説明

固定装置

【課題】基礎構造部に付加構造部を固定するための固定装置において、組付けが容易であり、付加構造部から固定素子に横方向力が一様に伝達されるものを提案する。
【解決手段】基礎構造部(7)に付加構造部(6)を固定するための固定装置が、固定素子(12)と横方向力伝達素子(21;31;41;51;61)とを備えている。付加構造部は固定素子のための案内開口(8)を有し、固定素子のシャフト(14)は、長手方向軸線(13)に沿って延在し、第1端部で半径方向に突出した保持区画(15)と、反対側の第2端部を起点とし、基礎構造部内に係止するための係止区画(16)とを備える。横方向力伝達素子は、保持区画と係止区画との間で、付加構造部の案内開口内で固定素子に配置されている。横方向力伝達素子は、固定素子の保持区画により、軸線方向初期長さ(H)より短い軸線方向長さ(L)に減じられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば拡開ボルトまたはコンクリート用ねじなどの固定装置と、横方向力伝達素子とによって、基礎構造部、例えば鉱物材料、例えばコンクリートまたは石塀材からなる天井または壁に、付加構造部を固定するための固定装置において、付加構造部が、固定素子のための案内開口を有し、固定素子が、長手方向軸線に沿って延在するシャフトを有し、シャフトが、第1端部で半径方向に突出する保持区画と、向かい合った第2端部を起点とした、基礎構造部に係止させるための係止区画とを有し、横方向力伝達素子が、保持区画と係止区画との間において付加構造部の案内開口内で固定素子に配置されている形式の固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
付加構造部は基礎構造部に通常は1つ以上の固定素子によって固定されるので、この種の固定を複数素子による固定である。第1ステップでは、固定素子の数および形状に対応して基礎構造部に孔が形成され、次いで基礎構造部に設けられた孔と付加構造部の案内開口とが広範囲に一致するように、付加構造部が基礎構造部に位置決めされる。次いで固定素子が挿入して組み付けられる、すなわち、案内開口を通って孔に導入され、孔内で係止される。
【0003】
固定素子として例えばセルフタッピングねじ、例えば、打込み時に孔壁に自ら対向ねじ山を形成するコンクリート用ねじを、有利には付加構造部に設けられた円形の案内開口を介して案内することができるように、案内開口の最小限の内部寸法は、少なくともねじのねじ山外径に対応している必要がある。このようなねじのねじ山は、一般に、保持区画を有するシャフト第1端部にまでは延在していないので、固定素子が打ち込まれた状態では、比較的大きい間隙が付加構造部の案内開口の内壁とねじのシャフト外面との間に存在している。さらに通常は大きい許容公差を有する孔が構造物に穿孔される。それ故、案内開口の内部寸法は、固定素子の係止区画を案内するために必要とされるよりも付加的に幾分大きく形成されている。このような理由から、このような固定装置は、剪断負荷または横方向負荷を取り除くための複数素子固定のためには適していない。
【0004】
米国特許第3,418,013号明細書により、ねじが固定素子として公知である。このねじは、保持区画としてのねじ頭に接続するシャフトの第1端部においてシャフトの外側に部分的に台形ねじ山を有しており、この台形ねじ山は、固定素子が打ち込まれた状態で案内開口の内壁に当接し、これにより、剪断負荷または横方向負荷の除去を可能にする。
【0005】
この公知の解決手段では、付随して生じた横方向力または剪断力を伝達するための面が制限されていることが欠点である。さらに、固定素子のこの構成では、横方向力が付加構造部から固定素子に一様に伝達されず、このことは、横方向力が高くなった場合に付加構造部および/または固定素子に部分的な破損をもたらす。
【0006】
米国特許出願公開第2007/0071524号明細書により、外径が段付けされたねじ頭を有するか、またはねじ頭の下方に配置され、外径が段付けされたシャフト肉厚部を有するねじが公知である。このねじは固定装置が締め付けられた状態では少なくとも部分的に付加構造部の案内開口内に進入する。
【0007】
