説明

固型化粧料

【課題】 有機顔料の分散安定性および塗布時のなめらかさに優れ、経時的な固型油分の析出の防止や、発汗に対する安定性(化粧持ち)に優れた固型化粧料を得ることである。
【解決手段】 成分(a)を0.01〜30質量%、成分(b)を0.01〜10質量%、成分(c)を10〜95質量%、成分を(d)1〜50質量%含有する固型化粧料。
(a)式(1)により示されるポリアルキレングリコール誘導体。
(式中、EOはオキシエチレン基であり、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基であり、EOとAOはブロック状に結合している。aはEOの平均付加モル数であり、mはAOの平均付加モル数であり、aは0〜20であり、mは10〜100であり、EOとAOの合計質量を100質量部したときのAOの質量が50〜100質量部である。Rは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアシル基である。)
(b)有機顔料
(c)エステル油、油脂、ロウ類から選ばれる1種以上の油剤
(d)25℃で固体状の炭化水素

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口紅、リップグロス、アイライナー、アイシャドーなどの固型化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
口紅、リップグロス、アイライナー、アイシャドーなどの固型化粧料では、固型油分に着色剤として有機顔料が含有されるが、有機顔料の凝集や沈降は、肌、唇、爪などに塗布する際に、なめらかさといった使用感を悪化させるばかりか、外観も悪化させ、化粧品の商品価値を著しく損ねる。また、経時的な固型油分の析出の防止や、湿度もしくは発汗に対する安定性(化粧持ち)など種々の性能が要求されている。
このような課題に対して、顔料分散安定性や油剤との相溶性に優れる親油型非イオン性界面活性剤、とりわけ、ポリグリセリン脂肪酸エステルもしくはソルビタン脂肪酸エステルを用いて解決する提案がなされている。
【0003】
例えば、HLB6以下のソルビタン脂肪酸エステル及び脂肪酸ジグリセリル、ポリオキシエチレン(20モル)モノステアレートに代表されるHLB12以上のノニオン系界面活性剤を必須成分とするメイクアップ化粧料の提案(例えば特許文献1)や、モノイソステアリン酸グリセリンを用いた提案(例えば特許文献2)がなされている。これらは、使用感に関しては優れているものの、経時的な固型油分の析出の防止や、発汗に対する安定性(化粧持ち)については、十分に満足いくものではなかった。
また、非イオン性界面活性剤としては、親油基がポリオキシブチレン基であるポリグリセリン型非イオン性界面活性剤の提案もなされているが(例えば特許文献3)、経時的な固型油分の析出の防止や、発汗に対する安定性(化粧持ち)に関する効果は見出されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−348310号公報
【特許文献2】特開2010−132619号公報
【特許文献3】特開2007−31336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、有機顔料の分散安定性および塗布時のなめらかさに優れ、経時的な固型油分の析出の防止や、発汗に対する安定性(化粧持ち)に優れた固型化粧料を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために、特定構造のポリアルキレングリコール誘導体、有機顔料、および油性成分を組み合わせることにより、課題が達成されることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は以下に示されるものである。
(1) 下記の成分(a)を0.01〜30質量%、成分(b)を0.01〜10質量%、成分(c)を10〜95質量%、成分(d)を1〜50質量%含有することを特徴とする固型化粧料。
(a)下記式(1)により示されるポリアルキレングリコール誘導体。
【化1】


