説明

土のう敷設方法とそれに用いる土のう用フレキシブルコンテナ

【課題】本発明は、土のうの敷設時に、土のうが転倒したり、移動したりすることがなく、土のうを確実に固定することができ、短時間で簡便かつ効率的に土のうを敷設し、傾斜地の崩壊等を防止することができる施工性に優れた土のう敷設方法を提供する。
【解決手段】本発明は、法面に杭を打つ杭打ち工程と、設置面に配置された土のうの上部及び底部と杭を連結部材で連結する連結工程と、法面と複数の土のうで囲まれた空間を土砂で埋めて転圧する埋め戻し工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜地の崩壊等を防止するために使用される土のうを簡便かつ効率的に敷設することができる土のう敷設方法及び含水率の高い土砂等の水分の除去や浄水用濾材等を収容するのに最適な土のう用フレキシブルコンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、大雨等による斜面の崩壊や堤防の決壊,道路冠水等の災害現場、河川工事現場等では、大型のフレキシブルコンテナに真砂土や砕石等を投入して大型土のうを作り、災害現場や工事現場に配置することにより、被害の拡大の防止や止水等の応急措置が行われている。また、大雨等による斜面の崩壊や堤防の決壊,道路冠水等の災害現場では、家屋等に流入した土砂や浸水家財、崩壊した家屋等を搬出する復旧作業が行なわれる。
しかしながら、大水等による災害現場や河川工事現場の土砂は水に浸かり含水率の高い泥状になっているため、含水率の高い泥状の土砂を、従来の通水性に乏しい生地で形成されたフレキシブルコンテナに投入して土のうを製作すると、土砂の水分が抜けないため、土のうが水の入ったゴム風船のようになり、充填した土砂がフレキシブルコンテナ内で流動して、静置中に土のうが傾いて転倒し易いという問題があった。また、土のうを2段,3段と積み上げることができず、緊急時に対応し難い場合が生じるという問題があった。
【0003】
そこで、やむを得ず、現場から少し離れた周辺地域で、含水率の低い土砂で土のうを製作しトラックで災害現場等に搬入したり、周辺地域から土砂を搬入し災害現場等で土のうを製作したりすることが行われている。このため、土砂や土のうの運搬に時間がかかり、措置が遅れ、被害が拡大したり復旧作業に大幅な遅れが生じたりするという問題があった。
また、浸水家財、崩壊した家屋等の廃材は、通常はダンプトラック等の荷台に載せて被災地から搬出するのだが、泥状の土砂が混ざった状態となっているため、搬送性に著しく欠け、復旧作業が捗らない原因となっていた。
【0004】
一部では、通水性を向上させたフレキシブルコンテナが開発されている。このような技術としては、(特許文献1)に「平織りの布地で構成され、縦糸又は横糸の少なくとも1本の糸を、長手方向に複数のスプリットが形成され短手幅を収縮させたスプリットヤーンとして、織り間隔を粗密にした通気通水バッグ」が開示されている。
また、(特許文献2)に「可撓性シート部材からなる筒型本体の頂部に液体材料の投入口が形成され底部に排出口及び下蓋が形成されたフレキシブルコンテナであって、可撓性シート部材が通水性のないEVAターポリンで形成され、排出口及び下蓋が通水性シートで形成された液体除去用フレキシブルコンテナ」が開示されている。
【特許文献1】特開2001−180787号公報
【特許文献2】特開2002−173195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記従来の技術においては、以下のような課題を有していた。
(1)(特許文献1)に開示の通気通水バッグは、水の浄化を行った使用済み活性炭顆粒を充填して処理場に搬送し、再活性化を行うために開発されたものなので、布地が通水性を有しているが、その反面、布地のこしが無いという問題があった。そのため、災害現場や工事現場等で土のうを製作するために土砂(泥状材)を投入すると、投入された土砂の勢いで布地が変形しバッグが傾いて倒れてしまうため、バッグが倒れないように複数人で支えて土砂等を投入しなければならず、投入作業時に多くの工数が必要となり、また大勢の作業者が支えるバッグに、油圧ショベル等のバケットを用いて土砂等の投入作業を行うのは、作業者の安全性に欠けるという課題を有していた。
(2)また、布地のこしが無く、自立性に欠けることから、土のうに充填された泥状材の水分が抜けるまでの間は、泥状材がバッグ内で流動し易く、静置した土のうが傾いて転倒し易いという課題を有していた。
(3)(特許文献2)に開示の液体除去用フレキシブルコンテナは、液体を含有する粉体、粒体、細片等を一時的に収納・保管し、水分を減量した後に搬出運搬することを目的としているため、コンテナ内の水分は時間をかけて減量できれば良い。そのため、可撓性シート部材が通水性の無いEVAターポリンで形成されており、充填された泥状材の水分は通水性シートで形成された下蓋からしか抜けないという問題があった。そのため、災害現場や工事現場で高含水の土砂を充填した土のうを製作した場合は、土砂の水分が抜けるまでにかなりの時間を要するという課題を有していた。土のうに充填された土砂の水分が抜けるまでの間は、充填された土砂が流動し易く土のうが傾いて転倒し易いため、一刻も早く土のうを使用したいという災害現場や工事現場の要求に応えることができなかった。
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、土のうの敷設作業中に、土のうが傾いたり、転倒したりすることがなく、土のうを確実に固定することができ、短時間で簡便かつ効率的に土のうを敷設し、傾斜地の崩壊等を防止することができる施工性に優れた土のう敷設方法の提供、及び土砂等の収容物を投入する初期段階だけ袋部を支えておけば、袋部に土砂等の収容物を投入することによって袋部が自立した状態を保つことになり、袋部を支える作業者は最小限の人数で済み、収容物投入作業の省力性に優れ、収容物の投入後に放置しておけば、収容物の水分が早期に抜け、被災地や河川工事現場の必要な箇所に土のうとして直ちに配置することができる耐久性に優れた土のう用フレキシブルコンテナの提供を目的とする。
【0007】
