説明

土壌汚染調査装置

【課題】
地中の地下水の有無に拘わらず土壌汚染の調査を正確に行うことができる土壌汚染調査装置を提供する。
【解決手段】
地面E穿った穴の内部に給水管28を介して水を給水ポンプ6により供給する。給水ポンプ6により水の供給を行いながら、この水に、前記穴の近傍の土壌に含まれる調査対象物質を溶出させる。その調査対象物質が溶出した水を水回収管27の内周と給水管28の外周との間の水回収通路を介して真空ポンプ7により吸引して貯水容器8a,8b内に回収する。真空ポンプ7により水の回収を行いながら、その回収した水に溶解した調査対象物質の濃度を濃度センサ54により計測する。前記調査対象物質の水への溶出を促進する溶出促進剤を、給水ポンプ6により供給する水に第1貯水槽69内で混入させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に存在するトリクロロエチレンやテトラクロロエチレン等の揮発性有機化合物(volatile organic compounds 以下「VOCs」という。)からなる汚染物質を調査するための土壌汚染調査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されている従来の土壌汚染調査装置においては、まず、掘削機により表層汚染調査用掘削ビットに回転力と打撃力を作用させて所定の深さまで地盤の掘削を行う。次に、掘削機のドリルヘッドから表層汚染調査用掘削ビットを取外した後に、地下空気採取管の検知管を表層汚染調査用掘削ビットの胴体内部に挿入する。その後、気体採取セットの真空式定量ポンプを作動させて検知管を経由して所定の地下の空気を採取し、汚染ガス等を分析・測定するようにしている。
【特許文献1】特開平2003−82976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の土壌汚染調査装置は、掘削を行った地盤の地中に貫入した表層汚染調査用掘削ビットから空気を採取するようにしているため、その作業の際、地中に貫入した表層汚染調査用掘削ビットとその外周の地盤との間に生じた隙間から地上の空気が浸入して該空気も採取されてしまい、その結果、土壌汚染調査の精度が悪くなり正確な調査ができないという問題があった。
また、地中には、地下水が流れている地盤があり、そのような場所では表層汚染調査用掘削ビットを貫入して空気を採取しようとする地点に水しか存在しない場合があるので、そのような場合は空気を採取することができないため、調査自体ができないという問題もあった。
【0004】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、地中の地下水の有無に拘わらず土壌汚染の調査を正確に行うことができる土壌汚染調査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するために、本発明に係る土壌汚染調査装置は、地面に穿った穴の内部に給水通路を介して水を供給する給水手段と、前記給水手段により水の供給を行いながら、この水に、前記穴の近傍の土壌に含まれる調査対象物質を溶出させ、その調査対象物質が溶出した水を水回収通路を介して回収する水回収手段と、この水回収手段により水の回収を行いながら、その回収した水に溶解した調査対象物質の濃度を計測する計測手段とを備えた土壌汚染調査装置であって、前記調査対象物質の水への溶出を促進する溶出促進剤を、前記給水手段により供給する水に混入させるようにしたものである。
【0006】
請求項2に記載した発明に係る土壌汚染調査装置は、請求項1に記載の土壌汚染調査装置において、前記計測手段による計測が終了した後の水を貯留する貯水槽を設け、この貯水槽に貯留された水を前記給水手段により前記穴の内部に供給するようにしたものである。
【0007】
請求項3に記載した発明に係る土壌汚染調査装置は、請求項2に記載の土壌汚染調査装置において、前記貯水槽に貯留された水に前記溶出促進剤を前記貯水槽内で混入させるようにしたものである。
【0008】
請求項4に記載した発明に係る土壌汚染調査装置は、請求項2または請求項3に記載の土壌汚染調査装置において、前記貯水槽に貯留された水が予め設定された水位より減少したとき、水を補給する補水手段を備えるものである。
【0009】
請求項5に記載した発明に係る土壌汚染調査装置は、請求項1ないし請求項4のうち何れか一つに記載の土壌汚染調査装置において、地中を掘削する掘削部材が先端部に固定された試錐管を、その軸芯回りに試錐手段により回転させて前記掘削部材により地中を掘削するようにし、前記給水手段により前記給水通路に供給する水を、地中に貫入した前記試錐管とその外周の土との摩擦抵抗を低減する試錐剤を水に混入して生成した試錐剤溶水とし、前記試錐管内に外管を配設し、この外管内に間隙を隔てて内管を配設し、前記外管の内周と前記内管の外周との間の空間または前記内管内のうち何れか一方を前記給水通路とする一方、他方を前記水回収通路とし、前記給水通路に供給された試錐剤溶水を前記掘削部材に穿設した水供給孔から排出し、この排出した試錐剤溶水によって前記掘削部材で掘削した土を泥水とし、この泥水を前記掘削部材近傍の前記試錐管の先端部または前記掘削部材のうち少なくとも何れか一方に穿設した水回収孔を介して前記水回収通路に導入して前記給水手段により供給した試錐剤溶水を回収し、その回収した試錐剤溶水に溶解した調査対象物質の濃度を前記計測手段により計測するようにしたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、地面に穿った穴の内部に水を供給すると共にその水を供給した穴の部位から水を回収するようにしたので、調査したい地中の場所に存在する調査対象物質を水に溶出させて、その溶出後の水を回収することができ、地中の地下水の有無に拘わらず地中に含まれる調査対象物質を確実に採取することができる。このため、調査の精度が向上し、土壌汚染の調査を正確に行うことができる。
【0011】
また、給水手段による水の供給と水回収手段による水の回収と、その回収した水の調査とを並行して行うようにしたので、土壌汚染の調査を迅速に行うことができ、かつ、調査の結果を速やかに知ることができる。
また、調査対象物質の水への溶出を促進する溶出促進剤を、給水手段により供給する水に混入させるようにしたので、調査したい地中の場所に存在する調査対象物質を溶出促進剤によって確実、かつ、十分に水に溶出させることができる。このため、その溶出後の水を回収することで調査の精度を一層向上させることができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、計測手段による調査が終了した後の水を貯留する貯水槽を設け、この貯水槽に貯留された水を給水手段により地面の穴の内部に供給するようにしたので、水を循環させて再利用することができ、経済的であると共に地面の穴の内部に供給する水を容易に確保することができる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、貯水槽に貯留された水に溶出促進剤を貯水槽内で混入させるようにしたので、地面の穴の内部に供給する水に溶出促進剤を均一に混入させることができる。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、貯水槽に貯留された水が予め設定された水位より減少したとき、補水手段により水が補給されるので、貯水槽には常に一定の水位の水が貯留される。このため、地面の穴の内部に供給する水が土壌汚染の調査中に不足することがない。
【0015】
請求項5記載の発明によれば、掘削部材によって掘削された泥と水供給孔から排出された水とが掘削部材の回転によって十分に攪拌された泥水とされるため、泥に混在する調査対象物質を確実に水に溶出させることができるので、その溶出後の水を回収することで地中に含まれる調査対象物質を確実に採取することができる。
また、試錐管内に配設した外管の内周と内管の外周との間の空間または内管内のうち何れか一方を給水通路とする一方、他方を水回収通路とし、試錐剤を水に混入して生成した試錐剤溶水を給水通路に供給して水回収通路を介して回収するようにしたので、試錐管と外管との間には試錐剤溶水や泥水は通過しない。このため、試錐管の内壁に試錐剤溶水等が付着して汚れることがないので試錐管を取り扱う際の作業性を良好にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係る土壌汚染調査装置の一実施の形態を図1ないし図11によって詳細に説明する。
図1は本発明に係る土壌汚染調査装置を装備した作業車の構成を示す側面図、図2は本発明に係る土壌汚染調査装置を装備した作業車を上方から見た状態を示す平面図である。図3は試錐管の先端部に掘削部材が固定された状態を示す断面図であり、図4の(a)及び(b)は掘削部材を横断した状態を示す拡大断面図であり、同図の(c)は掘削部材を先端側から見た外観の状態を示す拡大図である。図5は本発明に係る土壌汚染調査装置の構成を示すブロック図であり、図6は試錐管の後端部に固定される閉塞部材の構成を示す図であり、図7は給水管及び水回収管に接続される三方継手の構成を示す図である。図8は試錐管に穿設された溶出促進剤供給孔の構成を示す断面図であり、図9は給水管,水回収管及び試錐管が載置された枠体を正面から見た外観の状態を示す図であり、図10はその枠体を左側方から見た外観の状態を示す図であり、図11は試錐管の後端部に固定される他の閉塞部材の構成を示す図である。なお、図1,図2及び図5については、作図の都合上、それぞれの構成部材の縮尺の比率は互いに異ならせて図示している。
