土木構築物及び土木構築物の構築方法
【課題】強固な護岸機能を確保しつつ、表面層における隣り合う前側自然石が形成する各表面側隙間空間を深くできる土木構築物及び土木構築物の構築方法を提供する。
【解決手段】表面層1Aを形成する各前側自然石10に対して後側自然石11をアンカー12を介してそれぞれ連結すると共に、各前側自然石10と各後側自然石11とでコンクリート層9を前後に挟持する構造とする。これにより、表面層1Aを形成する各前側自然石10とコンクリート層9とで強固な護岸機能を確保する一方、後側自然石11がコンクリート層9の背面側に係合されることを利用して、各前側自然石10が前方に移動することを規制し、その前方移動規制のために各前側自然石10の体積の半分以上をコンクリート層9に埋め込むことまでする必要性(構成)、すなわち、表面側隙間21が浅くしてしまうことをなくす。
【解決手段】表面層1Aを形成する各前側自然石10に対して後側自然石11をアンカー12を介してそれぞれ連結すると共に、各前側自然石10と各後側自然石11とでコンクリート層9を前後に挟持する構造とする。これにより、表面層1Aを形成する各前側自然石10とコンクリート層9とで強固な護岸機能を確保する一方、後側自然石11がコンクリート層9の背面側に係合されることを利用して、各前側自然石10が前方に移動することを規制し、その前方移動規制のために各前側自然石10の体積の半分以上をコンクリート層9に埋め込むことまでする必要性(構成)、すなわち、表面側隙間21が浅くしてしまうことをなくす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木構築物及び土木構築物の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土木構築物には、特許文献1に示すように、延び部材の一端部に石を取付けその他端部に摩擦力増大手段を取付けた土木構築物用構築石を複数用意して、その各石を積み重ねると共にその各延び部材を略平行に配置し、その延び部材及び摩擦力増大手段を砕石等の中に埋設したものが知られている。このものによれば、摩擦力増大手段と砕石等との摩擦力基づき土木構築物用構築石の保持状態を強固にでき、当該土木構築物を安定で強固なものにできる。
【0003】
ところで、より強固な土木構築物として、練石積み工法を用いたものがある。その練石積み工法を用いた土木構築物(護岸、擁壁等)としては、施工面上にコンクリート層が敷設され、そのコンクリート層に複数の石がそのコンクリート層の表面から露出され且つ積み上げられた状態をもって保持されたものが広く知られている。この土木構築物を構築するに際しては、具体的には、石を横方向に人力で並べて一段目の石列を作り、その背面側に裏型枠を配置し、その裏型枠の裏側に裏込め材を投入する。その裏込め材の投入後、石列と裏型枠との間にコンクリートを打設し(各石の体積の半分以上をコンクリートに埋め込む作業も含む)、それが終わると、裏型枠を撤去する。このような一連の工程は、上記石列の上側の各段においても順次、繰り返され、それを経ることにより当該土木構築物が構築される。この結果、当該土木構築物は、石からなる表面層、コンクリート層等に基づき、強固な護岸機能を発揮することになる。
【特許文献1】特開平11−310913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記練石積み工法を用いた土木構築物においては、各石を脱落させることなくコンクリート層に保持するために、各石の体積の半分以上をコンクリート層に埋め込んでおく必要があり、コンクリート層表面からの各石の突出量は少ない。このため、表面層において、隣り合う石同士が形成する各隙間空間(目地)は、浅くならざるを得ず、その各隙間空間を、生物生息空間、植物生育空間等として利用しようとしても、その利用価値は低い。
【0005】
また、上記のような土木構築物の構築に際しては、各段毎に、前述の一連の工程を行う必要があるばかりか、そのうちのコンクリート打設工程においては、各石の体積の半分以上をコンクリートに埋め込む作業を行わなければならない。このため、この構築には、かなりの熟練と労力、さらには構築時間が必要となっている。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その第1の技術的課題は、強固な護岸機能を確保しつつ、表面層における隣り合う塊状部材が形成する各表面側隙間空間を深くできる土木構築物を提供することにある。
第2の技術的課題は、上記土木構築物の構築に用いられる土木構築物の構築方法であって、作業負担を軽減できると共に構築時間を短縮できる土木構築物の構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記第1の技術的課題を達成するために本発明(請求項1に係る発明)にあっては、
傾斜した施工面に対してコンクリート層が敷設され、該コンクリート層に複数の塊状部材が表面層として該コンクリート層の表面から露出され且つ積み上げられた状態をもって保持されている土木構築物において、
前記各塊状部材に、該各塊状部材の背面側において軸状部材を介して塊状の控え部材がそれぞれ連結され、
前記各塊状部材と前記各控え部材とが、前記コンクリート層を前後に挟持するように配置されている構成としてある。この請求項1の好ましい態様としては、請求項2,3の記載の通りである。
【0008】
上記第2の技術的課題を達成するために本発明(請求項4に係る発明)にあっては、
傾斜した施工面に対してコンクリート層が敷設され、該コンクリート層に複数の塊状部材が表面層として該コンクリート層の表面から露出され且つ積み上げられた状態をもって保持されている土木構築物において、
塊状部材に軸状部材を介して塊状の控え部材が連結された連結ユニットを複数用意し、
前記連結ユニットを、前記施工面の前側において、該連結ユニットの塊状部材が該控え部材よりも前側に配置されるようにしつつ複数段に亘って積み重ねて、該各連結ユニットの塊状部材により表面層を形成すると共に、該各連結ユニットの控え部材により区画層を形成し、
この後、前記表面層と前記区画層との間にコンクリートを充填する構成としてある。この請求項4の好ましい態様としては、請求項5以下の記載の通りである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、塊状部材により形成される表面層及びコンクリート層により強固な護岸機能を確保できる一方、各塊状部材と各控え部材とが、コンクリート層を前後に挟持するように配置されて、控え部材がコンクリート層に係合されていることから、各塊状部材が前方に移動することを規制できることになり、前方移動規制のために各塊状部材の体積の半分以上をコンクリート層に埋め込むことまでする必要性(構成)をなくすことができる。このため、コンクリート層表面からの各塊状部材の突出量を大きくして、隣り合う塊状部材同士が形成する各表面側隙間空間(目地)を深い状態をもって確保できる。この結果、各表面側隙間空間に関し、動植物生息生育空間等としての利用価値を高めることができ、当該土木構築物を周囲環境により調和させることができる。
勿論この場合、各塊状部材の半分以上をコンクリート層に埋め込む作業が不要となり、作業性を高めることができる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、各控え部材がコンクリート層に一体化され、その各控え部材の露出外面全体が施工面に係合されていることから、各控え部材の露出外面が形成する凹凸面に基づき、各控え部材よりも前方側の層(区画層、コンクリート層及び表面層)と施工面とのせん断抵抗を高めることができ、当該土木構築物の安定性を高めることができる。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、施工面の表面が、通水性を有する裏込め材層により形成され、複数の塊状部材が形成する表面層の外方と裏込め材層とが排水管を介して連通されていることから、コンクリート層により施工面側から表面層側への水の排水が困難となるものの、その水を排水管を通じて外部の所定個所に計画的に排水できる。この場合、配水管による排水を表面層の表面側隙間空間に供給でき、その排水を動物(生物)の生息、植物の育成促進に的確に利用できる。
【0012】
請求項4に係る発明によれば、連結ユニットとして、塊状部材に軸状部材を介して塊状の控え部材が連結されたものを複数用意し、連結ユニットを、施工面の前側において、該連結ユニットの塊状部材が控え部材よりも前側に配置されるようにしつつ複数段に亘って積み重ねて、該各連結ユニットの塊状部材により表面層を形成すると共に、該各連結ユニットの控え部材により区画層を形成し、この後、表面層と区画層との間にコンクリートを充填することから、各塊状部材と各控え部材とが、コンクリート層を前後に挟持するように配置される構成となり、前記請求項1に係る土木構築物を得ることができる。
また、連結ユニットを複数段に亘って積み重ねて、各連結ユニットの塊状部材により表面層を形成すると共に、各連結ユニットの控え部材により区画層を形成し、その表面層と区画層との間にコンクリートを充填することから、当該土木構築物の複数段を構築するに際して、表面層と区画層とを型枠としてその間に1回のコンクリート充填を行うだけの作業で足り、各段毎に、コンクリートの充填も、塊状部材の体積の半分以上をコンクリートに埋め込む作業も必要でなくなる。このため、作業負担を軽減できると共に、構築時間を短縮できる。
さらに、コンクリートの充填を、複数段の連結ユニットを積み重ねた後に行うことから、コンクリート打設高を1段毎にコンクリートの打設を行う場合に比べて高くでき、コンクリートの打継ぎ目に基づき、コンクリート層(当該土木構築物)の強度が低下することを抑制できる。
【0013】
請求項5に係る発明によれば、コンクリートの充填前に、区画層の背面側に隣接させて、通気性を有する裏込め材層を形成することから、区画層を利用(裏型枠としての利用)して裏込め材層を支持(裏込め材の投入)できるばかりでなく、コンクリートの充填に際して、空気を、上方側(裏込め材投入側)だけでなく、各控え部材間の隙間を介して裏込め材層にも逃がすことができ、コンクリート(コンクリート層)に気泡(空気)が取り込まれることを、より抑制できる。
また、複数段の連結ユニットの控え部材(区画層)が裏型枠を兼ねることになり、裏型枠の各段毎の設置、撤去を不要にできる。このため、区画層の背面側に裏込め材層を形成する場合においても、作業負担の軽減、構築時間の短縮化を図ることができる。
【0014】
請求項6に係る発明によれば、コンクリートの充填前に、表面層における隣り合う塊状部材が形成する表面側隙間空間に詰め物を詰め、コンクリートの充填後、表面側隙間空間から詰め物を取り除くことから、コンクリートが隣り合う各塊状部材の隙間を通じて外方に出ようとすることを詰め物により確実に規制できることになり、その詰め物を取り除くことによりその隣り合う塊状部材間の表面側隙間空間(目地)を深いものにできる。このため、その表面側隙間空間を、動植物の生息生育空間等として、利用価値を高めることができる。
また、隣り合う塊状部材間の表面側隙間空間(目地)を深いものにできることから、陰影感を高め、周囲自然景観に調和させることができる。
【0015】
請求項7に係る発明によれば、詰め物を取り除いた表面側隙間空間に土類を充填することから、その深い隙間空間に充填された土類により、植物の生育をより促進することができる。
【0016】
請求項8に係る発明によれば、コンクリートの充填前に、表面層における隣り合う塊状部材が形成する表面側隙間空間に、詰め物として土類を詰めることから、コンクリートが隣り合う各塊状部材の隙間を通じて外方に出ようとすることを詰め物としての土類により確実に規制できるだけでなく、その土類により植物の生育の促進を図ることができる。この場合、土類を種子の生育基盤としても利用することができ、その土類を取り除く作業をなくすことができる。
【0017】
請求項9に係る発明によれば、土類に植物の種子を予め含めておくことから、植物の生育の促進を確実に図ることができる。
【0018】
請求項10に係る発明によれば、連結ユニットの軸状部材として、該連結ユニットをその軸状部材をもって吊上げたとしても撓まない剛性を有するものを用いることから、連結ユニットの搬送を円滑に行うことができると共に、その連結ユニットの据え付け、積み重ね作業を正確に行うことができる。
【0019】
請求項11に係る発明によれば、連結ユニットを積み重ねるに際し、吊上げ機械により吊上げられると共に連結ユニットを着脱可能に支持する吊具を用いることとし、吊具が連結ユニットを支持するに際しては、吊具が連結ユニットの軸状部材を回転可能に支持することから、連結ユニットの据え付け、積み重ね作業時(吊上げ時)に、軸状部材を回転させて、塊状部材、控え部材の向きを調整した状態で、連結ユニットを降ろすことができる。このため、連結ユニットの積み重ね状態を最適なものにできる。
【0020】
請求項12に係る発明によれば、吊上げ機械と吊具との間に、連結ユニットの吊上げられた状態での上下移動荷重を軽減できる荷重軽減装置を介在させることから、最終的な連結ユニットの据え付け、積み重ね作業(降ろし作業)を、作業者にとって軽い荷重の下で行うことができ、連結ユニットの据え付け、積み重ね作業を、より正確且つ容易に行うことができる。
【0021】
請求項13に係る発明によれば、連結ユニットの控え部材として、その連結ユニットの塊状部材よりも小さい径のものを用い、各連結ユニットを積み重ねるに際して、隣り合う控え部材間に間詰材を介在させることから、間詰材により各連結ユニットの控え部材の高さ調整を行い、連結ユニット(表面層)の勾配を容易に調整できる。
