説明

圧力スイング吸着システムのシャローベッドにおける性能安定性

【課題】小型、携帯型の急速サイクルPSA酸素濃縮器において不純物、特に水を除去するための改善された方法を提供すること。
【解決手段】酸素生成のPSA法であって、(a)水に対して選択的な吸着剤から成る第1層と、窒素に対して選択的な吸着剤から成る第2層とを有する吸着装置を用意し、第1層内の吸着剤上の水の吸着熱が、1グラム当たりの水のローディング量が約0.05mmol未満であるときに約14kcal/mole以下であり;(b)少なくとも酸素と窒素と水とを含む供給ガスを、第1層及び第2層に連続して通し、吸着剤第1層内の水を吸着し、そして、吸着剤第2層内の窒素を吸着し、第1層内の水の物質移動係数が約125〜約400sec-1であり、そして第1層内の供給ガスの表面接触時間が約0.08〜約0.50secであり;そして(c)吸着装置から、酸素富化された生成物を回収する、ことを含む、酸素生成のためのPSA法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2006年10月4日付けで出願された米国特許出願第11/542,948号の部分継続出願である。前記特許出願の明細書全体を参考のため本明細書中に引用する。
【背景技術】
【0002】
プロセス及び吸着剤の技術における最近の進歩により、伝統的な大型の圧力スイング吸着(PSA)システムが、極めて短い継続時間の急速サイクルで動作する著しく小型のシステムにスケールダウンされることが可能になった。これらの小型の急速サイクルPSAシステムは、例えば周囲空気から酸素を回収する携帯型医療用酸素濃縮器において利用することができる。これらの濃縮器の市場が成長するのに伴って、酸素療法を受ける患者の利益のためにますますより小型、軽量の、そしてより携帯性が高いユニットを開発しようという意欲が生まれている。
【0003】
吸着剤に及ぼす供給ガス不純物の影響は、多くのPSAシステムの一般的な問題であり、そしてこの影響は、小型急速サイクルPSAシステムに必要となる小型の吸着剤床において特に深刻である。例えば空気中の水及び二酸化炭素の不純物は、PSAサイクルの再生ステップ中に行われる吸着不純物の除去が不完全なため、吸着剤が徐々に不活化することにより、小型PSA空気分離システムの性能を著しく低下させるおそれがある。このような漸進的な不活化のため、酸素回収率が時間とともに低下し、定期的に吸着剤の交換が必要となることがある。或いは、吸着剤床は、吸着剤が徐々に不活化することを考慮するために過大のサイズにしなければならない場合がある。これらの状況の双方は、酸素濃縮器システムのコスト及び重量が大きくなるので望ましくない。
【0004】
小型、携帯型の急速サイクルPSA酸素濃縮器の構成及び動作において不純物、特に水を除去するための改善された方法が、この技術分野において必要である。このような必要性は、添付の特許請求の範囲によって定義される、下記の本発明の実施態様によって対処される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1実施態様は、酸素を生成するための圧力スイング吸着法であって、
(a) 供給端部と生成物端部とを有する少なくとも1つの吸着容器を用意し、容器は、供給端部に隣接する吸着剤第1層(a first layer of adsorbent material)、及び第1層と生成物端部との間に配置された吸着剤第2層(a second layer of adsorbent material)を含み、第1層内の吸着剤が、水と酸素と窒素とを含む混合物からの水の吸着に対して選択的であり、また第2層内の吸着剤が、酸素と窒素とを含む混合物からの窒素の吸着に対して選択的であり、そして第1層内の吸着剤上の水の吸着熱が、吸着剤1グラム当たりの吸着水のローディング量が約0.05mmol未満であるときに約14kcal/mole以下であり;
(b) 吸着容器の供給端部内に、少なくとも酸素と窒素と水とを含む加圧供給ガスを導入し、ガスを第1層及び第2層に連続して通し、第1層内の吸着剤中の水の少なくとも一部を吸着し、そして、第2層内の吸着剤中の窒素の少なくとも一部を吸着し、吸着剤第1層内の水の物質移動係数が約125〜約400sec-1であり、そして第1層内の加圧供給ガスの表面接触時間が約0.08〜約0.50secであり;そして
(c) 吸着容器の生成物端部から、酸素富化された生成ガスを回収する
ことを含む、酸素を生成するための圧力スイング吸着法を含む。
【0006】
第1層内の吸着剤は活性アルミナを含んでいてよく、活性アルミナの平均粒径は、約0.3mm〜約0.7mmであってよい。第2層内の吸着剤は、アルゴンと酸素とを含む混合物からのアルゴンの吸着に対して選択的であってよい。吸着容器の生成物端部から回収された生成ガス中の酸素の濃度は、少なくとも85容積%であってよい。加圧供給ガスは空気であってよい。
【0007】
第1層の深さは、第1層及び第2層の合計深さの約10%〜約40%であってよく、そして第1層の深さは、約0.7〜約13cmであってよい。吸着容器は円筒形であってよく、そして吸着容器の内径に対する第1層及び第2層の合計深さの比は、約1.8〜約6.0であってよい。
【0008】
