説明

固定糸及び裏地層と共に、一層若しくは複数層の繊維母材の製造方法

本発明は、繊維より糸が、力のフラックスで方向づけられ、少なくとも1つの裏地層に横たわり、少なくとも1つの固定糸6で接着されるように、実質上列に並べられた前記繊維より糸2、9でTFPプロセスによって一層若しくは複数層の繊維母材を製造する方法に関する。
本発明に従って、TFTプロセスの完了後、少なくとも1つの繊維母材1、8は、前記繊維より糸2、9の位置を固定するために固定デバイスに導入され、前記固定糸6、及び/又は前記裏地層3は、少なくとも部分的に除去される。
前記固定糸6、及び/又は前記裏地層3を前記繊維母材1、8から好ましくは完全に除去する結果によって、前記繊維母材1、8は、実際上理想的な機械的、外見上等方性の特性を有する。
好ましい変形では、前記固定糸群6、及び/若しくは前記裏地層3は、それらが溶媒としての水によって完全に分解され、そして流しだされ得るように、水溶性物質によって形成される。
また、本発明は、化学的、及び/又は物理的物理的に除去されうる物質によって形成される固定糸6に関し、さらに、そのような物質によって形成される裏地層3に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実質上列に並べられた繊維より糸でのTFPプロセス(“テイラー フィブラ プレイスメント”)によって、前記繊維より糸が、力のフラックスで方向づけられ、少なくとも1つの裏地層に横たわり、そして少なくとも1つの固定糸に接着されるように、実質上ある所望の物質的な厚さを有する一層若しくは複数層の繊維母材を製造する方法に関する。
【0002】
また、本発明は、この方法を実施するための裏地層と同様、固定糸に関する。
【背景技術】
【0003】
軽量構造では、特に航空機構造では、極端な機械的負荷に耐え、同時に高い軽量化のポテンシャルを提供し得る強化プラスチック繊維で作製された複合材料部品の使用が増加している。これらの部品は、完成品の部品を形成するために、後に、硬化性ポリマー物質、例えば、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、若しくは同種のもので飽和される、若しくは含浸される強化繊維によって形成される。
【0004】
このタイプの部品中の強化繊維の配列は、その剛性及び強度への決定的な影響を有する。最適な機械的特性を達成するために、前記強化繊維は、もし可能であれば、負荷の方向に従うべきであり、また、如何なる波形成をも有するべきではない。さらに、各個々の強化繊維は、一定の負荷に従うことが好ましい。
【0005】
ポリマー物質の強化のために例えば編んだ若しくは横たえた繊維織物等の従来の半完成品で、考えられる繊維の方向すべては、前記強化繊維が一般に特有の固定された方向でそこに配置されるので、実現され得るわけではない。横たえた繊維織物は、“覆われ得る”、すなわち、例えば丸い輪のセグメントを形成するために、折り目なしの平面の方式で横たわり得るが、前記強化繊維は、一般に、力のフラックスのより複雑なラインに従う軌道で列になり得ない。
【0006】
負荷に従う繊維配列に対する要求に応じる1つの可能性のある方法は、公知のTFPプロセスである。これは、繊維母材(“プレフォーム”)を形成するために、順に、お互いに平行に広がり、ある所望の道の曲線に沿い、そして裏地層上の固定糸の援助でそれらを接着する多数の別々の強化繊維によって形成されている、機械的強化(“ロービング”)のための繊維より糸の横たえを含み、それによって、前記個々の繊維より糸を配置することは、完成品の複合材料部品上の力の作用に実際上最適に適用され得る。この固定は、ここでは、従来の裁縫方法に対応する方法で前記裏地層真下にお互い連結されている上方固定糸及び下方固定糸によって実行される。前記繊維より糸を接着することは、好ましくは、ここではジグザグ縫いで実行される。この方法で到達される繊維より糸における機械的負荷に耐え得る能力の最適な利用は、それらの数、そして結果として重量も最小化し得る。さらに、前記部品の断面は、理想的な方法で、それぞれの局所的負荷に適用され得る。さらに、強化は、具体的には、付加的な繊維より糸を横たえることによって、特別な負荷に従っている区域、例えば、力が導入される領域、又は同種のもののところで形成され得る。前記別々の強化繊維は、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、若しくは同種のものによって形成される。
