圧力調整弁の検査方法
【課題】圧力調整弁の不具合を、簡単な構成で且つ精度良く検査することができる圧力調整弁の検査方法を提供することを課題としている。
【解決手段】複数のノズル列99を有する機能液滴吐出ヘッド17に連通し、機能液滴吐出ヘッド17への機能液の供給圧力を調整する圧力調整弁150の不具合を、機能液滴吐出ヘッド17からノズル列99毎に機能液を吐出させて検査する圧力調整弁150の検査方法であって、ノズル列99毎に機能液を検査吐出させ、ノズル列99毎の検査吐出重量を測定する吐出重量測定工程と、測定したノズル列毎の検査吐出重量と、検査の正常基準となる基準吐出重量範囲とを比較し、全ノズル列99における検査吐出重量が基準吐出重量範囲から外れた場合にのみ、圧力調整弁150を不具合ありと判定する重量基準判定工程と、を備えた。
【解決手段】複数のノズル列99を有する機能液滴吐出ヘッド17に連通し、機能液滴吐出ヘッド17への機能液の供給圧力を調整する圧力調整弁150の不具合を、機能液滴吐出ヘッド17からノズル列99毎に機能液を吐出させて検査する圧力調整弁150の検査方法であって、ノズル列99毎に機能液を検査吐出させ、ノズル列99毎の検査吐出重量を測定する吐出重量測定工程と、測定したノズル列毎の検査吐出重量と、検査の正常基準となる基準吐出重量範囲とを比較し、全ノズル列99における検査吐出重量が基準吐出重量範囲から外れた場合にのみ、圧力調整弁150を不具合ありと判定する重量基準判定工程と、を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出ヘッドに連通し、液滴吐出ヘッドへの機能液の供給圧力を調整する圧力調整弁の不具合を、液滴吐出ヘッドから機能液を吐出させて検査する圧力調整弁の検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスの供給圧力を調整する圧力調整弁の検査方法として、圧力調整弁の上流側に接続してガスの流れを検出するフローセンサーと、ガス消費量を計測する流量センサーと、減圧されたガス圧力を計測する圧力センサーと、を用い、これらの検出結果を組み合わせて、圧力調整弁の不具合を検査するものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−119848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、機能液の圧力調整を行う圧力調整弁に、上記検査方法を適用して、ガスを用いて検査することが考えられるが、かかる場合、気体と液体との相違から、機能液を通液した際に生じる不具合を検出することができないという問題があった。また、描画に使用する機能液を用い、且つ描画時と同条件で検査する方法も考えられるが、かかる場合、液滴吐出ヘッドによる機能液の消費量や供給圧力が微小であると支障が出てしまうという問題がある。すなわち、これら微小な消費量や圧力を検出することは煩雑であり、精度良く検査を実施するためには、上記各センサーとして高精度なものを用いる必要があるという問題があった。特に、液晶表示装置のカラーフィルタや有機EL装置の各画素となる発光素子等を形成する液滴吐出ヘッドでは、微小量の液滴吐出が求められており、結果、機能液の消費量および供給圧力が微小となる傾向がある。さらに、機能液の供給流路に各種センサーを接続する構成では、供給流路が複雑化し、結果、気泡の滞留等の問題が生じてしまう。
【0005】
本発明は、圧力調整弁の不具合を、簡単な構成で且つ精度良く検査することができる圧力調整弁の検査方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の圧力調整弁の検査方法は、複数のノズル列を有する液滴吐出ヘッドに連通し、液滴吐出ヘッドへの機能液の供給圧力を調整する圧力調整弁の不具合を、液滴吐出ヘッドからノズル列毎に機能液を吐出させて検査する圧力調整弁の検査方法であって、ノズル列毎に機能液を検査吐出させ、ノズル列毎の検査吐出重量を測定する吐出重量測定工程と、測定したノズル列毎の検査吐出重量と、検査の正常基準となる基準吐出重量範囲とを比較し、全ノズル列における検査吐出重量が基準吐出重量範囲から外れた場合にのみ、圧力調整弁を不具合ありと判定する重量基準判定工程と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この場合、重量基準判定工程に代えて、測定したノズル列毎の検査吐出重量からノズル列毎の検査適正電圧を求める電圧算定工程と、求めたノズル列毎の検査適正電圧と、検査の正常基準となる基準適正電圧範囲とを比較し、全ノズル列における検査適正電圧が基準適正電圧範囲から外れた場合にのみ、圧力調整弁を不具合ありと判定する電圧基準判定工程と、を備えることが好ましい。
【0008】
これらの構成によれば、液滴吐出ヘッドの吐出重量に基づいて圧力調整弁の不具合を検査する。吐出重量測定であれば、複数ショット吐出した合計吐出重量を検出することもでき、機能液の消費量や供給圧力が微小な場合にも、簡単な構成で精度良く測定することができる。ひいては、圧力調整弁の不具合を簡単な構成で且つ精度良く検査することができる。また、単に吐出重量に基づいて不具合を検査すると、液滴吐出ヘッド側に不具合があった際にも、圧力調整弁に不具合ありと判定されてしまうが、全ノズル列における検査吐出重量(検査適正電圧)が基準吐出重量範囲(基準適正電圧範囲)から外れた場合にのみ、不具合ありと判定することで、液滴吐出ヘッド側の不具合が原因である吐出重量(適正電圧)異常の場合を排除することができる。
【0009】
上記の圧力調整弁の検査方法において、基準吐出重量範囲は、不具合の無い圧力調整弁を用い、液滴吐出ヘッドからノズル列毎に機能液を吐出させて求めたものであることが好ましい。
【0010】
上記の圧力調整弁の検査方法において、基準適正電圧範囲は、不具合の無い圧力調整弁を用い、液滴吐出ヘッドからノズル列毎に機能液を吐出させて求めたものであることが好ましい。
【0011】
これらの構成によれば、不具合のない圧力調整弁を用いた場合の吐出重量(適正電圧)を基準として、不具合の有無を判定することにより、圧力調整弁の不具合を、より精度良く検査することができる。
【0012】
上記の圧力調整弁の検査方法において、複数の液滴吐出ヘッドにそれぞれ連通する複数の圧力調整弁を検査対象とし、基準吐出重量範囲は、複数の液滴吐出ヘッドにおける、任意の液滴吐出ヘッドのノズル列毎の検査吐出重量と、不具合の無い圧力調整弁を用いて任意の液滴吐出ヘッドからノズル列毎に機能液を吐出させて測定した基準吐出重量と、を標本とした検査吐出重量と基準吐出重量との相関関係を示す回帰式を基準として求めたものであることが好ましい。
【0013】
上記の圧力調整弁の検査方法において、複数の液滴吐出ヘッドにそれぞれ連通する複数の圧力調整弁を検査対象とし、基準適正電圧範囲は、複数の液滴吐出ヘッドにおける、任意の液滴吐出ヘッドのノズル列毎の検査適正電圧と、不具合の無い圧力調整弁を用いて任意の液滴吐出ヘッドからノズル列毎に機能液を吐出させて求めた基準適正電圧と、を標本とした検査適正電圧と基準適正電圧との相関関係を示す回帰式を基準として求めたものであることが好ましい。
【0014】
これらの構成によれば、複数の液滴吐出ヘッドによる検査吐出重量(検査適正電圧)と基準吐出重量(基準適正電圧)との回帰式を基準として、基準吐出重量範囲(基準適正電圧範囲)を設定することにより、検査時の環境や状態に合わせた基準吐出重量範囲(基準適正電圧範囲)を設定することができる。また、複数の液滴吐出ヘッドによる検査吐出重量(検査適正電圧)の測定結果を利用して、基準吐出重量範囲(基準適正電圧範囲)を設定するため、基準吐出重量範囲(基準適正電圧範囲)の設定を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態に係る液滴吐出装置の斜視図である。
【図2】液滴吐出装置の平面図である。
【図3】液滴吐出装置の側面図である。
【図4】機能液滴吐出ヘッドを搭載したヘッドユニットを模式的に表した平面図である。
【図5】機能液滴吐出ヘッドの外観斜視図である。
【図6】機能液供給装置の配管系統図である。
【図7】圧力調整弁の背面図(a)、および正面図(b)である。
【図8】圧力調整弁を流入ポートの軸線方向に切断した縦断面図である。
【図9】圧力調整弁を流出ポートの軸線方向に切断した縦断面図である。
【図10】液滴吐出装置の制御ブロック図である。
【図11】配管系を主に示したヘッド検査装置の概念図である。
【図12】圧力調整弁の検査動作を示したフローチャートである。
【図13】基準適正電圧と検査適正電圧との相関関係を示した分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照して、本発明の圧力調整弁の検査方法を適用した液滴吐出装置について説明する。この液滴吐出装置は、フラットパネルディスプレイの製造ラインに組み込まれており、例えば、特殊なインクや発光性の樹脂液である機能液を導入した機能液滴吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)を用い、液晶表示装置のカラーフィルタや有機EL装置の各画素となる発光素子等を形成するものである。特に、この液滴吐出装置は、機能液滴吐出ヘッドへの供給圧力を調整する圧力調整弁を有し、機能液滴吐出ヘッドの吐出重量に基づいて、この圧力調整弁を、簡単な構成で且つ精度良く検査するものである。
【0017】
図1、図2および図3に示すように、液滴吐出装置1は、石定盤に支持されたX軸支持ベース2上に配設され、主走査方向となるX軸方向に延在して、ワークWをX軸方向(主走査方向)に移動させるX軸テーブル11と、複数本の支柱4を介してX軸テーブル11を跨ぐように架け渡された1対(2つ)のY軸支持ベース3上に配設され、副走査方向となるY軸方向に延在するY軸テーブル12と、複数の機能液滴吐出ヘッド17が搭載された10個のキャリッジユニット51と、から成り、10個のキャリッジユニット51は、Y軸テーブル12に移動自在に吊設されている。さらに、液滴吐出装置1は、これらの装置を温度および湿度が管理された雰囲気内に収容するチャンバ6と、チャンバ6を貫通して、チャンバ6の外部から内部の機能液滴吐出ヘッド17に機能液を供給する3組の機能液供給装置101を有した機能液供給ユニット7と、各ユニットを制御する制御装置8(図10参照)と、を備えている。X軸テーブル11およびY軸テーブル12の駆動と同期して機能液滴吐出ヘッド17を吐出駆動させることにより、機能液供給ユニット7から供給されたR・G・B3色の機能液滴を吐出させ、ワークWに所定の描画パターンが描画される。
【0018】
また、液滴吐出装置1は、フラッシングユニット14、吸引ユニット15、ワイピングユニット16、重量測定ユニット19および吐出性能検査ユニット18から成るメンテナンス装置5を備えており、これらユニットによって、機能液滴吐出ヘッド17の保守に供して、機能液滴吐出ヘッド17の機能維持・機能回復を図るようになっている。なお、メンテナンス装置5を構成する各ユニットのうち、フラッシングユニット14、重量測定ユニット19および吐出性能検査ユニット18は、X軸テーブル11に搭載され、吸引ユニット15およびワイピングユニット16は、X軸テーブル11から直角に延び、かつY軸テーブル12によりキャリッジユニット51が移動可能である位置に配設された架台上に配設されている(厳密には、吐出性能検査ユニット18は、後述するステージユニット77がX軸テーブル11に搭載され、カメラユニット78がY軸支持ベース3に支持されている。)。
