固相のオリゴ糖タグ付け:固定化糖質の操作技術
本発明は、誘導体化により固定化糖質を操作する方法に関する。それによって、誘導体化の性質に応じてその糖質をより容易に検出および/もしくは同定するか、または取扱うことができる。特に、本発明は、i)還元糖を含む試料を用意するステップ、ii)−NH2基を有する捕捉基を有するリンカーに共有結合した固体支持体を用意するステップであって、前記リンカーが場合によりスペーサーを介して前記固体支持体に結合しているステップ、iii)前記還元糖を前記−NH2基と反応させることによって固定化糖を得るステップ、iv)遊離−NH2基をキャップ剤と反応させるステップであって、そのキャップ剤が−NH2基と反応することができる反応基を有するステップ、ならびにv)C=N結合を還元剤で還元することによって、リンカーおよび場合によりスペーサーを介して固体支持体に結合した糖CHn−NH−という構造(nは1または2である)の反応性糖を得るステップを含む、反応性糖を調製する方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において参照された全ての特許文献および非特許文献は、引用により組込まれている。
(発明の分野)
本発明は、糖質操作の分野に関する。特に、本発明は、誘導体化により固定化糖質を操作する方法に関する。この方法により、誘導体化の性質に応じて糖質をさらに容易に検出および/もしくは同定するか、または取扱うことができる。したがって、一態様では、本発明は糖質の検出および同定の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
糖質は自然界において多様な形態で存在する。ヒトを含む動物における例には、溶液中の遊離還元糖(血清中の単糖であるグルコースなど)、溶液中の遊離オリゴ糖(乳中の二糖であるラクトースなど)が挙げられ、それらの糖質は、様々なアミノ酸(アスパラギン、セリン、トレオニン、その他など)との共有結合を介してペプチドまたはタンパク質に結合しているか、(ガングリオシドにおけるように)セラミドなどの脂質に共有結合しているか、またはホスファチジルイノシトールを介して膜アンカーに結合していることがある。糖は、グルクロニダーゼなどの代謝に関与する一部の小分子を含む多数の小分子にも結合していることが見出されている。上記例において、糖鎖の長さは糖残基1個から100個超まで異なりうる。
【0003】
細菌および植物を含む下等生物では、さらに広い構造アレイが存在する。細菌細胞の表面は、数千残基長の糖ポリマーで被覆されていることがあり、その糖ポリマーは細菌の検出における抗原として、およびワクチンとして作用することがある。糖は、細菌細胞壁に内在する部分として存在する。その糖自体は(アミノグリコシド系抗生物質、例えばストレプトマイシンなどの)抗生物質でありうるし、また(エリスロマイシンおよびバンコマイシンなどの)抗生物質に不可欠な構成要素として、(アカルボースにおけるような)酵素阻害剤として、もしくは(例えばカリケアミシンなどの)抗癌剤として見出されることがある。
【0004】
特に対象となる一領域は、糖タンパク質および糖脂質に結合していることが見出された糖鎖(グリカン)の構造である。糖タンパク質のグリコシル化パターンは、そのバイオアベイラビリティ、そのターゲティングを含めた生体機能に重要であることが示され、腫瘍細胞の転移能と直接相関付けられてさえもいる。例えばヒト血清トランスフェリンのグリコシル化パターンは、糖タンパク質糖鎖不全症候群(Carbohydrate−Deficient Glycosylation Syndrome)と名付けられた一連の遺伝性疾患のための診断テストとして使用されている。特異的糖脂質配列は、糖尿病においてニューロン発生および細胞表面シグナル伝達に関与することが示され、テイ−サックス病などのある種の特異的代謝疾患において蓄積し、特異的糖脂質配列がその疾患に関して診断に役立っている。
【0005】
上記のオリゴ糖および多糖における糖残基間の結合は、αまたはβ配置のいずれかを有することがあり、グリカンは多分岐することがある。したがって、グリカン鎖に可能な構造の多様性は莫大であり、したがって、その構造の特徴付けは本質的に複雑である。したがって、研究、診断、組換え糖タンパク質のグリコシル化のモニタリング、ならびに新しい医薬品の開発における糖質およびグリカンの構造の検出、構造の特徴付け、同定、定量、および化学/酵素的操作のための方法には強い関心が存在する。
【0006】
糖質の構造分析のためにいくつかの方法が現在使われており、これらについては最近総説された。非誘導体化オリゴ糖および糖脂質は、NMR分光法、質量分析、およびクロマトグラフィーにより分析することができる。はるかに大きな糖タンパク質については、質量分析はいっそう限られた情報しかもたらさないが、その糖タンパク質のタンパク質分解消化産物、すなわち糖ペプチドの分析が大規模に使用されてきた。非誘導体化オリゴ糖に関する間接的な構造情報は、そのオリゴ糖がレクチン、抗体、または酵素などの糖質結合タンパク質と相互作用する能力からも推定することができる。
【0007】
糖質自体はN−アセチル基を除いて特徴的な発色団を有さないため、光学的または分光学的検出による糖質の分離のモニタリングは一般に使用されない。しかし、ポリオールのパルスアンペロメトリック検出はクロマトグラフィーでの検出に重要な技術である。
【0008】
糖質の高感度検出に最も広く使用されている方法は、放射性または蛍光タグのいずれかを用いた還元末端(ラクトール、すなわちヒドロキシアルデヒドおよびヒドロキシケトンの互変異性体(tautomer))の標識である。糖タンパク質および糖脂質から糖質を切断する化学的方法および酵素法の両方が記載されており、糖タンパク質、糖脂質、および他の複合糖質(glycoconjugate)から必要な還元糖を作製することが可能になっている。通常、そのような還元糖は、還元アミノ化の条件で、すなわち最初に形成したイミン(C=N)がアミン(CH−NH)に還元して安定な結合を生成する条件で、蛍光分子のアミノ含有誘導体と反応する。大部分の場合、標識反応は大過剰の標識剤を使用して溶液中で行われてきた。これは、分析前または分析中にその過剰の標識剤と、その副生成物とを分離することを必要とする。質量分析で役立つ他のタグは、アミノ化または還元アミノ化のいずれかにより同様に付加され、その場合、検出は質量分析計により行われてきた。
【0009】
標識が付加されて、特異的検出が可能になったとき、続いて上記糖質を分離および検出/定量に供することができる。タグ付き糖質をグリコシダーゼなどの酵素に曝露することによって、さらなる構造情報を得ることができる。特異的グリコシダーゼがそのタグ付き糖質に作用する場合、そのグリコシダーゼは1つまたは複数の糖残基を切断する結果として、例えばHPLCおよびCEでの蛍光検出器により、もしくはSDS−PAGEでの糖質の移動度の変化により検出される、クロマトグラフィーもしくは電気泳動での移動度変化、または質量分析計でのm/z値の変化により検出される糖質の質量の変化を生じることができる。より高スループットの分析を提供するために、一連の酵素が使用されてきた。
【0010】
従来技術の概要を以下に簡潔に示す。
【0011】
Gaoら、2003は、溶液中の糖質の誘導体化に好適な技術を総説している。溶液中で糖質を還元アミノ化により誘導体化することができる。一般に、アミンの−NH2基は還元糖のアルデヒド基またはケトン基と反応することにより、−C=N構造の化合物を生成することがある。そのような化合物を例えばNaCNBH3でさらに還元することができる。Gaoら、2003は、固定化糖質の操作については開示していない。
【0012】
US5100778は、オリゴ糖の還元末端残基に同定用標識を配置すること、複数の別々の部分に分割すること、各部分を例えば特異的グリコシダーゼで処理すること、生成物をプールすること、および得られたプールを分析することを含むオリゴ糖配列決定の方法を記載している。この文書は固定化オリゴ糖について記載していない。
【0013】
US4419444は、反応性−NH2基を有する支持体に、糖質残基を有する有機化合物を化学的に結合させる方法を記載している。この方法は、糖質ジオールを過ヨウ素酸酸化してその糖質のC−C結合を切断することにより反応性アルデヒドを生成させること、または−CH2OH基を酵素的に−CHO基に酸化することのいずれかを伴う。どちらの酸化も糖質の構造変化を生じるものである。この反応性アルデヒドを−NH2基との反応により固定化することができる。糖質含有化合物の固定化後に、(例えばNaBH4を使用した)還元ステップを行って、安定性を高めることができる。この文書は、還元糖の還元末端を経由したその還元糖の固定化も、還元されたアミン結合を介した固定化改変糖質含有化合物の操作も記載していない。さらに、その糖質の化学的性質は改変されており、この改変は、グリコシダーゼによる特異的酵素切断などのさらなる調節を損なうおそれがある。この文書は、固定化オリゴ糖に分子構造の付加が生じる、そのオリゴ糖へのいずれかの化学試薬の付加についてもまた記載していない。
【0014】
WO92/719974はオリゴ糖を配列決定する方法を記載している。この方法は、固体支持体上にオリゴ糖を固定化し、続いて多様なグリコシダーゼで処理することを伴う。固定化前にそのオリゴ糖をコンジュゲートに結合させることができる。この文書は、グリコシダーゼ処理以外の固定化オリゴ糖の調節については記載していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記は、グリカンの生物学的重要性および複雑性を説明し、単糖などの還元糖およびオリゴ糖の還元糖末端にタグを結合させるいくつかの有益性をまとめたものである。今日まで、そのような結合は、大過剰のタグ剤(および多くの場合還元剤などのさらなる化学薬剤)を使用して溶液中で行われている。したがって、検出またはさらなる操作のいずれかを行う前に、時間がかかり、困難であることが多い分離技術をその結合に適用することが必要となる。そのような分離技術は、常に物質の損失および希釈を招き、よって分析をかなり複雑化して偏らせる。したがって、簡便な方法が大いに必要とされている。その簡便な方法は、糖質構造にタグを取付け、さらにその構造を操作することができ、反応出発物質、試薬、副生成物、および求められている生成物を分離するための複雑で偏った方法を必要としない。本明細書においてそのような簡便な方法を記載する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(発明の概要)
本発明は、いずれかのスペーサー(すなわちスペーサーの存在下または不在下)および−NH2官能基(functionality)を含有する捕捉基を含む(切断可能でありうる)リンカーからなる固定化された分子との反応により、(本明細書下記の「固体支持体」の項に記載したいずれかの固体支持体でありうる)固体支持体に(本明細書下記の「還元糖」の項に言及したいずれかの還元糖でありうる)還元糖を共有結合させる方法に関する。結果として生じた固定化糖は、C=N結合を有する非環式形態を有し、その非環式形態は、その環式グリコシルアミン互変異性体と平衡でありうる。
【0017】
固定化後に固体支持体上の遊離−NH2基をキャップしてもよく、C=N結合を還元することもできる。この方法は、図1のA+B→Eに要約されている。この図は、非誘導体化ピラノースを示しているが、いずれかの還元糖を表すことが意図される。
【0018】
変形形態では、本発明の方法は、遊離−NH2基をキャップする前にC=N結合を有する(図1の構造Cに例示される)固定化糖をCH−NHに還元し、構造Credの化合物(図1)を生成させることを含みうる。次に、この段階でCredの−NH2基をキャップし、上記および図1に示したC→D→Eという順序により生成した構造と同じ構造Eの化合物を生成させてもよい。
【0019】
したがって、構造Eの化合物を、A+B→C→D→E、またはA+B→C→Cred→Eという順序のいずれかにより生成させることができる。
【0020】
したがって、反応性糖を調製する方法を提供することが本発明の目的であり、前記方法は、
i.(図1のAのような)還元糖を含む試料を用意するステップと、
ii.−NH2基を有する捕捉基を有するリンカーに共有結合した固体支持体(例えば図1の固体)を用意するステップ(ここで、前記リンカーは場合により(図1のBのような)スペーサーを介して前記固体支持体に結合している)と、
iii.前記還元糖を前記−NH2基と反応させることによって、(図1のCのような)固定化糖を得るステップと、
iv.遊離−NH2基をキャップ剤と反応させるステップ(ここで、そのキャップ剤は、−NH2基と反応することができる反応基を有する)と、
v.還元剤でC=N結合を還元するステップと、
vi.それによってリンカーと、場合によりスペーサーとを介して固体支持体に結合した糖CHn−NH−という構造(nは1または2である)を含む(図1の化合物Eのような)反応性糖を得るステップと
を含み、ここで、ステップivおよびvはいずれかの順序で行うことができる。
【0021】
ステップivがステップvの前に行われる本発明の実施形態では、ステップivでの−NH2基のキャッピングは例えば図1の化合物Dを生じるであろうが、一方、ステップvで行われる還元は例えば図1の化合物Eを生じるであろう。
【0022】
次に、ステップvがステップivの前に行われる本発明の実施形態では、(例えば図1の化合物Cの)C=N結合の還元は例えば図1の化合物Credを生じるであろう。ステップivの−NH2基のキャッピングは例えば図1の構造Eの化合物を生成するであろう。還元糖を含む試料を固体支持体および還元剤と同時にインキュベートできることは本発明に包含される。したがって、C=N結合の還元(ステップv)は、還元糖と固体支持体の−NH2基との反応(ステップiii)の直後に行われるであろう。
【0023】
ステップiiiでは、好ましくは前記還元糖の還元末端を前記−NH2基と反応させる。したがって、好ましくは還元糖のヘミアセタールまたはアルデヒド基を−NH2基と反応させる。
【0024】
この方法は、
vii.反応性糖(例えば図1の化合物E)の−NH−基を、窒素反応性官能基(X)を有する誘導体化剤と反応させることにより、この作用剤に共有結合した糖を得るステップ
をさらに含むことが好ましい。前記作用剤に共有結合した前記糖は、例えば図1の化合物F(その誘導体化剤がタグである場合)または図1の化合物Hでありうる。化合物Hは、その誘導体化剤が官能基に結合したテザー(tether)である場合である。
【0025】
この状況および図1(下記参照)における用語「タグ」は、別の分子に共有結合することができ、それにより、共有結合を受けた前記別の分子を標識することができるいずれかの原子、分子、または物質(entity)を示すことが意図される。
【0026】
(図の説明)
図1は、本発明による方法の一例を示す。図1:A〜Eは、反応性糖Eを得るために固体支持体上に還元糖を捕捉および操作することを示す。図1:E〜GおよびJは、固体支持体上での反応性糖Eの操作およびタグ付き糖の切断を示す。本発明の方法は、図1に示された1つまたは複数のステップを含むことがある。図1では、還元糖はピラノースで例示されるが、この方法にいずれかの還元糖を使用することができる。この図は、リンカーがスペーサーを介して固体支持体に結合している例を示すが、そのリンカーは固体支持体に直接結合していてもよい。その固体支持体は、この図で「固体」と称されるが、本明細書下記に言及したいずれかの固体支持体でありうる。
【0027】
図2は、本発明の実施例で使用された還元糖およびその混合物の構造1〜10を示す。
【0028】
図3は、リンカー(14)の合成およびスペーサー(15)の構造を示す。
【0029】
図4は、単糖標準として使用されたTMRタグ付きD−ガラクトース誘導体であるGalCH2−N(R)−TMR(21)の溶液相合成および命名の説明を示す。
【0030】
図5は、糖CH2−N(R)−TMRという一般式である8つの通常の哺乳動物単糖の合成タグ付き誘導体の構造21〜28を示す。
【0031】
図6は、4つの固体支持体BP、B0、B1、およびB2の構造を示す。
【0032】
図7は、一部のキャップ剤の構造を示す。
【0033】
図8は、タグ−Xという一般構造である、使用したいくつかの窒素反応性タグ剤の構造を示す。
【0034】
図9は、X−テザー−YPという一般構造である保護された窒素反応剤29を用いたE→J(30)の例を示す。
【0035】
図10は、図5に示された8つのTMR標識単糖標準のCEによる経時的(時間の単位はmin(分)である)な分離を示す。溶出順序はGalNAc(27)、Xyl(24)、Man(23)、Glc(22)、GlcNAc(26)、Fuc(25)、Gal(21)、およびGlcA(28)である。上図は拡大図である。
【0036】
図11は、(4.2.1項のTRITCを使用してタグ付けした還元糖としてLacNAcを有する)GP3のCEを示す。
【0037】
図12は、ネガティブイオンモードでの(4.2.2節の4−ブロモフェニルイソチオシアネートを用いてタグ付けされた還元糖としてラクト−N−テトラオースを有する)GP5のエレクトロスプレー質量スペクトルを示す。挿入図はBrの主同位体に対応する2つのピークを示す拡大図である。
【0038】
図13は、(4.2.3項のTRITCを使用してタグ付けした単糖混合物6を有する)GP6aのCEを示す。Xは未同定のピークを表す。溶出順序は、GalNAc(27)、Man(23)、およびFuc(25)である。下図は拡大図である。
【0039】
図14は、(4.2.4項のTRITCを使用してタグ付けした単糖混合物7を有する)GP7aのCEを示す。Xは未同定のピークを表す。溶出順序は、GalNAc(27)、Man(23)、およびFuc(25)である。下図は拡大図である。
【0040】
図15は、(4.2.5項のFITCを使用してタグ付けしたオリゴ糖混合物9を有する)GP9のCEを示す。溶出順序はG7からG2である(図2)。
【0041】
図16は、GP10(4.2.6項でFITCを使用してタグ付けしたリボヌクレアーゼBオリゴ糖10)のCEを示す。
【0042】
図17は、(4.3.1項でTRITCを使用してタグ付けした還元糖としてGal2を有する)G12のCEを示す。
【0043】
図18は、(4.3.2項でTRITCを使用してタグ付けした還元糖としてLNT5を有する)G15のCEを示す。
【0044】
図19は、(4.3.3項でTRITCを使用してタグ付けした還元糖混合物として8を有する)G18のCEを示す。溶出順序はLNTに続いてGalである。
【0045】
図20は、5.1.1項の固定化LNT(5)のβ−ガラクトシダーゼ消化後の切断生成物G05(A)、G15(B)、およびG25(C)のCEを示す。TRITC標識LNT四糖は最初36分付近で溶出する。ガラクトースの消失により38分後に溶出する三糖生成物が得られる。
【0046】
図21は、F24(TRITCを使用してタグ付けした還元糖としてのマルトトリオース(G3))と5.1.2項のグルコアミラーゼとのインキュベーション前(図A)およびインキュベーション後(図B)の切断生成物のCEを示す。図Aを記録する前にタグ付きGlc(22、図5)の参照試料を試料に添加した。
【0047】
図22は、(LNT基および遊離NH2基を有する)C25のβ−ガラクトシダーゼ処理に続いて放出されたガラクトースの捕捉、還元、および5.2項のTRITCを用いたタグ付け後に得られた切断生成物のCEを示す。溶出順序はLNT、ガラクトースの消失に起因する三糖、およびガラクトースである(21)。
【0048】
図23は、多様な作用剤を用いたキャッピング、還元、および6.1項のTRITCを用いた標識後のC22(固定化ガラクトース)由来切断生成物のCE分析を示す。キャップ剤は、A(無水酢酸:酢酸無水物)、B(安息香酸無水物)、C(トリクロロ酢酸無水物)、およびD(ジブロモキシレン)であった。タグ付きガラクトース(21)は全ての図において17分付近に溶出している。
【0049】
図24は、6.2項でC→Cred→→Gという順序を経由してガラクトースを加工することから得られた切断生成物のCEを示す。ガラクトース21は17分に溶出している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
(発明の詳細な説明)
(還元糖の操作方法)
本発明は還元糖を操作する方法に関する。本発明の方法の例を図1に要約する。本発明の方法は、図1に示されたステップの全てを必ずしも伴わないことに留意すべきである。したがって、この方法は、図1に要約されたステップの一部しか含まないことがある。好ましくは、この方法は、少なくともA+B→C、C→D、およびD→Eのステップ、またはA+B→C、C→Cred、およびCred→Eのステップを含むであろう。図1において、還元糖はピラノースによって例示されているが、本発明にいずれかの還元糖、特に本明細書下記の「還元糖」の項に記載したいずれかの還元糖を使用することができる。図1のピラノース環を横切る−OH基は、その還元糖がピラノース環に結合した1つまたは複数のヒドロキシル基を有しうることを示すことが意図される。
【0051】
本発明の方法の各ステップを本明細書下記にさらに詳細に説明する。下記において大文字A〜JおよびCredは図1を参照している。
【0052】
本発明の各化合物または中間体の同一性、例えば化合物A、B、C、Cred、D、E、F、G、H、I、またはJの同一性は、NMRなどの当業者に公知の標準的な技術により評価することができる。
【0053】
A.還元糖
本明細書に使用される用語「還元糖」は、Cu2+をCu+に還元することができるという糖の古典的定義を包含している。糖が還元性であるかどうかは、例えばフェーリング試薬を使用して検査することができる。さらに現代の用語では、還元糖はアルデヒド基またはR2C(OH)OR’(式中R’はHではない)という式のヘミアセタールを有する糖である。好ましくは、還元糖は、ヘミアセタールと呼ばれる環化形態と平衡にあるアルデヒドを有する糖質構造である。D−グルコースはそのような還元糖の非限定的な例である。最も多い環形態は、フラノースと呼ばれる5員環およびピラノースと呼ばれる6員環を含む。(命名規則参照)。
【0054】
本明細書に使用される用語「糖」は、単糖、オリゴ糖、多糖、および単糖、オリゴ糖、または多糖を有する化合物を包含する。用語「糖質(炭水化物)」および「糖」は、本明細書において相互交換可能に使用される。
【0055】
オリゴ糖および多糖は、グリコシド結合した単糖からなる化合物である。一般に多糖は、少なくとも10個の単糖残基を有し、オリゴ糖は一般に2から10個の範囲の単糖を含む。オリゴ糖および多糖は直鎖または分岐でありうる。単糖はポリヒドロキシアルデヒドH−(CHOH)n−CHOまたはポリヒドロキシケトンH−(CHOH)n−CO−(CHOH)m−H(式中mおよびnは整数である)として定義される。好ましい単糖は4から9個の範囲の炭素を有する。したがって、好ましくは、ポリヒドロキシアルデヒドについては、nは3から8の範囲の整数であり、ポリヒドロキシケトンについては、n+mは3から8の範囲の整数である。単糖はアルドースおよびケトースなどの化合物、ならびに広範囲のその誘導体である。誘導には、酸化、脱酸素化、1つまたは複数のヒドロキシル基の好ましくは水素原子、アミノ基、またはチオール基による置換、およびヒドロキシ基またはアミノ基のアルキル化、アシル化、硫酸化、またはリン酸化により得られるものが挙げられる。IUPACの命名によると、糖質は、アルドースおよびケトースなどの化学量論式Cn(H2O)nの化合物、ならびにカルボニル基(アルジトール)の還元により、1つまたは複数の末端基からカルボン酸への酸化により、あるいは、1つまたは複数のヒドロキシル基から水素原子、アミノ基、チオール基、もしくは類似の基への置換により、単糖から得られる物質、あるいはこれらの化合物の誘導体である。
【0056】
好ましい実施形態では、還元糖は天然還元糖であるか、または糖質を有する天然もしくは組換え生成した化合物から遊離して、好ましくは遊離後にさらなる修飾に供されなかった還元糖である。特に、その還元糖が天然還元糖であるか、または天然もしくは組換え生成した化合物から遊離した還元糖であって、前記天然糖または前記遊離した糖のアルコール基のいずれもオリゴ糖レベルで酸化によりアルデヒドまたはケトンに酵素的に変換されていないことが好ましい。その還元糖は、天然還元糖または天然もしくは組換え生成した化合物から遊離した還元糖であって、前記天然糖または前記遊離した糖は過ヨウ素酸処理(periodate treatment)に供されていないことも好ましい。したがって、前記天然糖または前記遊離した糖のアルコール基はいずれもアルデヒドまたはケトンに変換されていないことが一般に好ましい。これに関連して、組換え生成した化合物は、組換え技術の助けを借りて生きた生物により生成される化合物、例えば異種(heterologous)糖タンパク質である。
【0057】
還元糖は、多様な起源から得ることができる。例えば還元糖は、生物または生物の一部から、例えば動物もしくは植物から、または1つもしくは複数の特異的動物もしくは植物組織から、原核細胞もしくは真核細胞などの生物から、ウイルスから、in vitro培養した哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、真菌、細菌細胞、酵母、もしくはファージから得ることができる。例えば還元糖は、いずれかの前記細胞、微生物、もしくは生物の抽出物から単離することができる。そのような抽出物は遊離糖質などの還元糖を含むことがある。抽出物は、単糖、オリゴ糖、多糖、または糖質部分、特に糖質が結合した糖タンパク質または糖脂質または有機小分子を含む一般にグリコシドと呼ばれる化合物を含むこともある。糖タンパク質は、糖質構成要素がペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質構成要素に結合している化合物である。したがって、本明細書に使用される用語である糖タンパク質は、プロテオグリカンおよびグリコサミノグリカンも包含する。糖脂質は、グリコシド結合によりアシルグリセロール、スフィンゴイド、セラミド(N−アシルスフィンゴイド)、またはプレニルホスフェートなどの疎水性部分に結合した1つまたは複数の単糖、オリゴ糖、多糖、または糖質部分を有する化合物である。グリコシドは、O、N、またはSのいずれかを介して1つまたは複数の糖にグリコシド結合した有機小分子(MWt100〜5000)を示すことが意図される。
【0058】
還元糖は、溶液中または固相上での化学合成によりin vitroで調製されたオリゴ糖などの化学合成または化学/酵素合成の生成物でもある。例えば硫酸化、リン酸化、またはグリコシル化などの酵素反応により、まさにこれらの合成オリゴ糖をさらに修飾することができる。したがって、合成もしくは半合成オリゴ糖またはオリゴ糖ライブラリーの操作のためにもまた、本明細書に記載した方法を使用することができる。
【0059】
好ましくは単糖、オリゴ糖、多糖、または糖質部分は、本発明の方法を行う前に糖タンパク質から遊離させる。当業者に公知の標準法によりこれを行うことができる。化学的方法または酵素法により、N−結合した単糖、オリゴ糖、多糖、または糖質を糖タンパク質から切断することができる。酵素法は、例えばエンドグリコシダーゼHおよびFなどのグリコシダーゼ、またはPNGアーゼ−FなどのN−グリカナーゼの使用を伴うことがある。ヒドラジノリシスもしくはアルカリβ−脱離を含めた化学的方法により、またはO−グリコシダーゼなどの酵素を使用して酵素的に、O−結合した単糖、オリゴ糖、多糖、または糖質を糖タンパク質から切断することができる。N−結合およびO−結合の両方の放出に有用な化学的方法には、ヒドラジンなどの強い求核体および/または強塩基との反応が挙げられる。酸性反応もしくは塩基性反応のいずれかを使用して、またはグリコシダーゼの作用により有機小分子から糖質を切断することができる。
【0060】
本発明の一実施形態では、所定量の参照標準を、還元糖を含む試料に添加する。これによって、リンカーが切断可能である本発明の実施形態において、固定化後の、または固定化および放出後の前記還元糖の定量が容易になりうる。
【0061】
参照標準は、−NH2と反応することができるいずれかの化合物、例えば本明細書下記「E→F.タグの付加」の項に記載した窒素反応性官能基の1つを有するいずれかの化合物でありうる。好ましくは、参照標準はアルデヒドまたはケトンであり、さらに好ましくは糖である。本発明の別の実施形態では、同一または異なる参照標準を固体支持体に添加してから、還元糖を含有する溶液に添加した参照標準を含む条件または含まない条件で、その還元糖を含有する溶液と接触させる。(本明細書下記の「B.固体支持体」の項参照)。したがって、2つ以上の参照標準を使用することができ、1つ(または複数)の参照標準を固体支持体に添加してから、その固体支持体と還元糖を含む溶液とを接触させ、1つまたは複数の参照標準を、その還元糖を含有する溶液に添加する。
【0062】
固体支持体が還元糖と接触した後に、1つまたは複数の参照標準をその固体支持体に添加することもできるが、好ましくはキャッピング前に添加する。したがって、好ましくは洗浄ステップ後に図1の化合物CまたはCredに参照標準を添加することができる。
【0063】
固体支持体を参照標準に結合させる本発明の実施形態では(本明細書下記「B.固体支持体」の項参照)、異なる参照標準を使用することが好ましい。
【0064】
本発明の一実施形態では、この方法は、この方法に使用する試料を前処理するステップを含む。特に、糖タンパク質、糖脂質、またはグリコシドなどのグリコシド結合した糖を含む試料を、固体支持体と反応させる前にスカベンジャー樹脂で前処理することができる。このスカベンジャー樹脂は、好ましくは還元糖を含めたアルデヒドおよびケトンと反応することができる求核基を有する樹脂であり、好ましくはこのスカベンジャー樹脂はアミノ基またはヒドラジンを有する。したがって、試料をこのスカベンジャー樹脂と共にインキュベーションすると、さらなるアルデヒド、ケトン、および還元糖が除去されるであろう。前処理後に、そのような方法は一般に前記グリコシド結合した糖から還元糖を遊離させることにより、還元糖を含む試料を得るステップをさらに含むであろう。したがって、前記試料内の大量のアルデヒドおよびケトンはグリコシド結合した糖から放出された還元糖であろう。本明細書上記のこの項に記載したいずれかの方法などの化学的方法または酵素法を含めた多数の方法により、前記還元糖を遊離させることができる。例えばPNGアーゼ−Fで前処理された試料の処理は、本発明の方法による捕捉および操作のための、溶液中への還元オリゴ糖の放出を引き起こすことができる。このように放出されたオリゴ糖は、混入カルボニル化合物を本質的に有さないであろう。還元糖質の放出は、上記のように混入カルボニル化合物を除去した後で、グリコシダーゼなどの他の酵素により、または化学反応を使用して実施することもできる。
【0065】
B.固体支持体
本発明による方法は、固体支持体への還元糖の固定化を伴う。固相化学的方法は、固定化化合物の取扱い、精製、濃縮が容易なことなどの数多くの利点をもたらす。しかし、溶液中で行うことのできる全ての反応を固相上で行うことができるわけではない。固体支持体への結合は、各分子実体(molecular entity)に実際的に無限のサイズを付与する。これは、その分子が2分子反応において、その分子が溶液中で反応するであろうよりもずっとゆっくりと反応する効果を有する。溶液中で許容できる収率で実施することができる一部の反応は、固体支持体上では全く作動しないであろう。
【0066】
本明細書に使用される用語「固体支持体」は物理的固体、不溶性ポリマー、不溶性粒子、表面、膜、および樹脂を包含し、好ましくは、固体支持体は不溶性ポリマー、不溶性粒子、表面、または樹脂である。
【0067】
したがって、「固体支持体」は、不溶性無機マトリックス(ガラスなど)、不溶性ポリマー(プラスチック、例えばポリスチレンなど)、有機構成要素の部分および無機構成要素の部分の両方からなる不溶性マトリックス(例えば、R−Si−O−という構造の化合物などの一部のハイブリッドケイ酸塩)、固相合成に一般に使用される有機ポリマー(ポリスチレン、PEGA樹脂、PEG樹脂、SPOCC樹脂、およびそのハイブリッド)、(ある種の有機溶媒に可溶性で、他の溶媒の添加により不溶性にすることができる)ポリエチレングリコール鎖のことがある。この固体は、(金などの)金属、合金、または例えばインジウム−スズ酸化物もしくは雲母などの複合体のこともある。
【0068】
上に挙げた固体支持体のうちいずれかのものを、そのうえ糖質に対して親和性を有する、非限定的にアリールボロン酸またはそのポリマーなどの作用剤で被覆することができる。そのような被覆は、その固体支持体表面での糖質濃度を増加させ、捕捉の速度および収率を高めることができる。
【0069】
固相合成に使用される有機ポリマーには、例えばTentaGel(Rapp polymere、チュービンゲン、ドイツから市販されている)、ArgoGel(Argonaut Technologies Inc.、サンカルロス、カリフォルニア州から市販されている)、PEGA(Polymer Laboratories、アマースト、マサチューセッツ州から市販されている)、POEPOP(Renilら、1996、Tetrahedron Lett.、37:6185−88;Versamatrix、コペンハーゲン、デンマークから市販されている)、およびSPOCC(Rademannら1999、J.Am.Chem.Soc、121:5459〜66;Versamatrix、コペンハーゲン、デンマークから市販されている)が挙げられる。
【0070】
本発明の一実施形態では、その固体支持体は、(Samoyolovら、2002、J.Molec.Recognit.15:197〜203に記載されたいずれかのセンサーなどの)弾性表面波センサー(surface acoustic wave senser)または(Homolaら、1999、Sensors and Actuators B、54:3〜15に総説されたいずれかのセンサーなどの)表面プラズモン共鳴センサーなどのセンサーである。そのような固体支持体は、ガラスなどの無機物質、金などの金属、有機ポリマー物質、またはそのハイブリッドのことがあり、タンパク質もしくは多糖、デンドリマーなどのオリゴマー、またはポリアクリルアミドもしくはポリエチレングリコールなどのポリマーなどの多様な被覆で被覆されていてもよい。好ましい実施形態では、その固体支持体はガラスまたはPEGA樹脂である。
【0071】
本発明の一実施形態では、その固体支持体は固定化還元糖の定量を容易にすることができる参照標準と結合している。特に、前記参照標準が切断可能なリンカーによって固体支持体に(直接または間接的のいずれかで)結合していることが望ましい。そのリンカーは固定化されて放出された還元糖の定量を容易にすることができるであろう。切断可能なリンカーを介してその還元糖が固体支持体に固定化される本発明の実施形態では、参照標準が同一または類似の切断可能なリンカーを介して固体支持体に固定化されることが好ましい。
【0072】
参照標準はいずれかの検出可能な化合物でよく、例えば参照標準は糖であることも、糖ではないこともあるが、好ましくは参照標準は糖質である。
【0073】
参照標準は種々の量で用いられ、一般にその固体支持体は1つの参照標準あたり20から500個の範囲、好ましくは50から200個の範囲、例えば90から110個の範囲の−NH2基を含んでもよい。
【0074】
B.スペーサー
本発明によると、その固体支持体は場合によりスペーサーを介してリンカーに結合している。しかし、その固体支持体がそのリンカーに直接結合していることも本発明に含まれる。
【0075】
スペーサーは、1から1000原子長の範囲の化学実体である。好ましくは、前記スペーサーは直鎖もしくは分岐鎖および/または環構造である。スペーサーの性質は疎水性もしくは親水性であるか、またはこれら2つの特性が混じり合ったものを有することがある。スペーサーの群は、固相合成、およびスペーサーを介して固体支持体に結合した分子の検出を伴うビーズ上、ウェル中、またはスライド上のアッセイに一般に使用される分子を含む。当業者は、与えられた固体支持体に有用なスペーサーを容易に同定することができるであろう。
【0076】
スペーサーは、好ましくは場合により分岐していることがあるアルキル鎖(より好ましくはC1からC1000アルキル鎖)であり、ここで、前記アルキル鎖は、場合により1つまたは複数の位置で、1つまたは複数のB、O、N、S、P、Si、F、Cl、Br、またはIを含む基に置換されている。スペーサーは、場合により同様に分岐、または置換されていてもよい1つまたは複数のアリール残基も含むことがある。好ましい一実施形態では、そのスペーサーはアミドおよびエーテルからなる群から選択される。したがって、そのスペーサーは1つまたは複数のアミド結合(−CONH−)、もう1つのまたは複数のエチレングリコールユニット(−CH2−CH2−O−)、またはこれらのユニットとアルキルもしくはアリール鎖との組合せを含む鎖から本質的になることがある。
【0077】
本発明の一実施形態において、スペーサーは、好ましくは第1アミンおよび第2アミンのどちらも含まない。本発明の別の実施形態では、スペーサー内に含まれる全てのアミンはキャップされている。
【0078】
B.リンカー
本発明は、捕捉基を有するリンカーと共有結合している固体支持体上に、還元糖を捕捉することに関する。リンカーは、末端が−NH2の捕捉基を、場合によりスペーサーを経由してその固体支持体に結合させることに役立つ。リンカーは、固相有機合成に一般に使用されるリンカーなどの、多種多様のリンカーのうちいずれかのものでありうる。
【0079】
そのリンカーは、切断可能ではないリンカーまたは切断可能なリンカーのいずれかでありうる。
【0080】
切断可能ではないリンカーは、例えばアルキル、アリール、エーテル、またはアミドのことがあり、ここで、前記リンカーのいずれかのものは場合により置換されていてもよい。例えば、前記リンカーのいずれかのものは複素原子で置換されていてもよく、分岐としてO−アルキル、アルキル、アリール、または複素原子を含むことがある。一例では、そのリンカーはPEGおよび/もしくはポリアミドを含むか、または本質的にそれからなる。
【0081】
そのリンカーは、スペーサーおよび固体支持体由来の(捕捉された分子を含み、場合によりさらに修飾された)捕捉基を含む部分を切断するための反応を生じさせることができる部位を含むことがある。そのようなリンカーは切断可能なリンカーと呼ばれ、固相有機合成に広く利用されている。切断を求電子体、求核体、酸化剤、還元剤、フリーラジカル、酸、塩基、光、熱、または酵素により実施することができる切断可能なリンカーの例が公知である。
【0082】
切断可能なリンカーは、例えば酸に不安定(例えばRink、1987、Tetrahedrom Lett.、28:387に記載されたRinkアミドおよびPlunkettら、1995、J.Org.Chem.、60:6006〜7に記載されたトレースレスシリルリンカー)、塩基に不安定(例えばAthertonら、1981、J.Chem.Soc.Perkin Trans、1:538に記載されたHMBA)、または光に不安定(例えばHomlesら、1995、J.Org.Chem.、60:2318〜2319に記載された2−ニトロベンジル型)でありうる。そのリンカーは、シリルリンカー(例えばBoehmら、1996、J.Org.Chem.、62:6498〜99に記載されたフッ化物で切断されるもの)、アリルリンカー(例えばKunzら、1988、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.、27:711〜713)、およびセーフティキャッチスルホンアミドリンカー(例えば、Kennerら、1971、Chem.Commun.、12:636〜7に記載されたもの)などのように、行われる化学反応の種類にさらに特異的で限定的でありうる。酵素切断可能なリンカーは、例えばReentsら、2002、Drug Discov.Today、7:71〜76に記載された酵素切断可能なリンカーのうちいずれかのもの、またはWaldmannら、2001、Chem.Rev.101:3367〜3396による総説に記載された酵素不安定な保護基のいずれかの官能化誘導体でありうる。熱不安定なリンカーは、例えばMengら、2004、Angew.Chem.Int.Ed.、43:1255〜1260に記載された種類でありうる。
【0083】
B.捕捉基
本発明によると、リンカーは捕捉基を含み、ここで、その捕捉基は少なくとも1つの−NH2基を有する。好都合な形式では、その捕捉基の末端は基であり、その基はいずれかの基Rを経由してリンカーに結合した−NH2基で終結する。したがって、その捕捉基は好ましくは構造R−NH2である。Rは単純アルキル、アリールまたは置換されたアルキルもしくはアリール基でありうる。好ましくは、Rは−NH2基に直接結合した複素原子を有し、リンカー−M−NH2タイプの構造を生成する。ここで、Mは複素原子であり(すなわち炭素ではなく)、好ましくは、MはN、O、およびSからなる群から選択される。特に好ましいのは、Mがリンカー−O−NH2、リンカー−NH−NH2、リンカー−CO−NH−NH2、リンカー−NH−CO−NH−NH2、リンカー−S(O)2NH−NH2、およびリンカー−S−NH2という構造などにおける複素原子である化合物である。
