説明

圧力調理器

【課題】何れかの方向に付勢されて、蓋体2の装着の際に鍋本体1と係止する係止部を有する係止基体4を備え、鍋内圧力が高まると上昇動作をなす圧力動作部3(動作体33)に対して係合する腕部45を有することで、係止基体の動作を制止する回動式圧力調理器において、蓋体を表裏逆とした際に、係止基体がロックして安全性を確保する。
【解決手段】動作体33が、上方軸管部333と下方胴部332を備え、腕部45の先端に係止基体の前後移動に際して上方軸管部が収納維持される嵌入溝46を設けると共に、下方胴部の直上位置に動作体上昇時に下方胴部が嵌合する嵌合部48を設け、蓋体を表裏逆とした際に、自重で下方胴部が嵌合部に嵌合(ロック)する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力調理器に関し、特に蓋体の開閉機構に係るものである。
【背景技術】
【0002】
圧力鍋は周知の通り鍋本体に蓋体を密閉状態に装着し、内部の圧力を高めて調理する器具で、本発明の対象とする圧力調理器は、回動装着式と称されている器具で、鍋本体の開口部を短フランジ形状とし、且つ前記の短フランジを適宜間隔で、外周方向に突出させて係止突縁を設け、蓋体には、その外周に前記係止突縁と対応して内側に折り返して突出させた係止内縁を設け、蓋体裏面外縁部分にパッキンを装着し、係止内縁を係止突縁間に位置させて蓋体を被冠し、蓋体を回動して係止内縁を係止突縁の下方に位置させて、蓋体を鍋本体に装着するもので、前記の装着状態で、蓋体と短フランジ間にパッキンが介装されことによって、密閉されている。
【0003】
前記の回動装着式圧力調理器においては、鍋本体の内圧が高まった場合に、蓋体の回動離脱を阻止する開閉機構を備えている。
【0004】
従前の開閉機構は、基本的に蓋体装着時に重なり合う鍋側取手と蓋側取手を設け、鍋側取手の上面(対向面)にガイド溝を形成する。他方蓋側取手には、蓋体の径方向にスライド移動自在で且つ蓋体中心方向へ付勢した係止基体を内装すると共に、前記係止基体に、下方突起と腕部を付設する。そして下方突起は、蓋体装着回動時に前記ガイド溝に添って係止基体の前後移動を制御するものであり、腕部は、前記の係止基体の中心側延長位置に設けられ、鍋内圧力が高まると内圧で持ち上げられて上方へ移動する圧力動作部の動作体(圧力弁)に対して進退し、前記の進退動作で前記動作体との係合解除(動作阻止)を行うようにしているものである。
【0005】
即ち蓋体の装着前には、付勢力で係止基体が鍋体・蓋体の中心方向(この方向を前方向とし、外周方向を後方向とする)に位置し、それに伴って腕部の先端も圧力動作部の上下動領域に進出した状態となり、圧力動作部の動作体の上下動を阻止している状態となる。
【0006】
そして蓋体を装着するべく鍋本体に被冠し、蓋体を回動させると、下方突起がガイド溝に嵌合しているのでガイド溝に添って移動し、蓋体回動と連動して係止基体が付勢力に抗して後退し、装着位置で下方突起がガイド溝内で保持され蓋体が定位置に装着されることになる。
【0007】
前記の蓋体装着状態では係止基体が後退し、腕部先端が圧力動作部の上下動領域から離れ、圧力動作部の動作体が任意に上下動できる状態となる。
【0008】
そして加熱調理時に鍋本体の内圧が高まると、内部圧力で押し上げられ動作体が上昇する。当該状態(鍋内圧力が高まっている状態)で蓋体を分離させるために蓋体を回動させると、ガイド溝に添って係止基体が前進しようとするが、腕部先端が動作体と衝突して前進することができず、結果的蓋体を回動操作することができないようになっている(特許文献参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−104731号公報図10、図11。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記のような蓋体開閉機構を採用している場合には、蓋体を鍋本体から分離している状態で、腕部先端が圧力動作部(動作体)の上下移動領域に進出して、動作体の突出動作(鍋表面側への移動動作)を阻止している時は何ら問題ないが、例えば蓋体の裏面洗浄時等においては、下方突起が表側に露出している状態であるために、作業中に下方突起に接触して係止基体を後退させると、圧力動作部(動作体)の上下動領域から腕部先端が離れてしまい、動作体が任意に上下動できる状態となってしまい、その自重で突出位置まで動いてしまう。
