固定化微生物の製造方法、及びそれによって製造された固定化微生物、並びにその固定化微生物を用いた反応装置
【課題】材料濃度が7%以下の低濃度で重合することによって、材料濃度を低下でき、高活性で流動性のよい固定化微生物を提供するための製造方法と、それによって製造された固定化微生物、及びその固定化微生物を用いた反応装置を提供する。
【解決手段】分子量3500以上20000以下のプレポリマーと、分子量71以上で且つプレポリマー分子量の0.045以下の架橋剤と、微生物とを混合することによって、プレポリマーと架橋剤の合計濃度が1〜7%の懸濁液を作製し、その懸濁液を重合することによって固定化微生物を製造する。製造した固定化微生物は例えば担体として処理槽12内に投入され、生物処理に利用される。
【解決手段】分子量3500以上20000以下のプレポリマーと、分子量71以上で且つプレポリマー分子量の0.045以下の架橋剤と、微生物とを混合することによって、プレポリマーと架橋剤の合計濃度が1〜7%の懸濁液を作製し、その懸濁液を重合することによって固定化微生物を製造する。製造した固定化微生物は例えば担体として処理槽12内に投入され、生物処理に利用される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境保全のための下水や廃水の有機物処理や窒素除去、或いはアルコール発酵や有価物生産のための生体触媒として用いられる固定化微生物の製造方法、及びそれによって製造された固定化微生物、並びにその固定化微生物を用いた反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物を用いた反応は、環境浄化の分野や醗酵工業で用いられており、このうち環境浄化の分野では、有機成分の分解や窒素成分の除去に用いられている。特に、窒素成分は、下水や産業廃水中に、アンモニア性窒素、亜硝酸性窒素、硝酸性窒素、有機性窒素として含有されており、これらの窒素成分は、1.湖沼の富栄養化の原因になること、2.河川の溶存酸素の低下原因になること、などの理由で除去する必要がある。
【0003】
従来、この種の窒素成分を含有する廃水は、窒素成分が微量濃度であれば、イオン交換法を用いた除去、或いは塩素やオゾンによる酸化によって窒素の除去が行われる。また、中高濃度であれば生物処理が用いられ、生物処理においては好気硝化と嫌気脱窒による酸化脱窒法が用いられる(例えば特許文献1参照)。そして、好気硝化では、アンモニア酸化細菌(Nitrosomonas,Nitorosococcus,Nitrosospira,Nitrosolobus など)と亜硝酸酸化細菌によりアンモニア性窒素や亜硝酸性窒素の酸化が行われ、嫌気脱窒では、従属栄養細菌(Pseudomonas denitrificans など)による脱窒が行われる。好気硝化の生物反応槽は負荷0.2〜0.3kg-N/m3 /dayで運転され、脱窒は負荷0.2〜0.4kg-N/m3 /dayで運転される。したがって、下水の総窒素濃度40〜50mg/Lを処理するには、硝化槽で6〜8時間の滞留時間、脱窒槽で5〜8時間が必要であり、大規模な処理槽が必要であった。
【0004】
これらの反応を律速するのは微生物保持量であり、反応槽内に高濃度の微生物を保持することによって、高速の反応や浄化が可能となる。
【0005】
高濃度の微生物を保持する方法としては、高濃度の微生物を包括固定化した固定化微生物が開発されており、下水処理における窒素除去では、包括固定化した硝化細菌が用いられている。また、醗酵工業では固定化酵母を用いたアルコールの生産などに応用研究されている。
【0006】
微生物の固定化にはアルギン酸やカラギーナンなど天然材料、光硬化性樹脂やポリエチレングリコールアクリレートなど合成高分子が用いられている。また、微生物を固定化するには材料濃度を低濃度にし、含水率の高いゲルにした方が下記の点で好ましい。すなわち、1.微生物が増殖しやすく微生物保持量が増大し活性が大きくなる、2.材料が少なくてすむ、3.比重が低くなりエアレーション反応槽での流動性がよい、という理由である。
【0007】
ところで、アルギン酸やカラギーナンなど天然材料などは0.5〜1%程度でゲル化でき、包括固定が可能であるが、天然の高分子であるため、分解されやすく、物性的に担体の寿命が短いという欠点がある。これに対して、合成高分子は、微生物による分解劣化がなく、安定した物性を長期間維持できるというメリットがある。
【特許文献1】特開2000−288581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、合成高分子はゲル化するのに8%以上のプレポリマー濃度(材料濃度)が必要であり、プレポリマー濃度を低濃度にすることが不可能であった。特に、微生物を包括固定化するゲルにおいて、7%以下でゲル化する合成ポリマーを用いた重合方法はこれまで全くなかった。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みて成されたもので、材料濃度が7%以下の低濃度で重合することによって、材料を少なくでき、高活性で流動性のよい固定化微生物を提供するための製造方法と、それによって製造された固定化微生物、及びその固定化微生物を用いた反応装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は前記目的を達成するために、分子量3500以上20000以下のプレポリマーと、分子量が71以上で且つ前記プレポリマー分子量に対する比が0.045以下の架橋剤と、微生物とを混合することによって、前記プレポリマーと前記架橋剤の合計濃度が1%以上7%以下の懸濁液を作成し、該懸濁液を重合することによって、ポリマー内部に微生物を包括固定化した固定化微生物を製造することを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は前記目的を達成するために、分子量3500以上20000以下のプレポリマーと架橋剤とを、プレポリマー含量/架橋剤含量の比が0.5以上10以下になるように微生物と混合して、前記プレポリマーと前記架橋剤の合計濃度が1%以上7%以下の懸濁液を作製し、該懸濁液を重合することによって、ポリマー内部に微生物を包括固定化した固定化微生物を製造することを特徴とする。
【0012】
本発明の発明者は、固定化材料や架橋剤の分子量、固定化材料と架橋剤の合計濃度、固定化剤と架橋剤との比率などについて検討した結果、その相関関係を明らかにすることができ、プレポリマーと架橋剤との合計濃度が1〜7%の低濃度でゲル化できる領域を見いだした。すなわち、請求項1に記載の発明の如く、母剤となるプレポリマーの分子量と、架橋剤の分子量を規定することによって、プレポリマーと架橋剤の合計濃度(材料濃度)が1〜7%と極めて少ない濃度での固定化が可能になることを見いだした。また、請求項2に記載の発明の如く、プレポリマー含量/架橋剤含量の比が0.5以上10以下になるように微生物と混合し、重合することによって、プレポリマーと架橋剤の合計濃度(材料濃度)が1〜7%と極めて少ない濃度での固定化が可能になることを見いだした。したがって、請求項1又は2に記載の発明によれば、高活性で流動性の良い、安価な固定化微生物を提供することができる。なお、プレポリマー含量/架橋剤含量の比は、0.5以上6以下がより好ましい。また、プレポリマーの分子量は、5000以上18000以下がより好ましい。
【0013】
請求項3に記載の発明は請求項1又は2の発明において、前記架橋剤としてアクリルアミド、アクリル酸、ジメチルアクリルアミド、又はメタクリル酸を用いることを特徴とする。請求項3に記載の架橋剤は、本発明での架橋剤として最適なものを示しており、これらのモノマーは、反応性に富み、高分子母剤との組み合わせで、低濃度での固定化が可能となる。
【0014】
請求項4に記載の発明は請求項1〜3のいずれか1の発明において、前記微生物として活性汚泥を固定化することを特徴とする。このように活性汚泥を低濃度で固定化することによって、材料を少なくできるとともに、比重を低減でき、微生物の棲息領域を大きくすることができる。これにより、高活性で流動性の良い固定化微生物を提供できる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1の製造方法で製造された固定化微生物であることを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の固定化微生物を用いて生物反応を行う反応容器を備えたことを特徴とする反応装置。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項6の発明において、前記反応容器の内部には、前記固定化微生物を流動させる流動部を有し、該流動部と、該流動部の外部とを前記固定化微生物が移動することを特徴とする。上述した製造方法では、比重が1.01以下と非常に小さい固定化微生物を製造することができるので、担体を流動部とその外部とでスムーズに移動させることができる。よって、反応容器内における生物処理の処理性能を高めることができる。
【0018】
請求項8に記載の発明は請求項7の発明において、前記流動部は、曝気エア、又は無酸素ガス、或いは反応で生成する窒素ガスを用いて前記固定化微生物を流動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る固定化微生物の製造方法によれば、最適な分子量のプレポリマーや架橋剤を用いたり、或いはプレポリマーや架橋剤を適切な含量比で重合するようにしたので、材料濃度が極めて少ない濃度で微生物を固定化することができる。よって、材料を少なくでき、高活性で流動性のよい固定化微生物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面に従って本発明に係る固定化微生物の製造方法の好ましい実施形態について説明する。まず、本発明が成された根拠となった試験結果について説明する。
【0021】
(試験1)母剤としてポリエチレングリコールジアクリレートの分子量3000〜24000を用い、架橋剤としてアクリルアミドを用いた。そして、母剤、架橋剤、微生物等を混合し、母剤と架橋剤の合計濃度が3%になるように懸濁液を作製し、この懸濁液を重合ゲル化し、3mm角型担体に成形し、固定化微生物担体を製造した。その際の固定化剤の組成を表1に示す。
【0022】
