説明

固定構造体

【課題】部品実装部に形成される空間部の圧力上昇を抑制し、基板とデバイス固定手段との固定についての信頼性の向上を図ることを目的とする。
【解決手段】樹脂板表面にレジスト24が設けられるとともに貫通孔15が設けられた基板12と、貫通孔15を貫通させるネジ部16と頭部17とが設けられた固定手段18と、ネジ部16を挿入させるメスネジ部20が設けられた固定部19とを備え、基板12が頭部17と固定部19とによって挟持されて、貫通孔15とネジ部16との間に形成される第1空間部22を外部と連通する第2空間部23を設けた構成により、第1空間部22の圧力上昇を抑制して信頼性の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種電子機器に使用される固定構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、従来の固定構造体について図面を用いて説明する。図14は従来の固定構造体の断面図であり、樹脂板1の上に電子部品2が実装され、また、放熱板やバスバー等の構造物(図示せず)の固定部3を固定手段4によって樹脂板1へ固定することで、構造物(図示せず)を樹脂板1へ機械的固着を行い、そのうえで固定部3と電子部品2との電気的な接続などを行うものであった。
【0003】
ここで、上記のように固定部3と電子部品2との電気的な接続は樹脂板1の上面側でレジスト6を施した配線パターン7を介して行われ、また、実装の高密度化が必要とされる際にはレジスト6や配線パターン7は樹脂板1の下面側にも同時に行われる。そしてそこでは導体どうしが接触すべきでない部分を絶縁する目的等により、固定手段4の頭部5と樹脂板1との間となる樹脂板1の表面にも予めレジスト6を形成し、樹脂板1の下面に形成した配線パターン7と頭部5やワッシャ8とを電気的に絶縁させるためにもレジスト6を用いるのが一般的であった。
【0004】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては例えば特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−49106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の固定構造体においては、特に固定部3と固定手段4との機械的固定や電気的接続を確実に行うために、固定部3と固定手段4とをはんだ9などによる接合などを行った場合、この接合時に加わる高温によって固定部3、固定手段4、頭部5および樹脂板1によって封じ込められた空間部10の圧力が上昇することとなる。またこのような固定構造体が樹脂板1に実装される電子部品2などとともにリフロー半田槽へ投入される際には、リフロー半田槽によって加えられる熱によって同様に、固定部3、固定手段4、頭部5および樹脂板1によって封じ込められた空間部10の圧力が上昇することとなる。
【0007】
そして、ここで上昇した圧力の気体が、他の部位に比較して機械的密着度が低い樹脂板1の下面側における樹脂板1とレジスト6との間に圧力を逃がすための隙間を穿孔することがあり、これは樹脂板1とレジスト6との間に気泡11を形成することにもなり、この気泡11は樹脂板1と固定部3や固定手段4との位置関係を変化させる恐れがあるものであった。そして、その結果としてこれらの固定状態を劣化させることや、あるいは気泡11による応力が配線パターン7を変形させるなど、空間部10の圧力の上昇が配線基板固定構造体に対して機械的あるいは電気的な劣化を引き起こす可能性があるという課題があった。
【0008】
そこで本発明は、空間部での高温時における気体の圧力の上昇を抑制し、固定構造体の機械的および電気的安定度を向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、表面にレジストが設けられると共に貫通孔が設けられた配線基板上にネジ孔が設けられた固定部を有する実装部品を配置し、この実装部品の固定部に設けられたネジ孔に上記配線基板に設けられた貫通孔を挿通してネジ部と頭部からなる固定部材を螺合することにより、上記配線基板が上記固定部材の頭部と実装部品の固定部によって挟持された固定構造体において、上記配線基板に設けた貫通孔の周面と固定部材の周面との間に形成される空隙部を外部と連通させるための連通手段を設けたことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、空隙部の圧力が上昇する際には、空隙部に連通した連通手段を通じてその圧力を固定構造体の外部へ解放させることで、固定構造体における歪の発生を抑え、固定構造体の各部位の位置関係等を安定的に保つことができ、その結果として固定構造体の信頼性を向上させることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1における固定構造体を示した斜視図