(式中、EOはオキシエチレン基であり、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基であり、EOとAOはブロック状に結合している。
aはEOの平均付加モル数であり、mはAOの平均付加モル数であり、aは0〜20であり、mは10〜100であり、EOとAOの合計質量を100質量部としたときのAOの質量比率が100質量部である。
は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアシル基である。)
(b) 有機顔料
(c) エステル油、油脂およびロウ類からなる群より選ばれる1種以上の油剤
(d) 25℃で固体状の炭化水素
(2) 式(1)で示されるポリアルキレングリコール誘導体において、AOが1,2−ブチレンオキシド由来のオキシアルキレン基であることを特徴とする前記の固型化粧料。
(3) 式(1)で示されるポリアルキレングリコール誘導体において、EOとAOの合計量を100重量部としたときのAOの質量比率が80〜100質量部であることを特徴とする前記の固型化粧料である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の固型化粧料は、有機顔料の分散安定性および塗布時のなめらかさに優れ、経時的な固型油分の析出の防止や、発汗に対する安定性(化粧持ち)にも優れており、大変有用である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の固型化粧料で用いる成分(a)は、式(1)により示されるキシリトール骨格を有するポリアルキレングリコール誘導体である。
【0010】
式(1)に示されるポリアルキレングリコール誘導体において、EOはオキシエチレン基であり、AOは、炭素数3〜4のオキシアルキレン基である。 AOとしては、炭素数3ではオキシプロピレン基、炭素数4では、1,2−ブチレンオキシド由来のオキシブチレン基、2,3−ブチレンオキシド由来のオキシブチレン基、オキシt−ブチレン基が例示できるが、好ましくは、1,2−ブチレンオキシド由来のオキシブチレン基である。これらが2種以上の場合は、ランダム状付加でもブロック状付加でもよい。 AO全体を100質量部としたとき、炭素数4のオキシアルキレン基の質量比率は、50質量部以上が好ましく、70質量部以上が更に好ましく、90質量部以上が最も好ましく、100質量部であってもよい。
【0011】
EOとAOの付加形態は、ブロック状であり、キシリトールに対してEO−AOの順に付加する。EOとAOがランダム状に付加していると、有機顔料の分散安定性に劣り好ましくない。
【0012】
式(1)において、キシリトール部分は、水酸基4つが隣接する親水基であり、有機顔料への吸着サイトとして作用する。さらに、キシリトール部分は、湿度もしくは発汗に対する安定性(化粧持ち)を良好にするための必須部位である。 キシリトール以外の骨格、例えば、グリセリンのように隣接する水酸基が2つの場合や、特許文献3に例示されるトリグリセリン誘導体のように、4つの水酸基を有しても、エーテル結合を介する場合では、有機顔料への吸着力が十分ではない。したがって、本願の課題を達成するためにはキシリトール部位が必須となる。
【0013】
一方、AO部分は、ポリアルキレングリコール誘導体の親油基であり、立体反発をもたらす分散サイトとして作用し、さらに、(c)成分もしくは(d)成分との相溶性をもたらし、経時的な固型油分の析出の防止に寄与する。
【0014】
mはAOの平均付加モル数であり、AOが2種以上の場合は、合計平均付加モル数を示し、10〜100である。mが10より小さい場合は、親油基として十分でなく、(c)成分もしくは(d)成分との相溶性が劣るばかりか、十分な立体反発が得られないため有機顔料の分散安定性に劣る場合もあり好ましくない。こうした観点からは、mは20以上が更に好ましい。また、mが100を超えると、副反応生成物の影響のために、分散安定性もしくは塗布時のなめらかさが劣る場合があり、好ましくない。こうした観点からは、mは70以下がより好ましく、50以下が更に好ましく、45以下が最も好ましい。
【0015】
EOは、キシリトール骨格の親水性を補うために必要に応じて付加できる。aは、EOの平均付加モル数で0〜20であるが、好ましくは10以下、より好ましくは、5以下である。aが20より大きいと、(c)成分もしくは(d)成分との相溶性に劣り、分散安定性、固型油分の析出防止効果に劣る場合があり、好ましくない。
【0016】
また、EOとAOの合計質量を100質量部としたとき、AOの質量比率は、50〜100質量部である。これが50質量部より小さいと、(c)成分もしくは(d)成分との相溶性に劣り、分散安定性、固型油分の析出防止効果に劣る場合があり、好ましくない。AOの質量比率は、好ましくは75質量部以上であり、より好ましくは80質量部以上であり、最も好ましくは90質量部以上である。
【0017】
は、水素原子、炭素数1〜4のアルキルまたは炭素数1〜4のアシル基である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基及びこれらの混合基などが挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基である。アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、などが挙げられる。好ましくは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基、エチル基である。
【0018】
本発明の固型化粧料中の(a)成分;ポリアルキレングリコール誘導体の配合量は、通常0.01〜30質量%、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.01〜5質量%である。30質量%を超えると、塗布時の滑らかさに劣り好ましくない。ポリアルキレングリコール誘導体は1種または2種以上を配合してもよい。
【0019】
式(1)に示されるポリアルキレングリコール誘導体は、通常、以下の(i)〜(i i i)の手順により製造することができる。
(i)キシリトールを酸触媒の存在下、ケタール化剤もしくはアセタール化剤と反応させ、下記式(2)に示すキシリトールジケタール化合物もしくはジアセタール化合物を得る。 式(2)のキシリトールジケタール化物もしくはジアセタール化物は、必要に応じて、蒸留等で精製しても構わない。
【化2】

