土留め工事用硬化剤注入管および土留め工法
【課題】この発明は、硬化剤注入管の土留め部材への取付けを短時間で実施でき、簡易でコストのかからない土留め工法を提供することを目的とする。
【解決手段】上述の課題を解決するため、この発明の土留め工事用硬化剤注入管1は、土留め部材30に当接する平面状の土留め部材取り付け面6と、複数の液体を独立に送り込む複数の流路7,8とを有し、複数の分割ロッド3に分割されており、分割ロッド3同士を軸方向に挿し込むことによって各流路同士7,8をつなぐように接続する接続部材5を有するものである。
【解決手段】上述の課題を解決するため、この発明の土留め工事用硬化剤注入管1は、土留め部材30に当接する平面状の土留め部材取り付け面6と、複数の液体を独立に送り込む複数の流路7,8とを有し、複数の分割ロッド3に分割されており、分割ロッド3同士を軸方向に挿し込むことによって各流路同士7,8をつなぐように接続する接続部材5を有するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鋼矢板などで土留めを行いながら地中に水道管、ガス管、側溝、カルバートボックス等を埋設する土留め工事の施工に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中に水道管、ガス管、カルバートボックス、下水管、側溝等を埋設する工事においては、まず溝の両壁を構成すべき位置に簡易矢板、鉄板、シートパイル等の土留め部材を設置して溝壁が崩れるのを防止した上で、地面を掘削して溝を形成し、溝内での水道管等の敷設作業が行われる。敷設作業が終了し溝を埋めなおした後に、土留め部材は地中から引き抜かれる。しかし、地中には土留め部材の体積分の空隙が生じることになる。この空隙の問題はこれまでほとんど検討されていない。この空隙を埋めるために周囲の土砂が移動し、さまざまな問題が生じうる。例えば、時間とともに溝内に充填した砂や土砂が空隙を埋めるために移動し、溝の上に敷かれた舗装面が沈下して、道路表面にくぼみを生じる。また、溝の外の土砂が移動することにより、溝の両側の地盤状態に変動をきたし、近くの建造物に影響を与えうる。さらに、周囲の地下水の状態が変われば、広範囲での影響も発生する。地下水は最も通りやすいところに水路を形成するので、土留め部材の引き抜きによって生じた空隙や、それを埋めるために移動した土砂によってできた水の通りやすい場所に新たな水路を形成し、周囲の地下水の流れが大きく変動する。この地下水の状態の変動によってそれまで保たれていた周囲の地盤の地圧のバランスがくずれ、地盤沈下等の地盤変動が生じ、そこに建造されている塀や建物等を変形させることになる。
【0003】
そこで、シートパイルによる空隙を生じさせないために、シートパイルを引き抜かず、施工後も地中へ残すことが考えられる。しかし、地中に残されたシートパイルは時間とともに酸化・腐食により消失し、いずれは上述のような問題が生じることに変わりがない。また、シートパイルの素材である金属が土壌や地下水等を汚染することになる。シートパイルを使い捨てにすることは資源としても無駄な消費である。
【0004】
引用文献1(特開昭64−58713)には、鋼矢板の引抜き時に土砂を落下させて空隙を埋めることが記載されている。引用文献2(特開昭57−108311)および引用文献3(特開昭57−108312)には「地盤圧密剤」を注して空洞を埋めることが、引用文献4(特開昭49−49404)には、「充填材」を注入することが記載されている。さらに、引用文献5(特開2005−290963)には、硬化剤を注入することが記載されている。
【特許文献1】特開昭64−58713
【特許文献2】特開昭57−108311
【特許文献3】特開昭57−108312
【特許文献4】特開昭49−49404
【特許文献5】特開2005−290963
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の方法は実施が不可能なものである。土砂を地中に埋め戻すにあたっては、約25cmごとに点圧器で点圧を行い、さらに水をかけてしめ固めなければならない。しかし、鋼矢板の引抜き跡に入れられた土砂に対して点圧を行うことはできない。また、鋼矢板の引抜き中や引抜き直後に地中に水を供給すれば、かえって地盤沈下を加速させることになる。点圧も水しめも行われない土砂は空隙が多く、地盤変動を防止することができない。
【0006】
特許文献2および特許文献3には「地盤圧密剤」が記載されているが、これらの文献には「地盤圧密剤」についての具体的な説明は一切なく、結局、どのように実施すべきかは不明である。特許文献4の「充填材」についても同文献中に記載はなく、どのように実施すべきかは不明である。
【0007】
特許文献5には、土留め部材、硬化剤注入管、作業手順、硬化剤の種類などが具体的に示されており、初めて、実施可能な技術が提示されている。しかし、同文献に記載されている硬化剤注入管は円柱状のものである。特許文献1から特許文献4に記載された管もすべて円柱状である。
【0008】
しかし、円柱状の形状の土硬化剤注入管を留め部材への取付けを行うことには困難を伴う。図13は円柱状の硬化剤注入管の取り付け作業を示す斜視図である。鋼矢板などの土留め部材を施工業者自身が所有している場合は少なく、通常は、施工時にレンタル業者より借り受け、施工終了後に返却する。したがって、硬化剤注入管の土留め部材への取り付けも施工現場で行われる。鋼矢板を地面に置き、その上に硬化剤注入管をのせてから固定する。しかし、円柱状の硬化剤注入管は転がりやすい。鋼矢板は20mもの長さを有するものあり、これを完全に水平な状態で保持できる場所が施工現場に常にあるわけではない。したがって、硬化剤注入管の取付けが完了するまで、作業者が硬化剤注入管を手で押さえていなくてはならない。また、建て込みや引抜きをおこなう機械のチャックが鋼矢板の中央部の面をつかむために使用されるので、硬化剤注入管は鋼矢板の側面に取り付けることが好ましいが、側面は傾斜しているので、円柱状の硬化剤注入管の取り付け作業はより困難となる。
【0009】
また、長い硬化剤注入管であれば複数のロッドに分割し、鋼矢板の上で各ロッドを接続した後に取り付けることになる。通常の硬化剤注入管で用いられるネジ式の接続方式であると、6以上のネジ山を係合させる必要がある。ロッドをパイレーン等の工具でつかんで回転させる必要があるが、そのためには、ロッドと鋼矢板の間に当て板をおいてパイレーンを回転させるための空間を確保することになる。全部のロッドを接続したら、当て板を取り除き、硬化剤注入管を鋼矢板に押し当て、溶接によって固定する。この作業の全期間中、硬化剤注入管が転がらないように、複数の作業者が手で硬化剤注入管を手で押さえていなくてはならない。
【0010】
この発明は、硬化剤注入管の土留め部材への取付けを短時間で実施でき、簡易でコストのかからない土留め工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するため、この発明の土留め工事用硬化剤注入管は、硬化剤を送り込む流路を有し、複数の部分に長さ方向に分割されている硬化剤注入管であり、分割された硬化剤注入管同士を軸方向に挿し込むことによって各流路同士をつなぐように接続する接続部材を有するものである。さらに、硬化剤注入管には、土留め部材に当接する平面状の土留め部材取り付け面が備えられていることが好ましく、外形が概ね多角柱状であり、特に四角柱状であることが好ましい。
【0012】
この発明の土留め工法は、硬化剤を送り込む流路を有し、複数の部分に長さ方向に分割されている硬化剤注入管であり、分割された硬化剤注入管同士を軸方向に挿し込むことによって各流路同士をつなぐように接続する接続部材を有する土留め工事用硬化剤注入管を土留め部材に取り付けて地中に建て込んで土留めを行う工法であって、分割された硬化剤注入管同士を軸方向に挿し込むことによって各流路同士をつなぐように接続して土留め工事用硬化剤注入管を土留め部材に取り付け、土留め部材の引抜き時には硬化剤を硬化剤注入管の流路を介して地中に注入しながら引抜を行い、土留め部材の引抜き跡の空隙を硬化剤で充填するものである。これに加えて、土留め工事用硬化剤注入管が土留め部材に当接する平面状の土留め部材取り付け面を有するものであり、土留め部材取り付け面を土留め部材に当接させて土留め工事用硬化剤注入管を土留め部材に取り付けるものであることが好ましい。さらに、土留め部材が中央面とその中央面の両端につながった側面とを有する鋼矢板であり、側面に土留め工事用硬化剤注入管を取り付けることが好ましい。また、土留め部材が長さ方向に複数の部分部材に分割されており、部分部材に分割ロッドを取り付けてから地中に建て込み、直前に建て込まれた部分部材の上部に次の部分部材を溶接により接続するとともに直前に建て込まれた部分部材の分割ロッドに次の分割ロッドを軸方向に挿し込んで接続した上で次の部分部材に取り付けてさらに地中に建て込んでいくようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、硬化剤注入管の土留め部材への取付けを短時間で実施できるという効果を有する。地面が傾斜した場所や狭い場所でも実施できるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この発明を実施するための最良の形態について、図面に基づいて説明する。図1は土留め工事用硬化剤注入管の概略を示す正面図である。土留め工事用硬化剤注入管1はその長さ方向について分割されている。この例においては1基の先端部材2と、それに続く3基の中間ロッド3と、最上段に位置するスイベル4に分割されている。そして、その間には接続部材5が設けられている。
【0015】
図2は土留め工事用硬化剤注入管の先端部材を示す断面図である。先端部材2および中間ロッド3は土留め部材に当接する平面状の土留め部材取り付け面6を有する。他の面は曲面上に形成することも可能であるが、外形を多角柱状にするのが好ましい。本例では、四角柱状の外形を有する。
【0016】
