流側領域93に設定することができる。また、平均細孔径及び気孔率が相対的に大きく設定されている他端303側を酸化剤極用のガス流路形成部材3Bの上流側領域91に設定することができる。なお、多孔質の燃料極用のガス流路形成部材2についても同様にできる。
【0079】
(製造例3)
酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3となり得る多孔質体は、次のようにも形成できる。気化可能な昇華物質、消失可能な焼失物質等の適度なサイズの消失物質を用い、消失物質を埋設した母体を形成する母体形成工程と、昇華、焼失等により消失物質を母体から消失させて多孔質体を形成する多孔化工程とを順に実施して形成することができる。母体において消失物質の消失跡が細孔となる。母体形成工程において、母体に埋設される消失物質のサイズ及び埋設量のうちのうちの少なくとも一方を母体の一端から他端にかけて変化させることにより、多孔質体における細孔径及び気孔率のうちの少なくとも一方を変化させることができる。
【0080】
(その他)第1触媒層17、第2触媒層14は高分子電解質膜11の表裏に積層されていても良い。その他、本発明は上記した実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できるものである。
【0081】
上記した記載から次の技術的思想も把握できる。
(付記項1)イオン伝導性をもつ高分子電解質膜と、高分子電解質膜の片側に設けられ燃料が供給される燃料極と、高分子電解質膜の他の片側に設けられ酸化剤含有ガスが供給される酸化剤極と、燃料極の外側に設けられた燃料極用のガス流路形成部材と、酸化剤極の外側に設けられた酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材と、酸化剤極用のガス流路形成部材の外側に水が流れる通水路を形成する通水路形成部材と、水を通水路に圧送させて通水路に水を流す通水部とを具備する固体高分子型燃料電池であって、
多孔質の前記酸化剤極用のガス流路形成部材において、酸化剤ガスが流れる下流を下流側領域と定義すると共に、前記酸化剤ガスが流れる上流を上流側領域と定義するとき、撥水剤の割合は、下流側領域よりも上流側領域で小さく設定されていることを特徴とする固体高分子型燃料電池。
【0082】
撥水剤の割合が多いと、水の出し入れは容易でなくなる。撥水剤の割合は、下流側領域で相対的に大きく設定され、上流側領域で相対的に小さく設定されている。このため通水路の水をMEA側に透過させるのに有利となり、MEAの上流側領域での過剰乾燥の抑制に貢献できる。
(付記項2)イオン伝導性をもつ高分子電解質膜と、高分子電解質膜の片側に設けられ燃料が供給される燃料極と、高分子電解質膜の他の片側に設けられ酸化剤含有ガスが供給される酸化剤極と、燃料極の外側に設けられた燃料極用のガス流路形成部材と、酸化剤極の外側に設けられた酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材と、酸化剤極用のガス流路形成部材の外側に水が流れる通水路を形成する通水路形成部材と、通水路の水を吸引させて前記通水路に水を流す通水部とを具備する固体高分子型燃料電池であって、
酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材において、酸化剤ガスが流れる下流を下流側領域と定義すると共に、前記酸化剤ガスが流れる上流を上流側領域と定義するとき、撥水剤の割合は、下流側領域よりも上流側領域で大きく設定されていることを特徴とする固体高分子型燃料電池。撥水剤の割合が多いと、水の出し入れは容易でなくなる。撥水剤の割合は、上流側領域で相対的に多く設定され、下流側領域で相対的に少なく設定されている。このためMEAの下流側領域における余剰水を通水路に吸引させるのに有利となり、下流側領域での余剰水の滞留を抑えるのに貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】第1参考例に係る燃料電池の概念を模式的に示す断面図である。
【図2】第1参考例に係る細孔径及び気孔率の変化を模式的に示すグラフである。
【図3】第2参考例に係る細孔径及び気孔率の変化を模式的に示すグラフである。
【図4】第3参考例に係る燃料電池の概念を模式的に示す断面図である。
【図5】第4参考例に係る燃料電池の概念を模式的に示す断面図である。
【図6】第1実施例に係る燃料電池の概念を模式的に示す断面図である。
【図7】第1実施例に係る細孔径及び気孔率の変化を模式的に示すグラフである。
【図8】第2実施例に係る細孔径及び気孔率の変化を模式的に示すグラフである。
【図9】第3実施例に係る燃料電池の概念を模式的に示す断面図である。
【図10】第4実施例に係る燃料電池の概念を模式的に示す断面図である。
【図11】ガス流路形成部材の製造例1に係り、最終的に圧縮する前の状態のガス流路形成部材の概念を模式的に示す断面図である。
【図12】ガス流路形成部材の製造例1に係り、最終的に圧縮した後の状態のガス流路形成部材の概念を模式的に示す断面図である。
【図13】ガス流路形成部材の製造例2に係り、最終的に圧縮する前の状態のガス流路形成部材の概念を模式的に示す断面図である。
【図14】ガス流路形成部材の製造例2に係り、最終的に圧縮した後の状態のガス流路形成部材の概念を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0084】
図中、1はMEA、11は高分子電解質膜、12は燃料極、15は酸化剤極、2は燃料極用のガス流路形成部材、3は酸化剤極用のガス流路形成部材、41は第1通水路、42は第2通水路、49は通水部、51は通水路形成部材、91は上流側領域、93は下流側領域、8は撥水剤を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明はイオン伝導性をもつ高分子電解質膜を有する固体高分子型燃料電池に関し、殊に、酸化剤極用のガス流路形成部材を多孔質とした固体高分子型燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型燃料電池は、エネルギや環境等において有利であるため、近年、開発が進められている。固体高分子型燃料電池は、イオン伝導性をもつ高分子電解質膜と、高分子電解質膜の片側に設けられ燃料が供給される燃料極と、高分子電解質膜の他の片側に設けられたる酸化剤極とをもつ。高分子電解質膜は、過剰に乾燥していると、イオン伝導性が低下するため、発電性能が充分に得られない。
【0003】
そこで、従来、燃料電池に供給される前の酸化剤含有ガス、燃料含有ガスに水分を与え、水分を含む酸化剤含有ガス、燃料含有ガスを燃料電池に供給する方式が採用されている。
【0004】
また、別の方式として、従来、燃料極及び酸化剤極のうちの少なくとも一方の外側に設けられているセパレータとも呼ばれるガス流路形成部材を多孔質とし、多孔質のガス流路形成部材の細孔を介して水、水蒸気を高分子電解質膜に供給する方式が採用されている(特許文献1〜特許文献3)。この方式によれば、多孔質のガス流路形成部材は多数の細孔を有しており、この細孔は、水、水蒸気を透過させ得るようにガス流路形成部材の厚み方向に連通する連通孔とされている。
【特許文献1】特開平6−338338号公報
【特許文献2】特許公報第2922132号