【図2】同要部の断面図
【図3】同要部の側面図
【図4】本発明の実施例2における固定構造体を示した要部の第1の断面図
【図5】同要部の上面図
【図6】同要部の第2の断面図
【図7】本発明の実施例3における固定構造体を示した要部の側面図
【図8】同要部の断面図
【図9】本発明の実施例4における固定構造体を示した斜視図
【図10】同要部の断面図
【図11】同他の実施例を示した要部の断面図
【図12】同要部の上面図
【図13】同他の実施例を示した要部の上面図
【図14】従来の固定構造体を示した要部の断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施例1を用いて、本発明の特に請求項1、2に記載の発明について説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明の実施例1における固定構造体を示した斜視図、図2は同要部の断面図であり、この固定構造体は、図1に示すように基板12と、この基板12の一方の上面に実装した電子部品13と、この電子部品13で生じた熱を放熱するための放熱板14とを備えている。そして、基板12は図2に示すように、基板12に設けた貫通孔15に貫通させたネジ部16とネジ部16に連結した頭部17とからなる固定手段18と、放熱板14の一部を延伸した部位である固定部19とによって挟持され、基板12と放熱板14との位置関係が固定された状態としている。当然ながら、固定手段18と固定部19とは、固定部19の内周側に設けたメスネジ部20とネジ部16とによって螺合された状態で固定されている。
【0014】
ここで、貫通孔15の孔径寸法がネジ部16の外径寸法よりも大きく、かつ、貫通孔15の孔径寸法が固定手段18の外径寸法およびワッシャ21の外径寸法よりも小さい場合、貫通孔15と固定部19と固定手段18およびワッシャ21とによって囲まれた領域に空隙部として第1空間部22が形成されることとなる。そして、この第1空間部22と外部とを連通する連通手段として第2空間部23を固定部19に形成している。
【0015】
この構成によれば、固定部19と固定手段18の周囲を樹脂やはんだ付けによる接合や或いは溶接により覆う状態としても、第1空間部22は第2空間部23と連結されて通じた状態としているために密閉された状態とはなりにくいこととなる。これにより、第1空間部22において温度の上昇が生じても、そこでの圧力の上昇は伴うことがなく、結果として密着力の比較的小さなレジスト24と基板12との間に第1空間部22の圧力の上昇に伴う膨張した大気の侵入は生じないこととなる。従って、基板12やレジスト24に変形や寸法上の歪は起こらず、固定部19や固定手段18と、基板12との位置関係に変化は生じず、各部位の位置関係等を安定的に保つことができることとなる。また、レジスト24に覆われた配線パターン25に対し、膨張した大気による応力が加わることがなく、ワッシャ21の外側に位置する配線パターン25であれば、第1空間部22での温度の上昇があっても断線等を引き起こすこともない。
【0016】
ここで、第1空間部22に連通する連通手段については図3の側面図に示すように、固定部19に基板12とは接することがない溝面を有した溝部26を設け、この溝部26を図2に示す第2空間部23として用いることが可能である。
【0017】
また、図3に示すように溝部26は、頭部17や頭部17が接するレジスト24および配線パターン(図示せず)とは基板12における反対側の面に設けていることで、仮に溝部26の開口側が何らかの外的要因に(例えば溶接材や接着剤など)よって閉塞される状態となっても、図2に示す第2空間部23の内部には図中の上下方向の圧力上昇が温度の上昇に伴って生じることとなる。そしてこの圧力は基板12と頭部17やワッシャ21との押圧力が平均して増加する方向にも作用するためレジスト24と基板12との密着度が高くなり、レジスト24と基板12との間に大気が侵入することを抑制する方向に作用することとなる。さらにこの抑制の効果を高めるために、第1空間部22の体積よりも第2空間部23の体積を大きくし、上下方向の圧力を広範囲に生じさせることが望ましい。これについては、第2空間部23を主に固定部19を用いて形成することで第2空間部23の体積を調整するにあたっての制御が非常に容易であり、かつその体積の許容範囲が大きくなる。あるいは、図示の実施例で第2空間部23はネジ部16を中心として左右の2方向に設けた状態としているが、左右いずれかの一方でも構わないものの、ネジ部16を中心として十字状に交差させた4方向としても、また5方向や6方向としても構わない。