【表1】
表1の組成で母剤と架橋剤との濃度比を変えながら担体を製造し、製造後の圧縮強度を測定し、母剤の分子量との関係を検討した。その検討結果を図1に示す。
【0023】
図1から分かるように、母剤の分子量が5000を下回ると担体の強度が低下しはじめ、3500を下回ると担体の強度が大きく低下している。これは、分子量が小さくなるほど担体の強度が低下するためで、分子量が3500を下回ると、担体の強度が著しく低下すると考えられる。
【0024】
母剤の分子量が18000を超えた場合にも担体の強度が低下しはじめ、分子量が20000を超えると担体の強度が著しく低下している。これは、母剤の分子量が20000を超えると、重合しにくくなるためであると考えられる。したがって、母剤の分子量は3500以上20000以下が好ましく、5000以上18000以下がより好ましいと考えられる。
【0025】
さらに図1から分かるように、母剤と架橋剤の濃度比は0.5以上10以下が良く、この範囲から外れると、担体強度が急激に低下している。したがって、母剤と架橋剤の比は0.5以上10以下が好ましく、0.5以上6以下がより好ましいと考えられる。
【0026】
なお、試験1で用いた種類の母剤を単独で(すなわち架橋剤なしで)重合使用とすると、分子量8000以上で重合しない。また分子量8000未満の場合は、含量8%以上で重合ゲル化できるが、試験1のように3%程度では重合できず、ゲル化しない。
【0027】
(試験2)次に架橋剤の分子量について検討した。試験1と同様に、母剤としてポリエチレングリコールジアクリレートの分子量3000〜24000を用いた。母剤と架橋剤の濃度比を4にし、架橋剤の分子量を変えて検討した。架橋剤はエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、アクリルアミドを用いることにより、分子量を変化させた。母剤と架橋剤の合計濃度は3%にして検討した。検討に用いた固定化剤の組成を表2に示す。
【0028】
【表2】
表2の組成で母剤と架橋剤の合計濃度を3%にして重合ゲル化し、3mm角型担体に成形し、圧縮強度を測定した。測定した圧縮強度と架橋剤の分子量との関係を図2に示す。図2から分かるように、母剤の分子量に対応して架橋剤の最適分子量が存在する。すなわち、担体の強度が大きくなるような架橋剤の分子量の範囲が存在している。表3に、母剤の各分子量での最適架橋剤分子量を示す。また、その結果から得られる母剤分子量と架橋剤分子量の最適範囲を図3に示す。
【0029】
【表3】
表3や図3から分かるように、担体の強度をだすためには、架橋剤の分子量を71以上にすることが好ましい。さらに、架橋剤の分子量は、母剤の分子量に対する比が0.045以下にすることが好ましい。母剤分子量や架橋剤分子量をこのように最適範囲内にすることによって、担体の強度を向上させることができる。
【0030】
(試験3)試験1、2で得られた最適条件をもとに材料濃度の最適値を検討した。母剤としてポリエチレングリコールジアクリレートの分子量3500〜20000を用い、架橋剤としてアクリルアミドを用いた。母剤と架橋剤の濃度比を4にし、合計材料濃度を0.5〜10%をパラメータにし、それぞれ固定化微生物を作製し、圧縮強度を測定した。検討に用いた固定化剤の組成を表4に示す。
【0031】
【表4】
また、測定した圧縮強度と固定化材料の合計濃度との関係を図4に示す。また、同図中に従来法として、ポリエチレングリコールジアクリレートの分子量2000、10000のみを用い、固定化した固定化微生物の圧縮強度も示す。この従来法での組成を表5に示す。
【0032】
【表5】
図4から分かるように、従来法では、固定化材料の濃度が10%以上でなければ、十分な強度が得られず、特に7%以下では全く強度が得られない。これは、従来法では高分子材料のみであるために重合しにくく、重合が安定しないためであると考えられる。
【0033】
これに対して本発明法では、低濃度でも十分な圧縮強度が得られており、圧縮強度が得られる濃度範囲としては、1%以上7%以下が好ましく、2%以上6%以下がより好ましく、3%以上4%以下がさらに好ましいことが分かる。これは、本発明法では低分子の架橋剤が入っているために低材料濃度でもプレポリマーの反応基が連鎖重合し、ゲル強度を向上させるためである。
【0034】
ところで、固定化する微生物としては純粋菌株、純粋な酵母などの真核生物、原核生物、活性汚泥などの混合微生物が用いられ、その総菌数は105 個/ml以上で固定化することが好ましい。担体内部の微生物数が106 個/ml以上になると活性が発現する。したがって、105 個/ml以上で固定化することによって、担体内部で106 個/ml以上に増殖し、活性が短期間で発現する。
【0035】
固定化する微生物の一例を示す。廃水処理では、(1)活性汚泥、硝化細菌群、脱窒細菌群、嫌気性アンモニア酸化細菌群などの複合微生物、(2)アオコ分解菌、PCB分解菌、ダイオキシン分解菌、環境ホルモン分解菌などの純粋微生物、などがある。
【0036】
醗酵工業では、(1)アミノ酸醗酵菌、(2)アルコール発酵微生物、(3)有機酸醗酵菌、(4)エステル交換酵素生産菌、などがある。
【0037】
図5に固定化材料の合計濃度と硝化速度の関係を示す。同図から分かるように、固定化材料濃度を下げると、活性が向上している。これは、固定化濃度が少なくなることによって生物の繁殖空間が広くなるためである。したがって、固定化材料の合計濃度を小さくすることによって、活性を向上できることが分かる。このような傾向は、後述する実施例の微生物や、その他の微生物においても見られた。
【0038】
なお、固定化微生物の形状は球状や筒状などの担体、ひも状材料、ゲル状担体、不織布状材料などの凹凸が多い形状に成形するとよい。また、担体としては1〜5mm角形や球状担体を用いるとよい。
【0039】
以上の検討結果から分かるように、分子量3500以上20000以下のプレポリマーと、架橋剤とを、プレポリマー含量/架橋剤含量の比が0.5以上10以下になるように微生物とを混合することによって、前記プレポリマーと前記架橋剤の合計濃度が1〜7%の懸濁液を作製し、該懸濁液を重合して固定化微生物担体を製造することによって、材料濃度が1〜7%と極めて少ない濃度での固定化が可能になる。また、架橋剤の分子量を71以上で、且つプレポリマー分子量の0.045以下とすることによって、担体の強度を向上させることができる。これにより、少ない材料で、高活性で流動性の良い固定化微生物を提供することができる。
【0040】
次に上述した製造方法で固定化微生物を製造する製造ラインの実施形態について説明する。図6は、角型の担体を製造する製造ラインを示す構成図であり、図7は球形の担体を製造する製造ラインの構成図である。
【0041】
図6に示す製造ライン100は、プレポリマ原料槽101、架橋材原料槽102を有し、このプレポリマ原料槽101と架橋材原料槽102から原料調整安定化槽103に原料が供給される。そして、原料調整安定化槽103で原料が混合され、プレポリマと架橋剤が絡み合い安定化する。この安定化操作により重合後の担体強度が向上する。この安定化には12〜24時間が必要とされる。この液に重合促進剤槽104からの重合促進剤が供給される。重合促進剤が供給された混合液は、原料調整安定化槽103から送り出され、この混合液に活性汚泥槽105の活性汚泥が供給され、さらに重合開始剤槽106の重合開始剤が供給された後、ラインミキサ107に送られる。そして、ラインミキサ107で混合された後、重合成形部108に供給され、重合成形部108で、重合された固定化微生物の裁断が行われ、角型の担体が成形される。成形された固定化微生物は、固定化微生物保管コンテナ109に送られ、保管される。
【0042】
このような製造ラインで上記の如く製造すると、少ない材料で高活性で流動性の良い固定化微生物を製造することができる。なお、活性汚泥中の微生物の活性維持のために原料調整安定化槽103中の原料液と活性汚泥との接触時間はできるだけ短い方が良い。
【0043】
一方、図7に示す製造ライン110は、アルギン酸ソーダ槽111を有し、原料調整安定化槽103から送られた混合液にアルギン酸ソーダを供給するようになっている。供給するアルギン酸ソーダは、混合液中濃度が0.1〜0.5%になるように供給することが好ましい。アルギン酸ソーダが供給された混合液は、重合開始剤が供給された後、ラインミキサ107によって混合される。ラインミキサ107の後段には滴下重合成形部112が設けられており、混合液を塩化カルシウム溶液に滴下して球形の担体を製造するようになっている。塩化カルシウム溶液の濃度は0.5〜5%が好ましく、このカルシウムの他はアルミニウム等を用いてもよい。
【0044】
上述した製造方法で製造された固定化微生物は、生物反応を行う反応容器を備えた反応装置で使用される。以下、反応装置の例として、廃水処理装置やアルコール発酵装置を説明する。
【0045】
図8は、廃水処理装置の第1の実施形態を示す構成図である。同図に示す廃水処理装置10は、処理槽12を有し、この処理槽12に原水導入管14が接続される。有機物を含有する廃水は、この原水導入管14から導入され、処理槽12に貯留される。処理槽12の内部には、曝気装置の散気管16が設けられており、この散気管16からエアが吹き出される。また、処理槽12の内部には、上述した方法で製造された固定化微生物担体(以下、担体という)22、22…が投入されている。この担体22が廃水と接触することによって、担体22内部の細菌が有機物を分解し、廃水が浄化される。浄化された処理水は担体分離網(スクリーン)18で担体22と分離され、流出管20から流出される。
【0046】
ところで、本発明の方法で製造された担体22は、上述したように、材料濃度が1〜7%と非常に小さいので、微生物の保持量が大きく、担体の活性が高い。したがって、この担体22を用いた廃水処理装置10は、高い処理性能が得られる。また、担体22は比重が小さく、流動性が良いので、曝気エアによって処理槽12内をスムーズに旋回する。したがって、処理槽12内に沈殿したり、滞留域を形成したりするおそれがなく、安定した処理性能を維持することができる。
【0047】