また、先端部材2および中間ロッド3は内部に複数の独立した流路を有する。本例では、2種類の薬液を独立して送り込めるように2つの流路7,8を備えた二重管構造になっているが、さらに三重管以上にしてもよい。先端部材2は、その側面に吐出口9を備えており、硬化剤を横方向に吐出できるようになっている。本例では、平面状の土留め部材取り付け面6を除く面にそれぞれ一つずつ直径8〜10mmの吐出口9が設けられている。
【0017】
吐出口9の近くには栓10と、栓10を上方向に付勢する付勢部材11が設けられている。栓10は硬度の高いプラスチックを素材としている。付勢手段11も長期間土中にあっても劣化しないようにプラスチック製であり、0.5kg程度の加重で下がるようになっている。栓10の上面に大気圧がかかっている状態で、栓10は吐出口9を塞ぐ位置にある(図2a)。
【0018】
図3は土留め工事用硬化剤注入管の中間ロッド3を示す断面図である。先端部材2と同様に四角柱状の形状であり、土留め部材に当接する平面状の土留め部材取り付け面6を有する。また、内部は二重管構造であり、独立した二つの流路7,8を有する。 中間ロッド3およびスイベル4は土留め部材に当接する平面状の土留め部材取り付け面6を有する。他の面は曲面上に形成することも可能であるが、外形を多角柱状にするのが好ましい。本例では、四角柱状の外形を有する。
【0019】
図4は土留め工事用硬化剤注入管の硬化剤導入部4を示す断面図である。硬化剤導入部5はスイベル形式のものではなく、中間ロッド3に対して回転しないものとしている。二つの硬化剤導入口12,13が設けられており、ホースを取り付けることができるようになっている。
【0020】
先端部材2の上端部、中間ロッド3の両端部および硬化剤導入部4の下端部にはそれぞれ接続部材挿入口14が形成されている。この接続部材挿入口14は、径が大きい第1の円孔15と、その奥の径の小さい第2の円孔16よりなる。第1の円孔15の内周面にはOリング17が設けられている。
【0021】
図5は、接続部材5を示す断面図である。接続部材5は太い円柱状の基部18と、基部18の両側より突出する細い円柱状の突起部19よりなる。基部18の外径は接続部材挿入口14の第1の円孔15の内径とほぼ同じであり、突起部19の外径は接続部材挿入口14の第2の円孔16の内径とほぼ同じである。また、突起部19の長さは第2の円孔16の深さとほぼ同じである。したがって、接続部材5を接続部材挿入口14に軸方向に挿し込むことによって、接続部材5の片側と接続部材挿入口14ははめ込むことができる。
【0022】
接続部材5の中心には、基部18と突起部19を通した第1の孔20が貫通している。また、基部18の 外辺付近にも複数の第2の孔21が通っている。また、突起部19の外周にはOリング22が設けられている。
【0023】
ついで、この土留め工事用硬化剤注入管1を使用した土留め工法について説明する。図6は土留め工事用硬化剤注入管の取付け作業を示す斜視図である。土留め部材として鋼矢板30を使用する。鋼矢板30は、広い中央面31と、その中央面31の両側の側面32を有するが、ここでは、土留め工事用硬化剤注入管1を中央面31に取り付ける場合について説明する。
【0024】
鋼矢板30を施工現場の地面に置く。地面は完全に水平である必要はなく、多少の凹凸や傾斜があってもよい。中央面31の上で先端部材2および中間ロッド3を接続する。接続作業は、先端部材2から行ってもよく、また、最上段の中間ロッド3から行っても良い。たとえば、まず、鋼矢板30の先端部に先端部材2を置き、この先端部材2の上端の接続部材挿入口14に接続部材5の片側を挿入する。ついで接続部材5の反対側と中間ロッド3の接続部材挿入口14を係合させる。このようにして、先端部材2および中間ロッド3を回転させることなく、長さ方向での挿し込みだけで簡単に接続することができる。2本目以降の中間ロッド3も同様にして接続していく。最上段の中間ロッド3まで接続する。ただし、鋼矢板の建て込みの際、機械のチャックは中央面31の上端部を保持するので、中央面31に硬化剤注入管1を取り付ける場合、中最上段の間ロッド3は鋼矢板30の上端よりやや下側までしか取り付けることはできない。
【0025】
最上段の中間ロッド3まで接続したら、各接続箇所の両側に固定金具23を取り付けて溶接を行う。図7は接続箇所を示す断面図である。固定金具23はL字状の断面を有する金具であり、相互に垂直な二つの面を有する。一方の面が鋼矢板30に当接し、他の面が工事用硬化剤注入管1の側面に当接することによって、鋼矢板30と工事用硬化剤注入管1を安定した状態で固定する。固定金具23を鋼矢板30および工事用硬化剤注入管1に溶接することによって、工事用硬化剤注入管1は鋼矢板30に取り付けられる。
【0026】
以上、先端部材2および中間ロッド3は接続部材によって、簡単に接続される。接続部材5の第1の孔21は中心部の流路7同士を連絡し、第2の孔22は外周部の流路8同士を連絡する。したがって、この接続によって、先端部材2から最上段の中間ロッド3まで、2本の連続した流路が形成される。先端部材2および中間ロッド3は平面状の土留め部材取り付け面6によって鋼矢板30と接しているので取付け作業中に転がることはなく、作業者が押さえている必要がない。また、十分に広い当接面があるので接続作業中も安定しており、鋼矢板30の長さ方向に沿って真直ぐに接続していくことができる。
【0027】
硬化剤注入管1の鋼矢板30への取り付けが完了したら、鋼矢板30を埋設工事を行う場所の両側に建て込んでいく。建て込み作業は、たとえば鋼矢板を地中に圧入する通常の装置を使用して行うことができる。
【0028】
ここで、鋼矢板の配置について説明する。土留めとして設置する鋼矢板の全てに硬化剤注入管を取り付けることは必ずしも必要ではなく、硬化剤注入管付き鋼矢板と硬化剤注入管が取り付けられていない通常の鋼矢板を併用してもよい。たとえば、硬化剤注入管が取り付けられた鋼矢板に続いて硬化剤注入管が取り付けられていない鋼矢板が2基又は3基設置され、また硬化剤注入管が取り付けられた鋼矢板が設置されるという繰り返しで配置してもよい。硬化剤注入管1から注入された硬化剤が到達する距離の範囲内であれば硬化剤注入管が取り付けられた鋼矢板を設置することができる。
【0029】
鋼矢板30の建て込み時において、先端部材2内の付勢部材11は栓10を上方向に押しており、栓10によって吐出口9は閉じられている。したがって、土砂が硬化剤注入管1の中に入り込むことはない。
【0030】
次に、鋼矢板30の撤去方法について説明する。引抜きを行う鋼矢板30の硬化剤注入管1の上端に硬化剤導入部4を取り付ける。硬化剤導入部4の硬化剤導入口12,13に硬化剤ホースを接続する。鋼矢板30は端から順次引き抜くが、硬化剤注入管1により地中に硬化剤を注入しながら行う。
【0031】
鋼矢板30の引抜き跡を迅速に充填するためには、硬化剤としては2液を混合するゲルタイムの短いものが好ましい。
瞬結性の硬化剤の例について説明する。A液として水ガラス(JIS3号ケイ酸ナトリウム)80リットルに水120リットルを加えたものを用意する。B液としては、高炉セメントB種に無機系懸濁型水ガラス系グラウト用硬化剤を加えたものを用意する。例えば、高炉セメントB種50Kg、YMS45(三興コロイド化学株式会社)10Kgおよび178.7リットルを混合してB液とする。YMS45は硫酸カルシウムと水酸化カルシウムを主成分とする薬剤である。このA液とB液を1対1で使用することにより、また、高炉セメントB種50Kg、YMS90(三興コロイド化学株式会社)5Kgおよび181.4リットルを混合してB液とすると、20℃でのゲルタイムが1〜2分、4週強度0.5〜1N/mm2となる。これらの硬化剤は、毒物や劇物を含まない安全性の高い無公害薬剤である。
ついで、緩結性の硬化剤の例について説明する。高炉セメントB種50Kg、ベントナイト10Kg、セメントミルク凝結硬化促進剤であるYMS2000(三興コロイド化学株式会社)4Kgおよび177.8リットルを混合する。これによって、流動性消失時間が30〜40分、4週強度0.71N/mm2となる。
【0032】
ホースより硬化剤が硬化剤注入管1に注入されると、硬化剤の圧力によって栓10が下方向に押し下げられ、吐出口9が開放される。本例においては、栓10の位置よりも下方の側壁に小さなエア抜き穴25が設けられている。したがって、栓10はスムーズに下方へ移動し、先端部材2の側壁に横向きに設けられた吐出口9は確実に開放される。二つの流路7,8を通ってきた2種類の薬液(A液、B液)は先端部材2内で混合され、吐出口9より横向きに地中に注入される。
【0033】
硬化剤注入管1より地中に注入された硬化剤は、先に引き抜かれた鋼矢板および硬化剤注入管付き鋼矢板自体によってできる空隙を埋める。したがって、空隙に起因する地中の土壌の移動や地下水の水路の変化に伴う地盤状態の変動が発生しない。
【0034】
引き抜きが完了したら、硬化剤導入部4とホースを取り外し、次に引き抜く鋼矢板に取り付ける。以下、同様の作業を繰り返して、全ての鋼矢板を撤去する。なお、工事用硬化剤注入管1は全ての鋼矢板に取り付けておいてもよく、また、工事用硬化剤注入管の付いた鋼矢板と工事用硬化剤注入管の付いていない鋼矢板を一つおきに交互に使用してもよい。
【0035】
ついで、硬化剤注入管1を鋼矢板30の側面32に取り付ける例について説明する。図8は硬化剤注入管の側面への取付け作業を示す斜視図である。まず、地面に置かれた鋼矢板30の側面32で、硬化剤注入管1の接続部材5が取り付けられる位置の下側に、固定金具23を溶接していく。固定金具23が一列に取り付けられたら、この固定金具23の上で硬化剤注入管1を組み立てていく。まず、先端部材2と中間ロッド3を接続部材5によって接続する。接続は、長さ方向への挿し込みによって簡単に行える。以下、中間ロッド3を同様の手順で接続していく。最上段の中間ロッド3まで接続したら、硬化剤注入管1の接続箇所と固定金具23を溶接により固定する。さらに、接続箇所の上側にも固定金具23を取り付けて溶接する。このようにして、硬化剤注入管1は鋼矢板30の側面32に取り付けられる。
【0036】
鋼矢板30の側面32は傾斜しているので、円柱状の硬化剤注入管では取付けが極めて困難である。また、パイレーンを使用するための当て板を置く事もできないので、ネジ式の接続方法は使用できない。本例では、四角柱状の硬化剤注入管1を使用しているので、作業は容易であり、しかも強固に固定することができる。
