固定子、回転電機及び圧縮機
【課題】シャフトの一方側の端部のみで支持されているラジアルギャップ型の回転電機に搭載される固定子において、製造コストの著しい増大を招来することなく、騒音や振動を回避又は抑制する技術を提供する。
【解決手段】インナーロータ型回転電機に搭載される固定子8のコア80は、径方向Rの最も内側の辺縁たる最内縁を規定する第2の辺縁F2と、径方向Rの最も外側の辺縁たる最外縁を規定する第3の辺縁F3とを呈する。第2の辺縁F2とその径方向R外側の第3の辺縁F3との間のコア80の径方向Rにおける厚みは、軸受1側よりも軸受1側とは反対側において、より小さい。また、第1の辺縁F1は、平面視で、軸受1側と、軸受1側とは反対側とで同じ曲率の円弧D1,D2を呈する。
【解決手段】インナーロータ型回転電機に搭載される固定子8のコア80は、径方向Rの最も内側の辺縁たる最内縁を規定する第2の辺縁F2と、径方向Rの最も外側の辺縁たる最外縁を規定する第3の辺縁F3とを呈する。第2の辺縁F2とその径方向R外側の第3の辺縁F3との間のコア80の径方向Rにおける厚みは、軸受1側よりも軸受1側とは反対側において、より小さい。また、第1の辺縁F1は、平面視で、軸受1側と、軸受1側とは反対側とで同じ曲率の円弧D1,D2を呈する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定子、回転電機及び圧縮機に関し、特にラジアルギャップ型の回転電機に搭載される固定子及び回転電機と、これを搭載した圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラジアルギャップ型回転電機は、電機子と、界磁子とを備えており、これらは所定の回転軸を法線とする面内において当該回転軸と略同心を呈している。そして界磁子が当該回転軸を中心に回転するシャフトに固定されて回転する回転子として、電機子が界磁子の外側で固定子として、それぞれ採用される。このようなラジアルギャップ型回転電機において、当該シャフトの一方側の端部のみを支持する技術が提案されており、下記特許文献1ないし特許文献4等に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭59−122777号公報
【特許文献2】実開平2−022083号公報
【特許文献3】実開平2−068645号公報
【特許文献4】実開平1−123458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シャフトの一方側の端部のみを支持する態様では、回転電機の運転中にシャフトの他方側の端部が振れ回ることになる。特に、当該シャフトに固定されている回転子の重心が回転軸から離れた位置にある場合、例えば当該回転電機が圧縮機に搭載されていて圧縮機構を動作させるために回転子の重心が必然的に回転軸から離れた位置にある場合には、大きく振れ回ることになる。そのため、回転子と固定子との間のエアギャップは、静止時よりも運転時の方が小さくなり、騒音や振動の原因となるため、上記特許文献1等では、シャフトの他方側の端部ほど回転子を細くすることによって運転中の回転子と固定子との接触を回避又は抑制している。また、回転軸に沿った方向の全体にわたってエアギャップを大きくすることなく、回転子と固定子とが接触することを回避している。また、上記特許文献3では、固定子の回転子と対向する面が傾斜又は段差を呈して、シャフトの他方側の端部におけるエアギャップを大きくとることによって運転中の回転子と固定子との接触を回避又は抑制している。
【0005】
これらの技術を施した態様は、騒音や振動を回避又は抑制する点ではなるほど理想的ではあるが、実際に製造する場合には、当該技術を施さない場合に比して製造コストの増大が著しい。例えば、回転子及び固定子のうち互いに対向する面を傾斜させる場合には、回転子及び/又は固定子の互いに対向する面を、回転軸の延在方向(以下、「軸方向」とも称する)のうち傾斜面を呈する領域全体にわたって連続的に変化させなければならず、製造コストの増大を招来する。特に、固定子の軸方向に垂直な断面を軸方向に沿って同心円状に変化させるような場合には、互いに径が異なる円形の金型を用意するか又は金型で打抜かれた鋼板の複数を積層した後に外形を切削する必要があり、いずれも製造コストの増大は著しい。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、シャフトの一方側の端部のみで支持されているラジアルギャップ型の回転電機に搭載される固定子において、製造コストの著しい増大を招来することなく、騒音や振動を回避又は抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明に係る固定子の第1の態様は、軸方向(A)に平行な回転軸(Q)に沿って延在し、前記軸方向の一方側たる軸方向一方側で前記回転軸を軸として回転自在に固定される一端と、前記軸方向の他方側たる軸方向他方側にあって固定されない他端とを有するシャフト(2)に固定される回転子に、前記回転軸を中心とする径方向(R)に沿った空隙を介して対向する第1の辺縁(F1)を呈する固定子(8,8C)であって、予め定められた形状に打抜かれた鋼板(72,72A−72E)の複数を前記鋼板が呈する面の法線方向を前記軸方向に平行に積層して形成されるコア(80,80A−80E)を備え、前記コアは、前記径方向の最も内側の辺縁たる最内縁を規定する第2の辺縁(F2)と、前記径方向の最も外側の辺縁たる最外縁を規定する第3の辺縁(F3)とを呈し、前記第2の辺縁とその前記径方向外側の前記第3の辺縁との間の前記コアの前記径方向における厚みは、前記軸方向一方側端部よりも前記軸方向他方側端部において、より小さく、前記第1の辺縁は、前記軸方向からの平面視で、前記軸方向一方側端部と前記軸方向他方側端部とで同じ曲率の円弧を呈する、固定子である。
【0008】
本発明に係る固定子の第2の態様は、その第1の態様であって、前記コア(80,80A−80E)は、前記回転軸(Q)を中心とする周方向(θ)に並んで前記径方向(R)に沿って延在する径方向延在部(82a−82i,82Aa−82Ai,82Ba−82Bi,82Ca−82Ci,82Da−82Di,82Ea−82Ei)の複数と、前記径方向延在部それぞれの前記径方向の一方側たる径方向一方側で前記軸方向(A)及び前記径方向のいずれにも垂直な方向に沿って前記径方向延在部から張り出して延在する張出部(84a−84i,84Aa−84Ai,84Ba−84Bi,84Ca−84Ci,84Da−84Di,84Ea−84Ei)の複数とを呈する。
【0009】
本発明に係る固定子の第3の態様は、その第2の態様であって、前記コア(80A,80C)は、前記周方向(θ)で隣接する分割体(80Aa−80Ai,80Da−80Di)の複数を有し、前記分割体のそれぞれは前記径方向延在部(82Aa−82Ai,82Da−82Di)の少なくとも一つを呈する。
【0010】
本発明に係る固定子の第4の態様は、その第2の態様であって、前記周方向(θ)で隣接する二つの前記分割体(80Ba−80Bi,80Ea−80Ei)が協働して一の前記径方向延在部(82Ba−82Bi,82Ea−82Ei)及び一の前記張出部(84Ba−84Bi,84Ea−84Ei)を呈する。
【0011】
本発明に係る固定子の第5の態様は、その第2又は第3の態様であって、前記コア(80,80A,80B)は前記空隙を介して前記回転子を囲む。
【0012】
本発明に係る固定子の第6の態様は、その第3ないし第5の態様であって、前記分割体(80Aa−80Ai,80Da−80Di)の前記第1の辺縁は、前記軸方向他方側端部において前記平面視で前記回転軸(Q)を焦点とする第1の円弧(D1)を呈し、前記軸方向一方側端部において前記第1の円弧よりも前記回転子側で前記第1の円弧に平行な第2の円弧(D2)を呈し、前記第1の円弧及び前記第2の円弧が前記空隙を介して前記回転子と対向する。
【0013】
本発明に係る固定子の第7の態様は、その第3又は第4の態様であって、前記コア(80C,80D,80E)は、前記空隙を介して前記回転子に囲まれる。
【0014】
本発明に係る固定子の第8の態様は、その第7の態様であって、前記分割体(80Ea−80Ei)は、前記軸方向一方側端部において前記平面視で前記回転軸(Q)を焦点とする第3の円弧(D3)を呈し、前記軸方向他方側端部において前記第3の円弧よりも前記回転子側で前記第3の円弧に平行な第4の円弧(D4)を呈し、前記第3の円弧及び前記第4の円弧が前記空隙を介して前記回転子と対向する。
【0015】
本発明に係る回転電機の第1の態様は、上記第1ないし第8の態様いずれかの固定子(8,8C)と、前記シャフト(2)と、前記シャフトに固定されて前記空隙を介して前記固定子と対向する前記回転子(4,4A)とを備える回転電機(10,10A)であって、前記回転子は、前記軸方向(A)からの平面視で前記回転軸(Q)とは離れた第1の位置(Pw1)に重心をもつ錘(20)を有する、回転電機である。
【0016】
本発明に係る圧縮機の第1の態様は、上記第1の態様の回転電機(10,10A)を搭載する圧縮機(100,100A)であって、前記シャフト(2)が回転するときの重心は前記回転軸(Q)とは離れた第2の位置(Pw2)にある、圧縮機である。
【発明の効果】
【0017】
シャフトの延在方向の一端のみが固定されて、当該延在方向を回転軸として当該シャフトが回転するとき、当該シャフトに固定された回転子は当該延在方向の他端側で大きく振れる。本発明に係る固定子の第1の態様によれば、回転子が回転しても、回転子と固定子とが接触することを回避又は抑制できる。もって、騒音や振動又は破損を回避又は抑制できる。また、第1の辺縁が同じ曲率の円弧を呈するので、鋼板を打抜く金型の数を抑制できる。
【0018】
本発明に係る固定子の第2の態様によれば、径方向延在部が電機子巻線を巻回するための巻回部として機能し、張出部が電機子巻線の巻崩れを防止するので、騒音や振動又は破損を回避又は抑制できる回転電機を得ることに資する。さらに、張出部の巻回部側は、段差のない形態とすることにより、電機子巻線の整列巻を容易にする。
【0019】
本発明に係る固定子の第3の態様によれば、径方向延在部に電機子巻線を巻回した分割体同士を接合することにより電機子を形成できるので、分割体を接合してから電機子巻線を巻回する場合よりも容易に回転電機を製造できる。また、分割体を形成する金型の形状を簡素にしてかつ、打抜く位置を調整可能な金型の種類の数を抑制できる。
【0020】
本発明に係る固定子の第4の態様によれば、分割体同士が電機子巻線によって固定されることになるので、分割体同士を強固に固定できる。
【0021】
本発明に係る固定子の第5の態様によれば、固定子の固定が容易でかつ、回転子をシャフトに固定しやすいインナーロータ型回転電機を得ることに資する。
【0022】
本発明に係る固定子の第6の態様によれば、回転子との間のエアギャップを抑制することに資するとともに、ティース中心ほどエアギャップを狭くし、端部ほどエアギャップを広くできるため、コギングトルクの低減に資する。
【0023】
本発明に係る固定子の第7の態様によれば、インナーロータ型回転電機よりも高トルクな回転電機を得ることに資する。
【0024】
本発明に係る固定子の第8の態様によれば、回転子との間のエアギャップを抑制することに資するとともに、ティース中心ほどエアギャップを狭くし、端部ほどエアギャップを広くできるため、コギングトルクの低減に資する。
【0025】
本発明に係る回転電機の第1の態様によれば、回転子のアンバランスを低減し、振れ回り量を低減する。
【0026】
本発明に係る圧縮機の第1の態様によれば、騒音や振動の少ない圧縮機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る固定子を備えるインナーロータ型回転電機を搭載した圧縮機の縦断面図である。
【図2】固定子のコアの平面図である。
【図3】固定子のコアの製造工程を説明する図である。