図9は、廃水処理装置の第2の実施形態を示す構成図である。同図に示す廃水処理装置30は、処理槽32の底面が片側の側面に向けて傾斜しており、その最下部に散気管16が設けられる。また、処理槽32には流出管20との接続部に仕切り板34が設けられ、この仕切り板34によって処理槽32の内部が下部を除いて仕切られている。なお、上述した第1の実施形態と同様の機能を有する部材については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0048】
上記の如く構成された廃水処理装置30は、担体22が、散気管16からの曝気エアとともに上昇し、仕切り板34付近で下降して処理槽32の底面に沿って散気管16側に流動し、再び曝気エアととも上昇して、処理槽32内を旋回する。すなわち、担体22は片側曝気の旋回流によって流動する。このような廃水処理装置30では、担体22が処理槽32内を確実に流動すること(すなわち担体22の流動性)が特に重要となる。本実施の形態の担体22は、前述したように固定化材料の合計濃度が1〜7%と小さく、比重を非常に小さくすることができる。具体的には、担体22の比重を1.005〜1.01と小さくすることができる。したがって、本発明の担体22を廃水処理装置30に用いると担体22の流動性が極めて良いため、高い処理性能を得ることができる。
【0049】
図10は、廃水処理装置の第3の実施形態を示す構成図である。同図に示す廃水処理装置40は、処理槽42の底面が中央に向けて両側から傾斜しており、その中央の最下部に散気管16が設けられている。また、処理槽42の中央部には、その周囲との仕切り板44、44が設けられており、この仕切り板44、44は、処理槽42の上部と下部を除いて仕切っている。処理槽42の両側面には流出管20、20が接続されており、各流出管20の近傍には仕切り板46、46が設けられ、処理槽42の上部が仕切られている。
【0050】
上記の如く構成された廃水処理装置40は、担体22が仕切り板44、44の内側を曝気エアとともに上昇した後、その仕切り板44、44の外側を下降し、処理槽42の底面に沿って移動し、再び曝気エアとともに上昇して、処理槽42内を旋回する。このような廃水処理装置40においても、担体22の流動性が非常に重要である。したがって、本発明の担体22を用いると、担体22の比重が1.005〜1.01と小さいので、流動性が極めてよく、処理性能を大幅に向上させることができる。
【0051】
図11は、廃水処理装置の第4の実施形態を示す構成図である。同図に示す廃水処理装置50は、原水導入管14が処理槽52の下端に接続され、流出管20が処理槽52の上部側面に接続される。また、処理槽52の内部には、処理槽52の内部を上下に分けるスクリーン54、54が設けられ、このスクリーン54、54の間に担体22、22…が充填されている。
【0052】
上記の如く構成された廃水処理装置50では、原水導入管14から導入された廃水が処理槽52の内部に上向流を形成し、充填部の担体22と接触して生物処理され、浄化される。そして、浄化された水が流出管20から流出される。このような廃水処理装置50においても、本発明の担体22を用いると、担体22の材料濃度が1〜7%と非常に小さいために担体22内の微生物が増殖しやすく活性が大きいので、高い処理性能を得ることができる。
【0053】
図12は、第5の実施形態の廃水処理装置を示す構成図である。同図に示す廃水処理装置60は、嫌気性反応での廃水処理を実施する装置であり、処理槽62の底面が中央に向けて両側から傾斜しており、その中央の最下部に散気管16が設けられている。散気管16からは無酸素ガスが吹き出され、吹き出された無酸素ガスは、処理槽62の上部に接続されたガス配管68から回収される。そして、ガス配管68に設けられたポンプ69を駆動することによって、処理槽62に繰り返し送られて循環利用される。なお、処理槽62の中央部には、その周囲との仕切り板64、64が設けられており、処理槽62の両側面の近傍には、仕切り板66、66が設けられている。
【0054】
上記の如く構成された廃水処理装置60では、散気管16から無酸素ガスが供給されているので、処理槽62の内部は嫌気条件下に保たれる。したがって、担体22内には嫌気性微生物が増殖し、この嫌気性微生物によって嫌気性処理が行われる。このような廃水処理装置60においても、本発明の担体22を用いると、担体22の材料濃度が1〜7%と非常に小さいために、担体22内の微生物が増殖しやすく活性が大きいので、高い処理性能を得ることができる。また、担体22の比重を1.005〜1.01と小さくすることができるので、少量のガス供給によるエアリフト効果で担体22を流動させることができる。
【0055】
図13は、固定化微生物を用いたアルコール発酵装置を示す構成図である。同図に示すアルコール発酵装置70は、発酵槽72を有し、この発酵槽72に原水導入管14が接続される。原水導入管14からは培養液(発酵原料)が流入され、この培養液が発酵槽72内に貯留される。発酵槽72の内部には、攪拌機の攪拌翼74が設けられ、この攪拌翼74を回転させることによって発酵槽72内を攪拌できるようになっている。また、発酵槽72の底部には、散気管16が設けられ、必要に応じてエアを曝気できるようになっている。さらに発酵槽72の内部には、本発明の方法で製造された担体22が投入されている。したがって、発酵槽72の内部では、担体22と培養液が接触し、担体22内の微生物が培養液の基質を資化又は同化し、発酵生産物が生成される。発酵生産物は担体分離網(スクリーン)18で担体22と分離され、流出管20から流出される。なお、本装置は連続式であるが、回分式での発酵装置でもよい。
【0056】
上記の如く構成されたアルコール発酵装置70においても、上述の担体22を用いると、担体22の比重が1.005〜1.01であり、少量のガス供給や攪拌で担体22が流動するため、担体22と基質との接触効率がよく、反応性が高い。
【0057】
図14は、本発朋の固定化微生物を用いるのに適した処理装置の構成図である。同図に示す処理装置80は、嫌気性アンモニア酸化槽82と、硝化槽84を有し、嫌気性アンモニア酸化槽82には原水導入管88が接続され、アンモニアと亜硝酸を含有する廃水が嫌気性アンモニア酸化槽82に導入される。嫌気性アンモニア酸化槽82の内部には、ひも状の固定化微生物担体が充填されている。廃水中の基質はひも状の担体と接触し、担体内の嫌気性アンモニア酸化細菌の働きでアンモニアと亜硝酸が同時に脱窒される。この嫌気性アンモニア酸化槽82の処理水は硝化槽84に流入され、残存するアンモニアは硝化槽84で酸化される。その処理水は沈殿池86で浮遊物質が固液分離され、上澄水が流出部90から流出される。なお、沈殿池88で沈降分離された活性汚泥の一部は、汚泥返送管92によって嫌気性アンモニア酸化槽82に返送される
上記の如く構成された処理装置80においても、本発明を用いて製造された固定化微生物を用いることによって、処理性能を向上させることができる。
【0058】
以下に本発明に使用できる固定化材料の母剤プレポリマーと架橋剤の具体例について説明する。
【0059】
(モノメタクリレート類)ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、3クロロ2ヒドロキシプロピルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、2ヒドロキシメタクリレート、エチルメタクリレート。
【0060】
(モノアクリレート類)2ヒドロキシエチルアクリレート、2ヒドロキシプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、tブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロへキシルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールアクリレート、シリコン変性アクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、アクリロイルアキシエチルハイドロジェンサクシネート、ラウリルアクリレート等。
【0061】
(ジメタクリレート類)1,3ブチレングリコールジメタクリレート、1,4ブタンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプレングリコールジメタクリレート、2ヒドロキシ1,3ジメタクリロキシプロパン、2,2ビス4メタクリロキシエトキシフェニルプロパン、3,2ビス4メタクリロキシジエトキシフェニルプロパン、2,2ビス4メタクリロキシポリエトキシフェニルプロパン等。
【0062】
(ジアクリレート類)エトキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2ビス4アクリロキシヒエトキシフェニルプロパン、2ヒドロキシ1アクリロキシ3メタクリロキシプロパン等。
【0063】
(トリメタクリレート類)トリメチロールプロパントリメタクリレート等。
【0064】
(トリアクリレート類)トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリ配慮アクリレート、トリメチロールプロパンEO付加トリアクリレート、グリセリンPO付加トリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート。
【0065】
(テトラアクリレート類)ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等。
【0066】
(ウレタンアクリレート類)ウレタンアクリレート、ウレタンジメチルアクリレート、ウレタントリメチルアクリレート等。
【0067】
(その他)アクリルアミド、アクリル酸、ジメチルアクリルアミド。
【0068】
また、本発明での重合は、過流酸カリウムを用いたラジカル重合が最適であるが、紫外線や電子線を用いた重合やレドックス重合でもよい。過流酸カリウムを用いた重合では、過流酸カリウムの添加量を0.001〜0.25%がよく、アミン系の重合促進剤を0.001〜0.5%添加するとよい。アミン系の重合促進剤としてはβジメチルアミノプロピオニトリル、NNN’N’テトラメチルエチレンジアミン、亜硫酸ソーダなどがよい。
【0069】
次に後述する実施例における酵母の計測方法を説明する。酵母培養用の使用培地を表6に示す。
【0070】
【表6】
表6の培地を用いて、希釈平板法で酵母を培養し、コロニーカウントし、酵母の個体数を計測した。包括担体についてはホモジナイズし、懸濁液を先と同様の培地を用い、個体数を計測した。一例として担体中の酵母個体数の換算方法は以下の式である。