【0011】
動作体が突出位置にあって、係止基体に何ら外力が加わらない状態、即ち作業中に接触した下方突起から手を離した状態で、係止基体が付勢力で前方に進出すると、腕部先端と動作体が衝突状態となる。特に腕部先端は圧力動作部における上方表示体との連結軸との衝突を回避するために、二股形状となっており、前記の衝突によって動作体に噛み合う状態で固定されてしまう。
【0012】
前記の噛み合い固定状態で、蓋体を鍋本体に被冠装着しようとしても、下方突起がガイド溝に添って移動することが困難となって、蓋体を正しい位置に装着することができない。
【0013】
従って一旦蓋体の表面が上面となる位置で下方突起を後退させ、圧力動作部の動作体を下降させて、正常な状態に戻した後に、蓋体を装着しなければならなく、蓋体装着時に下方突起位置の確認と煩雑な操作が要求される。
【0014】
勿論に下方突起の位置が中途半端な状態で蓋体装着を行い、加熱調理に使用してしまうと、圧力動作部に組み込まれている圧力開放弁機構によって内部圧力が高まらない場合もあるし、特に圧力開放弁機能が発揮されない状態での使用は、鍋本体内の圧力上昇で蓋体が外れ非常に危険である。
【0015】
また鍋本体内の圧力が高まっているときに、前記の開閉機構で蓋体の回動(蓋体の取り外し)を阻止しているのは、前記したとおり蓋体を回動させるとガイド溝に添って係止基体が前進しようとするが、腕部先端が動作体と衝突して前進することができない構造を採用しているからである。然しガイド溝は、樹脂製の鍋側取手に形成した溝であり、その縁部分は安全性の点からRの面取りが為されており、蓋体を強く回動すると突起が溝から外れて係止基体が後退する虞もある。そうすると、鍋本体内の圧力が高まっていても、蓋体が取り外され非常に危険である。
【0016】
この対応として装着操作時のガイド機能を果たすガイド溝前壁面と、係止基体の後退阻止の作用を為すガイド溝後壁面を形成する際に、ガイド溝を、深く且つ蓋体回動操作時の係止基体の前後移動を確実に行うように下方突起の前後幅に対応する形状に形成すると、ガイド溝が狭く且つ深くなって洗浄し難くなってしまい、汚れが溜まり易く、調理器具としての清潔性確保に問題がある。
【0017】
そこで本発明は、前記の課題を鑑み、圧力動作部と係止基体の腕部との係合構造を改善した新規な圧力調理器を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明(請求項1)に係る圧力調理器鍋は、鍋本体開口部の外周縁に係止用突縁を適宜間隔で間欠的に設け、内周縁にパッキンを装着した蓋体に、前記係止突縁間に差し入れ可能な幅の係止内縁を設け、蓋体を鍋本体に被冠して回動し、係止内縁を係止突縁の下方に位置させて蓋体を装着する回動式の圧力調理器において、蓋体外周に突出させて固定した蓋側取手を設け、前記蓋側取手における中心側(径方向において径中心に向かう方を前方と定義する)に、蓋体の表裏及び蓋側取手を貫通する貫通孔を形成して、前記蓋体貫通孔に、上下動自在として鍋内圧力が高まると上昇動作をなす動作体を有する圧力動作部を装着すると共に、前記蓋側取手内に、係止基体を、蓋体の径方向に対して前進後退可能に、且つ前後何れかの方向へ付勢して組み込む共に、前記係止基体に、係止基体が前記付勢力による復帰位置で鍋本体に係止する係止部と、前記圧力動作部に達する腕部を付設したものである。
【0019】
そして特に、前記の圧力動作部の動作体が、上方軸部と下方胴部を備え、下方胴部が装着表面より突出するように組み込まれ、腕部の先端に、上方軸部が係止基体の前後移動に際して収納状態で維持される細長の嵌入溝と、付勢力が作用している蓋体装着時及び蓋体被装着時における動作体位置に、下方胴部が嵌合する嵌合部を設けてなることを特徴とするものである。
【0020】
しかして蓋体の鍋本体に対する装着は、従前の回動式圧力調理器と同様に、蓋体を鍋本体に被冠し、係止突縁の下方に係止内縁に圧入(パッキンを上下から押圧する力が抵抗となる)しながら、係止基体に付設した蓋側の係止部と鍋側の係止受け部の係合によって、係止基体を一旦付勢力に抗して移動させ、蓋体装着位置で付勢力による復帰で係止するようにしたものである。従って装着した蓋体の開放回動も前記付勢力に抗して行うことになる。