上記従来の課題を解決するために本発明の土のう敷設方法とそれに用いる土のう用フレキシブルコンテナは、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の土のう敷設方法は、法面に杭を打つ杭打ち工程と、土のうを左右方向に密接して設置面に配置する配置工程と、前記設置面に配置された前記土のうの上部及び底部と前記杭を連結部材で連結する連結工程と、前記法面と複数の前記土のうで囲まれた空間を土砂で埋めて転圧する埋め戻し工程と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)法面に杭を打つ杭打ち工程と、土のうを左右方向に密接して設置面に配置する配置工程と、設置面に配置された土のうの上部及び底部と杭を連結部材で連結する連結工程を有するので、土のうを所望の位置に確実に保持することができ、土のうの位置ずれや転倒を防止することができ、土のうの固定や姿勢の安定性に優れる。
(2)法面と複数の土のうで囲まれた空間を土砂で埋めて転圧する埋め戻し工程を有することにより、法面と土のうとの間の空間を土砂で強固に締め固めることができ、傾斜面の崩壊を確実に防止して被害の拡大を防ぐことができる信頼性に優れた土のうを敷設することができる。
【0008】
ここで、土のうは、法面と所定の間隔を空けて、法面と対向するように並べて配置され、法面と土のうとの間に、周囲と閉ざされた(土のうによって仕切られた)空間が形成される。
この土のう敷設方法に用いる土のうの製作には、任意の土のう袋を使用することができる。被災地や河川工事現場などで高含水の泥状の土砂などを使用して土のうを製作する場合は、ネット状の素材等で形成された通水性の良いものが好適に用いられるが、含水率の低い土砂で土のうを製作できる場合には、通常のフレキシブルコンテナを用いることができる。
連結部材は、杭と土のうを連結できるものであればよく、ロープ、ワイヤ、紐、鎖等を用いることができる。土のうの上部や底部に予め連結用の環状部などが形設されていれば、簡便に連結部材と連結して杭などに固定したり、隣接する土のう同士を連結したりして転倒を防止することができ、施工性、信頼性に優れる。
尚、1本の杭に対して、1乃至複数の土のうを連結、固定することもでき、また、1つの土のうに対して、複数の杭を連結、固定することもできる。
【0009】
本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の土のう敷設方法であって、前記埋め戻し工程で埋め戻された領域の上面を新たな設置面として土のうを積み上げる土のう積み上げ工程を有し、前記杭打ち工程と、前記土のう積み上げ工程と、前記連結工程と、前記埋め戻し工程と、を繰り返す構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)埋め戻し工程で埋め戻された領域の上面を新たな設置面として土のうを積み上げる土のう積み上げ工程を有するので、先に敷設された土のうや埋め戻された領域の上に新たな土のうを積み重ねることができ、規模に応じて杭打ち工程、土のう積み上げ工程、連結工程、埋め戻し工程を繰り返すことにより、土のうを複数段にわたって敷設することができ、汎用性、施工性に優れる。
【0010】
ここで、土のう積み上げ工程では、先に敷設された下段の土のうの幅方向(横方向)及び厚さ方向(前後方向)に対して半ピッチずつずらして、上段の土のうを配置することが好ましい。上段側に敷設される土のうの荷重を分散させることができ、振動や外力などが働いても崩れ難く、耐久性、安全性に優れるためである。
【0011】
本発明の請求項3に記載の土のう用フレキシブルコンテナは、請求項1又は2に記載の土のう敷設方法に用いる土のう用フレキシブルコンテナであって、底部及び胴部を有する通水性の袋部と、前記胴部の上部に延設され開閉自在の開口部が形成された延設部と、前記袋部の前記胴部の上部側に配設された吊り手と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)袋部が通水性を有するので、高含水の土砂、高含水の土砂の混ざった浸水家財や崩壊した家屋等の廃材(以下、収容物という。)を袋部に投入することによって、収容物が袋部の底部に広がり、収容物の周囲に袋部の胴部が立設した状態になり、収容物が重石の役目を果たすため、収容物を投入する初期段階だけ袋部や延設部を支えておけば、その後は収容物の量が増えるに従って自立性が高まるため、袋部を開口させて自立させることができ、袋部や延設部が倒れないように支える作業者は最小限の人数で済み、収容物の投入作業の省力性、安全性に優れる。
(2)袋部に収容物を充填した後は、収容物が支えとなって袋部が自立し、袋部が通水性を有しているので、放置しておけば、収容物の水分が袋部を通過して早期に抜けていくので、被災地や河川工事現場の必要な箇所に土のうとして直ちに配置させることができる。また、浸水家財や崩壊した家屋等の廃材を投入すると水分が早期に抜けていくので、これらを詰めた土のう用フレキシブルコンテナをダンプトラック等の荷台に載せて被災地から搬出することができ、復旧作業を迅速化できる。
(3)胴部の上部に延設され開閉自在の開口部が形成された延設部を有するので、収容物の投入時は延設部を人手で支えたり、円筒状や下方に向かって縮径する円錐筒状のガイド部材を内挿したりして延設部が内側に倒れるのを防止し、袋部に収容物を収容した後は、延設部の開口部を閉じることにより、直ちに袋部を閉塞することができ、閉塞の作業性、確実性に優れる。
(4)袋部の胴部の上部側に配設された吊り手を有するので、作業者が吊り手を手で持ったり、クレーンやフォークリフト等のフックに吊り手を係止したりして、袋部の胴部の上部側を確実に開口させ、延設部の開口部から投入される収容物を上部開口部を通してスムーズに袋部に収容することができ、収容物の投入作業の効率性、省力性に優れる。
【0012】