圧力スイング吸着法が、加圧供給ガスを吸着容器の供給端部内に導入し、そして酸素富化された生成ガスを吸着容器の生成物端部から回収する供給ステップと、ガスを吸着容器の供給端部から回収して第1層及び第2層内の吸着剤を再生する減圧ステップと、1つ又は2つ以上の再加圧ガスを吸着容器内に導入することにより、吸着容器を加圧する再加圧ステップと、を少なくとも含む反復サイクルで操作されてよく、そして供給ステップの継続時間は約0.75秒〜約45秒である。サイクルの全継続時間は、約6〜約100秒であってよい。酸素富化された生成ガスの流量は、1分間当たり約0.1〜約3.0標準リットルであってよい。
【0009】
生成ガス中の酸素純度が93%であるときの1分間当たりの生成ガスの流量(標準リットル)に対する第1層内の吸着剤の重量(グラム)の比は、約50g/slpm未満であってよい。生成ガス中の酸素純度が93%であるときの生成ガス中に回収された酸素の量が、加圧供給ガス中の酸素の量の約35%を上回ってよい。
【0010】
第2層内の吸着剤は、X型ゼオライト、A型ゼオライト、Y型ゼオライト、菱沸石、モルデナイト、及びクリノプチロライトから成る群から選択された1種又は2種以上の吸着剤を含んでよい。この吸着剤は、活性部位カチオンの少なくとも約85%がリチウムである、リチウム交換された低シリカX型ゼオライトであってよい。
【0011】
本発明の別の実施態様は、酸素を生成するための圧力スイング吸着法であって、
(a) 供給端部と生成物端部とを有する少なくとも1つの吸着容器を用意し、容器は、供給端部に隣接する吸着剤第1層、及び第1層と生成物端部との間に配置された吸着剤第2層を含み、第1層内の吸着剤が、水と酸素と窒素とを含む混合物からの水の吸着に対して選択的であり、また第2層内の吸着剤が、酸素と窒素とを含む混合物からの窒素の吸着に対して選択的であり、そして第1層内の吸着剤上の水の吸着熱が、吸着剤1グラム当たりの吸着水のローディング量が約0.05mmol未満であるときに約14kcal/mole以下であり;
(b) 吸着容器の供給端部内に、少なくとも酸素と窒素と水とを含む加圧供給ガスを導入し、ガスを第1層及び第2層に連続して通し、第1層内の吸着剤中の水の少なくとも一部を吸着し、そして、第2層内の吸着剤中の窒素の少なくとも一部を吸着し、吸着剤第1層内の水の物質移動係数が約125〜約400sec-1であり;そして
(c) 吸着容器の生成物端部から、酸素富化された生成ガスを回収し、生成ガス中の酸素純度が93%であるときの1分間当たりの生成ガスの流量(標準リットル)に対する第1層内の吸着剤の重量(グラム)の比が、約50g/slpm未満である、
ことを含む、酸素を生成するための圧力スイング吸着法に関する。
【0012】
第1層内の吸着剤は活性アルミナを含んでいてよく、活性アルミナの平均粒径は、約0.3mm〜約0.7mmであってよい。第2層内の吸着剤は、アルゴンと酸素とを含む混合物からのアルゴンの吸着に対して選択的であってよい。吸着容器の生成物端部から回収された生成ガス中の酸素の濃度は、少なくとも93容積%であってよい。加圧供給ガスは空気であってよい。
【0013】
第1層の深さは、第1層及び第2層の合計深さの約10%〜約40%であってよく、そして第1層の深さは、約0.7〜約13cmであってよい。吸着容器は円筒形であってよく、そして吸着容器の内径に対する第1層及び第2層の合計深さの比は、約1.8〜約6.0である。
【0014】
圧力スイング吸着法は、加圧供給ガスを吸着容器の供給端部内に導入し、そして酸素富化された生成ガスを吸着容器の生成物端部から回収する供給ステップと、ガスを吸着容器の供給端部から回収して第1層及び第2層内の吸着剤を再生する減圧ステップと、1つ又は2つ以上の再加圧ガスを吸着容器内に導入することにより、吸着容器を加圧する再加圧ステップと、を少なくとも含む反復サイクルで操作されてよく、そして供給ステップの継続時間は約0.75秒〜約45秒である。
【0015】
サイクルの全継続時間は、約6〜約100秒であってよい。酸素富化された生成ガスの流量は、1分間当たり約0.1〜約3.0標準リットルであってよい。生成ガス中の酸素純度が93%であるときの生成ガス中に回収された酸素の量が、加圧供給ガス中の酸素の量の約35%を上回ってよい。第2層内の吸着剤は、X型ゼオライト、A型ゼオライト、Y型ゼオライト、菱沸石、モルデナイト、及びクリノプチロライトから成る群から選択された1種又は2種以上の吸着剤を含んでよい。この吸着剤は、活性部位カチオンの少なくとも約85%がリチウムである、リチウム交換された低シリカX型ゼオライトであってよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、LiX ゼオライト上の吸着相wt%(水及びCO2)に対する乾燥窒素容量を示すプロットである。
【図2】図2は、Oxysiv-MDX吸着剤床を使用した単床PSAシステムの動作の時間に対する酸素生成物純度を、水除去のための前処理を伴う状態及び伴わない状態で示すプロットである。
【図3】図3は、種々の吸着剤の水ローディング量に対する水の吸着熱を示すプロットである。
【図4】図4は、吸着剤の特性を測定するために使用されるプロセス試験ユニットを示す図である。
【図5】図5は、水除去のための前処理を伴う4床PVSAプロセスの熱伝達係数に対する酸素回収率及び床サイズ係数を示すプロットである。
【図6】図6は、正規化断熱パワーに対する前処理吸着剤粒子サイズの効果を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