【0022】
請求項14に係る発明によれば、複数段の連結ユニットの積み重ね、及びコンクリートの充填からなる一連の工程を複数回に亘って繰り返すことから、構築すべき土木構築物の高さが高くなる場合でも、連結ユニットの積み重ねの安定性を考慮しつつ、複数回に分けて行うことができ、高さが高くなる土木構築物を的確に構築できる。
また、コンクリートの充填を、複数段の連結ユニットを積み重ねた後に行うことから、コンクリート打設高を1段毎にコンクリートの打設を行う場合に比べて高くでき、コンクリートの打継ぎ目を少なくすることができる。このため、コンクリート層(当該土木構築物)を強度上、好ましいものにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1,図2において、符号1は、実施形態に係る土木構築物としての護岸を示す。この護岸1は、傾斜した切土面(例えば1:0.4)2の下側に設置面3が設けられ、その設
置面3の上方側には、切土面2から河川W側に向けて順に、裏込め材層4、連結ユニット構成層5が設けられている
【0024】
前記設置面3には、図1,図2に示すように、基礎コンクリートブロック6が設置されている。基礎コンクリートブロック6は、河川W(或いは護岸1)の延設方向(図1中、紙面直交方向)において施工区間だけ延びており、その基礎コンクリートブロック6の延び方向両側には、側壁7(図16参照)が設けられている。基礎コンクリートブロック6の上部には、傾斜した支持面6aが形成されており、その支持面6aは、切土面2から河川W側に向うに従って上方に向うように傾斜されている。
【0025】
前記裏込め材層4は、図1,図2に示すように、前記切土面2上に所定の厚さ(例えば30〜70cm)をもって敷設されている。裏込め材層4は、切土面2に連続した層をなしており、その裏込め材層4の表面は、連結ユニット構成層5に対する施工面を構成している。この裏込め材層4をなす裏込め材としては、例えば0〜40mmの砕石等が用いられており、この砕石等の充填に基づき、裏込め材層4は、良好な通気性、通水性を有している。
【0026】
前記連結ユニット構成層5は、図1,図2に示すように、連結ユニット群8と、その内部に設けられるコンクリート層9とにより構成されている。連結ユニット群8は、複数の連結ユニット(土木構築物用ユニット)8Aが基礎コンクリートブロック6から順次、積み重ねられた状態で構成されており、その各連結ユニット8Aは、図2,図3に示すように、塊状部材としての前側自然石(例えば割石又は玉石)10と、控え部材としての後側自然石(例えば割石又は玉石)11とを軸状部材としてのアンカー12をもって連結する構成とされている。この場合、各連結ユニット8Aは、前側自然石10が後側自然石11よりも前側になるように配置されており、積み重ねられる各段においては、前側自然石10は、護岸1の延設方向(図1中、紙面直交方向)に連続的な列SLを構成している。このような各前側自然石列SLは、前記基礎コンクリートブロック6の支持面6aに支えられつつ、施工面3の下部側から上方側に向けて順次、連続的に積み上げられており、その最上段の前側自然石列SLは、施工面の上端面(法肩)近くの高さにまで至っている。これにより、連結ユニット群8の前側自然石10(列SL)は、護岸1の表面層1Aを構成している。このとき、この表面層1A(各前側自然石10)の勾配は、直立状態〜1:1.0程度の範囲(通常は1:0.5)に設定されている。
【0027】
一方、各連結ユニット8Aの後側自然石11は、図1,図2に示すように、表面層1Aを前記勾配とするべく、前側自然石10よりも低い位置となるように設置されている(連結ユニット8Aの傾斜配置)。このため、後側自然石11の径は、前側自然石10の径よりも小さくされ(好ましくは、前側自然石10の径が300mm程度に対して後側自然石11の径が200mm程度)、その上で、上下左右に隣り合う各連結ユニット8Aの後側自然石11間に、間詰材としての間詰石(かませ石)13が適宜、噛まされて、各後側自然石11の高さ調整等がなされている。この各連結ユニット8Aの後側自然石11と間詰石13とは、連結ユニット構成層5と裏込め材層4とを区画する区画層14を構成しており、この区画層14は、裏込め材層4側において、各後側自然石11及び各間詰石13の凹凸形状に基づき凹凸面を形成している。この区画層14の凹所には裏込め材層4が入り込んでおり、区画層14の凹凸面(後側自然石11等の露出外面全体)と裏込め材層4とは係合されている。このため、連結ユニット構成層5と裏込め材層4との摩擦抵抗(せん断抵抗)は高いものとなっている。この係合関係を高める観点からは、後側自然石11として、形状が不規則とされた割石を用いることが好ましい。この後側自然石11及び前記前側自然石10には、アンカー12を取付けるための取付け穴(図示略)がそれぞれ形成されている。
【0028】
前記アンカー12は、その一端部が前側自然石10の取付け穴に接着剤(例えばホットメルト)をもって取付けられ、その他端部は、後側自然石11の取付け穴に接着剤(例えばホットメルト)をもって取付けられている。このアンカー12としては、一端部に前側自然石10、他端部に後側自然石11を取付けた状態で吊上げても、容易には曲がらない剛性を有する直線状の鉄棒が用いられており、本実施形態においては、全長20cm、径13mm前後のものが用いられている。このアンカー12の両側には、その各端面から軸心延び方向内方側(例えば軸端から45mm前後)においてフランジ部15が一体的にそれぞれ設けられている。この各フランジ部15は、前記各自然石10,11の取付け穴に対するアンカー12の各端部の挿入量を一定とすべく、各自然石10,11の取付け穴の周縁部外面に当接されるべきものであり、簡易的には、アンカー12の軸本体に対して、該アンカー12の軸本体の径よりも内径が大きいナットを挿通させ、それを径方向内方に押し潰してアンカー12の軸本体に一体化させることにより、フランジ部15を形成することができる。この各アンカー12のフランジ部15と各自然石10(11)の取付け穴周縁部外面との間には、アンカー12の各端部の取付け穴への挿入に伴って溢れ出た接着剤が介在されており、その溢れ出た接着剤に基づき各フランジ部15と各自然石10(11)の取付け穴周縁部外面との接着性が高められている(図9参照)。またこの各フランジ部15は、各自然石10(11)の各取付け穴周縁部外面に当接して、アンカー12の各端部が、各自然石10(11)の各取付け穴付近を起点として曲がることを規制しており、アンカー12が折損することが抑制されることになっている。
【0029】
上記連結ユニット8Aは、作業性、迅速性等を考慮して、次のようにして製造される。
先ず、前側自然石10、後側自然石11にそれぞれ取付け穴を形成し、図4に示すように、後側自然石11を、その取付け穴11aが上方を向くようにセットする(位置決め状態)。使用時に液体状態にある液体接着剤を取付け穴11a内に充填保持できるようにするためである。
【0030】
後側自然石11を、その取付け穴11aが上方を向くようにセットし終えると、図5,図6に示すように、その後側自然石11の取付け穴11a内に液体接着剤16を充填し、その液体接着剤16が充填された取付け穴11a内にアンカー12の一端部を挿入する。液体接着剤16を用いることによりアンカー12の一端部を後側自然石11に一体化するためである。この場合、一体化強度を一定に保つべく(後側自然石11の取付け穴に対するアンカー12の一端部の挿入量を一定に保つべく)、アンカー12の一端部が、その一端側のフランジ部15が後側自然石11の取付け穴11aの周縁部外面に当接するまでその取付け穴内11aに挿入されるが、このアンカー12の挿入に伴って液体接着剤16が取付け穴11a外に溢れ出て、その接着剤16はフランジ部15と後側自然石11の取付け穴11a周縁部外面との間に介在される。このため、その溢れ出た接着剤16により後側自然石11とフランジ部15も接着されることになり、これに基づき、後側自然石11とフランジ部15との一体化強度は高まることになる(図6参照)。尚、液体接着剤が固化したものについても符号16を用いている。
本実施形態においては、液体接着剤16として、ホットメルトが用いられる。ホットメルトは、有機溶剤を含まず熱を加えると液体になり、熱を除去すると、短時間で固まる性質を有しており、そのホットメルトの性質を利用して、アンカー12の一端部と後側自然石11との一体化を迅速に行おうとしているのである(本実施形態においては10分程度で固化)。
【0031】
アンカー12の一端部を後側自然石11に一体化し終えると(ホットメルト固化後)、図7に示すように、前側自然石10を、その取付け穴10aが上方に向くようにセットする。液体接着剤16を前側自然石10の取付け穴10a内に充填保持できるようにするためである。
【0032】
前側自然石10のセットを終えると、図8,図9に示すように、その取付け穴10a内に液体接着剤(ホットメルト)16を充填し、その液体接着剤16が充填された取付け穴10a内に、後側自然石11が取付けられたアンカー12の他端部を挿入する。液体接着剤16を用いることによりアンカー12の他端部を前側自然石10に一体化するためである。この場合、前側自然石10の取付け穴10aが上方を向くようにした状態で、その取付け穴10a内に、後側自然石11が取付けられたアンカー12の他端部が挿入されるが、これは、前側自然石10が後側自然石11よりも大きくて、前側自然石10の取付け穴に、後側自然石11が取付けられたアンカー12の他端部を挿入しても、その前側自然石10の安定性に基づき転倒することがないこと、後側自然石11が前側自然石10よりも小さくて軽いことから、アンカー12に作用する荷重を小さくしてアンカー12の強度負担(耐座屈性)をできるだけ少なくできること等を考慮したためである。勿論この場合、アンカー12の強度として、後側自然石11による荷重に耐えるものが要求される。また、この時点では、アンカー12の他端部を前側自然石10の取付け穴10aに挿入するために、後側自然石11の取付け穴11aが下方を向くことになるが、ホットメルトは既に固化しており、そのホットメルトが下方にたれることはない。
【0033】
前側自然石10の取付け穴10a内へのアンカー12の他端部の挿入後、液体接着剤16(ホットメルト)が固まり、前側自然石10に対してアンカー12の他端部が一体化すると、連結ユニット8Aの製造作業は終了する。このように、当該製造方法を用いれば、迅速且つ容易に連結ユニット8Aを製造することができ、当該製造方法は、工場だけでなく、土木構築物の構築現場でも用いることができる。
【0034】
上記連結ユニット8Aは、別の製造態様として、図10に示す打ち込み式の製造方法によっても製造できる。この打ち込み式の製造方法においては、アンカー12として、その両端部にフランジ部15よりも延び方向外方側において湾曲部17を有するものを用意し、そのアンカー12の端部を自然石10(11)の取付け穴10a(11a)内に打ち込むことにより湾曲部17を押し開き、それに基づきアンカー12の端部と自然石10(11)とを一体化する。この際、アンカー12に対する打ち込み荷重は、削岩機18を利用してフランジ部15から加えられることになっており、このため、削岩機18の先端部(チゼル)19は、図11に示すように、アンカー12の軸本体を回避しつつフランジ部15に当接できるように加工されている。勿論この場合も、前述の製造方法同様、アンカー12の一端部を、前側自然石10よりも小さい後側自然石11に先ず取付け、その後、その後側自然石11を取付けたアンカー12の他端部を、取付け穴10aが上方を向く前側自然石10に取付ける。
【0035】
説明を前記連結ユニット構成層5に戻す。連結ユニット構成層5のコンクリート層9は、図1,図2に示すように、前記連結ユニット群8の表面層1Aと区画層14との間に充填された状態で配置されている。このため、コンクリート層9は、各連結ユニット8Aの前側自然石10と後側自然石11との間において、隣り合う前側自然石10間が形成する隙間空間(目地)、隣り合う間詰石13と後側自然石11とが形成する隙間空間(目地)にも入り込んでおり、コンクリート層9は、各連結ユニット8Aの前側自然石10と後側自然石11とにより前後に挟持された状態となっている。これにより、これら各連結ユニット8A及びコンクリート層9は、連結ユニット構成層5として、強固な一体関係を形成している。
【0036】
その一方、隣り合う前側自然石10間が形成する各表面側隙間空間21は、図12に示すように、後述の構築方法に基づき、コンクリート層9が入り込まない深いものとなっている。前側自然石10の脱落を、後側自然石11とコンクリート層9との係合により防止して、前側自然石10の脱落防止のために、各前側自然石10の体積の半分以上をコンクリート層9に埋め込まなくてもよくなる一方、そのことを利用して、その各表面側隙間空間21を動植物の生息生育空間として有効に利用したいからである。このため、表面層1Aをなす各前側自然石10は、コンクリート層9の表面からできるだけ突出され、表面層の1Aの各表面側隙間空間21は深いものとされている。その各表面側隙間空間21は、動物(生物)の生息空間、植物の生育空間として適宜、選択して利用されており、特に、植物の生育空間として利用する場合には、図12に示すように、その表面側隙間空間21に土22が充填され、その土22により植物23の生育が促進されている。
【0037】
