説明

固体高分子型燃料電池

【課題】加湿器から燃料電池スタックまでの系統を工夫し、燃料電池スタックのガス入口でのガスと冷却水の温度を均一にし、さらに、ガスの湿度を略100パーセントに近づける固体高分子型燃料電池を提供する。
【解決手段】水素ガス及び酸素ガスの湿度を略100パーセントの状態で燃料電池スタックへ供給する加湿ガス供給手段を備えると共に、前記水素ガス及び前記酸素ガスと冷却水の温度を均一の状態で前記燃料電池スタックへ供給する均温化手段を備え、前記加湿ガス供給手段及び前記均温化手段は、冷却水供給配管を前記燃料電池スタック内で分岐させて分岐配管27とし、分岐配管27を前記燃料電池スタックのセパレータ29の側端部を流れるように設置し、分岐配管27に前記水素ガス及び前記酸素ガスがセル内部に流れ込む直前に水を吹き掛ける水噴出孔31を形成するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体高分子型燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、固体高分子電解質膜を挟んでアノード側電極とカソード側電極とを対向するよう設置したセルをセパレータによって挟み込んで複数積層して構成された燃料電池スタックを燃料電池の本体部分とする固体高分子型燃料電池が開発され、種々の用途に実用化されつつある。
【0003】
固体高分子型燃料電池は、燃料ガスである水素を加湿器を通して燃料電池スタックのアノードに供給し、酸化剤ガスである酸素を加湿器を通して燃料電池スタックのカソードに供給すると、それぞれの触媒層において電気化学反応が起こり、水素と酸素から水を生成するとともに電気エネルギーが取出される。
【0004】
固体高分子型燃料電池は、固体高分子電解質膜での電気化学反応が最も効率的に行われる温度が存在するため、燃料電池スタック内に冷却水を供給することで固体高分子電解質膜の電気化学反応に最適な温度を保つように構成されている。また、燃料電池スタック内に供給される水素ガス及び酸素ガスについても、冷却水により固体高分子電解質膜の電気化学反応に最適な温度に保たれる構成となっている。
【0005】
さらに、固体高分子型燃料電池は、固体高分子電解質膜の湿度を略100パーセントとすることにより、膜の比抵抗が小さくなり電解質として機能することができる。このため、固体高分子型燃料電池の発電効率を高く維持するためには、固体高分子電解質膜に十分な水分を含ませることが必要であり、ガスを加湿器により加湿して供給配管を介して燃料電池スタックへ供給することによって、固体高分子電解質膜に湿度が略100パーセントのガスを供給して、固体高分子電解質膜の電気化学反応に最適な湿度を保つ構成となっている。
【0006】
従来、加湿器から燃料電池スタックまでの供給配管には、加湿ガス供給配管の外周に低熱伝導性材料よりなる熱媒層を配し、さらにこの熱媒層の外周にヒータを巻きつけることにより加湿ガスの温度を一定に保つ構成が知られている。このような固体高分子型燃料電池の一例が下記特許文献1に開示されている。
【0007】
また、上述のように供給配管を保温して、燃料電池スタックへ加湿ガスを供給する方式の他に、給水路の内部に多孔質炭素焼結体により形成された管を設け、多孔質炭素焼結体をガスが通過して水をバブリングすることで十分に加湿されるようにした供給配管により直接燃料電池スタックへ加湿ガスを供給する構成も知られている。このような固体高分子型燃料電池の一例が下記特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−67893号公報
【特許文献2】特許第3553200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に開示される固体高分子型燃料電池では、厳密には加湿ガス供給配管の加熱及び保温は均一でなく、実際には低温部分と高温部分が存在するため、低温部分で加湿ガスの水分の凝縮が生じたり、あるいは高温部分で凝縮した水が局所的に突沸したりしているため、燃料電池スタックに達したガスと冷却水の温度差が均一にならず、さらに、湿度が略100パーセントのガスを得られないという問題がある。
【0010】
また、上記特許文献2に開示される固体高分子型燃料電池では、給水路を流れる水は多孔質炭素焼結体を介したガスが水をバブリングすることにより加湿しているが、多孔質の物質においては高圧側から低圧側へと物質が移動するため、常にガス側を高圧の状態に加圧する必要がある。このため、別途加圧装置を設けなければならず、このため装置構成が複雑となり、コストが上昇してしまうという問題がある。