プロセス及び吸着剤の技術における最近の進歩は、伝統的な大型の圧力スイング吸着(PSA)法の設計が、著しく小型のシステムにスケールダウンされることを可能にする。これらの小型のシステムは、可搬型の装置、例えば空気からの酸素を回収するための医療用酸素濃縮器において特に有用である。医療用酸素濃縮器市場が発展するのに伴って、酸素療法を必要とする患者の利益のためにより小型、軽量の、そしてより可搬性が高い装置の必要がますます高まる。
【0018】
酸素PSAシステムにおいて窒素選択的吸着剤として一般に使用されるゼオライト吸着剤は、周囲空気中に存在する汚染物質、特に水及び二酸化炭素に対して感受性を有し、この場合水が最も深刻で支配的な汚染物質である。窒素選択的ゼオライト吸着剤は、これらの不純物に対して高い親和性を有しており、不純物がPSA法の再生ステップ中に十分に除去されないと、急速な不活化が生じ得る。供給ガスからこれらの不純物を除去するために、数多くの技術がこの分野において用いられている。単床又は多床システムにおいて、容器内に吸着剤を層状に形成することが一般的である。この場合、不純物選択的吸着剤から成る前処理層が供給入口で使用され、これに続いて窒素選択的吸着剤から成る1つ又は2つ以上の層が設けられる。不純物選択的前処理吸着剤の目的は、漸進的な不活化から下流側の吸着剤を保護するために、水及び/又は二酸化炭素を低減又は除去することである。
【0019】
窒素選択的吸着剤の性能に対する不純物の影響は、大型の工業用PSAシステムよりも、携帯型酸素濃縮器のために使用される小型PSAシステムにおいて著しく大きい。不純物が小型PSAシステム内で適正に除去されないと、不純物は窒素吸着剤床中を進み、そして長時間にわたってPSAシステムの性能のゆっくりとした低下を招くことがある。汚染物はPSA供給ステップ中に前処理層によって除去することができるものの、パージ・ステップ中のこの層の不十分な再生が生じ、窒素吸着剤のゆっくりとした不活化を招くおそれがある。この問題に対する解決手段が、下記の本発明の実施態様によって提供される。
【0020】
ここに使用される一般名称「圧力スイング吸着」(PSA)は、最大圧と最小圧との間で動作する全ての吸着分離システムに当てはまる。最大圧は典型的には大気圧を上回り、最小圧力は大気圧を上回っても下回ってもよい。最小圧が大気圧を下回り、そして最大圧が大気圧を上回る場合、システムは典型的には圧力真空スイング吸着(PVSA)システムと記される。最大圧が大気圧以下であり、最小圧が大気圧を下回る場合、システムは典型的には真空スイング吸着(VSA)システムと記される。
【0021】
ここに使用される不定冠詞「a」及び「an」は、明細書及び特許請求の範囲に記載される本発明の実施態様における任意の構成要件に適用されるときには、1つ又は2つ以上を意味する。「a」及び「an」の使用は、単数の構成要件に限定することを特に断らない限りは、単数の構成要件に意味を限定することはない。単数又は複数の名詞又は名詞句に先行する定冠詞「the」は、具体的な指定された1つ又は2つ以上の構成要件を意味し、これが使用される文脈に応じて単数又は複数であることを限外に意味する場合がある。形容詞「任意の」は、量とは無関係に1つ、いくつか、又は全てを意味する。第1の存在物と第2の存在物との間に置かれた用語「及び/又は」は、(1)第1の存在物、(2)第2の存在物、及び(3)第1の存在物及び第2の存在物、のうちの1つを意味する。
【0022】
現在の携帯型酸素濃縮器は、PSAシステムを利用し、そして歩行可能患者が電源との接続を必要とすることなしに、相応の時間にわたって単独で動き回るのを可能にするようにバッテリーで駆動される。軽量であることが、これらの酸素濃縮器の開発及び使用の成功にとって重大であり、またこれを達成するための重要な設計ファクターは、開発された吸着剤、小型圧縮器技術、改善された電池化学特性、軽量の構造材料、新しい弁技術、スケールダウンされた電子素子、及び改善されたコンサーバー装置を含む。加えて、PSAサイクル及び吸着剤を正しく選択することにより、酸素回収率を著しく改善することができ、これにより、システムを操作するために必要となる吸着剤及びバッテリーの重量を軽くすることもできる。
【0023】
いかなるPSA法の場合にも、好ましい吸着容量及び動力学特性を有する吸着剤によって急速サイクルを利用することにより、回収率の改善を実現することができる。急速サイクル過程において、吸着剤床のサイズを小さくする上で吸着動力学特性は重要なファクターである。上記のように、吸着剤床は、濃度が変化する供給汚染物質が除去される前処理ゾーンと、主分離が行われる主吸着剤ゾーンとを含んでいてよい。PSA酸素濃縮器において、汚染物質は典型的には、水、CO2、アミン、硫黄酸化物、窒素酸化物、及び微量炭化水素を含む。主分離は、窒素選択的吸着剤上で窒素を吸着することにより実現される。
【0024】
窒素選択的吸着剤は、これらの汚染物質に対して高い吸着親和性を有しているので、吸着された汚染物質は、一旦吸着されると除去するのが難しい。このことは、パージングによって再生された前処理吸着剤によって汚染物質が除去される酸素PSAシステムにおける窒素/酸素分離の効率に対して不都合な影響を及ぼす。本発明の実施態様は、種々の周囲動作条件のもとで窒素選択的吸着剤の性能を維持しつつ、前処理層内の吸着剤の量を低減することに向けられている。適正な供給ガス前処理の重要性を図1に示す。図1には、LiX ゼオライト上の吸着相wt%(水及びCO2)に対する乾燥窒素容量のプロットが示されている。窒素選択的平衡吸着容量の著しい低下が、低レベルの吸着された水及びCO2で発生する。
