説明

固形状原料のリチャージ装置およびこれを用いたリチャージ方法

【課題】リチャージ装置の原料容器200の単結晶製造装置100内での上下位置を任意に制御できるようにすることにより、単結晶の品質および生産性を向上させることを可能とするリチャージ装置およびこれを用いたリチャージ方法を提供する。
【解決手段】結晶融液105を貯留するルツボ101を有する単結晶製造装置100に設けられ、前記ルツボ101に固形状原料155を供給するために固形状原料155が充填される筒状の原料容器200を備える固形状原料155のリチャージ装置であって、筒状の原料容器200を保持する独立して制御可能な2つの保持機構を有することを特徴とする固形状原料155のリチャージ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョクラルスキー(CZ法)による単結晶製造装置における、固形状原料のリチャージ装置およびこれを用いたリチャージ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単結晶、例えばシリコン単結晶の製造方法として、いわゆるチョクラルスキー(CZ法)が知られている。この方法では、育成炉内に設置されたルツボに固形状のシリコン原料を収容し、ヒータを高温加熱してルツボ内の原料を融液とする。そして、原料融液面に種結晶を着液させ、種結晶の下方に所望の直径と品質とを有する単結晶を育成する。
もっとも、シリコン単結晶育成前にルツボに固形状のシリコン原料を隙間なく収容した場合でも、シリコン原料は溶融することで隙間がなくなり、必ずルツボの容積に若干の余裕が生ずる。一般にCZ法による結晶育成時に使用されるルツボは使い捨てであるため、ひとつのルツボで育成する結晶重量を増加させるほど、全体的なコスト削減につながることは以前からよく知られている。しかしながら、ルツボへ最初に固形状のシリコン原料を収容する際のシリコン原料を増加させることは既に限界に達している。そこで、最初に固形状のシリコン原料を一度溶融した後、シリコン融液に固形状のシリコン原料を追加供給することでルツボの容積を有効利用し、よって、育成する結晶重量を増加させる方法が提案されてきた。この技術はリチャージ技術と呼ばれる。
【0003】
また、従来は、1回の操業で1本の単結晶を引上げる1本引き操業が広く用いられているが、複数の単結晶を引上げるマルチ引き操業も、上記のリチャージ技術の応用により次第に増える傾向にある。すなわち、例えば、1本のシリコン単結晶を引き上げた後、減少したシリコン融液に固形状のシリコン原料を追加供給して、2本目以降のシリコン単結晶を引き上げるのである。このようなマルチ引き操業も、一度しか使用できないルツボから複数本の単結晶を製造し、単結晶の生産性を向上させるとともに、高価なルツボを有効に活用して、単結晶製造コスト削減を図ることを目的としている。
【0004】
これらの、シリコン融液上に固形状のシリコン原料を追加供給するリチャージ技術の中で、実用性の観点から注目されている技術の一つとして、リチャージ管リチャージ法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
図10に従来技術のリチャージ管リチャージ法で用いられるシリコン単結晶製造装置を説明する模式的縦断面図である。図10に示すように、シリコン単結晶製造装置100にはリチャージ装置が設けられている。そして、このリチャージ装置は、固形状シリコン多結晶原料155が充填される筒状の原料容器200、この筒状の原料容器200を吊り下げるワイヤ129、ワイヤ129を巻き上げるが引上げモータ141で構成されている。そして、ワイヤ129は原料容器200の中心を通り、原料容器200の底蓋203の中心で固定されている。原料容器200全体は、この底蓋203が原料容器200のリチャージ管201の下端を支えることによって、保持されている。
そして、筒状の原料容器200に充填された固形状シリコン多結晶原料155は、原料容器200が石英ルツボ101にむけて降下し、図11に示すようにストッパ205がサブチャンバ127の内壁に設けられたフリンジ128に掛け止めされた後、さらに底蓋203のみが降下し、隙間210が生ずることによって、石英ルツボ101のシリコン融液面へと供給される構成になっている。
【特許文献1】特再2002−068732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