【特許文献3】特開平1−309263号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記した後者の方式を採用している固体高分子型燃料電池によれば、前述したように、セパレータとも呼ばれる多孔質のガス流路形成部材は多数の細孔を有している。この細孔は、水、水蒸気を透過させ得るようにガス流路形成部材の厚み方向に連通する連通孔とされている。ここで、細孔の径及び気孔率は、ガス流路形成部材の各部位において基本的には一様とされている。即ち、通水路と前記酸化剤極との間における水分透過性は、ガス流路形成部材の各部位において基本的には一様とされている。産業界では、上記した固体高分子型燃料電池の発電性能の更なる向上が要請されている。
【0006】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、酸化剤極のうち下流側領域における余剰な水を通水路の側に効果的に吸引させることができ、故に酸化剤極のうち下流側領域における余剰水の滞留を抑制することができ、従って酸化剤極のガス流路が水で閉鎖されるフラッディング現象を抑制することができ、発電性能の更なる向上を図るのに有利な固体高分子型燃料電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る固体高分子型燃料電池は、イオン伝導性をもつ高分子電解質膜と、高分子電解質膜の片側に設けられ燃料が供給される燃料極と、高分子電解質膜の他の片側に設けられ酸化剤含有ガスが供給される酸化剤極と、燃料極の外側に設けられ燃料極用のガス流路形成部材と、酸化剤極の外側に設けられ連通孔となりうる細孔をもつ酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材と、酸化剤極用のガス流路形成部材の外側に水が流れる通水路を形成する通水路形成部材と、通水路の水を吸引させて通水路に水を流す通水部とを具備する固体高分子型燃料電池であって、
酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材において、
酸化剤ガスが流れる下流を下流側領域と定義すると共に、酸化剤ガスが流れる上流を上流側領域と定義するとき、
酸化剤極と通水路との間において液相状態の水および水蒸気のうちの少なくとも一つが透過する水分透過性は、上流側領域よりも下流側領域で大きく設定されていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明に係る固体高分子型燃料電池によれば、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材において、通水路と酸化剤極との間における前記水分透過性は、下流側領域では上流側領域よりも大きく設定されている。このため酸化剤極のうち下流側領域における余剰な水を、通水路の側に効果的に吸引させることができる。故に酸化剤極のうち下流側領域における余剰水の滞留を抑制することができる。従って酸化剤極のガス流路が水で閉鎖されるフラッディング現象を抑制することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る固体高分子型燃料電池によれば、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材において、通水路と酸化剤極との間における水分透過性は、下流側領域では上流側領域よりも、大きく設定されている。このため酸化剤極のうち下流側領域における余剰な水を通水路の側に効果的に吸引させることができる。故に酸化剤極のうち下流側領域における余剰水の滞留を抑制することができる。従って酸化剤極のガス流路が水で閉鎖されるフラッディング現象を抑制することができ、発電性能の向上に有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係る固体高分子型燃料電池の好ましい形態によれば、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材において、平均細孔径及び気孔率のうちの少なくとも一方は、上流側領域よりも下流側領域では、大きく設定されている形態を採用することができる。これにより通水路と酸化剤極との間における水分透過性は、下流側領域では相対的に大きく設定され、上流側領域では相対的に小さく設定されている。この場合、酸化剤極の下流側領域に滞留している余剰水を、酸化剤極から通水路に向けて効果的に吸引させることができる。故に酸化剤極の下流側領域におけるフラッディング現象を抑制することができる。
【0011】
好ましくは、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材において、平均細孔径及び気孔率のうちの少なくとも一方は、上流側領域において相対的に小さく設定されており、下流側領域において相対的に大きく設定されており、上流側領域から下流側領域にかけて、次第に大きくなるように設定されている形態を例示できる。
【0012】
本発明に係る固体高分子型燃料電池によれば、水分透過性とは、液相状態の水、水蒸気のうちのうちの少なくとも一つの透過性を意味する。平均細孔径が相対的に大きいとは、多孔質のガス流路形成部材における全部の細孔のなかで細孔径が相対的に大きいことを意味し、平均細孔径10〜1000μmの範囲内を例示できる。平均細孔径が相対的に小さいとは、多孔質のガス流路形成部材における全部の細孔のなかで細孔径が相対的に小さいことを意味し、平均細孔径0.1〜10μm未満の範囲内を例示できる。なお細孔の大部分は連通孔であり、ガス流路形成部材に水分透過性を与える。
【0013】
気孔率が相対的に大きいとは、多孔質のガス流路形成部材において気孔率が相対的に大きいことを意味し、気孔率40〜95%の範囲内を例示できる。気孔率が相対的に小さいとは、多孔質のガス流路形成部材において気孔率が相対的に小さいことを意味し、気孔率0.1〜40%未満の範囲内を例示できる。但し、平均細孔径及び気孔率としては、上記した範囲に限定されるものではない。
【0014】
本発明に係る固体高分子型燃料電池によれば、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材において、単位体積当たりにおける撥水剤の割合は、下流側領域よりも上流側領域で大きく設定されている形態を採用することができる。撥水剤の割合が多いと、水の出し入れは容易でなくなる。上記の形態では、撥水剤の割合は、上流側領域で相対的に多く設定され、下流側領域で相対的に少なく設定されている。このためMEAの下流側領域における余剰水を通水路に吸引させるのに有利となり、下流側領域での余剰水の滞留を抑制するのに一層貢献することができる。撥水剤としては、多孔質のガス流路形成部材の表面及び/または細孔内に設けることができる。
【実施例】
【0015】
まず、実施例の説明に先立って、第1参考例から説明する。
【0016】
以下、本発明の本参考例の概念について図1及び図2を参照して説明する。図1は本参考例に係る固体高分子型燃料電池の概念を模式化して示す。本参考例に係る固体高分子型燃料電池は、第1通水路41に水を圧送させる方式を採用している。MEA1(膜・電極接合体)は、プロトン伝導性をもつ高分子電解質材料で形成された高分子電解質膜11と、高分子電解質膜11の厚み方向の片側に設けられ燃料が供給される燃料極12と、高分子電解質膜11の厚み方向の他の片側に設けられ酸化剤含有ガス(一般的には空気)が供給される多孔質でありガス透過性をもつ酸化剤極15とを有する。
【0017】
酸化剤極15は、多孔質でありガス透過性及び導電性をもつようにカーボン繊維などのカーボン材料で形成された第1ガス拡散層16と、高分子電解質膜11側に形成された第1触媒層17とで形成されている。燃料極12は、多孔質でありガス透過性及び導電性をもつようにカーボン繊維などのカーボン材料で形成された第2ガス拡散層13と、高分子電解質膜11側に形成された第2触媒層14とで形成されている。第1触媒層17及び第2触媒層14は、白金等の触媒金属を担持したカーボン微粒子の集合体と、プロトン伝導性をもつ電解質ポリマーとを主要成分として形成されている。