つまり、第2空間部23を複数配置して設けることにより、第2空間部23の開口側が閉塞状態になる確率を低減させることができると同時に、仮に全てが閉塞状態となった際にも上述の第2空間部23における上下方向の圧力が、ネジ部16を軸としたその周囲方向に分散して存在することとなるため、レジスト24と基板12との間に大気が侵入し易くなる部位と侵入し難い部位との差を小さくすることとなり、特定の部位にその力が集中しなくなる。その結果としてレジスト24と基板12との間への大気の侵入を一層抑制することとなる。当然ながら、上記の閉塞状態になる確率を低減させるために、第2空間部23を図中の左右方向に大きく延伸させても構わないものであり、これもまた第2空間部23を主に固定部19を用いて形成することによる利点である。そして、複数の第2空間部23を形成するにあたっては、ネジ部16を中心に対称形に配置することで、より一層に、レジスト24と基板12との間に大気が侵入し易くなる部位あるいは侵入し難い部位の差を小さくすることとなる。
【0018】
ここでは、図1に示すように放熱板14を基板12へ固定するにあたっての構造として上記のように、図2に示す固定手段18と固定部19との構造について説明したが、この固定構造については図1に示す放熱板14と基板12との固定に限るものではなく、通電用導体としてのバスバー27と基板12との固定に適用しても構わないものであり、また、遮蔽体28と基板12との固定に適用しても構わない。またあるいは、大電流対応のデバイスなどの電極端子(図示せず)が大型化するものである場合は、その電極端子(図示せず)と基板12との固定に適用しても構わない。特に固定部19を放熱板14や大電流対応のデバイスなどの電極端子(図示せず)として固定構造を適用する場合、電子機器の動作中における自己の発熱による図2に示す第1空間部22、第2空間部23の圧力の上昇を抑制できるとともに、固定部19および固定手段18と、基板12との位置関係を安定的に維持することができる。また、固定部19は頭部17に比較して、基板12の平面方向の寸法を大きくする方向に制御し易いとともに、上記のように電気的や熱的な伝導特性を向上させることが容易でもある。
【0019】
なお、ここでは基板12の一方側の面にレジスト24を設けた形態を実施例として示しているが、基板12の両面にネジ部16や固定部19と接するレジスト24を設けても何ら問題はない。
【0020】
以下、実施例2を用いて、本発明の特に請求項3、4に記載の発明について説明する。
【実施例2】
【0021】
図4は本発明の実施例2における固定構造体の断面図であり、この固定構造体は、基板12に設けた貫通孔15に貫通させたネジ部16とネジ部16に連結した頭部17とからなる固定手段18と、固定部19とによって挟持されて位置関係が固定された状態としている。当然ながら、固定手段18と固定部19とは、固定部19の内周側に設けたメスネジ部20とネジ部16とによって螺合された状態で固定されている。
【0022】
ここで、貫通孔15の孔径寸法がネジ部16の外径寸法よりも大きく、かつ、貫通孔15の径寸法が固定手段18の外径寸法およびワッシャ21の外径寸法よりも小さい場合、貫通孔15と固定部19と固定手段18およびワッシャ21とによって囲まれた領域に空隙部として第1空間部22が形成されることとなる。そして、この第1空間部22に連結して通じた連通手段としての第2空間部29を固定部19の特にメスネジ部20に形成しており、この第2空間部29は、固定部19の基板12に対面する側であるネジ部16を挿入させる側の開口と、固定部19の基板12との反対側に位置する側の開口との双方の開口に連なるように設けられている。つまり、図5の上面図に示すように、固定部19におけるネジ部16の周囲に位置するメスネジ部20の一部に切り欠きに相当する内周溝部30を設けることにより第2空間部29を設けている。
【0023】
ここでは、固定部19に1つの内周溝部30を設ける例を示しているが、複数をネジ部16の周囲に配置しても構わない。またあるいは、内周溝部30としているものの、溝状に狭い切り欠き状のものである必要はなく、メスネジ部20の周囲においてネジ部16へ向かって開口した扇状としても構わない。これにより後述するところの、第2空間部29の閉塞化の抑制や、固定部19とネジ部16との固定状態の安定的な維持を一層効果的にすることができる。
【0024】
この構成によれば、図4に示す固定手段18の周囲を樹脂や溶接あるいははんだ接合などにより覆う状態としても、固定部19における基板12との反対側に位置する側の開口である図中上側の開口を維持すれば、第1空間部22は第2空間部29と連結されているために密閉された状態とはなりにくいこととなる。また、仮に第2空間部29の図中上方の側の開口が閉塞状態となっても、図示はしていないが固定部19の円筒部外周面から第2空間部29までにネジ部16の軸方向とは概ね垂直方向に通じる通気孔を設けることで密閉状態を回避する手段としても構わない。
