説明

土木工事における変形の位置の特定と測定とのための方法

土木構造物での変形の位置を特定し測定するための工程において、平行で、信号の伝達可能な、複数の光ファイバ(2a乃至2e)を有する、少なくとも1つのジオシンセティックな繊維(1)が、構造物に、もしくは構造物の下に適用され、光ファイバは、均等に離間され、同じ波長に対応するN1個の連続したグレーティングからなるシリーズ(4)に分布するブラッググレーティング(3)を有し、シリーズは、それら自身同一の複数のセットの中に配置され、これらセットの各々は、異なる波長に対応するN2個の連続したシリーズを有するということと、少なくとも2つの光ファイバで、1つのシリーズ(4)におけるグレーティングの数N1と、1つのセット(5)におけるシリーズの数N2とは、光ファイバの各々に伝達される入射光の波長とブラッググレーティングにより反射される光の波長との間の違いを測定することにより特徴付けられる工程に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木構造物での変形の位置を特定し、測定するための工程に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車道路又は鉄道線路を建設する間、道路又は鉄道路線のインフラストラクチャを支持するための多くの土木工事が実行される。しかし、場所によっては、特定されていない自然の又は人工の空洞がある。この場合、予期されない沈下が、新しい道路又は鉄道路線を建設している間に起こることがあり、又、後にこれが利用されている間に、このような脆い領域に負担をかけ過ぎるために、深刻な事故、すなわち、水の浸透、渇水、及び振動、を発生させる。
【0003】
このような事故を防止するために、土木工事を実行する前に現場の体系的な測量を行なう必要もある。このような測量は、実際に、通常沈下を受けやすい土地で実行されている。
【0004】
それにもかかわらず、自然の地滑り(岩盤滑り)を受けにくい現場によっては、かつては、今では存在が知られていない地下の軍事施設で占められていた。
【0005】
体系的な測量は、非常に費用がかかり、加えて、完全な安全を保障するために提案された道路や鉄道路線の下と近傍とで、互いに近づけて行なわれなければならない。
さらに、土地に空洞が存在しない場合でも、連続して雨季と渇水とを受けている道路又は鉄道路線によっては下で一様ではない沈下を受けえて、この結果、地盤沈下を引き起こすこともある。この地盤沈下の大きさは、確かに限定されているが、特に、高速列車のための鉄道路線に関係する場合、安全に影響を与える。
【0006】
充填物(盛り土)の沈下の危険に歯止めをかけるために、土壌の沈下が生じた場合には、充填物を硬くするために、土壌に、そして、充填物の中に、識布又は不識の布からなるジオシンセティックな複数のシート(ラップ)もしくはストリップを配することがよく行なわれていることである。この場合、このジオシンセティックな繊維の糸(編み糸)は、かなりの力を受けやすく、この結果、糸が伸ばされることによる変形を起こし、また、糸を切断させ、したがって、充填物の崩壊を引き起こすこともある。
【0007】
土木構造物での変形を所定の閾値で検出するために、FR 2 72 78 677は、ジオシンセティックな繊維の中に、信号を伝達することができ、所定の断裂の伸長値で較正されている複数の平行な糸を組み込むことを示唆した。閾値に到達した変形は、これら糸を介して信号を送信し、このような信号に対する反応があるかないかを検出することにより測定される。
【0008】
これら糸は、電線又は光ファイバーでよい。測定は、全てか無かにより行なわれ、所定の閾値の変形位置は、互いに垂直な2組の平行な糸を位置させることのみにより可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、一方では、変形の位置を与える工程を提供することであり、他方では、好ましくは構造の長さに平行に置かれた、単一の組の複数の糸を備えたジオシンセティックな繊維を用いて、これら糸が断裂する前に、変形が起こる糸の伸長の測定を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、この目的を、平行で、信号の伝達が可能な、複数の光ファイバが取り付けられている少なくとも1つのジオシンセティックな繊維が、構造物に、もしくは構造物の下に適用され、前記複数の光ファイバは、同じ波長に対応するN1個の連続したグレーティングからなるシリーズで均等に離間されて分布しているブラッググレーティングを有し、このシリーズは、同一の複数のセットの中に配置され、これらセットの各々は、異なる波長に対応するN2個の連続したシリーズを有するという事実と、また、少なくとも2つの光ファイバで、1つのシリーズにおけるグレーティングの数N1と、1つのセットにおけるシリーズの数N2とは、前記複数の光ファイバの各々に伝達される入射光の波長と前記ブラッググレーティングにより反射される光の波長との間の違いを測定した結果、一方では、前記構造物が受ける変形の位置付けができ、他方では、この変形が生じている所での前記複数の光ファイバの伸長を測定することができるように、決められるという事実とにより、達成することができる。