【0021】
係止基体に対する付勢方向の相違による蓋体の係止並びに嵌入溝及び嵌合部の位置関係については、図9に基づいて説明する。係止基体を蓋体中心側に向かって付勢する構成を採用すると(図9イ)、蓋体回動によって係止部43は、ガイド溝14の前方の溝壁141に添って移動し、一旦後退させられた後、蓋体装着位置で復帰して蓋体が装着されることになる。そして圧力動作部(動作体)と腕部45の嵌入溝45及び嵌合部48の関係は、前記の係止基体の前後運動に際しては、上方軸部が嵌入溝45内に常に位置するものであるから、上方軸部は何ら阻害要因とはならない。前記の移動時以外(蓋体の取り外した状態及び蓋体の装着時状態)は、動作体の直上に嵌合部48が位置することになる。即ち嵌合部48の前方に嵌入溝46が形成されることになる。
【0022】
また係止基体を蓋体外周側に向かって付勢する構成を採用すると(図9ロ)、蓋体回動によって係止部43は、ガイド溝14の後方の溝壁141に添って移動し、一旦前進させられた後、蓋体装着位置で復帰して蓋体が装着されることになる。そして圧力動作部(動作体)と腕部45の嵌入溝45及び嵌合部48の関係は、前記の付勢方向の場合と逆で嵌合部48の後方に嵌入溝46が形成されることになる。
【0023】
従って蓋体の装着回動に伴う係止基体の移動時以外は、嵌合部が動作体の直上に位置することになり、蓋体装着時に、鍋本体内圧力が高まった際には、動作体が上昇(突出)して下方胴部が嵌合部に嵌合することなる。この嵌合によって係止基体の前後動作が阻止されることになり、特に鍋側の係止受け部との協働作用(従前器具は、鍋側ガイド溝と、圧力動作部と腕部の衝突との協働作用よって係止基体の後退動作を阻止している)が必要としなくなった。
【0024】
また鍋本体から蓋体を分離して洗浄等のために蓋体を裏返した場合でも、付勢力で嵌合部位置と動作体の位置が一致しているので、動作体の自重で下降(突出)して、下方胴部が嵌合部に嵌合し、係止基体の移動が阻止される状態となり、鍋本体への装着のために表側に戻すと、圧力動作部が下降し、係止基体の前後移動が可能な状態となる。
【0025】
従って動作体と作動基体の腕部先端が噛み合うような不測の事態が生ずることなく、また鍋側係止受け部も、係止基体の後退阻止構造或いは前進阻止構造を採用する必要もない。
【0026】
また本発明(請求項2)に係る圧力調理器は、前記調理器において特に、係止基体に係止部となる下方突起を付設し、蓋側取手に対応するように設けた鍋側取手の上面に、蓋体の回動操作で前記下方突起が当接して係止基体を付勢力に抗して移動させ、装着位置で復帰して係止する溝壁を有するガイド溝を形成してなるものである。
【0027】
前記構成を採用すると、前述した通り蓋体の装着に際して、蓋体の回動に伴って下方突起(蓋側の第一係止部)が、ガイド溝の溝壁(第一係止受け部)に添って移動することで装着されるもので、特にガイド溝においては、前側溝壁或いは後側溝壁のみが必要であり、他方の溝壁は任意に形状とすることができるので、ガイド溝を洗浄が容易になるように広く形成することができる。
【0028】
更に本発明(請求項3)に係る圧力調理器は、前記調理器において特に、係止基体を中心方向に付勢し、蓋体装着時に係止突縁と対面する係止基体前面となる蓋体外縁周面に透孔を形成すると共に、係止基体の前面に前記透孔から突出して係止部となる前方突起を付設し、鍋本体の係止突縁の外端面と前方突起が当接し、鍋装着位置で前進して係止するようにしたものである。
【0029】
而して前方突起(蓋側の第二係止部)と係止突縁の外端面(鍋側の第二係止受け部)との関係は、前記の前方付勢時の下方突起とガイド溝と同一機能となり、この第二係止部と第二係止受け部の採用によって、第一係止部及び第一係止受け部を省略することもできる。双方を採用する場合には、鍋側の第一係止受け部(前方溝壁)のカーブ縁と第二係止受け部となる係止突縁のカーブ縁は通常一致しないので、第二係止機能を、蓋体装着位置の直前にのみ大きく作用(カーブ角度を大きくする)させることで、蓋体の取り外し操作の開始時の抵抗(クリック感)を大きくすることで、蓋体が簡単に外れないようにして、より以上の安全性を高めるものである。
【発明の効果】
【0030】