【0011】
これらのことから、本発明は、加湿器から燃料電池スタックまでの系統を工夫し、燃料電池スタックのガス入口でのガスと冷却水の温度を均一にし、さらに、ガスの湿度を略100パーセントに近づける固体高分子型燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するための第1の発明(請求項1に対応)に係る固体高分子型燃料電池は、
固体高分子電解質膜をアノード側電極とカソード側電極とで挟んでセルを形成し、前記セルをセパレータを介して複数枚積層することで形成された燃料電池スタックと、
前記燃料電池スタックを冷却する冷却水と、
前記アノード側電極に供給される燃料ガスと、
前記カソード側電極に供給される酸化剤ガスと、
前記燃料ガス及び前記酸化剤ガスを前記冷却水により加湿する加湿器と、
前記加湿器から前記燃料電池スタックへ加湿された前記燃料ガスを供給する燃料ガス供給配管と、
前記加湿器から前記燃料電池スタックへ加湿された前記酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給配管と、
前記加湿器から前記燃料電池スタックへ前記冷却水を供給する冷却水供給配管と
を備える固体高分子型燃料電池において、
前記燃料ガス及び前記酸化剤ガスの湿度を略100パーセントの状態で前記燃料電池スタックへ供給する加湿ガス供給手段を備えると共に、前記燃料ガス及び前記酸化剤ガスと前記冷却水の温度を均一の状態で前記燃料電池スタックへ供給する均温化手段を備え、
前記加湿ガス供給手段及び前記均温化手段は、
前記冷却水供給配管を前記燃料電池スタック内で分岐させて分岐配管とし、前記分岐配管を前記セパレータの側端部を流れるように設置し、該分岐配管に前記燃料ガス及び前記酸化剤ガスが前記セル内部に流れ込む直前に水を吹き掛ける水噴出孔を形成する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明によれば、固体高分子電解質膜をアノード側電極とカソード側電極とで挟んでセルを形成し、セルをセパレータを介して複数枚積層することで形成された燃料電池スタックと、燃料電池スタックを冷却する冷却水と、アノード側電極に供給される燃料ガスと、カソード側電極に供給される酸化剤ガスと、燃料ガス及び酸化剤ガスを冷却水により加湿する加湿器と、加湿器から燃料電池スタックへ加湿された燃料ガスを供給する燃料ガス供給配管と、加湿器から燃料電池スタックへ加湿された酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給配管と、加湿器から燃料電池スタックへ冷却水を供給する冷却水供給配管とを備える固体高分子型燃料電池において、燃料ガス及び酸化剤ガスの湿度を略100パーセントの状態で燃料電池スタックへ供給する加湿ガス供給手段を備えることにより、固体高分子電解質膜を常に湿度100パーセントの最適な状態を維持することができるため、電気化学反応の効率を最大限に高め、さらに製品寿命を長くすることができる。
燃料ガス及び酸化剤ガスと冷却水の温度を均一の状態で燃料電池スタックへ供給する均温化手段を備えることにより、固体高分子電解質膜を常に最適な温度に維持することができるため、電気化学反応の効率を最大限に高め、さらに製品寿命を長くすることができる。
加湿ガス供給手段及び均温化手段は、冷却水供給配管を燃料電池スタック内で分岐させて分岐配管とし、分岐配管をセパレータの側端部を流れるように設置し、この分岐配管に燃料ガス及び酸化剤ガスがセル内部に流れ込む直前に水を吹き掛ける水噴出孔を形成することにより、燃料ガス及び酸化剤ガスへのより確実な加湿を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】参考例1に係る固定高分子型燃料電池の要部構成図である。
【図2】参考例1に係る加湿器と燃料電池スタックとの間のガス温度の変化を示した図である。
【図3】参考例1に係る固定高分子型燃料電池のシステム構成図である。
【図4】参考例2に係る固定高分子型燃料電池の要部構成図である。
【図5】参考例2に係る複数の中空糸で形成したガス供給配管の断面図である。
【図6】参考例3に係る固定高分子型燃料電池の要部構成図である。
【図7】実施例1に係る固定高分子型燃料電池の要部構成図である。
