圧着端子および圧着端子の製造方法
【課題】電線に対する接続部位における電気抵抗を、大型化を伴うことなく簡単な構造および形状をもって効率的に低下させることの出来る、新規な構造の圧着端子を提供する。
【解決手段】電線12の外周面に圧着される圧着端子10において、その圧着部16の内面には、電線12の外周面の周方向の半周以上の領域に亘って、電線12と同じ方向に延びる複数条の導通用凹凸26を設けた。
【解決手段】電線12の外周面に圧着される圧着端子10において、その圧着部16の内面には、電線12の外周面の周方向の半周以上の領域に亘って、電線12と同じ方向に延びる複数条の導通用凹凸26を設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線に圧着されて取り付けられる導電型の圧着端子と、かかる圧着端子を備えた電線と、かかる圧着端子の製造方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電線の他部材に対する電気的な接続部分には、導通の安定化や接続部分における着脱作業の容易化などの目的をもって各種の端子が用いられている。かかる端子の一種として、端子に圧着部を一体形成し、この圧着部を電線の外周面に巻き付けるようにかしめ固定等して直接に電線に圧着することにより取り付ける圧着端子が知られている。
【0003】
ところで、電線の他部材への接続部分では、電力損失を抑えるために電気抵抗を充分に小さくすることが要求される。そして、電気抵抗を抑えるためには、例えば、電線を大径化したり、圧着端子を大きくすることが考えられる。
【0004】
ところが、電線の大径化や圧着端子の大型化は、配設スペースによって制限されたり、取り扱いが面倒になったり、大幅なコストアップになったりするために、容易に採用され難い。
【0005】
しかも、たとえ電線を大径化したり圧着端子を大型化することによって電線や圧着端子それ自体の電気抵抗を抑えることは可能であるものの、電線と圧着端子の接続部位の接触抵抗を充分に抑えることが難しい。それ故、かかる接続部位の電気抵抗がネックとなってしまって、電気抵抗の低下が充分に達成され難いという問題があった。
【0006】
特に、圧着端子に対する電線の抜けを防止するために、実開平05−23389号公報(特許文献1)に記載されているように、電線に圧着される圧着端子の内面に対して、電線の周方向に延びる周方向突条を形成し、この周方向凸条を電線に対して食い込ませるようにして係止することが提案されているが、このような周方向凸条を形成すると、電線の長手方向において周方向突条を挟んだ両側部分で圧着端子内面との間に隙間が発生し易い。そして、この隙間によって電線と圧着端子との接触面積が小さくなってしまうことから、電線と圧着端子の接続部位における電気抵抗が一層大きくなってしまうおそれもあった。
【0007】
【特許文献1】実開平05−23389号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここにおいて、本発明は上述の如き事情を背景として為されたものであり、その解決課題とするところは、電線に対する接続部位における電気抵抗を低下させることが出来、それによって、電線や圧着端子の大型化を回避しつつ通電に際しての電力損失を効果的に抑えることの出来る、新規な構造の圧着端子を提供することにある。
【0009】
また、本発明は、かくの如き圧着端子を備えた圧着端子付き電線と、かかる圧着端子の好適な製造方法とを、提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、前述の課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0011】
すなわち、本発明の特徴とするところは、電線の外周面に圧着される圧着端子であって、電線の外周面に圧着される圧着部の内面には、電線の周方向で半周以上に亘る領域において電線と同じ方向に延びる複数条の導通用凹凸が形成されている圧着端子にある。
【0012】
このような本発明に従う構造とされた圧着端子においては、圧着部の内面の面積が導通用凹凸によって大きくされていることにより、圧着部と電線の接触面積が大きくされる。
【0013】
しかも、導通用凹凸が電線と同じ方向に延びていることから、導通用凹凸における凹部の底面や凸部の先端面においても電線の外周面に沿った形状で有効に当接せしめるられる。これにより、導通用凹凸を備えた圧着部と電線の当接面間に大きな隙間が生ぜしめられるような不具合も回避されて、接触面積が十分に確保される。
【0014】