この解決手段では、最大限の面を横方向力を伝達するために提供するためにはそれぞれの付加構造部厚さに対して別個のねじが必要であることが欠点である。対応したシャフト肉厚部の軸線方向長さよりも大きい付加構造部厚さを有する付加構造部にこのねじを使用した場合、横方向力が構造部に対して間隔をおいてねじ内に導入され、これにより、固定素子としてのねじに不都合な曲げモーメントが生じる。対応するシャフト肉厚部の軸線方向長さよりも小さい付加構造部厚さを有する付加構造部にこのねじを使用した場合、ねじ頭を付加構造部に当接させることができず、したがって、付加構造部は基礎構造部に堅固に固定されない。
【0008】
欧州特許第0774587号明細書により、固定素子および現場で作製される横方向力伝達素子を有する固定装置が公知である。固定素子と、付加構造部の案内開口との間の間隙には、固定素子打込み後に硬化可能な材料が充填される。材料の硬化後には横方向力を付加構造部から固定素子に伝達することができる。
【0009】
公知の解決手段では、このような固定装置のための組付けに手間がかかることが欠点である。固定装置の素子に加えて、付加的な素子、例えば硬化可能材料のための容器、たいていは複数成分からなる硬化可能材料を取り出すための取出し装置、例えばディスペンサが必要となる。さらに、材料の硬化後にようやく、現場で形成された横方向力伝達素子を介して横方向力を伝達することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第3,418,013号明細書
【特許文献2】米国特許出願第2007/0071524号明細書
【特許文献3】欧州特許第0774587号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、基礎構造部に付加構造部を固定するための固定装置において、異なる付加構造部厚さに対して自在に使用可能なものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、請求項1に記載の特徴により解決される。有利な改良形が従属請求項に記載されている。
【0013】
上記特徴を有する本発明の固定装置によれば、横方向力伝達素子は、軸線方向初期長さよりも短い軸線方向長さを有しており、この場合に横方向力伝達素子は固定素子の保持区画によって軸線方向長さを減じられている。
【0014】
本発明によれば、固定素子を打ち込む、または締め付ける場合に、固定素子の半径方向に突出した保持区画は付加構造部の方向に移動され、この場合に、横方向力伝達素子は、軸線方向初期長さから、組み込まれた状態の軸線方向長さに減じられるか、または圧縮される。この軸線方向長さは、固定素子の保持区画が付加構造部に当接された場合には付加構造部厚さに本質的に一致する。それぞれの付加構造部厚さに対して対応して形成された固定素子を使用者に提供する必要なしに、付加構造部厚さとは無関係に保持区画を付加構造部に当接させることができる。
【0015】
固定素子の保持区画によって、横方向力伝達素子が軸線方向初期長さから所定の軸線方向長さに減じられる場合に、横方向力伝達素子の作製に使用される材料の特性とは無関係に、横方向力伝達素子は、必要に応じて半径方向外方および/または半径方向内方に拡張され、これにより、横方向力伝達素子と、付加構造部に設けられた案内開口の内壁との間または横方向力伝達素子と固定素子のシャフトとの間の間隙が閉じられる。これにより、有利には、付加構造部から1つまたは複数の固定素子に横方向力が遊びなしに伝達されることが保証される。
【0016】
したがって、横方向伝達のために提供されている案内開口の内壁面全体よって横方向力が固定素子に伝達されることが保証される。本発明による固定装置により、簡単な組付けが保証されるだけでなく、複数素子固定時にもそれぞれの固定素子において横方向力が固定素子に一様に導入されることが確保される。
【0017】
横方向力伝達素子は、有利にはスリーブ状もしくはプリズム状、または少なくともこれらの形状に近い形状を有しており、固定素子のシャフト区画を少なくとも部分的に収容するための開口を有している。固定素子のシャフトが円形の横断面を有する場合の横方向力伝達素子の内部寸法、例えば内径は、シャフトの外部寸法、例えば外径と本質的に一致している。付加構造部の案内開口が円形の横断面を有する場合の横方向伝達素子の外部寸法、例えば外径は、案内開口の対応した内部寸法、例えば内径と本質的に一致している。
【0018】