【図8】実施例1に係る燃料電池スタックの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る固定高分子型燃料電池の一参考例および一実施例について、図1から図8を用いて説明する。図1は参考例1に係る固定高分子型燃料電池の要部構成図、図2は参考例1に係る加湿器と燃料電池スタックとの間のガス温度の変化を示した図、図3は参考例1に係る固定高分子型燃料電池のシステム構成図、図4は参考例2に係る固定高分子型燃料電池の要部構成図、図5は参考例2に係る複数の中空糸で形成したガス供給配管の断面図、図6は参考例3に係る固定高分子型燃料電池の要部構成図、図7は実施例1に係る固定高分子型燃料電池の要部構成図、図8は実施例1に係る燃料電池スタックの斜視図である。
【0016】
[参考例1]
以下、本発明に係る固体高分子型燃料電池の第1の参考例について説明する。始めに、本参考例に係る固体高分子型燃料電池のシステム構成について説明する。図3に本参考例に係る固体高分子型燃料電池のシステム構成図を示す。図3に示すように、固体高分子型燃料電池は、水素ガスを供給する水素ガス供給源10と、酸素ガスを供給する酸素ガス供給源13と、冷却水を供給する冷却水供給源11とを備えている。本参考例では水素ガスと酸素ガスを用いたが、水素ガス以外の燃料ガスや酸素ガス以外の酸化剤ガスを用いることも可能である。
【0017】
水素ガス供給源10から供給された水素ガスと、冷却水供給源11から供給された冷却水は、水素ガスを冷却水を用いて加湿する水素ガス加湿器12へと供給される。また、酸素ガス供給源13から供給された酸素ガスと、冷却水供給源11から供給された冷却水は、酸素ガスを冷却水を用いて加湿する酸素ガス加湿器14へと供給される。
【0018】
水素ガス加湿器12で加湿された湿度が略100パーセントの水素ガスは水素ガス供給配管15を通って、燃料電池スタック18の内部に供給される。また、酸素ガス加湿器で加湿された湿度が略100パーセントの酸素ガスは酸素ガス供給配管16を通って、燃料電池スタック18の内部に供給される。さらに、水素ガス加湿器12と酸素ガス加湿器14で加湿に用いた冷却水は冷却水供給配管17を通って、燃料電池スタック18の内部に供給される。なお、本参考例に係る燃料電池スタック18は、従来から用いられているものと基本的に同様な構造であるため、ここでの燃料電池スタック18についての詳細な構造の説明は省略する。
【0019】
次に、本参考例に係る固体高分子型燃料電池の要部の構成について説明する。図1に本参考例に係る固定高分子型燃料電池の要部構成図を示す。なお、水素ガス加湿器12と燃料電池スタック18との間、及び、酸素ガス加湿器14と燃料電池スタック18との間の構造は共通であるため、図1においては、水素ガス及び酸素ガスをガスとして、また、水素ガス加湿器12及び酸素ガス加湿器14を加湿器19として示した。
【0020】
図1に示すように、加湿器19と燃料電池スタック18との間に、加湿器19で加湿した湿度が略100パーセントの加湿ガスを燃料電池スタック18の内部に供給するガス供給配管20を設置する。また、加湿器19と燃料電池スタック18との間に、加湿器19でガスを加湿するために用いた冷却水を燃料電池スタック18の内部に供給する冷却水供給配管17を設置する。
【0021】
ガス供給配管20には、加湿器19直近の部分に加湿器19から出た直後の加湿ガスを加熱するヒータ21を設置する。本参考例では、ヒータ21にはテープヒータを用いたが、これ以外の加熱手段を用いることも可能である。また、ヒータ21には、任意に温度調整ができるようにヒータ制御装置22を設置する。
【0022】
図2に本参考例に係る加湿器と燃料電池スタックとの間のガス温度の変化を示した図を示す。なお、図2には、例として冷却水の温度を60℃とした際の状態を示した。図2にAで示すように、加湿器19(図1参照)の加湿ガス出口から出た直後の加湿ガスを加熱する。この加熱は、ガス供給配管の全体にわたって加熱を行うのではなく、加湿器19の直近の部分に対して局所的に加熱を行う。このため、加熱したガスは飽和水蒸気量が増大し、湿度が低下した状態となる。つまり、加湿ガスに含まれる水分が凝縮しにくい状態となる。
【0023】
また、ガスの加熱は、加湿ガスが燃料電池スタック18(図1参照)の加湿ガス入口に達したときに、Bで示す冷却水と同じ温度になるよう設定する。すなわち、ガスが燃料電池スタック18に達したときに、ガスの温度と冷却水の温度とが同じ温度であって、ガスの湿度が略100パーセントとなるようにする。
