説明

固定砥粒ワイヤ及びそれを備えた切断装置ならびにウエハ

【課題】被加工物を切削加工して形成したウエハの強度の低下を抑制することが可能な、固定砥粒ワイヤ及びそれを備えた切断装置と、固定砥粒ワイヤまたは切断装置を用いて作製されたウエハを提供する。
【解決手段】線状のワイヤ本体22と、ワイヤ本体22の外径面に固着している複数の砥粒24を備え、被加工物Wの切削加工に用いる固定砥粒ワイヤ14であって、複数の砥粒24のうち被加工物Wの切削加工に寄与する砥粒24を、複数の砥粒24がワイヤ本体22の外径面から突出している突出量の分布において、突出量の区間の幅が4.5[μm]以内となるように調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤ本体に複数の砥粒を固着させて形成した固定砥粒ワイヤと、その固定砥粒ワイヤを備える切断装置に関し、特に、シリコンブロック等の被加工物を切断してウエハを形成するための固定砥粒ワイヤ及びそれを備えた切断装置と、固定砥粒ワイヤまたは切断装置を用いて作製されたウエハに関する。
【背景技術】
【0002】
多結晶シリコン等で形成されているシリコンブロック等の被加工物を切断して、複数枚のウエハを形成する切断装置がある。このような切断装置としては、例えば、固定砥粒ワイヤを備えたワイヤソーが用いられている。
固定砥粒ワイヤは、線状のワイヤ本体に複数の砥粒を固着させて形成されており、被加工物の切削加工に用いる。
上記のような固定砥粒ワイヤは、例えば、特許文献1に記載されているように、ワイヤ本体として高張力線材等を用い、砥粒としてダイヤモンド等を用いて、めっき層等の固着手段により、複数の砥粒をワイヤ本体の外径面に固着して形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000‐288902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載されている固定砥粒ワイヤを含め、従来の固定砥粒ワイヤでは、一般的に、複数の砥粒は、ワイヤ本体の外径面から突出している突出量の分布において、突出量の区間の幅が8〜10[μm]程度となっている場合が多い。また、複数の砥粒には、他の砥粒と比較してワイヤ本体の外径面から突出している突出量が低い砥粒等、実質的に被加工物の切削加工に寄与する度合いが低い砥粒が存在している。
【0005】
そして、複数の砥粒のうち、被加工物の切削加工に寄与する度合いが高い砥粒の、ワイヤ本体の外径面から突出している突出量の分布において、突出量の区間の幅が適切な値よりも大きいと、被加工物のうち、切削加工の際に固定砥粒ワイヤと接触した部分に加わる応力が高くなる。このため、形成したウエハの強度が低下するという問題が発生するおそれがある。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、被加工物を切削加工して形成したウエハの強度の低下を抑制することが可能な、固定砥粒ワイヤ及びそれを備えた切断装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のうち、請求項1に記載した発明は、線状のワイヤ本体と、前記ワイヤ本体の外径面に固着している複数の砥粒と、を備え、被加工物の切削加工に用いる固定砥粒ワイヤであって、
前記ワイヤ本体の外径面から突出する前記複数の砥粒の突出量の分布において、全砥粒のうち95.4%の砥粒は前記突出量の区間の幅が6.0[μm]以内となっており、
前記突出量の区間の幅が6.0[μm]以内の砥粒のうち、前記突出量が大きい方から標準偏差σの三倍分の砥粒は、前記突出量の区間の幅が4.5[μm]以内となっていることを特徴とするものである。
【0007】
本発明によると、ワイヤ本体の外径面から突出する複数の砥粒の突出量の分布において、全砥粒のうち95.4%の砥粒は突出量の区間の幅が6.0[μm]以内となっており、突出量の区間の幅が6.0[μm]以内の砥粒のうち、突出量が大きい方から標準偏差σの三倍分の砥粒は、突出量の区間の幅が4.5[μm]以内となっている。
【0008】
このため、被加工物の切削加工において、複数の砥粒のうち、被加工物と接触する可能性が低い砥粒や、即座にワイヤ本体から除去されてしまう可能性が高いものを除いた砥粒を、上述した区間の幅が4.5[μm]以内となっている区間に含まれる砥粒として調整することが可能となる。
その結果、複数の砥粒のうち被加工物Wの切削加工に寄与する砥粒を、突出量の大きさの差が少ない砥粒とすることが可能となり、被加工物のうち、切削加工の際に固定砥粒ワイヤと接触した部分に加わる応力の増加を抑制することが可能となる。
【0009】
次に、本発明のうち、請求項2に記載した発明は、線状のワイヤ本体と、前記ワイヤ本体の外径面に固着している複数の砥粒と、を備え、被加工物の切削加工に用いる固定砥粒ワイヤであって、