本発明の構成は上記の通りで、圧力動作部の動作体に小径の上方軸部と下方胴部を備え、係止基体の腕部の先端の嵌入溝に上方軸部が常に嵌入した状態で係止基体が前進後退動作をなし、下方胴部の嵌合部の嵌合離脱で係止基体の前進後退動作を制止するものであり、蓋体装着時の鍋内圧力の上昇時のみに限らず、蓋体を裏返しても係止基体の移動を制止するもので、洗浄時等の係止基体に外力が加わったとしても、圧力動作部の動作体と係止基体の変則的な固定化が生ずるものではなく、更に前記の係止基体の制止によって、鍋側の係止受け部との協働作用を必要せずに蓋体の開被回動も阻止されるので、より安全で、操作性に優れた器具を提供できたものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態の圧力調理器の全体斜視図。
【図2】同鍋本体の鍋側取手部分の平面図。
【図3】同圧力動作部の説明図で(イ)は分解斜視図、(ロ)は一部切断正面図。
【図4】同蓋側取手部分の分解斜視図(表面視)。
【図5】同図(裏面視)。
【図6】同蓋側取手に係止基体を装着した状態の説明図(裏面視)。
【図7】同蓋体装着時の要部断面図(装着回動途中時)。
【図8】同蓋体装着時の要部断面図(装着時)。
【図9】同蓋体装着時の要部断面図(装着後の鍋内圧力上昇時)。
【図10】本発明の係止基体の付勢方向と嵌合溝及び嵌合部の位置関係の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に本発明の実施形態について説明する。実施形態に示した圧力調理器は、鍋本体1と蓋体2で構成され、鍋本体1は、鍋側把手11と、鍋側把手11と反対側に設けた鍋側取手12を備え、蓋体2にも鍋側把手11対応する蓋側把手21と、蓋側把手11と対応する鍋側取手22を備え、前記鍋側取手22に圧力動作部3と、係止基体4を内設してなるものである。
【0033】
鍋本体1は、開口部を短フランジ形状とし、且つ前記の短フランジを適宜間隔で、外周方向に突出させて係止突縁13を設けたものであり、特に鍋側取手12の上方に位置する係止突縁13aの外端面131は、第二係止受け部としたものである。更に鍋側取手12の上面には、所定のガイド溝14を形成し、当該ガイド溝14の前方(中心方向)側の溝壁141を第一係止受け部としたものである。
【0034】
蓋体2は、前記の係止突縁13に対応するように、その外周面23の一部下縁を内側に折り返して内方突出させて係止内縁24を設け、前記外周面23の内側にパッキン25を装着してなるものである。また蓋側取手22の中心位置となる外周面23には、後述する第二係止部(前方突起44)が通過できる透孔26を穿設してなる。
【0035】
圧力動作部3は、蓋体2の適宜位置(蓋側取手22における中心寄りの位置)に穿設した貫通孔27と、貫通孔27の直上の鍋側取手22に形成した貫通孔221に装着したものである。
【0036】
この圧力動作部3は、装着用筒部31、装着用ナット32、動作体33、表示体34からなり、装着用筒部31は、筒容器状で上方にフランジを備え、外周面にネジを周設し、底面に通気孔311を穿設したものであり、貫通孔26に嵌合され装着用ナット32で固定される。
【0037】
動作体33は、通気孔311に遊挿される軸管で形成され、通気孔311より突出する部分には抜け止め兼用のOリング331装着し、装着用筒部31の内方に対応する部分を、装着用筒部31内に略密嵌する大きさの大径とした下方胴部332に形成し、前記下方胴部332の上方を適宜長さで小径の上方軸部333とし、更に上方軸部333の上端を受けフランジ部334としたものである。従って動作体33は、通気孔311を上下に挟んでOリング331と下方胴部332との間で自由に上下動可能に設けているものである。
【0038】
また表示体34は、動作体33の上部に配置され、基部に抜け止めフランジを備えて、貫通孔221の下方から挿入され、抜け止めフランジ341による抜け止め位置まで貫通孔221内を自由に上下動可能に設けているもので、上昇下降が視認できる構成としてなる。
【0039】
係止基体4は、鍋側取手22の内部に組み込まれるもので、鍋側把手22には適宜な収納空間222を設けると共に、収納空間222の内側面に、係止基体4の前後移動のためのレール凹部223を形成しておくものである。
【0040】