【0019】
次に、液滴吐出装置1の構成要素について簡単に説明する。図2または図3に示すように、X軸テーブル11は、ワークWをセットするセットテーブル21と、セットテーブル21をX軸方向にスライド自在に支持するX軸第1スライダー22と、上記のフラッシングユニット14およびステージユニット77をX軸方向にスライド自在に支持するX軸第2スライダー23と、X軸方向に延在し、X軸第1スライダー22を介してセットテーブル21(ワークW)をX軸方向に移動させると共に、X軸第2スライダー23を介してフラッシングユニット14、重量測定ユニット19および後述するステージユニット77をX軸方向に移動させる左右一対のX軸リニアモーター(図示省略)と、X軸リニアモーターに並設され、X軸第1スライダー22およびX軸第2スライダー23の移動を案内する一対(2本)のX軸共通支持ベース24と、を備えている。
【0020】
Y軸テーブル12は、10個の各キャリッジユニット51をそれぞれ吊設した10個のブリッジプレート52と、10個のブリッジプレート52を両持ちで支持する10組のY軸スライダー(図示省略)と、上記した一対のY軸支持ベース3上に設置され、10組のY軸スライダーを介してブリッジプレート52をY軸方向に移動させる一対のY軸リニアモーター(図示省略)と、を備えている。また、Y軸テーブル12は、各キャリッジユニット51を介して描画時に機能液滴吐出ヘッド17を副走査するほか、機能液滴吐出ヘッド17をメンテナンス装置5(吸引ユニット15およびワイピングユニット16)に臨ませる。
【0021】
一対のY軸リニアモーターを(同期して)駆動すると、各Y軸スライダーが一対のY軸支持ベース3を案内にして同時にY軸方向を平行移動する。これにより、ブリッジプレート52がY軸方向を移動し、これと共にキャリッジユニット51がY軸方向に移動する。なお、この場合、Y軸リニアモーターの駆動を制御することにより、各キャリッジユニット51を独立させて個別に移動させることも可能であるし、10個のキャリッジユニット51を一体として移動させることも可能である。
【0022】
各キャリッジユニット51は、12個の機能液滴吐出ヘッド17と、12個の機能液滴吐出ヘッド17を6個ずつのヘッド群54に分けて支持するヘッドプレート53と、から成るヘッドユニット13を備えている(図4参照)。また、各キャリッジユニット51は、ヘッドユニット13をθ補正(θ回転)可能に支持するθ回転機構61と、θ回転機構61を介して、ヘッドユニット13をY軸テーブル12(各ブリッジプレート52)に支持させる吊設部材62と、を備えている。加えて、各キャリッジユニット51は、その上部に後述するサブタンク121が配設されており(実際には、ブリッジプレート52上のタンクケース55内に配設)、このサブタンク121から自然水頭を利用して各機能液滴吐出ヘッド17に機能液が供給されるようになっている。
【0023】
図5に示すように、機能液滴吐出ヘッド17は、いわゆる2連のものであり、2連の接続針92を有する機能液導入部91と、機能液導入部91に連なる2連のヘッド基板93と、機能液導入部91の下方に連なり、内部に機能液で満たされるヘッド内流路が形成されたヘッド本体94と、を備えている。接続針92は、機能液供給ユニット7(機能液供給装置101)に接続され、機能液導入部91に機能液を供給する。ヘッド本体94は、キャビティ95(ピエゾ圧電素子)と、多数の吐出ノズル98が開口したノズル面97を有するノズルプレート96と、で構成されている。機能液滴吐出ヘッド17を吐出駆動すると(ピエゾ圧電素子に電圧が印加され)、キャビティ95のポンプ作用により、吐出ノズル98から機能液滴が吐出される。
【0024】
ノズル面97には、多数の吐出ノズル98からなる2つのノズル列99が相互に平行に形成されている。そして、2つのノズル列99同士は、相互に半ノズルピッチ分位置ずれしている。以下、2つのノズル列99を、第1ノズル列99aおよび第2ノズル列99bと記載する。
【0025】
液滴吐出装置1の描画動作は、まず、ワークWをX軸テーブル11により、X軸方向で移動させながら(図2中左側へ)、第1描画動作(往動パス)を行う。その後、ヘッドユニット13を2ヘッド分Y軸方向に移動(副走査)させて、改めて、ワークWをX軸方向で移動させながら(図2中右側へ)、第2描画動作(復動パス)を行う。そして、再度ヘッドユニット13を2ヘッド分副走査し、もう一度、ワークWをX軸方向で移動させながら(図2中左側へ)、第3描画動作(往動パス)を行う。このような描画動作により、R・G・B3色の描画処理を効率良く行っている。
【0026】
図1に示すように、チャンバ6は、内部温度及び湿度を一定に保つように構成されている。すなわち、液滴吐出装置1によるワークWへの描画は、温度および湿度が一定値に管理された雰囲気中で行われる。そして、チャンバ6の側壁の一部には、後述するタンクユニット122を収納するためのタンクキャビネット84が設けられている。なお、有機EL装置等を製造する場合には、チャンバ6内を、不活性ガス(窒素ガス)の雰囲気で構成することが好ましい。
【0027】
フラッシングユニット14は、一対の描画前フラッシングユニット71,71と、定期フラッシングユニット72とを有し、機能液滴吐出ヘッド17の吐出直前や、ワークWの載換え時等の描画処理休止時に行われる、機能液滴吐出ヘッド17の捨て吐出(フラッシング)を受ける。吸引ユニット15は、複数の分割吸引ユニット74を有し、各機能液滴吐出ヘッド17の吐出ノズル98から機能液を強制的に吸引すると共に、キャッピングを行う。ワイピングユニット16は、ワイピングシート75を有し、吸引後の機能液滴吐出ヘッド17のノズル面97を拭取る。吐出性能検査ユニット18は、機能液滴吐出ヘッド17から吐出された機能液滴を受ける検査シート83を搭載したステージユニット77と、ステージユニット77上の機能液滴を画像認識により検査するカメラユニット78を有し、機能液滴吐出ヘッド17の吐出性能(吐出の有無および飛行曲り)を検査する。
【0028】
図2および図3に示すように、重量測定ユニット19は、複数(本実施形態では20個)の吐出重量測定装置66を備えている。各吐出重量測定装置66は、各ヘッド群54を構成する6個の機能液滴吐出ヘッド17のうち、任意の1の機能液滴吐出ヘッド17から吐出した機能液を受ける受液容器67と、受液容器67を介して機能液の重量を測定する電子天秤68と、を有している。
【0029】
電子天秤68は、受液容器67に吐出された機能液の重量を測定し、測定結果を制御装置8に出力する。詳細は後述するが、制御装置8は、電子天秤68から入力した測定結果に基づいて、機能液滴吐出ヘッド17に印加する駆動電力(電圧値)を制御する。
【0030】
次に、図1および図6を参照して機能液供給ユニット7について説明する。機能液供給ユニット7は、R・G・B3色の機能液を供給する3組の機能液供給装置101を備えている。3組の機能液供給装置101は、それぞれR・G・B3色に対応した機能液滴吐出ヘッド17に接続されており、これにより、各色の機能液滴吐出ヘッド17には対応する色の機能液が供給される。
【0031】
図6に示すように、各色の機能液供給装置101は、機能液の供給源を構成する2つのメインタンク111,111を有するタンクユニット122と、各キャリッジユニット51に対応して設けた10個のサブタンク121と、タンクユニット122と10個のサブタンク121を接続する上流側機能液流路126と、各サブタンク121と各機能液滴吐出ヘッド17とを接続する10組の下流側機能液流路127と、を備えている。
【0032】
各メインタンク111,111内の機能液は、これに接続した窒素ガス供給設備85からの圧縮窒素ガスにより加圧され、上流側機能液流路126を介して10個のサブタンク121に選択的に供給される。その際、各種開閉弁に接続した圧縮エアー供給設備86の圧縮エアーにより、各種開閉弁が開閉制御される。また同時に、各サブタンク121は、これに接続したガス排気設備87を介して大気開放され、必要量の機能液を受容する。各サブタンク121の機能液は、これに連なる機能液滴吐出ヘッド17の駆動により、下流側機能液流路127を介して機能液滴吐出ヘッド17に供給される。
【0033】
タンクユニット122は、機能液の供給源となる一対のメインタンク111,111と、一対のメインタンク111,111の重量をそれぞれ測定する一対の重量測定装置112,112と、一対のメインタンク111,111に接続されると共に、上流側機能液流路126に接続した切換え機構113と、を備えている。各メインタンク111には、窒素ガス供給設備85に接続されており、機能液を圧送する際に加圧制御可能に構成されている。
【0034】
上流側機能液流路126は、上流側から、上流側をタンクユニット122に接続したタンク側主流路131と、分岐部132を介してタンク側主流路131から10方に分流し、下流側をサブタンク121に接続した10本の枝流路133と、を備えている。タンクユニット122から供給された機能液は、分岐部132により10方に分流して各サブタンク121に供給される。
【0035】
また、タンク側主流路131には、上流側から気泡除去ユニット135、第1開閉弁136、エアー抜きユニット137、第2開閉弁138がそれぞれ介設されている。さらに、各枝流路133には、各サブタンク121の近傍に位置して第3開閉弁139がそれぞれ介設されている。
【0036】
各下流側機能液流路127は、上流側から、上流側を各サブタンク121に接続したヘッド側主流路146と、上流側をヘッド側主流路146に接続した4分岐流路147と、上流側を4分岐流路147に接続した複数のヘッド側枝流路148と、により構成されている。これにより、機能液が各サブタンク121から4方に分岐して、それぞれの機能液滴吐出ヘッド17に接続されている。すなわち、上流側機能液流路126の10分岐と、下流側機能液流路127の4分岐により、10×4個の機能液滴吐出ヘッド17に機能液が供給される。加えて、機能液供給ユニット7は、R・G・Bで3組の機能液供給装置101を有しているため、10×12個の機能液滴吐出ヘッド17に機能液が供給される。更に、ヘッド側主流路146には、第4開閉弁149が介設されており、各ヘッド側枝流路148には、各機能液滴吐出ヘッド17への供給圧力を調整する圧力調整弁150と、がそれぞれ介設されている。
【0037】
次に、図7ないし図9を参照して、圧力調整弁150廻りについて説明する。図7に示すように、圧力調整弁150は、ヘッド側枝流路148に介設されており、流入側の継手を構成すると共に、流入ポート175に連なる流入コネクタ161(ユニオン継手)と、流出側の継手を構成すると共に、流出ポート190に連なる流出コネクタ162(ユニオン継手)と、を有している。
【0038】