【0025】
水蒸気が、周囲空気から酸素を回収するためのPSAシステム内の重大な供給汚染物である。窒素選択的吸着剤、例えばX型ゼオライト、及びリチウムを含有する低シリカ・ゼオライトは水を強力に吸着し、再生の際に吸着水を除去するために高い活性化エネルギーを必要とする。PSA空気分離において使用されるゼオライト上の水汚染は、図1から明らかなように、窒素容量を著しく低減させる。濃縮器が温度、高度、湿度レベルの広範囲の環境条件において動作するのに伴って、携帯型酸素濃縮器への供給空気中には広範囲の水濃度が存在し得る。従って、いかなる携帯型濃縮器システムも、広範囲の供給ガス汚染物レベルに対して設計されなければならない。
【0026】
PSAシステムの動作を説明するために使用される主要パラメータは、吸着剤床内のガスの表面接触時間である。このパラメータは、
【数1】

として定義される。上記式中、Lは床長であり、そしてvoは、空床容積に基づく、床を通る供給ガスの表面速度である。表面接触時間は、前処理層を含む床内の全ての吸着剤に対して定義することができ、或いは、前処理層だけに対して定義することもできる。汚染物除去のための吸着剤を選択するために、最小表面接触時間が必要とされる。
【0027】
典型的な周囲条件下(例えば、周囲空気供給において10〜20%の相対湿度)で、酸素PSAシステムにおいて前処理吸着剤を用いずにゼオライト床を操作すると、その結果、短時間でシステム性能が顕著に減少する。このことは、窒素選択的LiX吸着剤充填床を使用した単床酸素PVSAシステムによって、前処理層なしで行った試験において実証された。UOP Oxysiv-MDX吸着剤単床を4ステップ法(供給ガス再加圧、供給/生成物形成、排気、パージ)でサイクル処理した。床の内径は0.88インチ、床の高さは2.47インチであり、総サイクル時間は19秒であり、そして生成物速度は、床供給表面速度約0.38ft sec-1で43〜48sccmであった。この試験の結果は図2に示されている。図2は、80,000サイクルの期間にわたる、時間に対する酸素生成物純度のプロットである。前処理層が存在しないことによる経時的な生成物純度の減少は、ほとんどすぐに発生し、そして試験時間全体にわたってほぼ単調に持続する。
【0028】
典型的な携帯型酸素濃縮器デザインのためのプロセス条件は、PVSA法の場合には約0.4atma〜約1.7atma、PSA法の場合には約1atma〜約6atmaのサイクル差圧を含んでいてよい。65%の酸素回収率(即ち、供給ガス中の生成物として回収された酸素の割合)を達成するためには、純度93%の酸素の0.25〜5.0slpmの生成に対して、約2slpm〜約40slpmの供給流量が必要となる。酸素濃縮器の動作温度は典型的にはほぼ70°Fであるが、しかし、濃縮器の場所に応じて0°F〜100°Fであってもよい。高度は海水位〜海抜6000ftであってよい。標準的な条件は21.1℃及び1atmと定義する。
【0029】
吸着剤床内の汚染物質の効果的な取り扱いのために、好ましい平衡特性及び物質移動特性を有する前処理吸着剤が必要とされる。供給汚染物質を低減又は除去する仕事を行うために、種々の吸着剤を利用することができる。図3は、典型的な前処理吸着剤の水ローディング量に対する水の吸着熱を示すプロットである。
【0030】
前処理吸着剤及び窒素選択的ゼオライトの吸着動力学特性は、物質移動係数kiによって定量化することができ、ここでkは、適切な物質移動モデルを使用した、ソルベートiの速度定数である。このパラメータは、実験的なブレークスルー又はサイクル・データをフィッティングすることにより割り出すことができる。サイクル・データのフィッティングは、実際のプロセス中に存在する物質移動抵抗の全てのメカニズムの完全な組み合わせを明らかにし、そしてサイクル・データから得られた物質移動パラメータから、プロセス動力学特性のより正確なモデルが割り出される。
【0031】
所与の吸着剤上の水吸着のための物質移動パラメータを評価するために、実験的な単床PSA装置を構成した。装置は、床圧力及び供給流量を変化させることができる実験的プロセス操作を行うことが可能である。代表的な物質移動係数kを割り出すために、装置を、選択された圧力及び供給速度で操作することにより、実際の又は計画されたフルスケール・プロセスの圧力及び供給速度をマッチングさせる。
【0032】
図4は、単床実験システムの概略的なフローダイアグラムである。試験システムは、吸着剤を含有する吸着容器110と、空の生成物タンク111と、空気供給流を提供し排気中に真空を提供する空気圧縮器101とから成った。空気供給流量は、弁102を通るブリードオフ流を絞ることによって調節し、そして流量計103によって測定した。供給入口/真空出口にはサイレンサ/フィルタ104を配置した。プログラマブル論理制御装置119によって、空気圧弁ブロック(105〜108,112)を順次操作した。PSAサイクル中のプロセス・ステップの継続時間は、プログラマブル論理制御装置によって調節した。吸着剤床の生成物端部では圧力センサ109によって、そして生成物タンクの入口端部では圧力センサ115によって、圧力を測定した。逆止め弁113は、生成物タンク111へのガス流のタイミングを制御した。生成物流をニードル弁118によって調節し、そして酸素純度を常磁性酸素分析装置116によって測定し、そして流量を流量計117によって測定した。供給ガス温度及び湿度を、システムに通じる供給入口で測定した。システムは、環境制御された実験室内に設置した。