【0037】
鋼矢板の建て込みの際、機械のチャックは中央面31の上端部を保持するので、中央面31に硬化剤注入管1を取り付ける場合、中間ロッド3は鋼矢板の上端よりやや下側までしか取り付けることはできない。したがって、中間ロッド3の上端が地上に出るように鋼矢板30を建て込むと、上端部がある程度地上に突出することとなる。しかし、側面32は機械のチャックに使用されないので、中間ロッド3は鋼矢板30上端まで、あるいはある程度上部に突出させた状態でも、取り付けることができる。鋼矢板30のほとんど全てを地中に挿入することができる。
【0038】
ついで、複数の異なる深さで硬化剤を注入する方法について説明する。図9は複数の異なる深さで硬化剤を注入する方法を示す斜視図である。ここでは、長い硬化剤注入管1aと短い硬化剤注入管1bの2本が取り付けられている。長い硬化剤注入管1aはこれまでの例で説明ものと同様に鋼矢板30の下端まで伸びており、吐出口9aはその下端部に位置する。一方、短い硬化剤注入管1bは長い硬化剤注入管1aの半分程度の本数の中間ロッド3を有しており、鋼矢板の長さの約半分である。吐出口9bは鋼矢板の長さの約半分の位置にある。
【0039】
これによって、吐出口9aへ続く流路と吐出口9bへ続く流路はそれぞれ独立したものとなる。この鋼矢板を引抜くとき、長い硬化剤注入管1aと短い硬化剤注入管1bのそれぞれ上部に硬化剤導入部4とホースを接続する。そして、吐出口9aと吐出口9bの両方から同時に硬化剤を注入しながら鋼矢板を引き抜く。これによって、硬化剤の注入時間を約1/2に短縮することができる。
【0040】
以上、2箇所の深さに吐出口9を設けた例を説明したが、3箇所でもよい。この場合、3系統の流路を設けた硬化剤注入管を用いる。鋼矢板の長さをLとすると、吐出口9は鋼矢板の最下端、最下端からL/3の位置、および最下端から2・L/3の位置、に設ける。これによって注入時間を約1/3に短縮することができる。
【0041】
複数の異なる深さで硬化剤を注入するためには、2箇所以上の深さに吐出口9を設けた多段式の硬化剤注入管を使用しても良い。図10および図11は多段式硬化剤注入管の例を示す断面図である。図10aの例では、長さ方向に渡って同一の太さの四角柱となっている。内部には2本の独立した硬化剤の流路7a,7bが設けられている。中心部の流路7aは先端部まで延びており、先端部に設けられた吐出口9aにつながっている。外周部の流路7bは先端部から約L/2の位置(Lは鋼矢板の長さ)にある吐出口9bにつながっている。図10bの例では、3系統の流路が同一の硬化剤注入管内に設けられており、それぞれは鋼矢板の最下端の吐出口9a、最下端からL/3の位置(最上端から2L/3の位置)の吐出口9b、および最下端から2L/3の位置(最上端からL/3の位置)の吐出口9cにつながっている。なお、図示は省略しているが、図1に示す硬化剤注入管と同様に、複数の部分に長さ方向に分割されており、分割された硬化剤注入管同士を軸方向に挿し込むことによって各流路同士をつなぐように接続する接続部材を有する。また、接続箇所に固定金具を当てて、硬化剤注入管を鋼矢板に取り付けるもの同様である。各吐出口9には1本の流路7がつながっているので、セメントミルクなど1液の硬化剤を使用する。たとえばセメントミルク凝結硬化促進剤であるYMS2000を加えた硬化剤が使用できる。
【0042】
図11の例も、内部は3本の独立した硬化剤の流路7a,7b,7cが設けられていて、それぞれが、最下端の吐出口9a、最下端からL/3の位置(最上端から2L/3の位置)の吐出口9b、および最下端から2L/3の位置(最上端からL/3の位置)の吐出口9cにつながっている。この硬化剤注入管の外形は、上部3分の1の部分が太くなっており、これに続く中間部ではやや細くなり、下部3分の1の部分では最も細くなっている。
【0043】
さらに、鋼矢板を分割して設置する方法について説明する。図12は鋼矢板を分割して設置する方法を示す概略図である。施工場所によって上部に橋などの障害物24が存在し、長い鋼矢板をそのまま打ち込めない場合がある。そこで、障害物24の下の限られたスペースでも建て込みができる程度の短い断片に鋼矢板を分割する。まず、最初の鋼矢板の断片に先端部材2と中間ロッド3を取り付け、この断片を建て込む。
【0044】
ついで、先に建て込んだ断片の上に、次の断片を置き、溶接によって接続する。また、先の断片に取り付けられた中間ロッド3の上端に、新たな中間ロッド3を軸方向に挿し込んで接続する。そして、この新たな中間ロッド3を固定金具23と溶接によって鋼矢板の断片に取り付ける。このとき、鋼矢板は垂直に立った状態であるが、中間ロッド3は接続部材5を介した挿し込みによって簡単に接続することができる。また、中間ロッド3は四角柱状の外形であるために、鋼矢板へ押し当て位置決めするのが容易であり、取り付けにもさほど困難はない。中間ロッド3を取り付けたら、この新たな鋼矢板も地中へ挿入する。以上、同様の作業を繰り返し、必要な深さまで鋼矢板を建て込んでいく。
【0045】
鋼矢板の引き抜きは、硬化剤注入管1より地中に硬化剤を注入しながら行う。鋼矢板の断片1個分が地上に出たら、硬化剤注入および引き抜きを中断する。断片間の溶接箇所を切り離すとともに、中間ロッド3間の接続箇所も切り離す。残った中間ロッド3に硬化剤導入部4とホースを取り付けて、再度、硬化剤注入および引き抜きを行う。このように、各断片について引き抜きと切断を繰り返しながら、全ての鋼矢板を撤去する。
【0046】
以上、簡易な装置および作業で、土留め工事を行うことができる。鋼矢板の引き抜きによる空隙が残らないので、地番変動が生じることが防止される。建て込みに水を使用しないので、施工場所を水浸しにすることがない。硬化剤注入管の設置においてボーリングマシン等を必要としないので、これらの設備を使用するためのレンタル料も不要になる。発電機も小型のもので済むので、エネルギーの消費も小さく、排気ガスも少なくなる。回収した鋼矢板は再利用されるので、資源の無駄な消費も生じない。
【実施例1】
【0047】
この発明の第1の実施例について説明する。図14はこの実施例の硬化剤注入管を示す概念図である。中間ロッド3a、3bは平行に設けられた2本の円柱状のパイプである。それぞれのパイプ3a、3bが独立した硬化剤の流路を形成する。この中間ロッド3a、3bは長さ方向に分割されている。そして、長さ方向に差し込むことによって接続する接続部材によって接続される。この接続部材は、図5に示すものとほぼ同じであるが、各接続箇所においてそれぞれのパイプ3a、3bに対して1つずつ使用され、流路は1つのみである。そして、接続箇所にはブレ止め部材5aが取り付けられる。
【0048】
そして、接続箇所にはブレ止め部材5aが取り付けられる。ブレ止め部材5aは略直方体状の外形を有し、パイプ3a、3bを収容するための2本の孔5bが貫通している。このブレ止め部材5aによってパイプ3a、3bの相互の位置関係が固定され、鋼矢板の建て込み時などにおけるパイプ3a、3bのブレを防止する。
【0049】
先端部材2は略直方体状の外形を有し、特に最先端部の面は斜めに切り取られた形状に形成されており、建て込み時に土中を進行しやすくなっている。先端部材2において二つの流路は合流し、それぞれのパイプ3a、3bを通ってきた液体が混合されるようになっている。側面に3つの吐出口を横方向に有する。
【0050】
図15は第1の実施例における中央面への硬化剤注入管の取り付け作業を示す斜視図、図16は硬化剤注入管の溶接方法を示す概念図である。まず、先端部材2と中間ロッド3a、3bを接続部材を介して長さ方向に差し込むことによって、ワンタッチで接続する。そして、中間ロッド3a、3bの他端部にブレ止め部材5aを取り付ける。ブレ止め部材5aも、パイプ3a、3bを孔5bに通すようにして取り付けることができる。そして、先端部材2およびブレ止め部材5aを鋼矢板30に溶接する。先端部材2およびブレ止め部材5aは略直方体状であり、平面状の土留め部材取り付け面を有するので、簡単かつ確実に取り付けることができる。
【0051】
ついで、次の中間ロッド3a、3bを接続する。また、追加した中間ロッド3の上部にブレ止め部材5aを取り付ける。中間ロッド3同士の接続も、接続部材を介して長さ方向に差し込むことによって、ワンタッチで行える。ネジ式でないので中間ロッド3同士を回転する必要がないので、このように先端部から順次接続することができる。レンチなどの工具も特に要しない。
【0052】
図17は第1の実施例における側面への硬化剤注入管の取り付け作業を示す斜視図である。まず、先端部材2と中間ロッド3a、3bを接続部材を介して長さ方向に差し込むことによって、ワンタッチで接続する。そして、中間ロッド3a、3bの他端部にブレ止め部材5aを取り付ける。先端部材2およびブレ止め部材5aを鋼矢板30の側面32に溶接する。さらに、次の中間ロッド3を継ぎ足しながら、順次溶接して、鋼矢板30の側面32に取り付けて行く。鋼矢板30の側面32は傾斜しているが、中間ロッド3同士の接続も、接続部材を介して長さ方向に差し込むことによって、ワンタッチで行える。ネジ式でないので中間ロッド3同士を回転する必要がないので、このように先端部から順次接続することができる。図17のように鋼矢板30の側面32に取り付けると、建て込み時に機械のチャック部に干渉しないので、鋼矢板30の最上部まで中間ロッド3を取り付けることができる。したがって、鋼矢板30のほとんど全部を地中に打ち込むことができ、地上に突き出る部分がほとんどない。
【0053】
鋼矢板30に硬化剤注入管1を取り付けたら、地中に建て込む。そして、埋設工事が終了したら、鋼矢板30の引く抜きを行う。中間ロッド3a、3bの最上部に硬化剤導入部4を取り付け、硬化剤導入口12,13に硬化剤ホースを接続する鋼矢板30は端から順次引き抜くが、硬化剤注入管1により地中に硬化剤を注入しながら行う。この実施例では2本の独立したパイプ3a、3bにより独立した流路を有するので、2液性の硬化剤を使用することができる。たとえば、A液として水ガラス(JIS3号ケイ酸ナトリウム)80リットルに水120リットルを加えたものを用意し、B液としては、高炉セメントB種50Kg、YMS45(三興コロイド化学株式会社)10Kgおよび178.7リットルを混合したものを用意する。このA液とB液を1対1で注入する。また、高炉セメントB種50Kg、YMS90(三興コロイド化学株式会社)5Kgおよび181.4リットルを混合してB液としてもよい。これらの硬化剤は、毒物や劇物を含まない安全性の高い無公害薬剤である。