図7および図8に示すように、圧力調整弁150は、本体ケーシング166と、本体ケーシング166と共に内部に1次室167を形成する蓋ケーシング168と、本体ケーシング166と共に内部に2次室169を形成し本体ケーシング166にダイヤフラム171を固定するリングプレート170との3部材でバルブケーシングが構成されており、いずれもステンレス等の耐食性材料で形成されている。また、本体ケーシング166には、その中心位置に1次室167および2次室169を連通する連通流路173が形成されている。
【0039】
蓋ケーシング168およびリングプレート170は、本体ケーシング166に対し、前後からリングプレート170および蓋ケーシング168を重ね、複数本の段付平行ピン(図示省略)でそれぞれ位置決めした後、ねじ止めして組み立てられており、いずれも円形のダイヤフラム171の中心を通る軸線と同心円となる円形あるいは多角形(8角形)の外観を有している。そして、蓋ケーシング168および本体ケーシング166は、パッキン172を介して相互に気密に突合せ接合され、本体ケーシング166およびリングプレート170は、ダイヤフラム171の縁部およびパッキン172を挟込み込んで相互に気密に突合せ接合されている。
【0040】
本体ケーシング166と蓋ケーシング168とで形成された1次室167は、ダイヤフラム171と同心となる略円柱形状に形成されており、その開放端を蓋ケーシング168により閉蓋されている。また、本体ケーシング166の1次室167側背面上部に形成した上部ボス部の左部には1次室167から径方向斜めに延びる流入ポート175が形成されている。流入ポート175には上記の流入コネクタ161が接続されている。
【0041】
図8に示すように、流入ポート175は、本体ケーシング166の外周面に開口した流入口176と、フィルタ181を収容するフィルタ収容部177と、フィルタ収容部177と1次室167の内周面とを連通する流入経路178とから成り、流入口176に対し流入経路178は、1次室167側に偏心して形成されている。流入口176には、流入コネクタ161が螺合(テーパネジ)される。なお、フィルタ181と、螺合した流入コネクタ161との間にはフィルタ181の押えばね182が収容される。
【0042】
図8および図9に示すように、2次室169は、ダイヤフラム171と、本体ケーシング166に形成した内面壁185とによって、全体としてダイヤフラム171を底面とする円錐台形状に形成されている。ダイヤフラム171は、鉛直姿勢を為して配設され、2次室169の1つの面を構成している。また、内面壁185は、2次室169のダイヤフラム171の面(1つの面)を除いた各面で構成されている。
【0043】
また、内面壁185のうち円錐台形状の頂面となる端壁185aには、ダイヤフラム171と同心となる2次室側開口部186が開口し、内面壁185のうち円錐台形状のテーパ面となる周壁185bの下側斜面における上下中間部には、後述する流出流路193の流出開口部187が形成されている。この場合、2次室側開口部186は、後述する受圧板付勢ばね218を収容するばね室を兼ねており、連通流路173の主流路201より太径に形成されている。
【0044】
図9に示すように流出ポート190は、本体ケーシング166の下部に位置する傾斜ボス部191に形成されており、傾斜ボス部191の下部に開口した流出口192と、2次室169の流出開口部187と、これらを連通する流出流路193とで構成されている。流出流路193は、内面壁185の周壁185bから斜めに延びて下向きの流出口192に連通している。流出口192には、流出流路193の軸線方向から流出コネクタ162が螺合している。2次室169から流出する機能液は、流出開口部187から流出流路193の勾配に従って斜めに流下し、機能液滴吐出ヘッド17側に流出する。
【0045】
図8および図9に示すように、本体ケーシング166には、1次室167と2次室169とを連通する連通流路173が形成されている。連通流路173は、主流路201と、これに連なる2次室側開口部186とで構成されている。これら1次室167、2次室169および連通流路173は、いずれもダイヤフラム171と同心の円形断面を有している。ただし、主流路201は、後述する弁体211の軸部213がスライド自在に収容される円形断面の軸遊挿部202と、軸遊挿部202から径方向四方に延びる十字状断面の流路部203とで構成されている(図7(b)参照)。
【0046】
ダイヤフラム171は、樹脂フィルムで構成したダイヤフラム本体206と、ダイヤフラム本体206の内側に貼着した樹脂製の受圧板207とで構成されている。受圧板207は、ダイヤフラム本体206と同心の円板状に、且つダイヤフラム本体206に対し十分に小さい径に形成されており、その中央に後述する弁体211の軸部213が当接する。ダイヤフラム本体206は、耐熱PP(ポリプロピレン)と特殊PPとシリカを蒸着したPET(ポリエチレンテレフタレート)とを積層して構成されており、本体ケーシング166の前面と同径の円形に形成されている。
【0047】
弁体211は、円板状の弁体本体212と、弁体本体212の中心から断面横「T」字状を為すように一方向に延びる軸部213と、軸部213の基端部側(弁体本体212側)に設けた(取り付けた)環状のOリング214とで構成されている。弁体本体212および軸部213は、ステンレス等の耐食材料で一体に形成されている。Oリング214は、例えば軟質のシリコンゴムで環状に形成されている。このため、弁体211の閉弁時には、弁座となる連通流路173の開口縁にOリング214が強く当接して、連通流路173が1次室167側から液密に閉塞される。
【0048】
軸部213は、連通流路173(の主流路201)にスライド自在に遊嵌され、閉弁状態でその先端(前端)が中立位置にあるダイヤフラム171の受圧板207に当接する。すなわち、ダイヤフラム171が外部に向かって膨出するプラス変形の状態では、軸部213の前端と受圧板207との間には所定の間隙が生じており、この状態からダイヤフラム171がマイナス側に変形してゆくと、中立状態で軸部213の前端と受圧板207が当接し、さらにダイヤフラム171のマイナス変形がすすむと、受圧板207が軸部213を介して弁体本体212を押し開弁させることになる。したがって、2次室169の容積のうち、ダイヤフラム171がプラス変形から中立状態となる容積分は、1次室167側の圧力を一切受けることなく、機能液の供給が為される。
【0049】
弁体211の背面と1次室167の壁体216との間には、弁体211を2次室169側、すなわち閉弁方向に付勢する弁体付勢ばね217が介設されている。同様に、受圧板207と内面壁185の間には、受圧板207を介してダイヤフラム本体206を外部に向かって付勢する受圧板付勢ばね218が介設されている。この場合、弁体付勢ばね217は、弁体211の背面に加わるサブタンク121の水頭を補完するものであり、サブタンク121の水頭とこの弁体付勢ばね217のばね力により、弁体211が閉塞方向に押圧される。一方、受圧板付勢ばね218は、ダイヤフラム171のプラス変形を補完するものであり、大気圧に対し2次室169が負圧になるように作用する。
【0050】
圧力調整弁150は、大気圧と機能液滴吐出ヘッド17に連なる2次室169との圧力バランスによりダイヤフラム171(およびこれが当接する弁体211)が変形(進退)することで開閉し、2次室169側を所定の圧力まで減圧するようにしている。その際、弁体付勢ばね217および受圧板付勢ばね218に力が分散して作用し、且つ軟質シリコンゴムのOリング214(の弾性力)により、弁体211は極めてゆっくり開閉動作する。このため、弁体211の開閉による圧力変動(キャビテーション)が抑制され、機能液滴吐出ヘッド17の吐出駆動に影響を与えないようになっている。もちろん、サブタンク121側(1次室167側)で発生する脈動等も、弁体211で縁切りされるため、これを吸収する(ダンパー機能)ことができる。
【0051】
次に、図10の制御ブロック図を参照して、制御装置8について説明する。図10に示すように、制御装置8は、インターフェース301を介して、各部に接続し、各部を制御するものであり、構成要素として、RAM302と、ROM303と、ハードディスク304と、CPU305と、これらを互いに接続するバス306と、を備えている。RAM302は、一時的に記憶可能な記憶領域を有し、制御処理のための作業領域として使用される。ROM303は、各種記憶領域を有し、制御プログラムや制御データを記憶する。ハードディスク304は、ワークWに所定の描画パターンを描画するための描画データや、各部からの各種データ等を記憶すると共に、各種データを処理するためのプログラム等を記憶する。CPU305は、ROM303やハードディスク304に記憶されたプログラム等に従い、各種データを演算処理する。
【0052】
制御装置8は、各部からの各種データを入力すると共に、ハードディスク304に記憶された(または、CD−ROMドライブ等により順次読み出される)プログラムに従ってCPU305に演算処理させ、その処理結果を各部に出力する。これにより、装置全体が制御され、液滴吐出装置1の各種処理が行われる。
【0053】
ここで図11ないし図13を参照して、圧力調整弁150の検査方法について説明する。この検査方法では、後述する検査動作にて測定する現時点でのノズル列99毎の適正電圧(検査適正電圧)と、予めヘッド検査装置401にて測定したノズル列99毎の適正電圧(基準適正電圧)とに基づいて、各圧力調整弁150の不具合を検査するものである。適正電圧とは、目標吐出重量を吐出するための機能液滴吐出ヘッド17の駆動電圧(電圧値)である。そこで、ヘッド検査装置401およびヘッド検査装置401による基準適正電圧の測定動作について説明する。
【0054】
図11に示すように、ヘッド検査装置401は、液滴吐出装置1に搭載する前の機能液滴吐出ヘッド17にヘッド単体検査を実施する装置である。ヘッド検査装置401は、検査対象となる機能液滴吐出ヘッド17と、機能液滴吐出ヘッド17に機能液を供給する機能液供給系402と、機能液滴吐出ヘッド17からの検査吐出を受ける吐出重量測定機構403と、を備えている。なお、図示省略したが、ヘッド検査装置401は、吐出重量測定機構403以外の各種測定・検査機構やメンテナンス機構、および機能液滴吐出ヘッド17を移動する移動機構を備え、移動機構により機能液滴吐出ヘッド17を各機構に臨ませて、機能液滴吐出ヘッド17をメンテナンスしつつ、各種測定・検査を行う。
【0055】
機能液供給系402は、機能液滴吐出ヘッド17が接続される共に、機能液を貯留する機能液タンク411と、機能液タンク411と機能液滴吐出ヘッド17との間に介設された基準圧力調整弁412と、を備えている。基準圧力調整弁412は、液滴吐出装置1に搭載された圧力調整弁150と同一の構成を有しており、また、圧力調整弁検査の基準となるため、不具合の無いものを用いる。吐出重量測定機構403は、実際に捨て吐出を受ける試料受容部413を有した電子天秤で構成されている。
【0056】