【0025】
以上のことから、基板12やレジスト24に変形や寸法上の歪は起こりにくく、固定部19や固定手段18と、基板12との位置関係に変化は生じにくくなり、各部位の位置関係等を安定的に保つことができることとなる。
【0026】
また、固定部19の基板12との反対側に位置する側の開口の維持、つまり、第1空間部22および第2空間部29の閉塞化を低減する手段としては、第2空間部29を図中の上方に向かうにつれて広がるテーパ状とすることにより基板12側よりも上方側の開口面積を大きくし、寸法上での開口の維持を容易にすることができる。あるいは、第2空間部29をネジ部16の軸方向に対して平行方向に直線状に延伸するのではなく、ネジ部16の軸方向に対して傾斜を持たせて延伸する、もしくはネジ部16の軸方向に対してネジ部16の螺旋よりも小さな角度を有したうえでの螺旋を描くように螺旋状や非直線状として第2空間部29を図5に示す内周溝部30によって設けても構わない。これは例えば、図5における線分Y−Y’についてネジ部16を除去した状態で矢印Xの方向から見た図6の断面図に示すように、基板12の貫通孔15の軸上に固定させた固定部19の内周側に設けた第2空間部29にあたる内周溝部30に、メスネジ部20が形成された領域で傾斜を持たせ、そのうえで双方の開口側へと縦断させるとよい。この傾斜を持たせる方向としては、メスネジ部20が右ネジであれば内周溝部30が固定部19における図中の右上から左下へと向かう方向に設けることや、その逆の図中の左上から右下へと向かう方向に設けることでも構わない。
【0027】
このように内周溝部30に傾斜を持たせることより、図4のように頭部17を下方(重力の作用方向)に、固定部19を上方に位置させた条件として溶接や接着の作業を行う場合、図6に示す図中の上方に該当する内周溝部30の開口側から溶接材や接着剤が、内周溝部30へ侵入しようとしても、これらはメスネジ部20の螺旋の傾斜および重力の関係で、内周溝部30の一方側(図中A側)に集中しやすくなり、内周溝部30の他方側(図中B側)には存在し難くなる。これにより内周溝部30の閉塞化が生じ難くなるとともに、溶接材や接着剤による固定面積が内周溝部30の上方から下方にかけて増加することとなるので、固定部19とネジ部16との固定状態を安定的に維持することができる。
【0028】
当然ながら、図4とは逆に固定部19を下方(重力の作用方向)に、頭部17を上方に位置させる条件とすれば、内周溝部30へ溶接材や接着剤が侵入する状況は生じにくくなり、第2空間部29を閉塞状態とさせる状態を生じにくくさせることができる。
【0029】
以下、実施例3を用いて、本発明の請求項5、6に記載の発明について説明する。
【実施例3】
【0030】
図7は本発明の実施例3における固定構造体の側面図であり、ここでは、頭部17と固定部19とによって、その表面にレジスト24を形成した基板12を挟持するにあたり、頭部17における基板12やレジスト24との接触面、あるいはワッシャ21における基板12やレジスト24との接触面に凹凸を設けている。
【0031】
これにより、図8の断面図に示すように、ネジ部16と貫通孔15との間に設けた空隙部である第1空間部22と、ワッシャ21とレジスト24あるいは基板12との間に設けた連通手段である第2空間部31とが連結されて通じることとなる。そして、第2空間部31の第1空間部22との非連結側を開口側としている。
【0032】
この構成によれば、固定部19や固定手段18の周囲を樹脂や溶接により覆う状態としても第1空間部22は第2空間部31と連結されているために密閉された状態とはなりにくいこととなる。これにより、第1空間部22において温度の上昇が生じても、そこで圧力の上昇は伴うことがなく、結果として密着力の比較的小さなレジスト24と基板12との間に第1空間部22の圧力の上昇に伴う膨張した大気の侵入は生じないこととなる。この結果として基板12やレジスト24に変形や寸法上の歪は起こらず、固定部19や固定手段18と、基板12との位置関係に変化は生じず、各部位の位置関係等を安定的に保つことができることとなる。
【0033】
また、図8ではワッシャ21に凹凸を設けることで第2空間部31を設ける形態を示しているが、ワッシャ21を設けず頭部17における基板12に位置する側へ凹凸を設けることで第2空間部31を設けても構わない。あるいは、頭部17とワッシャ21との間に第2空間部31を設けるように、頭部17あるいはワッシャ21に凹凸を形成しても構わない。
【0034】
一方、ここでは頭部17やワッシャ21に凹凸を設けることによって第2空間部31を設けることとしているが、凹凸の代用となるスペーサ(図示せず)によって第2空間部31を設けても構わない。
【0035】