【図4】金型の動きを説明する図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る固定子のコアの平面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る固定子のコアの分割体の斜視図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る固定子のコアの平面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る固定子のコアの分割体の斜視図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係る固定子を備えるアウターロータ型回転電機を搭載した圧縮機の縦断面図である。
【図10】固定子のコアの平面図である。
【図11】固定子のコアの製造工程を説明する図である。
【図12】本発明の第5の実施形態に係る固定子のコアの平面図である。
【図13】本発明の第5の実施形態に係る固定子のコアの分割体の斜視図である。
【図14】本発明の第6の実施形態に係る固定子のコアの平面図である。
【図15】本発明の第6の実施形態に係る固定子のコアの分割体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図1を初めとする以下の図には、本発明に関係する要素のみを示す。
【0029】
〈第1の実施形態〉
〈装置構成〉
図1に示すように、固定子8は、シャフト2及び回転子4とともにインナーロータ型回転電機10を構成する。インナーロータ型回転電機10は、圧縮機100に搭載される。ここで、図1は、圧縮機100の縦断面図であり、シャフト2の延在方向に平行な方向での断面図を示している。
【0030】
図1に示すように、シャフト2は、軸方向Aに平行な回転軸Qに沿って延在し、軸方向Aの一方側で回転軸Qを軸として回転自在に固定される一端と、軸方向Aの他方側にあって固定されない他端とを有する。具体的には、シャフト2はその延在方向の一方側で軸受1に回転自在に固定される。以下、軸方向Aの一方側を「軸受1側」とも称し、軸方向Aの他方側を「軸受1側とは反対側」とも称する。
【0031】
回転子4は、シャフト2に固定されて、回転軸Qを中心とする径方向Rに沿った空隙を介して固定子6と対向する。回転子4は例えばIPMロータが採用される。具体的には、回転子4は、軸方向Aに貫通する孔52の複数を呈し、孔52のそれぞれの内部に、磁極面を、回転軸Qを中心とする径方向Rに向けて埋込まれる界磁磁石50の複数を備える。これにより省エネルギー、高効率、高トルクモータを得ることができる。また、固定子6の固定が容易でかつ、回転子4をシャフト2に固定しやすく、騒音や振動を回避又は抑制できるインナーロータ型回転電機を得ることができる。なお、回転子4は必ずしもIPMロータである必要はなく、シンクロナスリラクタンスモータのロータ(図示省略)であっても良い。
【0032】
シャフト2の軸受1側は、圧縮機100のピストン91に接続されている。また、回転子4の軸受1側には、錘22が取付けられている。これにより、シャフト2の回転重心は必然的に軸方向Aからの平面視(以下、単に「平面視」とも称する)で回転軸Qから離れた位置(課題を解決するための手段における「第2の位置」)Pw2にある。位置Pw2が回転軸Qから離れるほど、高さ寸法を小さくしても大きなモーメントを得ることができるため、錘22の軸方向Aに沿った高さ寸法を小さくできる。錘22は、圧縮機中の油を撹拌するため、当該高さ寸法は、圧縮効率の高低に寄与する。そのため、高い圧縮効率を得ようとすると位置Pw2は回転軸Qから大きく離れることになり、アンバランスとなる。錘22は、シャフト2及び回転子4の過度なアンバランスを解消する。ただし、シャフト2及び回転子4の重心は、回転子4に錘22が取付けられてもなお、回転軸Qからはやや離れている。
【0033】
回転子4の軸受1側とは反対側には、平面視で、回転軸Qから離れて、回転軸Qに対して位置Pw2とは反対側の位置(課題を解決するための手段における「第1の位置」)Pw1に重心をもつ錘20を有する。錘20は、錘22及び、ピストン91とあわせて、シャフト2及び回転子4の回転重心位置の調整及び、動バランスの調整を行うバランスウェイトとして機能する。シャフト2及び回転子4の重心位置の調整だけであれば、錘22とピストン91を、180°異なる方向に、同一のモーメントとすればいいが、これでは、回転したときに、軸が傾き、振れ周りが大きくなるという課題を有する。この課題の一部を軽減するために、第2の錘20を設けている。理想的にはシャフト2が剛体であり、寸法は組立て精度にバラツキがなければ、第2の錘20を設けることにより、振れ回りはほぼゼロとなるが、実際には剛体ではないため、振れ回りはゼロとならない。
【0034】
固定子8は、電機子巻線71を有し、径方向Rに沿った空隙を介して回転子4を囲んで回転子4と対向する第1の辺縁F1を呈する。また、固定子8は、予め定められた形状に打抜かれた鋼板72の複数を鋼板72が呈する面の法線方向を軸方向Aに平行に積層して形成されるコア80を備えている。なお、本願では特に断りのない限り、電機子巻線は、これを構成する導線の一本一本を指すのではなく、導線が一纏まりに巻回された態様を指す。これは図面においても同様である。また、巻始め及び巻終わりの引出線及び、それらの結線も図面においては省略した。
【0035】
図2に示すように、コア80は、径方向Rの最も内側の辺縁たる最内縁を規定する第2の辺縁F2と、径方向Rの最も外側の辺縁たる最外縁を規定する第3の辺縁F3とを呈する。インナーロータ型回転電機10においては、辺縁F2は辺縁F1に一致する。第2の辺縁F2とその径方向R外側の第3の辺縁F3との間のコア80の径方向Rにおける厚みは、軸受1側よりも軸受1側とは反対側において、より小さい。また、第1の辺縁F1は、平面視で、軸受1側と、軸受1側とは反対側とで同じ曲率の円弧D1,D2を呈する。なお、図2では、固定子8の径方向R内側で固定子8と対向する回転子4の径方向R外側の辺縁41を一点鎖線で示している。
【0036】
コア80は、回転軸Qを中心とする周方向(以下、単に「周方向」とも称する)θに並んで径方向Rに沿って延在する複数の径方向延在部82a−82iと、径方向延在部82a−82iそれぞれの径方向Rの一方側たる径方向一方側で軸方向A及び径方向Rのいずれにも垂直な方向(以下、「幅方向」とも称する)に沿って径方向延在部82a−82iから張り出して延在する張出部84a−84iの複数とを呈する。
【0037】
具体的には、コア80は、平面視で回転軸Qを中心とする環状を呈する環状部81と、周方向θで等間隔に環状部81から回転軸Qへと向かって延在する複数の径方向延在部82a−82iと、径方向延在部82a−82iそれぞれの環状部81側とは反対側(回転軸Q側)の端部で、幅方向に沿って張り出す複数の張出部84a−84iとを呈する。
【0038】
環状部81は、径方向延在部82a−82iそれぞれを互いに連結するヨークとして機能する。径方向延在部82a−82iのそれぞれは、電機子巻線71を巻回するための芯として機能する。張出部84a−84iのそれぞれは、回転子4と固定子8との間の磁束の流れを促し、電機子巻線71が回転軸Q側へと移動することを抑止する。張出部84a−84iそれぞれの回転軸Q側が辺縁F1,F2に相当し、軸方向Aのいずれの位置においても、平面視で同じ曲率の円弧を呈する。具体的には、軸受1側とは反対側の辺縁F21は回転軸Qを焦点とする円弧形状D1を呈し、軸受1側の辺縁F22は円弧形状D1と同じ曲率を呈して回転軸Qから辺縁F22とは反対側に予め定められた距離だけ移動した位置に焦点FD2を有する円弧形状D2を呈する。
【0039】
径方向延在部82a−82iそれぞれの軸方向Aの端部にはインシュレータ(図示省略)が設けられ、当該端部の幅方向の端部で電機子巻線71を構成する導線が破損することを回避又は抑制する。また、当該インシュレータが径方向延在部82a−82iそれぞれの径方向R内側の端部で幅方向に張り出す形状を呈しても良い。その場合には、張出部84a−84iのそれぞれは、本実施形態のように、径方向延在部82a−82iそれぞれの端部から必ずしも幅方向の双方に張り出す必要はなく、幅方向の一方側にのみ張り出す態様であっても良い。径方向延在部82a−82iが電機子巻線71を巻回するための巻回部として機能し、張出部84a−84iが電機子巻線71の巻崩れを防止するので、騒音や振動又は破損を回避又は抑制できる回転電機10を得ることに資する。さらに、張出部84a−84iの巻回部側は、段差のない形態とすることにより、電機子巻線71の整列巻を容易にする。
【0040】
〈製造方法〉
軸受1側に配設される一の鋼板72は、例えば図3に示すような工程で形成する。具体的には、歯61aを有する金型61を用いて、長尺の磁性材900に対して穿孔する。歯61aは、環状部81の回転軸Q側の辺縁と、周方向θで隣接する径方向延在部82a−82i及び張出部84a−84iとで囲まれる領域61Bを打抜く。
【0041】
また、円弧状の歯62aを有する金型62を用いて、磁性材900に対して穿孔して、辺縁F2の一に相当する辺縁F2aを形成する。そして、金型62を磁性材900から離した状態で、歯62aが呈する円弧の焦点G1を中心として周方向θに沿って予め定められた角度(本実施形態では40度)回転させる。ここで、焦点G1は、固定子8の回転軸Qに対応する位置である。その後、金型62を用いて磁性材900に対して穿孔することによって、当該一の辺縁F2aに周方向θで隣接する他の辺縁F2bを形成する。この金型62の回転及び打抜きの工程を繰り返して、辺縁F2のすべて(辺縁F2a−F2i)を形成する。なお、領域61Bを打抜く工程と、辺縁F2のすべてを形成する工程とは入れ替えても良い。
【0042】
こうして、領域61Bの打抜き及び、辺縁F2すべての形成がなされた磁性材900に対して、略円環状の歯63aを有する金型63を用いて、磁性材900を打抜いて辺縁F3に相当する辺縁を形成して、一の鋼板72を形成する。歯63aが呈する円環は、焦点G1を中心として、領域61Bの外形よりも大きい。
【0043】
当該一の鋼板72よりも軸受1側とは反対側に配設される他の鋼板72は、上述の工程と略同じ工程で形成される。上述の一の鋼板72を形成する工程と、他の鋼板72を形成する工程との相違点は以下のとおりである。すなわち、上述の一の鋼板72の辺縁F2a−F2iを打抜く工程では、歯62aを焦点G1を中心として周方向θに40度回転させているが、他の鋼板72を形成する場合には、例えば、図4に示すように、焦点G1を回転軸Qに対して歯62aとは反対側に予め定められた長さだけ移動させた状態で、回転軸Qに対応する位置G2を中心として周方向θに予め定められた角度(40度)回転させる。このようにして歯62aを回転させるときの中心を、焦点G1と位置G2とを結ぶ線上で変化させることによって、軸受1側の鋼板72の辺縁F21と、軸受1側とは反対側の鋼板72の辺縁F22とが同じ曲率の円弧D1,D2を呈する。もちろん、それぞれの歯ごとに独立した金型を準備し、それらの金型をティースの延在する方向に揺動させながら打抜くことも可能である。その場合、金型を回転させる必要がない。
【0044】
〈第2の実施形態〉
〈装置構成〉
以下、固定子8の他の実施形態、特にコア80の他の実施形態について説明する。なお、上述の実施形態と同様の機能を有する要素については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0045】
図5に示されるコア80Aは、上記第1の実施形態で示したコア80に代えて電機子巻線71とともに固定子8(図1参照)を構成する。なお、図5では、コア80Aの径方向R内側で固定子8と対向する回転子4の径方向R外側の辺縁41を一点鎖線で示している。
【0046】
図6に示すように、コア80Aは、周方向θで隣接する分割体80Aa−80Aiの複数を有する。分割体80Aa−80Aiのそれぞれは、鋼板72Aの複数を鋼板72Aが延在する面の法線方向に積層して形成され、平面視で略H字状を呈し、これらを組合せてコア80Aを形成する。なお、本実施形態では、コア80Aが九つの分割体80Aa−80Aiを有しているが、これに限定されない。例えば、インナーロータ型回転電機10が三相交流で駆動する場合には、分割体の個数は3の倍数であれば良い。分割体80Aa−80Aiのそれぞれは、平面視で直線状を呈する第1の部位82Aa−82Aiと、当該第1の部位82Aa−82Aiの一方側の端部で略円弧状を呈する第2の部位81Aa−81Aiと、当該第1の部位82Aa−82Aiの他方側の端部で略円弧状を呈する第3の部位84Aa−84Aiとを呈する。