【0033】
吸着剤の物質移動特性を評価するために、標準的な試験手順を用いた。床圧力を約0.3atmから約1.2atmまでサイクル状に形成し、酸素生成物純度を93%で維持し、そして供給・排気ガス表面速度は約0.39ft sec-1であった。これらの目標を達成するために、サイクル時間を僅かに変化させること、そして生成物流量を変化させることが必要であった。供給ガスの湿度、圧力、温度、及び流量を直接的な測定によって割り出した。生成物の流量及び濃度をサイクルの定常状態で測定した。収集されたプロセス・データの全てを使用して、被験吸着剤の物質移動係数kを割り出すために、コンピュータ・シミュレータ・モデルを開発した。このコンピュータ・モデルSIMPACは、1つ又は2つ以上の吸着剤床及び多成分供給ガスを有するサイクルに対応するエネルギー、質量、及び運動量収支を解くプロセス・シミュレータである。プロセス・シミュレータは、所定の範囲の物質移動モデル及び平衡モデルを利用することができる。SIMPACの使用及び検証は、米国特許第5,258,060号明細書に記載されている。これを本明細書中に参考のため引用する。選択された物質移動モデルにおいて、kは、部分圧駆動力:
【数2】

を有する良く知られた線形駆動力モデルから得られた速度定数であり、上記式中、
【数3】

は、ペレット内に吸着された平均量であり、q*は、吸着剤単位体積当たりの吸着平衡量であり、そしてkは物質移動係数である。
【0034】
平衡特性を記述するために単一成分等温線を使用し、軸方向分散が無視できるものであることを割り出し、また非等温エネルギー収支において、自然対流熱伝達モデルを使用した。同定された材料上の水吸着の物質移動挙動を割り出す際には、2つの吸着剤層を有する床を使用した。第1層は水及び二酸化炭素だけを吸着するのに対して、第2層は供給ガス中の成分の全てに対して親和性を有している。第2層は、純粋成分等温線及び物質移動係数の全てが既知である、十分に特徴付けられた材料である。サイクル試験に加えて、試験完了後に、十分に維持されたセクション内で吸着剤カラムから材料を取り出し、脱着ガスの熱重量分析(TGA)又は好ましくは赤外検出を伴う熱重量分析(TGA−IR)によって、材料の水含量を分析した。この直接測定から吸着水のプロフィールを得、これをコンピュータ・シミュレーションの結果とマッチングさせた。kパラメータをこうして割り出した。
【0035】
Alcan AA-300及びAA-400、並びにUOPアルミナを、種々の粒子サイズに対してスクリーニングし、そして上記手順を用いて試験した。床高は2.4〜3.2インチであり、そして床内径は0.88インチであった。前処理床高は1cmであり、供給直線速度は約0.4ft sec-1であった。上記のように、これらの材料に対して割り出された物質移動パラメータを表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
プロセスの主要特性に対する前処理動力学パラメータの効果全体を割り出すために、単床試験を拡大して行った。表2は、全体的な回収率及び床サイズ係数(BSF)に対する前処理動力学特性の影響を示している。吸着剤床の主要部分内に使用される吸着剤はUOP Oxysiv MDX、UOP Oxysive-7、及びパイロット規模LiLSX材料である。同じ主床吸着剤を有するシステム内のこのような性能比較は、高いk値を有する前処理材料が使用される場合に、区別可能な差異を示す。例えば、我々は事例1を、同じOxysiv-MDXが使用され床分割比が30/70である事例7と比較することができる。より大きいk値(200sec-1対30sec-1)を有する前処理材料を使用することにより、回収率は29%から45%まで改善し、事例7における床サイズ係数は、事例1の係数の73%である。
【0038】
【表2】

【実施例】
【0039】
例1
欧州特許出願公開第1598103号明細書に前述した4床法の性能を予測するために、前処理吸着剤の物質移動特性をまた使用した。この4床法では、サイクル時間は6.0〜8.0秒であり、個々のステップ時間は0.75〜1.0秒であった。この4床法をシミュレーション及び実験の双方で実施することにより、前処理層内の汚染物質動力学特性と、携帯型システム内の全体的な生成物回収率及び床サイズ係数との、以前には認識されなかった関係を実証した。表3はこれらの実験結果を要約する。
【0040】
【表3】

【0041】
高速サイクル法において、前処理層内で除去された水の量は、窒素除去の効果に対して強い影響を及ぼす。それというのも、主床吸着剤の一部が不可逆的に汚染されるようになるからである。このような主床汚染を最小限にすることが、所望の性能を維持する上で重要である。前述のように、容量及び吸着動力学特性が、供給ガスからの水除去において重要である。前処理吸着剤は、かなり低い活性化エネルギー(吸着熱)及び高い吸着動力学特性を有していなければならない。いかなる吸着剤上の水に対する吸着熱も無視できるものではないので、吸着剤床内部の熱プロフィールは、汚染物質除去及び再生の有効性の寄与因子となる。水が主吸着剤床内の窒素選択的吸着剤に対して低い脱着熱を有するシステムにおいては、近等温条件でシステムを運転することが有益である。