【0020】
(i i) 続いてアルカリ触媒下、オキシエチレン基および炭素数3〜4のオキシアルキレン基を付加反応し、さらに必要に応じて、アルカリ触媒下にて、アルキルハライド、アシルハライド、酸無水物などと反応させ、末端水酸基をエーテル化もしくはエステル化することもできる。
(i i i) その後、酸の存在下で脱ケタール化もしくは脱アセタール化を行う。
【0021】
式(2)において、RおよびRは、それぞれ水素原子もしくは炭素数1〜4のアルキル基であり、RおよびRが同時に水素原子になることはない。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が例示できるが、好ましくはメチル基、エチル基である。R=R=メチル基の場合、ケタール化剤としてアセトン、2,2−ジメトキシプロパンが例示でき、R=水素原子、R=メチル基の場合、アセタール化剤として、アセトアルデヒドが例示できる。
【0022】
ケタール化もしくはアセタール化の触媒としては、酸触媒、例えば硫酸、パラトルエンスルホン酸等が挙げられる。通常、ケタール化剤もしくはアセタール化剤の仕込み量は、キシリトールに対して、200〜400モル%であり、酸触媒の仕込み量はキシリトールに対して5×10−6〜15×10−3モル%が、反応温度は30〜90℃で行うのが一般的である。
【0023】
式(2)のキシリトールジアセタール化物もしくはジケタール化物を、次工程のアルキレンオキシド付加反応で使用する場合、特に触媒除去処理などをしなくても差し支えないが、必要であれば、アルカリによる中和処理や酸吸着処理、濾過等を行うことができる。例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウムなどの中和剤や、協和化学工業(株)製のキョーワード300、キョーワード500、キョーワード1000、キョーワード2000、富田製薬(株)製のトミックスAD−500等の吸着剤、その他ゼオライト等が使用できる。
【0024】
式(2)の化合物について、アルカリ触媒の存在下でアルキレンオキシド付加反応を行う場合、通常、オートクレーブなどの加圧反応釜において、40〜180℃で反応を行う。このときアルカリ触媒としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、アルコラート等を使用することができる。触媒の使用量は特に限定されていないが、付加反応終了後の質量に対して0.01〜5.0質量%が一般的である。
【化3】