前記固定砥粒ワイヤに対するドレッシングを行った後の前記ワイヤ本体の外径面から突出する前記複数の砥粒の突出量の分布において、前記突出量が大きい方から突出量の区間の幅が4.5[μm]以内となる区間に含まれる砥粒数は、全砥粒数の70%以上であることを特徴とするものである。
【0010】
本発明によると、固定砥粒ワイヤに対するドレッシングを行った後のワイヤ本体の外径面から突出する複数の砥粒の突出量の分布において、突出量が大きい方から突出量の区間の幅が4.5[μm]以内となる区間に含まれる砥粒の数を、全砥粒数の70%以上としている。
このため、固定砥粒ワイヤを形成する際に、上述した突出量の区間の幅が4.5[μm]よりも大きくなった場合であっても、固定砥粒ワイヤに対するドレッシングを行った後は、被加工物の切削加工に寄与する砥粒に対し、突出量の区間の幅を4.5[μm]以下とすることが可能となる。
【0011】
次に、本発明のうち、請求項3に記載した発明は、請求項1または請求項2に従属する発明であって、前記複数の砥粒の平均断面積をX[μm2]とし、長さ1[mm]当たりで前記ワイヤ本体の外径面に固着している前記砥粒の数をF個とした場合に、
前記Fを、最小値を100とし、且つ以下の式の範囲内としたことを特徴とするものである。
24000/X≦F≦36000/X
【0012】
本発明によると、複数の砥粒の平均断面積をX[μm]とし、長さ1[mm]当たりでワイヤ本体の外径面に固着している砥粒の数をF個とした場合に、Fを、最小値を100とし、且つ式「24000/X≦F≦36000/X」の範囲内としている。
このため、砥粒の粒径が小さくなるほど、長さ1[mm]当たりでワイヤ本体の外径面に固着している砥粒の数が増加することとなり、ワイヤ本体の外径面において砥粒が占める面積比の低下を抑制することが可能となる。
【0013】
次に、本発明のうち、請求項4に記載した発明は、前記被加工物を切断してウエハを形成する切断装置であって、
請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載した固定砥粒ワイヤと、
前記固定砥粒ワイヤを長さ方向へ移動可能なワイヤ移動手段と、を備えることを特徴とするものである。
本発明によると、請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載した構成の固定砥粒ワイヤと、この固定砥粒ワイヤを、固定砥粒ワイヤの長さ方向へ移動可能なワイヤ移動手段を備えている。
このため、固定砥粒ワイヤが、請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載した構成を備えていない場合と比較して、被加工物のうち、切削加工の際に固定砥粒ワイヤと接触した部分に加わる応力の増加を抑制することが可能となる。
【0014】
次に、本発明のうち、請求項5に記載した発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載した固定砥粒ワイヤを用いて作製されたことを特徴とするウエハである。
本発明によると、ウエハを、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載した固定砥粒ワイヤを用いて作製する。
このため、ウエハの材料となる被加工物のうち、切削加工の際に固定砥粒ワイヤと接触した部分に加わる応力の増加を抑制した状態で、ウエハを作製することが可能となる。
【0015】
次に、本発明のうち、請求項6に記載した発明は、請求項4に記載した切断装置を用いて作製されたことを特徴とするウエハである。
本発明によると、ウエハを、請求項4に記載した切断装置を用いて作製する。
このため、ウエハの材料となる被加工物のうち、切削加工の際に固定砥粒ワイヤと接触した部分に加わる応力の増加を抑制した状態で、ウエハを作製することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の砥粒のうち、被加工物の切削加工に寄与する砥粒を、複数の砥粒のワイヤ本体の外径面から突出する突出量の分布において、突出量の区間の幅が4.5[μm]以内となるように調整する。
このため、被加工物の切削加工に寄与する砥粒の突出量の区間の幅を適切な値として、被加工物のうち、切削加工の際に固定砥粒ワイヤと接触した部分に加わる応力を低減させることが可能となり、被加工物を切削加工して形成したウエハの強度の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一実施形態の切断装置の概略構成を示す図である。
【図2】固定砥粒ワイヤの構成を示す図であり、図2(a)は固定砥粒ワイヤを径方向から見た断面図、図2(b)は固定砥粒ワイヤを軸方向から見た断面図である。
【図3】突出量の区間の幅と、ウエハの強度との関係を示す図である。
【図4】複数の砥粒の突出量の分布を示す図である。
【図5】長さ1[mm]当たりでワイヤ本体の外径面に固着している砥粒の数と、ウエハの強度との関係を示す図である。
【図6】長さ1[mm]当たりでワイヤ本体の外径面に固着している砥粒の数と、複数の砥粒の平均断面積との関係を示す図である。
【図7】砥粒の粒径の分布を示す図である。
【図8】サンプルの構成を示す図である。
【図9】被加工物を切削加工する状態を示す図である。
【図10】突出量の測定要領を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第一実施形態、第二実施形態)
以下、本発明の第一実施形態および第二実施形態(以下、単に「本実施形態」とも記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
まず、図1から図8を用いて、本実施形態の切断装置の構成を説明する。
図1は、本実施形態の切断装置1の概略構成を示す図である。
図1中に示すように、切断装置1は、被加工物Wを切断して複数枚のウエハを形成する装置であり、一対のワイヤボビン2a,2bと、テンションローラ4と、ガイドローラ6と、駆動ローラ8と、従動ローラ10と、クーラントノズル12と、固定砥粒ワイヤ14を備えている。
【0019】
なお、本実施形態では、一例として、被加工物Wを多結晶シリコンブロックとし、複数枚のウエハとして、厚さ180〜220[μm]程度のシリコンウエハを形成する場合を説明する。
また、被加工物Wは、直方体に形成されており、ガラス板やカーボン板を用いて形成された保持板16に接着されている。保持板16は、固定板18に取り付けられており、固定板18は、被加工物Wを駆動ローラ8と従動ローラ10との間へ移動させることが可能なテーブル(図示せず)に固定されている。
【0020】
一対のワイヤボビン2a,2bは、共に、ボビン駆動用モータ(図示せず)の回転軸に取り付けられており、ボビン駆動用モータの駆動に応じて回転する。
また、一対のワイヤボビン2a,2bには、それぞれ、固定砥粒ワイヤ14の端部が取り付けられている。すなわち、固定砥粒ワイヤ14の両端部は、一対のワイヤボビン2a,2bに支持されている。
【0021】
また、一対のワイヤボビン2a,2bは、切断装置1の動作時において、一方が固定砥粒ワイヤ14を払い出す(送り出す)構成として機能し、他方が固定砥粒ワイヤ14を巻き取る(回収する)構成として機能する。
テンションローラ4は、一対のワイヤボビン2a,2b間に配置されており、その外径面には、固定砥粒ワイヤ14が接触している。なお、本実施形態では、一例として、一対のワイヤボビン2a,2b間において、被加工物Wを挟んで、二つのテンションローラ4が配置されている場合を示す。
また、各テンションローラ4には、テンションローラ4を固定砥粒ワイヤ14の径方向へ移動可能であり、テンションローラ4を固定砥粒ワイヤ14に押圧可能なアクチュエータ20が設けられている。
【0022】
アクチュエータ20は、例えば、油圧シリンダー等を用いて形成されており、固定砥粒ワイヤ14の張力を予め設定した張力(27[N]以上。例えば、30[N]程度)とするために、テンションローラ4を固定砥粒ワイヤ14に押圧する。
ガイドローラ6は、一対のワイヤボビン2a,2b間に配置されており、その外径面には、固定砥粒ワイヤ14が接触している。
駆動ローラ8は、ローラ駆動用モータ(図示せず)の回転軸に取り付けられており、モータの駆動に応じて回転する。なお、ローラ駆動用モータは、例えば、上述したボビン駆動用モータと同期させて回転させる。
【0023】
従動ローラ10は、駆動ローラ8と離間して配置されている。
また、従動ローラ10の回転軸は、駆動ローラ8の回転軸と平行に向けられている。
また、駆動ローラ8と従動ローラ10には、固定砥粒ワイヤ14が複数回に亘って巻きつけられており、駆動ローラ8と従動ローラ10との間には、複数列の固定砥粒ワイヤ14による切削加工列が形成されている。なお、固定砥粒ワイヤ14は、駆動ローラ8と従動ローラ10との間において、隣り合う固定砥粒ワイヤ14の間(ピッチ)が、例えば、325[μm]となるように、駆動ローラ8と従動ローラ10との間に巻きつけられている。
【0024】
以上により、一対のワイヤボビン2a,2b、ボビン駆動用モータ、駆動ローラ8及びローラ駆動用モータは、固定砥粒ワイヤ14を、固定砥粒ワイヤ14の長さ方向へ移動可能なワイヤ移動手段を形成している。
クーラントノズル12は、駆動ローラ8及び従動ローラ10の近傍に配置されており、被加工物Wと固定砥粒ワイヤ14との接触部分へ向けて、液体を噴射する。クーラントノズル12が噴射する液体は、例えば、被加工物Wの切断時に発生する切断粉の排出性向上、被加工物Wの切断時に発生する加工熱の吸収、被加工物Wの切断時において被加工物Wの固定砥粒ワイヤ14との間に発生する切断抵抗の減少等を目的として用いる。
【0025】
固定砥粒ワイヤ14は、図2中に示すように、ワイヤ本体22と、複数の砥粒24を備えている。なお、図2は、固定砥粒ワイヤ14の構成を示す図であり、図2(a)は固定砥粒ワイヤ14を径方向から見た断面図、図2(b)は固定砥粒ワイヤ14を軸方向から見た断面図である。