前記連結ユニット構成層5には、図12に示すように、複数の配水管24(図12中では1つを図示)が貫通した状態で設けられている。この各配水管24は、一定領域(面積)毎に計画的に配置されており、その各一端開口は、裏込め材層4に臨み、その各他端開口は表面層1A外方に臨んでいる。これにより、裏込め材層4側からの排水は、連結ユニット構成層5(主としてコンクリート層9)により抑制されるものの、各排水管24により表面層1A外方に排出される。本実施形態においては、前述の表面側隙間空間21での植物23の育成を考慮し、計画的な配水管24の設置により、配水管24による排水が、その表面側隙間空間21に供給されることになっている。
【0038】
前記前記連結ユニット構成層5及び前記裏込め材層4の上端面には、図1に示すように、天端コンクリート層25が設けられている。天端コンクリート層25は、最上段の連結ユニット構成層5及び裏込め材層4を上方側から覆い、天端面(上面)を確保している。
尚、表面層1Aの下部側については、施工後に埋め戻されることになっている。
【0039】
したがって、このような護岸1においては、前側自然石10により形成される表面層1A及びコンクリート層9により強固な護岸機能を確保できることは勿論、各前側自然石10と各後側自然石11とが、コンクリート層9を前後に挟持するように配置されて、後側自然石11がコンクリート層9に係合されていることから、各前側自然石10が前方に移動することを規制できることになり、前方移動規制のために各前側自然石10の体積の半分以上をコンクリート層9に埋め込むことまでする必要性(構成)をなくすことができる。これにより、コンクリート層9表面からの各前側自然石10の突出量を大きくして、隣り合う前側自然石10同士が形成する各表面側隙間空間(目地)21を深い状態をもって確保でき、その各表面側隙間空間21を、動植物生息生育空間等として、利用価値を高めることができる。この結果、護岸1を周囲環境により調和させることができる。勿論この場合、隣り合う前側自然石10同士が形成する各表面側隙間空間(目地)21を深い状態をもって確保できることから、陰影感を高め、周囲自然景観に調和させることができる。
【0040】
また、護岸1は、各後側自然石11がコンクリート層9に一体化され、その各後側自然石11の露出外面全体が裏込め材層4に係合されていることから、各後側自然石11の露出外面が形成する凹凸面に基づき、各後側自然石11よりも前方側の層(区画層14、コンクリート層9及び表面層1A)と裏込め材層4表面との摩擦抵抗(せん断抵抗)を高めることができ、護岸1の安定性を高めることができる。
【0041】
さらに、通水性を有する裏込め材層4と、複数の前側自然石10が形成する表面層1Aとが排水管24を介して連通されていることから、コンクリート層9により裏込め材層4側から表面層側1Aへの排水が困難となるものの、その排水を排水管24を通じて外部の所定個所に計画的に排出できる。しかも、その排水が、表面側隙間空間21内の植物に供給されることから、その排水を、植物の生育促進に有効に利用できる。
【0042】
このような護岸11は、図13に示す工程図に従い、構築(構築)される。
先ず、図13,図14に示すように、切土面2及び設置面3を形成し、その後、設置面3上に護岸1の構築区間の全体に亘って基礎コンクリートブロック6を形成すると共に、その基礎コンクリートブロック6の延び方向両側に側壁7(図16参照)を形成する。
【0043】
次に、前記連結ユニット8Aを複数用意し、その複数の連結ユニット8Aを用いて、一段目となる連結ユニット8Aの列を、図13,図15,図16に示すように、基礎コンクリートブロック6の支持面6a上に配置する。このとき、一段目の各連結ユニット8Aは、前側自然石10が後側自然石11に対して前側となるように配置されると共に、各連結ユニット8Aの隣り合う左右の後側自然石11間、その後側自然石11と基礎コンクリートブロック6との間等に間詰材としての間詰石13が詰められる。これにより、各連結ユニット8Aの後側自然石11の位置、高さ調整等が行われ、各連結ユニット8Aは、基礎コンクリートブロック6上の所定位置に所定の傾斜姿勢で設置される。
【0044】
上記一段目の連結ユニット8Aの列の設置を終えると、その一段目の連結ユニット8A列と切土面2との間において、図13,図15に示すように、その連結ユニット8Aの後側自然石11及び間詰石13を裏型枠として、その後側自然石11の高さまで裏込め材を投入する。以下、同様に、一段目の連結ユニット8A列の上に二段目、三段目の連結ユニット8A列が積み上げられ、その各段の作業毎に、その各段の後側自然石11の高さ調整等のために、間詰石13が各段の後側自然石11間に詰められると共に、その各段の後側自然石11等の背面側に裏込め材が投入される。
【0045】
上記連結ユニット8Aの積み上げ作業には、バックホウ等の吊上げ機械27、吊具28等が用いられる。具体的には、設置面3の所定個所に、複数(10個程度)の連結ユニット8Aを吊上げ搬送具(図示略)を用いて一旦、搬送した後、図15に示すように、そのうちの1つの連結ユニット8Aを吊具(土木用吊具)28に保持し、その吊具28をワイヤ29を介して吊上げ機械27により再び吊上げ、その吊上げられた連結ユニット8Aを作業者のアシストを受けつつ積み重ね個所に降ろすことになる。
【0046】
上記吊具28としては、連結ユニット8Aの積み重ね作業を正確且つ容易に行えるようにすべく、連結ユニット8Aをそのアンカー12が略水平状態となるように支持する機能を有するものが用いられる。このため、吊具28は、図17〜図19に示すように、基本的には、筒状部としての円筒部30と、その円筒部30に取付けられる板状の一定幅の連結部31と、を備えるものとなっている。
【0047】
前記円筒部30は、その軸心延び方向長さが前記連結ユニット8Aにおけるアンカー12の両フランジ部15間よりもやや短い長さとされ、その円筒部30の側部には、その軸心延び方向全長に亘ってスリット状の開口32が形成されている。この円筒部30のスリット状の開口32の幅は、連結ユニット8Aのアンカー12の径よりもやや広くされており、その開口32を介して連結ユニット8Aのアンカー12が円筒部30内に挿入可能となっている。
【0048】
前記連結部31は、基部部分(下部)33と、その基部部分33から連続して延びる傾斜部分(上部)34とを備えている。基部部分33は、円筒部30の延び方向略中央位置において、円筒部30の外周面上部に取付けられており、その基部部分33は、その幅方向を円筒部30の軸心延び方向に向けつつ上方に延びている。傾斜部分34は、上方に向かうに従って円筒部30の軸心延び方向の一方側に延びるように傾斜されており、その傾斜部分34には複数の連結孔35が、その延び方向に所定間隔毎に形成されている。この複数の連結孔35は、吊上げ機械27(ワイヤ29)の連結点となるべきものであり、その連結孔35のいずれかに、連結ユニット8Aの前側自然石10と後側自然石11との重量(大小)を考慮(重心位置を考慮)して、ワイヤ29がフック等(図示略)を介して適宜、連結される。尚、図18中、符号45は補強部材である。
【0049】
このような吊具28を使用して連結ユニット8Aを吊上げるに際しては、連結ユニット8Aのアンカー12を、前側自然石10(径が大きい側)を傾斜部分34が傾斜する側(円筒部30の軸心方向の一方側)に向けつつ、円筒部30内にスリット状の開口32から挿入する。そして、複数の連結孔35のうちから、円筒部30の軸心延び方向において連結ユニット8Aの略重心位置に位置するものを選び、その連結孔35にワイヤ29を連結して、吊具28を吊上げ機械27により吊り上げる。これにより、連結ユニット8Aは、そのアンカー12が円筒部30(の下部)に支持されると共に、そのフランジ部15と円筒部30端面との当接関係により該円筒部30の軸心延び方向に移動することが規制される。またこの際、上述の連結孔35の選択によるワイヤ29の位置調整により、連結ユニット8A(アンカー12)は略水平状態となる。
しかも、この吊具28による連結ユニット8Aの吊上げ中においては、円筒部30に対して、アンカー12をその軸心を中心として容易に相対回動させることができる。このため、前側自然石10の向き(姿勢)を、吊上げ中に、連結ユニット8Aの設置時における状態として好ましいものにすることができ、連結ユニット8Aの設置に際しては、吊上げ時において調整した状態のままで連結ユニット8Aを降ろすことができる。
この結果、連結ユニット8Aの積み重ね設置作業(降ろし作業)は、正確且つ容易に行えることになり、積み重ね設置作業を向上させることができる。
【0050】
本実施形態に係る吊具28においては、さらに、図17〜図19に示すように、円筒部30の外周にその全長に亘って外筒部材41が相対回動可能に嵌合されている。この外筒部材41の側部にも、その軸心延び方向全長に亘ってスリット状の開口42が形成されており、そのスリット状の開口42は、円筒部30のスリット状の開口32と略同じ開口とされている。また、この外筒部材41の外周面には、そのスリット状の開口42から周回り方向に一定幅を維持しつつ延びるガイド孔43が形成されており、そのガイド孔43に連結部31の基部部分33が案内されるようにしつつ上方に貫通されている。さらに、外筒部材41には棒状の重錘44が、連結部31よりも外筒部材41の開口42側において、ガイド孔43を横切るように取付けられている。これに基づき、外力を加えて外筒部材41を円筒部30に対して相対回動させ、連結部31の基部部分33に重錘44を当接させたときには、円筒部30のスリット状の開口32と外筒部材41のスリット状の開口42とが重なることになり、その一方、その状態から外力を解除したときには、重錘44により外筒部材41が円筒部30に対して相対回動し、外筒部材41(ガイド孔43の幅方向両側部分)が円筒部30のスリット状の開口32を塞ぐことになっている。
【0051】
このため、連結ユニット8Aのアンカー12を吊具12に保持するときには、作業者が外力を加えることにより外筒部材41を円筒部30に対して相対回動させ、円筒部30のスリット状の開口32と外筒部材41のスリット状の開口42とを重ならせる必要があるが、これについては、連結部31の基部部分33と重錘44との当接に基づき、その状態を簡単に得ることができる。さらには、吊具28の吊上げ搬送時等、外筒部材41に外力が作用しないときには、外筒部材41(ガイド孔43の幅方向両側部分)が、重錘44に基づき円筒部30のスリット状の開口を常時塞ぐことになり、連結ユニット8Aが吊具28から脱落することを確実に防止できることになる。
【0052】
また、本実施形態においては、作業者の作業負担を軽減すべく、図15に示すように、吊上げ機械27と吊具28との間に、連結ユニット8Aの吊上げられた状態での上下移動荷重を軽減できる荷重軽減装置(通称スプリングバランサ)36が介在されている。この荷重軽減装置36は、ばね(ぜんまい式ばね、コイル式ばね)等を用いることにより、本来の荷重よりも少ない荷重をもって連結ユニット8Aを上下動させる機能を有しており、この荷重軽減装置36の機能に基づき作業者の負担が減らされることになり、連結ユニット8Aの積み重ね作業を正確に行うことが可能となる。
【0053】
説明を構築工程に戻す。連結ユニット8A列の積み上げ及び裏込め材の投入が三段目まで完了すると、各隣り合う前側自然石10が形成する表面側隙間空間(目地)21に、図20に示すように、やし繊維布等の詰め物37を詰める。後工程において充填(注入)するコンクリートが表面層1Aの表面側に漏れ出ることを確実に防止するためである。
【0054】
表面層1Aの各表面側隙間空間21に詰め物37を詰め終わると、図13,図20に示すように、三段目の連結ユニット8A列の上方側から、表面層1A(積み上げられた前側自然石10)と区画層14(積み上げられた後側自然石11、間詰石13)との間にコンクリートを注入(打設)する。三段目までの範囲で、表面層1Aと区画層14との間にコンクリート層9を形成し、そのコンクリート層9に各連結ユニット8Aの後側自然石11を係合させて、各連結ユニット8Aの前側自然石10が前方に脱落することを防止するためである。勿論この場合、表面層1A、コンクリート層9及び区画層14は一体となって連結ユニット構成層5を構成することになり、強固な護岸1機能を発揮することになる。
このとき、表面層1Aの表面側においては、前工程で、表面層1Aの表面側隙間空間21に詰め物37がなされていることから、各表面側隙間空間21にコンクリートは漏れ出ることが抑制され、その各表面側隙間空間21は表面から深い状態が維持される。
またこのとき、コンクリートの注入に伴い、空気がコンクリート内に取り込まれるが、その空気の気泡は、図20に示すように、コンクリート注入側である上方側だけでなく、区画層14の隙間(各連結ユニット8Aの後側自然石11間、後側自然石11と間詰石13との間の隙間等)を介して通気性を有する裏込め材層4に逃げることになる。特に、コンクリートの注入後、バイブレータを用いることにより、コンクリート内の気泡を、効果的に排出することができる。
【0055】
このように三段目の連結ユニット8A列に対するコンクリートの注入を終えると、その三段目の連結ユニット8A列からさらにこれまで行ってきた一連の工程(連結ユニット8Aの三段の積み上げ、裏込め材の投入、コンクリート注入等)を再び繰り返す。連結ユニット8Aの積み重ねの安定性を考慮しつつ、護岸1を所定の高さのものにするためである。上記作業により連結ユニット8Aの積み上げ高さが所定の高さに至ると、その上面に天端コンクリート層9を形成すると共に、当該護岸1の下部前面側を埋め戻す。そして、各表面側隙間空間21から詰め物37を取り除き、その表面側隙間空間21に対して、適宜、土(好ましくは植物の含まれた土)を詰める。これにより、当該護岸1の構築作業は終了することになる。