有利にはシャフトに直接に配置された横方向力伝達素子を有する固定素子が使用者に提供される。代替的には、横方向力伝達素子は、固定装置の組付け時に固定素子のシャフトに配置され、このために、スリーブ状の横方向力伝達素子には、例えば、長さ方向スリットが設けられているか、またはスリーブ状の横方向力伝達素子は固定素子に押し込まれるか、もしくはねじ込まれる。
【0019】
固定素子は、特に有利にはコンクリート用ねじであり、このコンクリート用ねじは、保持区画として、回転作動手段、例えば外側六角部または内側多角部を備えるねじ頭を有しており、打込み機の回転連行手段および係止区画としてセルフタッピング式ねじ山を有している。
【0020】
セルフタッピング式ねじ山の代わりに、固定素子であるねじが、シャフトの第2端部を起点としたねじ山区画を係止区画として有していてもよい。このねじ山区画には、例えばナットが対向手段としてねじ込み可能である。この種の固定素子は、例えば向かい合う2つの側からアクセス可能な固定装置において使用される。
【0021】
代替的には、固定素子は、保持区画として回転作動手段を備えるねじ頭を有し、かつ係止区画として拡開手段を有する拡開ボルトである。拡開手段は、例えば、拡開手段本体と、拡開手段本体によって拡開可能な拡開スリーブとを有している。さらに固定素子は、例えば異形部を備える係止区画を有していてもよく、この係止区画は、係止のために孔内に挿入された硬化可能材料内に打ち込まれる。
【0022】
ねじ頭を保持区画として有する代わりに、これらの固定素子それぞれがシャフトの第1端部を起点としたねじ山区画を有していてもよい。このねじ山区画には、任意で平ワッシャを有するナットがねじ込み可能である。ねじ込み時に、ナット、および必要に応じて平ワッシャは付加構造部の方向に移動され、この場合に横方向力伝達素子はナットによって軸線方向に軸線方向長さを減じられる。
【0023】
有利には、横方向力伝達素子はばね素子であり、このばね素子の軸線方向初期長さは、それぞれの付加構造部厚さに簡単に適合させることができる。ばね素子の外部寸法、例えば外径は、この場合、付加構造部の案内開口の対応内部寸法と本質的に一致している。ばね素子の内部寸法は、この場合、固定素子のシャフトの対応外部寸法と本質的に一致している。この用途では、大量生産されるばね素子を使用することができる。したがって、このような横方向力伝達素子は、固定装置全体のためにも特に経済的である。特に有利には、ばね素子は、有利には金属、例えば、対応した厚さのワイヤからなるコイルばねである。
【0024】
さらなる有利な実施形態では、横方向力伝達素子は第1の軸線方向区画と、第1の軸線方向区画と少なくとも部分的にオーバラップする第2の軸線方向区画とを有しており、これらの軸線方向区画は少なくとも軸線方向に互いに相対的に移動可能である。横方向力伝達素子の軸線方向初期長さから出発して軸線方向長さが減じられた場合、既に部分的にオーバラップした区画はより広範囲にオーバラップし、これにより、付加構造部から固定素子に横方向力を伝達するために十分に大きい面が提供される。有利には、横方向力伝達素子は、組み込まれた状態で、付加構造部厚さの半分よりも大きい軸線方向オーバラップ長さを有している。横方向力伝達素子は、例えば、カップ状ばねであり、カップ状ばねの環状部は、有利には固定素子の無負荷状態で既に部分的にオーバラップしており、これにより、少なくとも2つの軸線方向区画を形成している。
【0025】
別の有利な実施形態では、横方向力伝達素子の壁に圧縮開口が設けられており、これらの圧縮開口は、横方向力伝達素子に軸線方向に軽い圧力を加えただけで、横方向力伝達素子の軸線方向長さを減じることを可能にする。有利には、横方向力伝達素子の周囲に沿って複数の圧縮開口が設けられており、これらの圧縮開口は、任意に軸線方向に互いに離間されており、さらに有利には少なくとも部分的にオーバラップしている。したがって、横方向力伝達素子は容易に圧縮可能であり、ひいては軸線方向長さを容易に減じることができる。
【0026】
好ましくは、横方向力伝達素子は一体的に形成されており、このことは、固定装置の簡単な組付けならびに特に横方向力伝達素子の経済的な作製を保証する。
【0027】
