説明

固形食品有機廃棄物処理方法

【課題】食品加工工場で発生する固形有機廃棄物の大幅な減容化を実現する。
【解決手段】食品加工工場で発生するブロッコリーの茎などの固形廃棄物を裁断して3〜5mmの大きさの細かな廃棄物片にする裁断工程S11と、廃棄物片が150μmになるまで磨り潰してペースト状にする摩砕工程S12と、廃棄物ペーストを加熱してゾル状態にする加熱工程S13とを含む。加熱後のゾル状態の汚水は、次にオゾン処理工程S21でオゾンによって酸化分解され、次に活性汚泥処理工程S22でエアの曝気により微生物分解される。そして、微生物分解を経た汚泥は脱水工程S23を経て汚泥ケーキになる。汚泥ケーキは堆肥として活用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形食品有機廃棄物処理方法に関し、より詳しくは、食品加工工場で廃棄対象となる食品(食材を含む)、典型的には野菜、果実の農産物及びその加工品の処理に関する。
【背景技術】
【0002】
コンビニエンスストア、デパート、スーパーマーケットなどでは弁当などの調理済み食品や惣菜が販売されているが、その市場規模は年々拡大する傾向にある。これらの店舗に食品を提供する食品加工工場では、食品加工工程で発生する廃棄物、例えば野菜や果実の残滓の処理(典型的には生野菜の屑やリンゴの皮などの処理)が問題視されており、この種の廃棄物の減容化が大きな課題となっている。
【0003】
特許文献1は、生ゴミ、食品廃棄物、家畜糞尿などの有機性廃棄物を可溶化する技術を開示している。特許文献1に記載の有機性廃棄物の可溶化方法は、ここに添付の図4に示すように、圧縮破砕機の中に有機性廃棄物を投入した後に高圧を瞬間的に加えることにより有機性廃棄物を圧縮し、そして排出孔を通じて廃棄物を細かい粒子状に破砕すると共に耐圧管を通じて可溶化槽の内部に送り込むというものである。
【0004】
可溶化槽では、圧力状態を維持しつつ攪拌すると共に30〜70℃に加温して4〜8時間、この状態を維持することで可溶化槽の中の細かい粒子状の有機性廃棄物は圧力と温度との相乗効果によって可溶化し、可溶化した廃棄物は移送管を通じて発酵槽に送り込まれる。発酵槽では、嫌気性発酵、好気性発酵が行われる。特許文献1の表1によれば、可溶化槽の圧力及び温度によって変化するが、生ゴミの可溶化率は75〜90%と記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−221551号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1は、屎尿、下水汚泥、農集汚泥、生ゴミ、食品廃棄物など広範囲の有機性廃棄物を対象とするものである。本願発明者らは、食品加工工場で発生する固形食品有機廃棄物に特化して、例えば果実、生野菜の残滓の効果的な処理を検討した結果、本発明を案出するに至ったものである。
【0007】
本発明の目的は、食品加工工場で発生する固形廃棄物の大幅な減容化を実現することのできる固形食品有機廃棄物処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の技術的課題は、本発明によれば、
固形食品有機廃棄物を裁断する裁断工程と、
該裁断工程により細かくなった廃棄物片を磨り潰して廃棄物ペーストを生成する摩砕工程と、
該摩砕工程により生成された廃棄物ペーストを加熱してゾル状態の廃棄物成分含有液にする加熱工程と、
該ゾル状態の廃棄物成分含有液をオゾンで酸化分解するオゾン処理工程と、
該オゾン処理工程を経た汚水を微生物分解する活性汚泥処理工程と、
該活性汚泥処理工程から出た汚泥を脱水して汚泥ケーキを生成する脱水工程とを有することを特徴とする固形食品有機廃棄物処理方法を提供することにより達成される。
【0009】