【0056】
したがって、このような構築方法を用いることにより、前述の護岸1を的確に構築できる。本実施形態においては、コンクリートの充填前に、表面層1Aにおける各表面側隙間空間(目地)21に詰め物37を詰めることから、コンクリートが隣り合う各前側自然石10の隙間を通じて外方に出ようとすることを詰め物37により確実に規制でき、その各詰め物37を取り除くことにより、隣り合う前側自然石10の各表面側隙間空間21を、動植物の生息生育空間等として利用価値の高い深さの深いものに形成できることになる。特に、この後、各表面側隙間空間21に土(土類)を詰められた個所においては、植物の育成の促進を図ることができることになる。
【0057】
また、護岸1の3段分を構築するに際して、その表面層1Aと区画層14とを型枠として、その間に1回のコンクリート充填を行うだけの作業で足りることになり、各段毎に、コンクリートの充填も、前側自然石10の体積の半分以上をコンクリートに埋め込む作業も必要でなくなる。このため、作業負担を軽減できると共に、構築時間を短縮できる。
【0058】
さらには、本実施形態においては、コンクリートの充填前に、区画層14の背面側に隣接させて、通気性を有する裏込め材層4を形成していることから、区画層14(後側自然石11及び間詰石13)を利用(裏型枠としての利用)して裏込め材層4を支持(裏込め材の投入)できるばかりでなく、コンクリートの充填に際して、空気を、上方側(裏込め材投入側)だけでなく、各後側自然石11、間詰石13の隙間を介して裏込め材層4にも逃がすことができ、コンクリート(コンクリート層)に気泡(空気)が取り込まれることを、より抑制できる。
【0059】
しかもこの場合、3段の連結ユニットの後側自然石11等(区画層14)が裏型枠を兼ねることになり、各段毎の裏型枠の設置、撤去を不要にできる。このため、区画層14の背面側に裏込め材層4を形成する場合においても、作業負担の軽減、構築時間の短縮化を図ることができる。
【0060】
図21、図22は第2実施形態、図23〜図27は第3実施形態、図28〜図32は第4実施形態を示す。この各実施形態において前記第1実施形態と同一構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0061】
図21、図22を示す第2実施形態には、吊具ユニット50として、支持部材51と複数のワイヤ52とを利用することにより複数の前述の第1実施形態に係る吊具28を吊上げるようにしたものが示されている。すなわち、吊具ユニット50においては、吊上げ機械27によりワイヤ29を介して長尺の支持部材51が略水平状態をもって吊上げられており、その支持部材51に複数のワイヤ52がその一端部をもって連結されている。この各ワイヤ52は、その他端側が等しい長さをもって垂下しており、その各他端部には前記吊具28(連結部31)がフック等(図示略)を介して連結されている。このため、図21に示すように、複数の吊具28を利用して複数の連結ユニット8Aを吊上げることができ、その各連結ユニット8Aの前側自然石10の向き(姿勢)を、吊上げ中に、各連結ユニット8Aの設置時における状態として好ましいものに調整した上で、その複数の連結ユニット8Aを図22に示すように一度に降ろすことができる。これにより、連結ユニット8Aの設置時の作業性を高めることができる。
【0062】
図23〜図27に示す第3実施形態は、第2実施形態の変形例を示す。この第3実施形態においては、吊上げ機械27により支持部材51が水平状態に吊り上げられ、各吊具28は、長さが異なるワイヤ52により連結されている。この場合、各ワイヤ52は、支持部材51の長手方向一方側(図23中、左側)のものよりも長手方向他方側(図23中、右側)のものの方が長くなっており、各吊具28は、支持部材51の長手方向一方側から他方側に離れるものほど、低い位置となるように設定されている。このため、各吊具28の全てに連結ユニット8Aを保持して吊上げた後、連結ユニット8Aを、図24〜図27に示すように、支持部材51の他方側から一方側に向けて順番に1個ずつ降ろすことができ、連結ユニット8Aの設置時の据え付け、積み重ね作業を的確に行うことができる。この場合、連結ユニット8Aを降ろした吊具28及びワイヤ52に関しては、次の積み重ね作業の邪魔とならないように、支持部材51の引っ掛け具(図示略)に折り畳んだ状態で引っ掛けられる(図24〜図27参照)。
【0063】
図28〜図32に示す第4実施形態は、第3実施形態の変形例を示す。この第4実施形態においては、支持部材51の両端部を連結した連結ワイヤ53に対するワイヤ29の連結点Pを調整することにより、支持部材51の他方側(図28中、右側)が、その一方側(図28中、左側)よりも低い位置となるように設定されている(傾斜配置)。このため、この第4実施形態においても、各吊具28の全てに連結ユニット8Aを保持して吊上げた後、連結ユニット8Aを、図28〜図32に示すように、支持部材51の他方側から一方側に向けて順番に1個ずつ降ろすことができるが、それに伴って、支持部材51は、水平状態(図30)を経て反対側に傾斜することになり、支持部材51の傾きを、連結ユニット8Aの降ろし作業開始から終了までの間において、水平状態の近辺に抑えることができる。このため、連結ユニット8Aの設置時の据え付け、積み重ね作業時において、支持部材51の吊上げ状態の安定化を図ることができる。
この場合、隣り合う吊具28間の間隔、高低差は、連結ユニット8Aの据え付け、積み重ね作業の邪魔にならないように設定されている。勿論この場合も、連結ユニット8Aを降ろした吊具28及びワイヤ52に関しては、次の積み重ね作業の邪魔とならないように、支持部材51の引っ掛け具(図示略)に折り畳んだ状態で引っ掛けられる(図29〜図32参照)。
【0064】
以上実施形態について説明したが本発明にあっては、次のような態様を包含する。
(1)塊状部材、控え部材として、自然石の他に、擬石、コンクリートブロック等を用いること。
(2)本発明を、護岸1に限らず擁壁等に適用すること。
(3)区画層14を、控え部材としての後側自然石11だけの積み重ねにより構成すること。
(4)コンクリートの充填を、連結ユニット8Aの3段毎に限らず、適時段毎の積み重ね後に行うこと。
(5)吊具28が吊上げ搬送する連結ユニット(土木構築物用ユニット)8Aとして、塊状部材が石(擬石を含む)、コンクリートブロック等であり、控え部材がストッパパネル等からなるもの。
(6)コンクリート充填前に、各表面側隙間空間21に詰め物37として土(土類:好ましくは植物の種子を含むもの)を詰めること。これにより、コンクリート充填時にコンクリートが外部に漏れることを確実に防止できるだけでなく、コンクリートの充填後においても、詰め物37としての土を植物の育成促進に役立たせることができる。しかもこの場合、詰め物37としての土を、コンクリート充填後に取り除く必要がなくなり、構築工程の簡略化を図ることもできる。
【0065】
尚、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましい或は利点として記載されたものに対応したものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】第1実施形態に係る護岸を説明する縦断面図。
【図2】第1実施形態に係る護岸の下側部分を示す拡大縦断面図。
【図3】第1実施形態に係る連結ユニットを説明する説明図。
【図4】第1実施形態に係る連結ユニットの製造工程を説明する説明図。
【図5】図4の続きの製造工程を説明する説明図。
【図6】図5の続きの製造工程を説明する説明図。
【図7】図6の続きの製造工程を説明する説明図。
【図8】図7の続きの製造工程を説明する説明図。
【図9】図8の続きの製造工程を説明する説明図。
【図10】別の実施形態に係る連結ユニットの製造工程を説明する説明図。
【図11】図10における内容を平面的に説明する図。
【図12】第1実施形態に係る護岸を示す部分拡大縦断面図。
【図13】第1実施形態に係る護岸の構築工程を説明する工程図。
【図14】第1実施形態に係る護岸の構築工程を説明する説明図。
【図15】第1実施形態に係る連結ユニットの積み重ね作業を説明する説明図。
【図16】一段目の連結ユニットの列の設置状態を示す斜視図。
【図17】第1実施形態に係る吊具による連結ユニットの吊り上げ状態を示す斜視図。
【図18】第1実施形態に係る吊具の背面を示す背面図。
【図19】図18の左側面図。
【図20】積み重ねられた連結ユニットへのコンクリートの注入及び空気の排出を説明する説明図。
【図21】第2実施形態に係る吊具ユニットを示す説明図。
【図22】図21の続きの工程を説明する説明図。
【図23】第3実施形態に係る吊具ユニットを示す説明図。
【図24】図23の続きの工程を説明する説明図。
【図25】図24の続きの工程を説明する説明図。
【図26】図25の続きの工程を説明する説明図。
【図27】図26の続きの工程を説明する説明図。
【図28】第4実施形態に係る吊具ユニットを示す説明図。
【図29】図28の続きの工程を説明する説明図。
【図30】図29の続きの工程を説明する説明図。
【図31】図30の続きの工程を説明する説明図。
【図32】図31の続きの工程を説明する説明図。
【符号の説明】
【0067】
1 護岸(土木構築物)
1A 表面層
4 裏込め材層
8A 連結ユニット(土木構築物用ユニット)
9 コンクリート層
10 前側自然石(塊状部材)
11 後側自然石(控え部材)
12 軸状部材(アンカー)
13 間詰石(間詰材)
14 区画層
16 液体接着剤(ホットメルト)
21 表面側隙間空間
22 土
23 植物
24 配水管
27 吊上げ機械
28 吊具
37 詰め物
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木構築物及び土木構築物の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土木構築物には、特許文献1に示すように、延び部材の一端部に石を取付けその他端部に摩擦力増大手段を取付けた土木構築物用構築石を複数用意して、その各石を積み重ねると共にその各延び部材を略平行に配置し、その延び部材及び摩擦力増大手段を砕石等の中に埋設したものが知られている。このものによれば、摩擦力増大手段と砕石等との摩擦力基づき土木構築物用構築石の保持状態を強固にでき、当該土木構築物を安定で強固なものにできる。
【0003】
ところで、より強固な土木構築物として、練石積み工法を用いたものがある。その練石積み工法を用いた土木構築物(護岸、擁壁等)としては、施工面上にコンクリート層が敷設され、そのコンクリート層に複数の石がそのコンクリート層の表面から露出され且つ積み上げられた状態をもって保持されたものが広く知られている。この土木構築物を構築するに際しては、具体的には、石を横方向に人力で並べて一段目の石列を作り、その背面側に裏型枠を配置し、その裏型枠の裏側に裏込め材を投入する。その裏込め材の投入後、石列と裏型枠との間にコンクリートを打設し(各石の体積の半分以上をコンクリートに埋め込む作業も含む)、それが終わると、裏型枠を撤去する。このような一連の工程は、上記石列の上側の各段においても順次、繰り返され、それを経ることにより当該土木構築物が構築される。この結果、当該土木構築物は、石からなる表面層、コンクリート層等に基づき、強固な護岸機能を発揮することになる。
【特許文献1】特開平11−310913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記練石積み工法を用いた土木構築物においては、各石を脱落させることなくコンクリート層に保持するために、各石の体積の半分以上をコンクリート層に埋め込んでおく必要があり、コンクリート層表面からの各石の突出量は少ない。このため、表面層において、隣り合う石同士が形成する各隙間空間(目地)は、浅くならざるを得ず、その各隙間空間を、生物生息空間、植物生育空間等として利用しようとしても、その利用価値は低い。
【0005】
また、上記のような土木構築物の構築に際しては、各段毎に、前述の一連の工程を行う必要があるばかりか、そのうちのコンクリート打設工程においては、各石の体積の半分以上をコンクリートに埋め込む作業を行わなければならない。このため、この構築には、かなりの熟練と労力、さらには構築時間が必要となっている。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その第1の技術的課題は、強固な護岸機能を確保しつつ、表面層における隣り合う塊状部材が形成する各表面側隙間空間を深くできる土木構築物を提供することにある。
第2の技術的課題は、上記土木構築物の構築に用いられる土木構築物の構築方法であって、作業負担を軽減できると共に構築時間を短縮できる土木構築物の構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記第1の技術的課題を達成するために本発明(請求項1に係る発明)にあっては、
傾斜した施工面に対してコンクリート層が敷設され、該コンクリート層に複数の塊状部材が表面層として該コンクリート層の表面から露出され且つ積み上げられた状態をもって保持されている土木構築物において、
前記各塊状部材に、該各塊状部材の背面側において軸状部材を介して塊状の控え部材がそれぞれ連結され、
前記各塊状部材と前記各控え部材とが、前記コンクリート層を前後に挟持するように配置されている構成としてある。この請求項1の好ましい態様としては、請求項2,3の記載の通りである。