【0071】
Xp=Xo×(Vp+Vw)/Vp
ここで、Xp:担体内部の酵母数(個/mL)、Xo:培地でコロニー形成した原液の酵母数(個/mL)、Vp:原液の作製に供試した担体量(mL)、Vw:原液の作製に加えた殺菌水液量(mL)。
【実施例1】
【0072】
表7の組成で固定化微生物担体を作製した。担体の大きさは3mm角とした。
【0073】
【表7】
この担体を図9の処理槽32内に、槽内担体充填率10%となるように投入した。そして、アンモニア性窒素100〜160mg/Lを含有する、無機の機械工場廃水を処理した。滞留時間は6時間とした。また、従来法として、表8の固定化微生物担体を3種類作製し、図9と同じ装置で同じ廃水を用い、滞留時間6時間で処理した。結果を表9に示す。
【0074】
【表8】
【0075】
【表9】
表9から分かるように、本法は、従来法1〜3と比較して、担体内部の硝化細菌数が非常に多くなっている。このため、本法は、硝化速度が早く、処理性能が非常に高い。したがって、処理水に含まれるアンモニア性窒素の濃度が非常に小さくなっている。
【実施例2】
【0076】
亜硝酸濃度200mg/L、アンモニア濃度250mg/Lの無機廃水を図14の装置で処理した。本実施例では以下のように固定化担体(包括固定化嫌気性アンモニア酸化細菌担体)を作製した。
【0077】
種汚泥はアンモニアと亜硝酸で集積培養し、得られた脱窒速度1.2kg−N/m3 /dayの能力をもった汚泥で、初期濃度8×108 cell/cm3 を固定化の種菌として供試した。種菌を遠心分離で回収し、この菌と活性汚泥を分子量8000のポリエチレングリコールジアクリレートと分子量260のポリエチレングリコールモノメタクリレートに懸濁し、過硫酸カリウムを添加することにより重合し、菌を包括したゲルを得た。それぞれの添加量は次のとおりである。
【0078】
嫌気性アンモニア酸化細菌:4×105 cell/cm3 、総菌数:3×108 cell/cm3 、ポリエチレングリコールジアクリレート:3%、ポリエチレングリコールジメタクリレート:2%、NNN' N' テトラメチルエチレンジアミン:0.05%、過硫酸カリウム:0.025%
このゲルを3mm径のひも状に成形し、ひも状固定化微生物を得た。この担体を図14の嫌気性アンモニア酸化槽82に20%充填した。硝化槽84には同様にして活性汚泥を固定化したひも状固定化微生物を得て、硝化槽に10%充填した。それぞれの槽の運転条件は次の通りである。
【0079】
嫌気性アンモニア酸化槽:滞留時間6時間で運転開始し、3時間で定常運転した。ひも状固定化微生物20%充填。
【0080】
硝化槽:滞留時間3時間、ひも状固定化微生物 20%充填。
【0081】
従来法として、種汚泥はアンモニアと亜硝酸で集積培養し得られた脱窒速度1.2kg−N/m3 /dayの能力をもった汚泥で、初期濃度8×108 cell/cm3 を固定化の種菌として供試した。種菌を遠心分離で回収し、この菌と活性汚泥を分子量1000のポリエチレングリコールジアクリレートに懸濁し、過硫酸カリウムを添加することにより重合し、菌を包括したゲルを得た。それぞれの添加量は次のとおりである。
【0082】
嫌気性アンモニア酸化細菌:4×105 cell/cm3 、総菌数:3×108 cell/cm3 、ポリエチレングリコールジアクリレート:15%、NNN' N' テトラメチルエチレンジアミン:0.5%、過硫酸カリウム:0.25%。
【0083】
このゲルを3mm径のひも状に成形し、ひも状固定化微生物を得た。そして、この担体を先と同様、図14の嫌気性アンモニア酸化槽82に20%充填した。硝化槽84には同様にして活性汚泥を固定化したひも状固定化微生物を得て、硝化槽に10%充填した。この装置で先と同様の運転条件で処理運転したものを従来法とした。処理結果を表10に示す。
【0084】
【表10】
表10から分かるように、本法では、従来法よりも嫌気性アンモニア酸化菌濃度が大きくなっている。これは、本発明の固定化微生物は、固定化剤濃度が低いので、菌の生息空間が大きく菌保持量が高くなるためである。したがって、本法では、従来法よりも、水質の高い処理水が得られている。なお、本法では、架橋剤を用いているために、十分な圧縮強度が得られている。
【実施例3】
【0085】
固定化微生物をアルコール発酵に用いた例を示す。アルコール発酵用の酵母はSaccharomyces cerevisiae OC2を用いた。この酵母を分子量12000のペンタエリスリトールテトラアクリレートとジメチルアクリルアミドとの混合液に懸濁し、NNN’N’テトラメチルエチレンジアミンと過硫酸カリウムを添加することにより重合し、菌を包括したゲルを得た。それぞれの添加量は次のとおりである。
【0086】
酵母:2×107 cell/cm3 、ペンタエリスリトールテトラアクリレート:2%、ジメチルアクリルアミド:2%、NNN’N’テトラメチルエチレンジアミン:0.05%、過硫酸カリウム:0.025%
このゲルを3mm角の担体に成形し、固定化微生物を得た。そして、この担体を図13の醗酵槽72に投入し、表11の培地で培養した。当初3日間は回分培養で2vvmで通気し酵母を増殖させた。その後、通気を止め60rpmで撹拌しながら培地を連続投入し培養した。滞留時間8時間から徐々に滞留時間を短くし、滞留時間3時間での運転を定常状とし、そのときの収率を求めた。酵母の個体数は、先に述べたように、表6の培地で希釈平板し、培養後、コロニーカウントし計測した。
【0087】
【表11】
以上述べたものを本法Aとした。同様にして架橋剤としてアクリル酸を用いたものを本法Bとした。同様にして架橋剤としてメタクリル酸を用いたものを本法Cとした。これら架橋剤濃度は先と同様、2%である。
【0088】
また、従来法として、下記組成で固定化した3mm角の固定化微生物を作製し、同じ条件で培養し検討した。アルコール発酵用の酵母はSaccharomyces cerevisiae OC2を用い、この酵母を分子量1000のポリエチレングリコールアクリレートとアクリルアミドの混合液に懸濁し、NNN’N’テトラメチルエチレンジアミンと過硫酸カリウムを添加することにより重合し、菌を包括した従来法でのゲルを得た。それぞれの添加量は次のとおりである。
【0089】
酵母:2×107 cell/cm3 、ポリエチレングリコールアクリレート:16%、アクリルアミド:2%、NNN’N’テトラメチルエチレンジアミン:0.05%、過硫酸カリウム:0.025%
醗酵試験結果を表12に示す。
【0090】
【表12】
表12から分かるように、本法A、B、Cは従来法よりも酵母の個体数が多くなっている。これは、本法の方がゲル濃度が低いためであり、酵母の増殖率が良く、高いエタノール収率を得ることができる。また、本法A、B、Cは、ゲル強度が高く担体物性が安定しいてる。このため、6ケ月運転した場合にも活性と物性の変化はなかった。これに対して従来法では強度が弱く、5ケ月後に担体の磨耗が見られた。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】試験1の結果から得られた母剤の分子量と圧縮強度との関係を示す図
【図2】試験2の結果から得られた架橋剤の分子量と圧縮強度との関係を示す図
【図3】母剤の分子量と架橋剤の分子量の最適範囲を示す図
【図4】試験3の結果から得られた固定化材料の合計濃度と圧縮強度との関係を示す図
【図5】試験4の結果から得られた固定化材料の合計濃度と硝化速度との関係を示す図
【図6】本発明に係る製造方法が適用された製造ラインの実施形態を示す構成図
【図7】本発明に係る製造方法が適用された製造ラインの実施形態を示す構成図
【図8】本発明の固定化微生物担体が使用される廃水処理装置の第1の実施形態を示す構成図
【図9】本発明の固定化微生物担体が使用される廃水処理装置の第2の実施形態を示す構成図
【図10】本発明の固定化微生物担体が使用される廃水処理装置の第3の実施形態を示す構成図
【図11】本発明の固定化微生物担体が使用される廃水処理装置の第4の実施形態を示す構成図
【図12】本発明の固定化微生物担体が使用される廃水処理装置の第5の実施形態を示す構成図
【図13】本発明の固定化微生物を用いたアルコール発酵装置を示す構成図
【図14】本発朋の固定化微生物を用いるのに適した処理装置の構成図
【符号の説明】
【0092】
10…廃水処理装置、12…処理槽、14…原水導入管、16…散気管、18…担体分離網、20…流出管、22…担体
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境保全のための下水や廃水の有機物処理や窒素除去、或いはアルコール発酵や有価物生産のための生体触媒として用いられる固定化微生物の製造方法、及びそれによって製造された固定化微生物、並びにその固定化微生物を用いた反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物を用いた反応は、環境浄化の分野や醗酵工業で用いられており、このうち環境浄化の分野では、有機成分の分解や窒素成分の除去に用いられている。特に、窒素成分は、下水や産業廃水中に、アンモニア性窒素、亜硝酸性窒素、硝酸性窒素、有機性窒素として含有されており、これらの窒素成分は、1.湖沼の富栄養化の原因になること、2.河川の溶存酸素の低下原因になること、などの理由で除去する必要がある。
【0003】
従来、この種の窒素成分を含有する廃水は、窒素成分が微量濃度であれば、イオン交換法を用いた除去、或いは塩素やオゾンによる酸化によって窒素の除去が行われる。また、中高濃度であれば生物処理が用いられ、生物処理においては好気硝化と嫌気脱窒による酸化脱窒法が用いられる(例えば特許文献1参照)。そして、好気硝化では、アンモニア酸化細菌(Nitrosomonas,Nitorosococcus,Nitrosospira,Nitrosolobus など)と亜硝酸酸化細菌によりアンモニア性窒素や亜硝酸性窒素の酸化が行われ、嫌気脱窒では、従属栄養細菌(Pseudomonas denitrificans など)による脱窒が行われる。好気硝化の生物反応槽は負荷0.2〜0.3kg-N/m3 /dayで運転され、脱窒は負荷0.2〜0.4kg-N/m3 /dayで運転される。したがって、下水の総窒素濃度40〜50mg/Lを処理するには、硝化槽で6〜8時間の滞留時間、脱窒槽で5〜8時間が必要であり、大規模な処理槽が必要であった。