ここで、袋部としては、底部及び/又は胴部が網目状の布で形成され、底部自体や胴部自体が通水性を有するものが用いられる。このような布としては、例えば、縦糸や横糸にフラットヤーンやスプリットヤーンを用い、織り間隔を調整しながら織り込んだ布、目ずれが生じないように縦糸と横糸を溶着させた布等を用いることができる。材質としては、ポリプロピレン等の合成樹脂製、麻等の天然繊維製等を用いることができる。より具体的には、ポリエステル繊維で形成された基布の表裏に塩化ビニル樹脂を被覆したメッシュシートが好適に用いられる。耐候性、耐久性に優れるためである。尚、財団法人全国防災協会の定める「耐候性大型土のう」設置ガイドラインに適合するものが、特に、好適に用いられる。
目開きは1〜2mm程度のものが好適に用いられる。投入された収容物の固形分(土砂等)を捕捉し、水を排出するためである。
【0013】
袋部を平織生地で形成する場合、打ち込み数を5×5本〜20×20本として形成したものが好ましい。尚、打ち込み数は25.4mm四方当たりの縦糸と横糸の本数を表す。打ち込み数が5×5本より少なくなるにつれ、強度が不足し破れ易くなって耐久性が低下すると共に、生地が粗くなって単糸間に隙間ができ微小なゴミ等が漏れたり引っ掛かったりし易くなる傾向があり、打ち込み数が20×20本より多くなるにつれ生地が硬くなり過ぎ、嵩張って取り扱い難くなる傾向があるのでいずれも好ましくない。
また、底部や胴部に多数の小さなパンチ穴が穿孔されて通水性を有するものも用いることができる。パンチ穴の孔径は1〜2mm程度のものが好適に用いられる。上記と同様に、投入された収容物の固形分(土砂等)を捕捉し、水を排出するためである。
なお、袋部の底部は、円形状,方形状等の任意の形状に形成することができる。
【0014】
また、袋部としては、底部や胴部を構成する布自体は通水性に乏しいものであっても、底部や胴部を縫合するミシン目等の縫い目を収容物に含まれる水分が通過することにより、袋部全体として通水性を有しているものも用いることができる。縫い目の数や大きさを調整することにより、袋部の通水量を調整することができる。
縫い目を構成する糸は、吸水性が乏しいものが好適に用いられる。吸水することによって糸が膨張すると、縫い目が塞がれて通水性が低下するからである。吸水性の小さなポリエステル製,ポリプロピレン製等で形成された糸が好適に用いられる。
また、縫い目は、テープ材や目止め剤でシーリング加工が施されておらず、防水処理が行われていないものが用いられる。
【0015】
吊り手は袋部の胴部の複数箇所に溶着若しくは接着又は縫合される。吊り手の材質としては、布や合成樹脂製のシート等を用いることができる。
尚、吊り手は、袋部の底部に架け渡して、底部とも溶着若しくは接着又は縫合するのが好ましい。吊り手の袋部に対する固着強度を高めると共に、袋部の底部の形状保持性、耐久性に優れるためである。
また、吊り手は、直接、クレーンやフォークリフト等のフックに係止してもよいが、吊り手に、フック状やリング状等に形成された金具等を配設してもよい。
【0016】
延設部としては、網目状の布で形成され通水性を有するものが好適に用いられるが、通水性の無い合成樹脂製のシート等で形成することもできる。袋部に充填された収容物の脱水は、延設部からはほとんど生じないからである。尚、開口部から袋部に収容物を投入する際には、延設部を人手で支持してもよいが、円筒状や下方に向かって縮径する円錐筒状などに形成されたガイド部材を延設部に内挿して延設部が内側に倒れないようにしてもよい。
【0017】
土のう用フレキシブルコンテナに収容する収容物としては、高含水の土砂、汚泥等の水分を含んだ粉体,粒体,細片、活性炭や木炭,貝殻等の多孔質の浄化材等を用いることができる。水はけの良い土のう用フレキシブルコンテナに高含水の土砂や汚泥等を収容することで、収容物から水分を除去することができる。また、土のう用フレキシブルコンテナは通水性を有しているため、活性炭や木炭等の浄化材を収容させた後、河川や水路等に配置し、河川や水路等の浄化を行うことができる。また、泥状の土砂が混ざった浸水家財や崩壊した家屋等の廃材も収容することができる。このとき、必要に応じて、袋部の底部や側部を内側から補強することが好ましい。
【0018】
本発明の請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の土のう用フレキシブルコンテナであって、前記袋部の前記胴部の長手方向と平行に自立保持部材が挿通される自立保持部材挿通部を備えた構成を有している。
この構成により、請求項3で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)袋部の胴部の長手方向と平行に自立保持部材が挿通される自立保持部材挿通部を有するので、必要に応じて自立保持部材挿通部に自立保持部材を挿通することにより、袋部の胴部を補強して簡便かつ確実に自立させることができ、人手や重機等で吊り部を保持する必要がなく、投入された収容物を速やかに効率的に胴部に収容することができ、自立安定性、収容物の投入作業性に優れる。
(2)自立保持部材が挿通される自立保持部材挿通部を有するので、収容物を投入する前に、現場で簡便に自立保持部材を挿通して袋部を自立させることができ、使用性に優れる。
【0019】
ここで、自立保持部材挿通部は、網目状の布や合成樹脂製のシート等で筒状(袋状)に形成し、袋部の胴部の長手方向と平行に配置してもよいし、金属,合成樹脂,布等で環状又は管状(筒状)に形成し、袋部の胴部の長手方向に複数配置してもよい。
また、自立保持部材としては、高剛性の棒材、合成樹脂製や金属製等のパイプ等が好適に用いられる。自立保持部材は、収容物を収容した後は引き抜いて回収し、繰り返し使用することができ、環境保護性、省資源性に優れる。
自立保持部材の直径としては、6mm〜30mmが好ましい。自立保持部材の高さ方向の剛性を高めるためである。自立保持部材の直径が6mmより細くなるにつれ剛性が不足して自立性が不十分となる傾向がみられ、30mmより太くなるにつれ質量が増えるとともに嵩張って取り扱い性が低下する傾向がみられ、いずれも好ましくない。
【0020】
本発明の請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載の土のう用フレキシブルコンテナであって、前記袋部の前記胴部の上部開口部の周縁に形設され上部形状保持部材が挿通される上部形状保持部材挿通部及び/又は前記袋部の前記底部の周縁に形設され下部形状保持部材が挿通される下部形状保持部材挿通部を備えた構成を有している。
