説明

土壌汚染物質の除去方法及び除去装置

【課題】土壌汚染物質の除去が困難であった粘性土を含む地盤において、地中に浸透した土壌汚染物質を効率的、経済的且つ限定的に除去することができる土壌汚染物質の除去方法を提供する。
【解決手段】地中に浸透した土壌汚染物質を除去するに際し、長手方向に沿って細管13を挿設した長尺状のドレーン材10を用い、鉛直方向に沿って地中にドレーン材10を埋設し、ドレーン材10の細管13を通して土壌汚染物質を含む地下水及び気体のうちの少なくとも地下水を地上側で回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に浸透した土壌汚染物質を地下水とともに除去するのに利用される土壌汚染物質の除去方法及び除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、土壌汚染が想定される地盤に対しては、汚染状態の調査や汚染物質の除去等を行うことが義務付けられており、とくに、工場等の施設の跡地を宅地として使用する場合などには、地中に浸透した土壌汚染物質を除去することがきわめて重要となる。
【0003】
また、除去の対象となる土壌汚染物質としては、溶剤や洗浄剤などに使用される揮発性有機化合物(VOC)や、重金属類及び農薬類が挙げられている。この中で、密度が大きいものや水に連行されるようなものは、時間経過とともに重力の作用で地中に浸透し、土壌汚染が顕在化したときには深度数十メートルまで土壌汚染が及んでいることがある。
【0004】
従来において、地中に浸透した土壌汚染物質を除去するには、地盤を掘削して土壌汚染物質を含む土壌や地下水を直接を除去するか、掘削前の地盤あるいは掘削後の土壌に添加剤を加え、土壌と添加剤を攪拌混合することによって土壌汚染物質を無害化するのが一般的であった。
【0005】
また、土壌汚染物質を除去しようとする地盤が透水性の高い砂質土(砂礫等)から成るものである場合には、集水井戸を設置してポンプで連続的に排水することにより、地下水とともに土壌汚染物質を除去することが行われていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、土壌汚染物質を除去しようとする地盤が粘性土(ローム等)を含むものである場合、粘性土は透水性が低いことから、その間隙に存在する土壌汚染物質を充分に除去することが困難であった。
【0007】
そして、地盤の掘削や土壌と添加剤との攪拌混合を行う除去方法では、土壌汚染物質が深度数十メートルに浸透する場合もあることから、その作業が非常に大掛りになるという問題点があり、また、集水井戸を用いた除去方法では、先述の如く透水性の高い地盤に限られるほか、土壌汚染物質を除去しようとする範囲以外の地下水をも除去することとなるため、限定的な範囲での土壌汚染物質の除去が困難であるという問題点があった。
【0008】
本発明は、上記従来の状況に鑑みて成されたもので、とくに、土壌汚染物質の除去が困難であった粘性土を含む地盤において、地中に浸透した土壌汚染物質を効率的、経済的且つ限定的に除去することができる土壌汚染物質の除去方法及び除去装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の土壌汚染物質の除去方法は、地中に浸透した土壌汚染物質を除去するに際し、長手方向に沿って細管を挿設した長尺状のドレーン材を用い、鉛直方向に沿って地中にドレーン材を埋設し、ドレーン材の細管を通して土壌汚染物質を含む地下水及び気体のうちの少なくとも地下水を地上側で回収することを特徴としている。
【0010】
また、本発明の土壌汚染物質の除去装置は、長手方向に沿って細管が挿設され且つ鉛直方向に沿って地中に埋設される長尺状のドレーン材と、地中に埋設したドレーン材の細管に連結した配管を介して土壌汚染物質を含む地下水を回収する地下水回収手段を備えたことを特徴としている。
【0011】
ここで、上記の除去方法及び除去装置では、土壌汚染物質を除去しようとする地盤は、当然のことながら所定の範囲をもつものであるから、その範囲において多数のドレーン材を所定間隔で埋設し、各ドレーン材の細管を通して土壌汚染物質を含む地下水や気体を地上側で回収することとなる。
【0012】
さらに、本発明の土壌汚染物質の除去装置は、より好ましい実施形態として、地中に埋設したドレーン材の細管に連結した配管を介して気体を回収する気体回収手段を備えたことを特徴としている。
【0013】
さらに、本発明の土壌汚染物質の除去装置は、より好ましい実施形態として、配管を介して土壌汚染物質を含む地下水及び気体を夫々の回収手段側に吸引する吸引用ポンプを備えたことを特徴としている。