【0008】
上記第2の技術的課題を達成するために本発明(請求項4に係る発明)にあっては、
傾斜した施工面に対してコンクリート層が敷設され、該コンクリート層に複数の塊状部材が表面層として該コンクリート層の表面から露出され且つ積み上げられた状態をもって保持されている土木構築物において、
塊状部材に軸状部材を介して塊状の控え部材が連結された連結ユニットを複数用意し、
前記連結ユニットを、前記施工面の前側において、該連結ユニットの塊状部材が該控え部材よりも前側に配置されるようにしつつ複数段に亘って積み重ねて、該各連結ユニットの塊状部材により表面層を形成すると共に、該各連結ユニットの控え部材により区画層を形成し、
この後、前記表面層と前記区画層との間にコンクリートを充填する構成としてある。この請求項4の好ましい態様としては、請求項5以下の記載の通りである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、塊状部材により形成される表面層及びコンクリート層により強固な護岸機能を確保できる一方、各塊状部材と各控え部材とが、コンクリート層を前後に挟持するように配置されて、控え部材がコンクリート層に係合されていることから、各塊状部材が前方に移動することを規制できることになり、前方移動規制のために各塊状部材の体積の半分以上をコンクリート層に埋め込むことまでする必要性(構成)をなくすことができる。このため、コンクリート層表面からの各塊状部材の突出量を大きくして、隣り合う塊状部材同士が形成する各表面側隙間空間(目地)を深い状態をもって確保できる。この結果、各表面側隙間空間に関し、動植物生息生育空間等としての利用価値を高めることができ、当該土木構築物を周囲環境により調和させることができる。
勿論この場合、各塊状部材の半分以上をコンクリート層に埋め込む作業が不要となり、作業性を高めることができる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、各控え部材がコンクリート層に一体化され、その各控え部材の露出外面全体が施工面に係合されていることから、各控え部材の露出外面が形成する凹凸面に基づき、各控え部材よりも前方側の層(区画層、コンクリート層及び表面層)と施工面とのせん断抵抗を高めることができ、当該土木構築物の安定性を高めることができる。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、施工面の表面が、通水性を有する裏込め材層により形成され、複数の塊状部材が形成する表面層の外方と裏込め材層とが排水管を介して連通されていることから、コンクリート層により施工面側から表面層側への水の排水が困難となるものの、その水を排水管を通じて外部の所定個所に計画的に排水できる。この場合、配水管による排水を表面層の表面側隙間空間に供給でき、その排水を動物(生物)の生息、植物の育成促進に的確に利用できる。
【0012】
請求項4に係る発明によれば、連結ユニットとして、塊状部材に軸状部材を介して塊状の控え部材が連結されたものを複数用意し、連結ユニットを、施工面の前側において、該連結ユニットの塊状部材が控え部材よりも前側に配置されるようにしつつ複数段に亘って積み重ねて、該各連結ユニットの塊状部材により表面層を形成すると共に、該各連結ユニットの控え部材により区画層を形成し、この後、表面層と区画層との間にコンクリートを充填することから、各塊状部材と各控え部材とが、コンクリート層を前後に挟持するように配置される構成となり、前記請求項1に係る土木構築物を得ることができる。
また、連結ユニットを複数段に亘って積み重ねて、各連結ユニットの塊状部材により表面層を形成すると共に、各連結ユニットの控え部材により区画層を形成し、その表面層と区画層との間にコンクリートを充填することから、当該土木構築物の複数段を構築するに際して、表面層と区画層とを型枠としてその間に1回のコンクリート充填を行うだけの作業で足り、各段毎に、コンクリートの充填も、塊状部材の体積の半分以上をコンクリートに埋め込む作業も必要でなくなる。このため、作業負担を軽減できると共に、構築時間を短縮できる。
さらに、コンクリートの充填を、複数段の連結ユニットを積み重ねた後に行うことから、コンクリート打設高を1段毎にコンクリートの打設を行う場合に比べて高くでき、コンクリートの打継ぎ目に基づき、コンクリート層(当該土木構築物)の強度が低下することを抑制できる。
【0013】
請求項5に係る発明によれば、コンクリートの充填前に、区画層の背面側に隣接させて、通気性を有する裏込め材層を形成することから、区画層を利用(裏型枠としての利用)して裏込め材層を支持(裏込め材の投入)できるばかりでなく、コンクリートの充填に際して、空気を、上方側(裏込め材投入側)だけでなく、各控え部材間の隙間を介して裏込め材層にも逃がすことができ、コンクリート(コンクリート層)に気泡(空気)が取り込まれることを、より抑制できる。
また、複数段の連結ユニットの控え部材(区画層)が裏型枠を兼ねることになり、裏型枠の各段毎の設置、撤去を不要にできる。このため、区画層の背面側に裏込め材層を形成する場合においても、作業負担の軽減、構築時間の短縮化を図ることができる。
【0014】
請求項6に係る発明によれば、コンクリートの充填前に、表面層における隣り合う塊状部材が形成する表面側隙間空間に詰め物を詰め、コンクリートの充填後、表面側隙間空間から詰め物を取り除くことから、コンクリートが隣り合う各塊状部材の隙間を通じて外方に出ようとすることを詰め物により確実に規制できることになり、その詰め物を取り除くことによりその隣り合う塊状部材間の表面側隙間空間(目地)を深いものにできる。このため、その表面側隙間空間を、動植物の生息生育空間等として、利用価値を高めることができる。
また、隣り合う塊状部材間の表面側隙間空間(目地)を深いものにできることから、陰影感を高め、周囲自然景観に調和させることができる。
【0015】
請求項7に係る発明によれば、詰め物を取り除いた表面側隙間空間に土類を充填することから、その深い隙間空間に充填された土類により、植物の生育をより促進することができる。
【0016】
請求項8に係る発明によれば、コンクリートの充填前に、表面層における隣り合う塊状部材が形成する表面側隙間空間に、詰め物として土類を詰めることから、コンクリートが隣り合う各塊状部材の隙間を通じて外方に出ようとすることを詰め物としての土類により確実に規制できるだけでなく、その土類により植物の生育の促進を図ることができる。この場合、土類を種子の生育基盤としても利用することができ、その土類を取り除く作業をなくすことができる。
【0017】
請求項9に係る発明によれば、土類に植物の種子を予め含めておくことから、植物の生育の促進を確実に図ることができる。
【0018】
請求項10に係る発明によれば、連結ユニットの軸状部材として、該連結ユニットをその軸状部材をもって吊上げたとしても撓まない剛性を有するものを用いることから、連結ユニットの搬送を円滑に行うことができると共に、その連結ユニットの据え付け、積み重ね作業を正確に行うことができる。
【0019】
請求項11に係る発明によれば、連結ユニットを積み重ねるに際し、吊上げ機械により吊上げられると共に連結ユニットを着脱可能に支持する吊具を用いることとし、吊具が連結ユニットを支持するに際しては、吊具が連結ユニットの軸状部材を回転可能に支持することから、連結ユニットの据え付け、積み重ね作業時(吊上げ時)に、軸状部材を回転させて、塊状部材、控え部材の向きを調整した状態で、連結ユニットを降ろすことができる。このため、連結ユニットの積み重ね状態を最適なものにできる。
【0020】
請求項12に係る発明によれば、吊上げ機械と吊具との間に、連結ユニットの吊上げられた状態での上下移動荷重を軽減できる荷重軽減装置を介在させることから、最終的な連結ユニットの据え付け、積み重ね作業(降ろし作業)を、作業者にとって軽い荷重の下で行うことができ、連結ユニットの据え付け、積み重ね作業を、より正確且つ容易に行うことができる。
【0021】
請求項13に係る発明によれば、連結ユニットの控え部材として、その連結ユニットの塊状部材よりも小さい径のものを用い、各連結ユニットを積み重ねるに際して、隣り合う控え部材間に間詰材を介在させることから、間詰材により各連結ユニットの控え部材の高さ調整を行い、連結ユニット(表面層)の勾配を容易に調整できる。
【0022】
請求項14に係る発明によれば、複数段の連結ユニットの積み重ね、及びコンクリートの充填からなる一連の工程を複数回に亘って繰り返すことから、構築すべき土木構築物の高さが高くなる場合でも、連結ユニットの積み重ねの安定性を考慮しつつ、複数回に分けて行うことができ、高さが高くなる土木構築物を的確に構築できる。
また、コンクリートの充填を、複数段の連結ユニットを積み重ねた後に行うことから、コンクリート打設高を1段毎にコンクリートの打設を行う場合に比べて高くでき、コンクリートの打継ぎ目を少なくすることができる。このため、コンクリート層(当該土木構築物)を強度上、好ましいものにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1,図2において、符号1は、実施形態に係る土木構築物としての護岸を示す。この護岸1は、傾斜した切土面(例えば1:0.4)2の下側に設置面3が設けられ、その設
置面3の上方側には、切土面2から河川W側に向けて順に、裏込め材層4、連結ユニット構成層5が設けられている
【0024】
前記設置面3には、図1,図2に示すように、基礎コンクリートブロック6が設置されている。基礎コンクリートブロック6は、河川W(或いは護岸1)の延設方向(図1中、紙面直交方向)において施工区間だけ延びており、その基礎コンクリートブロック6の延び方向両側には、側壁7(図16参照)が設けられている。基礎コンクリートブロック6の上部には、傾斜した支持面6aが形成されており、その支持面6aは、切土面2から河川W側に向うに従って上方に向うように傾斜されている。
【0025】
前記裏込め材層4は、図1,図2に示すように、前記切土面2上に所定の厚さ(例えば30〜70cm)をもって敷設されている。裏込め材層4は、切土面2に連続した層をなしており、その裏込め材層4の表面は、連結ユニット構成層5に対する施工面を構成している。この裏込め材層4をなす裏込め材としては、例えば0〜40mmの砕石等が用いられており、この砕石等の充填に基づき、裏込め材層4は、良好な通気性、通水性を有している。
【0026】
前記連結ユニット構成層5は、図1,図2に示すように、連結ユニット群8と、その内部に設けられるコンクリート層9とにより構成されている。連結ユニット群8は、複数の連結ユニット(土木構築物用ユニット)8Aが基礎コンクリートブロック6から順次、積み重ねられた状態で構成されており、その各連結ユニット8Aは、図2,図3に示すように、塊状部材としての前側自然石(例えば割石又は玉石)10と、控え部材としての後側自然石(例えば割石又は玉石)11とを軸状部材としてのアンカー12をもって連結する構成とされている。この場合、各連結ユニット8Aは、前側自然石10が後側自然石11よりも前側になるように配置されており、積み重ねられる各段においては、前側自然石10は、護岸1の延設方向(図1中、紙面直交方向)に連続的な列SLを構成している。このような各前側自然石列SLは、前記基礎コンクリートブロック6の支持面6aに支えられつつ、施工面3の下部側から上方側に向けて順次、連続的に積み上げられており、その最上段の前側自然石列SLは、施工面の上端面(法肩)近くの高さにまで至っている。これにより、連結ユニット群8の前側自然石10(列SL)は、護岸1の表面層1Aを構成している。このとき、この表面層1A(各前側自然石10)の勾配は、直立状態〜1:1.0程度の範囲(通常は1:0.5)に設定されている。
【0027】
一方、各連結ユニット8Aの後側自然石11は、図1,図2に示すように、表面層1Aを前記勾配とするべく、前側自然石10よりも低い位置となるように設置されている(連結ユニット8Aの傾斜配置)。このため、後側自然石11の径は、前側自然石10の径よりも小さくされ(好ましくは、前側自然石10の径が300mm程度に対して後側自然石11の径が200mm程度)、その上で、上下左右に隣り合う各連結ユニット8Aの後側自然石11間に、間詰材としての間詰石(かませ石)13が適宜、噛まされて、各後側自然石11の高さ調整等がなされている。この各連結ユニット8Aの後側自然石11と間詰石13とは、連結ユニット構成層5と裏込め材層4とを区画する区画層14を構成しており、この区画層14は、裏込め材層4側において、各後側自然石11及び各間詰石13の凹凸形状に基づき凹凸面を形成している。この区画層14の凹所には裏込め材層4が入り込んでおり、区画層14の凹凸面(後側自然石11等の露出外面全体)と裏込め材層4とは係合されている。このため、連結ユニット構成層5と裏込め材層4との摩擦抵抗(せん断抵抗)は高いものとなっている。この係合関係を高める観点からは、後側自然石11として、形状が不規則とされた割石を用いることが好ましい。この後側自然石11及び前記前側自然石10には、アンカー12を取付けるための取付け穴(図示略)がそれぞれ形成されている。
【0028】