【0024】
ヒータ21の加熱温度については、燃料電池スタック18に達したガスの温度の情報をヒータ制御装置22にフィードバックして、燃料電池スタック18に達したガスの温度が目的とする温度(ここでは60℃)になるようヒータ制御装置22において自動で制御させることも可能である。
【0025】
このように、ヒータ21で加熱された加湿ガスは、飽和水蒸気量が増大するため、加湿器19で加湿された際に含んだ水分がガス供給配管20内で一切凝縮することなく燃料電池スタック18の内部に達することができる。
【0026】
これに対して、従来のガス供給配管の保温方法では、例えば、Cで示す曲線のように配管内で部分的に温度が低下して、再び温度が上昇する場合がある。このような場合、ガスの温度は全体的に見ると略一定の温度に保温された状態になっているものの、温度が低下した際に飽和水蒸気量が低下して水が凝縮してしまうため、燃料電池スタックのガス導入部に達したときには、水とガスとが分離してガスの湿度が低下してしまっていることとなる。
【0027】
以上のように、本参考例に係る固体高分子型燃料電池によれば、水素ガス供給配管15及び酸素ガス供給配管16の加湿器19直近の部分に、加湿器19から出た直後の水素ガス及び酸素ガスを加熱するヒータ21を設置し、水素ガス及び酸素ガスが燃料電池スタック18に達したときに、水素ガス及び酸素ガスと冷却水の温度が均一となるようヒータ21を制御することにより、水素ガス及び酸素ガスの湿度が略100パーセントとなり、水素ガス及び酸素ガスと冷却水の温度が均一となるので、電気化学反応の効率を最大限に高め、さらに製品寿命を長くすることができる。
【0028】
また、燃料ガス供給配管及び酸化剤ガス供給配管内で水が凝縮することを防ぐことができる。さらに、従来の燃料ガス供給配管及び酸化剤ガス供給配管の全体にわたってヒータを設置する構成に比べ、製造コストを低減することができる。
【0029】
[参考例2]
以下、本発明に係る固体高分子型燃料電池の第2の参考例について説明する。なお、本参考例に係る固体高分子型燃料電池のシステム構成は、参考例1に係る固体高分子型燃料電池のシステム構成と同様であるためここでの説明は省略する。
【0030】
本参考例に係る固体高分子型燃料電池の要部の構成について説明する。図4に本参考例に係る固体高分子型燃料電池の要部構成図を示す。なお、水素ガス加湿器12(図3参照)と燃料電池スタック18との間、及び、酸素ガス加湿器14(図3参照)と燃料電池スタック18との間の構造は共通であるため、図4においては、水素ガス及び酸素ガスをガスとして、また、水素ガス加湿器12及び酸素ガス加湿器14を加湿器19として示した。
【0031】
図4に示すように、加湿器19と燃料電池スタック18との間に、冷却水を供給する冷却水供給配管17を設置し、この冷却水供給配管17の内部にガスを供給するガス供給配管20を設置する。すなわち、加湿器19と燃料電池スタック18との間の配管を冷却水供給配管17が外側の管を形成し、ガス供給配管20が内側の管を形成する二重管とする。本参考例では、冷却水供給配管17の素材にステンレス鋼を、ガス供給配管20の素材に非多孔質中空糸膜を用いた。ここで、非多孔質中空糸膜は、略水蒸気だけが透過することができる膜である。
【0032】
本参考例に係るガス供給配管20は素材が非多孔質中空糸膜であるため、ガス供給配管20内のガスの圧力、及び、冷却水供給配管17の冷却水の圧力に依存することなく、冷却水供給配管17内からガス供給配管内20へ水蒸気が透過することが可能なため、ガスの温度と冷却水の温度とを均一にしつつ、ガスの湿度を略100パーセントの状態にすることができる。
【0033】
また、ガス供給配管20を表面が非多孔質となっている多数の中空糸23により形成することも可能である。図5に本参考例に係る多数の中空糸23により形成したガス供給配管の断面図を示す。図5に示すように、冷却水供給配管17の内部には、非多孔質の中空糸23が多数設置されている。このように、多数の中空糸23によりガス供給配管20を形成することで、ガス供給配管20の表面積を大きくし、図5に斜線で示す冷却水との接触面積を大きくすることができるため、ガスを加湿する能力をより高めることができる。
【0034】