【0011】
したがって、本発明は、特に、WO 86/01303に記載されているような歪みゲージで用いられているブラッググレーティングの既知の特性を用いている。
【0012】
これらブラッググレーティングは、全ての光ファイバで互いに等しい距離で離間される(espace’)が、少なくとも1対の光ファイバでシリーズ又はセットの長さが異なり、入射光の対応する波長に対して歪まされた(distorsions)反射光の波長を決定することにより構造的な変形の簡単な位置付けに備える。このような歪みの大きさにより、関連する位置での光ファイバの伸長の大きさが示される。
【0013】
少なくとも2つの光ファイバで、シリーズのグレーティングの数N1が等しく、セットのシリーズの数N2が互いに素であると好都合である。
【0014】
従って、例えば、2つのブラッググレーティングの間の間隔が1メートルであり、数N1が10であり、したがって、グレーティングのシリーズは、10メートルにわたって延びていることを仮定する。また、第1のファイバは、セットごとに7個のシリーズを有し、したがって、7つの異なる周波数を取り扱えることと、第2のファイバは、セットごとに10個のシリーズを有することを仮定する。数10と7とは、互いに素である。したがって、前記第1のファイバは、70メートルにわたって延び、前記第2のファイバのセットは、100メートルの長さにわたって延びる。これら2つのファイバにより、正確に、全長700メートルにわたる構造物の位置付けが可能である。もし、さらに、ジオシンセティックな繊維が、ブラッググレーティングが10メートル離間され、10個の連続したブラッググレーティングのシリーズで、各セットが3つのシリーズを有する、第3の光ファイバを有しているならば、数3は、7及び10と素であり、3つの光ファイバにより、正確に、長さにして2100メートルの構造物の変形を位置付けることができる。これらの変形は、最も近くて10メートルで位置付けられ、これは、10個のブラッググレーティングのシリーズの長さに対応する。このレベルの正確さは、土木構造物のモニタリングのために明らかに十分である。
【0015】
明らかに、2つの光ファイバに複数のブラッググレーティングを配置させる規則は、上に例として挙げた規則と異なっていてもよい。
【0016】
したがって、例えば、他の配置の規則に従って、少なくとも1つの光ファイバでは、1つのシリーズの中のグレーティングの数N1が、他の光ファイバの1つのセットのグレーティングの数に等しい。
【0017】
例えば、第1の光ファイバは、10個のシリーズからなる1つのセットを有しており、各々のシリーズは、1メートル離間された同一の100個のブラッググレーティングを有している。第2の光ファイバは、10個のシリーズからなる複数のセットを有しており、各シリーズは、1メートル離間された10個のブラッググレーティングを有している。これら2つの光ファイバは、長さで1キロメートルの構造物での変形の正確な位置付けに備える。
【0018】
本発明は、前記工程の適用のためのジオシンセティックな繊維にも関連している。
【0019】
本発明に係われば、このジオシンセティックな繊維は、この繊維が、平行に複数の光ファイバを有し、これら光ファイバは、同一の波長に対応する、連続するN1個のグレーティングからなるシリーズに均一に離間されて配置されているブラッググレーティングを有し、前記シリーズは、それら自身、異なる波長に対応するN2個の連続するシリーズからなる同一の複数のセットの中に分布しているという事実により特徴付けられる。
【0020】
前記光ファイバが、ジオシンセティックな繊維の製造の間に挿入されるならば好都合である。これら光ファイバは、シートすなわちラップの主方向に配置されることが好ましいが、必要ならば、横断する方向に配置されてもよい。
土壌の中の悪性の因子のためのせん断破壊に対して、また、水、高いpH値(コンクリートとの接触)及び他の腐食性の因子の影響に対してこれら光ファイバを保護するために、前記光ファイバが、被覆を有していると好都合である。
複数の光ファイバが前記ジオシンセティックな繊維の長さの方向に配置されていれば好都合である。
本発明の他の有利な点と特性とは、例として与えられられている以下の説明を読み、添付されている図面を参照すれば、明確にされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
複数の低反射率のブラッググレーティング3を有し、土木構造物、例えば、道路又は鉄道路線の充填物(remblai)、を補強するように用いられるようにデザインされている複数の光ファイバ2a乃至2eを備えているジオシンセティック繊維1の斜視図である。
【0022】