【0007】
TFPプロセスによって繊維母材を製造することは、例えば織物産業で用いられている、通例のCNCコントロールされた自動ミシン及び刺しゅう機で実行される。要求される層すべては繊維より糸に横たえるとすぐに、所望の最終外形を一般的にすでに有している完成品の繊維母材は、閉まり得る型中にセットされ、硬化性ポリマーで含浸され、次に、完成品の複合材料部品を形成するために硬化される。TFP繊維母材、及び/又は強化織物の層は、ここで結び付けられ得る。複数層の繊維母材は、(単層、一層の)繊維母材の多くを順に重ね置くことによって形成され、それによって、より大きな物質的厚さを作製することができるが、そうでなければ、それは、TFPプロセスのために用いられる自動ミシン若しくは刺しゅう機における限られた針の長さのために製造され得ない。従って、複数層の繊維母材は、少なくとも二つの裏地層を備え、前記複数層の繊維母材内でお互いに略平行に広がっている。
【0008】
前記繊維母材を前記硬化性ポリマー物質で含浸することは、例えば、対応するようにデザインされた閉まりうる型で、公知のRTM(“樹脂トランスファ形成”)プロセスによって実行され得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記固定糸及び前記裏地層を用いたTFPプロセスは、後の複合材料部品での機能、特に支持機能をもはや実行しない二つの要素を前記繊維母材に導入する。むしろ、前記裏地層及び前記固定糸は、理想的な一連の層を実現する際に問題を起こし、さらに、特に、もし多くの繊維母材が順に重ねて置かれる、又はより大きな物質的な厚さを有する一層の繊維母材が、多数の繊維より糸が順に重なって横たわることによって形成される場合に、全体の重量の重要な割合を示す。また、前記裏地層自体は、織られた強化織物によって、例えば、織られたガラス若しくは炭素繊維織物によって形成され得るが、この場合でさえ、前記強化繊維の少なくともいくつかは、前記負荷に従っていない配列を有する。さらに、前記織られた強化織物は、また、TFTプロセスの間に縫い針での貫通によって損なわれ、その結果、特徴的な物質の価値が損なわれ得る。上記問題を避けるべく、前記固定糸は、例えば、容易に溶解し得る物質で形成され得るが、しかし、このことは、後の複合材料部品中の硬化性ポリマーによる含浸によって形成されるマトリックスの機械的特性を損ない得る、繊維母材に入る物質の不確定な量を生じる。
【0010】
本発明の目的は、TFTプロセスにとって一般的に必要である固定糸、及び/又は一般的に要求されている裏地層によって妨害する影響なしで、実際上ある所望の物質的な厚さの単層若しくは複数層の繊維母材が形成され得る方法を提供することにある。
【0011】
本発明に従った目的は、請求項1の特徴ある節の特性を有する方法で到達される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記繊維母材内において前記繊維より糸の位置を固定する固定デバイス内に少なくとも1つの繊維母材がTFTプロセス完了後に導入されるという事実、並びに前記固定糸若しくは前記固定糸群、及び/又は前記裏地層若しくは前記裏地層群が少なくとも部分的に除去されるという事実は、後の複合材料部品において如何なる機能も実行しない固定糸及び裏地層が前記繊維母材から理想的な場合に除去され得ることを本発明に従った方法によって可能にする。
【0013】
結果として、本発明に従った方法で形成される繊維母材は、実際上理想的な“外見上等方性の”化学特性を有している。特に、波形の繊維糸等を導き得る前記固定糸で前記繊維より糸を不完全に縫う結果としての前記繊維母材における欠陥と、前記上方固定糸と前記下方固定糸との間の節若しくは輪の形成による前記繊維母材の不均一性とが避けられる。裏地層の除去は、裏地層が後の複合材料部品における優位な層間剥離の領域を示しているので、対応する有利な効果を有する。さらに、前記固定糸及び前記裏地層を除去することは、かなりの軽量化を生じる。特に、複数層の繊維母材の場合に、上記の有利な効果はより重要性を有する。
