説明

土木建築用杭

【課題】 地面に対して正確に鉛直に打ち込むことが、人力により容易に行われ得る土木建築用杭を提供する。
【解決手段】 杭本体12の上端部に水準器24を固定すると共に、その中間部に、被叩打部38を、側方に向かって突出する状態で位置固定に設け、更に、該杭本体12における該水準器24の固定部位と該被叩打部38との間の部分に、ハンマ部材50を上下動可能に且つ下方への移動により該被叩打部38を叩打し得るように外挿して、構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木建築用杭に係り、特に、人力により地面に鉛直に打ち込まれて、土木建築工事に使用される土木建築用杭の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
よく知られているように、土木工事や建築工事等では、様々な工程を円滑に且つ精度良く進行せしめる上で、鉛直方向や水平方向に延びる基準線等が必要となる場合が多い。そこで、従来では、土木工事や建築工事等の実施に際して、杭を人力により地面に鉛直に打ち込み、この鉛直に打ち込まれた杭を基準として、鉛直線や水平線を得る作業が、一般に行われている。
【0003】
例えば、基礎杭の打設工事を行う際には、基礎杭を埋設するための孔が、オーガー式掘削機を用いて、地面から鉛直に延びるように穿孔されることとなるが、通常、この穿孔作業に先立って、基礎杭の杭心から所定の距離を隔てて、90°の位相差を有する二個所に、基礎杭とは別の杭が、人力により、地面に鉛直に打ち込まれる。そして、その後、鉛直に打ち込まれた二本の杭から掘削機のスクリュシャフトまでの距離が常に一定となっているか否かを確かめて、スクリュシャフトの杭心からのズレの有無を確認しつつ、穿孔作業が行われるのである。また、一般的な建築工事等においても、例えば丁張り(遣方)の設定に際して、所定の杭が、人力により、地面に鉛直に打ち込まれることとなる。
【0004】
ところが、そのような土木工事や建築工事等において、杭を、人力により、地面に対して正確に鉛直に打ち込むことは、極めて困難であった。即ち、人力による杭打作業は、通常、作業者が、目測により、杭の鉛直度を確かめながら、ハンマや掛矢等にて、杭の頭部を叩打することによって行われるが、このとき、作業者は、目測によって、左右方向の傾きを比較的に容易に認知することが出来るものの、前後方向への傾きを認知することが極めて難しい。そのため、人力により杭を地面に打ち込む際には、杭が、前後方向に傾いてしまうことが、往々にしてあったのである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、人力により、地面に対して正確に鉛直に打ち込むことが、特別な道具等を何等用いることなく、容易に行われ得る土木建築用杭を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そして、本発明にあっては、かかる課題の解決のために、その要旨とするところは、人力により地面に鉛直に打ち込まれて、土木建築工事に使用される土木建築用杭であって、(a)長手の棒材からなる杭本体と、(b)該杭本体の上端部に固定された水準器と、(c)前記杭本体の中間部に、側方に向かって突出する状態で位置固定に設けられた被叩打部と、(e)上下方向に延びる貫通孔を備えた硬質の重量物からなり、該貫通孔内に、前記杭本体における前記水準器の固定部位と前記被叩打部との間の部分が遊挿されることにより、該杭本体に対して、上下動可能に且つ下方への移動により該被叩打部を叩打し得るように外挿されたハンマ部材とを含んで構成したことを特徴とする土木建築用杭にある。
【0007】
すなわち、この本発明に係る土木建築用杭においては、上端部に固定された水準器によって、杭本体を地面上において鉛直方向に延びるように、正確に直立させることが出来る。そして、そのような状態下で、ハンマ部材を上下動させて、被叩打部を叩打することにより、杭本体を地面に打ち込むことが出来る。しかも、水準器を目視して、この水準器により、杭本体の鉛直度を確かめながら、そのようなハンマ部材による杭本体の地面への打込み作業を行うことが出来る。
【0008】