この構成により、請求項3又は4で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)袋部の胴部の上部開口部の周縁に形設され上部形状保持部材が挿通される上部形状保持部材挿通部を有するので、必要に応じて、上部形状保持部材挿通部に上部形状保持部材を挿通することにより、上部開口部の周縁を補強して簡便かつ確実に開口させることができると共に、延設部に内挿されるガイド部材の下端側と係合してガイド部材を支持することができ、多量の収容物を短時間で確実に胴部に投入することができ、収容物の投入作業の効率性に優れる。
(2)袋部の底部の周縁に形設され下部形状保持部材が挿通される下部形状保持部材挿通部を有することにより、必要に応じて、下部形状保持部材挿通部に下部形状保持部材を挿通することにより、底部の周縁を補強して確実に接地させ、底面積を確保することができ、袋部の自立性を高めると共に、多量の収容物を効率的に収容することができ、収容の効率性に優れる。
(3)上部形状保持部材や下部形状保持部材が挿通される上部形状保持部材挿通部や下部形状保持部材挿通部を有するので、収容物を投入する前に、現場で簡便に上部形状保持部材や下部形状保持部材を挿通して袋部の形状を保持することができ、使用性に優れる。
【0021】
ここで、上部形状保持部材挿通部及び下部形状保持部材挿通部は、袋部の胴部の上端部や下端部を折り返して縫製する等して筒状(袋状)に形成したものが好適に用いられる。
また、上部形状保持部材及び下部形状保持部材の材質としては、合成樹脂製や金属製等で可撓性(弾力性)を有する棒材やパイプ等が好適に用いられる。上部形状保持部材及び下部形状保持部材が可撓性(弾力性)を有することにより、上部形状保持部材挿通部及び下部形状保持部材挿通部に沿うように速やかに挿通することができ、組立及び分解の作業性に優れる。上部形状保持部材及び下部形状保持部材は、収容物を収容した後は引き抜いて回収し、繰り返し使用することができ、環境保護性、省資源性に優れる。
【0022】
下部形状保持部材の代わりに、袋部の底部の内側周縁に環状の底部形状保持部材を載置したり、袋部の底部の上面に網状の底面補強材を敷設したりしてもよい。底部形状保持部材の材質は上部形状保持部材や下部形状保持部材と同様のものが好適に用いられる。また、底面補強材としては、土木用途の安定繊維材であるジオテキスタイル(ジオグリッド、ジオネット及びジオテキスタイル関連製品等)、カーボン繊維で複合された合成樹脂製の網体、パンチングメタル等の金属製の網体等を用いることができ、外形が底部と同形状に形成されたものが好適に用いられる。
底面補強材の目開きは2mm〜5mmが好ましい。底面補強材の目開きが2mmより小さくなるにつれ、底部での通水性が低下する傾向がみられ、5mmより大きくなるにつれ、角張った砂利,小石等が底面補強材を通過して袋部に接触し、吊り上げた際に袋部の底部が傷付けられて破れ易くなる傾向がみられ、いずれも好ましくない。
【0023】
本発明の請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の土のう用フレキシブルコンテナであって、前記袋部の前記胴部の上部側外周に配設された上部連結部及び/又は前記袋部の前記底部に配設された把手兼用連結部を備えた構成を有している。
この構成により、請求項4又は5で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)袋部の胴部の上部側外周に配設された上部連結部を有するので、袋部の内部に土砂などを詰めて土のうとして使用する際に、上部連結部を杭などと連結することにより、転倒や位置ずれなどを防止することができ、取扱い性に優れる。
(2)袋部の底部に配設された把手兼用連結部を有するので、袋部の内部に土砂などを詰めて土のうとして使用する際に、把手兼用連結部を杭などと連結して、転倒や位置ずれなどを防止したり、把手兼用連結部を把持して運搬したりすることができると共に、使用後は、把手兼用連結部を持って逆さまにすることにより、簡便に内部の土砂などを排出し、折り畳んで回収することができ、施工性、取扱い性に優れる。
【0024】
ここで、上部連結部は、土のうとして敷設する際に、杭などの固定部材と連結部材を介して連結できるものであればよい。L型等のフック状或いは円形や矩形等の環状に形成した金属製や合成樹脂製等の上部連結部を袋部の胴部の上部側外周に縫い付けたものや、帯状の布、紐、ロープ等の端部を縫着して環状の上部連結部を形成したものが好適に用いられる。ロープやワイヤ等の連結部材の端部に形設した環状部やフックをフック状や環状の上部連結部に係止したり、連結部材の端部を環状の上部連結部に結束したりして、簡便に固定できる。尚、上部連結部の数や配置は、適宜、選択できるが、胴部の上部側外周に複数配置することにより、設置時の向きを気にすることなく、杭などと連結することができ、施工性に優れる。また、複数の上部連結部を杭などと連結することにより、土のうの傾き、回転、捩れ等を確実に防止でき、固定の安定性、確実性に優れる。さらに、隣接する土のうの上部連結部同士をロープやワイヤ等で結束する等して連結すれば、土のうをより強固に固定して崩壊を防止することができ、安全性に優れる。
【0025】
把手兼用連結部は、袋部の底部の裏面や底部の外周に配設することができる。帯状の布、紐、ロープ等の端部を縫着して環状に形成したものが好適に用いられる。尚、把手兼用連結部の数や配置は、適宜、選択できる。例えば、袋部の底部の裏面中央に1つ配設した場合、設置時の向きに関係なく杭などと連結することができ、重心が安定し、姿勢の安定性に優れる。底部の外周に2〜4つ配置した場合、設置時の向きを気にすることなく、杭などと連結することができ、施工性に優れると共に、複数の把手兼用連結部を杭などと連結することにより、土のうの傾き、回転、捩れ等を確実に防止でき、固定の安定性、確実性に優れる。また、離れた2つの把手兼用連結部を左右の手でそれぞれ掴んで搬送することや、袋部を逆さまにして内部の土砂などを容易に排出することができ、取扱い性に優れる。尚、上述の上部連結部と同様に、隣接する土のうの把手兼用連結部を直接或いは紐やロープ等を介して連結し、土のうの固定の安定性を向上させることもできる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明の土のう敷設方法とそれに用いる土のう用フレキシブルコンテナによれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、