【0014】
さらに、本発明の土壌汚染物質の除去装置は、より好ましい実施形態として、地下水及び気体の回収手段が、回収した地下水及び気体を無害化する処理手段を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の土壌汚染物質の除去方法によれば、土壌汚染物質の除去が難しい粘性土を含む地盤であっても、主として、細管を備えたドレーン材を地中に埋設する作業だけで、地中の土壌汚染物質を地下水とともに経済的に且つ効率良く除去することができ、また、限定的な範囲において土壌汚染物質を除去することができほか、地上側に回収した土壌汚染物質を一箇所で厳密に集中管理することが容易である。
【0016】
本発明の土壌汚染物質の除去装置によれば、長尺状のドレーン材及び地下水回収手段を採用したことにより、主として地中にドレーン材を埋設する作業だけで、地中の土壌汚染物質を地下水とともに経済的に且つ効率良く除去することができ、また、限定的な範囲において土壌汚染物質を除去することができるほか、地上側に回収した土壌汚染物質を一箇所で厳密に集中管理することができる。
【0017】
また、本発明の土壌汚染物質の除去装置は、気体回収手段を採用したことにより、とくに、土壌汚染物質が揮発性有機化合物である場合に、揮発性有機化合物の気体を地上側で回収して一箇所で厳密に集中管理することができる。
【0018】
さらに、本発明の土壌汚染物質の除去装置は、吸引用ポンプを採用したことにより、地中に浸透した土壌汚染物質の除去及び回収を促進することができ、工期の短縮化などに貢献し得るものとなる。
【0019】
さらに、本発明の土壌汚染物質の除去装置は、処理手段を含む地下水及び気体の回収手段を採用したことにより、環境保護などの面で非常に有益なものとなる。
【実施例】
【0020】
以下、図面に基づいて、本発明に係わる土壌汚染物質の除去方法及び除去装置の一実施例を説明する。
【0021】
図1(a)に全体を示す土壌汚染物質の除去装置は、地中に浸透した土壌汚染物質すなわち主として液体である土壌汚染物質を地下水とともに除去するものであって、土壌汚染物質を除去しようとする地盤Gに対し、その地中に埋設されるドレーン材10を備えている。
【0022】
ドレーン材10は、図1(b)(c)に示すように、断面扁平形状で長尺を成す主材11と、主材11の長手方向にわたって収容した波型のコア材12と、主材11の長手方向に沿って挿設した適数(図には1本を示す)の細管13を備えている。
【0023】
主材11は、例えば不織布で形成してあり、液体及び気体が透過可能である。コア材12は、例えば紙や樹脂で形成してあり、主材11の中空形状を維持する。細管13は、例えば内径2mm程度の樹脂製チューブであり、上端部を主材11から突出させると共に、下端部が主材11の下端部よりも上位側となるように位置及び長さが調整してある。この細管13は、毛細管現象により液体を吸い上げることが可能である。
【0024】
そして、ドレーン材10は、既知のドレーン打設機を用いて、土壌汚染物質が存在する地中の深度に至るまで鉛直方向に沿って縦に埋設され、上端部を地上に露出させた状態にする。このとき、地盤Gは当然所定の面積を有するので、この地盤Gに対して縦横に所定間隔で多数のドレーン材10を埋設する。また、土壌汚染物質や地下水が存在する地中の深度は、予め行う地質調査等によって把握することができる。
【0025】
また、当該除去装置は、埋設した各ドレーン材10の上端部にジョイント14を装着すると共に、このジョイント14において、細管13の上端部と配管を構成する枝管15とを夫々連結する。各枝管15は、配管を構成する共通の主管16に接続してある。
【0026】
さらに、当該除去装置は、主管16の一端を閉塞端とし、他端を開放端とすると共に、開放端側に、土壌汚染物質を含む地下水を回収する地下水回収手段17と、土壌汚染物質の気体を回収する気体回収手段18と、配管を介して土壌汚染物質を含む地下水及び気体を夫々の回収手段17,18側に吸引する吸引用ポンプ19を備えている。
【0027】
地下水及び気体の回収手段17,18は、回収した地下水及び気体を無害化する処理手段17A,18Aを備えている。これらの処理手段17A,18Aでは、例えばフィルタを用いた濾過や添加剤との攪拌混合などにより、液体及び気体である土壌汚染物質を無害化する処理を行う。
【0028】
上記の構成を備えた土壌汚染物質の除去装置では、地中に埋設したドレーン材10において、主材11がフィルターの役割を果たし、内部への土砂の流入を阻止するとともに地下水を内部に透過させ、透過した地下水を細管13で吸い上げる。つまり、土壌汚染物質を含む地下水が細管13内を上昇し、また、土壌汚染物質が揮発性有機化合物である場合には、揮発した気体も細管13内を上昇することとなる。