【0018】
そして図1に示すように、燃料極12の厚み方向の外側には、燃料極用のガス流路形成部材2が設けられている。燃料極用のガス流路形成部材2は、セパレータとも呼ばれるものであり、緻密体で形成されている。燃料極用のガス流路形成部材2は、耐食性及び導電性を有する材料(一般的にはカーボン材料)で形成されており、燃料極12の第2ガス拡散層13に供給される燃料ガスが流れる溝状のガス流路21をもつ。
【0019】
酸化剤極15の厚み方向の外側には、連通孔となり得る多数の細孔をもつ酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3が設けられている。図1に示すガス流路形成部材3では細孔は○として模式化されている。ガス流路形成部材3では細孔は連通しており、ガス流路形成部材3の厚み方向に水分透過性を有する。酸化剤極用のガス流路形成部材3は、セパレータとも呼ばれるものであり、耐食性及び導電性を有する材料(一般的にはカーボン材料)で形成されており、酸化剤極15の第1ガス拡散層16に供給される酸化剤含有ガス(一般的には空気)が流れる溝状のガス流路31をもつ。図1に示すように、燃料極12と酸化剤極15とは、導電経路60及び負荷61を経て電気的に接続されている。
【0020】
酸化剤極用のガス流路形成部材3において、酸化剤含有ガスが流れる上流側を上流側領域91と定義すると共に、酸化剤含有ガスが流れる下流側を下流側領域93と定義する。酸化剤極用のガス流路形成部材3の厚み方向の外側には、給水源40から供給された冷却用及び加湿用の水が流れる第1通水路41を形成する仕切板状の第1通水路形成部材51が設けられている。第1通水路41は給水口43と吐水口44とをもつ。
【0021】
更に、給水源40からの水を第1通水路41に圧送させて通水させる通水部49が設けられている。通水部49は例えばポンプで形成できる。通水部49は、第1通水路41の給水口43の上流側に設けられており、第1通水路41に水を圧送させ、第1通水路41の給水口43から吐水口44に向けて通水させる。第1通水路41における水の圧力Pmは絶対圧で1atmを越えており、酸化剤含有ガス(一般的には空気)が流れる溝状のガス流路31における圧力P1よりも大きく設定されている(Pm>P1)。基本的にはPmとP1との差圧により、第1通水路41の水をMEA1の酸化剤極15の側に矢印M1方向に向けて補給することができる。
【0022】
さて本参考例によれば、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3の平均細孔径及び気孔率については、酸化剤含有ガス(一般的には空気)が流れる方向に沿って変化するように設定されている。即ち、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3において、平均細孔径及び気孔率の双方は、上流側領域91では下流側領域93よりも大きく設定されている。
【0023】
具体的には、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3において、平均細孔径及び気孔率の双方は、上流側領域91において相対的に大きく設定されており、下流側領域93において相対的に小さく設定されている。即ち、図2において特性線A1は細孔径を示し、特性線A2は気孔率を示す。図2の特性線A1,A2に示すように、上流側領域91から下流側領域93にかけて次第に連続的に且つ傾斜的に小さくなるように設定されている。上記した結果、第1通水路41と酸化剤極15との間における水分透過性は、上流側領域91で相対的に大きく、下流側領域93で相対的に小さくされている。
【0024】
なお、平均細孔径が相対的に大きいとは、平均細孔径10〜1000μmの範囲内を例示できる。平均細孔径が相対的に小さいとは、平均細孔径0.1〜10μmの範囲内を例示できる。気孔率が相対的に大きいとは、気孔率40〜95%の範囲内を例示できる。気孔率が相対的に小さいとは、気孔率0.1〜40%未満の範囲内を例示できる。但し、細孔径及び気孔率としては上記した値に限定されるものではない。
【0025】
燃料電池を運転する際には、酸化剤含有ガス(一般的には空気)が搬送源68により酸化剤極用のガス流路形成部材3の溝状のガス流路31に供給される。この酸化剤含有ガスは溝状のガス流路31から酸化剤極15の第1ガス拡散層16,第1触媒層17に流入する。更に、燃料ガス(水素含有ガス)が搬送源69により燃料極用のガス流路形成部材2の溝状のガス流路21に供給される。燃料ガスは、ガス流路21から燃料極12の第2ガス拡散層13及び第2触媒層14に流入する。そして、第2触媒層14の触媒作用により、燃料ガスの水素からプロトン(水素イオン)と電子(e−)とが生成される。生成されたプロトンは、高分子電解質膜11を厚み方向に透過して酸化剤極15に至る。電子は導電経路60を流れ、導電経路60の負荷61で電気的仕事を行った後に、酸化剤極15に至る。そして酸化剤極15では、酸化剤極15の第1触媒層17の触媒作用により、酸化剤極15に供給された酸化剤含有ガス(一般的に空気)とプロトンと電子とが反応して水が生成される。このような発電反応により熱が発生するが、給水源40からの水が通水部49により第1通水路41に通水されるため、燃料電池は冷却される。
【0026】
上記した発電反応が発現されるMEA1では、酸化剤含有ガスの上流側領域91よりも下流側領域93の方が生成水が相対的に多くなる傾向となる。従ってこのようなMEA1では、一般的には、相対湿度は上流側領域91では相対的に低くなり、下流側領域93では相対的に高くなる。上記したMEA1では、上流側領域91では乾燥が生じることがあり、下流側領域93では余剰水が滞留することがある。
【0027】
この点本参考例によれば、第1通水路41と酸化剤極15との間における水分透過性は、上流側領域91では相対的に大きく設定されていると共に、下流側領域93では相対的に小さく設定されている。即ち、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3における平均細孔径及び気孔率の双方は、上流側領域91では相対的に大きく設定されていると共に、下流側領域93では相対的に小さく設定されている。このため第1通水路41に水が圧送されて通水されるとき、第1通水路41の水は、平均細孔径及び気孔率が大きな上流側領域91では、下流側領域93よりもMEA1の酸化剤極15側に相対的に矢印M1方向に向けて透過し易くなる。この結果、乾燥しがちの上流側領域91において、酸化剤極15に対する加湿量を相対的に大きくすることができ、ひいては乾燥しがちの上流側領域91における過剰乾燥を抑制できる。
【0028】
これに対して、上記した発電反応に基づいて水分が余剰になりがちな下流側領域93では、MEA1の高分子電解質膜11に対する加湿量を上流側領域91よりも相対的に小さくすることができる。これにより水分が余剰になりがちな下流側領域93におけるフラッディング現象を抑制することができる。この結果、固体高分子型燃料電池の発電性能を向上させるのに貢献できる。フラッディング現象とは、ガスが通過するガス流路が余剰の水で閉鎖され、ガス流路の流路面積が低下することを意味する。フラッディング現象が発生すると、充分な発電性能を得るには不利となる。
【0029】
(第2参考例)