【0047】
ここで、平面視で第1の部位82Aa−82Aiの延在方向に垂直な方向に沿った第3の部位84Aa−84Aiの長さは、当該方向に沿った第2の部位81Aa−81Aiの長さよりも短い。また、第2の部位81Aa−81Aiが呈する円弧の焦点と、第3の部位84Aa−84Aiが呈する円弧の焦点とはいずれも、第3の部位84Aa−84Aiに対して、第1の部位82Aa−82Aiとは反対側に位置する。第2の部位81Aa−81Aiの当該方向の端部同士が互いに隣接して連結することによって、分割体80Aa−80Aiの複数がコア80Aを形成する。
【0048】
第1の部位82Aa−82Aiが上記第1の実施形態で示した径方向延在部82a−82iに相当する径方向延在部82Aa−82Aiとして機能する。第2の部位81Aa−81Aiの複数が協働して上記第1の実施形態で示した環状部81に相当する環状部81Aとして機能する。また、第3の部位84Aa−84Aiが上記第1の実施形態で示した張出部84a−84iに相当する張出部84Aa−84Aiとして機能する。
【0049】
このような態様であれば、一の分割体80Aaを形成する金型を準備し、これにより製造した分割体80Aaの複数を連結すれば良く、金型を簡素化できる。さらに、張出部84a−84iの内径を打抜く金型のみ、ティースの延在方向にのみ動く金型を準備すれば良い。径方向延在部82Aa−82Aiのそれぞれに電機子巻線71(図1参照)を巻回した分割体80Aa−80Ai同士を接合することにより電機子を形成できるので、分割体80Aa−80Ai同士が接合された形状に電機子巻線71を巻回する場合よりも容易にインナーロータ型回転電機10を製造できる。なお、本実施形態では、分割体80Aa−80Aiのそれぞれが径方向延在部82Aa−82Aiを一つずつ呈する態様を示しているが、少なくとも一つの径方向延在部82Aa−82Aiを一の分割体が呈していれば良く、一の分割体が複数の径方向延在部82Aa−82Aiを呈する態様であっても良い。
【0050】
また、分割体80Aa−80Aiを形成する金型の形状を簡素にしてかつ、打抜く位置を調整可能な金型の種類の数を抑制できる(本実施形態では一種類にできる)。さらにまた、ティース中心ほどエアギャップを狭くし、端部ほどエアギャップを広くできるため、コギングトルクの低減に資する。
【0051】
〈第3の実施形態〉
〈装置構成〉
図7に示されるコアBは、上記第1の実施形態で示したコア80に代えて電機子巻線71とともに固定子8(図1参照)を構成する。なお、図7では、コア80Bの径方向R内側で固定子8と対向する回転子4の径方向R外側の辺縁41を一点鎖線で示している。
【0052】
図8に示すように、コア80Bは、周方向θで隣接する分割体80Ba−80Biの複数を有する。分割体80Ba−80Biのそれぞれは、鋼板72Bの複数を鋼板72Bが延在する面の法線方向に積層して形成され、平面視で略C字状を呈し、これらを組合せてコア80Bを形成する。分割体80Ba−80Biのそれぞれは、平面視で直線状を呈して互いに予め定められた角度(本実施形態では40度)を成す第1及び第2の部位83Ba1,83Ba2と、第1及び第2の部位83Ba1,83Ba2の一方側の端部たる一方側端部同士を接続して略円弧状を呈する第3の部位81Bと、第1及び第2の部位83Ba1,83Ba2の他方側の端部たる他方側端部のそれぞれから、互いの当該他方側端部へと向けて張り出してかつ空隙を介して対向する第4及び第5の部位85Ba1,85Ba2とを呈する。
【0053】
一のコア80Bの第4及び第5の部位85Ba1,85Ba2は互いに同じ曲率の円弧D1又は互いに同じ曲率の円弧D2を呈し、それらの焦点は第4及び第5の部位85Ba1,85Ba2に対して、第1及び第2の部位83Ba1,83Ba2とは反対側に位置する。具体的には、一のコア80Bの第4及び第5の部位85Ba1,85Ba2は、同一の円弧上にある。当該円弧の焦点Gを、回転軸Aに対して第4及び第5の部位85Ba1,85Ba2とは反対側へと移動するように金型を移動させながら同一の金型で打抜くことによって、コア80Bの内径の段差か又は傾斜が形成される。また、第3の部位81Bが呈する円弧の焦点も、第4及び第5の部位85Ba1,85Ba2に対して、第1及び第2の部位83Ba1,83Ba2とは反対側に位置する。
【0054】
分割体80Ba−80Biのそれぞれが呈する第3の部位81Ba−81Bi同士を、第3の部位81Ba−81Biが呈する円弧の焦点を共通させて互いに隣接して連結することによって、分割体80Ba−80Biの複数がコア80Bを形成する。このとき、第3の部位81Ba−81Biの複数が協働して上記第1の実施形態で示した環状部81に相当する環状部81Bとして機能する。また、一の分割体80Baが呈する第1の部位83Ba1と他の分割体80Biが呈する第2の部位83Bi2とが協働して上記第1の実施形態で示した径方向延在部82aに相当する径方向延在部82Baとして機能する。また、一の分割体80Baが呈する第4の部位85Ba1と他の分割体80Biが呈する第5の部位85Bi2とが協働して上記第1の実施形態で示した張出部84aに相当する張出部84Baとして機能する。径方向延在部82Bb−82Biについても同様に、一の分割体の第1の部位とこれに隣接する他の分割体の第2の部位とによって得られ、張出部84Bb−84Biについても同様に、一の分割体の第4の部位とこれに隣接する第5の部位とによって得られる。
【0055】
このような態様であれば、一の分割体80Baを打抜く金型を準備し、これにより製造した分割体80Baの複数を連結すれば良く、金型を簡素化できる。さらに、張出部84Bb−84Biの内径を打抜く金型のみ、ティースの延在方向にのみ動く金型を準備すれば良い。また、隣接する分割体によって周方向θに区分される径方向延在部が電機子巻線71(図1参照)によって固定されることになるので、分割体80Ba−80Bi同士を強固に固定できる。なお、本実施形態では、分割体80Ba−80Biのそれぞれが第1及び第2の部位83Ba1,83Ba2の一対と、第4及び第5の部位85Ba1,85Ba2の一対とを呈する態様を示しているが、例えば、これらの間に上記第2の実施形態で示した径方向延在部82Aa及び張出部84Aaを呈する態様であっても良い。
【0056】
〈第4の実施形態〉
〈装置構成〉
図9に示すように、固定子8Cは、シャフト2C、架橋部材3C及び回転子4Cとともにアウターロータ型回転電機10Cを構成する。アウターロータ型回転電機10Cは、圧縮機100Aに搭載される。ここで、図9は、圧縮機100Aの縦断面図であり、シャフト2Cの延在方向に平行な方向での断面図を示している。
【0057】
図9に示すように、シャフト2Cは、軸受1側で固定される一端と、軸受1側とは反対側で固定されない他端とを有する。シャフト2Cは、例えば、軸方向Aを中心とする同心で回転自在の二重構造を呈し、径方向Rの外側で略円筒体を呈して軸受1に固定される円筒部2Caと、径方向Rの内側で略円柱体を呈してピストン91に固定される円柱部2Cbとを有する。
【0058】
回転子4Cは、架橋部材3Cによって円柱部2Cbに接続される。具体的には、回転子4Cの軸受1側とは反対側の端部と、円柱部2Cbの軸受1側とは反対側の端部とが、架橋部材3Cによって接続される。これにより、回転子4Cの回転と、ピストン91の動きとが連動する。
【0059】
このような形状を呈するアウターロータ型回転電機10Cの回転子4Cは、圧縮機100Aの運転中に、回転子4Cの架橋部材3Cが接続されている側の端部が、大きく振れ回る。そこで、第1及び第2の錘22,20を回転子4Cに設けることによって、回転子4Cの回転重心のアンバランスを解消する。
【0060】
固定子8Cは、電機子巻線71を有し、円筒部2Caの周囲に固定されて、径方向Rに沿った空隙を介して回転子4Cを囲んで回転子4Cと対向する第1の辺縁F1を呈する。また、固定子8Cは、予め定められた形状に打抜かれた鋼板72Cの複数を鋼板72Cが呈する面の法線方向を軸方向Aに平行に積層して形成されるコア80Cを備えている。
【0061】
図10に示すように、コア80Cは、径方向Rの最も内側の辺縁たる最内縁を規定する第2の辺縁F2と、径方向Rの最も外側の辺縁たる最外縁を規定する第3の辺縁F3とを呈する。アウターロータ型回転電機10においては、辺縁F3は辺縁F1に一致する。第2の辺縁F2とその径方向R外側の第3の辺縁F3との間のコア80Cの径方向Rにおける厚みは、軸受1側よりも軸受1側とは反対側において、より小さい。また、第1の辺縁F1は、平面視で、軸受1側と、軸受1側とは反対側とで同じ曲率の円弧D3,D4を呈する。なお、図10では、固定子8Cの径方向R外側で固定子8Cと対向する回転子4Cの径方向R内側の辺縁43を一点鎖線で示している。
【0062】
コア80Cは、平面視で周方向θに並んで径方向Rに沿って延在する複数の径方向延在部82Ca−82Ciと、径方向延在部82Ca−82Ciそれぞれの径方向Rの一方側たる径方向一方側で幅方向に沿って径方向延在部82Ca−82Ciから張り出して延在する張出部84a−84iの複数とを呈する。つまり、コア80Cは、空隙を介して回転子4Cに囲まれる。
【0063】
具体的には、コア80Cは、平面視で略環状を呈する環状部81Cと、周方向θで等間隔に環状部81Cから径方向R外側へと向かって延在する複数の径方向延在部82Ca−82Ciと、径方向延在部82Ca−82Ciそれぞれの環状部81Cとは反対側の端部で、幅方向に沿って張り出す複数の張出部84Ca−84Ciとを呈する。周方向θで隣接する張出部84Ca−84Ci同士は空隙を介して互いに対向する。
【0064】
環状部81Cは、回転軸Q側で辺縁F2を呈し、辺縁F2に対して回転軸Qとは反対側で径方向延在部82Ca−82Ciそれぞれを互いに連結する。方向延在部82Ca−82Ciのそれぞれは、電機子巻線71を巻回するための芯として機能する。張出部84Ca−84Ciのそれぞれは、回転子4Cと固定子8Cとの間の磁束の流れを促し、電機子巻線71が径方向R外側(回転軸Qとは反対側、すなわち回転子4C側)へと移動することを抑止する。張出部84Ca−84Ciそれぞれの回転軸Q側とは反対側が辺縁F1,F3に相当し、軸方向Aのいずれの位置においても、平面視で同じ曲率の円弧D3,D4を呈する。具体的には、軸受1側とは反対側の辺縁F21Cは回転軸Qを焦点とする円弧形状D3を呈し、軸受1側の辺縁F22Cは円弧形状D3と同じ曲率を呈して回転軸Qから辺縁F22側に予め定められた距離だけ移動した位置に焦点FD4を有する円弧形状D4を呈する。
【0065】
〈製造方法〉
軸受1側に配設される一の鋼板72Cは、例えば図11に示すような工程で形成する。具体的には、歯64aを有する金型64を用いて、磁性材900を打抜いて辺縁F2に相当する辺縁F2C、径方向延在部82Ca−82Ciを規定する辺縁及び張出部84Ca−84Ciの幅方向の端部を規定する辺縁に相当する辺縁F4a−F4iを形成する。
【0066】
こうして辺縁F2C,F4a−F4iが形成された磁性材900に対して、円弧状の歯65aを有する金型65を用いて磁性材900に対して穿孔して、辺縁F3の一に相当する辺縁F3aを形成する。そして、金型65を磁性材900から離した状態で、歯65aが呈する円弧の焦点G2を中心として周方向θに沿って予め定められた角度(本実施形態では40度)回転させる。ここで、焦点G2は、固定子8Cの回転軸Qに対応する位置である。その後、金型65を用いて磁性材900に対して穿孔することによって、当該一の辺縁F3aに周方向θで隣接する他の辺縁F3bを形成する。この金型65の回転及び打抜きの工程を繰り返して、辺縁F3のすべて(辺縁F3a−F3i)を形成して、一の鋼板72Cを形成する。
【0067】
なお、辺縁F3a−F3iを例えば辺縁F3a−F3iの順に形成する(すなわち、金型65で磁性材900を打抜く)場合には、磁性材900から切り離されずにいる箇所(例えば辺縁F3iが形成される箇所)に、磁性材900から既に切り離された部位(辺縁F4a−F4i,F3a−F3hで囲まれる部位)の重さがかかる。そのため、金型65で打抜いて磁性材900から切り離す際に、当該箇所が変形するおそれがある。そこで、金型65で磁性材900を打抜く際には、磁性材900に対して金型65とは反対側で当該部位を支えるようにしても良い。