つまり、これらは頭部17やワッシャ21に付随して伴う部分において第2空間部31を形成するため、第2空間部31の体積を任意にかつ安価で制御しやすくなり、第1空間部22に対する第2空間部の適正な体積の決定を容易に可能とするものである。当然ながら、第2空間部31は複数の部位に存在することが望ましい。
【0036】
また、図示はしていないがワッシャ21への凹凸の有無にかかわらず、ワッシャ21をC字状の開口部を有した環状の形態としても構わない。その場合は、開口部が図8に示す第2空間部31として示した何れか一方のみに存在して該当することとなる。そしてこの開口部の寸法としては、一般的なスプリングワッシャのように開口部の先端どうしが接触しない程度の微小な空隙ではなく、ネジ部16の外径寸法と同等程度もしくはそれ以上の寸法の開口部を有することが望ましい。これは、ここまででも述べているように、第2空間部31は樹脂や溶接などによって閉塞状態とならないことが望ましく、微小な空隙では毛細管現象などが生じ易いことなどから液状の接着材や固着材が第2空間部31へ侵入する恐れがあり、これを抑制するためである。従って、ネジ部16の外径寸法と同等程度もしくはそれ以上の寸法の開口部とすることで第2空間部31を閉塞状態となりにくくすることができる。そして同時に、第1空間部22に対する第2空間部31の体積の比率を大きくすることで、仮に第1空間部22や第2空間部31が閉塞状態となった場合においても、圧力上昇時には基板12とレジスト24との境界のみならず第2空間部31においてレジスト24の図中での上下方向へもその圧力が加わることとなり、結果として密着力の比較的小さなレジスト24と基板12との間に膨張した大気の侵入を抑制することができる。
【0037】
以下、実施例4を用いて本発明の特に請求項7〜9に記載の発明について説明する。
【実施例4】
【0038】
図9は本発明の実施例4における固定構造体を示した斜視図、図10は同要部の断面図であり、この配線基板固定構造体は図9に示すように基板12と、この基板12の一方の上面に大電流を通電するための導体であるバスバー27を備えている。
【0039】
そして、基板12は図10に示すように、基板12に設けた貫通孔15に貫通させたネジ部16とネジ部16に連結した頭部17とからなる固定手段18と、バスバー27の一部を延伸した部位である固定部19によって挟持されて位置関係を固定された状態としている。当然ながら、固定手段18と固定部19とは、固定部19の内周側に設けたメスネジ部20とネジ部16とによって螺合された状態で固定されている。
【0040】
ここで、貫通孔15と固定部19と固定手段18およびワッシャ21とによって囲まれた領域に空隙部として第1空間部22が形成されることとなる。そして、この第1空間部22に連結して通じた連通手段である第2空間部32を基板12に形成している。この第2空間部32は図9に示すように基板12の一方の面側、あるいは両面の基板溝部33によって設けられ、図10に示すように第2空間部32が第1空間部22に連結されている。このとき、第2空間部32の第1空間部22との非連結側となる外部への開口は、固定部19が基板12と接する部位である外周部36よりも外側に延伸していることが必要となる。
【0041】
この構成によれば、第1空間部22は第2空間部32と連結されて開口した状態としているために密閉された状態とはなりにくいこととなる。これにより、第1空間部22において温度の上昇が生じても、そこでの圧力の上昇は伴うことがなく、結果として密着力の比較的小さなレジスト24と基板12との間に第1空間部22の圧力の上昇に伴う膨張した大気の侵入は生じないこととなる。従って、基板12やレジスト24に変形や寸法上の歪は起こらず、固定部19や固定手段18と、基板12との位置関係に変化は生じず、各部位の位置関係等を安定的に保つことができることとなる。
【0042】
ここでは第2空間部32を、基板12におけるレジスト24や配線パターン25を形成した面とは反対側の面に設けている。基本的に何れか一方の面、あるいは両面に形成することで問題はないものの、基板12とレジスト24との接合面からの大気の侵入を抑制する点から、基板12とレジスト24との接合面が第1空間部22や第2空間部32において露出する部位を少なくした方が望ましいこととなる。よって、第2空間部32を、基板12におけるレジスト24や配線パターン25を形成した面とは反対側の面に設けることが望ましい。また、頭部17やワッシャ21側に第2空間部32(図示せず)を設ける際は、頭部17やワッシャ21の外周よりも外側に延伸していることが必要となる。
【0043】
またあるいは、図11の断面図に示すように、第2空間部34を基板12の両面側に貫いた貫通状態の形態としても構わない。この場合、第2空間部34は第1空間部22に対して大きな体積を得易いことから、図12に示すように基板12において頭部17やワッシャ21の外周よりも外側に第2空間部34が延伸していることで十分な密閉状態の回避に対する効果を得ることができる。