前記固定デバイスは、前記固定糸、及び/又は前記裏地層の除去の間に、それが前記繊維より糸の層をお互いに関係で確実に固定するような方法で好ましくは形成され、同時に、樹脂含浸によって前記繊維母材から後で作製され得る複合材料部品に可能な限り正確に対応する幾何学的な形状を前記繊維母材に与える。
【0014】
本発明に従った方法の有利な改良点に従って、前記固定糸若しくは前記固定糸群、及び/又は前記裏地層若しくは前記裏地層群は、化学的及び/又は物理的に除去され得る物質、特に分解され得る物質によって形成される。
結果として、前記固定糸及び前記裏地層は、簡単な方法で前記繊維母材から除去され得る、若しくは分解され得る。
【0015】
さらに有利な改良点に従って、前記固定糸若しくは前記固定糸群、及び/又は前記裏地層若しくは前記裏地層群は、溶解及び流し出しによって除去されることがもたらされ、前記固定デバイスは、溶媒によって、特に溶媒としての水によって流される。
前記固定糸及び裏地層の物質を適切な溶媒、特に水で分解すること、並びに該分解された固定糸及び裏地層の物質を次に流すことによって、一層の繊維母材の場合の前記固定糸群、及び/若しくは前記裏地層を除去すること、又は複数層の繊維母材の場合の前記裏地層群を除去することは、前記固定糸群及び/若しくは前記裏地層、又は前記裏地層群を実際上の完全に除去することを可能にする。ここでは、特に溶媒としての水は、機械的特性の機能障害を導きうる繊維母材における強化繊維との相互作用が一般的に起こらないという利点を有している。特に、溶媒としての水は、前記樹脂マトリックスに前記強化繊維を結び付けることを改良するために、前記強化繊維に通常適用されるサイズの特性に実質上影響を与えない。さらに、溶媒としての水は、供給される熱によってすぐにそして特に後に残ることなく前記繊維母材から追い出され得る。さらに、溶媒としての水は簡単にそして安全に取り扱われ得る。好ましくは、前記固定糸若しくは前記固定糸群、及び/又は前記裏地層若しくは裏地層群は、水溶性ポリマー物質によって形成される。日本、東京、NITIVY株式会社製のSOLVRON(登録商標) Sewing Thread SX 100T/1×3、及びSOLVRON(登録商標) SF62dtexの記号の糸は、例えば、水溶性固定糸として用いられ得る。もし、反対に、前記固定糸群、及び/又は前記裏地層群が、非水溶性物質によって形成されているならば、水の代わりに別の溶媒を用いることが求められる。
【0016】
本発明に従った方法のさらに有利な改良点に従って、前記繊維母材は、前記固定糸若しくは前記固定糸群の除去後、及び/又は前記裏地層若しくは前記裏地層群の除去後に、供給される熱によって前記固定デバイス中で乾燥する。
結果として、前記固定糸、及び/又は前記裏地層を分解するために、並びに流し出すために用いられる溶媒は、前記繊維母材の特性の機能障害がほとんど取り除かれるように、前記繊維母材から好ましくは完全に取り除かれ得る。
【0017】
前記方法のさらに有利な改良点に従って、前記繊維母材の含浸は、完成品の複合材料部品を製造するために、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、若しくは同種のもので特にRTMプロセスに従って、硬化性ポリマー物質とともに前記固定デバイスで実施される。
結果として、前記固定デバイスは、RTMプロセスによって完成品の複合材料部品を作製するための閉まり得る型として、同時に有利な方法で用いられ得る。このことは、特に前記RTMプロセスのために用いられる閉まり得る型が、結果として前記繊維母材の乾燥のために同時に用いられ得る熱デバイスを一般に有するので特に利点である。さらに、RTMプロセスのために用いられる型は、加えて、前記乾燥プロセスがスピードアップされ得る真空デバイスを有する。
【0018】
本発明に従った方法のさらに有利な形成は、少なくとも二つの繊維母材が複数層の母材を形成するための固定デバイスでセットされることをもたらす。
