説明

圧力スイング吸着方法及び装置

【課題】圧力スイング装置の設備投資コストを最小にし、かつ、運転効率を最大にする方法を提供する。
【解決手段】原料端と製品端を有し、吸着剤が充填された二つ以上の複合床10を用意し、原料ガスを該複合床の原料端に導入し該複合床の製品端から製品ガスを抜き出すb1工程、該複合床からしだい減少する圧力で吸着ガスを抜き出すb2工程、該複合床の製品端にパージガスを導入し、原料端からパージガスを抜き出すb3工程、該複合床の製品端および/又は原料端からしだいに増加する圧力で原料ガスを導入するb4工程を、周期的、かつ逐次的に実行する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
圧力スイング吸着法(PSA)は、多量のガス混合物の分離、及び低濃度の望ましくない成分を含むガス流の精製のためのよく知られている方法である。この方法は、広範な原料ガス、操作条件、製品純度、及び製品回収のために開発され、そしてそれらに適合している。多くの圧力スイング吸着装置は、二つ以上の吸着剤床を並行して周期式シーケンスで操作して一定の製品流量を維持すると同時に、選択された床で、吸着/製品の生産、脱圧、排気、パージ、均圧、再昇圧、その他の関連工程など、いろいろな工程が行われる。水素、炭素酸化物、合成ガス、軽質炭化水素、などの有価製品ガスを高い純度及び/又は回収率で製造するためには、多数の処理工程を用いる多数の吸着剤床が必要である。これらの処理工程を用いる複数床PSA装置も、いろいろな工業用途で、及び携帯医療用酸素濃縮装置で、空気からの酸素の回収のために用いられる。
【0002】
吸着容器及び床の適切な選択と設計は、PSA装置の設備投資コストを最小にし運転効率を最大にするのに重要な因子である。処理工程におけるガスと吸着剤との適切な接触を実現するために当該技術ではいろいろなタイプの設計が用いられており、多くは円筒型圧力容器内に配置されるように設計されている。顆粒状の吸着剤が広く用いられており、そしてそれらはガスが軸線方向に流れる円筒型の床、又はガスが半径方向に流れる環状型の床に配置することができる。軸線方向又は半径方向の流れの形態において顆粒状吸着剤床を支持するために、いろいろな方法が用いられる。
【0003】
ガス吸着分離技術の分野では、工場で行われる製造作業の量を最大にし、且つ現場で設置する際に必要な製作及び組立作業の量を最小にする容器設計が引き続き要請されている。このために、ほぼ完成した形で安全に出荷できる吸着剤容器、好ましくは工場で吸着剤が充填された容器が必要である。また、吸着容器内の空隙体積(すなわち、吸着剤によって占められていない空の体積)を最小限にする床の設計も必要である。更に、複数床PSA装置の運転において各吸着床の実質的に同一な性能を保証する吸着装置の設計及び製作方法を用いることが望ましい。その上に、出荷できる最大直径の吸着容器を用いる単一列の装置の能力を超えるガス生産速度の大型PSAプラントのための改良された設計及び運転方法が必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの要求は、以下で説明され、そして特許請求の範囲で規定される本発明の実施形態によって満たされる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一つの実施形態は、2種以上の成分を含む原料ガス混合物の分離のための圧力スイング吸着法を対象とするものであり、この方法は、
(a)一つ以上の複合床を含む圧力スイング吸着装置であり、各複合床が並流配置にある二つ以上の容器内に配置された吸着剤物質を含み、各容器は原料端と製品端とを有する、圧力スイング吸着装置を用意すること、
(b)次の(b1)〜(b4)を含む周期式逐次工程、すなわち、
(b1)原料ガス混合物を該複合床の二つ以上の容器の該原料端に導入し、製品ガスを該複合床の二つ以上の容器の該製品端から抜き出すこと、
(b2)該複合床の二つ以上の容器の該原料端からガスをしだいに減少する圧力で抜き出すこと、
(b3)該複合床の二つ以上の容器の該製品端にパージガスを導入し、そして該複合床の二つ以上の容器の該原料端からパージ排出ガスを抜き出すことによって、該複合床をパージすること、及び、
(b4)該複合床の二つ以上の容器の該製品端及び/又は原料端にガスをしだいに増加する圧力で導入すること、
を含む周期式逐次工程を実行すること、及び、
(c)該逐次工程のいずれかについて、次のもの、すなわち、
(c1)該二つ以上の容器のいずれかのものの原料端(単数又は複数)に導入されるガス、
(c2)該二つ以上の容器のいずれかのものの製品端(単数又は複数)に導入されるガス、
(c3)該二つ以上の容器のいずれかのものの原料端(単数又は複数)から抜き出されるガス、及び、
(c4)該二つ以上の容器のいずれかのものの製品端(単数又は複数)から抜き出されるガス、
からなる群から選択される一つ以上のガスの流量(単数又は複数)を設定すること、
を含む。
【0006】
上記の流量(単数又は複数)は、二つ以上の容器について選ばれた制御パラメータの値を、
(a)該二つ以上の容器の任意の二つについて選ばれた制御パラメータの絶対的な差が予め定められた値より小さくなるように、又は、
(b)該複合床の該二つ以上の容器の各々からの該選ばれた制御パラメータと該複合床の該二つ以上の容器の各々からの該制御パラメータの平均との絶対的な差が予め定められた値より小さくなるように、
維持するよう設定でき、
ここで、各容器についての該制御パラメータは以下のもの、すなわち、
(1)該容器からの製品ガス中の選ばれた成分の時間平均濃度、
(2)該容器からの製品ガス中の選ばれた成分の最小又は最大濃度、
(3)該容器からのパージ排出ガス中の選ばれた成分の時間平均濃度、
(4)該容器からのパージ排出ガス中の選ばれた成分の最小又は最大濃度、
(5)該容器の選ばれた箇所における吸着剤の間隙空間における選ばれた成分の最小又は最大濃度、
(6)該逐次工程の間の選ばれた時点での該容器の二点間の圧力差、
(7)該逐次工程の間の該容器の選ばれた箇所における最低又は最高温度、及び、
(8)該逐次工程の間の該容器の選ばれた箇所における最小又は最大圧力、
からなる群から選択される。
【0007】
本発明の別の実施形態は、一つ以上の複合床を含む圧力スイング吸着装置を含み、各複合床は、吸着剤物質を含み且つ複合床原料端と複合床製品端とを有し、一つ以上の複合床は、複合床原料端マニホールドと複合床製品端マニホールドとを有し、ここで、該一つ以上の複合床の各々は、容器原料端マニホールドと容器製品端マニホールドとを有する並流配置に配列した二つ以上の容器を含み、各容器は吸着剤物質の一部を収容していて且つ容器原料端と容器製品端とを有し、複合床の複合床原料端マニホールドは、その複合床の原料端を容器原料端マニホールドを通して二つ以上の容器の原料端と連通させるようになっており、複合床製品端マニホールドは、その複合床の製品端をそれぞれの容器製品端マニホールドを通して二つ以上の容器の製品端と連通させるようになっており、そして、
(a)容器原料端マニホールドはいずれも、一つ以上の流量制限手段を含み、各手段はそれぞれの容器の原料端へのガス流量を設定し及び/又はそれぞれの容器の原料端から抜き出されるガス流量を設定するようになっており、及び/又は、
(b)容器製品端マニホールドはいずれも、一つ以上の流量制限手段を含み、各手段はそれぞれの容器の製品端へのガス流量を設定し及び/又はそれぞれの容器の製品端から抜き出されるガス流量を設定するようになっている。
【0008】
一つ以上の流量制限手段はいずれも、オリフィス、調整弁、管の口径縮小部分、及び調節可能なストップ逆止弁からなる群から選択できる。
【0009】