【0042】
純粋に等温のものとして実施できるプロセスはないが、近等温条件におけるシステムが、吸着過程から周辺環境への高度な熱伝達が行われるシステムとして定義される。従来技術に示されているように、種々の理由から、「コールド・ゾーン」と記述される温度効果が、層状床の界面近くに観察される。界面近くでは、床の温度プロフィールが、供給入口温度に対して極めて低く下落する。改善された熱伝達によって、この温度下落を最小限に抑えることができる。例えば、吸着剤床からカラム壁への熱伝達度は、単一の熱伝達パラメータhwによって記述される。ここでは、hw値が高いほど、狭い床温度プロフィールが狭くなることが示されている。床温度の大きな降下は、「下落」が発生するゾーンの再生のためのエネルギー必要量をより高くする。小型の携帯型吸着システムの場合、真空エネルギーの増大は、圧縮器容量の増大、ひいてはより高い電力及び重量の形でコスト高になる。
【0043】
このような問題に対する解決手段は、前処理吸着剤を再生するのに必要なエネルギーが最小化され、そして吸着熱及び再生熱が吸着剤床から又は吸着剤床へ容易に移動されるような層状吸着剤床を使用することである。この改善手段の効果を図5及び表4に示す。これらは、前記4床システムの性能を示しており、ここでは全体的な生成物回収率及び床サイズ係数が、hwに対して依存関係を有することが明らかになっている。
【0044】
圧力降下作用が、前処理吸着剤を選択して最適化する上で重要である。粒子が小さければ小さいほど、良好な物質移動特性及び高いk値を有することになるので、このような粒子は急速サイクル・システムにおいて好ましい。しかしながら、吸着剤粒子のサイズが低下するのにつれて、圧力降下及び取り扱いに関わる重大な問題が生じる。これらの問題は、特定のサイズ未満の粒子を充填床では実現不能にする。
【0045】
例2
例1で説明した4床法を用いてシミュレーションを行った。1atm、73°F、及び25%相対湿度の周囲条件を想定した。Alcan AA400Gアルミナ前処理層から成る床を、高度に交換されたLiLSX主床層から成る床と一緒に、25/75比(前処理層/主層)で使用した。総サイクル時間は8秒であり、0.87 BTU lb-1 hr-1 °F-1の熱伝達係数を使用した。シミュレーションは、前処理吸着剤粒子サイズ及び水の物質移動係数kwの種々の値に対して行った。kwの値は、
【数4】

の関係に従って変化させた。上記式中、有効拡散率Deffを、全ての粒子サイズに対して一定であることを想定した。固有断熱パワーを比較のため、各事例に対して割り出した。
【0046】
結果を図6に示す。図6は、圧力降下の増大を伴う小さなビード粒子を使用することの生成物回収効果、及びより小さな粒子サイズを使用した場合のパワーの鋭い増大を示している。図6の操作データにおいては捕らえられない操作上の問題は、粒子が擦れることから生じる微粒子の発生である。これが生じる理由は、小さな粒子を動かし振動させるのに必要なエネルギーが、より大きい粒子に対して必要なエネルギーよりも低く、従ってより小さな粒子の摩耗の可能性が高くなることにある。このような微粒子及びダストは、下流側のシステム構成部分、特に弁の目詰まり及び誤動作を招くおそれがある。別の問題は、より小さな粒子に対する吸着膜作用により、物質移動抵抗が増大することである。
【0047】
【表4】

【0048】
例3
上記方法と類似の4床法を用いて、単床試験を行った。平均粒径0.8mmのLiLSX、及び平均粒径2.0mmのAlcoa AL H152前処理吸着剤を、吸着剤カラムにローディングした。サイクル時間を85〜105秒間で変化させるとともに、供給時間を25〜45秒間で変化させた。供給直線速度は0.2〜0.4ft/秒であった。吸着剤カラム長は17インチであり、全長の30%が前処理層であった。酸素生成物純度は90%であり、そして試験完了前の約300時間にわたって安定したままであった。カラム熱伝達係数(HTC)は約0.15BTU lb-1 hr-1 °F-1であった。
【0049】
上記試験及び例は、高速サイクルPSA法の動作を示している。ここでは、各吸着容器は、少なくとも水と窒素と酸素とを含有する供給ガスから水を除去するために、供給端部に吸着剤第1層を有している。酸素生成物を提供するように、乾燥済供給ガスから窒素を優先的に吸着するために、吸着剤第2層を使用する。これらの試験及び例の結果に基づいて、第1層内の吸着剤の物理特性、すなわち特定の吸着水ローディング範囲内における吸着剤上の水の吸着熱と、第1層に対するPSA動作パラメータ、すなわち吸着剤第1層内の水の物質移動係数との所定の組み合わせに応じて、最も効率的なPSA性能を得ることができる。
【0050】
第1層内の吸着剤上の水の選択された吸着熱は、吸着剤1グラム当たりの吸着水のローディング量が約0.05mmol未満であるときに約14kcal/mole以下であり、そして吸着剤第1層内の水の選択された物質移動係数は、約125〜約400sec-1である。水選択的吸着剤のローディング量に対する吸着熱のパラメータが図3にプロットされている。ここでは、これらの吸着剤のうちのいくつかが水ローディング量及び吸着熱の選択範囲内に含まれ、これに対して他の吸着剤はこの範囲に含まれないことが判る。これらの選択範囲の物理特性及び物質移動特性を有する第1層内の吸着剤を、高速サイクルPSA法において有益に使用することができる。高速サイクルPSA法の場合、第1層内の供給ガスの表面接触時間は、約0.08〜約0.50secである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素を生成するための圧力スイング吸着法であって、