【0084】
A+B→C.捕捉方法
還元糖の捕捉は、捕捉基の−NH2基を、前記還元糖の還元末端と、すなわちアルデヒド基またはヘミアセタール基と反応させることにより行われる。この反応はいずれかのpH値で起こりうるが、pH2〜9の範囲が最も好都合である。この方法は、鎖式アルデヒド形態の還元糖とヘミアセタール形態の還元糖(例えば図1の化合物A)との間の平衡を促進するか、または好都合に改変するかのいずれかを行うことができる添加物などの1つまたは複数の添加物の添加を伴うことがあり、ここで、鎖式(open chain)アルデヒド形態が好ましい。この添加物は、例えば金属イオン、ボロン酸エステル(塩)、またはケイ酸塩でありうる。その捕捉は、(C=Nとして示される)共有二重結合を経由して固体支持体に結合した種を生成し、ここで、Cは糖部分に、Nは捕捉基に由来する。この固定化糖はその環形態と平衡でありうるし、特にその還元糖がピラノースならば、固定化糖はその環状6員環形態と平衡でありうる(例えば図1の化合物CおよびC’参照)が、その糖上の適切なOH基が置換されていないのであれば、その5員環形態も平衡でありうる。
【0085】
捕捉反応はいずれかの有用な溶媒中で行うことができる。当業者は、与えられたいずれかの化合物AおよびBに有用な溶媒を容易に同定することができるものである。その溶媒は、例えば水、水性緩衝液、有機溶媒、ならびに混合された水性溶媒および有機溶媒からなる群から選択することができる。その溶媒は、酸、塩基、塩、二価金属陽イオン、洗剤(界面活性剤)、シクロデキストリンもしくはカリキサレンなどの包接複合体形成分子、キレート剤(例えばEDTA)、ホウ酸塩、ボロン酸エステル(塩)、またはケイ酸塩を含めた錯化剤などの1つまたは複数の添加物を含む、前述のいずれかのものでもありうる。
【0086】
好ましい実施形態では、反応物に添加される固体支持体(図1の化合物B)の量は、還元糖に関してモル過剰の捕捉基が存在するように調整され、好ましくは前記過剰は、例えば少なくとも2倍、好ましくは少なくとも5倍、より好ましくは少なくとも10倍、例えば少なくとも50倍、例えば少なくとも100倍以上大きいものである。この過剰は、還元糖のより効率的な捕捉を確実にするであろう。
【0087】
捕捉反応をいずれかの温度で行うことができるが、好ましくは0から100℃の範囲の温度で行う。
【0088】
C.洗浄
捕捉基との反応により、いったん還元糖が固体支持体に固定化されたならば(図1のステップA+B→C)、その固体支持体を洗浄して非共有結合した物質を除去することができる。したがって、他の化合物、特に−NH2反応基を有さない他の化合物を含む溶液中にその還元糖が用意されたならば、その還元糖を前記溶液から精製することができる。したがって、還元糖が、例えば粗細胞抽出物などの形態の非精製形態で用意されることは、本発明に含まれる。グリコシダーゼもしくはアミダーゼなどの酵素の作用により、または化学試薬によるグリコシド結合の切断を経由して、精製または部分精製した糖タンパク質、糖脂質、またはグリコシドからその還元糖を生成させることができることも含まれる。
【0089】
当業者は、与えられた固定化糖(図1、化合物C)について適切な洗浄条件を容易に同定することができる。その洗浄は、例えば洗剤および変性剤に加えて上に言及したいずれかの添加物を場合により含む、上に言及したいずれかの溶媒を用いて行うことができる。洗浄をいずれかの温度で実施することができるが、好ましくは0〜100℃の範囲の温度で行う。
【0090】
C→D.キャッピング
固定化糖に結合した固体支持体(図1の化合物Cなど)は、未反応の遊離−NH2基をまだ含むので、この固体支持体を、その有用性の範囲を増加させる独特の操作に供することができる。
【0091】
本発明の好ましい一実施形態では、還元糖の固定化に続いて、CのC=N結合が反応しない条件で、当技術分野で十分に公知のアシル化剤(例えば無水酢酸)または他の窒素反応剤などのキャップ剤で未反応の−NH2基をキャップする。キャップ後に、その固体支持体は遊離アミン基をもはや全く有さず、求電子体に対して非常に低反応性のキャップされた窒素原子(N(H)キャップ)だけを有する。化合物Cのキャップ生成物は、例えば−R−N(H)キャップ基を有する一般構造D(図1参照)を有し、ここで、(H)はキャップ基の構造に応じて存在することもあるし、存在しないこともある。
【0092】
したがって、糖を固体支持体と結合させているC=N結合が−NH−に還元されるならば、それは、R−NH−CH2−という配列におけるsp3形式で混成した窒素原子であろう。したがって、特異的反応をこの基に向けて、その還元糖で特異的な化学量論的反応を起こすことができる。
【0093】
好ましくは、キャップ剤は、C=N官能基と実質的に反応せずに残りの−NH2基と特異的に反応する。そのような試薬は当技術分野で十分に公知であり、その試薬には、アミド結合形成に使用される一般のアシル化剤、例えば無水酢酸、他のアルカン酸無水物、芳香族無水物(例えば安息香酸無水物)、環状無水物(例えばコハク酸無水物、フタル酸無水物)、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、およびペプチド結合の固相合成を含めたアミド結合形成に一般に使用される多様な活性エステルなどの他の活性エステルが挙げられる。あるいは、対応する遊離酸と、ペプチド結合形成に一般に使用されるDCCなどのin situ活性化剤とを添加することにより−NH2基をキャップすることによって、in situで活性エステルを生み出すことができる。アルキルイソチオシアネート(R−NCS)、アリールイソチオシアネート(Ar−NCS)、アルキル化剤R−L(Lは、典型的には系列Cl、Br、I、OS(O)2R’からの脱離基であり、R’はアルキルまたはアリールでありうる)、αβ不飽和カルボニル化合物(CHR=CH−CO−(RはH、アルキルもしくはアリール、または置換されたアルキルもしくはアリールでありうる))またはαβ不飽和スルホン(CHR=CHS(O)2R’またはAr(Rは、H、アルキルもしくはアリール、または置換されたアルキルもしくはアリールでありうる))などのマイケルアクセプター、スルホン化剤(RSO2Clなど)およびその誘導体などの、−NH2基に反応性であることが公知の他の試薬を使用することができる。同様に、一般式RO−C(O)L(Lは上述)のカルボネートの活性エステルとの反応により−NH2基をキャップすることができる。
【0094】
D→E.還元
本発明の好ましい態様では、還元剤を使用して、糖をリンカーに結合しているC=N結合(例えば図1の化合物D)を還元する。十分に公知の多様な還元剤によりC=N結合を還元することができ、好ましくはその還元剤は二重結合を飽和させる一方で、N上に水素原子を配置することができる。
【0095】
特に価値があるのはBH結合を有するボランまたは水素化ホウ素であり、その例には、NaBH4、NaCNBH3、およびBH3−ピリジン、BH3−ジメチルスルフィドなどのBH3複合体が挙げられる。SiH結合を有するシランなどの、構造R3SiHを有するシランを使用することもでき、同様にジイミドなどの水素移動剤または均一系の水素化触媒もしくは金属−H結合を有する水素化触媒を使用することができる。
【0096】
還元の結果として、リンカーと、場合によりスペーサーとを介して固体支持体に好ましくは結合した糖CH−NH−という構造を含む反応性糖が生じる。一般に、その還元糖がアルデヒドであったならば、還元の結果として糖CH2−NH−という構造の化合物が生じるであろう。その還元糖がケトンであったならば、還元の結果として糖CH−NH−という構造の化合物が生じるであろう。
【0097】
還元生成物は、例えばsp3形式で混成したN原子を有する一般式E(図1)の生成物である。
【0098】
C→Cred→E
この方法の別の好ましい実施では、キャッピングのステップおよび還元ステップの順序が逆になる。上記D→Eに記載したいずれかの試薬により、化合物CにおけるC=N結合の還元(図1)を実施して、構造Credの化合物(図1)を生成させることができる。この還元はin situでも行うことができ、これは(NaCNBH3などの)還元剤を還元糖と同時に固体支持体(例えば化合物B)に添加することにより、それが形成するときにC=N結合が還元され、同じくCredが生成することを意味する。したがって、還元糖を含む試料を固体支持体および還元剤と共に同時にインキュベートすることができることが本発明に含まれる。したがって、C=N結合の還元(ステップv)は、還元糖と固体支持体のNH2基との反応(ステップiii)の直後に行われるであろう。次に、糖CH−NH−部分との反応を引き起こさない条件で、上記C→Dに記載したいずれかの試薬を使用して、Credにおける遊離−NH2基をキャップすることができる。特に、本発明のこの実施形態では、キャップ剤が第2アミノ基よりも第1アミノ基と選好的に反応することが好ましい。第2アミノ基よりも第1アミノ基との選好的(優先的)な反応が生じるように反応温度および時間を調整することも好ましい。アミノ基と反応する事実上全ての化合物は、より多く置換されたアミノ基よりも第1アミノ基と迅速に反応するが、例えば活性ベンゾイルエステル、イソプロパン酸活性エステル、ピバロイル活性エステル、Boc無水物またはBoc−アジドなどのように当該化合物が立体的に大きい場合にこれは特にあてはまる。第2アミノ基よりも第1アミノ基と選好的(優先的)に反応させるのに有用な化合物および条件は、Greeneら、1999、Protective Groups in Organic Synthesis、第3版、第7章、503〜653頁に記載されている。他の非常に好ましいキャップ剤は、NHS−エステルまたは立体障害されたペンタフルオロフェニル(PFP)エステルまたはテトラフルオロフェニル(TFP)エステルである。
【0099】
E→F.タグの付加
上記経路のいずれかにより得られた図1の化合物Eは、求電子体に対して非常に低い反応性のキャップされた窒素原子(N(H)キャップ)と、糖CH2−NH−Rという配列におけるsp3形式で混成した窒素原子とに結合した固体を含む。したがって、Eと、適切な窒素反応性官能基(好ましくはその窒素反応性官能基は弱求電子体(mild electrophile)である)との反応の結果として、sp3窒素原子への求電子体の付加が限定的に、またはほぼ限定的に生じ、その糖が結合した窒素に、本明細書において「タグ」と記載した分子構造または別の誘導化剤が効果的に付加される。タグの付加生成物を図1にFとして示す。
【0100】
この説明全体にわたり、用語「窒素反応基」は、sp3形式で混成した窒素に対する反応性を記載するために使用され、例えばその窒素は、構造R−NH−R’の化合物、例えば、RおよびR’が独立して(場合により置換された)アルキルもしくはアリールである、アミン、またはヒドロキシルアミン誘導体(R−NH−OR’)もしくはヒドラジン誘導体(R−NH−NH−R’)などにおける、R’が−NH−に結合したOまたはNなどの複素原子を有する化合物の中のものである。
【0101】
誘導体化剤(例えばタグ)の同一性、すなわち誘導体化剤の特定の化学構造は、利用者によって選択されることができる。Eにおけるsp3窒素に付加するために、誘導体化剤(例えばタグ)は、それ自体図1で「X」と称される窒素反応性官能基を有するべきである。好ましくは、そのタグは求電子体を含むか、または窒素反応性官能基Xに結合しているべきである。好ましくは、その誘導体化剤はタグ−X(TAG-X:図1参照)という一般構造であり、ここで、Xは窒素反応性官能基である。好ましくは、Xはsp3窒素原子と反応性のいずれかの弱求電子体であるが、好ましくはその糖に存在する−OH基とあまり反応しない(反応性の低い)弱求電子体である。そのような弱求電子体には、イソチオシアネート(タグ−NCS)、活性エステル(タグ−C(O)−L)(ここで、Lはペプチド結合の合成時などでアミド結合形成に一般に使用される脱離基である)、ペプチド結合の合成時などでアミド結合形成に一般に使用される方法によりin situで活性エステルに活性化することのできるカルボン酸(タグ−COOH)、アルキル化剤(タグ−L)(ここでLは、限定的ではなく好ましくは系列Cl、Br、I、OS(O)2Rからの脱離基であり、ここでRはアルキルまたはアリールでありうる)、(典型的には配列−CR=CH−C(O)−を含む)マイケルアクセプターまたはαβ不飽和スルホン(−CR=CH−S(O)2−)を有するタグ、および前述のうちいずれかのものの誘導体、還元アミノ化により糖CH2−NH−アミノ基と反応できるアルデヒドもしくはケトン、または例えばサンガー試薬である1−フルオロ−2,4−ジニトロベンゼンもしくは4−ハロ−7−ニトロ−2−オキサ−1,3−ジアゾール(NBD)試薬(ここで、ハロゲンは好ましくはFまたはClである)におけるように芳香環がニトロ基などの電気陰性基を有する置換ハロ芳香族基が挙げられる。
【0102】
タグは、例えば蛍光部分、質量分析用タグ、第2の結合パートナーに結合することができる第1の結合パートナー、核酸のことがあり、ここで、前述のいずれかのタグは好ましくは窒素反応性官能基を含むか、またはそれに結合している。特に、タグは本明細書下記にさらに詳細に記載したいずれかのタグのことがあり、ここで、これらいずれかのタグはいずれかの前記窒素反応性官能基に結合していてもよい。
【0103】
化合物Eにタグを付加することにより得ることのできる化合物の例を、図1のFに示す。
【0104】
F.洗浄
一実施形態では、タグ付き糖(例えば図1の化合物F)を洗浄してからいずれかのさらなる操作を行う。したがって、いずれかの量の未結合タグを除去する。タグ付き糖が固体支持体上に固定化されていることから、洗浄を容易に遂行することができる。
【0105】
洗浄後に、共有結合しているタグだけが存在するであろう。したがって、タグの量は固定化糖の量に相関するであろう。したがって、タグの存在を決定することによって固定化糖の量を決定することができる。したがって、与えられた試料中の本質的に全ての還元糖が固定化されたならば、この方法は、一態様では試料中に存在する還元糖の量を決定させるものである。
【0106】
当業者は、与えられたタグ付き固定化糖(例えば図1の化合物F)に適した洗浄条件を容易に同定することができるものである。洗浄は、例えば水、水性緩衝液、有機溶媒、ならびに混合された水性溶媒および有機溶媒からなる群から選択される溶媒を用いて行うことができる。溶媒は、塩、二価金属陽イオン、洗剤(界面活性剤)、シクロデキストリンまたはカリキサレンなどの包接複合体形成分子を含めた錯化剤、キレート剤(例えばEDTA)、ホウ酸塩、ボロン酸エステル(塩)、またはケイ酸塩などの1つまたは複数の添加物を含む前述のいずれかのものでもありうる。さらに、溶媒は場合により洗剤および変性剤を含むことがある。洗浄をいずれかの温度で行うことができるが、好ましくは0〜100℃の範囲の温度で行う。
【0107】
H.切断可能なリンカーの切断
使用されるリンカーが切断可能なリンカーである場合、本発明の方法は、前記切断可能なリンカーを切断することにより捕捉された糖を放出させるステップを含むことがある。好ましくは、その切断は固定化糖の−NH−基への(タグ−Xを用いて付加された)タグまたは(X−テザー−Yを用いて付加された)テザー−Yなどの誘導体化剤の付加に続いて行われる。したがって、タグ付き糖(図1の化合物Gまたは化合物J)をそれぞれFまたはIから溶液に放出させることができる。Gは、窒素原子上にタグを有する糖部分からなり、その窒素原子は切断後に残るリンカーの残基(がある場合)に結合しており、分かり易くするために糖−タグと表示される。Jは、窒素原子上にテザーを有する糖部分からなり、その窒素原子は切断後に残った残基(がある場合)に結合している。テザーは場合によりタグと結合していてもよい。
【0108】
しかし、切断可能なリンカーをこの方法のいずれかの所望の時間で切断することができる。
【0109】
化合物Eに付加されたタグが蛍光特性などの有益な分光特性を有するならば、糖−タグ(図1の化合物G)の量を溶液中で定量することができる。さらに、糖−タグ(図1の化合物G)をHPLCまたはCEなどの分析分離技術に供することができ、そのうえ1つを超える糖が存在するならば個別の構成要素を分離することができ、その相対比を決定し、基準となる標準物質が入手可能ならばその構成要素を同定することができ、それを定量することができる。糖質認識タンパク質に結合することができるリガンドとして糖−タグを使用して、糖質またはタンパク質のいずれかの構造に関する情報を提供することもできる。
【0110】
感度増加、スペクトル解釈の簡略化、または同位体エンコーディングを用いた差次的分析(differential analysis)の実行を可能にすることのいずれかにより、タグが質量分析の実施に有用な糖−タグの特性を与える構造であるならば、溶液に放出された糖−タグを質量分析により好都合に分析することができる。
【0111】
F.分光特性を有するタグ
本発明の好ましい一実施形態では、例えば化合物Eまたは化合物Hに付加されたタグは有益な分光特性を有する。好ましくは、有益な分光特性を有するタグが、構造X−タグの誘導体を使用して例えば化合物Eに付加され、ここで、Xは、本明細書上記「E→F タグの付加」の項に記載したいずれかの窒素反応性官能基などの窒素反応性官能基である。有益な分光特性により、タグを例えば分光分析により容易に可視化できることを意味する。したがって、タグは例えば分光的に検出可能でありうる。好ましい実施形態では、タグは蛍光タグである。そのようなタグ付けの例には、イソチオシアネート(例えばFITC、TRITC)との反応、活性エステル、マイケルアクセプター、αβ不飽和スルホニル(具体的にはビニルスルホン)、およびハロゲン化アルキルおよびアルキルトシレートなどのアルキル化剤、例えばサンガー試薬などのハロアリール化合物が挙げられる。
【0112】
そのようなタグの付加生成物(例えば図1の化合物F)は光を吸収して、検出可能な光を再発光することができる。Fに存在するそのようなタグの数は、Bに付加され捕捉されてCを生成する糖分子Aの数を反映するであろう。したがって、用意された固体支持体(化合物B)が過剰の捕捉基を有するという条件で、試料に本来存在する還元糖分子(A)の数を化合物Fの蛍光により推定することができる。蛍光分子以外のタグを使用することもできる。これらには放射性タグ、リン光タグ、化学発光タグ、UV吸収タグ、ナノ粒子、量子ドット、着色化合物、電気化学活性タグ、赤外活性タグ、ラマン分光分析またはラマン散乱で活性なタグ、原子間力顕微鏡により検出できるタグ、または金属原子もしくはそのクラスターを含むタグが含まれうる。
【0113】
化合物Fの固体支持体が弾性表面波センサーまたは表面プラズモン共鳴センサーなどのセンサーであるならば、そのタグに特異的に結合する種の付加は、タグに、したがって糖分子の数に比例するシグナルの生成を生じることができる。例は、タグがビオチンの活性エステルとの反応により一般に導入されるビオチン残基の場合である。タグがビオチン残基である場合の化合物Eへのアビジン−タンパク質の付加は、センサーにより容易に検出され報告されるシグナルを生じることができる。固定化タグへの第2の結合パートナーの結合を検出するために使用することができるセンサーの他の例には、圧電センサー、アンペロメトリックセンサー、表面プラズモン共鳴蛍光分光分析センサー、二重偏光干渉測定(DPI)センサー、波長インテロゲート光学センサー(wavelength−interrogated optical sensor)(WIOS)、インピーダンスセンサー、光導波路グレーティングカップラーセンサー、音波センサー、および熱量測定センサーが挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0114】
その糖が分光特性を有するタグに結合すると、前記分光特性を決定することができる。(図1の化合物FまたはIなどのように)固体支持体にまだ固定化されている糖について、または(例えば図1の化合物GまたはJの)溶液に放出された糖について分光特性を決定することができる。後者はリンカーが切断可能なリンカーであることを必要とする。分光特性を有するタグの性質に応じて、分光分析などの従来法を使用して前記特性を決定することができる。したがって、本発明の方法は、糖に結合したタグを分光分析により検出するステップを含むことがある。
【0115】
F.質量分析用タグ
本発明の一実施形態において、タグは質量分析用タグである。前記質量分析用タグは、好ましくはX−タグという構造の試薬により付加される(ここでXは、本明細書上記の「タグの付加」の項に言及されたいずれかの窒素反応性官能基などの窒素反応性官能基である)。本明細書に使用される用語「質量分析用タグ」は、好ましくは(本明細書上記の「切断可能なリンカーの切断」の項に記載した)固体支持体からの切断後の、質量分析による生成物の検出および構造の特徴付けを改善する分子を表す。例には、マススペクトルにおいて特徴的な同位体パターンを与える臭素標識の導入がある。そのような臭素標識を付加することができ、例えば化合物Eにp−ブロモフェニルイソチオシアネートを付加することにより、タグが臭素原子を有する構造Fの化合物を生成させることができる。糖質の質量分析における臭素含有標識の有用性は、例えばLiら、2003、Rapid.Commun.Mass Spectr.、17:1462〜1466に記載されている。別の例には、ポジティブイオンモードまたはネガティブイオンモードのいずれかの質量/電荷分離での検出を高めるための、正の電荷または負の電荷のいずれかを与える分子の導入が挙げられる。別の例には、質量分析の実施に一般的なエレクトロスプレー、MALDI、または他のイオン化技術における性能または感度を高める分子の導入が挙げられる。なお別の例には、質量分析により標識された種を定量させる安定な同位体標識分子の導入が挙げられる。同位体標識に有用な方法は、例えばTaoら、2003、Current Opinion in Biotechnology、14:110〜118に総説されている。
【0116】
糖が質量分析用タグに結合すると、タグ付き糖(図1のF、G、I、またはJ)を質量分析により検出することができる。固体支持体にまだ固定化されている糖について(例えば図1の化合物FおよびIについて)質量分析を行うことができるが、好ましくは例えば切断可能なリンカーの切断により(例えば図1の化合物GまたはJについて)溶液に放出された糖について質量分析を行う。したがって、リンカーが切断可能なリンカーであることが好ましい。当業者は、質量分析用タグの性質に応じて適切な質量分析を行うことができるものである。したがって、本発明の方法は、質量分析用タグに結合した糖を質量分析により検出するステップを含むことがある。
【0117】
F.結合パートナー性タグ
本発明の別の好ましい実施形態では、タグは第2の結合パートナーと特異的相互作用することができる第1の結合パートナーであり、前記第1の結合パートナーは例えばX−タグという構造の試薬との反応を経由して化合物E(または化合物H)に付加される。ここで、Xは窒素反応性官能基(例えば「誘導体化剤」)である。第2の結合パートナーは、好ましくは色素、蛍光標識、放射性同位体、重金属、または酵素などの検出可能な標識で標識される。第1の結合パートナーは、例えばタンパク質に対するリガンドである分子のことがあり、そのタンパク質は、化学量論的または増幅後のいずれかで、結果として生じる固定化リガンドの検出に有用である。第1の結合パートナーもまたタンパク質で、第2の結合パートナーが前記タンパク質に対するリガンドであることもある。
【0118】
結合パートナーの例には、ELISAアッセイで一般に使用されるリガンド−タンパク質対が挙げられる。例えば、化合物Eをビオチン化試薬と反応させ、洗浄後に、こうして固定化されたビオチンを、蛍光タグ、放射性同位体、もしくは重金属などの検出可能な標識で直接標識されたストレプトアビジン(またはその他のアビジン)で、または分光分析により検出することのできるシグナルの生成を招く化学反応を触媒することができるホースラディッシュペルオキシダーゼなどの酵素にコンジュゲートしたストレプトアビジン(またはその他のアビジン)で検出することができる。
【0119】
結合パートナーのその他の例は抗体−エピトープ対である。したがって、一方の結合パートナーはエピトープを含むことがあり、他方の結合パートナーは、高い親和性で前記エピトープと結合することができる抗体、好ましくは前記エピトープと特異的に結合する抗体でありうるであろう。
【0120】
F.核酸タグ
本発明の別の実施形態では、タグは核酸である。本発明による核酸は、DNAもしくはRNAなどのいずれかの核酸、またはLNA、PNA、HNAなどのそのアナログでありうる。好ましくは、その核酸はDNAであり、好ましくはDNAオリゴマーである。好ましくは、前記DNAは本明細書上記の「タグの付加」の項で言及したいずれかの窒素反応性官能基などの窒素反応性官能基で誘導体化されている。前記核酸タグの配列は公知であるか、または少なくとも部分的に公知であることが好ましく、このことから、当業者は標準法を用いて前記タグを容易に検出できるようになるであろう。
【0121】
核酸タグは、いずれかの所望の長さ、好ましくは少なくとも特異的検出を可能にするであろう長さでありうる。したがって、好ましくはその核酸は、少なくとも6ヌクレオチド長、さらに好ましくは少なくとも10ヌクレオチド長、例えば10から5000ヌクレオチド長の範囲である。
【0122】
窒素反応性核酸タグを糖に付加した後に、DNAオリゴマーなどの核酸を、次にその相補的核酸または本質的に相補的な核酸にハイブリダイズさせることにより、固体支持体上で直接検出することができる。本質的に相補的な核酸により、例えばSambrookら、1989、「Molecular Cloning/A Laboratory Manual」、Cold Spring Harborに記載されたようなストリンジェントな条件で与えられた核酸にハイブリダイズすることができる核酸を意味する。好ましくは、前記相補的核酸は検出可能な標識に結合していてもよい。前記検出可能な標識は、例えば蛍光標識、放射性同位体、または酵素のことがあり、好ましくは蛍光標識である。したがって、例えばその相補的蛍光標識DNAにハイブリダイズさせることにより、核酸タグを検出することができる。あるいは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはリガーゼ連鎖反応などの当技術分野で公知の従来法を使用して、核酸タグを増幅することができる。したがって、固定化された核酸タグをPCR反応に供して、固定化されたDNAオリゴマーを増幅させることができ、それをPCRにおける定量についての十分に公知の多様な技術により溶液中で測定することができる。この工程は、固体支持体上に存在する非常に少量の糖CH−NH−リンカー−スペーサー−固体の間接的検出および定量に特に有用性を有する。あるいは、DNAに結合した糖をリンカーの切断により溶液に放出させ、続いて例えばPCRにより溶液中で増幅させるか、または本質的に相補的な核酸との特異的ハイブリダイゼーションに基づいて溶液中で検出することができる。
【0123】
E→H テザー
本発明による誘導体化剤は、少なくとも2つの官能基に結合したテザーのこともある。そのような二官能性試薬は、一般にX−テザー−YまたはX−テザー−Ypという構造であろう(ここで、Xは窒素反応性官能基であり、Yは第2の反応性官能基であり、Ypは潜在的反応性官能基または保護された反応基Yである)。化合物EとX−テザー−Y(またはX−テザー−Yp)との反応生成物は、例えば図1の化合物Hの一般構造を有しうる。第2の反応性官能基Yは、固相合成に使用するいずれかの種類の試薬と反応しうる。例えば、糖CH−NH−リンカー−スペーサー−固体におけるNは二官能性試薬(X−テザー−Y)と反応することができ、ここで、一方の官能基(窒素反応性官能基X)は固定化された窒素と結合を作ることにより反応し、他方の官能基は第2の反応性官能基Yでありうるか、または(例えばアンマスキング、脱保護、またはさらなる反応により)第2の反応性官能基Yに変換することができる。
【0124】
テザーはいずれかの有用なテザー、例えば(直鎖、分岐、もしくは環状でありうる)アルキル、アルケニル、もしくはアルキニル、またはアリールであるか、あるいはアミド結合(NC(O)R)もしくはエチレングリコール基(−CH2CH2−O−)を有するか、あるいは複素原子で置換された前述のいずれかのものおよびその誘導体でありうる。
【0125】
第2の官能性反応基Yは、例えばチオール、カルボキシル基、活性化カルボキシル基、ジスルフィド、活性化ジスルフィド、アルキル化剤、アルケン、アルキン、アルデヒド、ケトン、およびアジドからなる群から選択されうる。アルキル化剤は、例えばハロゲン化アルキルまたはα−ハロカルボニル基でありうる。Ypは、例えば保護されたアミンまたは前述のいずれかの基Yの保護された誘導体でありうる。したがって、Ypは、例えば保護されたアミン、保護されたチオール、保護されたカルボキシル基、保護されたアルデヒド、および保護されたケトンからなる群から選択することができる。保護された反応基は、本明細書においてYpと表示され、ここで、Ypは脱保護されて官能性反応基Yを生じることができる。有用な保護基は、Greeneら、1999、「Protective Groups in Organic Synthesis」第3版、John Wiley and Sons、ニューヨークに、具体的にはカルボニル基(第4章、293〜368頁)、カルボキシル基(第5章、369〜453頁)、チオール(第6章、454〜493頁)、およびアミノ基(第7章、494〜653頁)について見出すことができる。保護されたアミンの例には、固相ペプチド合成に一般に使用されるものが挙げられるが、それに限定されるわけではなく、例えばFmoc、Boc、Alloc、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、トリチルおよび置換トリチル、o−ニトロベンジルオキシカルボニル、N−スルフェニル、またはアジドである。しかし、第2の反応性官能基は、固相合成の技術分野ならびに固体支持体および表面への小分子の結合における十分に公知の例などの、固相上で反応するようにされたいずれかの官能基Yまたは保護された官能基(Yp)でありうる。次に、これらの官能基は直接に、または反応性種に脱保護した後に、第2の官能基Yと反応することができる官能基(Z)を有する第2の誘導体化剤を捕捉することができる。
【0126】
化合物HにおけるYがNH2基を有するか、脱保護時にNH2基を有するようにできるならば、E→Fに記載したいずれかのアミン反応性試薬(例えばイソチオシアネート)を使用してタグを付加して一般構造Iの化合物を生成させることができる(図1)。
【0127】
化合物Hにおけるいずれかの官能基Y(図1)と反応するようにされた第2の誘導体化剤は、例えば分光分析用タグまたは上記E→Fの項で言及したいずれかのタグのことがあり、前記タグは窒素反応基の代わりにYと反応することができる官能基(Z)を有するか、またはそれで誘導体化されている。これらのタグは、薬物などの小分子、造影剤、ペプチド、タンパク質、酵素、および生体活性を示す他の分子、DNAまたはRNAなどの核酸のこともある。
【0128】
前記小分子、造影剤、ペプチド、または核酸は、好ましくは与えられた第2の官能性反応基Yと反応することができる官能基Zを有するか、またはそれと結合している。当業者は、有用な官能基YおよびZを容易に同定することができるものである。第2の誘導体化剤は、上記「分光特性を有するタグ」、「質量分析用タグ」、「結合パートナー性タグ」、および「核酸タグ」の項に記載した上に言及したいずれかのタグのこともある。ここで、前記タグは窒素反応性官能基の代わりに、官能基Yと反応することができる官能基Zを有する。Hにおけるテザーに結合した官能基(図1)は、化学反応または酵素反応によりYに変換することができる潜在的基または保護された基(Yp)のこともある。そのYを次にさらに上記のように反応させることができる。この潜在的基が第1または第2アミンに変換することができるならば(すなわちYは−NH2または−NH−という構造を含むであろう)、上記E→Fに記載したいずれかのアミン反応性種を付加して構造Iのタグ付き化合物を生成させることができる。
【0129】
したがって、本発明の方法は以下のステップを含むことができる。
vii.反応性糖の−NH−基を、構造X−テザー−YまたはX−テザー−Ypの二官能性試薬と反応させることにより、前記テザー−Yまたは前記テザー−Ypに共有結合した糖を得るステップ(ここで、Xは窒素反応性官能基であり、Yは第2の反応性官能基であり、Ypは反応性官能基Yに変換または脱保護することができる潜在的官能基である)。
【0130】
このステップは、好ましくは出発物質として図1の化合物Eを使用して行われる。したがって、このステップにより例えば図1の一般構造Hの化合物を作製することができる。
【0131】
二官能性試薬がX−テザー−Ypという構造である本発明の実施形態では、好ましくはこの方法はさらにYpを変換または脱保護して反応性官能基Yを得るステップを含む。このステップはXを−NH−と反応させる前または後に行うことができ、好ましくはXを−NH−と反応させた後に行う。
【0132】
なお、本発明の方法は、以下のステップをさらに含みうる。
viii.Yと反応することができる官能基(Z)を有する第2の誘導体化剤を用意するステップ。
ix.官能基ZおよびYを反応させることによって、テザーおよび第1の誘導体化剤を介してその糖に第2の誘導体化剤を共有結合させるステップ。
【0133】
あるいは、本発明の方法は以下のステップをさらに含みうる。
viii.真核細胞、原核細胞、微生物、ミセル、ファージ、ウイルス、およびナノ粒子からなる群から選択される粒子を用意するステップ(その粒子はYと反応することができる官能基(Z)を含む)。
ix.その官能基ZおよびYを反応させることにより、そのテザーおよびその作用剤を介して糖に粒子を共有結合させるステップ。
【0134】
したがって、ステップix.により図1に概説した一般構造Iの化合物が作製され、ここでタグは粒子である。リンカーが切断可能なリンカーであるという条件で、この方法はリンカーを切断することにより、例えば図1の一般構造Jの化合物を作製するステップをさらに含むことがある。
【0135】
例えば、糖CH−NH−リンカー−スペーサー−固体(例えば図1の化合物E)と二官能性試薬X−テザー−Yとの反応の生成物は一般構造Hを有するが、分子よりも大きいアセンブリー、例えば細菌、ファージ、酵母、ミセル、ウイルス、ナノ粒子、または真核もしくは原核細胞と共有結合を形成することができるさらなる反応基を有するか、または有するようにすることができる。次に、リンカーの切断の結果としてアセンブリーに糖を効果的に付加した糖CH−N(アセンブリー)−リンカーという一般式の種が生じる。したがって、原則として糖を固体支持体からアセンブリーに移動させることができる。
【0136】
酵素処理
固体支持体が生体適合性であるならば、すなわち酵素のような生体高分子との接触を許容し、その活性を有意に改変しないならば、固定化糖分子の構造を改変するであろう酵素によりその固定化糖分子は作用されうる。その固定化糖分子は、例えば図1の一般構造C、Cred、D、E、F、H、またはIのうちいずれかの化合物でありうる。
【0137】
生体適合性固体支持体の非限定的な例には、ガラス、PEGA、SPOCC、または多糖ゲルが挙げられる。本実施形態の中で、リンカーは相対的に長いことが好ましく、よって、リンカーは少なくとも2原子、好ましくは少なくとも6原子を有することが好ましく、さらに好ましくは、リンカーは少なくとも6原子の鎖を含み、例えばそのリンカー内の原子の最長鎖は少なくとも6原子長であり、例えば6から1000原子長である。リンカーが親水性であることも好ましい。
【0138】
図1の化合物GまたはJなどの切断可能なリンカーの切断により溶液中に遊離された糖を、酵素などの生体高分子と接触させることも可能である。
【0139】
酵素は、糖質に作用することができるいずれかのクラスに属しうるものであり、例えばグリコシダーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、およびアシル化、リン酸化、硫酸化、または酸化によりアルコール基を修飾する酵素でありうる。あるいは、糖が−OH基ですでに置換されているならば、例えばアシル化、リン酸化、または硫酸化されているならば、デアシラーゼ、ホスファターゼ、およびスルファターゼがその構造を改変することができる。したがって、本発明の方法は、糖(例えば図1の化合物C、Cred、D、E、F、G、H、I、またはJのうちいずれかのもの)を、グリコシルトランスフェラーゼ、スルファターゼ、ホスホリラーゼ、スルホトランスフェラーゼ、ホスホトランスフェラーゼ、グリコシンターゼ、およびトランスグリコシダーゼのクラスから選択される1つまたは複数の酵素と接触させることにより、前記糖を新しい構造に変換するステップをさらに含みうる。好ましい実施形態では、その方法は、その最初の糖がグリコシダーゼの基質であるという条件で、その糖(例えば図1の化合物C、Cred、D、E、F、G、H、I、またはJのうちいずれかのもの)を1つまたは複数のグリコシダーゼと接触させることにより、新しい還元糖を作製するステップをさらに含む。
【0140】
一例には、まだ遊離−NH2基を有するキャップされていない糖−C=N−リンカー−スペーサー−固体(例えば図1の化合物C)と、1つの単糖残基だけ糖の長さの減少を引き起こすエキソグリコシダーゼとのインキュベーションが挙げられるであろう。この単糖残基の切断は1糖ユニット短い、固体支持体に結合したオリゴ糖を残し、同一の固体支持体または図1の一般構造Bの固体支持体などの異なる固体支持体により捕捉されうる還元糖を生成し、その還元糖に、続いて上記BからJに記載したいずれかの操作を受けさせることができる。
【0141】
したがって、本発明の方法は以下のステップをさらに含むことができる。
a)糖質に作用することができる1つまたは複数の酵素を用意するステップ
b)その糖を前記の1つまたは複数の酵素と接触させるステップ
これらのステップをこの方法の間のいずれかの与えられた時間で行うことができる。その酵素はこの項に記載したいずれかの酵素でありうる。
【0142】
特定の実施形態では、その酵素はグリコシダーゼであり、本明細書上記の概要の項に記載した方法は、以下のさらなるステップを含む。
iii.a)糖質に作用することのできる1つまたは複数のグリコシダーゼを用意するステップ
iii.b)その糖が前記グリコシダーゼの基質であるという条件で、その糖を1つまたは複数の前記グリコシダーゼと接触させることにより、新しい還元糖を作製するステップ
iii.c)固体支持体上に新たに作製された還元糖を固定化するステップ
ステップiii.a〜iii.cは、本明細書上記の「発明の概要」の項に概略を述べられた方法のステップiiiに従って実施することができる。しかし、ステップiii.aからiii.cは、前記方法のステップiv、v、vi、またはviiのうちいずれかのものに従って実施することもできる。したがって、ステップiii.a〜iii.cは、図1の構造C、Cred、D、E、F、H、またはIにより例示されるいずれかの固定化糖に関して実施することができる。
【0143】
特に、前記の新しく作製された還元糖を、同じ固体支持体または別の固体支持体の遊離−NH2基に固定化することができる。前記の他の固体支持体は、例えば未置換であるか、固定化参照標準を有するかのいずれかでありうる。前記の他の固体支持体は、本明細書上記の固体支持体であり、かつその固体支持体は(場合によりスペーサーを介して)リンカーに結合していることが好ましい。ここで、前記リンカーは捕捉基を有する(本明細書上記のリンカー、捕捉基、およびスペーサーの詳細な説明を参照のこと)。
【0144】
特に価値があるのは、構造の情報を得るための同一または異なる固体支持体上でのグリコシダーゼ生成物および放出された単糖の還元および蛍光標識である。特定の例には、構造B(図1)のNH2−リンカー−スペーサー−固体上にGal−GlcNAc−Gal−Glc(ラクト−N−テトラオース、LNT)を捕捉し、捕捉され固定化されたLNT(図1構造Cの化合物の一例)とβ−ガラクトシダーゼとのインキュベーションに続いて、同じ固体支持体(C)上に放出されたガラクトースを捕捉して、未反応のGal−GlcNAc−Gal−GlcC=N−リンカー−スペーサー−固体と、GlcNAc−Gal−GlcC=N−リンカー−スペーサー−固体およびGal−C=N−リンカー−スペーサー−固体である反応生成物との混合物を得ることが挙げられる。次に、上記ステップF→Gに記載したキャッピング、還元、TRITCを用いた蛍光タグ付け、および固体からの切断は、三糖生成物および単糖生成物と公知の標準との同時泳動によって、その固定化LNTが末端β−ガラクトース残基を有していたという確認を可能とする。
【0145】
多くの有用なグリコシダーゼが当技術分野で記載されており、例えばUS5100778またはWO92/19974に記載されたいずれかのグリコシダーゼを本発明に採用することができる。
【0146】
