説明

圧力制御弁

【課題】ばねの耐久性を向上できる圧力制御弁を提供する。
【解決手段】排気管45に設けた支持部3に支軸4を介して揺動可能に取り付けられ、開口端2を開閉可能な弁体6と、弁体6に付勢力を付与して開口端2を閉塞させる付勢体5とを備え、排気管45内の排気圧力が付勢力より大きくなると、開口端2を開放する圧力制御弁1であって、付勢体5は、開口端2の開口面Sに平行になるように排気管45に取り付けられたばね軸5cに、共に外嵌支持された2つのねじりコイルばね5a、5bを有し、2つのねじりコイルばね5a、5bの各々は、一方の端部に排気管45側に固定された固定アーム5fa、5fbを、もう一方の端部に可動アーム5ma、5mbを備え、可動アーム5ma、5mbは、互いに、ジョイント7により連結し、2つのねじりコイルばね5a、5bは、ジョイント7を介して弁体6に付勢力を付与する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気管に設けられる圧力制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
排気管に設けられる圧力制御弁としては、内燃機関の回転速度が低いときは排気管の開口端を閉塞して消音効果を高め、回転速度が高いときには排気管の開口端を開放して背圧を低減させるものが提案されている(特許文献1等参照)。そして、ばねの付勢力で開口端を閉塞させ、そのばねの付勢力の作用点が摺動する圧力制御弁が提案されている(特許文献2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2892160号公報
【特許文献2】特許第4141601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の圧力制御弁では、ばねの付勢力を確保するために、ばね定数が高く設定されていた。開放時には閉塞時よりもばねの付勢力が大きくなるので、開放時にばねに作用する応力が大きくなり、ばねの耐久性が低下しやすいという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、ばねの耐久性を向上できる圧力制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、排気管の下流側の開口端の近傍で前記排気管に設けた支持部に、支軸を介して揺動可能に取り付けられ、前記開口端を開放及び閉塞可能な弁体と、
前記開口端の近傍で前記排気管に取り付けられ、前記弁体に付勢力を付与して、前記開口端を閉塞させる付勢体とを備え、
前記排気管内の排気圧力が前記付勢力による閉塞圧力より大きくなると、前記弁体が前記開口端から離れて、前記開口端を開放する圧力制御弁であって、
前記付勢体は、前記開口端の開口面に平行になるように前記排気管に取り付けられたばね軸に、共に外嵌支持された2つのねじりコイルばねを有し、
前記2つのねじりコイルばねの各々は、一方の端部に前記排気管側に固定された固定アームを備えると共に、もう一方の端部に可動アームを備え、
前記2つのねじりコイルばねの各々の可動アームは、互いに、ジョイントにより連結し、
前記2つのねじりコイルばねは、前記ジョイントを介して前記弁体に前記付勢力を付与することを特徴としている。
【0007】
これによれば、2つのねじりコイルばねで、開口端を閉塞させるのに必要な付勢力を発生させればよいので、それぞれのねじりコイルばねのばね定数を低く設定できる。このため、開口端の開放時に2つのねじりコイルばねそれぞれに作用する応力を小さくでき、2つのねじりコイルばねの耐久性を向上させることができる。
【0008】
また、本発明では、前記ばね軸は、前記支軸の軸心と異軸にして平行に設けられ、
前記ジョイントはコロを備え、
前記2つのねじりコイルばねは、前記コロを介して前記弁体に前記付勢力を付与し、
前記弁体が前記開口端から離れて前記開口端を開放する際には、前記コロが前記弁体上を前記支軸に近づく方向に転がることが好ましい。
【0009】
