説明

土壌中に含まれる該成分の含有量を測定する方法

【課題】二酸化炭素量より土壌中に含まれる該成分の含有量を測定する方法において、反応管に充填される触媒層の温度を下げることができ、測定時の低エネルギー化を図る。
【解決手段】石油系炭化水素成分を含む土壌を気化装置内に装填し加熱処理して土壌中に含有される該成分を気化させると共に、上記気化装置に酸素と窒素の混合ガスを導入し気化された該成分を酸化触媒を充填した反応管に送り込んで燃焼させ、これにより発生した二酸化炭素量を測定し、該二酸化炭素量より土壌中に含まれる該成分の含有量を測定する方法において、上記酸化触媒としてプラチナ担持量0.25mass%で、2〜4mm径の球状のプラチナ触媒を使用する土壌中の石油系炭化水素成分含有量測定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油系炭化水素成分を含む土壌を気化装置内に装填し加熱処理して土壌中に含有される該成分を気化させると共に、上記気化装置内に酸素と窒素の混合ガスを導入し気化された該成分をプラチナ酸化触媒を充填した反応管に送り込んで燃焼させ、これにより発生した二酸化炭素量を測定し、土壌中に含まれる該成分の含有量を測定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石油系炭化水素とは、石油関連施設で扱っている石油製品に由来するものであり、ガソリン、灯油、軽油、A重油、C重油、潤滑油類(鉱油、合成油)、原油等を構成する炭化水素化合物類である。現在、土壌汚染対策法が施行され、土地の用途変更などの際に土壌汚染調査の結果の報告が義務付けられており、その一環として土壌中の石油系炭化水素成分の含有量を調べることが多い。
【0003】
これまでの石油系炭化水素の分析法としては、土壌中の石油系炭化水素成分をn−ヘキサンで抽出・分離し、n−ヘキサンを加熱により蒸発させ、残渣物の重量を測定する方法(n−ヘキサン抽出−重量法)、土壌中の石油系炭化水素成分を四塩化炭素にて抽出・分離し、四塩化炭素抽出液の赤外吸収分光分析(IR)を行ない成分含有量を測定する方法(四塩化炭素抽出−IR法)、土壌中の石油系炭化水素成分を二硫化炭素にて抽出・分離し、二硫化炭素抽出液をガスクロマトグラフィー(GC、検出装置FID)にて、分析し、チャートの面積比より成分含有量を測定する方法(二硫化炭素抽出−GC法)等が知られている。(石油汚染土壌の浄化に関する技術開発報告書 平成15年3月財団法人石油産業活性化センター発行)。また、土壌中の石油系炭化水素成分をテトラクロロエチレンにて抽出し、その抽出液のIR分析を行ない成分含有量を測定する方法(テトラクロロエチレン抽出−IR法)等も知られている。(特開2003-294617)
【0004】
また、土壌中の炭化水素簡易分析器として採取した土壌の炭化水素を抽出溶媒で抽出し、抽出液の濁度から炭化水素含有量を測定する器具が市販されている。
【0005】
他に、水中の油分を測定する方法として、水中の油分を抽出溶媒で抽出した後、油分抽出液から抽出溶媒を揮散させ、残留分を燃焼させることにより発生した二酸化炭素から油分を測定する方法が開示されている(特開2003-302316)。
【0006】
しかし、これらの方法は何れも大気汚染或いは土壌汚染の原因となる抽出液を使用するものであり、したがってこれらの抽出液をそのまま排出すると、環境汚染の原因となり、またこれらの抽出液を無害化するには、多くの費用と労力を必要とする。
【0007】
これに対して抽出液を使用しない方法として、土壌中の軽質の炭化水素留分を加熱により蒸発させ、トラップし(パージアンドトラップ、PT)、それをGCにて分析し、チャートの面積比より油分量を測定する方法(PT−GC法)が知られている(石油汚染土壌の浄化に関する技術開発報告書 平成15年3月財団法人石油産業活性化センター発行)。
【0008】
しかし、この方法は土壌中に含まれる石油系炭化水素成分が軽質留分である場合に適用される方法であり、軽質留分以外に中重質留分を含む場合、中重質留分については前記した抽出液を使用する二硫化炭素抽出−GC法を適用する方法(PEC法)が採用され(前記非特許文献1)、したがって軽質留分から中重質留分まで幅広い石油系炭化水素成分を含む土壌に対しては従来法では何れも大気汚染或いは土壌汚染の原因となる有機溶媒による抽出操作が用いられていた。
【0009】