固体支持体が生体適合性である場合、糖−C=N−リンカー−スペーサー−固体(例えば図1の化合物C)の未反応−NH2基を(例えば上記C→Dに記載したように無水酢酸で)キャップし、次に糖質−活性酵素に曝露するか、またはさらに(上記D→Eの項に記載したように)糖CH−NH−リンカー−スペーサー−固体に還元し、次に糖質−活性酵素に曝露することができる。あるいは、図1の化合物CをCredに還元し、次に糖質−活性酵素に曝露することもできる。糖CH−NH−リンカー−スペーサー−固体(例えば図1の化合物E)を(本明細書上記のE→Fの項に記載したように)さらにタグ付けして、糖CH−N(タグ)−リンカー−スペーサー−固体(例えば図1の化合物F)を得、次に糖質−活性酵素に曝露することができる。これらのいずれかの工程では、固体支持体に結合したままである酵素反応生成物をさらに本発明の方法により操作するか、またはさらなる分析のためにリンカーでの反応により切断することができる。固定化糖の断片の切断を生じさせる酵素反応による生成物が溶液中に出現するであろう。ここで、分析化学の確立された技術を用いてその生成物をさらに研究してもよいし、またその生成物自体が還元糖である場合は、図1の一般糖Aについて記載した操作にその生成物を供することができる。
【0147】
個別の糖を、キャピラリーガスクロマトグラフィー(GC)、マイクロカラム超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)、マイクロカラム液体クロマトグラフィー(LC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、高性能キャピラリー電気泳動(HPCE)、イオン交換クロマトグラフィー、または質量分析により検出することができる。誘導体化剤を用いた標識の前または後に、溶液中または固相上のいずれかで個別の糖の検出を行うことができる。
【0148】
検出剤
本発明の一実施形態において、この方法は、以下のステップを含む。
viii.その糖を前記糖と関連(結合)することができる検出剤と接触させるステップ
ix.その検出剤を検出するステップ
好ましくは、前記糖は本明細書上記の固体支持体に固定化されており、したがって、例えば図1の一般構造C、Cred、D、E、F、H、またはIの化合物を前記検出剤と接触させることができる。切断可能なリンカーの切断により前記糖を固体支持体から放出させることも可能であり、したがって、一般構造GまたはJの化合物を前記検出剤と接触させることもできる。
【0149】
その検出剤は前記糖と関連することができるいずれかの作用剤でありうる。好ましい検出剤は他のいずれかの化合物よりもずっと高い親和性で糖と関連することができる化合物であり、糖に対して例えば他のいずれかの化合物よりも少なくとも2倍、例えば少なくとも5倍高い親和性を有する化合物である。
【0150】
さらに、前記検出剤が当業者に公知の方法により直接または間接的に検出することができることが好ましい。例えば、検出剤はそれ自体例えば蛍光化合物または着色化合物(色素)でありうる。検出剤は容易な検出方法を利用することができる化合物でもありうる。
【0151】
本発明の一実施形態において、検出剤はアリールボロン酸またはヘテロアリールボロン酸であり、ここでそのアリール部分は、本明細書上記の「F.分光特性を有するタグ」の項に記載した蛍光タグまたは他のいずれかの検出可能なタグなどの分光学的に活性な基で置換されている。
【0152】
別の実施形態では、検出剤はポリペプチド、好ましくはレクチン、セレクチンおよび他の糖質結合タンパク質からなる群から選択されるポリペプチド、毒素、受容体、抗体、ならびに酵素である。検出剤がポリペプチドの場合、前記ポリペプチドは酵素または蛍光化合物などの検出可能な標識に結合していてもよい。抗体または類似の高親和性化合物の助けを借りてそのポリペプチドを検出することもできる。
【実施例】
【0153】
(実施例)
以下は本発明の方法の例示的な実施例であり、本発明を限定するものとしてみなしてはならない。特に状況から明らかでなければ、大文字A、B、C、Cred、D、E、F、G、H、I、およびJは図1に概略された一般構造を表す。
実験の部
1.Aの実施例:この研究に使用された還元糖
固体支持体Bにより捕捉された還元糖の構造を図2に示す。これらには、単糖であるD−Glc(1)およびD−Gal(2)、二糖であるN−アセチルラクトサミン(LacNAc、3)、三糖であるマルトトリオース(マルトトリオースG3、4)、ならびに四糖であるラクト−N−テトラオース(LNT、5)が含まれる。試料6および7は、単糖Fuc:Man:GalNAcの混合物をそれぞれ2:3:1および1:3:2の比で含有する。試料8はGal(2)およびLNT(5)の1:1混合物を含有する。試料9はマルトビオース(G2)、マルトトリオース(G3)、マルトテトラオース(G4)、マルトペンタオース(G5)、マルトヘキサオース(G6)、およびマルトヘプタオース(G7)のほぼ等モル混合物を含有する。試料10は、PNGアーゼF(製品番号1365177、Boehringer Mannheim GmbH、ドイツ)の作用によりリボヌクレアーゼB(Sigma)から放出されたN−結合オリゴ糖鎖からなる。
【0154】
2.リンカー、スペーサー、およびタグ付き糖の参照標準
2.1 リンカーおよびスペーサー
切断可能なリンカーの合成およびスペーサーの構造を図3に示し、下に説明する。
12:N−Fmoc−4−アミノオキシメチル−安息香酸
4−アミノオキシメチル安息香酸塩酸塩111(2.0g、0.010mol)のジオキサン溶液(20mL)および半飽和Na2CO3溶液(20mL)をFmoc−Cl(2.8g、0.011mol)に加え、得られた混合物を2時間撹拌した。
(注;1:この物質は、以前にDeles,J.ら;PJCHDQ;Pol.J.Chem.;EN; 53;1979;1025〜1032に記載されたように調製された。)
酢酸エチル(100mL)を添加し、(濃)HClを慎重に加えることにより水相のpHを1〜3に調整した。この混合物を分液漏斗に注ぎ、有機相を分離し、水(100mL)で1回洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去して油を得た。その油は放置すると固化した。この粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(石油エーテル、酢酸エチル、AcOH60:40:1)により精製した。収量:3.5g(92%)1H−NMR(250MHz,DMSO−d6)δ=4.05(1H,t,J=6.3Hz)、4.27(2H,d,J=6.3Hz)、4.51(2H,s)、7.08〜7.22(6H,m)、7.46(2H,d,J=7.4Hz)、7.66(2H,d,J=7.1Hz)、7.72(2H,d,J=8.4Hz)、10.29(1H,br.s)、12.78(1H,br.s)。13C−NMR(63MHz,DMSO−d6)δ=47.04、66.03、76.91、120.51、125.41、127.45、128.03、128.89、129.33、129.63、130.82、141.19、144.01、157.12、167.48。MS(ES)m/z=389(MH+)。
【0155】
13:N−Fmoc−4−アミノオキシメチル−安息香酸(12)とブロモ酢酸t−ブチルとの反応
N−Fmoc−4−アミノオキシメチル−安息香酸(12)(1.0g、2.57mmol)をDMF(15mL)に溶かし、Cs2CO3(0.42g、1.28mmol、Aldrich)を加え、続いて室温で5分間撹拌した。ブロモ酢酸tert−ブチル(0.55g、2.28mmol、Fluka)を加え、得られた混合物を50℃に30分間加熱し、次にもう一度室温に冷却した。CH2Cl2(70mL)を加え、その混合物を分液漏斗に注ぎ、半飽和NaHCO3溶液(3×50mL)の次に水(2×50mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させた。減圧下で溶媒を除去して油として粗生成物を得た。フラッシュカラムクロマトグラフィー(石油エーテル中の20〜40%酢酸エチル)後に、収量1.15g(89%)で白色固体を得た。1H−NMR(250MHz,CDCl3)δ=1.37(9H,s)、4.06(1H,t,J=6.7Hz)、4.37(2H,d,J=6.7Hz)、4.61(2H,s)、4.67(2H,S)、7.11〜7.18(2H,m)、7.22〜7.27(4H,m)、7.43(2H,d,J=7.5Hz)、7.60(2H,d,J=7.3Hz)、7.75(1H,s)、7.93(2H,dd,J=1.7Hz,6.6Hz)。13C−NMR(63MHz,CDCl3)δ=26.31、45.28、59.95、65.52、75.99、80.84、118.30、123.27、125.41、126.10、126.93、127.23、128.30、139.29、139.58、141.73、155.70、163.94、165.15。MS(ES)m/z=542(MK+)。
【0156】
14:リンカーの調製
前の実験で得られた白色固体13(1.15g)を、50%のCF3CO2H濃度のCH2Cl2溶液(30mL)中で3時間撹拌し、蒸発乾固させた。油性残渣を少量の酢酸エチルに溶かし、得られた溶液にヘキサンをゆっくりと加えることにより微細白色粉末として生成物を沈殿させた。生成物を濾過し、ヘキサンで2回洗浄し、真空下で乾燥させ、ほぼ定量的な収量(1.0g、98%)で所望の生成物を得た。1H−NMR(250MHz,DMSO−d6)δ=4.07(1H,t,J=6,3Hz)、4.28(2H,d,J=6,3Hz)、4.53(2H,s)、4.62(2H,S)、7.07〜7.14(2H,m)、7.17〜7.26(4H,m)、7.46(2H,d,J=7.4Hz)、7.66(2H,d,J=7.2Hz)、7.77(2H,d,J=8.3Hz)、10.30(1H,br.s)。13C−NMR(63MHz,DMSO−d6)δ=47.04、61.62、66.04、76.79、120.50、125.41、127.46、128.03、129.05、129.69、141.19、142.20、144.00、157.12、165.50、169.47。MS(ES)m/z=446(M−H+)。HRMS(ES)計算値(C25H21NO7Na+):470.1210 実測値:470.1224。
【0157】
2.2 一般構造Gのテトラメチルロダミン(TMR)−タグ付け単糖標準の合成
8つの単糖D−Glc、D−Gal、D−Man、D−Xyl、D−GlcNAc、D−GalNAc、L−Fuc、およびD−GlcAを使用した。D−Gal(2)についての一般合成スキームを図4に示し、生成物21の構造を図4に示し、示したようにGalCH2−N(R)−TMRと省略する。調製された8つ全ての糖CH2−N(R)−TMR単糖誘導体の構造を図5に示す。
【0158】
16:N−Fmoc−4−アミノオキシメチル−安息香酸(12)と臭化ベンジルとの反応
N−Fmoc−4−アミノオキシメチル−安息香酸(12、2.0g、5.14mmol)をDMF(30mL)に溶かし、Cs2CO3(0.84g、2.57mmol)を添加し、続いて室温で5分間撹拌した。臭化ベンジル(1.05g、6.17mmol)を加え、混合物を室温でもう30分間撹拌させた。水(200mL)を加え、得られた混合物をCH2Cl2(2×100mL)で抽出した。合わせた有機相を水(3×50mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、蒸発乾固して油を得て、その油をそれ以上特徴付けずに次の実験に使用した。
【0159】
17:ベンジル−(N−Fmoc−4−アミノオキシメチル)−ベンゾエートからFmoc基の除去
前の実験で得られた粗生成物(16)を、DMF(20mL)中の20%ピペリジンと共に1分間撹拌し、それにシリカゲルのベッドを通過させ、吸引により大部分のDMFおよびピペリジンを除去した。酢酸エチルおよび石油エーテル(1:1)の混合物を用いて生成物をシリカゲルのベッドから溶出させ、ロータリーエバポレーターで濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル、石油エーテル1:1)によりさらなる精製を果たし、1.16g(88%、2ステップ)の収量で透明な油を得た。1H−NMR(250MHz,CDCl3)δ=4.66(2H,s)、5.29(2H,s)、7.25〜7.39(7H,m)、7.99(2H,dd,J=1.7Hz,6.5Hz)。13C−NMR(63MHz,CDCl3)δ=67.11、77.59、128.32、128.57、128.66、129.02、129.19、130.32、136.48、143.47、166.64。MS(MALDI−TOF)m/z=258(MH+)。
【0160】
ガラクトース標準の調製により例示されるTMR標識単糖標準の調製のための一般手順。
18:ガラクトースとベンジル−(4−アミノオキシメチル)−ベンゾエートとの間のオキシム形成
ガラクトース(90mg、0.50mmol)をDMSOおよびAcOHの混合物(7:3、3mL)に溶かし、17(128mg、0.50mmol)を加えた。得られた混合物を55℃で3時間加熱し、水(30mL)に注ぎ、氷浴上で冷却することによって、生成物を純白色結晶として結晶化させた。その生成物を濾過により分離し、水(2×10mL)で洗浄し、真空下で乾燥させ、単一のアノマーとして生成物170mg(83%)を得た。1H−NMR(250MHz,DMSO−d6)δ=3.38〜3.55(4H,m)、3.67〜3.75(1H,m)、4.27〜4.33(1H,m)、5.12(2H,s)、5.37(2H,s)、7.36〜7.52(7H,m)、7.56(1H,d,J=7.6Hz)、8.00(2H,d,J=8.1Hz)。13C−NMR(63MHz,DMSO−d6)δ=63.40、66.52、68.37、69.21、70.04、72.63、74.27、128.25、128.33、128.49、128.91、129.13、129.67、136.52、144.22、154.00、165.78。MS(MALDI−TOF)m/z=442(MNa+)。
【0161】
19:BH3−ピリジンを用いた「ガラクトース−オキシム」(18)の還元
前の実験で得られたオキシム(18、150mg、0.36mmol)をメタノール(10mL)に溶解させた。BH3−ピリジン(225μL、8Mピリジン溶液、1.80mmol、Fluka)およびCCl3CO2H(0.50mL、50%水溶液)を加え、得られた混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物をNa2CO3の半飽和溶液(20mL)に慎重に注ぎ、エーテルおよびヘキサンの1:1混合物(2×10ml)で抽出し、過剰のボラン試薬を除去した。それから(濃)HClを慎重に加えることによりpHを2〜3に調整し、ロータリーエバポレーターで体積を本来の半分に減らした。蒸発中に生成物を綺麗な白色結晶状固体として分離し、それを濾過し、水(2×10mL)およびエーテル(2×10mL)で洗浄し、最終的に生成物を真空下で乾燥させ、純粋な生成物112mg(75%)を得た。1H−NMR(250MHz,DMSO−d6)δ=3.31〜3.33(2H,m)、3.40〜3.55(5H,m)、3.74(1H,t,J=6.3Hz)、5.24(2H,s)、5.37(2H,s)、7.36〜7.50(5H,m)、7.60(2H,d,J=8.2Hz)、8.04(2H,d,J=8.2Hz)。13C−NMR(63MHz,DMSO−d6)δ=53.34、63.40、64.73、66.68、69.37、70.19、70.89、74.20、128.36、128.53、128.92、129.47、129.87、130.27、136.41、139.73、165.62。MS(MALDI−TOF)m/z=422(MH+)。
【0162】
20:TRITCを用いた還元生成物(19)の標識
前の実験で調製した少量の生成物(19、4.2mg、10μmol)をDMF(1mL)に溶かし、TRITC(4.4mg、10μmol)を添加した。1時間撹拌後に、水(10mL)を添加し、(濃)HClの添加により沈殿生成物を再溶解させ、得られた透明赤色溶液を小さいC−18 Sep−Pakカラムに適用して生成物を結合させた。そのカラムに水を数回フラッシュし(合計体積30mL)、続いてメタノール(5mL)で生成物を放出させた。体積を約0.5mLに減らし、CH2Cl2、メタノール、水、AcOH(70:20:9:1)の混合物を用いて、シリカゲルのフラッシュカラムクロマトグラフィーによりその物質を精製した。その化合物の同一性をMSにより確認し、次の実験に直接使用した。MS(MALDI−TOF)m/z=865(MH+)。
【0163】
21:最終標準を得るためのエステル保護基の加水分解
前の実験で得られた全ての物質(20)を1M LiOH(1mL)に溶解させ、30分間撹拌し、続いて水(10mL)を添加し、(濃)HClで酸性化して透明な赤色溶液を得た。水(合計体積30mL)で繰り返し洗浄することによって小型C−18 Sep−Pakカラムで生成物を脱塩し、続いてメタノール(5mL)を用いて生成物を放出させた。体積を約0.5mLに減らし、クロロホルム、メタノール、水の混合物(120:85:20)を用いたシリカゲルのフラッシュカラムクロマトグラフィーによりその生成物を精製した。高分解能MSにより化合物の同一性を確認し、その純度をCEを使用して分析した。HRMS(ES)計算値(C39H43N4O11S):775.2649、実測値:775.2700。
【0164】
ガラクトースについて記載したものと同じプロトコールを使用して、残りの単糖(グルコース、マンノース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、キシロース、フコース、およびグルクロン酸)の標準を同様の収量および純度で調製した。高分解能質量分析により化合物の同一性を同様に確認した(下の表参照)。各化合物はCEで単一ピークを与え、8つの化合物全て(21〜28)をCEで分割することができた(図10)。
【0165】
【表1】
【0166】
3.Bの実施例:固体支持体の調製および命名
PEGA樹脂(PEGA1900、Versamatrix A/S)および調整多孔性ガラス(CPG)の両方を使用して一般構造B(図1)の固体支持体を調製した。BPはリンカーがスペーサーなしに市販の樹脂上のアミノ基に直接結合しているPEGA樹脂を示す。B0、B1、およびB2はリンカーがアミノプロピル化ガラス(AMP−CPG、CPG−Biotech)にそれぞれ0、1、および2個のスペーサーを経由して結合したCPGを示す。4つの固体支持体の構造を図6に示す。
【0167】
3.1 BP(一般構造BのPEGA樹脂)
メタノール中で膨潤した市販のPEGA1900樹脂(アミノ基の負荷:0.23mmol/g)1gをDMFで繰り返し洗浄し、メタノールが完全の除去されたことを確認した。リンカー(14)(308mg、0.69mmol)、TBTU(207mg、644mmol)、およびDIPEA(119mg、0.92mmol)をDMF(10mL)中で混合し、放置して5分間予備活性化させてからその混合物を樹脂に加えた。3時間後に試薬を吸引により除去し、樹脂をCH2Cl2(5×20mL)で洗浄した。
【0168】
樹脂のごく一部のを、Kaiser試験のために採取し、その試験により樹脂にリンカーがうまく結合したことを確認した。同様に、樹脂へのリンカーの負荷を実施例3.3に記載したように決定し、標準曲線と比較することにより約0.20mmol/gであることを見出した。それからDMF中の20%ピペリジンを用いて(15mLで2分間および15mLで18分間)処理することにより残りの樹脂からヒドロキシルアミン保護基(Fmoc)を除去し、続いてDMF(5×20mL)およびCH2Cl2(7×20mL)を用いて徹底的に洗浄した。その樹脂を高真空下で24時間乾燥させ、最終PEGA樹脂(BP)を得て、それをその後の実験全てに使用した。
【0169】
3.2 B0、B1、およびB2(調整多孔性ガラス、CPG)
B0:リンカー14とCPG−NH2との結合
AMP CPG(250mg、負荷=50.1μmol/g、0.0125mmol。Millipore、製品番号AMP1400B)をDMF(3×2mL)、50%DIPEA(3×2mL)、およびDMF(3×2mL)で洗浄した。DMF中の14(17mg、0.038mmol)、TBTU(12mg、0.037mmol)、およびDMF中のDIPEA(8.6μL、0.05mmol)の混合物でビーズを室温で一晩処理した。ビーズをDMF(3×2mL)およびCH2Cl2(3×2mL)で洗浄し、ピリジン中の50%Ac2Oで室温で15分間処理し、CH2Cl2(3×2mL)、DMF(3×2mL)、およびCH2Cl2(3×2mL)で洗浄し、乾燥した。B1について記載したように負荷を14.2μmol/gと決定した。DMF中の20%ピペリジンを使用して2×10分間室温でFmoc基を除去し、DMF(3×2mL)、CH2Cl2(3×2mL)、エタノール(3×2mL)、およびCH2Cl2(3×2mL)で洗浄した。その樹脂を真空中で乾燥させた。
【0170】
B1:1つのスペーサー15およびリンカー14とCPG−NH2との結合
AMP CPG(2.26g、負荷=50.1μmol/g、0.11mmol.Millipore、製品番号AMP1400B)をDMF(3×2mL)、50%DIPEA(3×2mL)、およびDMF(3×2mL)で洗浄した。DMF中の15(168mg、0.34mmol)、TBTU(105mg、0.33mmol)、およびDMF中のDIPEA(78μL、0.45mmol)の混合物でビーズを室温で3時間処理した。樹脂をDMF(3×5mL)およびCH2Cl2(3×5mL)で洗浄し、ピリジン中の50%Ac2Oで室温で15分間処理した。ビーズをCH2Cl2(3×5mL)、DMF(3×5mL)、およびCH2Cl2(3×5mL)で洗浄し、CH2Cl2中の50%TFAと共に室温で2時間処理した。CH2Cl2(3×5mL)、DMF(3×5mL)、およびCH2Cl2(3×5mL)で洗浄した。ビーズの1/3(2.5mL、約0.70g、約35μmol)をDMF(3×5mL)で洗浄した。14(47mg、0.11mmol)、TBTU(33mg、0.10mmol)、およびDMF中のDIPEA(34μL、0.20mmol)で室温で一晩処理した。ビーズをDMF(3×5mL)およびCH2Cl2(3×5mL)で洗浄し、ピリジン中の50%Ac2Oで室温で15分間処理し、CH2Cl2(3×5mL)、DMF(3×5mL)、およびCH2Cl2(3×5mL)で洗浄し、乾燥した。負荷を決定し(29μmol/g)、ビーズをDMF中の20%ピペリジンで室温で2×10分間処理した。ビーズをDMF(3×2mL)、CH2Cl2(3×2mL)、エタノール(3×2mL)、およびCH2Cl2(3×2mL)で洗浄し、乾燥させた。
【0171】
B2:2つのスペーサー15およびリンカー14とCPG−NH2との結合
B1からのスペーサー1つを有する樹脂(5.5mL、約1.54g、約77μmol)の2/3をDMF(3×5mL)で洗浄した。DMF中の15(114mg、0.23mmol)、TBTU(72mg、0.22mmol)、およびDIPEA(53μL、0.31mmol)の混合物でビーズを室温で一晩処理した。ビーズをDMF(3×5mL)およびCH2Cl2(3×5mL)で洗浄し、ピリジン中の50%Ac2Oで室温で15分間処理し、CH2Cl2(3×5mL)、DMF(3×5mL)、およびCH2Cl2(3×5mL)で洗浄し、CH2Cl2中の50%CF3CO2Hで室温で2時間処理し、CH2Cl2(3×5mL)、DMF(3×5mL)、およびCH2Cl2(3×5mL)で洗浄した。半量のビーズ(約42μmol)をDMF(3×5mL)で洗浄し、14(56mg、0.13mmol)、TBTU(39mg、0.12mmol)、およびDIPEA(29μL、0.17mmol)で室温で一晩処理した。ビーズをDMF(3×5mL)およびCH2Cl2(3×5mL)で洗浄し、ピリジン中の50%Ac2Oで室温で15分間処理し、CH2Cl2(3×5mL)、DMF(3×5mL)、およびCH2Cl2(3×5mL)で洗浄し、乾燥させた。B1について記載したように負荷を36μmol/gと決定した。DMF中の20%ピペリジンを用いて樹脂を室温で2×10分間被覆し、DMF(3×5mL)、CH2Cl2(3×5mL)、エタノール(3×5mL)、および3×CH2Cl2(3×5mL)で洗浄し、真空中で乾燥させた。
【0172】
3.3 一般構造B(図1)の固体支持体上の捕捉基の負荷を推定する実施例
DMF中の20%ピペリジンに入れた7つの濃度のFmoc−Gly−OH(0.0mM、0.1mM、0.25mM、0.5mM、1.0mM、1.5mM、2.0mM)を調製した。ナノドロップ技術(Saveen Werner Nanodrop、モデル:ND−1000、製造番号0911)を使用して放出されたフルベンのUV吸光度を290nmで測定した。吸光度を濃度に対してプロットして、傾き0.581mM-1の直線を得た。
【0173】
Fmocで保護されたB1ビーズ(4.8mg)をDMF(200μL)中の20%ピペリジンで10分間処理した。290nmのUV吸光度を0.410と測定し、遊離したフルベン濃度を計算した。
[フルベン]=absobs(吸光度(観察値))/slopestd curve(傾き(標準曲線)
[フルベン]=0.410/0.581mM-1=0.706mM
次に、次式を使用して負荷を計算した。
負荷=[フルベン]×V(溶媒)/m(ビーズ)
B1の負荷:
負荷=0.706mmol/L×200μL/4.8mg=29.4μmol/g。
【0174】
4.A+B→CおよびCの処理の実施例
4.1 還元糖としてグルコースおよび固体支持体としてB2を使用した捕捉条件の変動
一般構造Bの固体支持体に還元糖を捕捉してCを生成させるための好ましい条件を見出すために、様々な溶媒、温度、および添加物を検討した。溶液中の未捕捉のGlcの量は、Molecular ProbesからのAmplex Redアッセイを使用して高感度で容易に推定できると思われることから、D−Glcをモデル化合物として使用した。捕捉されたGlcの量は、このように添加された量からインキュベーション後に溶液中に残存している量を引いたものであると計算された。
【0175】
ビーズ(B2)15〜20mgを異なる条件でグルコース溶液と共に処理した。反応完了時の後に上清を除去し、未反応のグルコースの量をAmplex Redグルコース/グルコースオキシダーゼアッセイキット(A−22189、Molecular Probes)を使用して推定した。
異なる溶媒、濃度、温度、および反応時間を使用したグルコースの捕捉
【0176】
【表2】
【0177】
4.2 BP上の代表的な還元糖の捕捉、処理、および分析
一般構造C、Cred、D、E、F、G、H、I、およびJ(図1)の化合物を記載するために以下の名称を下に使用した。論じている特定の構造を説明している特定の文字、例えばCまたはEを最初に示す。次の上付きの数字は、図6に示した4つの固体支持体のどれが使用されたかを表す。したがって、一例としてBP(図6)が糖を捕捉するために使用されるならば、その生成物は一般構造Cを有し、CはさらにCPと呼ばれるであろう。次の数字は図2に示した還元糖の10試料のうちのどれが捕捉されたかを表す。したがって、CP2はガラクトース(図2の化合物2)を捕捉したPEGA樹脂BPの生成物を表す。同様に、D25は固体支持体B2が四糖LNT(5、図2)を捕捉してC25が得られ、次にさらにキャップされD25になったときに得られた生成物を表すであろう。
【0178】
4.2.1 還元糖3の捕捉および処理
CP3:BP上でのLacNAc(3)の捕捉
最初にLacNAc(3)(38mg、0.10mmol)を水(1.0mL)に溶かし、次にDMSOおよびAcOH(7:3、9mL)の混合物で試料を10倍に希釈し、LacNAc(3)の10mM原液を得ることによって、原液(ストック用溶液)を作製した。次に、この原液から40μL(0.40μmol)を採取し、DMSOおよびAcOH(7:3、150μL)の混合物でさらに希釈し、その全体をBP(10mg、2μmol)に加え、放置して60℃で一晩インキュベートした。この樹脂を、数回DMF(5×0.5mL)およびメタノール(5×0.5mL)で洗浄し、次の実験に直接使用した。
【0179】
DP3:無水酢酸を用いたCP3のキャッピング
実験CP3で得られた全ての樹脂を、Ac2Oおよびメタノールの1:1混合物(0.4mL)で1時間処理し、続いてDMF(5×0.5mL)、水(2×0.5mL)、およびメタノール(5×0.5mL)で洗浄し、次の実験に直接使用した。
【0180】
EP3:BH3−ピリジンを用いたDP3の還元
実験DP3で得られた樹脂をメタノール(0.1mL)で被覆し、BH3−ピリジン(20μL、8Mピリジン溶液)を加え、続いて水(40μL)中の50%CCl3CO2H酸を加えた。反応を室温で2時間進行させ、続いてDMF(5×0.5mL)、メタノール(5×0.5mL)、およびCH2Cl2(5×0.5mL)で洗浄した。この樹脂を次のステップに直接使用した。
【0181】
FP3:TRITCを用いたEP3のタグ付け
TRITC(0.89mg、2μmol)をDMF(0.2mL)に溶かし、得られた溶液を樹脂(EP3)に加え、室温で2時間放置し、続いてDMF(5×0.5mL)、CH2Cl2(5×0.5mL)、メタノール(5×0.5mL)、および最後に水(5×0.5mL)で徹底的に洗浄し、過剰の色素を除去した。この樹脂を次のステップに直接使用した。
【0182】
GP3:支持体からのTMRタグ付けLacNAcの切断
前の実験で得られた樹脂FP3を、LiOHの1M溶液(0.2mL)で被覆し、2時間放置した。吸引によって液体をビーズから収集し、続いて水(3×0.5mL)でビーズを洗浄した。収集した液体および洗浄液をプールし、10%AcOHでpHを中性に調整した。暗赤色溶液をSep−Pakカラム(50mg)に吸着させ、水(2mL)で洗浄し、メタノール(0.5mL)で溶出させた。生成物の同一性をMS(ES)m/z=978(MH+)により確認し、そのプロファイルをCEにより記録した(図11)。
【0183】
4.2.2 還元糖5の捕捉および処理
CP5:BP上へのラクト−N−テトラオース(5)の捕捉
DMSOおよびAcOHの7:3の混合物(3mL)中に5(5.0mg、7.1μmol)を溶かすことにより溶液を作製した。この混合物をPEGA樹脂BP(175mg、35μmol)に加え、60℃で一晩インキュベートした。この樹脂をDMF(5×5mL)およびメタノール(5×5mL)で数回洗浄し、次の実験に直接使用した。
【0184】
DP5:無水酢酸を用いたCP5のキャッピング
実験CP5で得られた全ての樹脂をAc2Oおよびメタノールの1:1混合物(5mL)で1時間処理し、続いてDMF(5×5mL)、水(2×5mL)、およびメタノール(5×5mL)で洗浄し、次の実験に直接使用した。
【0185】
EP5:BH3−ピリジンを用いたDP5の還元
実験DP5で得られた樹脂をメタノール(2mL)中で膨潤させ、BH3−ピリジン(200μL、8Mピリジン溶液)を加え、続いて水(400μL)中の50%CCl3CO2H酸を加えた。反応を室温で2時間進行させ、続いてDMF(5×5mL)、メタノール(5×5mL)、およびCH2Cl2(5×5mL)で洗浄した。最後に樹脂を真空下で一晩乾燥させ、さらに使用するために室温で保存した。
【0186】
FP5:MS−タグを有する臭素を用いたEP5のタグ付け
樹脂を膨潤させるために少量の乾燥樹脂EP5(10mg、0.4μmol)をCH2Cl2(3×0.5mL)で洗浄した。4−ブロモフェニルイソチオシアネート(0.85mg、4μmol)をDMF(0.2mL)に溶解させることによって溶液を作製し、得られた混合物をその樹脂に加え、室温で2時間反応させ、続いてその樹脂をDMF(5×0.5mL)、CH2Cl2(5×0.5mL)、メタノール(5×0.5mL)、および最後に水(5×0.5mL)で洗浄した。この樹脂を次のステップに直接使用した。
【0187】
GP5:支持体からの臭素タグ付きラクト−N−テトラオースの切断
前の実験で得られた樹脂FP5をLiOHの1M溶液(0.2mL)で被覆し、2時間放置した。吸引により液体をビーズから収集し、続いてそのビーズを水(3×0.5mL)で洗浄した。収集した液体および洗浄液をプールし、10%AcOHでpHを弱酸性(pH3〜4)に調整した。この所望の生成物を含有する溶液をSep−Pakカラム(50mg)に吸着させ、水(2mL)で洗浄し、メタノール(0.5mL)で溶出させた。生成物の同一性をMS(ES)m/z=1072(98%、MH+)、1074(100%、MH+)、m/z=1070(98%、M−H+)、1072(100%、M−H+)により確認した。図12は、臭素の2つの同位体をはっきりと識別することができる挿入拡大図有する質量スペクトルを示すものである。
【0188】
4.2.3 還元糖混合物6の捕捉および処理
CP6:BP上での単糖混合物6(Fuc:Man:GalNAc、2:3:1)の捕捉
3つの個別の単糖(Fuc:16mg、0.10mmol、Man:18mg、0.10mol、GalNAc:22mg、0.10mmol)を水(3×1.0mL)に溶かし、次にその試料をDMSOおよびAcOHの混合物(7:3、3×9mL)で10倍に希釈し、3つの単糖の10mM原液を得ることにより、一連の3つの原液を作製した。それから、この3つの原液から以下の量を採取することにより混合物を調製したFuc(20μL、0.2μmol)、Man(30μL、0.3μmol)、およびGalNAc(10μL、0.1μmol)。DMSOおよびAcOHの混合物(7:3、150μL)を加えることにより、この単糖溶液をさらに希釈し、その全体をPEGA樹脂BP(10mg、2μmol)に加え、60℃で一晩インキュベートさせた。この樹脂を数回DMF(5×0.5mL)およびメタノール(5×0.5mL)で洗浄し、次の実験に直接使用した。
【0189】
DP6:無水酢酸を用いたCP6のキャッピング
実験CP6で得られた全ての樹脂を、Ac2Oおよびメタノールの1:1混合物(0.4mL)で1時間処理し、続いてDMF(5×0.5mL)、水(2×0.5mL)、およびメタノール(5×0.5mL)で洗浄し、次の実験に直接使用した。
【0190】
EP6:BH3−ピリジンを用いたDP6の還元
実験DP6で得られた樹脂をメタノール(0.1mL)で被覆し、BH3−ピリジン(20μL、8Mピリジン溶液)を加え、続いて水(40μL)中の50%CCl3CO2Hを加えた。反応を室温で2時間進行させ、続いてDMF(5×0.5mL)、メタノール(5×0.5mL)、およびCH2Cl2(5×0.5mL)で洗浄した。この樹脂を2つの別々の容器(EP6aおよびEP6b、それぞれ約5mg)に分け、次のステップに直接使用した。
【0191】
FP6a:TRITCを用いたEP6aのタグ付け
TRITC(0.5mg、1.2μmol)をDMF(0.2mL)に溶解させ、得られた溶液を樹脂(EP6a)に加え、室温で2時間放置し、続いてDMF(5×0.5mL)、CH2Cl2(5×0.5mL)、メタノール(5×0.5mL)、および最後に水(5×0.5mL)で徹底的に洗浄し、過剰の色素を除去した。この樹脂を次のステップに直接使用した。
【0192】
GP6a:支持体からのTMRタグ付き単糖単糖混合物の切断
前の実験(FP6a)で得られた樹脂をLiOHの1M溶液(0.1mL)で被覆し、2時間放置した。吸引によりビーズから液体を収集し、続いてビーズを水(3×0.5mL)で洗浄した。収集した液体および洗浄液をプールし、10%AcOHでpHを中性に調整した。暗赤色溶液をSep−Pakカラム(50mg)に吸着させ、水(2mL)で洗浄し、メタノール(0.5mL)で溶出させた。3つのタグ付き生成物の同一性をMS(ES)m/z=759(Fuc、MH+)、775(Man、MH+)、816(GalNAc、MH+)により確認し、それらのプロファイルをCEにより記録した(図13)。
【0193】
FP6b:無水酢酸を用いたEP6bのタグ付け
Ac2Oおよびメタノールの1:1混合物(0.2mL)を樹脂(EP6b)に加え、室温で16時間放置し、続いてDMF(5×0.5mL)、CH2Cl2(5×0.5mL)、メタノール(5×0.5mL)、および最後に水(5×0.5mL)で徹底的に洗浄した。この樹脂を次のステップに直接使用した。
【0194】
GP6b:支持体からの酢酸タグ付き単糖混合物の切断
前の実験(FP6b)で得られた樹脂をNH4OHの10%溶液(0.1mL)で被覆し、2時間放置した。吸引によりビーズから液体を収集し、続いてそのビーズを水(3×0.5mL)で洗浄した。収集した液体および洗浄液をプールし、ロータリーエバポレーターで蒸発乾固させ、水(1mL)に再溶解させ、凍結乾燥した。3つのタグ付き生成物の同一性をMS(ES)m/z=356(Fuc、M−H+)、372(Man、M−H+)、413(GalNAc、M−H+)により確認した。3つのシグナルの強度比は約1.3:2:1であった。
【0195】
4.2.4 還元糖混合物7の捕捉および処理
CP7:BP上への単糖混合物7(Fuc:Man:GalNAc、1:3:2)の捕捉
実験CP6で使用したものと同じ3つの単糖原液(各10mM)を以下の実験に使用した。3つの原液から以下の量を採取することによって混合物を調製した:Fuc(10μL、0.1μmol)、Man(30μL、0.3μmol)、およびGalNAc(20μL、0.2μmol)。DMSOおよびAcOHの混合物(7:3、150μL)の添加によってこの単糖溶液をさらに希釈し、その全体をPEGA樹脂であるBP(10mg、2μmol)に加え、60℃で一晩インキュベートさせた。この樹脂を数回DMF(5×0.5mL)およびメタノール(5×0.5mL)で洗浄し、次の実験に直接使用した。
DP7:無水酢酸を用いたCP7のキャッピング
実験CP7で得られた全ての樹脂をAc2Oおよびメタノールの1:1混合物(0.4mL)で1時間処理し、続いてDMF(5×0.5mL)、水(2×0.5mL)、およびメタノール(5×0.5mL)で洗浄し、次の実験に直接使用した。
【0196】
EP7:BH3−ピリジンを用いたDP7の還元
実験DP7で得られた樹脂をメタノール(0.1mL)で被覆し、BH3−ピリジン(20μL、8Mピリジン溶液)を加え、続いて水(40μL)中の50%CCl3CO2Hを加えた。反応を室温で2時間進行させ、続いてDMF(5×0.5mL)、メタノール(5×0.5mL)、およびCH2Cl2(5×0.5mL)で洗浄した。樹脂を2つの別々の容器に分け(EP7aおよびEP7b、それぞれ約5mg)、次のステップに直接使用した。
【0197】
FP7a:TRITCを用いたEP7aのタグ付け
TRITC(0.5mg、1.2μmol)をDMF(0.2mL)に溶かし、得られた溶液を樹脂(EP7a)に加え、室温で2時間放置し、続いてDMF(5×0.5mL)、CH2Cl2(5×0.5mL)、メタノール(5×0.5mL)、および最後に水(5×0.5mL)で徹底的に洗浄し、過剰の色素を除いた。この樹脂を次のステップに直接使用した。
【0198】
GP7a:支持体からのTMRタグ付け単糖混合物の切断
前の実験で得られた樹脂(FP7a)をLiOHの1M溶液(0.1mL)で被覆し、2時間放置した。吸引によりビーズから液体を収集し、続いてビーズを水(3×0.5mL)で洗浄した。収集した液体および洗浄液をプールし、10%AcOHでpHを中性に調整した。暗赤色溶液をSep−Pakカラム(50mg)に吸着させ、水(2mL)で洗浄し、メタノール(0.5mL)で溶出させた。3つのタグ付き生成物の同一性をMS(ES)m/z=759(Fuc、MH+)、775(Man、MH+)、816(GaINAc、MH+)により確認し、それらのプロファイルをCEにより記録した(図14)。
【0199】
FP7b:重水素化無水酢酸を用いたEP7bのタグ付け
重水素化無水酢酸およびメタノール(0.2mL)の1:1混合物を樹脂(EP7b)に加え、室温で16時間放置し、続いてDMF(5×0.5mL)、CH2Cl2(5×0.5mL)、メタノール(5×0.5mL)、および最後に水(5×0.5mL)で徹底的に洗浄した。この樹脂を次のステップに直接使用した。
【0200】
GP7b:支持体からの重水素タグ付け単糖混合物の切断
前の実験(FP7b)で得られた樹脂をNH4OHの10%溶液(0.1mL)で被覆し、2時間放置した。吸引によりビーズから液体を収集し、続いてそのビーズを水(3×0.5mL)で洗浄した。収集した液体および洗浄液をプールし、ロータリーエバポレーターで蒸発乾固し、水(1mL)に再溶解させ、凍結乾燥した。3つの重水素タグ付き生成物の同一性をMS(ES)m/z=359(Fuc、M−H+)、375(Man、M−H+)、416(GalNAc、M−H+)により確認した。3つのシグナルの強度比は約1:4:4であった。
【0201】
4.2.5 還元オリゴ糖混合物9の捕捉および処理
CP9:BP上へのオリゴ糖混合物9(G2〜G7)の捕捉
水(1mL)に等モル量(各10μmol)の純粋なオリゴ糖G2〜G7を溶解することによって溶液を作製した。オリゴ糖含有溶液100μLをDMSOおよびAcOHの混合物(7:3、0.9mL)に加え、その全体をPEGA樹脂であるBP(60mg、12μmol)に加え、放置して50℃で一晩インキュベートした。この樹脂を数回DMF(5×2mL)およびメタノール(5×2mL)で洗浄し、次の実験に直接使用した。
【0202】
DP9:無水酢酸を用いたCP9のキャッピング
実験CP9で得られた全ての樹脂をAc2Oおよびメタノールの1:1混合物(2mL)で1時間処理し、続いてDMF(5×2mL)、水(2×2mL)、およびメタノール(5×2mL)で洗浄し、次の実験に直接使用した。