前記アンカー12は、その一端部が前側自然石10の取付け穴に接着剤(例えばホットメルト)をもって取付けられ、その他端部は、後側自然石11の取付け穴に接着剤(例えばホットメルト)をもって取付けられている。このアンカー12としては、一端部に前側自然石10、他端部に後側自然石11を取付けた状態で吊上げても、容易には曲がらない剛性を有する直線状の鉄棒が用いられており、本実施形態においては、全長20cm、径13mm前後のものが用いられている。このアンカー12の両側には、その各端面から軸心延び方向内方側(例えば軸端から45mm前後)においてフランジ部15が一体的にそれぞれ設けられている。この各フランジ部15は、前記各自然石10,11の取付け穴に対するアンカー12の各端部の挿入量を一定とすべく、各自然石10,11の取付け穴の周縁部外面に当接されるべきものであり、簡易的には、アンカー12の軸本体に対して、該アンカー12の軸本体の径よりも内径が大きいナットを挿通させ、それを径方向内方に押し潰してアンカー12の軸本体に一体化させることにより、フランジ部15を形成することができる。この各アンカー12のフランジ部15と各自然石10(11)の取付け穴周縁部外面との間には、アンカー12の各端部の取付け穴への挿入に伴って溢れ出た接着剤が介在されており、その溢れ出た接着剤に基づき各フランジ部15と各自然石10(11)の取付け穴周縁部外面との接着性が高められている(図9参照)。またこの各フランジ部15は、各自然石10(11)の各取付け穴周縁部外面に当接して、アンカー12の各端部が、各自然石10(11)の各取付け穴付近を起点として曲がることを規制しており、アンカー12が折損することが抑制されることになっている。
【0029】
上記連結ユニット8Aは、作業性、迅速性等を考慮して、次のようにして製造される。
先ず、前側自然石10、後側自然石11にそれぞれ取付け穴を形成し、図4に示すように、後側自然石11を、その取付け穴11aが上方を向くようにセットする(位置決め状態)。使用時に液体状態にある液体接着剤を取付け穴11a内に充填保持できるようにするためである。
【0030】
後側自然石11を、その取付け穴11aが上方を向くようにセットし終えると、図5,図6に示すように、その後側自然石11の取付け穴11a内に液体接着剤16を充填し、その液体接着剤16が充填された取付け穴11a内にアンカー12の一端部を挿入する。液体接着剤16を用いることによりアンカー12の一端部を後側自然石11に一体化するためである。この場合、一体化強度を一定に保つべく(後側自然石11の取付け穴に対するアンカー12の一端部の挿入量を一定に保つべく)、アンカー12の一端部が、その一端側のフランジ部15が後側自然石11の取付け穴11aの周縁部外面に当接するまでその取付け穴内11aに挿入されるが、このアンカー12の挿入に伴って液体接着剤16が取付け穴11a外に溢れ出て、その接着剤16はフランジ部15と後側自然石11の取付け穴11a周縁部外面との間に介在される。このため、その溢れ出た接着剤16により後側自然石11とフランジ部15も接着されることになり、これに基づき、後側自然石11とフランジ部15との一体化強度は高まることになる(図6参照)。尚、液体接着剤が固化したものについても符号16を用いている。
本実施形態においては、液体接着剤16として、ホットメルトが用いられる。ホットメルトは、有機溶剤を含まず熱を加えると液体になり、熱を除去すると、短時間で固まる性質を有しており、そのホットメルトの性質を利用して、アンカー12の一端部と後側自然石11との一体化を迅速に行おうとしているのである(本実施形態においては10分程度で固化)。
【0031】
アンカー12の一端部を後側自然石11に一体化し終えると(ホットメルト固化後)、図7に示すように、前側自然石10を、その取付け穴10aが上方に向くようにセットする。液体接着剤16を前側自然石10の取付け穴10a内に充填保持できるようにするためである。
【0032】
前側自然石10のセットを終えると、図8,図9に示すように、その取付け穴10a内に液体接着剤(ホットメルト)16を充填し、その液体接着剤16が充填された取付け穴10a内に、後側自然石11が取付けられたアンカー12の他端部を挿入する。液体接着剤16を用いることによりアンカー12の他端部を前側自然石10に一体化するためである。この場合、前側自然石10の取付け穴10aが上方を向くようにした状態で、その取付け穴10a内に、後側自然石11が取付けられたアンカー12の他端部が挿入されるが、これは、前側自然石10が後側自然石11よりも大きくて、前側自然石10の取付け穴に、後側自然石11が取付けられたアンカー12の他端部を挿入しても、その前側自然石10の安定性に基づき転倒することがないこと、後側自然石11が前側自然石10よりも小さくて軽いことから、アンカー12に作用する荷重を小さくしてアンカー12の強度負担(耐座屈性)をできるだけ少なくできること等を考慮したためである。勿論この場合、アンカー12の強度として、後側自然石11による荷重に耐えるものが要求される。また、この時点では、アンカー12の他端部を前側自然石10の取付け穴10aに挿入するために、後側自然石11の取付け穴11aが下方を向くことになるが、ホットメルトは既に固化しており、そのホットメルトが下方にたれることはない。
【0033】
前側自然石10の取付け穴10a内へのアンカー12の他端部の挿入後、液体接着剤16(ホットメルト)が固まり、前側自然石10に対してアンカー12の他端部が一体化すると、連結ユニット8Aの製造作業は終了する。このように、当該製造方法を用いれば、迅速且つ容易に連結ユニット8Aを製造することができ、当該製造方法は、工場だけでなく、土木構築物の構築現場でも用いることができる。
【0034】
上記連結ユニット8Aは、別の製造態様として、図10に示す打ち込み式の製造方法によっても製造できる。この打ち込み式の製造方法においては、アンカー12として、その両端部にフランジ部15よりも延び方向外方側において湾曲部17を有するものを用意し、そのアンカー12の端部を自然石10(11)の取付け穴10a(11a)内に打ち込むことにより湾曲部17を押し開き、それに基づきアンカー12の端部と自然石10(11)とを一体化する。この際、アンカー12に対する打ち込み荷重は、削岩機18を利用してフランジ部15から加えられることになっており、このため、削岩機18の先端部(チゼル)19は、図11に示すように、アンカー12の軸本体を回避しつつフランジ部15に当接できるように加工されている。勿論この場合も、前述の製造方法同様、アンカー12の一端部を、前側自然石10よりも小さい後側自然石11に先ず取付け、その後、その後側自然石11を取付けたアンカー12の他端部を、取付け穴10aが上方を向く前側自然石10に取付ける。
【0035】
説明を前記連結ユニット構成層5に戻す。連結ユニット構成層5のコンクリート層9は、図1,図2に示すように、前記連結ユニット群8の表面層1Aと区画層14との間に充填された状態で配置されている。このため、コンクリート層9は、各連結ユニット8Aの前側自然石10と後側自然石11との間において、隣り合う前側自然石10間が形成する隙間空間(目地)、隣り合う間詰石13と後側自然石11とが形成する隙間空間(目地)にも入り込んでおり、コンクリート層9は、各連結ユニット8Aの前側自然石10と後側自然石11とにより前後に挟持された状態となっている。これにより、これら各連結ユニット8A及びコンクリート層9は、連結ユニット構成層5として、強固な一体関係を形成している。
【0036】
その一方、隣り合う前側自然石10間が形成する各表面側隙間空間21は、図12に示すように、後述の構築方法に基づき、コンクリート層9が入り込まない深いものとなっている。前側自然石10の脱落を、後側自然石11とコンクリート層9との係合により防止して、前側自然石10の脱落防止のために、各前側自然石10の体積の半分以上をコンクリート層9に埋め込まなくてもよくなる一方、そのことを利用して、その各表面側隙間空間21を動植物の生息生育空間として有効に利用したいからである。このため、表面層1Aをなす各前側自然石10は、コンクリート層9の表面からできるだけ突出され、表面層の1Aの各表面側隙間空間21は深いものとされている。その各表面側隙間空間21は、動物(生物)の生息空間、植物の生育空間として適宜、選択して利用されており、特に、植物の生育空間として利用する場合には、図12に示すように、その表面側隙間空間21に土22が充填され、その土22により植物23の生育が促進されている。
【0037】
前記連結ユニット構成層5には、図12に示すように、複数の配水管24(図12中では1つを図示)が貫通した状態で設けられている。この各配水管24は、一定領域(面積)毎に計画的に配置されており、その各一端開口は、裏込め材層4に臨み、その各他端開口は表面層1A外方に臨んでいる。これにより、裏込め材層4側からの排水は、連結ユニット構成層5(主としてコンクリート層9)により抑制されるものの、各排水管24により表面層1A外方に排出される。本実施形態においては、前述の表面側隙間空間21での植物23の育成を考慮し、計画的な配水管24の設置により、配水管24による排水が、その表面側隙間空間21に供給されることになっている。
【0038】
前記前記連結ユニット構成層5及び前記裏込め材層4の上端面には、図1に示すように、天端コンクリート層25が設けられている。天端コンクリート層25は、最上段の連結ユニット構成層5及び裏込め材層4を上方側から覆い、天端面(上面)を確保している。
尚、表面層1Aの下部側については、施工後に埋め戻されることになっている。
【0039】
したがって、このような護岸1においては、前側自然石10により形成される表面層1A及びコンクリート層9により強固な護岸機能を確保できることは勿論、各前側自然石10と各後側自然石11とが、コンクリート層9を前後に挟持するように配置されて、後側自然石11がコンクリート層9に係合されていることから、各前側自然石10が前方に移動することを規制できることになり、前方移動規制のために各前側自然石10の体積の半分以上をコンクリート層9に埋め込むことまでする必要性(構成)をなくすことができる。これにより、コンクリート層9表面からの各前側自然石10の突出量を大きくして、隣り合う前側自然石10同士が形成する各表面側隙間空間(目地)21を深い状態をもって確保でき、その各表面側隙間空間21を、動植物生息生育空間等として、利用価値を高めることができる。この結果、護岸1を周囲環境により調和させることができる。勿論この場合、隣り合う前側自然石10同士が形成する各表面側隙間空間(目地)21を深い状態をもって確保できることから、陰影感を高め、周囲自然景観に調和させることができる。
【0040】
また、護岸1は、各後側自然石11がコンクリート層9に一体化され、その各後側自然石11の露出外面全体が裏込め材層4に係合されていることから、各後側自然石11の露出外面が形成する凹凸面に基づき、各後側自然石11よりも前方側の層(区画層14、コンクリート層9及び表面層1A)と裏込め材層4表面との摩擦抵抗(せん断抵抗)を高めることができ、護岸1の安定性を高めることができる。
【0041】
さらに、通水性を有する裏込め材層4と、複数の前側自然石10が形成する表面層1Aとが排水管24を介して連通されていることから、コンクリート層9により裏込め材層4側から表面層側1Aへの排水が困難となるものの、その排水を排水管24を通じて外部の所定個所に計画的に排出できる。しかも、その排水が、表面側隙間空間21内の植物に供給されることから、その排水を、植物の生育促進に有効に利用できる。
【0042】
このような護岸11は、図13に示す工程図に従い、構築(構築)される。
先ず、図13,図14に示すように、切土面2及び設置面3を形成し、その後、設置面3上に護岸1の構築区間の全体に亘って基礎コンクリートブロック6を形成すると共に、その基礎コンクリートブロック6の延び方向両側に側壁7(図16参照)を形成する。
【0043】
次に、前記連結ユニット8Aを複数用意し、その複数の連結ユニット8Aを用いて、一段目となる連結ユニット8Aの列を、図13,図15,図16に示すように、基礎コンクリートブロック6の支持面6a上に配置する。このとき、一段目の各連結ユニット8Aは、前側自然石10が後側自然石11に対して前側となるように配置されると共に、各連結ユニット8Aの隣り合う左右の後側自然石11間、その後側自然石11と基礎コンクリートブロック6との間等に間詰材としての間詰石13が詰められる。これにより、各連結ユニット8Aの後側自然石11の位置、高さ調整等が行われ、各連結ユニット8Aは、基礎コンクリートブロック6上の所定位置に所定の傾斜姿勢で設置される。
【0044】
上記一段目の連結ユニット8Aの列の設置を終えると、その一段目の連結ユニット8A列と切土面2との間において、図13,図15に示すように、その連結ユニット8Aの後側自然石11及び間詰石13を裏型枠として、その後側自然石11の高さまで裏込め材を投入する。以下、同様に、一段目の連結ユニット8A列の上に二段目、三段目の連結ユニット8A列が積み上げられ、その各段の作業毎に、その各段の後側自然石11の高さ調整等のために、間詰石13が各段の後側自然石11間に詰められると共に、その各段の後側自然石11等の背面側に裏込め材が投入される。
【0045】
上記連結ユニット8Aの積み上げ作業には、バックホウ等の吊上げ機械27、吊具28等が用いられる。具体的には、設置面3の所定個所に、複数(10個程度)の連結ユニット8Aを吊上げ搬送具(図示略)を用いて一旦、搬送した後、図15に示すように、そのうちの1つの連結ユニット8Aを吊具(土木用吊具)28に保持し、その吊具28をワイヤ29を介して吊上げ機械27により再び吊上げ、その吊上げられた連結ユニット8Aを作業者のアシストを受けつつ積み重ね個所に降ろすことになる。
【0046】