【0004】
これらの反応を律速するのは微生物保持量であり、反応槽内に高濃度の微生物を保持することによって、高速の反応や浄化が可能となる。
【0005】
高濃度の微生物を保持する方法としては、高濃度の微生物を包括固定化した固定化微生物が開発されており、下水処理における窒素除去では、包括固定化した硝化細菌が用いられている。また、醗酵工業では固定化酵母を用いたアルコールの生産などに応用研究されている。
【0006】
微生物の固定化にはアルギン酸やカラギーナンなど天然材料、光硬化性樹脂やポリエチレングリコールアクリレートなど合成高分子が用いられている。また、微生物を固定化するには材料濃度を低濃度にし、含水率の高いゲルにした方が下記の点で好ましい。すなわち、1.微生物が増殖しやすく微生物保持量が増大し活性が大きくなる、2.材料が少なくてすむ、3.比重が低くなりエアレーション反応槽での流動性がよい、という理由である。
【0007】
ところで、アルギン酸やカラギーナンなど天然材料などは0.5〜1%程度でゲル化でき、包括固定が可能であるが、天然の高分子であるため、分解されやすく、物性的に担体の寿命が短いという欠点がある。これに対して、合成高分子は、微生物による分解劣化がなく、安定した物性を長期間維持できるというメリットがある。
【特許文献1】特開2000−288581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、合成高分子はゲル化するのに8%以上のプレポリマー濃度(材料濃度)が必要であり、プレポリマー濃度を低濃度にすることが不可能であった。特に、微生物を包括固定化するゲルにおいて、7%以下でゲル化する合成ポリマーを用いた重合方法はこれまで全くなかった。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みて成されたもので、材料濃度が7%以下の低濃度で重合することによって、材料を少なくでき、高活性で流動性のよい固定化微生物を提供するための製造方法と、それによって製造された固定化微生物、及びその固定化微生物を用いた反応装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は前記目的を達成するために、分子量3500以上20000以下のプレポリマーと、分子量が71以上で且つ前記プレポリマー分子量に対する比が0.045以下の架橋剤と、微生物とを混合することによって、前記プレポリマーと前記架橋剤の合計濃度が1%以上7%以下の懸濁液を作成し、該懸濁液を重合することによって、ポリマー内部に微生物を包括固定化した固定化微生物を製造することを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は前記目的を達成するために、分子量3500以上20000以下のプレポリマーと架橋剤とを、プレポリマー含量/架橋剤含量の比が0.5以上10以下になるように微生物と混合して、前記プレポリマーと前記架橋剤の合計濃度が1%以上7%以下の懸濁液を作製し、該懸濁液を重合することによって、ポリマー内部に微生物を包括固定化した固定化微生物を製造することを特徴とする。
【0012】
本発明の発明者は、固定化材料や架橋剤の分子量、固定化材料と架橋剤の合計濃度、固定化剤と架橋剤との比率などについて検討した結果、その相関関係を明らかにすることができ、プレポリマーと架橋剤との合計濃度が1〜7%の低濃度でゲル化できる領域を見いだした。すなわち、請求項1に記載の発明の如く、母剤となるプレポリマーの分子量と、架橋剤の分子量を規定することによって、プレポリマーと架橋剤の合計濃度(材料濃度)が1〜7%と極めて少ない濃度での固定化が可能になることを見いだした。また、請求項2に記載の発明の如く、プレポリマー含量/架橋剤含量の比が0.5以上10以下になるように微生物と混合し、重合することによって、プレポリマーと架橋剤の合計濃度(材料濃度)が1〜7%と極めて少ない濃度での固定化が可能になることを見いだした。したがって、請求項1又は2に記載の発明によれば、高活性で流動性の良い、安価な固定化微生物を提供することができる。なお、プレポリマー含量/架橋剤含量の比は、0.5以上6以下がより好ましい。また、プレポリマーの分子量は、5000以上18000以下がより好ましい。
【0013】
請求項3に記載の発明は請求項1又は2の発明において、前記架橋剤としてアクリルアミド、アクリル酸、ジメチルアクリルアミド、又はメタクリル酸を用いることを特徴とする。請求項3に記載の架橋剤は、本発明での架橋剤として最適なものを示しており、これらのモノマーは、反応性に富み、高分子母剤との組み合わせで、低濃度での固定化が可能となる。
【0014】
請求項4に記載の発明は請求項1〜3のいずれか1の発明において、前記微生物として活性汚泥を固定化することを特徴とする。このように活性汚泥を低濃度で固定化することによって、材料を少なくできるとともに、比重を低減でき、微生物の棲息領域を大きくすることができる。これにより、高活性で流動性の良い固定化微生物を提供できる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1の製造方法で製造された固定化微生物であることを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の固定化微生物を用いて生物反応を行う反応容器を備えたことを特徴とする反応装置。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項6の発明において、前記反応容器の内部には、前記固定化微生物を流動させる流動部を有し、該流動部と、該流動部の外部とを前記固定化微生物が移動することを特徴とする。上述した製造方法では、比重が1.01以下と非常に小さい固定化微生物を製造することができるので、担体を流動部とその外部とでスムーズに移動させることができる。よって、反応容器内における生物処理の処理性能を高めることができる。
【0018】
請求項8に記載の発明は請求項7の発明において、前記流動部は、曝気エア、又は無酸素ガス、或いは反応で生成する窒素ガスを用いて前記固定化微生物を流動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る固定化微生物の製造方法によれば、最適な分子量のプレポリマーや架橋剤を用いたり、或いはプレポリマーや架橋剤を適切な含量比で重合するようにしたので、材料濃度が極めて少ない濃度で微生物を固定化することができる。よって、材料を少なくでき、高活性で流動性のよい固定化微生物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面に従って本発明に係る固定化微生物の製造方法の好ましい実施形態について説明する。まず、本発明が成された根拠となった試験結果について説明する。
【0021】
(試験1)母剤としてポリエチレングリコールジアクリレートの分子量3000〜24000を用い、架橋剤としてアクリルアミドを用いた。そして、母剤、架橋剤、微生物等を混合し、母剤と架橋剤の合計濃度が3%になるように懸濁液を作製し、この懸濁液を重合ゲル化し、3mm角型担体に成形し、固定化微生物担体を製造した。その際の固定化剤の組成を表1に示す。
【0022】
【表1】
表1の組成で母剤と架橋剤との濃度比を変えながら担体を製造し、製造後の圧縮強度を測定し、母剤の分子量との関係を検討した。その検討結果を図1に示す。
【0023】
図1から分かるように、母剤の分子量が5000を下回ると担体の強度が低下しはじめ、3500を下回ると担体の強度が大きく低下している。これは、分子量が小さくなるほど担体の強度が低下するためで、分子量が3500を下回ると、担体の強度が著しく低下すると考えられる。
【0024】
母剤の分子量が18000を超えた場合にも担体の強度が低下しはじめ、分子量が20000を超えると担体の強度が著しく低下している。これは、母剤の分子量が20000を超えると、重合しにくくなるためであると考えられる。したがって、母剤の分子量は3500以上20000以下が好ましく、5000以上18000以下がより好ましいと考えられる。
【0025】
さらに図1から分かるように、母剤と架橋剤の濃度比は0.5以上10以下が良く、この範囲から外れると、担体強度が急激に低下している。したがって、母剤と架橋剤の比は0.5以上10以下が好ましく、0.5以上6以下がより好ましいと考えられる。
【0026】
なお、試験1で用いた種類の母剤を単独で(すなわち架橋剤なしで)重合使用とすると、分子量8000以上で重合しない。また分子量8000未満の場合は、含量8%以上で重合ゲル化できるが、試験1のように3%程度では重合できず、ゲル化しない。
【0027】
(試験2)次に架橋剤の分子量について検討した。試験1と同様に、母剤としてポリエチレングリコールジアクリレートの分子量3000〜24000を用いた。母剤と架橋剤の濃度比を4にし、架橋剤の分子量を変えて検討した。架橋剤はエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、アクリルアミドを用いることにより、分子量を変化させた。母剤と架橋剤の合計濃度は3%にして検討した。検討に用いた固定化剤の組成を表2に示す。
【0028】
【表2】
表2の組成で母剤と架橋剤の合計濃度を3%にして重合ゲル化し、3mm角型担体に成形し、圧縮強度を測定した。測定した圧縮強度と架橋剤の分子量との関係を図2に示す。図2から分かるように、母剤の分子量に対応して架橋剤の最適分子量が存在する。すなわち、担体の強度が大きくなるような架橋剤の分子量の範囲が存在している。表3に、母剤の各分子量での最適架橋剤分子量を示す。また、その結果から得られる母剤分子量と架橋剤分子量の最適範囲を図3に示す。
【0029】
【表3】
表3や図3から分かるように、担体の強度をだすためには、架橋剤の分子量を71以上にすることが好ましい。さらに、架橋剤の分子量は、母剤の分子量に対する比が0.045以下にすることが好ましい。母剤分子量や架橋剤分子量をこのように最適範囲内にすることによって、担体の強度を向上させることができる。
【0030】
(試験3)試験1、2で得られた最適条件をもとに材料濃度の最適値を検討した。母剤としてポリエチレングリコールジアクリレートの分子量3500〜20000を用い、架橋剤としてアクリルアミドを用いた。母剤と架橋剤の濃度比を4にし、合計材料濃度を0.5〜10%をパラメータにし、それぞれ固定化微生物を作製し、圧縮強度を測定した。検討に用いた固定化剤の組成を表4に示す。