【0203】
EP9:BH3−ピリジンを用いたDP9の還元
実験DP9で得られた樹脂をメタノール(1mL)で被覆し、BH3−ピリジン(150μL、8Mピリジン溶液)を加え、続いて水(300μL)中の50%CCl3CO2Hを加えた。反応を室温で2時間進行させ、続いてDMF(5×2mL)、メタノール(5×2mL)、およびCH2Cl2(5×2mL)で洗浄した。樹脂を次のステップに直接使用した。
【0204】
FP9:FITCを用いたEP9のタグ付け
FITC(12mg、30μmol)をDMFおよびメタノールの1:1混合物(1mL)に溶かし、この溶液を樹脂(EP9)に加え、室温で2時間放置し、続いてDMF(5×2mL)、CH2Cl2(5×2mL)、メタノール(5×2mL)、および最後に水(5×2mL)で徹底的に洗浄し、過剰の色素を除去した。この樹脂を次のステップに直接使用した。
【0205】
GP9:FITCを使用してタグ付けしたオリゴ糖混合物の支持体からの切断
前の実験(FP9)で得られた樹脂をLiOHの1M溶液(1mL)で被覆し、2時間放置した。吸引により液体をビーズから収集し、続いてこのビーズを水(3×3mL)で洗浄した。収集した液体および洗浄液をプールし、pHを10%AcOHで中性に調整した。得られた強烈な黄色溶液をSep−Pakカラム(350mg)に吸着させ、水(10mL)で洗浄し、メタノール(3mL)で溶出した。6つのタグ付きオリゴ糖の存在をMS(ES)m/z=881(G2、MH+)、1043(G3、MH+)、1205(G4、MH+)、1367(G5、MH+)、1529(G6、MH+)、1691(G7、MH+)により確認し、この混合物のプロファイルをCEにより記録した(図15)。
【0206】
4.2.6 リボヌクレアーゼBから放出されたオリゴ糖の捕捉および処理
CP10:RNアーゼB(10)からのオリゴ糖のBP上への捕捉および処理
RNアーゼB(Sigma、R−7884)のPNGアーゼF消化からの粗オリゴ糖を、Centricon−10濃縮器(Millipore)でタンパク質を除去し、続いてCarbograph SPEカラム(150mgベッド重量;Scantec Lab)で糖質を精製した後で、使用した。0.9Mクエン酸含有DMSOおよびTHFの2:1混合物(100μL)にRNアーゼB(10)2由来の粗オリゴ糖(300μg、約0.2μmol)を溶かすことにより溶液を作製した。この混合物をPEGA樹脂であるBP(5mg、1.0μmol)に加え、60℃で一晩インキュベートした。この樹脂を数回DMF(5×0.3mL)およびメタノール(5×0.3mL)で洗浄し、次の実験に直接使用した。
【0207】
DP10:無水酢酸を用いたCP10のキャッピング
実験CP10で得られた全ての樹脂をAc2Oおよびメタノールの1:1混合物(0.2mL)で1時間処理し、続いてDMF(5×0.3mL)、水(2×0.3mL)、およびメタノール(5×0.3mL)で洗浄し、次の実験に直接使用した。
【0208】
EP10:BH3−ピリジンを用いたDP10の還元
実験DP10で得られた樹脂をメタノール(0.2mL)で被覆し、BH3−ピリジン(10μL、8Mピリジン溶液)を加え、続いて水(20μL)中の50%CCl3CO2Hを加えた。反応を室温で2時間進行させ、続いてDMF(5×0.3mL)、メタノール(5×0.3mL)、およびCH2Cl2(5×0.3mL)で洗浄した。この樹脂を次のステップに直接使用した。
【0209】
FP10:FITCを使用したEP10のタグ付け
FITC(1.9mg、5μmol)をDMFおよびメタノールの混合物(1:1、0.2mL)に溶かし、この溶液を樹脂(EP10)に加え、60゜で2時間放置し、続いてDMF(5×0.3mL)、CH2Cl2(5×0.3mL)、メタノール(5×0.3mL)、および最後に水(5×0.3mL)で徹底的に洗浄し、過剰の色素を除去した。この樹脂を次のステップに直接使用した。
GP10:FITCを使用してタグ付けしたRNアーゼ由来オリゴ糖の支持体からの切断
前の実験(FP10)で得られた樹脂をLiOHの1M溶液(0.2mL)で被覆し、2時間放置した。吸引によりビーズから液体を収集し、続いてビーズを水(3×0.5mL)で洗浄した。収集した液体および洗浄液をプールし、pHを10%AcOHで中性に調整した。この所望の生成物を含有する、黄色溶液をSep−Pakカラム(50mg)に吸着させ、水(2mL)で洗浄し、メタノール(0.5mL)で溶出させた。標識オリゴ糖のプロファイルをCEにより分析した。CE(図16)は、数個のオリゴ糖およびいくつかの未同定混入物の存在を示している。少なくとも1つの公知の構成要素の同一性をMS(ES)m/z=1775(Man5GlcNAcGlcNAcCH2−N−(R)−タグ、MH+)により確認した。
【0210】
4.3 代表的還元糖のCPG支持体上への捕捉および処理
4.3.1 B1上への2の捕捉および処理
C12:B1上へのガラクトース(2)の捕捉
クエン酸−リン酸緩衝液(113μL)中でB1(20mg、0.6μmol)を2(6.6μL、1mg/mL水、0.03μmol)で処理し、55℃で一晩放置した。ビーズをシリンジに移し、水(3×0.5mL)およびエタノール(3×0.5mL)で洗浄し、C12を得た。
D12:無水酢酸を用いたC12のキャッピング
C12(0.6μmol)をエタノール中の50%Ac2Oで室温で15分間キャップし、エタノール(3×0.5mL)で洗浄し、D12を得た。
【0211】
E12:BH3−ピリジンを用いたD12の還元
BH3−ピリジン(25μL)および50%CCl3CO2H(50μL)のエタノール溶液(500μL)の100μLでD12(0.6μmol)を処理した。この混合物を室温で2時間放置した。このビーズをエタノール(3×0.5mL)で洗浄し、E12を得た。
F12:TRITCを用いたE12の標識
E12(0.6μmol)をTRITC(NMP 300μLおよびCH2Cl2 300μLに1.0mgを加えたもの100μL)で処理し、室温で2時間放置した。ビーズをCH2Cl2(3×0.5mL)、エタノール(3×0.5mL)、および水(3×0.5mL)で洗浄し、F12(赤色ビーズ)を得た。
G12:F12の塩基処理
F12’(0.6μmol)をLiOHの1M溶液(100μL)で室温で1時間処理し、得られた赤色溶液を単離し、水中の50%AcOHで中和し、G12(赤色溶液)を得て、この溶液にSep−Pakカラム(水中の30%CH3CN)を通過させ、MS(775.3、MH+)およびCEにより分析した(図17)。
【0212】
4.3.2 B1上への5の捕捉および処理
C15:B1上へのLNT(5)の捕捉
B1(20mg、0.6μmol)をクエン酸−リン酸緩衝液(113μL)中の5(25L、2mg/mL水、0.03μmol)で処理し、55℃で一晩放置した。ビーズをシリンジに移し、水(3×0.5mL)およびエタノール(3×0.5mL)で洗浄し、C15を得た。
D15:無水酢酸を用いたC15のキャッピング
C15(0.6μmol)をエタノール中の50%Ac2Oで室温で15分間処理し、(3×0.5mL)で洗浄し、D15を得た。
E15:BH3−ピリジンを用いたD15の還元
D15(0.6μmol)を、BH3−ピリジン(25μL)および50%CCl3CO2H(50μL)のエタノール溶液(500μL)の100μLで処理した。得られた混合物を室温で2時間放置した。このビーズをエタノール(3×0.5mL)で洗浄し、E15を得た。
F15:TRITCを用いたE15の標識
E15(0.6μmol)をTRITC(NMP 300μLおよびCH2Cl2 300μLに1.0mgを加えたもの100μL)で処理し、室温で2時間放置した。このビーズをCH2Cl2(3×0.5mL)、エタノール(3×0.5mL)、および水(3×0.5mL)で洗浄し、F15(赤色ビーズ)を得た。
【0213】
G15:F15の塩基処理
この樹脂をLiOHの1M溶液(100μL)で室温で1時間処理し、得られた赤色溶液を濾過により分離し、ビーズを水(3×75μL)で洗浄し、水中の50%AcOHで中和し、G15(赤色溶液)を得て、これにSep−Pakカラム(水中の30%CH3CN)を通過させ、MS(ES)m/z=1300.6(M−H+)、1302.4(MH+)およびCEにより分析した(図18)。
【0214】
あるいは、E15を1−フルオロ−2,4−ジニトロベンゼン(サンガー試薬、図8)で以下のように標識することができた。樹脂をエタノール(70μL)中のサンガー試薬(20当量、0.4μL、Sigma)およびTEA(10当量、0.2μL)で55℃で2時間処理した。このビーズをエタノール(3×0.5mL)、CH2Cl2(3×0.5mL)、エタノール(3×0.5mL)、および水(3×0.5mL)(黄色ビーズ)で洗浄し、次にLiOHの1M溶液(70μL)で、室温で1時間処理した(褐色溶液)。得られた溶液を濾過により収集し、このビーズを水(3×50μL)で洗浄した。この混合物を50%AcOHで中和した(黄色溶液)。水中の30%CH3CNを用いてこの混合物にSep−Pakカラムを通過させた。MS(ES)m/z=1023.1(M−H+)。
【0215】
4.3.3 B1上への混合物8の捕捉および処理
C18:B1上へのガラクトース(2)およびLNT(5)の捕捉
B1(20mg、0.6μmol)を2(6.6μL、1mg/mL水、0.03μmol)、5(25μL、2mg/mL水、0.03μmol)、およびクエン酸−リン酸緩衝液(100μL)で処理し、55℃で一晩放置した。ビーズを水(3×0.5mL)およびエタノール(3×0.5mL)で洗浄し、C18を得た。
D18:無水酢酸を用いたC18のキャッピング
C18(0.6μmol)中に残ったヒドロキシルアミンをエタノール中の50%Ac2Oで室温で15分間キャップし、エタノール(3×0.5mL)で洗浄し、D18を得た。
【0216】
E18:BH3−ピリジンを用いたD18の還元
D18(0.6μmol)を、BH3−ピリジン(Fluka、25μL)および50%CCl3CO2H(50μL)のエタノール溶液(500μL)の100μLで処理した。得られた混合物を室温で2時間放置した。このビーズをエタノール(3×0.5mL)で洗浄し、E18を得た。
F18:TRITCを使用したE18の標識
E18(0.6μmol)をTRITC(NMP 300μLおよびCH2Cl2 300μLに1.0mgを加えたもの100μL)で処理し、室温で2時間放置し、F18を得た。ビーズをCH2Cl2(3×0.5mL)、エタノール(3×0.5mL)、および水(3×0.5mL)で洗浄した(赤色ビーズ)。
G18:F18の塩基処理
F18をLiOHの1M溶液(100μL)で室温で1時間処理し、この赤色溶液を分離し、水中の50%AcOHで中和し、G18(赤色溶液)を得て、これにSep−Pakカラム(水中の30%CH3CN)を通過させ、CEにより分析した(図19)。
【0217】
5.固定化オリゴ糖と酵素との反応
5.1 固定化タグ付きオリゴ糖とグリコシダーゼとの反応
5.1.1 スペーサー0個(F05)、1個(F15)、および2個(F25)を有するCPG支持体上での構造F(キャップ=アセチル、タグ=TMR)の固定化ラクト−N−テトラオース(LNT、5)とβ−ガラクトシダーゼ(ウシ精巣、SIGMA製品番号G−4142、1U/mL)との反応。3つの固定化オリゴ糖全てを本質的にF15について記載した(4.3.2項)ように調製した。
【0218】
固体支持体(5mg)をβ−ガラクトシダーゼ(0.2%BSAを含有する0.1Mクエン酸/リン酸緩衝液(pH5.0)中の濃度0.2U/mLの溶液100μL)と共に37℃で23時間インキュベートし、次にその樹脂を3×水、3×エタノール、3×CH2Cl2、3×EtエタノールOH、および3×水で洗浄した。このビーズをLiOHの1M溶液(60μL)で室温で1時間処理し、溶液中に一般構造G05、G15、およびG25の生成物を得た。各赤色溶液を濾過により収集した。濾液を50%AcOHで中和し、CEを使用して分析した。
【0219】
図20は、F05についてLNTから検出できるガラクトースの切断がなく、F15について39%の変換(すなわち四糖の39%が末端Gal残基を失い、三糖に変換された)およびF25について83%の変換があったことを示す。したがって、スペーサーの性質は酵素反応の過程に重要であることが見出された。
【0220】
5.1.2:2つのスペーサーを有するCPG支持体上での固定化マルトトリオースF24(キャップ=アセチル、タグ=TMR)と黒色麹菌由(アスペルヂルス ニガー)来グルコアミラーゼ2(親切にもBirte Svensson博士、Carlsberg Laboratoriesから供与を受けた)との反応。本質的にF15について記載した通り(4.3.2項)であるが、還元糖としてマルトトリオース(G3、図2)および固体支持体としてB2を使用してF24を調製した。F24(約5mg)を、0.2%BSAを含有する0.1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)中の濃度0.1mg/mLの酵素50μLと共に37℃で23時間インキュベートした。上記のように洗浄および切断後に、生成物をCEにより分析した(図21)。その生成物は、固定化標識マルトトリオースから標識マルトトリオースおよびグルコースの間に溶出する新しいピークへの完全な変換を示し、したがってマルトビオース(G2)TMR付加物と特定された。
【0221】
5.2 固定化タグなしオリゴ糖とグリコシダーゼとの反応および同支持体上に放出された還元単糖の捕捉
構造C25の固定化LNT(非還元、キャップなし、タグなし)とβ−ガラクトシダーゼ(ウシ精巣)との反応を、2つのスペーサーを有するCPG固体支持体上で実施した。本質的にC15について記載した通り(4.3.2項)にC25を調製した。使用前に、Microcon YM−3遠心濾過装置(Millipore)を使用して繰り返し遠心分離することにより酵素溶液から小分子混入物を除いた。C25(5mg)を、0.2%BSAを含有する0.1Mクエン酸/リン酸(pH5.0)中の濃度0.9Ug/mLの酵素55μLと共に37℃で23時間、次に55℃でさらに20時間インキュベートして、放出したガラクトースの捕捉を可能にした。この固体を洗浄し、還元し、無水酢酸でキャップし、TRITCを使用してタグ付けし、C15からG15への変換について上記のようにLiOHで切断した。切断生成物のCEを図22に示す。図22は未反応LNT(32%)ならびに同様の量のTMR−標識生成物である三糖および切断されたガラクトースの両方の存在を示している。この実験は、切断された糖の、それが切断された同じキャップなし支持体上への捕捉を確認するものである。
【0222】
6.キャップ剤の変更
6.1.Dを生成するためのCのキャッピング
キャップ剤の選択を使用してCからDへの変換を実施した(図1)。C22を基質として使用した(ここでその固体は2つのスペーサーを有するCPGであり、捕捉された糖はガラクトースであった)。次に、C上のアミノ基をとりわけ無水酢酸、安息香酸無水物、トリクロル酢酸無水物、およびジブロモキシレンでキャップした(図6)。50%のキャップ剤濃度のエタノール溶液を用いてキャッピングを室温で15〜120分間行った。次に、C12からG12への変換について記載したように(4.3.1項)試料を処理、すなわち還元、TRITCを使用した標識、塩基切断、およびCEによる分析を行った。結果を図23に示す。図23は、全ての条件が、電気泳動図で化合物21の前に出現する様々な量の他の不純物を有する標的TMR−標識ガラクトース(図5の化合物21)をもたらしたことを示すものである。
【0223】
6.2 Eを生成するためのCredキャッピングの実施例
上記6.1項からのC22を、上記D12からE12への変換について記載した通りに(4.3.1項)、BH3−ピリジンで還元した。生成物Cred22は、それがキャップなしNH2基を有する点でE12と異なる。Cred22(5mg)を、DMF(50μL)中の安息香酸NHS−エステル(0.4mg、1.75μmol)およびTEA(1.0μL)と60℃で一晩反応させた。次に、一般構造E22(ベンゾエートであるキャップを有する)を有する反応生成物を洗浄し、TRITCを使用してタグ付けすることにより通常通り処理し、切断し、CEにより分析した。図24はその生成物がC→D→E→Gの順序により形成されたものと実質的に同一であることを示すものである。生成物の同一性をそのMS(ES)m/z=775.0(MH+)により確認した。
【0224】
7.テザー使用の実施例:E→H→I→J(図1)
X−テザー−YPの実施例としての29の合成
29:4−イソチオシアナト−ベンジル)−カルバミド酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステル
4−アミノベンジルアミン(0.93mL、8.20mmol)の無水CH2Cl2溶液(20mL)に、TEA(1.15mL、8.27mmol)に続いてFmoc−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(2.48g、7.35mmol)の乾燥CH2Cl2(10mL)溶液を加えた。30分間撹拌後にCH2Cl2(100mL)を加え、得られた混合物を飽和水性NaHCO3(2×50mL)および食塩水(50mL)で連続的に洗浄し、乾燥した(Na2SO4)。溶媒を減圧下で除去し、残渣を乾燥カラム真空クロマトグラフィー(n−ヘプタン中の0〜60%EtOAc)により精製し、Fmoc保護された物質である(4−アミノ−ベンジル)−カルバミド酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステル(2.30g、91%)を得た。1H−NMR(250MHz,DMSO−d6)=4.03(2H,d,J=5,3Hz)、4.22(1H,t,J=6,8Hz)、4.33(2H,d,J=6,8Hz)、4.95(2H,s)、6.53(2H,d,J=8.3Hz)、6.92(2H,d,J=8.2Hz)、7.29〜7.44(4H,m)、7.64〜7.72(3H,m)、7.88(2H,d,J=7.3Hz)。13C−NMR(63MHz,DMSO−d6)δ=43.97、47.19、65.65、114.09、120.46、121.75、125.58、127.11、127.42、127.96、128.47、129.30、141.13、144.32、147.89、156.63。MS(ES)m/z=345(MH+)。
【0225】
(4−アミノ−ベンジル)−カルバミド酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステル(718mg、2.09mmol)のCH2Cl2溶液(30mL)を、チオホスゲン(199μL、2.61mmol)のCH2Cl2−水混合物溶液(40mL、1:1、v/v)に滴下した。この混合物を一晩撹拌した後に、有機層を分離し、乾燥させた(Na2SO4)。減圧下で溶媒を除去し、残渣を乾燥カラム吸引クロマトグラフィー(n−ヘプタン中の0〜100%CH2Cl2)により精製し、29(643mg、80%)を得た。1H−NMR(250MHz,DMSO−d6)δ=4.18〜4.25(3H,m)、4.38(2H,d,J=6.7Hz)、7.25〜7.45(8H,m)、7.69(2H,d,J=7.3Hz)、7.87〜7.90(3H,m)。13C−NMR(63MHz,DMSO−d6)δ=43.64、47.19、65.70、115.55、120.48、125.15、125.49、126.20、127.42、127.98、128.72、128.83、133.55、136.29、140.26、141.16、144.23、156.74。MS(ES)m/z=387(MH+)。
【0226】
HP5:29を使用したEP5へのFmoc保護されたアミノテザーの結合(図9)
乾燥樹脂(EP5)(0.2μmol)5mgをCH2Cl2で2回洗浄し、樹脂がほどよく膨潤していることを確認した。Fmoc保護されたテザー(29)(0.8mg、2μmol)をDMF(0.2mL)に溶かし、樹脂に加え、2時間反応させた。樹脂をDMF(5×0.5mL)およびCH2Cl2(5×0.5mL)で洗浄し、Fmoc保護基を標準条件(DMF中の20%ピペリジン、0.5ml、2×10分間)で除去した。DMF(5×0.5mL)で洗浄後に、その樹脂を次の実験に直接使用した。
【0227】
IP5:TRITCを使用したHP5のタグ付け
遊離第1アミノ基を有する実験HP5で得られた樹脂を、DMF(0.2mL)中のTRITC(0.9mg、2μmol)と共に室温で2時間インキュベートし、続いてDMF(5×0.5mL)、CH2Cl2(5×0.5mL)、メタノール(5×0.5mL)、および最後に水(5×0.5mL)で徹底的に洗浄し、過剰の色素を除いた。この樹脂を次のステップに直接使用した。
【0228】
JP5:TRITCを使用してアミノテザーを介してタグ付けされたラクト−N−テトラオースの切断
前の実験(IP5)で得られた樹脂を、LiOHの1M溶液(0.2mL)で被覆し、2時間放置した。吸引により液体をビーズから収集し、続いてそのビーズを水(3×0.5mL)で洗浄した。収集された液体および洗浄液をプールし、10% AcOHでpHを弱酸性(pH3〜4)に調整した。この所望の生成物を含有する暗赤色溶液をSep−Pakカラム(50mg)に吸着させ、水(2mL)で洗浄し、メタノール(0.5mL)で溶出させた。生成物の同一性は MS(ES)m/z=1465(MH+)により確認した。
【0229】
標識糖質のキャピラリー電気泳動分析
自動PrinCE 2−lift、モデル560CEシステム(Prince Technologies、オランダ)を使用してキャピラリー電気泳動(CE)を行った。50〜75cmの範囲の有効長(および検出ウインドウから出口までの余剰長30cm)を有するID75μmの未被覆溶融シリカキャピラリーで、サーモスタットで25℃に制御して分離を実施した。CEの泳動液(BGE)は、(A)150mM SDSを含有する50mMホウ酸緩衝液(pH9.3)または(B)0.8%(w/v)γ−CD(Sigma、C−4892)を含有する0.2Mホウ酸緩衝液(pH9.3)のいずれかであった。条件Aは図11および15〜22に示した分析に使用した。条件Bは図10、13、14、23、および24に示した分析に使用した。
【0230】
使用前に室温で、2000mbarで1M NaOHを用いて30分間、水を用いて10分間、およびBGEを用いて10分間すすぐことによって、キャピラリーをコンディショニングした。運転の間に2000mbarで1M NaOHを用いて3分間、水を用いて3分間、およびBGEを用いて3分間キャピラリーを洗浄した。試料を50mbarで6秒間流体力学的に注入し、25kVの電位差を横切るように電気泳動した。全ての実験を通常の極性、すなわち入口が陽極となるように実施した。検出を、適切なフィルターを備える蛍光検出器(Argos 250B、Flux Instruments、スイス)を使用して実施した。TRITCを使用して標識された試料については、励起および発光フィルターはそれぞれ546.1/10および570nmであった。FITCを使用して標識した試料については、励起および発光フィルターはそれぞれUG11(200〜400nm)および495nmであった。
略号
本出願にわたり以下の略号を使用した。
AMP CPG アミノプロピル調整多孔性ガラス
BGE 泳動液(バックグランド液)
BSA ウシ血清アルブミン
CE キャピラリー電気泳動
CPG 調整多孔性ガラス
DIPEA N,N−ジイソプロピルエチルアミン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
ES エレクトロスプレー
FITC フルオレセインイソチオシアネート
Fmoc 9−フルオレニルメチルオキシカルボニル
HRMS 高分解能質量分析
LNT ラクト−N−テトラオース
MS 質量分析
NHS N−ヒドロキシスクシンイミド
NMP 1−メチル−2−ピロリドン
PEGA ポリエチレングリコールアクリルアミドポリマー
RNアーゼB リボヌクレアーゼB
rt 室温
TBTU N,N,N’,N’−テトラメチル−O−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)ウロニウムテトラフルオルボレート
TEA トリエチルアミン
TMR テトラメチルロダミン
TRITC テトラメチルロダミンイソチオシアネート
【図面の簡単な説明】
【0231】
【図1.A−E】本発明による方法の一例を示す。A〜Eは、反応性糖Eを得るために固体支持体上に還元糖を捕捉および操作することを示す。
【図1.E−G.J】E〜GおよびJは、固体支持体上での反応性糖Eの操作およびタグ付き糖の切断を示す。本発明の方法は、図1に示された1つまたは複数のステップを含むことがある。図1では、還元糖はピラノースで例示されるが、この方法にいずれかの還元糖を使用することができる。この図は、リンカーがスペーサーを介して固体支持体に結合している例を示すが、そのリンカーは固体支持体に直接結合していてもよい。その固体支持体は、この図で「固体」と称されるが、本明細書下記に言及したいずれかの固体支持体でありうる。
【図2】本発明の実施例で使用された還元糖およびその混合物の構造1〜10を示す。
【図3】リンカー(14)の合成およびスペーサー(15)の構造を示す。
【図4】単糖標準として使用されたTMRタグ付きD−ガラクトース誘導体であるGalCH2−N(R)−TMR(21)の溶液相合成および命名の説明を示す。
【図5】糖CH2−N(R)−TMRという一般式である8つの通常の哺乳動物単糖の合成タグ付き誘導体の構造21〜28を示す。
【図6】4つの固体支持体BP、B0、B1、およびB2の構造を示す。
【図7】一部のキャップ剤の構造を示す。
【図8】タグ−Xという一般構造である、使用したいくつかの窒素反応性タグ剤の構造を示す。
【図9】X−テザー−YPという一般構造である保護された窒素反応剤29を用いたE→J(30)の例を示す。
【図10】図5に示された8つのTMR標識単糖標準のCEによる分離を示す。溶出順序はGalNAc(27)、Xyl(24)、Man(23)、Glc(22)、GlcNAc(26)、Fuc(25)、Gal(21)、およびGlcA(28)である。上図は拡大図である。
【図11】(4.2.1項のTRITCを使用してタグ付けした還元糖としてLacNAcを有する)GP3のCEを示す。
【図12】ネガティブイオンモードでの(4.2.2節の4−ブロモフェニルイソチオシアネートを用いてタグ付けされた還元糖としてラクト−N−テトラオースを有する)GP5のエレクトロスプレー質量スペクトルを示す。挿入図はBrの主同位体に対応する2つのピークを示す拡大図である。
【図13】(4.2.3項のTRITCを使用してタグ付けした単糖混合物6を有する)GP6aのCEを示す。Xは未同定のピークを表す。溶出順序は、GalNAc(27)、Man(23)、およびFuc(25)である。下図は拡大図である。
【図14】(4.2.4項のTRITCを使用してタグ付けした単糖混合物7を有する)GP7aのCEを示す。Xは未同定のピークを表す。溶出順序は、GalNAc(27)、Man(23)、およびFuc(25)である。下図は拡大図である。
【図15】(4.2.5項のFITCを使用してタグ付けしたオリゴ糖混合物9を有する)GP9のCEを示す。溶出順序はG7からG2である(図2)。
【図16】GP10(4.2.6項でFITCを使用してタグ付けしたリボヌクレアーゼBオリゴ糖10)のCEを示す。
【図17】(4.3.1項でTRITCを使用してタグ付けした還元糖としてGal2を有する)G12のCEを示す。
【図18】(4.3.2項でTRITCを使用してタグ付けした還元糖としてLNT5を有する)G15のCEを示す。
【図19】(4.3.3項でTRITCを使用してタグ付けした還元糖混合物として8を有する)G18のCEを示す。溶出順序はLNTに続いてGalである。
【図20】5.1.1項の固定化LNT(5)のβ−ガラクトシダーゼ消化後の切断生成物G05(A)、G15(B)、およびG25(C)のCEを示す。TRITC標識LNT四糖は最初36分付近で溶出する。ガラクトースの消失により38分後に溶出する三糖生成物が得られる。
【図21】F24(TRITCを使用してタグ付けした還元糖としてのマルトトリオース(G3))と5.1.2項のグルコアミラーゼとのインキュベーション前(図A)およびインキュベーション後(図B)の切断生成物のCEを示す。図Aを記録する前にタグ付きGlc(22、図5)の参照試料を試料に添加した。
【図22】(LNT基および遊離NH2基を有する)C25のβ−ガラクトシダーゼ処理に続いて放出されたガラクトースの捕捉、還元、および5.2項のTRITCを用いたタグ付け後に得られた切断生成物のCEを示す。溶出順序はLNT、ガラクトースの消失に起因する三糖、およびガラクトースである(21)。
【図23】多様な作用剤を用いたキャッピング、還元、および6.1項のTRITCを用いた標識後のC22(固定化ガラクトース)由来切断生成物のCE分析を示す。キャップ剤は、A(無水酢酸:酢酸無水物)、B(安息香酸無水物)、C(トリクロロ酢酸無水物)、およびD(ジブロモキシレン)であった。タグ付きガラクトース(21)は全ての図において17分付近に溶出している。
【図24】6.2項でC→Cred→→Gという順序を経由してガラクトースを加工することから得られた切断生成物のCEを示す。ガラクトース21は17分に溶出している。
【図1】
【技術分野】
【0001】
本明細書において参照された全ての特許文献および非特許文献は、引用により組込まれている。
(発明の分野)
本発明は、糖質操作の分野に関する。特に、本発明は、誘導体化により固定化糖質を操作する方法に関する。この方法により、誘導体化の性質に応じて糖質をさらに容易に検出および/もしくは同定するか、または取扱うことができる。したがって、一態様では、本発明は糖質の検出および同定の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
糖質は自然界において多様な形態で存在する。ヒトを含む動物における例には、溶液中の遊離還元糖(血清中の単糖であるグルコースなど)、溶液中の遊離オリゴ糖(乳中の二糖であるラクトースなど)が挙げられ、それらの糖質は、様々なアミノ酸(アスパラギン、セリン、トレオニン、その他など)との共有結合を介してペプチドまたはタンパク質に結合しているか、(ガングリオシドにおけるように)セラミドなどの脂質に共有結合しているか、またはホスファチジルイノシトールを介して膜アンカーに結合していることがある。糖は、グルクロニダーゼなどの代謝に関与する一部の小分子を含む多数の小分子にも結合していることが見出されている。上記例において、糖鎖の長さは糖残基1個から100個超まで異なりうる。
【0003】
細菌および植物を含む下等生物では、さらに広い構造アレイが存在する。細菌細胞の表面は、数千残基長の糖ポリマーで被覆されていることがあり、その糖ポリマーは細菌の検出における抗原として、およびワクチンとして作用することがある。糖は、細菌細胞壁に内在する部分として存在する。その糖自体は(アミノグリコシド系抗生物質、例えばストレプトマイシンなどの)抗生物質でありうるし、また(エリスロマイシンおよびバンコマイシンなどの)抗生物質に不可欠な構成要素として、(アカルボースにおけるような)酵素阻害剤として、もしくは(例えばカリケアミシンなどの)抗癌剤として見出されることがある。
【0004】
特に対象となる一領域は、糖タンパク質および糖脂質に結合していることが見出された糖鎖(グリカン)の構造である。糖タンパク質のグリコシル化パターンは、そのバイオアベイラビリティ、そのターゲティングを含めた生体機能に重要であることが示され、腫瘍細胞の転移能と直接相関付けられてさえもいる。例えばヒト血清トランスフェリンのグリコシル化パターンは、糖タンパク質糖鎖不全症候群(Carbohydrate−Deficient Glycosylation Syndrome)と名付けられた一連の遺伝性疾患のための診断テストとして使用されている。特異的糖脂質配列は、糖尿病においてニューロン発生および細胞表面シグナル伝達に関与することが示され、テイ−サックス病などのある種の特異的代謝疾患において蓄積し、特異的糖脂質配列がその疾患に関して診断に役立っている。
【0005】
上記のオリゴ糖および多糖における糖残基間の結合は、αまたはβ配置のいずれかを有することがあり、グリカンは多分岐することがある。したがって、グリカン鎖に可能な構造の多様性は莫大であり、したがって、その構造の特徴付けは本質的に複雑である。したがって、研究、診断、組換え糖タンパク質のグリコシル化のモニタリング、ならびに新しい医薬品の開発における糖質およびグリカンの構造の検出、構造の特徴付け、同定、定量、および化学/酵素的操作のための方法には強い関心が存在する。
【0006】
糖質の構造分析のためにいくつかの方法が現在使われており、これらについては最近総説された。非誘導体化オリゴ糖および糖脂質は、NMR分光法、質量分析、およびクロマトグラフィーにより分析することができる。はるかに大きな糖タンパク質については、質量分析はいっそう限られた情報しかもたらさないが、その糖タンパク質のタンパク質分解消化産物、すなわち糖ペプチドの分析が大規模に使用されてきた。非誘導体化オリゴ糖に関する間接的な構造情報は、そのオリゴ糖がレクチン、抗体、または酵素などの糖質結合タンパク質と相互作用する能力からも推定することができる。
【0007】
糖質自体はN−アセチル基を除いて特徴的な発色団を有さないため、光学的または分光学的検出による糖質の分離のモニタリングは一般に使用されない。しかし、ポリオールのパルスアンペロメトリック検出はクロマトグラフィーでの検出に重要な技術である。
【0008】
糖質の高感度検出に最も広く使用されている方法は、放射性または蛍光タグのいずれかを用いた還元末端(ラクトール、すなわちヒドロキシアルデヒドおよびヒドロキシケトンの互変異性体(tautomer))の標識である。糖タンパク質および糖脂質から糖質を切断する化学的方法および酵素法の両方が記載されており、糖タンパク質、糖脂質、および他の複合糖質(glycoconjugate)から必要な還元糖を作製することが可能になっている。通常、そのような還元糖は、還元アミノ化の条件で、すなわち最初に形成したイミン(C=N)がアミン(CH−NH)に還元して安定な結合を生成する条件で、蛍光分子のアミノ含有誘導体と反応する。大部分の場合、標識反応は大過剰の標識剤を使用して溶液中で行われてきた。これは、分析前または分析中にその過剰の標識剤と、その副生成物とを分離することを必要とする。質量分析で役立つ他のタグは、アミノ化または還元アミノ化のいずれかにより同様に付加され、その場合、検出は質量分析計により行われてきた。
【0009】
標識が付加されて、特異的検出が可能になったとき、続いて上記糖質を分離および検出/定量に供することができる。タグ付き糖質をグリコシダーゼなどの酵素に曝露することによって、さらなる構造情報を得ることができる。特異的グリコシダーゼがそのタグ付き糖質に作用する場合、そのグリコシダーゼは1つまたは複数の糖残基を切断する結果として、例えばHPLCおよびCEでの蛍光検出器により、もしくはSDS−PAGEでの糖質の移動度の変化により検出される、クロマトグラフィーもしくは電気泳動での移動度変化、または質量分析計でのm/z値の変化により検出される糖質の質量の変化を生じることができる。より高スループットの分析を提供するために、一連の酵素が使用されてきた。
【0010】
従来技術の概要を以下に簡潔に示す。
【0011】
Gaoら、2003は、溶液中の糖質の誘導体化に好適な技術を総説している。溶液中で糖質を還元アミノ化により誘導体化することができる。一般に、アミンの−NH2基は還元糖のアルデヒド基またはケトン基と反応することにより、−C=N構造の化合物を生成することがある。そのような化合物を例えばNaCNBH3でさらに還元することができる。Gaoら、2003は、固定化糖質の操作については開示していない。
【0012】
US5100778は、オリゴ糖の還元末端残基に同定用標識を配置すること、複数の別々の部分に分割すること、各部分を例えば特異的グリコシダーゼで処理すること、生成物をプールすること、および得られたプールを分析することを含むオリゴ糖配列決定の方法を記載している。この文書は固定化オリゴ糖について記載していない。
【0013】
US4419444は、反応性−NH2基を有する支持体に、糖質残基を有する有機化合物を化学的に結合させる方法を記載している。この方法は、糖質ジオールを過ヨウ素酸酸化してその糖質のC−C結合を切断することにより反応性アルデヒドを生成させること、または−CH2OH基を酵素的に−CHO基に酸化することのいずれかを伴う。どちらの酸化も糖質の構造変化を生じるものである。この反応性アルデヒドを−NH2基との反応により固定化することができる。糖質含有化合物の固定化後に、(例えばNaBH4を使用した)還元ステップを行って、安定性を高めることができる。この文書は、還元糖の還元末端を経由したその還元糖の固定化も、還元されたアミン結合を介した固定化改変糖質含有化合物の操作も記載していない。さらに、その糖質の化学的性質は改変されており、この改変は、グリコシダーゼによる特異的酵素切断などのさらなる調節を損なうおそれがある。この文書は、固定化オリゴ糖に分子構造の付加が生じる、そのオリゴ糖へのいずれかの化学試薬の付加についてもまた記載していない。
【0014】
WO92/719974はオリゴ糖を配列決定する方法を記載している。この方法は、固体支持体上にオリゴ糖を固定化し、続いて多様なグリコシダーゼで処理することを伴う。固定化前にそのオリゴ糖をコンジュゲートに結合させることができる。この文書は、グリコシダーゼ処理以外の固定化オリゴ糖の調節については記載していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記は、グリカンの生物学的重要性および複雑性を説明し、単糖などの還元糖およびオリゴ糖の還元糖末端にタグを結合させるいくつかの有益性をまとめたものである。今日まで、そのような結合は、大過剰のタグ剤(および多くの場合還元剤などのさらなる化学薬剤)を使用して溶液中で行われている。したがって、検出またはさらなる操作のいずれかを行う前に、時間がかかり、困難であることが多い分離技術をその結合に適用することが必要となる。そのような分離技術は、常に物質の損失および希釈を招き、よって分析をかなり複雑化して偏らせる。したがって、簡便な方法が大いに必要とされている。その簡便な方法は、糖質構造にタグを取付け、さらにその構造を操作することができ、反応出発物質、試薬、副生成物、および求められている生成物を分離するための複雑で偏った方法を必要としない。本明細書においてそのような簡便な方法を記載する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(発明の概要)
本発明は、いずれかのスペーサー(すなわちスペーサーの存在下または不在下)および−NH2官能基(functionality)を含有する捕捉基を含む(切断可能でありうる)リンカーからなる固定化された分子との反応により、(本明細書下記の「固体支持体」の項に記載したいずれかの固体支持体でありうる)固体支持体に(本明細書下記の「還元糖」の項に言及したいずれかの還元糖でありうる)還元糖を共有結合させる方法に関する。結果として生じた固定化糖は、C=N結合を有する非環式形態を有し、その非環式形態は、その環式グリコシルアミン互変異性体と平衡でありうる。
【0017】
固定化後に固体支持体上の遊離−NH2基をキャップしてもよく、C=N結合を還元することもできる。この方法は、図1のA+B→Eに要約されている。この図は、非誘導体化ピラノースを示しているが、いずれかの還元糖を表すことが意図される。
【0018】
変形形態では、本発明の方法は、遊離−NH2基をキャップする前にC=N結合を有する(図1の構造Cに例示される)固定化糖をCH−NHに還元し、構造Credの化合物(図1)を生成させることを含みうる。次に、この段階でCredの−NH2基をキャップし、上記および図1に示したC→D→Eという順序により生成した構造と同じ構造Eの化合物を生成させてもよい。
【0019】
したがって、構造Eの化合物を、A+B→C→D→E、またはA+B→C→Cred→Eという順序のいずれかにより生成させることができる。
【0020】
したがって、反応性糖を調製する方法を提供することが本発明の目的であり、前記方法は、
i.(図1のAのような)還元糖を含む試料を用意するステップと、
ii.−NH2基を有する捕捉基を有するリンカーに共有結合した固体支持体(例えば図1の固体)を用意するステップ(ここで、前記リンカーは場合により(図1のBのような)スペーサーを介して前記固体支持体に結合している)と、
iii.前記還元糖を前記−NH2基と反応させることによって、(図1のCのような)固定化糖を得るステップと、
iv.遊離−NH2基をキャップ剤と反応させるステップ(ここで、そのキャップ剤は、−NH2基と反応することができる反応基を有する)と、
v.還元剤でC=N結合を還元するステップと、
vi.それによってリンカーと、場合によりスペーサーとを介して固体支持体に結合した糖CHn−NH−という構造(nは1または2である)を含む(図1の化合物Eのような)反応性糖を得るステップと
を含み、ここで、ステップivおよびvはいずれかの順序で行うことができる。
【0021】