【0025】
アルキレンオキシドの付加反応後の式(3)の化合物に対して、必要に応じて、アルカリ存在下、炭素数1〜4のアルキルハライド等を反応させ、アルキルエーテル化することもできる。アルキルハライドの例としては、塩化メチル、塩化エチル、塩化プロピル、塩化ブチル、臭化メチル、臭化エチル、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル等が挙げられる。また、このときのアルカリとしては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、アルコラート等を使用することができる。アルカリハライドの仕込み量は、反応する水酸基数に対して100〜400モル%、アルカリ量は、反応する水酸基数に対して100〜500モル%、反応温度は60〜180℃で行うのが一般的である。
【0026】
また、式(3)の化合物に対して、必要に応じて、アルカリもしくは酸触媒の存在下、炭素数1〜4のカルボン酸、カルボン酸ハライド、カルボン酸無水物等のアシル化剤にて、エステル化することもできる。カルボン酸の例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸等、カルボン酸ハライドとしては、酢酸クロライド、プロピオン酸クロライド、酪酸クロライド、酸無水物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸等が例示できる。アシル化剤の仕込み量は、反応する水酸基数に対して100〜400モル%、アルカリもしくは酸触媒量は、反応する水酸基数に対して0.01〜500モル%、反応温度は60〜180℃で行うことが一般的である。
【0027】
式(3)の化合物のオキシアルキレン化物における脱ケタール化もしくは脱アセタール化物反応は、酸の存在下で行う。酸としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、炭酸、酢酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸、パラトルエンスルホン酸、その他固体酸、陽イオン交換樹脂、酸性白土等が挙げられる。酸の使用量としては、式(3)の化合物のオキシアルキレン化物に対して0.001〜6.0質量%である。また、必要に応じて水を添加して反応もでき、使用量としては、0.01〜100質量%である。反応温度は60〜150℃で行うのが一般的である。
【0028】
脱ケタール化もしくは脱アセタール化反応終了後は、アルカリによる中和処理や酸吸着剤処理、濾過等を行うことができる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム等の中和剤や、協和化学工業(株)製のキョーワード300、キョーワード500、キョーワード1000、キョーワード2000、富田製薬(株)製のトミックスAD−500等の吸着剤、その他ゼオライト等が使用できる。
【0029】
以上説明したように、式(1)で示されるポリアルキレングリコール誘導体は、予めキシリトールの水酸基をジケタール化又はジアセタール化によって保護し、この状態で水酸基のオキシアルキレン化反応を行い、必要に応じてエーテル化/エステル化を行った後、脱ケタール化または脱アセタール化反応により脱保護化という一連の工程が行われる。そして、これにより、式(1)に示すようなキシリトールの水酸基1つが修飾されたポリアルキレングリコール誘導体を得ることができる。
【0030】
(b)成分は、有機顔料である。有機顔料とは、有機化合物を主成分とする顔料であり、アゾ系顔料、多環式系顔料であってよい。具体的には、着色を目的としたタール色素、天然色素が例示できる。このような有機顔料としては、例えば、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色405号、赤色505号、青色1号、青色404号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、黄色205号、黄色401号、橙色203号、橙色204号、橙色205号、及び緑色3号等、クロロフィル、β―カロチン、カルミン、カラメル、パプリカ色素等の天然色素などが例示できる。好ましくは赤色顔料である。
【0031】
(b)成分の配合量は、0.01〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%である。10質量%を超えると、分散安定性や使用感を損なう可能性があり好ましくない。(b)成分は、1種または2種以上を配合してもよい。
【0032】
(c)成分は、エステル油、油脂、ロウ類から選ばれる1種以上の油剤である。
エステル油としては、セバシン酸ジエチル、2−エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸イソセチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸2−ヘキシルデシル、イソステアリン酸イソステアリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソセチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸エチル、ピバリン酸イソステアリル、イソステアリン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸2−エチルヘキシル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、エルカ酸オクチルドデシル、ジデカン酸ネオペンチルグリコール、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジデシル、(アジピン酸・2−エチルへキサン酸・ステアリン酸)グリセリルオリゴエステル、イソステアリン酸グリセリル、イソステアリン酸硬化ヒマシ油、イソステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸バチル、イソステアリン酸フィトステリル、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、イソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、オキシステアリン酸オクチル、オレイン酸グリセリル、オレイン酸ジグリセリル、オレイン酸ジヒドロコレステリル、オレイン酸フィトステリル、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル、ジヤシ油脂肪酸ペンタエリスリット、ステアリン酸硬化ヒマシ油、ステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、トリオキシステアリン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン・ミリスチン・ステアリン酸)グリセリド、トリ牛脂脂肪酸グリセリル、トリラノリン脂肪酸グリセリル、軟質ラノリン脂肪酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ヘキサオキシステアリン酸ジペンタエリトリット、モノヒドロキシステアリン酸硬化ヒマシ油、ラノリン脂肪酸イソステアリル、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリン脂肪酸オクチルドデシル、ラノリン脂肪酸コレステリル、リシノレイン酸グリセリル、リシノレイン酸セチルなどが例示できる。
【0033】
油脂としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、2−エチルへキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、ヤシ油脂肪酸、牛脂脂肪酸、パーム油脂肪酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、アラキドン酸、エルカ酸などの炭素数6以上の高級脂肪酸のトリグリセリドやオリーブ油、トウモロコシ油、落花生油、菜種油、ゴマ油、大豆油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、ヒマシ油、アマニ油、ひまわり油、マカダミアナッツ油、シアバター、茶実油、綿実油、シソ油、サフワラー油、キョウニン油、アーモンド油、アボガド油、アンズ核油、コメ胚芽油、牛脂、豚脂、馬油などの動植物油脂が例示できる。
ロウ類しては、ラノリン、ミツロウ、鯨ロウ、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ホホバ油、コメヌカロウなどが例示できる。
好ましくは、エステル油もしくはロウ類である。
【0034】
(c)成分の配合量10〜95質量%であり、好ましくは、20〜90質量%、より好ましくは30〜90質量%である。10質量%を下回ると、使用感を損なう可能性があり好ましくない。95質量%を超えると、分散安定性や使用感を損なう可能性があり好ましくない。(c)成分は、1種または2種以上を配合してもよい。
【0035】
(d)成分は、25℃で固体状の炭化水素であり、炭化水素は、炭素と水素とからなる有機化合物である。ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィン、ポリエチレン、セレシン、合成ワックス、オゾケライトなどを例示できる。好ましくは、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンである。
【0036】
(d)成分の配合量は、1〜50質量%である。50質量%を超えると、結晶が析出してしまい好ましくない。(d)成分は、1種または2種以上を配合してもよい。また、(d)成分の配合量は、更に好ましくは5〜40質量%である。
【0037】
なお、前記(a)、(b)、(c)および(d)成分の配合量の合計値を100重量%とする。
【0038】
本発明の固型化粧料においては、さらに必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、化粧料、医薬品などに一般的に用いられている各種成分を配合することが可能である。例えば、高級アルコール、高級脂肪酸、シリコーン油、変性シリコーン、ビタミン類、紫外線吸収剤、水溶性高分子、酸化防止剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、金属イオン封鎖剤、エタノール、増粘剤、防腐剤、色素、顔料、香料などが挙げられる。
【0039】
また、本発明の固型化粧料の製品形態は、特に限定されるものではないが、ファンデーション、コンシーラー等のベースメイク、口紅、リップグロス、アイシャドー等のメークアップ化粧料;スティック状日焼け止め化粧料(サンスクリーン剤)、スティック制汗剤、軟膏等が例示できる。
【実施例】
【0040】
[合成例]
本発明の固型化粧料の成分(a)の合成例を示す。水酸基価は、JISK1557
6.4に準じて測定した。
合成例1:ポリオキシブチレン(40モル)キシリトール(化合物1)
(1)ケタール化反応
撹拌羽根、窒素吹き込み管、熱電対、冷却管及び油水分離管を取り付けた3リットルの四つ口フラスコに、キシリトール700g、2,2−ジメトキシプロパン1291g、パラトルエンスルホン酸一水和物27mgを仕込み、反応系内を60〜90℃に保持し、2時間反応させた。反応終了後、副生したメタノール及び過剰分の2,2−ジメトキシプロパンを除去し、1014gのジイソプロピリデンキシリトール(化合物1a、R=R=メチル基)を得た。水酸基価は、240KOHmg/gであった。原料のキシリトールと化合物1aのIRチャートを比較したところ、化合物1aには3500cm−1付近の水酸基のピークが小さくなっており、代わりに2960cm−1、2870cm−1、1460cm−1、1380cm−1付近のピークが出現していることを確認した。
【化4】

