説明

土壌改良方法

【課題】土壌の通気性、透水性及び保水性を向上させることができ、資材の削減、施工工程の簡略化を図ることもできる土壌改良方法を提供する。
【解決手段】施工対象である地盤10を、所定深さまで掘削した後、掘削した土壌11に対し、団粒化作用を有する高分子化合物であるGB−2000(有限会社グローバル研究所の商品名)の水溶液12を散布して、十分に撹拌する。GB−2000を土壌11に混合すると、その中に含まれる高分子化合物の団粒化作用により、土壌12中の粒子が互いに結合し、土壌11中に立体網目構造が形成されていく。次に、土壌表面を平準化するため、敷き均し作業と、転圧作業と、が行われる。この後は、時間経過に伴い、さらに、結合、連結が進行し、大小の間隙を有する多孔質状の粗大粒子が形成され、これらの粗大粒子が固化された多孔構造の土壌層13が地盤10中に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポーツグラウンド、路床などを形成する土壌を改良する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
スポーツグラウンドや路床などにおいては、土壌の団粒構造の形成と維持、及び透水性の確保が重要な問題である。特に、沖縄の赤黄色土や関東ローム層に代表されるような赤土を含む土壌の場合、赤土は微粒子粘性土壌で透水性が著しく低いので、降雨による侵食を受けて流出しやすいという問題がある。
【0003】
従来、赤土を含む土壌に対して、石灰、セメント類の固化材を混合撹拌し、転圧や突き固めをすることにより地盤を強化していた。ところが、このような処理をした土壌は透水性が殆どなく、表面にひび割れが発生しやすいという問題がある。また道路の場合は、この地盤の上に砂や砕石を敷き詰めて路盤とし、さらにその上にインターロッキングや樹脂舗装を施していた。
【0004】
しかし、このような道路においては、表面水はインターロッキングや樹脂舗装中に浸透するが、地盤は不透水性であるので、路盤材が水を含んで流動性を生じるとともに強度が低下して、表面舗装が壊れやすくなるという問題がある。
【0005】
そこで、本出願人は、セメント系固化材及び高分子化合物を土壌に混合して、土壌中に団粒構造を形成することによって透水性を向上させる土壌改良方法を提案している(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−13102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1記載の土壌改良方法は、これを透水性に乏しい土壌に対して実施することにより、透水性、通気性及び保水性に優れた土壌に改良することができる点において優れているが、土木建設業の分野においては、コスト削減の手段として、施工の際に使用される資材の削減、施工工程の簡略化が要請され続けている。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、土壌の通気性、透水性及び保水性を向上させることができ、資材の削減、施工工程の簡略化を図ることもできる土壌改良方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る土壌改良方法は、団粒化作用を有する高分子化合物を含む水溶液を土壌に散布して撹拌する工程と、土壌の敷き均し及び転圧を行う工程と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
前記高分子化合物を含む水溶液が土壌に接触すると、団粒化作用により、土壌の粒子が互いに結合して立体網目構造が形成され、時間経過に伴い、さらに、結合、連結が進行し、大小の間隙を有する多孔質状の粗大粒子が形成され、最終的に、これらの粗大粒子が固化された構造となるため、土壌の通気性、透水性及び保水性を向上させることができる。また、施工当初の段階において、前記高分子化合物を含む水溶液を土壌に混合させることにより、土壌を団粒化させることができるので、資材の削減、施工工程の簡略化を図ることもできる。
【0011】
また、本発明に係る土壌改良方法は、団粒化作用を有する高分子化合物を含む水溶液を土壌に散布して撹拌する工程と、土壌の敷き均し及び転圧を行う工程と、前記転圧後、前記高分子化合物を含む水溶液を土壌に散布する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
前述した土壌改良方法において土壌の転圧を行ったとき、この転圧によって、表層部の土壌が粉砕されて細粒状態に戻ってしまうことがある。そこで、本発明においては、転圧後に再度、前記高分子化合物を含む水溶液を土壌に散布することにより、細粒状態になった表層部の土壌が再び団粒化して、転圧後の土壌全体が通気性、透水性及び保水性に優れた土壌となる。この後、適当な時間養生することにより、団粒化した土壌を充分に固化させる。実際の養生時間は施工場所の土壌に応じて異なるが、土壌の含水比や一軸圧縮強さが目標値となる時点をもって養生完了とする。
【0013】
さらに、本発明に係る土壌改良方法は、セメント系固化材若しくはマグネシウム系固化材の少なくとも一方を土壌に混合して撹拌する工程と、団粒化用を有する高分子化合物を含む水溶液を土壌に散布して撹拌する工程と、土壌の敷き均し及び転圧を行う工程と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