従って、本発明の圧着端子によれば、電線との接触面積が効果的に増大されることから、電線の大径化や圧着端子の大型化を伴うことなく、電線への圧着端子の取付部位における通電抵抗が低減されて通電時の電力損失が抑えられると共に、接触面積と当接圧力に比例する摩擦力が大きくなることに基づき、端子の電線からの耐引抜き力も増大されて、端子の電線に対する固着強度も向上されるのである。
【0015】
また、本発明に係る圧着端子にあって、圧着部の内面には、導通用凹凸が形成された領域とは別の領域において、電線の周方向に延びる係止用凹凸が形成されて、電線の外周面に対して係止用凹凸が当接するようになっている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、係止用凹凸が電線に対して、電線の抜け方向である長手方向で部分的に噛み込むように圧着されることで、圧着端子の電線からの抜け出しを抑える係止作用が発揮され得る。特に本態様では、導通用凹凸による電線への圧着端子の接触面積の増大が、係止用凹凸によって阻害されることもない。
【0016】
尤も、係止用凹凸として、電線の周方向に傾斜して延びる態様の凹凸等を採用することも可能であり、また、係止用凹凸として、電線の周方向に延びる態様の凹凸に加えて電線の長さ方向に延びる凹凸を重ねて形成しても良い。導通用凹凸の形成領域において、圧着端子に対する電線の接触面積が充分に確保されることにより、係止用凹凸の形成領域においては、電線への接触面積の確保をそれ程重要視することなく、電線への係止作用を重視することが出来るから、各種の形態の係止用凹凸を採用することが出来るのであり、そのような各種の形態の係止用凹凸を採用した場合でも、前述の如き、導通用凹凸による通電抵抗の低減や電線抜け効力の増大といった本発明の効果は発揮され得る。
【0017】
なお、本発明に係る圧着端子では、電線の外周面への当接部分において、電線の周方向に延びる係止用凹凸と導通用凹凸とが電線の長さ方向で交互に形成されている構造が、採用されても良い。
【0018】
また、本発明に係る圧着端子においては、電線が絶縁被覆で外周面が覆われており、電線の長さ方向で部分的に絶縁被覆から露出された電線の露出部分に対して圧着部が圧着されるようになっていると共に、電線を覆う絶縁被覆の外周面に対して圧着される絶縁被覆用固定部が設けられており、この絶縁被覆用固定部の内周面には電線の周方向に延びる固定用凹凸が形成されている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、圧着端子が絶縁被覆に対しても直接に固定されることとなり、絶縁皮膜のめくれあがり等の、絶縁皮膜の電線に対する位置ずれも防止される。
【0019】
また、本発明に係る圧着端子においては、圧着部が、底壁部分と底壁部分の幅方向両側から立ち上がる一対のかしめ部分を含んで構成されており、圧着部の少なくとも底壁部分に導通用凹凸が形成されている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、かしめ部分のかしめ固定を利用して、圧着作業が容易に且つ確実に実現され、また導通用凹凸が少なくとも圧着部の底壁部分に形成されていることによって、電線への当接面積も好適に確保され得る。
【0020】
さらに、本発明の特徴とするところは、前述の圧着端子が固定された圧着端子付き電線であって、圧着端子の圧着部が電線に対して圧着されて、導通用凹凸が電線の外周面に対して半周以上に亘って当接されている圧着端子付き電線にある。
【0021】
また、本発明に係る圧着端子付き電線においては、電線が、複数の細線を並列的に束ねた多心電線とされていると共に、導通用凹凸の凹部が多心電線の細線よりも大きな曲率半径を有する弧状の湾曲凹面形状とされている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、複数の細線を導通用凹凸の凹部に入り込ませるようにして当接させることが可能となり、それによって、導通用凹凸の電線への接触面積を一層効率的に確保することが可能となる。
【0022】
さらに、圧着端子の製造方法に関する本発明の特徴とするところは、素板に対して打抜加工を施すことにより上述の如き本発明に従う構造とされた圧着端子を製造するに際して、素板に対してプレス加工を施すことにより素板の表面に導通用凹凸を形成した後、素板に対して打抜加工を施すことにより圧着部を形成することにある。
【0023】
このような本発明方法に従えば、導通用凹凸が圧着部に先立って形成されることから、例えば、素板を打抜いて圧着部を形成した後にプレス加工を施して導通用凹凸を形成した場合において、導通用凹凸のプレス成形時の塑性変形に伴って、導通用凹凸の端部が圧着部の端縁部にバリとして発生するおそれが回避され得る。
【0024】