【0041】
(2)オキシブチレン化反応 化合物1aを235g、水酸化カリウム15.5gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、撹拌しながら140℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置により1,2−ブチレンオキシド2900gを滴下させ、2時間撹拌した。その後、オートクレーブ内から、反応物を取り出し、塩酸で中和して、pH6〜7とし、含有する水分を除去するため、100℃、1時間、減圧処理を行い、最後に濾過をして塩を除去して、2850gのポリオキシブチレン(40モル)ジイソプロピリデンキシリトール(化合物1b)を得た。水酸基価は、18.1KOHmg/gであった。
【化5】

【0042】
(3)脱ケタール化反応 撹拌羽根、窒素吹き込み管、熱電対、冷却管を取り付けた1リットルの四つ口フラスコに、化合物1bを700g、水70g、36%塩酸10gを仕込み、密閉状態で80℃、2時間脱ケタール化反応を行った後、窒素バブリングで水及びアセトンを系外に留去した。続いて10%水酸化カリウム水溶液でpH6〜7に合わせ、含有する水分を除去するために、100℃、1時間、減圧処理した。さらに処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、650gのポリオキシブチレン(40モル)キシリトール(化合物1)を得た。
【化6】

【0043】
なお、以上によって得られた化合物1についてGPC分析を行ったところ、メインピークの分子量は2989であった。分析条件は以下の通りである。
分析機器 :SHODEX GPC SYSTEM−11(昭和電工(株)製)
標準物質 :ポリエチレングリコール
サンプルサイズ :10%×100×0.001mL
溶離液 :THF
流速 :1.0mL/min
カラム :SHODEX KF804L(昭和電工(株)製)
カラムサイズ :I.D.8mm×30cm×3
カラム温度 :40℃
検出器 :RI×8
【0044】
また、化合物1bと化合物1のIR分析を比較すると、化合物1では3500cm−1付近の水酸基のピークが大きくなっていることから、目的物質が得られていることを確認した。
【0045】
合成例2:ポリオキシエチレン(5モル)ポリオキシブチレン(40モル)キシリトール(化合物2) 合成例1の手順のうち、ケタール化反応を以下の通りに変更し、合成を行い、ポリオキシエチレン(5モル)ポリオキシブチレン(40モル)キシリトール(化合物2)を得た。(1) ケタール化反応 撹拌羽根、窒素吹き込み管、熱電対、冷却管及び油水分離管を取り付けた3リットルの四つ口フラスコに、キシリトール700g、アセトン1050g、パラトルエンスルホン酸一水和物10mgを仕込み、反応系内を60〜90℃に保持し、4時間反応させた。反応終了後、副生した水及び過剰分のアセトンを除去し、1002gのジイソプロピリデンキシリトール(化合物1a、R=R=メチル基)を得た。水酸基価は、235KOHmg/gであった。原料のキシリトールと化合物1aのIRチャートを比較したところ、化合物1aには3500cm−1付近の水酸基のピークが小さくなっており、代わりに2960cm−1、2870cm−1、1460cm−1、1380cm−1付近のピークが出現していることを確認した。(2)オキシエチレンおよびオキシブチレン化反応 化合物1aを235g、水酸化カリウム20gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、撹拌しながら140℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置により、エチレンオキシド230gを滴下させ、2時間撹拌した。引き続き、1,2−ブチレンオキシド2900gを滴下させ、2時間撹拌した。その後、オートクレーブ内から、反応物を取り出し、塩酸で中和して、pH6〜7とし、含有する水分を除去するため、100℃、1時間、減圧処理を行い、最後に濾過をして塩を除去して、3028gのポリオキシエチレン(5モル)ポリオキシブチレン(40モル)ジイソプロピリデンキシリトール(化合物2b)を得た。水酸基価は、17.0mgKOH/gであった。
【化7】

【0046】
(3)脱ケタール化反応 撹拌羽根、窒素吹き込み管、熱電対、冷却管を取り付けた1リットルの四つ口フラスコに、化合物2bを700g、水70g、36%塩酸10gを仕込み、密閉状態で80℃、2時間脱ケタール化反応を行った後、窒素バブリングで水及びアセトンを系外に留去した。続いて10%水酸化カリウム水溶液でpH6〜7に合わせ、含有する水分を除去するために、100℃、1時間、減圧処理した。さらに処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、670gのポリオキシエチレン(5モル)ポリオキシブチレン(40モル)キシリトール(化合物2)を得た。
【化8】

【0047】
合成例1に準じて、GPC分析を行ったところ、メインピークの分子量は3121であった。さらに、化合物2bと化合物2のIR分析を比較すると、化合物1では3500cm−1付近の水酸基のピークが大きくなっていることから、目的物質が得られていることを確認した。 合成例1〜2に準じて、下記表1に示す組成のポリアルキレングリコール誘導体を調製した。
【0048】
【表1】