ステップivがステップvの前に行われる本発明の実施形態では、ステップivでの−NH2基のキャッピングは例えば図1の化合物Dを生じるであろうが、一方、ステップvで行われる還元は例えば図1の化合物Eを生じるであろう。
【0022】
次に、ステップvがステップivの前に行われる本発明の実施形態では、(例えば図1の化合物Cの)C=N結合の還元は例えば図1の化合物Credを生じるであろう。ステップivの−NH2基のキャッピングは例えば図1の構造Eの化合物を生成するであろう。還元糖を含む試料を固体支持体および還元剤と同時にインキュベートできることは本発明に包含される。したがって、C=N結合の還元(ステップv)は、還元糖と固体支持体の−NH2基との反応(ステップiii)の直後に行われるであろう。
【0023】
ステップiiiでは、好ましくは前記還元糖の還元末端を前記−NH2基と反応させる。したがって、好ましくは還元糖のヘミアセタールまたはアルデヒド基を−NH2基と反応させる。
【0024】
この方法は、
vii.反応性糖(例えば図1の化合物E)の−NH−基を、窒素反応性官能基(X)を有する誘導体化剤と反応させることにより、この作用剤に共有結合した糖を得るステップ
をさらに含むことが好ましい。前記作用剤に共有結合した前記糖は、例えば図1の化合物F(その誘導体化剤がタグである場合)または図1の化合物Hでありうる。化合物Hは、その誘導体化剤が官能基に結合したテザー(tether)である場合である。
【0025】
この状況および図1(下記参照)における用語「タグ」は、別の分子に共有結合することができ、それにより、共有結合を受けた前記別の分子を標識することができるいずれかの原子、分子、または物質(entity)を示すことが意図される。
【0026】
(図の説明)
図1は、本発明による方法の一例を示す。図1:A〜Eは、反応性糖Eを得るために固体支持体上に還元糖を捕捉および操作することを示す。図1:E〜GおよびJは、固体支持体上での反応性糖Eの操作およびタグ付き糖の切断を示す。本発明の方法は、図1に示された1つまたは複数のステップを含むことがある。図1では、還元糖はピラノースで例示されるが、この方法にいずれかの還元糖を使用することができる。この図は、リンカーがスペーサーを介して固体支持体に結合している例を示すが、そのリンカーは固体支持体に直接結合していてもよい。その固体支持体は、この図で「固体」と称されるが、本明細書下記に言及したいずれかの固体支持体でありうる。
【0027】
図2は、本発明の実施例で使用された還元糖およびその混合物の構造1〜10を示す。
【0028】
図3は、リンカー(14)の合成およびスペーサー(15)の構造を示す。
【0029】
図4は、単糖標準として使用されたTMRタグ付きD−ガラクトース誘導体であるGalCH2−N(R)−TMR(21)の溶液相合成および命名の説明を示す。
【0030】
図5は、糖CH2−N(R)−TMRという一般式である8つの通常の哺乳動物単糖の合成タグ付き誘導体の構造21〜28を示す。
【0031】
図6は、4つの固体支持体BP、B0、B1、およびB2の構造を示す。
【0032】
図7は、一部のキャップ剤の構造を示す。
【0033】
図8は、タグ−Xという一般構造である、使用したいくつかの窒素反応性タグ剤の構造を示す。
【0034】
図9は、X−テザー−YPという一般構造である保護された窒素反応剤29を用いたE→J(30)の例を示す。
【0035】
図10は、図5に示された8つのTMR標識単糖標準のCEによる経時的(時間の単位はmin(分)である)な分離を示す。溶出順序はGalNAc(27)、Xyl(24)、Man(23)、Glc(22)、GlcNAc(26)、Fuc(25)、Gal(21)、およびGlcA(28)である。上図は拡大図である。
【0036】
図11は、(4.2.1項のTRITCを使用してタグ付けした還元糖としてLacNAcを有する)GP3のCEを示す。
【0037】
図12は、ネガティブイオンモードでの(4.2.2節の4−ブロモフェニルイソチオシアネートを用いてタグ付けされた還元糖としてラクト−N−テトラオースを有する)GP5のエレクトロスプレー質量スペクトルを示す。挿入図はBrの主同位体に対応する2つのピークを示す拡大図である。
【0038】
図13は、(4.2.3項のTRITCを使用してタグ付けした単糖混合物6を有する)GP6aのCEを示す。Xは未同定のピークを表す。溶出順序は、GalNAc(27)、Man(23)、およびFuc(25)である。下図は拡大図である。
【0039】
図14は、(4.2.4項のTRITCを使用してタグ付けした単糖混合物7を有する)GP7aのCEを示す。Xは未同定のピークを表す。溶出順序は、GalNAc(27)、Man(23)、およびFuc(25)である。下図は拡大図である。
【0040】
図15は、(4.2.5項のFITCを使用してタグ付けしたオリゴ糖混合物9を有する)GP9のCEを示す。溶出順序はG7からG2である(図2)。
【0041】
図16は、GP10(4.2.6項でFITCを使用してタグ付けしたリボヌクレアーゼBオリゴ糖10)のCEを示す。
【0042】
図17は、(4.3.1項でTRITCを使用してタグ付けした還元糖としてGal2を有する)G12のCEを示す。
【0043】
図18は、(4.3.2項でTRITCを使用してタグ付けした還元糖としてLNT5を有する)G15のCEを示す。
【0044】
図19は、(4.3.3項でTRITCを使用してタグ付けした還元糖混合物として8を有する)G18のCEを示す。溶出順序はLNTに続いてGalである。
【0045】
図20は、5.1.1項の固定化LNT(5)のβ−ガラクトシダーゼ消化後の切断生成物G05(A)、G15(B)、およびG25(C)のCEを示す。TRITC標識LNT四糖は最初36分付近で溶出する。ガラクトースの消失により38分後に溶出する三糖生成物が得られる。
【0046】
図21は、F24(TRITCを使用してタグ付けした還元糖としてのマルトトリオース(G3))と5.1.2項のグルコアミラーゼとのインキュベーション前(図A)およびインキュベーション後(図B)の切断生成物のCEを示す。図Aを記録する前にタグ付きGlc(22、図5)の参照試料を試料に添加した。
【0047】
図22は、(LNT基および遊離NH2基を有する)C25のβ−ガラクトシダーゼ処理に続いて放出されたガラクトースの捕捉、還元、および5.2項のTRITCを用いたタグ付け後に得られた切断生成物のCEを示す。溶出順序はLNT、ガラクトースの消失に起因する三糖、およびガラクトースである(21)。
【0048】
図23は、多様な作用剤を用いたキャッピング、還元、および6.1項のTRITCを用いた標識後のC22(固定化ガラクトース)由来切断生成物のCE分析を示す。キャップ剤は、A(無水酢酸:酢酸無水物)、B(安息香酸無水物)、C(トリクロロ酢酸無水物)、およびD(ジブロモキシレン)であった。タグ付きガラクトース(21)は全ての図において17分付近に溶出している。
【0049】
図24は、6.2項でC→Cred→→Gという順序を経由してガラクトースを加工することから得られた切断生成物のCEを示す。ガラクトース21は17分に溶出している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
(発明の詳細な説明)
(還元糖の操作方法)
本発明は還元糖を操作する方法に関する。本発明の方法の例を図1に要約する。本発明の方法は、図1に示されたステップの全てを必ずしも伴わないことに留意すべきである。したがって、この方法は、図1に要約されたステップの一部しか含まないことがある。好ましくは、この方法は、少なくともA+B→C、C→D、およびD→Eのステップ、またはA+B→C、C→Cred、およびCred→Eのステップを含むであろう。図1において、還元糖はピラノースによって例示されているが、本発明にいずれかの還元糖、特に本明細書下記の「還元糖」の項に記載したいずれかの還元糖を使用することができる。図1のピラノース環を横切る−OH基は、その還元糖がピラノース環に結合した1つまたは複数のヒドロキシル基を有しうることを示すことが意図される。
【0051】
本発明の方法の各ステップを本明細書下記にさらに詳細に説明する。下記において大文字A〜JおよびCredは図1を参照している。
【0052】
本発明の各化合物または中間体の同一性、例えば化合物A、B、C、Cred、D、E、F、G、H、I、またはJの同一性は、NMRなどの当業者に公知の標準的な技術により評価することができる。
【0053】
A.還元糖
本明細書に使用される用語「還元糖」は、Cu2+をCu+に還元することができるという糖の古典的定義を包含している。糖が還元性であるかどうかは、例えばフェーリング試薬を使用して検査することができる。さらに現代の用語では、還元糖はアルデヒド基またはR2C(OH)OR’(式中R’はHではない)という式のヘミアセタールを有する糖である。好ましくは、還元糖は、ヘミアセタールと呼ばれる環化形態と平衡にあるアルデヒドを有する糖質構造である。D−グルコースはそのような還元糖の非限定的な例である。最も多い環形態は、フラノースと呼ばれる5員環およびピラノースと呼ばれる6員環を含む。(命名規則参照)。
【0054】
本明細書に使用される用語「糖」は、単糖、オリゴ糖、多糖、および単糖、オリゴ糖、または多糖を有する化合物を包含する。用語「糖質(炭水化物)」および「糖」は、本明細書において相互交換可能に使用される。
【0055】
オリゴ糖および多糖は、グリコシド結合した単糖からなる化合物である。一般に多糖は、少なくとも10個の単糖残基を有し、オリゴ糖は一般に2から10個の範囲の単糖を含む。オリゴ糖および多糖は直鎖または分岐でありうる。単糖はポリヒドロキシアルデヒドH−(CHOH)n−CHOまたはポリヒドロキシケトンH−(CHOH)n−CO−(CHOH)m−H(式中mおよびnは整数である)として定義される。好ましい単糖は4から9個の範囲の炭素を有する。したがって、好ましくは、ポリヒドロキシアルデヒドについては、nは3から8の範囲の整数であり、ポリヒドロキシケトンについては、n+mは3から8の範囲の整数である。単糖はアルドースおよびケトースなどの化合物、ならびに広範囲のその誘導体である。誘導には、酸化、脱酸素化、1つまたは複数のヒドロキシル基の好ましくは水素原子、アミノ基、またはチオール基による置換、およびヒドロキシ基またはアミノ基のアルキル化、アシル化、硫酸化、またはリン酸化により得られるものが挙げられる。IUPACの命名によると、糖質は、アルドースおよびケトースなどの化学量論式Cn(H2O)nの化合物、ならびにカルボニル基(アルジトール)の還元により、1つまたは複数の末端基からカルボン酸への酸化により、あるいは、1つまたは複数のヒドロキシル基から水素原子、アミノ基、チオール基、もしくは類似の基への置換により、単糖から得られる物質、あるいはこれらの化合物の誘導体である。
【0056】
好ましい実施形態では、還元糖は天然還元糖であるか、または糖質を有する天然もしくは組換え生成した化合物から遊離して、好ましくは遊離後にさらなる修飾に供されなかった還元糖である。特に、その還元糖が天然還元糖であるか、または天然もしくは組換え生成した化合物から遊離した還元糖であって、前記天然糖または前記遊離した糖のアルコール基のいずれもオリゴ糖レベルで酸化によりアルデヒドまたはケトンに酵素的に変換されていないことが好ましい。その還元糖は、天然還元糖または天然もしくは組換え生成した化合物から遊離した還元糖であって、前記天然糖または前記遊離した糖は過ヨウ素酸処理(periodate treatment)に供されていないことも好ましい。したがって、前記天然糖または前記遊離した糖のアルコール基はいずれもアルデヒドまたはケトンに変換されていないことが一般に好ましい。これに関連して、組換え生成した化合物は、組換え技術の助けを借りて生きた生物により生成される化合物、例えば異種(heterologous)糖タンパク質である。
【0057】
還元糖は、多様な起源から得ることができる。例えば還元糖は、生物または生物の一部から、例えば動物もしくは植物から、または1つもしくは複数の特異的動物もしくは植物組織から、原核細胞もしくは真核細胞などの生物から、ウイルスから、in vitro培養した哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、真菌、細菌細胞、酵母、もしくはファージから得ることができる。例えば還元糖は、いずれかの前記細胞、微生物、もしくは生物の抽出物から単離することができる。そのような抽出物は遊離糖質などの還元糖を含むことがある。抽出物は、単糖、オリゴ糖、多糖、または糖質部分、特に糖質が結合した糖タンパク質または糖脂質または有機小分子を含む一般にグリコシドと呼ばれる化合物を含むこともある。糖タンパク質は、糖質構成要素がペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質構成要素に結合している化合物である。したがって、本明細書に使用される用語である糖タンパク質は、プロテオグリカンおよびグリコサミノグリカンも包含する。糖脂質は、グリコシド結合によりアシルグリセロール、スフィンゴイド、セラミド(N−アシルスフィンゴイド)、またはプレニルホスフェートなどの疎水性部分に結合した1つまたは複数の単糖、オリゴ糖、多糖、または糖質部分を有する化合物である。グリコシドは、O、N、またはSのいずれかを介して1つまたは複数の糖にグリコシド結合した有機小分子(MWt100〜5000)を示すことが意図される。
【0058】
還元糖は、溶液中または固相上での化学合成によりin vitroで調製されたオリゴ糖などの化学合成または化学/酵素合成の生成物でもある。例えば硫酸化、リン酸化、またはグリコシル化などの酵素反応により、まさにこれらの合成オリゴ糖をさらに修飾することができる。したがって、合成もしくは半合成オリゴ糖またはオリゴ糖ライブラリーの操作のためにもまた、本明細書に記載した方法を使用することができる。
【0059】
好ましくは単糖、オリゴ糖、多糖、または糖質部分は、本発明の方法を行う前に糖タンパク質から遊離させる。当業者に公知の標準法によりこれを行うことができる。化学的方法または酵素法により、N−結合した単糖、オリゴ糖、多糖、または糖質を糖タンパク質から切断することができる。酵素法は、例えばエンドグリコシダーゼHおよびFなどのグリコシダーゼ、またはPNGアーゼ−FなどのN−グリカナーゼの使用を伴うことがある。ヒドラジノリシスもしくはアルカリβ−脱離を含めた化学的方法により、またはO−グリコシダーゼなどの酵素を使用して酵素的に、O−結合した単糖、オリゴ糖、多糖、または糖質を糖タンパク質から切断することができる。N−結合およびO−結合の両方の放出に有用な化学的方法には、ヒドラジンなどの強い求核体および/または強塩基との反応が挙げられる。酸性反応もしくは塩基性反応のいずれかを使用して、またはグリコシダーゼの作用により有機小分子から糖質を切断することができる。
【0060】
本発明の一実施形態では、所定量の参照標準を、還元糖を含む試料に添加する。これによって、リンカーが切断可能である本発明の実施形態において、固定化後の、または固定化および放出後の前記還元糖の定量が容易になりうる。
【0061】
参照標準は、−NH2と反応することができるいずれかの化合物、例えば本明細書下記「E→F.タグの付加」の項に記載した窒素反応性官能基の1つを有するいずれかの化合物でありうる。好ましくは、参照標準はアルデヒドまたはケトンであり、さらに好ましくは糖である。本発明の別の実施形態では、同一または異なる参照標準を固体支持体に添加してから、還元糖を含有する溶液に添加した参照標準を含む条件または含まない条件で、その還元糖を含有する溶液と接触させる。(本明細書下記の「B.固体支持体」の項参照)。したがって、2つ以上の参照標準を使用することができ、1つ(または複数)の参照標準を固体支持体に添加してから、その固体支持体と還元糖を含む溶液とを接触させ、1つまたは複数の参照標準を、その還元糖を含有する溶液に添加する。
【0062】
固体支持体が還元糖と接触した後に、1つまたは複数の参照標準をその固体支持体に添加することもできるが、好ましくはキャッピング前に添加する。したがって、好ましくは洗浄ステップ後に図1の化合物CまたはCredに参照標準を添加することができる。
【0063】
固体支持体を参照標準に結合させる本発明の実施形態では(本明細書下記「B.固体支持体」の項参照)、異なる参照標準を使用することが好ましい。
【0064】
本発明の一実施形態では、この方法は、この方法に使用する試料を前処理するステップを含む。特に、糖タンパク質、糖脂質、またはグリコシドなどのグリコシド結合した糖を含む試料を、固体支持体と反応させる前にスカベンジャー樹脂で前処理することができる。このスカベンジャー樹脂は、好ましくは還元糖を含めたアルデヒドおよびケトンと反応することができる求核基を有する樹脂であり、好ましくはこのスカベンジャー樹脂はアミノ基またはヒドラジンを有する。したがって、試料をこのスカベンジャー樹脂と共にインキュベーションすると、さらなるアルデヒド、ケトン、および還元糖が除去されるであろう。前処理後に、そのような方法は一般に前記グリコシド結合した糖から還元糖を遊離させることにより、還元糖を含む試料を得るステップをさらに含むであろう。したがって、前記試料内の大量のアルデヒドおよびケトンはグリコシド結合した糖から放出された還元糖であろう。本明細書上記のこの項に記載したいずれかの方法などの化学的方法または酵素法を含めた多数の方法により、前記還元糖を遊離させることができる。例えばPNGアーゼ−Fで前処理された試料の処理は、本発明の方法による捕捉および操作のための、溶液中への還元オリゴ糖の放出を引き起こすことができる。このように放出されたオリゴ糖は、混入カルボニル化合物を本質的に有さないであろう。還元糖質の放出は、上記のように混入カルボニル化合物を除去した後で、グリコシダーゼなどの他の酵素により、または化学反応を使用して実施することもできる。
【0065】
B.固体支持体
本発明による方法は、固体支持体への還元糖の固定化を伴う。固相化学的方法は、固定化化合物の取扱い、精製、濃縮が容易なことなどの数多くの利点をもたらす。しかし、溶液中で行うことのできる全ての反応を固相上で行うことができるわけではない。固体支持体への結合は、各分子実体(molecular entity)に実際的に無限のサイズを付与する。これは、その分子が2分子反応において、その分子が溶液中で反応するであろうよりもずっとゆっくりと反応する効果を有する。溶液中で許容できる収率で実施することができる一部の反応は、固体支持体上では全く作動しないであろう。
【0066】
本明細書に使用される用語「固体支持体」は物理的固体、不溶性ポリマー、不溶性粒子、表面、膜、および樹脂を包含し、好ましくは、固体支持体は不溶性ポリマー、不溶性粒子、表面、または樹脂である。
【0067】
したがって、「固体支持体」は、不溶性無機マトリックス(ガラスなど)、不溶性ポリマー(プラスチック、例えばポリスチレンなど)、有機構成要素の部分および無機構成要素の部分の両方からなる不溶性マトリックス(例えば、R−Si−O−という構造の化合物などの一部のハイブリッドケイ酸塩)、固相合成に一般に使用される有機ポリマー(ポリスチレン、PEGA樹脂、PEG樹脂、SPOCC樹脂、およびそのハイブリッド)、(ある種の有機溶媒に可溶性で、他の溶媒の添加により不溶性にすることができる)ポリエチレングリコール鎖のことがある。この固体は、(金などの)金属、合金、または例えばインジウム−スズ酸化物もしくは雲母などの複合体のこともある。
【0068】
上に挙げた固体支持体のうちいずれかのものを、そのうえ糖質に対して親和性を有する、非限定的にアリールボロン酸またはそのポリマーなどの作用剤で被覆することができる。そのような被覆は、その固体支持体表面での糖質濃度を増加させ、捕捉の速度および収率を高めることができる。
【0069】
固相合成に使用される有機ポリマーには、例えばTentaGel(Rapp polymere、チュービンゲン、ドイツから市販されている)、ArgoGel(Argonaut Technologies Inc.、サンカルロス、カリフォルニア州から市販されている)、PEGA(Polymer Laboratories、アマースト、マサチューセッツ州から市販されている)、POEPOP(Renilら、1996、Tetrahedron Lett.、37:6185−88;Versamatrix、コペンハーゲン、デンマークから市販されている)、およびSPOCC(Rademannら1999、J.Am.Chem.Soc、121:5459〜66;Versamatrix、コペンハーゲン、デンマークから市販されている)が挙げられる。
【0070】
本発明の一実施形態では、その固体支持体は、(Samoyolovら、2002、J.Molec.Recognit.15:197〜203に記載されたいずれかのセンサーなどの)弾性表面波センサー(surface acoustic wave senser)または(Homolaら、1999、Sensors and Actuators B、54:3〜15に総説されたいずれかのセンサーなどの)表面プラズモン共鳴センサーなどのセンサーである。そのような固体支持体は、ガラスなどの無機物質、金などの金属、有機ポリマー物質、またはそのハイブリッドのことがあり、タンパク質もしくは多糖、デンドリマーなどのオリゴマー、またはポリアクリルアミドもしくはポリエチレングリコールなどのポリマーなどの多様な被覆で被覆されていてもよい。好ましい実施形態では、その固体支持体はガラスまたはPEGA樹脂である。
【0071】
本発明の一実施形態では、その固体支持体は固定化還元糖の定量を容易にすることができる参照標準と結合している。特に、前記参照標準が切断可能なリンカーによって固体支持体に(直接または間接的のいずれかで)結合していることが望ましい。そのリンカーは固定化されて放出された還元糖の定量を容易にすることができるであろう。切断可能なリンカーを介してその還元糖が固体支持体に固定化される本発明の実施形態では、参照標準が同一または類似の切断可能なリンカーを介して固体支持体に固定化されることが好ましい。
【0072】
参照標準はいずれかの検出可能な化合物でよく、例えば参照標準は糖であることも、糖ではないこともあるが、好ましくは参照標準は糖質である。
【0073】
参照標準は種々の量で用いられ、一般にその固体支持体は1つの参照標準あたり20から500個の範囲、好ましくは50から200個の範囲、例えば90から110個の範囲の−NH2基を含んでもよい。
【0074】
B.スペーサー
本発明によると、その固体支持体は場合によりスペーサーを介してリンカーに結合している。しかし、その固体支持体がそのリンカーに直接結合していることも本発明に含まれる。
【0075】
スペーサーは、1から1000原子長の範囲の化学実体である。好ましくは、前記スペーサーは直鎖もしくは分岐鎖および/または環構造である。スペーサーの性質は疎水性もしくは親水性であるか、またはこれら2つの特性が混じり合ったものを有することがある。スペーサーの群は、固相合成、およびスペーサーを介して固体支持体に結合した分子の検出を伴うビーズ上、ウェル中、またはスライド上のアッセイに一般に使用される分子を含む。当業者は、与えられた固体支持体に有用なスペーサーを容易に同定することができるであろう。
【0076】
スペーサーは、好ましくは場合により分岐していることがあるアルキル鎖(より好ましくはC1からC1000アルキル鎖)であり、ここで、前記アルキル鎖は、場合により1つまたは複数の位置で、1つまたは複数のB、O、N、S、P、Si、F、Cl、Br、またはIを含む基に置換されている。スペーサーは、場合により同様に分岐、または置換されていてもよい1つまたは複数のアリール残基も含むことがある。好ましい一実施形態では、そのスペーサーはアミドおよびエーテルからなる群から選択される。したがって、そのスペーサーは1つまたは複数のアミド結合(−CONH−)、もう1つのまたは複数のエチレングリコールユニット(−CH2−CH2−O−)、またはこれらのユニットとアルキルもしくはアリール鎖との組合せを含む鎖から本質的になることがある。
【0077】
本発明の一実施形態において、スペーサーは、好ましくは第1アミンおよび第2アミンのどちらも含まない。本発明の別の実施形態では、スペーサー内に含まれる全てのアミンはキャップされている。
【0078】
B.リンカー
本発明は、捕捉基を有するリンカーと共有結合している固体支持体上に、還元糖を捕捉することに関する。リンカーは、末端が−NH2の捕捉基を、場合によりスペーサーを経由してその固体支持体に結合させることに役立つ。リンカーは、固相有機合成に一般に使用されるリンカーなどの、多種多様のリンカーのうちいずれかのものでありうる。
【0079】
そのリンカーは、切断可能ではないリンカーまたは切断可能なリンカーのいずれかでありうる。
【0080】
切断可能ではないリンカーは、例えばアルキル、アリール、エーテル、またはアミドのことがあり、ここで、前記リンカーのいずれかのものは場合により置換されていてもよい。例えば、前記リンカーのいずれかのものは複素原子で置換されていてもよく、分岐としてO−アルキル、アルキル、アリール、または複素原子を含むことがある。一例では、そのリンカーはPEGおよび/もしくはポリアミドを含むか、または本質的にそれからなる。
【0081】
そのリンカーは、スペーサーおよび固体支持体由来の(捕捉された分子を含み、場合によりさらに修飾された)捕捉基を含む部分を切断するための反応を生じさせることができる部位を含むことがある。そのようなリンカーは切断可能なリンカーと呼ばれ、固相有機合成に広く利用されている。切断を求電子体、求核体、酸化剤、還元剤、フリーラジカル、酸、塩基、光、熱、または酵素により実施することができる切断可能なリンカーの例が公知である。
【0082】
切断可能なリンカーは、例えば酸に不安定(例えばRink、1987、Tetrahedrom Lett.、28:387に記載されたRinkアミドおよびPlunkettら、1995、J.Org.Chem.、60:6006〜7に記載されたトレースレスシリルリンカー)、塩基に不安定(例えばAthertonら、1981、J.Chem.Soc.Perkin Trans、1:538に記載されたHMBA)、または光に不安定(例えばHomlesら、1995、J.Org.Chem.、60:2318〜2319に記載された2−ニトロベンジル型)でありうる。そのリンカーは、シリルリンカー(例えばBoehmら、1996、J.Org.Chem.、62:6498〜99に記載されたフッ化物で切断されるもの)、アリルリンカー(例えばKunzら、1988、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.、27:711〜713)、およびセーフティキャッチスルホンアミドリンカー(例えば、Kennerら、1971、Chem.Commun.、12:636〜7に記載されたもの)などのように、行われる化学反応の種類にさらに特異的で限定的でありうる。酵素切断可能なリンカーは、例えばReentsら、2002、Drug Discov.Today、7:71〜76に記載された酵素切断可能なリンカーのうちいずれかのもの、またはWaldmannら、2001、Chem.Rev.101:3367〜3396による総説に記載された酵素不安定な保護基のいずれかの官能化誘導体でありうる。熱不安定なリンカーは、例えばMengら、2004、Angew.Chem.Int.Ed.、43:1255〜1260に記載された種類でありうる。
【0083】
B.捕捉基
本発明によると、リンカーは捕捉基を含み、ここで、その捕捉基は少なくとも1つの−NH2基を有する。好都合な形式では、その捕捉基の末端は基であり、その基はいずれかの基Rを経由してリンカーに結合した−NH2基で終結する。したがって、その捕捉基は好ましくは構造R−NH2である。Rは単純アルキル、アリールまたは置換されたアルキルもしくはアリール基でありうる。好ましくは、Rは−NH2基に直接結合した複素原子を有し、リンカー−M−NH2タイプの構造を生成する。ここで、Mは複素原子であり(すなわち炭素ではなく)、好ましくは、MはN、O、およびSからなる群から選択される。特に好ましいのは、Mがリンカー−O−NH2、リンカー−NH−NH2、リンカー−CO−NH−NH2、リンカー−NH−CO−NH−NH2、リンカー−S(O)2NH−NH2、およびリンカー−S−NH2という構造などにおける複素原子である化合物である。
【0084】
A+B→C.捕捉方法
還元糖の捕捉は、捕捉基の−NH2基を、前記還元糖の還元末端と、すなわちアルデヒド基またはヘミアセタール基と反応させることにより行われる。この反応はいずれかのpH値で起こりうるが、pH2〜9の範囲が最も好都合である。この方法は、鎖式アルデヒド形態の還元糖とヘミアセタール形態の還元糖(例えば図1の化合物A)との間の平衡を促進するか、または好都合に改変するかのいずれかを行うことができる添加物などの1つまたは複数の添加物の添加を伴うことがあり、ここで、鎖式(open chain)アルデヒド形態が好ましい。この添加物は、例えば金属イオン、ボロン酸エステル(塩)、またはケイ酸塩でありうる。その捕捉は、(C=Nとして示される)共有二重結合を経由して固体支持体に結合した種を生成し、ここで、Cは糖部分に、Nは捕捉基に由来する。この固定化糖はその環形態と平衡でありうるし、特にその還元糖がピラノースならば、固定化糖はその環状6員環形態と平衡でありうる(例えば図1の化合物CおよびC’参照)が、その糖上の適切なOH基が置換されていないのであれば、その5員環形態も平衡でありうる。
【0085】
捕捉反応はいずれかの有用な溶媒中で行うことができる。当業者は、与えられたいずれかの化合物AおよびBに有用な溶媒を容易に同定することができるものである。その溶媒は、例えば水、水性緩衝液、有機溶媒、ならびに混合された水性溶媒および有機溶媒からなる群から選択することができる。その溶媒は、酸、塩基、塩、二価金属陽イオン、洗剤(界面活性剤)、シクロデキストリンもしくはカリキサレンなどの包接複合体形成分子、キレート剤(例えばEDTA)、ホウ酸塩、ボロン酸エステル(塩)、またはケイ酸塩を含めた錯化剤などの1つまたは複数の添加物を含む、前述のいずれかのものでもありうる。
【0086】
好ましい実施形態では、反応物に添加される固体支持体(図1の化合物B)の量は、還元糖に関してモル過剰の捕捉基が存在するように調整され、好ましくは前記過剰は、例えば少なくとも2倍、好ましくは少なくとも5倍、より好ましくは少なくとも10倍、例えば少なくとも50倍、例えば少なくとも100倍以上大きいものである。この過剰は、還元糖のより効率的な捕捉を確実にするであろう。
【0087】
捕捉反応をいずれかの温度で行うことができるが、好ましくは0から100℃の範囲の温度で行う。
【0088】
C.洗浄
捕捉基との反応により、いったん還元糖が固体支持体に固定化されたならば(図1のステップA+B→C)、その固体支持体を洗浄して非共有結合した物質を除去することができる。したがって、他の化合物、特に−NH2反応基を有さない他の化合物を含む溶液中にその還元糖が用意されたならば、その還元糖を前記溶液から精製することができる。したがって、還元糖が、例えば粗細胞抽出物などの形態の非精製形態で用意されることは、本発明に含まれる。グリコシダーゼもしくはアミダーゼなどの酵素の作用により、または化学試薬によるグリコシド結合の切断を経由して、精製または部分精製した糖タンパク質、糖脂質、またはグリコシドからその還元糖を生成させることができることも含まれる。
【0089】
当業者は、与えられた固定化糖(図1、化合物C)について適切な洗浄条件を容易に同定することができる。その洗浄は、例えば洗剤および変性剤に加えて上に言及したいずれかの添加物を場合により含む、上に言及したいずれかの溶媒を用いて行うことができる。洗浄をいずれかの温度で実施することができるが、好ましくは0〜100℃の範囲の温度で行う。
【0090】
C→D.キャッピング
固定化糖に結合した固体支持体(図1の化合物Cなど)は、未反応の遊離−NH2基をまだ含むので、この固体支持体を、その有用性の範囲を増加させる独特の操作に供することができる。
【0091】
本発明の好ましい一実施形態では、還元糖の固定化に続いて、CのC=N結合が反応しない条件で、当技術分野で十分に公知のアシル化剤(例えば無水酢酸)または他の窒素反応剤などのキャップ剤で未反応の−NH2基をキャップする。キャップ後に、その固体支持体は遊離アミン基をもはや全く有さず、求電子体に対して非常に低反応性のキャップされた窒素原子(N(H)キャップ)だけを有する。化合物Cのキャップ生成物は、例えば−R−N(H)キャップ基を有する一般構造D(図1参照)を有し、ここで、(H)はキャップ基の構造に応じて存在することもあるし、存在しないこともある。
【0092】
したがって、糖を固体支持体と結合させているC=N結合が−NH−に還元されるならば、それは、R−NH−CH2−という配列におけるsp3形式で混成した窒素原子であろう。したがって、特異的反応をこの基に向けて、その還元糖で特異的な化学量論的反応を起こすことができる。
【0093】
好ましくは、キャップ剤は、C=N官能基と実質的に反応せずに残りの−NH2基と特異的に反応する。そのような試薬は当技術分野で十分に公知であり、その試薬には、アミド結合形成に使用される一般のアシル化剤、例えば無水酢酸、他のアルカン酸無水物、芳香族無水物(例えば安息香酸無水物)、環状無水物(例えばコハク酸無水物、フタル酸無水物)、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、およびペプチド結合の固相合成を含めたアミド結合形成に一般に使用される多様な活性エステルなどの他の活性エステルが挙げられる。あるいは、対応する遊離酸と、ペプチド結合形成に一般に使用されるDCCなどのin situ活性化剤とを添加することにより−NH2基をキャップすることによって、in situで活性エステルを生み出すことができる。アルキルイソチオシアネート(R−NCS)、アリールイソチオシアネート(Ar−NCS)、アルキル化剤R−L(Lは、典型的には系列Cl、Br、I、OS(O)2R’からの脱離基であり、R’はアルキルまたはアリールでありうる)、αβ不飽和カルボニル化合物(CHR=CH−CO−(RはH、アルキルもしくはアリール、または置換されたアルキルもしくはアリールでありうる))またはαβ不飽和スルホン(CHR=CHS(O)2R’またはAr(Rは、H、アルキルもしくはアリール、または置換されたアルキルもしくはアリールでありうる))などのマイケルアクセプター、スルホン化剤(RSO2Clなど)およびその誘導体などの、−NH2基に反応性であることが公知の他の試薬を使用することができる。同様に、一般式RO−C(O)L(Lは上述)のカルボネートの活性エステルとの反応により−NH2基をキャップすることができる。
【0094】
D→E.還元
本発明の好ましい態様では、還元剤を使用して、糖をリンカーに結合しているC=N結合(例えば図1の化合物D)を還元する。十分に公知の多様な還元剤によりC=N結合を還元することができ、好ましくはその還元剤は二重結合を飽和させる一方で、N上に水素原子を配置することができる。
【0095】
特に価値があるのはBH結合を有するボランまたは水素化ホウ素であり、その例には、NaBH4、NaCNBH3、およびBH3−ピリジン、BH3−ジメチルスルフィドなどのBH3複合体が挙げられる。SiH結合を有するシランなどの、構造R3SiHを有するシランを使用することもでき、同様にジイミドなどの水素移動剤または均一系の水素化触媒もしくは金属−H結合を有する水素化触媒を使用することができる。
【0096】
還元の結果として、リンカーと、場合によりスペーサーとを介して固体支持体に好ましくは結合した糖CH−NH−という構造を含む反応性糖が生じる。一般に、その還元糖がアルデヒドであったならば、還元の結果として糖CH2−NH−という構造の化合物が生じるであろう。その還元糖がケトンであったならば、還元の結果として糖CH−NH−という構造の化合物が生じるであろう。
【0097】
還元生成物は、例えばsp3形式で混成したN原子を有する一般式E(図1)の生成物である。
【0098】
C→Cred→E
この方法の別の好ましい実施では、キャッピングのステップおよび還元ステップの順序が逆になる。上記D→Eに記載したいずれかの試薬により、化合物CにおけるC=N結合の還元(図1)を実施して、構造Credの化合物(図1)を生成させることができる。この還元はin situでも行うことができ、これは(NaCNBH3などの)還元剤を還元糖と同時に固体支持体(例えば化合物B)に添加することにより、それが形成するときにC=N結合が還元され、同じくCredが生成することを意味する。したがって、還元糖を含む試料を固体支持体および還元剤と共に同時にインキュベートすることができることが本発明に含まれる。したがって、C=N結合の還元(ステップv)は、還元糖と固体支持体のNH2基との反応(ステップiii)の直後に行われるであろう。次に、糖CH−NH−部分との反応を引き起こさない条件で、上記C→Dに記載したいずれかの試薬を使用して、Credにおける遊離−NH2基をキャップすることができる。特に、本発明のこの実施形態では、キャップ剤が第2アミノ基よりも第1アミノ基と選好的に反応することが好ましい。第2アミノ基よりも第1アミノ基との選好的(優先的)な反応が生じるように反応温度および時間を調整することも好ましい。アミノ基と反応する事実上全ての化合物は、より多く置換されたアミノ基よりも第1アミノ基と迅速に反応するが、例えば活性ベンゾイルエステル、イソプロパン酸活性エステル、ピバロイル活性エステル、Boc無水物またはBoc−アジドなどのように当該化合物が立体的に大きい場合にこれは特にあてはまる。第2アミノ基よりも第1アミノ基と選好的(優先的)に反応させるのに有用な化合物および条件は、Greeneら、1999、Protective Groups in Organic Synthesis、第3版、第7章、503〜653頁に記載されている。他の非常に好ましいキャップ剤は、NHS−エステルまたは立体障害されたペンタフルオロフェニル(PFP)エステルまたはテトラフルオロフェニル(TFP)エステルである。
【0099】
E→F.タグの付加
上記経路のいずれかにより得られた図1の化合物Eは、求電子体に対して非常に低い反応性のキャップされた窒素原子(N(H)キャップ)と、糖CH2−NH−Rという配列におけるsp3形式で混成した窒素原子とに結合した固体を含む。したがって、Eと、適切な窒素反応性官能基(好ましくはその窒素反応性官能基は弱求電子体(mild electrophile)である)との反応の結果として、sp3窒素原子への求電子体の付加が限定的に、またはほぼ限定的に生じ、その糖が結合した窒素に、本明細書において「タグ」と記載した分子構造または別の誘導化剤が効果的に付加される。タグの付加生成物を図1にFとして示す。
【0100】
この説明全体にわたり、用語「窒素反応基」は、sp3形式で混成した窒素に対する反応性を記載するために使用され、例えばその窒素は、構造R−NH−R’の化合物、例えば、RおよびR’が独立して(場合により置換された)アルキルもしくはアリールである、アミン、またはヒドロキシルアミン誘導体(R−NH−OR’)もしくはヒドラジン誘導体(R−NH−NH−R’)などにおける、R’が−NH−に結合したOまたはNなどの複素原子を有する化合物の中のものである。
【0101】
誘導体化剤(例えばタグ)の同一性、すなわち誘導体化剤の特定の化学構造は、利用者によって選択されることができる。Eにおけるsp3窒素に付加するために、誘導体化剤(例えばタグ)は、それ自体図1で「X」と称される窒素反応性官能基を有するべきである。好ましくは、そのタグは求電子体を含むか、または窒素反応性官能基Xに結合しているべきである。好ましくは、その誘導体化剤はタグ−X(TAG-X:図1参照)という一般構造であり、ここで、Xは窒素反応性官能基である。好ましくは、Xはsp3窒素原子と反応性のいずれかの弱求電子体であるが、好ましくはその糖に存在する−OH基とあまり反応しない(反応性の低い)弱求電子体である。そのような弱求電子体には、イソチオシアネート(タグ−NCS)、活性エステル(タグ−C(O)−L)(ここで、Lはペプチド結合の合成時などでアミド結合形成に一般に使用される脱離基である)、ペプチド結合の合成時などでアミド結合形成に一般に使用される方法によりin situで活性エステルに活性化することのできるカルボン酸(タグ−COOH)、アルキル化剤(タグ−L)(ここでLは、限定的ではなく好ましくは系列Cl、Br、I、OS(O)2Rからの脱離基であり、ここでRはアルキルまたはアリールでありうる)、(典型的には配列−CR=CH−C(O)−を含む)マイケルアクセプターまたはαβ不飽和スルホン(−CR=CH−S(O)2−)を有するタグ、および前述のうちいずれかのものの誘導体、還元アミノ化により糖CH2−NH−アミノ基と反応できるアルデヒドもしくはケトン、または例えばサンガー試薬である1−フルオロ−2,4−ジニトロベンゼンもしくは4−ハロ−7−ニトロ−2−オキサ−1,3−ジアゾール(NBD)試薬(ここで、ハロゲンは好ましくはFまたはClである)におけるように芳香環がニトロ基などの電気陰性基を有する置換ハロ芳香族基が挙げられる。
【0102】
タグは、例えば蛍光部分、質量分析用タグ、第2の結合パートナーに結合することができる第1の結合パートナー、核酸のことがあり、ここで、前述のいずれかのタグは好ましくは窒素反応性官能基を含むか、またはそれに結合している。特に、タグは本明細書下記にさらに詳細に記載したいずれかのタグのことがあり、ここで、これらいずれかのタグはいずれかの前記窒素反応性官能基に結合していてもよい。