有利には、固定素子の保持区分から半径方向に突出した表示区画が、横方向力伝達素子において固定素子の保持区画に向けられた端部に設けられている。表示区画は、固定素子が打ち込まれた状態で、使用者ならびに検査員が、打ち込まれた固定装置に横方向力伝達素子が取り付けられたか否かを外部から視覚的にチェックすることを可能にする。有利には、表示区画は環状素子であり、この場合、内側に位置する開口は基礎構造部内へ固定素子を案内することをさらに保証する。代替的には、表示区画は、組み込まれた状態で固定素子の保持区画から部分的に半径方向に突出する材料区画である。表示区画は、例えば一回の鋳込みで横方向力伝達素子と一体的に成形される。代替的には、表示区画は横方向力伝達素子に配置されているか、または固定装置の組付け時に横方向力伝達素子設けられる別個の部分である。
【0028】
好ましくは、軸線方向に突出したばね素子は、横方向力伝達素子の少なくとも一方の自由縁部に設けられており、これらのばね素子は、固定素子の保持区画によって変位可能または変形可能である。軸線方向初期長さから軸線方向長さを低減する可能性は、本質的にこれらのばね素子のみによって保証することができ、したがって、横方向力伝達素子の残りの部分は材料選択に関して力伝達に対する要求に合わせて調整すればよく、変形可能性に対する要求に合わせて調整する必要はない。横方向力伝達素子が組み込まれた状態では、突出したばね素子は、有利には固定素子の保持区画に向けられており、これにより、保持区画を付加構造部の方向に移動させた場合にばね素子は保持区画により直接に変位されるか、または変形される。
【0029】
代替的な配置では、突出したばね素子は横方向力伝達素子が組み込まれた状態で、基礎構造部に向けられており、付加構造部の方向に保持区画を移動させて基礎構造部に当接させた場合に変位または変形される。特に横方向力伝達素子の有利にはスリーブ状の他の区画が極めて堅固な、ほとんど変形不能な材料から作製されている場合に軸線方向長さの有利な低減可能性を保証するために、両方の自由な軸線方向縁部には、それぞれ軸線方向に突出したばね素子が設けられている。これらのばね素子は、有利には横方向力伝達素子の残りの区画と一体的に、特に有利には作製時に同時に形成される。
【0030】
有利には、横方向力伝達素子は弾性材料により作製されており、このことは、固定素子を締め付けた場合に横方向力伝達素子の容易な変形を保証する。代替的には、横方向力伝達素子は、弾性的ではない、しかしながら、少なくとも部分的に圧縮可能な材料により作製されている。
【0031】
好ましくは、横方向力伝達素子は、有利には、射出成形法/鋳込み成形法により作製され、このことは、横方向力伝達素子の簡単かつ経済的な作製を可能にする。横方向力の作用方向に適宜な力伝達を保証することのできるために十分な剛性と弾性係数とを有していれば本質的に全てのプラスチックが適している。代替的に、横方向力伝達素子は、例えば使用目的に適した金属により作製されている。
【発明の効果】
【0032】
上記のように構成した本発明による固定装置により、付加構造部厚さとは無関係に保持区画を付加構造部に当接させることができ、横方向力が付加構造部から固定素子に遊びなしに一様に伝達されることが保障されるという効果が得られる。
【0033】
次に本発明を実施例を用いて詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】固定装置の第1実施例の詳細断面図である。
【図2】固定装置の第2実施例の詳細断面図である。
【図3】横方向力伝達素子の第3実施例の側面図である。
【図4】横方向力伝達素子の第4実施例の側面図である。
【図5】図4に示した横方向力伝達素子の変化態様の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
基本的に図面において同じ部分には同じ符号を付す。
図1には、基礎構造部7に付加構造部6を固定するための固定装置11が示されている。この固定装置11は、固定素子12としてのコンクリート用ねじと、横方向力伝達素子21とを有している。本実施例では、付加構造部6は付加構造部厚さDを有し、固定素子12のために円形の案内開口8を有している。固定素子12は、長手方向軸線13に沿って延在するシャフト14を有し、このシャフト14は、第1端部にねじ頭の形で半径方向に突出した保持区画15と、反対側の自由な第2端部を起点として、基礎構造部7内に係止するためのセルフタッピング式ねじ山17を備える係止区画16とを有している。
【0036】