ノズル列99毎の基準適正電圧の測定動作では、機能液滴吐出ヘッド17をノズル列99毎に検査吐出させ、吐出重量測定機構403によって、ノズル列99毎の吐出重量を測定する。その後、ノズル列99毎に、測定した吐出重量に基づいて、適正電圧(以下、基準適正電圧と記載)を算出(決定)する。具体的には、目標吐出重量を吐出するための、およその電圧値があり、ノズル列99毎に、その電圧値に前後する2つの電圧値で、吐出重量測定を実施する。その後、当該測定結果(2つの電圧値での各吐出重量)に基づいて、電圧値と吐出重量との一次関数を求め、目標吐出重量をその一次関数に代入することで、目標吐出重量に対する電圧値を算出する。ここで求めた電圧値を基準適正電圧とする。液滴吐出装置1に搭載する各機能液滴吐出ヘッド17に対し、このようなノズル列99毎の基準適正電圧の測定動作を実施することで、各機能液滴吐出ヘッド17におけるノズル列99毎の基準適正電圧を測定する。ここで測定した基準適正電圧のデータは、各機能液滴吐出ヘッド17を搭載する際、液滴吐出装置1の制御装置8(具体的には、ハードディスク304)に記憶される。
【0057】
次に、図12を参照して、液滴吐出装置1における圧力調整弁150の検査動作について説明する。この検査動作は、描画動作の直前に実施されることが好ましい。図12に示すように、まず、制御装置8は、機能液滴吐出ヘッド17からノズル列99毎に検査吐出を実施して、各機能液滴吐出ヘッド17におけるノズル列99毎の吐出重量(以下、検査吐出重量と記載)を測定する(S1)(吐出重量測定工程)。具体的には、X軸第2スライダー23を駆動し、各機能液滴吐出ヘッド17に、対応する吐出重量測定装置66を臨ませつつ、ノズル列99毎に検査吐出を実施し、加えて、検査吐出を受けた各吐出重量測定装置66によって、ノズル列99毎の吐出重量を測定する。なお、検査吐出では、基準適正電圧で吐出駆動し、且つ複数ショット(数万発)吐出駆動する。また、吐出重量測定では、当該複数ショットの合計吐出重量を測定する。
【0058】
次に、測定した各機能液滴吐出ヘッド17におけるノズル列99毎の検査吐出重量に基づいて、ノズル列99毎の適正電圧(以下、検査適正電圧と記載)を算定する(S2)(電圧算定工程)。当該検査適正電圧の測定では、測定した検査吐出重量と目標吐出重量との差分に対応した補正値を算出し、基準適正電圧をその補正値分だけ補正して、検査適正電圧を算出する。なお、ヘッド検査装置401における基準適正電圧の算出と同様の方法で、検査適正電圧を算出してもよい。
【0059】
その後、各機能液滴吐出ヘッド17におけるノズル列99毎の基準適正電圧および検査適正電圧に基づいて、検査の正常基準となる基準適正電圧範囲R(図13参照)を求める(設定する)(S3)。具体的には、まず、色ごとで且つ第1ノズル列99a、第2ノズル列99bごとに、基準適正電圧(X)および検査適正電圧(Y)を標本とした基準適正電圧と検査適正電圧との相関関係を示す回帰式(Y=AX+B)を算出する。色ごとで且つ第1ノズル列99a、第2ノズル列99bごとに回帰式を算出するため、3(3色)×2(2列)で、6個の回帰式を算出する。色ごとで且つ第1ノズル列99a、第2ノズル列99bごとの回帰式を算出したら、当該各回帰式に基づいて、色ごとで且つ第1ノズル列99a、第2ノズル列99bごとの基準適正電圧範囲Rを設定する。具体的には、各回帰式に対し、残差0、プラス残差、もしくは0.9V以下のマイナス残差である範囲を基準適正電圧範囲Rとする。すなわち、基準適正電圧に対する検査適正電圧が、回帰式に対し、0.9Vを超えるマイナス残差を有している場合には、基準適正電圧範囲Rから外れているものとする。
【0060】
なお、本実施形態では、圧力調整弁150が閉弁した際のリーク不良による不具合を想定している。すなわち、圧力調整弁150の不具合に起因して、回帰式に対しプラス残差となることがないものと想定しているため、マイナス残差で範囲を限定して基準適正電圧範囲Rを設定している。しかしながら、圧力調整弁150の不具合によって、回帰式に対し所定値以上のプラス残差となることが想定される場合には、プラス残差、もしくはプラスマイナス残差で範囲を限定しても良い。
【0061】
基準適正電圧範囲Rを設定したら、各ノズル列99の基準適正電圧および検査適正電圧と、対応する基準適正電圧範囲Rとを比較して、各機能液滴吐出ヘッド17の各ノズル列99における、基準適正電圧に対する検査適正電圧の値が、基準適正電圧範囲Rに外れているか否かを判定する(S4)(電圧基準判定工程)。
【0062】
任意の機能液滴吐出ヘッド17の両ノズル列99(全ノズル列99)の検査適正電圧が、各基準適正電圧範囲Rから外れていない場合(S5:A)には、当該機能液滴吐出ヘッド17に対応する圧力調整弁150を不具合なしと判定する(S6)。そして、この旨をユーザーに報知する(S7)(例えば、表示機構を備え、その旨を表示する。)。
【0063】
また、任意の機能液滴吐出ヘッド17の両ノズル列99(全ノズル列99)のうちのいずれかの検査適正電圧が、基準適正電圧範囲Rから外れている場合(S5:B)には、当該機能液滴吐出ヘッド17に対応する圧力調整弁150を不具合なしと判定すると共に、「重量測定エラー、検査対象の機能液滴吐出ヘッド17(ノズル列99)に不具合あり、もしくは検査対象の圧力調整弁150の下流側の流路に異常がある」と判定する(S8)。そして、この旨をユーザーに報知する(S9)。
【0064】
一方、任意の機能液滴吐出ヘッド17の両ノズル列99(全ノズル列99)の検査適正電圧が、各基準適正電圧範囲Rから外れている場合(S5:C)には、当該機能液滴吐出ヘッド17に対応する圧力調整弁150を不具合ありと判定する(S10)。そして、この旨をユーザーに報知する(S11)。
【0065】
以上のような構成によれば、機能液滴吐出ヘッド17の吐出重量に基づいて圧力調整弁150の不具合を検査するため、複数ショット吐出した合計吐出重量を検出することもでき、機能液の消費量や供給圧力が微小な場合にも、簡単な構成で精度良く測定することができる。ひいては、圧力調整弁150の不具合を簡単な構成で且つ精度良く検査することができる。また、単に吐出重量に基づいて不具合を検査すると、機能液滴吐出ヘッド17側に不具合があった際にも、圧力調整弁150に不具合ありと判定されてしまうが、全ノズル列99における検査適正電圧が基準適正電圧範囲Rから外れた場合にのみ、不具合ありと判定することで、機能液滴吐出ヘッド17側の不具合が原因である適正電圧異常の場合を排除することができる。
【0066】
また、複数の機能液滴吐出ヘッド17による検査適正電圧と、基準適正電圧との回帰式を基準として、基準適正電圧範囲Rを設定することにより、検査時の環境や状態に合わせた基準適正電圧範囲Rを設定することができる。特に、ヘッド検査装置401と液滴吐出装置1とを環境の違う場所に設置している場合(例えば、環境温度により機能液の特性が変化し、吐出重量に影響する)にも、精度良く検査することができる。また、複数の機能液滴吐出ヘッド17による検査適正電圧の測定結果を利用して、基準適正電圧範囲Rを設定するため、基準適正電圧範囲Rの設定を容易に行うことができる。
【0067】
なお、本実施形態においては、適正電圧に基づいて、圧力調整弁150の不具合判定を実施している。これは、機能液滴吐出ヘッド17が劣化し、適正電圧が経時的に変化した際に行われる適正電圧の補正動作で得られた補正後の適正電圧を利用して、圧力調整弁150の検査動作を実施することを考慮したものである。当該作用効果を考慮しないのであれば、吐出重量に基づいて、圧力調整弁150の不具合判定を実施しても良い。すなわち、かかる場合には、ヘッド検査装置401からノズル列99毎の吐出重量(以下、基準吐出重量と記載)を取得し、ノズル列99毎の基準吐出重量と検査吐出重量とから基準吐出重量範囲を求めると共に、検査吐出重量と基準吐出重量範囲を比較して、圧力調整弁150を判定する(重量基準判定工程)。
【0068】
また、本実施形態においては、基準適正電圧(基準吐出重量)と検査適正電圧(検査吐出重量)との回帰式を基準として、基準適正電圧範囲R(基準吐出重量範囲)を設定したが、基準適正電圧(基準吐出重量)のみに基づいて、基準適正電圧範囲R(基準吐出重量範囲)を設定するものであっても良い。例えば、ノズル列99毎に、その基準適正電圧(基準吐出重量)の近傍範囲を基準適正電圧範囲R(基準吐出重量範囲)とする。
【0069】
なお、本実施形態においては、液滴吐出装置1における圧力調整弁150の検査方法に本発明の検査方法を適用したが、キャリッジユニット51を個別に検査するキャリッジ検査装置に、当該検査方法を適用しても良い。
【0070】
また、本実施形態においては、ノズル列99毎に検査適正電圧を測定し、全ノズル列99の検査適正電圧が基準適正電圧範囲Rから外れている場合のみ、対応する圧力調整弁150を不具合ありと判定しているが、機能液滴吐出ヘッド17毎に検査適正電圧を測定し、当該検査適正電圧が基準適正電圧範囲Rから外れている場合のみ、対応する圧力調整弁150を不具合ありと判定しても良い。
【0071】
さらに、本実施形態では、2列のノズル列99を有する機能液滴吐出ヘッド17を用いたが、2列以上であれば、その数は任意である。
【符号の説明】
【0072】
17:機能液滴吐出ヘッド、 99:ノズル列、 150:圧力調整弁、 412:基準圧力調整弁、 R:基準適正電圧範囲
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出ヘッドに連通し、液滴吐出ヘッドへの機能液の供給圧力を調整する圧力調整弁の不具合を、液滴吐出ヘッドから機能液を吐出させて検査する圧力調整弁の検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスの供給圧力を調整する圧力調整弁の検査方法として、圧力調整弁の上流側に接続してガスの流れを検出するフローセンサーと、ガス消費量を計測する流量センサーと、減圧されたガス圧力を計測する圧力センサーと、を用い、これらの検出結果を組み合わせて、圧力調整弁の不具合を検査するものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−119848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、機能液の圧力調整を行う圧力調整弁に、上記検査方法を適用して、ガスを用いて検査することが考えられるが、かかる場合、気体と液体との相違から、機能液を通液した際に生じる不具合を検出することができないという問題があった。また、描画に使用する機能液を用い、且つ描画時と同条件で検査する方法も考えられるが、かかる場合、液滴吐出ヘッドによる機能液の消費量や供給圧力が微小であると支障が出てしまうという問題がある。すなわち、これら微小な消費量や圧力を検出することは煩雑であり、精度良く検査を実施するためには、上記各センサーとして高精度なものを用いる必要があるという問題があった。特に、液晶表示装置のカラーフィルタや有機EL装置の各画素となる発光素子等を形成する液滴吐出ヘッドでは、微小量の液滴吐出が求められており、結果、機能液の消費量および供給圧力が微小となる傾向がある。さらに、機能液の供給流路に各種センサーを接続する構成では、供給流路が複雑化し、結果、気泡の滞留等の問題が生じてしまう。
【0005】