本発明の固形食品有機廃棄物処理方法では、野菜屑、果実屑など裁断して細かくなった廃棄物片を磨り潰して廃棄物ペーストにすることで、固形廃棄物の細胞壁に損傷を与えることができ、そして、その後の加熱工程で廃棄物に含まれる成分を溶出させてゾル状態の廃棄物成分含有液にすると共に固形廃棄物の繊維組織を軟化させることで廃棄物成分が汚水から分離しない混合状態を生成することから、後のオゾン処理工程における廃棄物成分含有液の酸化分解及び次の微生物分解を促進することができ、これにより固形食品有機廃棄物を大幅に減容化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。
【0011】
図1は、実施例の固形食品有機廃棄物処理方法の概要を示すフロー図である。食品加工工場で発生する固形食品有機廃棄物は図1に示すフローに従って処理される。食品加工工場で発生する廃棄物の典型例を列挙すれば以下のとおりである。
【0012】
(1)生野菜の屑、例えばレタスの芯、レタスの外葉、キャベツの芯、キャベツの外葉、人参の皮、人参のヘタ、大根の皮、大根のヘタ、ブロッコリーの茎;
(2)果実の屑、例えばリンゴや梨の皮、スイカの皮、メロンの皮、ミカンなど柑橘類の薄皮や果実皮、バナナの皮、いちごのヘタ、マンゴーの皮;
(3)傷んだ野菜や果実;を挙げることができる。
【0013】
固形食品有機廃棄物の処理は前処理と後処理とに区分することができる。前処理は、ブロッコリーの茎などを裁断して3〜5mmの大きさの細かな廃棄物片にする裁断工程S11と、裁断工程S11から出た細かな廃棄物片を150μmになるまで磨り潰してペースト状にする摩砕工程S12と、摩砕工程S12から出た廃棄物ペーストが高温(例えば100℃)になるまで加熱殺菌する加熱工程S13とを含む。
【0014】
次の後処理は、オゾンによって酸化分解するオゾン処理工程S21と、酸化分解した汚水を微生物分解する活性汚泥処理工程S22と、活性汚泥処理工程S22から出た汚泥を脱水して汚泥ケーキにする脱水工程S23とを含む。
【0015】
野菜屑及び果実の屑で試験的に実施した結果、汚水に野菜や果実の残滓を混入した「残滓有り」のときと、汚水に野菜や果実の残滓を混入しない「残滓無し」のときとで脱水工程S23後の汚泥ケーキの発生量に変化は無く、したがって野菜や果実の残滓の処理に関しては実質的に100%の減容化に成功したと言える。
【0016】
前述した後処理工程は食用油を含む油脂含有排水の処理にも利用できる。換言すると、食用油を含む汚水処理のために設置したオゾン処理工程S21、活性汚泥処理工程S22、脱水工程S23の一連の工程の前に、上記の前処理工程を加えることで、油脂含有排水の処理施設を流用しつつ廃棄物処理を行うことができ、そして、固形食品有機廃棄物の大幅な減容化を実現することができる。
【0017】
図2は、固形食品有機廃棄物の処理における前処理工程を構成する施設の概要を示す。野菜や果実の残滓などを含む固形有機廃棄物は裁断機10によって裁断工程S11が実施される。裁断機10は回転する切断刃を備え、コンベアによって運ばれて来る固形有機廃棄物を受け入れて、これを切断刃によって3〜5mmの細かな片になるまで裁断する。裁断機10を出た細かな廃棄物片は、次の摩砕機12に投入され、後の加熱工程において固形有機廃棄物に含まれる成分を溶出し易くし、さらに、後の微生物分解を促進するために廃棄物の細胞壁に損傷を加える摩砕機12で廃棄物片が例えば150μm以下になるまで磨り潰されてペースト状となる。摩砕機12の処理において水分が不足する場合には摩砕機12に若干の水を供給しながら磨り潰すのがよい。
【0018】
摩砕機12から排出された廃棄物ペーストは、モノポンプ(図示せず)及び搬送用配管14によって蒸気式連続加熱装置16に圧送される。蒸気式連続加熱装置16は、外筒16aの内部に複数の伝熱配管16bを有し、そして外筒16aには蒸気が連続的に供給される。搬送用配管14から圧力下で供給される廃棄物ペーストは伝熱配管16bを通過する過程で例えば100℃まで加熱される。100℃の加熱により、廃棄物ペーストは、固形有機物廃棄物に含まれる成分、例えばペクチンが溶出して固液が分離し難いゾル状態の廃棄物成分含有液になると共に、後の微生物分解を阻害する雑菌を排除しつつ有機食品廃棄物の繊維組織を軟化させることができ、この加熱処理によって後の各処理槽での廃棄物成分の沈澱、腐敗を防ぐことができ、そして、酸化分解及び微生物分解を促進することができる。