【0068】
当該一の鋼板72Cよりも軸受1側とは反対側に配設される他の鋼板72Cは、上述の工程と略同じ工程で形成される。上述の一の鋼板72Cを形成する工程と、他の鋼板72Cを形成する工程との相違点は以下のとおりである。すなわち、上述の一の鋼板72Cの辺縁F3a−F3iを打抜く工程では、歯65aを焦点G2を中心として周方向θに40度回転させているが、他の鋼板72Cを形成する場合には、例えば、焦点G2を、歯65aが呈する円弧の中心と焦点G2とを結ぶ線上で予め定められた長さだけ移動させた状態(図11の焦点G2を位置G2aに移動させた状態)で、回転軸Qに対応する位置(図11では焦点G2に一致している)を中心として周方向θに予め定められた角度(40度)回転させる。このようにして歯65aを回転させるときの中心を、焦点G1と位置G2aとを結ぶ線上で変化させることによって、軸受1側の鋼板72Cの辺縁F31と、軸受1側とは反対側の鋼板72Cの辺縁F32とが、互いに同じ曲率の円弧D3又は互いに同じ曲率の円弧D4を呈する。もちろん、それぞれの歯ごとに独立した金型を準備し、それらの金型をティースの延在する方向に揺動させながら打抜くことも可能である。その場合、金型を回転させる必要がない。
【0069】
〈第5の実施形態〉
〈装置構成〉
図12に示されるコア80Dは、上記第4の実施形態で示したコア80Cに代えて電機子巻線71とともに固定子8C(図9参照)を構成する。なお、図12では、固定子8Cの径方向R外側で固定子8Cと対向する回転子4Cの径方向R内側の辺縁43を一点鎖線で示している。
【0070】
図13に示すように、コア80Dは、周方向θで隣接する分割体80Da−80Diの複数を有する。分割体80Da−80Diのそれぞれは、鋼板72Dの複数を鋼板72Dが延在する面の法線方向に積層して形成され、これらを組合せてコア80Dを形成する。具体的には、分割体80Da−80Diのそれぞれは、平面視で円弧状を呈する第1部86Dと、第1部86Dが呈する円弧の中心を起点として当該円弧の焦点から遠離る方向へ延在する第2部82Da−82Diと、第2部82Daの第1部86Dとは反対側の端部で第2部82Da−82Diの延在方向に垂直な方向の双方に張り出す第3部84Da−84Diとを呈する。
【0071】
ここで、第1部86Dが呈する円弧の中心角は、第1部86Dが呈する円弧の焦点に対する第3部84Daの中心角よりも大きい。第1部86Dの複数が協働して当該焦点を中心とする環状を呈するように、第1部86D同士が互いに隣接して連結することによって、分割体80Da−80Diの複数がコア80Dを形成する。
【0072】
第1部86Dの複数が協働して上記第4の実施形態で示した環状部81Cに相当する環状部81Dとして機能する。また、第2部82Da−82Diが上記第4の実施形態で示した径方向延在部82Caに相当する径方向部材82Da−82Diとして機能する。また、第3部84Da−84Diが上記第4の実施形態で示した張出部84Ca−84Ciに相当する張出部84Da−84Diとして機能する。
【0073】
なお、本実施形態では、分割体80Da−80Diのそれぞれが径方向延在部82Da−82Diを一つずつ呈する態様を示しているが、少なくとも一つの径方向延在部82Da−82Diを一の分割体が呈していれば良く、一の分割体が複数の径方向延在部82Da−82Diを呈する態様であっても良い。
【0074】
〈第6の実施形態〉
〈装置構成〉
図14に示されるコア80Eは、上記第4の実施形態で示したコア80Cに代えて電機子巻線71とともに固定子8C(図9参照)を構成する。なお、図14では、固定子8Cの径方向R外側で固定子8Cと対向する回転子4Cの径方向R内側の辺縁43を一点鎖線で示している。
【0075】
図15に示すように、コア80Eは、周方向θで隣接する分割体80Ea−80Eiの複数を有する。分割体80Ea−80Eiのそれぞれは、鋼板72Eの複数を鋼板72Eが延在する面の法線方向に積層して形成され、平面視で略Λ字状を呈し、これらを組合せてコア80Eを形成する。分割体80Ea−80Eiのそれぞれは、平面視で直線状を呈して互いに予め定められた角度(本実施形態では40度)を成す第1及び第2の部位83Ea1,83Ea2と、第1及び第2の部位83Ea1,83Ea2の一方側の端部たる一方側端部同士を接続して略円弧状を呈する第3の部位86Eと、第1及び第2の部位83Ea1,83Ea2の他方側の端部たる他方側端部のそれぞれから、互いの当該他方側端部へと向けて張り出してかつ空隙を介して対向する第4及び第5の部位85Ea1,85Ea2とを呈する。
【0076】
第4及び第5の部位85Ea1,85Ea2は互いに同じ曲率の円弧D3又は互いに同じ曲率の円弧D4を呈し、それらの焦点は第4及び第5の部位85Ea1,85Ea2に対して、第1及び第2の部位83Ea1,83Ea2とは反対側に位置する。また、第3の部位86Eが呈する円弧の焦点も、第4及び第5の部位85Ea1,85Ea2に対して、第1及び第2の部位83Ea1,83Ea2とは反対側に位置する。
【0077】
分割体80Ea−80Eiのそれぞれが呈する第3の部位86Ea−86Ei同士を、第3の部位86Ea−86Eiが呈する円弧の焦点を共通させて互いに隣接して連結することによって、分割体80Ea−80Eiの複数がコア80Eを形成する。このとき、第3の部位86Ea−86Eiの複数が協働して上記第4の実施形態で示した環状部81Cに相当する環状部81Eとして機能する。また、一の分割体80Eaが呈する第1の部位83Ea1と他の分割体80Eiが呈する第2の部位83Ei2とが協働して上記第4の実施形態で示した径方向延在部82Caに相当する径方向延在部82Eaとして機能する。また、一の分割体80Eaが呈する第4の部位85Ea1と他の分割体80Eiが呈する第5の部位85Ei2とが協働して上記第4の実施形態で示した張出部84Caに相当する張出部84Eaとして機能する。径方向延在部82Eb−82Eiについても同様に、一の分割体の第1の部位とこれに隣接する他の分割体の第2の部位とによって得られ、張出部84Eb−84Eiについても同様に、一の分割体の第4の部位とこれに隣接する他の分割体の第5の部位とによって得られる。
【0078】
このような態様であれば、隣接する分割体によって周方向θに区分される径方向延在部が電機子巻線71(図9参照)によって固定されることになるので、分割体80Ea−80Ei同士を強固に固定できる。また、ティース中心ほどエアギャップを狭くし、端部ほどエアギャップを広くできるため、コギングトルクの低減に資する。なお、本実施形態では、分割体80Ea−80Eiのそれぞれが、第1及び第2の部位83Ea1,83Ea2の一対と、第4及び第5の部位85Ea1,85Ea2の一対とを呈する態様を示しているが、例えば、これらの間に上記第5の実施形態で示した径方向延在部82Da及び張出部84Daを呈する態様であっても良い。
【0079】
以上、本発明の好適な態様について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、シンクロナスリラクタンスモータに適用しても良い。上述の実施形態を適宜に組合せても良い。
【符号の説明】
【0080】
A 軸方向
Q 回転軸
R 径方向
θ 周方向
D1 (第1の)円弧
D2 (第2の)円弧
D3 (第3の)円弧
D4 (第4の)円弧
F1 (第1の)辺縁
F2 (第2の)辺縁
F3 (第3の)辺縁
Pw1 第1の位置(反ベアリング側のバランスウェイトの重心位置)
Pw2 第2の位置(ベアリング側のシャフトの重心位置)
2 シャフト
8,8C 固定子
72,72A−72E 鋼板
80,80A−80E コア
80Aa−80Ai,80Da−80Di 分割体
82a−82i,82Aa−82Ai,82Ba−82Bi,82Ca−82Ci,82Da−82Di,82Ea−82Ei 径方向延在部
84a−84i,84Aa−84Ai,84Ba−84Bi,84Ca−84Ci,84Da−84Di,84Ea−84Ei 張出部
20 第1の錘(バランスウェイト)
100,100A 圧縮機
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定子、回転電機及び圧縮機に関し、特にラジアルギャップ型の回転電機に搭載される固定子及び回転電機と、これを搭載した圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラジアルギャップ型回転電機は、電機子と、界磁子とを備えており、これらは所定の回転軸を法線とする面内において当該回転軸と略同心を呈している。そして界磁子が当該回転軸を中心に回転するシャフトに固定されて回転する回転子として、電機子が界磁子の外側で固定子として、それぞれ採用される。このようなラジアルギャップ型回転電機において、当該シャフトの一方側の端部のみを支持する技術が提案されており、下記特許文献1ないし特許文献4等に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭59−122777号公報
【特許文献2】実開平2−022083号公報
【特許文献3】実開平2−068645号公報
【特許文献4】実開平1−123458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シャフトの一方側の端部のみを支持する態様では、回転電機の運転中にシャフトの他方側の端部が振れ回ることになる。特に、当該シャフトに固定されている回転子の重心が回転軸から離れた位置にある場合、例えば当該回転電機が圧縮機に搭載されていて圧縮機構を動作させるために回転子の重心が必然的に回転軸から離れた位置にある場合には、大きく振れ回ることになる。そのため、回転子と固定子との間のエアギャップは、静止時よりも運転時の方が小さくなり、騒音や振動の原因となるため、上記特許文献1等では、シャフトの他方側の端部ほど回転子を細くすることによって運転中の回転子と固定子との接触を回避又は抑制している。また、回転軸に沿った方向の全体にわたってエアギャップを大きくすることなく、回転子と固定子とが接触することを回避している。また、上記特許文献3では、固定子の回転子と対向する面が傾斜又は段差を呈して、シャフトの他方側の端部におけるエアギャップを大きくとることによって運転中の回転子と固定子との接触を回避又は抑制している。
【0005】
これらの技術を施した態様は、騒音や振動を回避又は抑制する点ではなるほど理想的ではあるが、実際に製造する場合には、当該技術を施さない場合に比して製造コストの増大が著しい。例えば、回転子及び固定子のうち互いに対向する面を傾斜させる場合には、回転子及び/又は固定子の互いに対向する面を、回転軸の延在方向(以下、「軸方向」とも称する)のうち傾斜面を呈する領域全体にわたって連続的に変化させなければならず、製造コストの増大を招来する。特に、固定子の軸方向に垂直な断面を軸方向に沿って同心円状に変化させるような場合には、互いに径が異なる円形の金型を用意するか又は金型で打抜かれた鋼板の複数を積層した後に外形を切削する必要があり、いずれも製造コストの増大は著しい。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、シャフトの一方側の端部のみで支持されているラジアルギャップ型の回転電機に搭載される固定子において、製造コストの著しい増大を招来することなく、騒音や振動を回避又は抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明に係る固定子の第1の態様は、軸方向(A)に平行な回転軸(Q)に沿って延在し、前記軸方向の一方側たる軸方向一方側で前記回転軸を軸として回転自在に固定される一端と、前記軸方向の他方側たる軸方向他方側にあって固定されない他端とを有するシャフト(2)に固定される回転子に、前記回転軸を中心とする径方向(R)に沿った空隙を介して対向する第1の辺縁(F1)を呈する固定子(8,8C)であって、予め定められた形状に打抜かれた鋼板(72,72A−72E)の複数を前記鋼板が呈する面の法線方向を前記軸方向に平行に積層して形成されるコア(80,80A−80E)を備え、前記コアは、前記径方向の最も内側の辺縁たる最内縁を規定する第2の辺縁(F2)と、前記径方向の最も外側の辺縁たる最外縁を規定する第3の辺縁(F3)とを呈し、前記第2の辺縁とその前記径方向外側の前記第3の辺縁との間の前記コアの前記径方向における厚みは、前記軸方向一方側端部よりも前記軸方向他方側端部において、より小さく、前記第1の辺縁は、前記軸方向からの平面視で、前記軸方向一方側端部と前記軸方向他方側端部とで同じ曲率の円弧を呈する、固定子である。