土壌にセメント系固化材若しくはマグネシウム系固化材を混合し撹拌した後、団粒化作用を有する高分子化合物を含む水溶液を土壌に散布して撹拌すると、前記団粒化作用によって形成された粗大粒子が、固化材で強固に固化された構造となるため、土壌の通気性、透水性及び保水性を長期間にわたって維持することができる。
【0015】
一方、前記高分子化合物は、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体からなる高分子化合物であることが望ましい。
【0016】
アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体からなる高分子化合物は、鎖状の極めて長い分子長の有機高分子がヘリックス状の分子構造を形成した高分子化合物である。この高分子化合物は、各分子が強い正の電荷をもっているため、負の表面電荷を有する粒状体や粉状体と混合すると、これらの粒子群と瞬時に反応し、粒子同士を結合して集合体を形成し、さらに、これらの集合体を連結、架橋して立体網目構造を形成する団粒化作用を有している。この高分子化合物の添加により形成される立体網目構造体は優れた強度、安定性、持続性を発揮する。
【0017】
この高分子化合物の一般的特性は、外観がほぼ透明の無色の粘稠液体であり、粘度3000〜9000cp(25℃)、pH5.0〜7.0であり、水と任意の割合で混合することができる。なお、この高分子化合物としては、たとえば有限会社グローバル研究所発売のGB−2000(商品名)を使用することができる。
【0018】
この高分子化合物を土壌改良材として使用する場合、原液を30〜70倍に希釈した水溶液として土壌に散布する。この水溶液は、土壌に接触すると前記団粒化作用により、土壌の粒子が互いに結合して立体網目構造が形成され、時間経過に伴い、さらに、結合、連結が進行し、大小の間隙を有する多孔質状の粗大粒子が形成され、最終的に、これらの粗大粒子が固化材により強固に固化された構造となるため、通気性、透水性、保水性に優れた土壌に改良することができる。
【0019】
ここで、高分子化合物の原液の希釈率を30〜70倍とすることにより、透水性と地盤強度のバランスに優れた団粒構造を形成することができる。原液の希釈率が30倍より濃いと土粒子の結合が早すぎて粗大粒子が得られず、70倍より濃くなると結合した粒子が大きくなり過ぎるので、上記範囲とするのが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、土壌の通気性、透水性及び保水性を向上させることができ、資材の削減、施工工程の簡略化を図ることもできる土壌改良方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態である土壌改良方法の概略工程を示す説明図である。
【図2】本発明の第2実施形態である土壌改良方法の概略工程を示す説明図である。
【図3】本発明の第3実施形態である土壌改良方法の概略工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に基づいて、本発明の第1実施形態である土壌改良方法について説明する。本実施形態の土壌改良方法においては、図1(a)に示すように、施工対象である地盤10を、所定深さまで掘削する。掘削方法は限定しないが、例えば、撹拌用アタッチメントを装備したバックホウ(図示せず)などを用いることができる。
【0023】
次に、図1(b)に示すように、掘削した土壌11に対し、団粒化作用を有する高分子化合物であるGB−2000(有限会社グローバル研究所の商品名)の水溶液12を散布して、十分に撹拌する。GB−2000を土壌11に混合することにより、その中に含まれる高分子化合物の団粒化作用により、土壌12中の粒子が互いに結合し、土壌11中に立体網目構造が形成されていく。この場合、GB−2000の混合量は限定しないので、土壌11の状況や施工条件などに応じて決めることができるが、本実施形態では、GB−2000を水で35〜45倍に希釈して形成した水溶液を、土壌1立方メートル当たり60〜100リットル程度使用している。
【0024】
次に、ブルドーザ(図示せず)を用いた敷き均し作業と、ローラ(図示せず)を用いた転圧作業と、が行われる。敷き均しと転圧は土壌表面の平準化のために行われる。この後は、時間経過に伴い、さらに、結合、連結が進行し、大小の間隙を有する多孔質状の粗大粒子が形成され、最終的に、図1(c)に示すように、これらの粗大粒子が固化された多孔構造の土壌層13が地盤10中に形成されるため、元の土壌11より、通気性、透水性及び保水性が向上する。また、施工当初の段階において、前記高分子化合物を含む水溶液を土壌11に混合、撹拌させるだけで、土壌11の粒子を団粒化させることができるので、資材の削減、施工工程の簡略化を図ることができる。さらに、本実施形態では、セメント系固化材やマグネシウム系固化材を土壌11に混合しないので、比較的柔軟な土壌層13を形成することができる。
【0025】
次に、図2に基づいて、本発明の第2実施形態である土壌改良方法について説明する。本実施形態の土壌改良方法においては、図2(a)に示すように、施工対象である地盤10を所定深さまで掘削した後、図2(b)に示すように、掘削した土壌11に対し、団粒化作用を有する高分子化合物であるGB−2000(有限会社グローバル研究所の商品名)の水溶液12aを散布し、十分に撹拌する。この場合、GB−2000の混合量は限定しないので、土壌11の状況や施工条件などに応じて決めることができるが、本実施形態では、GB−2000を水で35〜45倍に希釈して形成した水溶液を、土壌1立方メートル当たり60〜100リットル程度使用している。