本発明は、圧力調整弁の不具合を、簡単な構成で且つ精度良く検査することができる圧力調整弁の検査方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の圧力調整弁の検査方法は、複数のノズル列を有する液滴吐出ヘッドに連通し、液滴吐出ヘッドへの機能液の供給圧力を調整する圧力調整弁の不具合を、液滴吐出ヘッドからノズル列毎に機能液を吐出させて検査する圧力調整弁の検査方法であって、ノズル列毎に機能液を検査吐出させ、ノズル列毎の検査吐出重量を測定する吐出重量測定工程と、測定したノズル列毎の検査吐出重量と、検査の正常基準となる基準吐出重量範囲とを比較し、全ノズル列における検査吐出重量が基準吐出重量範囲から外れた場合にのみ、圧力調整弁を不具合ありと判定する重量基準判定工程と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この場合、重量基準判定工程に代えて、測定したノズル列毎の検査吐出重量からノズル列毎の検査適正電圧を求める電圧算定工程と、求めたノズル列毎の検査適正電圧と、検査の正常基準となる基準適正電圧範囲とを比較し、全ノズル列における検査適正電圧が基準適正電圧範囲から外れた場合にのみ、圧力調整弁を不具合ありと判定する電圧基準判定工程と、を備えることが好ましい。
【0008】
これらの構成によれば、液滴吐出ヘッドの吐出重量に基づいて圧力調整弁の不具合を検査する。吐出重量測定であれば、複数ショット吐出した合計吐出重量を検出することもでき、機能液の消費量や供給圧力が微小な場合にも、簡単な構成で精度良く測定することができる。ひいては、圧力調整弁の不具合を簡単な構成で且つ精度良く検査することができる。また、単に吐出重量に基づいて不具合を検査すると、液滴吐出ヘッド側に不具合があった際にも、圧力調整弁に不具合ありと判定されてしまうが、全ノズル列における検査吐出重量(検査適正電圧)が基準吐出重量範囲(基準適正電圧範囲)から外れた場合にのみ、不具合ありと判定することで、液滴吐出ヘッド側の不具合が原因である吐出重量(適正電圧)異常の場合を排除することができる。
【0009】
上記の圧力調整弁の検査方法において、基準吐出重量範囲は、不具合の無い圧力調整弁を用い、液滴吐出ヘッドからノズル列毎に機能液を吐出させて求めたものであることが好ましい。
【0010】
上記の圧力調整弁の検査方法において、基準適正電圧範囲は、不具合の無い圧力調整弁を用い、液滴吐出ヘッドからノズル列毎に機能液を吐出させて求めたものであることが好ましい。
【0011】
これらの構成によれば、不具合のない圧力調整弁を用いた場合の吐出重量(適正電圧)を基準として、不具合の有無を判定することにより、圧力調整弁の不具合を、より精度良く検査することができる。
【0012】
上記の圧力調整弁の検査方法において、複数の液滴吐出ヘッドにそれぞれ連通する複数の圧力調整弁を検査対象とし、基準吐出重量範囲は、複数の液滴吐出ヘッドにおける、任意の液滴吐出ヘッドのノズル列毎の検査吐出重量と、不具合の無い圧力調整弁を用いて任意の液滴吐出ヘッドからノズル列毎に機能液を吐出させて測定した基準吐出重量と、を標本とした検査吐出重量と基準吐出重量との相関関係を示す回帰式を基準として求めたものであることが好ましい。
【0013】
上記の圧力調整弁の検査方法において、複数の液滴吐出ヘッドにそれぞれ連通する複数の圧力調整弁を検査対象とし、基準適正電圧範囲は、複数の液滴吐出ヘッドにおける、任意の液滴吐出ヘッドのノズル列毎の検査適正電圧と、不具合の無い圧力調整弁を用いて任意の液滴吐出ヘッドからノズル列毎に機能液を吐出させて求めた基準適正電圧と、を標本とした検査適正電圧と基準適正電圧との相関関係を示す回帰式を基準として求めたものであることが好ましい。
【0014】
これらの構成によれば、複数の液滴吐出ヘッドによる検査吐出重量(検査適正電圧)と基準吐出重量(基準適正電圧)との回帰式を基準として、基準吐出重量範囲(基準適正電圧範囲)を設定することにより、検査時の環境や状態に合わせた基準吐出重量範囲(基準適正電圧範囲)を設定することができる。また、複数の液滴吐出ヘッドによる検査吐出重量(検査適正電圧)の測定結果を利用して、基準吐出重量範囲(基準適正電圧範囲)を設定するため、基準吐出重量範囲(基準適正電圧範囲)の設定を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態に係る液滴吐出装置の斜視図である。
【図2】液滴吐出装置の平面図である。
【図3】液滴吐出装置の側面図である。
【図4】機能液滴吐出ヘッドを搭載したヘッドユニットを模式的に表した平面図である。
【図5】機能液滴吐出ヘッドの外観斜視図である。
【図6】機能液供給装置の配管系統図である。
【図7】圧力調整弁の背面図(a)、および正面図(b)である。
【図8】圧力調整弁を流入ポートの軸線方向に切断した縦断面図である。
【図9】圧力調整弁を流出ポートの軸線方向に切断した縦断面図である。
【図10】液滴吐出装置の制御ブロック図である。
【図11】配管系を主に示したヘッド検査装置の概念図である。
【図12】圧力調整弁の検査動作を示したフローチャートである。
【図13】基準適正電圧と検査適正電圧との相関関係を示した分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照して、本発明の圧力調整弁の検査方法を適用した液滴吐出装置について説明する。この液滴吐出装置は、フラットパネルディスプレイの製造ラインに組み込まれており、例えば、特殊なインクや発光性の樹脂液である機能液を導入した機能液滴吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)を用い、液晶表示装置のカラーフィルタや有機EL装置の各画素となる発光素子等を形成するものである。特に、この液滴吐出装置は、機能液滴吐出ヘッドへの供給圧力を調整する圧力調整弁を有し、機能液滴吐出ヘッドの吐出重量に基づいて、この圧力調整弁を、簡単な構成で且つ精度良く検査するものである。
【0017】
図1、図2および図3に示すように、液滴吐出装置1は、石定盤に支持されたX軸支持ベース2上に配設され、主走査方向となるX軸方向に延在して、ワークWをX軸方向(主走査方向)に移動させるX軸テーブル11と、複数本の支柱4を介してX軸テーブル11を跨ぐように架け渡された1対(2つ)のY軸支持ベース3上に配設され、副走査方向となるY軸方向に延在するY軸テーブル12と、複数の機能液滴吐出ヘッド17が搭載された10個のキャリッジユニット51と、から成り、10個のキャリッジユニット51は、Y軸テーブル12に移動自在に吊設されている。さらに、液滴吐出装置1は、これらの装置を温度および湿度が管理された雰囲気内に収容するチャンバ6と、チャンバ6を貫通して、チャンバ6の外部から内部の機能液滴吐出ヘッド17に機能液を供給する3組の機能液供給装置101を有した機能液供給ユニット7と、各ユニットを制御する制御装置8(図10参照)と、を備えている。X軸テーブル11およびY軸テーブル12の駆動と同期して機能液滴吐出ヘッド17を吐出駆動させることにより、機能液供給ユニット7から供給されたR・G・B3色の機能液滴を吐出させ、ワークWに所定の描画パターンが描画される。
【0018】
また、液滴吐出装置1は、フラッシングユニット14、吸引ユニット15、ワイピングユニット16、重量測定ユニット19および吐出性能検査ユニット18から成るメンテナンス装置5を備えており、これらユニットによって、機能液滴吐出ヘッド17の保守に供して、機能液滴吐出ヘッド17の機能維持・機能回復を図るようになっている。なお、メンテナンス装置5を構成する各ユニットのうち、フラッシングユニット14、重量測定ユニット19および吐出性能検査ユニット18は、X軸テーブル11に搭載され、吸引ユニット15およびワイピングユニット16は、X軸テーブル11から直角に延び、かつY軸テーブル12によりキャリッジユニット51が移動可能である位置に配設された架台上に配設されている(厳密には、吐出性能検査ユニット18は、後述するステージユニット77がX軸テーブル11に搭載され、カメラユニット78がY軸支持ベース3に支持されている。)。
【0019】
次に、液滴吐出装置1の構成要素について簡単に説明する。図2または図3に示すように、X軸テーブル11は、ワークWをセットするセットテーブル21と、セットテーブル21をX軸方向にスライド自在に支持するX軸第1スライダー22と、上記のフラッシングユニット14およびステージユニット77をX軸方向にスライド自在に支持するX軸第2スライダー23と、X軸方向に延在し、X軸第1スライダー22を介してセットテーブル21(ワークW)をX軸方向に移動させると共に、X軸第2スライダー23を介してフラッシングユニット14、重量測定ユニット19および後述するステージユニット77をX軸方向に移動させる左右一対のX軸リニアモーター(図示省略)と、X軸リニアモーターに並設され、X軸第1スライダー22およびX軸第2スライダー23の移動を案内する一対(2本)のX軸共通支持ベース24と、を備えている。
【0020】
Y軸テーブル12は、10個の各キャリッジユニット51をそれぞれ吊設した10個のブリッジプレート52と、10個のブリッジプレート52を両持ちで支持する10組のY軸スライダー(図示省略)と、上記した一対のY軸支持ベース3上に設置され、10組のY軸スライダーを介してブリッジプレート52をY軸方向に移動させる一対のY軸リニアモーター(図示省略)と、を備えている。また、Y軸テーブル12は、各キャリッジユニット51を介して描画時に機能液滴吐出ヘッド17を副走査するほか、機能液滴吐出ヘッド17をメンテナンス装置5(吸引ユニット15およびワイピングユニット16)に臨ませる。
【0021】
一対のY軸リニアモーターを(同期して)駆動すると、各Y軸スライダーが一対のY軸支持ベース3を案内にして同時にY軸方向を平行移動する。これにより、ブリッジプレート52がY軸方向を移動し、これと共にキャリッジユニット51がY軸方向に移動する。なお、この場合、Y軸リニアモーターの駆動を制御することにより、各キャリッジユニット51を独立させて個別に移動させることも可能であるし、10個のキャリッジユニット51を一体として移動させることも可能である。
【0022】
各キャリッジユニット51は、12個の機能液滴吐出ヘッド17と、12個の機能液滴吐出ヘッド17を6個ずつのヘッド群54に分けて支持するヘッドプレート53と、から成るヘッドユニット13を備えている(図4参照)。また、各キャリッジユニット51は、ヘッドユニット13をθ補正(θ回転)可能に支持するθ回転機構61と、θ回転機構61を介して、ヘッドユニット13をY軸テーブル12(各ブリッジプレート52)に支持させる吊設部材62と、を備えている。加えて、各キャリッジユニット51は、その上部に後述するサブタンク121が配設されており(実際には、ブリッジプレート52上のタンクケース55内に配設)、このサブタンク121から自然水頭を利用して各機能液滴吐出ヘッド17に機能液が供給されるようになっている。
【0023】
図5に示すように、機能液滴吐出ヘッド17は、いわゆる2連のものであり、2連の接続針92を有する機能液導入部91と、機能液導入部91に連なる2連のヘッド基板93と、機能液導入部91の下方に連なり、内部に機能液で満たされるヘッド内流路が形成されたヘッド本体94と、を備えている。接続針92は、機能液供給ユニット7(機能液供給装置101)に接続され、機能液導入部91に機能液を供給する。ヘッド本体94は、キャビティ95(ピエゾ圧電素子)と、多数の吐出ノズル98が開口したノズル面97を有するノズルプレート96と、で構成されている。機能液滴吐出ヘッド17を吐出駆動すると(ピエゾ圧電素子に電圧が印加され)、キャビティ95のポンプ作用により、吐出ノズル98から機能液滴が吐出される。