上記吊具28としては、連結ユニット8Aの積み重ね作業を正確且つ容易に行えるようにすべく、連結ユニット8Aをそのアンカー12が略水平状態となるように支持する機能を有するものが用いられる。このため、吊具28は、図17〜図19に示すように、基本的には、筒状部としての円筒部30と、その円筒部30に取付けられる板状の一定幅の連結部31と、を備えるものとなっている。
【0047】
前記円筒部30は、その軸心延び方向長さが前記連結ユニット8Aにおけるアンカー12の両フランジ部15間よりもやや短い長さとされ、その円筒部30の側部には、その軸心延び方向全長に亘ってスリット状の開口32が形成されている。この円筒部30のスリット状の開口32の幅は、連結ユニット8Aのアンカー12の径よりもやや広くされており、その開口32を介して連結ユニット8Aのアンカー12が円筒部30内に挿入可能となっている。
【0048】
前記連結部31は、基部部分(下部)33と、その基部部分33から連続して延びる傾斜部分(上部)34とを備えている。基部部分33は、円筒部30の延び方向略中央位置において、円筒部30の外周面上部に取付けられており、その基部部分33は、その幅方向を円筒部30の軸心延び方向に向けつつ上方に延びている。傾斜部分34は、上方に向かうに従って円筒部30の軸心延び方向の一方側に延びるように傾斜されており、その傾斜部分34には複数の連結孔35が、その延び方向に所定間隔毎に形成されている。この複数の連結孔35は、吊上げ機械27(ワイヤ29)の連結点となるべきものであり、その連結孔35のいずれかに、連結ユニット8Aの前側自然石10と後側自然石11との重量(大小)を考慮(重心位置を考慮)して、ワイヤ29がフック等(図示略)を介して適宜、連結される。尚、図18中、符号45は補強部材である。
【0049】
このような吊具28を使用して連結ユニット8Aを吊上げるに際しては、連結ユニット8Aのアンカー12を、前側自然石10(径が大きい側)を傾斜部分34が傾斜する側(円筒部30の軸心方向の一方側)に向けつつ、円筒部30内にスリット状の開口32から挿入する。そして、複数の連結孔35のうちから、円筒部30の軸心延び方向において連結ユニット8Aの略重心位置に位置するものを選び、その連結孔35にワイヤ29を連結して、吊具28を吊上げ機械27により吊り上げる。これにより、連結ユニット8Aは、そのアンカー12が円筒部30(の下部)に支持されると共に、そのフランジ部15と円筒部30端面との当接関係により該円筒部30の軸心延び方向に移動することが規制される。またこの際、上述の連結孔35の選択によるワイヤ29の位置調整により、連結ユニット8A(アンカー12)は略水平状態となる。
しかも、この吊具28による連結ユニット8Aの吊上げ中においては、円筒部30に対して、アンカー12をその軸心を中心として容易に相対回動させることができる。このため、前側自然石10の向き(姿勢)を、吊上げ中に、連結ユニット8Aの設置時における状態として好ましいものにすることができ、連結ユニット8Aの設置に際しては、吊上げ時において調整した状態のままで連結ユニット8Aを降ろすことができる。
この結果、連結ユニット8Aの積み重ね設置作業(降ろし作業)は、正確且つ容易に行えることになり、積み重ね設置作業を向上させることができる。
【0050】
本実施形態に係る吊具28においては、さらに、図17〜図19に示すように、円筒部30の外周にその全長に亘って外筒部材41が相対回動可能に嵌合されている。この外筒部材41の側部にも、その軸心延び方向全長に亘ってスリット状の開口42が形成されており、そのスリット状の開口42は、円筒部30のスリット状の開口32と略同じ開口とされている。また、この外筒部材41の外周面には、そのスリット状の開口42から周回り方向に一定幅を維持しつつ延びるガイド孔43が形成されており、そのガイド孔43に連結部31の基部部分33が案内されるようにしつつ上方に貫通されている。さらに、外筒部材41には棒状の重錘44が、連結部31よりも外筒部材41の開口42側において、ガイド孔43を横切るように取付けられている。これに基づき、外力を加えて外筒部材41を円筒部30に対して相対回動させ、連結部31の基部部分33に重錘44を当接させたときには、円筒部30のスリット状の開口32と外筒部材41のスリット状の開口42とが重なることになり、その一方、その状態から外力を解除したときには、重錘44により外筒部材41が円筒部30に対して相対回動し、外筒部材41(ガイド孔43の幅方向両側部分)が円筒部30のスリット状の開口32を塞ぐことになっている。
【0051】
このため、連結ユニット8Aのアンカー12を吊具12に保持するときには、作業者が外力を加えることにより外筒部材41を円筒部30に対して相対回動させ、円筒部30のスリット状の開口32と外筒部材41のスリット状の開口42とを重ならせる必要があるが、これについては、連結部31の基部部分33と重錘44との当接に基づき、その状態を簡単に得ることができる。さらには、吊具28の吊上げ搬送時等、外筒部材41に外力が作用しないときには、外筒部材41(ガイド孔43の幅方向両側部分)が、重錘44に基づき円筒部30のスリット状の開口を常時塞ぐことになり、連結ユニット8Aが吊具28から脱落することを確実に防止できることになる。
【0052】
また、本実施形態においては、作業者の作業負担を軽減すべく、図15に示すように、吊上げ機械27と吊具28との間に、連結ユニット8Aの吊上げられた状態での上下移動荷重を軽減できる荷重軽減装置(通称スプリングバランサ)36が介在されている。この荷重軽減装置36は、ばね(ぜんまい式ばね、コイル式ばね)等を用いることにより、本来の荷重よりも少ない荷重をもって連結ユニット8Aを上下動させる機能を有しており、この荷重軽減装置36の機能に基づき作業者の負担が減らされることになり、連結ユニット8Aの積み重ね作業を正確に行うことが可能となる。
【0053】
説明を構築工程に戻す。連結ユニット8A列の積み上げ及び裏込め材の投入が三段目まで完了すると、各隣り合う前側自然石10が形成する表面側隙間空間(目地)21に、図20に示すように、やし繊維布等の詰め物37を詰める。後工程において充填(注入)するコンクリートが表面層1Aの表面側に漏れ出ることを確実に防止するためである。
【0054】
表面層1Aの各表面側隙間空間21に詰め物37を詰め終わると、図13,図20に示すように、三段目の連結ユニット8A列の上方側から、表面層1A(積み上げられた前側自然石10)と区画層14(積み上げられた後側自然石11、間詰石13)との間にコンクリートを注入(打設)する。三段目までの範囲で、表面層1Aと区画層14との間にコンクリート層9を形成し、そのコンクリート層9に各連結ユニット8Aの後側自然石11を係合させて、各連結ユニット8Aの前側自然石10が前方に脱落することを防止するためである。勿論この場合、表面層1A、コンクリート層9及び区画層14は一体となって連結ユニット構成層5を構成することになり、強固な護岸1機能を発揮することになる。
このとき、表面層1Aの表面側においては、前工程で、表面層1Aの表面側隙間空間21に詰め物37がなされていることから、各表面側隙間空間21にコンクリートは漏れ出ることが抑制され、その各表面側隙間空間21は表面から深い状態が維持される。
またこのとき、コンクリートの注入に伴い、空気がコンクリート内に取り込まれるが、その空気の気泡は、図20に示すように、コンクリート注入側である上方側だけでなく、区画層14の隙間(各連結ユニット8Aの後側自然石11間、後側自然石11と間詰石13との間の隙間等)を介して通気性を有する裏込め材層4に逃げることになる。特に、コンクリートの注入後、バイブレータを用いることにより、コンクリート内の気泡を、効果的に排出することができる。
【0055】
このように三段目の連結ユニット8A列に対するコンクリートの注入を終えると、その三段目の連結ユニット8A列からさらにこれまで行ってきた一連の工程(連結ユニット8Aの三段の積み上げ、裏込め材の投入、コンクリート注入等)を再び繰り返す。連結ユニット8Aの積み重ねの安定性を考慮しつつ、護岸1を所定の高さのものにするためである。上記作業により連結ユニット8Aの積み上げ高さが所定の高さに至ると、その上面に天端コンクリート層9を形成すると共に、当該護岸1の下部前面側を埋め戻す。そして、各表面側隙間空間21から詰め物37を取り除き、その表面側隙間空間21に対して、適宜、土(好ましくは植物の含まれた土)を詰める。これにより、当該護岸1の構築作業は終了することになる。
【0056】
したがって、このような構築方法を用いることにより、前述の護岸1を的確に構築できる。本実施形態においては、コンクリートの充填前に、表面層1Aにおける各表面側隙間空間(目地)21に詰め物37を詰めることから、コンクリートが隣り合う各前側自然石10の隙間を通じて外方に出ようとすることを詰め物37により確実に規制でき、その各詰め物37を取り除くことにより、隣り合う前側自然石10の各表面側隙間空間21を、動植物の生息生育空間等として利用価値の高い深さの深いものに形成できることになる。特に、この後、各表面側隙間空間21に土(土類)を詰められた個所においては、植物の育成の促進を図ることができることになる。
【0057】
また、護岸1の3段分を構築するに際して、その表面層1Aと区画層14とを型枠として、その間に1回のコンクリート充填を行うだけの作業で足りることになり、各段毎に、コンクリートの充填も、前側自然石10の体積の半分以上をコンクリートに埋め込む作業も必要でなくなる。このため、作業負担を軽減できると共に、構築時間を短縮できる。
【0058】
さらには、本実施形態においては、コンクリートの充填前に、区画層14の背面側に隣接させて、通気性を有する裏込め材層4を形成していることから、区画層14(後側自然石11及び間詰石13)を利用(裏型枠としての利用)して裏込め材層4を支持(裏込め材の投入)できるばかりでなく、コンクリートの充填に際して、空気を、上方側(裏込め材投入側)だけでなく、各後側自然石11、間詰石13の隙間を介して裏込め材層4にも逃がすことができ、コンクリート(コンクリート層)に気泡(空気)が取り込まれることを、より抑制できる。
【0059】
しかもこの場合、3段の連結ユニットの後側自然石11等(区画層14)が裏型枠を兼ねることになり、各段毎の裏型枠の設置、撤去を不要にできる。このため、区画層14の背面側に裏込め材層4を形成する場合においても、作業負担の軽減、構築時間の短縮化を図ることができる。
【0060】
図21、図22は第2実施形態、図23〜図27は第3実施形態、図28〜図32は第4実施形態を示す。この各実施形態において前記第1実施形態と同一構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0061】
図21、図22を示す第2実施形態には、吊具ユニット50として、支持部材51と複数のワイヤ52とを利用することにより複数の前述の第1実施形態に係る吊具28を吊上げるようにしたものが示されている。すなわち、吊具ユニット50においては、吊上げ機械27によりワイヤ29を介して長尺の支持部材51が略水平状態をもって吊上げられており、その支持部材51に複数のワイヤ52がその一端部をもって連結されている。この各ワイヤ52は、その他端側が等しい長さをもって垂下しており、その各他端部には前記吊具28(連結部31)がフック等(図示略)を介して連結されている。このため、図21に示すように、複数の吊具28を利用して複数の連結ユニット8Aを吊上げることができ、その各連結ユニット8Aの前側自然石10の向き(姿勢)を、吊上げ中に、各連結ユニット8Aの設置時における状態として好ましいものに調整した上で、その複数の連結ユニット8Aを図22に示すように一度に降ろすことができる。これにより、連結ユニット8Aの設置時の作業性を高めることができる。
【0062】
図23〜図27に示す第3実施形態は、第2実施形態の変形例を示す。この第3実施形態においては、吊上げ機械27により支持部材51が水平状態に吊り上げられ、各吊具28は、長さが異なるワイヤ52により連結されている。この場合、各ワイヤ52は、支持部材51の長手方向一方側(図23中、左側)のものよりも長手方向他方側(図23中、右側)のものの方が長くなっており、各吊具28は、支持部材51の長手方向一方側から他方側に離れるものほど、低い位置となるように設定されている。このため、各吊具28の全てに連結ユニット8Aを保持して吊上げた後、連結ユニット8Aを、図24〜図27に示すように、支持部材51の他方側から一方側に向けて順番に1個ずつ降ろすことができ、連結ユニット8Aの設置時の据え付け、積み重ね作業を的確に行うことができる。この場合、連結ユニット8Aを降ろした吊具28及びワイヤ52に関しては、次の積み重ね作業の邪魔とならないように、支持部材51の引っ掛け具(図示略)に折り畳んだ状態で引っ掛けられる(図24〜図27参照)。
【0063】
図28〜図32に示す第4実施形態は、第3実施形態の変形例を示す。この第4実施形態においては、支持部材51の両端部を連結した連結ワイヤ53に対するワイヤ29の連結点Pを調整することにより、支持部材51の他方側(図28中、右側)が、その一方側(図28中、左側)よりも低い位置となるように設定されている(傾斜配置)。このため、この第4実施形態においても、各吊具28の全てに連結ユニット8Aを保持して吊上げた後、連結ユニット8Aを、図28〜図32に示すように、支持部材51の他方側から一方側に向けて順番に1個ずつ降ろすことができるが、それに伴って、支持部材51は、水平状態(図30)を経て反対側に傾斜することになり、支持部材51の傾きを、連結ユニット8Aの降ろし作業開始から終了までの間において、水平状態の近辺に抑えることができる。このため、連結ユニット8Aの設置時の据え付け、積み重ね作業時において、支持部材51の吊上げ状態の安定化を図ることができる。