そこで、本願発明者は軽質留分から中重質留分まで幅広い石油系炭化水素成分を含む土壌に対して有機溶媒による抽出操作を必要とせず、且つ簡便に石油系炭化水素成分の含有量を測定する方法として、石油系炭化水素成分を含む土壌を加熱部のサンプル室内に装填して加熱処理して土壌中に含有される該成分を気化させると共に、サンプル室に酸素と窒素の混合ガスを導入し気化された該成分を反応室に送り込んで燃焼させ、これにより発生した二酸化炭素量を測定し、土壌中に含まれる該成分の含有量を測定することを特徴とする土壌中の石油系炭化水素成分含有量を測定する方法を提案した(特願2005-370876)。
【特許文献1】特開2003-294617、特開2003-302316、
【非特許文献1】石油汚染土壌の浄化に関する技術開発報告書 平成15年3月財団法人石油産業活性化センター発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この方法において反応管に充填する触媒は酸化触媒であればどのような触媒であっても測定は可能であるが、しかし低温活性を有しない酸化触媒が使用されると、完全に二酸化炭素にするには反応管を高温に加熱しなければならず、このため測定に大きなエネルギーを要するという欠点がある。
【0011】
そこで、本願発明者は反応管に充填される酸化触媒として低温で石油系炭化水素成分を二酸化炭素とすることができる、即ち低温活性を有する酸化触媒を見出すため鋭意研究の結果、プラチナ触媒がこれに適うものであることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、これらの知見に基づき、石油系炭化水素成分を含む土壌を気化装置内に装填し加熱処理して土壌中に含有される該成分を気化させると共に、上記気化装置に酸素と窒素の混合ガスを導入し気化された該成分を酸化触媒を充填した反応管に送り込んで燃焼させ、これにより発生した二酸化炭素量を測定し、該二酸化炭素量より土壌中に含まれる該成分の含有量を測定する方法において、上記酸化触媒としてプラチナ触媒を使用する土壌中の石油系炭化水素成分含有量測定方法を提案するものである。
【0013】
即ち、本発明においては反応管に充填される触媒としてプラチナ触媒を用いることにより触媒層の温度を下げることができ、したがって測定時の低エネルギー化が図られる。
【0014】
なお、本発明において使用されるプラチナ触媒はアルミナ等の担体に担持されるが、その担持量は好ましくは0.25mass%から1.2mass%程度である。
【0015】
本発明において使用されるプラチナ触媒より好ましくはプラチナ担持量0.25mass%の球状触媒、最も好ましくはプラチナ担持量0.25mass%で、2〜4mm径の球状触媒である。
【発明の効果】
【0016】
以上要するに、本発明によれば石油系炭化水素成分を含む土壌を気化装置内に装填し加熱処理して土壌中に含有される該成分を気化させると共に、上記気化装置に酸素と窒素の混合ガスを導入し気化された該成分を酸化触媒を充填した反応管に送り込んで燃焼させ、これにより発生した二酸化炭素量を測定し、土壌中に含まれる該成分の含有量を測定する方法において、反応管に充填される触媒層の温度を下げることができ、したがって測定時の低エネルギー化が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
石油系炭化水素成分を含む土壌を気化装置内に装填し加熱処理して土壌中に含有される該成分を気化させると共に、上記気化装置に酸素と窒素の混合ガスを導入し気化された該成分を酸化触媒を充填した反応管に送り込んで燃焼させ、これにより発生した二酸化炭素量を測定し、該二酸化炭素量より土壌中に含まれる該成分の含有量を測定する方法において、上記酸化触媒としてプラチナ担持量0.25mass%で、2〜4mm径の球状のプラチナ触媒を使用する土壌中の石油系炭化水素成分含有量測定方法。
【実施例1】
【0018】
以下、この発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明すると、図1は本発明に係わる土壌中の石油系炭化水素成分含有量測定に使用する装置の概略を示すものであり、1は内部に装填された土壌サンプル中の石油系炭化水素成分を気化させる気化装置、2は例えば空気等の酸素と窒素の混合ガスを気化装置1内に導入するためのガスライン、3は酸化触媒4を充填した反応管、5はこれらを加熱する電気炉である。
【0019】