【0024】
ノズル面97には、多数の吐出ノズル98からなる2つのノズル列99が相互に平行に形成されている。そして、2つのノズル列99同士は、相互に半ノズルピッチ分位置ずれしている。以下、2つのノズル列99を、第1ノズル列99aおよび第2ノズル列99bと記載する。
【0025】
液滴吐出装置1の描画動作は、まず、ワークWをX軸テーブル11により、X軸方向で移動させながら(図2中左側へ)、第1描画動作(往動パス)を行う。その後、ヘッドユニット13を2ヘッド分Y軸方向に移動(副走査)させて、改めて、ワークWをX軸方向で移動させながら(図2中右側へ)、第2描画動作(復動パス)を行う。そして、再度ヘッドユニット13を2ヘッド分副走査し、もう一度、ワークWをX軸方向で移動させながら(図2中左側へ)、第3描画動作(往動パス)を行う。このような描画動作により、R・G・B3色の描画処理を効率良く行っている。
【0026】
図1に示すように、チャンバ6は、内部温度及び湿度を一定に保つように構成されている。すなわち、液滴吐出装置1によるワークWへの描画は、温度および湿度が一定値に管理された雰囲気中で行われる。そして、チャンバ6の側壁の一部には、後述するタンクユニット122を収納するためのタンクキャビネット84が設けられている。なお、有機EL装置等を製造する場合には、チャンバ6内を、不活性ガス(窒素ガス)の雰囲気で構成することが好ましい。
【0027】
フラッシングユニット14は、一対の描画前フラッシングユニット71,71と、定期フラッシングユニット72とを有し、機能液滴吐出ヘッド17の吐出直前や、ワークWの載換え時等の描画処理休止時に行われる、機能液滴吐出ヘッド17の捨て吐出(フラッシング)を受ける。吸引ユニット15は、複数の分割吸引ユニット74を有し、各機能液滴吐出ヘッド17の吐出ノズル98から機能液を強制的に吸引すると共に、キャッピングを行う。ワイピングユニット16は、ワイピングシート75を有し、吸引後の機能液滴吐出ヘッド17のノズル面97を拭取る。吐出性能検査ユニット18は、機能液滴吐出ヘッド17から吐出された機能液滴を受ける検査シート83を搭載したステージユニット77と、ステージユニット77上の機能液滴を画像認識により検査するカメラユニット78を有し、機能液滴吐出ヘッド17の吐出性能(吐出の有無および飛行曲り)を検査する。
【0028】
図2および図3に示すように、重量測定ユニット19は、複数(本実施形態では20個)の吐出重量測定装置66を備えている。各吐出重量測定装置66は、各ヘッド群54を構成する6個の機能液滴吐出ヘッド17のうち、任意の1の機能液滴吐出ヘッド17から吐出した機能液を受ける受液容器67と、受液容器67を介して機能液の重量を測定する電子天秤68と、を有している。
【0029】
電子天秤68は、受液容器67に吐出された機能液の重量を測定し、測定結果を制御装置8に出力する。詳細は後述するが、制御装置8は、電子天秤68から入力した測定結果に基づいて、機能液滴吐出ヘッド17に印加する駆動電力(電圧値)を制御する。
【0030】
次に、図1および図6を参照して機能液供給ユニット7について説明する。機能液供給ユニット7は、R・G・B3色の機能液を供給する3組の機能液供給装置101を備えている。3組の機能液供給装置101は、それぞれR・G・B3色に対応した機能液滴吐出ヘッド17に接続されており、これにより、各色の機能液滴吐出ヘッド17には対応する色の機能液が供給される。
【0031】
図6に示すように、各色の機能液供給装置101は、機能液の供給源を構成する2つのメインタンク111,111を有するタンクユニット122と、各キャリッジユニット51に対応して設けた10個のサブタンク121と、タンクユニット122と10個のサブタンク121を接続する上流側機能液流路126と、各サブタンク121と各機能液滴吐出ヘッド17とを接続する10組の下流側機能液流路127と、を備えている。
【0032】
各メインタンク111,111内の機能液は、これに接続した窒素ガス供給設備85からの圧縮窒素ガスにより加圧され、上流側機能液流路126を介して10個のサブタンク121に選択的に供給される。その際、各種開閉弁に接続した圧縮エアー供給設備86の圧縮エアーにより、各種開閉弁が開閉制御される。また同時に、各サブタンク121は、これに接続したガス排気設備87を介して大気開放され、必要量の機能液を受容する。各サブタンク121の機能液は、これに連なる機能液滴吐出ヘッド17の駆動により、下流側機能液流路127を介して機能液滴吐出ヘッド17に供給される。
【0033】
タンクユニット122は、機能液の供給源となる一対のメインタンク111,111と、一対のメインタンク111,111の重量をそれぞれ測定する一対の重量測定装置112,112と、一対のメインタンク111,111に接続されると共に、上流側機能液流路126に接続した切換え機構113と、を備えている。各メインタンク111には、窒素ガス供給設備85に接続されており、機能液を圧送する際に加圧制御可能に構成されている。
【0034】
上流側機能液流路126は、上流側から、上流側をタンクユニット122に接続したタンク側主流路131と、分岐部132を介してタンク側主流路131から10方に分流し、下流側をサブタンク121に接続した10本の枝流路133と、を備えている。タンクユニット122から供給された機能液は、分岐部132により10方に分流して各サブタンク121に供給される。
【0035】
また、タンク側主流路131には、上流側から気泡除去ユニット135、第1開閉弁136、エアー抜きユニット137、第2開閉弁138がそれぞれ介設されている。さらに、各枝流路133には、各サブタンク121の近傍に位置して第3開閉弁139がそれぞれ介設されている。
【0036】
各下流側機能液流路127は、上流側から、上流側を各サブタンク121に接続したヘッド側主流路146と、上流側をヘッド側主流路146に接続した4分岐流路147と、上流側を4分岐流路147に接続した複数のヘッド側枝流路148と、により構成されている。これにより、機能液が各サブタンク121から4方に分岐して、それぞれの機能液滴吐出ヘッド17に接続されている。すなわち、上流側機能液流路126の10分岐と、下流側機能液流路127の4分岐により、10×4個の機能液滴吐出ヘッド17に機能液が供給される。加えて、機能液供給ユニット7は、R・G・Bで3組の機能液供給装置101を有しているため、10×12個の機能液滴吐出ヘッド17に機能液が供給される。更に、ヘッド側主流路146には、第4開閉弁149が介設されており、各ヘッド側枝流路148には、各機能液滴吐出ヘッド17への供給圧力を調整する圧力調整弁150と、がそれぞれ介設されている。
【0037】
次に、図7ないし図9を参照して、圧力調整弁150廻りについて説明する。図7に示すように、圧力調整弁150は、ヘッド側枝流路148に介設されており、流入側の継手を構成すると共に、流入ポート175に連なる流入コネクタ161(ユニオン継手)と、流出側の継手を構成すると共に、流出ポート190に連なる流出コネクタ162(ユニオン継手)と、を有している。
【0038】
図7および図8に示すように、圧力調整弁150は、本体ケーシング166と、本体ケーシング166と共に内部に1次室167を形成する蓋ケーシング168と、本体ケーシング166と共に内部に2次室169を形成し本体ケーシング166にダイヤフラム171を固定するリングプレート170との3部材でバルブケーシングが構成されており、いずれもステンレス等の耐食性材料で形成されている。また、本体ケーシング166には、その中心位置に1次室167および2次室169を連通する連通流路173が形成されている。
【0039】
蓋ケーシング168およびリングプレート170は、本体ケーシング166に対し、前後からリングプレート170および蓋ケーシング168を重ね、複数本の段付平行ピン(図示省略)でそれぞれ位置決めした後、ねじ止めして組み立てられており、いずれも円形のダイヤフラム171の中心を通る軸線と同心円となる円形あるいは多角形(8角形)の外観を有している。そして、蓋ケーシング168および本体ケーシング166は、パッキン172を介して相互に気密に突合せ接合され、本体ケーシング166およびリングプレート170は、ダイヤフラム171の縁部およびパッキン172を挟込み込んで相互に気密に突合せ接合されている。
【0040】
本体ケーシング166と蓋ケーシング168とで形成された1次室167は、ダイヤフラム171と同心となる略円柱形状に形成されており、その開放端を蓋ケーシング168により閉蓋されている。また、本体ケーシング166の1次室167側背面上部に形成した上部ボス部の左部には1次室167から径方向斜めに延びる流入ポート175が形成されている。流入ポート175には上記の流入コネクタ161が接続されている。
【0041】
図8に示すように、流入ポート175は、本体ケーシング166の外周面に開口した流入口176と、フィルタ181を収容するフィルタ収容部177と、フィルタ収容部177と1次室167の内周面とを連通する流入経路178とから成り、流入口176に対し流入経路178は、1次室167側に偏心して形成されている。流入口176には、流入コネクタ161が螺合(テーパネジ)される。なお、フィルタ181と、螺合した流入コネクタ161との間にはフィルタ181の押えばね182が収容される。
【0042】
図8および図9に示すように、2次室169は、ダイヤフラム171と、本体ケーシング166に形成した内面壁185とによって、全体としてダイヤフラム171を底面とする円錐台形状に形成されている。ダイヤフラム171は、鉛直姿勢を為して配設され、2次室169の1つの面を構成している。また、内面壁185は、2次室169のダイヤフラム171の面(1つの面)を除いた各面で構成されている。
【0043】
また、内面壁185のうち円錐台形状の頂面となる端壁185aには、ダイヤフラム171と同心となる2次室側開口部186が開口し、内面壁185のうち円錐台形状のテーパ面となる周壁185bの下側斜面における上下中間部には、後述する流出流路193の流出開口部187が形成されている。この場合、2次室側開口部186は、後述する受圧板付勢ばね218を収容するばね室を兼ねており、連通流路173の主流路201より太径に形成されている。
【0044】
図9に示すように流出ポート190は、本体ケーシング166の下部に位置する傾斜ボス部191に形成されており、傾斜ボス部191の下部に開口した流出口192と、2次室169の流出開口部187と、これらを連通する流出流路193とで構成されている。流出流路193は、内面壁185の周壁185bから斜めに延びて下向きの流出口192に連通している。流出口192には、流出流路193の軸線方向から流出コネクタ162が螺合している。2次室169から流出する機能液は、流出開口部187から流出流路193の勾配に従って斜めに流下し、機能液滴吐出ヘッド17側に流出する。
【0045】