もっとも、上記のような、構成をとる従来技術のリチャージ管リチャージ法のリチャージ装置では、石英ルツボ101へ固形状シリコン多結晶材料155を供給する際の原料容器200の上下位置が、ストッパ205とフリンジ128によって、一意的に決定されており、上下位置を任意に制御することができなかった。
したがって、固形状シリコン多結晶原料155を供給する際の、シリコン融液固化面106と原料容器200の距離を理想的な距離に設定できないという問題があった。このため、例えば、供給する固形状シリコン多結晶材料155の量に応じた適切な高さに原料容器200を制御できないため、固化面上の固形状シリコン多結晶原料155分布が最適化されず、後の、固形状シリコン多結晶原料155に要する加熱時間が長くなり生産性を低下させるという問題が起こりえる。
また、例えば、残余シリコン融液量が少なく、シリコン融液固化面106と原料容器200の距離が高くなりすぎた場合、固化面106で跳ね返った固形状シリコン多結晶材料155が、石英ルツボ101の内側面にあたり石英ルツボを破損させ、これによって生じた石英屑がシリコン単結晶の転位原因となるという問題も起こりえる。
さらに、目的の単結晶を育成するために炉内の熱環境(ホットゾーン)を変更した場合に、最適な原料高さで投入できなくなるという問題も起こりうる。
【0006】
また、従来技術のリチャージ装置では、固形状シリコン多結晶原料155および原料容器200の全重量が底蓋203とリチャージ管201下端の接触面でのみ保持され支えている。そして、シリコン単結晶の大口径化に伴い、リチャージ管が大口径化・長大化し、充填される固形状シリコン多結晶原料155も増加の一途をたどっている現状において、保持のための原料容器200強度が保てないという問題が生じていた。
【0007】
さらに、原料容器の中心を通る保持ワイヤを構成要素とするリチャージ管リチャージ法のリチャージ装置では、図12に示すように、固形状シリコン多結晶原料155供給時に、何らかの要因で固形状シリコン多結晶原料155に偏りが生じ、底蓋203がリチャージ管201に対して、傾いた状態で固定されてしまう場合がある。このような場合に、底蓋203に固定されたワイヤ129のみによって保持されている従来技術の原料容器200では、原料容器200の回収が極めて困難になり、結晶引上げ自体を中断せざるを得なくなるという問題も生じうる。
【0008】
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、その目的とするところは、リチャージ装置の原料容器の単結晶製造装置内での上下位置を任意に制御できるようにすることにより、単結晶の品質および生産性を向上させることを可能とするリチャージ装置およびこれを用いたリチャージ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の固形状原料のリチャージ装置は、
結晶融液を貯留するルツボを有する単結晶製造装置に設けられ、前記ルツボに固形状原料を供給するために該固形状原料が充填される筒状の原料容器を備える固形状原料のリチャージ装置であって、
前記筒状の原料容器を保持する独立して制御可能な2つの保持機構を有することを特徴とする固形状原料のリチャージ装置である。
【0010】
ここで、前記2つの保持機構のうち、少なくとも一方の保持機構は前記筒状の原料容器の中心を通るワイヤと、該ワイヤに固定される前記筒状の原料容器の底蓋を構成要素とすることが望ましい。
【0011】
本発明の一態様の固形状原料のリチャージ装置を用いたリチャージ方法は、
結晶融液を貯留するルツボを有する単結晶製造装置に設けられ、前記ルツボに固形状原料を供給するために該固形状原料が充填される筒状の原料容器を備え、かつ、前記筒状の原料容器を保持する独立して制御可能な2つの保持機構を有する固形状原料のリチャージ装置を用いたリチャージ方法であって、
前記固形状原料を充填した前記筒状の原料容器を、前記2つの保持機構の双方を同時に駆動させて前記単結晶製造装置内を下降させるステップと、
前記2つの保持機構の少なくとも一方の駆動を停止させることにより前記筒状の原料容器の下降を停止させるステップと、
前記2つの保持機構の他方のみを駆動させ、前記筒状の原料容器内に充填された前記固形状原料をルツボに供給するステップを有することを特徴とする固形状原料のリチャージ装置を用いたリチャージ方法である。
【0012】