本発明の関連実施形態は、二つの複合床を含む圧力スイング吸着装置であって、各複合床は、吸着剤物質を含み且つ複合床原料端と複合床製品端とを有し、各複合床は複合床原料端マニホールドと複合床製品端マニホールドとを有し、ここで、各複合床は、容器原料端マニホールドと容器製品端マニホールドとを有する並流配置に配列された2〜20の容器を含み、各容器は吸着剤物質の一部を収容していて且つ容器原料端と容器製品端とを有し、複合床の複合床原料端マニホールドは、その複合床の原料端を容器原料端マニホールドを通して二つ以上の容器の原料端と連通させるようになっており、複合床製品端マニホールドは、その複合床の製品端をそれぞれの容器製品端マニホールドを通して二つ以上の容器の製品端と連通させるようになっており、そして、各容器原料端マニホールドはオリフィスを含み及び/又は各容器製品端マニホールドはオリフィスを含む。
【0010】
別の関連実施形態は、圧力スイング吸着装置であって、
(a)各々が吸着剤物質を含み且つ複合床原料端と複合床製品端とを有する、一つ以上の複合床、
(b)各複合床の原料端にガスを導入し及び各複合床の原料端からガスを抜き出すようになっている複合床原料端マニホールド、
(c)各複合床の製品端にガスを導入し及び各複合床の製品端からガスを抜き出すようになっている複合床製品端マニホールド、
を含み、一つ以上の複合床の各々は、並流配置にある二つ以上の容器内にそれぞれ配置された吸着剤物質の部分を含み、各容器は原料端と製品端とを有し、二つ以上の容器は、
(d)複合床原料端マニホールドと連通していて、各複合床の原料端へのガスの流れを個々のガス流に分割しそして個々のガス流を二つ以上の容器にそれぞれ導入し、二つ以上の容器から個々のガス流を抜き出し合流させて複合床の原料端からガスの流れを供給するようになっている容器原料端マニホールド、及び、
(e)複合床製品端マニホールドと連通していて、各複合床の製品端へのガスの流れを個々のガス流に分割しそして個々のガス流を二つ以上の容器にそれぞれ導入し、二つ以上の容器から個々のガス流を抜き出し合流させて複合床の製品端からガスの流れを供給するようになっている容器製品端マニホールド、
を含み、そして、(i)容器原料端マニホールドは一つ以上の流量制限手段を含み、各手段はそれぞれの容器の原料端へのガス流量を設定し及びそれぞれの容器の原料端から抜き出されるガス流量を設定するようになっており、及び/又は、(ii)容器製品端マニホールドは一つ以上の流量制限手段を含み、各手段はそれぞれの容器の製品端への選択されたガス流量を設定し及びそれぞれの容器の製品端から抜き出されるガス流量を設定するようになっている、圧力スイング吸着装置を包含する。
【0011】
本発明の更に別の実施形態は、2種以上の成分を含む原料ガス混合物の分離のための圧力スイング吸着法に関し、この方法は、
(a)一つ以上の複合床を含む圧力スイング吸着装置であって、各複合床は並流配置にある二つ以上の容器内に配置された吸着剤物質を含み、各容器は原料端と製品端とを有する圧力スイング吸着装置を用意すること、
(b)以下の(b1)〜(b4)を含む周期式逐次工程、すなわち、
(b1)複合床の二つ以上の容器の原料端に原料ガス混合物を導入し、複合床の二つ以上の容器の製品端から製品ガスを抜き出すこと、
(b2)複合床の二つ以上の容器の原料端からしだいに減少する圧力でガスを抜き出すこと、
(b3)複合床の二つ以上の容器の製品端にパージガスを導入しそして複合床の二つ以上の容器の原料端からパージ排出ガスを抜き出すことにより複合床をパージすること、及び、
(b4)複合床の二つ以上の容器の製品端及び/又は原料端にしだいに増加する圧力でガスを導入すること、
を含む周期式逐次工程を実行すること、
(c)制御パラメータを選択すること、及び、
(d)上記の逐次工程のいずれかについて、
(d1)二つ以上の容器のいずれかのものの原料端(単数又は複数)に導入されるガス、
(d2)二つ以上の容器のいずれかのものの製品端(単数又は複数)に導入されるガス、
(d3)二つ以上の容器のいずれかのものの原料端(単数又は複数)から抜き出されるガス、及び、
(d4)二つ以上の容器のいずれかのものの製品端(単数又は複数)から抜き出されるガス、
からなる群から選択される一つ以上のガスの流量を設定すること、
を含み、ここで、流量(単数又は複数)は、二つ以上の容器のうちの選択された容器についての制御パラメータの値を、選択された容器のうちの任意の二つのものについての値の絶対的な差が予め定められた値より小さくなるように維持するよう設定される。
【0012】
この実施形態では、制御パラメータは、
(1)容器からの製品ガス中の選ばれた成分の時間平均濃度、
(2)容器からの製品ガス中の選ばれた成分の最小又は最大濃度、
(3)容器からのパージ排出ガス中の選ばれた成分の時間平均濃度、
(4)容器からのパージ排出ガス中の選ばれた成分の最小又は最大濃度、
(5)容器内の選ばれた箇所での吸着剤の間隙空間における選ばれた成分の最大又は最小濃度、
(6)逐次工程の間の選ばれた時点での容器内の二点間の圧力差、
(7)逐次工程の間の容器内の選ばれた箇所における最低又は最高温度、及び
(8)逐次工程の間の容器内の選ばれた箇所における最小又は最大圧力、
からなる群から選択できる。
【0013】
本発明の更に別の実施形態は、2種以上の成分を含む原料ガスの分離のための圧力スイング吸着法を包含し、この方法は、
(a)一つ以上の複合床を含む圧力スイング吸着装置であって、各複合床は並流配置にある二つ以上の容器内に配置された吸着剤物質を含み、各容器は原料端と製品端とを有する、圧力スイング吸着装置を用意すること
(b)以下の(b1)〜(b4)を含む周期式逐次工程、すなわち、
(b1)複合床の二つ以上の容器の原料端に原料ガスを導入し、そして複合床の二つ以上の容器の製品端から製品ガスを抜き出すこと、
(b2)複合床の二つ以上の容器の原料端からしだいに減少する圧力のガスを抜き出すこと、
(b3)複合床の二つ以上の容器の製品端にパージガスを導入しそして複合床の二つ以上の容器の原料端からパージ排出ガスを抜き出すことにより複合床をパージすること、及び、
(b4)複合床の二つ以上の容器の製品端及び/又は原料端にしだいに増加する圧力でガスを導入すること、
を含む周期式逐次工程を実行すること、
(c)制御パラメータ、特定の逐次工程、及び該特定逐次工程の間にいずれかの容器に入る又はいずれかの容器を出てゆくガス流、を選択すること、
(d)該特定逐次工程の間に容器に入る又は容器を出てゆく選択されたガス流について流量を増加させたときに該制御パラメータが増加するか減少するかを決定すること、
(e)周期式逐次工程を実行する間、各容器についての制御パラメータの値及び複合床の全ての容器についての制御パラメータの平均値を測定すること、及び、
(f)容器に入る又は容器を出てゆくガス流の流量が(d)で決定したように特定逐次工程の間に増加するときに制御パラメータが増加する場合、且つ、選択された容器についての制御パラメータの値が特定逐次工程の間の複合床の全ての容器についての制御パラメータの平均値よりも大きい場合には、選択された容器に入る又はそれを出てゆくガス流量を減少させること、又は、
(g)容器に入る又は容器を出てゆくガス流の流量が(d)で決定したように特定逐次工程の間に増加するときに制御パラメータが増加する場合、且つ、選択された容器についての制御パラメータの値が特定逐次工程の間の複合床の全ての容器についての制御パラメータの平均値よりも小さい場合には、選択された容器に入る又はそれを出てゆくガス流量を増加させること、又は、
(h)容器に入る又は容器を出てゆくガス流の流量が(d)で決定したように特定逐次工程の間に増加するときに制御パラメータが減少する場合、且つ、選択された容器についての制御パラメータの値が特定逐次工程の間の複合床の全ての容器についての制御パラメータの平均値よりも大きい場合には、選択された容器に入る又はそれを出てゆくガス流量を増加させること、又は、
(i)容器に入る又は容器を出てゆくガス流の流量が(d)で決定したように特定逐次工程の間に増加するときに制御パラメータが減少する場合、且つ、選択された容器についての制御パラメータの値が特定逐次工程の間の複合床の全ての容器についての制御パラメータの平均値よりも小さい場合には、選択された容器に入る又はそれを出てゆくガス流量を減少させること、
を含む。
【0014】
この実施形態では、制御パラメータは、