コロを備えるジョイントは、ねじりコイルばねの可動アームに連結されているので、ねじりコイルばねを外嵌支持するばね軸とコロとの距離は、弁体によって開口端が開放したり閉塞したりしても一定である。そして、開口端が開放する際には、閉塞している際より、ねじりコイルばねが、より大きくねじれ、より大きな付勢力を発生させることになる。ただ、ばね軸は、弁体を揺動させる支軸と軸心を異軸にしているので、弁体によって開口端が開放したり閉塞したりする際に、コロとばね軸との距離が一定であるのとは異なり、コロと支軸との距離は変化する。すなわち、開口端が開放する際には、コロが弁体上を支軸に近づく方向に転がり、閉塞している際よりコロが支軸に近づき、コロと支軸との距離は短くなる。ここで、弁体によって開口端を閉塞する能力は、コロから弁体に作用する付勢力の大きさと、コロと支軸の距離との積、いわゆるモーメントによって決まる。開口端が開放する際には、閉塞している際と比べて、2つのねじりコイルばねのねじり量が大きくなり、コロから弁体に作用する付勢力が大きくなるが、コロと支軸の距離が短くなるので、モーメントの増加は抑制される。このため、排気圧力が増加して、一旦、開口端が開放されれば、その開度は排気圧力の多少の増加で容易に大きくでき、排気圧力の増加を抑制することができる。
【0010】
また、本発明では、前記開口端の周囲に円環状に設けられるテーパ形状の開口側シール面と、
前記弁体の周囲に円環状に設けられ、前記開口側シール面と面接触するテーパ形状の弁体側シール面と、
前記支持部と前記支軸の間に設けられたクリアランスと、を有し、
前記弁体が前記開口端を閉塞している状態において、前記開口端の前記開口面の法線方向から見ると、前記2つのねじりコイルばねは、前記ジョイントを介して、前記開口側シール面の内側の位置で前記弁体に前記付勢力を付与することが好ましい。
【0011】
開口側シール面と弁体側シール面は、互いに面接触するテーパ形状になっている。また、前記付勢力は開口側シール面の内側の位置に付与しているので、弁体に付勢力を付与して開口端を閉塞させようとすると、開口側シール面と弁体側シール面は、片当たりしながらも、前記クリアランスによって、互いの中心軸を一致させるように移動し、開口側シール面と弁体側シール面とは全周にわたって密着することができる。そして、圧力制御弁は、開口端を確実に閉塞させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ばねの耐久性を向上できる圧力制御弁を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る圧力制御弁が組み込まれている排気装置の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る圧力制御弁が組み込まれている排気装置の要部(圧力制御弁の周辺)の断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る圧力制御弁(閉塞時)の斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る圧力制御弁(閉塞時)の平面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る圧力制御弁(閉塞時)の側面図である。
【図6】図5のA−A方向の矢視断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る圧力制御弁(開放時)の斜視図である。
【図8】本発明の実施形態に係る圧力制御弁(開放時)の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。
【0015】
図1に、排気装置100の斜視図を示す。排気装置100は、図示を省略した車両に搭載されている。車両には、排気装置100の他にも、図示を省略した、車両を駆動させるエンジンと、エンジンから排出される排気ガスを浄化する排気浄化装置が搭載されている。排気装置100は、排気浄化装置を介して、エンジンの排気マニホールドに接続している。浄化された排気ガスが、爆音を伴って、排気装置100に、フランジ31から流れ込む。
【0016】
排気装置100は、フランジ31と、フロントパイプ32と、イグゾーストチャンバ33と、ミドルパイプ34と、イグゾーストチャンバ35と、二股に分岐したリアパイプ36と、2つのサイレンサ37と、それぞれのサイレンサ37に接続するバルブカバー38とテールパイプ40と、バルブカバー38に接続するテールパイプ39を有している。イグゾーストチャンバ33が、前段サイレンサとして機能し、イグゾーストチャンバ35が、中段サイレンサとして機能し、2つのサイレンサ37が、後段サイレンサとして機能する。排気装置100は、3段のサイレンサで構成されている。