ワイヤ本体22は、例えば、高張力線材を用いて形成されている。
【0026】
また、ワイヤ本体22の外径面には、めっき層等からなる固着層26が形成されている。すなわち、ワイヤ本体22の外径面は、固着層26により被覆されている。このため、以降の説明では、ワイヤ本体22の外径面を、固着層26の表面(外面)として記載する。
各砥粒24は、例えば、ダイヤモンドの粒体・粉体を用いて形成されており、固着層26を介してワイヤ本体22に固着されて、ワイヤ本体22の外径面(固着層26の表面)から突出している。
【0027】
また、複数の砥粒24の、ワイヤ本体22の外径面から突出する突出量(図2中に符号「H」で示す、ワイヤ本体22の径方向に沿った長さ。以降の説明では、「突出量H」と記載する場合がある)の分布において、第一実施形態では、分布中心点(最大値)から計数して全砥粒数の95.4%の範囲に含まれる砥粒24は、突出量Hの区間の幅が6.0[μm]以内である。これに加え、突出量Hの区間の幅が6.0[μm]以内の砥粒24のうち、突出量Hの上限から下限に向けて、突出量Hの分布の3σの範囲が、4.5[μm]以下となっている。
【0028】
すなわち、第一実施形態では、突出量Hの区間の幅が6.0[μm]以内の砥粒24のうち、突出量Hが大きい方から標準偏差σの三倍分(3σ)の砥粒24は、突出量Hの区間の幅が4.5[μm]以内となっている。したがって、標準偏差σは、1.5[μm]である。
また、第二実施形態では、固定砥粒ワイヤに対するドレッシングを行った後の突出量Hの分布において、突出量Hの区間の幅が大きい方から4.5[μm]以内となる区間に含まれる砥粒24の数は、全砥粒数の70%以上の数となっている。
【0029】
ここで、図1及び図2を参照しつつ、図3を用いて、突出量Hの区間の幅が4.5[μm]以内となっている区間に含まれる砥粒24の数を、複数の砥粒24のうち70%以上の数とした理由を説明する。
複数の砥粒24のうち、突出量Hの区間の幅が4.5[μm]以内となっている区間に含まれる砥粒24と比較して突出量Hが低い砥粒24は、ワイヤ本体22と被加工物Wとの接触防止に寄与する度合いが高いものの、被加工物Wの切削加工において、被加工物Wと接触する可能性が低い砥粒24である。
【0030】
一方、複数の砥粒24のうち、突出量Hの区間の幅が4.5[μm]以内となっている区間に含まれる砥粒24と比較して突出量Hが高い砥粒24は、被加工物Wの切削加工において、即座にワイヤ本体22から除去される可能性が高い砥粒24である。
したがって、突出量Hの区間の幅が4.5[μm]以内となっている区間に含まれていない砥粒24、すなわち、突出量Hが低い砥粒24及び高い砥粒24は、突出量Hの区間の幅が4.5[μm]以内となっている区間に含まれる砥粒24と比較して、実質的に被加工物Wの切削加工に寄与する度合いが低い砥粒24となる。
【0031】
また、図3中に示すように、上述した突出量Hの分布において、突出量Hの区間の幅が4.5[μm]よりも大きい砥粒24のみを固着させた固定砥粒ワイヤ14を用いて、被加工物Wを切断すると、被加工物Wを切断して形成したウエハの強度が、ウエハの厚さ等に応じた所望の強度R(例えば、0.8[MPa])未満となる。これは、突出量Hの区間の幅が4.5[μm]よりも大きいと、被加工物Wのうち、切削加工の際に固定砥粒ワイヤ14と接触した部分に加わる応力が高くなるためである。なお、図3は、突出量Hの区間の幅と、ウエハの強度との関係を示す図である。また、図3中では、縦軸に、ウエハの強度(図中では、「ウエハ強度)」と記載する)を示し、横軸に、突出量Hの区間の幅(図中では、「突出量の区間の幅[μm])」と記載する)を示している。
【0032】
以上説明した理由により、本実施形態では、複数の砥粒24のうち、上述した突出量Hの区間の幅が4.5[μm]以内となっている区間に含まれ、且つ複数の砥粒の70%以上の数である砥粒24を、被加工物Wの切削加工に寄与する砥粒24(寄与する度合いが高い砥粒24)と規定する。これに加え、被加工物Wの切削加工に寄与すると規定した砥粒24の大きさを、上述した突出量Hの区間の幅が4.5[μm]以内となるように調整する。
【0033】
一方、分布中心点(最大値)から計数して全砥粒数の95.4%の範囲に含まれる砥粒24の突出量Hの区間の幅が6.0[μm]以内であることに加え、突出量Hの区間の幅が6.0[μm]以内の砥粒24のうち、突出量Hの上限から下限に向けて、突出量Hの分布の3σの範囲が、4.5[μm]以下となっていれば、上述したように、3σの幅は、突出量Hの区間で連続する約95.4%の幅となるため、突出量Hの区間の幅が4.5[μm]以内となっている区間に含まれる砥粒24の数は、複数の砥粒24のうち、70%以上の数となっている。
【0034】
以上、突出量Hの区間の幅が4.5[μm]以内となっている区間に含まれる砥粒24の数を、複数の砥粒24のうち70%以上の数とした理由の説明を終了する。