(1)容器からの製品ガス中の選ばれた成分の時間平均濃度、
(2)容器からの製品ガス中の選ばれた成分の最小又は最大濃度、
(3)容器からのパージ排出ガス中の選ばれた成分の時間平均濃度、
(4)容器からのパージ排出ガス中の選ばれた成分の最小又は最大濃度、
(5)容器内の選ばれた箇所での吸着剤の間隙空間における選ばれた成分の最大又は最小濃度、
(6)逐次工程の間の選ばれた時点での容器内の二点間の圧力差、
(7)逐次工程の間の容器内の選ばれた箇所における最低又は最高温度、及び、
(8)逐次工程の間の容器内の選ばれた箇所における最小又は最大圧力、
からなる群から選択できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態は、一つ以上の複合床を含む圧力スイング吸着装置であって、各複合床が並行配置にある二つ以上の容器内に配置された吸着剤物質を含み、各容器が原料端と製品端を有する、圧力スイング吸着装置を含む。この配置を用いる圧力スイング吸着装置は、周期式のPSA法によって運転され、このPSA法は少なくとも、(1)複合床の二つ以上の容器の原料端に原料ガス混合物を導入し、複合床の二つ以上の容器の製品端から製品ガスを抜き出す工程、(2)複合床の二つ以上の容器の原料端からしだいに減少する圧力のガスを抜き出す工程、(3)複合床の二つ以上の容器の製品端にパージガスを導入しそして複合床の二つ以上の容器の原料端からパージ排出ガスを抜き出すことにより複合床をパージする工程、及び(4)複合床の二つ以上の容器の製品端及び/又は原料端にガスをしだいに増加する圧力で導入する工程、を含む。
【0016】
本開示において、「床」という用語は、当該技術において公知の方法による周期式PSA法の多数の工程の間にガスが導入される及びガスが抜き出される単一容器に配置された一団の吸着剤物質を意味する。「複合床」という用語は、ここでは、二つ以上の並列の容器にそれぞれ収容された二つ以上の量の吸着剤物質からなる吸着剤物質の全体集団と定義される。複合床の吸着剤物質の全量は、二つ以上の並列の容器に収容された吸着剤物質の量の総和である。二つ以上の並列の容器における吸着剤物質は、各容器の吸着剤物質が所定の期間同じ持続時間の同じ処理サイクル工程にかけられるように、全体としてPSAサイクルの工程で複合床への全ガスの流入及びそこからの流出にさらされる。従って、並行する容器はPSAサイクルの工程全体にわたって同期して運転する。
【0017】
ここで用いられる「容器」という用語は、吸着剤物質を収容する内部体積を囲みそして少なくとも一つのガス入口と少なくとも一つのガス出口を有する、中空構造体を意味する。多数の容器は、入口ガス流を入口マニホールドによって複数の部分に分けて、PSAサイクルの工程を実施する間に該入口マニホールドが該複数の部分をそれぞれの容器に導く、並流配置に配列される。並列の各容器からの出口ガス流は、出口マニホールドによって一緒にされて単一の出口ガス流になる。マニホールドとは、一般に、単一の管が二つ以上の管と連通して接続される管アセンブリと定義される。入口ガス流は、並列容器の吸着剤物質によって集合的に形成される複合床へ進み、出口流は並列容器の吸着剤物質によって集合的に形成される複合床から抜き出される。
【0018】
「連通」という用語は、第一及び第二の領域に適用される場合、ガスが接続管及び/又は中間領域を介して第一の領域から第二の領域へ、及び第二の領域から第一の領域へ、流れることができるということを意味する。
【0019】
ここで用いられる一般的な用語「圧力スイング吸着」(PSA)とは、吸着剤の能力に対する圧力の効果を利用してガス混合物を分離する全ての吸着分離装置に対して用いられる。最大圧力は、普通、大気圧よりも高く、最小圧力は大気圧よりも高い、大気圧に等しい、又は大気圧よりも低い場合がある。最小圧力が大気圧よりも低く最大圧力が大気圧よりも高い場合、装置は普通、圧力真空スイング吸着(PVSA)装置と呼ばれる。最大圧力が大気圧に近く最小圧力が大気圧より低い場合、装置は普通、真空スイング吸着(VSA)装置と呼ばれる。
【0020】
原文明細書及び特許請求の範囲で用いられる不定冠詞「a」及び「an」は、明細書及び特許請求の範囲に記載された本発明の実施形態における何らかの構成要件に対して用いられる場合、一つ以上を意味する。「a」及び「an」を使用することは、その意味を単一の構成要件に制限するものではないが、ただしそのような制限が具体的に明記されている場合を除く。単数又は複数の名詞又は名詞句の前の定冠詞「the」は、単数の特定構成要件又は複数の特定構成要件を表すものであり、それが用いられる文脈に応じて単数又は複数の意味を有する。形容詞「any」は、一つ、いくつか、又は数量のいかんによらず無差別的に、全て、を意味する。第一のものと第二のものの間に置かれた「及び/又は」という用語は、(1)第一のもの、(2)第二のもの、及び(3)第一のものと第二のもの、のうちの一つを意味する。
【0021】
従来のPSA装置の単一容器に収容された吸着剤物質の床を、本発明のいろいろな実施形態における複数容器にそれぞれ配置された吸着剤物質の二つ以上の小さな部分を有する複合床で置き換えることができる。複合床の複数容器の各々は、単一容器よりも小さな体積及び/又は小さな直径を有してもよい。複数容器は、本質的に同じ大きさ及び形であっても、あるいはまた望むならば異なる大きさ及び/又は形であってもよい。複数容器は、本質的に同じ量の吸着剤物質を収容してもよく、異なる量の吸着剤物質を収容してもよい。複合床の複数容器は並行して運転され、その際、複合床へのガスの流れは分けられて複数容器に導入され、そして複数容器からのガスの流れは一緒にされて複合床からのガスの流れ全体になる。複数容器の各々は、複合床に収容された全吸着剤物質の一部を収容し、複数容器の吸着剤物質の総量は、複合床で置き換えられた単一容器床における吸着剤物質の総量より少ないか、それと等しいか、又はそれより多くてよい。
【0022】
複合床として機能する吸着剤の一部分を収容する複数並列容器を用いることには、いくつかの利点がある。小さな直径のいくつかの容器は、同じような吸着剤体積、吸着剤層の厚さ、及び容器ヘッド形状の大きな直径の単一容器よりも、空隙の全体積が小さくなる。小さな容器は工場で大量生産でき、大きな直径の容器よりも容易に出荷でき、設置場所への出荷前に管理された環境下で吸着剤を装填することができる。
【0023】
複合床を用いるPSA装置の利点は、運転の潜在的な問題のために相殺されることがある。例えば、各複合床が実質的に同一な複数容器内に配置された吸着剤物質を含む場合、管や機器の配置によって個々の容器への又はそれらからのガスの流れに差を生じることがある。従って、吸着剤物質の複合床の一部を収容する個々の容器の性能が他の容器の性能と異なることがあり、そして複合床の全体としての性能が全ての容器が同一の性能を有する場合と比べて低下することがある。別の潜在的な問題は、容器の製造、吸着剤物質の品質、及び吸着剤物質の装填における望ましくないばらつきによって個々の容器の吸着性能に差が生じ、やはり全体としての性能が低下することがあるということである。考えられる別の運転シナリオでは、複合床における複数容器の実質的に等しい吸着性能が時間と共に変化して、容器の性能が等しくなくなるようになることがある。
【0024】
運転しているPSA装置では、一つ以上の複合床に追加の並列容器を設置することによって既存装置の吸着能力を増強することが必要になることがある。単数又は複数の新しい容器の吸着性能を複合床の既存の容器の性能と合わせることは、困難又は不可能であろう。
【0025】
吸着剤の各床が単一の容器内に設置される従来の複数床PSA装置の場合、床の性能の差は当該技術分野で公知の方法で補償できる。これらの方法は、床間に存在する運転の非対称性を、各床が特定サイクル工程を行う時間に変化をつけることによって、制御弁を操作して床への、床からの、又は床間のガスの流量を調節することによって、あるいはその他の手段によって、補償する。
【0026】