【0031】
【表4】
また、測定した圧縮強度と固定化材料の合計濃度との関係を図4に示す。また、同図中に従来法として、ポリエチレングリコールジアクリレートの分子量2000、10000のみを用い、固定化した固定化微生物の圧縮強度も示す。この従来法での組成を表5に示す。
【0032】
【表5】
図4から分かるように、従来法では、固定化材料の濃度が10%以上でなければ、十分な強度が得られず、特に7%以下では全く強度が得られない。これは、従来法では高分子材料のみであるために重合しにくく、重合が安定しないためであると考えられる。
【0033】
これに対して本発明法では、低濃度でも十分な圧縮強度が得られており、圧縮強度が得られる濃度範囲としては、1%以上7%以下が好ましく、2%以上6%以下がより好ましく、3%以上4%以下がさらに好ましいことが分かる。これは、本発明法では低分子の架橋剤が入っているために低材料濃度でもプレポリマーの反応基が連鎖重合し、ゲル強度を向上させるためである。
【0034】
ところで、固定化する微生物としては純粋菌株、純粋な酵母などの真核生物、原核生物、活性汚泥などの混合微生物が用いられ、その総菌数は105 個/ml以上で固定化することが好ましい。担体内部の微生物数が106 個/ml以上になると活性が発現する。したがって、105 個/ml以上で固定化することによって、担体内部で106 個/ml以上に増殖し、活性が短期間で発現する。
【0035】
固定化する微生物の一例を示す。廃水処理では、(1)活性汚泥、硝化細菌群、脱窒細菌群、嫌気性アンモニア酸化細菌群などの複合微生物、(2)アオコ分解菌、PCB分解菌、ダイオキシン分解菌、環境ホルモン分解菌などの純粋微生物、などがある。
【0036】
醗酵工業では、(1)アミノ酸醗酵菌、(2)アルコール発酵微生物、(3)有機酸醗酵菌、(4)エステル交換酵素生産菌、などがある。
【0037】
図5に固定化材料の合計濃度と硝化速度の関係を示す。同図から分かるように、固定化材料濃度を下げると、活性が向上している。これは、固定化濃度が少なくなることによって生物の繁殖空間が広くなるためである。したがって、固定化材料の合計濃度を小さくすることによって、活性を向上できることが分かる。このような傾向は、後述する実施例の微生物や、その他の微生物においても見られた。
【0038】
なお、固定化微生物の形状は球状や筒状などの担体、ひも状材料、ゲル状担体、不織布状材料などの凹凸が多い形状に成形するとよい。また、担体としては1〜5mm角形や球状担体を用いるとよい。
【0039】
以上の検討結果から分かるように、分子量3500以上20000以下のプレポリマーと、架橋剤とを、プレポリマー含量/架橋剤含量の比が0.5以上10以下になるように微生物とを混合することによって、前記プレポリマーと前記架橋剤の合計濃度が1〜7%の懸濁液を作製し、該懸濁液を重合して固定化微生物担体を製造することによって、材料濃度が1〜7%と極めて少ない濃度での固定化が可能になる。また、架橋剤の分子量を71以上で、且つプレポリマー分子量の0.045以下とすることによって、担体の強度を向上させることができる。これにより、少ない材料で、高活性で流動性の良い固定化微生物を提供することができる。
【0040】
次に上述した製造方法で固定化微生物を製造する製造ラインの実施形態について説明する。図6は、角型の担体を製造する製造ラインを示す構成図であり、図7は球形の担体を製造する製造ラインの構成図である。
【0041】
図6に示す製造ライン100は、プレポリマ原料槽101、架橋材原料槽102を有し、このプレポリマ原料槽101と架橋材原料槽102から原料調整安定化槽103に原料が供給される。そして、原料調整安定化槽103で原料が混合され、プレポリマと架橋剤が絡み合い安定化する。この安定化操作により重合後の担体強度が向上する。この安定化には12〜24時間が必要とされる。この液に重合促進剤槽104からの重合促進剤が供給される。重合促進剤が供給された混合液は、原料調整安定化槽103から送り出され、この混合液に活性汚泥槽105の活性汚泥が供給され、さらに重合開始剤槽106の重合開始剤が供給された後、ラインミキサ107に送られる。そして、ラインミキサ107で混合された後、重合成形部108に供給され、重合成形部108で、重合された固定化微生物の裁断が行われ、角型の担体が成形される。成形された固定化微生物は、固定化微生物保管コンテナ109に送られ、保管される。
【0042】
このような製造ラインで上記の如く製造すると、少ない材料で高活性で流動性の良い固定化微生物を製造することができる。なお、活性汚泥中の微生物の活性維持のために原料調整安定化槽103中の原料液と活性汚泥との接触時間はできるだけ短い方が良い。
【0043】
一方、図7に示す製造ライン110は、アルギン酸ソーダ槽111を有し、原料調整安定化槽103から送られた混合液にアルギン酸ソーダを供給するようになっている。供給するアルギン酸ソーダは、混合液中濃度が0.1〜0.5%になるように供給することが好ましい。アルギン酸ソーダが供給された混合液は、重合開始剤が供給された後、ラインミキサ107によって混合される。ラインミキサ107の後段には滴下重合成形部112が設けられており、混合液を塩化カルシウム溶液に滴下して球形の担体を製造するようになっている。塩化カルシウム溶液の濃度は0.5〜5%が好ましく、このカルシウムの他はアルミニウム等を用いてもよい。
【0044】
上述した製造方法で製造された固定化微生物は、生物反応を行う反応容器を備えた反応装置で使用される。以下、反応装置の例として、廃水処理装置やアルコール発酵装置を説明する。
【0045】
図8は、廃水処理装置の第1の実施形態を示す構成図である。同図に示す廃水処理装置10は、処理槽12を有し、この処理槽12に原水導入管14が接続される。有機物を含有する廃水は、この原水導入管14から導入され、処理槽12に貯留される。処理槽12の内部には、曝気装置の散気管16が設けられており、この散気管16からエアが吹き出される。また、処理槽12の内部には、上述した方法で製造された固定化微生物担体(以下、担体という)22、22…が投入されている。この担体22が廃水と接触することによって、担体22内部の細菌が有機物を分解し、廃水が浄化される。浄化された処理水は担体分離網(スクリーン)18で担体22と分離され、流出管20から流出される。
【0046】
ところで、本発明の方法で製造された担体22は、上述したように、材料濃度が1〜7%と非常に小さいので、微生物の保持量が大きく、担体の活性が高い。したがって、この担体22を用いた廃水処理装置10は、高い処理性能が得られる。また、担体22は比重が小さく、流動性が良いので、曝気エアによって処理槽12内をスムーズに旋回する。したがって、処理槽12内に沈殿したり、滞留域を形成したりするおそれがなく、安定した処理性能を維持することができる。
【0047】
図9は、廃水処理装置の第2の実施形態を示す構成図である。同図に示す廃水処理装置30は、処理槽32の底面が片側の側面に向けて傾斜しており、その最下部に散気管16が設けられる。また、処理槽32には流出管20との接続部に仕切り板34が設けられ、この仕切り板34によって処理槽32の内部が下部を除いて仕切られている。なお、上述した第1の実施形態と同様の機能を有する部材については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0048】
上記の如く構成された廃水処理装置30は、担体22が、散気管16からの曝気エアとともに上昇し、仕切り板34付近で下降して処理槽32の底面に沿って散気管16側に流動し、再び曝気エアととも上昇して、処理槽32内を旋回する。すなわち、担体22は片側曝気の旋回流によって流動する。このような廃水処理装置30では、担体22が処理槽32内を確実に流動すること(すなわち担体22の流動性)が特に重要となる。本実施の形態の担体22は、前述したように固定化材料の合計濃度が1〜7%と小さく、比重を非常に小さくすることができる。具体的には、担体22の比重を1.005〜1.01と小さくすることができる。したがって、本発明の担体22を廃水処理装置30に用いると担体22の流動性が極めて良いため、高い処理性能を得ることができる。
【0049】
図10は、廃水処理装置の第3の実施形態を示す構成図である。同図に示す廃水処理装置40は、処理槽42の底面が中央に向けて両側から傾斜しており、その中央の最下部に散気管16が設けられている。また、処理槽42の中央部には、その周囲との仕切り板44、44が設けられており、この仕切り板44、44は、処理槽42の上部と下部を除いて仕切っている。処理槽42の両側面には流出管20、20が接続されており、各流出管20の近傍には仕切り板46、46が設けられ、処理槽42の上部が仕切られている。
【0050】
上記の如く構成された廃水処理装置40は、担体22が仕切り板44、44の内側を曝気エアとともに上昇した後、その仕切り板44、44の外側を下降し、処理槽42の底面に沿って移動し、再び曝気エアとともに上昇して、処理槽42内を旋回する。このような廃水処理装置40においても、担体22の流動性が非常に重要である。したがって、本発明の担体22を用いると、担体22の比重が1.005〜1.01と小さいので、流動性が極めてよく、処理性能を大幅に向上させることができる。
【0051】
図11は、廃水処理装置の第4の実施形態を示す構成図である。同図に示す廃水処理装置50は、原水導入管14が処理槽52の下端に接続され、流出管20が処理槽52の上部側面に接続される。また、処理槽52の内部には、処理槽52の内部を上下に分けるスクリーン54、54が設けられ、このスクリーン54、54の間に担体22、22…が充填されている。
【0052】
上記の如く構成された廃水処理装置50では、原水導入管14から導入された廃水が処理槽52の内部に上向流を形成し、充填部の担体22と接触して生物処理され、浄化される。そして、浄化された水が流出管20から流出される。このような廃水処理装置50においても、本発明の担体22を用いると、担体22の材料濃度が1〜7%と非常に小さいために担体22内の微生物が増殖しやすく活性が大きいので、高い処理性能を得ることができる。
【0053】