【0103】
化合物Eにタグを付加することにより得ることのできる化合物の例を、図1のFに示す。
【0104】
F.洗浄
一実施形態では、タグ付き糖(例えば図1の化合物F)を洗浄してからいずれかのさらなる操作を行う。したがって、いずれかの量の未結合タグを除去する。タグ付き糖が固体支持体上に固定化されていることから、洗浄を容易に遂行することができる。
【0105】
洗浄後に、共有結合しているタグだけが存在するであろう。したがって、タグの量は固定化糖の量に相関するであろう。したがって、タグの存在を決定することによって固定化糖の量を決定することができる。したがって、与えられた試料中の本質的に全ての還元糖が固定化されたならば、この方法は、一態様では試料中に存在する還元糖の量を決定させるものである。
【0106】
当業者は、与えられたタグ付き固定化糖(例えば図1の化合物F)に適した洗浄条件を容易に同定することができるものである。洗浄は、例えば水、水性緩衝液、有機溶媒、ならびに混合された水性溶媒および有機溶媒からなる群から選択される溶媒を用いて行うことができる。溶媒は、塩、二価金属陽イオン、洗剤(界面活性剤)、シクロデキストリンまたはカリキサレンなどの包接複合体形成分子を含めた錯化剤、キレート剤(例えばEDTA)、ホウ酸塩、ボロン酸エステル(塩)、またはケイ酸塩などの1つまたは複数の添加物を含む前述のいずれかのものでもありうる。さらに、溶媒は場合により洗剤および変性剤を含むことがある。洗浄をいずれかの温度で行うことができるが、好ましくは0〜100℃の範囲の温度で行う。
【0107】
H.切断可能なリンカーの切断
使用されるリンカーが切断可能なリンカーである場合、本発明の方法は、前記切断可能なリンカーを切断することにより捕捉された糖を放出させるステップを含むことがある。好ましくは、その切断は固定化糖の−NH−基への(タグ−Xを用いて付加された)タグまたは(X−テザー−Yを用いて付加された)テザー−Yなどの誘導体化剤の付加に続いて行われる。したがって、タグ付き糖(図1の化合物Gまたは化合物J)をそれぞれFまたはIから溶液に放出させることができる。Gは、窒素原子上にタグを有する糖部分からなり、その窒素原子は切断後に残るリンカーの残基(がある場合)に結合しており、分かり易くするために糖−タグと表示される。Jは、窒素原子上にテザーを有する糖部分からなり、その窒素原子は切断後に残った残基(がある場合)に結合している。テザーは場合によりタグと結合していてもよい。
【0108】
しかし、切断可能なリンカーをこの方法のいずれかの所望の時間で切断することができる。
【0109】
化合物Eに付加されたタグが蛍光特性などの有益な分光特性を有するならば、糖−タグ(図1の化合物G)の量を溶液中で定量することができる。さらに、糖−タグ(図1の化合物G)をHPLCまたはCEなどの分析分離技術に供することができ、そのうえ1つを超える糖が存在するならば個別の構成要素を分離することができ、その相対比を決定し、基準となる標準物質が入手可能ならばその構成要素を同定することができ、それを定量することができる。糖質認識タンパク質に結合することができるリガンドとして糖−タグを使用して、糖質またはタンパク質のいずれかの構造に関する情報を提供することもできる。
【0110】
感度増加、スペクトル解釈の簡略化、または同位体エンコーディングを用いた差次的分析(differential analysis)の実行を可能にすることのいずれかにより、タグが質量分析の実施に有用な糖−タグの特性を与える構造であるならば、溶液に放出された糖−タグを質量分析により好都合に分析することができる。
【0111】
F.分光特性を有するタグ
本発明の好ましい一実施形態では、例えば化合物Eまたは化合物Hに付加されたタグは有益な分光特性を有する。好ましくは、有益な分光特性を有するタグが、構造X−タグの誘導体を使用して例えば化合物Eに付加され、ここで、Xは、本明細書上記「E→F タグの付加」の項に記載したいずれかの窒素反応性官能基などの窒素反応性官能基である。有益な分光特性により、タグを例えば分光分析により容易に可視化できることを意味する。したがって、タグは例えば分光的に検出可能でありうる。好ましい実施形態では、タグは蛍光タグである。そのようなタグ付けの例には、イソチオシアネート(例えばFITC、TRITC)との反応、活性エステル、マイケルアクセプター、αβ不飽和スルホニル(具体的にはビニルスルホン)、およびハロゲン化アルキルおよびアルキルトシレートなどのアルキル化剤、例えばサンガー試薬などのハロアリール化合物が挙げられる。
【0112】
そのようなタグの付加生成物(例えば図1の化合物F)は光を吸収して、検出可能な光を再発光することができる。Fに存在するそのようなタグの数は、Bに付加され捕捉されてCを生成する糖分子Aの数を反映するであろう。したがって、用意された固体支持体(化合物B)が過剰の捕捉基を有するという条件で、試料に本来存在する還元糖分子(A)の数を化合物Fの蛍光により推定することができる。蛍光分子以外のタグを使用することもできる。これらには放射性タグ、リン光タグ、化学発光タグ、UV吸収タグ、ナノ粒子、量子ドット、着色化合物、電気化学活性タグ、赤外活性タグ、ラマン分光分析またはラマン散乱で活性なタグ、原子間力顕微鏡により検出できるタグ、または金属原子もしくはそのクラスターを含むタグが含まれうる。
【0113】
化合物Fの固体支持体が弾性表面波センサーまたは表面プラズモン共鳴センサーなどのセンサーであるならば、そのタグに特異的に結合する種の付加は、タグに、したがって糖分子の数に比例するシグナルの生成を生じることができる。例は、タグがビオチンの活性エステルとの反応により一般に導入されるビオチン残基の場合である。タグがビオチン残基である場合の化合物Eへのアビジン−タンパク質の付加は、センサーにより容易に検出され報告されるシグナルを生じることができる。固定化タグへの第2の結合パートナーの結合を検出するために使用することができるセンサーの他の例には、圧電センサー、アンペロメトリックセンサー、表面プラズモン共鳴蛍光分光分析センサー、二重偏光干渉測定(DPI)センサー、波長インテロゲート光学センサー(wavelength−interrogated optical sensor)(WIOS)、インピーダンスセンサー、光導波路グレーティングカップラーセンサー、音波センサー、および熱量測定センサーが挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0114】
その糖が分光特性を有するタグに結合すると、前記分光特性を決定することができる。(図1の化合物FまたはIなどのように)固体支持体にまだ固定化されている糖について、または(例えば図1の化合物GまたはJの)溶液に放出された糖について分光特性を決定することができる。後者はリンカーが切断可能なリンカーであることを必要とする。分光特性を有するタグの性質に応じて、分光分析などの従来法を使用して前記特性を決定することができる。したがって、本発明の方法は、糖に結合したタグを分光分析により検出するステップを含むことがある。
【0115】
F.質量分析用タグ
本発明の一実施形態において、タグは質量分析用タグである。前記質量分析用タグは、好ましくはX−タグという構造の試薬により付加される(ここでXは、本明細書上記の「タグの付加」の項に言及されたいずれかの窒素反応性官能基などの窒素反応性官能基である)。本明細書に使用される用語「質量分析用タグ」は、好ましくは(本明細書上記の「切断可能なリンカーの切断」の項に記載した)固体支持体からの切断後の、質量分析による生成物の検出および構造の特徴付けを改善する分子を表す。例には、マススペクトルにおいて特徴的な同位体パターンを与える臭素標識の導入がある。そのような臭素標識を付加することができ、例えば化合物Eにp−ブロモフェニルイソチオシアネートを付加することにより、タグが臭素原子を有する構造Fの化合物を生成させることができる。糖質の質量分析における臭素含有標識の有用性は、例えばLiら、2003、Rapid.Commun.Mass Spectr.、17:1462〜1466に記載されている。別の例には、ポジティブイオンモードまたはネガティブイオンモードのいずれかの質量/電荷分離での検出を高めるための、正の電荷または負の電荷のいずれかを与える分子の導入が挙げられる。別の例には、質量分析の実施に一般的なエレクトロスプレー、MALDI、または他のイオン化技術における性能または感度を高める分子の導入が挙げられる。なお別の例には、質量分析により標識された種を定量させる安定な同位体標識分子の導入が挙げられる。同位体標識に有用な方法は、例えばTaoら、2003、Current Opinion in Biotechnology、14:110〜118に総説されている。
【0116】
糖が質量分析用タグに結合すると、タグ付き糖(図1のF、G、I、またはJ)を質量分析により検出することができる。固体支持体にまだ固定化されている糖について(例えば図1の化合物FおよびIについて)質量分析を行うことができるが、好ましくは例えば切断可能なリンカーの切断により(例えば図1の化合物GまたはJについて)溶液に放出された糖について質量分析を行う。したがって、リンカーが切断可能なリンカーであることが好ましい。当業者は、質量分析用タグの性質に応じて適切な質量分析を行うことができるものである。したがって、本発明の方法は、質量分析用タグに結合した糖を質量分析により検出するステップを含むことがある。
【0117】
F.結合パートナー性タグ
本発明の別の好ましい実施形態では、タグは第2の結合パートナーと特異的相互作用することができる第1の結合パートナーであり、前記第1の結合パートナーは例えばX−タグという構造の試薬との反応を経由して化合物E(または化合物H)に付加される。ここで、Xは窒素反応性官能基(例えば「誘導体化剤」)である。第2の結合パートナーは、好ましくは色素、蛍光標識、放射性同位体、重金属、または酵素などの検出可能な標識で標識される。第1の結合パートナーは、例えばタンパク質に対するリガンドである分子のことがあり、そのタンパク質は、化学量論的または増幅後のいずれかで、結果として生じる固定化リガンドの検出に有用である。第1の結合パートナーもまたタンパク質で、第2の結合パートナーが前記タンパク質に対するリガンドであることもある。
【0118】
結合パートナーの例には、ELISAアッセイで一般に使用されるリガンド−タンパク質対が挙げられる。例えば、化合物Eをビオチン化試薬と反応させ、洗浄後に、こうして固定化されたビオチンを、蛍光タグ、放射性同位体、もしくは重金属などの検出可能な標識で直接標識されたストレプトアビジン(またはその他のアビジン)で、または分光分析により検出することのできるシグナルの生成を招く化学反応を触媒することができるホースラディッシュペルオキシダーゼなどの酵素にコンジュゲートしたストレプトアビジン(またはその他のアビジン)で検出することができる。
【0119】
結合パートナーのその他の例は抗体−エピトープ対である。したがって、一方の結合パートナーはエピトープを含むことがあり、他方の結合パートナーは、高い親和性で前記エピトープと結合することができる抗体、好ましくは前記エピトープと特異的に結合する抗体でありうるであろう。
【0120】
F.核酸タグ
本発明の別の実施形態では、タグは核酸である。本発明による核酸は、DNAもしくはRNAなどのいずれかの核酸、またはLNA、PNA、HNAなどのそのアナログでありうる。好ましくは、その核酸はDNAであり、好ましくはDNAオリゴマーである。好ましくは、前記DNAは本明細書上記の「タグの付加」の項で言及したいずれかの窒素反応性官能基などの窒素反応性官能基で誘導体化されている。前記核酸タグの配列は公知であるか、または少なくとも部分的に公知であることが好ましく、このことから、当業者は標準法を用いて前記タグを容易に検出できるようになるであろう。
【0121】
核酸タグは、いずれかの所望の長さ、好ましくは少なくとも特異的検出を可能にするであろう長さでありうる。したがって、好ましくはその核酸は、少なくとも6ヌクレオチド長、さらに好ましくは少なくとも10ヌクレオチド長、例えば10から5000ヌクレオチド長の範囲である。
【0122】
窒素反応性核酸タグを糖に付加した後に、DNAオリゴマーなどの核酸を、次にその相補的核酸または本質的に相補的な核酸にハイブリダイズさせることにより、固体支持体上で直接検出することができる。本質的に相補的な核酸により、例えばSambrookら、1989、「Molecular Cloning/A Laboratory Manual」、Cold Spring Harborに記載されたようなストリンジェントな条件で与えられた核酸にハイブリダイズすることができる核酸を意味する。好ましくは、前記相補的核酸は検出可能な標識に結合していてもよい。前記検出可能な標識は、例えば蛍光標識、放射性同位体、または酵素のことがあり、好ましくは蛍光標識である。したがって、例えばその相補的蛍光標識DNAにハイブリダイズさせることにより、核酸タグを検出することができる。あるいは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはリガーゼ連鎖反応などの当技術分野で公知の従来法を使用して、核酸タグを増幅することができる。したがって、固定化された核酸タグをPCR反応に供して、固定化されたDNAオリゴマーを増幅させることができ、それをPCRにおける定量についての十分に公知の多様な技術により溶液中で測定することができる。この工程は、固体支持体上に存在する非常に少量の糖CH−NH−リンカー−スペーサー−固体の間接的検出および定量に特に有用性を有する。あるいは、DNAに結合した糖をリンカーの切断により溶液に放出させ、続いて例えばPCRにより溶液中で増幅させるか、または本質的に相補的な核酸との特異的ハイブリダイゼーションに基づいて溶液中で検出することができる。
【0123】
E→H テザー
本発明による誘導体化剤は、少なくとも2つの官能基に結合したテザーのこともある。そのような二官能性試薬は、一般にX−テザー−YまたはX−テザー−Ypという構造であろう(ここで、Xは窒素反応性官能基であり、Yは第2の反応性官能基であり、Ypは潜在的反応性官能基または保護された反応基Yである)。化合物EとX−テザー−Y(またはX−テザー−Yp)との反応生成物は、例えば図1の化合物Hの一般構造を有しうる。第2の反応性官能基Yは、固相合成に使用するいずれかの種類の試薬と反応しうる。例えば、糖CH−NH−リンカー−スペーサー−固体におけるNは二官能性試薬(X−テザー−Y)と反応することができ、ここで、一方の官能基(窒素反応性官能基X)は固定化された窒素と結合を作ることにより反応し、他方の官能基は第2の反応性官能基Yでありうるか、または(例えばアンマスキング、脱保護、またはさらなる反応により)第2の反応性官能基Yに変換することができる。
【0124】
テザーはいずれかの有用なテザー、例えば(直鎖、分岐、もしくは環状でありうる)アルキル、アルケニル、もしくはアルキニル、またはアリールであるか、あるいはアミド結合(NC(O)R)もしくはエチレングリコール基(−CH2CH2−O−)を有するか、あるいは複素原子で置換された前述のいずれかのものおよびその誘導体でありうる。
【0125】
第2の官能性反応基Yは、例えばチオール、カルボキシル基、活性化カルボキシル基、ジスルフィド、活性化ジスルフィド、アルキル化剤、アルケン、アルキン、アルデヒド、ケトン、およびアジドからなる群から選択されうる。アルキル化剤は、例えばハロゲン化アルキルまたはα−ハロカルボニル基でありうる。Ypは、例えば保護されたアミンまたは前述のいずれかの基Yの保護された誘導体でありうる。したがって、Ypは、例えば保護されたアミン、保護されたチオール、保護されたカルボキシル基、保護されたアルデヒド、および保護されたケトンからなる群から選択することができる。保護された反応基は、本明細書においてYpと表示され、ここで、Ypは脱保護されて官能性反応基Yを生じることができる。有用な保護基は、Greeneら、1999、「Protective Groups in Organic Synthesis」第3版、John Wiley and Sons、ニューヨークに、具体的にはカルボニル基(第4章、293〜368頁)、カルボキシル基(第5章、369〜453頁)、チオール(第6章、454〜493頁)、およびアミノ基(第7章、494〜653頁)について見出すことができる。保護されたアミンの例には、固相ペプチド合成に一般に使用されるものが挙げられるが、それに限定されるわけではなく、例えばFmoc、Boc、Alloc、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、トリチルおよび置換トリチル、o−ニトロベンジルオキシカルボニル、N−スルフェニル、またはアジドである。しかし、第2の反応性官能基は、固相合成の技術分野ならびに固体支持体および表面への小分子の結合における十分に公知の例などの、固相上で反応するようにされたいずれかの官能基Yまたは保護された官能基(Yp)でありうる。次に、これらの官能基は直接に、または反応性種に脱保護した後に、第2の官能基Yと反応することができる官能基(Z)を有する第2の誘導体化剤を捕捉することができる。
【0126】
化合物HにおけるYがNH2基を有するか、脱保護時にNH2基を有するようにできるならば、E→Fに記載したいずれかのアミン反応性試薬(例えばイソチオシアネート)を使用してタグを付加して一般構造Iの化合物を生成させることができる(図1)。
【0127】
化合物Hにおけるいずれかの官能基Y(図1)と反応するようにされた第2の誘導体化剤は、例えば分光分析用タグまたは上記E→Fの項で言及したいずれかのタグのことがあり、前記タグは窒素反応基の代わりにYと反応することができる官能基(Z)を有するか、またはそれで誘導体化されている。これらのタグは、薬物などの小分子、造影剤、ペプチド、タンパク質、酵素、および生体活性を示す他の分子、DNAまたはRNAなどの核酸のこともある。
【0128】
前記小分子、造影剤、ペプチド、または核酸は、好ましくは与えられた第2の官能性反応基Yと反応することができる官能基Zを有するか、またはそれと結合している。当業者は、有用な官能基YおよびZを容易に同定することができるものである。第2の誘導体化剤は、上記「分光特性を有するタグ」、「質量分析用タグ」、「結合パートナー性タグ」、および「核酸タグ」の項に記載した上に言及したいずれかのタグのこともある。ここで、前記タグは窒素反応性官能基の代わりに、官能基Yと反応することができる官能基Zを有する。Hにおけるテザーに結合した官能基(図1)は、化学反応または酵素反応によりYに変換することができる潜在的基または保護された基(Yp)のこともある。そのYを次にさらに上記のように反応させることができる。この潜在的基が第1または第2アミンに変換することができるならば(すなわちYは−NH2または−NH−という構造を含むであろう)、上記E→Fに記載したいずれかのアミン反応性種を付加して構造Iのタグ付き化合物を生成させることができる。
【0129】
したがって、本発明の方法は以下のステップを含むことができる。
vii.反応性糖の−NH−基を、構造X−テザー−YまたはX−テザー−Ypの二官能性試薬と反応させることにより、前記テザー−Yまたは前記テザー−Ypに共有結合した糖を得るステップ(ここで、Xは窒素反応性官能基であり、Yは第2の反応性官能基であり、Ypは反応性官能基Yに変換または脱保護することができる潜在的官能基である)。
【0130】
このステップは、好ましくは出発物質として図1の化合物Eを使用して行われる。したがって、このステップにより例えば図1の一般構造Hの化合物を作製することができる。
【0131】
二官能性試薬がX−テザー−Ypという構造である本発明の実施形態では、好ましくはこの方法はさらにYpを変換または脱保護して反応性官能基Yを得るステップを含む。このステップはXを−NH−と反応させる前または後に行うことができ、好ましくはXを−NH−と反応させた後に行う。
【0132】
なお、本発明の方法は、以下のステップをさらに含みうる。
viii.Yと反応することができる官能基(Z)を有する第2の誘導体化剤を用意するステップ。
ix.官能基ZおよびYを反応させることによって、テザーおよび第1の誘導体化剤を介してその糖に第2の誘導体化剤を共有結合させるステップ。
【0133】
あるいは、本発明の方法は以下のステップをさらに含みうる。
viii.真核細胞、原核細胞、微生物、ミセル、ファージ、ウイルス、およびナノ粒子からなる群から選択される粒子を用意するステップ(その粒子はYと反応することができる官能基(Z)を含む)。
ix.その官能基ZおよびYを反応させることにより、そのテザーおよびその作用剤を介して糖に粒子を共有結合させるステップ。
【0134】
したがって、ステップix.により図1に概説した一般構造Iの化合物が作製され、ここでタグは粒子である。リンカーが切断可能なリンカーであるという条件で、この方法はリンカーを切断することにより、例えば図1の一般構造Jの化合物を作製するステップをさらに含むことがある。
【0135】
例えば、糖CH−NH−リンカー−スペーサー−固体(例えば図1の化合物E)と二官能性試薬X−テザー−Yとの反応の生成物は一般構造Hを有するが、分子よりも大きいアセンブリー、例えば細菌、ファージ、酵母、ミセル、ウイルス、ナノ粒子、または真核もしくは原核細胞と共有結合を形成することができるさらなる反応基を有するか、または有するようにすることができる。次に、リンカーの切断の結果としてアセンブリーに糖を効果的に付加した糖CH−N(アセンブリー)−リンカーという一般式の種が生じる。したがって、原則として糖を固体支持体からアセンブリーに移動させることができる。
【0136】
酵素処理
固体支持体が生体適合性であるならば、すなわち酵素のような生体高分子との接触を許容し、その活性を有意に改変しないならば、固定化糖分子の構造を改変するであろう酵素によりその固定化糖分子は作用されうる。その固定化糖分子は、例えば図1の一般構造C、Cred、D、E、F、H、またはIのうちいずれかの化合物でありうる。
【0137】
生体適合性固体支持体の非限定的な例には、ガラス、PEGA、SPOCC、または多糖ゲルが挙げられる。本実施形態の中で、リンカーは相対的に長いことが好ましく、よって、リンカーは少なくとも2原子、好ましくは少なくとも6原子を有することが好ましく、さらに好ましくは、リンカーは少なくとも6原子の鎖を含み、例えばそのリンカー内の原子の最長鎖は少なくとも6原子長であり、例えば6から1000原子長である。リンカーが親水性であることも好ましい。
【0138】
図1の化合物GまたはJなどの切断可能なリンカーの切断により溶液中に遊離された糖を、酵素などの生体高分子と接触させることも可能である。
【0139】
酵素は、糖質に作用することができるいずれかのクラスに属しうるものであり、例えばグリコシダーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、およびアシル化、リン酸化、硫酸化、または酸化によりアルコール基を修飾する酵素でありうる。あるいは、糖が−OH基ですでに置換されているならば、例えばアシル化、リン酸化、または硫酸化されているならば、デアシラーゼ、ホスファターゼ、およびスルファターゼがその構造を改変することができる。したがって、本発明の方法は、糖(例えば図1の化合物C、Cred、D、E、F、G、H、I、またはJのうちいずれかのもの)を、グリコシルトランスフェラーゼ、スルファターゼ、ホスホリラーゼ、スルホトランスフェラーゼ、ホスホトランスフェラーゼ、グリコシンターゼ、およびトランスグリコシダーゼのクラスから選択される1つまたは複数の酵素と接触させることにより、前記糖を新しい構造に変換するステップをさらに含みうる。好ましい実施形態では、その方法は、その最初の糖がグリコシダーゼの基質であるという条件で、その糖(例えば図1の化合物C、Cred、D、E、F、G、H、I、またはJのうちいずれかのもの)を1つまたは複数のグリコシダーゼと接触させることにより、新しい還元糖を作製するステップをさらに含む。
【0140】
一例には、まだ遊離−NH2基を有するキャップされていない糖−C=N−リンカー−スペーサー−固体(例えば図1の化合物C)と、1つの単糖残基だけ糖の長さの減少を引き起こすエキソグリコシダーゼとのインキュベーションが挙げられるであろう。この単糖残基の切断は1糖ユニット短い、固体支持体に結合したオリゴ糖を残し、同一の固体支持体または図1の一般構造Bの固体支持体などの異なる固体支持体により捕捉されうる還元糖を生成し、その還元糖に、続いて上記BからJに記載したいずれかの操作を受けさせることができる。
【0141】
したがって、本発明の方法は以下のステップをさらに含むことができる。
a)糖質に作用することができる1つまたは複数の酵素を用意するステップ
b)その糖を前記の1つまたは複数の酵素と接触させるステップ
これらのステップをこの方法の間のいずれかの与えられた時間で行うことができる。その酵素はこの項に記載したいずれかの酵素でありうる。
【0142】
特定の実施形態では、その酵素はグリコシダーゼであり、本明細書上記の概要の項に記載した方法は、以下のさらなるステップを含む。
iii.a)糖質に作用することのできる1つまたは複数のグリコシダーゼを用意するステップ
iii.b)その糖が前記グリコシダーゼの基質であるという条件で、その糖を1つまたは複数の前記グリコシダーゼと接触させることにより、新しい還元糖を作製するステップ
iii.c)固体支持体上に新たに作製された還元糖を固定化するステップ
ステップiii.a〜iii.cは、本明細書上記の「発明の概要」の項に概略を述べられた方法のステップiiiに従って実施することができる。しかし、ステップiii.aからiii.cは、前記方法のステップiv、v、vi、またはviiのうちいずれかのものに従って実施することもできる。したがって、ステップiii.a〜iii.cは、図1の構造C、Cred、D、E、F、H、またはIにより例示されるいずれかの固定化糖に関して実施することができる。
【0143】
特に、前記の新しく作製された還元糖を、同じ固体支持体または別の固体支持体の遊離−NH2基に固定化することができる。前記の他の固体支持体は、例えば未置換であるか、固定化参照標準を有するかのいずれかでありうる。前記の他の固体支持体は、本明細書上記の固体支持体であり、かつその固体支持体は(場合によりスペーサーを介して)リンカーに結合していることが好ましい。ここで、前記リンカーは捕捉基を有する(本明細書上記のリンカー、捕捉基、およびスペーサーの詳細な説明を参照のこと)。
【0144】
特に価値があるのは、構造の情報を得るための同一または異なる固体支持体上でのグリコシダーゼ生成物および放出された単糖の還元および蛍光標識である。特定の例には、構造B(図1)のNH2−リンカー−スペーサー−固体上にGal−GlcNAc−Gal−Glc(ラクト−N−テトラオース、LNT)を捕捉し、捕捉され固定化されたLNT(図1構造Cの化合物の一例)とβ−ガラクトシダーゼとのインキュベーションに続いて、同じ固体支持体(C)上に放出されたガラクトースを捕捉して、未反応のGal−GlcNAc−Gal−GlcC=N−リンカー−スペーサー−固体と、GlcNAc−Gal−GlcC=N−リンカー−スペーサー−固体およびGal−C=N−リンカー−スペーサー−固体である反応生成物との混合物を得ることが挙げられる。次に、上記ステップF→Gに記載したキャッピング、還元、TRITCを用いた蛍光タグ付け、および固体からの切断は、三糖生成物および単糖生成物と公知の標準との同時泳動によって、その固定化LNTが末端β−ガラクトース残基を有していたという確認を可能とする。
【0145】
多くの有用なグリコシダーゼが当技術分野で記載されており、例えばUS5100778またはWO92/19974に記載されたいずれかのグリコシダーゼを本発明に採用することができる。
【0146】
固体支持体が生体適合性である場合、糖−C=N−リンカー−スペーサー−固体(例えば図1の化合物C)の未反応−NH2基を(例えば上記C→Dに記載したように無水酢酸で)キャップし、次に糖質−活性酵素に曝露するか、またはさらに(上記D→Eの項に記載したように)糖CH−NH−リンカー−スペーサー−固体に還元し、次に糖質−活性酵素に曝露することができる。あるいは、図1の化合物CをCredに還元し、次に糖質−活性酵素に曝露することもできる。糖CH−NH−リンカー−スペーサー−固体(例えば図1の化合物E)を(本明細書上記のE→Fの項に記載したように)さらにタグ付けして、糖CH−N(タグ)−リンカー−スペーサー−固体(例えば図1の化合物F)を得、次に糖質−活性酵素に曝露することができる。これらのいずれかの工程では、固体支持体に結合したままである酵素反応生成物をさらに本発明の方法により操作するか、またはさらなる分析のためにリンカーでの反応により切断することができる。固定化糖の断片の切断を生じさせる酵素反応による生成物が溶液中に出現するであろう。ここで、分析化学の確立された技術を用いてその生成物をさらに研究してもよいし、またその生成物自体が還元糖である場合は、図1の一般糖Aについて記載した操作にその生成物を供することができる。
【0147】
個別の糖を、キャピラリーガスクロマトグラフィー(GC)、マイクロカラム超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)、マイクロカラム液体クロマトグラフィー(LC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、高性能キャピラリー電気泳動(HPCE)、イオン交換クロマトグラフィー、または質量分析により検出することができる。誘導体化剤を用いた標識の前または後に、溶液中または固相上のいずれかで個別の糖の検出を行うことができる。
【0148】
検出剤
本発明の一実施形態において、この方法は、以下のステップを含む。
viii.その糖を前記糖と関連(結合)することができる検出剤と接触させるステップ
ix.その検出剤を検出するステップ
好ましくは、前記糖は本明細書上記の固体支持体に固定化されており、したがって、例えば図1の一般構造C、Cred、D、E、F、H、またはIの化合物を前記検出剤と接触させることができる。切断可能なリンカーの切断により前記糖を固体支持体から放出させることも可能であり、したがって、一般構造GまたはJの化合物を前記検出剤と接触させることもできる。
【0149】
その検出剤は前記糖と関連することができるいずれかの作用剤でありうる。好ましい検出剤は他のいずれかの化合物よりもずっと高い親和性で糖と関連することができる化合物であり、糖に対して例えば他のいずれかの化合物よりも少なくとも2倍、例えば少なくとも5倍高い親和性を有する化合物である。
【0150】
さらに、前記検出剤が当業者に公知の方法により直接または間接的に検出することができることが好ましい。例えば、検出剤はそれ自体例えば蛍光化合物または着色化合物(色素)でありうる。検出剤は容易な検出方法を利用することができる化合物でもありうる。
【0151】
本発明の一実施形態において、検出剤はアリールボロン酸またはヘテロアリールボロン酸であり、ここでそのアリール部分は、本明細書上記の「F.分光特性を有するタグ」の項に記載した蛍光タグまたは他のいずれかの検出可能なタグなどの分光学的に活性な基で置換されている。
【0152】
別の実施形態では、検出剤はポリペプチド、好ましくはレクチン、セレクチンおよび他の糖質結合タンパク質からなる群から選択されるポリペプチド、毒素、受容体、抗体、ならびに酵素である。検出剤がポリペプチドの場合、前記ポリペプチドは酵素または蛍光化合物などの検出可能な標識に結合していてもよい。抗体または類似の高親和性化合物の助けを借りてそのポリペプチドを検出することもできる。
【実施例】
【0153】
(実施例)
以下は本発明の方法の例示的な実施例であり、本発明を限定するものとしてみなしてはならない。特に状況から明らかでなければ、大文字A、B、C、Cred、D、E、F、G、H、I、およびJは図1に概略された一般構造を表す。
実験の部
1.Aの実施例:この研究に使用された還元糖
固体支持体Bにより捕捉された還元糖の構造を図2に示す。これらには、単糖であるD−Glc(1)およびD−Gal(2)、二糖であるN−アセチルラクトサミン(LacNAc、3)、三糖であるマルトトリオース(マルトトリオースG3、4)、ならびに四糖であるラクト−N−テトラオース(LNT、5)が含まれる。試料6および7は、単糖Fuc:Man:GalNAcの混合物をそれぞれ2:3:1および1:3:2の比で含有する。試料8はGal(2)およびLNT(5)の1:1混合物を含有する。試料9はマルトビオース(G2)、マルトトリオース(G3)、マルトテトラオース(G4)、マルトペンタオース(G5)、マルトヘキサオース(G6)、およびマルトヘプタオース(G7)のほぼ等モル混合物を含有する。試料10は、PNGアーゼF(製品番号1365177、Boehringer Mannheim GmbH、ドイツ)の作用によりリボヌクレアーゼB(Sigma)から放出されたN−結合オリゴ糖鎖からなる。
【0154】
2.リンカー、スペーサー、およびタグ付き糖の参照標準
2.1 リンカーおよびスペーサー
切断可能なリンカーの合成およびスペーサーの構造を図3に示し、下に説明する。
12:N−Fmoc−4−アミノオキシメチル−安息香酸
4−アミノオキシメチル安息香酸塩酸塩111(2.0g、0.010mol)のジオキサン溶液(20mL)および半飽和Na2CO3溶液(20mL)をFmoc−Cl(2.8g、0.011mol)に加え、得られた混合物を2時間撹拌した。
(注;1:この物質は、以前にDeles,J.ら;PJCHDQ;Pol.J.Chem.;EN; 53;1979;1025〜1032に記載されたように調製された。)
酢酸エチル(100mL)を添加し、(濃)HClを慎重に加えることにより水相のpHを1〜3に調整した。この混合物を分液漏斗に注ぎ、有機相を分離し、水(100mL)で1回洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去して油を得た。その油は放置すると固化した。この粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(石油エーテル、酢酸エチル、AcOH60:40:1)により精製した。収量:3.5g(92%)1H−NMR(250MHz,DMSO−d6)δ=4.05(1H,t,J=6.3Hz)、4.27(2H,d,J=6.3Hz)、4.51(2H,s)、7.08〜7.22(6H,m)、7.46(2H,d,J=7.4Hz)、7.66(2H,d,J=7.1Hz)、7.72(2H,d,J=8.4Hz)、10.29(1H,br.s)、12.78(1H,br.s)。13C−NMR(63MHz,DMSO−d6)δ=47.04、66.03、76.91、120.51、125.41、127.45、128.03、128.89、129.33、129.63、130.82、141.19、144.01、157.12、167.48。MS(ES)m/z=389(MH+)。
【0155】
13:N−Fmoc−4−アミノオキシメチル−安息香酸(12)とブロモ酢酸t−ブチルとの反応
N−Fmoc−4−アミノオキシメチル−安息香酸(12)(1.0g、2.57mmol)をDMF(15mL)に溶かし、Cs2CO3(0.42g、1.28mmol、Aldrich)を加え、続いて室温で5分間撹拌した。ブロモ酢酸tert−ブチル(0.55g、2.28mmol、Fluka)を加え、得られた混合物を50℃に30分間加熱し、次にもう一度室温に冷却した。CH2Cl2(70mL)を加え、その混合物を分液漏斗に注ぎ、半飽和NaHCO3溶液(3×50mL)の次に水(2×50mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させた。減圧下で溶媒を除去して油として粗生成物を得た。フラッシュカラムクロマトグラフィー(石油エーテル中の20〜40%酢酸エチル)後に、収量1.15g(89%)で白色固体を得た。1H−NMR(250MHz,CDCl3)δ=1.37(9H,s)、4.06(1H,t,J=6.7Hz)、4.37(2H,d,J=6.7Hz)、4.61(2H,s)、4.67(2H,S)、7.11〜7.18(2H,m)、7.22〜7.27(4H,m)、7.43(2H,d,J=7.5Hz)、7.60(2H,d,J=7.3Hz)、7.75(1H,s)、7.93(2H,dd,J=1.7Hz,6.6Hz)。13C−NMR(63MHz,CDCl3)δ=26.31、45.28、59.95、65.52、75.99、80.84、118.30、123.27、125.41、126.10、126.93、127.23、128.30、139.29、139.58、141.73、155.70、163.94、165.15。MS(ES)m/z=542(MK+)。
【0156】
14:リンカーの調製
前の実験で得られた白色固体13(1.15g)を、50%のCF3CO2H濃度のCH2Cl2溶液(30mL)中で3時間撹拌し、蒸発乾固させた。油性残渣を少量の酢酸エチルに溶かし、得られた溶液にヘキサンをゆっくりと加えることにより微細白色粉末として生成物を沈殿させた。生成物を濾過し、ヘキサンで2回洗浄し、真空下で乾燥させ、ほぼ定量的な収量(1.0g、98%)で所望の生成物を得た。1H−NMR(250MHz,DMSO−d6)δ=4.07(1H,t,J=6,3Hz)、4.28(2H,d,J=6,3Hz)、4.53(2H,s)、4.62(2H,S)、7.07〜7.14(2H,m)、7.17〜7.26(4H,m)、7.46(2H,d,J=7.4Hz)、7.66(2H,d,J=7.2Hz)、7.77(2H,d,J=8.3Hz)、10.30(1H,br.s)。13C−NMR(63MHz,DMSO−d6)δ=47.04、61.62、66.04、76.79、120.50、125.41、127.46、128.03、129.05、129.69、141.19、142.20、144.00、157.12、165.50、169.47。MS(ES)m/z=446(M−H+)。HRMS(ES)計算値(C25H21NO7Na+):470.1210 実測値:470.1224。
【0157】
2.2 一般構造Gのテトラメチルロダミン(TMR)−タグ付け単糖標準の合成
8つの単糖D−Glc、D−Gal、D−Man、D−Xyl、D−GlcNAc、D−GalNAc、L−Fuc、およびD−GlcAを使用した。D−Gal(2)についての一般合成スキームを図4に示し、生成物21の構造を図4に示し、示したようにGalCH2−N(R)−TMRと省略する。調製された8つ全ての糖CH2−N(R)−TMR単糖誘導体の構造を図5に示す。
【0158】
16:N−Fmoc−4−アミノオキシメチル−安息香酸(12)と臭化ベンジルとの反応
N−Fmoc−4−アミノオキシメチル−安息香酸(12、2.0g、5.14mmol)をDMF(30mL)に溶かし、Cs2CO3(0.84g、2.57mmol)を添加し、続いて室温で5分間撹拌した。臭化ベンジル(1.05g、6.17mmol)を加え、混合物を室温でもう30分間撹拌させた。水(200mL)を加え、得られた混合物をCH2Cl2(2×100mL)で抽出した。合わせた有機相を水(3×50mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、蒸発乾固して油を得て、その油をそれ以上特徴付けずに次の実験に使用した。
【0159】
17:ベンジル−(N−Fmoc−4−アミノオキシメチル)−ベンゾエートからFmoc基の除去
前の実験で得られた粗生成物(16)を、DMF(20mL)中の20%ピペリジンと共に1分間撹拌し、それにシリカゲルのベッドを通過させ、吸引により大部分のDMFおよびピペリジンを除去した。酢酸エチルおよび石油エーテル(1:1)の混合物を用いて生成物をシリカゲルのベッドから溶出させ、ロータリーエバポレーターで濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル、石油エーテル1:1)によりさらなる精製を果たし、1.16g(88%、2ステップ)の収量で透明な油を得た。1H−NMR(250MHz,CDCl3)δ=4.66(2H,s)、5.29(2H,s)、7.25〜7.39(7H,m)、7.99(2H,dd,J=1.7Hz,6.5Hz)。13C−NMR(63MHz,CDCl3)δ=67.11、77.59、128.32、128.57、128.66、129.02、129.19、130.32、136.48、143.47、166.64。MS(MALDI−TOF)m/z=258(MH+)。
【0160】
ガラクトース標準の調製により例示されるTMR標識単糖標準の調製のための一般手順。
18:ガラクトースとベンジル−(4−アミノオキシメチル)−ベンゾエートとの間のオキシム形成