従来技術は、並列の各容器が吸着剤物質を収容していて、並列容器の吸着剤物質全体が周期式PSA法における複合床として動作する複合床の複数の並列容器間の性能の差を補償するように、PSA装置を運転する方法を教示していない。
【0027】
以下で説明する本発明の実施形態は、PSAサイクルにおける一つ以上の処理工程について、各容器への及び/又は各容器からのガス流量を選択的に設定することによって、これらの問題に対処する。こうして、複合床の各容器の性能を必要に応じて調節して、PSA装置の性能を最大にすることができる。
【0028】
ここに記載される複合床の使用は、任意のガス混合物の分離のために任意のPSA処理サイクルによって運転される任意のPSA装置に適用できる。本発明の実施形態は、例として、以下で説明される図2の処理サイクルを用いる空気からの酸素の回収のための図1の二つの複合床のVSA装置の運転によって説明される。
【0029】
従来のPSA装置では、吸着剤物質は、各複合床の底部又は原料端に原料空気を導入し、各複合床の上部又は製品端から製品ガスを抜き出すための適切な手段を備えた、床10と12に収容される。床10と12の各々は、当該技術において公知の手段により単一の圧力容器に収容される。本発明の実施形態を説明する図では、従来の床10と12のそれぞれを、二つ以上の並列容器内に配置された切り離した量の吸着剤物質で置き換えて、以下で更に詳しく説明する複合床を形成する。
【0030】
図1による本発明の実施形態を説明する図では、周囲空気を原料空気送風機14で圧縮して、原料マニホールド16に送給する。サイクルの第一工程、すなわち吸着/製品製造工程では、弁18が開放されて、圧縮された空気が管路47によって複合床10に送り込まれる。空気は複合床10へ進み、そこで空気中の水分が13−Xモレキュラーシーブなどの乾燥剤の第一の層で除去される。次に、乾燥空気は、LiLSXモレキュラーシーブなどの窒素の選択的吸着剤の層を通り抜け、それによって窒素が空気から吸着される。酸素が富化された製品ガスは、管路45と弁22を通って製品マニホールド26へ進む。製品はバッファータンク28を通り、それから使用箇所へと流れてゆく。バッファータンクの出口の後に、流量制御、製品分析、又は他の目的で、追加の機器(図示せず)を含めることができる。
【0031】
サイクルの第二の工程、すなわち吸着/製品製造/パージ供給工程では、弁30も開放して製品ガスの一部を複合床10から複合床12へ流れさせる。このガスは、複合床12に対するパージ流として働く。複合床12はこの時点で、真空送風機40によって弁36とマニホールド38を通して排気されている。しばらくすると、複合床10の吸着剤は窒素に関する吸着容量に近くなり、それ以上の空気原料は酸素製品流中に窒素を破過させるようになる。サイクルの第三工程、すなわちパージ供給工程では、弁18、22及び30が閉じられ、弁32が開放されて、より大きな流量のガスを供給して複合床12をパージする。この時点で、原料送風機14は、複合床の一つに原料空気を供給することが必要になるまで、アイドリング運転させることができる。
【0032】
サイクルの第四工程、すなわち圧力移動供給工程(ときには均圧供給工程と呼ばれる)では、弁36を閉じ、弁34を開放して、真空送風機によって複合床10を脱圧する。弁32を通るガスの流れは、引き続き複合床12を再昇圧する。サイクルの第五工程、すなわち第一排気工程では、弁32を閉じ、複合床10を排気して吸着された窒素を除去する。第六工程、すなわち第二排気工程では、複合床10の弁の位置は変化しない。第六工程は、複合床12について弁位置に変化があるので、第五工程とは別に特定される。第七工程、すなわち第一パージ受け入れ工程では、弁30も開放して、サイクルの第二工程を行っている複合床12からパージガスを供給する。第八工程、すなわち第二パージ受け入れ工程では、弁30を閉じ、弁32を開放して、複合床10にもっと多くのパージ流を供給する。サイクルの第九工程、すなわち圧力移動受け入れ工程(ときには均圧供給工程と呼ばれる)では、弁34を閉じ、複合床12からのガスが複合床10の再昇圧を開始する。サイクルの第十工程であって最後の工程、すなわち原料昇圧工程では、弁32を閉じ、弁18を開いて、原料送風機14からの原料空気で複合床10を再昇圧する。
【0033】
複合床12についてのサイクルは、全サイクル時間の半分だけ時間をずらして実行される複合床10のサイクルと同じ工程を含む。複合床10と12についての工程1から10までの相対的な時間関係を、図2のサイクルチャートに示す。全サイクル時間は40秒と80秒の間の範囲であることができる。サイクルの工程での弁の位置は表1に示される。
【0034】
【表1】

【0035】
従来のPSA装置の規模が大きくなると、製造の問題やその他の制限要因のために、吸着容器の設計に問題が出てくることがある。このような場合、本発明の実施形態により、装置を、複合床として機能する吸着剤物質を収容したいくつかの小さな容器を並列に設置して、少なくとも一つの複合床を含むように設計できる。容器は実質的に同一であってもよく、あるいは設計の制約又は製造上の問題のために大きさ又は寸法が異なっていてもよい。
【0036】
最も広い意味において、本発明の実施形態は、吸着剤物質のいくつかの、すなわちNの、複合床を含むPSA装置に関し、ここではNは1以上である。PSA装置のN個の複合床のそれぞれは、いくつかの、すなわちnの、容器内に配置された吸着剤を含み、ここではnは1よりも大きい。n個の容器は並流配置に配列され、各容器とその中の吸着剤は複合床へのガスの流れ全体の一部分を受け入れ、そして複合床からガス全体の一部分が流出するのに寄与する。N個の複合床のほかに、PSA装置は、吸着剤物質が単一容器に収容されるいくつかの通常の床を有することもでき、この実施形態では、PSA装置は床と複合床の組み合わせになる。
【0037】
上述したように、一つ以上の複合床を有するPSA装置では、複合床の容器の間の性能差を補償することが望ましい。これを行う典型的な方法を以下で説明する。
【0038】
図1のPSA装置において、複合床10は、図3に一例として示したように4個の並列容器を含むことができる。容器10a、10b、10c及び10dは並列に設置され、各容器は複合床10における吸着剤物質の一部を、並行列の容器10a、10b、10c及び10dが複合床10の吸着剤を等量で収容するように含む。この実例の実施形態では、容器10a、10b、10c及び10dは製品端で製品マニホールド301によって接続され、このマニホールドは複合床10の製品端で製品管路45に接続される。容器10a、10b、10c及び10dは原料端で原料マニホールド303によって接続され、このマニホールドは複合床10の原料端で原料管路47に接続される。マニホールド301と303は、容器10a、10b、10c及び10dを並流の配置にする。
【0039】
並列容器のいずれにも、原料端及び/又は製品端に流量制限手段を取り付けることができ、1よりも多くの任意の数の並列容器を用いることができる。図3の例では、4個の容器が用いられ、それぞれの原料端と製品端に流量制限手段が設置されている。従って、容器10aは製品端に流量制限手段305、原料端に流量制限手段307を有し、容器10bは製品端に流量制限手段309、原料端に流量制限手段311を有し、容器10cは製品端に流量制限手段313、原料端に流量制限手段315を有し、容器10dは製品端に流量制限手段317、原料端に流量制限手段319を有する。別の実施形態では、流量制限手段は容器の原料端か又は製品端のどちらかに設置することができる。
【0040】