従って、このような本発明に従う土木建築用杭にあっては、ハンマや掛矢等、杭本体を叩打する道具や、杭本体を地面上において鉛直方向に延びるように直立させ、またその状態を維持させるための特別な道具等を何等用いることなく、人力により、地面に対して正確に鉛直に打ち込まれ得ることとなる。そして、その結果として、土木工事や建築工事等の実施に際して、鉛直に打ち込まれた杭を基準として、鉛直線や水平線を高精度に得る作業が、極めて容易に行われ得ることとなるのである。
【発明の態様】
【0009】
ところで、本発明は、少なくとも、以下に列挙する如き各種の態様において、好適に実施され得るものである。
【0010】
<1> 人力により地面に鉛直に打ち込まれて、土木建築工事に使用される土木建築用杭であって、(a)長手の棒材からなる杭本体と、(b)該杭本体の上端部に固定された水準器と、(c)前記杭本体の中間部に、側方に向かって突出する状態で位置固定に設けられた被叩打部と、(e)上下方向に延びる貫通孔を備えた硬質の重量物からなり、該貫通孔内に、前記杭本体における前記水準器の固定部位と前記被叩打部との間の部分が遊挿されることにより、該杭本体に対して、上下動可能に且つ下方への移動により該被叩打部を叩打し得るように外挿されたハンマ部材とを含んで構成したことを特徴とする土木建築用杭。
【0011】
<2> 上記の態様<1>において、前記水準器が、気泡式水準器であること。この本態様によれば、比較的に安価で且つコンパクトな水準器が用いられるため、水準器の設置によるコストの高騰と杭全体の大型化が極めて効果的に防止乃至は抑制され得る。
【0012】
<3> 上記せる態様<1>又は態様<2>において、前記杭本体の上端部に、上方に開口する収容孔を備えた取付金具が固定され、前記水準器が、該取付金具に対して、該収容孔内に収容保持された状態で取り付けられることにより、該杭本体の上端部に固定されていること。この本態様によれば、取付金具が、その収容孔内に収容保持される水準器の保護部材として機能せしめられて、水準器が、かかる取付金具により、外部から加えられる衝撃に対して有利に保護され得る。それによって、例えば、打込み作業時に、杭が倒れてしまったときの衝撃や、運搬時等に、杭同士や杭以外の他の部材等との接触によって生ずる衝撃等によって、水準器が損傷せしめられるようなことが効果的に防止され得る。
【0013】
<4> 上記せる態様<1>乃至は態様<3>のうちの何れか一つにおいて、前記ハンマ部材が、前記被叩打部を叩打する水平な叩打面を有する一方、該被叩打部が、該ハンマ部材にて叩打される水平な被叩打面を有していること。この本態様によれば、ハンマ部材の被叩打部に対する叩打に伴って、ハンマ部材からの打撃力が、被叩打部に対して、鉛直下方に向かって作用せしめられるようになる。それによって、杭本体が、一層確実に且つ容易に鉛直方向に打ち込まれ得ることとなる。
【0014】
<5> 上記せる態様<1>乃至は態様<4>のうちの何れか一つにおいて、前記杭本体における前記水準器の固定部位よりも下側で且つ前記ハンマ部材の挿通部位よりも上側の部位に、第二の被叩打部が、側方に向かって突出する状態で位置固定に設けられて、前記ハンマ部材の上方への移動により、該第二の被叩打部が、該ハンマ部材にて叩打され得るようになっていること。
【0015】
このような本態様では、例えば、杭本体が地面に打ち込まれた状態下において、ハンマ部材を上下動させたときの上方への移動に伴って、第二の被叩打部をハンマ部材にて叩打すれば、杭本体に対して、ハンマ部材からの打撃力が、上方に向かって作用せしめられ、、それによって、杭本体が、地面から容易に抜脱せしめられ(引き抜かれ)得ることとなる。従って、例えば、杭本体を両手で把持して、上方に引き抜くような多大な労力を要する作業を何等行うことなく、杭本体が、地面から、十分に小さな労力で、且つ極めて簡単に抜脱せしめられ得ることとなる。そして、その結果として、より優れた使用性が、有効に発揮され得るのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0017】
先ず、図1には、本発明に従う土木建築用杭の一実施形態が、その正面形態において、概略的に示されている。かかる図1から明らかなように、本実施形態の土木建築用杭10は、長手の杭本体12を有している。
【0018】
より具体的には、杭本体12は、高炭素鋼等の鋼材を用いて形成された、所定長さを有する細長い丸棒材にて、構成されている。そして、この杭本体12にあっては、その下端部が、下方に向かうに従って次第に小径となるテーパ状の外周面を有する先鋭部14とされて、容易に地中に進入せしめられ得るようになっている。