【0017】
図1及び図2において、符号1で示すものは、この実施の形態による土壌汚染調査装置を装備した作業車を示す。図2は、後述する試錐管24を装着する前の作業車1を示す平面図である。この作業車1には、左右一対の無限軌道帯3,3と、この無限軌道帯3,3(図1は左側のみを示す。)を駆動して作業車1を走行させるエンジン4と、掘削しながら地盤に穴を穿つための試錐機構部5と、本発明でいう給水手段を構成する給水ポンプ6と、真空ポンプ7と第1貯水容器8a及び第2貯水容器8b等を備えている。試錐機構部5は本発明でいう試錐手段を構成し、真空ポンプ7と第1貯水容器8a及び第2貯水容器8bとは本発明でいう水回収手段を構成する。試錐機構部5,給水ポンプ6,真空ポンプ7,第1貯水容器8a及び第2貯水容器8b等は、作業車1に装備された台座11上に設置され固定されている。
【0018】
無限軌道帯3,3は、駆動スプロケット12及び従動スプロケット13…に巻き回され、エンジン4は、作業車1の後部における左右一対の無限軌道帯3,3の間に配置されている。作業車1の後部には、操作盤14が配設され、この操作盤14に配設された第1操作子14aを操作してエンジン4の駆動力を駆動スプロケット12に作業車1が前進方向もしくは後進方向に走行するように伝達または遮断して作業車1を走行または停止させる。また、操作盤14に配設された第2操作子14bを操作して左右一対の無限軌道帯3,3のそれぞれの回転速度を異ならせて作業車1の進行方向を変更する。
【0019】
左右一対の無限軌道帯3,3の上方で、かつ、操作盤14の前方には、基体15が設けられ、台座11は、昇降自在に基体15によって支持されている。台座11は基体15にリンク部材16で連結され、台座11と基体15との間には油圧シリンダ17aが架設されている。油圧シリンダ17aは、操作盤14に設けられた第3操作子14cを操作することによってエンジン4の右側面部に配設された油圧ポンプ17bにより伸縮駆動され、油圧シリンダ17aは任意の伸縮位置で固定できるように構成されている。
【0020】
これによって、台座11は基体15に対して鉛直方向の任意の位置で支持される。台座11が基体15に対して鉛直方向下方に変位したとき、それに伴って、台座11に立設された支持部材11aに軸支された円形状の回転体21が基体15に連結されたワイヤ18の張力によって時計回りに回転させられ、回転体21の回転角度が支持部材11aに固定されたエンコーダ22によって測定される。その測定値の信号が、台座11に搭載された制御盤25内のコントローラ23に送信され、コントローラ23内に配設されたメモリ23aに測定値データとして記憶される(図5を参照)。
【0021】
また、図1に示すように、台座11は最高位置と最低位置との間をストロークSだけ変位可能に構成され、台座11が最高位置から最低位置まで降下した回数は、図示しないカウンタで計測されメモリ23aに記憶される。この回数とエンコーダ22によって測定された回転角度とに基づいて、地面Eに穴を穿つための円筒状の試錐管24が地中に貫入する深度がコントローラ23内に設けられた演算手段により演算され求められる。なお、台座11が最低位置まで降下したときは、その旨を作業者に報知する表示灯(図示せず)が点灯する。
【0022】
また、コントローラ23内には、タイマ23bが配設されており、試錐機構部5による掘削が開始されてからの時間がタイマ23bによって計測される。そして、タイマ23bによる計測時間と、エンコーダ22により測定された深度データと、後述する濃度センサ54により測定された測定データとが関連付けられてメモリ23aに記憶されるようになっており、これによって、地中における深度ごとのVOCsの濃度が時間の経過とも関連付けられてメモリ23aに記憶される。
【0023】
台座11が鉛直方向下方に変位して回転体21が時計回りに回転するとき、回転体21と支持部材11a側との間に架設されたトーションバネ(図示せず)が撓んで回転体21を反時計回りに回転させようとするトルクが作用するようになっており、このトーションバネは、台座11が鉛直方向上方に変位したとき、回転体21を反時計回りに回転させるように作用する。
【0024】
試錐機構部5は、台座11の前部に固定され、試錐管24を把持した状態で試錐管24をその軸芯L1回りに所定の回転角度(正逆300度の回転角度)で往復回転させるためのクランプ5aと、このクランプ5aに回転力を伝達するための試錐管回転モータ5bとを備える。試錐管24の回転速度は、台座11に搭載された制御盤25に設けられた操作スイッチ25aを操作して無段階に調節することができる。また、掘削の作業中、地中に石等の障害物があった場合はその障害物を粉砕して除去するために、その分、掘削作業の時間が長くなることがあるが、そのような場合は、制御盤25に設けられた操作スイッチ25bを操作してその旨をメモリ23aに記憶させ、障害物除去作業が発生した時間帯と、そのときの深度及び濃度の測定データとの関係が後で測定データを整理する際に分かるようにしている。
【0025】
図9に示すように、試錐管24は、一定の長さ(2メートル)を有する複数の筒状の分割管73…と、分割管73…に螺着される筒状の試錐管継手76…とで構成され、分割管73…及び試錐管継手76…はステンレス製の部材からなる。試錐管継手76…の両端部の内周面にそれぞれ刻設された雌ネジ部に分割管73…のそれぞれの両端部外周面に刻設された雄ネジ部を螺合して分割管73と試錐管継手76とを次々に連結することによって長尺の1本の試錐管24が構成される。なお、分割管73…及び試錐管継手76…のネジ部はテーパネジ構造とされ、互いに強固に螺合することによって緩み難くされている。
【0026】
図3に示すように、試錐管24の先端部を構成する試錐管継手76には、地中を掘削するための略円柱状の掘削部材26が螺着され、試錐管24内には、本発明でいう外管を構成する硬質ナイロン樹脂製の水回収管27が挿入され、水回収管27内には給水ポンプ6によって水が供給されるテフロン(登録商標、正確にはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン))樹脂製の給水管28が挿入されている。水回収管27及び給水管28は、共に円管状の横断面を有しており、給水管28は、本発明でいう内管を構成する。また、給水管28内は本発明でいう給水通路を構成し、給水管28外周と水回収管27内周との間の間隙は本発明でいう水回収通路を構成する。
【0027】
掘削部材26は、その先端部の掘削部26aと、この掘削部26aが螺着される筒状の掘削部材本体26bと、試錐管24の先端部を構成する試錐管継手76に螺着される連結部材37とからなり、掘削部材本体26bの内部には、略円柱状の空洞からなる水回収部32が掘削部材26の軸芯L2(掘削部材26が固定された試錐管24の軸芯L1と同軸)に沿って形成され、掘削部26aに水供給孔33が軸芯L2方向に穿設されており、この水供給孔33は、掘削部26aに設けられた第1連通路34を介して給水管28と連通する。
【0028】
第1連通路34の水供給孔33とは反対側の端部に刻設された雌ネジ部に、筒状の給水管用継手部材35の一端部外周面に刻設された雄ネジ部が螺合され、給水管用継手部材35の他端部には、給水管28の先端部28aが嵌着され、クランプ部材(図示せず)で強固に把持される。このため、給水管28が嵌着されたまま給水管用継手部材35の雄ネジ部を緩めることによって、給水管28を掘削部材26に対して給水管28の軸芯方向に離脱させることができる。
なお、給水管用継手部材35内及び掘削部26aの第1連通路34も本発明でいう給水通路を構成する。
【0029】
第1連通路34の中途部から分岐通路34bが分岐され、その分岐通路34bの終端が水回収部32の底部32aに開口して水噴射孔36を形成している。図3の矢視A−A線に沿う拡大断面図として図示した図4の(a)に示すように、水噴射孔36は、掘削部材26の軸芯L2から半径方向に偏倚した部位で軸芯L2回りの円周方向に所定の角度(5度〜15度の範囲で適宜設定)だけ傾斜して穿設されている。
【0030】
連結部材37は、長手方向中間部が大径とされ、それより小径とされた両端部に雄ネジ部がそれぞれ刻設された円管状の部材からなり、該雄ネジ部の一方が、掘削部26aとは反対側の掘削部材本体26bの端部内周面に刻設された雌ネジ部に螺着され、連結部材37内には水回収部32に連通する第2連通路37aが掘削部材26の軸芯L2に沿って形成されている。第2連通路37aの水回収部32とは反対側の端部内周面には雌ネジ部が刻設され、この雌ネジ部に、筒状の水回収管用継手部材38の一端部外周面に刻設された雄ネジ部が螺合され、水回収管用継手部材38の他端部の小径部には、水回収管27の先端部27aが嵌着され、クランプ部材(図示せず)で強固に把持される。このため、水回収管27が嵌着されたまま水回収管用継手部材38の雄ネジ部を緩めることによって、水回収管27を掘削部材26に対して水回収管27の軸芯方向に離脱させることができる。掘削部材本体26b内の水回収部32と連結部材37の第2連通路37aと水回収管用継手部材38の内部は本発明でいう水回収通路を構成する。而して、水回収部32の中心部を貫通して給水管28が配設されることになる。なお、試錐管継手76と連結部材37,連結部材37と掘削部材本体26b及び掘削部材本体26bと掘削部26aのそれぞれのネジ部はテーパネジ構造とされ、互いに強固に螺合することによって緩み難くされている。