この時、前記2つの保持機構のうち、少なくとも一方の保持機構は前記筒状の原料容器の中心を通るワイヤと、該ワイヤに固定される前記筒状の原料容器の底蓋を構成要素とすることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、リチャージ装置の原料容器の単結晶製造装置内での上下位置を任意に制御できるようにすることにより、単結晶の品質および生産性を向上させることを可能とするリチャージ装置およびこれを用いたリチャージ方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る固形状原料のリチャージ管およびこれを用いたリチャージ方法についての実施の形態につき、添付図面に基づき説明する。なお、ここでは単結晶として、シリコン単結晶を製造する場合を例として記載する。
【0015】
[実施の形態1]
(単結晶製造装置・リチャージ装置)
最初に、実施の形態1で用いられるシリコン単結晶製造装置およびリチャージ装置の構成について説明する。
図1は、本実施の形態で用いられるシリコン単結晶製造装置の模式的縦断面図である。
図1に示すシリコン単結晶製造装置は、原料となる多結晶シリコンが充填されるルツボ101、103、多結晶シリコンを加熱、溶融し、シリコン結晶を製造するための結晶融液であるシリコン融液105とするための主ヒータ107および、下部ヒータ109がチャンバ111内に格納されている。
【0016】
なお、上記ルツボ101、103は、内側にシリコン融液105を直接収容する石英ルツボ101と、石英ルツボ101を外側で支持するためのカーボンルツボ103とから構成されている。ルツボ101、103は、シリコン単結晶製造装置の下部に取り付けられた回転駆動機能(図示せず)によって回転昇降自在なルツボシャフト113によって支持されている。
ルツボ101、103を取り囲むように主ヒータ107および、下部ヒータ109が配置されており、主ヒータ107の外側には、主ヒータ107からの熱がチャンバ111に直接輻射されるのを防止するための第1の保温材115、第2の保温材117が主ヒータ107の周囲を取り囲むように設けられている。加えて、シリコン融液105やルツボ101、103からの熱がチャンバ111に直接輻射されるのを防止するための第3の保温材119、第4の保温材121が設けられている。そして、シリコン融液105やルツボ101、103からの熱が引き上げシリコン単結晶123の冷却を阻害しないように輻射シールド125が、シリコン融液105、ルツボ101、103とシリコン単結晶123間に設けられている。なお、保温材115、117の材質については、特に保温性に優れているものを使用することが望ましく、通常成形断熱材が用いられている。保温材119、121の材質については、例えば、成形断熱材、カーボン、あるいはカーボンの表面を炭化ケイ素で被覆したものが用いられている。輻射シールド125については、輻射熱を調整する役目を果たしているので、例えば、モリブデン、タングステン、タンタル等の金属や、カーボン、カーボンの表面を炭化ケイ素で被覆したもの及びこれらの内側に成形断熱材を設置したものが用いられる。
【0017】
なお、チャンバ111は、ステンレス等の耐熱性、熱伝導性に優れた金属により形成されており、冷却管(図示せず)を通して水冷されている。
さらに、チャンバ111上部にはゲートバルブ135を介して、シリコン融液105から引上げられたシリコン単結晶や後述する原料容器200を保持して取り出すためのサブチャンバ127が設けられている。また、サブチャンバ127上端は天板147により封鎖されている。そして、引上げられたシリコン単結晶の取り出しや後述する原料容器200を取り出し可能にするサブチャンバの蓋(図示せず)がサブチャンバ上方側面に設けられている。
【0018】
そして、サブチャンバ127上部には、引上げモータ141を設けている。引上げモータ141は、ワイヤ129を上下動自在に保持しており、ワイヤ129は天板を通して、サブチャンバ127の中心軸に沿って吊り下げられている。ワイヤ129の下端には、シリコン単結晶引上げ工程の際には図2に示すように種結晶131が吊り下げられ、リチャージ工程の際には図1に示すように、原料容器200が吊り下げられる。
【0019】
次に、リチャージ装置について説明する。まず、本実施の形態で用いられるリチャージ装置は、図1に示すように、筒状の原料容器200、それぞれ独立して制御可能な第1の保持機構および第2の保持機構で構成されている。ここで、原料容器200は、固形状多結晶シリコン原料155が充填されるリチャージ管201と底蓋203およびリチャージ管201をサブチャンバ127の中心軸に安定させるためにワイヤ129を通すリング204から構成されている。ワイヤ129は底蓋203の中心部に固定されており、リチャージ管201は、底蓋203によって保持されている。また、リチャージ管201上部外周には、後述するアーム状把持示具160で原料容器200を掛け止めするためのストッパ205が設けられている。