【0049】
[実施例1〜6および比較例1〜6]
本発明の(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分さらに、(a)成分の比較物質として(a‘)成分を選定し、表2、表3の配合組成(質量%)にて口紅を調製し、下記評価基準に基づき評価した。表2、表3に結果を併せて示す。
【0050】
<調製方法>
(a)成分、(a‘)成分、(c)成分、(d)成分を90〜100℃にて加温融解する。ここに、(b)成分を加え、ロールミルにて分散処理を十分に行う。再融解して、酸化防止剤、防腐剤、香料を加え、脱気してから型に流し込み、急冷して固め、スティック型口紅を得た。
【0051】
調製した口紅を相対湿度50%、40℃の恒温槽に放置して、4週間後の分散および処方安定性を以下の基準に従って評価した。
<分散安定性>
○:顔料が均一に分散している
×:顔料が均一に分散せず、濃淡が確認できる。
<処方安定性>
分散安定性と同時に、口紅表面の結晶や粒状物質の析出の変化を目視にて観察し、以下の基準にて評価した。
○○:安定性が極めて良好。
○:安定性が良好。
×:やや状態変化あり。
××:状態変化あり。
【0052】
さらに、塗布時のなめらかさ、および、化粧持ちについて、以下の評価を行った。
<塗布時のなめらかさ>
女性パネラー10名に、調製したスティック型口紅を使用してもらい、以下の基準で評価を行った。
○○:8名以上が、なめらかであると評価。
○:6〜7名が、なめらかであると評価。
×:3〜5名が、なめらかであると評価。
××:2名以下が、なめらかであると評価。
<化粧持ち>
女性パネラー10名に、調製したスティック型口紅を塗布し、相対湿度70%、25℃の環境で5時間後の化粧持ちについて以下の基準で評価を行った。
○○:8名以上が、塗布時と変わらないと評価。
○:6〜7名が、塗布時と変わらないと評価。
×:3〜5名が、塗布時と変わらないと評価。
××:2名以下が、塗布時と変わらないと評価。
【0053】
表2に示すとおり、実施例1〜6は、いずれも本発明の課題を達成した。
これに対して、比較例1は、化合物6のオキシブチレン基の付加モル数が少ないため、分散および処方安定性に劣っていた。比較例2では、化合物7のAO質量比が低いために、分散および処方安定性、なめらかさに劣っていた。比較例3では、化合物8がオキシエチレン基のみであるため、いずれの評価項目において劣っていた。
【0054】
比較例4は、セスキオレイン酸ソルビタン、モノイソステアリン酸ジグリセリル、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(45モル)を配合しているが、分散および処方安定性に劣っていた。また、比較例5では、モノイソステアリン酸グリセリンを配合しているが、分散安定性に劣っていた。
さらに、ポリブチレングリコール(40モル)トリグリセリン(*1)を配合した比較例6では、分散安定性に劣っていた。
【化9】

【0055】
【表2】

【0056】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(a)を0.01〜30質量%、成分(b)を0.01〜10質量%、成分(c)を10〜95質量%、成分(d)を1〜50質量%含有することを特徴とする固型化粧料。
(a)下記式(1)により示されるポリアルキレングリコール誘導体。
【化10】

(式中、EOはオキシエチレン基であり、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基であり、EOとAOはブロック状に結合している。
aはEOの平均付加モル数であり、mはAOの平均付加モル数であり、aは0〜20であり、mは10〜100であり、EOとAOの合計質量を100質量部したときのAOの質量が50〜100質量部である。
は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアシル基である。)
(b)有機顔料
(c)エステル油、油脂およびロウ類からなる群より選ばれる1種以上の油剤
(d)25℃で固体状の炭化水素
【請求項2】
式(1)で示されるポリアルキレングリコール誘導体において、AOが1,2−ブチレンオキシド由来のオキシアルキレン基であることを特徴とする、請求項1記載の固型化粧料。
【請求項3】
式(1)で示されるポリアルキレングリコール誘導体において、EOとAOの合計質量を100質量部としたときのAOの質量が80〜100質量部であることを特徴とする、請求項1または2記載の固型化粧料。

【公開番号】特開2012−158549(P2012−158549A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19383(P2011−19383)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】