これらブラッググレーティング3は、光ファイバ2a乃至2bに沿って、例えば1メートルの間隔で均等に離間されており、複数の、数N1の同一のグレーティング3を有するシリーズ4で分布されている。すなわち、応力無しで、明確に規定された波長の入射光の一部を反射することができ、この波長は、対応する光ファイバに長手方向にかけられる応力に従って変化する。図1に示されている例では、5つの光ファイバ2a乃至2bの、複数のシリーズ4は、同じ数N1のグレーティング3を有し、従って、同じ長さに渡って延びている。
【0023】
異なる波長に対応する、複数の連続したシリーズ4は、グレーティングのセット5を構成し、このセットは、ファイバの長さ全体に沿って繰り返されている(reproduit)。
ジオシンセティックな繊維1の少なくとも2つの光ファイバは、異なるセットの数N2を有する複数のセット5を備え、全ての光ファイバ2a乃至2eが、異なるセットの数N2を有するブラッググレーティングの複数のセット5を備えているジオシンセティックな繊維1を製造することもできる。
これら数N2は、ジオシンセティックな繊維1のありえる変形の正確な位置を与えるように、互いに素であるべきであると好ましい。
【0024】
光ファイバ2a及び2bは、輸送のためにテープリールに巻かれるジオシンセティックな繊維1の長さの方向に配置されていると好ましい。
【0025】
光ファイバ2a乃至2eは、例えば、1メートルの間隔で配置されている。一旦、ジオシンセティックな繊維1が土壌に平坦に配置されると、複数のグレーティング3は、スクエアメッシュを形成する。しかし、このメッシュは、本発明の範囲を逸脱することなく、スクエアである必要はない。それにもかかわらず、このメッシュは、水平な平面では小さな断面積の下に存在する空洞の上盤の偶発的な沈下の上での変形の検出に備えて、あまり広すぎるべきではない。
【0026】
ジオシンセティックな繊維1は、ほぼ5.5メートルの幅であり、もし、補強される土木構造物の幅がこのジオシンセティックな繊維1の幅よりも大きいならば、複数のジオシンセティックな繊維のストリップが並べて配置される。これらストリップは、補強される構造物で重ね合わせられてもよい。
【0027】
光ファイバ2a乃至2bの、例えば、土壌の中の悪性の因子のためのせん断破壊を防止するために、また、水、高いpH値及び他の腐食性の因子の影響に対してこれら光ファイバを保護するために、光ファイバ2a乃至2eは、適当な保護用被覆の中に置かれる。
【0028】
光ファイバ2a乃至2bは、ジオシンセティックな繊維の一端で制御システム10に接続され、この制御システム10は、光を光ファイバ2a乃至2eのコアに伝達するための手段と、ブラッググレーティング3により反射された光の周波数を測定する手段と、
作業中に反射された光の波長と、応力がない時の反射された光の波長との、すなわち構造物の建設の間の、違いを測定するための手段と、
可能性のある変形の位置と、複数の構造的な変形による光ファイバの伸長とを示すための計算手段、データを記憶するための手段と、結果を表示させるための手段と、もし必要ならば、警告を与えるための警報手段とを有している。
【0029】
図2及び図3において、所定の異なる波長に対応するグレーティングのシリーズ4に、参照符号B、V、R、J及びMが与えられている。
図2において、光ファイバ2aは、参照符号B、V、R、J、Mの5つのシリーズを備えている複数のセット5を有し、光ファイバ2bは、参照符号B、V、R、Jの4つのシリーズを備えている複数のセット5を有している。
【0030】
グレーティング3の20個のシリーズ4に対応するジオシンセティック繊維の長さに渡って、1つのシリーズでの変形、例えば、14番目のシリーズの他からの変形、は、光ファイバ2aでのJで参照される波長がシフトし、光ファイバ2bでのVで参照される波長が変化し、2つの波長の各組み合わせがシリーズの正確な位置に対応するという事実により、制御システム10により認識されるということに留意されたい。
【0031】
図3において、光ファイバ2bは、セットごとに参照符号B、V、R、J及びMが付された5つのシリーズを有し、光ファイバ2aは、例えば、参照符号B、V、R、J及びMが付された5つのシリーズを有している。しかし、光ファイバ2aの各シリーズの長さは、光ファイバ2bの1つのセットの長さに等しい。
【0032】
この場合も、光ファイバ2bの、図3の左からのシリーズの各位置は、この光ファイバ2bでのこのシリーズに対応する波長と、光ファイバ2aでの隣接するシリーズの波長により、光ファイバ2bの25個のシリーズと光ファイバ2aの1つのセットとに対応するジオシンセティックな繊維の長さに渡って正確に同定される。
【0033】
制御システム10は、0%と3又は4%との間の変形範囲でブラッググレーティング3により反射された光の波長を直接読むことにより、開発中の構造物の変形に従って複数の光ファイバ2a乃至2cが受ける局所的な応力の位置を特定し、この応力を測定するために用いられ、また、3又は4%の間の範囲の変形のレベルと、用いられているファイバに依存して、8%近くかそれより大きい変形のレベルでの光ファイバの断裂とを位置付けるために用いられる。