【0031】
また、図3及び図3の矢視B−B線に沿う拡大断面図として図示した図4の(b)に示すように、掘削部材26の掘削部材本体26bには、掘削部材26の外部と水回収部32とを連通する水回収孔32b…が掘削部材26の軸芯L2に平行に延びる長孔形状に形成され、これらの水回収孔32b…は軸芯L2回りに等角度間隔に4個形成されている。水回収孔32b…を長孔形状に形成したことで、水回収孔32b…の開口面積を十分確保でき、かつ、大きな粒土は水回収孔32b…を通過することができないため細かな土だけが泥水となって回収される。なお、水回収孔32b…の外部側の周囲は泥水が通過しやすいように大きく面取りされている(図3を参照)。而して、水回収通路を構成する水回収部32と連結部材37の第2連通路37aとを流れる水の経路から見て、水回収孔32b…より上流側に水噴射孔36が位置付けられ、給水管28内の給水通路を流れる水の一部が水噴射孔36から水回収部32の水流方向に略沿うよう噴射される。
【0032】
掘削部材26の掘削部26aは掘削部本体41を備え、掘削部本体41には、掘削部材26の軸芯L2に平行に掘削ロッド42…が螺合により植設されている。掘削部材26を先端側から見た外観の拡大した状態を図示した図4の(c)に示すように、掘削ロッド42…は、掘削部材26の軸芯L2の周囲を囲むように3本の掘削ロッド42が掘削部本体41の円柱状突部41aに植設され、前記3本の掘削ロッド42を囲むように6本の掘削ロッド42が円柱状突部41aの周囲に形成された環状段部41bに植設されている。なお、掘削部26aは、合計9本の掘削ロッド42が螺合された状態で熱処理されて硬化された後、掘削ロッド42…の先端が研磨機で研磨されて掘削に適した形状に成形されている。
【0033】
図1に示すように、水泥分離容器43が一対の保持部材43aを介して台座11の支持部材11aに固定されており、図5に示すように、水泥分離容器43の上部に、後述する第3接続管71が接続され、水泥分離容器43の上部と第1貯水容器8a及び第2貯水容器8bのそれぞれの底部とが、本発明でいう水回収通路の下流部を構成する第1接続管44を介して接続されている。これによって、水回収通路を流れる水の経路から見て、貯水容器8a,8bの上流側に水泥分離容器43が配設される。水泥分離容器43の底部には、水泥分離容器43内の泥を排出するときに取り外すゴム製の栓部材45が着脱自在に嵌入されている。水泥分離容器43は、水と泥とを分離するためのもので略円筒状の透明の容器からなり、水泥分離容器43の容量は、土壌汚染調査の対象となっている1箇所の地点における地中を予定された深度まで掘削したときに地上に排出される泥の体積に相当する容積より少しだけ多い容量とされている。そして、水泥分離容器43の外表面には、深度1メートル分の泥の量に相当する位置ごとに目盛が付けられ、この目盛と泥の貯留量との関係から試錐作業中のおおよその深度を把握することができる。
【0034】
第1接続管44の中途部には、水泥分離容器43と第1貯水容器8aとの間の通路を開閉する第1電磁弁46aと、水泥分離容器43と第2貯水容器8bとの間の通路を開閉する第2電磁弁46bとが配設されている。
【0035】
また、第1貯水容器8aと第1電磁弁46aとの間の第1接続管44における中途部から分岐して設けられた第1排水管47aの中途部には、第1貯水容器8a内に貯留した水を排出する際に開弁する第3電磁弁46cが配設されている。一方、第2貯水容器8bと第2電磁弁46bとの間の第1接続管44における中途部から分岐して設けられた第2排水管47bの中途部には第2貯水容器8b内に貯留した水を排出する際に開弁する第4電磁弁46dが配設されている。第1排水管47aと第2排水管47bとの端部同士は連結され1本の集合排水管47cに連通している。集合排水管47cから排出された水を貯留する第1貯水槽69が設けられ、この貯水槽69内の底部近傍にはオゾンガス攪拌ポンプ86が配置されている。第1貯水槽69は作業車1の近傍の地面Eに設置される。
【0036】
酸素ボンベ87に収容された酸素ガスがガス管88を介してオゾンガス発生装置91に供給され、このオゾンガス発生装置91で生成されたオゾンガスがオゾンガス供給管92を介してオゾンガス攪拌ポンプ86に供給され、該ポンプ86による攪拌作用によって第1貯水槽69に貯留された水にオゾンガスが混合されてオゾン水溶液が生成され、そのオゾン水溶液1リットル当たり1ないし10ミリグラムの割合でオゾンが混合される。この割合は、土壌汚染の程度によって適宜変更することができるが、給水管28によって供給された水に含まれるオゾンガスと地中に存在するVOCsとが化学反応するために必要なオゾンガスの量より多い量とされている。その理由は、水回収管27を介して第1貯水槽69に回収された水に残留するVOCsを第1貯水槽69内でオゾンガスと化学反応させることによってVOCsを完全に分解して残留しないようにし、第1貯水槽69から後述する第2貯水槽85に移送された水が給水管28及び水回収管27を介して再び循環して回収された水には、新たに地中から溶出されたVOCsしか存在しないようにして濃度センサ54によるVOCsの測定誤差をなくすためである。なお、オゾンガスは、地中に含まれるVOCsを化学反応により分解して土壌を浄化する浄化剤としての機能のほか、VOCsの水への溶出を促進する溶出促進剤としての機能も有する。
【0037】
第1貯水槽69に貯留された水を第2貯水槽85に移送するための第4接続管93及び台座11に搭載された送水ポンプ94が設けられ、第4接続管93は第1貯水槽69と第2貯水槽85との間に配管され、送水ポンプ94は第4接続管93の中途部に配設されている。前記酸素ボンベ87,オゾンガス発生装置91及び送水ポンプ94は作業車1の台座11に搭載され、第2貯水槽85は作業車1の近傍の地面Eに設置される。
【0038】
第1貯水容器8aと第2貯水容器8bとには、貯留する水の水位が予め設定された最高水位又は最低水位の何れかに到達したことを検出して、その検出信号を、コントローラ23に電線(図示せず)を介して送信する第1水位検出センサ48aと第2水位検出センサ48bとがそれぞれ配設されている。
【0039】
貯水容器8a,8b内のそれぞれの上部には、台座11に搭載された加圧ポンプ52が第2接続管51を介して接続され、貯水容器8a,8b内に貯留した水を排水管47a,47bを介して排出する際に貯水容器8a,8b内を加圧ポンプ52によって加圧する。第2接続管51の中途部には、加圧ポンプ52と第1貯水容器8aとの間の通路を開閉する第5電磁弁46eと、加圧ポンプ52と第2貯水容器8bとの間の通路を開閉する第6電磁弁46fとが配設されている。
【0040】
また、第2接続管51の中途部には、貯水容器8a,8b内から吸い出された気体が排出される排気管53の一端が接続され、排気管53の中途部には真空ポンプ7が接続され、貯水容器8a,8b内の圧力が真空ポンプ7によって減圧される。また、第2接続管51の中途部には、真空ポンプ7と第1貯水容器8aとの間の通路を開閉する第7電磁弁46gと、真空ポンプ7と第2貯水容器8bとの間の通路を開閉する第8電磁弁46hとが配設されている。
【0041】
排気管53の中途部には、気体が流れる経路から見て、真空ポンプ7より下流側に、本発明でいう計測手段を構成する濃度センサ54が接続されている。制御盤25に配設された表示装置25cの複数の発光ダイオード(以下「LED」という。)が、濃度センサ54により測定された測定データに応じて、その個数だけ点灯する。濃度センサ54は電線を介してコントローラ23に接続されている。
また、上述した第1電磁弁46aないし第8電磁弁46hは、それぞれコントローラ23に電線(図示せず)を介して接続され、コントローラ23によって開閉制御される。また、前記給水ポンプ6,真空ポンプ7及び加圧ポンプ52もそれぞれコントローラ23に電線(図示せず)を介して接続され、コントローラ23によって作動又はその作動の停止が制御される。
【0042】
試錐管24の後端部を構成する試錐管継手76には、図6に示すように、アルミニウム合金製の閉塞部材55が装着される。すなわち、水回収管27及び給水管28が突出した試錐管継手76の開口と水回収管27との間が閉塞部材55によって閉塞され、この閉塞部材55は、試錐管24の後端部を構成する試錐管継手76に装着したとき、試錐管24の軸芯L1を通る仮想平面を接合面とする一対の半体55a,55bからなり、これらの半体55a,55bにそれぞれ一体に形成されたヒンジ部56のヒンジ孔にピン57が挿入され、このピン57の軸芯L3回りに互いに半体55a,55b同士を接近する方向または離間する方向に回動させて半体55a,55bが接合または離脱される。
【0043】
半体55a,55bのヒンジ部56とは反対側に凹状の凹部58a,58bがそれぞれ形成され、半体55bの凹部58b内に棒状の係止部材61の一端部が回転自在に軸支されている。半体55a,55b同士を接合した状態で、半体55aの凹部58a内に係止部材61を挿入して係止部材61の他端部に螺合されたネジ部材61aを半体55aの端面に圧接するようにねじ込むことによって半体55a,55b同士が強固に接合される。