ここで、リチャージ管201は、シリコン融液105と接近するため、耐熱性に優れるほか、ウェーハを汚染しないものとすることが好ましく、加工性に優れ、比較的安価な点から石英が好ましいが、炭化ケイ素、窒化ケイ素、または酸化アルミニウム等を用いることが出来る。
また、リチャージ管201の内径は、上から下まで均一であってもよいし、固形状原料155の降下をスムーズにするために、下端に向けて広がったテーパ状でも構わない。あるいは、固形状原料155の降下スピードを抑制するために、下端に向けて細くなる逆テーパ形状であっても構わない。
【0020】
そして、第1の保持機構は従来技術のように、引上げモータ141と、引上げモータ141から伸び、リング204に通され、原料容器の中心を通り、底蓋203の中央部に固定されるワイヤ129から構成されている。
次に、第2の保持機構は、第2の引上げモータ145と、アーム駆動部161で自在に開閉しストッパ205を掛け止めするアーム状把持示具160と、このアーム状把持示具160を第2の引き上げモータ145から吊り下げる複数本の第2のワイヤ143によって構成されている。
ここで、アーム状把持示具160は、適度な強度を有し、ウェーハを汚染しないものとすることが好ましく、高温環境下においても高い強度を示し、且つ熱膨張率も低い点からモリブデンが好ましいが、同様の物性を示すタングステンやタンタル等も使用する条件に応じて用いることも出来ると考える。
【0021】
(リチャージ方法)
次に、上記のように構成されたシリコン単結晶製造装置およびリチャージ装置を用いたリチャージ方法について図1乃至図8を用いて説明する。
【0022】
まず、シリコン単結晶製造装置100は、ゲートバルブ135を開き、サブチャンバ127の上方側面に設けられた蓋(図示せず)を閉じた状態にしておく。
次に、チャンバ111およびサブチャンバ127の内部を不活性ガスで置換した後、Ar等の不活性ガスを流した状態で低圧に保つ。その後、ヒータ107,109を加熱することにより、予め石英ルツボ101の内部に投入されている固形状多結晶シリコン原料(図示せず)を溶融し、シリコン融液105とする。
次に、図2に示すように、ゲートバルブ135を閉め、チャンバ111とサブチャンバ127と遮断する。これにより、チャンバ111内を不活性雰囲気に保持しシリコン融液105の酸化を防止した状態で、サブチャンバ127を常圧に戻す。その後、サブチャンバ127の蓋(図示せず)を開き、ワイヤ129の下端に種結晶131を吊り下げる。そして、ワイヤ129の下端に種結晶131を吊り下げた後、サブチャンバ127の蓋(図示せず)を閉じ、サブチャンバ127を密閉する。
【0023】
なお、この時、第2の保持機構を構成するアーム状把持示具160は、サブチャンバ127上部に、アーム駆動部161により開かれた状態で保持されている。
【0024】
その後、サブチャンバ127を減圧し、サブチャンバ127内部をAr等の不活性雰囲気で満たす。次に、ゲートバルブ135を開き、チャンバ111とサブチャンバ127を連通する。この状態で、種結晶131はシリコン融液105の真上に位置するため、シリコン融液105の輻射熱により予熱される。
次に、ワイヤ129引上げモータ141を駆動し、ワイヤ129下端に吊り下げられた種結晶131を降下させ、種結晶131の少なくとも一部をシリコン融液105に浸す。種結晶131がシリコン融液105に浸されると、図3に示すように種結晶131下方に徐々にシリコン単結晶123が成長する。そして、シリコン単結晶123が成長するに従い、所定速度で種結晶131を引上げることにより、所望の直径および長さを有するシリコン単結晶インゴット150を引上げることが可能となる。
その後、成長したシリコン単結晶インゴット150を、図4に示すようにサブチャンバ127まで上昇させる。そして、ゲートバルブ135を閉じ、チャンバ111とサブチャンバ127とを遮断する。これにより、チャンバ111内を不活性雰囲気に保持し、シリコン融液105の酸化を防止した状態で、サブチャンバ127を常圧に戻す。その後、サブチャンバ127の蓋を開き、シリコン単結晶インゴット150を取り出す。このようにして、1本目のシリコン単結晶インゴット150の製造工程が終了する。
【0025】
次に、単結晶製造装置外で、リチャージする原料となる固形状多結晶シリコン原料155を原料容器200に充填した後に、サブチャンバ127の蓋を開き、図5に示すように原料容器200を第1の保持機構を構成するワイヤ129に吊り下げる。