第2参考例は第1参考例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。以下、第1参考例と相違する部分を中心として説明する。本参考例によれば、図3の特性線A1,A2に示すように、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3において、平均細孔径及び気孔率の双方は、上流側領域91において相対的に大きく設定されており、且つ、下流側領域93において相対的に小さく設定されている。ここで、図3の特性線A1,A2に示すように、平均細孔径及び気孔率の双方は、上流側領域91から下流側領域93にかけて不連続的に変化している。
【0030】
(第3参考例)
図4は第3参考例の概念を模式的に示す。第3参考例は第1参考例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。以下、第1参考例と相違する部分を中心として説明する。本参考例によれば、図4に示すように、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Bにおいて各細孔の平均細孔径は、基本的にはほぼ同一とされており、約5〜10μmを例示することができる。
【0031】
酸化剤極用のガス流路形成部材3Bにおける気孔率については、酸化剤含有ガスが流れる方向に沿って変化するように設定されている。即ち、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Bにおける気孔率は、上流側領域91では下流側領域93よりも大きく設定されている。
【0032】
この結果、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Bにおいて、第1通水路41と酸化剤極15との間における水分透過性は、上流側領域91において相対的に大きく設定されており、且つ、下流側領域93において相対的に小さく設定されている。
【0033】
本参考例によれば、燃料極用のガス流路形成部材2Bは緻密体ではなく、多数の細孔をもつ多孔質体で形成されている。燃料極用のガス流路形成部材2Bにおいて、燃料ガスが流れる上流側を上流側領域91Xと定義すると共に、燃料ガスが流れる下流側を下流側領域93Xと定義する。
【0034】
図4に示すガス流路形成部材3B及びガス流路形成部材2Bでは、細孔は○として模式化されている。ガス流路形成部材3B及びガス流路形成部材2Bでは細孔は連通しており、ガス流路形成部材3B及びガス流路形成部材2Bはそれぞれ厚み方向に水分透過性を有する。
【0035】
図4に示すように、燃料極用のガス流路形成部材2Bの外側には、第2通水路42を形成する第2通水路形成部材52が設けられている。第2通水路42は給水口43,吐水口44をもつ。第2通水路42には、第1通水路41と同様に、給水源40からの水が通水部49の作動により圧送されて流れる。
【0036】
燃料極用のガス流路形成部材2Bにおける気孔率については、燃料ガスが流れる方向に沿って変化するように設定されている。即ち、多孔質の燃料極用のガス流路形成部材2Bにおける気孔率は、上流側領域91Xでは下流側領域93Xよりも大きく設定されている。具体的には、多孔質の燃料極用のガス流路形成部材2Bにおける気孔率は、上流側領域91Xにおいて相対的に大きく設定されており、下流側領域93Xにおいて相対的に小さく設定されている。従って第2通水路42と燃料極12との間における水分透過性は、上流側領域91Xでは相対的に大きく、下流側領域93Xでは相対的に小さく設定されている。
【0037】
以上説明したように本参考例によれば、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Bについては、気孔率は、上流側領域91では相対的に大きく設定されていると共に、下流側領域93では相対的に小さく設定されている。同様に、燃料極用のガス流路形成部材2Bについては、気孔率は、上流側領域91Xでは相対的に大きく設定されていると共に、下流側領域93Xでは相対的に小さく設定されている。
【0038】
このため第1通水路41及び第2通水路42に水が圧送されて通水されるとき、第1通水路41及び第2通水路42の水は、気孔率が大きな上流側領域91,91Xでは、下流側領域93,93XよりもMEA1側に矢印M1方向に向けて相対的に透過し易くなる。この結果、乾燥しがちの上流側領域91,91Xにおいて、MEA1に対する加湿量を相対的に大きくすることができる。更に、水が余剰になりがちの下流側領域93,93Xにおいて、MEA1に対する加湿量を相対的に小さくすることができる。
【0039】
(第4参考例)
図5は第4参考例の概念を模式的に示す。第4参考例は、図4に示す第3参考例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。以下、図4に示す第3参考例と相違する部分を中心として説明する。図5に示すガス流路形成部材3B及びガス流路形成部材2Bでは、細孔は○として模式化されている。ガス流路形成部材3B及びガス流路形成部材2Bでは細孔は連通しており、ガス流路形成部材3B及びガス流路形成部材2Bはそれぞれ厚み方向に透過性を有する。
【0040】
本参考例によれば、酸化剤極用のガス流路形成部材3Bの表面及び細孔の表面には、撥水剤8が付設されている。図5は撥水剤8の強さを模式化して図示しており、撥水剤8の厚みを示すものではない。撥水剤8としては、パーフルオロカーボン、フルオロカーボン等を例示できる。酸化剤極用のガス流路形成部材3Bにおいて、単位体積当たりの撥水剤8の割合が多いと、水がはじかれるため、MEA1に対する水の出し入れがしにくくになる。また、撥水剤8の割合が少ないか、あるいは撥水剤8が存在しなければ、撥水剤8の割合が多い場合に比較して、MEA1に対する水の出し入れが容易となる。
【0041】
本参考例によれば、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Bにおける撥水剤8の割合については、酸化剤ガスが流れる方向に沿って変化するように設定されている。即ち、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Bにおける撥水剤8の割合としては、上流側領域91では無しか下流側領域93よりも少なく設定されている。具体的には、酸化剤極用のガス流路形成部材3Bにおける撥水剤8の割合は、上流側領域91において相対的に小さく設定されており(撥水剤が無しを含む)、且つ、下流側領域93において相対的に大きく設定されている。このため、第1通水路41と酸化剤極15との間における水分透過性は、酸化剤極用のガス流路形成部材3Bにおいて、上流側領域91では相対的に大きく設定されており、且つ、下流側領域93では相対的に小さく設定されている。
【0042】
また図5に示すように、燃料極用のガス流路形成部材2Bの表面には、撥水剤8が付設されている。多孔質の燃料極用のガス流路形成部材2Bにおける撥水剤8の割合については、燃料ガスが流れる方向に沿って変化するように設定されている。即ち、燃料極用の多孔質のガス流路形成部材2Bにおける撥水剤8の割合としては、上流側領域91Xでは無しか下流側領域93Xよりも少なく設定されている。具体的には、酸化剤極用のガス流路形成部材2Bにおける撥水剤8の割合は、上流側領域91Xにおいて相対的に小さく設定されており、且つ、下流側領域93Xにおいて相対的に大きく設定されている。このため、第2通水路42と燃料極12との間における水分透過性は、燃料極用のガス流路形成部材2Bにおいて、上流側領域91Xでは相対的に大きく設定されており、且つ、下流側領域93Xでは相対的に小さく設定されている。