多くの(1つの、単層の、一層の)繊維母材の配置の結果、いわゆる複数層の繊維母材は、より大きな物質的な厚さで形成され得る。従って、これらの複数層の繊維母材は、多くの裏地層及び多くの固定糸を備える。
【0019】
さらに、本発明に従った目的は、請求項7に従った固定糸によって到達される。
【0020】
前記固定糸が、化学的及び/又は物理的に除去され得る物質によって、特に水溶性物質によって形成されるという事実は、前記繊維母材から好ましくは完全に取り除かれることがそれにとって簡単な方法で可能であることを意味する。好ましくは、前記固定糸は、容易に水に溶解するポリマー物質によって形成される。日本、東京、NITIVY株式会社製のSOLVRON(登録商標) Sewing Thread SX 100T/1×3、及びSOLVRON(登録商標) SF62dtexの糸は、例えば、水溶性の固定糸として用いられ得る。
【0021】
さらに、本発明に従った目的は、請求項8に従った裏地層によって到達される。
【0022】
前記裏地層が、化学的及び/又は物理的に除去され得る物質によって、特に、水溶性の物質によって形成されるという事実は、それを完全に前記繊維母材から取り除くことが簡単な方法で可能となるということを意味する。特に好ましい変形では、前記裏地層若しくは裏地層群は、容易に水に溶解するポリマー物質によって形成される。日本、東京、NITIVY株式会社製のSOLVRON(登録商標) Sewing Thread SX 100T/1×3、及びSOLVRON(登録商標) SF62dtexの糸は、裏地層を形成するために同様に用いられ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明に従った方法は、図1及び図2を基礎にしてより具体的に説明され得る。
【0024】
図1は、一層の繊維母材1の基本構造における概要の断面図を示す。前記繊維母材1は、多数の繊維より糸2を備えてなり、該繊維より糸の1つのみが、他の代表として符号を付されている。前記繊維より糸は、順に、これ以上具体的に同様に記載されていない多数の強化繊維によって形成され、図の平面との関係では実質的に垂直に広がる。ガラス繊維、炭素繊維、若しくはアラミド繊維は、例えば、強化繊維として考えられる。
【0025】
第1の方法のステップでは、前記繊維より糸は、好ましくは、それらが力のフラックスで方向付けられるように、公知のTFPプロセス(“テイラー フィブラ プレイスメント”)によって最初に横たえられ、そして、固定糸6としての上方固定糸4及び下方固定糸5によって接着される。前記上方固定糸4は、前記裏地層3の真下に輪を形成し、該輪の1つのみが、図の全体をより明瞭にするために、輪7として符号を付されている。前記繊維より糸すべてが、位置ずれに対する保障のために前記裏地層に接着されるように、前記下方固定糸5は、輪7を含めたすべての輪にわたって広がる。前記繊維より糸の横たえ若しくは接着は、前記裏地層3上で実際上のある所望の横たわる前記繊維より糸の曲線が形成されるところである公知のCNC自動ミシン若しくは刺しゅう機によってここでは実行される。前記繊維より糸を横たえるための誘導、及び前記裏地層3へのそれらの接着は、空間的な少なくとも二次元においてコンピューター制御され、自動ミシン若しくは刺しゅう機にセットされ得るソーイングヘッドによって実行される。
【0026】
代わりに、前記繊維母材1は、また、横たえられ、そして、いわゆる“タフティング”プロセスによって一緒に縫われ得る。この場合、上方固定糸4のみが用いられ、締められることによって適切に選ばれた裏地層3に直接固定される。前記上方固定糸4での連結若しくは輪の形成によって、前記裏地層3の真下に前記上方固定糸4を固定するための前記下方固定糸5、及び下方固定糸の援助は、結果的に余分なものとなる。前記上方固定糸4が針によって少なくとも表面的に導入される、曲がりやすくそしてしなやかなゴムシート、発砲プラスチック、若しくは同種のものは、たとえば前記裏地層3として用いられる。前記針の引き出し後にゴムシート内に生じる上方固定糸の輪は、ゴムシート内で固く保たれ、結果として固定される。
【0027】