以上のように、本参考例に係る固体高分子型燃料電池によれば、冷却水供給配管17の内部に水素ガス供給配管15を設置して二重管とし、冷却水供給配管17の内部に酸素ガス供給配管16を設置して二重管として、水素ガス供給配管15及び酸素ガス供給配管16を、非多孔質中空糸膜、又は、複数の非多孔質中空糸により形成することにより、水素ガス及び酸素ガスの湿度が略100パーセントとなり、水素ガス及び酸素ガスと冷却水の温度が均一となるので、電気化学反応の効率を最大限に高め、さらに製品寿命を長くすることができる。また、従来の多孔質素材で二重管を形成した場合に比べ、加圧装置等を別途設ける必要が無いため、製造コストを低減することができる。
【0035】
[参考例3]
以下、本発明に係る固体高分子型燃料電池の第3の参考例について説明する。なお、本参考例に係る固体高分子型燃料電池のシステム構成は、参考例1に係る固体高分子型燃料電池のシステム構成と同様であるためここでの説明は省略する。
【0036】
本参考例に係る固体高分子型燃料電池の要部の構成について説明する。図6に本参考例に係る固体高分子型燃料電池の要部構成図を示す。なお、水素ガス加湿器12(図3参照)と燃料電池スタック18との間、及び、酸素ガス加湿器14(図3参照)と燃料電池スタックとの間の構造は共通であるため、図6においては、水素ガス及び酸素ガスをガスとして、また、水素ガス加湿器12及び酸素ガス加湿器14を加湿器19として示した。
【0037】
図6に示すように、加湿器19と燃料電池スタック18との間に、ガスを供給するガス供給配管20と冷却水を供給する冷却水供給配管17を設置する。ガス供給配管20は、燃料電池スタック18直近の部分にガス加湿室24が形成されている。冷却水供給配管17の燃料電池スタック側の端部は、ガス加湿室24の天井部を貫通してガス加湿室24内に突出している。この冷却水供給配管17の端部には、冷却水を細かな霧状にして噴出するスプレーノズル25が設置されている。ガス加湿室24内の下部には、スプレーノズル25から噴霧された冷却水を再び液状にする気水分離器26を設置する。
【0038】
加湿器19から出てきた冷却水はスプレーノズル25で霧状にされる。加湿器19から出てきたガスは霧状にされた冷却水が充満するガス加湿室24内を通過して燃料電池スタック18の内部に達する。また、霧状にされた冷却水は気水分離器26で再び液状に戻され、その後燃料電池スタック18の内部に達する。このようにして、ガスの温度と冷却水の温度とを均一にしつつ、ガスの湿度を略100パーセントの状態にすることができる。
【0039】
以上のように、本参考例に係る固体高分子型燃料電池によれば、水素ガス供給配管15及び酸素ガス供給配管16の燃料電池スタック18直近の部分に水素ガス及び酸素ガスを加湿するガス加湿室24を形成して、冷却水供給配管17の先端をガス加湿室24内に突出させてこの先端に冷却水を霧状にして噴出するスプレーノズル25を設置し、ガス加湿室24内下部に霧状になった冷却水を再び液状に戻して燃料電池スタック18へ供給する気水分離器26を設置することにより、水素ガス及び酸素ガスの湿度が略100パーセントとなり、水素ガス及び酸素ガスと冷却水の温度が均一となるので、電気化学反応の効率を最大限に高め、さらに製品寿命を長くすることができる。また、水素ガス及び酸素ガスへの確実な加湿をシンプルな構造で実現することができるため、製造コストを低減することができる。
【実施例1】
【0040】
以下、本発明に係る固体高分子型燃料電池の第1の実施例について説明する。なお、本実施例に係る固体高分子型燃料電池のシステム構成は、参考例1に係る固体高分子型燃料電池のシステム構成と同様であるためここでの説明は省略する。
【0041】
本実施例に係る固体高分子型燃料電池の要部の構成について説明する。図7に本実施例に係る固定高分子型燃料電池の要部構成図を示す。なお、水素ガス加湿器12(図3参照)と燃料電池スタック18との間、及び、酸素ガス加湿器14(図3参照)と燃料電池スタック18との間の構造は共通であるため、図7においては、水素ガス及び酸素ガスをガスとして、また、水素ガス加湿器12及び酸素ガス加湿器14を加湿器19として示した。
【0042】
図7に示すように、加湿器19と燃料電池スタック18との間に、加湿器19で加湿した湿度が略100パーセントの加湿ガスを燃料電池スタック18の内部に供給するガス供給配管20を設置する。また、加湿器19と燃料電池スタック18との間に、加湿器19でガスを加湿するために用いた冷却水を燃料電池スタック18の内部に供給する冷却水供給配管17を設置する。本実施例では、冷却水供給配管17は燃料電池スタック18内部で複数の管に分岐して分岐配管27を形成している。