ここで、第一実施形態では、全砥粒数の95.4%の範囲となる砥粒24が含まれる区間は、図4(a)中に示すように、突出量Hの分布における、突出量Hの分布の比率の最大値(図中に示す点Pの値)を含んでいる。
【0035】
また、第二実施形態では、固定砥粒ワイヤに対するドレッシングを行った後の突出量Hの区間の幅が4.5[μm]以内となっている区間は、図4(b)中に示すように、突出量Hの分布における、突出量Hの分布の比率の最大値(図中に示す点Pの値)を含んでいる。
なお、図4は、複数の砥粒24の突出量Hの分布を示す図であり、縦軸に突出量Hの分布の比率を示し、横軸に、各砥粒24のうち、ワイヤ本体22の外径面から突出している突出量Hを示している。
【0036】
また、突出量Hの区間の幅は、突出量Hの分布において、突出量Hの分布の比率の最大値以上の第一区間と、突出量Hの分布において、突出量Hの分布の比率の最大値未満の第二区間とから構成されている。
第一実施形態では、一例として、図4(a)中に示すように、第二区間の幅を、突出量Hの分布の標準偏差σと等しい幅とし、第一区間の幅を、標準偏差σの二倍の幅(第二区間の二倍の幅)とした場合を示す。
【0037】
したがって、第一実施形態では、第一区間と第二区間を合計した区間の幅が、3σとなる。本実施形態において、3σの幅は、突出量Hの区間で連続する81.5%の幅となるため、第一区間と第二区間に含まれる砥粒24の数は、複数の砥粒24のうち、70%以上の数となっている。
また、第二実施形態では、使用前に固定砥粒ワイヤ14の表面を研磨することにより、突出量を揃える処理(ドレス処理、ドレッシング)を前提としている。
【0038】
第二実施形態の切断装置1が備える固定砥粒ワイヤ14は、上述した第一実施形態と異なり、固定砥粒ワイヤ14に対するドレッシングを行うことで、複数の砥粒24のうち、上述した突出量Hが、例えば、予め設定した突出量閾値を超える砥粒24を、ワイヤ本体22の外径面から除去している。ここで、突出量閾値は、例えば、複数の砥粒24の平均粒径や、突出量Hの分布等に応じて、予め設定しておく。
【0039】
このため、複数の砥粒24のうち、ドレッシングで除去された残りの砥粒24のうち、突出量が大きい方から突出量の区間の幅が4.5[μm]以内となる区間に含まれる砥粒の数が、全砥粒数の70%以上となっている。なお、ドレス処理後の突出量の分布においては、例えば、図4(c)に示すように、ドレス処理によっても若干(例えば2.5%程度)残留する突出量の大きい砥粒が含まれている。よって、図4(c)の点Cで表されるような、突出量が大きい方において分布が急変する点をもって、前記区間の幅を定める場合の上限(前記突出量が大きい方)とする。
【0040】
固定砥粒ワイヤ14に対して行うドレッシングとしては、例えば、回転する砥石の表面に対し、固定砥粒ワイヤ14を接触させながら走行させることにより、ツルーイングと同時に実施する方法を用いる。この場合、砥石を、テンションローラ4と、駆動ローラ8及び従動ローラ10のうち固定砥粒ワイヤ14の移動方向上流側のローラとの間に配置し、被加工物Wを切削加工する前の固定砥粒ワイヤ14に対して、ドレッシングを行うことが可能な構成としてもよい。
【0041】
また、長さ1[mm]当たりで、ワイヤ本体22の外径面に固着している砥粒24の数Fは、Fが100個以上であって、かつ、以下の式(1)が成立する数に設定されている。
(24000/X)≦F≦(36000/X) … (1)
ここで、上式(1)では、長さ1[mm]当たりでワイヤ本体22の外径面に固着している砥粒24の数をF個とし、複数の砥粒24の平均断面積をX[μm]とする。
すなわち、長さ1[mm]当たりでワイヤ本体22の外径面に固着している砥粒24の数Fは、100個を下限値として、複数の砥粒24の平均断面積X[μm]が小さくなるほど増加する。
【0042】
長さ1[mm]当たりでワイヤ本体22の外径面に固着している砥粒24の数Fの下限値を100個とした理由は、図5中に示すように、砥粒24の数Fが100個未満となると、被加工物Wを切断して形成したウエハの強度が、ウエハの厚さ等に応じた所望の強度R(例えば、0.8[MPa])未満となるためである。なお、図5は、長さ1[mm]当たりでワイヤ本体22の外径面に固着している砥粒24の数と、ウエハの強度との関係を示す図である。また、図5中では、縦軸に、ウエハの強度を示し、横軸に、長さ1[mm]当たりでワイヤ本体22の外径面に固着している砥粒24の数(図中では、「砥粒付着個数(個/1[mm])」と記載する)を示している。
【0043】
また、図5中には、大径の砥粒24(大径砥粒)を、符号「○」により示し、小径の砥粒24(小径砥粒)を、符号「▲」により示している。ここで、大径の砥粒24とは、突出量Hの分布における分布の比率のピーク値が、例えば、15[μm]以上の砥粒24であり、小径の砥粒24とは、突出量Hの分布における分布の比率のピーク値が、例えば、10[μm]以下の砥粒24である。