スリーブ状の横方向力伝達素子21は、金属からなるコイルばねの形をしたばね素子であり、固定素子12が打ち込まれた状態で付加構造部6の案内開口8内に位置するように、固定素子12に配置される。横方向力伝達素子21の内径Iは、本質的にシャフト14の外径Aに対応し、横方向力伝達素子21の外径Kは、本質的に案内開口8の内径Nに対応する。横方向力伝達素子21は、付加構造部厚さDよりも大きい軸線方向初期長さHを有している。横方向力伝達素子21は、組み付けられた状態では軸線方向初期長さHよりも短い軸線方向長さLを有し、この場合、横方向力伝達素子21は固定素子12の保持区画15によって軸線方向長さLに短縮されている。
【0037】
固定装置11を取り付けるためには、まず基礎構造部7の該当箇所に直径Pを有する孔9が形成される。直径Pは、コンクリート用ねじとして形成された固定素子12の雄ねじ山直径Qよりも小さい。続いて、固定素子12が孔に挿入可能となるように、付加構造部6が、基礎構造部7に形成された孔9に対して位置決めされる。固定素子12を挿入して組み付けるため、案内開口8の内径Nは、固定素子12の雄ねじ山直径Qよりも幾分大きく形成されている。
【0038】
固定素子12には、横方向力伝達素子21が既に作業側に配置されている。使用者は固定素子12におけるシャフト14の遊端を案内開口8を介して孔9の内部へ案内し、固定素子12の保持区画15が付加構造部6に当接するまで固定素子を孔9にねじ込む。この場合、横方向力伝達素子21は、保持区画15によって軸線方向初期長さHから軸線方向長さLに短縮される。この軸線方向長さLは、本質的に付加構造部厚さDに相当する。付加構造部6と横方向力伝達素子21との間の接触面および横方向力伝達素子21と固定素子12との間の接触面により、付加構造部6の横方向力が固定素子12に有利に伝達されることが保証される。
【0039】
図2に示す本発明の実施形態では、固定装置30の一体的に形成された横方向力伝達素子31が、第1の軸線方向区画32と、第1の軸線方向区画32と部分的にオーバラップしている第2の軸線方向区画33とを有しており、軸線方向区画32および33は、固定素子12の保持区画15によって互いに相対的に軸線方向に移動可能である。横方向力伝達素子31はプラスチックにより作製されている。横方向力伝達素子31はプラスチック1の軸線方向初期長さHが軸線方向長さLに短縮された場合に、横方向力伝達素子31は有利には半径方向に拡大し、この場合に、横方向力伝達素子31と固定素子12との間または横方向力伝達素子31と付加構成部6との間の間隙が閉じられる。横方向力伝達素子31において固定素子12の保持区画15に向いた端部には、固定素子12の保持区画15から半径方向に突出した、有利には環状の表示区画34が設けられている。固定装置30が打ち込まれた状態で半径方向に突出しているこの表示区画34により、使用者も検査員も、この固定装置30に横方向力伝達素子31が設けられているかどうかを一瞥して認識することができる。
【0040】
表示区画34は、本実施例では横方向力伝達素子31と一体的に形成されている。しかしながら、例えば、図1に示したような横方向力伝達素子31において、同様に表示区画が、別個の分離した部分、または横方向力伝達素子21に固定された部分として設けられていてもよい。
【0041】
図3に示すスリーブ状の横方向力伝達素子41は、複数の圧縮開口42を有している。これらの圧縮開口42は、軸線方向に互いに離間した2列で、周方向に部分的に互いにオーバラップした形で横方向力伝達素子41の壁に形成されている。
【0042】
図4に示すスリーブ状の横方向力伝達素子51は、横方向力伝達素子51の自由縁部52に、軸線方向に突出したばね素子53を有している。これらのばね素子53は、一方側に張り出したフラグの形で形成されている。
【0043】
図5に示すスリーブ状の横方向力伝達素子61は、横方向力伝達素子61の自由縁部62に、アーチ状区画の形で軸線方向に突出したばね素子53を有している。
【0044】
横方向力伝達素子51も横方向力伝達素子61も有利には一体的に、プラスチックにより作製されており、軸線方向に突出したばね素子53または63は、有利には横方向力伝達素子51または61と同時に形成されている。
【符号の説明】
【0045】
6 付加構造部
7 基礎構造部
8 案内開口
9 孔
11 固定装置
12 固定素子
13 長手方向軸線
14 シャフト
15 保持区画
16 係止区画
17 ねじ山
21 横方向力伝達素子
30 固定装置
31,41,51,61 横方向力伝達素子
32 第1の軸線方向区画