(1)土のうを所望の位置に確実に保持することができ、施工途中や施工後に、土のうの位置ずれや転倒などが発生することがなく、土のうの固定や姿勢の安定性に優れ、傾斜面の崩壊を確実に防止して被害の拡大を防ぐことができる信頼性に優れた土のうを短時間で効率的に敷設することができる。
【0027】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、
(1)規模に応じて敷設する土のうの段数を選択することができ、汎用性、施工性に優れる。
【0028】
請求項3に記載の発明によれば、
(1)収容物を袋部に投入することによって、収容物が袋部の底部に広がり、収容物の周囲に袋部の胴部が立設した状態になり、収容物が重石と支えの役目を果たすので、収容物を投入する初期段階だけ袋部を支えておけば、その後は収容物の量が増えるに従って自立性が高まり、袋部を開口させて自立させることができるため、袋部が倒れないように支える作業者は最小限の人数で済み、収容物の投入作業の省力性、安全性に優れる。
(2)作業者が吊り手を手で持ったり、クレーンやフォークリフト等のフックに吊り手を係止したりして、袋部の胴部の上部側を確実に開口させて簡便に収容物を投入することができ、収容物の投入作業の効率性、省力性に優れる。
【0029】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3の効果に加え、
(1)収容物を投入する前に、必要に応じて現場等で自立保持部材挿通部に自立保持部材を挿通することにより、袋部の胴部を補強して簡便かつ確実に自立させることができ、人手や重機等で吊り部を保持する必要がなく、胴部の上部開口部から容易に収容物を投入することができ、自立安定性、収容物の投入作業性に優れる。
【0030】
請求項5に記載の発明によれば、請求項3又は4の効果に加え、
(1)収容物を投入する前に、必要に応じて現場等で上部形状保持部材挿通部や下部形状保持部材挿通部に上部形状保持部材や下部形状保持部材を挿通することにより、上部開口部の周縁を補強して開口させることや底部の周縁を補強して確実に接地させ、底面積を確保することができ、胴部の上部開口部から容易に収容物を投入して効率的に収容することができ、自立安定性、収容物の投入作業の効率性に優れる。
【0031】
請求項6に記載の発明によれば、請求項3乃至5の内いずれか1項の効果に加え、
(1)土のうとして使用する際に、杭などと簡便に連結して転倒や位置ずれなどを防止できると共に、横にして運搬することや、逆さまにして簡便に内部の土砂などを排出することができ、施工性、取扱い性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施の形態1における土のう敷設方法に用いる土のう用フレキシブルコンテナの斜視図
【図2】実施の形態1における土のう敷設方法に用いる土のう用フレキシブルコンテナの平面図
【図3】(a)実施の形態1における土のう敷設方法の一段目の土のうの設置状態を示す要部断面模式側面図(b)実施の形態1における土のう敷設方法の埋め戻し工程を示す要部断面模式側面図(c)実施の形態1における土のう敷設方法の二段目の土のうの設置状態を示す要部断面模式側面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における土のう敷設方法に用いる土のう用フレキシブルコンテナの斜視図であり、図2は実施の形態1における土のう敷設方法に用いる土のう用フレキシブルコンテナの平面図である。
図中、1は実施の形態1における土のう敷設方法に用いる土のう用フレキシブルコンテナ、2はポリプロピレン等の合成樹脂製等の網目状の布で形成された通水性の袋部、3は略円形状に形成された袋部2の底部、3aは底部3の裏面側中央付近に帯状の布を環状に縫着して底部3の半径よりもやや長目に形成された把手兼用連結部、4は底部3と一体の筒状に形成された袋部2の胴部、4aは胴部4の上部開口部、4bは胴部4の上端部を折り返して縫製する等して筒状(袋状)に形成された上部形状保持部材挿通部、4cは上部形状保持部材挿通部4bに上部形状保持部材(図示せず)を挿通するための挿通孔、4dは胴部4の上部側外周に帯状の布を縫着し形成された4箇所の上部連結部、5は胴部4の上部に延設された網目状の布で形成された延設部、5aは延設部5に形成された円形状の開口部、6は延設部5に縫合等によって固着され開口部5aを緊締する縛り紐、7は底部3に十字状に架け渡され胴部4の高さ方向に沿って配設され底部3及び胴部4に縫合されループ状に形成された吊り手、8は吊り手7の位置で胴部4の長手方向に複数配置され後述する自立保持部材10が挿通される筒状の自立保持部材挿通部、10は高剛性の棒材、合成樹脂製や金属製等のパイプ等で形成され自立保持部材挿通部8に挿抜自在に挿通される自立保持部材である。
【0034】
袋部2の目開きは1〜2mm程度に形成した。投入された収容物の固形分(土砂等)を捕捉し、水を排出するためである。
本実施の形態では、把手兼用連結部3aは、袋部2の底部3の裏面中央に底部3の半径よりもやや長目に形成した。これにより、土のうとして設置する時の向きに関係なく、ワイヤやロープ等の連結部材を介して杭などと容易に連結することができ、重心が安定し、姿勢の安定性に優れる。尚、把手兼用連結部3aとしては、帯状の布以外に、紐やロープ等を用いてもよい。また、把手兼用連結部3aの数や配置は、適宜、選択でき、袋部2の底部3の外周に配設することもできる。例えば、底部3の外周に2〜4つ配置した場合、設置時の向きを気にすることなく、杭などと連結することができ、施工性に優れると共に、複数の把手兼用連結部3aを杭などと連結することにより、設置後の土のうの転倒や位置ずれを確実に防止でき、固定の安定性、確実性に優れる。また、離れた2つの把手兼用連結部を左右の手でそれぞれ掴んで搬送することや、袋部2を逆さまにして内部の土砂などを容易に排出することができ、取扱い性に優れる。