水回収管27の外周と閉塞部材55との間および半体55a,55bの接合面84a,84b同士の間は半体55a,55bのそれぞれに装着されたシール部材たるリングシール62a,62b同士等の圧接によって液密にシールされる。
【0044】
ところで、掘削作業時に試錐管24がその軸芯L1回りに正逆300度の回転角度で往復回転したときは、試錐管24と共にその軸芯L1回りに閉塞部材55も回転するが、水回収管27とリングシール62a,62bとは摺動自在とされているので閉塞部材55と水回収管27とは相対的に回転することができ、試錐管24及び閉塞部材55の回転に連れ回されて水回収管27も回転することはない。
【0045】
半体55a,55b同士が接合された状態の閉塞部材55における内部と外部とは、一方の半体55aに形成された連通路63によって連通される。また、試錐管24の後端部を構成する試錐管継手76以降の地中に貫入された試錐管24の内周と水回収管27の外周との間に設けられた間隙が試錐剤溶水供給通路64とされ、この試錐剤溶水供給通路64と半体55aの連通路63とが連通される。そして、試錐剤溶水供給ポンプ65により試錐剤溶水容器66内に貯留された試錐剤溶水が、連通路63に接続された配管81を介して供給される(図1を参照)。このとき、試錐管24の後端部を構成する試錐管継手76の端面は半体55a,55bに形成された段部83a,83bに当接しているため、試錐剤溶水供給ポンプ65により供給された試錐剤溶水で閉塞部材55内の圧力が上昇しても、その圧力により該試錐管継手76が閉塞部材55から抜け出ることはない。
なお、試錐剤溶水供給ポンプ65及び試錐剤溶水容器66は作業車1の近傍の地面Eに設置される。
【0046】
試錐剤溶水供給通路64に供給された試錐剤溶水は、試錐管24の先端部を構成する試錐管継手76に軸芯L1回りに等角度間隔に4個穿設された試錐剤溶水排出孔67…を介して試錐管24の外部に排出される(図3を参照)。試錐剤溶水は、ベントナイトを主成分として水に懸濁させた懸濁液からなり、地中に貫入した試錐管24とその外周の土との摩擦抵抗を低減する機能,掘削部材26の掘削部26aで掘削した泥を水回収通路を介して搬送する機能,試錐管24が地中から引き抜かれたとき、地面Eに穿った穴の内周面に擁壁を形成する機能等を有する。
【0047】
図7に示すように、試錐管24の後端部を構成する試錐管継手76から突出した水回収管27の後端部27bには、略T字状をした三方継手68が接続される。三方継手68は、筒状の主継手部68aと、この主継手部68aの長手方向中途部から分岐した分岐部68bとからなり、主継手部68aの一端部に水回収管27の後端部27bが接続され、水回収管27内から突出した給水管28は主継手部68aの中空部を貫通し主継手部68aの他端部の開口から突出して、その突出端部は、図1に示すように給水ポンプ6に接続されており、第2貯水槽85に貯留された水が給水管28を介して給水ポンプ6により供給される。
【0048】
第2貯水槽85内には、第3水位検出センサ95が配設され、予め設定された水位より下降したことが該第3水位検出センサ95により検出されたとき、その検出信号が電線(図示せず)を介してコントローラ23に送信される。補水槽96に貯留された水を第2貯水槽85に補給するための補水管97及び補水ポンプ98が設けられ、補水管97は第2貯水槽85と補水槽96との間に配管され、補水ポンプ98は補水管97の中途部に配設されている。補水ポンプ98は、本発明でいう補水手段を構成し、電線(図示せず)を介してコントローラ23に接続され、第3水位検出センサ95からの信号を受信してコントローラ23により作動又はその作動の停止が制御される。補水ポンプ98は作業車1の台座11に搭載され、補水槽96は第2貯水槽85の近傍の地面Eに設置される。
【0049】
主継手部68aの他端部の開口と給水管28との間の間隙はゴム製の栓部材70で液密に閉塞される。この結果、水回収管27と給水管28との後端部側同士が、これら両管27,28の軸芯方向に互いに相対変位不能に三方継手68及び栓部材70によって連結される。三方継手68の分岐部68bの端部は、第3接続管71を介して水泥分離容器43の上部に接続される(図1を参照)。而して、水回収管27の内周と給水管28の外周との間の水回収通路は、三方継手68を介して第3接続管71と連通し、図7に示す矢印のように、水がそれぞれ流れる。水泥分離容器43の上部と貯水容器8a,8bとは第1接続管44を介して接続されており、この第1接続管44の中途部には、水泥分離容器43で泥を除去できなかった場合を想定して念のために除泥フィルタ72が配設されている。
【0050】
分割管73…の中途部には、図8に示すように、分割管73…の内部と外部とを連通する溶出促進剤供給孔73b…が分割管73…の長手方向に沿って等間隔で複数箇所穿設され、かつ、その複数箇所ごとに分割管73…の軸芯回りに等角度間隔に4個ずつ穿設されている。図8中に、一部を拡大して示すように、溶出促進剤供給孔73b…には、ステンレス製の細い短線を不織布状に形成した円盤状のフィルタ74が装着され、さらに、フィルタ74が脱落しないように分割管73…の外部のフィルタ74の上から抜け止め部材75が装着されている。フィルタ74の目の粗さは、試錐剤溶水中のベントナイトは透過できないが後述する溶出促進剤は透過できる大きさとされている。
【0051】
なお、試錐作業を行う場合は、長尺の1本の試錐管24のままでは取り扱いが不便であるので、試錐作業の前は、試錐管24を複数の分割管73…に分解した状態で取り扱う。図9及び図10に示すように、分割管73…のそれぞれの一端部には試錐管継手76を予め螺着しておき、その試錐管継手76が螺着された分割管73…を、給水管28が挿入された水回収管27の外周に一定の間隔を隔てて環装する。分割管73…の本数は、地中に貫入する試錐管24の長さに相当する分より少し多い数量とし、水回収管27及び給水管28は試錐管24の長さよりさらに10メートル以上長い管長とする。試錐管継手76が螺着された分割管73…が環装されたまま水回収管27を給水管28と共にとぐろ状に巻いた状態で枠体77に載置しておく。この枠体77の下部にはキャスタ77aが設けられているので、水回収管27,給水管28及び複数の分割管73…を載置した状態で所望の場所に枠体77を容易に移動させることができる。
【0052】
(土壌汚染調査の作業工程)
上述した土壌汚染調査装置を使用して土壌汚染の調査を行う場合は、以下の作業工程で行われる。
(1)まず、複数の分割管73…が環装され、とぐろ状に巻かれた水回収管27及び給水管28が載置された枠体77,作業車1,試錐剤溶水供給ポンプ65その他の機具を土壌汚染の調査を行う現場まで運搬する。
【0053】
(2)次に、試錐する地点に作業車1を設置した後、水回収管27及び給水管28が連結された掘削部材26が螺着された分割管73を枠体77から取り出して試錐機構部5のクランプ5aの孔内に貫入して掘削部材26の掘削部26aを地面Eに接地させる。
なお、水回収管27及び給水管28がそれぞれ嵌着された水回収管用継手部材38及び給水管用継手部材35は掘削部材26の連結部材37及び掘削部26aにそれぞれ螺合されているが、これらの螺合はネジ長さの中途部までしか螺合せずに螺合に余裕を持たせ、掘削の際に試錐管24が軸芯L1回りに正逆300度の回転角度で往復回転しても、それに伴って水回収管27及び給水管28も回転しないようにしている。
【0054】
(3)次に、エンジン4を運転した状態で、操作盤14の第3操作子14cを操作して、油圧ポンプ17bを作動させて油圧シリンダ17aを伸張させて台座11を最高位置まで上昇させ、その最高位置で、試錐機構部5のクランプ5aにより試錐管24を強固に把持させる。
【0055】
(4)次に、制御盤25の操作スイッチ25aを操作して試錐管回転モータ5bを駆動させて正逆300度の回転角度で試錐管24を往復回転させる。このとき、油圧ポンプ17bの作動を停止して油圧シリンダ17aの油圧を減少させ、試錐機構部5等が設置された台座11自体の荷重によって下方に向かう推力が試錐管24に付与され、この推力と試錐管24の回転とによって掘削部材26により掘削が行われる。このため、試錐管24を地中に貫入させるための特別な荷重付与手段が不要となる。
【0056】
(5)一方、第2貯水槽85に貯留された水(オゾンガスが混合された水)が給水ポンプ6によって給水管28を介して供給され、その水が掘削部材26の掘削部26aに穿設された水供給孔33から噴射される。この水の噴射と掘削部26aの回転による攪拌とによって、掘削された土が泥水となり、その泥に混在するVOCsを、水に混合されたオゾンガスとVOCsとの化学反応による発熱によって確実、かつ、十分に水に溶出させることができ、そのVOCsが溶出した泥水が掘削部材26の水回収孔32b…から水回収部32に回収された後、その泥水が、真空ポンプ7による減圧作用によって水回収管27と給水管28との間の水回収通路を介して水泥分離容器43内に導入される。
【0057】