(a) 供給端部と生成物端部とを有する少なくとも1つの吸着容器を用意し、該容器は、該供給端部に隣接する吸着剤第1層、及び該第1層と該生成物端部との間に配置された吸着剤第2層を含み、該第1層内の吸着剤が、水と酸素と窒素とを含む混合物からの水の吸着に対して選択的であり、また該第2層内の吸着剤が、酸素と窒素とを含む混合物からの窒素の吸着に対して選択的であり、そして該第1層内の吸着剤上の水の吸着熱が、吸着剤1グラム当たりの吸着水のローディング量が約0.05mmol未満であるときに約14kcal/mole以下であり;
(b) 該吸着容器の供給端部内に、少なくとも酸素と窒素と水とを含む加圧供給ガスを導入し、該ガスを該第1層及び第2層に連続して通し、該第1層内の吸着剤中の水の少なくとも一部を吸着し、そして、該第2層内の吸着剤中の窒素の少なくとも一部を吸着し、該吸着剤第1層内の水の物質移動係数が約125〜約400sec-1であり、そして該第1層内の加圧供給ガスの表面接触時間が約0.08〜約0.50secであり;そして
(c) 該吸着容器の生成物端部から、酸素富化された生成ガスを回収する
ことを含む、
酸素を生成するための圧力スイング吸着法。
【請求項2】
該第1層内の吸着剤が活性アルミナを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該活性アルミナの平均粒径が、約0.3mm〜約0.7mmである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第2層内の吸着剤が、アルゴンと酸素とを含む混合物からのアルゴンの吸着に対して選択的である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
該吸着容器の生成物端部から回収された該生成ガス中の酸素の濃度が、少なくとも85容積%である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該第1層の深さが、該第1層及び第2層の合計深さの約10%〜約40%である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
該第1層の深さが、約0.7〜約13cmである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
該吸着容器が円筒形であり、そして該吸着容器の内径に対する該第1層及び第2層の合計深さの比が、約1.8〜約6.0である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
該圧力スイング吸着法が、該加圧供給ガスを該吸着容器の供給端部内に導入し、そして酸素富化された生成ガスを該吸着容器の生成物端部から回収する供給ステップと、ガスを該吸着容器の供給端部から回収して該第1層及び第2層内の吸着剤を再生する減圧ステップと、1つ又は2つ以上の再加圧ガスを該吸着容器内に導入することにより、該吸着容器を加圧する再加圧ステップと、を少なくとも含む反復サイクルで操作され、そして該供給ステップの継続時間が約0.75秒〜約45秒である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
該サイクルの全継続時間が、約6〜約100秒である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
該酸素富化された生成ガスの流量が、1分間当たり約0.1〜約3.0標準リットルである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
生成ガス中の酸素純度が93%であるときの1分間当たりの該生成ガスの流量(標準リットル)に対する該第1層内の吸着剤の重量(グラム)の比が、約50g/slpm未満である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
生成ガス中の酸素純度が93%であるときの生成ガス中に回収された酸素の量が、該加圧供給ガス中の酸素の量の約35%を上回る、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
該第2層内の吸着剤は、X型ゼオライト、A型ゼオライト、Y型ゼオライト、菱沸石、モルデナイト、及びクリノプチロライトから成る群から選択された1種又は2種以上の吸着剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
該吸着剤が、活性部位カチオンの少なくとも約85%がリチウムである、リチウム交換された低シリカX型ゼオライトである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
該加圧供給ガスが空気である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
酸素を生成するための圧力スイング吸着法であって、
