説明

圧着接続構造

【課題】機械的強度が高く特殊な接続端子形状が不要で一般的な治具を使用して圧着することができ、安価に電線と接続端子とを圧着接続する。
【解決手段】接続端子10は、例えば接続部11、圧着バレル部12、保持バレル部13を備え、アルミ電線20は、芯線21を被覆22で覆った構造からなる。圧着バレル部12は一対の挟持片16からなり、挟持片16の間に載置された芯線21を圧着した場合、例えば折り曲げ頂部16bの高さHは側方から見て一定であるとともに、例えば芯線21の軸方向先端側の折り曲げ先端部16a間の対向方向の間隔が基端側に比べて広くなるように、挟持片16が軸方向に沿ってテーパ状に折り曲げられ圧着される。このため、特に圧着バレル部12の先端側にて芯線21の圧縮率が高く電気的導通が図られるとともに、基端側にて芯線21の圧縮率が低く機械的接続が図られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電材から構成された芯線を有する電線と、この電線に圧着接続される接続端子との圧着接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電線と、この電線に圧着接続される接続端子との圧着接続構造としては、次のようなものが知られている。例えば、下記特許文献1に開示されている構造は、アルミ電線被覆部圧着用インシュレーションバレルに加えてアルミ電線導通用圧着バレルとアルミ電線保持用圧着バレルとを備えた接続端子をアルミ電線に接続する構造である。
【0003】
この接続端子は、インシュレーションバレルに隣接する位置にアルミニウム電線(アルミ電線)保持用圧着バレルが形成されるとともに、このアルミ電線保持用圧着バレルに関してインシュレーションバレルと反対側にアルミ電線導通用圧着バレルが形成されている。そして、両圧着バレルがアルミ電線に圧着された状態で、端子圧着方向で見てアルミ電線導通用圧着バレルがアルミ電線保持用圧着バレルよりも低い高さでアルミ電線に圧着されるとしている。
【0004】
また、下記特許文献2に開示されている構造は、接続端子の電線保持部に保持突起を突設し、この保持突起に対してアルミ電線を圧入することでアルミ電線の芯線に保持突起を突き刺す。そして、芯線から突き出た保持突起の先端部をマイクロアーク等によって溶融することで保持突起と芯線とを溶接一体化し接続するとされている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−50736号公報
【特許文献2】特開2004−253198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている構造では、一般的にワイヤバレルと呼ばれるアルミ電線と接続端子との導通およびアルミ電線の芯線保持の2つの役割を持つ部分を、アルミ電線導通用圧着バレルとアルミ電線保持用圧着バレルとに分割し、これらの役割を分散させた構造としている。
【0007】
このため、電線圧着部が2段構成となり、圧着のために特殊な治具(例えば、両圧着バレルを異なる高さで圧縮する治具など)が必要となったり、両圧着バレル間にスリットを形成して導通と保持とを分けるなど接続端子自体の構造が複雑となったりして、圧縮応力による亀裂が生じるなどの不具合が発生し易く、接続のためのコストが高くなってしまうという問題がある。
【0008】
また、上記特許文献2に開示されている構造では、接続端子の電線接続部に保持突起を形成し、アルミ電線を圧入した上で保持突起と芯線とを溶接しなければならないため、接続端子が特殊形状となったり溶接作業が必要となったりして、同様に接続のためのコストが高くなってしまうという問題がある。
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、機械的強度が高く特殊な接続端子形状が不要で一般的な治具を使用して圧着することができ、安価に電線と接続端子とを圧着接続することができる圧着接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る圧着接続構造は、導電材から構成された芯線を有する電線と、この電線に圧着接続される接続端子との圧着接続構造であって、前記接続端子は、それぞれ対向方向内側に折り曲げられることにより前記芯線に圧着される一対の挟持片を備える圧着バレル部を少なくとも有し、前記圧着バレル部は、前記芯線に圧着された際に、折り曲げられた前記一対の挟持片の折り曲げ先端部間の対向方向の間隔、または前記一対の挟持片の折り曲げ頂部間の対向方向の間隔が前記芯線の軸方向に沿って異なるように圧着されていることを特徴とする。
【0011】
前記圧着バレル部は、例えば前記芯線に圧着された際に、それぞれ対向方向内側に折り曲げられた前記一対の挟持片の折り曲げ頂部の高さが側方から見て一定となるように圧着される。
【0012】
また、前記圧着バレル部は、例えば前記折り曲げ先端部間の間隔が前記軸方向先端側が基端側に比べて広くなるように、前記一対の挟持片が前記軸方向に沿ってテーパ状に折り曲げられ圧着されていてもよい。
【0013】
また、前記圧着バレル部は、前記折り曲げ頂部間の間隔が前記軸方向基端側が先端側に比べて広くなるように、前記一対の挟持片が前記軸方向に沿ってテーパ状に折り曲げられ圧着されていてもよい。
【0014】