(6)この水泥分離容器43内で泥が分離された後の水が第1接続管44の中途部に配設された除泥フィルタ72を通過して第1貯水容器8aに導入され、この導入された水で第1貯水容器8a内の水位が予め設定された水位に到達したとき、第1水位検出センサ48aからの信号をコントローラ23が受信して、コントローラ23によって第1電磁弁46aが閉弁されると共に第2電磁弁46bが開弁される。このとき、第3電磁弁46c及び第4電磁弁46dは閉弁されている。
【0058】
これによって、水泥分離容器43からの水が第1接続管44及び第2電磁弁46bを通過して第2貯水容器8b内に導入される。水が第2貯水容器8b内に導入されている間、コントローラ23によって第3電磁弁46cが開弁され、第1貯水容器8a内に貯留された水が第1排水管47a及び集合排水管47cを介して第1貯水槽69内に排水される。このとき、コントローラ23によって第5電磁弁46eが開弁されると共に加圧ポンプ52が駆動され、これによって、第2接続管51を介して第1貯水容器8a内の圧力が増加させられ第1貯水容器8a内の水が強制的に排出される。第1貯水槽69内に排出された水は、第1貯水槽69内でオゾンガス攪拌ポンプ86によりオゾンガスが混合され、送水ポンプ94により第2貯水槽85へ移送される。
【0059】
(7)第1貯水容器8a内の水が排出され、第1貯水容器8a内の水位が予め設定された最低水位になったとき、第1水位検出センサ48aからの信号をコントローラ23が受信し、コントローラ23によって加圧ポンプ52の駆動が停止されると共に第3電磁弁46c及び第5電磁弁46eが共に閉弁される。
【0060】
(8)第2貯水容器8b内の水位が予め設定された最高水位に到達したとき、第2水位検出センサ48bからの信号をコントローラ23が受信して、コントローラ23によって第1電磁弁46aが開弁されると共に第2電磁弁46bが閉弁される。これによって、水泥分離容器43からの水が第1接続管44及び第1電磁弁46aを通過して第1貯水容器8a内に再び導入される。水が第1貯水容器8a内に導入されている間、コントローラ23によって第4電磁弁46dが開弁され、第2貯水容器8b内に貯留された水が第2排水管47b及び集合排水管47cを介して第1貯水槽69内に排水される。
【0061】
このとき、コントローラ23によって第6電磁弁46fが開弁されると共に加圧ポンプ52が駆動され、これによって、第2接続管51を介して第2貯水容器8b内の圧力が増加させられ第2貯水容器8b内の水が強制的に排出される。第1貯水槽69内に排出された水は、第1貯水槽69内でオゾンガス攪拌ポンプ86によりオゾンガスが混合され、送水ポンプ94により第2貯水槽85へ移送される。第2貯水容器8b内の水が排出されると、コントローラ23によって加圧ポンプ52の駆動が停止されると共に第4電磁弁46d及び第6電磁弁46fが共に閉弁される。
【0062】
(9)以下、同様の工程が繰り返され、給水管28を介して連続して水が地面Eの穴内に供給されると共にその供給された水が連続して第1貯水容器8aまたは第2貯水容器8bに交互に回収される。
【0063】
(10)第1貯水容器8aまたは第2貯水容器8b内から交互に真空ポンプ7によって吸い出された気体は排気管53に排出され、その気体に含まれるVOCsの濃度が濃度センサ54によって測定された後、その測定値の信号とエンコーダ22によって測定された測定値の信号がコントローラ23に送信されて、測定値データとしてコントローラ23内のメモリ23aに記憶される。
【0064】
このとき、濃度センサ54による測定値データとエンコーダ22による測定値データとコントローラ23内のタイマ23bによって計測された時間とが関連付けられてメモリ23aに記憶されるようになっており、これによって、地中における深度ごとのVOCsの濃度がその測定された時の時間と共にメモリ23aに記憶される。
【0065】
また、表示装置25cのLEDが濃度センサ54による測定値に応じてコントローラ23によって点灯される。これによって、VOCsの濃度を視覚的に容易に認識することができる。また、濃度センサ54及びエンコーダ22による測定値のデータがコントローラ23内のメモリ23aに記憶されるので、その記憶された測定値のデータをコントローラ23に接続された外部機器で適宜変換して外部機器のモニタに表示させることもできる。
【0066】
(11)試錐管24と水回収管27との間の試錐剤溶水供給通路64に試錐剤溶水供給ポンプ65により試錐剤溶水が供給される。この試錐剤溶水は、試錐管24の試錐剤溶水排出孔67…から試錐管24の外部に排出される。この排出された試錐剤溶水の一部は、掘削部材26の水回収孔32b…から回収された泥水と一緒になって、真空ポンプ7による減圧作用によって水回収管27と給水管28との間の水回収通路を流れる。このとき、泥水の中の泥は試錐剤溶水によって搬送されながら水泥分離容器43内に導入される。
【0067】
(12)台座11が最低位置まで降下したら、制御盤25の操作スイッチ25aを操作して試錐管回転モータ5bを停止して試錐管24の回転を停止させる。次に、試錐機構部5のクランプ5aを緩めて試錐管24の把持を解除し、操作盤14の第3操作子14cを操作して油圧ポンプ17bを作動させて油圧シリンダ17aを伸張させ台座11を最高位置まで上昇させて、その最高位置でクランプ5aにより試錐管24を再び強固に把持させる。
【0068】
(13)次に、制御盤25の操作スイッチ25aを操作して試錐管回転モータ5bを駆動させて再び試錐管24を回転させ、操作盤14の第3操作子14cを操作して油圧ポンプ17bの作動を停止して油圧シリンダ17aの油圧を減少させる。これによって、台座11自体の荷重によって掘削部材26により掘削が行われる。
【0069】
(14)掘削部材26による掘削によって地中の深度が深くなり、試錐管24の長さが不足する場合は、制御盤25の操作スイッチ25aを操作して試錐管回転モータ5bを停止し、試錐管24の回転を停止させると共に試錐剤溶水供給ポンプ65も停止させる。
【0070】
(15)試錐管24の後端部を構成する試錐管継手76に固定した閉塞部材55の半体55a,55bを、係止部材61による係止を解除して試錐管継手76から離脱させた後、枠体77から次の分割管73(試錐管継手76が一端部に螺着されたもの)を水回収管27に沿って移動させ、閉塞部材55を離脱させた試錐管24の後端部(試錐管継手76)に、前記次の分割管73を螺合させ、分割管73を継ぎ足す。継ぎ足した分割管73の他端部(試錐管継手76)に閉塞部材55の半体55a,55bを装着して接合し、係止部材61により係止する。
【0071】
(16)次に、制御盤25の操作スイッチ25aを操作して試錐管回転モータ5bを駆動して試錐管24を再び回転させると共に試錐剤溶水供給ポンプ65も駆動させ試錐剤溶水の供給を再び行う。
【0072】
(17)以下、同様の工程が繰り返され、掘削部材26によって、予定された地中の深度まで掘削される。
【0073】
(他の地点の土壌汚染調査の作業工程)
予定された地点の土壌汚染調査が終了した後、同じ調査区域における他の地点の土壌汚染調査を行う場合は、以下の作業工程で行われる。
【0074】
(1)制御盤25の操作スイッチ25aを操作して試錐管回転モータ5bを停止して試錐管24の回転を停止させると共に試錐剤溶水供給ポンプ65も停止させる。
【0075】
(2)試錐管24の後端部(試錐管継手76)に固定した閉塞部材55を離脱させた後、クランプ5aによって試錐管24を把持した状態で操作盤14の第3操作子14cを操作して油圧ポンプ17bを作動させ、台座11を上昇させて地中から試錐管24を引き抜く。このとき、試錐管24外周に接する地中には、試錐剤溶水による擁壁が形成されているので、試錐管24を引き抜く際に試錐管24外周と地中との間に作用する摩擦力は低減される。
【0076】
(3)次に、地上に引き出された試錐管24の分割管73を回転して、その分割管73と地中に貫入している試錐管24の後端部(試錐管継手76)との螺合を緩め、地上に引き出された分割管73を取り外した後、試錐機構部5のクランプ5aを緩めて試錐管24の把持を解除し、操作盤14の第3操作子14cを操作して油圧ポンプ17bの作動を停止させて油圧シリンダ17aを収縮させ台座11を最低位置まで下降させて、地中に貫入した試錐管24をクランプ5aにより再び強固に把持させる。
【0077】
(4)取り外された分割管73は一端部に試錐管継手76が螺着されたまま、給水管28が挿入された水回収管27の外周に環装された状態で枠体77に載置する。
【0078】
(5)次に、クランプ5aによって試錐管24を把持した状態で操作盤14の第3操作子14cを操作して油圧ポンプ17bを作動させ、再び台座11を上昇させて、まだ地中に貫入している試錐管24を引き抜く。
【0079】
(6)以下、同様の工程が繰り返され、地中に貫入した全ての試錐管24を引き抜く。
【0080】
なお、上述した試錐管24の引き抜き作業の際、給水管28及び水回収管27は、掘削部材26に連結したままであったが、試錐管24の引き抜き作業を行う前に、試錐管24の後端から外部に突出している給水管28及び水回収管27の部位を回転させて給水管28の先端部28a及び水回収管27の先端部27aがそれぞれ嵌着されている給水管用継手部材35及び水回収管用継手部材38を掘削部材26から離脱させて試錐管24内から給水管28及び水回収管27を予め引き出しておいてもよい。
【0081】