石油系炭化水素成分を含むサンプル土壌は気化装置1内に装填し加熱処理してサンプル土壌中に含有される該成分を気化させると共に、上記気化装置に酸素と窒素の混合ガスを導入し気化された該成分を酸化触媒を充填した反応管に送り込んで燃焼させ、これにより発生した二酸化炭素量を測定し、土壌中に含まれる該成分の含有量を測定するものである。
【0020】
この測定方法に適する低温活性を有する触媒を選定するために石油系炭化水素成分を含むサンプル土壌の燃焼実験における各種触媒の二酸化炭素の発生量を次の条件で行った。
【0021】
図1に示す測定装置を用い、各構成部分の加熱温度を250℃とし、10000mg/kgに調整した軽油含有土壌1gを燃焼させ、燃焼ガス中の二酸化炭素の回収率を求めた。供した触媒は以下表1に示す通りであり、また二酸化炭素回収率は図2に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
以上の結果より明らかなように、アルミナに担持されたバナジウム触媒(DASH220D)と比較してアルミナに担持されたプラチナ触媒(DASH220,NA061RZ、及びE62Y4)は、高い二酸化炭素の回収率が得られた。
【0024】
また、触媒形状はリング状(NA061RZ)、円柱状(E62Y4)に比べて直径2〜4mmの球状lのもの(DASH220)について、100%近い回収率が得られた。
【0025】
更に、触媒の担持量については、0.25mass%から1.2mass%程度、好ましくは0.25mass%であることが明らかlとなった。
【0026】
これらより、上述の土壌中に含まれる石油系炭化水素成分の測定方法において使用される酸化触媒としては、プラチナ触媒で、触媒形状としては直径2〜4mmの球状で、その担持量は0.25mass%から1.2mass%程度、好ましくは0.25mass%のものが低温活性を有し、この測定方法に適していることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上要するに、本発明によれば、石油系炭化水素成分を含む土壌を気化装置内に装填し加熱処理して土壌中に含有される該成分を気化させると共に、上記気化装置に酸素と窒素の混合ガスを導入し気化された該成分を酸化触媒を充填した反応管に送り込んで燃焼させ、これにより発生した二酸化炭素量を測定し、該二酸化炭素量より土壌中に含まれる該成分の含有量を測定する方法において、上記酸化触媒として直径2〜4の球状のプラチナ触媒を使用することにより、反応管に充填される触媒層の温度を下げることができ、したがって測定時の低エネルギー化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】土壌中の石油系炭化水素成分の含有量測定装置の説明図
【図2】油分含有土壌の燃焼実験において使用した触媒と二酸化炭素回収率の関係を示す図
【符号の説明】
【0029】
1は気化装置
2はガスライン
3は反応管
4は酸化触媒
5は電気炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石油系炭化水素成分を含む土壌を気化装置内に装填し加熱処理して土壌中に含有される該成分を気化させると共に、上記気化装置内に酸素と窒素の混合ガスを導入し気化された該成分を酸化触媒を充填した反応管に送り込んで燃焼させ、これにより発生した二酸化炭素量を測定し、該二酸化炭素量より土壌中に含まれる該成分の含有量を測定する方法において、上記酸化触媒としてプラチナ触媒を使用する土壌中の石油系炭化水素成分含有量測定方法。
【請求項2】
プラチナ触媒が0.25mass%から1.2mass%のプラチナ担持量である請求項1記載の方法。
【請求項3】
プラチナ触媒が0.25mass%のプラチナ担持量の球状触媒である請求項1記載の方法。
【請求項4】
プラチナ触媒が0.25mass%のプラチナ担持量で、直径2〜4mmの球状触媒である請求項1記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−304316(P2008−304316A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151648(P2007−151648)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(000186913)昭和シェル石油株式会社 (322)
【Fターム(参考)】