【0044】
一方、図13に示すように、基板12における空間部として設けるのは空隙部としての第1空間部22のみとし、この第1空間部が外部に露出するように頭部17やワッシャ21に切り欠き部35を設け、これを連通手段としても構わない。切り欠き部35としては図示したように直線状に形成したものでも構わないが、頭部17に扇状の切り欠きを頭部17の中央へ向かう形で設けても構わない。そして、この扇状の切り欠きの先端が第1空間部22に達する状態であればそれでよい。
【0045】
ここでは図9に示すバスバー27を一例として説明したが、放熱板(図示せず)の取り付けやデバイスの電極端子(図示せず)の取り付けに適用しても構わないのは勿論である。
【0046】
以上においては、個別の実施例を個々に説明しているが、当然ながら複数の実施例を組み合わせることで実施しても構わないものである。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の配線基板固定構造体は、信頼性の高い機械的固定および電気的接続を得る効果を有し、基板の固定構造を各種電子機器に適用するにあたって有用である。
【符号の説明】
【0048】
12 基板
13 電子部品
14 放熱板
15 貫通孔
16 ネジ部
17 頭部
18 固定手段
19 固定部
20 メスネジ部
21 ワッシャ
22 第1空間部
23、29、31、32、34 第2空間部
24 レジスト
25 配線パターン
26 溝部
27 バスバー
28 遮蔽体
30 内周溝部
33 基板溝部
35 切り欠き部
36 外周部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にレジストが設けられると共に貫通孔が設けられた配線基板上にネジ孔が設けられた固定部を有する実装部品を配置し、この実装部品の固定部に設けられたネジ孔に上記配線基板に設けられた貫通孔を挿通してネジ部と頭部からなる固定部材を螺合することにより、上記配線基板が上記固定部材の頭部と実装部品の固定部によって挟持された固定構造体において、上記配線基板に設けた貫通孔の周面と固定部材の周面との間に形成される空隙部を外部と連通させるための連通手段を設けた固定構造体。
【請求項2】
配線基板に設けた貫通孔の周面と固定部材の周面との間に形成される空隙部を外部と連通させるための連通手段として、実装部品の固定部の配線基板と当接する面に、ネジ孔から固定部の外部へと延伸する溝部を設けた請求項1に記載の固定構造体。
【請求項3】
配線基板に設けた貫通孔の周面と固定部材の周面との間に形成される空隙部を外部と連通させるための連通手段として、実装部品の固定部に設けられたネジ孔に前記固定部の一方の開口側から他方の開口側へと延伸する溝部を設けた請求項1に記載の固定構造体。
【請求項4】
溝部の延伸方向はネジ孔の軸方向に対して傾斜を有して設けられた請求項3に記載の固定構造体。
【請求項5】
配線基板に設けた貫通孔の周面と固定部材の周面との間に形成される空隙部を外部と連通させるための連通手段として、頭部の前記配線基板側に凹凸部を形成することで前記頭部と前記配線基板との間に空間を設けた請求項1に記載の固定構造体。
【請求項6】
配線基板に設けた貫通孔の周面と固定部材の周面との間に形成される空隙部を外部と連通させるための連通手段として、頭部と前記配線基板との間に配置したワッシャの前記配線基板側に凹凸部を形成することで前記ワッシャと前記配線基板との間に空間を設けた請求項1に記載の固定構造体。
【請求項7】
配線基板に設けた貫通孔の周面と固定部材の周面との間に形成される空隙部を外部と連通させるための連通手段として、前記配線基板の固定部への当接面において前記貫通孔から前記固定部の外周に達する基板溝部を設けた請求項1に記載の固定構造体。
【請求項8】
配線基板に設けた貫通孔の周面と固定部材の周面との間に形成される空隙部を外部と連通させるための連通手段として、前記貫通孔に固定部材の外周側へ延伸した貫通孔延伸部を設けた請求項1に記載の固定構造体。
【請求項9】
配線基板に設けた貫通孔の周面と固定部材の周面との間に形成される空隙部を外部と連通させるための連通手段として、頭部に切り欠き部を設けた請求項1に記載の固定構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−74003(P2013−74003A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210363(P2011−210363)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】