【0035】
本実施の形態では、帯状の布の端部を縫着して環状の上部連結部4dを形成したが、帯状の布の代わりに、ロープやワイヤ等を用いてもよい。また、L型等のフック状或いは円形や矩形等の環状に形成した金属製や合成樹脂製等の上部連結部4dを袋部2の胴部4の上部側外周に縫い付けてもよい。これにより、ロープやワイヤ等の連結部材の端部を環状の上部連結部4dに結束したり、連結部材の端部に形設した環状部やフックをフック状や環状の上部連結部4dに係止したりして、簡便に固定できる。尚、上部連結部4dの数や配置は、適宜、選択できるが、本実施の形態のように、胴部4の上部側外周に複数配置することにより、設置時の向きを気にすることなく、杭などと連結することができ、施工性に優れる。また、複数の上部連結部4dを杭などと連結することにより、土のうの傾き、回転、捩れ等を確実に防止でき、固定の安定性、確実性に優れる。
【0036】
複数の筒状の自立保持部材挿通部8を胴部4の長手方向の要所に配設したが、最下部の自立保持部材挿通部8のみは自立保持部材10が抜け落ちるのを防止するために有底とした。尚、最下部の自立保持部材挿通部8以外は、自立保持部材10を挿通することができればよく、金属,合成樹脂,布等で環状又は管状(筒状)に形成することができる。また、独立した複数の自立保持部材挿通部8を形設する代わりに、網目状の布や合成樹脂製のシート等で胴部4の略全長に渡って筒状(袋状)の自立保持部材挿通部8を形成してもよい。
自立保持部材10の直径は、6mm〜30mmとした。自立保持部材10の直径が6mmより細くなるにつれ剛性が不足して自立性が不十分となる傾向があり、30mmより太くなるにつれ質量が増えるとともに嵩張って取り扱い性が低下する傾向があることがわかったためである。
【0037】
上部形状保持部材挿通部4bには、挿通孔4cから合成樹脂製や金属製等で可撓性(弾力性)を有する棒材やパイプ等で形成された上部形状保持部材(図示せず)を挿通することができる。これにより、上部開口部4aの周縁を補強して簡便かつ確実に開口させて、容易に収容物を投入することができる。また、上部形状保持部材が可撓性(弾力性)を有することにより、上部形状保持部材挿通部4bに沿うように速やかに挿通することができ、組立及び分解の作業性に優れる。
尚、袋部2の底部3の周縁には、上部形状保持部材挿通部4bと同様の下部形状保持部材挿通部を形設してもよい。必要に応じて、下部形状保持部材挿通部に上部形状保持部材と同様の材質で形性された下部形状保持部材を挿通することにより、底部3の周縁を補強して確実に接地させ、底面積を確保することができ、袋部2の自立性を高めると共に、多量の収容物を効率的に収容することができ、収容の効率性に優れる。
【0038】
また、袋部2の底部3の内側周縁に環状の底部形状保持部材を載置したり、袋部2の底部3の上面に網状の底面補強材を敷設したりしてもよいし、袋部2の胴部4が二重となるように筒状の側部補強材を配設してもよい。底部形状保持部材の材質は上部形状保持部材や下部形状保持部材と同様のものが好適に用いられる。また、底面補強材としては、土木用途の安定繊維材であるジオテキスタイル(ジオグリッド、ジオネット及びジオテキスタイル関連製品等)、カーボン繊維で複合された合成樹脂製の網体、パンチングメタル等の金属製の網体等を用いることができ、外形が底部3と同形状に形成されたものが好適に用いられる。側部補強材としては、合成樹脂製や金属製等で網状に形成されたものが用いられる。網状に形成されたシート材を筒状に形成することによって、側部補強材を形成することができる。シート材は複数重ねて用いることにより、通水性を調整したり剛性を高めたりすることができる。尚、シート材としては、底面補強材と同様のジオテキスタイルを用いることもできる。
【0039】
以上のように構成された本発明の実施の形態1における土のう敷設方法に用いる土のう用フレキシブルコンテナを用いて土のうを製作する場合について、以下その使用方法を説明する。
災害現場や工事現場等に土のう用フレキシブルコンテナ1を搬入し、吊り手7で吊り下げて、袋部2の底部3を着地させながら胴部4及び延設部5を広げて上部開口部4a及び開口部5aを開口させる。このとき、上部形状保持部材挿通部4bに上部形状保持部材を挿通しておけば、上部開口部4aの周縁を補強して簡便かつ確実に開口させることができる。また、自立保持部材挿通部8に自立保持部材10を挿通することにより、袋部2の胴部4も円筒状に広げられる。延設部5は人手で支持してもよいが、円筒状や下方に向かって縮径する円錐筒状などに形成されたガイド部材を延設部5に内挿して延設部5が内側に倒れないようにした場合、省力性に優れる。
【0040】
開口部5aから高含水の土砂、高含水の土砂の混ざった浸水家財や崩壊した家屋等の廃材(収容物)を投入すると、収容物が袋部2の底部3に広がる。投入された収容物は袋部2内に堆積し、収容物が重石の役目を果たし、堆積した収容物が支えとなって自立保持部材10が立設した状態になり、袋部2の胴部4が自立保持部材10に支えられて自立した状態を保つ。袋部2から水が抜けるまでの間、胴部4の下端側が膨らんで球面状になろうとするが、自立保持部材10によって胴部4の形状が保たれ、袋部2を安定に立設させておくことができる。
袋部2に収容物を一杯に充填した後、自立保持部材10や上部形状保持部材、ガイド部材を抜き取り、開口部5aを縛り紐6で緊締して閉じ、土のうを製作することができる。
【0041】
次に、本発明の実施の形態1における土のう敷設方法について説明する。
図3(a)は実施の形態1における土のう敷設方法の一段目の土のうの設置状態を示す要部断面模式側面図であり、図3(b)は実施の形態1における土のう敷設方法の埋め戻し工程を示す要部断面模式側面図であり、図3(c)は実施の形態1における土のう敷設方法の二段目の土のうの設置状態を示す要部断面模式側面図である。