(7)地中に貫入した全ての試錐管24が引き抜かれた後、作業車1の操作盤14の第1操作子14a及び第2操作子14bを操作して作業車1を他の地点に移動させると共に枠体77等もその地点に移動させ、その地点の土壌汚染の調査を、上述した(1)ないし(6)の工程と同様の工程で行う。
【0082】
上述したように構成された土壌汚染調査装置によれば、地面Eに穿った穴の内部に水を供給すると共にその水を供給した穴の部位から水を回収するようにしたので、調査したい地中の場所に存在するVOCsを水に溶出させて、その溶出後の水を回収することができ、地中の地下水の有無に拘わらず地中に含まれるVOCsを確実に採取することができる。このため、調査の精度が向上し、土壌汚染の調査を正確に行うことができる。
【0083】
また、給水ポンプ6による水の供給と真空ポンプ7による水の回収と、その回収した水の調査とを並行して行うようにしたので、土壌汚染の調査を迅速に行うことができ、かつ、調査の結果を速やかに知ることができる。
また、VOCsの水への溶出を促進する溶出促進剤としてオゾンガスを、給水ポンプ6により供給する水に混入させるようにしたので、調査したい地中の場所に存在するVOCsをオゾンガスによって確実、かつ、十分に水に溶出させることができる。このため、その溶出後の水を回収することで調査の精度を一層向上させることができる。
【0084】
また、この実施の形態による土壌汚染調査装置によれば、濃度センサ54による測定が終了した後の水を貯留する第1貯水槽69を設け、この第1貯水槽69に貯留された水を第2貯水槽85に移送した後、給水ポンプ6により地面Eの穴の内部に供給するようにしたので、水を循環させて再利用することができ、経済的であると共に地面Eの穴の内部に供給する水を容易に確保することができる。
【0085】
また、この実施の形態による土壌汚染調査装置によれば、第1貯水槽69に貯留された水に溶出促進剤としてのオゾンガスを第1貯水槽69内で混入させるようにしたので、地面Eの穴の内部に供給する水にオゾンガスを均一に混入させることができる。
【0086】
また、この実施の形態による土壌汚染調査装置によれば、第2貯水槽85に貯留された水が予め設定された水位より減少したとき、補水ポンプ98により水が補給されるので、第2貯水槽85には常に一定の水位の水が貯留される。このため、地面Eの穴の内部に供給する水が土壌汚染の調査中に不足することがない。
【0087】
さらにまた、この実施の形態による土壌汚染調査装置によれば、掘削部材26によって掘削された泥と水供給孔33から排出された水とが掘削部材26の回転によって十分に攪拌された泥水とされるため、泥に混在するVOCsを確実に水に溶出させることができるので、その溶出後の水を回収することで地中に含まれるVOCsを確実に採取することができる。
【0088】
なお、この実施の形態による土壌汚染調査装置においては、地中に含まれるVOCsの水への溶出を促進する溶出促進剤としてオゾンガスを使用したが、これに代えて、過酸化水素や界面活性剤等を使用してもよい。過酸化水素の場合は、その水溶液1リットル当たり1ないし10ミリグラムの割合で過酸化水素が混合され、界面活性剤の場合は、その水溶液1リットル当たり50ないし500ミリグラムの割合で界面活性剤が混合される。これらの割合は、土壌汚染の程度によって適宜変更することができるが、上述したオゾンガスと同様の理由で、少し過多となる量とするのがよい。過酸化水素の場合は、オゾンガスと同様に、VOCsと化学反応してVOCsが分解され、そのときの化学反応による発熱で地中のVOCsが溶出されるが、界面活性剤の場合は、VOCsの溶出を促進させるだけで化学反応によりVOCsを分解することはない。このため、界面活性剤を第1貯水槽69内の水に継続して混合させていると、次第にその割合が増加するので、第1貯水槽69内の水を定期的に新しい水と交換する必要がある。
【0089】
また、この実施の形態においては、給水管28内を給水通路とし、給水管28外周と水回収管27内周との間の間隙を水回収通路とし、試錐管24の内周と水回収管27の外周との間の間隙を試錐剤溶水供給通路64としたが、このような構成に囚われることなく、3つの通路を適宜選択してそれぞれの通路を決定してもよい。
【0090】
また、この実施の形態による土壌汚染調査装置においては、試錐管24の内周と水回収管27の外周との間の試錐剤溶水供給通路64に、試錐剤を水に混入して生成した試錐剤溶水を供給するようにする一方、給水通路たる給水管28内に水を供給するようにしたが、これに代えて、試錐剤溶水供給通路64への試錐剤溶水の供給を廃止し、かつ、給水管28内に試錐剤溶水だけを供給するようにしてもよい。この場合は、図6に示す閉塞部材55に代えて、図11に示す閉塞部材55'を使用する。この閉塞部材55'の半体55a'には、連通路63及び配管81は設けられておらず、閉塞部材55'は、この点だけが閉塞部材55と異なる。このような構成にすると、試錐管24と水回収管27との間には試錐剤溶水や泥水は通過しないので、試錐管24の内壁に試錐剤溶水等が付着して汚れることがないため試錐管24を取り扱う際の作業性を良好にすることができる。
【0091】
また、この実施の形態による土壌汚染調査装置においては、貯水容器8a,8bから排出された水を第1貯水槽69に貯留して、この水にオゾンガスを混入させるようにしたが、これに代えて、貯水容器8a,8bから排出された水を第1貯水槽69に貯留することなく廃棄して、未使用の新しい水を第1貯水槽69に貯留し、この水にオゾンガスを混入させるようにしてもよい。
【0092】
上述した実施の形態においては、貯水容器として第1貯水容器8aと第2貯水容器8bとの2個の容器を配設する例を示したが、本発明は、このような構成に囚われることなく、3個以上の容器を配設し、その一部の容器から順番に水を貯留するように切り替えてもよい。例えば貯水容器を6個設ける場合では、2個ずつ順番に水を貯留するように切り替えてもよい。
【0093】
また、この実施の形態においては、貯水容器8a,8b内を加圧して貯留した水を強制的に排出するように加圧ポンプ52を配設したが、本発明は、このような構成に囚われることなく、該加圧ポンプ52を省略することもできる。その場合は、貯水容器8a,8bからの排水に要する時間が長くなり、回収された水を再び貯留するときまでに排水が完了しない虞があるが、その分、貯水容器の個数を多くするようにすればよい。
【0094】
また、この実施の形態においては、真空ポンプ7による減圧により第1貯水容器8a及び第2貯水容器8b内で気化したVOCs等の濃度を調査する例を示したが、本発明は、このような構成に囚われることなく、第1接続管44の中途部に配設された除泥フィルタ72を通過した直後の水を分岐させて再び第1接続管44に戻すように配管を追加し、その分岐させた配管内を流れている水を空気に晒すことなく一定量だけ採取した後、その採取した水に一定量の空気を強制的に通過させて水に溶解しているVOCs等を空気に混入させ、その空気に混入したVOCs等の濃度を濃度センサで調査するようにしてもよい。なお、この調査方法の場合は、VOCs等の濃度を連続的に調査することはできないが、分岐させた配管からの水の採取作業を短い一定の時間ごとに定期的に行い、その都度、その採取した水に混入したVOCs等の濃度を調査するようにすれば略連続的な測定データを得ることができる。また、このような定期的な水の採取による調査方法の場合は、貯水容器8a,8b及び真空ポンプ7に代えて、うず巻ポンプ等の汎用性のあるポンプを使用してもよい。この場合は、該ポンプが本発明でいう水回収手段を構成する。
【0095】
また、この実施の形態においては、掘削部材26の掘削部材本体26bに水回収孔32b…を形成したが、このような構成に囚われることなく、掘削部材26近傍の試錐管24(試錐管24の先端部を構成する試錐管継手76を含む。)に複数の水回収孔を穿設する一方、掘削部材本体26bの水回収孔32b…を廃止するか、又は廃止しないで穿設したままにしておいてもよい。
【0096】
また、この実施の形態においては、試錐管24の先端部を構成する試錐管継手76に試錐剤溶水排出孔67を穿設したが、このような構成に囚われることなく、試錐剤溶水供給通路64を掘削部材26内まで延設すると共にこれに連通する試錐剤溶水排出孔を掘削部材26の適当な位置に穿設する一方、試錐管24の先端部を構成する試錐管継手76の試錐剤溶水排出孔67を廃止するか、又は廃止しないで穿設したままにしておいてもよい。
【0097】
また、この実施の形態においては、水回収管27が嵌着された水回収管用継手部材38と掘削部材26の連結部材37とは螺合構造で連結したが、このような構成に囚われることなく、両者を互いに単に嵌合する嵌合構造で接続するようにしてもよい。このような構成にしたとしても、水回収管27と給水管28とは三方継手68によって連結され、かつ、給水管用継手部材35を介して給水管28が掘削部26aに螺合されているので、水回収管27が嵌着された水回収管用継手部材が掘削部材26の連結部材37から抜け出て離脱することはない。
【0098】
また、この実施の形態においては、試錐機構部5により試錐管24をその軸芯L1回りに正逆300度の回転角度で往復回転させるようにしたが、このような構成に囚われることなく、試錐管24を一定方向に回転させるようにしてもよい。この場合は、水回収管27が嵌着された水回収管用継手部材38と掘削部材26の連結部材37との接続及び給水管28が嵌着された給水管用継手部材35と掘削部材26の掘削部26aとの接続をそれぞれ互いに軸方向の相対変位が不能で、かつ、相対回転は可能とする液密な接続構造とする。