【0043】
図8に本実施例に係る燃料電池スタックの斜視図を示す。図8に示すように、燃料電池スタックは、固体高分子電解質膜28からなるセルをセパレータ29を介して直列に複数枚積層することにより形成されている。セパレータ29には溝部30が形成されており、この溝部30へ水素ガスと酸素ガスを異なる方向から導入している。なお、図8中では各セパレータ29の間に間隔があけられているが、実際には各セパレータ29が隙間無く接するように配置されている。また、水素ガスと酸素ガスの供給方向は逆であっても良い。
【0044】
本実施例では、冷却水供給配管17を燃料電池スタック18内で複数の配管に分岐させ、分岐配管27を各セパレータ29の側端部を流れるように設置する。この分岐配管27には、セパレータ29の溝部30に対応した位置に水が噴出すよう水噴出孔31が設けられている。この水噴出孔31から噴出した水は、溝部30へ流れ込む直前の水素ガス及び酸素ガスに浴びせ掛けられる。このようにして、ガスの温度と冷却水の温度とを均一にしつつ、ガスの湿度を略100パーセントの状態にすることができる。
【0045】
以上のように、本実施例に係る固体高分子型燃料電池によれば、冷却水供給配管17を燃料電池スタック18内で分岐させて分岐配管27とし、分岐配管27をセパレータ29の側端部を流れるように設置し、この分岐配管27に水素ガス及び酸素ガスがセル内部に流れ込む直前に水を吹き掛ける水噴出孔31を形成することにより、水素ガス及び酸素ガスの湿度が略100パーセントとなり、水素ガス及び酸素ガスと冷却水の温度が均一となるので、電気化学反応の効率を最大限に高め、さらに製品寿命を長くすることができる。また、水素ガス及び酸素ガスへのより確実な加湿を行うことができる。
【符号の説明】
【0046】
10 水素ガス供給源
11 冷却水供給源
12 水素ガス加湿器
13 酸素ガス供給源
14 酸素ガス加湿器
15 水素ガス供給配管
16 酸素ガス供給配管
17 冷却水供給配管
18 燃料電池スタック
19 加湿器
20 ガス供給配管
21 ヒータ
22 ヒータ制御装置
23 中空糸
24 ガス加湿室
25 スプレーノズル
26 気水分離器
27 分岐配管
28 固体高分子電解質膜
29 セパレータ
30 溝部
31 水噴出孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体高分子電解質膜をアノード側電極とカソード側電極とで挟んでセルを形成し、前記セルをセパレータを介して複数枚積層することで形成された燃料電池スタックと、
前記燃料電池スタックを冷却する冷却水と、
前記アノード側電極に供給される燃料ガスと、
前記カソード側電極に供給される酸化剤ガスと、
前記燃料ガス及び前記酸化剤ガスを前記冷却水により加湿する加湿器と、
前記加湿器から前記燃料電池スタックへ加湿された前記燃料ガスを供給する燃料ガス供給配管と、
前記加湿器から前記燃料電池スタックへ加湿された前記酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給配管と、
前記加湿器から前記燃料電池スタックへ前記冷却水を供給する冷却水供給配管と
を備える固体高分子型燃料電池において、
前記燃料ガス及び前記酸化剤ガスの湿度を略100パーセントの状態で前記燃料電池スタックへ供給する加湿ガス供給手段を備えると共に、前記燃料ガス及び前記酸化剤ガスと前記冷却水の温度を均一の状態で前記燃料電池スタックへ供給する均温化手段を備え、
前記加湿ガス供給手段及び前記均温化手段は、
前記冷却水供給配管を前記燃料電池スタック内で分岐させて分岐配管とし、前記分岐配管を前記セパレータの側端部を流れるように設置し、該分岐配管に前記燃料ガス及び前記酸化剤ガスが前記セル内部に流れ込む直前に水を吹き掛ける水噴出孔を形成する
ことを特徴とする固体高分子型燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−178366(P2012−178366A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−136670(P2012−136670)
【出願日】平成24年6月18日(2012.6.18)
【分割の表示】特願2006−215241(P2006−215241)の分割
【原出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】