【0008】
本発明に係る固定子の第2の態様は、その第1の態様であって、前記コア(80,80A−80E)は、前記回転軸(Q)を中心とする周方向(θ)に並んで前記径方向(R)に沿って延在する径方向延在部(82a−82i,82Aa−82Ai,82Ba−82Bi,82Ca−82Ci,82Da−82Di,82Ea−82Ei)の複数と、前記径方向延在部それぞれの前記径方向の一方側たる径方向一方側で前記軸方向(A)及び前記径方向のいずれにも垂直な方向に沿って前記径方向延在部から張り出して延在する張出部(84a−84i,84Aa−84Ai,84Ba−84Bi,84Ca−84Ci,84Da−84Di,84Ea−84Ei)の複数とを呈する。
【0009】
本発明に係る固定子の第3の態様は、その第2の態様であって、前記コア(80A,80C)は、前記周方向(θ)で隣接する分割体(80Aa−80Ai,80Da−80Di)の複数を有し、前記分割体のそれぞれは前記径方向延在部(82Aa−82Ai,82Da−82Di)の少なくとも一つを呈する。
【0010】
本発明に係る固定子の第4の態様は、その第2の態様であって、前記周方向(θ)で隣接する二つの前記分割体(80Ba−80Bi,80Ea−80Ei)が協働して一の前記径方向延在部(82Ba−82Bi,82Ea−82Ei)及び一の前記張出部(84Ba−84Bi,84Ea−84Ei)を呈する。
【0011】
本発明に係る固定子の第5の態様は、その第2又は第3の態様であって、前記コア(80,80A,80B)は前記空隙を介して前記回転子を囲む。
【0012】
本発明に係る固定子の第6の態様は、その第3ないし第5の態様であって、前記分割体(80Aa−80Ai,80Da−80Di)の前記第1の辺縁は、前記軸方向他方側端部において前記平面視で前記回転軸(Q)を焦点とする第1の円弧(D1)を呈し、前記軸方向一方側端部において前記第1の円弧よりも前記回転子側で前記第1の円弧に平行な第2の円弧(D2)を呈し、前記第1の円弧及び前記第2の円弧が前記空隙を介して前記回転子と対向する。
【0013】
本発明に係る固定子の第7の態様は、その第3又は第4の態様であって、前記コア(80C,80D,80E)は、前記空隙を介して前記回転子に囲まれる。
【0014】
本発明に係る固定子の第8の態様は、その第7の態様であって、前記分割体(80Ea−80Ei)は、前記軸方向一方側端部において前記平面視で前記回転軸(Q)を焦点とする第3の円弧(D3)を呈し、前記軸方向他方側端部において前記第3の円弧よりも前記回転子側で前記第3の円弧に平行な第4の円弧(D4)を呈し、前記第3の円弧及び前記第4の円弧が前記空隙を介して前記回転子と対向する。
【0015】
本発明に係る回転電機の第1の態様は、上記第1ないし第8の態様いずれかの固定子(8,8C)と、前記シャフト(2)と、前記シャフトに固定されて前記空隙を介して前記固定子と対向する前記回転子(4,4A)とを備える回転電機(10,10A)であって、前記回転子は、前記軸方向(A)からの平面視で前記回転軸(Q)とは離れた第1の位置(Pw1)に重心をもつ錘(20)を有する、回転電機である。
【0016】
本発明に係る圧縮機の第1の態様は、上記第1の態様の回転電機(10,10A)を搭載する圧縮機(100,100A)であって、前記シャフト(2)が回転するときの重心は前記回転軸(Q)とは離れた第2の位置(Pw2)にある、圧縮機である。
【発明の効果】
【0017】
シャフトの延在方向の一端のみが固定されて、当該延在方向を回転軸として当該シャフトが回転するとき、当該シャフトに固定された回転子は当該延在方向の他端側で大きく振れる。本発明に係る固定子の第1の態様によれば、回転子が回転しても、回転子と固定子とが接触することを回避又は抑制できる。もって、騒音や振動又は破損を回避又は抑制できる。また、第1の辺縁が同じ曲率の円弧を呈するので、鋼板を打抜く金型の数を抑制できる。
【0018】
本発明に係る固定子の第2の態様によれば、径方向延在部が電機子巻線を巻回するための巻回部として機能し、張出部が電機子巻線の巻崩れを防止するので、騒音や振動又は破損を回避又は抑制できる回転電機を得ることに資する。さらに、張出部の巻回部側は、段差のない形態とすることにより、電機子巻線の整列巻を容易にする。
【0019】
本発明に係る固定子の第3の態様によれば、径方向延在部に電機子巻線を巻回した分割体同士を接合することにより電機子を形成できるので、分割体を接合してから電機子巻線を巻回する場合よりも容易に回転電機を製造できる。また、分割体を形成する金型の形状を簡素にしてかつ、打抜く位置を調整可能な金型の種類の数を抑制できる。
【0020】
本発明に係る固定子の第4の態様によれば、分割体同士が電機子巻線によって固定されることになるので、分割体同士を強固に固定できる。
【0021】
本発明に係る固定子の第5の態様によれば、固定子の固定が容易でかつ、回転子をシャフトに固定しやすいインナーロータ型回転電機を得ることに資する。
【0022】
本発明に係る固定子の第6の態様によれば、回転子との間のエアギャップを抑制することに資するとともに、ティース中心ほどエアギャップを狭くし、端部ほどエアギャップを広くできるため、コギングトルクの低減に資する。
【0023】
本発明に係る固定子の第7の態様によれば、インナーロータ型回転電機よりも高トルクな回転電機を得ることに資する。
【0024】
本発明に係る固定子の第8の態様によれば、回転子との間のエアギャップを抑制することに資するとともに、ティース中心ほどエアギャップを狭くし、端部ほどエアギャップを広くできるため、コギングトルクの低減に資する。
【0025】
本発明に係る回転電機の第1の態様によれば、回転子のアンバランスを低減し、振れ回り量を低減する。
【0026】
本発明に係る圧縮機の第1の態様によれば、騒音や振動の少ない圧縮機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る固定子を備えるインナーロータ型回転電機を搭載した圧縮機の縦断面図である。
【図2】固定子のコアの平面図である。
【図3】固定子のコアの製造工程を説明する図である。
【図4】金型の動きを説明する図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る固定子のコアの平面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る固定子のコアの分割体の斜視図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る固定子のコアの平面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る固定子のコアの分割体の斜視図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係る固定子を備えるアウターロータ型回転電機を搭載した圧縮機の縦断面図である。
【図10】固定子のコアの平面図である。
【図11】固定子のコアの製造工程を説明する図である。
【図12】本発明の第5の実施形態に係る固定子のコアの平面図である。
【図13】本発明の第5の実施形態に係る固定子のコアの分割体の斜視図である。
【図14】本発明の第6の実施形態に係る固定子のコアの平面図である。
【図15】本発明の第6の実施形態に係る固定子のコアの分割体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図1を初めとする以下の図には、本発明に関係する要素のみを示す。
【0029】
〈第1の実施形態〉
〈装置構成〉
図1に示すように、固定子8は、シャフト2及び回転子4とともにインナーロータ型回転電機10を構成する。インナーロータ型回転電機10は、圧縮機100に搭載される。ここで、図1は、圧縮機100の縦断面図であり、シャフト2の延在方向に平行な方向での断面図を示している。
【0030】
図1に示すように、シャフト2は、軸方向Aに平行な回転軸Qに沿って延在し、軸方向Aの一方側で回転軸Qを軸として回転自在に固定される一端と、軸方向Aの他方側にあって固定されない他端とを有する。具体的には、シャフト2はその延在方向の一方側で軸受1に回転自在に固定される。以下、軸方向Aの一方側を「軸受1側」とも称し、軸方向Aの他方側を「軸受1側とは反対側」とも称する。
【0031】
回転子4は、シャフト2に固定されて、回転軸Qを中心とする径方向Rに沿った空隙を介して固定子6と対向する。回転子4は例えばIPMロータが採用される。具体的には、回転子4は、軸方向Aに貫通する孔52の複数を呈し、孔52のそれぞれの内部に、磁極面を、回転軸Qを中心とする径方向Rに向けて埋込まれる界磁磁石50の複数を備える。これにより省エネルギー、高効率、高トルクモータを得ることができる。また、固定子6の固定が容易でかつ、回転子4をシャフト2に固定しやすく、騒音や振動を回避又は抑制できるインナーロータ型回転電機を得ることができる。なお、回転子4は必ずしもIPMロータである必要はなく、シンクロナスリラクタンスモータのロータ(図示省略)であっても良い。
【0032】
シャフト2の軸受1側は、圧縮機100のピストン91に接続されている。また、回転子4の軸受1側には、錘22が取付けられている。これにより、シャフト2の回転重心は必然的に軸方向Aからの平面視(以下、単に「平面視」とも称する)で回転軸Qから離れた位置(課題を解決するための手段における「第2の位置」)Pw2にある。位置Pw2が回転軸Qから離れるほど、高さ寸法を小さくしても大きなモーメントを得ることができるため、錘22の軸方向Aに沿った高さ寸法を小さくできる。錘22は、圧縮機中の油を撹拌するため、当該高さ寸法は、圧縮効率の高低に寄与する。そのため、高い圧縮効率を得ようとすると位置Pw2は回転軸Qから大きく離れることになり、アンバランスとなる。錘22は、シャフト2及び回転子4の過度なアンバランスを解消する。ただし、シャフト2及び回転子4の重心は、回転子4に錘22が取付けられてもなお、回転軸Qからはやや離れている。
【0033】
回転子4の軸受1側とは反対側には、平面視で、回転軸Qから離れて、回転軸Qに対して位置Pw2とは反対側の位置(課題を解決するための手段における「第1の位置」)Pw1に重心をもつ錘20を有する。錘20は、錘22及び、ピストン91とあわせて、シャフト2及び回転子4の回転重心位置の調整及び、動バランスの調整を行うバランスウェイトとして機能する。シャフト2及び回転子4の重心位置の調整だけであれば、錘22とピストン91を、180°異なる方向に、同一のモーメントとすればいいが、これでは、回転したときに、軸が傾き、振れ周りが大きくなるという課題を有する。この課題の一部を軽減するために、第2の錘20を設けている。理想的にはシャフト2が剛体であり、寸法は組立て精度にバラツキがなければ、第2の錘20を設けることにより、振れ回りはほぼゼロとなるが、実際には剛体ではないため、振れ回りはゼロとならない。
【0034】
固定子8は、電機子巻線71を有し、径方向Rに沿った空隙を介して回転子4を囲んで回転子4と対向する第1の辺縁F1を呈する。また、固定子8は、予め定められた形状に打抜かれた鋼板72の複数を鋼板72が呈する面の法線方向を軸方向Aに平行に積層して形成されるコア80を備えている。なお、本願では特に断りのない限り、電機子巻線は、これを構成する導線の一本一本を指すのではなく、導線が一纏まりに巻回された態様を指す。これは図面においても同様である。また、巻始め及び巻終わりの引出線及び、それらの結線も図面においては省略した。
【0035】