流量制限手段は、オリフィス、調整弁、管の口径縮小部分、及び調整可能なストップ逆止弁からなる群から選択できる。調整弁は、手で、又は遠隔位置から操作されるバルブポジショナー装置によって調整されるようになっている弁でよい。バルブポジショナーは、所望なら中央プロセス制御装置によって操作してもよい。調整可能なストップ逆止弁は、ストップによって内部逆止メカニズムが完全に閉じるのを防止する逆止弁手段である。ストップは、装置を運転中に調整することができる。ガスの流れが調整可能なストップ逆止弁を一方向に通過するとき、弁の内部メカニズムは流れに対する制限を少なくし、その方向に比較的大きな流量でガスが流れることを可能にする。ガスの流れがこの弁を逆方向に通過するとき、調整可能なストップは内部メカニズムが完全に閉じるのを妨げ、流れが通過するのを可能にするが、流れにより大きな制限を加え、それにより逆方向には比較的少量のガスを流れさせる。調整可能なストップ逆止弁の一例は、Rexroth Floreg(商標)流量調節弁である。他の流量制限手段は、普通、PSA装置が運転されていないときに変更され、あるいはまたこれらの手段は、個々の容器に隔離弁が取り付けられている場合、PSAの運転中に変更してもよい。
【0041】
各手段の流量制限の度合は、当てはまる処理サイクル工程において容器の原料端と製品端への、及びそれらからの、適切な流量の設定を可能にするように、必要に応じて選ぶことができる。各手段の流量制限の度合は、後で述べる基準に従って、容器10a、10b、10c及び10dで同等の又はほとんど同等の吸着性能が得られるように選ばれる。装置が、例えば図2及び表1のサイクルに従って運転される場合、容器の原料端における流量制限手段は、吸着/製品製造工程及び原料昇圧工程でのその容器へのガスの流量、及び排気工程及びパージ工程でのその容器からのガスの流量に影響を及ぼす。同様に、容器の製品端における流量制限手段は、吸着/製品製造工程、吸着/製品製造/パージ供給工程、圧力移動供給工程、圧力移動受け入れ工程、パージ供給工程及びパージ受け入れ工程での、その容器からのガスの流量に影響を及ぼす。
【0042】
異なる選ばれたサイクル工程での異なるガス流量の設定を可能にする別の実施形態が考えられる。これらの別の実施形態の一つを図4の例でもって説明し、この例では、各容器の原料端に二つの並列の流量制限手段を取り付けることができ、各手段はその手段を一方向にのみ流れるのを可能にするため隣接する逆止弁を有するように、マニホールドが設けられている。この実施形態では、原料マニホールド401は管路47に接続され、製品マニホールド402は管路45に接続されている。容器10aには、流量制限手段403と容器10aの原料端への流れだけを可能にする逆止弁404が設けられ、その流れは吸着/製品製造工程及び原料昇圧工程の際に生じる。容器10aにはまた、流量制限手段405と容器10aの原料端からの流れだけを可能にする逆止弁407も設けられ、その流れはその複合床の排気工程とパージ工程の際に生じる。同様の流量制限手段409、411、413、415、417及び419と逆止弁421、423、425、427、429及び431が、それぞれ容器10b、10c及び10dの原料端に、図示されているように設置される。図4の実施形態では、容器の製品端に流量制限手段は示されていないが、別の実施形態において所望されるならばそのような手段を容器の製品端で用いてもよい。
【0043】
もう一つの実施形態を図5の例でもって説明し、この例では、二つの別々のマニホールドが容器の原料端に設けられ、原料マニホールド501は容器への原料ガスの導入を可能にし、排気マニホールド503は容器からの排気及びパージガスの抜き出しを可能にする。原料マニホールド501は弁18を介して原料マニホールド16に接続され、排気マニホールド503は弁34を介して排気マニホールド38に接続される。製品マニホールド504は、弁26、30及び32と連通している管路45に接続される。原料マニホールド501は、流量制限手段505、507、509及び511をそれぞれ容器10a、10b、10c及び10dの原料端に設置するのを可能にし、これらの手段は、吸着/製品製造工程及び原料再昇圧工程の際にそれぞれの容器への原料ガスの流量に影響を及ぼす。排気マニホールド503は、流量制限手段513、515、517及び519をそれぞれ図示のように容器10a、10b、10c及び10dの原料端に設置するのを可能にし、これらの手段は排気工程及びパージ工程の際に容器からのガスの流量に影響を及ぼす。図5の実施形態では容器の製品端に流量制限手段は示されていないが、別の実施形態において所望されるならばそのような手段を容器の製品端で用いてもよい。
【0044】
別の実施形態を図6の例でもって説明し、この例では、二つの別々のマニホールドが容器の製品端に設けられ、マニホールド601は容器からの製品ガスの抜き出しを可能にし、マニホールド603は容器へのパージ受け入れガス及び圧力移動受け入れガスの導入、及び容器からのパージ供給ガス及び圧力移動供給ガスの抜き出しを可能にする。マニホールド601は弁22を介して製品マニホールド26に接続され、マニホールド603は弁30と32に接続される。マニホールド603は調整可能なストップ逆止弁605、607、609及び611を、それぞれ容器10a、10b、10c及び10dの製品端に含む。図6の実施形態は、吸着/製品製造工程の際に容器からの自由なガスの流れを可能にし、また、圧力移動供給工程、圧力移動受け入れ工程、パージ供給工程及びパージ受け入れ工程の際に容器への及び容器からの流量の選択的な制限を可能にする。この構成を用いれば、パージ供給工程及び圧力移動供給工程の際の各容器について容器製品端における流量の制限を、パージ受け入れ工程及び圧力移動受け入れ工程の際の製品端における流量の制限に影響を及ぼすことなく、吸着/製品製造工程の際の流れに影響を及ぼさずに、調整することができる。容器の原料端では、流量制限手段を用いてもよく、用いなくてもよい。別の実施形態は、マニホールド601に流量制限手段を含むことができる。
【0045】
図3、4、5及び6の実施形態のいずれにおいても、各複合床の並列の複数容器の吸着性能をバランスさせるために、流量制限手段を用いて、選ばれた処理工程についてガス流量を設定することができる。本発明の広範な実施形態の範囲内で使用するために、流量制限手段のその他の構成を考えることができる。
【0046】
複合床の複数容器のバランスがとれた性能は、床の吸着容器からの製品ガス流が製品純度に関して同様であるとき、すなわち、製品ガス流の選ばれた成分の濃度のばらつきが最大許容値よりも小さいときに達成される。バランスのとれた性能の達成は、例えば、各並列容器の製品端から製品ガスを抜き出す1以上の任意の工程における選ばれた成分の時間平均濃度によって示すことができる。バランスのとれた性能の達成は、以下で検討するように、その他の制御パラメータによって指示してもよい。
【0047】
いろいろな制御パラメータを監視して、容器がバランスのとれた動作状態にあるとき、又はどれかの容器が他の容器とバランスのとれた動作をしていない程度、を判定することができる。一つの制御パラメータは、上述のように製品純度を表すために選ばれる各容器からの製品ガス中の選ばれた成分の濃度である。他の制御パラメータとしては、例えば、いずれかの容器からのパージ排出ガス中の選ばれた成分の濃度、いずれかの容器からのパージ排出ガス中の選ばれた成分の最小又は最大濃度、容器の選ばれた箇所における吸着剤の間隙空間における選ばれた成分の最大又は最小濃度、及び逐次工程の間の選ばれた時点での容器の二点間の圧力差、を挙げることができる。容器の運転を監視するために、他の代わりの制御パラメータを考えてもよい。
【0048】
制御パラメータとして、又はバランスのとれた運転の基準として用いられる場合、「濃度」又は「ガス濃度」という一般的用語は、(1)選ばれたPSAサイクル工程における特定時点で測定される濃度、及び/又は(2)その工程の持続時間にわたる時間平均濃度、及び/又は(3)その工程の間における最大又は最小値である濃度、を意味する。
【0049】
容器の運転を監視するために用いられる制御パラメータは、選ばれた制御パラメータが特定の一組の運転条件に合致するときに、複合床の並列容器がバランスのとれた運転に関する選ばれた製品ガス組成の基準を満たすように、上述したバランスのとれた運転の基準と相関すべきである。制御パラメータが製品ガスの組成である場合、バランスのとれた運転に関する基準との相関関係は必然的なものである。製品ガスの組成と他の制御パラメータとの相関関係は、所定のPSA装置及びサイクルに関して実験的に確立できる。相関関係が確立されたならば、その制御パラメータをその後の運転の監視に用いることができる。