【0019】
また、そのような杭本体12の上端部には、取付金具16が、位置固定に設けられている。この取付金具16は、図1及び図2に示されるように、杭本体12の外径よりも大きな外径と所定の高さとを備えた円柱状の全体形状を有している。そして、その上部部位には、上端面において開口する、収容孔としての円形凹所18が、水平面からなる底面20を有して、同軸的に設けられている。また、かかる取付金具16の中心部には、鉛直方向に真っ直ぐに延出して、下端面と円形凹所18の底面20とにおいてそれぞれ開口する挿通孔22が、形成されている。そして、このような取付金具16の挿通孔22内に、杭本体12の上端部が、ガタ無く挿通されて、それら取付金具16と杭本体12の上端部とが、同軸的に位置せしめられた状態下で、溶接等により固着せしめられているのである。
【0020】
また、かかる取付金具16の円形凹所18内には、水準器24が、取り付けられている。そして、図2及び図3から明らかな如く、ここでは、かかる水準器24として、比較的に安価で且つ取付金具16の円形凹所18内に収容可能な小型の気泡式水準器が、用いられている。即ち、ここで用いられる水準器24は、取付金具16の円形凹所18の内側形状に対応した片側有底円筒状の全体形状を呈するケーシング26を有し、このケーシング26の上部開口部が、透明な蓋体28にて液密且つ気密に覆蓋されることにより、内部に、1個の気泡30が浮遊する所定の液体が封入されて、構成されている。また、このケーシング26の蓋体には、中心円32と十字状の目盛り34とが設けられている。
【0021】
そして、そのような水準器24が、取付金具16の円形凹所18内に、ケーシング26の外周面を円形凹所18の内周面に接触させ、且つ下面を円形凹所18の水平な底面20上に載置せしめるように挿入されて、水準器24の全体が収容された状態で、接着剤等により、円形凹所18の内周面や底面20に接着されている。これによって、水準器24が、取付金具16の円形凹所18内において、杭本体12に対して同軸上で水平に且つ固定的に位置せしめられた状態で、かかる取付金具16を介して、杭本体12の上端部に固定されている。
【0022】
かくして、本実施形態の杭10にあっては、杭本体12が、鉛直方向に延びるよう直立せしめられているときには、図3に実線で示されるように、水準器24のケーシング26内を浮遊する気泡30が、蓋体に設けられた中心円32の中心に位置せしめられる一方、杭本体12が傾いた状態とされているときには、図3に二点鎖線で示される如く、気泡30が、中心円32からズレて位置せしめられるようになっている。つまり、水準器24の気泡30の位置によって、杭本体12の鉛直度が容易に把握され得るように構成されているのである。
【0023】
また、図1及び図2に示されるように、杭本体12においては、取付金具16の固定部位の直下の上部部位と、かかる部位よりも下方に所定寸法だけ離隔せしめられた中間部位とに対して、上側被叩打部36と下側被叩打部38とが、それぞれ、位置固定に設けられている。それら上側被叩打部36と下側被叩打部38は、何れも、比較的に厚い肉厚と、杭本体12の径よりも所定寸法大きな外径とを有する金属円板からなっている。そして、それら各被叩打部36,38の中心部には、杭本体12を挿通可能な挿通孔40,42が、上下方向(板厚方向)に貫通して、それぞれ設けられている。また、上側被叩打部36においては、その下面が、水平な円環面からなる被叩打面44とされており、更に、下側被叩打部38にあっては、その上面が、水平な円環面からなる被叩打面46とされている。そして、そのような上側被叩打部36と下側被叩打部38とが、挿通孔40,42内に、上記せる杭本体12の上部部位と中間部位とを各々挿通せしめた状態で、それらの部位に対して溶接されること等により、固着せしめられている。
【0024】
これによって、ここでは、上側被叩打部36と下側被叩打部38とが、杭本体12の上部部位と中間部位とにおいて、側方に向かって所定寸法突出し且つ周方向に連続して延びるフランジ形態をもって固定されると共に、それら上側被叩打部36の被叩打面44と下側被叩打部38の被叩打面46とが、上下方向において所定距離を隔てて互いに対向せしめた状態、位置固定に配置されている。
【0025】