【実施例2】
【0054】
この発明の第2の実施例について説明する。図18はこの実施例の硬化剤注入管を示す概念図である。中間ロッド3は円柱状の外形を有する。内部は、二重管構造になっており、独立した2つの流路7,8が設けられている。
【0055】
先端部材2は略直方体状の外形を有し、特に最先端部の面は斜めに切り取られた形状に形成されており、建て込み時に土中を進行しやすくなっている。先端部材2において二つの流路は合流し、それぞれ中間ロッド3の独立した2つの流路7,8液体が混合されるようになっている。側面に3つの吐出口を横方向に有する。
【0056】
先端部材2と中間ロッド3の間の接続、および中間ロッド3同士の間の接続は、図5に示す接続部材4を介して行う。したがって、中間ロッド3を回転させる必要はなく、長さ方向に挿し込むことによってワンタッチで接続することができる。
【0057】
鋼矢板30の中央面31に対しても、側面に対しても、硬化剤注入管を取り付けることができる。先端部材2と中間ロッド3の間の接続、および中間ロッド3同士の間の接続は、図5に示す接続部材4を介して行う。まず、先端部材2と中間ロッド3を接続部材を介して長さ方向に差し込むことによって、ワンタッチで接続する。そして、先端部材2を鋼矢板30に溶接する。
【0058】
ついで、次の中間ロッド3を接続する。そして、L字アングルなどの固定金具23を介して接続箇所を溶接し、中間ロッド3を鋼矢板30に固定する。同様の手順で、鋼矢板30の上端まで中間ロッド3を継ぎ足しながら鋼矢板30に取り付けていく。中間ロッド3同士の接続も、接続部材を介して長さ方向に差し込むことによって、ワンタッチで行える。ネジ式でないので中間ロッド3同士を回転する必要がないので、このように先端部から順次接続することができる。レンチなどの工具も特に要しない。
【0059】
このようにして、硬化剤注入管を取り付けた鋼矢板は、第1の実施例と同様に、地中に建て込む。引き抜き時には、最上段の中間ロッド3に硬化剤導入部4を取り付ける。この実施例の硬化剤導入部4は、鋼矢板30の引き抜きに使用されるパイラーと呼ばれる機械のチャック部に取り付けられている。そして、硬化剤注入管1により地中に硬化剤を注入しながら、鋼矢板の引き抜きを行う。この硬化剤注入管1は、2つの独立した流路7,8を有するので、2液性の硬化剤を使用することができ、第1の実施例に記載した例の硬化剤を使用することができる。
【実施例3】
【0060】
この発明の第3の実施例について説明する。図19はこの実施例を示す概念図、図20はこの実施例における鋼矢板の建て込み方法を示す概念図である。この実施例においては、硬化剤注入管1に加えて高圧水注入管40も土留め部材に取り付けて土留めを行う。鋼矢板が入りにくい土質のときには、高圧水注入管40より200kg/cm2程度の高圧水を真下に噴出することによって、鋼矢板の建て込みを迅速に行うことができる。
【0061】
鋼矢板30の引き抜き時には、硬化剤注入管1により地中に硬化剤を注入し、引き抜き跡の空隙を埋めていく。ここで注入する硬化剤は1液のものである。たとえば、高炉セメントB種50Kg、ベントナイト10Kg、セメントミルク凝結硬化促進剤であるYMS2000(三興コロイド化学株式会社)4Kgおよび177.8リットルを混合したものを使用することができる。これは、流動性消失時間が30〜40分程度の硬化剤である。
【0062】
この実施例の場合、全ての鋼矢板30に硬化剤注入管1と高圧水注入管40を取り付ける。鋼矢板30の建て込み方法として、振動式杭打ち機で強制振動を加えながら建て込むバイブロハンマー工法と呼ばれるものと、既に建て込まれた鋼矢板を機械がつかみながら反力で鋼矢板30を地中に圧入するサイレントパイラー工法と呼ばれるものがある。
【0063】
図21はバイブロハンマー工法における硬化剤注入管1と高圧水注入管40の取り付け位置を示す平面図、図22は同斜視図である。鋼矢板30の中央面の内側と外側の中央部(図21における場所1と場所2)に硬化剤注入管1と高圧水注入管40を取り付ける。建て込み時には、高圧水注入管40で高圧水を噴出する。特に鋼矢板が入りにくい場合には、この場所1と場所2に加え、左右の側面(図21における場所3と場所4)に硬化剤注入管1と高圧水注入管40を取り付けてもよい。引き抜き時には、各鋼矢板30ごとに硬化剤を注入する。
【0064】
図23はサイレントパイラー工法における硬化剤注入管1と高圧水注入管40の取り付け位置を示す平面図、図24は同斜視図である。鋼矢板30の中央面で内側を向いた面の中央部(図23における場所1)に硬化剤注入管1と高圧水注入管40を取り付ける。建て込み時には、高圧水注入管40で高圧水を噴出する。特に鋼矢板が入りにくい場合には、この場所1に加え、左右の側面(図21における場所3と場所4)に硬化剤注入管1と高圧水注入管40を取り付けてもよい。引き抜き時には、各鋼矢板30ごとに硬化剤を注入する。
【産業上の利用可能性】
【0065】
この発明のシートパイルは、地中に水道管やガス管等を埋設する工事の施工等シートパイル等の土留め部材により土留めを行いながら行う工事について広く利用できるものである。土留め部材の跡に生じる空隙を残さないので、空隙に起因する地中の土壌の移動や地下水の水路の変化に伴う地盤状態の変動を発生させなることがなく、安全で環境への影響が少ない土留め工事が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】土留め工事用硬化剤注入管の概略を示す正面図である。
【図2】先端部材を示す断面図である。
【図3】中間ロッドを示す断面図である。
【図4】硬化剤導入部を示す断面図である。
【図5】接続部材を示す断面図である。
【図6】中央面への硬化剤注入管の取り付け作業を示す斜視図である。
【図7】接続箇所を示す断面図である。
【図8】側面への硬化剤注入管の取り付け作業を示す斜視図である。
【図9】複数の異なる深さで硬化剤を注入する方法を示す斜視図である。
【図10】多段式硬化剤注入管の例を示す断面図である。
【図11】多段式硬化剤注入管の別の例を示す断面図である。
【図12】鋼矢板を分割して設置する方法を示す概略図である。
【図13】円柱状の硬化剤注入管の取り付け作業を示す斜視図である。
【図14】第1の実施例の硬化剤注入管を示す概念図である。
【図15】第1の実施例における中央面への硬化剤注入管の取り付け作業を示す斜視図である。
【図16】硬化剤注入管の溶接方法を示す概念図である。
【図17】第1の実施例における側面への硬化剤注入管の取り付け作業を示す斜視図である。
【図18】第2の実施例の硬化剤注入管を示す概念図である。
【図19】第3の実施例を示す概念図である。
【図20】第3の実施例における鋼矢板の建て込み方法を示す概念図である。
【図21】バイブロハンマー工法における硬化剤注入管と高圧水注入管の取り付け位置を示す平面図である。
【図22】同斜視図である。
【図23】サイレントパイラー工法における硬化剤注入管と高圧水注入管の取り付け位置を示す平面図である。
【図24】同斜視図である。
【符号の説明】
【0067】
1.土留め工事用硬化剤注入管
2.先端部材
3.中間ロッド
4.硬化剤導入部
5.接続部材
6.土留め部材取り付け面
7,8 流路
9.吐出口
10.栓
11.付勢手段
23.固定金具
30.鋼矢板
31.中央面
32.側面
【技術分野】
【0001】
この発明は、鋼矢板などで土留めを行いながら地中に水道管、ガス管、側溝、カルバートボックス等を埋設する土留め工事の施工に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中に水道管、ガス管、カルバートボックス、下水管、側溝等を埋設する工事においては、まず溝の両壁を構成すべき位置に簡易矢板、鉄板、シートパイル等の土留め部材を設置して溝壁が崩れるのを防止した上で、地面を掘削して溝を形成し、溝内での水道管等の敷設作業が行われる。敷設作業が終了し溝を埋めなおした後に、土留め部材は地中から引き抜かれる。しかし、地中には土留め部材の体積分の空隙が生じることになる。この空隙の問題はこれまでほとんど検討されていない。この空隙を埋めるために周囲の土砂が移動し、さまざまな問題が生じうる。例えば、時間とともに溝内に充填した砂や土砂が空隙を埋めるために移動し、溝の上に敷かれた舗装面が沈下して、道路表面にくぼみを生じる。また、溝の外の土砂が移動することにより、溝の両側の地盤状態に変動をきたし、近くの建造物に影響を与えうる。さらに、周囲の地下水の状態が変われば、広範囲での影響も発生する。地下水は最も通りやすいところに水路を形成するので、土留め部材の引き抜きによって生じた空隙や、それを埋めるために移動した土砂によってできた水の通りやすい場所に新たな水路を形成し、周囲の地下水の流れが大きく変動する。この地下水の状態の変動によってそれまで保たれていた周囲の地盤の地圧のバランスがくずれ、地盤沈下等の地盤変動が生じ、そこに建造されている塀や建物等を変形させることになる。
【0003】
そこで、シートパイルによる空隙を生じさせないために、シートパイルを引き抜かず、施工後も地中へ残すことが考えられる。しかし、地中に残されたシートパイルは時間とともに酸化・腐食により消失し、いずれは上述のような問題が生じることに変わりがない。また、シートパイルの素材である金属が土壌や地下水等を汚染することになる。シートパイルを使い捨てにすることは資源としても無駄な消費である。
【0004】