図8および図9に示すように、本体ケーシング166には、1次室167と2次室169とを連通する連通流路173が形成されている。連通流路173は、主流路201と、これに連なる2次室側開口部186とで構成されている。これら1次室167、2次室169および連通流路173は、いずれもダイヤフラム171と同心の円形断面を有している。ただし、主流路201は、後述する弁体211の軸部213がスライド自在に収容される円形断面の軸遊挿部202と、軸遊挿部202から径方向四方に延びる十字状断面の流路部203とで構成されている(図7(b)参照)。
【0046】
ダイヤフラム171は、樹脂フィルムで構成したダイヤフラム本体206と、ダイヤフラム本体206の内側に貼着した樹脂製の受圧板207とで構成されている。受圧板207は、ダイヤフラム本体206と同心の円板状に、且つダイヤフラム本体206に対し十分に小さい径に形成されており、その中央に後述する弁体211の軸部213が当接する。ダイヤフラム本体206は、耐熱PP(ポリプロピレン)と特殊PPとシリカを蒸着したPET(ポリエチレンテレフタレート)とを積層して構成されており、本体ケーシング166の前面と同径の円形に形成されている。
【0047】
弁体211は、円板状の弁体本体212と、弁体本体212の中心から断面横「T」字状を為すように一方向に延びる軸部213と、軸部213の基端部側(弁体本体212側)に設けた(取り付けた)環状のOリング214とで構成されている。弁体本体212および軸部213は、ステンレス等の耐食材料で一体に形成されている。Oリング214は、例えば軟質のシリコンゴムで環状に形成されている。このため、弁体211の閉弁時には、弁座となる連通流路173の開口縁にOリング214が強く当接して、連通流路173が1次室167側から液密に閉塞される。
【0048】
軸部213は、連通流路173(の主流路201)にスライド自在に遊嵌され、閉弁状態でその先端(前端)が中立位置にあるダイヤフラム171の受圧板207に当接する。すなわち、ダイヤフラム171が外部に向かって膨出するプラス変形の状態では、軸部213の前端と受圧板207との間には所定の間隙が生じており、この状態からダイヤフラム171がマイナス側に変形してゆくと、中立状態で軸部213の前端と受圧板207が当接し、さらにダイヤフラム171のマイナス変形がすすむと、受圧板207が軸部213を介して弁体本体212を押し開弁させることになる。したがって、2次室169の容積のうち、ダイヤフラム171がプラス変形から中立状態となる容積分は、1次室167側の圧力を一切受けることなく、機能液の供給が為される。
【0049】
弁体211の背面と1次室167の壁体216との間には、弁体211を2次室169側、すなわち閉弁方向に付勢する弁体付勢ばね217が介設されている。同様に、受圧板207と内面壁185の間には、受圧板207を介してダイヤフラム本体206を外部に向かって付勢する受圧板付勢ばね218が介設されている。この場合、弁体付勢ばね217は、弁体211の背面に加わるサブタンク121の水頭を補完するものであり、サブタンク121の水頭とこの弁体付勢ばね217のばね力により、弁体211が閉塞方向に押圧される。一方、受圧板付勢ばね218は、ダイヤフラム171のプラス変形を補完するものであり、大気圧に対し2次室169が負圧になるように作用する。
【0050】
圧力調整弁150は、大気圧と機能液滴吐出ヘッド17に連なる2次室169との圧力バランスによりダイヤフラム171(およびこれが当接する弁体211)が変形(進退)することで開閉し、2次室169側を所定の圧力まで減圧するようにしている。その際、弁体付勢ばね217および受圧板付勢ばね218に力が分散して作用し、且つ軟質シリコンゴムのOリング214(の弾性力)により、弁体211は極めてゆっくり開閉動作する。このため、弁体211の開閉による圧力変動(キャビテーション)が抑制され、機能液滴吐出ヘッド17の吐出駆動に影響を与えないようになっている。もちろん、サブタンク121側(1次室167側)で発生する脈動等も、弁体211で縁切りされるため、これを吸収する(ダンパー機能)ことができる。
【0051】
次に、図10の制御ブロック図を参照して、制御装置8について説明する。図10に示すように、制御装置8は、インターフェース301を介して、各部に接続し、各部を制御するものであり、構成要素として、RAM302と、ROM303と、ハードディスク304と、CPU305と、これらを互いに接続するバス306と、を備えている。RAM302は、一時的に記憶可能な記憶領域を有し、制御処理のための作業領域として使用される。ROM303は、各種記憶領域を有し、制御プログラムや制御データを記憶する。ハードディスク304は、ワークWに所定の描画パターンを描画するための描画データや、各部からの各種データ等を記憶すると共に、各種データを処理するためのプログラム等を記憶する。CPU305は、ROM303やハードディスク304に記憶されたプログラム等に従い、各種データを演算処理する。
【0052】
制御装置8は、各部からの各種データを入力すると共に、ハードディスク304に記憶された(または、CD−ROMドライブ等により順次読み出される)プログラムに従ってCPU305に演算処理させ、その処理結果を各部に出力する。これにより、装置全体が制御され、液滴吐出装置1の各種処理が行われる。
【0053】
ここで図11ないし図13を参照して、圧力調整弁150の検査方法について説明する。この検査方法では、後述する検査動作にて測定する現時点でのノズル列99毎の適正電圧(検査適正電圧)と、予めヘッド検査装置401にて測定したノズル列99毎の適正電圧(基準適正電圧)とに基づいて、各圧力調整弁150の不具合を検査するものである。適正電圧とは、目標吐出重量を吐出するための機能液滴吐出ヘッド17の駆動電圧(電圧値)である。そこで、ヘッド検査装置401およびヘッド検査装置401による基準適正電圧の測定動作について説明する。
【0054】
図11に示すように、ヘッド検査装置401は、液滴吐出装置1に搭載する前の機能液滴吐出ヘッド17にヘッド単体検査を実施する装置である。ヘッド検査装置401は、検査対象となる機能液滴吐出ヘッド17と、機能液滴吐出ヘッド17に機能液を供給する機能液供給系402と、機能液滴吐出ヘッド17からの検査吐出を受ける吐出重量測定機構403と、を備えている。なお、図示省略したが、ヘッド検査装置401は、吐出重量測定機構403以外の各種測定・検査機構やメンテナンス機構、および機能液滴吐出ヘッド17を移動する移動機構を備え、移動機構により機能液滴吐出ヘッド17を各機構に臨ませて、機能液滴吐出ヘッド17をメンテナンスしつつ、各種測定・検査を行う。
【0055】
機能液供給系402は、機能液滴吐出ヘッド17が接続される共に、機能液を貯留する機能液タンク411と、機能液タンク411と機能液滴吐出ヘッド17との間に介設された基準圧力調整弁412と、を備えている。基準圧力調整弁412は、液滴吐出装置1に搭載された圧力調整弁150と同一の構成を有しており、また、圧力調整弁検査の基準となるため、不具合の無いものを用いる。吐出重量測定機構403は、実際に捨て吐出を受ける試料受容部413を有した電子天秤で構成されている。
【0056】
ノズル列99毎の基準適正電圧の測定動作では、機能液滴吐出ヘッド17をノズル列99毎に検査吐出させ、吐出重量測定機構403によって、ノズル列99毎の吐出重量を測定する。その後、ノズル列99毎に、測定した吐出重量に基づいて、適正電圧(以下、基準適正電圧と記載)を算出(決定)する。具体的には、目標吐出重量を吐出するための、およその電圧値があり、ノズル列99毎に、その電圧値に前後する2つの電圧値で、吐出重量測定を実施する。その後、当該測定結果(2つの電圧値での各吐出重量)に基づいて、電圧値と吐出重量との一次関数を求め、目標吐出重量をその一次関数に代入することで、目標吐出重量に対する電圧値を算出する。ここで求めた電圧値を基準適正電圧とする。液滴吐出装置1に搭載する各機能液滴吐出ヘッド17に対し、このようなノズル列99毎の基準適正電圧の測定動作を実施することで、各機能液滴吐出ヘッド17におけるノズル列99毎の基準適正電圧を測定する。ここで測定した基準適正電圧のデータは、各機能液滴吐出ヘッド17を搭載する際、液滴吐出装置1の制御装置8(具体的には、ハードディスク304)に記憶される。
【0057】
次に、図12を参照して、液滴吐出装置1における圧力調整弁150の検査動作について説明する。この検査動作は、描画動作の直前に実施されることが好ましい。図12に示すように、まず、制御装置8は、機能液滴吐出ヘッド17からノズル列99毎に検査吐出を実施して、各機能液滴吐出ヘッド17におけるノズル列99毎の吐出重量(以下、検査吐出重量と記載)を測定する(S1)(吐出重量測定工程)。具体的には、X軸第2スライダー23を駆動し、各機能液滴吐出ヘッド17に、対応する吐出重量測定装置66を臨ませつつ、ノズル列99毎に検査吐出を実施し、加えて、検査吐出を受けた各吐出重量測定装置66によって、ノズル列99毎の吐出重量を測定する。なお、検査吐出では、基準適正電圧で吐出駆動し、且つ複数ショット(数万発)吐出駆動する。また、吐出重量測定では、当該複数ショットの合計吐出重量を測定する。
【0058】
次に、測定した各機能液滴吐出ヘッド17におけるノズル列99毎の検査吐出重量に基づいて、ノズル列99毎の適正電圧(以下、検査適正電圧と記載)を算定する(S2)(電圧算定工程)。当該検査適正電圧の測定では、測定した検査吐出重量と目標吐出重量との差分に対応した補正値を算出し、基準適正電圧をその補正値分だけ補正して、検査適正電圧を算出する。なお、ヘッド検査装置401における基準適正電圧の算出と同様の方法で、検査適正電圧を算出してもよい。
【0059】
その後、各機能液滴吐出ヘッド17におけるノズル列99毎の基準適正電圧および検査適正電圧に基づいて、検査の正常基準となる基準適正電圧範囲R(図13参照)を求める(設定する)(S3)。具体的には、まず、色ごとで且つ第1ノズル列99a、第2ノズル列99bごとに、基準適正電圧(X)および検査適正電圧(Y)を標本とした基準適正電圧と検査適正電圧との相関関係を示す回帰式(Y=AX+B)を算出する。色ごとで且つ第1ノズル列99a、第2ノズル列99bごとに回帰式を算出するため、3(3色)×2(2列)で、6個の回帰式を算出する。色ごとで且つ第1ノズル列99a、第2ノズル列99bごとの回帰式を算出したら、当該各回帰式に基づいて、色ごとで且つ第1ノズル列99a、第2ノズル列99bごとの基準適正電圧範囲Rを設定する。具体的には、各回帰式に対し、残差0、プラス残差、もしくは0.9V以下のマイナス残差である範囲を基準適正電圧範囲Rとする。すなわち、基準適正電圧に対する検査適正電圧が、回帰式に対し、0.9Vを超えるマイナス残差を有している場合には、基準適正電圧範囲Rから外れているものとする。
【0060】
なお、本実施形態では、圧力調整弁150が閉弁した際のリーク不良による不具合を想定している。すなわち、圧力調整弁150の不具合に起因して、回帰式に対しプラス残差となることがないものと想定しているため、マイナス残差で範囲を限定して基準適正電圧範囲Rを設定している。しかしながら、圧力調整弁150の不具合によって、回帰式に対し所定値以上のプラス残差となることが想定される場合には、プラス残差、もしくはプラスマイナス残差で範囲を限定しても良い。
【0061】