この場合、隣り合う吊具28間の間隔、高低差は、連結ユニット8Aの据え付け、積み重ね作業の邪魔にならないように設定されている。勿論この場合も、連結ユニット8Aを降ろした吊具28及びワイヤ52に関しては、次の積み重ね作業の邪魔とならないように、支持部材51の引っ掛け具(図示略)に折り畳んだ状態で引っ掛けられる(図29〜図32参照)。
【0064】
以上実施形態について説明したが本発明にあっては、次のような態様を包含する。
(1)塊状部材、控え部材として、自然石の他に、擬石、コンクリートブロック等を用いること。
(2)本発明を、護岸1に限らず擁壁等に適用すること。
(3)区画層14を、控え部材としての後側自然石11だけの積み重ねにより構成すること。
(4)コンクリートの充填を、連結ユニット8Aの3段毎に限らず、適時段毎の積み重ね後に行うこと。
(5)吊具28が吊上げ搬送する連結ユニット(土木構築物用ユニット)8Aとして、塊状部材が石(擬石を含む)、コンクリートブロック等であり、控え部材がストッパパネル等からなるもの。
(6)コンクリート充填前に、各表面側隙間空間21に詰め物37として土(土類:好ましくは植物の種子を含むもの)を詰めること。これにより、コンクリート充填時にコンクリートが外部に漏れることを確実に防止できるだけでなく、コンクリートの充填後においても、詰め物37としての土を植物の育成促進に役立たせることができる。しかもこの場合、詰め物37としての土を、コンクリート充填後に取り除く必要がなくなり、構築工程の簡略化を図ることもできる。
【0065】
尚、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましい或は利点として記載されたものに対応したものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】第1実施形態に係る護岸を説明する縦断面図。
【図2】第1実施形態に係る護岸の下側部分を示す拡大縦断面図。
【図3】第1実施形態に係る連結ユニットを説明する説明図。
【図4】第1実施形態に係る連結ユニットの製造工程を説明する説明図。
【図5】図4の続きの製造工程を説明する説明図。
【図6】図5の続きの製造工程を説明する説明図。
【図7】図6の続きの製造工程を説明する説明図。
【図8】図7の続きの製造工程を説明する説明図。
【図9】図8の続きの製造工程を説明する説明図。
【図10】別の実施形態に係る連結ユニットの製造工程を説明する説明図。
【図11】図10における内容を平面的に説明する図。
【図12】第1実施形態に係る護岸を示す部分拡大縦断面図。
【図13】第1実施形態に係る護岸の構築工程を説明する工程図。
【図14】第1実施形態に係る護岸の構築工程を説明する説明図。
【図15】第1実施形態に係る連結ユニットの積み重ね作業を説明する説明図。
【図16】一段目の連結ユニットの列の設置状態を示す斜視図。
【図17】第1実施形態に係る吊具による連結ユニットの吊り上げ状態を示す斜視図。
【図18】第1実施形態に係る吊具の背面を示す背面図。
【図19】図18の左側面図。
【図20】積み重ねられた連結ユニットへのコンクリートの注入及び空気の排出を説明する説明図。
【図21】第2実施形態に係る吊具ユニットを示す説明図。
【図22】図21の続きの工程を説明する説明図。
【図23】第3実施形態に係る吊具ユニットを示す説明図。
【図24】図23の続きの工程を説明する説明図。
【図25】図24の続きの工程を説明する説明図。
【図26】図25の続きの工程を説明する説明図。
【図27】図26の続きの工程を説明する説明図。
【図28】第4実施形態に係る吊具ユニットを示す説明図。
【図29】図28の続きの工程を説明する説明図。
【図30】図29の続きの工程を説明する説明図。
【図31】図30の続きの工程を説明する説明図。
【図32】図31の続きの工程を説明する説明図。
【符号の説明】
【0067】
1 護岸(土木構築物)
1A 表面層
4 裏込め材層
8A 連結ユニット(土木構築物用ユニット)
9 コンクリート層
10 前側自然石(塊状部材)
11 後側自然石(控え部材)
12 軸状部材(アンカー)
13 間詰石(間詰材)
14 区画層
16 液体接着剤(ホットメルト)
21 表面側隙間空間
22 土
23 植物
24 配水管
27 吊上げ機械
28 吊具
37 詰め物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜した施工面に対してコンクリート層が敷設され、該コンクリート層に複数の塊状部材が表面層として該コンクリート層の表面から露出され且つ積み上げられた状態をもって保持されている土木構築物において、
前記各塊状部材に、該各塊状部材の背面側において軸状部材を介して塊状の控え部材がそれぞれ連結され、
前記各塊状部材と前記各控え部材とが、前記コンクリート層を前後に挟持するように配置されている、
ことを特徴とする土木構築物。
【請求項2】
請求項1において、
前記各控え部材の露出外面全体が、前記施工面に対して係合されている、
ことを特徴とする土木構築物。
【請求項3】
請求項2において、
前記施工面の表面が、通水性を有する裏込め材層により形成され、
前記複数の塊状部材が形成する表面層の外方と前記裏込め材層とが排水管を介して連通されている、
ことを特徴とする土木構築物。
【請求項4】
傾斜した施工面に対してコンクリート層が敷設され、該コンクリート層に複数の塊状部材が表面層として該コンクリート層の表面から露出され且つ積み上げられた状態をもって保持されている土木構築物の構築方法において、
連結ユニットとして、塊状部材に軸状部材を介して塊状の控え部材が連結されたものを複数用意し、
前記連結ユニットを、前記施工面の前側において、該連結ユニットの塊状部材が該控え部材よりも前側に配置されるようにしつつ複数段に亘って積み重ねて、該各連結ユニットの塊状部材により表面層を形成すると共に、該各連結ユニットの控え部材により区画層を形成し、
この後、前記表面層と前記区画層との間にコンクリートを充填する、
ことを特徴とする土木構築物の構築方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記コンクリートの充填前に、前記区画層の背面側に隣接させて、通気性を有する裏込め材層を形成する、
ことを特徴とする土木構築物の構築方法。
【請求項6】
請求項4において、
前記コンクリートの充填前に、前記表面層における隣り合う塊状部材が形成する表面側隙間空間に詰め物を詰め、
前記コンクリートの充填後、前記表面側隙間空間から前記詰め物を取り除く、
ことを特徴とする土木構築物の構築方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記詰め物を取り除いた表面側隙間空間に土類を充填する、
ことを特徴とする土木構築物の構築方法。
【請求項8】
請求項4において、
前記コンクリートの充填前に、前記表面層における隣り合う塊状部材が形成する表面側隙間空間に、詰め物として土類を詰める、
ことを特徴とする土木構築物の構築方法。
【請求項9】
請求項8において、
前記土類に植物の種子を予め含めておく、
ことを特徴とする土木構築物の構築方法。
【請求項10】
請求項4において、
前記連結ユニットの軸状部材として、該連結ユニットをその軸状部材をもって吊上げたとしても撓まない剛性を有するものを用いる、
ことを特徴とする土木構築物の構築方法。
【請求項11】
請求項10において、
前記連結ユニットを積み重ねるに際し、吊上げ機械により吊上げられると共に該連結ユニットを着脱可能に支持する吊具を用いることとし、
前記吊具が前記連結ユニットを支持するに際しては、該吊具が前記連結ユニットの軸状部材を回転可能に支持する、
ことを特徴とする土木構築物の構築方法。
【請求項12】
請求項11において、
前記吊上げ機械と前記吊具との間に、前記連結ユニットの吊上げられた状態での上下移動荷重を軽減できる荷重軽減装置を介在させる、
ことを特徴とする土木構築物の構築方法。
【請求項13】
請求項4において、
前記連結ユニットの控え部材として、該連結ユニットの塊状部材よりも小さい径のものを用い、
前記各連結ユニットを積み重ねるに際して、隣り合う控え部材間に間詰材を介在させる、
ことを特徴とする土木構築物の構築方法。
【請求項14】
請求項4において、
前記複数段の連結ユニットの積み重ね、及び前記コンクリートの充填からなる一連の工程を複数回に亘って繰り返す、
ことを特徴とする土木構築物の構築方法。
【請求項1】
傾斜した施工面に対してコンクリート層が敷設され、該コンクリート層に複数の塊状部材が表面層として該コンクリート層の表面から露出され且つ積み上げられた状態をもって保持されている土木構築物において、
前記各塊状部材に、該各塊状部材の背面側において軸状部材を介して塊状の控え部材がそれぞれ連結され、
前記各塊状部材と前記各控え部材とが、前記コンクリート層を前後に挟持するように配置されている、
ことを特徴とする土木構築物。
【請求項2】
請求項1において、
前記各控え部材の露出外面全体が、前記施工面に対して係合されている、
ことを特徴とする土木構築物。
【請求項3】
請求項2において、
前記施工面の表面が、通水性を有する裏込め材層により形成され、
前記複数の塊状部材が形成する表面層の外方と前記裏込め材層とが排水管を介して連通されている、
ことを特徴とする土木構築物。
【請求項4】
傾斜した施工面に対してコンクリート層が敷設され、該コンクリート層に複数の塊状部材が表面層として該コンクリート層の表面から露出され且つ積み上げられた状態をもって保持されている土木構築物の構築方法において、
連結ユニットとして、塊状部材に軸状部材を介して塊状の控え部材が連結されたものを複数用意し、
前記連結ユニットを、前記施工面の前側において、該連結ユニットの塊状部材が該控え部材よりも前側に配置されるようにしつつ複数段に亘って積み重ねて、該各連結ユニットの塊状部材により表面層を形成すると共に、該各連結ユニットの控え部材により区画層を形成し、
この後、前記表面層と前記区画層との間にコンクリートを充填する、
ことを特徴とする土木構築物の構築方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記コンクリートの充填前に、前記区画層の背面側に隣接させて、通気性を有する裏込め材層を形成する、
ことを特徴とする土木構築物の構築方法。
【請求項6】
請求項4において、
前記コンクリートの充填前に、前記表面層における隣り合う塊状部材が形成する表面側隙間空間に詰め物を詰め、
前記コンクリートの充填後、前記表面側隙間空間から前記詰め物を取り除く、
ことを特徴とする土木構築物の構築方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記詰め物を取り除いた表面側隙間空間に土類を充填する、
ことを特徴とする土木構築物の構築方法。
【請求項8】
請求項4において、
前記コンクリートの充填前に、前記表面層における隣り合う塊状部材が形成する表面側隙間空間に、詰め物として土類を詰める、
ことを特徴とする土木構築物の構築方法。
【請求項9】
請求項8において、
前記土類に植物の種子を予め含めておく、
ことを特徴とする土木構築物の構築方法。
【請求項10】
請求項4において、
前記連結ユニットの軸状部材として、該連結ユニットをその軸状部材をもって吊上げたとしても撓まない剛性を有するものを用いる、
ことを特徴とする土木構築物の構築方法。
【請求項11】
請求項10において、
前記連結ユニットを積み重ねるに際し、吊上げ機械により吊上げられると共に該連結ユニットを着脱可能に支持する吊具を用いることとし、
前記吊具が前記連結ユニットを支持するに際しては、該吊具が前記連結ユニットの軸状部材を回転可能に支持する、
ことを特徴とする土木構築物の構築方法。
【請求項12】
請求項11において、
前記吊上げ機械と前記吊具との間に、前記連結ユニットの吊上げられた状態での上下移動荷重を軽減できる荷重軽減装置を介在させる、
ことを特徴とする土木構築物の構築方法。
【請求項13】
請求項4において、
前記連結ユニットの控え部材として、該連結ユニットの塊状部材よりも小さい径のものを用い、
前記各連結ユニットを積み重ねるに際して、隣り合う控え部材間に間詰材を介在させる、
ことを特徴とする土木構築物の構築方法。
【請求項14】
請求項4において、
前記複数段の連結ユニットの積み重ね、及び前記コンクリートの充填からなる一連の工程を複数回に亘って繰り返す、
ことを特徴とする土木構築物の構築方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【公開番号】特開2010−144425(P2010−144425A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322565(P2008−322565)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(397045769)環境工学株式会社 (35)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(397045769)環境工学株式会社 (35)
【Fターム(参考)】
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