次に、図1に示すように、第2の保持機構により原料容器200を吊り下げる。すなわち、アーム駆動部161により、アーム状把持示具160を閉じ、原料容器200のリチャージ管上部外周に設けられたストッパ205に引っ掛けることにより、原料容器200を保持する。
このようにして、本実施の形態においては、2つの保持機構を用いて原料容器200が保持される。
【0026】
次に、サブチャンバ127の蓋を閉じサブチャンバ127を密閉する。その後、サブチャンバ127を減圧し、サブチャンバ127内部を不活性雰囲気で満たす。
次に、ゲートバルブ135を開き、チャンバ111とサブチャンバ127内を連通させる。この状態で引上げモータ141と第2の引上げモータ145を制御することで、ワイヤ129および第2のワイヤ143と共に原料容器200を下降させる。
この際、原料容器200および固形状シリコン多結晶原料155の総重量は、第1の保持機構および第2の保持機構双方で負担されることになる。そして、それぞれの保持機構の総重量の負担割合は任意であるが、原料容器200の重量、固形状シリコン多結晶原料155の重量および原料容器200の構造的強度等を勘案し、最適な負担割合となるように制御することが望ましい。
【0027】
そして、図6に示すように、第2の保持機構を構成する第2の引上げモータ145を制御することにより、所望の上下位置で、原料容器200を構成するリチャージ管201下降を停止させる。
そして、停止した第2の引上げモータ145と独立に引上げモータ141を制御し駆動させることにより、更にワイヤ129を下降させる。すると、図7に示すように、底蓋203のみが更に下降する。そうすると、リチャージ管201と底蓋203の間に、隙間210が生じ、この隙間210から、固形状多結晶シリコン原料155が、自重により石英ルツボ101内に落下する。
なお、固形状多結晶シリコン原料155の石英ルツボ101に供給する際には、事前にヒータ107、109を制御することにより温度を降下させ、シリコン融液105を固化させておくことが望ましい。なぜなら、固化させることによって、シリコン融液の跳ね飛びを防止することが出来るからである。
【0028】
リチャージ管127内部に装填されたすべての固形状多結晶シリコン原料155が、石英ルツボ101内に投入された後、第1の保持機構を構成する引上げモータ141を駆動しワイヤ129を上昇させる。すると、底蓋203が上昇する。そして、引上げモータ141と第2の引上げモータ145を制御することで、ワイヤ129および第2のワイヤ143と共に原料容器200を上昇させる。
【0029】
なお、リチャージ管127内部に装填されたすべての固形状多結晶シリコン原料155が、石英ルツボ101内に投入された後、シリコン融液105の表面固化のために、下げていたチャンバ111内温度を、ヒータ107,109を制御することによって上昇させ、石英ルツボ101内に投入した固形状多結晶シリコン原料155を溶融する。
そして、図8に示すように原料容器200が、サブチャンバ127まで完全に上昇した後に、ゲートバルブ135を閉め、チャンバ111とサブチャンバ127を遮断する。これにより、チャンバ111内を不活性雰囲気に保持し、シリコン融液105の酸化を防止した状態で、サブチャンバ127の蓋を開き、サブチャンバ127内を常圧に戻す。その後、原料容器200を単結晶製造装置100外部に取り出しリチャージ工程が完了する。
【0030】
上記のシリコン単結晶インゴット150の製造工程とリチャージ工程を繰り返すことにより、石英ルツボ101を交換することなく2本目以降のシリコン単結晶インゴットを連続して製造することが可能となる。
また、ここでは、マルチ引き操業の際のリチャージを例にして記載したが、1本目のシリコン単結晶原料を増量することを目的とするリチャージについても、先行するシリコン単結晶引上げがない以外、同様な方法で本発明を適用することが可能である。
【0031】
(作用・効果)
このように、リチャージ装置に筒状の原料容器を保持する独立して制御可能な2つの保持機構を設けることにより、ルツボ内に固形状原料を供給する際、原料容器の上下位置を任意に制御することが可能となる。したがって、リチャージ毎の条件に最適な供給高さ位置を選択することが可能になる。
よって、例えば、リチャージの衝撃で生ずる石英屑を原因とするシリコン単結晶転位の抑制や、供給した原料の分布を最適化することによる原料溶融時間の短縮化が実現できること、さらに、目的の単結晶を育成するために炉内の熱環境(ホットゾーン)を変更した場合にも、フランジ位置を変更することなく最適な原料投入高さで投入することが可能となる。これにより、単結晶製造における品質および生産性の向上を実現することが可能となる。