図3(a)中、1Aは実施の形態1における土のう敷設方法に用いる土のう、20は土のう1Aが設置される災害現場などの設置面、20aは大雨等により崩壊した災害現場の法面、21は法面20aに打ち込まれた杭、22は杭21と土のう1Aを連結するロープ、ワイヤ、紐、鎖等の連結部材、23は法面20aと土のう1Aとの間に形成された周囲と閉ざされた(土のう1Aによって仕切られた)空間である。
図3(b),(c)中、24は空間23に埋め戻されて転圧された土砂、24aは土砂24で埋め戻された領域の上面とほぼ面一に形成された新たな設置面である。
【0042】
図3(a)において、まず、配置工程で一段目の土のう1Aは、法面20aと所定の間隔を空けて、法面20aと対向するように左右方向に密接し設置面20に並べて配置され、法面20aと土のう1Aとの間に、周囲と閉ざされた(土のう1Aによって仕切られた)空間23が形成される。
そして、杭打ち工程において、法面20aに杭21が打ち込まれ、連結工程において、各々の土のう1Aの上部及び底部と杭21が連結部材22で連結される。このとき、土のう1Aを上述した土のう用フレキシブルコンテナ1で製作しておけば、把手兼用連結部3aや上部連結部4d(図1参照)を用いて簡便に連結部材22と連結、固定することができる。また、隣接する土のう1Aの把手兼用連結部3a同士や上部連結部4d同士を直接或いはロープやワイヤ等を介して結束する等して連結すれば、土のう1Aをより強固に固定して崩壊を防止することができ、安全性に優れる。
尚、杭打ち工程と配置工程は、どちらかを先に行ってもよいし、並行して行ってもよい。また、連結工程は、配置工程により複数の土のう1Aが全て配置された後にまとめて行ってもよいし、配置工程で1つの土のう1Aを設置する度に、順次、連結工程を行ってもよい。
【0043】
次に、図3(b)に示すように、埋め戻し工程において、空間23に土砂24を埋め戻し、転圧を行い、新たな設置面24aが形成される。
次に、図3(c)に示すように、土のう積み上げ工程において、新たな設置面24aに二段目の土のう1Aを配置する。このとき、先に敷設した下段(一段目)の土のう1Aの幅方向(横方向)及び厚さ方向(前後方向)に対して半ピッチずつずらして、上段(二段面)の土のう1Aを配置した。上段側に敷設される土のう1Aの荷重を分散させることができ、振動や外力などが働いても崩れ難く、耐久性、安全性に優れるためである。
以下、杭打ち工程、土のう積み上げ工程、連結工程、埋め戻し工程を繰り返し、土のう1Aを複数段にわたって敷設する。
【0044】
尚、本発明の実施の形態1における土のう敷設方法に用いる土のう1Aを製作するための土のう袋は土のう用フレキシブルコンテナ1に限定されるものではなく、様々なものを状況等に応じて選択して使用することができる。例えば、被災地や河川工事現場などで高含水の泥状の土砂などを使用して土のう1Aを製作する場合は、土のう用フレキシブルコンテナ1のように袋部2がネット状の素材等で形成された通水性の良いものが好適に用いられるが、含水率の低い土砂で土のう1Aを製作できる場合には、袋部2が通水性を有している必要はなく、通常のフレキシブルコンテナ等を用いることができる。
【0045】
以上のように、本発明の実施の形態1における土のう敷設方法は構成されているので、以下のような作用が得られる。
(1)法面に杭を打つ杭打ち工程と、土のうを左右方向に密接して設置面に配置する配置工程と、設置面に配置された土のうの上部及び底部と杭を連結部材で連結する連結工程を有するので、土のうを所望の位置に確実に保持することができ、土のうの位置ずれや転倒を防止することができ、土のうの固定や姿勢の安定性に優れる。
(2)法面と複数の土のうで囲まれた空間を土砂で埋めて転圧する埋め戻し工程を有することにより、法面と土のうとの間の空間を土砂で強固に締め固めることができ、傾斜面の崩壊を確実に防止して被害の拡大を防ぐことができる信頼性に優れた土のうを敷設することができる。
(3)埋め戻し工程で埋め戻された領域の上面を新たな設置面として土のうを積み上げる土のう積み上げ工程を有するので、先に敷設された土のうや埋め戻された領域の上に新たな土のうを積み重ね、土のう内の土砂の形状自在性により、設置面の土のう上の形状に沿って安定して設置することができ、規模に応じて杭打ち工程、土のう積み上げ工程、連結工程、埋め戻し工程を繰り返すことにより、土のうを複数段にわたって敷設することができ、汎用性、施工性に優れる。
【0046】
以上のように、本発明の実施の形態1における土のう敷設方法に用いる土のう用フレキシブルコンテナは構成されているので、以下のような作用が得られる。
(1)袋部が通水性を有するので、高含水の土砂、高含水の土砂の混ざった浸水家財や崩壊した家屋等の廃材(以下、収容物という。)を袋部に投入することによって、収容物が袋部の底部に広がり、収容物の周囲に袋部の胴部が立設した状態になり、収容物が重石の役目を果たすため、収容物を投入する初期段階だけ袋部や延設部を支えておけば、その後は収容物の量が増えるに従って自立性が高まるため、袋部を開口させて自立させることができ、袋部や延設部が倒れないように支える作業者は最小限の人数で済み、収容物の投入作業の省力性、安全性に優れる。
(2)袋部に収容物を充填した後は、収容物が支えとなって袋部が自立し、袋部が通水性を有しているので、放置しておけば、収容物の水分が袋部を通過して早期に抜けていくので、被災地や河川工事現場の必要な箇所に土のうとして直ちに配置させることができる。また、浸水家財や崩壊した家屋等の廃材を投入すると水分が早期に抜けていくので、これらを詰めた土のう用フレキシブルコンテナをダンプトラック等の荷台に載せて被災地から搬出することができ、復旧作業を迅速化できる。
(3)胴部の上部に延設され開閉自在の開口部が形成された延設部を有するので、収容物の投入時は延設部を人手で支えたり、円筒状や下方に向かって縮径する円錐筒状のガイド部材を内挿したりして延設部が内側に倒れるのを防止し、袋部に収容物を収容した後は、延設部の開口部を閉じることにより、直ちに袋部を閉塞することができ、閉塞の作業性、確実性に優れる。
(4)袋部の胴部の上部側に配設された吊り手を有するので、作業者が吊り手を手で持ったり、クレーンやフォークリフト等のフックに吊り手を係止したりして、袋部の胴部の上部側を確実に開口させ、延設部の開口部から投入される収容物を上部開口部を通してスムーズに袋部に収容することができ、収容物の投入作業の効率性、省力性に優れる。