【0044】
したがって、本実施形態では、長さ1[mm]当たりでワイヤ本体22の外径面に固着している砥粒24の数Fは、図6中に示す範囲内となる。なお、図6は、長さ1[mm]当たりでワイヤ本体22の外径面に固着している砥粒24の数と、複数の砥粒24の平均断面積との関係を示す図である。また、図6中では、縦軸に、長さ1[mm]当たりでワイヤ本体22の外径面に固着している砥粒24の数(図中では、「砥粒付着個数(個/1[mm])」と記載する)を示し、横軸に、砥粒24の平均断面積(図中では、「砥粒の代表粒径(μm)」と記載する)を示している。
【0045】
なお、図6中において、横軸に示した砥粒24の代表粒径は、砥粒24の平均断面積を1/2乗した値に対応している。
ここで、砥粒24の平均断面積は、例えば、図7中に示す分布を参照し、砥粒24の粒径の参照最小値Dminと砥粒24の粒径の参照最大値Dmaxとを乗算して求める。なお、図7は、砥粒24の粒径の分布を示す図であり、縦軸に、砥粒24の粒径の比率を示し、横軸に、砥粒24の粒径寸法を示している。また、図7中に示すように、粒径の参照最小値Dminと参照最大値Dmaxとを合計した幅は、砥粒24の粒径の分布の標準偏差σの4倍(2σ+2σ)となる。すなわち、DminとDmaxの定義としては、標準偏差をσとすると、Dminが[砥粒の平均高さ(中央値)−2σ]、Dmaxが[砥粒の平均高さ(中央値)−2σ]となる。
【0046】
(長さ1[mm]当たりでワイヤ本体22の外径面に固着している砥粒24の数Fの検出方法)
以下、図1から図7を参照しつつ、図8を用いて、長さ1[mm]当たりでワイヤ本体22の外径面に固着している砥粒24の数Fを検出する方法について説明する。
固定砥粒ワイヤ14の状態を確認する場合等に、長さ1[mm]当たりでワイヤ本体22の外径面に固着している砥粒24の数Fを検出する際には、まず、固定砥粒ワイヤ14の一部として、長さ1[m]の固定砥粒ワイヤ14から、長さ3[mm]分のサンプルを20個採取(撮影)する。
【0047】
そして、図8中に示すように、一つのサンプル28から、サンプル28の外径面の1/6の部分に固着している砥粒24の数nを求め、この求めた数nを以下の式(2)へ代入して、長さ1[mm]当たりでサンプル28の外径面に固着している砥粒24の数n(個/1[mm])を求める。なお、図8は、サンプル28の構成を示す図であり、サンプル28を径方向から見た図である。また、図8中では、サンプル28の外径面の1/6の部分を、ハッチングにより示している。
=(n×6)/3 … (2)
次に、上式(2)で求めた、長さ1[mm]当たりでサンプル28の外径面に固着している砥粒24の数nを以下の式(3)へ代入して、長さ1[mm]当たりでワイヤ本体22の外径面に固着している砥粒24の数Fを求める。
【0048】
【数1】

【0049】
(動作・作用等)
以下、図1から図8を参照しつつ、図9を用いて、上記の構成を備えた固定砥粒ワイヤ14と、この固定砥粒ワイヤ14を備えた切断装置1が行う動作・作用等について説明する。
本実施形態の切断装置1を用いて、被加工物Wを切断して複数枚のウエハを形成する際には、ボビン駆動用モータを駆動させて一対のワイヤボビン2a,2bを回転させるとともに、ローラ駆動用モータを駆動させて駆動ローラ8を回転させる。これに加え、アクチュエータ20を駆動させて、テンションローラ4を固定砥粒ワイヤ14に押圧し、固定砥粒ワイヤ14の張力を予め設定した張力とする。これにより、駆動ローラ8と従動ローラ10との間に形成されている切削加工列を、固定砥粒ワイヤ14の長さ方向へ移動させる。
【0050】
上記のように、駆動ローラ8と従動ローラ10との間に形成されている切削加工列を、固定砥粒ワイヤ14の長さ方向へ移動させた状態で、固定板18及び保持板16を移動させて、被加工物Wを駆動ローラ8と従動ローラ10との間へ移動させる。これにより、被加工物Wを、駆動ローラ8と従動ローラ10との間に形成されている切削加工列(固定砥粒ワイヤ14)に接触させる。なお、被加工物Wと固定砥粒ワイヤ14が接触する際には、クーラントノズル12から、固定砥粒ワイヤ14と被加工物Wとの接触部分へ向けて、液体を噴射する。
【0051】
被加工物Wを駆動ローラ8と従動ローラ10との間へ移動させると、図9中に示すように、移動している固定砥粒ワイヤ14は、被加工物Wを切削加工する。そして、被加工物Wの切削加工が進行すると、被加工物Wが切断されて、複数枚のウエハが形成される。なお、図9は、被加工物Wを切削加工する状態を示す図である。
第一実施形態では、上述したように、複数の砥粒24のうち、被加工物Wの切削加工に寄与する砥粒24である、突出量が大きい方から標準偏差σの三倍分の砥粒が、突出量Hの分布において、突出量Hの区間の幅が4.5[μm]以内となるように調整している。
【0052】