図2に示すように、コア80は、径方向Rの最も内側の辺縁たる最内縁を規定する第2の辺縁F2と、径方向Rの最も外側の辺縁たる最外縁を規定する第3の辺縁F3とを呈する。インナーロータ型回転電機10においては、辺縁F2は辺縁F1に一致する。第2の辺縁F2とその径方向R外側の第3の辺縁F3との間のコア80の径方向Rにおける厚みは、軸受1側よりも軸受1側とは反対側において、より小さい。また、第1の辺縁F1は、平面視で、軸受1側と、軸受1側とは反対側とで同じ曲率の円弧D1,D2を呈する。なお、図2では、固定子8の径方向R内側で固定子8と対向する回転子4の径方向R外側の辺縁41を一点鎖線で示している。
【0036】
コア80は、回転軸Qを中心とする周方向(以下、単に「周方向」とも称する)θに並んで径方向Rに沿って延在する複数の径方向延在部82a−82iと、径方向延在部82a−82iそれぞれの径方向Rの一方側たる径方向一方側で軸方向A及び径方向Rのいずれにも垂直な方向(以下、「幅方向」とも称する)に沿って径方向延在部82a−82iから張り出して延在する張出部84a−84iの複数とを呈する。
【0037】
具体的には、コア80は、平面視で回転軸Qを中心とする環状を呈する環状部81と、周方向θで等間隔に環状部81から回転軸Qへと向かって延在する複数の径方向延在部82a−82iと、径方向延在部82a−82iそれぞれの環状部81側とは反対側(回転軸Q側)の端部で、幅方向に沿って張り出す複数の張出部84a−84iとを呈する。
【0038】
環状部81は、径方向延在部82a−82iそれぞれを互いに連結するヨークとして機能する。径方向延在部82a−82iのそれぞれは、電機子巻線71を巻回するための芯として機能する。張出部84a−84iのそれぞれは、回転子4と固定子8との間の磁束の流れを促し、電機子巻線71が回転軸Q側へと移動することを抑止する。張出部84a−84iそれぞれの回転軸Q側が辺縁F1,F2に相当し、軸方向Aのいずれの位置においても、平面視で同じ曲率の円弧を呈する。具体的には、軸受1側とは反対側の辺縁F21は回転軸Qを焦点とする円弧形状D1を呈し、軸受1側の辺縁F22は円弧形状D1と同じ曲率を呈して回転軸Qから辺縁F22とは反対側に予め定められた距離だけ移動した位置に焦点FD2を有する円弧形状D2を呈する。
【0039】
径方向延在部82a−82iそれぞれの軸方向Aの端部にはインシュレータ(図示省略)が設けられ、当該端部の幅方向の端部で電機子巻線71を構成する導線が破損することを回避又は抑制する。また、当該インシュレータが径方向延在部82a−82iそれぞれの径方向R内側の端部で幅方向に張り出す形状を呈しても良い。その場合には、張出部84a−84iのそれぞれは、本実施形態のように、径方向延在部82a−82iそれぞれの端部から必ずしも幅方向の双方に張り出す必要はなく、幅方向の一方側にのみ張り出す態様であっても良い。径方向延在部82a−82iが電機子巻線71を巻回するための巻回部として機能し、張出部84a−84iが電機子巻線71の巻崩れを防止するので、騒音や振動又は破損を回避又は抑制できる回転電機10を得ることに資する。さらに、張出部84a−84iの巻回部側は、段差のない形態とすることにより、電機子巻線71の整列巻を容易にする。
【0040】
〈製造方法〉
軸受1側に配設される一の鋼板72は、例えば図3に示すような工程で形成する。具体的には、歯61aを有する金型61を用いて、長尺の磁性材900に対して穿孔する。歯61aは、環状部81の回転軸Q側の辺縁と、周方向θで隣接する径方向延在部82a−82i及び張出部84a−84iとで囲まれる領域61Bを打抜く。
【0041】
また、円弧状の歯62aを有する金型62を用いて、磁性材900に対して穿孔して、辺縁F2の一に相当する辺縁F2aを形成する。そして、金型62を磁性材900から離した状態で、歯62aが呈する円弧の焦点G1を中心として周方向θに沿って予め定められた角度(本実施形態では40度)回転させる。ここで、焦点G1は、固定子8の回転軸Qに対応する位置である。その後、金型62を用いて磁性材900に対して穿孔することによって、当該一の辺縁F2aに周方向θで隣接する他の辺縁F2bを形成する。この金型62の回転及び打抜きの工程を繰り返して、辺縁F2のすべて(辺縁F2a−F2i)を形成する。なお、領域61Bを打抜く工程と、辺縁F2のすべてを形成する工程とは入れ替えても良い。
【0042】
こうして、領域61Bの打抜き及び、辺縁F2すべての形成がなされた磁性材900に対して、略円環状の歯63aを有する金型63を用いて、磁性材900を打抜いて辺縁F3に相当する辺縁を形成して、一の鋼板72を形成する。歯63aが呈する円環は、焦点G1を中心として、領域61Bの外形よりも大きい。
【0043】
当該一の鋼板72よりも軸受1側とは反対側に配設される他の鋼板72は、上述の工程と略同じ工程で形成される。上述の一の鋼板72を形成する工程と、他の鋼板72を形成する工程との相違点は以下のとおりである。すなわち、上述の一の鋼板72の辺縁F2a−F2iを打抜く工程では、歯62aを焦点G1を中心として周方向θに40度回転させているが、他の鋼板72を形成する場合には、例えば、図4に示すように、焦点G1を回転軸Qに対して歯62aとは反対側に予め定められた長さだけ移動させた状態で、回転軸Qに対応する位置G2を中心として周方向θに予め定められた角度(40度)回転させる。このようにして歯62aを回転させるときの中心を、焦点G1と位置G2とを結ぶ線上で変化させることによって、軸受1側の鋼板72の辺縁F21と、軸受1側とは反対側の鋼板72の辺縁F22とが同じ曲率の円弧D1,D2を呈する。もちろん、それぞれの歯ごとに独立した金型を準備し、それらの金型をティースの延在する方向に揺動させながら打抜くことも可能である。その場合、金型を回転させる必要がない。
【0044】
〈第2の実施形態〉
〈装置構成〉
以下、固定子8の他の実施形態、特にコア80の他の実施形態について説明する。なお、上述の実施形態と同様の機能を有する要素については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0045】
図5に示されるコア80Aは、上記第1の実施形態で示したコア80に代えて電機子巻線71とともに固定子8(図1参照)を構成する。なお、図5では、コア80Aの径方向R内側で固定子8と対向する回転子4の径方向R外側の辺縁41を一点鎖線で示している。
【0046】
図6に示すように、コア80Aは、周方向θで隣接する分割体80Aa−80Aiの複数を有する。分割体80Aa−80Aiのそれぞれは、鋼板72Aの複数を鋼板72Aが延在する面の法線方向に積層して形成され、平面視で略H字状を呈し、これらを組合せてコア80Aを形成する。なお、本実施形態では、コア80Aが九つの分割体80Aa−80Aiを有しているが、これに限定されない。例えば、インナーロータ型回転電機10が三相交流で駆動する場合には、分割体の個数は3の倍数であれば良い。分割体80Aa−80Aiのそれぞれは、平面視で直線状を呈する第1の部位82Aa−82Aiと、当該第1の部位82Aa−82Aiの一方側の端部で略円弧状を呈する第2の部位81Aa−81Aiと、当該第1の部位82Aa−82Aiの他方側の端部で略円弧状を呈する第3の部位84Aa−84Aiとを呈する。
【0047】
ここで、平面視で第1の部位82Aa−82Aiの延在方向に垂直な方向に沿った第3の部位84Aa−84Aiの長さは、当該方向に沿った第2の部位81Aa−81Aiの長さよりも短い。また、第2の部位81Aa−81Aiが呈する円弧の焦点と、第3の部位84Aa−84Aiが呈する円弧の焦点とはいずれも、第3の部位84Aa−84Aiに対して、第1の部位82Aa−82Aiとは反対側に位置する。第2の部位81Aa−81Aiの当該方向の端部同士が互いに隣接して連結することによって、分割体80Aa−80Aiの複数がコア80Aを形成する。
【0048】
第1の部位82Aa−82Aiが上記第1の実施形態で示した径方向延在部82a−82iに相当する径方向延在部82Aa−82Aiとして機能する。第2の部位81Aa−81Aiの複数が協働して上記第1の実施形態で示した環状部81に相当する環状部81Aとして機能する。また、第3の部位84Aa−84Aiが上記第1の実施形態で示した張出部84a−84iに相当する張出部84Aa−84Aiとして機能する。
【0049】
このような態様であれば、一の分割体80Aaを形成する金型を準備し、これにより製造した分割体80Aaの複数を連結すれば良く、金型を簡素化できる。さらに、張出部84a−84iの内径を打抜く金型のみ、ティースの延在方向にのみ動く金型を準備すれば良い。径方向延在部82Aa−82Aiのそれぞれに電機子巻線71(図1参照)を巻回した分割体80Aa−80Ai同士を接合することにより電機子を形成できるので、分割体80Aa−80Ai同士が接合された形状に電機子巻線71を巻回する場合よりも容易にインナーロータ型回転電機10を製造できる。なお、本実施形態では、分割体80Aa−80Aiのそれぞれが径方向延在部82Aa−82Aiを一つずつ呈する態様を示しているが、少なくとも一つの径方向延在部82Aa−82Aiを一の分割体が呈していれば良く、一の分割体が複数の径方向延在部82Aa−82Aiを呈する態様であっても良い。
【0050】
また、分割体80Aa−80Aiを形成する金型の形状を簡素にしてかつ、打抜く位置を調整可能な金型の種類の数を抑制できる(本実施形態では一種類にできる)。さらにまた、ティース中心ほどエアギャップを狭くし、端部ほどエアギャップを広くできるため、コギングトルクの低減に資する。
【0051】
〈第3の実施形態〉
〈装置構成〉
図7に示されるコアBは、上記第1の実施形態で示したコア80に代えて電機子巻線71とともに固定子8(図1参照)を構成する。なお、図7では、コア80Bの径方向R内側で固定子8と対向する回転子4の径方向R外側の辺縁41を一点鎖線で示している。
【0052】
図8に示すように、コア80Bは、周方向θで隣接する分割体80Ba−80Biの複数を有する。分割体80Ba−80Biのそれぞれは、鋼板72Bの複数を鋼板72Bが延在する面の法線方向に積層して形成され、平面視で略C字状を呈し、これらを組合せてコア80Bを形成する。分割体80Ba−80Biのそれぞれは、平面視で直線状を呈して互いに予め定められた角度(本実施形態では40度)を成す第1及び第2の部位83Ba1,83Ba2と、第1及び第2の部位83Ba1,83Ba2の一方側の端部たる一方側端部同士を接続して略円弧状を呈する第3の部位81Bと、第1及び第2の部位83Ba1,83Ba2の他方側の端部たる他方側端部のそれぞれから、互いの当該他方側端部へと向けて張り出してかつ空隙を介して対向する第4及び第5の部位85Ba1,85Ba2とを呈する。
【0053】
一のコア80Bの第4及び第5の部位85Ba1,85Ba2は互いに同じ曲率の円弧D1又は互いに同じ曲率の円弧D2を呈し、それらの焦点は第4及び第5の部位85Ba1,85Ba2に対して、第1及び第2の部位83Ba1,83Ba2とは反対側に位置する。具体的には、一のコア80Bの第4及び第5の部位85Ba1,85Ba2は、同一の円弧上にある。当該円弧の焦点Gを、回転軸Aに対して第4及び第5の部位85Ba1,85Ba2とは反対側へと移動するように金型を移動させながら同一の金型で打抜くことによって、コア80Bの内径の段差か又は傾斜が形成される。また、第3の部位81Bが呈する円弧の焦点も、第4及び第5の部位85Ba1,85Ba2に対して、第1及び第2の部位83Ba1,83Ba2とは反対側に位置する。
【0054】
分割体80Ba−80Biのそれぞれが呈する第3の部位81Ba−81Bi同士を、第3の部位81Ba−81Biが呈する円弧の焦点を共通させて互いに隣接して連結することによって、分割体80Ba−80Biの複数がコア80Bを形成する。このとき、第3の部位81Ba−81Biの複数が協働して上記第1の実施形態で示した環状部81に相当する環状部81Bとして機能する。また、一の分割体80Baが呈する第1の部位83Ba1と他の分割体80Biが呈する第2の部位83Bi2とが協働して上記第1の実施形態で示した径方向延在部82aに相当する径方向延在部82Baとして機能する。また、一の分割体80Baが呈する第4の部位85Ba1と他の分割体80Biが呈する第5の部位85Bi2とが協働して上記第1の実施形態で示した張出部84aに相当する張出部84Baとして機能する。径方向延在部82Bb−82Biについても同様に、一の分割体の第1の部位とこれに隣接する他の分割体の第2の部位とによって得られ、張出部84Bb−84Biについても同様に、一の分割体の第4の部位とこれに隣接する第5の部位とによって得られる。