引用文献1(特開昭64−58713)には、鋼矢板の引抜き時に土砂を落下させて空隙を埋めることが記載されている。引用文献2(特開昭57−108311)および引用文献3(特開昭57−108312)には「地盤圧密剤」を注して空洞を埋めることが、引用文献4(特開昭49−49404)には、「充填材」を注入することが記載されている。さらに、引用文献5(特開2005−290963)には、硬化剤を注入することが記載されている。
【特許文献1】特開昭64−58713
【特許文献2】特開昭57−108311
【特許文献3】特開昭57−108312
【特許文献4】特開昭49−49404
【特許文献5】特開2005−290963
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の方法は実施が不可能なものである。土砂を地中に埋め戻すにあたっては、約25cmごとに点圧器で点圧を行い、さらに水をかけてしめ固めなければならない。しかし、鋼矢板の引抜き跡に入れられた土砂に対して点圧を行うことはできない。また、鋼矢板の引抜き中や引抜き直後に地中に水を供給すれば、かえって地盤沈下を加速させることになる。点圧も水しめも行われない土砂は空隙が多く、地盤変動を防止することができない。
【0006】
特許文献2および特許文献3には「地盤圧密剤」が記載されているが、これらの文献には「地盤圧密剤」についての具体的な説明は一切なく、結局、どのように実施すべきかは不明である。特許文献4の「充填材」についても同文献中に記載はなく、どのように実施すべきかは不明である。
【0007】
特許文献5には、土留め部材、硬化剤注入管、作業手順、硬化剤の種類などが具体的に示されており、初めて、実施可能な技術が提示されている。しかし、同文献に記載されている硬化剤注入管は円柱状のものである。特許文献1から特許文献4に記載された管もすべて円柱状である。
【0008】
しかし、円柱状の形状の土硬化剤注入管を留め部材への取付けを行うことには困難を伴う。図13は円柱状の硬化剤注入管の取り付け作業を示す斜視図である。鋼矢板などの土留め部材を施工業者自身が所有している場合は少なく、通常は、施工時にレンタル業者より借り受け、施工終了後に返却する。したがって、硬化剤注入管の土留め部材への取り付けも施工現場で行われる。鋼矢板を地面に置き、その上に硬化剤注入管をのせてから固定する。しかし、円柱状の硬化剤注入管は転がりやすい。鋼矢板は20mもの長さを有するものあり、これを完全に水平な状態で保持できる場所が施工現場に常にあるわけではない。したがって、硬化剤注入管の取付けが完了するまで、作業者が硬化剤注入管を手で押さえていなくてはならない。また、建て込みや引抜きをおこなう機械のチャックが鋼矢板の中央部の面をつかむために使用されるので、硬化剤注入管は鋼矢板の側面に取り付けることが好ましいが、側面は傾斜しているので、円柱状の硬化剤注入管の取り付け作業はより困難となる。
【0009】
また、長い硬化剤注入管であれば複数のロッドに分割し、鋼矢板の上で各ロッドを接続した後に取り付けることになる。通常の硬化剤注入管で用いられるネジ式の接続方式であると、6以上のネジ山を係合させる必要がある。ロッドをパイレーン等の工具でつかんで回転させる必要があるが、そのためには、ロッドと鋼矢板の間に当て板をおいてパイレーンを回転させるための空間を確保することになる。全部のロッドを接続したら、当て板を取り除き、硬化剤注入管を鋼矢板に押し当て、溶接によって固定する。この作業の全期間中、硬化剤注入管が転がらないように、複数の作業者が手で硬化剤注入管を手で押さえていなくてはならない。
【0010】
この発明は、硬化剤注入管の土留め部材への取付けを短時間で実施でき、簡易でコストのかからない土留め工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するため、この発明の土留め工事用硬化剤注入管は、硬化剤を送り込む流路を有し、複数の部分に長さ方向に分割されている硬化剤注入管であり、分割された硬化剤注入管同士を軸方向に挿し込むことによって各流路同士をつなぐように接続する接続部材を有するものである。さらに、硬化剤注入管には、土留め部材に当接する平面状の土留め部材取り付け面が備えられていることが好ましく、外形が概ね多角柱状であり、特に四角柱状であることが好ましい。
【0012】
この発明の土留め工法は、硬化剤を送り込む流路を有し、複数の部分に長さ方向に分割されている硬化剤注入管であり、分割された硬化剤注入管同士を軸方向に挿し込むことによって各流路同士をつなぐように接続する接続部材を有する土留め工事用硬化剤注入管を土留め部材に取り付けて地中に建て込んで土留めを行う工法であって、分割された硬化剤注入管同士を軸方向に挿し込むことによって各流路同士をつなぐように接続して土留め工事用硬化剤注入管を土留め部材に取り付け、土留め部材の引抜き時には硬化剤を硬化剤注入管の流路を介して地中に注入しながら引抜を行い、土留め部材の引抜き跡の空隙を硬化剤で充填するものである。これに加えて、土留め工事用硬化剤注入管が土留め部材に当接する平面状の土留め部材取り付け面を有するものであり、土留め部材取り付け面を土留め部材に当接させて土留め工事用硬化剤注入管を土留め部材に取り付けるものであることが好ましい。さらに、土留め部材が中央面とその中央面の両端につながった側面とを有する鋼矢板であり、側面に土留め工事用硬化剤注入管を取り付けることが好ましい。また、土留め部材が長さ方向に複数の部分部材に分割されており、部分部材に分割ロッドを取り付けてから地中に建て込み、直前に建て込まれた部分部材の上部に次の部分部材を溶接により接続するとともに直前に建て込まれた部分部材の分割ロッドに次の分割ロッドを軸方向に挿し込んで接続した上で次の部分部材に取り付けてさらに地中に建て込んでいくようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、硬化剤注入管の土留め部材への取付けを短時間で実施できるという効果を有する。地面が傾斜した場所や狭い場所でも実施できるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この発明を実施するための最良の形態について、図面に基づいて説明する。図1は土留め工事用硬化剤注入管の概略を示す正面図である。土留め工事用硬化剤注入管1はその長さ方向について分割されている。この例においては1基の先端部材2と、それに続く3基の中間ロッド3と、最上段に位置するスイベル4に分割されている。そして、その間には接続部材5が設けられている。
【0015】
図2は土留め工事用硬化剤注入管の先端部材を示す断面図である。先端部材2および中間ロッド3は土留め部材に当接する平面状の土留め部材取り付け面6を有する。他の面は曲面上に形成することも可能であるが、外形を多角柱状にするのが好ましい。本例では、四角柱状の外形を有する。
【0016】
また、先端部材2および中間ロッド3は内部に複数の独立した流路を有する。本例では、2種類の薬液を独立して送り込めるように2つの流路7,8を備えた二重管構造になっているが、さらに三重管以上にしてもよい。先端部材2は、その側面に吐出口9を備えており、硬化剤を横方向に吐出できるようになっている。本例では、平面状の土留め部材取り付け面6を除く面にそれぞれ一つずつ直径8〜10mmの吐出口9が設けられている。
【0017】
吐出口9の近くには栓10と、栓10を上方向に付勢する付勢部材11が設けられている。栓10は硬度の高いプラスチックを素材としている。付勢手段11も長期間土中にあっても劣化しないようにプラスチック製であり、0.5kg程度の加重で下がるようになっている。栓10の上面に大気圧がかかっている状態で、栓10は吐出口9を塞ぐ位置にある(図2a)。
【0018】
図3は土留め工事用硬化剤注入管の中間ロッド3を示す断面図である。先端部材2と同様に四角柱状の形状であり、土留め部材に当接する平面状の土留め部材取り付け面6を有する。また、内部は二重管構造であり、独立した二つの流路7,8を有する。 中間ロッド3およびスイベル4は土留め部材に当接する平面状の土留め部材取り付け面6を有する。他の面は曲面上に形成することも可能であるが、外形を多角柱状にするのが好ましい。本例では、四角柱状の外形を有する。
【0019】
図4は土留め工事用硬化剤注入管の硬化剤導入部4を示す断面図である。硬化剤導入部5はスイベル形式のものではなく、中間ロッド3に対して回転しないものとしている。二つの硬化剤導入口12,13が設けられており、ホースを取り付けることができるようになっている。
【0020】
先端部材2の上端部、中間ロッド3の両端部および硬化剤導入部4の下端部にはそれぞれ接続部材挿入口14が形成されている。この接続部材挿入口14は、径が大きい第1の円孔15と、その奥の径の小さい第2の円孔16よりなる。第1の円孔15の内周面にはOリング17が設けられている。
【0021】
図5は、接続部材5を示す断面図である。接続部材5は太い円柱状の基部18と、基部18の両側より突出する細い円柱状の突起部19よりなる。基部18の外径は接続部材挿入口14の第1の円孔15の内径とほぼ同じであり、突起部19の外径は接続部材挿入口14の第2の円孔16の内径とほぼ同じである。また、突起部19の長さは第2の円孔16の深さとほぼ同じである。したがって、接続部材5を接続部材挿入口14に軸方向に挿し込むことによって、接続部材5の片側と接続部材挿入口14ははめ込むことができる。
【0022】
接続部材5の中心には、基部18と突起部19を通した第1の孔20が貫通している。また、基部18の 外辺付近にも複数の第2の孔21が通っている。また、突起部19の外周にはOリング22が設けられている。
【0023】
ついで、この土留め工事用硬化剤注入管1を使用した土留め工法について説明する。図6は土留め工事用硬化剤注入管の取付け作業を示す斜視図である。土留め部材として鋼矢板30を使用する。鋼矢板30は、広い中央面31と、その中央面31の両側の側面32を有するが、ここでは、土留め工事用硬化剤注入管1を中央面31に取り付ける場合について説明する。
【0024】