また、第二実施形態では、上述した固定砥粒ワイヤ14に対してドレッシングを行うことにより、砥粒24の突出量の大きい方から突出量Hの区間の幅が4.5[μm]以内である区間に含まれる砥粒の数を、全砥粒数の70%以上としている。
このため、固定砥粒ワイヤ14を形成する際に、上述した突出量Hの区間の幅が4.5[μm]よりも大きくなった場合であっても、固定砥粒ワイヤ14に対するドレッシングを行った後は、被加工物Wの切削加工に寄与する砥粒24に対し、突出量Hの区間の幅を4.5[μm]以下とすることが可能となる。
【0053】
このため、上記のように調整した砥粒24を備える固定砥粒ワイヤ14により被加工物Wを切削加工する際に、被加工物Wのうち、切削加工の際に固定砥粒ワイヤ14と接触した部分に加わる応力の増加を抑制して、ウエハの強度が所望の強度未満となることを防止することが可能となっている。
【0054】
(第一実施形態および第二実施形態の効果)
以下、本実施形態の効果を列挙する。
(1)第一実施形態の切断装置1が備える固定砥粒ワイヤ14では、複数の砥粒24のワイヤ本体22の外径面から突出する突出量Hの分布において、全砥粒のうち95.4%の砥粒は前記突出量の区間の幅が6.0[μm]以内としており、複数の砥粒24のうち、被加工物Wの切削加工に寄与する砥粒24の突出量Hの区間の幅を、4.5[μm]以内としている。
このため、被加工物Wの切削加工において、複数の砥粒24のうち、被加工物Wと接触する可能性が低い砥粒24や、即座にワイヤ本体22から除去されてしまう可能性が高いものを除いた砥粒24を、上述した区間の幅が4.5[μm]以内となっている区間に含まれる砥粒24として調整することが可能となる。
【0055】
その結果、複数の砥粒24のうち被加工物Wの切削加工に寄与する砥粒24を、突出量Hの大きさの差が少ない砥粒24とすることが可能となり、被加工物Wのうち、切削加工の際に固定砥粒ワイヤ14と接触した部分に加わる応力の増加を抑制することが可能となる。そして、固定砥粒ワイヤ14を備える切断装置1を用いて、被加工物Wを切削加工して形成したウエハの強度の低下を抑制することが可能となる。
【0056】
(2)第二実施形態の切断装置1が備える固定砥粒ワイヤ14では、固定砥粒ワイヤ14に対するドレッシングを行うことで、切削加工に寄与する砥粒24の突出量Hの区間の幅が4.5[μm]以内となっている区間を、突出量Hの分布における分布の比率の最大値を含む区間としている。これに加え、切削加工に寄与する砥粒24の突出量Hの区間の幅が4.5[μm]以内となっている区間に含まれる砥粒24の数を、複数の砥粒24の70%以上の数としている。
【0057】
このため、固定砥粒ワイヤ14を形成する際の加工精度が低い場合等、固定砥粒ワイヤ14を形成する際に、被加工物Wの切削加工に寄与する砥粒24が、突出量Hの区間の幅が4.5[μm]よりも大きくなった場合であっても、固定砥粒ワイヤ14に対するドレッシングを行った後は、被加工物Wの切削加工に寄与する砥粒24に対し、突出量Hの区間の幅を4.5[μm]以下とすることが可能となる。
その結果、被加工物Wのうち、切削加工の際に固定砥粒ワイヤ14と接触した部分に加わる応力の増加を抑制することが可能となり、形成したウエハの強度の低下を抑制することが可能となる。
【0058】
(3)本実施形態の切断装置1が備える固定砥粒ワイヤ14では、複数の砥粒24の平均断面積をX[μm]とし、長さ1[mm]当たりでワイヤ本体22の外径面に固着している砥粒24の数をF個とした場合に、Fが100個以上であるとともに、上式(1)が成立している。
このため、砥粒24の粒径が小さくなるほど、長さ1[mm]当たりでワイヤ本体22の外径面に固着している砥粒24の数が増加することとなり、ワイヤ本体22の外径面において砥粒24が占める面積比の低下を抑制することが可能となる。
その結果、砥粒24の粒径が小さくとも、ワイヤ本体22の外径面における、被加工物Wの切削加工に寄与する砥粒24の面積比の低下を抑制することが可能となり、固定砥粒ワイヤ14が有する、被加工物Wに対する切削加工能力の低下を抑制することが可能となる。
【0059】
(4)本実施形態の切断装置1では、上述した構成の固定砥粒ワイヤ14と、この固定砥粒ワイヤ14を、固定砥粒ワイヤ14の長さ方向へ移動可能なワイヤ移動手段(ワイヤボビン2、ボビン駆動用モータ、駆動ローラ8及びローラ駆動用モータ)を備えている。
このため、固定砥粒ワイヤ14が、上述した構成を備えていない場合と比較して、被加工物Wのうち、切削加工の際に固定砥粒ワイヤ14と接触した部分に加わる応力の増加を抑制することが可能となる。
その結果、被加工物Wを切削加工して形成したウエハの強度の低下を抑制することが可能となる。
【0060】
(5)本実施形態では、上述した構成の固定砥粒ワイヤ14を用いて、ウエハ(シリコンウエハや半導体ウエハ等)を作製する。
このため、ウエハの材料となる被加工物Wのうち、切削加工の際に固定砥粒ワイヤ14と接触した部分に加わる応力の増加を抑制した状態で、ウエハを作製することが可能となる。