【0050】
複合床の並列容器の吸着性能をバランスさせる最初の工程は、制御パラメータ、特定の逐次工程(例えば、表1の典型的な処理サイクルに関して上述した工程の一つ)、及びその特定の逐次工程で容器に入る又は容器を出てゆくガス流、を選ぶことである。制御パラメータの選択は、吸着剤の特性、分離するガス、及び分離のために用いられるPSA処理サイクルに依存する。分離するガス及び使用するPSA処理サイクルによっては、二つ以上の制御パラメータを用いる運転計画も可能である。望ましい制御パラメータは、一般的には、次のいずれかの特性、すなわち、(a)吸着容器の性能のバランスの変化に対する適度な感度を示すこと、(b)上記の定義に従って容器間で性能がバランスしているとき容器間で制御パラメータが等しくなること、(c)容器性能の変化に対して速やかな応答を示すこと、及び(d)容易に測定又は計算されること、のうちのいずれかを有する。
【0051】
制御パラメータが選ばれ、上で定義されたバランスのとれた運転の基準と関連づけられた後に、複合床の一つ以上の容器のバランスのとれた又は実質的にバランスのとれた運転を達成するのに必要な実際の処理動作を決定するために運転計画が定められる。運転計画は、容器間の所望の度合のバランスを達成するために、測定された制御パラメータに基づいて流量制限手段に対して加えるべき変更を決定する。容器についての流量制限手段における変更に対するその容器についての制御パラメータの応答は、次の二つの方向のどちらかである。一方の運転シナリオでは、流量制限手段をより制限的にすると、すなわち、ガス流量が減少すると、容器についての制御パラメータの値は増加する。他方の運転シナリオでは、流量制限手段をより制限的にすると、すなわち、ガス流量が減少すると、容器についての制御パラメータの値は減少する。
【0052】
一例として、サイクルの間の最大圧力を制御パラメータとして選定する場合、ある容器についてのこのパラメータの値は、その容器の入口の流量制限手段をより制限的にして入口ガスの流量を減少させると、減少する。これは、高圧原料供給工程で容器に入ってくる原料ガスが少ないために起こる。別の例として、容器を出てゆく製品の純度を制御パラメータとして選択する場合、ある容器におけるこの制御パラメータの値は、その容器の出口の流量制限手段をより制限的にしてその容器からのガスの流出を減少させると、増加する。これは、製品製造工程で容器を出てゆく製品ガスが少ないために起こる。
【0053】
流量制限手段の各々での変化に対する制御パラメータの実際の応答は、それまでの経験から知ることができる。それが知られていない場合、流量制限手段に変化を加え、その変化に対する制御パラメータの応答を監視することによって、PSA装置で実験的に決定できる。その後、この情報を用いてその流量制限手段に更に変化を加えて、複合床の容器間の運転のバランスを達成することができる。
【0054】
流量制限手段の制限をより多く又はより少なくして容器への又は容器からのガス流量を変化させ、そしてその容器の制御パラメータに応答が生ずる場合は、複合床の他の容器ではそのパラメータの応答が逆になる。これは、複合床の各容器はそれぞれ、複合床への全ガス流量の一部を受け入れ、そして一つの容器への又はそこからのガスの流量の変化は、他の容器への又はそこからのガスの流量に変化を、ただし方向は反対に、生じさせるからである。各容器における制御パラメータの応答の大きさは異なってもよい。サイクルの間の複合床の最大圧力が制御パラメータとして選ばれた例に戻ると、ある容器の入口の流量制限手段をより制限的にして容器へのガス流量を減らすとその容器についての制御パラメータの値が減少する場合、複合床の全ての容器の他の流量制限手段(もしあれば)が変化しなければ、他の容器へはより多くの原料ガスが流れるので、他の容器では制御パラメータの値は上昇する。
【0055】
流量制限手段の各々での変化に対する制御変数の応答が知られると、複合床における容器をバランスさせる計画は、表2に記載されているシナリオに従って決定される。
【0056】
【表2】

【0057】
上で説明し、表2の左欄にまとめたように、選ばれた流量制限手段によるガス流量の変化に対して二つの制御パラメータの応答特性があり、すなわち、(1)流量が増加すると制御パラメータが増加するもの、及び(2)流量が増加すると制御パラメータが減少するものがある。実際のPSAの運転の際の全ての容器について制御パラメータの値が求められると、これらの二つの応答特性の各々について、二つの実際の運転状況が起こり得るものであり、すなわち、(a)選ばれた容器についての制御パラメータが複合床の全ての容器の制御パラメータの平均より大きくなり、(b)選ばれた容器についての制御パラメータが複合床の全ての容器の制御パラメータの平均より小さくなる。表2の中央の欄に見られるように、選ばれた容器についての運転状況(1)(a)、(1)(b)、(2)(a)及び(2)(b)の各々について、表2の右欄に記載されているように特定の運転の変更が必要になる。これらの変更は次のとおりであり、すなわち、運転状況(1)(a)については、選択されたガス流量を減少させ、運転状況(1)(b)については、選択されたガス流量を増加させ、運転状況(2)(a)については、選択されたガス流量を増加させ、そして運転状況(2)(b)については、選択されたガス流量を減少させる。
【0058】
容器の流量制限手段が最小制限の位置にある場合、すなわち、最大の流量を可能にする場合、且つ、表2のロジックがその手段の制限を更に小さくして流量を増加させるべきことを示している場合には、複合床の他の容器(単数又は複数)の流量制限手段の制限を更に大きくして、その容器又はそれらの容器の対応する流量を減少させるべきである。
【0059】
一般に、容器の性能をバランスさせる最初の工程は、制御パラメータが他の容器の又は全ての容器についての制御パラメータの平均からの最大のずれ(正又は負)を示す容器(単数又は複数)を対象とすべきである。これは、劣った性能を示す容器は吸着した成分が製品流へ漏れだす危険があるからである。少量の漏れだしは製品の質を実質的に低下させ、漏れだしを防止又は矯正することは生産における大きな利益になる。他方において、多くのPSA装置の場合、複合床の容器の平均よりもはるかに優れた性能を示す容器は必要以上に高品質の製品ガスを作っており、その容器からの製品ガスの品質を平均に近づけることによって、その容器からの、従って複合床からの、製品の流量を増加させることができる。
【0060】
容器当たりの流量制限手段の数は、図3に示されているように入口の単一の手段及び出口の単一の手段に限定されない。例えば、図4は、流量制限手段が各容器の原料端に設置されてガスが原料端に流入するときに機能し、別の流量制限手段が原料端に設置されてガスが容器の原料端から流れるときに機能する4つの容器の配列を示している。逆止弁を用いて、各流量制限手段を通る流れの方向をどちらにするかを選択する。その他の変形例については、図5と6を参照して上で検討されている。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】典型的な圧力スイング吸着装置の概略流れ図である。
【図2】図1の装置を用いて運転することができるプロセスのサイクルチャートである。
【図3】図1の装置で使用するための複数容器床の概略流れ図である。
【図4】図1の装置で使用するための別の複数容器床の概略流れ図である。
【図5】図1の装置で使用するための更に別の複数容器床の概略流れ図である。
【図6】図1の装置で使用するための別の複数容器床の概略流れ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上の成分を含む原料ガス混合物の分離のための圧力スイング吸着方法であって、