【0019】
加熱装置16による廃棄物ペーストの加熱は、廃棄物ペーストから成分が溶出して廃棄物成分含有液がゾル状態になる温度以上であればよく、食品工場から一般的に出る固形廃棄物であれば85℃以上、好ましくは90℃以上、最も好ましくは98℃以上であれば固液が分離し難いゾル状態にすることができる。廃棄物ペーストの温度の上限値としては、使用する蒸気によって高圧蒸気であれば局部的に150℃程度まで熱することも可能であるが、バックプレッシャーが必要となったり設備費も高価になってしまうため、廃棄物ペーストの沸点まで加熱するのがよく、概略的には約100℃である。
【0020】
蒸気式連続加熱装置16を通過して約100℃で加熱殺菌された後のゾル状態の廃棄物成分含有液はオゾン処理槽20に供給される。オゾン処理槽20は後処理工程の一部を構成するものであり、後処理工程は、他に、汚水処理槽22、調整槽24、曝気槽26、沈殿槽28、脱水機30で概略構成されている。
【0021】
オゾン処理槽20は、廃棄物成分含有液以外に食品加工工場内の排水を受け入れる。ここに、排水には、廃棄対象となったトマトピューレ、ラズベリーピューレ、栗のペーストなどのペースト状、ピューレ状の廃棄物を含めてもよい。なお、この廃棄対象となったペースト状、ピューレ状の廃棄物は、前述した摩砕機12に投入するようにしてもよいし、加熱装置16に投入するようにしてもよい。
【0022】
オゾン処理槽20では、オゾン生成機で生成されたオゾンを含む圧縮エアが散気される。オゾン処理槽20内の上記廃棄物成分含有液を含む汚水をオゾンで曝気することで汚水は酸化分解され、そして、ポンプで汲み上げられ第1配管32を通じてスクリーン34に供給され、このスクリーン34を介して汚水処理槽22に送り込まれる。
【0023】
汚水処理槽22には、また、油脂を含む汚水が供給される。汚水処理槽22では、オゾン生成機で生成されたオゾンを含む圧縮エアが散気される。汚水処理槽22でオゾンによる曝気を行うことで、汚水に混じった油脂成分の酸化分解及び廃棄物成分含有液の第二回目の酸化分解が行われる。油脂を含む汚水処理に限定したときに汚水処理槽22は油脂分解槽と呼ぶことができる。汚水処理槽22内の汚水はオゾン曝気によって油のネバネバした状態から流動性に富んだ状態に変化し且つ臭気も大幅に減少した状態となる。
【0024】
汚水処理槽22内の汚水は第2配管36を通じて調整槽24に送り込まれる。調整槽24では、好ましくは、オゾンを含む圧縮エアが散気されて、この調整槽24においてもオゾンによる第三回目の酸化分解が行われる。
【0025】
調整槽24内の汚水は、ポンプで汲み上げられて第3配管38を通じて曝気槽26に送り込まれる。曝気槽26では圧縮エアによる曝気が行われ、この曝気槽26で好気性微生物により汚水中の有機物が分解されて炭酸ガスと水になる。曝気槽26内の汚水は第4配管40を通じて沈殿槽28に送り込まれ、この沈殿槽28で分離された汚泥は第5配管42を通じて脱水機30に送り込まれる。他方、沈殿槽28の上澄み液は、沈殿槽28から取り出した後に塩素消毒などの殺菌消毒を行った後に下水に排出される。
【0026】
ここでは、脱水機30として多重円盤型脱水機が採用されている。この多重円盤型脱水機は、隣接する円盤の間のピッチが汚泥の移動方向に狭めてあるため、脱水機30を通過する過程で汚泥が圧縮されながら脱水が行われて脱水機30から汚泥ケーキが排出される。そして、この汚泥ケーキは堆肥として利用することができる。なお、多重円盤型脱水機は、処理対象となる汚泥の物性によって脱水効率が変化した場合に、微調整によって比較的容易に対応することができるという特性を有し、粘り気がある汚泥の脱水の場合に、ベルトプレスやスクリュープレス方式の脱水機に比べて脱水効率が低下しない。野菜、果実の残滓で試験的に実施した時に、その汚泥の物性が多重円盤型脱水機の特性にマッチし、良好な脱水効率を実現できることが確認できた。