【0099】
さらにまた、この実施の形態においては、溶出促進剤供給孔73b…が穿設された試錐管24を使用したが、このような構成に囚われることなく、溶出促進剤供給孔73b…が穿設されていない試錐管を使用してもよい。そのような試錐管を使用した場合は、土壌汚染調査が終了したら、直ちに試錐管を地中から引き抜くことになるが、その引き抜き工程の際、試錐剤溶水を試錐管内に供給しながら引き抜くようにすれば試錐管を引き抜いた後の地中の穴に試錐剤溶水が充填されて穴が崩壊することがない。
【0100】
そして、試錐管を引き抜いた後、溶出促進剤供給孔が穿設された試錐管を地中の穴に貫入する作業を行う必要があるが、穴には試錐剤溶水が充填されているだけなので比較的小さな押圧力を該試錐管に付与するだけで試錐管を穴に貫入させることができる。このため、この試錐管の先端部には、上述したような掘削部材26を固定する必要はなく単に先端が尖った安価な部材を固定すれば足り、この結果、掘削部材としては、掘削作業を行う1本の試錐管だけに固定するために1個だけ用意すれば足りるので、ダイヤモンドビットのような掘削性能の優れた高価な掘削ビットが設けられた掘削部材を使用したとしても工具全体の費用の増加は殆どない。
【0101】
(第2の実施の形態)
次に、本発明に係る土壌汚染調査装置の第2の実施の形態を図12によって詳細に説明する。図12は、第2の実施の形態に係る土壌汚染調査装置の構成を示すブロック図である。なお、図12において、前記第1の実施の形態で説明したものと同一もしくは同等部材については、同一符号を付し詳細な説明は省略する。また、図12については、作図の都合上、それぞれの構成部材の縮尺の比率は互いに異ならせて図示している。
上述した第1の実施の形態に係る土壌汚染調査では、貯水容器8a,8bから排出された水を第1貯水槽69に貯留し、その貯留した水を送水ポンプ94により第2貯水槽85に移送して、第2貯水槽85内の水を、給水管28を介して給水ポンプ6により供給するようにしたが、このような構成に囚われることなく、図12示すように、第2貯水槽85及び送水ポンプ94を廃止して第4接続管93を給水ポンプ6に接続すると共に、オゾンガス攪拌ポンプ86及び第3水位検出センサ95を第1貯水槽69内に配設するようにしてもよい。第2貯水槽85及び送水ポンプ94を廃止した分、それらを設置するスペースが不要となるだけでなく、土壌汚染調査装置を安価に提供することができる。
この実施の形態においても、上述した第1の実施の形態と同等の構成部分については、第1の実施の形態と同様の構造変更は可能であり、第1の実施の形態と同様の作用・効果も奏することができるのは言うまでもない。
【0102】
(第3の実施の形態)
次に、本発明に係る土壌汚染調査装置の第3の実施の形態を図13ないし図16によって詳細に説明する。図13は、第3の実施の形態に係る溶出促進用器具を、一部を破断して示した図であり、図14は、土壌汚染調査装置を使用している状態を模式的に表した図であり、図15は、溶出促進用器具を試錐管内に設置した状態を示した断面図であり、図16は、溶出促進用器具が設置され地中に貫入された試錐管によって土壌汚染の浄化が行われている状態を示した図である。なお、この実施の形態においても、第1の実施の形態で説明した作業車1の搭載機器の一部は使用する。また、図13ないし図16において、前記第1の実施の形態で説明したものと同一もしくは同等部材については、同一符号を付し詳細な説明は省略する。また、図14については、作図の都合上、それぞれの構成部材の縮尺の比率は互いに異ならせて図示している。
【0103】
上述した第1の実施の形態の土壌汚染調査では、その調査が終了した地点の地中から試錐管24を引き抜くようにしたが、試錐管24を地中に貫入したままにしておくこともできる。そのようにして、試錐管24内に水を供給しながら吸水して、溶出促進剤供給孔73b…のフィルタ74に詰まった試錐液中のベントナイトを除去したのち、オゾンガスが混入した水を溶出促進剤供給孔73b…から地中に排出して供給しながら、上述した試錐作業により同様に地中に貫入された他の試錐管24から水回収手段で地下水を吸引し、この吸引した地下水に含まれるVOCsの濃度を土壌汚染調査装置の濃度センサ54によって計測する。
【0104】
この実施の形態による土壌汚染調査を具体的に説明すると、地中に貫入された試錐管24内に、図13に示す溶出促進用器具105を挿入する。溶出促進用器具105は、前記溶出促進剤を供給するためのステンレス製の溶出促進剤供給管107と、空気を供給するためのステンレス製の空気供給管111と、これらの管107,111が並列にされた状態で挿通される一対のゴム製の膨張管113,114とを備える。図13中に、一部を拡大して示すように、膨張管113の上端部及び下端部の内側にはステンレス製の円柱状の口金118,118がそれぞれ配設され、膨張管114の上端部及び下端部の内側にはステンレス製の円柱状の口金118,121がそれぞれ嵌入されている。口金118に貫通して穿設された貫通孔には溶出促進剤供給管107及び空気供給管111の長手方向中途部がそれぞれ貫通して気密に嵌入され、口金121に穿設された有底穴には溶出促進剤供給管107及び空気供給管111の先端部がそれぞれ気密に嵌入されている。
【0105】
口金118,121が嵌入された膨張管113,114のそれぞれの端部の外周には、ステンレス製の環状の締結具123が環装され、締結具123によって膨張管113,114がそれぞれ口金118,121に強固に締め付けられている。これによって、一対の膨張管113,114内は気密にされた膨張室113a,114aがそれぞれ形成され、該膨張室113a,114aにそれぞれ連通する連通孔124,124が空気供給管111の長手方向中途部に穿設されている。溶出促進剤供給管107における膨張管113,114間には、膨張管114の近傍に溶出促進剤供給孔125が穿設されている。
【0106】
膨張管113から突出した溶出促進剤供給管107と空気供給管111とには、それぞれテフロン樹脂製の溶出促進剤供給接続管126と空気供給接続管127とが気密に接続され、地中に貫入された試錐管24内に溶出促進用器具105を挿入する際、地中における溶出促進用器具105の深度を把握できるように溶出促進剤供給接続管126又は空気供給接続管127の少なくとも何れか一方の管に長さを表す目印を印しておくとよい。
【0107】
上述した溶出促進用器具105を使用して土壌汚染の浄化及び調査の作業を行う場合は、上述した試錐作業により、汚染された区域を挟んで地中に貫入された複数の試錐管24…内にそれぞれ溶出促進用器具105を、その膨張管113,114間に試錐管24の溶出促進剤供給孔73bが位置する所望の深度まで挿入する。このときの深度は、土壌汚染を浄化したい深度とし、それぞれの試錐管24に対して各溶出促進用器具105を挿入する深度は同一とする。図14に示すように、複数の試錐管24のうち一部の試錐管24(図14中の左右両側に位置する2本の試錐管24)に配置された溶出促進剤供給接続管126のそれぞれの端部は溶出促進剤供給集合管128に接続され、該溶出促進剤供給集合管128の端部には溶出促進剤貯留槽131に貯留された溶出促進剤を供給するための溶出促進剤供給ポンプ132が接続されている。溶出促進剤貯留槽131は地面Eに設置され、溶出促進剤供給ポンプ132は作業車1の台座11に搭載される。
【0108】
また、複数の試錐管24のうち残りの試錐管24(図14中の中央側に位置する3本の試錐管24)に配置された溶出促進剤供給接続管126のそれぞれの端部は水回収管133に接続され、溶出促進剤供給接続管126のそれぞれの中途部には、開閉動作する水回収用電磁弁134a,134b,134cがそれぞれ配設されている。水回収管133と、この水回収管133に繋がる溶出促進剤供給接続管126及び溶出促進剤供給管107とは、本発明でいう水回収通路を構成する。水回収管133の端部には、第1の実施の形態と同一の濃度センサ54が接続され、水回収用電磁弁134a,134b,134cと濃度センサ54との間の水回収管133の中途部には第1の実施の形態と同一の水回収手段50が接続されている。この場合は、第1の実施の形態における第1接続管44に対応するように水回収管133が水回収手段50に対して接続されることになる。なお、水回収用電磁弁134a,134b,134cは、作業車1の台座11に搭載された制御盤25のコントローラ23にそれぞれ電線(図示せず)を介して接続され、コントローラ23によって開閉制御される。
【0109】
それぞれの空気供給接続管127の端部は空気供給集合管129に接続され、この空気供給集合管129の端部には、該空気供給集合管129に空気を供給するための空気供給ポンプ135が接続されている。空気供給ポンプ135は作業車1の台座11に搭載される。前記供給ポンプ132及び空気供給ポンプ135は、コントローラ23にそれぞれ電線(図示せず)を介して接続され、コントローラ23によって作動又はその作動の停止が制御される。また、水回収手段50についても第1の実施の形態と同様にコントローラ23に電線(図示せず)を介して接続されている。
【0110】