そしてまた、本実施形態の杭10においては、上側被叩打部36と下側被叩打部38との間に位置する杭本体12部分が挿通部48とされており、この挿通部48に対して、ハンマ部材50が、外挿されている。このハンマ部材50は、杭本体12の挿通部48よりも十分に大きな外径と、かかる挿通部48の長さ寸法よりも十分に低い高さとを有する略円柱状の金属ブロックからなり、杭本体12を打ち込む際に一般に用いられるハンマや掛矢等と同程度の重量を有している。また、かかるハンマ部材50の中心部には、杭本体12の外径よりも一周り大きな内径を有する円形の貫通孔52が、鉛直方向に真っ直ぐに延びるように形成されている。そして、この貫通孔52内に、挿通部48が遊挿せしめられており、以て、ハンマ部材50が、杭本体12の挿通部48に対して、それに沿って上下動せしめられ得る状態で、外挿されているのである。
【0026】
また、このようなハンマ部材50においては、高さ方向の中間部が、把持部54とされている。この把持部54は、ハンマ部材50を上下動させる際に、片手で把持されるのに適当な太さ(外径)と高さとを有している。更に、そのような把持部54を間に挟んだ上端部と下端部は、把持部54よりも所定寸法大径化された滑止め部56,56とされており、ハンマ部材50を上下動させる際に、把持部54を把持した手が、それらの滑止め部56,56に係合することで、滑止め効果が発揮され得るようになっている。そして、このハンマ部材50の上端面と下端面とが、それぞれ、水平な円環面からなる上側叩打面58と下側叩打面60とされている。
【0027】
かくして、ハンマ部材50にあっては、作業者によって把持部54が把持されて、上下に動かされることにより、杭本体12の上部と中間部とに対して所定距離を隔てて固定された上側被叩打部36と下側被叩打部38との間を、杭本体12の挿通部48に沿って上下動せしめられ得るようになっている。そして、そのような上下動に際して、下方に移動せしめられた時に、下側叩打面60にて、下側被叩打部38の被叩打面46を叩打し得るようになっている一方、上方に移動せしめられた時に、上側叩打面58にて、上側被叩打部36の被叩打面44を叩打し得るように構成されているのである(図4参照)。
【0028】
而して、かくの如き構造とされた本実施形態の土木建築用杭10を地面に打ち込む際には、例えば、先ず、図1に示されるように、杭本体12が、先鋭部14において地面62に突き刺されて、地面62上に直立せしめられる。このとき、作業者が、水準器24の気泡30が中心円32の中心に位置するように(図2参照)、杭本体12の頭部(上端部)を前後方向や左右方向に動かすことによって、杭本体12が鉛直方向に延出して、直立せしめられるように、杭本体12の姿勢調整が行われる。
【0029】
その後、ハンマ部材50の把持部54が作業者にて把持されて、図2に実線と二点鎖線で示される如く、ハンマ部材50が上下動せしめられる。その際、特に、ハンマ部材50が下方に移動せしめられたときに、下側被叩打部38が、被叩打面46において、ハンマ部材50の下側叩打面60にて、叩打される。そして、この叩打作業が連続的に行われて、ハンマ部材50の下側被叩打部38に対する叩打に伴って生ずる打撃力により、杭本体12が、徐々に地中に打ち込まれる。また、この叩打作業が行われている間は、杭本体12の姿勢が、鉛直方向に延出して、直立する状態に維持されているか否かが、水準器によって常時監視される。そして、杭本体12が、鉛直方向に延出して、直立する姿勢が維持されたままで、所定の深さだけ打ち込まれたら、かかる叩打作業を終了して、杭本体12の地面62への打込み作業が完了せしめられる。
【0030】
また、ここでは、所定の土木工事や建築工事の終了後に、杭本体12を地面62から抜脱せしめる(引き抜く)際には、例えば、ハンマ部材50の把持部54が、作業者にて再び把持されて、図4に実線と二点鎖線で示される如く、ハンマ部材50が、再度上下動せしめられる。その際、特に、ハンマ部材50が上方に移動せしめられたときに、上側被叩打部36が、被叩打面44において、ハンマ部材50の上側叩打面58にて、叩打される。そして、この叩打作業が連続的に行われて、ハンマ部材50の上側被叩打部36に対する叩打に伴って生ずる打撃力により、杭本体12が、地面62がら徐々に抜脱せしめられるようになる。
【0031】