【0027】
上記の実施例によれば、例えばフライヤーから出た食用油脂含有排水を処理するための汚水処理槽22、調整槽24、曝気槽26、沈殿槽28、脱水機30のシステムを流用して食品加工工場で発生する固形有機廃棄物を処理して減容化できるという利点を含む。
【0028】
また、上述したように試験的に実施した野菜や果実の残滓を実質的に100%減容化することができ、また、オゾンによる酸化分解と微生物分解を活用した処理であり、薬剤を使用していないため処理水の水質を悪化させることもない。更に、発生した野菜や果実の残滓を直ちに連続的に処理できるため、工場内に野菜や果実の残滓を貯蔵しておくスペースを必要とせず、省スペースであり且つ衛生的であるという利点がある。
【0029】
また、実施例は、油脂廃棄物、ペースト状やピューレ状の廃棄物を含む食品加工工場で発生する廃棄物を包括的に処理できるという利点を有している。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例の固形食品有機廃棄物処理方法の全体フローを示す図である。
【図2】実施例の固形食品有機廃棄物処理方法に含まれる前処理工程を構成する施設の概要を示す図である。
【図3】実施例の固形食品有機廃棄物処理方法に含まれる後処理工程を構成する施設の概要を示す図である。
【図4】従来例の概要を説明するためのフロー図である。
【符号の説明】
【0031】
S11 裁断工程
S12 摩砕工程
S13 加熱工程
S21 オゾン処理工程
S22 活性汚泥処理工程
S23 脱水工程
10 裁断機
12 摩砕機
16 蒸気式連続加熱装置
20 オゾン処理槽
22 汚水処理槽
24 調整槽
26 曝気槽
28 沈殿槽
30 脱水機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形食品有機廃棄物を裁断する裁断工程と、
該裁断工程により細かくなった廃棄物片を磨り潰して廃棄物ペーストを生成する摩砕工程と、
該摩砕工程により生成された廃棄物ペーストを加熱してゾル状態の廃棄物成分含有液にする加熱工程と、
該ゾル状態の廃棄物成分含有液をオゾンで酸化分解するオゾン処理工程と、
該オゾン処理工程を経た汚水を微生物分解する活性汚泥処理工程と、
該活性汚泥処理工程から出た汚泥を脱水して汚泥ケーキを生成する脱水工程とを有することを特徴とする固形食品有機廃棄物処理方法。
【請求項2】
前記活性汚泥処理工程ではエアによる曝気が行われる、請求項1に記載の固形食品有機廃棄物処理方法。
【請求項3】
前記脱水工程が多重円盤型脱水機で行われる、請求項2に記載の固形食品有機廃棄物処理方法。
【請求項4】
前記オゾン処理工程が多段階で行われる、請求項2又は3に記載の固形食品有機廃棄物処理方法。
【請求項5】
前記オゾン処理工程に油脂含有排水が投入可能であり、該オゾン処理工程で油脂成分の酸化分解が行われる、請求項1に記載の固形食品有機廃棄物処理方法。
【請求項6】
前記オゾン処理工程にペースト状又はピューレ状の食品廃棄物が投入可能である、請求項1に記載の固形食品有機廃棄物処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−285554(P2009−285554A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−139853(P2008−139853)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(501296210)株式会社デリカシェフ (1)
【出願人】(000111487)ハウス食品株式会社 (262)
【Fターム(参考)】