複数の試錐管24内にそれぞれ溶出促進用器具105を挿入したのち、コントローラ23により空気供給ポンプ135を作動させて空気供給管111の連通孔124,124から空気を供給し、試錐管24の内壁に圧接されるまで膨張管113,114を膨張させる(図15を参照)。膨張管113,114が試錐管24の内壁に圧接された状態で膨張管113,114内の空気圧が保持され、その状態で、コントローラ23により溶出促進剤供給ポンプ132を作動させて溶出促進剤貯留槽131に貯留された溶出促進剤が溶出促進剤供給管107の溶出促進剤供給孔125から試錐管24内の膨張管113,114間に供給される。そして、その後、溶出促進剤は図14中の左右両側に位置する2本の試錐管24の溶出促進剤供給孔73b…から地中に排出される。このとき、コントローラ23により、水回収用電磁弁134a,134b,134cのうち何れか1つの水回収用電磁弁だけが選択されて開弁され、他の2つの水回収用電磁弁が閉弁されている。
【0111】
而して、図16に示すように、試錐管24の溶出促進剤供給孔73b…から排出された溶出促進剤によって土壌から溶出したVOCsが溶出促進剤や地下水と共に、図14中の中央側に位置する3本の試錐管24のうち水回収用電磁弁が開弁された溶出促進用器具105が挿入された試錐管24(図16中の中央の試錐管24)の溶出促進剤供給孔73b…から吸引される。この吸引によって地中のVOCsが除去され、土壌の浄化がなされる。また、その吸引された液体に溶解しているVOCsの濃度が濃度センサ54により計測され、この計測データが、浄化作業が開始されてからコントローラ23のタイマ23bによって計測された時間の経過とも関連付けられてコントローラ23のメモリ23aに記憶される。メモリ23aに記憶された計測データをリアルタイムで確認することによって、地中における浄化の進捗状況を容易に確認することができる。なお、図16中、符号119で示したものは、試錐管24の浄化液排出孔73b…から排出された浄化液によって土壌から溶出したVOCsが浄化液や地下水と共に地中を流れた経路であり、符号120で示したものは、試錐液によって地中に形成された擁壁である。
【0112】
また、水回収用電磁弁134a,134b,134cは一定時間ごとに順々に開弁するようにコントローラ23によって開閉制御されると共に、濃度センサ54により計測される計測データが、水回収用電磁弁が開弁されて溶出促進剤等が吸引された試錐管24ごとに区別してコントローラ23のメモリ23aに記憶される。これによって、試錐管24が貫入された地点ごとの浄化の進捗状況を容易に確認することができる。
また、それぞれの試錐管24に対して各溶出促進用器具105を挿入する深度を溶出促進剤供給孔73bの位置ごとに適宜変更して、土壌汚染された地中の箇所を全て浄化すると共に、その浄化の進捗状況を濃度センサ54によるVOCsの濃度の計測により確認する。
【0113】
この実施の形態においても、上述した第1の実施の形態と同等の構成部分については、第1の実施の形態と同様の構造変更は可能であり、第1の実施の形態と同様の作用・効果も奏することができるのは言うまでもない。
【0114】
なお、この実施の形態においては、コントローラ23により、各溶出促進剤供給接続管126に配設された水回収用電磁弁134a,134b,134cのうち何れか1つの水回収用電磁弁だけを選択して開弁し、他の2つの水回収用電磁弁を閉弁するようにしたが、このような構成に囚われることなく、地中に貫入する試錐管24の本数を増やすと共に、それらの試錐管24に溶出促進用器具105及び水回収用電磁弁をそれぞれ配置し、互いに近い地点に貫入した2以上の一群の試錐管24に配置した溶出促進用器具105の水回収用電磁弁をコントローラ23により選択して開弁し、それらの2以上の一群の溶出促進剤供給接続管126から吸引して、その吸引した液体に溶解しているVOCsの濃度を濃度センサ54により計測するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】図1は本発明に係る土壌汚染調査装置を装備した作業車の構成を示す側面図である。
【図2】図2は本発明に係る土壌汚染調査装置を装備した作業車を上方から見た状態を示す平面図である。
【図3】図3は試錐管の先端部に掘削部材が固定された状態を示す断面図である。
【図4】図4の(a)は図3の矢視A−A線に沿う拡大断面図、同図の(b)は図3の矢視B−B線に沿う拡大断面図、同図の(c)は掘削部材を先端側から見た外観の状態を示す拡大図である。
【図5】図5は本発明に係る土壌汚染調査装置の構成を示すブロック図である。
【図6】図6は試錐管の後端部に固定される閉塞部材の構成を示す図である。
【図7】図7は給水管及び水回収管に接続される三方継手の構成を示す図である。
【図8】図8は試錐管に穿設された溶出促進剤供給孔の構成を示す断面図である。
【図9】図9は給水管,水回収管及び試錐管が載置された枠体を正面から見た外観の状態を示す図である。
【図10】図10は給水管,水回収管及び試錐管が載置された枠体を左側方から見た外観の状態を示す図である。
【図11】図11は試錐管の後端部に固定される他の閉塞部材の構成を示す図である。
【図12】図12は、本発明の第2の実施の形態に係る土壌汚染調査装置の構成を示すブロック図である。
【図13】図13は、本発明の第3の実施の形態に係る溶出促進用器具を、一部を破断して示した図である。
【図14】図14は、本発明の第3の実施の形態に係る土壌汚染調査装置を使用している状態を模式的に表した図である。
【図15】図15は、本発明の第3の実施の形態に係る溶出促進用器具を試錐管内に設置した状態を示した断面図である。
【図16】図16は、本発明の第3の実施の形態に係る溶出促進剤用器具が設置され地中に貫入された試錐管によって土壌汚染の浄化が行われている状態を示した図である。
【符号の説明】
【0116】
5 試錐機構部(試錐手段)
6 給水ポンプ(給水手段)
7 真空ポンプ(水回収手段)
8a 第1貯水容器(水回収手段)
8b 第2貯水容器(水回収手段)
24 試錐管
26 掘削部材
27 水回収管(外管)
28 給水管(内管)
32b 水回収孔
33 水供給孔
54 濃度センサ(計測手段)
69 第1貯水槽
85 第2貯水槽
98 補水ポンプ(補水手段)
L1 軸芯
E 地面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に穿った穴の内部に給水通路を介して水を供給する給水手段と、
前記給水手段により水の供給を行いながら、この水に、前記穴の近傍の土壌に含まれる調査対象物質を溶出させ、その調査対象物質が溶出した水を水回収通路を介して回収する水回収手段と、
この水回収手段により水の回収を行いながら、その回収した水に溶解した調査対象物質の濃度を計測する計測手段とを備えた土壌汚染調査装置であって、
前記調査対象物質の水への溶出を促進する溶出促進剤を、前記給水手段により供給する水に混入させるようにした土壌汚染調査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の土壌汚染調査装置において、
前記計測手段による計測が終了した後の水を貯留する貯水槽を設け、
この貯水槽に貯留された水を前記給水手段により前記穴の内部に供給するようにした土壌汚染調査装置。
【請求項3】
請求項2に記載の土壌汚染調査装置において、
前記貯水槽に貯留された水に前記溶出促進剤を前記貯水槽内で混入させるようにした土壌汚染調査装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の土壌汚染調査装置において、
前記貯水槽に貯留された水が予め設定された水位より減少したとき、水を補給する補水手段を備えた土壌汚染調査装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうち何れか一つに記載の土壌汚染調査装置において、
地中を掘削する掘削部材が先端部に固定された試錐管を、その軸芯回りに試錐手段により回転させて前記掘削部材により地中を掘削するようにし、
前記給水手段により前記給水通路に供給する水を、地中に貫入した前記試錐管とその外周の土との摩擦抵抗を低減する試錐剤を水に混入して生成した試錐剤溶水とし、
前記試錐管内に外管を配設し、この外管内に間隙を隔てて内管を配設し、
前記外管の内周と前記内管の外周との間の空間または前記内管内のうち何れか一方を前記給水通路とする一方、他方を前記水回収通路とし、
前記給水通路に供給された試錐剤溶水を前記掘削部材に穿設した水供給孔から排出し、
この排出した試錐剤溶水によって前記掘削部材で掘削した土を泥水とし、
この泥水を前記掘削部材近傍の前記試錐管の先端部または前記掘削部材のうち少なくとも何れか一方に穿設した水回収孔を介して前記水回収通路に導入して前記給水手段により供給した試錐剤溶水を回収し、
その回収した試錐剤溶水に溶解した調査対象物質の濃度を前記計測手段により計測するようにした土壌汚染調査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−58046(P2008−58046A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−232956(P2006−232956)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(591211711)カルト株式会社 (20)
【Fターム(参考)】