【0043】
このような本参考例によれば、通水部49の作動により第1通水路41及び第2通水路42に水が圧送されて通水されるとき、第1通水路41及び第2通水路42の水は、撥水剤8の割合が無しか相対的に少ない上流側領域91,91Xでは、撥水剤8の割合が相対的に多い下流側領域93,93Xよりも、MEA1に向けて矢印M1方向に相対的に透過し易くなる。この結果、上流側領域91,91Xにおける加湿量を大きくでき、上流側領域91,91Xにおける過剰乾燥を抑制できる。
【0044】
上記したように酸化剤含有ガス、燃料ガスが流れる方向に沿って撥水剤8の割合を変化させるにあたり、例えば、撥水剤8を酸化剤極用のガス流路形成部材3B、燃料極用のガス流路形成部材2Bの表面に付設させる際に、ガス流路形成部材3B、ガス流路形成部材2Bをマスキング部材で覆い、マスキング部材を相対移動させることにより、マスキング時間を可変とさせることにより行い得る。
【0045】
なお場合によっては、図5に示す実施例において、ガス流路形成部材3Bに付設される撥水剤8、ガス流路形成部材2Bに付設される撥水剤8のいずれかを廃止することもできる。
【0046】
(第1実施例)
以下、本発明の第1実施例の概念について図6を参照して説明する。本実施例に係る固体高分子型燃料電池は、第1通水路41の水を吸引させることにより第1通水路41に水を流す方式である。本実施例に係るMEA1は、プロトン伝導性をもつ高分子材料で形成された高分子電解質膜11と、高分子電解質膜11の厚み方向の片側に設けられ燃料が供給される燃料極12と、高分子電解質膜11の厚み方向の他の片側に設けられ酸化剤含有ガス(一般的には空気)が供給される多孔質でありガス透過性をもつ酸化剤極15とを有する。
【0047】
酸化剤極15は、多孔質でありガス透過性をもつようにカーボン材料で形成された第1ガス拡散層16と、高分子電解質膜11側に形成された第1触媒層17とで形成されている。燃料極12は、多孔質でありガス透過性をもつようにカーボン材料で形成された第2ガス拡散層13と、高分子電解質膜11側に形成された第2触媒層14とで形成されている。
【0048】
そして、第1参考例と同様に、燃料極12の厚み方向の外側には、燃料極用のガス流路形成部材2が設けられている。燃料極用のガス流路形成部材2はセパレータとも呼ばれるものであり、多孔質体ではなく、緻密体で形成されている。燃料極用のガス流路形成部材2は、耐食性及び導電性を有する材料(一般的にはカーボン材料)で形成されており、燃料極12の第2ガス拡散層13に供給される燃料ガスが流れる溝状のガス流路21をもつ。
【0049】
図6に示すように、酸化剤極15の厚み方向の外側には、多数の細孔をもつ酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Eが設けられている。図6に示すガス流路形成部材3Eでは細孔は○として模式化されている。ガス流路形成部材3Eでは細孔は連通しており、ガス流路形成部材3Eは厚み方向に透過性を有する。
【0050】
酸化剤極用のガス流路形成部材3Eは、セパレータとも呼ばれるものであり、耐食性及び導電性を有する材料(一般的にはカーボン材料)で形成されており、酸化剤極15の第1ガス拡散層16に供給される酸化剤含有ガス(一般的には空気)が流れる溝状のガス流路31をもつ。酸化剤極15と燃料極12とは、導電経路60及び負荷61を経て電気的に接続されている。
【0051】
図6に示すように、酸化剤極用のガス流路形成部材3Eの厚み方向の外側には、冷却用及び加湿用の水が流れる第1通水路41を形成する仕切板状の第1通水路形成部材51が設けられている。
【0052】
更に、第1通水路41に水を通水させる通水部49Eが設けられている。通水部49Eは、第1通水路41の下流側に設けられており、第1通水路41の水を矢印W2方向に吸引させることにより、第1通水路41の給水口43から吐水口44に向けて通水させる。通水部49Eは吸引ポンプで形成できる。第1通水路41における水の圧力Pmは絶対圧で1atm未満であり、酸化剤含有ガス(一般的には空気)が流れる溝状のガス流路31における圧力P1よりも小さく設定されている(Pm<P1)。基本的にはPmとP1との差圧により、MEA1の酸化剤極15に滞留している余剰の水を第1通水路41に矢印M2方向に吸引することができる。
【0053】
さて本実施例によれば、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Eにおける平均細孔径及び気孔率については、酸化剤含有ガスが流れる方向に沿って変化するように設定されている。即ち、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Eにおける平均細孔径及び気孔率の双方は、下流側領域93では上流側領域91よりも大きく設定されている。具体的には、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Eにおける平均細孔径及び気孔率の双方は、下流側領域93において相対的に大きく設定されており、上流側領域91において相対的に小さく設定されており、そして、図7の特性線E1,E2に示すように、上流側領域91から下流側領域93にかけて次第に連続的に且つ傾斜的に大きくなるように設定されている。図7において特性線E1は細孔径を示し、特性線E2は気孔率を示す。
【0054】
この結果、第1通水路41と酸化剤極15との間における水分透過性は、下流側領域93において相対的に大きく設定されており、上流側領域91において相対的に小さく設定されている。
【0055】
燃料電池を運転する際には、第1実施例と同様に、燃料ガス(水素含有ガス)が搬送源69により溝状のガス流路21に供給されると共に、酸化剤含有ガス(一般的には空気)が搬送源68により溝状のガス流路31に供給される。燃料ガスは溝状のガス流路21から燃料極12の第2ガス拡散層13に至り、更に燃料極12に含有されている第2触媒層14の触媒作用により、燃料ガスに含まれている水素からプロトン(水素イオン)と電子(e−)とが生成される。プロトンは高分子電解質膜11を厚み方向に透過して酸化剤極15に至る。電子は導電経路60を流れる。電子は導電経路60の負荷61で電気的仕事を行った後に、酸化剤極15に至る。そして酸化剤極15では、酸化剤極15の第1触媒層17の触媒作用により、酸化剤極15に供給された酸化剤含有ガス(一般的に空気)とプロトンと電子とが反応して水が生成される。このような発電反応が発現されるMEA1では、酸化剤含有ガスの上流側領域91よりも下流側領域93の方が生成水が相対的に多くなる。従ってこのようなMEA1では、相対湿度は上流側領域91では相対的に低くなり、下流側領域93では相対的に高くなる。
【0056】
この点本実施例によれば、前述したように、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Eについては、平均細孔径及び気孔率の双方は、上流側領域91では相対的に小さく設定されていると共に、下流側領域93では相対的に大きく設定されている。即ち、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Eにおいて、平均細孔径及び気孔率の双方は下流側領域93において相対的に大きく設定されており、上流側領域91において相対的に小さく設定されており、図7の特性線E1,E2に示すように、上流側領域91から下流側領域93にかけて次第に連続的に且つ傾斜的に大きくなるように設定されている。
【0057】