この手順は、特に、前記裏地層3は、前記固定糸6の分解及び流し出しの前に前記強化繊維に対する損傷があまりなく前記固定デバイス内で前記繊維母材1からそれが分離され得るので、本発明に従った方法によって分解される必要はないという利点を有している。
【0028】
図1の描写に従って繊維母材1の多くを順に重ねて置くことにより、そうでなければ限られた針の長さのためにTFPプロセスによって製造されないであろう、より大きな物質の厚さをもつ複合材料製品の製造のために形成されることが、もし要求されれば、複数層の繊維母材にとって可能となる。
【0029】
前記繊維母材1は、前記裏地層3上に、少なくとも分解しうる固定繊維6で、すなわち、特に、分解しうる上方固定繊維4、及び分解しうる下方固定繊維5で、TFPプロセスによって多くの層で組み立てられる。加えて、前記裏地層3を形成することのために分解することによって除去され得るような物質を用いることも可能である。水で流され、そしてその上、供給された熱によって後に残されずにすぐに乾燥されることが、前記分解された固定繊維6、及び/又は前記裏地層3の物質にとって簡単に可能とする水溶性物質は、特にこの結合で考えられる。さらに、前記溶媒としての水は、前記繊維より糸の前記強化繊維における特性の機能障害が一般には起こらないという利点を有している。特に、後の完成品の複合材料部品の取り囲んでいる樹脂マトリックスに前記強化繊維を機械的に結びつけることを改良するために、前記強化繊維に通常適用され得るサイズは、到達されない。
【0030】
図2は、前記固定糸及び前記裏地層は、第2の方法のステップで適切な固定デバイスで完全に取り除かれている複数層の繊維母材の概要の断面図を示す。前記固定糸及び前記裏地層の除去は、前記固定糸及び前記裏地層を分解することと、次に、前記溶媒を用いて前記分解された固定糸及び裏地層の物質を好ましくは完全な流し出すこととによって実行される。
【0031】
図2の前記繊維より糸間の距離は、図の全体のより良い明確化のために誇張されている。前記裏地層は、狭い鉛直若しくは水平の中間領域で広がると同時に、前記固定糸は、狭い鉛直若しくは水平の中間領域で広がる。50%以上の体積というとても高い繊維の割合が、後の複合材料部品で得られるように、現実的に、前記繊維より糸は、分解及び流し出しによる前記固定糸、及び/又は裏地層の除去後に、実質上如何なる隙間なく直接お互いに横たわる。図のより良い概観のために、多数の繊維より糸から1つの繊維より糸9のみが、取り上げられ、残りの繊維より糸の代表として1つの符号が与えられている。
【0032】
前記繊維母材8は、複数層の形態で、すなわち、強化繊維と共にする繊維より糸の2層それぞれの内で、前記繊維母材1に従ってそれぞれ組み立てられ順に重ねて配置された3つの繊維母材の全体から組み立てられるが、前記固定糸及び裏地層すべては、前記溶媒による流し出しよって取り除かれる。
【0033】
結果として、前記繊維母材8は、実際上最適な機械的、外見上等方性のある特性を有する。特に、前記固定糸によって前記裏地層上で同じものに接着することにより、一般的に製造される前記繊維より糸の波形成はない。さらに、前記裏地層と同様に前記上方固定糸及び前記下方固定糸との間に形成される節及び輪は、簡単に分解されるので、前記繊維母材8の前記繊維配置での欠陥は、前記流し出しによって完全に取り除かれる。
【0034】
前記固定糸及び/又は前記裏地層にとって、分解され、そして完全に流されることを可能にするために、それらは、化学的及び/又は物理的に簡単に取り除かれ得る物質で、特に、適した溶媒によって簡単にそしてすぐに分解され、そして流され得るポリマー物質若しくは同種のもので好ましくは製造される。前記溶媒として水を使用することを認める水溶性ポリマー物質は、前記固定糸及び/又は前記裏地を形成するために好ましく用いられる。例えば、日本、東京、NITIVY株式会社製のSOLVRON(登録商標) Sewing Thread SX 100T/1×3、及びSOLVRON(登録商標) SF62dtexの記号の糸が水溶性固定糸として用いられ得る。
代わりに、例えば、有機溶媒、塩素化炭化水素、及び同種のもの等の他の溶媒も用いられ、前記固定糸及び/又は前記裏地層に対して用いられる物質に依存する。
【0035】