【0055】
このような態様であれば、一の分割体80Baを打抜く金型を準備し、これにより製造した分割体80Baの複数を連結すれば良く、金型を簡素化できる。さらに、張出部84Bb−84Biの内径を打抜く金型のみ、ティースの延在方向にのみ動く金型を準備すれば良い。また、隣接する分割体によって周方向θに区分される径方向延在部が電機子巻線71(図1参照)によって固定されることになるので、分割体80Ba−80Bi同士を強固に固定できる。なお、本実施形態では、分割体80Ba−80Biのそれぞれが第1及び第2の部位83Ba1,83Ba2の一対と、第4及び第5の部位85Ba1,85Ba2の一対とを呈する態様を示しているが、例えば、これらの間に上記第2の実施形態で示した径方向延在部82Aa及び張出部84Aaを呈する態様であっても良い。
【0056】
〈第4の実施形態〉
〈装置構成〉
図9に示すように、固定子8Cは、シャフト2C、架橋部材3C及び回転子4Cとともにアウターロータ型回転電機10Cを構成する。アウターロータ型回転電機10Cは、圧縮機100Aに搭載される。ここで、図9は、圧縮機100Aの縦断面図であり、シャフト2Cの延在方向に平行な方向での断面図を示している。
【0057】
図9に示すように、シャフト2Cは、軸受1側で固定される一端と、軸受1側とは反対側で固定されない他端とを有する。シャフト2Cは、例えば、軸方向Aを中心とする同心で回転自在の二重構造を呈し、径方向Rの外側で略円筒体を呈して軸受1に固定される円筒部2Caと、径方向Rの内側で略円柱体を呈してピストン91に固定される円柱部2Cbとを有する。
【0058】
回転子4Cは、架橋部材3Cによって円柱部2Cbに接続される。具体的には、回転子4Cの軸受1側とは反対側の端部と、円柱部2Cbの軸受1側とは反対側の端部とが、架橋部材3Cによって接続される。これにより、回転子4Cの回転と、ピストン91の動きとが連動する。
【0059】
このような形状を呈するアウターロータ型回転電機10Cの回転子4Cは、圧縮機100Aの運転中に、回転子4Cの架橋部材3Cが接続されている側の端部が、大きく振れ回る。そこで、第1及び第2の錘22,20を回転子4Cに設けることによって、回転子4Cの回転重心のアンバランスを解消する。
【0060】
固定子8Cは、電機子巻線71を有し、円筒部2Caの周囲に固定されて、径方向Rに沿った空隙を介して回転子4Cを囲んで回転子4Cと対向する第1の辺縁F1を呈する。また、固定子8Cは、予め定められた形状に打抜かれた鋼板72Cの複数を鋼板72Cが呈する面の法線方向を軸方向Aに平行に積層して形成されるコア80Cを備えている。
【0061】
図10に示すように、コア80Cは、径方向Rの最も内側の辺縁たる最内縁を規定する第2の辺縁F2と、径方向Rの最も外側の辺縁たる最外縁を規定する第3の辺縁F3とを呈する。アウターロータ型回転電機10においては、辺縁F3は辺縁F1に一致する。第2の辺縁F2とその径方向R外側の第3の辺縁F3との間のコア80Cの径方向Rにおける厚みは、軸受1側よりも軸受1側とは反対側において、より小さい。また、第1の辺縁F1は、平面視で、軸受1側と、軸受1側とは反対側とで同じ曲率の円弧D3,D4を呈する。なお、図10では、固定子8Cの径方向R外側で固定子8Cと対向する回転子4Cの径方向R内側の辺縁43を一点鎖線で示している。
【0062】
コア80Cは、平面視で周方向θに並んで径方向Rに沿って延在する複数の径方向延在部82Ca−82Ciと、径方向延在部82Ca−82Ciそれぞれの径方向Rの一方側たる径方向一方側で幅方向に沿って径方向延在部82Ca−82Ciから張り出して延在する張出部84a−84iの複数とを呈する。つまり、コア80Cは、空隙を介して回転子4Cに囲まれる。
【0063】
具体的には、コア80Cは、平面視で略環状を呈する環状部81Cと、周方向θで等間隔に環状部81Cから径方向R外側へと向かって延在する複数の径方向延在部82Ca−82Ciと、径方向延在部82Ca−82Ciそれぞれの環状部81Cとは反対側の端部で、幅方向に沿って張り出す複数の張出部84Ca−84Ciとを呈する。周方向θで隣接する張出部84Ca−84Ci同士は空隙を介して互いに対向する。
【0064】
環状部81Cは、回転軸Q側で辺縁F2を呈し、辺縁F2に対して回転軸Qとは反対側で径方向延在部82Ca−82Ciそれぞれを互いに連結する。方向延在部82Ca−82Ciのそれぞれは、電機子巻線71を巻回するための芯として機能する。張出部84Ca−84Ciのそれぞれは、回転子4Cと固定子8Cとの間の磁束の流れを促し、電機子巻線71が径方向R外側(回転軸Qとは反対側、すなわち回転子4C側)へと移動することを抑止する。張出部84Ca−84Ciそれぞれの回転軸Q側とは反対側が辺縁F1,F3に相当し、軸方向Aのいずれの位置においても、平面視で同じ曲率の円弧D3,D4を呈する。具体的には、軸受1側とは反対側の辺縁F21Cは回転軸Qを焦点とする円弧形状D3を呈し、軸受1側の辺縁F22Cは円弧形状D3と同じ曲率を呈して回転軸Qから辺縁F22側に予め定められた距離だけ移動した位置に焦点FD4を有する円弧形状D4を呈する。
【0065】
〈製造方法〉
軸受1側に配設される一の鋼板72Cは、例えば図11に示すような工程で形成する。具体的には、歯64aを有する金型64を用いて、磁性材900を打抜いて辺縁F2に相当する辺縁F2C、径方向延在部82Ca−82Ciを規定する辺縁及び張出部84Ca−84Ciの幅方向の端部を規定する辺縁に相当する辺縁F4a−F4iを形成する。
【0066】
こうして辺縁F2C,F4a−F4iが形成された磁性材900に対して、円弧状の歯65aを有する金型65を用いて磁性材900に対して穿孔して、辺縁F3の一に相当する辺縁F3aを形成する。そして、金型65を磁性材900から離した状態で、歯65aが呈する円弧の焦点G2を中心として周方向θに沿って予め定められた角度(本実施形態では40度)回転させる。ここで、焦点G2は、固定子8Cの回転軸Qに対応する位置である。その後、金型65を用いて磁性材900に対して穿孔することによって、当該一の辺縁F3aに周方向θで隣接する他の辺縁F3bを形成する。この金型65の回転及び打抜きの工程を繰り返して、辺縁F3のすべて(辺縁F3a−F3i)を形成して、一の鋼板72Cを形成する。
【0067】
なお、辺縁F3a−F3iを例えば辺縁F3a−F3iの順に形成する(すなわち、金型65で磁性材900を打抜く)場合には、磁性材900から切り離されずにいる箇所(例えば辺縁F3iが形成される箇所)に、磁性材900から既に切り離された部位(辺縁F4a−F4i,F3a−F3hで囲まれる部位)の重さがかかる。そのため、金型65で打抜いて磁性材900から切り離す際に、当該箇所が変形するおそれがある。そこで、金型65で磁性材900を打抜く際には、磁性材900に対して金型65とは反対側で当該部位を支えるようにしても良い。
【0068】
当該一の鋼板72Cよりも軸受1側とは反対側に配設される他の鋼板72Cは、上述の工程と略同じ工程で形成される。上述の一の鋼板72Cを形成する工程と、他の鋼板72Cを形成する工程との相違点は以下のとおりである。すなわち、上述の一の鋼板72Cの辺縁F3a−F3iを打抜く工程では、歯65aを焦点G2を中心として周方向θに40度回転させているが、他の鋼板72Cを形成する場合には、例えば、焦点G2を、歯65aが呈する円弧の中心と焦点G2とを結ぶ線上で予め定められた長さだけ移動させた状態(図11の焦点G2を位置G2aに移動させた状態)で、回転軸Qに対応する位置(図11では焦点G2に一致している)を中心として周方向θに予め定められた角度(40度)回転させる。このようにして歯65aを回転させるときの中心を、焦点G1と位置G2aとを結ぶ線上で変化させることによって、軸受1側の鋼板72Cの辺縁F31と、軸受1側とは反対側の鋼板72Cの辺縁F32とが、互いに同じ曲率の円弧D3又は互いに同じ曲率の円弧D4を呈する。もちろん、それぞれの歯ごとに独立した金型を準備し、それらの金型をティースの延在する方向に揺動させながら打抜くことも可能である。その場合、金型を回転させる必要がない。
【0069】
〈第5の実施形態〉
〈装置構成〉
図12に示されるコア80Dは、上記第4の実施形態で示したコア80Cに代えて電機子巻線71とともに固定子8C(図9参照)を構成する。なお、図12では、固定子8Cの径方向R外側で固定子8Cと対向する回転子4Cの径方向R内側の辺縁43を一点鎖線で示している。
【0070】
図13に示すように、コア80Dは、周方向θで隣接する分割体80Da−80Diの複数を有する。分割体80Da−80Diのそれぞれは、鋼板72Dの複数を鋼板72Dが延在する面の法線方向に積層して形成され、これらを組合せてコア80Dを形成する。具体的には、分割体80Da−80Diのそれぞれは、平面視で円弧状を呈する第1部86Dと、第1部86Dが呈する円弧の中心を起点として当該円弧の焦点から遠離る方向へ延在する第2部82Da−82Diと、第2部82Daの第1部86Dとは反対側の端部で第2部82Da−82Diの延在方向に垂直な方向の双方に張り出す第3部84Da−84Diとを呈する。
【0071】
ここで、第1部86Dが呈する円弧の中心角は、第1部86Dが呈する円弧の焦点に対する第3部84Daの中心角よりも大きい。第1部86Dの複数が協働して当該焦点を中心とする環状を呈するように、第1部86D同士が互いに隣接して連結することによって、分割体80Da−80Diの複数がコア80Dを形成する。
【0072】
第1部86Dの複数が協働して上記第4の実施形態で示した環状部81Cに相当する環状部81Dとして機能する。また、第2部82Da−82Diが上記第4の実施形態で示した径方向延在部82Caに相当する径方向部材82Da−82Diとして機能する。また、第3部84Da−84Diが上記第4の実施形態で示した張出部84Ca−84Ciに相当する張出部84Da−84Diとして機能する。
【0073】
なお、本実施形態では、分割体80Da−80Diのそれぞれが径方向延在部82Da−82Diを一つずつ呈する態様を示しているが、少なくとも一つの径方向延在部82Da−82Diを一の分割体が呈していれば良く、一の分割体が複数の径方向延在部82Da−82Diを呈する態様であっても良い。
【0074】
〈第6の実施形態〉
〈装置構成〉
図14に示されるコア80Eは、上記第4の実施形態で示したコア80Cに代えて電機子巻線71とともに固定子8C(図9参照)を構成する。なお、図14では、固定子8Cの径方向R外側で固定子8Cと対向する回転子4Cの径方向R内側の辺縁43を一点鎖線で示している。
【0075】
図15に示すように、コア80Eは、周方向θで隣接する分割体80Ea−80Eiの複数を有する。分割体80Ea−80Eiのそれぞれは、鋼板72Eの複数を鋼板72Eが延在する面の法線方向に積層して形成され、平面視で略Λ字状を呈し、これらを組合せてコア80Eを形成する。分割体80Ea−80Eiのそれぞれは、平面視で直線状を呈して互いに予め定められた角度(本実施形態では40度)を成す第1及び第2の部位83Ea1,83Ea2と、第1及び第2の部位83Ea1,83Ea2の一方側の端部たる一方側端部同士を接続して略円弧状を呈する第3の部位86Eと、第1及び第2の部位83Ea1,83Ea2の他方側の端部たる他方側端部のそれぞれから、互いの当該他方側端部へと向けて張り出してかつ空隙を介して対向する第4及び第5の部位85Ea1,85Ea2とを呈する。
【0076】
第4及び第5の部位85Ea1,85Ea2は互いに同じ曲率の円弧D3又は互いに同じ曲率の円弧D4を呈し、それらの焦点は第4及び第5の部位85Ea1,85Ea2に対して、第1及び第2の部位83Ea1,83Ea2とは反対側に位置する。また、第3の部位86Eが呈する円弧の焦点も、第4及び第5の部位85Ea1,85Ea2に対して、第1及び第2の部位83Ea1,83Ea2とは反対側に位置する。
【0077】