【0034】
ジオシンセティックな繊維1と、構造物もしくは基礎構造の建設とに続いて、システムの基準状態を規定するように初期測定が行なわれる。光ファイバの各グレーティングの位置は、ジオシンセティックな繊維1の幅の方向に整列される全ての光ファイバ2a及び2bの複数のグレーティング3の波長を特定することにより見出される。
【0035】
建設の後に生じる変形の場合には、変形が生じている所のブラッググレーティング3により反射される光の波長が変更され、一方、他のブラッググレーティングの波長は変化しないままである。したがって、変形の位置と測定値とを得る。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】ブラッググレーティングを備えた複数の光ファイバを有しているジオシンセティックな繊維の斜視図である。
【図2】2つの光ファイバにおける異なるシリーズからなる同一の複数のセットの中のブラッググレーティングの分布の第1形態を示している。
【図3】2つの光ファイバにおける異なるシリーズからなる同一の複数のセットの中のブラッググレーティングの分布の第2形態を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土木構造物での変形位置を特定し、変形を測定するための工程において、
平行で、信号の伝達が可能な、複数の光ファイバ(2a乃至2e)を有している、少なくとも1つのジオシンセティックな繊維(1)が、前記構造物に、もしくは前記構造物の下に適用され、
前記複数の光ファイバは、同じ波長に対応するN1個の連続したグレーティングからなるシリーズ(4)に均等に離間されて分布している、ブラッググレーティング(3)を有し、前記シリーズは、それら自身同一の複数のセットの中に配置され、これらセットの各々は、異なる波長に対応するN2個の連続したシリーズを有するという事実と、また、少なくとも2つの光ファイバで、1つのシリーズ(4)におけるグレーティングの数N1と、1つのセット(5)におけるシリーズの数N2とは、前記複数の光ファイバの各々に伝達される入射光の波長と前記ブラッググレーティングにより反射される光の波長との間の違いを測定した結果、一方では、前記構造物が受ける変形の位置の特定ができ、他方では、この変形が生じている所で前記複数の光ファイバの伸長を測定することができるように、決められるという事実により特徴付けられる工程。
【請求項2】
少なくとも2つの光ファイバで、シリーズ(4)のグレーティングの数N1は等しく、セット(5)のシリーズ(4)の数N2は、互いに素であるという事実により特徴付けられる請求項1に係る工程。
【請求項3】
少なくとも1つの光ファイバで、1つのシリーズのグレーティングの数N1は、他の光ファイバの1つのセットのグレーティングの数に等しいという事実により特徴付けられる請求項1に係る工程。
【請求項4】
ジオシンセティックな繊維が、平行に複数の光ファイバ(2a乃至2e)を有し、これら光ファイバは、同一の波長に対応する、連続するN1個のグレーティングからなるシリーズに均一に離間されて配置されているブラッググレーティング(3)を有し、前記シリーズ(4)は、それら自身、異なる波長に対応するN2個の連続するシリーズからなる同一の複数のセット(5)に分布するという事実により特徴付けられる、請求項1乃至3のいずれか1に係る工程を適用するためのジオシンセティックな繊維。
【請求項5】
前記光ファイバ(2a乃至2e)が、土壌の中の悪性の因子のためのせん断破壊に対して、また、腐食に対して前記光ファイバを保護するために、被覆を有するという事実により特徴付けられる請求項4に係るジオシンセティックな繊維。
【請求項6】
前記光ファイバ(2a乃至2e)が、前記ジオシンセティックな繊維の長さの方向に配置されるという事実により特徴付けられる請求項4又は5に係るジオシンセティックな繊維。
【請求項7】
前記光ファイバが、前記ジオシンセティックな繊維の製造の間に、前記ジオシンセティックな繊維に挿入されるという事実により特徴付けられる請求項4乃至6のいずれか1に係るジオシンセティックな繊維。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−530935(P2007−530935A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504435(P2007−504435)
【出願日】平成16年3月24日(2004.3.24)
【国際出願番号】PCT/FR2004/000721
【国際公開番号】WO2005/103606
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(506322765)テン・ケート・ジオシンセティックス・フランス (1)
【出願人】(506322776)ファイバー・オプティック・センサーズ・アンド・センシング・システムズ (1)
【Fターム(参考)】