その結果、ウエハの品質を向上させることが可能となる。
【0061】
(6)本実施形態では、上述した構成の切断装置1を用いて、ウエハ(シリコンウエハや半導体ウエハ等)を作製する。
このため、ウエハの材料となる被加工物Wのうち、切削加工の際に固定砥粒ワイヤ14と接触した部分に加わる応力の増加を抑制した状態で、ウエハを作製することが可能となる。
その結果、ウエハの品質を向上させることが可能となる。
【0062】
(変形例)
以下、本実施形態の変形例を列挙する。
(1)本実施形態の切断装置1では、被加工物Wを多結晶シリコンブロックとしたが、これに限定するものではなく、被加工物Wを、単結晶シリコンブロック等、多結晶シリコンブロック以外としてもよい。また、ウエハの厚さは、180〜220[μm]程度に限定するものではない。
(2)本実施形態の切断装置1では、固定砥粒ワイヤ14を巻きつけて切削加工列が形成する二つのローラとして、駆動ローラ8と従動ローラ10を用いているが、これに限定するものではなく、二つのローラを、共に駆動ローラ8としてもよい。また、ボビン駆動用モータの駆動力が高い場合等には、二つのローラを、共に従動ローラ10としてもよい。
【0063】
(砥粒の突出量の測定方法)
砥粒の突出量Hの測定は、例えば、レーザー顕微鏡(例えば、キーエンス製:VK‐8710等)を用いて、3D測定により実施する。その際、図8中に示す斜線部で示されるように、ワイヤの中央部に位置する砥粒24を測定する。
そして、例えば、砥粒24のワイヤ周方向での中央部において、ワイヤの軸方向に沿って線状に3回測定した平均値を用いる。この測定結果は、図10中に示すようなプロファイルで表され、その立ち上がり部を除いた砥粒の中央部での平均高さBとワイヤ表面高さAとの差[B−A](μm)として、突出量Hが算出される。なお、図10は、突出量Hの測定要領を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
1 切断装置
2 ワイヤボビン
4 テンションローラ
6 ガイドローラ
8 駆動ローラ
10 従動ローラ
12 クーラントノズル
14 固定砥粒ワイヤ
16 保持板
18 固定板
20 アクチュエータ
22 ワイヤ本体
24 砥粒
26 固着層
28 サンプル
W 被加工物
H 砥粒のうち、ワイヤ本体の外径面から突出している突出量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状のワイヤ本体と、前記ワイヤ本体の外径面に固着している複数の砥粒と、を備え、被加工物の切削加工に用いる固定砥粒ワイヤであって、
前記ワイヤ本体の外径面から突出する前記複数の砥粒の突出量の分布において、全砥粒のうち95.4%の砥粒は前記突出量の区間の幅が6.0[μm]以内となっており、
前記突出量の区間の幅が6.0[μm]以内の砥粒のうち、前記突出量が大きい方から標準偏差σの三倍分の砥粒は、前記突出量の区間の幅が4.5[μm]以内となっていることを特徴とする固定砥粒ワイヤ。
【請求項2】
線状のワイヤ本体と、前記ワイヤ本体の外径面に固着している複数の砥粒と、を備え、被加工物の切削加工に用いる固定砥粒ワイヤであって、
前記固定砥粒ワイヤに対するドレッシングを行った後の前記ワイヤ本体の外径面から突出する前記複数の砥粒の突出量の分布において、前記突出量が大きい方から突出量の区間の幅が4.5[μm]以内となる区間に含まれる砥粒数は、全砥粒数の70%以上であることを特徴とする固定砥粒ワイヤ。
【請求項3】
前記複数の砥粒の平均断面積をX[μm2]とし、長さ1[mm]当たりで前記ワイヤ本体の外径面に固着している前記砥粒の数をF個とした場合に、
前記Fを、最小値を100とし、且つ以下の式の範囲内としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載した固定砥粒ワイヤ。
24000/X≦F≦36000/X
【請求項4】
前記被加工物を切断してウエハを形成する切断装置であって、
請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載した固定砥粒ワイヤと、
前記固定砥粒ワイヤを長さ方向へ移動可能なワイヤ移動手段と、を備えることを特徴とする切断装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載した固定砥粒ワイヤを用いて作製されたことを特徴とするウエハ。
【請求項6】
請求項4に記載した切断装置を用いて作製されたことを特徴とするウエハ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−99796(P2013−99796A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243473(P2011−243473)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】