そして係止基体4には、前記レール凹部223に対応するレール部41を左右側面に形成し、係止基体4が前方付勢されるように、背面に発条42を装備させて、前記収納空間222内に配置するものである。
【0041】
更にこの係止基体4の下方部分の所定位置に下方突起(第一係止部)43を突設し、下方前面適宜位置に前方突起(第二係止部部)44を突設し、上方前方に腕部45を突設してなる。尚所定位置とは、下方突起(第一係止部)43は、ガイド溝14の前面溝壁(第一係止受け部)141と当接する位置で、前方突起(第二係止部)44は、係止突縁13と対応する透孔26の位置である。
【0042】
また特に前記腕部45は、その先端部分が圧力動作部3に達するもので、上方管軸部333を左右から挟むようにして、上方軸部33が収納状態に維持される嵌入溝46を設け、嵌入溝46の上縁左右に、受けフランジ部334を載置すると共に、前方が下がったスロープ面に形成した載せ面部47を設け、蓋体装着時における下方胴部332の直上位置となる前記嵌入溝46の裏面に、圧力動作部3の動作体33が上昇した際に下方胴部332が嵌合する嵌合部48を設けてなるものである。
【0043】
次に蓋体2における圧力動作部3及び係止基体4について説明すると、蓋体2の鍋本体1への装着前で、蓋体2が臥せられている状態(装着直前状態及び図8の装着後状態と同じ状態)では、発条42の付勢力が作用しているので、上方軸部333が嵌入溝46内の最奥方に位置し、受けフランジ部334が載せ面部47上に載置されている。そして露出している下方突起(第一係止部)43及び前方突起(第二係止部)44に、仮に外力が加わって係止基体4が後方移動しても、その外力を開放すると元の状態に復帰する。
【0044】
特に前記の移動動作において、上方管軸部333は、嵌入溝46内に位置することになり、係止基体4の移動動作の間に圧力動作体33が上下動作しても、腕部45の先端と上方管軸部(圧力動作部)333と衝突して噛み合う虞が全くない。
【0045】
更に洗浄時のように蓋体2を裏返した場合には、圧力動作部3の動作体33がその自重で下降(突出)し、下方胴部332が嵌合部48に嵌合する。その結果係止基体4はロック状態となって移動しない。そして鍋本体1への装着のために表側に戻すと、動作体33が下降し、係止基体4の前後移動が可能な状態となり、装着可能となる。
【0046】
このように圧力動作部3及び係止基体4の組み合わせ構造を採用することで、蓋体を裏返して洗浄作業を行っても、露出する下方突起43がロック状態となり、従前器具のような圧力動作部と係止基体の噛み合いによる不都合が全く生じない。
【0047】
更に蓋体を装着した際にも独自作用効果を奏するもので、次に蓋体の装着時について説明する。蓋体装着は従前の回動式圧力調理器と同様に、蓋体2を鍋本体1に被冠し、係止突縁13の下方に係止内縁24を進出させるように蓋体2を回動する。
【0048】
前記の蓋体回動に伴って下方突起(第一係止部)43は、ガイド溝14の前側溝壁(第一係止受け部)141に添って移動することで、発条の付勢力に抗して一旦後退し、装着位置で前進する。
【0049】
同時に前方突起(第二係止部)44が係止突縁13aの外周側を通過するが、前記ガイド溝14の前面溝壁141のカーブラインと、係止突縁13aのカーブラインが相違するので、係止突縁13aの外端面131と前方突起44との当接は、装着終了直前位置となる(図7の装着途中の状態が、係止突縁13aの外端面131と前方突起44との当接開始時を示している)。
【0050】
本調理器は、蓋体2を鍋本体1に被冠装着して調理に供するもので、加熱調理で鍋本体1の内圧が高まると、通気孔311の間隙から装着用筒部31内に高圧空気(蒸気)が進入し、下方胴部332を持ち上げて動作体33が上昇し、これに伴って表示体34も押し上げられ、鍋本体内圧力が高いことを指示する。
【0051】
同時に動作体33が上昇すると、下方胴部332が嵌合部48に嵌合することになる。そうすると係止基体4がロック状態となって、その後退動作が阻止され、蓋体2を開被しようとして開被方向に回動操作を行っても、下方突起43が壁面141に衝突して回動が阻止され、同時に前方突起44も係止突縁13aと衝突し回動が阻止される。
【0052】
このように鍋内圧力が高まると、係止基体4と動作体33が一体化し、更に下方突起43と前方突起44によって蓋体2の回動操作が阻止されるので、強く蓋体2を回動操作しようとしても、回動する虞が無く、調理器を安全に使用することができるものである。