前記芯線を構成する導電材は、例えばアルミニウムである。
【0015】
また、前記電線は、例えば複数本の導体を撚ってなる撚り線である。
【0016】
前記接続端子は、接続相手方接続端子と接続される接続部と、前記電線を被覆とともに圧着保持する保持バレル部とをさらに備えていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、機械的強度が高く特殊な接続端子形状が不要で一般的な治具を使用して圧着することができ、安価に電線と接続端子とを圧着接続することができる圧着接続構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照して、本発明に係る圧着接続構造の好適な実施形態を詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る圧着接続構造が適用される接続端子および電線の例を説明するための側面図、図2は同圧着接続構造による圧着接続が行われた接続端子および電線の例を説明するための側面図、図3は同圧着接続構造による圧着接続が行われた接続端子および電線の例を説明するための上面図である。また、図4は、図3のA−A’断面図、図5は図3のB−B’断面図である。
【0020】
本実施形態に係る圧着接続構造は、芯線21が例えばアルミニウムの導体(導電材)からなり、この芯線21を絶縁材料からなる被覆22で覆った構造のアルミニウム電線(以下、「アルミ電線」と呼ぶ。)20と、このアルミ電線20に圧着接続される接続端子10との圧着接続構造である。なお、アルミ電線20は、例えば単線のアルミ導体を被覆22で覆ったものでもよいが、ここでは複数本のアルミ導体を撚ってなる撚り線からなる芯線21を有するものとする。
【0021】
接続端子10は、例えば金属(鉄、銅、銅合金など)母材を打ち抜き/折り曲げ加工等して、それぞれ対向方向内側に折り曲げられることにより芯線21に圧着される、後述する一対の挟持片16を備える圧着バレル部12を少なくとも有してなるものであり、先端側に接続相手方接続端子(図示せず)と嵌合して接続される接続部11と、この接続部11よりも基端側に圧着バレル部12と、さらに基端側にアルミ電線20を被覆22とともに挟持して圧着保持する保持バレル部13とを備えている。
【0022】
なお、接続端子10の接続部11に形成された係止片14や係止穴15は、例えばこの接続端子10が挿入されるコネクタ(図示せず)の端子収容孔に形成された凹部や凸部と係合して、端子収容孔内で接続端子10の位置決めや取付固定をするために用いられるものである。
【0023】
また、接続端子10の圧着バレル部12は、例えば非圧着時において平行に立設された一対の挟持片16(例えば、図1参照)から構成され、これら挟持片16間に芯線21を載置した後、それぞれを対向方向内側に折り曲げることにより芯線21と圧着されるが、ここでは、例えば側方から見て折り曲げ頂部16b(例えば、図4参照)の高さH(例えば、図2参照)が一定となるように圧着される。この高さHは、圧着後の保持バレル部13の高さと同じであってもよい。
【0024】
そして、この圧着バレル部12においては、図3〜図5に示すように、一対の挟持片16の折り曲げ先端部16a間の対向方向の間隔が、芯線21の軸方向に沿って異なるように圧着されており、ここでは、軸方向先端側(すなわち、接続部11側)の折り曲げ先端部16a間の対向方向の間隔が基端側(すなわち、保持バレル部13側)に比べて広くなるように、挟持片16が軸方向に沿ってテーパ状(先端側の折り曲げ先端部16a間が開くようなテーパ状)に折り曲げられ圧着されている。
【0025】
これにより、図4に示すように、圧着バレル部12の先端側の方が芯線21の圧縮率が高くなり、図5に示すように、基端側の方が芯線21の圧縮率が低くなるように圧着される。したがって、圧着バレル部12全体において芯線21が圧着され電気的導通および機械的保持が図られていることが前提となるが、特に圧着バレル部12の先端側にて芯線21の電気的導通が図られつつ、基端側にて機械的保持が行われる構造を実現する。
【0026】
具体的には、圧着バレル部12の先端側においては芯線21が強く圧着(過圧着)され、アルミニウムの強固な酸化皮膜(表層)を破壊してアルミ電線20との電気的導通を図ることができるとともに、基端側においては先端側と比較して緩く圧着されるため、安定した機械的強度で芯線21を保持接続することが可能となる。
【0027】
このように、本実施形態の圧着接続構造では、接続端子10の形状が一般的なものであるため、従来のように圧着部を分割するなどの特殊な接続端子形状が不要であり、圧着バレル部12の亀裂などが皆無で機械的強度を高めることができる。また、圧着バレル部12や保持バレル部13を潰す治具も一般的なものを使用して圧着することができるので、安価にアルミ電線20と接続端子10とを電気的接続と機械的接続とを両立させた状態で圧着接続することが可能となる。
【0028】
図6は、本発明の一実施形態に係る圧着接続構造による圧着接続が行われた接続端子および電線の他の例を説明するための上面図、図7は図6のC−C’断面図、図8は図6のD−D’断面図である。なお、以降において、既に説明した部分と重複する箇所については同一の符号を付して説明を省略する場合があることとし、本発明に特に関連しない部分については明記しないことがあるとする。