(a)一つ以上の複合床を含む圧力スイング吸着装置であり、各複合床が並流配置にある二つ以上の容器内に配置された吸着剤物質を含み、各容器は原料端と製品端とを有する、圧力スイング吸着装置を用意すること、
(b)次の(b1)〜(b4)を含む周期式逐次工程、すなわち、
(b1)原料ガス混合物を該複合床の二つ以上の容器の該原料端に導入し、製品ガスを該複合床の二つ以上の容器の該製品端から抜き出すこと、
(b2)該複合床の二つ以上の容器の該原料端からガスをしだいに減少する圧力で抜き出すこと、
(b3)該複合床の二つ以上の容器の該製品端にパージガスを導入し、そして該複合床の二つ以上の容器の該原料端からパージ排出ガスを抜き出すことによって、該複合床をパージすること、及び、
(b4)該複合床の二つ以上の容器の該製品端及び/又は原料端にガスをしだいに増加する圧力で導入すること、
を含む周期式逐次工程を実行すること、及び、
(c)該逐次工程のいずれかについて、次のもの、すなわち、
(c1)該二つ以上の容器のいずれかのものの原料端(単数又は複数)に導入されるガス、
(c2)該二つ以上の容器のいずれかのものの製品端(単数又は複数)に導入されるガス、
(c3)該二つ以上の容器のいずれかのものの原料端(単数又は複数)から抜き出されるガス、及び、
(c4)該二つ以上の容器のいずれかのものの製品端(単数又は複数)から抜き出されるガス、
からなる群から選択される一つ以上のガスの流量(単数又は複数)を設定すること、
を含む圧力スイング吸着方法。
【請求項2】
二つ以上の容器について選ばれた制御パラメータの値を、
(a)該二つ以上の容器の任意の二つについて選ばれた制御パラメータの絶対的な差が予め定められた値より小さくなるように、又は、
(b)該複合床の該二つ以上の容器の各々からの該選ばれた制御パラメータと該複合床の該二つ以上の容器の各々からの該制御パラメータの平均との絶対的な差が予め定められた値より小さくなるように、
維持するよう、前記流量(単数又は複数)を設定し、
ここで、各容器についての該制御パラメータは以下のもの、すなわち、
(1)該容器からの製品ガス中の選ばれた成分の時間平均濃度、
(2)該容器からの製品ガス中の選ばれた成分の最小又は最大濃度、
(3)該容器からのパージ排出ガス中の選ばれた成分の時間平均濃度、
(4)該容器からのパージ排出ガス中の選ばれた成分の最小又は最大濃度、
(5)該容器の選ばれた箇所における吸着剤の間隙空間における選ばれた成分の最小又は最大濃度、
(6)該逐次工程の間の選ばれた時点での該容器の二点間の圧力差、
(7)該逐次工程の間の該容器の選ばれた箇所における最低又は最高温度、及び、
(8)該逐次工程の間の該容器の選ばれた箇所における最小又は最大圧力、
からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
吸着剤物質の二つ以上の複合床を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
原料ガス混合物が空気であり、製品ガスが85体積%を超える酸素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
吸着剤物質の二つの複合床からなり、各複合床が2から20の容器からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
各容器についての制御パラメータが容器の出口から抜き出される製品ガス中の酸素の時間平均濃度である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
一つ以上の複合床を含む圧力スイング吸着装置であって、各複合床は、吸着剤物質を含み且つ複合床原料端と複合床製品端とを有し、該一つ以上の複合床は、複合床原料端マニホールドと複合床製品端マニホールドとを有し、ここで、該一つ以上の複合床の各々は、容器原料端マニホールドと容器製品端マニホールドとを有する並流配置に配列した二つ以上の容器を含み、各容器は吸着剤物質の一部を収容していて且つ容器原料端と容器製品端とを有し、複合床の複合床原料端マニホールドは、その複合床の原料端を容器原料端マニホールドを通して二つ以上の容器の原料端と連通させるようになっており、複合床製品端マニホールドは、その複合床の製品端をそれぞれの容器製品端マニホールドを通して二つ以上の容器の製品端と連通させるようになっており、そして、
(a)容器原料端マニホールドはいずれも、一つ以上の流量制限手段を含み、各手段はそれぞれの容器の原料端へのガス流量を設定し及び/又はそれぞれの容器の原料端から抜き出されるガス流量を設定するようになっており、及び/又は、
(b)容器製品端マニホールドはいずれも、一つ以上の流量制限手段を含み、各手段はそれぞれの容器の製品端へのガス流量を設定し及び/又はそれぞれの容器の製品端から抜き出されるガス流量を設定するようになっている、
圧力スイング吸着装置。
【請求項8】
一つ以上の流量制限手段のいずれか一つが、オリフィス、調整弁、管の口径縮小部分、及び調節可能なストップ逆止弁からなる群から選択される、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
吸着剤物質の二つの複合床からなり、各複合床が2〜20の容器からなる、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
一つ以上の流量制限手段はいずれもオリフィスである、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
二つの複合床を含む圧力スイング吸着装置であって、各複合床は、吸着剤物質を含み且つ複合床原料端と複合床製品端とを有し、各複合床は複合床原料端マニホールドと複合床製品端マニホールドとを有し、ここで、各複合床は、容器原料端マニホールドと容器製品端マニホールドとを有する並流配置に配列された2〜20の容器を含み、各容器は吸着剤物質の一部を収容していて且つ容器原料端と容器製品端とを有し、複合床の複合床原料端マニホールドは、その複合床の原料端を容器原料端マニホールドを通して二つ以上の容器の原料端と連通させるようになっており、複合床製品端マニホールドは、その複合床の製品端をそれぞれの容器製品端マニホールドを通して二つ以上の容器の製品端と連通させるようになっており、そして、
(a)各容器原料端マニホールドがオリフィスを含み、及び/又は、
(b)各容器製品端マニホールドがオリフィスを含む、
圧力スイング吸着装置。
【請求項12】
圧力スイング吸着装置であって、
(a)各々が吸着剤物質を含み且つ複合床原料端と複合床製品端とを有する、一つ以上の複合床、
(b)各複合床の原料端にガスを導入し及び各複合床の原料端からガスを抜き出すようになっている複合床原料端マニホールド、
(c)各複合床の製品端にガスを導入し及び各複合床の製品端からガスを抜き出すようになっている複合床製品端マニホールド、
を含み、一つ以上の複合床の各々は、並流配置にある二つ以上の容器内にそれぞれ配置された吸着剤物質の部分を含み、各容器は原料端と製品端とを有し、ここで、二つ以上の容器は、
(d)複合床原料端マニホールドと連通していて、各複合床の原料端へのガスの流れを個々のガス流に分割しそして個々のガス流を二つ以上の容器にそれぞれ導入し、二つ以上の容器から個々のガス流を抜き出し合流させて複合床の原料端からガスの流れを供給するようになっている容器原料端マニホールド、及び、
(e)複合床製品端マニホールドと連通していて、各複合床の製品端へのガスの流れを個々のガス流に分割しそして個々のガス流を二つ以上の容器にそれぞれ導入し、二つ以上の容器から個々のガス流を抜き出し合流させて複合床の製品端からガスの流れを供給するようになっている容器製品端マニホールド、
を含み、そして、(i)容器原料端マニホールドは一つ以上の流量制限手段を含み、各手段はそれぞれの容器の原料端へのガス流量を設定し及びそれぞれの容器の原料端から抜き出されるガス流量を設定するようになっており、及び/又は、(ii)容器製品端マニホールドは一つ以上の流れ制限手段を含み、各手段はそれぞれの容器の製品端への選択されたガス流量を設定し及びそれぞれの容器の製品端から抜き出されるガス流量を設定するようになっている、圧力スイング吸着装置。