【0017】
フランジ31から流れ込んだ排気ガスは、フロントパイプ32を通って、イグゾーストチャンバ33に入る。イグゾーストチャンバ33では、前段サイレンサとして、吸音式サイレンサ構造が採用されている。イグゾーストチャンバ33内には、グラスウール等の吸音材が収められている。
【0018】
排気ガスは、イグゾーストチャンバ33から、ミドルパイプ34を通って、イグゾーストチャンバ35に入る。イグゾーストチャンバ35では、中段サイレンサとして、一室型共鳴式サイレンサ構造が採用されている。イグゾーストチャンバ35内には、分岐管が設けられ、逆位相の音波を発生させて消音している。
【0019】
さらに、排気ガスは、イグゾーストチャンバ35から、リアパイプ36を通って、サイレンサ37に入る。サイレンサ37では、後段サイレンサとして、膨張式サイレンサ(大容量サイレンサ)構造が採用されている。なお、サイレンサ37の内部構造の詳細は後記する。排気ガスは、イグゾーストチャンバ35から、リアパイプ36を通って、サイレンサ37に入る。サイレンサ37に入った排気ガスは、2つのルートによって大気に放出される。第1ルートは、バルブカバー38とテールパイプ39を通って大気に放出されるルートである。第2ルートは、テールパイプ40を通って大気に放出されるルートである。
【0020】
イグゾーストチャンバ33と、サイレンサ37とには、ステイ41が取り付けられている。排気装置100は、ステイ41によって、車両の車体の下部に吊り下げられている。
【0021】
図2に、排気装置100のサイレンサ37周辺の断面図を示す。サイレンサ37では、膨張式サイレンサ(大容量サイレンサ)構造が採用されており、排気ガスは、リアパイプ36から、インパイプ44を通って、大容量の容器42内に放出される。これにより、排気ガスの流路面積が急変(急拡大)し、音響エネルギが減衰する。容器42内の排気ガスは、セパレータ43を透過し、バイパス排気管(排気管)45に流入する。バイパス排気管(排気管)45の一端は、容器42内部で開口し、バイパス排気管(排気管)45は、容器42を貫通している。バイパス排気管(排気管)45の他端は、容器42の外部にあって、そこに圧力制御弁1が設けられている。バイパス排気管(排気管)45から、メイン排気管46が分岐している。メイン排気管46は、管径がバイパス排気管(排気管)45より小さく、1回、渦巻き状にとぐろを巻き、管の長さをバイパス排気管(排気管)45より長くしている。メイン排気管46は、テールパイプ40に接続している。バイパス排気管(排気管)45の容器42の外側部分と、圧力制御弁1とは、バルブカバー38によって覆われている。バルブカバー38は、テールパイプ39に接続している。バルブカバー38は、圧力制御弁1のカバーとしてだけでなく、圧力制御弁1から流れ出た排気ガスを、テールパイプ39へ導入させる排気管としても機能している。
【0022】
エンジンが、低負荷時、例えば、エンジンの始動、アイドリング回転を含む低速回転域の場合や、一部の気筒が休止している場合に、排気ガスを通す排気管としては、メイン排気管46のように、排気管の径が小さくかつ長さが長いほど消音に有利である。エンジンの低負荷時には、排気ガスのバイパス排気管(排気管)45内の排気圧力も低いため、圧力制御弁1はバイパス排気管(排気管)45の開口端を閉塞している。したがって、排気ガスは、図2に実線矢印で示すように、メイン排気管46を流れる。排気ガスの略すべてはメイン排気管46を流れ大気に排出される。このため、低負荷時のエンジンの排気騒音を能率よく低減することができる。また、圧力制御弁1がバイパス排気管(排気管)45の開口端を閉塞していると、バイパス排気管(排気管)45は、一端が閉じた閉管の共鳴管となり、排気騒音に対する共鳴減衰効果を発揮して、排気騒音を一層低減することができる。そして、圧力制御弁1によれば、閉塞時には、確実に閉塞し、バイパス排気管(排気管)45を、閉管の共鳴管にすることができる。
【0023】