【0029】
図6〜図8に示すように、この例においては、接続端子10およびアルミ電線20の基本的な構造は上述した例のものと同様であるが、接続端子10の圧着バレル部12における圧着後の形状が上述した例とは相違している。すなわち、ここでの接続端子10の圧着バレル部12は、一対の挟持片16の折り曲げ頂部16b間の対向方向の間隔が、芯線21の軸方向基端側(すなわち、保持バレル部13側)が先端側(すなわち、接続部11側)に比べて広くなるように、挟持片16が軸方向に沿ってテーパ状(基端側の折り曲げ頂部16b間が開くようなテーパ状)に折り曲げられ圧着されている。
【0030】
これにより、上述した例と同様に、図7に示すように、圧着バレル部12の先端側の方が芯線21の圧縮率が高くなり、図8に示すように、基端側の方が芯線21の圧縮率が低くなるように圧着される。よって、同様に圧着バレル部12の先端側にて芯線21の電気的導通が図られつつ、基端側にて機械的保持が行われる。
【0031】
このような構成においても、特殊な接続端子形状が不要で圧着バレル部12全体の機械的強度を高め、一般的な圧着のための治具を用いて圧着することができるため、安価にアルミ電線20と接続端子10とを電気的接続と機械的接続とを両立させた状態で圧着接続することが可能となる。
【0032】
なお、上述した実施形態では、接続端子10と圧着接続される電線としてアルミ電線20を例に挙げて説明したが、この電線はアルミ電線20に限られるものではなく、例えば芯線21が鉄、銅、銅合金などのアルミニウムとは別の導電材により構成されるものでもよい。また、接続端子10の材料も、鉄、銅、銅合金以外の金属材料であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態に係る圧着接続構造が適用される接続端子および電線の例を説明するための側面図である。
【図2】同圧着接続構造による圧着接続が行われた接続端子および電線の例を説明するための側面図である。
【図3】同圧着接続構造による圧着接続が行われた接続端子および電線の例を説明するための上面図である。
【図4】図3のA−A’断面図である。
【図5】図3のB−B’断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る圧着接続構造による圧着接続が行われた接続端子および電線の他の例を説明するための上面図である。
【図7】図6のC−C’断面図である。
【図8】図6のD−D’断面図である。
【符号の説明】
【0034】
10…接続端子、11…接続部、12…圧着バレル部、13…保持バレル部、14…係止片、15…係止穴、16…挟持片、16a…折り曲げ先端部、16b…折り曲げ頂部、20…アルミ電線、21…芯線、22…被覆。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電材から構成された芯線を有する電線と、この電線に圧着接続される接続端子との圧着接続構造であって、
前記接続端子は、それぞれ対向方向内側に折り曲げられることにより前記芯線に圧着される一対の挟持片を備える圧着バレル部を少なくとも有し、
前記圧着バレル部は、前記芯線に圧着された際に、折り曲げられた前記一対の挟持片の折り曲げ先端部間の対向方向の間隔、または前記一対の挟持片の折り曲げ頂部間の対向方向の間隔が前記芯線の軸方向に沿って異なるように圧着されている
ことを特徴とする圧着接続構造。
【請求項2】
前記圧着バレル部は、前記芯線に圧着された際に、それぞれ対向方向内側に折り曲げられた前記一対の挟持片の折り曲げ頂部の高さが側方から見て一定となるように圧着されることを特徴とする請求項1記載の圧着接続構造。
【請求項3】
前記圧着バレル部は、前記折り曲げ先端部間の間隔が前記軸方向先端側が基端側に比べて広くなるように、前記一対の挟持片が前記軸方向に沿ってテーパ状に折り曲げられ圧着されていることを特徴とする請求項1または2記載の圧着接続構造。
【請求項4】
前記圧着バレル部は、前記折り曲げ頂部間の間隔が前記軸方向基端側が先端側に比べて広くなるように、前記一対の挟持片が前記軸方向に沿ってテーパ状に折り曲げられ圧着されていることを特徴とする請求項1または2記載の圧着接続構造。
【請求項5】
前記芯線を構成する導電材は、アルミニウムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の圧着接続構造。
【請求項6】
前記電線は、複数本の導体を撚ってなる撚り線であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の圧着接続構造。
【請求項7】
前記接続端子は、接続相手方接続端子と接続される接続部と、前記電線を被覆とともに圧着保持する保持バレル部とをさらに備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の圧着接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−266493(P2009−266493A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113045(P2008−113045)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】