このため本実施例によれば、図6から理解できるように、給水源40から供給された水が第1通水路41において矢印W2方向へ吸引されるとき、酸化剤極15の下流側領域93に溜まっている余剰の水は、上流側領域91よりも相対的に第1通水路41側に矢印M2方向に吸引され易くなる。これにより水分が余剰になりがちな下流側領域93における余剰水が吸引除去され、ひいては下流側領域93におけるフラッディング現象を抑制することができる。この結果、固体高分子型燃料電池の発電性能を向上させるのに貢献できる。
【0058】
(第2実施例)
図8は第2実施例の概念を模式的に示す。本実施例は、図6に示す第1実施例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。以下、図6に示す実施例と相違する部分を中心として説明する。本実施例によれば、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Eにおいて、気孔率は下流側領域93では相対的に大きく設定されており、上流側領域91では相対的に小さく設定されている。そして、図8の特性線E1に示すように、細孔径は、上流側領域91から下流側領域93にかけて不連続的に大きくなるように設定されている。また図8の特性線E2に示すように、気孔率は、上流側領域91から下流側領域93にかけて不連続的に大きくなるように設定されている。
【0059】
(第3実施例)
図9は第3実施例の概念を模式的に示す。本実施例は図6に示す実施例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。以下、図6に示す実施例と相違する部分を中心として説明する。図9に示すガス流路形成部材3F,2Fでは細孔は○として模式化されている。ガス流路形成部材3F,2Fでは細孔は連通しており、ガス流路形成部材3F,2Fは厚み方向に水分透過性を有する。本実施例によれば、図9に示すように、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Fにおいて平均細孔径は基本的には均一とされている。但し、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Fにおける第1通水路41と酸化剤極15との間における水分透過性、具体的には気孔率としては、下流側領域93では相対的に大きく設定されており、上流側領域91では相対的に小さく設定されている。
【0060】
本実施例によれば、図9から明らかなように、燃料極用のガス流路形成部材2Fは緻密体ではなく、多数の細孔を有する多孔質体で形成されている。この燃料極用のガス流路形成部材2Fにおける第1通水路41と燃料極12との間における水分透過性、即ち、多孔質の燃料極用のガス流路形成部材2Fにおける気孔率は、下流側領域93Xでは上流側領域91Xよりも大きく設定されている。
【0061】
具体的には、多孔質の燃料極用のガス流路形成部材2Fにおいて、気孔率は上流側領域91Xにおいて相対的に小さく設定されており、下流側領域93Xにおいて相対的に大きく設定されている。即ち、燃料極用のガス流路形成部材2Fの気孔率は、上流側領域91Xから下流側領域93Xにかけて次第に連続的に且つ傾斜的に大きくなるように設定されている。
【0062】
燃料極用のガス流路形成部材2Fの外側には、第2通水路42を形成する第2通水路形成部材52が設けられている。第2通水路42は給水口43及び吐水口44わ有する。通水部49Fの吸引作動により、第1通水路41と同様に、第2通水路42には給水源40からの冷却用の水が吸引されて流れる。
【0063】
本実施例によれば、図9に示すように、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Fについては、気孔率は、上流側領域91では相対的に小さく設定されていると共に、下流側領域93では相対的に大きく設定されている。同様に、燃料極用のガス流路形成部材2Fについては、気孔率は、上流側領域91Xでは相対的に小さく設定されていると共に、下流側領域93Xでは相対的に大きく設定されている。
【0064】
このため、第2通水部49Fの吸引作動により、給水源40からの水が第1通水路41及び第2通水路42に吸引されて流れるとき、MEA1側に滞留していた余剰の水は、平均細孔径及び気孔率が大きな下流側領域93,93Xでは上流側領域91,91Xよりも、第1通水路41及び第2通水路42の側に矢印M2方向に吸引され易くなる。この結果、余剰水が滞留しがちの下流側領域93,93Xにおいて、余剰水の吸引除去量を相対的に大きくすることができ、下流側領域93,93Xにおけるフラッディング現象を抑制するのに貢献できる。
【0065】
(第4実施例)
図10は第4実施例の概念を模式的に示す。本実施例は図9に示す実施例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。以下、図9に示す実施例と相違する部分を中心として説明する。図10に示すガス流路形成部材3F,2Fでは細孔は○として模式化されている。ガス流路形成部材3F,2Fでは細孔は連通しており、ガス流路形成部材3F,2Fは厚み方向に水分透過性を有する。
【0066】
本実施例によれば、図10に示すように、酸化剤極用のガス流路形成部材3Fの表面及び細孔の内壁面には撥水剤8が付設されている。燃料極用のガス流路形成部材2Fの表面及び細孔の内壁面にも撥水剤8が付設されている。図10は撥水剤8の強さを模式化して図示しており、撥水剤8の厚みを示すものではない。酸化剤極用のガス流路形成部材3F及び燃料極用のガス流路形成部材2Fの単位体積当たりにおいて、撥水剤8の割合が多いと、水がはじかれるため、MEA1に対する水の出し入れがしにくくになる。また、撥水剤8の割合が少ないか、あるいは撥水剤が存在しなければ、撥水剤8の割合が多い場合に比較して、MEA1に対する水の出し入れが容易となる。
【0067】
本実施例によれば、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Fにおける撥水剤8の割合については、酸化剤含有ガスが流れる方向に沿って変化するように設定されている。同様に、多孔質の燃料極用のガス流路形成部材2Fにおける撥水剤8の割合については、燃料ガスが流れる方向に沿って変化するように設定されている。
【0068】
即ち、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3Fにおける撥水剤8の割合としては、下流側領域93では無しか上流側領域91よりも相対的に少なく設定されている。また多孔質の燃料極用のガス流路形成部材2Fにおける撥水剤8の割合としては、下流側領域93Xでは無しか上流側領域91Xよりも相対的に少なく設定されている。
【0069】
このため、通水部49Fの吸引作動により、給水源40からの水が第1通水路41及び第2通水路42に吸引されて通水されるとき、MEA1側に滞留していた余剰の水は、撥水剤8の割合が相対的に少ない下流側領域93,93Xでは、第1通水路41及び第2通水路42に向けて矢印M2方向に吸い出されやすくなる。故に、下流側領域93,93Xにおける余剰水の滞留を抑制することができる。これにより余剰水が滞留しがちな下流側領域93.93Xにおけるフラッディング現象を抑制することができる。この結果、固体高分子型燃料電池の発電性能を向上させるのに貢献できる。
【0070】
(製造例1)