【0053】
尚嵌入溝と嵌合部は、前記実施形態のように嵌入溝の先部を開口せずに、図10に示すように溝長孔形状としても良い。また嵌合部も前記実施形態のように凹部構造に限定されるものでなく、図10のような嵌合孔に形成しても良い。
【0054】
更に前記実施形態は、係止基体を前方付勢する例を示したが、本発明は、図10(ロ)に示すように後方付勢で実施することも可能である。後方付勢する場合には、前記実施形態の前方突起44は係止部として機能しないので、その位置をパッキン面上とし、蓋体回動操作時に前進してパッキンを押出すように設けて、圧抜き作用を奏する圧抜き突起とする。
【0055】
具体的には、下方突起(第一係止部)が、蓋体2の回動(装着操作)に際して、ガイド溝14に達すると同時に、鍋本体1の係止突縁13と蓋体2の係止内縁24の係止が開始するように設けておくと、蓋体2が中途半端な装着状態では、圧抜き突起(前方突起)がパッキンを押圧して鍋本体1と蓋体2との密閉状態が生じないようにして、装着不十分時の鍋内圧力上昇を防止するものである。そして完全装着時には係止基体4が後退し、鍋本体1と蓋体2との密閉状態を維持するようにしたもので、且つ圧力動作部の作用による蓋体開被防止も実現するものである。
【符号の説明】
【0056】
1 鍋本体
11 鍋側把手
12 鍋側取手
13 係止突縁
131 外端面(第二係止受け部)
14 ガイド溝
141 溝壁(第一係止受け部)
2 蓋体
21 蓋側把手
22 鍋側取手
221 貫通孔
222 収納空間
223 レール凹部
23 外周面
24 係止内縁
25 パッキン
26 透孔
27 貫通孔
3 圧力動作部
31 装着用筒部
311 通気孔
32 装着用ナット
33 動作体
331 Oリング
332 下方胴部
333 上方軸部
334 受けフランジ部
34 表示体
4 係止基体
41 レール部
42 発条
43 下方突起(第一係止部)
44 前方突起(第二係止部)
45 腕部
46 嵌入溝
47 載せ面部
48 嵌合部






【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍋本体開口部の外周縁に係止用突縁を適宜間隔で間欠的に設け、内周縁にパッキンを装着した蓋体に、前記係止突縁間に差し入れ可能な幅の係止内方縁を設け、蓋体を鍋本体に被冠して回動し、係止内縁を係止用突縁の下方に位置させて蓋体を装着する回動式の圧力調理器において、蓋体外周に突出させて固定した蓋側取手を設け、前記蓋側取手における中心側に、蓋体の表裏及び取手を貫通する貫通孔を形成して、前記蓋体貫通孔に、上下動自在とした動作体を有する圧力動作部を装着すると共に、前記動作体が小径の上方軸部と大径の下方胴部を備え、蓋体裏面側の圧力が高まると上昇動作をなして下方胴部が装着表面より突出するように組み込まれ、前記蓋側取手内に、係止基体を、蓋体の径方向に対して前進後退可能に、且つ前後何れかの方向へ付勢して組み込む共に、前記係止基体に、係止基体が前記付勢力による復帰位置で鍋本体に係止する係止部と、前記圧力動作部に達する腕部を付設し、前記腕部の先端に、上方軸部が係止基体の前後移動に際して収納状態で維持される細長の嵌入溝と、付勢力が作用している蓋体装着時及び蓋体被装着時における動作体位置に、下方胴部が嵌合する嵌合部を設けてなることを特徴とする圧力調理器。
【請求項2】
係止基体に係止部となる下方突起を付設し、蓋側取手に対応するように設けた鍋側取手の上面に、蓋体の回動操作で前記下方突起が当接して係止基体を付勢力に抗して移動させ、装着位置で復帰して係止する溝壁を有するガイド溝を形成してなる請求項1記載の圧力調理器。
【請求項3】
係止基体を中心方向に付勢し、蓋体装着時に係止突縁と対面する係止基体前面となる蓋体外縁周面に透孔を形成すると共に、係止基体の前面に前記透孔から突出して係止部となる前方突起を付設し、鍋本体の係止突縁の外端面と前方突起が当接し、鍋装着位置で前進して係止するようにした請求項1又は2記載の圧力調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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