前記固定糸及び/又は前記裏地層の分解と次の流し出しとは、これ以上具体的には表示されていない固定デバイス中で実施される。固定デバイスは、一方では、前記流し出しプロセスの間に前記繊維母材8の形成を実質上維持するために役目を果たし、その結果として前記繊維より糸の位置ずれを避ける。他方では、前記固定デバイスは、可能な限り均一で前記繊維母材の領域すべてを浸透する溶媒の流れを確保する任務を有する。
【0036】
前記繊維糸及び/又は前記裏地層を分解し、流し出すことを可能にするために、前記固定デバイスは、例えば、前記溶媒として好ましくは用いられる水に対して、少なくとも1つの流入及び少なくとも1つの流出を有している。また、前記溶媒は、ここでは、前記固定糸及び/又は前記裏地層の分解された粒子物質をろ過することを一般的に求めている閉回路で導かれ得る。異物、特に、分解された物質若しくは同種のもので、前記繊維母材8に入っているものを避けるために、前記溶媒として蒸留水を用いることが必要であろう。
【0037】
第3の方法のステップで前記繊維母材8における次の乾燥のために、それは、前記繊維母材8を乾燥するための加熱デバイスによって加熱される固定デバイス内での特に有利な方法にある。前記加熱デバイスによって、例えば溶媒として用いられる水は、前記繊維母材8から完全に追い出され得る。前記乾燥プロセスをさらにスピードアップするために、負の圧力が前記固定デバイスで加えて適用され得る。
【0038】
第4の方法のステップでは、この方法で乾燥される前記繊維母材8は、完成品の複合材料物質を製造するために、例えば公知のRTMプロセス(“樹脂トランスファ形成”)によって、硬化性ポリマー物質、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、BMI樹脂、若しくは同種のものに浸透される若しくは飽和される。また、特に好ましい方法では、前記完成品の複合材料部品の寸法安定性を損ない得る繊維母材8の不明確な変形が、かなり避けられるように、役目を果たし、又は閉じ得る型としてRTMプロセス内に同時に形成される固定デバイス内で、この方法のステップは実施される。
【0039】
加えて、この手順は、RTMプロセスを実施するための閉じ得る型が、通常加熱デバイスを有するという特に有利な効果を有し、それは、第3の方法のステップでの流し出しの後に前記繊維母材8を乾燥するために同時に用いられる。また、類似の方法では、RTMプロセスを実施する時に一般に存在する真空デバイスは、前記繊維母材8を乾燥するプロセスをさらにスピードアップするために役立ち得る。
【0040】
本発明に従った方法に従って形成された繊維母材で製造される複合材料部品は、前記強化繊維の実際上最適な配置を有し、すなわち、特に力のフラックスで実質上方向づけられ、節及び輪の形状の欠落、並びに波形状なしで、そして、それらの物理特性に関しては“外見上等方性”に結果的に考えられる。さらに、前記複合材料部品は、やっかいな裏地層なしで、実際上のある所望の物質的な厚さで製造され得る。
【0041】
従って、本発明は、繊維より糸が、力のフラックスで方向づけられ、少なくとも1つの裏地層に横たわり、少なくとも1つの固定糸6で接着されるように、実質上列に並べられた繊維より糸2、9を用いたTFPプロセスによって、実際上のある所望の物質的な厚さを有する単層若しくは複数層の繊維母材1、8を製造する方法であって、TFTプロセスの完了後、少なくとも1つの繊維母材1、8は、前記繊維母材1、8内の前記繊維より糸2、9の位置を固定するための固定デバイス内へ導入され、前記固定糸6若しくは前記固定糸群6、及び/又は前記裏地層3若しくは前記裏地層群3は少なくとも部分的に取り除かれる方法に関する。
【0042】
前記固定糸6若しくは前記固定糸群6、及び/又は前記裏地層3若しくは前記裏地層群3は、化学的及び/又は物理的に取り除かれ得る物質によって、特に分解され得る物質によって形成される。
【0043】
前記固定糸6若しくは前記固定糸群6、及び/又は前記裏地層3若しくは前記裏地層群3は分解及び流し出しによって取り除かれ、前記固定デバイスは、溶媒によって、特に溶媒としての水によって流される。
【0044】
前記繊維母材1、8は、前記固定糸6若しくは前記固定糸群6の除去後に、及び/又は前記裏地層3若しくは前記裏地層群3の除去後に、供給される熱によって前記固定デバイスにおいて有利に乾燥される。