分割体80Ea−80Eiのそれぞれが呈する第3の部位86Ea−86Ei同士を、第3の部位86Ea−86Eiが呈する円弧の焦点を共通させて互いに隣接して連結することによって、分割体80Ea−80Eiの複数がコア80Eを形成する。このとき、第3の部位86Ea−86Eiの複数が協働して上記第4の実施形態で示した環状部81Cに相当する環状部81Eとして機能する。また、一の分割体80Eaが呈する第1の部位83Ea1と他の分割体80Eiが呈する第2の部位83Ei2とが協働して上記第4の実施形態で示した径方向延在部82Caに相当する径方向延在部82Eaとして機能する。また、一の分割体80Eaが呈する第4の部位85Ea1と他の分割体80Eiが呈する第5の部位85Ei2とが協働して上記第4の実施形態で示した張出部84Caに相当する張出部84Eaとして機能する。径方向延在部82Eb−82Eiについても同様に、一の分割体の第1の部位とこれに隣接する他の分割体の第2の部位とによって得られ、張出部84Eb−84Eiについても同様に、一の分割体の第4の部位とこれに隣接する他の分割体の第5の部位とによって得られる。
【0078】
このような態様であれば、隣接する分割体によって周方向θに区分される径方向延在部が電機子巻線71(図9参照)によって固定されることになるので、分割体80Ea−80Ei同士を強固に固定できる。また、ティース中心ほどエアギャップを狭くし、端部ほどエアギャップを広くできるため、コギングトルクの低減に資する。なお、本実施形態では、分割体80Ea−80Eiのそれぞれが、第1及び第2の部位83Ea1,83Ea2の一対と、第4及び第5の部位85Ea1,85Ea2の一対とを呈する態様を示しているが、例えば、これらの間に上記第5の実施形態で示した径方向延在部82Da及び張出部84Daを呈する態様であっても良い。
【0079】
以上、本発明の好適な態様について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、シンクロナスリラクタンスモータに適用しても良い。上述の実施形態を適宜に組合せても良い。
【符号の説明】
【0080】
A 軸方向
Q 回転軸
R 径方向
θ 周方向
D1 (第1の)円弧
D2 (第2の)円弧
D3 (第3の)円弧
D4 (第4の)円弧
F1 (第1の)辺縁
F2 (第2の)辺縁
F3 (第3の)辺縁
Pw1 第1の位置(反ベアリング側のバランスウェイトの重心位置)
Pw2 第2の位置(ベアリング側のシャフトの重心位置)
2 シャフト
8,8C 固定子
72,72A−72E 鋼板
80,80A−80E コア
80Aa−80Ai,80Da−80Di 分割体
82a−82i,82Aa−82Ai,82Ba−82Bi,82Ca−82Ci,82Da−82Di,82Ea−82Ei 径方向延在部
84a−84i,84Aa−84Ai,84Ba−84Bi,84Ca−84Ci,84Da−84Di,84Ea−84Ei 張出部
20 第1の錘(バランスウェイト)
100,100A 圧縮機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向(A)に平行な回転軸(Q)に沿って延在し、前記軸方向の一方側たる軸方向一方側で前記回転軸を軸として回転自在に固定される一端と、前記軸方向の他方側たる軸方向他方側にあって固定されない他端とを有するシャフト(2)に固定される回転子に、前記回転軸を中心とする径方向(R)に沿った空隙を介して対向する第1の辺縁(F1)を呈する固定子(8,8C)であって、
予め定められた形状に打抜かれた鋼板(72,72A−72E)の複数を前記鋼板が呈する面の法線方向を前記軸方向に平行に積層して形成されるコア(80,80A−80E)を備え、
前記コアは、前記径方向の最も内側の辺縁たる最内縁を規定する第2の辺縁(F2)と、前記径方向の最も外側の辺縁たる最外縁を規定する第3の辺縁(F3)とを呈し、
前記第2の辺縁とその前記径方向外側の前記第3の辺縁との間の前記コアの前記径方向における厚みは、前記軸方向一方側端部よりも前記軸方向他方側端部において、より小さく、
前記第1の辺縁は、前記軸方向からの平面視で、前記軸方向一方側端部と前記軸方向他方側端部とで同じ曲率の円弧を呈する、
固定子。
【請求項2】
前記コア(80,80A−80E)は、前記回転軸(Q)を中心とする周方向(θ)に並んで前記径方向(R)に沿って延在する径方向延在部(82a−82i,82Aa−82Ai,82Ba−82Bi,82Ca−82Ci,82Da−82Di,82Ea−82Ei)の複数と、
前記径方向延在部それぞれの前記径方向の一方側たる径方向一方側で前記軸方向(A)及び前記径方向のいずれにも垂直な方向に沿って前記径方向延在部から張り出して延在する張出部(84a−84i,84Aa−84Ai,84Ba−84Bi,84Ca−84Ci,84Da−84Di,84Ea−84Ei)の複数と
を呈する、
請求項1記載の固定子(8,8C)。
【請求項3】
前記コア(80A,80C)は、前記周方向(θ)で隣接する分割体(80Aa−80Ai,80Da−80Di)の複数を有し、
前記分割体のそれぞれは前記径方向延在部(82Aa−82Ai,82Da−82Di)の少なくとも一つを呈する、
請求項2記載の固定子(8,8C)。
【請求項4】
前記周方向(θ)で隣接する二つの前記分割体(80Ba−80Bi,80Ea−80Ei)が協働して一の前記径方向延在部(82Ba−82Bi,82Ea−82Ei)及び一の前記張出部(84Ba−84Bi,84Ea−84Ei)を呈する、
請求項2記載の固定子(8C)。
【請求項5】
前記コア(80,80A,80B)は前記空隙を介して前記回転子を囲む、
請求項2又は請求項3記載の固定子(8)。
【請求項6】
前記分割体(80Aa−80Ai,80Da−80Di)の前記第1の辺縁は、前記軸方向他方側端部において前記平面視で前記回転軸(Q)を焦点とする第1の円弧(D1)を呈し、前記軸方向一方側端部において前記第1の円弧よりも前記回転子側で前記第1の円弧に平行な第2の円弧(D2)を呈し、
前記第1の円弧及び前記第2の円弧が前記空隙を介して前記回転子と対向する、
請求項3ないし請求項5の何れか記載の固定子(8,8C)。
【請求項7】
前記コア(80C,80D,80E)は、前記空隙を介して前記回転子に囲まれる、
請求項3又は請求項4記載の固定子(8C)。
【請求項8】
前記分割体(80Ea−80Ei)は、前記軸方向一方側端部において前記平面視で前記回転軸(Q)を焦点とする第3の円弧(D3)を呈し、前記軸方向他方側端部において前記第3の円弧よりも前記回転子側で前記第3の円弧に平行な第4の円弧(D4)を呈し、
前記第3の円弧及び前記第4の円弧が前記空隙を介して前記回転子と対向する、
請求項7記載の固定子(8C)。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8の何れか記載の固定子(8,8C)と、
前記シャフト(2)と、
前記シャフトに固定されて前記空隙を介して前記固定子と対向する前記回転子(4,4A)と
を備える回転電機(10,10A)であって、
前記回転子は、前記軸方向(A)からの平面視で前記回転軸(Q)とは離れた第1の位置(Pw1)に重心をもつ錘(20)を有する、
回転電機。
【請求項10】
請求項9記載の前記回転電機(10,10A)を搭載する圧縮機(100,100A)であって、
前記シャフト(2)が回転するときの重心は前記回転軸(Q)とは離れた第2の位置(Pw2)にある、圧縮機。
【請求項1】
軸方向(A)に平行な回転軸(Q)に沿って延在し、前記軸方向の一方側たる軸方向一方側で前記回転軸を軸として回転自在に固定される一端と、前記軸方向の他方側たる軸方向他方側にあって固定されない他端とを有するシャフト(2)に固定される回転子に、前記回転軸を中心とする径方向(R)に沿った空隙を介して対向する第1の辺縁(F1)を呈する固定子(8,8C)であって、
予め定められた形状に打抜かれた鋼板(72,72A−72E)の複数を前記鋼板が呈する面の法線方向を前記軸方向に平行に積層して形成されるコア(80,80A−80E)を備え、
前記コアは、前記径方向の最も内側の辺縁たる最内縁を規定する第2の辺縁(F2)と、前記径方向の最も外側の辺縁たる最外縁を規定する第3の辺縁(F3)とを呈し、
前記第2の辺縁とその前記径方向外側の前記第3の辺縁との間の前記コアの前記径方向における厚みは、前記軸方向一方側端部よりも前記軸方向他方側端部において、より小さく、
前記第1の辺縁は、前記軸方向からの平面視で、前記軸方向一方側端部と前記軸方向他方側端部とで同じ曲率の円弧を呈する、
固定子。
【請求項2】
前記コア(80,80A−80E)は、前記回転軸(Q)を中心とする周方向(θ)に並んで前記径方向(R)に沿って延在する径方向延在部(82a−82i,82Aa−82Ai,82Ba−82Bi,82Ca−82Ci,82Da−82Di,82Ea−82Ei)の複数と、
前記径方向延在部それぞれの前記径方向の一方側たる径方向一方側で前記軸方向(A)及び前記径方向のいずれにも垂直な方向に沿って前記径方向延在部から張り出して延在する張出部(84a−84i,84Aa−84Ai,84Ba−84Bi,84Ca−84Ci,84Da−84Di,84Ea−84Ei)の複数と
を呈する、
請求項1記載の固定子(8,8C)。
【請求項3】
前記コア(80A,80C)は、前記周方向(θ)で隣接する分割体(80Aa−80Ai,80Da−80Di)の複数を有し、
前記分割体のそれぞれは前記径方向延在部(82Aa−82Ai,82Da−82Di)の少なくとも一つを呈する、
請求項2記載の固定子(8,8C)。
【請求項4】
前記周方向(θ)で隣接する二つの前記分割体(80Ba−80Bi,80Ea−80Ei)が協働して一の前記径方向延在部(82Ba−82Bi,82Ea−82Ei)及び一の前記張出部(84Ba−84Bi,84Ea−84Ei)を呈する、
請求項2記載の固定子(8C)。
【請求項5】
前記コア(80,80A,80B)は前記空隙を介して前記回転子を囲む、
請求項2又は請求項3記載の固定子(8)。
【請求項6】
前記分割体(80Aa−80Ai,80Da−80Di)の前記第1の辺縁は、前記軸方向他方側端部において前記平面視で前記回転軸(Q)を焦点とする第1の円弧(D1)を呈し、前記軸方向一方側端部において前記第1の円弧よりも前記回転子側で前記第1の円弧に平行な第2の円弧(D2)を呈し、
前記第1の円弧及び前記第2の円弧が前記空隙を介して前記回転子と対向する、
請求項3ないし請求項5の何れか記載の固定子(8,8C)。
【請求項7】
前記コア(80C,80D,80E)は、前記空隙を介して前記回転子に囲まれる、
請求項3又は請求項4記載の固定子(8C)。
【請求項8】
前記分割体(80Ea−80Ei)は、前記軸方向一方側端部において前記平面視で前記回転軸(Q)を焦点とする第3の円弧(D3)を呈し、前記軸方向他方側端部において前記第3の円弧よりも前記回転子側で前記第3の円弧に平行な第4の円弧(D4)を呈し、
前記第3の円弧及び前記第4の円弧が前記空隙を介して前記回転子と対向する、
請求項7記載の固定子(8C)。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8の何れか記載の固定子(8,8C)と、
前記シャフト(2)と、
前記シャフトに固定されて前記空隙を介して前記固定子と対向する前記回転子(4,4A)と
を備える回転電機(10,10A)であって、
前記回転子は、前記軸方向(A)からの平面視で前記回転軸(Q)とは離れた第1の位置(Pw1)に重心をもつ錘(20)を有する、
回転電機。
【請求項10】
請求項9記載の前記回転電機(10,10A)を搭載する圧縮機(100,100A)であって、
前記シャフト(2)が回転するときの重心は前記回転軸(Q)とは離れた第2の位置(Pw2)にある、圧縮機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−46486(P2013−46486A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182280(P2011−182280)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
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