また、本発明に係る圧着端子の製造方法においては、素板として長板形状の順送用素板を採用し、順送用素板を複数のステージに順送して複数段階のプレス加工を行うと共に、導通用凹凸を形成するプレス加工のステージの後、別のステージにおいて導通用凹凸が形成された部分に対して打抜加工を施す方法が、採用されても良い。これにより、製造効率が向上されて、圧着端子の大量生産化も有利に実現され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について説明する。先ず、図1〜2には、本発明の圧着端子に係る一実施形態としての端子金具10が示されている。端子金具10は、図3,4にも示されているように、例えば自動車の電気機械や電子機器の各部品間を相互に電気的に接続する電線12に対して、圧着により取り付けられるようになっている。このような端子金具10が圧着された圧着端子付き電線12を具体的に例示すれば、自動車のバッテリーのマイナス端子をボデーにアース接続するアース用の通電ワイヤの端部に対して、締付ボルト挿通用のワッシャを備えた端子金具を固定したものや、各種電子機器の給電コードに接続される通電線であって、給電コードに対する着脱用の平型端子やキボシ端子等の端子金具を固定したものなどが挙げられる。
【0026】
より詳細には、端子金具10は、導電性を有しており、且つプレス加工や打抜き加工等が可能な種々の金属材料、例えば真鍮や銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等を用いて形成されている。本実施形態では、端子金具10の厚さ寸法が全体に亘って略一定とされているが、要求される製作性や電気抵抗等に応じて、厚さ寸法が大きく異なる箇所が部分的に形成されていても良い。この端子金具10は、形状が特に限定されるものでないが、本実施形態では、接続部14と圧着部16を含んで一体成形されている。
【0027】
接続部14は、平面が略楕円形の平板形状を有していると共に、中央部分に通孔18が貫設されている。この通孔18は、例えば前述のアース用の通電ワイヤの場合にボデーアース部に螺着される締付ボルトを挿通するために利用される。
【0028】
圧着部16は、接続部14の外周縁部の周上の一箇所から延び出して一体形成されている。また、かかる圧着部16は、接続部14から外方(図1中の下方)に向かって直線的に延び出す略溝形状とされている。即ち、圧着部16は、長手状の略矩形板形状を有する底壁部分20を備えており、この底壁部分20の幅方向(図1,2中、左右方向)の両側縁部には、一方の面側(図2中の上面側)に立ち上がる一対のかしめ部分22,22が形成されている。これらのかしめ部分22,22は、底壁部分20の長さ方向全長に亘って、略矩形板形状をもって形成されており、底壁部分20の両側壁部を構成しており、以て、圧着部16が、略一定の凹形断面の溝形状とされている。
【0029】
なお、接続部14と圧着部16の連設部分には、圧着部16のかしめ部分22,22の長さ方向各端面から接続部14の外周縁部に沿って延び出す補強部23,23が立ち上がって一体形成されている。また、各かしめ部分22の先端縁部には、内側に向かって僅かに折り曲げられた屈曲部24が一体形成されている。
【0030】
ここにおいて、圧着部16には、その内面の実質的に全体に亘って複数条の凹溝26が形成されている。凹溝26は、圧着部16における一対のかしめ部分22,22が底壁部分20から立ち上がる側の表面である溝内面(以下、圧着部16の内面とも言う。)、即ち電線12に対する圧着面に形成されている。このことからも明らかなように、本実施形態では、凹溝26が圧着部16の少なくとも底壁部分20に形成されている。また、凹溝26は、略一定の断面形状(本実施形態では、略半円形状)で、溝形状とされた圧着部16の長さ方向、即ち図1中の上下方向に連続して直線的に延びている。
【0031】
各凹溝26は、長さ方向で分断されていたり、圧着部16の長さ方向で部分的に形成されていても良いが、本実施形態では、圧着部16の長さ方向の実質的に全長に亘って連続して形成されており、圧着部16の長さ方向の先端面に各凹溝26が開口している。なお、凹溝26の深さ寸法は特に限定されるものでないが、圧着部16の強度を確保するために、好適には圧着部16の部材厚さの2/3以下、より好ましくは1/2以下とされる。
【0032】
このような凹溝26の複数が、圧着部16の幅方向に所定距離を隔てて設けられている。特に本実施形態では、底壁部分20と両かしめ部分22,22において、互いに略等間隔を隔てて合計8条形成されている。
【0033】