図12は、第5の実施形態の廃水処理装置を示す構成図である。同図に示す廃水処理装置60は、嫌気性反応での廃水処理を実施する装置であり、処理槽62の底面が中央に向けて両側から傾斜しており、その中央の最下部に散気管16が設けられている。散気管16からは無酸素ガスが吹き出され、吹き出された無酸素ガスは、処理槽62の上部に接続されたガス配管68から回収される。そして、ガス配管68に設けられたポンプ69を駆動することによって、処理槽62に繰り返し送られて循環利用される。なお、処理槽62の中央部には、その周囲との仕切り板64、64が設けられており、処理槽62の両側面の近傍には、仕切り板66、66が設けられている。
【0054】
上記の如く構成された廃水処理装置60では、散気管16から無酸素ガスが供給されているので、処理槽62の内部は嫌気条件下に保たれる。したがって、担体22内には嫌気性微生物が増殖し、この嫌気性微生物によって嫌気性処理が行われる。このような廃水処理装置60においても、本発明の担体22を用いると、担体22の材料濃度が1〜7%と非常に小さいために、担体22内の微生物が増殖しやすく活性が大きいので、高い処理性能を得ることができる。また、担体22の比重を1.005〜1.01と小さくすることができるので、少量のガス供給によるエアリフト効果で担体22を流動させることができる。
【0055】
図13は、固定化微生物を用いたアルコール発酵装置を示す構成図である。同図に示すアルコール発酵装置70は、発酵槽72を有し、この発酵槽72に原水導入管14が接続される。原水導入管14からは培養液(発酵原料)が流入され、この培養液が発酵槽72内に貯留される。発酵槽72の内部には、攪拌機の攪拌翼74が設けられ、この攪拌翼74を回転させることによって発酵槽72内を攪拌できるようになっている。また、発酵槽72の底部には、散気管16が設けられ、必要に応じてエアを曝気できるようになっている。さらに発酵槽72の内部には、本発明の方法で製造された担体22が投入されている。したがって、発酵槽72の内部では、担体22と培養液が接触し、担体22内の微生物が培養液の基質を資化又は同化し、発酵生産物が生成される。発酵生産物は担体分離網(スクリーン)18で担体22と分離され、流出管20から流出される。なお、本装置は連続式であるが、回分式での発酵装置でもよい。
【0056】
上記の如く構成されたアルコール発酵装置70においても、上述の担体22を用いると、担体22の比重が1.005〜1.01であり、少量のガス供給や攪拌で担体22が流動するため、担体22と基質との接触効率がよく、反応性が高い。
【0057】
図14は、本発朋の固定化微生物を用いるのに適した処理装置の構成図である。同図に示す処理装置80は、嫌気性アンモニア酸化槽82と、硝化槽84を有し、嫌気性アンモニア酸化槽82には原水導入管88が接続され、アンモニアと亜硝酸を含有する廃水が嫌気性アンモニア酸化槽82に導入される。嫌気性アンモニア酸化槽82の内部には、ひも状の固定化微生物担体が充填されている。廃水中の基質はひも状の担体と接触し、担体内の嫌気性アンモニア酸化細菌の働きでアンモニアと亜硝酸が同時に脱窒される。この嫌気性アンモニア酸化槽82の処理水は硝化槽84に流入され、残存するアンモニアは硝化槽84で酸化される。その処理水は沈殿池86で浮遊物質が固液分離され、上澄水が流出部90から流出される。なお、沈殿池88で沈降分離された活性汚泥の一部は、汚泥返送管92によって嫌気性アンモニア酸化槽82に返送される
上記の如く構成された処理装置80においても、本発明を用いて製造された固定化微生物を用いることによって、処理性能を向上させることができる。
【0058】
以下に本発明に使用できる固定化材料の母剤プレポリマーと架橋剤の具体例について説明する。
【0059】
(モノメタクリレート類)ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、3クロロ2ヒドロキシプロピルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、2ヒドロキシメタクリレート、エチルメタクリレート。
【0060】
(モノアクリレート類)2ヒドロキシエチルアクリレート、2ヒドロキシプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、tブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロへキシルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールアクリレート、シリコン変性アクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、アクリロイルアキシエチルハイドロジェンサクシネート、ラウリルアクリレート等。
【0061】
(ジメタクリレート類)1,3ブチレングリコールジメタクリレート、1,4ブタンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプレングリコールジメタクリレート、2ヒドロキシ1,3ジメタクリロキシプロパン、2,2ビス4メタクリロキシエトキシフェニルプロパン、3,2ビス4メタクリロキシジエトキシフェニルプロパン、2,2ビス4メタクリロキシポリエトキシフェニルプロパン等。
【0062】
(ジアクリレート類)エトキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2ビス4アクリロキシヒエトキシフェニルプロパン、2ヒドロキシ1アクリロキシ3メタクリロキシプロパン等。
【0063】
(トリメタクリレート類)トリメチロールプロパントリメタクリレート等。
【0064】
(トリアクリレート類)トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリ配慮アクリレート、トリメチロールプロパンEO付加トリアクリレート、グリセリンPO付加トリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート。
【0065】
(テトラアクリレート類)ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等。
【0066】
(ウレタンアクリレート類)ウレタンアクリレート、ウレタンジメチルアクリレート、ウレタントリメチルアクリレート等。
【0067】
(その他)アクリルアミド、アクリル酸、ジメチルアクリルアミド。
【0068】
また、本発明での重合は、過流酸カリウムを用いたラジカル重合が最適であるが、紫外線や電子線を用いた重合やレドックス重合でもよい。過流酸カリウムを用いた重合では、過流酸カリウムの添加量を0.001〜0.25%がよく、アミン系の重合促進剤を0.001〜0.5%添加するとよい。アミン系の重合促進剤としてはβジメチルアミノプロピオニトリル、NNN’N’テトラメチルエチレンジアミン、亜硫酸ソーダなどがよい。
【0069】
次に後述する実施例における酵母の計測方法を説明する。酵母培養用の使用培地を表6に示す。
【0070】
【表6】
表6の培地を用いて、希釈平板法で酵母を培養し、コロニーカウントし、酵母の個体数を計測した。包括担体についてはホモジナイズし、懸濁液を先と同様の培地を用い、個体数を計測した。一例として担体中の酵母個体数の換算方法は以下の式である。
【0071】
Xp=Xo×(Vp+Vw)/Vp
ここで、Xp:担体内部の酵母数(個/mL)、Xo:培地でコロニー形成した原液の酵母数(個/mL)、Vp:原液の作製に供試した担体量(mL)、Vw:原液の作製に加えた殺菌水液量(mL)。
【実施例1】
【0072】
表7の組成で固定化微生物担体を作製した。担体の大きさは3mm角とした。
【0073】
【表7】
この担体を図9の処理槽32内に、槽内担体充填率10%となるように投入した。そして、アンモニア性窒素100〜160mg/Lを含有する、無機の機械工場廃水を処理した。滞留時間は6時間とした。また、従来法として、表8の固定化微生物担体を3種類作製し、図9と同じ装置で同じ廃水を用い、滞留時間6時間で処理した。結果を表9に示す。
【0074】
【表8】
【0075】
【表9】
表9から分かるように、本法は、従来法1〜3と比較して、担体内部の硝化細菌数が非常に多くなっている。このため、本法は、硝化速度が早く、処理性能が非常に高い。したがって、処理水に含まれるアンモニア性窒素の濃度が非常に小さくなっている。
【実施例2】
【0076】
亜硝酸濃度200mg/L、アンモニア濃度250mg/Lの無機廃水を図14の装置で処理した。本実施例では以下のように固定化担体(包括固定化嫌気性アンモニア酸化細菌担体)を作製した。
【0077】
種汚泥はアンモニアと亜硝酸で集積培養し、得られた脱窒速度1.2kg−N/m3 /dayの能力をもった汚泥で、初期濃度8×108 cell/cm3 を固定化の種菌として供試した。種菌を遠心分離で回収し、この菌と活性汚泥を分子量8000のポリエチレングリコールジアクリレートと分子量260のポリエチレングリコールモノメタクリレートに懸濁し、過硫酸カリウムを添加することにより重合し、菌を包括したゲルを得た。それぞれの添加量は次のとおりである。
【0078】
嫌気性アンモニア酸化細菌:4×105 cell/cm3 、総菌数:3×108 cell/cm3 、ポリエチレングリコールジアクリレート:3%、ポリエチレングリコールジメタクリレート:2%、NNN' N' テトラメチルエチレンジアミン:0.05%、過硫酸カリウム:0.025%
このゲルを3mm径のひも状に成形し、ひも状固定化微生物を得た。この担体を図14の嫌気性アンモニア酸化槽82に20%充填した。硝化槽84には同様にして活性汚泥を固定化したひも状固定化微生物を得て、硝化槽に10%充填した。それぞれの槽の運転条件は次の通りである。
【0079】
嫌気性アンモニア酸化槽:滞留時間6時間で運転開始し、3時間で定常運転した。ひも状固定化微生物20%充填。
【0080】
硝化槽:滞留時間3時間、ひも状固定化微生物 20%充填。
【0081】
従来法として、種汚泥はアンモニアと亜硝酸で集積培養し得られた脱窒速度1.2kg−N/m3 /dayの能力をもった汚泥で、初期濃度8×108 cell/cm3 を固定化の種菌として供試した。種菌を遠心分離で回収し、この菌と活性汚泥を分子量1000のポリエチレングリコールジアクリレートに懸濁し、過硫酸カリウムを添加することにより重合し、菌を包括したゲルを得た。それぞれの添加量は次のとおりである。