ガラクトース(90mg、0.50mmol)をDMSOおよびAcOHの混合物(7:3、3mL)に溶かし、17(128mg、0.50mmol)を加えた。得られた混合物を55℃で3時間加熱し、水(30mL)に注ぎ、氷浴上で冷却することによって、生成物を純白色結晶として結晶化させた。その生成物を濾過により分離し、水(2×10mL)で洗浄し、真空下で乾燥させ、単一のアノマーとして生成物170mg(83%)を得た。1H−NMR(250MHz,DMSO−d6)δ=3.38〜3.55(4H,m)、3.67〜3.75(1H,m)、4.27〜4.33(1H,m)、5.12(2H,s)、5.37(2H,s)、7.36〜7.52(7H,m)、7.56(1H,d,J=7.6Hz)、8.00(2H,d,J=8.1Hz)。13C−NMR(63MHz,DMSO−d6)δ=63.40、66.52、68.37、69.21、70.04、72.63、74.27、128.25、128.33、128.49、128.91、129.13、129.67、136.52、144.22、154.00、165.78。MS(MALDI−TOF)m/z=442(MNa+)。
【0161】
19:BH3−ピリジンを用いた「ガラクトース−オキシム」(18)の還元
前の実験で得られたオキシム(18、150mg、0.36mmol)をメタノール(10mL)に溶解させた。BH3−ピリジン(225μL、8Mピリジン溶液、1.80mmol、Fluka)およびCCl3CO2H(0.50mL、50%水溶液)を加え、得られた混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物をNa2CO3の半飽和溶液(20mL)に慎重に注ぎ、エーテルおよびヘキサンの1:1混合物(2×10ml)で抽出し、過剰のボラン試薬を除去した。それから(濃)HClを慎重に加えることによりpHを2〜3に調整し、ロータリーエバポレーターで体積を本来の半分に減らした。蒸発中に生成物を綺麗な白色結晶状固体として分離し、それを濾過し、水(2×10mL)およびエーテル(2×10mL)で洗浄し、最終的に生成物を真空下で乾燥させ、純粋な生成物112mg(75%)を得た。1H−NMR(250MHz,DMSO−d6)δ=3.31〜3.33(2H,m)、3.40〜3.55(5H,m)、3.74(1H,t,J=6.3Hz)、5.24(2H,s)、5.37(2H,s)、7.36〜7.50(5H,m)、7.60(2H,d,J=8.2Hz)、8.04(2H,d,J=8.2Hz)。13C−NMR(63MHz,DMSO−d6)δ=53.34、63.40、64.73、66.68、69.37、70.19、70.89、74.20、128.36、128.53、128.92、129.47、129.87、130.27、136.41、139.73、165.62。MS(MALDI−TOF)m/z=422(MH+)。
【0162】
20:TRITCを用いた還元生成物(19)の標識
前の実験で調製した少量の生成物(19、4.2mg、10μmol)をDMF(1mL)に溶かし、TRITC(4.4mg、10μmol)を添加した。1時間撹拌後に、水(10mL)を添加し、(濃)HClの添加により沈殿生成物を再溶解させ、得られた透明赤色溶液を小さいC−18 Sep−Pakカラムに適用して生成物を結合させた。そのカラムに水を数回フラッシュし(合計体積30mL)、続いてメタノール(5mL)で生成物を放出させた。体積を約0.5mLに減らし、CH2Cl2、メタノール、水、AcOH(70:20:9:1)の混合物を用いて、シリカゲルのフラッシュカラムクロマトグラフィーによりその物質を精製した。その化合物の同一性をMSにより確認し、次の実験に直接使用した。MS(MALDI−TOF)m/z=865(MH+)。
【0163】
21:最終標準を得るためのエステル保護基の加水分解
前の実験で得られた全ての物質(20)を1M LiOH(1mL)に溶解させ、30分間撹拌し、続いて水(10mL)を添加し、(濃)HClで酸性化して透明な赤色溶液を得た。水(合計体積30mL)で繰り返し洗浄することによって小型C−18 Sep−Pakカラムで生成物を脱塩し、続いてメタノール(5mL)を用いて生成物を放出させた。体積を約0.5mLに減らし、クロロホルム、メタノール、水の混合物(120:85:20)を用いたシリカゲルのフラッシュカラムクロマトグラフィーによりその生成物を精製した。高分解能MSにより化合物の同一性を確認し、その純度をCEを使用して分析した。HRMS(ES)計算値(C39H43N4O11S):775.2649、実測値:775.2700。
【0164】
ガラクトースについて記載したものと同じプロトコールを使用して、残りの単糖(グルコース、マンノース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、キシロース、フコース、およびグルクロン酸)の標準を同様の収量および純度で調製した。高分解能質量分析により化合物の同一性を同様に確認した(下の表参照)。各化合物はCEで単一ピークを与え、8つの化合物全て(21〜28)をCEで分割することができた(図10)。
【0165】
【表1】
【0166】
3.Bの実施例:固体支持体の調製および命名
PEGA樹脂(PEGA1900、Versamatrix A/S)および調整多孔性ガラス(CPG)の両方を使用して一般構造B(図1)の固体支持体を調製した。BPはリンカーがスペーサーなしに市販の樹脂上のアミノ基に直接結合しているPEGA樹脂を示す。B0、B1、およびB2はリンカーがアミノプロピル化ガラス(AMP−CPG、CPG−Biotech)にそれぞれ0、1、および2個のスペーサーを経由して結合したCPGを示す。4つの固体支持体の構造を図6に示す。
【0167】
3.1 BP(一般構造BのPEGA樹脂)
メタノール中で膨潤した市販のPEGA1900樹脂(アミノ基の負荷:0.23mmol/g)1gをDMFで繰り返し洗浄し、メタノールが完全の除去されたことを確認した。リンカー(14)(308mg、0.69mmol)、TBTU(207mg、644mmol)、およびDIPEA(119mg、0.92mmol)をDMF(10mL)中で混合し、放置して5分間予備活性化させてからその混合物を樹脂に加えた。3時間後に試薬を吸引により除去し、樹脂をCH2Cl2(5×20mL)で洗浄した。
【0168】
樹脂のごく一部のを、Kaiser試験のために採取し、その試験により樹脂にリンカーがうまく結合したことを確認した。同様に、樹脂へのリンカーの負荷を実施例3.3に記載したように決定し、標準曲線と比較することにより約0.20mmol/gであることを見出した。それからDMF中の20%ピペリジンを用いて(15mLで2分間および15mLで18分間)処理することにより残りの樹脂からヒドロキシルアミン保護基(Fmoc)を除去し、続いてDMF(5×20mL)およびCH2Cl2(7×20mL)を用いて徹底的に洗浄した。その樹脂を高真空下で24時間乾燥させ、最終PEGA樹脂(BP)を得て、それをその後の実験全てに使用した。
【0169】
3.2 B0、B1、およびB2(調整多孔性ガラス、CPG)
B0:リンカー14とCPG−NH2との結合
AMP CPG(250mg、負荷=50.1μmol/g、0.0125mmol。Millipore、製品番号AMP1400B)をDMF(3×2mL)、50%DIPEA(3×2mL)、およびDMF(3×2mL)で洗浄した。DMF中の14(17mg、0.038mmol)、TBTU(12mg、0.037mmol)、およびDMF中のDIPEA(8.6μL、0.05mmol)の混合物でビーズを室温で一晩処理した。ビーズをDMF(3×2mL)およびCH2Cl2(3×2mL)で洗浄し、ピリジン中の50%Ac2Oで室温で15分間処理し、CH2Cl2(3×2mL)、DMF(3×2mL)、およびCH2Cl2(3×2mL)で洗浄し、乾燥した。B1について記載したように負荷を14.2μmol/gと決定した。DMF中の20%ピペリジンを使用して2×10分間室温でFmoc基を除去し、DMF(3×2mL)、CH2Cl2(3×2mL)、エタノール(3×2mL)、およびCH2Cl2(3×2mL)で洗浄した。その樹脂を真空中で乾燥させた。
【0170】
B1:1つのスペーサー15およびリンカー14とCPG−NH2との結合
AMP CPG(2.26g、負荷=50.1μmol/g、0.11mmol.Millipore、製品番号AMP1400B)をDMF(3×2mL)、50%DIPEA(3×2mL)、およびDMF(3×2mL)で洗浄した。DMF中の15(168mg、0.34mmol)、TBTU(105mg、0.33mmol)、およびDMF中のDIPEA(78μL、0.45mmol)の混合物でビーズを室温で3時間処理した。樹脂をDMF(3×5mL)およびCH2Cl2(3×5mL)で洗浄し、ピリジン中の50%Ac2Oで室温で15分間処理した。ビーズをCH2Cl2(3×5mL)、DMF(3×5mL)、およびCH2Cl2(3×5mL)で洗浄し、CH2Cl2中の50%TFAと共に室温で2時間処理した。CH2Cl2(3×5mL)、DMF(3×5mL)、およびCH2Cl2(3×5mL)で洗浄した。ビーズの1/3(2.5mL、約0.70g、約35μmol)をDMF(3×5mL)で洗浄した。14(47mg、0.11mmol)、TBTU(33mg、0.10mmol)、およびDMF中のDIPEA(34μL、0.20mmol)で室温で一晩処理した。ビーズをDMF(3×5mL)およびCH2Cl2(3×5mL)で洗浄し、ピリジン中の50%Ac2Oで室温で15分間処理し、CH2Cl2(3×5mL)、DMF(3×5mL)、およびCH2Cl2(3×5mL)で洗浄し、乾燥した。負荷を決定し(29μmol/g)、ビーズをDMF中の20%ピペリジンで室温で2×10分間処理した。ビーズをDMF(3×2mL)、CH2Cl2(3×2mL)、エタノール(3×2mL)、およびCH2Cl2(3×2mL)で洗浄し、乾燥させた。
【0171】
B2:2つのスペーサー15およびリンカー14とCPG−NH2との結合
B1からのスペーサー1つを有する樹脂(5.5mL、約1.54g、約77μmol)の2/3をDMF(3×5mL)で洗浄した。DMF中の15(114mg、0.23mmol)、TBTU(72mg、0.22mmol)、およびDIPEA(53μL、0.31mmol)の混合物でビーズを室温で一晩処理した。ビーズをDMF(3×5mL)およびCH2Cl2(3×5mL)で洗浄し、ピリジン中の50%Ac2Oで室温で15分間処理し、CH2Cl2(3×5mL)、DMF(3×5mL)、およびCH2Cl2(3×5mL)で洗浄し、CH2Cl2中の50%CF3CO2Hで室温で2時間処理し、CH2Cl2(3×5mL)、DMF(3×5mL)、およびCH2Cl2(3×5mL)で洗浄した。半量のビーズ(約42μmol)をDMF(3×5mL)で洗浄し、14(56mg、0.13mmol)、TBTU(39mg、0.12mmol)、およびDIPEA(29μL、0.17mmol)で室温で一晩処理した。ビーズをDMF(3×5mL)およびCH2Cl2(3×5mL)で洗浄し、ピリジン中の50%Ac2Oで室温で15分間処理し、CH2Cl2(3×5mL)、DMF(3×5mL)、およびCH2Cl2(3×5mL)で洗浄し、乾燥させた。B1について記載したように負荷を36μmol/gと決定した。DMF中の20%ピペリジンを用いて樹脂を室温で2×10分間被覆し、DMF(3×5mL)、CH2Cl2(3×5mL)、エタノール(3×5mL)、および3×CH2Cl2(3×5mL)で洗浄し、真空中で乾燥させた。
【0172】
3.3 一般構造B(図1)の固体支持体上の捕捉基の負荷を推定する実施例
DMF中の20%ピペリジンに入れた7つの濃度のFmoc−Gly−OH(0.0mM、0.1mM、0.25mM、0.5mM、1.0mM、1.5mM、2.0mM)を調製した。ナノドロップ技術(Saveen Werner Nanodrop、モデル:ND−1000、製造番号0911)を使用して放出されたフルベンのUV吸光度を290nmで測定した。吸光度を濃度に対してプロットして、傾き0.581mM-1の直線を得た。
【0173】
Fmocで保護されたB1ビーズ(4.8mg)をDMF(200μL)中の20%ピペリジンで10分間処理した。290nmのUV吸光度を0.410と測定し、遊離したフルベン濃度を計算した。
[フルベン]=absobs(吸光度(観察値))/slopestd curve(傾き(標準曲線)
[フルベン]=0.410/0.581mM-1=0.706mM
次に、次式を使用して負荷を計算した。
負荷=[フルベン]×V(溶媒)/m(ビーズ)
B1の負荷:
負荷=0.706mmol/L×200μL/4.8mg=29.4μmol/g。
【0174】
4.A+B→CおよびCの処理の実施例
4.1 還元糖としてグルコースおよび固体支持体としてB2を使用した捕捉条件の変動
一般構造Bの固体支持体に還元糖を捕捉してCを生成させるための好ましい条件を見出すために、様々な溶媒、温度、および添加物を検討した。溶液中の未捕捉のGlcの量は、Molecular ProbesからのAmplex Redアッセイを使用して高感度で容易に推定できると思われることから、D−Glcをモデル化合物として使用した。捕捉されたGlcの量は、このように添加された量からインキュベーション後に溶液中に残存している量を引いたものであると計算された。
【0175】
ビーズ(B2)15〜20mgを異なる条件でグルコース溶液と共に処理した。反応完了時の後に上清を除去し、未反応のグルコースの量をAmplex Redグルコース/グルコースオキシダーゼアッセイキット(A−22189、Molecular Probes)を使用して推定した。
異なる溶媒、濃度、温度、および反応時間を使用したグルコースの捕捉
【0176】
【表2】
【0177】
4.2 BP上の代表的な還元糖の捕捉、処理、および分析
一般構造C、Cred、D、E、F、G、H、I、およびJ(図1)の化合物を記載するために以下の名称を下に使用した。論じている特定の構造を説明している特定の文字、例えばCまたはEを最初に示す。次の上付きの数字は、図6に示した4つの固体支持体のどれが使用されたかを表す。したがって、一例としてBP(図6)が糖を捕捉するために使用されるならば、その生成物は一般構造Cを有し、CはさらにCPと呼ばれるであろう。次の数字は図2に示した還元糖の10試料のうちのどれが捕捉されたかを表す。したがって、CP2はガラクトース(図2の化合物2)を捕捉したPEGA樹脂BPの生成物を表す。同様に、D25は固体支持体B2が四糖LNT(5、図2)を捕捉してC25が得られ、次にさらにキャップされD25になったときに得られた生成物を表すであろう。
【0178】
4.2.1 還元糖3の捕捉および処理
CP3:BP上でのLacNAc(3)の捕捉
最初にLacNAc(3)(38mg、0.10mmol)を水(1.0mL)に溶かし、次にDMSOおよびAcOH(7:3、9mL)の混合物で試料を10倍に希釈し、LacNAc(3)の10mM原液を得ることによって、原液(ストック用溶液)を作製した。次に、この原液から40μL(0.40μmol)を採取し、DMSOおよびAcOH(7:3、150μL)の混合物でさらに希釈し、その全体をBP(10mg、2μmol)に加え、放置して60℃で一晩インキュベートした。この樹脂を、数回DMF(5×0.5mL)およびメタノール(5×0.5mL)で洗浄し、次の実験に直接使用した。
【0179】
DP3:無水酢酸を用いたCP3のキャッピング
実験CP3で得られた全ての樹脂を、Ac2Oおよびメタノールの1:1混合物(0.4mL)で1時間処理し、続いてDMF(5×0.5mL)、水(2×0.5mL)、およびメタノール(5×0.5mL)で洗浄し、次の実験に直接使用した。
【0180】
EP3:BH3−ピリジンを用いたDP3の還元
実験DP3で得られた樹脂をメタノール(0.1mL)で被覆し、BH3−ピリジン(20μL、8Mピリジン溶液)を加え、続いて水(40μL)中の50%CCl3CO2H酸を加えた。反応を室温で2時間進行させ、続いてDMF(5×0.5mL)、メタノール(5×0.5mL)、およびCH2Cl2(5×0.5mL)で洗浄した。この樹脂を次のステップに直接使用した。
【0181】
FP3:TRITCを用いたEP3のタグ付け
TRITC(0.89mg、2μmol)をDMF(0.2mL)に溶かし、得られた溶液を樹脂(EP3)に加え、室温で2時間放置し、続いてDMF(5×0.5mL)、CH2Cl2(5×0.5mL)、メタノール(5×0.5mL)、および最後に水(5×0.5mL)で徹底的に洗浄し、過剰の色素を除去した。この樹脂を次のステップに直接使用した。
【0182】
GP3:支持体からのTMRタグ付けLacNAcの切断
前の実験で得られた樹脂FP3を、LiOHの1M溶液(0.2mL)で被覆し、2時間放置した。吸引によって液体をビーズから収集し、続いて水(3×0.5mL)でビーズを洗浄した。収集した液体および洗浄液をプールし、10%AcOHでpHを中性に調整した。暗赤色溶液をSep−Pakカラム(50mg)に吸着させ、水(2mL)で洗浄し、メタノール(0.5mL)で溶出させた。生成物の同一性をMS(ES)m/z=978(MH+)により確認し、そのプロファイルをCEにより記録した(図11)。
【0183】
4.2.2 還元糖5の捕捉および処理
CP5:BP上へのラクト−N−テトラオース(5)の捕捉
DMSOおよびAcOHの7:3の混合物(3mL)中に5(5.0mg、7.1μmol)を溶かすことにより溶液を作製した。この混合物をPEGA樹脂BP(175mg、35μmol)に加え、60℃で一晩インキュベートした。この樹脂をDMF(5×5mL)およびメタノール(5×5mL)で数回洗浄し、次の実験に直接使用した。
【0184】
DP5:無水酢酸を用いたCP5のキャッピング
実験CP5で得られた全ての樹脂をAc2Oおよびメタノールの1:1混合物(5mL)で1時間処理し、続いてDMF(5×5mL)、水(2×5mL)、およびメタノール(5×5mL)で洗浄し、次の実験に直接使用した。
【0185】
EP5:BH3−ピリジンを用いたDP5の還元
実験DP5で得られた樹脂をメタノール(2mL)中で膨潤させ、BH3−ピリジン(200μL、8Mピリジン溶液)を加え、続いて水(400μL)中の50%CCl3CO2H酸を加えた。反応を室温で2時間進行させ、続いてDMF(5×5mL)、メタノール(5×5mL)、およびCH2Cl2(5×5mL)で洗浄した。最後に樹脂を真空下で一晩乾燥させ、さらに使用するために室温で保存した。
【0186】
FP5:MS−タグを有する臭素を用いたEP5のタグ付け
樹脂を膨潤させるために少量の乾燥樹脂EP5(10mg、0.4μmol)をCH2Cl2(3×0.5mL)で洗浄した。4−ブロモフェニルイソチオシアネート(0.85mg、4μmol)をDMF(0.2mL)に溶解させることによって溶液を作製し、得られた混合物をその樹脂に加え、室温で2時間反応させ、続いてその樹脂をDMF(5×0.5mL)、CH2Cl2(5×0.5mL)、メタノール(5×0.5mL)、および最後に水(5×0.5mL)で洗浄した。この樹脂を次のステップに直接使用した。
【0187】
GP5:支持体からの臭素タグ付きラクト−N−テトラオースの切断
前の実験で得られた樹脂FP5をLiOHの1M溶液(0.2mL)で被覆し、2時間放置した。吸引により液体をビーズから収集し、続いてそのビーズを水(3×0.5mL)で洗浄した。収集した液体および洗浄液をプールし、10%AcOHでpHを弱酸性(pH3〜4)に調整した。この所望の生成物を含有する溶液をSep−Pakカラム(50mg)に吸着させ、水(2mL)で洗浄し、メタノール(0.5mL)で溶出させた。生成物の同一性をMS(ES)m/z=1072(98%、MH+)、1074(100%、MH+)、m/z=1070(98%、M−H+)、1072(100%、M−H+)により確認した。図12は、臭素の2つの同位体をはっきりと識別することができる挿入拡大図有する質量スペクトルを示すものである。
【0188】
4.2.3 還元糖混合物6の捕捉および処理
CP6:BP上での単糖混合物6(Fuc:Man:GalNAc、2:3:1)の捕捉
3つの個別の単糖(Fuc:16mg、0.10mmol、Man:18mg、0.10mol、GalNAc:22mg、0.10mmol)を水(3×1.0mL)に溶かし、次にその試料をDMSOおよびAcOHの混合物(7:3、3×9mL)で10倍に希釈し、3つの単糖の10mM原液を得ることにより、一連の3つの原液を作製した。それから、この3つの原液から以下の量を採取することにより混合物を調製したFuc(20μL、0.2μmol)、Man(30μL、0.3μmol)、およびGalNAc(10μL、0.1μmol)。DMSOおよびAcOHの混合物(7:3、150μL)を加えることにより、この単糖溶液をさらに希釈し、その全体をPEGA樹脂BP(10mg、2μmol)に加え、60℃で一晩インキュベートさせた。この樹脂を数回DMF(5×0.5mL)およびメタノール(5×0.5mL)で洗浄し、次の実験に直接使用した。
【0189】
DP6:無水酢酸を用いたCP6のキャッピング
実験CP6で得られた全ての樹脂を、Ac2Oおよびメタノールの1:1混合物(0.4mL)で1時間処理し、続いてDMF(5×0.5mL)、水(2×0.5mL)、およびメタノール(5×0.5mL)で洗浄し、次の実験に直接使用した。
【0190】
EP6:BH3−ピリジンを用いたDP6の還元
実験DP6で得られた樹脂をメタノール(0.1mL)で被覆し、BH3−ピリジン(20μL、8Mピリジン溶液)を加え、続いて水(40μL)中の50%CCl3CO2Hを加えた。反応を室温で2時間進行させ、続いてDMF(5×0.5mL)、メタノール(5×0.5mL)、およびCH2Cl2(5×0.5mL)で洗浄した。この樹脂を2つの別々の容器(EP6aおよびEP6b、それぞれ約5mg)に分け、次のステップに直接使用した。
【0191】
FP6a:TRITCを用いたEP6aのタグ付け
TRITC(0.5mg、1.2μmol)をDMF(0.2mL)に溶解させ、得られた溶液を樹脂(EP6a)に加え、室温で2時間放置し、続いてDMF(5×0.5mL)、CH2Cl2(5×0.5mL)、メタノール(5×0.5mL)、および最後に水(5×0.5mL)で徹底的に洗浄し、過剰の色素を除去した。この樹脂を次のステップに直接使用した。
【0192】
GP6a:支持体からのTMRタグ付き単糖単糖混合物の切断
前の実験(FP6a)で得られた樹脂をLiOHの1M溶液(0.1mL)で被覆し、2時間放置した。吸引によりビーズから液体を収集し、続いてビーズを水(3×0.5mL)で洗浄した。収集した液体および洗浄液をプールし、10%AcOHでpHを中性に調整した。暗赤色溶液をSep−Pakカラム(50mg)に吸着させ、水(2mL)で洗浄し、メタノール(0.5mL)で溶出させた。3つのタグ付き生成物の同一性をMS(ES)m/z=759(Fuc、MH+)、775(Man、MH+)、816(GalNAc、MH+)により確認し、それらのプロファイルをCEにより記録した(図13)。
【0193】
FP6b:無水酢酸を用いたEP6bのタグ付け
Ac2Oおよびメタノールの1:1混合物(0.2mL)を樹脂(EP6b)に加え、室温で16時間放置し、続いてDMF(5×0.5mL)、CH2Cl2(5×0.5mL)、メタノール(5×0.5mL)、および最後に水(5×0.5mL)で徹底的に洗浄した。この樹脂を次のステップに直接使用した。
【0194】
GP6b:支持体からの酢酸タグ付き単糖混合物の切断
前の実験(FP6b)で得られた樹脂をNH4OHの10%溶液(0.1mL)で被覆し、2時間放置した。吸引によりビーズから液体を収集し、続いてそのビーズを水(3×0.5mL)で洗浄した。収集した液体および洗浄液をプールし、ロータリーエバポレーターで蒸発乾固させ、水(1mL)に再溶解させ、凍結乾燥した。3つのタグ付き生成物の同一性をMS(ES)m/z=356(Fuc、M−H+)、372(Man、M−H+)、413(GalNAc、M−H+)により確認した。3つのシグナルの強度比は約1.3:2:1であった。
【0195】
4.2.4 還元糖混合物7の捕捉および処理
CP7:BP上への単糖混合物7(Fuc:Man:GalNAc、1:3:2)の捕捉
実験CP6で使用したものと同じ3つの単糖原液(各10mM)を以下の実験に使用した。3つの原液から以下の量を採取することによって混合物を調製した:Fuc(10μL、0.1μmol)、Man(30μL、0.3μmol)、およびGalNAc(20μL、0.2μmol)。DMSOおよびAcOHの混合物(7:3、150μL)の添加によってこの単糖溶液をさらに希釈し、その全体をPEGA樹脂であるBP(10mg、2μmol)に加え、60℃で一晩インキュベートさせた。この樹脂を数回DMF(5×0.5mL)およびメタノール(5×0.5mL)で洗浄し、次の実験に直接使用した。
DP7:無水酢酸を用いたCP7のキャッピング
実験CP7で得られた全ての樹脂をAc2Oおよびメタノールの1:1混合物(0.4mL)で1時間処理し、続いてDMF(5×0.5mL)、水(2×0.5mL)、およびメタノール(5×0.5mL)で洗浄し、次の実験に直接使用した。
【0196】
EP7:BH3−ピリジンを用いたDP7の還元
実験DP7で得られた樹脂をメタノール(0.1mL)で被覆し、BH3−ピリジン(20μL、8Mピリジン溶液)を加え、続いて水(40μL)中の50%CCl3CO2Hを加えた。反応を室温で2時間進行させ、続いてDMF(5×0.5mL)、メタノール(5×0.5mL)、およびCH2Cl2(5×0.5mL)で洗浄した。樹脂を2つの別々の容器に分け(EP7aおよびEP7b、それぞれ約5mg)、次のステップに直接使用した。
【0197】
FP7a:TRITCを用いたEP7aのタグ付け
TRITC(0.5mg、1.2μmol)をDMF(0.2mL)に溶かし、得られた溶液を樹脂(EP7a)に加え、室温で2時間放置し、続いてDMF(5×0.5mL)、CH2Cl2(5×0.5mL)、メタノール(5×0.5mL)、および最後に水(5×0.5mL)で徹底的に洗浄し、過剰の色素を除いた。この樹脂を次のステップに直接使用した。
【0198】
GP7a:支持体からのTMRタグ付け単糖混合物の切断
前の実験で得られた樹脂(FP7a)をLiOHの1M溶液(0.1mL)で被覆し、2時間放置した。吸引によりビーズから液体を収集し、続いてビーズを水(3×0.5mL)で洗浄した。収集した液体および洗浄液をプールし、10%AcOHでpHを中性に調整した。暗赤色溶液をSep−Pakカラム(50mg)に吸着させ、水(2mL)で洗浄し、メタノール(0.5mL)で溶出させた。3つのタグ付き生成物の同一性をMS(ES)m/z=759(Fuc、MH+)、775(Man、MH+)、816(GaINAc、MH+)により確認し、それらのプロファイルをCEにより記録した(図14)。
【0199】
FP7b:重水素化無水酢酸を用いたEP7bのタグ付け
重水素化無水酢酸およびメタノール(0.2mL)の1:1混合物を樹脂(EP7b)に加え、室温で16時間放置し、続いてDMF(5×0.5mL)、CH2Cl2(5×0.5mL)、メタノール(5×0.5mL)、および最後に水(5×0.5mL)で徹底的に洗浄した。この樹脂を次のステップに直接使用した。
【0200】
GP7b:支持体からの重水素タグ付け単糖混合物の切断
前の実験(FP7b)で得られた樹脂をNH4OHの10%溶液(0.1mL)で被覆し、2時間放置した。吸引によりビーズから液体を収集し、続いてそのビーズを水(3×0.5mL)で洗浄した。収集した液体および洗浄液をプールし、ロータリーエバポレーターで蒸発乾固し、水(1mL)に再溶解させ、凍結乾燥した。3つの重水素タグ付き生成物の同一性をMS(ES)m/z=359(Fuc、M−H+)、375(Man、M−H+)、416(GalNAc、M−H+)により確認した。3つのシグナルの強度比は約1:4:4であった。
【0201】
4.2.5 還元オリゴ糖混合物9の捕捉および処理
CP9:BP上へのオリゴ糖混合物9(G2〜G7)の捕捉
水(1mL)に等モル量(各10μmol)の純粋なオリゴ糖G2〜G7を溶解することによって溶液を作製した。オリゴ糖含有溶液100μLをDMSOおよびAcOHの混合物(7:3、0.9mL)に加え、その全体をPEGA樹脂であるBP(60mg、12μmol)に加え、放置して50℃で一晩インキュベートした。この樹脂を数回DMF(5×2mL)およびメタノール(5×2mL)で洗浄し、次の実験に直接使用した。
【0202】
DP9:無水酢酸を用いたCP9のキャッピング
実験CP9で得られた全ての樹脂をAc2Oおよびメタノールの1:1混合物(2mL)で1時間処理し、続いてDMF(5×2mL)、水(2×2mL)、およびメタノール(5×2mL)で洗浄し、次の実験に直接使用した。
【0203】
EP9:BH3−ピリジンを用いたDP9の還元
実験DP9で得られた樹脂をメタノール(1mL)で被覆し、BH3−ピリジン(150μL、8Mピリジン溶液)を加え、続いて水(300μL)中の50%CCl3CO2Hを加えた。反応を室温で2時間進行させ、続いてDMF(5×2mL)、メタノール(5×2mL)、およびCH2Cl2(5×2mL)で洗浄した。樹脂を次のステップに直接使用した。
【0204】
FP9:FITCを用いたEP9のタグ付け
FITC(12mg、30μmol)をDMFおよびメタノールの1:1混合物(1mL)に溶かし、この溶液を樹脂(EP9)に加え、室温で2時間放置し、続いてDMF(5×2mL)、CH2Cl2(5×2mL)、メタノール(5×2mL)、および最後に水(5×2mL)で徹底的に洗浄し、過剰の色素を除去した。この樹脂を次のステップに直接使用した。
【0205】
GP9:FITCを使用してタグ付けしたオリゴ糖混合物の支持体からの切断
前の実験(FP9)で得られた樹脂をLiOHの1M溶液(1mL)で被覆し、2時間放置した。吸引により液体をビーズから収集し、続いてこのビーズを水(3×3mL)で洗浄した。収集した液体および洗浄液をプールし、pHを10%AcOHで中性に調整した。得られた強烈な黄色溶液をSep−Pakカラム(350mg)に吸着させ、水(10mL)で洗浄し、メタノール(3mL)で溶出した。6つのタグ付きオリゴ糖の存在をMS(ES)m/z=881(G2、MH+)、1043(G3、MH+)、1205(G4、MH+)、1367(G5、MH+)、1529(G6、MH+)、1691(G7、MH+)により確認し、この混合物のプロファイルをCEにより記録した(図15)。
【0206】
4.2.6 リボヌクレアーゼBから放出されたオリゴ糖の捕捉および処理
CP10:RNアーゼB(10)からのオリゴ糖のBP上への捕捉および処理
RNアーゼB(Sigma、R−7884)のPNGアーゼF消化からの粗オリゴ糖を、Centricon−10濃縮器(Millipore)でタンパク質を除去し、続いてCarbograph SPEカラム(150mgベッド重量;Scantec Lab)で糖質を精製した後で、使用した。0.9Mクエン酸含有DMSOおよびTHFの2:1混合物(100μL)にRNアーゼB(10)2由来の粗オリゴ糖(300μg、約0.2μmol)を溶かすことにより溶液を作製した。この混合物をPEGA樹脂であるBP(5mg、1.0μmol)に加え、60℃で一晩インキュベートした。この樹脂を数回DMF(5×0.3mL)およびメタノール(5×0.3mL)で洗浄し、次の実験に直接使用した。
【0207】
DP10:無水酢酸を用いたCP10のキャッピング
実験CP10で得られた全ての樹脂をAc2Oおよびメタノールの1:1混合物(0.2mL)で1時間処理し、続いてDMF(5×0.3mL)、水(2×0.3mL)、およびメタノール(5×0.3mL)で洗浄し、次の実験に直接使用した。
【0208】
EP10:BH3−ピリジンを用いたDP10の還元
実験DP10で得られた樹脂をメタノール(0.2mL)で被覆し、BH3−ピリジン(10μL、8Mピリジン溶液)を加え、続いて水(20μL)中の50%CCl3CO2Hを加えた。反応を室温で2時間進行させ、続いてDMF(5×0.3mL)、メタノール(5×0.3mL)、およびCH2Cl2(5×0.3mL)で洗浄した。この樹脂を次のステップに直接使用した。
【0209】
FP10:FITCを使用したEP10のタグ付け
FITC(1.9mg、5μmol)をDMFおよびメタノールの混合物(1:1、0.2mL)に溶かし、この溶液を樹脂(EP10)に加え、60゜で2時間放置し、続いてDMF(5×0.3mL)、CH2Cl2(5×0.3mL)、メタノール(5×0.3mL)、および最後に水(5×0.3mL)で徹底的に洗浄し、過剰の色素を除去した。この樹脂を次のステップに直接使用した。
GP10:FITCを使用してタグ付けしたRNアーゼ由来オリゴ糖の支持体からの切断
前の実験(FP10)で得られた樹脂をLiOHの1M溶液(0.2mL)で被覆し、2時間放置した。吸引によりビーズから液体を収集し、続いてビーズを水(3×0.5mL)で洗浄した。収集した液体および洗浄液をプールし、pHを10%AcOHで中性に調整した。この所望の生成物を含有する、黄色溶液をSep−Pakカラム(50mg)に吸着させ、水(2mL)で洗浄し、メタノール(0.5mL)で溶出させた。標識オリゴ糖のプロファイルをCEにより分析した。CE(図16)は、数個のオリゴ糖およびいくつかの未同定混入物の存在を示している。少なくとも1つの公知の構成要素の同一性をMS(ES)m/z=1775(Man5GlcNAcGlcNAcCH2−N−(R)−タグ、MH+)により確認した。
【0210】
4.3 代表的還元糖のCPG支持体上への捕捉および処理
4.3.1 B1上への2の捕捉および処理
C12:B1上へのガラクトース(2)の捕捉
クエン酸−リン酸緩衝液(113μL)中でB1(20mg、0.6μmol)を2(6.6μL、1mg/mL水、0.03μmol)で処理し、55℃で一晩放置した。ビーズをシリンジに移し、水(3×0.5mL)およびエタノール(3×0.5mL)で洗浄し、C12を得た。
D12:無水酢酸を用いたC12のキャッピング
C12(0.6μmol)をエタノール中の50%Ac2Oで室温で15分間キャップし、エタノール(3×0.5mL)で洗浄し、D12を得た。
【0211】
E12:BH3−ピリジンを用いたD12の還元
BH3−ピリジン(25μL)および50%CCl3CO2H(50μL)のエタノール溶液(500μL)の100μLでD12(0.6μmol)を処理した。この混合物を室温で2時間放置した。このビーズをエタノール(3×0.5mL)で洗浄し、E12を得た。
F12:TRITCを用いたE12の標識
E12(0.6μmol)をTRITC(NMP 300μLおよびCH2Cl2 300μLに1.0mgを加えたもの100μL)で処理し、室温で2時間放置した。ビーズをCH2Cl2(3×0.5mL)、エタノール(3×0.5mL)、および水(3×0.5mL)で洗浄し、F12(赤色ビーズ)を得た。
G12:F12の塩基処理
F12’(0.6μmol)をLiOHの1M溶液(100μL)で室温で1時間処理し、得られた赤色溶液を単離し、水中の50%AcOHで中和し、G12(赤色溶液)を得て、この溶液にSep−Pakカラム(水中の30%CH3CN)を通過させ、MS(775.3、MH+)およびCEにより分析した(図17)。
【0212】
4.3.2 B1上への5の捕捉および処理
C15:B1上へのLNT(5)の捕捉
B1(20mg、0.6μmol)をクエン酸−リン酸緩衝液(113μL)中の5(25L、2mg/mL水、0.03μmol)で処理し、55℃で一晩放置した。ビーズをシリンジに移し、水(3×0.5mL)およびエタノール(3×0.5mL)で洗浄し、C15を得た。
D15:無水酢酸を用いたC15のキャッピング
C15(0.6μmol)をエタノール中の50%Ac2Oで室温で15分間処理し、(3×0.5mL)で洗浄し、D15を得た。
E15:BH3−ピリジンを用いたD15の還元
D15(0.6μmol)を、BH3−ピリジン(25μL)および50%CCl3CO2H(50μL)のエタノール溶液(500μL)の100μLで処理した。得られた混合物を室温で2時間放置した。このビーズをエタノール(3×0.5mL)で洗浄し、E15を得た。
F15:TRITCを用いたE15の標識
E15(0.6μmol)をTRITC(NMP 300μLおよびCH2Cl2 300μLに1.0mgを加えたもの100μL)で処理し、室温で2時間放置した。このビーズをCH2Cl2(3×0.5mL)、エタノール(3×0.5mL)、および水(3×0.5mL)で洗浄し、F15(赤色ビーズ)を得た。
【0213】
G15:F15の塩基処理
この樹脂をLiOHの1M溶液(100μL)で室温で1時間処理し、得られた赤色溶液を濾過により分離し、ビーズを水(3×75μL)で洗浄し、水中の50%AcOHで中和し、G15(赤色溶液)を得て、これにSep−Pakカラム(水中の30%CH3CN)を通過させ、MS(ES)m/z=1300.6(M−H+)、1302.4(MH+)およびCEにより分析した(図18)。
【0214】
あるいは、E15を1−フルオロ−2,4−ジニトロベンゼン(サンガー試薬、図8)で以下のように標識することができた。樹脂をエタノール(70μL)中のサンガー試薬(20当量、0.4μL、Sigma)およびTEA(10当量、0.2μL)で55℃で2時間処理した。このビーズをエタノール(3×0.5mL)、CH2Cl2(3×0.5mL)、エタノール(3×0.5mL)、および水(3×0.5mL)(黄色ビーズ)で洗浄し、次にLiOHの1M溶液(70μL)で、室温で1時間処理した(褐色溶液)。得られた溶液を濾過により収集し、このビーズを水(3×50μL)で洗浄した。この混合物を50%AcOHで中和した(黄色溶液)。水中の30%CH3CNを用いてこの混合物にSep−Pakカラムを通過させた。MS(ES)m/z=1023.1(M−H+)。
【0215】
4.3.3 B1上への混合物8の捕捉および処理
C18:B1上へのガラクトース(2)およびLNT(5)の捕捉
B1(20mg、0.6μmol)を2(6.6μL、1mg/mL水、0.03μmol)、5(25μL、2mg/mL水、0.03μmol)、およびクエン酸−リン酸緩衝液(100μL)で処理し、55℃で一晩放置した。ビーズを水(3×0.5mL)およびエタノール(3×0.5mL)で洗浄し、C18を得た。
D18:無水酢酸を用いたC18のキャッピング
C18(0.6μmol)中に残ったヒドロキシルアミンをエタノール中の50%Ac2Oで室温で15分間キャップし、エタノール(3×0.5mL)で洗浄し、D18を得た。
【0216】
E18:BH3−ピリジンを用いたD18の還元
D18(0.6μmol)を、BH3−ピリジン(Fluka、25μL)および50%CCl3CO2H(50μL)のエタノール溶液(500μL)の100μLで処理した。得られた混合物を室温で2時間放置した。このビーズをエタノール(3×0.5mL)で洗浄し、E18を得た。
F18:TRITCを使用したE18の標識
E18(0.6μmol)をTRITC(NMP 300μLおよびCH2Cl2 300μLに1.0mgを加えたもの100μL)で処理し、室温で2時間放置し、F18を得た。ビーズをCH2Cl2(3×0.5mL)、エタノール(3×0.5mL)、および水(3×0.5mL)で洗浄した(赤色ビーズ)。
G18:F18の塩基処理
F18をLiOHの1M溶液(100μL)で室温で1時間処理し、この赤色溶液を分離し、水中の50%AcOHで中和し、G18(赤色溶液)を得て、これにSep−Pakカラム(水中の30%CH3CN)を通過させ、CEにより分析した(図19)。
【0217】
5.固定化オリゴ糖と酵素との反応
5.1 固定化タグ付きオリゴ糖とグリコシダーゼとの反応
5.1.1 スペーサー0個(F05)、1個(F15)、および2個(F25)を有するCPG支持体上での構造F(キャップ=アセチル、タグ=TMR)の固定化ラクト−N−テトラオース(LNT、5)とβ−ガラクトシダーゼ(ウシ精巣、SIGMA製品番号G−4142、1U/mL)との反応。3つの固定化オリゴ糖全てを本質的にF15について記載した(4.3.2項)ように調製した。
【0218】
固体支持体(5mg)をβ−ガラクトシダーゼ(0.2%BSAを含有する0.1Mクエン酸/リン酸緩衝液(pH5.0)中の濃度0.2U/mLの溶液100μL)と共に37℃で23時間インキュベートし、次にその樹脂を3×水、3×エタノール、3×CH2Cl2、3×EtエタノールOH、および3×水で洗浄した。このビーズをLiOHの1M溶液(60μL)で室温で1時間処理し、溶液中に一般構造G05、G15、およびG25の生成物を得た。各赤色溶液を濾過により収集した。濾液を50%AcOHで中和し、CEを使用して分析した。
【0219】
図20は、F05についてLNTから検出できるガラクトースの切断がなく、F15について39%の変換(すなわち四糖の39%が末端Gal残基を失い、三糖に変換された)およびF25について83%の変換があったことを示す。したがって、スペーサーの性質は酵素反応の過程に重要であることが見出された。
【0220】
5.1.2:2つのスペーサーを有するCPG支持体上での固定化マルトトリオースF24(キャップ=アセチル、タグ=TMR)と黒色麹菌由(アスペルヂルス ニガー)来グルコアミラーゼ2(親切にもBirte Svensson博士、Carlsberg Laboratoriesから供与を受けた)との反応。本質的にF15について記載した通り(4.3.2項)であるが、還元糖としてマルトトリオース(G3、図2)および固体支持体としてB2を使用してF24を調製した。F24(約5mg)を、0.2%BSAを含有する0.1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)中の濃度0.1mg/mLの酵素50μLと共に37℃で23時間インキュベートした。上記のように洗浄および切断後に、生成物をCEにより分析した(図21)。その生成物は、固定化標識マルトトリオースから標識マルトトリオースおよびグルコースの間に溶出する新しいピークへの完全な変換を示し、したがってマルトビオース(G2)TMR付加物と特定された。