エンジンが、高負荷時、例えば、高速回転域の場合に、排気ガスを通す排気管としては、バイパス排気管(排気管)45のように、排気管の径が大きくかつ長さが短いほど排気抵抗が減りエンジンの出力向上に有利である。エンジンの高負荷時には、排気ガスのバイパス排気管(排気管)45内の排気圧力が高くなり、圧力制御弁1の閉塞圧力よりも高くなり、圧力制御弁1はバイパス排気管(排気管)45の開口端を開放する。排気ガスの一部は、図2に鎖線矢印で示すように、バイパス排気管(排気管)45から、バイパス排気管(排気管)45の開口端を開放した圧力制御弁1、バルブカバー38、テールパイプ39を順に通って、大気に排出される。また、排気ガスの一部は、バイパス排気管(排気管)45から、メイン排気管46、テールパイプ40を順に流れ大気に排出される。これらにより、排気抵抗を低減することができ、圧力制御弁1は、開放時の排気圧力の上昇を抑制する制御、すなわち、排気圧力の圧力制御をすることができる。
【0024】
図3に、本発明の実施形態に係る圧力制御弁(閉塞時)1の斜視図を示し、図4に、その平面図を示し、図5に、その側面図を示す。
【0025】
圧力制御弁1は、バイパス排気管(排気管)45の下流側の開口端2に設けられている。圧力制御弁1は、バイパス排気管(排気管)45の管壁に支持されている。圧力制御弁1は、支持部3を有している。支持部3は、バイパス排気管(排気管)45の下流側の開口端2の近傍の管壁に設けられている。支持部3には、支軸4が回動可能に支持されている。支軸4の両端はそれぞれ、ブッシュ4aが嵌め込まれた支持部3の軸受に支持されている。支軸4の軸方向は、バイパス排気管(排気管)45の開口端2の開口面Sの延長平面と略平行になっている。支軸4の両端の支持部3の軸受の外側には、フラップ弁(弁体)6が固定されている。これらにより、フラップ弁6は、支軸4を回転軸として回動(揺動)して、開口端2を開放・閉塞することができる。
【0026】
また、支持部3には、ばね軸5cが支持されている。ばね軸5cの軸方向は、支軸4の軸方向と略平行になり、かつ、バイパス排気管(排気管)45の開口端2の開口面Sの延長平面と略平行になっている。ばね軸5cは、支軸4の軸心と異軸にして、支軸4から離れている。ばね軸5cの軸方向の長さは、バイパス排気管(排気管)45の直径や、開口端2の直径より、長くなっている。
【0027】
ばね軸5cには、2つのねじりコイルばね5a、5b(5)が共に外嵌支持されている。ねじりコイルばね5aは、一方の端部に固定アーム5faを備え、もう一方の端部に可動アーム5maを備えている。また、ねじりコイルばね5bは、一方の端部に固定アーム5fbを備え、もう一方の端部に可動アーム5mbを備えている。固定アーム5fa、5fbは、バイパス排気管(排気管)45に固定された支持部3に引っ掛けられて支持(固定)されている。特に図4に示されるように、バイパス排気管(排気管)45に対して、固定アーム5fa、5fbは近い側に設けられ、可動アーム5ma、5mbは遠い側に設けられている。上面視で、可動アーム5ma、5mbの付け根の位置は、バイパス排気管(排気管)45より外側に配置されている。可動アーム5ma、5mbは、バイパス排気管(排気管)45の側方を通って、折り曲げられ、開口端2(フラップ弁6)の前方にまで伸びている、可動アーム5maと5mbは、開口端2(フラップ弁6)の前方において、ジョイント7によって連結されている。ジョイント7は、バイパス排気管(排気管)45の側方から開口端2(フラップ弁6)の前方にかけて配置されているコの字型の部材である。
【0028】
ジョイント7の可動アーム5ma側のバイパス排気管(排気管)45の側方には、かしめ部7aが設けられ、かしめられて、可動アーム5maにジョイント7が固定されている。ジョイント7の開口端2(フラップ弁6)の前方には、かしめ部7bが設けられ、かしめられて、可動アーム5maにジョイント7が固定されている。ジョイント7の開口端2(フラップ弁6)の前方には、かしめ部7cが設けられ、かしめられて、可動アーム5maと5mbにジョイント7が固定されている。ジョイント7の可動アーム5mb側のバイパス排気管(排気管)45の側方には、かしめ部7dが設けられ、かしめられて、可動アーム5mbにジョイント7が固定されている。これらにより、ジョイント7と可動アーム5maと5mbとが一体となって動くようになっている。
【0029】