このように、本実施形態に係る土木建築用杭10においては、杭本体12の上端部に固定された水準器24を監視しながら、地面62への打込み作業が行われることによって、かかる打込み作業の開始から終了までの間、杭本体12の姿勢が、地面62上において鉛直方向に延びるように、正確に直立させた状態において、安定的に維持され得る。そして、ハンマや掛矢等を用いて、杭本体12の頭部が叩打されることにより地面62に打ち込まれる従来品とは異なって、杭本体12を叩打するための道具や、杭本体12の鉛直な直立状態の姿勢を維持させるための特別な道具を何等用いることなく、単に、ハンマ部材50を上下動させることによって、杭本体12が、鉛直な直立状態の姿勢を維持したまま、容易に且つ確実に地面62に打ち込まれ得る。
【0032】
従って、かくの如き土木建築用杭10を用いれば、土木工事や建築工事等の実施に際して、鉛直に打ち込まれた杭10を基準として、鉛直線や水平線を得る作業が、高い精度をもって、極めて容易に行われ得ることとなるのである。
【0033】
また、本実施形態にあっては、杭本体12が地面62に打ち込まれた状態下において、ハンマ部材50を上下動させて、上側被叩打部36をハンマ部材50にて叩打することにより、杭本体12が、地面62から徐々に抜脱せしめられるようになっている。そのため、例えば、杭本体12を両手で把持して、上方に引き抜くような多大な労力を要する作業を何等行うことなく、杭本体12が、地面62から、十分に小さな労力で、且つ極めて簡単に抜脱せしめられ得ることとなる。従って、より優れた使用性が、有効に発揮され得るのである。
【0034】
さらに、本実施形態の杭10においては、水準器24として、安価で且つ小型の気泡式水準器が用いられているところから、杭本体12の上端部への水準器24の固定によって、杭10の製造コストが高騰することや、杭10全体が大型化するようなことが、可及的に防止乃至は抑制され得るといった利点がある。
【0035】
更にまた、かかる杭10では、杭本体12の上端部に取付金具16が固定され、この取付金具16の円形凹所18内に、水準器24の全体が収容されて、固定されている。そのため、そのような取付金具16が、水準器24の保護部材として機能せしめられて、例えば、杭本体12を地面62に打ち込む際や運搬する際等に、地面62上に倒れたり、落下したり、或いは杭本体12同士が接触したりすることによって生ずる衝撃によって、水準器24が破損せしめられるようなことが、未然に防止され得る。
【0036】
また、かかる杭10にあっては、ハンマ部材50の下側叩打面60と、下側被叩打部38の被叩打面46が、それぞれ水平面にて構成されている。それ故、ハンマ部材50を上下動させることで、下側被叩打部38をハンマ部材50にて叩打して、杭本体12を地面62に打ち込む際に、ハンマ部材50から、下側被叩打部38に対して、打撃力が、鉛直下方に向かって作用せしめられるようになり、それによって、杭本体12が、より正確に且つ容易に鉛直方向に打ち込まれ得ることとなる。
【0037】
さらに、本実施形態の杭10においては、ハンマ部材50の上側叩打面58と、上側被叩打部36の被叩打面44も、それぞれ水平面にて構成されている。そのため、杭本体12が地面62に打ち込まれた状態下で、ハンマ部材50を上下動させることにより、上側被叩打部36をハンマ部材50にて叩打した際に、ハンマ部材50から、上側被叩打部36に対して、打撃力が、鉛直上方に向かって作用せしめられるようになる。そして、それにより、杭本体12が地面62から抜脱せしめられる際に、杭本体12の地盤内に進入せしめられた部分の地盤に対する摩擦抵抗が可及的に小さくされ、以て、杭本体12が、地面62から、より容易に抜脱せしめられ得ることとなる。
【0038】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
【0039】
例えば、杭本体12の材質は、例示されたものに、特に限定されるものではなく、杭本体12が、高炭素鋼以外の金属材料や高剛性の合成樹脂材料、或いは木質材料等にて構成されていても、何等差し支えない。
【0040】
また、杭本体12の上端部に固定される水準器24は、必ずしも気泡式水準器である必要はなく、その他、公知の水準器の中から、例えば大きさや経済性等を考慮した上で、適当なものが、適宜に選択されて、使用されることとなる。
【0041】
さらに、そのような水準器24を収容する取付金具16は、本発明において必須のものではないものの、全体の形状は勿論、杭本体12の上端部に対する固定構造や、水準器24を取り付けるための構造についても、例示のものに、何等限定されるものではない。
【0042】