【0221】
5.2 固定化タグなしオリゴ糖とグリコシダーゼとの反応および同支持体上に放出された還元単糖の捕捉
構造C25の固定化LNT(非還元、キャップなし、タグなし)とβ−ガラクトシダーゼ(ウシ精巣)との反応を、2つのスペーサーを有するCPG固体支持体上で実施した。本質的にC15について記載した通り(4.3.2項)にC25を調製した。使用前に、Microcon YM−3遠心濾過装置(Millipore)を使用して繰り返し遠心分離することにより酵素溶液から小分子混入物を除いた。C25(5mg)を、0.2%BSAを含有する0.1Mクエン酸/リン酸(pH5.0)中の濃度0.9Ug/mLの酵素55μLと共に37℃で23時間、次に55℃でさらに20時間インキュベートして、放出したガラクトースの捕捉を可能にした。この固体を洗浄し、還元し、無水酢酸でキャップし、TRITCを使用してタグ付けし、C15からG15への変換について上記のようにLiOHで切断した。切断生成物のCEを図22に示す。図22は未反応LNT(32%)ならびに同様の量のTMR−標識生成物である三糖および切断されたガラクトースの両方の存在を示している。この実験は、切断された糖の、それが切断された同じキャップなし支持体上への捕捉を確認するものである。
【0222】
6.キャップ剤の変更
6.1.Dを生成するためのCのキャッピング
キャップ剤の選択を使用してCからDへの変換を実施した(図1)。C22を基質として使用した(ここでその固体は2つのスペーサーを有するCPGであり、捕捉された糖はガラクトースであった)。次に、C上のアミノ基をとりわけ無水酢酸、安息香酸無水物、トリクロル酢酸無水物、およびジブロモキシレンでキャップした(図6)。50%のキャップ剤濃度のエタノール溶液を用いてキャッピングを室温で15〜120分間行った。次に、C12からG12への変換について記載したように(4.3.1項)試料を処理、すなわち還元、TRITCを使用した標識、塩基切断、およびCEによる分析を行った。結果を図23に示す。図23は、全ての条件が、電気泳動図で化合物21の前に出現する様々な量の他の不純物を有する標的TMR−標識ガラクトース(図5の化合物21)をもたらしたことを示すものである。
【0223】
6.2 Eを生成するためのCredキャッピングの実施例
上記6.1項からのC22を、上記D12からE12への変換について記載した通りに(4.3.1項)、BH3−ピリジンで還元した。生成物Cred22は、それがキャップなしNH2基を有する点でE12と異なる。Cred22(5mg)を、DMF(50μL)中の安息香酸NHS−エステル(0.4mg、1.75μmol)およびTEA(1.0μL)と60℃で一晩反応させた。次に、一般構造E22(ベンゾエートであるキャップを有する)を有する反応生成物を洗浄し、TRITCを使用してタグ付けすることにより通常通り処理し、切断し、CEにより分析した。図24はその生成物がC→D→E→Gの順序により形成されたものと実質的に同一であることを示すものである。生成物の同一性をそのMS(ES)m/z=775.0(MH+)により確認した。
【0224】
7.テザー使用の実施例:E→H→I→J(図1)
X−テザー−YPの実施例としての29の合成
29:4−イソチオシアナト−ベンジル)−カルバミド酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステル
4−アミノベンジルアミン(0.93mL、8.20mmol)の無水CH2Cl2溶液(20mL)に、TEA(1.15mL、8.27mmol)に続いてFmoc−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(2.48g、7.35mmol)の乾燥CH2Cl2(10mL)溶液を加えた。30分間撹拌後にCH2Cl2(100mL)を加え、得られた混合物を飽和水性NaHCO3(2×50mL)および食塩水(50mL)で連続的に洗浄し、乾燥した(Na2SO4)。溶媒を減圧下で除去し、残渣を乾燥カラム真空クロマトグラフィー(n−ヘプタン中の0〜60%EtOAc)により精製し、Fmoc保護された物質である(4−アミノ−ベンジル)−カルバミド酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステル(2.30g、91%)を得た。1H−NMR(250MHz,DMSO−d6)=4.03(2H,d,J=5,3Hz)、4.22(1H,t,J=6,8Hz)、4.33(2H,d,J=6,8Hz)、4.95(2H,s)、6.53(2H,d,J=8.3Hz)、6.92(2H,d,J=8.2Hz)、7.29〜7.44(4H,m)、7.64〜7.72(3H,m)、7.88(2H,d,J=7.3Hz)。13C−NMR(63MHz,DMSO−d6)δ=43.97、47.19、65.65、114.09、120.46、121.75、125.58、127.11、127.42、127.96、128.47、129.30、141.13、144.32、147.89、156.63。MS(ES)m/z=345(MH+)。
【0225】
(4−アミノ−ベンジル)−カルバミド酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステル(718mg、2.09mmol)のCH2Cl2溶液(30mL)を、チオホスゲン(199μL、2.61mmol)のCH2Cl2−水混合物溶液(40mL、1:1、v/v)に滴下した。この混合物を一晩撹拌した後に、有機層を分離し、乾燥させた(Na2SO4)。減圧下で溶媒を除去し、残渣を乾燥カラム吸引クロマトグラフィー(n−ヘプタン中の0〜100%CH2Cl2)により精製し、29(643mg、80%)を得た。1H−NMR(250MHz,DMSO−d6)δ=4.18〜4.25(3H,m)、4.38(2H,d,J=6.7Hz)、7.25〜7.45(8H,m)、7.69(2H,d,J=7.3Hz)、7.87〜7.90(3H,m)。13C−NMR(63MHz,DMSO−d6)δ=43.64、47.19、65.70、115.55、120.48、125.15、125.49、126.20、127.42、127.98、128.72、128.83、133.55、136.29、140.26、141.16、144.23、156.74。MS(ES)m/z=387(MH+)。
【0226】
HP5:29を使用したEP5へのFmoc保護されたアミノテザーの結合(図9)
乾燥樹脂(EP5)(0.2μmol)5mgをCH2Cl2で2回洗浄し、樹脂がほどよく膨潤していることを確認した。Fmoc保護されたテザー(29)(0.8mg、2μmol)をDMF(0.2mL)に溶かし、樹脂に加え、2時間反応させた。樹脂をDMF(5×0.5mL)およびCH2Cl2(5×0.5mL)で洗浄し、Fmoc保護基を標準条件(DMF中の20%ピペリジン、0.5ml、2×10分間)で除去した。DMF(5×0.5mL)で洗浄後に、その樹脂を次の実験に直接使用した。
【0227】
IP5:TRITCを使用したHP5のタグ付け
遊離第1アミノ基を有する実験HP5で得られた樹脂を、DMF(0.2mL)中のTRITC(0.9mg、2μmol)と共に室温で2時間インキュベートし、続いてDMF(5×0.5mL)、CH2Cl2(5×0.5mL)、メタノール(5×0.5mL)、および最後に水(5×0.5mL)で徹底的に洗浄し、過剰の色素を除いた。この樹脂を次のステップに直接使用した。
【0228】
JP5:TRITCを使用してアミノテザーを介してタグ付けされたラクト−N−テトラオースの切断
前の実験(IP5)で得られた樹脂を、LiOHの1M溶液(0.2mL)で被覆し、2時間放置した。吸引により液体をビーズから収集し、続いてそのビーズを水(3×0.5mL)で洗浄した。収集された液体および洗浄液をプールし、10% AcOHでpHを弱酸性(pH3〜4)に調整した。この所望の生成物を含有する暗赤色溶液をSep−Pakカラム(50mg)に吸着させ、水(2mL)で洗浄し、メタノール(0.5mL)で溶出させた。生成物の同一性は MS(ES)m/z=1465(MH+)により確認した。
【0229】
標識糖質のキャピラリー電気泳動分析
自動PrinCE 2−lift、モデル560CEシステム(Prince Technologies、オランダ)を使用してキャピラリー電気泳動(CE)を行った。50〜75cmの範囲の有効長(および検出ウインドウから出口までの余剰長30cm)を有するID75μmの未被覆溶融シリカキャピラリーで、サーモスタットで25℃に制御して分離を実施した。CEの泳動液(BGE)は、(A)150mM SDSを含有する50mMホウ酸緩衝液(pH9.3)または(B)0.8%(w/v)γ−CD(Sigma、C−4892)を含有する0.2Mホウ酸緩衝液(pH9.3)のいずれかであった。条件Aは図11および15〜22に示した分析に使用した。条件Bは図10、13、14、23、および24に示した分析に使用した。
【0230】
使用前に室温で、2000mbarで1M NaOHを用いて30分間、水を用いて10分間、およびBGEを用いて10分間すすぐことによって、キャピラリーをコンディショニングした。運転の間に2000mbarで1M NaOHを用いて3分間、水を用いて3分間、およびBGEを用いて3分間キャピラリーを洗浄した。試料を50mbarで6秒間流体力学的に注入し、25kVの電位差を横切るように電気泳動した。全ての実験を通常の極性、すなわち入口が陽極となるように実施した。検出を、適切なフィルターを備える蛍光検出器(Argos 250B、Flux Instruments、スイス)を使用して実施した。TRITCを使用して標識された試料については、励起および発光フィルターはそれぞれ546.1/10および570nmであった。FITCを使用して標識した試料については、励起および発光フィルターはそれぞれUG11(200〜400nm)および495nmであった。
略号
本出願にわたり以下の略号を使用した。
AMP CPG アミノプロピル調整多孔性ガラス
BGE 泳動液(バックグランド液)
BSA ウシ血清アルブミン
CE キャピラリー電気泳動
CPG 調整多孔性ガラス
DIPEA N,N−ジイソプロピルエチルアミン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
ES エレクトロスプレー
FITC フルオレセインイソチオシアネート
Fmoc 9−フルオレニルメチルオキシカルボニル
HRMS 高分解能質量分析
LNT ラクト−N−テトラオース
MS 質量分析
NHS N−ヒドロキシスクシンイミド
NMP 1−メチル−2−ピロリドン
PEGA ポリエチレングリコールアクリルアミドポリマー
RNアーゼB リボヌクレアーゼB
rt 室温
TBTU N,N,N’,N’−テトラメチル−O−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)ウロニウムテトラフルオルボレート
TEA トリエチルアミン
TMR テトラメチルロダミン
TRITC テトラメチルロダミンイソチオシアネート
【図面の簡単な説明】
【0231】
【図1.A−E】本発明による方法の一例を示す。A〜Eは、反応性糖Eを得るために固体支持体上に還元糖を捕捉および操作することを示す。
【図1.E−G.J】E〜GおよびJは、固体支持体上での反応性糖Eの操作およびタグ付き糖の切断を示す。本発明の方法は、図1に示された1つまたは複数のステップを含むことがある。図1では、還元糖はピラノースで例示されるが、この方法にいずれかの還元糖を使用することができる。この図は、リンカーがスペーサーを介して固体支持体に結合している例を示すが、そのリンカーは固体支持体に直接結合していてもよい。その固体支持体は、この図で「固体」と称されるが、本明細書下記に言及したいずれかの固体支持体でありうる。
【図2】本発明の実施例で使用された還元糖およびその混合物の構造1〜10を示す。
【図3】リンカー(14)の合成およびスペーサー(15)の構造を示す。
【図4】単糖標準として使用されたTMRタグ付きD−ガラクトース誘導体であるGalCH2−N(R)−TMR(21)の溶液相合成および命名の説明を示す。
【図5】糖CH2−N(R)−TMRという一般式である8つの通常の哺乳動物単糖の合成タグ付き誘導体の構造21〜28を示す。
【図6】4つの固体支持体BP、B0、B1、およびB2の構造を示す。
【図7】一部のキャップ剤の構造を示す。
【図8】タグ−Xという一般構造である、使用したいくつかの窒素反応性タグ剤の構造を示す。
【図9】X−テザー−YPという一般構造である保護された窒素反応剤29を用いたE→J(30)の例を示す。
【図10】図5に示された8つのTMR標識単糖標準のCEによる分離を示す。溶出順序はGalNAc(27)、Xyl(24)、Man(23)、Glc(22)、GlcNAc(26)、Fuc(25)、Gal(21)、およびGlcA(28)である。上図は拡大図である。
【図11】(4.2.1項のTRITCを使用してタグ付けした還元糖としてLacNAcを有する)GP3のCEを示す。
【図12】ネガティブイオンモードでの(4.2.2節の4−ブロモフェニルイソチオシアネートを用いてタグ付けされた還元糖としてラクト−N−テトラオースを有する)GP5のエレクトロスプレー質量スペクトルを示す。挿入図はBrの主同位体に対応する2つのピークを示す拡大図である。
【図13】(4.2.3項のTRITCを使用してタグ付けした単糖混合物6を有する)GP6aのCEを示す。Xは未同定のピークを表す。溶出順序は、GalNAc(27)、Man(23)、およびFuc(25)である。下図は拡大図である。
【図14】(4.2.4項のTRITCを使用してタグ付けした単糖混合物7を有する)GP7aのCEを示す。Xは未同定のピークを表す。溶出順序は、GalNAc(27)、Man(23)、およびFuc(25)である。下図は拡大図である。
【図15】(4.2.5項のFITCを使用してタグ付けしたオリゴ糖混合物9を有する)GP9のCEを示す。溶出順序はG7からG2である(図2)。
【図16】GP10(4.2.6項でFITCを使用してタグ付けしたリボヌクレアーゼBオリゴ糖10)のCEを示す。
【図17】(4.3.1項でTRITCを使用してタグ付けした還元糖としてGal2を有する)G12のCEを示す。
【図18】(4.3.2項でTRITCを使用してタグ付けした還元糖としてLNT5を有する)G15のCEを示す。
【図19】(4.3.3項でTRITCを使用してタグ付けした還元糖混合物として8を有する)G18のCEを示す。溶出順序はLNTに続いてGalである。
【図20】5.1.1項の固定化LNT(5)のβ−ガラクトシダーゼ消化後の切断生成物G05(A)、G15(B)、およびG25(C)のCEを示す。TRITC標識LNT四糖は最初36分付近で溶出する。ガラクトースの消失により38分後に溶出する三糖生成物が得られる。
【図21】F24(TRITCを使用してタグ付けした還元糖としてのマルトトリオース(G3))と5.1.2項のグルコアミラーゼとのインキュベーション前(図A)およびインキュベーション後(図B)の切断生成物のCEを示す。図Aを記録する前にタグ付きGlc(22、図5)の参照試料を試料に添加した。
【図22】(LNT基および遊離NH2基を有する)C25のβ−ガラクトシダーゼ処理に続いて放出されたガラクトースの捕捉、還元、および5.2項のTRITCを用いたタグ付け後に得られた切断生成物のCEを示す。溶出順序はLNT、ガラクトースの消失に起因する三糖、およびガラクトースである(21)。
【図23】多様な作用剤を用いたキャッピング、還元、および6.1項のTRITCを用いた標識後のC22(固定化ガラクトース)由来切断生成物のCE分析を示す。キャップ剤は、A(無水酢酸:酢酸無水物)、B(安息香酸無水物)、C(トリクロロ酢酸無水物)、およびD(ジブロモキシレン)であった。タグ付きガラクトース(21)は全ての図において17分付近に溶出している。
【図24】6.2項でC→Cred→→Gという順序を経由してガラクトースを加工することから得られた切断生成物のCEを示す。ガラクトース21は17分に溶出している。
【図1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i.還元糖を含む試料を用意するステップと、
ii.−NH2基を有する捕捉基を有するリンカーに共有結合した固体支持体(固体)を用意するステップであって、前記リンカーがスペーサーを介して前記固体支持体に場合により結合しているステップと、
iii.前記還元糖を前記−NH2基と反応させることによって固定化糖を得るステップと、
iv.遊離−NH2基をキャップ剤と反応させるステップであって、前記キャップ剤が−NH2基と反応することができる反応基を有するステップと、
v.C=N結合を還元剤で還元するステップと、
vi.それによってリンカーおよび場合によりスペーサーを介して固体支持体に結合した糖CHn−NH−(nは1または2である)という構造の反応性糖を得るステップと
を含む、反応性糖を調製する方法であって、ステップivおよびvは任意の順序で行うことができる方法。
【請求項2】
vii.前記反応性糖の−NH−基を、窒素反応性官能基(X)を有する誘導体化剤と反応させることにより、前記作用剤に共有結合した糖を得るステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記窒素反応性官能基が、イソチオシアネート、活性エステル、カルボン酸、マイケルアクセプター、αβ不飽和スルホン、アルキル化剤、アルデヒド、ケトン、および電気陰性基を有する置換ハロ芳香族基からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記誘導体化剤が、窒素反応性官能基で誘導体化された分光学的に検出可能な化合物である、請求項2および3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記誘導体化剤が、窒素反応性官能基で誘導体化された蛍光化合物である、請求項2および3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
viii.前記糖に結合した前記作用剤を分光分析により検出するステップ
をさらに含む、請求項4および5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記誘導体化剤が窒素反応性官能基で誘導体化された質量分析用タグであり、前記質量分析用タグが糖の検出および/または構造の特徴付けを改善することができる、請求項2および3のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記質量分析用タグが臭素を有する分子である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記質量分析用タグが荷電分子である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記質量分析用タグが同位体標識分子である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
viii.前記糖に結合した質量分析用タグを質量分析により検出するステップ
をさらに含む、請求項7から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記誘導体化剤が、第2の結合パートナーと特異的相互作用することができる第1の結合パートナーであり、前記第1の結合パートナーが窒素反応性官能基で誘導体化されている、請求項2および3のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
一方の結合パートナーがタンパク質であり、他方の結合パートナーが前記タンパク質のリガンドである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
一方の結合パートナーがエピトープを含み、他方の結合パートナーが前記エピトープを特異的に認識する抗体である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
一方の結合パートナーがビオチンであり、他方の結合パートナーがアビジンである、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の結合パートナーが検出可能な標識にコンジュゲートしている、請求項12から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記誘導体化剤が窒素反応性官能基または保護された窒素反応性官能基で誘導体化された核酸である、請求項2および3のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記核酸がDNAである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
viii.前記糖に結合した前記核酸を検出するステップ
をさらに含む、請求項17および18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記核酸が検出可能な標識にコンジュゲートした本質的に相補的な核酸により検出される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記核酸の検出が前記核酸の増幅を伴う、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記作用剤がX−テザー−YまたはX−テザー−Ypという構造の二官能性試薬であり、ここで、Xは窒素反応性官能基であり、Yは第2の反応性官能基であり、Ypは保護された反応基Yである、請求項2および3のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記第2の反応性官能基Yが、チオール、カルボキシル基、活性化カルボキシル基、ジスルフィド、活性化ジスルフィド、アルキル化剤、アルケン、アルキン、アルデヒド、ケトン、およびアジドからなる群から選択されるか、またはYpが、前記基Yの保護された誘導体および保護されたアミンからなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
viii.Yと反応することができる官能基(Z)を有する第2の誘導体化剤を用意するステップと、
ix.官能基ZおよびYを反応させることによって、テザーおよび前記第1の誘導体化剤を介して前記第2の誘導体化剤を前記糖に共有結合させるステップと
をさらに含む、請求項22および23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記第2の誘導体化剤が薬物、造影剤、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、酵素、核酸、分光学的に検出可能な化合物、質量分析用タグ、および第2の結合パートナーと特異的に相互作用することができる第1の結合パートナーからなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
viii.微生物、ミセル、ファージ、ウイルス、およびナノ粒子からなる群から選択される粒子を用意するステップであって、前記粒子がYと反応することができる官能基(Z)を有するステップと、
ix.前記官能基ZおよびYを反応させることによって、前記テザーおよび前記作用剤を介して前記粒子を前記糖に共有結合させるステップと
をさらに含む、請求項22および23のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
viii.前記糖を、前記糖と関連することができる検出剤と接触させるステップと、
ix.前記検出剤を検出するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記検出剤が、アリールボロン酸またはヘテロアリールボロン酸を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記検出剤がポリペプチドである、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記ポリペプチドが、レクチン、セレクチン、毒素、受容体、抗体、および酵素からなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記捕捉基がM−NH2という構造を含むか、またはそれからなり、ここで、Mは複素原子である、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記リンカーが、アルキル、アリール、エーテル、およびアミドからなる群から選択される切断不可能なリンカーであり、前記の任意のものが場合により置換されていてもよい、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記リンカーが切断可能なリンカーである、請求項1から31のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記リンカーが、酸、塩基、求核体、求電子体、酸化、還元、フリーラジカル、光、熱、または酵素との反応により切断可能である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記方法が、前記切断可能なリンカーを切断することによって前記糖を放出させるステップをさらに含み、このステップが、ステップv、vi、vii、viii、またはixの後に行われてもよい、請求項33および34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記リンカーがスペーサーを介して前記固体支持体に結合している、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記スペーサーが0から1000原子長の範囲であり、場合により分岐している、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記固体支持体が、ポリマー、固体、不溶性粒子、および表面からなる群から選択される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
前記固体支持体がセンサーである、請求項1から37のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
前記糖を1つまたは複数の前記グリコシダーゼと接触させることにより、新しい還元糖を作製するステップをさらに含み、但し、前記最初の糖がグリコシダーゼの基質である前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
新たに作製された還元糖を固体支持体に固定化するステップをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記糖を、グリコシルトランスフェラーゼ、スルファターゼ、ホスホリラーゼ、スルホトランスフェラーゼ、ホスホトランスフェラーゼ、グリコシンターゼ、およびトランスグリコシダーゼのクラスから選択される1つまたは複数の酵素と接触させることにより、前記糖を新しい構造に変換するステップをさらに含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
新しく作製された糖または構造を検出するステップを含む、請求項40から42のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
前記還元剤がBH結合を有するボランもしくは水素化ホウ素、またはSiH結合を有するシランである、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
前記還元糖、前記固体支持体、および前記還元剤を含む試料の同時インキュベーションを伴う、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項1】
i.還元糖を含む試料を用意するステップと、
ii.−NH2基を有する捕捉基を有するリンカーに共有結合した固体支持体(固体)を用意するステップであって、前記リンカーがスペーサーを介して前記固体支持体に場合により結合しているステップと、
iii.前記還元糖を前記−NH2基と反応させることによって固定化糖を得るステップと、
iv.遊離−NH2基をキャップ剤と反応させるステップであって、前記キャップ剤が−NH2基と反応することができる反応基を有するステップと、
v.C=N結合を還元剤で還元するステップと、
vi.それによってリンカーおよび場合によりスペーサーを介して固体支持体に結合した糖CHn−NH−(nは1または2である)という構造の反応性糖を得るステップと
を含む、反応性糖を調製する方法であって、ステップivおよびvは任意の順序で行うことができる方法。
【請求項2】
vii.前記反応性糖の−NH−基を、窒素反応性官能基(X)を有する誘導体化剤と反応させることにより、前記作用剤に共有結合した糖を得るステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記窒素反応性官能基が、イソチオシアネート、活性エステル、カルボン酸、マイケルアクセプター、αβ不飽和スルホン、アルキル化剤、アルデヒド、ケトン、および電気陰性基を有する置換ハロ芳香族基からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記誘導体化剤が、窒素反応性官能基で誘導体化された分光学的に検出可能な化合物である、請求項2および3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記誘導体化剤が、窒素反応性官能基で誘導体化された蛍光化合物である、請求項2および3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
viii.前記糖に結合した前記作用剤を分光分析により検出するステップ
をさらに含む、請求項4および5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記誘導体化剤が窒素反応性官能基で誘導体化された質量分析用タグであり、前記質量分析用タグが糖の検出および/または構造の特徴付けを改善することができる、請求項2および3のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記質量分析用タグが臭素を有する分子である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記質量分析用タグが荷電分子である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記質量分析用タグが同位体標識分子である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
viii.前記糖に結合した質量分析用タグを質量分析により検出するステップ
をさらに含む、請求項7から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記誘導体化剤が、第2の結合パートナーと特異的相互作用することができる第1の結合パートナーであり、前記第1の結合パートナーが窒素反応性官能基で誘導体化されている、請求項2および3のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
一方の結合パートナーがタンパク質であり、他方の結合パートナーが前記タンパク質のリガンドである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
一方の結合パートナーがエピトープを含み、他方の結合パートナーが前記エピトープを特異的に認識する抗体である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
一方の結合パートナーがビオチンであり、他方の結合パートナーがアビジンである、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の結合パートナーが検出可能な標識にコンジュゲートしている、請求項12から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記誘導体化剤が窒素反応性官能基または保護された窒素反応性官能基で誘導体化された核酸である、請求項2および3のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記核酸がDNAである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
viii.前記糖に結合した前記核酸を検出するステップ
をさらに含む、請求項17および18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記核酸が検出可能な標識にコンジュゲートした本質的に相補的な核酸により検出される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記核酸の検出が前記核酸の増幅を伴う、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記作用剤がX−テザー−YまたはX−テザー−Ypという構造の二官能性試薬であり、ここで、Xは窒素反応性官能基であり、Yは第2の反応性官能基であり、Ypは保護された反応基Yである、請求項2および3のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記第2の反応性官能基Yが、チオール、カルボキシル基、活性化カルボキシル基、ジスルフィド、活性化ジスルフィド、アルキル化剤、アルケン、アルキン、アルデヒド、ケトン、およびアジドからなる群から選択されるか、またはYpが、前記基Yの保護された誘導体および保護されたアミンからなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
viii.Yと反応することができる官能基(Z)を有する第2の誘導体化剤を用意するステップと、
ix.官能基ZおよびYを反応させることによって、テザーおよび前記第1の誘導体化剤を介して前記第2の誘導体化剤を前記糖に共有結合させるステップと
をさらに含む、請求項22および23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記第2の誘導体化剤が薬物、造影剤、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、酵素、核酸、分光学的に検出可能な化合物、質量分析用タグ、および第2の結合パートナーと特異的に相互作用することができる第1の結合パートナーからなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
viii.微生物、ミセル、ファージ、ウイルス、およびナノ粒子からなる群から選択される粒子を用意するステップであって、前記粒子がYと反応することができる官能基(Z)を有するステップと、
ix.前記官能基ZおよびYを反応させることによって、前記テザーおよび前記作用剤を介して前記粒子を前記糖に共有結合させるステップと
をさらに含む、請求項22および23のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
viii.前記糖を、前記糖と関連することができる検出剤と接触させるステップと、
ix.前記検出剤を検出するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記検出剤が、アリールボロン酸またはヘテロアリールボロン酸を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記検出剤がポリペプチドである、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記ポリペプチドが、レクチン、セレクチン、毒素、受容体、抗体、および酵素からなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記捕捉基がM−NH2という構造を含むか、またはそれからなり、ここで、Mは複素原子である、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記リンカーが、アルキル、アリール、エーテル、およびアミドからなる群から選択される切断不可能なリンカーであり、前記の任意のものが場合により置換されていてもよい、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記リンカーが切断可能なリンカーである、請求項1から31のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記リンカーが、酸、塩基、求核体、求電子体、酸化、還元、フリーラジカル、光、熱、または酵素との反応により切断可能である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記方法が、前記切断可能なリンカーを切断することによって前記糖を放出させるステップをさらに含み、このステップが、ステップv、vi、vii、viii、またはixの後に行われてもよい、請求項33および34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記リンカーがスペーサーを介して前記固体支持体に結合している、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記スペーサーが0から1000原子長の範囲であり、場合により分岐している、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記固体支持体が、ポリマー、固体、不溶性粒子、および表面からなる群から選択される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
前記固体支持体がセンサーである、請求項1から37のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
前記糖を1つまたは複数の前記グリコシダーゼと接触させることにより、新しい還元糖を作製するステップをさらに含み、但し、前記最初の糖がグリコシダーゼの基質である前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
新たに作製された還元糖を固体支持体に固定化するステップをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記糖を、グリコシルトランスフェラーゼ、スルファターゼ、ホスホリラーゼ、スルホトランスフェラーゼ、ホスホトランスフェラーゼ、グリコシンターゼ、およびトランスグリコシダーゼのクラスから選択される1つまたは複数の酵素と接触させることにより、前記糖を新しい構造に変換するステップをさらに含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
新しく作製された糖または構造を検出するステップを含む、請求項40から42のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
前記還元剤がBH結合を有するボランもしくは水素化ホウ素、またはSiH結合を有するシランである、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
前記還元糖、前記固体支持体、および前記還元剤を含む試料の同時インキュベーションを伴う、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
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【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公表番号】特表2008−530538(P2008−530538A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554420(P2007−554420)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【国際出願番号】PCT/DK2006/000066
【国際公開番号】WO2006/084461
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【国際出願番号】PCT/DK2006/000066
【国際公開番号】WO2006/084461
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】
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