また、リチャージ装置に筒状の原料容器を保持する独立して制御可能な2つの保持機構を設けることにより、原料容器および充填された固形状原料の重量を2つの保持機構に適切な負担割合で分散させ、原料容器の大型化や固形状原料の増量に伴う総重量の増大した場合でも、強度的に問題のないリチャージ装置を提供することができる。
さらに、従来の原料容器の中心を通る保持ワイヤを構成要素とするリチャージ管リチャージ法のリチャージ装置で生ずる底蓋が傾いて固定されてしまうようなトラブル時でも、第2の保持装置を使用して原料容器を引上げることにより、結晶引上げ自体を中断するという事態を回避することが可能となる。
【0032】
[実施の形態2]
次に、実施の形態2で用いられるシリコン単結晶製造装置およびリチャージ装置の構成について説明する。
図9は、本実施の形態で用いられるシリコン単結晶製造装置の模式的縦断面図である。本実施の形態のシリコン単結晶製造装置およびリチャージ装置においては、第2の保持機構が第2の引上げモータ145と、リチャージ管201上部外周に設けられたストッパ205に固定され、第2の引き上げモータ145から原料容器200を吊り下げる複数本の第2のワイヤ143によって構成されている点以外は、実施の形態1と同様である。
また、このシリコン単結晶製造装置およびリチャージ装置を用いたリチャージ方法についても、第2の保持機構への原料容器200の脱着が、アーム状把持器具160の開閉でなく、第2のワイヤ143への接続、取り外しによる以外は第1の実施の形態と同様である。
そして、作用・効果においても第1の実施の形態と同様である。
【0033】
ここでは、固形状原料として、固形状多結晶シリコンを用いたが、多結晶に限らず、固形状単結晶シリコンを用いても構わないし、両方を用いても構わない。また、シリコン以外の原料を用いる場合も同様に、多結晶または単結晶、または両方を固形状原料として選択できる。
【0034】
ここで、上記記載した実施の形態においては、単結晶としてシリコン単結晶を例として記載したが、本発明の適用は、必ずしもシリコン単結晶に限られず、チョクラルスキー(CZ)法を用いて引上げられる単結晶であれば、例えば、GaAs単結晶、InP単結晶等の単結晶についても適用することが可能である。
【0035】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。実施の形態の説明においては、単結晶製造装置、リチャージ装置、リチャージ方法等で、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされる単結晶製造装置、リチャージ装置、リチャージ方法等に関わる要素を適宜選択して用いることができる。
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての固形状原料のリチャージ装置およびこれを用いたリチャージ方法は、本発明の範囲に包含される。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しつつ説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。
【0037】
(実施例)
図1に示した構成を有するシリコン単結晶製造装置およびリチャージ装置を用いて、リチャージ作業を実施した。
まず、内径600mm(24インチ)の石英ルツボ101を使用した。この石英ルツボ101に140kgの固形状シリコン多結晶155を充填した状態で溶融した後、ゲートバルブ135を閉めた状態でサブチャンバ127内を常圧に戻した。その後、図1に示すようにサブチャンバ127内に円筒上の原料容器200を第1の保持機構を構成するワイヤ129につるした状態でセットし、第2の保持機構を構成するモリブデンから成るアーム状把持示具160で、原料容器200を固定した。その後、サブチャンバ127内を5333Pa(40Torr)まで減圧した。
【0038】
なお、ここで、用いられたリチャージ管201は平均内径が200mm、長さが1500mmの下端に向けて広がったテーパ形状であった。また、リチャージ管201への固形状多結晶シリコン原料155の充填量は40kgである。
【0039】
サブチャンバ127の減圧完了後、図6に示すように、ゲートバルブ135を開き原料容器200を目的の上下位置である固化面106から300mmの位置までおろした。ここで、第2の保持機構を構成する第2の引上げモータ145は動かさず、図7に示すように、第1の保持機構を構成する引上げモータ141のみを駆動することによって、ワイヤ129に固定された底蓋203のみ下降させて隙間210を形成し、リチャージ管201内の固形状多結晶シリコン原料155を固化面106に投入、供給した。リチャージ完了後、引上げモータ141および第2の引上げモータ145を動かすことによって原料容器200を図8に示すようにサブチャンバ127まで上昇させた後、サブチャンバ127外へ取り出した。