(5)袋部の胴部の長手方向と平行に自立保持部材が挿通される自立保持部材挿通部を有するので、必要に応じて自立保持部材挿通部に自立保持部材を挿通することにより、袋部の胴部を補強して簡便かつ確実に自立させることができ、人手や重機等で吊り部を保持する必要がなく、投入された収容物を速やかに効率的に胴部に収容することができ、自立安定性、収容物の投入作業性に優れる。
(6)自立保持部材が挿通される自立保持部材挿通部を有するので、収容物を投入する前に、現場で簡便に自立保持部材を挿通して袋部を自立させることができ、使用性に優れる。
(7)袋部の胴部の上部開口部の周縁に形設され上部形状保持部材が挿通される上部形状保持部材挿通部を有するので、必要に応じて、上部形状保持部材挿通部に上部形状保持部材を挿通することにより、上部開口部の周縁を補強して簡便かつ確実に開口させることができると共に、延設部に内挿されるガイド部材の下端側と係合してガイド部材を支持することができ、多量の収容物を短時間で確実に胴部に投入することができ、収容物の投入作業の効率性に優れる。
(8)上部形状保持部材が挿通される上部形状保持部材挿通部を有するので、収容物を投入する前に、現場で簡便に上部形状保持部材を挿通して袋部の形状を保持することができ、使用性に優れる。
(9)袋部の胴部の上部側外周に配設された上部連結部を有するので、袋部の内部に土砂などを詰めて土のうとして使用する際に、上部連結部を杭などと連結することにより、転倒や位置ずれなどを防止することができ、取扱い性に優れる。
(10)袋部の底部に配設された把手兼用連結部を有するので、袋部の内部に土砂などを詰めて土のうとして使用する際に、把手兼用連結部を杭などと連結して、転倒や位置ずれなどを防止したり、把手兼用連結部を把持して運搬したりすることができると共に、使用後は、把手兼用連結部を持って逆さまにすることにより、簡便に内部の土砂などを排出し、折り畳んで回収することができ、施工性、取扱い性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、土のうの敷設作業中に、土のうが傾いたり、転倒したりすることがなく、土のうを確実に固定することができ、短時間で簡便かつ効率的に土のうを敷設し、傾斜地の崩壊等を防止することができる施工性に優れた土のう敷設方法の提供、及び土砂等の収容物を投入する初期段階だけ袋部を支えておけば、袋部に土砂等の収容物を投入することによって袋部が自立した状態を保つことになり、袋部を支える作業者は最小限の人数で済み、収容物投入作業の省力性に優れ、収容物の投入後に放置しておけば、収容物の水分が早期に抜け、被災地や河川工事現場の必要な箇所に土のうとして直ちに配置することができる耐久性に優れた土のう用フレキシブルコンテナの提供を行うことができる。水害等の被災地に溜まった泥状土砂を使って土のうを製作することができるため、被災地から泥状土砂を除去することができ、泥状土砂を使って被害の拡大防止及び迅速な復旧作業を同時に解決することができる。また、浸水家財や崩壊した家屋等の廃材を詰めて、ダンプトラック等の荷台に載せて被災地から搬出することができ、復旧作業を迅速化できる。
【符号の説明】
【0048】
1 土のう用フレキシブルコンテナ
1A 土のう
2 袋部
3 底部
3a 把手兼用連結部
4 胴部
4a 上部開口部
4b 上部形状保持部材挿通部
4c 挿通孔
4d 上部連結部
5 延設部
5a 開口部
6 縛り紐
7 吊り手
8 自立保持部材挿通部
10 自立保持部材
20,24a 設置面
20a 法面
21 杭
22 連結部材
23 空間
24 土砂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
法面に杭を打つ杭打ち工程と、土のうを左右方向に密接して設置面に配置する配置工程と、前記設置面に配置された前記土のうの上部及び底部と前記杭を連結部材で連結する連結工程と、前記法面と複数の前記土のうで囲まれた空間を土砂で埋めて転圧する埋め戻し工程と、を備えていることを特徴とする土のう敷設方法。
【請求項2】
前記埋め戻し工程で埋め戻された領域の上面を新たな設置面として土のうを積み上げる土のう積み上げ工程を有し、前記杭打ち工程と、前記土のう積み上げ工程と、前記連結工程と、前記埋め戻し工程と、を繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の土のう敷設方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の土のう敷設方法に用いる土のう用フレキシブルコンテナであって、
底部及び胴部を有する通水性の袋部と、前記胴部の上部に延設され開閉自在の開口部が形成された延設部と、前記袋部の前記胴部の上部側に配設された吊り手と、を備えていることを特徴とする土のう用フレキシブルコンテナ。
【請求項4】
前記袋部の前記胴部の長手方向と平行に自立保持部材が挿通される自立保持部材挿通部を備えていることを特徴とする請求項3に記載の土のう用フレキシブルコンテナ。
【請求項5】
前記袋部の前記胴部の上部開口部の周縁に形設され上部形状保持部材が挿通される上部形状保持部材挿通部及び/又は前記袋部の前記底部の周縁に形設され下部形状保持部材が挿通される下部形状保持部材挿通部を備えていることを特徴とする請求項3又は4に記載の土のう用フレキシブルコンテナ。
【請求項6】
前記袋部の前記胴部の上部側外周に配設された上部連結部及び/又は前記袋部の前記底部に配設された把手兼用連結部を備えていることを特徴とする請求項3乃至5の内いずれか1項に記載の土のう用フレキシブルコンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−58249(P2011−58249A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208723(P2009−208723)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(596141402)有限会社ちふりや工業 (3)
【Fターム(参考)】