【0026】
次に、土壌表面を平準化するため、ブルドーザ(図示せず)を用いた敷き均し作業と、ローラ(図示せず)を用いた転圧作業と、を行う。この後、図2(c)に示すように、GB−2000を水で45〜55倍に希釈して形成した水溶液12bを、土壌1立方メートル当たり10〜15リットル程度の割合で散布する。
【0027】
この後は、時間経過に伴い、さらに、土壌粒子の結合、連結が進行し、大小の間隙を有する多孔質状の粗大粒子が形成され、最終的に、これらの粗大粒子が固化された多孔構造の土壌層23が地盤10中に形成されるため、元の土壌11より、通気性、透水性及び保水性が向上する。また、本実施形態では、セメント系固化材やマグネシウム系固化材を土壌11に混合しないので、比較的柔軟な土壌層13を形成することができる。
【0028】
本実施形態においては、敷き均しや転圧によって、立体網目構造が壊れたり、土壌が細粒化したりすることがあっても、土壌11の敷き均し、転圧を行った後に、GB−2000の水溶液12bの散布を行うことにより、土壌粒子が再び団粒化して、立体網目構造が形成されるので、通気性、透水性及び保水性に優れた土壌層23を得ることができる。
【0029】
次に、図3に基づいて、本発明の第3実施形態である土壌改良方法について説明する。本実施形態の土壌改良方法においては、図3(a)に示すように、施工対象である地盤10を所定深さまで掘削した後、図3(b)に示すように、掘削した土壌11に対し、セメント系固化材14(若しくはマグネシウム系固化材)を土壌11に混合して撹拌した後、GB−2000を含む水溶液12cを土壌11に散布して撹拌する。
【0030】
本実施形態では、土壌11の1立方メートルの土壌11に対し、セメント系固化材14(若しくはマグネシウム系固化材)を5〜150kg程度混合し、GB−2000を水で45〜55倍に希釈して形成した水溶液を80〜120リットル程度散布しているが、これらに限定するものではないので、土壌11の状況や施工条件などに応じて決めることができる。
【0031】
次に、ブルドーザ(図示せず)を用いた敷き均し作業と、ローラ(図示せず)を用いた転圧作業と、が行われる。この後は、時間経過に伴い、さらに、結合、連結が進行し、大小の間隙を有する多孔質状の粗大粒子が形成され、最終的に、図3(c)に示すように、これらの粗大粒子が固化された多孔構造の土壌層33が地盤10中に形成されるため、元の土壌11より、通気性、透水性及び保水性が向上する。
【0032】
本実施形態においては、土壌11にセメント系固化材14(若しくはマグネシウム系固化材)を混合し撹拌した後、団粒化作用を有する高分子化合物を含む水溶液12cを土壌11に散布して撹拌している。これにより、前記団粒化作用によって形成された粗大粒子が、セメント系固化材14で強固に固化された構造の土壌層33が形成されるため、通気性、透水性及び保水性を長期間にわたって維持することができる。
【0033】
前述した第1〜第3実施形態の土壌改良方法は、施工事例を示すものであり、本発明の土壌改良方法は、これらの実施形態に限定されるものではない。また、前述した実施形態においては、団粒化作用を有する高分子化合物として、GB−2000(有限会社グローバル研究所の商品名)を使用しているが、これに限定しないので、団粒化作用を有する他の高分子化応物、例えば、有限会社グローバル研究所のエコCG−2000(商品名)などを使用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の土壌改良方法は、スポーツグラウンドや路床などの土壌を改良する技術として、土木建設業の分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
10 地盤
11 土壌
12,12a,12b,12c 水溶液
13,23,33 土壌層
14 セメント系固化材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
団粒化作用を有する高分子化合物を含む水溶液を土壌に散布して撹拌する工程と、土壌の敷き均し及び転圧を行う工程と、を備えた土壌改良方法。
【請求項2】
団粒化作用を有する高分子化合物を含む水溶液を土壌に散布して撹拌する工程と、土壌の敷き均し及び転圧を行う工程と、前記転圧後、前記高分子化合物を含む水溶液を土壌に散布する工程と、を備えた土壌改良方法。
【請求項3】
セメント系固化材若しくはマグネシウム系固化材の少なくとも一方を土壌に混合して撹拌する工程と、団粒化作用を有する高分子化合物を含む水溶液を土壌に散布して撹拌する工程と、土壌の敷き均し及び転圧を行う工程と、を備えた土壌改良方法。
【請求項4】
前記高分子化合物が、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体からなる高分子化合物である請求項1記載の土壌改良方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−100638(P2013−100638A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243414(P2011−243414)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(500305380)株式会社シーマコンサルタント (30)
【Fターム(参考)】