【0040】
このように、実施例において、独立して制御可能な2つの保持機構を有する本発明のリチャージ装置を用いたリチャージ方法においても、従来の1つの保持機構のみを有するリチャージ装置と同様のリチャージ作業を遜色なく行えることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施の形態1および実施例のシリコン単結晶製造装置の模式的縦断面図である。
【図2】実施の形態1および実施例のシリコン単結晶製造装置の模式的縦断面図である。
【図3】実施の形態1および実施例のシリコン単結晶製造装置の模式的縦断面図である。
【図4】実施の形態1および実施例のシリコン単結晶製造装置の模式的縦断面図である。
【図5】実施の形態1および実施例のシリコン単結晶製造装置の模式的縦断面図である。
【図6】実施の形態1および実施例のシリコン単結晶製造装置の模式的縦断面図である。
【図7】実施の形態1および実施例のシリコン単結晶製造装置の模式的縦断面図である。
【図8】実施の形態1および実施例のシリコン単結晶製造装置の模式的縦断面図である。
【図9】実施の形態2のシリコン単結晶製造装置の模式的縦断面図である。
【図10】従来技術のシリコン単結晶製造装置の模式的縦断面図である。
【図11】従来技術のシリコン単結晶製造装置の模式的縦断面図である。
【図12】従来技術のシリコン単結晶製造装置の問題点を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
101 石英ルツボ
105 シリコン融液
106 固化面
111 チャンバ
127 サブチャンバ
129 ワイヤ
135 ゲートバルブ
141 引上げモータ
143 第2のワイヤ
145 第2の引上げモータ
155 固形状多結晶シリコン原料
160 アーム状把持示具
200 原料容器
201 リチャージ管
203 底蓋
210 隙間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶融液を貯留するルツボを有する単結晶製造装置に設けられ、前記ルツボに固形状原料を供給するために該固形状原料が充填される筒状の原料容器を備える固形状原料のリチャージ装置であって、
前記筒状の原料容器を保持する独立して制御可能な2つの保持機構を有することを特徴とする固形状原料のリチャージ装置。
【請求項2】
前記2つの保持機構のうち、少なくとも一方の保持機構は前記筒状の原料容器の中心を通るワイヤと、該ワイヤに固定される前記筒状の原料容器の底蓋を構成要素とすることを特徴とする請求項1記載の固形状原料のリチャージ装置。
【請求項3】
結晶融液を貯留するルツボを有する単結晶製造装置に設けられ、前記ルツボに固形状原料を供給するために該固形状原料が充填される筒状の原料容器を備え、かつ、前記筒状の原料容器を保持する独立して制御可能な2つの保持機構を有する固形状原料のリチャージ装置を用いたリチャージ方法であって、
前記固形状原料を充填した前記筒状の原料容器を、前記2つの保持機構の双方を同時に駆動させて前記単結晶製造装置内を下降させるステップと、
前記2つの保持機構の少なくとも一方の駆動を停止させることにより前記筒状の原料容器の下降を停止させるステップと、
前記2つの保持機構の他方のみを駆動させ、前記筒状の原料容器内に充填された前記固形状原料をルツボに供給するステップを有することを特徴とする固形状原料のリチャージ装置を用いたリチャージ方法。
【請求項4】
前記2つの保持機構のうち、少なくとも一方の保持機構は前記筒状の原料容器の中心を通るワイヤと、該ワイヤに固定される前記筒状の原料容器の底蓋を構成要素とすることを特徴とする請求項3記載の固形状原料のリチャージ装置を用いたリチャージ方法。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−261836(P2007−261836A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−86451(P2006−86451)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(507182807)コバレントマテリアル株式会社 (506)
【Fターム(参考)】