(a) 供給端部と生成物端部とを有する少なくとも1つの吸着容器を用意し、該容器は、該供給端部に隣接する吸着剤の第1層、及び該第1層と該生成物端部との間に配置された吸着剤の第2層を含み、該第1層内の吸着剤が、水と酸素と窒素とを含む混合物からの水の吸着に対して選択的であり、また該第2層内の吸着剤が、酸素と窒素とを含む混合物からの窒素の吸着に対して選択的であり、そして該第1層内の吸着剤上の水の吸着熱が、吸着剤1グラム当たりの吸着水のローディング量が約0.05mmol未満であるときに約14kcal/mole以下であり;
(b) 該吸着容器の供給端部内に、少なくとも酸素と窒素と水とを含む加圧供給ガスを導入し、該ガスを該第1層及び第2層に連続して通し、該第1層内の吸着剤中の水の少なくとも一部を吸着し、そして、該第2層内の吸着剤中の窒素の少なくとも一部を吸着し、該吸着剤第1層内の水の物質移動係数が約125〜約400sec-1であり;そして
(c) 該吸着容器の生成物端部から、酸素富化された生成ガスを回収し、生成ガス中の酸素純度が93%であるときの1分間当たりの該生成ガスの流量(標準リットル)に対する該第1層内の吸着剤の重量(グラム)の比が、約50g/slpm未満である、
ことを含む、
酸素を生成するための圧力スイング吸着法。
【請求項18】
該第1層内の吸着剤が活性アルミナを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
該活性アルミナの平均粒径が、約0.3mm〜約0.7mmである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
第2層内の吸着剤が、アルゴンと酸素とを含む混合物からのアルゴンの吸着に対して選択的である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
該吸着容器の生成物端部から回収された該生成ガス中の酸素の濃度は、少なくとも93容積%である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
該第1層の深さが、該第1層及び第2層の合計深さの約10%〜約40%である、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
該第1層の深さが、約0.7〜約13cmである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
該吸着容器が円筒形であり、そして該吸着容器の内径に対する該第1層及び第2層の合計深さの比が、約1.8〜約6.0である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
該圧力スイング吸着法が、該加圧供給ガスを該吸着容器の供給端部内に導入し、そして酸素富化された生成ガスを該吸着容器の生成物端部から回収する供給ステップと、ガスを該吸着容器の供給端部から回収して該第1層及び第2層内の吸着剤を再生する減圧ステップと、1つ又は2つ以上の再加圧ガスを該吸着容器内に導入することにより、該吸着容器を加圧する再加圧ステップと、を少なくとも含む反復サイクルで操作され、そして該供給ステップの継続時間が約0.75秒〜約45秒である、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
該サイクルの全継続時間が、約6〜約100秒である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
該酸素富化された生成ガスの流量が、1分間当たり約0.1〜約3.0標準リットルである、請求項17に記載の方法。
【請求項28】
生成ガス中の酸素純度が93%であるときの生成ガス中に回収された酸素の量が、該加圧供給ガス中の酸素の量の約35%を上回る、請求項17に記載の方法。
【請求項29】
該第2層内の吸着剤は、X型ゼオライト、A型ゼオライト、Y型ゼオライト、菱沸石、モルデナイト、及びクリノプチロライトから成る群から選択された1種又は2種以上の吸着剤を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項30】
該吸着剤が、活性部位カチオンの少なくとも約85%がリチウムである、リチウム交換された低シリカX型ゼオライトである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
該加圧供給ガスが空気である、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−120014(P2010−120014A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−262790(P2009−262790)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(591035368)エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド (452)
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】7201 Hamilton Boulevard, Allentown, Pennsylvania 18195−1501, USA
【Fターム(参考)】