ジョイント7は、開口端2(フラップ弁6)の前方において、コロ8を備えている。コロ8は、略球形であり、コロ8には中心を通る貫通孔が形成されている。可動アーム5maが、ジョイント7の開口端2(フラップ弁6)の前方において、コロ8の貫通孔を貫通している。コロ8は、可動アーム5maを回転軸として回転可能になっている。
【0030】
コロ8は、ガイド6aに圧接している。ガイド6aは、フラップ弁6に設けられている。ガイド6aは、図5に示すように、開口端2の閉塞時において、開口端2の開口面Sと略平行になるように配置されている。コロ8は、フラップ弁6の開放動作や閉塞動作に伴って、ガイド6aに圧接した状態を維持しつつ転がりながらガイド6a上を移動することができる。
【0031】
図5に示すように、バイパス排気管(排気管)45の開口端2は、ラッパ形状に広がっている。その開口端2のバイパス排気管(排気管)45の内側には、ラッパ形状のシール材9が貼り付けられている。これにより、シール材9の表面上に、テーパ形状の開口側シール面2aが形成されている。開口側シール面2aは、開口端2の周囲に円環状に設けられている。
【0032】
フラップ弁(弁体)6には、開口端2の閉塞時に、全周にわたって開口側シール面2aに面接触するテーパ形状の弁体側シール面6bが形成されている。弁体側シール面6bは、フラップ弁(弁体)6の本体の周囲に円環状に設けられている。閉塞状態において、開口端2の開口面Sの法線方向から見ると、開口側シール面2aと弁体側シール面6bとが配置された円環状のシール領域A2を定めることができる。そして、その内側の領域をシール内側領域A1と定めることができる。コロ8は、シール内側領域A1内に配置されている。
【0033】
2つのねじりコイルばね5a、5bは、ジョイント7とコロ8を介して、フラップ弁(弁体)6(ガイド6a)のシール内側領域A1の内側の位置に、付勢力を付与して、開口端2を閉塞させている。バイパス排気管(排気管)45内の排気圧力が前記付勢力より大きくなると、フラップ弁(弁体)6が開口端2から離れて、開口端2を開放する。2つのねじりコイルばね5a、5bで、必要な付勢力を確保すればよいので、それぞれのねじりコイルばね5a、5bのばね定数を低く設定できる。このため、開放時にばねに作用する応力を小さくでき、ばねの耐久性を向上させることができる。
【0034】
図6に、図5のA−A方向の矢視断面図を示す。フラップ弁(弁体)6の支軸4と、ブッシュ4a(支持部3)との間には、支軸4の軸方向にクリアランスC1(隙間)が設けられている。これにより、開口側シール面2aに対して、弁体側シール面6bを、支軸4の軸方向に移動させることができ、位置合わせすることができる。開口側シール面2aに対して、弁体側シール面6bが、片当たりすることなく、弁の着座性(密閉性)を良くすることができる。
【0035】
また、支軸4と、ブッシュ4a(支持部3)との間には、支軸4の軸方向とは直角(垂直)の方向にクリアランスC2(隙間)が設けられている。具体的には、支軸4の直径が、ブッシュ4a(支持部3)の内径より、クリアランスC2の分、小さくなっている。これにより、開口側シール面2aに対して、弁体側シール面6bを、支軸4の軸方向とは直角(垂直)の方向に移動させることができ、位置合わせすることができる。これによっても、開口側シール面2aに対して、弁体側シール面6bが、片当たりすることなく、弁の着座性(密閉性)を良くすることができる。
【0036】
そして、開口側シール面2aと、弁体側シール面6bとは、共に、テーパ形状になっているので、シール内側領域A1の内側に配置されたコロ8とガイド6aとの接点を力点として、弁体側シール面6bから開口側シール面2aに向かう方向に、フラップ弁(弁体)6(弁体側シール面6b)に付勢力を付与すると、閉塞の際には、閉塞動作しながら、前記クリアランスC1、C2による可動範囲内で、開口側シール面2aと弁体側シール面6bとが自己整合的に位置合わせを行い、シール面を確実に密閉することができる。そして、位置合わせの効果により、付勢力が小さくても、確実に圧力制御弁1を閉塞させることができるので、ねじりコイルばね5a、5bに作用させる応力を小さくでき、ねじりコイルばね5a、5bの耐久性を向上させることができる。
【0037】