鋼矢板30を施工現場の地面に置く。地面は完全に水平である必要はなく、多少の凹凸や傾斜があってもよい。中央面31の上で先端部材2および中間ロッド3を接続する。接続作業は、先端部材2から行ってもよく、また、最上段の中間ロッド3から行っても良い。たとえば、まず、鋼矢板30の先端部に先端部材2を置き、この先端部材2の上端の接続部材挿入口14に接続部材5の片側を挿入する。ついで接続部材5の反対側と中間ロッド3の接続部材挿入口14を係合させる。このようにして、先端部材2および中間ロッド3を回転させることなく、長さ方向での挿し込みだけで簡単に接続することができる。2本目以降の中間ロッド3も同様にして接続していく。最上段の中間ロッド3まで接続する。ただし、鋼矢板の建て込みの際、機械のチャックは中央面31の上端部を保持するので、中央面31に硬化剤注入管1を取り付ける場合、中最上段の間ロッド3は鋼矢板30の上端よりやや下側までしか取り付けることはできない。
【0025】
最上段の中間ロッド3まで接続したら、各接続箇所の両側に固定金具23を取り付けて溶接を行う。図7は接続箇所を示す断面図である。固定金具23はL字状の断面を有する金具であり、相互に垂直な二つの面を有する。一方の面が鋼矢板30に当接し、他の面が工事用硬化剤注入管1の側面に当接することによって、鋼矢板30と工事用硬化剤注入管1を安定した状態で固定する。固定金具23を鋼矢板30および工事用硬化剤注入管1に溶接することによって、工事用硬化剤注入管1は鋼矢板30に取り付けられる。
【0026】
以上、先端部材2および中間ロッド3は接続部材によって、簡単に接続される。接続部材5の第1の孔21は中心部の流路7同士を連絡し、第2の孔22は外周部の流路8同士を連絡する。したがって、この接続によって、先端部材2から最上段の中間ロッド3まで、2本の連続した流路が形成される。先端部材2および中間ロッド3は平面状の土留め部材取り付け面6によって鋼矢板30と接しているので取付け作業中に転がることはなく、作業者が押さえている必要がない。また、十分に広い当接面があるので接続作業中も安定しており、鋼矢板30の長さ方向に沿って真直ぐに接続していくことができる。
【0027】
硬化剤注入管1の鋼矢板30への取り付けが完了したら、鋼矢板30を埋設工事を行う場所の両側に建て込んでいく。建て込み作業は、たとえば鋼矢板を地中に圧入する通常の装置を使用して行うことができる。
【0028】
ここで、鋼矢板の配置について説明する。土留めとして設置する鋼矢板の全てに硬化剤注入管を取り付けることは必ずしも必要ではなく、硬化剤注入管付き鋼矢板と硬化剤注入管が取り付けられていない通常の鋼矢板を併用してもよい。たとえば、硬化剤注入管が取り付けられた鋼矢板に続いて硬化剤注入管が取り付けられていない鋼矢板が2基又は3基設置され、また硬化剤注入管が取り付けられた鋼矢板が設置されるという繰り返しで配置してもよい。硬化剤注入管1から注入された硬化剤が到達する距離の範囲内であれば硬化剤注入管が取り付けられた鋼矢板を設置することができる。
【0029】
鋼矢板30の建て込み時において、先端部材2内の付勢部材11は栓10を上方向に押しており、栓10によって吐出口9は閉じられている。したがって、土砂が硬化剤注入管1の中に入り込むことはない。
【0030】
次に、鋼矢板30の撤去方法について説明する。引抜きを行う鋼矢板30の硬化剤注入管1の上端に硬化剤導入部4を取り付ける。硬化剤導入部4の硬化剤導入口12,13に硬化剤ホースを接続する。鋼矢板30は端から順次引き抜くが、硬化剤注入管1により地中に硬化剤を注入しながら行う。
【0031】
鋼矢板30の引抜き跡を迅速に充填するためには、硬化剤としては2液を混合するゲルタイムの短いものが好ましい。
瞬結性の硬化剤の例について説明する。A液として水ガラス(JIS3号ケイ酸ナトリウム)80リットルに水120リットルを加えたものを用意する。B液としては、高炉セメントB種に無機系懸濁型水ガラス系グラウト用硬化剤を加えたものを用意する。例えば、高炉セメントB種50Kg、YMS45(三興コロイド化学株式会社)10Kgおよび178.7リットルを混合してB液とする。YMS45は硫酸カルシウムと水酸化カルシウムを主成分とする薬剤である。このA液とB液を1対1で使用することにより、また、高炉セメントB種50Kg、YMS90(三興コロイド化学株式会社)5Kgおよび181.4リットルを混合してB液とすると、20℃でのゲルタイムが1〜2分、4週強度0.5〜1N/mm2となる。これらの硬化剤は、毒物や劇物を含まない安全性の高い無公害薬剤である。
ついで、緩結性の硬化剤の例について説明する。高炉セメントB種50Kg、ベントナイト10Kg、セメントミルク凝結硬化促進剤であるYMS2000(三興コロイド化学株式会社)4Kgおよび177.8リットルを混合する。これによって、流動性消失時間が30〜40分、4週強度0.71N/mm2となる。
【0032】
ホースより硬化剤が硬化剤注入管1に注入されると、硬化剤の圧力によって栓10が下方向に押し下げられ、吐出口9が開放される。本例においては、栓10の位置よりも下方の側壁に小さなエア抜き穴25が設けられている。したがって、栓10はスムーズに下方へ移動し、先端部材2の側壁に横向きに設けられた吐出口9は確実に開放される。二つの流路7,8を通ってきた2種類の薬液(A液、B液)は先端部材2内で混合され、吐出口9より横向きに地中に注入される。
【0033】
硬化剤注入管1より地中に注入された硬化剤は、先に引き抜かれた鋼矢板および硬化剤注入管付き鋼矢板自体によってできる空隙を埋める。したがって、空隙に起因する地中の土壌の移動や地下水の水路の変化に伴う地盤状態の変動が発生しない。
【0034】
引き抜きが完了したら、硬化剤導入部4とホースを取り外し、次に引き抜く鋼矢板に取り付ける。以下、同様の作業を繰り返して、全ての鋼矢板を撤去する。なお、工事用硬化剤注入管1は全ての鋼矢板に取り付けておいてもよく、また、工事用硬化剤注入管の付いた鋼矢板と工事用硬化剤注入管の付いていない鋼矢板を一つおきに交互に使用してもよい。
【0035】
ついで、硬化剤注入管1を鋼矢板30の側面32に取り付ける例について説明する。図8は硬化剤注入管の側面への取付け作業を示す斜視図である。まず、地面に置かれた鋼矢板30の側面32で、硬化剤注入管1の接続部材5が取り付けられる位置の下側に、固定金具23を溶接していく。固定金具23が一列に取り付けられたら、この固定金具23の上で硬化剤注入管1を組み立てていく。まず、先端部材2と中間ロッド3を接続部材5によって接続する。接続は、長さ方向への挿し込みによって簡単に行える。以下、中間ロッド3を同様の手順で接続していく。最上段の中間ロッド3まで接続したら、硬化剤注入管1の接続箇所と固定金具23を溶接により固定する。さらに、接続箇所の上側にも固定金具23を取り付けて溶接する。このようにして、硬化剤注入管1は鋼矢板30の側面32に取り付けられる。
【0036】
鋼矢板30の側面32は傾斜しているので、円柱状の硬化剤注入管では取付けが極めて困難である。また、パイレーンを使用するための当て板を置く事もできないので、ネジ式の接続方法は使用できない。本例では、四角柱状の硬化剤注入管1を使用しているので、作業は容易であり、しかも強固に固定することができる。
【0037】
鋼矢板の建て込みの際、機械のチャックは中央面31の上端部を保持するので、中央面31に硬化剤注入管1を取り付ける場合、中間ロッド3は鋼矢板の上端よりやや下側までしか取り付けることはできない。したがって、中間ロッド3の上端が地上に出るように鋼矢板30を建て込むと、上端部がある程度地上に突出することとなる。しかし、側面32は機械のチャックに使用されないので、中間ロッド3は鋼矢板30上端まで、あるいはある程度上部に突出させた状態でも、取り付けることができる。鋼矢板30のほとんど全てを地中に挿入することができる。
【0038】
ついで、複数の異なる深さで硬化剤を注入する方法について説明する。図9は複数の異なる深さで硬化剤を注入する方法を示す斜視図である。ここでは、長い硬化剤注入管1aと短い硬化剤注入管1bの2本が取り付けられている。長い硬化剤注入管1aはこれまでの例で説明ものと同様に鋼矢板30の下端まで伸びており、吐出口9aはその下端部に位置する。一方、短い硬化剤注入管1bは長い硬化剤注入管1aの半分程度の本数の中間ロッド3を有しており、鋼矢板の長さの約半分である。吐出口9bは鋼矢板の長さの約半分の位置にある。
【0039】
これによって、吐出口9aへ続く流路と吐出口9bへ続く流路はそれぞれ独立したものとなる。この鋼矢板を引抜くとき、長い硬化剤注入管1aと短い硬化剤注入管1bのそれぞれ上部に硬化剤導入部4とホースを接続する。そして、吐出口9aと吐出口9bの両方から同時に硬化剤を注入しながら鋼矢板を引き抜く。これによって、硬化剤の注入時間を約1/2に短縮することができる。
【0040】
以上、2箇所の深さに吐出口9を設けた例を説明したが、3箇所でもよい。この場合、3系統の流路を設けた硬化剤注入管を用いる。鋼矢板の長さをLとすると、吐出口9は鋼矢板の最下端、最下端からL/3の位置、および最下端から2・L/3の位置、に設ける。これによって注入時間を約1/3に短縮することができる。
【0041】
複数の異なる深さで硬化剤を注入するためには、2箇所以上の深さに吐出口9を設けた多段式の硬化剤注入管を使用しても良い。図10および図11は多段式硬化剤注入管の例を示す断面図である。図10aの例では、長さ方向に渡って同一の太さの四角柱となっている。内部には2本の独立した硬化剤の流路7a,7bが設けられている。中心部の流路7aは先端部まで延びており、先端部に設けられた吐出口9aにつながっている。外周部の流路7bは先端部から約L/2の位置(Lは鋼矢板の長さ)にある吐出口9bにつながっている。図10bの例では、3系統の流路が同一の硬化剤注入管内に設けられており、それぞれは鋼矢板の最下端の吐出口9a、最下端からL/3の位置(最上端から2L/3の位置)の吐出口9b、および最下端から2L/3の位置(最上端からL/3の位置)の吐出口9cにつながっている。なお、図示は省略しているが、図1に示す硬化剤注入管と同様に、複数の部分に長さ方向に分割されており、分割された硬化剤注入管同士を軸方向に挿し込むことによって各流路同士をつなぐように接続する接続部材を有する。また、接続箇所に固定金具を当てて、硬化剤注入管を鋼矢板に取り付けるもの同様である。各吐出口9には1本の流路7がつながっているので、セメントミルクなど1液の硬化剤を使用する。たとえばセメントミルク凝結硬化促進剤であるYMS2000を加えた硬化剤が使用できる。