【0045】
前記繊維母材1、8の含浸は、完成品の複合材料部品を製造するために、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、若しくはそれと同種のものでRTMプロセスに特に従って硬化性ポリマー物質と共にする固定デバイス中で実行される。
【0046】
少なくとも二つの繊維母材1、8は、複数層の繊維母材の形成のために固定されたデバイスで配置される。
【0047】
前記固定糸は、化学的及び/又は物理的に除去され得る物質によって、特に水溶性ポリマー物質によって有利に形成される。
【0048】
特に、前記裏地層は、化学的及び/又は物理的に除去され得る物質によって、特に水溶性ポリマー物質によって形成される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、一層の繊維母材の概要の断面図を示す。
【図2】図2は、前記固定糸及び前記裏地層が、本発明に従った方法によって完全に取り除かれる、複数層の繊維母材の概要の断面図を示す。
【符号の説明】
【0050】
1:繊維母材、2:繊維より糸、3:、4:下方固定糸、5:上方固定糸、6:固定糸、7:輪、8:繊維母材、9:繊維より糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維より糸(2、9)が力のフラックスで方向づけられるように、実質上列に並べられた前記繊維より糸(2、9)でTFPプロセスによって単層若しくは複数層の繊維母材(1、8)を製造するための方法であって、
実際上のある所望の物質の厚さを有する繊維母材(1、8)を形成するために、前記繊維より糸(2、9)が、裏地層(3)に横たわり、固定糸(6)によって接着され、前記固定糸、及び/又は前記裏地層が、水溶性物質によって形成されるステップ(a)と、
TFTプロセス完了後、少なくとも1つの繊維母材(1、8)が、該少なくとも1つの繊維母材(1、8)内において繊維より糸(2、9)の位置を固定する固定デバイスに導入されるステップ(b)と、
分解、及び流し出しによって前記少なくとも1つの固定糸(6)、及び/又は前記少なくとも1つの裏地層(3)を取り除くために、流入及び流出の方法によって閉回路内で前記固定デバイスへ導入され、且つろ過される、前記溶媒としての水によって、前記固定デバイスが流されるステップ(c)と、
少なくとも1つの固定糸(6)を取り除いた後、及び/又は少なくとも1つの裏地層(3)を取り除いた後に、前記少なくとも1つの繊維母材(1、8)が、供給される熱によって前記固定デバイス中で乾燥されるステップ(d)と、
前記少なくとも1つの繊維母材(1、8)の含浸が、前記完成品の複合材料部品を製造するためにエポキシ樹脂でRTMプロセスに従って前記固定デバイス中で実施されるステップ(e)とを有する方法。
【請求項2】
少なくとも1つの固定糸(6)、及び/又は少なくとも1つの裏地層(3)が、SOLVRON(登録商標) Sewing Thread SX 100T/1×3、若しくはSOLVRON(登録商標) SF62dtexの糸で形成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも2つの繊維母材(1、8)が、複数層の繊維母材を形成するために前記固定デバイスで配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−503274(P2009−503274A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521990(P2008−521990)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【国際出願番号】PCT/EP2006/064572
【国際公開番号】WO2007/010051
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(504467484)エアバス・ドイチュラント・ゲーエムベーハー (268)
【Fターム(参考)】