【0082】
嫌気性アンモニア酸化細菌:4×105 cell/cm3 、総菌数:3×108 cell/cm3 、ポリエチレングリコールジアクリレート:15%、NNN' N' テトラメチルエチレンジアミン:0.5%、過硫酸カリウム:0.25%。
【0083】
このゲルを3mm径のひも状に成形し、ひも状固定化微生物を得た。そして、この担体を先と同様、図14の嫌気性アンモニア酸化槽82に20%充填した。硝化槽84には同様にして活性汚泥を固定化したひも状固定化微生物を得て、硝化槽に10%充填した。この装置で先と同様の運転条件で処理運転したものを従来法とした。処理結果を表10に示す。
【0084】
【表10】
表10から分かるように、本法では、従来法よりも嫌気性アンモニア酸化菌濃度が大きくなっている。これは、本発明の固定化微生物は、固定化剤濃度が低いので、菌の生息空間が大きく菌保持量が高くなるためである。したがって、本法では、従来法よりも、水質の高い処理水が得られている。なお、本法では、架橋剤を用いているために、十分な圧縮強度が得られている。
【実施例3】
【0085】
固定化微生物をアルコール発酵に用いた例を示す。アルコール発酵用の酵母はSaccharomyces cerevisiae OC2を用いた。この酵母を分子量12000のペンタエリスリトールテトラアクリレートとジメチルアクリルアミドとの混合液に懸濁し、NNN’N’テトラメチルエチレンジアミンと過硫酸カリウムを添加することにより重合し、菌を包括したゲルを得た。それぞれの添加量は次のとおりである。
【0086】
酵母:2×107 cell/cm3 、ペンタエリスリトールテトラアクリレート:2%、ジメチルアクリルアミド:2%、NNN’N’テトラメチルエチレンジアミン:0.05%、過硫酸カリウム:0.025%
このゲルを3mm角の担体に成形し、固定化微生物を得た。そして、この担体を図13の醗酵槽72に投入し、表11の培地で培養した。当初3日間は回分培養で2vvmで通気し酵母を増殖させた。その後、通気を止め60rpmで撹拌しながら培地を連続投入し培養した。滞留時間8時間から徐々に滞留時間を短くし、滞留時間3時間での運転を定常状とし、そのときの収率を求めた。酵母の個体数は、先に述べたように、表6の培地で希釈平板し、培養後、コロニーカウントし計測した。
【0087】
【表11】
以上述べたものを本法Aとした。同様にして架橋剤としてアクリル酸を用いたものを本法Bとした。同様にして架橋剤としてメタクリル酸を用いたものを本法Cとした。これら架橋剤濃度は先と同様、2%である。
【0088】
また、従来法として、下記組成で固定化した3mm角の固定化微生物を作製し、同じ条件で培養し検討した。アルコール発酵用の酵母はSaccharomyces cerevisiae OC2を用い、この酵母を分子量1000のポリエチレングリコールアクリレートとアクリルアミドの混合液に懸濁し、NNN’N’テトラメチルエチレンジアミンと過硫酸カリウムを添加することにより重合し、菌を包括した従来法でのゲルを得た。それぞれの添加量は次のとおりである。
【0089】
酵母:2×107 cell/cm3 、ポリエチレングリコールアクリレート:16%、アクリルアミド:2%、NNN’N’テトラメチルエチレンジアミン:0.05%、過硫酸カリウム:0.025%
醗酵試験結果を表12に示す。
【0090】
【表12】
表12から分かるように、本法A、B、Cは従来法よりも酵母の個体数が多くなっている。これは、本法の方がゲル濃度が低いためであり、酵母の増殖率が良く、高いエタノール収率を得ることができる。また、本法A、B、Cは、ゲル強度が高く担体物性が安定しいてる。このため、6ケ月運転した場合にも活性と物性の変化はなかった。これに対して従来法では強度が弱く、5ケ月後に担体の磨耗が見られた。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】試験1の結果から得られた母剤の分子量と圧縮強度との関係を示す図
【図2】試験2の結果から得られた架橋剤の分子量と圧縮強度との関係を示す図
【図3】母剤の分子量と架橋剤の分子量の最適範囲を示す図
【図4】試験3の結果から得られた固定化材料の合計濃度と圧縮強度との関係を示す図
【図5】試験4の結果から得られた固定化材料の合計濃度と硝化速度との関係を示す図
【図6】本発明に係る製造方法が適用された製造ラインの実施形態を示す構成図
【図7】本発明に係る製造方法が適用された製造ラインの実施形態を示す構成図
【図8】本発明の固定化微生物担体が使用される廃水処理装置の第1の実施形態を示す構成図
【図9】本発明の固定化微生物担体が使用される廃水処理装置の第2の実施形態を示す構成図
【図10】本発明の固定化微生物担体が使用される廃水処理装置の第3の実施形態を示す構成図
【図11】本発明の固定化微生物担体が使用される廃水処理装置の第4の実施形態を示す構成図
【図12】本発明の固定化微生物担体が使用される廃水処理装置の第5の実施形態を示す構成図
【図13】本発明の固定化微生物を用いたアルコール発酵装置を示す構成図
【図14】本発朋の固定化微生物を用いるのに適した処理装置の構成図
【符号の説明】
【0092】
10…廃水処理装置、12…処理槽、14…原水導入管、16…散気管、18…担体分離網、20…流出管、22…担体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量3500以上20000以下のプレポリマーと、分子量が71以上で且つ前記プレポリマー分子量に対する比が0.045以下の架橋剤と、微生物とを混合することによって、前記プレポリマーと前記架橋剤の合計濃度が1%以上7%以下の懸濁液を作成し、
該懸濁液を重合することによって、ポリマー内部に微生物を包括固定化した固定化微生物を製造することを特徴とする固定化微生物の製造方法。
【請求項2】
分子量3500以上20000以下のプレポリマーと架橋剤とを、プレポリマー含量/架橋剤含量の比が0.5以上10以下になるように微生物と混合して、前記プレポリマーと前記架橋剤の合計濃度が1%以上7%以下の懸濁液を作製し、
該懸濁液を重合することによって、ポリマー内部に微生物を包括固定化した固定化微生物を製造することを特徴とする固定化微生物の製造方法。
【請求項3】
前記架橋剤としてアクリルアミド、アクリル酸、ジメチルアクリルアミド、又はメタクリル酸を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の固定化微生物の製造方法。
【請求項4】
前記微生物として活性汚泥を固定化することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の固定化微生物の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1に記載の製造方法で製造されたことを特徴とする固定化微生物。
【請求項6】
請求項5に記載の固定化微生物を用いて生物反応を行う反応容器を備えたことを特徴とする反応装置。
【請求項7】
前記反応容器の内部には、前記固定化微生物を流動させる流動部を有し、該流動部と、該流動部の外部とを前記固定化微生物が移動することを特徴とする請求項6に記載の反応装置。
【請求項8】
前記流動部は、曝気エア、又は無酸素ガス、或いは反応で生成する窒素ガスを用いて前記固定化微生物を流動させることを特徴とする請求項7に記載の反応装置。
【請求項1】
分子量3500以上20000以下のプレポリマーと、分子量が71以上で且つ前記プレポリマー分子量に対する比が0.045以下の架橋剤と、微生物とを混合することによって、前記プレポリマーと前記架橋剤の合計濃度が1%以上7%以下の懸濁液を作成し、
該懸濁液を重合することによって、ポリマー内部に微生物を包括固定化した固定化微生物を製造することを特徴とする固定化微生物の製造方法。
【請求項2】
分子量3500以上20000以下のプレポリマーと架橋剤とを、プレポリマー含量/架橋剤含量の比が0.5以上10以下になるように微生物と混合して、前記プレポリマーと前記架橋剤の合計濃度が1%以上7%以下の懸濁液を作製し、
該懸濁液を重合することによって、ポリマー内部に微生物を包括固定化した固定化微生物を製造することを特徴とする固定化微生物の製造方法。
【請求項3】
前記架橋剤としてアクリルアミド、アクリル酸、ジメチルアクリルアミド、又はメタクリル酸を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の固定化微生物の製造方法。
【請求項4】
前記微生物として活性汚泥を固定化することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の固定化微生物の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1に記載の製造方法で製造されたことを特徴とする固定化微生物。
【請求項6】
請求項5に記載の固定化微生物を用いて生物反応を行う反応容器を備えたことを特徴とする反応装置。
【請求項7】
前記反応容器の内部には、前記固定化微生物を流動させる流動部を有し、該流動部と、該流動部の外部とを前記固定化微生物が移動することを特徴とする請求項6に記載の反応装置。
【請求項8】
前記流動部は、曝気エア、又は無酸素ガス、或いは反応で生成する窒素ガスを用いて前記固定化微生物を流動させることを特徴とする請求項7に記載の反応装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−61097(P2006−61097A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−248574(P2004−248574)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(000005452)日立プラント建設株式会社 (1,767)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(000005452)日立プラント建設株式会社 (1,767)
【Fターム(参考)】
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