【0042】
図11の例も、内部は3本の独立した硬化剤の流路7a,7b,7cが設けられていて、それぞれが、最下端の吐出口9a、最下端からL/3の位置(最上端から2L/3の位置)の吐出口9b、および最下端から2L/3の位置(最上端からL/3の位置)の吐出口9cにつながっている。この硬化剤注入管の外形は、上部3分の1の部分が太くなっており、これに続く中間部ではやや細くなり、下部3分の1の部分では最も細くなっている。
【0043】
さらに、鋼矢板を分割して設置する方法について説明する。図12は鋼矢板を分割して設置する方法を示す概略図である。施工場所によって上部に橋などの障害物24が存在し、長い鋼矢板をそのまま打ち込めない場合がある。そこで、障害物24の下の限られたスペースでも建て込みができる程度の短い断片に鋼矢板を分割する。まず、最初の鋼矢板の断片に先端部材2と中間ロッド3を取り付け、この断片を建て込む。
【0044】
ついで、先に建て込んだ断片の上に、次の断片を置き、溶接によって接続する。また、先の断片に取り付けられた中間ロッド3の上端に、新たな中間ロッド3を軸方向に挿し込んで接続する。そして、この新たな中間ロッド3を固定金具23と溶接によって鋼矢板の断片に取り付ける。このとき、鋼矢板は垂直に立った状態であるが、中間ロッド3は接続部材5を介した挿し込みによって簡単に接続することができる。また、中間ロッド3は四角柱状の外形であるために、鋼矢板へ押し当て位置決めするのが容易であり、取り付けにもさほど困難はない。中間ロッド3を取り付けたら、この新たな鋼矢板も地中へ挿入する。以上、同様の作業を繰り返し、必要な深さまで鋼矢板を建て込んでいく。
【0045】
鋼矢板の引き抜きは、硬化剤注入管1より地中に硬化剤を注入しながら行う。鋼矢板の断片1個分が地上に出たら、硬化剤注入および引き抜きを中断する。断片間の溶接箇所を切り離すとともに、中間ロッド3間の接続箇所も切り離す。残った中間ロッド3に硬化剤導入部4とホースを取り付けて、再度、硬化剤注入および引き抜きを行う。このように、各断片について引き抜きと切断を繰り返しながら、全ての鋼矢板を撤去する。
【0046】
以上、簡易な装置および作業で、土留め工事を行うことができる。鋼矢板の引き抜きによる空隙が残らないので、地番変動が生じることが防止される。建て込みに水を使用しないので、施工場所を水浸しにすることがない。硬化剤注入管の設置においてボーリングマシン等を必要としないので、これらの設備を使用するためのレンタル料も不要になる。発電機も小型のもので済むので、エネルギーの消費も小さく、排気ガスも少なくなる。回収した鋼矢板は再利用されるので、資源の無駄な消費も生じない。
【実施例1】
【0047】
この発明の第1の実施例について説明する。図14はこの実施例の硬化剤注入管を示す概念図である。中間ロッド3a、3bは平行に設けられた2本の円柱状のパイプである。それぞれのパイプ3a、3bが独立した硬化剤の流路を形成する。この中間ロッド3a、3bは長さ方向に分割されている。そして、長さ方向に差し込むことによって接続する接続部材によって接続される。この接続部材は、図5に示すものとほぼ同じであるが、各接続箇所においてそれぞれのパイプ3a、3bに対して1つずつ使用され、流路は1つのみである。そして、接続箇所にはブレ止め部材5aが取り付けられる。
【0048】
そして、接続箇所にはブレ止め部材5aが取り付けられる。ブレ止め部材5aは略直方体状の外形を有し、パイプ3a、3bを収容するための2本の孔5bが貫通している。このブレ止め部材5aによってパイプ3a、3bの相互の位置関係が固定され、鋼矢板の建て込み時などにおけるパイプ3a、3bのブレを防止する。
【0049】
先端部材2は略直方体状の外形を有し、特に最先端部の面は斜めに切り取られた形状に形成されており、建て込み時に土中を進行しやすくなっている。先端部材2において二つの流路は合流し、それぞれのパイプ3a、3bを通ってきた液体が混合されるようになっている。側面に3つの吐出口を横方向に有する。
【0050】
図15は第1の実施例における中央面への硬化剤注入管の取り付け作業を示す斜視図、図16は硬化剤注入管の溶接方法を示す概念図である。まず、先端部材2と中間ロッド3a、3bを接続部材を介して長さ方向に差し込むことによって、ワンタッチで接続する。そして、中間ロッド3a、3bの他端部にブレ止め部材5aを取り付ける。ブレ止め部材5aも、パイプ3a、3bを孔5bに通すようにして取り付けることができる。そして、先端部材2およびブレ止め部材5aを鋼矢板30に溶接する。先端部材2およびブレ止め部材5aは略直方体状であり、平面状の土留め部材取り付け面を有するので、簡単かつ確実に取り付けることができる。
【0051】
ついで、次の中間ロッド3a、3bを接続する。また、追加した中間ロッド3の上部にブレ止め部材5aを取り付ける。中間ロッド3同士の接続も、接続部材を介して長さ方向に差し込むことによって、ワンタッチで行える。ネジ式でないので中間ロッド3同士を回転する必要がないので、このように先端部から順次接続することができる。レンチなどの工具も特に要しない。
【0052】
図17は第1の実施例における側面への硬化剤注入管の取り付け作業を示す斜視図である。まず、先端部材2と中間ロッド3a、3bを接続部材を介して長さ方向に差し込むことによって、ワンタッチで接続する。そして、中間ロッド3a、3bの他端部にブレ止め部材5aを取り付ける。先端部材2およびブレ止め部材5aを鋼矢板30の側面32に溶接する。さらに、次の中間ロッド3を継ぎ足しながら、順次溶接して、鋼矢板30の側面32に取り付けて行く。鋼矢板30の側面32は傾斜しているが、中間ロッド3同士の接続も、接続部材を介して長さ方向に差し込むことによって、ワンタッチで行える。ネジ式でないので中間ロッド3同士を回転する必要がないので、このように先端部から順次接続することができる。図17のように鋼矢板30の側面32に取り付けると、建て込み時に機械のチャック部に干渉しないので、鋼矢板30の最上部まで中間ロッド3を取り付けることができる。したがって、鋼矢板30のほとんど全部を地中に打ち込むことができ、地上に突き出る部分がほとんどない。
【0053】
鋼矢板30に硬化剤注入管1を取り付けたら、地中に建て込む。そして、埋設工事が終了したら、鋼矢板30の引く抜きを行う。中間ロッド3a、3bの最上部に硬化剤導入部4を取り付け、硬化剤導入口12,13に硬化剤ホースを接続する鋼矢板30は端から順次引き抜くが、硬化剤注入管1により地中に硬化剤を注入しながら行う。この実施例では2本の独立したパイプ3a、3bにより独立した流路を有するので、2液性の硬化剤を使用することができる。たとえば、A液として水ガラス(JIS3号ケイ酸ナトリウム)80リットルに水120リットルを加えたものを用意し、B液としては、高炉セメントB種50Kg、YMS45(三興コロイド化学株式会社)10Kgおよび178.7リットルを混合したものを用意する。このA液とB液を1対1で注入する。また、高炉セメントB種50Kg、YMS90(三興コロイド化学株式会社)5Kgおよび181.4リットルを混合してB液としてもよい。これらの硬化剤は、毒物や劇物を含まない安全性の高い無公害薬剤である。
【実施例2】
【0054】
この発明の第2の実施例について説明する。図18はこの実施例の硬化剤注入管を示す概念図である。中間ロッド3は円柱状の外形を有する。内部は、二重管構造になっており、独立した2つの流路7,8が設けられている。
【0055】
先端部材2は略直方体状の外形を有し、特に最先端部の面は斜めに切り取られた形状に形成されており、建て込み時に土中を進行しやすくなっている。先端部材2において二つの流路は合流し、それぞれ中間ロッド3の独立した2つの流路7,8液体が混合されるようになっている。側面に3つの吐出口を横方向に有する。
【0056】
先端部材2と中間ロッド3の間の接続、および中間ロッド3同士の間の接続は、図5に示す接続部材4を介して行う。したがって、中間ロッド3を回転させる必要はなく、長さ方向に挿し込むことによってワンタッチで接続することができる。
【0057】
鋼矢板30の中央面31に対しても、側面に対しても、硬化剤注入管を取り付けることができる。先端部材2と中間ロッド3の間の接続、および中間ロッド3同士の間の接続は、図5に示す接続部材4を介して行う。まず、先端部材2と中間ロッド3を接続部材を介して長さ方向に差し込むことによって、ワンタッチで接続する。そして、先端部材2を鋼矢板30に溶接する。
【0058】
ついで、次の中間ロッド3を接続する。そして、L字アングルなどの固定金具23を介して接続箇所を溶接し、中間ロッド3を鋼矢板30に固定する。同様の手順で、鋼矢板30の上端まで中間ロッド3を継ぎ足しながら鋼矢板30に取り付けていく。中間ロッド3同士の接続も、接続部材を介して長さ方向に差し込むことによって、ワンタッチで行える。ネジ式でないので中間ロッド3同士を回転する必要がないので、このように先端部から順次接続することができる。レンチなどの工具も特に要しない。
【0059】
このようにして、硬化剤注入管を取り付けた鋼矢板は、第1の実施例と同様に、地中に建て込む。引き抜き時には、最上段の中間ロッド3に硬化剤導入部4を取り付ける。この実施例の硬化剤導入部4は、鋼矢板30の引き抜きに使用されるパイラーと呼ばれる機械のチャック部に取り付けられている。そして、硬化剤注入管1により地中に硬化剤を注入しながら、鋼矢板の引き抜きを行う。この硬化剤注入管1は、2つの独立した流路7,8を有するので、2液性の硬化剤を使用することができ、第1の実施例に記載した例の硬化剤を使用することができる。
【実施例3】
【0060】
この発明の第3の実施例について説明する。図19はこの実施例を示す概念図、図20はこの実施例における鋼矢板の建て込み方法を示す概念図である。この実施例においては、硬化剤注入管1に加えて高圧水注入管40も土留め部材に取り付けて土留めを行う。鋼矢板が入りにくい土質のときには、高圧水注入管40より200kg/cm2程度の高圧水を真下に噴出することによって、鋼矢板の建て込みを迅速に行うことができる。