更にまた、上側被叩打部36と下側被叩打部38にあっても、杭本体12に対して、側方に向かって突出する状態で位置固定に設けられておれば、全体形状や杭本体12に対する固定構造が、特に限定されるものではない。即ち、例えば、各被叩打部36,38を、単純な棒材や板材等にて構成して、杭本体12と交差するように位置せしめた状態で、杭本体12に固定したり、或いは様々な形状を有するブロック体にて各被叩打部36,38を構成し、これを杭本体12に固定しても良い。
【0043】
また、そのような各被叩打部36,38の材質も、ハンマ部材50の叩打による打撃力が十分に受け止められ得るものであれば、如何なる材質であっても良い。
【0044】
なお、それら上側被叩打部36と下側被叩打部38のうち、上側被叩打部36は、本発明において、必須のものではない。
【0045】
さらに、ハンマ部材50の材質や全体形状も、特に限定されるものではない。そして、例えば、このハンマ部材50に対して、把持が容易なハンドル部を設けたり、或いは非使用時におけるハンマ部材50の無用な上下動を阻止するストッパ機構を、ハンマ部材50や杭本体12に対して、それと一体に或いは別体にて設けたりすることも出来る。
【0046】
加えて、本発明に従う構造を有する土木建築用杭は、先に例示せる如く使用される他、土木工事や建築工事等において鉛直方向や水平方向に延びる基準線等を得る際に、好適に使用され得る。
【0047】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に従う構造を有する土木建築用杭の一例を示す正面説明図である。
【図2】図1における部分拡大斜視説明図である。
【図3】図1に示される土木建築用杭の平面形態を拡大して示す説明図である。
【図4】図1に示される土木建築用杭の使用状態の一例を示す、図2に対応する説明図であって、ハンマ部材を上下動させて、上側被叩打部を叩打することにより、地面に打ち込まれた杭本体を抜脱している状態を示している。
【0049】
10 土木建築用杭 12 杭本体
16 取付金具 24 水準器
36 上側被叩打部 38 下側被叩打部
44,46 被叩打面 50 ハンマ部材
52 貫通孔 58 上側叩打面
60 下側叩打面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力により地面に鉛直に打ち込まれて、土木建築工事に使用される土木建築用杭であって、
長手の棒材からなる杭本体と、
該杭本体の上端部に固定された水準器と、
前記杭本体の中間部に、側方に向かって突出する状態で位置固定に設けられた被叩打部と、
上下方向に延びる貫通孔を備えた硬質の重量物からなり、該貫通孔内に、前記杭本体における前記水準器の固定部位と前記被叩打部との間の部分が遊挿されることにより、該杭本体に対して、上下動可能に且つ下方への移動により該被叩打部を叩打し得るように外挿されたハンマ部材と、
を含んで構成したことを特徴とする土木建築用杭。
【請求項2】
前記水準器が、気泡式水準器である請求項1に記載の土木建築用杭。
【請求項3】
前記杭本体の上端部に、上方に開口する収容孔を備えた取付金具が固定され、前記水準器が、該取付金具に対して、該収容孔内に収容保持された状態で取り付けられることにより、該杭本体の上端部に固定されている請求項1又は請求項2に記載の土木建築用杭。
【請求項4】
前記ハンマ部材が、前記被叩打部を叩打する水平な叩打面を有する一方、該被叩打部が、該ハンマ部材にて叩打される水平な被叩打面を有している請求項1乃至請求項3のうちの何れか1項に記載の土木建築用杭。
【請求項5】
前記杭本体における前記水準器の固定部位よりも下側で且つ前記ハンマ部材の挿通部位よりも上側の部位に、第二の被叩打部が、側方に向かって突出する状態で位置固定に設けられて、前記ハンマ部材の上方への移動により、該第二の被叩打部が、該ハンマ部材にて叩打され得るようになっている請求項1乃至請求項4のうちの何れか1項に記載の土木建築用杭。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−77659(P2007−77659A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−266446(P2005−266446)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(504200700)有限会社タクミ重機 (1)
【Fターム(参考)】