基準適正電圧範囲Rを設定したら、各ノズル列99の基準適正電圧および検査適正電圧と、対応する基準適正電圧範囲Rとを比較して、各機能液滴吐出ヘッド17の各ノズル列99における、基準適正電圧に対する検査適正電圧の値が、基準適正電圧範囲Rに外れているか否かを判定する(S4)(電圧基準判定工程)。
【0062】
任意の機能液滴吐出ヘッド17の両ノズル列99(全ノズル列99)の検査適正電圧が、各基準適正電圧範囲Rから外れていない場合(S5:A)には、当該機能液滴吐出ヘッド17に対応する圧力調整弁150を不具合なしと判定する(S6)。そして、この旨をユーザーに報知する(S7)(例えば、表示機構を備え、その旨を表示する。)。
【0063】
また、任意の機能液滴吐出ヘッド17の両ノズル列99(全ノズル列99)のうちのいずれかの検査適正電圧が、基準適正電圧範囲Rから外れている場合(S5:B)には、当該機能液滴吐出ヘッド17に対応する圧力調整弁150を不具合なしと判定すると共に、「重量測定エラー、検査対象の機能液滴吐出ヘッド17(ノズル列99)に不具合あり、もしくは検査対象の圧力調整弁150の下流側の流路に異常がある」と判定する(S8)。そして、この旨をユーザーに報知する(S9)。
【0064】
一方、任意の機能液滴吐出ヘッド17の両ノズル列99(全ノズル列99)の検査適正電圧が、各基準適正電圧範囲Rから外れている場合(S5:C)には、当該機能液滴吐出ヘッド17に対応する圧力調整弁150を不具合ありと判定する(S10)。そして、この旨をユーザーに報知する(S11)。
【0065】
以上のような構成によれば、機能液滴吐出ヘッド17の吐出重量に基づいて圧力調整弁150の不具合を検査するため、複数ショット吐出した合計吐出重量を検出することもでき、機能液の消費量や供給圧力が微小な場合にも、簡単な構成で精度良く測定することができる。ひいては、圧力調整弁150の不具合を簡単な構成で且つ精度良く検査することができる。また、単に吐出重量に基づいて不具合を検査すると、機能液滴吐出ヘッド17側に不具合があった際にも、圧力調整弁150に不具合ありと判定されてしまうが、全ノズル列99における検査適正電圧が基準適正電圧範囲Rから外れた場合にのみ、不具合ありと判定することで、機能液滴吐出ヘッド17側の不具合が原因である適正電圧異常の場合を排除することができる。
【0066】
また、複数の機能液滴吐出ヘッド17による検査適正電圧と、基準適正電圧との回帰式を基準として、基準適正電圧範囲Rを設定することにより、検査時の環境や状態に合わせた基準適正電圧範囲Rを設定することができる。特に、ヘッド検査装置401と液滴吐出装置1とを環境の違う場所に設置している場合(例えば、環境温度により機能液の特性が変化し、吐出重量に影響する)にも、精度良く検査することができる。また、複数の機能液滴吐出ヘッド17による検査適正電圧の測定結果を利用して、基準適正電圧範囲Rを設定するため、基準適正電圧範囲Rの設定を容易に行うことができる。
【0067】
なお、本実施形態においては、適正電圧に基づいて、圧力調整弁150の不具合判定を実施している。これは、機能液滴吐出ヘッド17が劣化し、適正電圧が経時的に変化した際に行われる適正電圧の補正動作で得られた補正後の適正電圧を利用して、圧力調整弁150の検査動作を実施することを考慮したものである。当該作用効果を考慮しないのであれば、吐出重量に基づいて、圧力調整弁150の不具合判定を実施しても良い。すなわち、かかる場合には、ヘッド検査装置401からノズル列99毎の吐出重量(以下、基準吐出重量と記載)を取得し、ノズル列99毎の基準吐出重量と検査吐出重量とから基準吐出重量範囲を求めると共に、検査吐出重量と基準吐出重量範囲を比較して、圧力調整弁150を判定する(重量基準判定工程)。
【0068】
また、本実施形態においては、基準適正電圧(基準吐出重量)と検査適正電圧(検査吐出重量)との回帰式を基準として、基準適正電圧範囲R(基準吐出重量範囲)を設定したが、基準適正電圧(基準吐出重量)のみに基づいて、基準適正電圧範囲R(基準吐出重量範囲)を設定するものであっても良い。例えば、ノズル列99毎に、その基準適正電圧(基準吐出重量)の近傍範囲を基準適正電圧範囲R(基準吐出重量範囲)とする。
【0069】
なお、本実施形態においては、液滴吐出装置1における圧力調整弁150の検査方法に本発明の検査方法を適用したが、キャリッジユニット51を個別に検査するキャリッジ検査装置に、当該検査方法を適用しても良い。
【0070】
また、本実施形態においては、ノズル列99毎に検査適正電圧を測定し、全ノズル列99の検査適正電圧が基準適正電圧範囲Rから外れている場合のみ、対応する圧力調整弁150を不具合ありと判定しているが、機能液滴吐出ヘッド17毎に検査適正電圧を測定し、当該検査適正電圧が基準適正電圧範囲Rから外れている場合のみ、対応する圧力調整弁150を不具合ありと判定しても良い。
【0071】
さらに、本実施形態では、2列のノズル列99を有する機能液滴吐出ヘッド17を用いたが、2列以上であれば、その数は任意である。
【符号の説明】
【0072】
17:機能液滴吐出ヘッド、 99:ノズル列、 150:圧力調整弁、 412:基準圧力調整弁、 R:基準適正電圧範囲
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズル列を有する液滴吐出ヘッドに連通し、前記液滴吐出ヘッドへの機能液の供給圧力を調整する圧力調整弁の不具合を、前記液滴吐出ヘッドからノズル列毎に機能液を吐出させて検査する圧力調整弁の検査方法であって、
前記ノズル列毎に機能液を検査吐出させ、前記ノズル列毎の検査吐出重量を測定する吐出重量測定工程と、
測定した前記ノズル列毎の前記検査吐出重量と、検査の正常基準となる基準吐出重量範囲とを比較し、全ノズル列における前記検査吐出重量が前記基準吐出重量範囲から外れた場合にのみ、前記圧力調整弁を不具合ありと判定する重量基準判定工程と、を備えたことを特徴とする圧力調整弁の検査方法。
【請求項2】
前記基準吐出重量範囲は、不具合の無い前記圧力調整弁を用い、前記液滴吐出ヘッドから前記ノズル列毎に機能液を吐出させて求めたものであることを特徴とする請求項1に記載の圧力調整弁の検査方法。
【請求項3】
複数の前記液滴吐出ヘッドにそれぞれ連通する複数の前記圧力調整弁を検査対象とし、
前記基準吐出重量範囲は、
前記複数の液滴吐出ヘッドにおける、任意の液滴吐出ヘッドのノズル列毎の検査吐出重量と、不具合の無い前記圧力調整弁を用いて任意の液滴吐出ヘッドからノズル列毎に機能液を吐出させて測定した基準吐出重量と、を標本とした前記検査吐出重量と前記基準吐出重量との相関関係を示す回帰式を基準として求めたものであることを特徴とする請求項1に記載の圧力調整弁の検査方法。
【請求項4】
前記重量基準判定工程に代えて、
測定した前記ノズル列毎の前記検査吐出重量から前記ノズル列毎の検査適正電圧を求める電圧算定工程と、
求めた前記ノズル列毎の前記検査適正電圧と、検査の正常基準となる基準適正電圧範囲とを比較し、全ノズル列における前記検査適正電圧が前記基準適正電圧範囲から外れた場合にのみ、前記圧力調整弁を不具合ありと判定する電圧基準判定工程と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の圧力調整弁の検査方法。
【請求項5】
前記基準適正電圧範囲は、不具合の無い前記圧力調整弁を用い、前記液滴吐出ヘッドから前記ノズル列毎に機能液を吐出させて求めたものであることを特徴とする請求項4に記載の圧力調整弁の検査方法。
【請求項6】
複数の前記液滴吐出ヘッドにそれぞれ連通する複数の前記圧力調整弁を検査対象とし、
前記基準適正電圧範囲は、
前記複数の液滴吐出ヘッドにおける、任意の液滴吐出ヘッドのノズル列毎の検査適正電圧と、不具合の無い前記圧力調整弁を用いて任意の液滴吐出ヘッドからノズル列毎に機能液を吐出させて求めた基準適正電圧と、を標本とした前記検査適正電圧と前記基準適正電圧との相関関係を示す回帰式を基準として求めたものであることを特徴とする請求項4に記載の圧力調整弁の検査方法。
【請求項1】
複数のノズル列を有する液滴吐出ヘッドに連通し、前記液滴吐出ヘッドへの機能液の供給圧力を調整する圧力調整弁の不具合を、前記液滴吐出ヘッドからノズル列毎に機能液を吐出させて検査する圧力調整弁の検査方法であって、
前記ノズル列毎に機能液を検査吐出させ、前記ノズル列毎の検査吐出重量を測定する吐出重量測定工程と、
測定した前記ノズル列毎の前記検査吐出重量と、検査の正常基準となる基準吐出重量範囲とを比較し、全ノズル列における前記検査吐出重量が前記基準吐出重量範囲から外れた場合にのみ、前記圧力調整弁を不具合ありと判定する重量基準判定工程と、を備えたことを特徴とする圧力調整弁の検査方法。
【請求項2】
前記基準吐出重量範囲は、不具合の無い前記圧力調整弁を用い、前記液滴吐出ヘッドから前記ノズル列毎に機能液を吐出させて求めたものであることを特徴とする請求項1に記載の圧力調整弁の検査方法。
【請求項3】
複数の前記液滴吐出ヘッドにそれぞれ連通する複数の前記圧力調整弁を検査対象とし、
前記基準吐出重量範囲は、
前記複数の液滴吐出ヘッドにおける、任意の液滴吐出ヘッドのノズル列毎の検査吐出重量と、不具合の無い前記圧力調整弁を用いて任意の液滴吐出ヘッドからノズル列毎に機能液を吐出させて測定した基準吐出重量と、を標本とした前記検査吐出重量と前記基準吐出重量との相関関係を示す回帰式を基準として求めたものであることを特徴とする請求項1に記載の圧力調整弁の検査方法。
【請求項4】
前記重量基準判定工程に代えて、
測定した前記ノズル列毎の前記検査吐出重量から前記ノズル列毎の検査適正電圧を求める電圧算定工程と、
求めた前記ノズル列毎の前記検査適正電圧と、検査の正常基準となる基準適正電圧範囲とを比較し、全ノズル列における前記検査適正電圧が前記基準適正電圧範囲から外れた場合にのみ、前記圧力調整弁を不具合ありと判定する電圧基準判定工程と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の圧力調整弁の検査方法。
【請求項5】
前記基準適正電圧範囲は、不具合の無い前記圧力調整弁を用い、前記液滴吐出ヘッドから前記ノズル列毎に機能液を吐出させて求めたものであることを特徴とする請求項4に記載の圧力調整弁の検査方法。
【請求項6】
複数の前記液滴吐出ヘッドにそれぞれ連通する複数の前記圧力調整弁を検査対象とし、
前記基準適正電圧範囲は、
前記複数の液滴吐出ヘッドにおける、任意の液滴吐出ヘッドのノズル列毎の検査適正電圧と、不具合の無い前記圧力調整弁を用いて任意の液滴吐出ヘッドからノズル列毎に機能液を吐出させて求めた基準適正電圧と、を標本とした前記検査適正電圧と前記基準適正電圧との相関関係を示す回帰式を基準として求めたものであることを特徴とする請求項4に記載の圧力調整弁の検査方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−175379(P2010−175379A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18135(P2009−18135)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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