【0061】
鋼矢板30の引き抜き時には、硬化剤注入管1により地中に硬化剤を注入し、引き抜き跡の空隙を埋めていく。ここで注入する硬化剤は1液のものである。たとえば、高炉セメントB種50Kg、ベントナイト10Kg、セメントミルク凝結硬化促進剤であるYMS2000(三興コロイド化学株式会社)4Kgおよび177.8リットルを混合したものを使用することができる。これは、流動性消失時間が30〜40分程度の硬化剤である。
【0062】
この実施例の場合、全ての鋼矢板30に硬化剤注入管1と高圧水注入管40を取り付ける。鋼矢板30の建て込み方法として、振動式杭打ち機で強制振動を加えながら建て込むバイブロハンマー工法と呼ばれるものと、既に建て込まれた鋼矢板を機械がつかみながら反力で鋼矢板30を地中に圧入するサイレントパイラー工法と呼ばれるものがある。
【0063】
図21はバイブロハンマー工法における硬化剤注入管1と高圧水注入管40の取り付け位置を示す平面図、図22は同斜視図である。鋼矢板30の中央面の内側と外側の中央部(図21における場所1と場所2)に硬化剤注入管1と高圧水注入管40を取り付ける。建て込み時には、高圧水注入管40で高圧水を噴出する。特に鋼矢板が入りにくい場合には、この場所1と場所2に加え、左右の側面(図21における場所3と場所4)に硬化剤注入管1と高圧水注入管40を取り付けてもよい。引き抜き時には、各鋼矢板30ごとに硬化剤を注入する。
【0064】
図23はサイレントパイラー工法における硬化剤注入管1と高圧水注入管40の取り付け位置を示す平面図、図24は同斜視図である。鋼矢板30の中央面で内側を向いた面の中央部(図23における場所1)に硬化剤注入管1と高圧水注入管40を取り付ける。建て込み時には、高圧水注入管40で高圧水を噴出する。特に鋼矢板が入りにくい場合には、この場所1に加え、左右の側面(図21における場所3と場所4)に硬化剤注入管1と高圧水注入管40を取り付けてもよい。引き抜き時には、各鋼矢板30ごとに硬化剤を注入する。
【産業上の利用可能性】
【0065】
この発明のシートパイルは、地中に水道管やガス管等を埋設する工事の施工等シートパイル等の土留め部材により土留めを行いながら行う工事について広く利用できるものである。土留め部材の跡に生じる空隙を残さないので、空隙に起因する地中の土壌の移動や地下水の水路の変化に伴う地盤状態の変動を発生させなることがなく、安全で環境への影響が少ない土留め工事が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】土留め工事用硬化剤注入管の概略を示す正面図である。
【図2】先端部材を示す断面図である。
【図3】中間ロッドを示す断面図である。
【図4】硬化剤導入部を示す断面図である。
【図5】接続部材を示す断面図である。
【図6】中央面への硬化剤注入管の取り付け作業を示す斜視図である。
【図7】接続箇所を示す断面図である。
【図8】側面への硬化剤注入管の取り付け作業を示す斜視図である。
【図9】複数の異なる深さで硬化剤を注入する方法を示す斜視図である。
【図10】多段式硬化剤注入管の例を示す断面図である。
【図11】多段式硬化剤注入管の別の例を示す断面図である。
【図12】鋼矢板を分割して設置する方法を示す概略図である。
【図13】円柱状の硬化剤注入管の取り付け作業を示す斜視図である。
【図14】第1の実施例の硬化剤注入管を示す概念図である。
【図15】第1の実施例における中央面への硬化剤注入管の取り付け作業を示す斜視図である。
【図16】硬化剤注入管の溶接方法を示す概念図である。
【図17】第1の実施例における側面への硬化剤注入管の取り付け作業を示す斜視図である。
【図18】第2の実施例の硬化剤注入管を示す概念図である。
【図19】第3の実施例を示す概念図である。
【図20】第3の実施例における鋼矢板の建て込み方法を示す概念図である。
【図21】バイブロハンマー工法における硬化剤注入管と高圧水注入管の取り付け位置を示す平面図である。
【図22】同斜視図である。
【図23】サイレントパイラー工法における硬化剤注入管と高圧水注入管の取り付け位置を示す平面図である。
【図24】同斜視図である。
【符号の説明】
【0067】
1.土留め工事用硬化剤注入管
2.先端部材
3.中間ロッド
4.硬化剤導入部
5.接続部材
6.土留め部材取り付け面
7,8 流路
9.吐出口
10.栓
11.付勢手段
23.固定金具
30.鋼矢板
31.中央面
32.側面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化剤を送り込む流路を有し、複数の部分に長さ方向に分割されている硬化剤注入管であり、分割された硬化剤注入管同士を軸方向に挿し込むことによって各流路同士をつなぐように接続する接続部材を有する土留め工事用硬化剤注入管。
【請求項2】
土留め部材に当接する平面状の土留め部材取り付け面を有する請求項1に記載の土留め工事用硬化剤注入管。
【請求項3】
外形が概ね多角柱状である請求項2に記載の土留め工事用硬化剤注入管。
【請求項4】
外形が概ね四角柱状である請求項3に記載の土留め工事用硬化剤注入管。
【請求項5】
硬化剤を送り込む流路を有し、複数の部分に長さ方向に分割されている硬化剤注入管であり、分割された硬化剤注入管同士を軸方向に挿し込むことによって各流路同士をつなぐように接続する接続部材を有する土留め工事用硬化剤注入管を土留め部材に取り付けて地中に建て込んで土留めを行う工法であって、
分割された硬化剤注入管同士を軸方向に挿し込むことによって各流路同士をつなぐように接続して土留め工事用硬化剤注入管を土留め部材に取り付け、
土留め部材の引抜き時には硬化剤を硬化剤注入管の流路を介して地中に注入しながら引抜を行い、土留め部材の引抜き跡の空隙を硬化剤で充填する土留め工法。
【請求項6】
土留め工事用硬化剤注入管が土留め部材に当接する平面状の土留め部材取り付け面を有するものであり、
土留め部材取り付け面を土留め部材に当接させて土留め工事用硬化剤注入管を土留め部材に取り付けるものである請求項5に記載の土留め工法。
【請求項7】
土留め部材が中央面とその中央面の両端につながった側面とを有する鋼矢板であり、側面に土留め工事用硬化剤注入管を取り付ける請求項5または請求項6に記載の土留め工法。
【請求項8】
土留め部材が長さ方向に複数の部分部材に分割されており、部分部材に分割された硬化剤注入管を取り付けてから地中に建て込み、直前に建て込まれた部分部材の上部に次の部分部材を溶接により接続するとともに直前に建て込まれた部分部材の硬化剤注入管に次の分割された硬化剤注入管を軸方向に挿し込んで接続した上で次の部分部材に取り付けてからさらに地中に建て込んでいく請求項5ないし請求項7のいずれかに記載の土留め工法。
【請求項1】
硬化剤を送り込む流路を有し、複数の部分に長さ方向に分割されている硬化剤注入管であり、分割された硬化剤注入管同士を軸方向に挿し込むことによって各流路同士をつなぐように接続する接続部材を有する土留め工事用硬化剤注入管。
【請求項2】
土留め部材に当接する平面状の土留め部材取り付け面を有する請求項1に記載の土留め工事用硬化剤注入管。
【請求項3】
外形が概ね多角柱状である請求項2に記載の土留め工事用硬化剤注入管。
【請求項4】
外形が概ね四角柱状である請求項3に記載の土留め工事用硬化剤注入管。
【請求項5】
硬化剤を送り込む流路を有し、複数の部分に長さ方向に分割されている硬化剤注入管であり、分割された硬化剤注入管同士を軸方向に挿し込むことによって各流路同士をつなぐように接続する接続部材を有する土留め工事用硬化剤注入管を土留め部材に取り付けて地中に建て込んで土留めを行う工法であって、
分割された硬化剤注入管同士を軸方向に挿し込むことによって各流路同士をつなぐように接続して土留め工事用硬化剤注入管を土留め部材に取り付け、
土留め部材の引抜き時には硬化剤を硬化剤注入管の流路を介して地中に注入しながら引抜を行い、土留め部材の引抜き跡の空隙を硬化剤で充填する土留め工法。
【請求項6】
土留め工事用硬化剤注入管が土留め部材に当接する平面状の土留め部材取り付け面を有するものであり、
土留め部材取り付け面を土留め部材に当接させて土留め工事用硬化剤注入管を土留め部材に取り付けるものである請求項5に記載の土留め工法。
【請求項7】
土留め部材が中央面とその中央面の両端につながった側面とを有する鋼矢板であり、側面に土留め工事用硬化剤注入管を取り付ける請求項5または請求項6に記載の土留め工法。
【請求項8】
土留め部材が長さ方向に複数の部分部材に分割されており、部分部材に分割された硬化剤注入管を取り付けてから地中に建て込み、直前に建て込まれた部分部材の上部に次の部分部材を溶接により接続するとともに直前に建て込まれた部分部材の硬化剤注入管に次の分割された硬化剤注入管を軸方向に挿し込んで接続した上で次の部分部材に取り付けてからさらに地中に建て込んでいく請求項5ないし請求項7のいずれかに記載の土留め工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
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【図10】
【図11】
【図12】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2008−101373(P2008−101373A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−283721(P2006−283721)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(504091555)
【出願人】(504092552)
【出願人】(504092563)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(504091555)
【出願人】(504092552)
【出願人】(504092563)
【Fターム(参考)】
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