【0029】
このとき、当該除去装置では、細管13における毛細管現象で地下水及び気体を吸い上げることも可能であるが、吸引用ポンプ19を作動させて、配管(主管16、枝管15)を介して各細管13の内部を吸引することにより、土壌汚染物質を含む地下水及び気体を強制的に吸引することができ、これにより地下水及び気体の除去回収が促進され、工期の短縮化も実現し得る。
【0030】
また、上記の吸引ポンプ19には、例えばダイヤフラムポンプを用いることができ、このポンプで細管13の内部に微弱な真空吸引を加えるだけで、ドレーン材10内に透過した地下水及び気体を間断なく吸引し続けることができ、これにより地下水もドレーン材10に向かって最短距離で集中することとなる。
【0031】
そして、当該除去装置では、地上側において、土壌汚染物質を含む地下水を地下水回収手段17に回収し、その処理手段17Aにより地下水を無害化すると共に、土壌汚染物質の気体を気体回収手段18に回収し、その処理手段18Aにより気体を無害化する。
【0032】
このように、上記実施例で説明した土壌汚染物質の除去方法及び除去装置は、大規模な地盤の掘削等の作業が不要であると共に、ドレーン工法などで用いる載苛盛土やサンドマットによる加圧・排水工、あるいは大気圧工法などで地表を密封する気密シートや水平ドレーン工も不要であって、土壌汚染物質の除去が難しい粘性土を含む地盤Gであっても、主として地中にドレーン材10を埋設する作業だけで、地中の土壌汚染物質を地下水とともに経済的に且つ効率良く除去し得るものとなり、さらに、限定的な範囲において土壌汚染物質を除去することが可能である。
【0033】
そして、上記の除去方法及び除去装置は、地下水及び気体の回収手段17,18において、地上側に回収した土壌汚染物質を含む地下水及び気体を一箇所で厳密に集中管理することができ、なお且つ、各回収手段17,18の処理手段17A,18Aで地下水及び気体を無害化することから、環境保護等にも貢献し得るものとなる。
【0034】
なお、本発明に係わる土壌汚染物質の除去方法及び除去装置は、その詳細な構成が上記実施例に限定されるものではなく、ドレーン材や各回収手段及び処理手段などの細部を適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係わる土壌汚染物質の除去装置の一実施例において、全体を説明する断面図(a)、ドレーン材の部分破断側面図(b)及び断面図(c)である。
【符号の説明】
【0036】
10 ドレーン材
13 細管
15 枝管(配管)
16 主管(配管)
17 地下水回収手段
17A 地下水の処理手段
18 気体回収手段
18A 気体の処理手段
19 吸引用ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に浸透した土壌汚染物質を除去するに際し、長手方向に沿って細管を挿設した長尺状のドレーン材を用い、鉛直方向に沿って地中にドレーン材を埋設し、ドレーン材の細管を通して土壌汚染物質を含む地下水及び気体のうちの少なくとも地下水を地上側で回収することを特徴とする土壌汚染物質の除去方法。
【請求項2】
長手方向に沿って細管が挿設され且つ鉛直方向に沿って地中に埋設される長尺状のドレーン材と、地中に埋設したドレーン材の細管に連結した配管を介して土壌汚染物質を含む地下水を回収する地下水回収手段を備えたことを特徴とする土壌汚染物質の除去装置。
【請求項3】
地中に埋設したドレーン材の細管に連結した配管を介して気体を回収する気体回収手段を備えたことを特徴とする請求項2に記載の土壌汚染物質の除去装置。
【請求項4】
配管を介して土壌汚染物質を含む地下水及び気体を夫々の回収手段側に吸引する吸引用ポンプを備えたことを特徴とする請求項3に記載の土壌汚染物質の除去装置。
【請求項5】
地下水及び気体の回収手段が、回収した地下水及び気体を無害化する処理手段を含むことを特徴とする請求項3又は4に記載の土壌汚染物質の除去装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−83196(P2007−83196A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−277144(P2005−277144)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000231198)日本国土開発株式会社 (51)
【Fターム(参考)】