【請求項13】
二つ以上の複合床を含む、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
2種以上の成分を含む原料ガス混合物の分離のための圧力スイング吸着方法であって、
(a)一つ以上の複合床を含む圧力スイング吸着装置であって、各複合床は並流配置にある二つ以上の容器内に配置された吸着剤物質を含み、各容器は原料端と製品端とを有する圧力スイング吸着装置を用意すること、
(b)以下の(b1)〜(b4)を含む周期式逐次工程、すなわち、
(b1)複合床の二つ以上の容器の原料端に原料ガス混合物を導入し、複合床の二つ以上の容器の製品端から製品ガスを抜き出すこと、
(b2)複合床の二つ以上の容器の原料端からしだいに減少する圧力でガスを抜き出すこと、
(b3)複合床の二つ以上の容器の製品端にパージガスを導入しそして複合床の二つ以上の容器の原料端からパージ排出ガスを抜き出すことにより複合床をパージすること、及び、
(b4)複合床の二つ以上の容器の製品端及び/又は原料端にしだいに増加する圧力でガスを導入すること、
を含む周期式逐次工程を実行すること、
(c)制御パラメータを選択すること、及び、
(d)上記の逐次工程のいずれかについて、
(d1)二つ以上の容器のいずれかのものの原料端(単数又は複数)に導入されるガス、
(d2)二つ以上の容器のいずれかのものの製品端(単数又は複数)に導入されるガス、
(d3)二つ以上の容器のいずれかのものの原料端(単数又は複数)から抜き出されるガス、及び、
(d4)二つ以上の容器のいずれかのものの製品端(単数又は複数)から抜き出されるガス、
からなる群から選択される一つ以上のガスの流量を設定すること、
を含み、ここで、流量(単数又は複数)は、二つ以上の容器のうちの選択された容器についての制御パラメータの値を、選択された容器のうちの任意の二つのものについての値の絶対的な差が予め定められた値より小さくなるように維持するよう設定される、圧力スイング吸着方法。
【請求項15】
前記制御パラメータを、
(1)容器からの製品ガス中の選ばれた成分の時間平均濃度、
(2)容器からの製品ガス中の選ばれた成分の最小又は最大濃度、
(3)容器からのパージ排出ガス中の選ばれた成分の時間平均濃度、
(4)容器からのパージ排出ガス中の選ばれた成分の最小又は最大濃度、
(5)容器内の選ばれた箇所での吸着剤の間隙空間における選ばれた成分の最大又は最小濃度、
(6)逐次工程の間の選ばれた時点での容器内の二点間の圧力差、
(7)逐次工程の間の容器内の選ばれた箇所における最低又は最高温度、及び
(8)逐次工程の間の容器内の選ばれた箇所における最小又は最大圧力、
からなる群から選択する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
原料ガス混合物が空気であり、製品ガスが85体積%を超える酸素を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
制御パラメータが容器の出口から抜き出された製品ガス中の酸素の時間平均酸素濃度である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
2種以上の成分を含む原料ガスの分離のための圧力スイング吸着方法であって、
(a)一つ以上の複合床を含む圧力スイング吸着装置であって、各複合床は並流配置にある二つ以上の容器内に配置された吸着剤物質を含み、各容器は原料端と製品端とを有する、圧力スイング吸着装置を用意すること
(b)以下の(b1)〜(b4)を含む周期式逐次工程、すなわち、
(b1)複合床の二つ以上の容器の原料端に原料ガスを導入し、そして複合床の二つ以上の容器の製品端から製品ガスを抜き出すこと、
(b2)複合床の二つ以上の容器の原料端からしだいに減少する圧力のガスを抜き出すこと、
(b3)複合床の二つ以上の容器の製品端にパージガスを導入しそして複合床の二つ以上の容器の原料端からパージ排出ガスを抜き出すことにより複合床をパージすること、及び、
(b4)複合床の二つ以上の容器の製品端及び/又は原料端にしだいに増加する圧力でガスを導入すること、
を含む周期式逐次工程を実行すること、
(c)制御パラメータ、特定の逐次工程、及び該特定逐次工程の間にいずれかの容器に入る又はいずれかの容器を出てゆくガス流、を選択すること、
(d)該特定逐次工程の間に容器に入る又は容器を出てゆく選択されたガス流について流量を増加させたときに該制御パラメータが増加するか減少するかを決定すること、
(e)周期式逐次工程を実行する間、各容器についての制御パラメータの値及び複合床の全ての容器についての制御パラメータの平均値を測定すること、及び、
(f)容器に入る又は容器を出てゆくガス流の流量が(d)で決定したように特定逐次工程の間に増加するときに制御パラメータが増加する場合、且つ、選択された容器についての制御パラメータの値が特定逐次工程の間の複合床の全ての容器についての制御パラメータの平均値よりも大きい場合には、選択された容器に入る又はそれを出てゆくガス流量を減少させること、又は、
(g)容器に入る又は容器を出てゆくガス流の流量が(d)で決定したように特定逐次工程の間に増加するときに制御パラメータが増加する場合、且つ、選択された容器についての制御パラメータの値が特定逐次工程の間の複合床の全ての容器についての制御パラメータの平均値よりも小さい場合には、選択された容器に入る又はそれを出てゆくガス流量を増加させること、又は、
(h)容器に入る又は容器を出てゆくガス流の流量が(d)で決定したように特定逐次工程の間に増加するときに制御パラメータが減少する場合、且つ、選択された容器についての制御パラメータの値が特定逐次工程の間の複合床の全ての容器についての制御パラメータの平均値よりも大きい場合には、選択された容器に入る又はそれを出てゆくガス流量を増加させること、又は、
(i)容器に入る又は容器を出てゆくガス流の流量が(d)で決定したように特定逐次工程の間に増加するときに制御パラメータが減少する場合、且つ、選択された容器についての制御パラメータの値が特定逐次工程の間の複合床の全ての容器についての制御パラメータの平均値よりも小さい場合には、選択された容器に入る又はそれを出てゆくガス流量を減少させること、
を含む、圧力スイング吸着方法。
【請求項19】
制御パラメータを、
(1)容器からの製品ガス中の選ばれた成分の時間平均濃度、
(2)容器からの製品ガス中の選ばれた成分の最小又は最大濃度、
(3)容器からのパージ排出ガス中の選ばれた成分の時間平均濃度、
(4)容器からのパージ排出ガス中の選ばれた成分の最小又は最大濃度、
(5)容器内の選ばれた箇所での吸着剤の間隙空間における選ばれた成分の最大又は最小濃度、
(6)逐次工程の間の選ばれた時点での容器内の二点間の圧力差、
(7)逐次工程の間の容器内の選ばれた箇所における最低又は最高温度、及び、
(8)逐次工程の間の容器内の選ばれた箇所における最小又は最大圧力、
からなる群から選択する、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−55408(P2008−55408A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−188433(P2007−188433)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(591035368)エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド (452)
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】7201 Hamilton Boulevard, Allentown, Pennsylvania 18195−1501, USA
【Fターム(参考)】