図7に、本発明の実施形態に係る圧力制御弁(開放時)1の斜視図を示し、図8に、その側面図を示す。バイパス排気管(排気管)45を流れる排気ガスの排気圧力が、大きくなり、前記付勢力による閉塞圧力より大きくなると、開放する。開放の際には、フラップ弁(弁体)6が開口端2から離れて、開口端2が開放される。そして、図8に示すように、フラップ弁(弁体)6の開放動作に伴って、コロ8(力点)が、閉塞時の位置8aから、フラップ弁(弁体)6のガイド6a上を、支軸4に近づく方向に転がり移動している。フラップ弁(弁体)6によって開口端2を閉塞する能力は、コロ8からフラップ弁(弁体)6に作用する付勢力の大きさと、コロ8と支軸4の距離との積(モーメント)によって決まる。開口端2が開放する際には、閉塞している際と比べて、2つのねじりコイルばね5a、5bのねじり量が大きくなり、コロ8からフラップ弁(弁体)6に作用する付勢力が大きくなるが、コロ8もガイド6a上を支軸4に近づく方向に転がり移動して、コロ8と支軸4の距離が短くなるので、前記モーメントの増加は抑制される。このため、排気圧力が増加して、一旦、開口端2が開放されれば、その開度は排気圧力の多少の増加で容易に大きくでき、排気圧力の増加を抑制することができる。すなわち、フラップ弁(弁体)6の開放特性を、フックの法則によるリニアな特性とは異なる非線形な特性にすることができる。これらのことは、支軸4とばね軸5cとが、異軸にして同軸上になく、オフセットされていることに起因している。
【符号の説明】
【0038】
1 圧力制御弁
2 開口端
2a 開口側シール面
3 支持部
4 支軸
5 付勢体
5a、5b ねじりコイルばね
5c ばね軸
5fa、5fb 固定アーム
5ma、5mb 可動アーム
6 フラップ弁(弁体)
6b 弁体側シール面
7 ジョイント
8 コロ
8a コロ(閉塞時のガイド上の位置に配置されたコロ)
45 バイパス排気管(排気管)
100 排気装置
C1、C2、C3 クリアランス
S 開口端の開口面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気管の下流側の開口端の近傍で前記排気管に設けた支持部に、支軸を介して揺動可能に取り付けられ、前記開口端を開放及び閉塞可能な弁体と、
前記開口端の近傍で前記排気管に取り付けられ、前記弁体に付勢力を付与して、前記開口端を閉塞させる付勢体とを備え、
前記排気管内の排気圧力が前記付勢力による閉塞圧力より大きくなると、前記弁体が前記開口端から離れて、前記開口端を開放する圧力制御弁であって、
前記付勢体は、前記開口端の開口面に平行になるように前記排気管に取り付けられたばね軸に、共に外嵌支持された2つのねじりコイルばねを有し、
前記2つのねじりコイルばねの各々は、一方の端部に前記排気管側に固定された固定アームを備えると共に、もう一方の端部に可動アームを備え、
前記2つのねじりコイルばねの各々の可動アームは、互いに、ジョイントにより連結し、
前記2つのねじりコイルばねは、前記ジョイントを介して前記弁体に前記付勢力を付与することを特徴とする圧力制御弁。
【請求項2】
前記ばね軸は、前記支軸の軸心と異軸にして平行に設けられ、
前記ジョイントはコロを備え、
前記2つのねじりコイルばねは、前記コロを介して前記弁体に前記付勢力を付与し、
前記弁体が前記開口端から離れて前記開口端を開放する際には、前記コロが前記弁体上を前記支軸に近づく方向に転がることを特徴とする請求項1に記載の圧力制御弁。
【請求項3】
前記開口端の周囲に円環状に設けられるテーパ形状の開口側シール面と、
前記弁体の周囲に円環状に設けられ、前記開口側シール面と面接触するテーパ形状の弁体側シール面と、
前記支持部と前記支軸の間に設けられたクリアランスと、を有し、
前記弁体が前記開口端を閉塞している状態において、前記開口端の前記開口面の法線方向から見ると、前記2つのねじりコイルばねは、前記ジョイントを介して、前記開口側シール面の内側の位置で前記弁体に前記付勢力を付与することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧力制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−241543(P2012−241543A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109731(P2011−109731)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】