図11及び図12は、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3となり得る製造例1に係る多孔質体200の断面を模式的に示す。製造例1によれば、第1工程において、図11に示すように、一端201側を厚肉で他端203側を薄肉とした多孔質体200を製造する。多孔質体200は多数の細孔を有する。細孔は、気化可能な昇華物質、消失可能な焼失物質等の適度なサイズの消失物質を用い、消失物質を埋設した後に、昇華、焼失等により消失物質を消失させることにより形成できる。第1工程を経た多質体200において、平均細孔径及び気孔率は、これの一端201側から他端203側にかけて基本的には同一である。
【0071】
次に第2工程において、プレス型100によるプレス加圧に基づいて、多孔質体200をこれの厚み方向に圧縮させる。図12に示すように、プレス型100で圧縮された後の多孔質体200によれば、一端201側から他端203側にかけて厚みは基本的には同一である。
【0072】
圧縮後の多孔質体200によれば、一端201側は圧縮率が高く、他端203側は圧縮率が低く設定されている。この結果、圧縮後の多孔質体200によれば、一端201側の密度は高くなり、他端203側の密度は低くなる。従って、一端201側における平均細孔径及び気孔率は相対的に小さく設定されていると共に、他端203側における平均細孔径及び気孔率は相対的に大きく設定されている。
【0073】
図1に示す例に係る酸化剤極用のガス流路形成部材3に製造例1に係る多孔質体200を適用する場合には、圧縮後の多孔質体200のうち平均細孔径及び気孔率が小さく設定されているため密度が相対的に高い一端201側を、酸化剤極用のガス流路形成部材3の下流側領域93に設定することができる。また、平均細孔径及び気孔率が大きく設定されているため密度が相対的に低い他端203側を、酸化剤極用のガス流路形成部材3の上流側領域91に設定することができる。
【0074】
また図6に示す実施例に係る酸化剤極用のガス流路形成部材3に製造例1に係る多孔質体200を適用する場合には、圧縮後の多孔質体200のうち平均細孔径及び気孔率が相対的に小さく設定されているため密度が相対的に高い一端201側を、酸化剤極用のガス流路形成部材3の上流側領域91に設定することができる。また、平均細孔径及び気孔率が相対的に大きく設定されているため密度が相対的に低い他端203側を、酸化剤極用のガス流路形成部材3の下流側領域93に設定することができる。なお、多孔質の燃料極用のガス流路形成部材2についても同様にできる。
【0075】
(製造例2)
図13及び図14は、酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3となり得る製造例2に係る多孔質体300の断面を模式的に示す。製造例2によれば、第1工程において、図13に示すように、一端301側から他端303側にかけて厚みが基本的に同一の多孔質体300を製造する。多孔質体300は多数の細孔を有する。この多孔質体300において、平均細孔径及び気孔率は、これの一端301側では小さく設定されており、他端303側では大きく設定されている。
【0076】
次に第2工程において、図14に示すように、プレス型100によるプレス加圧に基づいて、多孔質体300をこれの厚み方向に圧縮させる。圧縮後の多孔質体300によれば、一端301側における平均細孔径及び気孔率は小さく設定されていると共に、他端303側における平均細孔径及び気孔率は大きく設定されている。
【0077】
図1に示す参考例に係る酸化剤極用のガス流路形成部材3に製造例2に係る多孔質体300を適用する場合には、圧縮後の多孔質体300のうち平均細孔径及び気孔率が小さく設定されている一端301側を、酸化剤極用のガス流路形成部材3の下流側領域93に設定することができる。また、平均細孔径及び気孔率が大きく設定されている他端303側を酸化剤極用のガス流路形成部材3の上流側領域91に設定することができる。
【0078】
また図6に示す実施例に係る酸化剤極用のガス流路形成部材3Bに製造例2に係る多孔質体300を適用する場合には、圧縮後の多孔質体300のうち平均細孔径及び気孔率が相対的に小さく設定されている一端301側を酸化剤極用のガス流路形成部材3Bの下流側領域93に設定することができる。また、平均細孔径及び気孔率が相対的に大きく設定されている他端303側を酸化剤極用のガス流路形成部材3Bの上流側領域91に設定することができる。なお、多孔質の燃料極用のガス流路形成部材2についても同様にできる。
【0079】
(製造例3)
酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材3となり得る多孔質体は、次のようにも形成できる。気化可能な昇華物質、消失可能な焼失物質等の適度なサイズの消失物質を用い、消失物質を埋設した母体を形成する母体形成工程と、昇華、焼失等により消失物質を母体から消失させて多孔質体を形成する多孔化工程とを順に実施して形成することができる。母体において消失物質の消失跡が細孔となる。母体形成工程において、母体に埋設される消失物質のサイズ及び埋設量のうちのうちの少なくとも一方を母体の一端から他端にかけて変化させることにより、多孔質体における細孔径及び気孔率のうちの少なくとも一方を変化させることができる。
【0080】
(その他)第1触媒層17、第2触媒層14は高分子電解質膜11の表裏に積層されていても良い。その他、本発明は上記した実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できるものである。
【0081】
上記した記載から次の技術的思想も把握できる。
(付記項1)イオン伝導性をもつ高分子電解質膜と、高分子電解質膜の片側に設けられ燃料が供給される燃料極と、高分子電解質膜の他の片側に設けられ酸化剤含有ガスが供給される酸化剤極と、燃料極の外側に設けられた燃料極用のガス流路形成部材と、酸化剤極の外側に設けられた酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材と、酸化剤極用のガス流路形成部材の外側に水が流れる通水路を形成する通水路形成部材と、水を通水路に圧送させて通水路に水を流す通水部とを具備する固体高分子型燃料電池であって、
多孔質の前記酸化剤極用のガス流路形成部材において、酸化剤ガスが流れる下流を下流側領域と定義すると共に、前記酸化剤ガスが流れる上流を上流側領域と定義するとき、撥水剤の割合は、下流側領域よりも上流側領域で小さく設定されていることを特徴とする固体高分子型燃料電池。
【0082】
撥水剤の割合が多いと、水の出し入れは容易でなくなる。撥水剤の割合は、下流側領域で相対的に大きく設定され、上流側領域で相対的に小さく設定されている。このため通水路の水をMEA側に透過させるのに有利となり、MEAの上流側領域での過剰乾燥の抑制に貢献できる。
(付記項2)イオン伝導性をもつ高分子電解質膜と、高分子電解質膜の片側に設けられ燃料が供給される燃料極と、高分子電解質膜の他の片側に設けられ酸化剤含有ガスが供給される酸化剤極と、燃料極の外側に設けられた燃料極用のガス流路形成部材と、酸化剤極の外側に設けられた酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材と、酸化剤極用のガス流路形成部材の外側に水が流れる通水路を形成する通水路形成部材と、通水路の水を吸引させて前記通水路に水を流す通水部とを具備する固体高分子型燃料電池であって、
酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材において、酸化剤ガスが流れる下流を下流側領域と定義すると共に、前記酸化剤ガスが流れる上流を上流側領域と定義するとき、撥水剤の割合は、下流側領域よりも上流側領域で大きく設定されていることを特徴とする固体高分子型燃料電池。撥水剤の割合が多いと、水の出し入れは容易でなくなる。撥水剤の割合は、上流側領域で相対的に多く設定され、下流側領域で相対的に少なく設定されている。このためMEAの下流側領域における余剰水を通水路に吸引させるのに有利となり、下流側領域での余剰水の滞留を抑えるのに貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】第1参考例に係る燃料電池の概念を模式的に示す断面図である。