33 第2の軸線方向区画
34 表示区画
42 開口
53 ばね素子
52,62 自由縁部
A 外径
D 付加構造部厚さ
H 初期長さH
K 外径
L 軸線方向長さ
N 内径
P 直径
Q 雄ねじ山内径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎構造部(7)に付加構造部(6)を固定するための固定装置であって、固定素子(12)と横方向力伝達素子(21;31;41;51;61)とを備え、
前記付加構造部(6)が、前記固定素子(12)のための案内開口(8)を有し、
前記固定素子(12)が、長手方向軸線(13)に沿って延在するシャフト(14)を有し、該シャフト(14)が、第1端部で半径方向に突出した保持区画(15)と、反対側の第2端部を起点とし、前記基礎構造部(7)内に係止するための係止区画(16)とを備え、
前記横方向力伝達素子(21;31;41;51;61)が、前記保持区画(15)と前記係止区画(16)との間で、前記付加構造部(6)の案内開口(8)内で前記固定素子(12)に配置されている固定装置において、
前記横方向力伝達素子(21;31;41;51;61)が、軸線方向初期長さ(H)よりも短い軸線方向長さ(L)を有しており、前記横方向力伝達素子(21;31;41;51;61)が、前記固定素子(12)の前記保持区画(15)によって前記軸線方向長さ(L)に減じられていることを特徴とする固定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の固定装置において、
前記横方向力伝達素子(21)がばね素子である固定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の固定装置において、
前記ばね素子がコイルばねである固定装置。
【請求項4】
請求項1に記載の固定装置において、
前記横方向力伝達素子(31)が、第1の軸線方向区画(32)と、該第1の軸線方向区画と少なくとも部分的にオーバラップする第2の線方向区画(33)とを有しており、前記軸線方向区画(32,33)が、少なくとも軸線方向に互いに相対的に移動可能である固定装置。
【請求項5】
請求項1に記載の固定装置において、
横方向力伝達素子(41)の壁内に圧縮開口(42)が設けられている固定装置。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項に記載の固定装置において、
前記横方向力伝達素子(21;31;41;51;61)が一体的に形成されている固定装置。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の固定装置において、
前記固定素子(12)の前記保持区画(15)から半径方向に突出した表示区画(34)が、前記横方向力伝達素子(31)において前記固定素子(12)の前記保持区画(15)に向けられた端部に設けられている固定装置。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一項に記載の固定装置において、
軸線方向に突出したばね素子(53;63)が、前記横方向力伝達素子(51;61)の少なくともいずれか一方の自由縁部(52;62)に設けられている固定装置。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項に記載の固定装置において、
前記横方向力伝達素子(31;41;51;61)がプラスチックにより作製されている固定装置。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一項に記載の固定装置において、
前記固定素子(12)がコンクリート用ねじである固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−270714(P2009−270714A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111409(P2009−111409)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(591010170)ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト (339)
【Fターム(参考)】