【図2】第1参考例に係る細孔径及び気孔率の変化を模式的に示すグラフである。
【図3】第2参考例に係る細孔径及び気孔率の変化を模式的に示すグラフである。
【図4】第3参考例に係る燃料電池の概念を模式的に示す断面図である。
【図5】第4参考例に係る燃料電池の概念を模式的に示す断面図である。
【図6】第1実施例に係る燃料電池の概念を模式的に示す断面図である。
【図7】第1実施例に係る細孔径及び気孔率の変化を模式的に示すグラフである。
【図8】第2実施例に係る細孔径及び気孔率の変化を模式的に示すグラフである。
【図9】第3実施例に係る燃料電池の概念を模式的に示す断面図である。
【図10】第4実施例に係る燃料電池の概念を模式的に示す断面図である。
【図11】ガス流路形成部材の製造例1に係り、最終的に圧縮する前の状態のガス流路形成部材の概念を模式的に示す断面図である。
【図12】ガス流路形成部材の製造例1に係り、最終的に圧縮した後の状態のガス流路形成部材の概念を模式的に示す断面図である。
【図13】ガス流路形成部材の製造例2に係り、最終的に圧縮する前の状態のガス流路形成部材の概念を模式的に示す断面図である。
【図14】ガス流路形成部材の製造例2に係り、最終的に圧縮した後の状態のガス流路形成部材の概念を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0084】
図中、1はMEA、11は高分子電解質膜、12は燃料極、15は酸化剤極、2は燃料極用のガス流路形成部材、3は酸化剤極用のガス流路形成部材、41は第1通水路、42は第2通水路、49は通水部、51は通水路形成部材、91は上流側領域、93は下流側領域、8は撥水剤を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン伝導性をもつ高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜の片側に設けられ燃料が供給される燃料極と、前記高分子電解質膜の他の片側に設けられ酸化剤含有ガスが供給される酸化剤極と、前記燃料極の外側に設けられ燃料極用のガス流路形成部材と、酸化剤極の外側に設けられ連通孔となりうる細孔をもつ酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材と、前記酸化剤極用の前記ガス流路形成部材の外側に水が流れる通水路を形成する通水路形成部材と、前記通水路の水を吸引させて前記通水路に水を流す通水部とを具備する固体高分子型燃料電池であって、
前記酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材において、
前記酸化剤ガスが流れる下流を下流側領域と定義すると共に、前記酸化剤ガスが流れる上流を上流側領域と定義するとき、
前記酸化剤極と前記通水路との間において液相状態の水および水蒸気のうちの少なくとも一つが透過する水分透過性は、前記上流側領域よりも前記下流側領域で大きく設定されていることを特徴とする固体高分子型燃料電池。
【請求項2】
請求項1において、多孔質の前記酸化剤極用のガス流路形成部材において、平均細孔径及び気孔率のうちの少なくとも一方は、
前記上流側領域よりも前記下流側領域で大きく設定されていることを特徴とする固体高分子型燃料電池。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、多孔質の前記酸化剤極用のガス流路形成部材において、平均細孔径及び気孔率のうちの少なくとも一方は、
前記下流側領域において相対的に大きく設定されており、前記上流側領域において相対的に小さく設定されており、前記上流側領域から前記下流側領域にかけて次第に大きくなるように設定されていることを特徴とする固体高分子型燃料電池。
【請求項4】
請求項1〜3のうちの一項において、前記酸化剤極用の多孔質の前記ガス流路形成部材において、単位体積当たりの撥水剤の割合は、下流側領域よりも上流側領域で大きく設定されていることを特徴とする固体高分子型燃料電池。
【請求項1】
イオン伝導性をもつ高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜の片側に設けられ燃料が供給される燃料極と、前記高分子電解質膜の他の片側に設けられ酸化剤含有ガスが供給される酸化剤極と、前記燃料極の外側に設けられ燃料極用のガス流路形成部材と、酸化剤極の外側に設けられ連通孔となりうる細孔をもつ酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材と、前記酸化剤極用の前記ガス流路形成部材の外側に水が流れる通水路を形成する通水路形成部材と、前記通水路の水を吸引させて前記通水路に水を流す通水部とを具備する固体高分子型燃料電池であって、
前記酸化剤極用の多孔質のガス流路形成部材において、
前記酸化剤ガスが流れる下流を下流側領域と定義すると共に、前記酸化剤ガスが流れる上流を上流側領域と定義するとき、
前記酸化剤極と前記通水路との間において液相状態の水および水蒸気のうちの少なくとも一つが透過する水分透過性は、前記上流側領域よりも前記下流側領域で大きく設定されていることを特徴とする固体高分子型燃料電池。
【請求項2】
請求項1において、多孔質の前記酸化剤極用のガス流路形成部材において、平均細孔径及び気孔率のうちの少なくとも一方は、
前記上流側領域よりも前記下流側領域で大きく設定されていることを特徴とする固体高分子型燃料電池。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、多孔質の前記酸化剤極用のガス流路形成部材において、平均細孔径及び気孔率のうちの少なくとも一方は、
前記下流側領域において相対的に大きく設定されており、前記上流側領域において相対的に小さく設定されており、前記上流側領域から前記下流側領域にかけて次第に大きくなるように設定されていることを特徴とする固体高分子型燃料電池。
【請求項4】
請求項1〜3のうちの一項において、前記酸化剤極用の多孔質の前記ガス流路形成部材において、単位体積当たりの撥水剤の割合は、下流側領域よりも上流側領域で大きく設定されていることを特徴とする固体高分子型燃料電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−117786(P2008−117786A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331750(P2007−331750)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【分割の表示】特願2002−311120(P2002−311120)の分割
【原出願日】平成14年10月25日(2002.10.25)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【分割の表示】特願2002−311120(P2002−311120)の分割
【原出願日】平成14年10月25日(2002.10.25)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
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