これにより、複数の凹溝26の凹んだ内面と、互いに隣接位置する凹溝26,26の間および各かしめ部分22,22において最も外側に位置する凹溝26よりも更に先端部分における略平坦面とによって、圧着部16の内面が構成されており、全体として凹凸形状とされている。即ち、これら複数の凹溝26と平坦部分によって、圧着部16の内面の実質的に全体に亘って導通用凹凸が構成されている。
【0034】
上述の如き構造とされた端子金具10は、例えば図3〜4に示されるように、電線12に対して圧着されるようになっている。電線12は、電流を通ずる導体として用いられる銅やアルミニウムその他の金属線からなる細線28の複数を並列的に束ね合わせた多心電線とされている。また、電線12において絶縁性が要求される外周面は、エチレン系樹脂やスチレン系樹脂等の電気絶縁性を有する絶縁被覆30で覆われている。
【0035】
特に本実施形態では、細線28が略一定の円形断面で延びており、端子金具10の凹溝26が、細線28の半径よりも大きな曲率半径を有する弧状の湾曲凹面形状とされている。特に好適には、細線28の外径寸法D1に対して凹溝26の内径寸法(曲率半径)D2が、D1/D2≦1/2とされる。更に好適にはD1/D2≦1/3に設定され、一層好適にはD1/D2≦1/5とされる。
【0036】
本実施形態に係る端子金具10をこれら複数の細線28からなる電線12に圧着するには、端子金具10の長手方向、即ち複数の導通用凹凸の延びる方向と電線12の長手方向とが互いに略平行に延びるようにして、圧着部16の溝内の底壁部分20に電線12を載置した状態下、例えば特許文献1(実開平05−23389)に示されるような公知のかしめ装置を用いて、一対のかしめ部分22,22を含む圧着部16にかしめ加工を施す。これにより、図3,4に示されているように、一対のかしめ部分22,22を備えた圧着部16が塑性変形して、電線12を外周面から包み込むようにして、電線12の露出した端部に対して圧着部16が圧着される。これにより、圧着部16の内面が多線からなる電線12の最外周面に対して圧着状態で当接されることとなる。
【0037】
また、本実施形態では、かしめ部分22,22の先端部分にそれぞれ内方に曲げられた屈曲部24,24が形成されていることにより、かしめ加工に際してこれらの屈曲部24,24が、電線12に対して内方にむけて一層強く圧着される。しかも、各かしめ部分22,22の先端部分は、多線の電線12を部分的に抱き込むようにして重ね合わされており、細線28に対してより大きな圧着力が及ぼされると共に、細線28の圧着部16からの抜け出しが防止されるようになっている。
【0038】
かくの如きかしめ加工による圧着により、圧着部16における各凹溝26の内面が全体として電線12の外周面に沿った形状に湾曲されて細線28の表面に当接されている。即ち、電線12と同じ方向に延びる複数条の凹溝26が、圧着部16の内面において、かかる内面と当接される電線12の外周面の周方向で半周以上に亘る領域に形成されている。加えて、凹溝26が細線28の半径に比して十分に大きな曲率半径を有していることに基づき、圧着部16の内面に形成された各凹溝26に細線28が入り込んで当接せしめられている。
【0039】
これにより、圧着部16においては、複数条の凹溝26によって内面の表面積が大きくされており、電線12への接触面積が大きく確保されている。しかも、電線12が多心の細線28で構成されていることにより、圧着部16の内面が凹凸形状とされていても、多数の細線28で構成された電線12の表面が圧着部16の内面形状に沿って変形して大きな接触面積が安定して確保され得る。
【0040】
その結果、圧着部16を大型化したり、電線12を大径化したりすることなく、電線12と圧着部16の接触面積を大きく設定することが可能となるのであり、それにより、電線12と圧着部16の間での電気抵抗を低く抑えることが出来るのである。
【0041】
また、本実施形態のように、圧着部16の内面の実質的に全体に亘って複数の凹溝26を形成したことにより、圧着部16の周方向への曲げ加工が容易となる。その結果、かしめ作業の容易化が図られ得ると共に、圧着部16を電線12の外周面に対して一層高精度に沿わせてかしめ変形させることにより、接触面積の更なる向上とそれに基づく電気抵抗の更なる低減も図られ得る。
【0042】
ところで、上述の如き構造とされた端子金具10の製造方法は、特に限定されるものでないが、例えば、図5に示される順送用素板32を用いた順送プレス加工によって効率的に製造することが出来る。
【0043】
この順送用素板32は、加工前の段階で薄肉の長板形状又は帯板形状を有している。そして、この順送用素板32を順送プレス装置で加工することによって目的とする端子金具10を得ることとなるが、その製造方法に係る工程を簡単に説明する。
【0044】
先ず、図5には、右から左に向かって順に、複数の順送プレスステージを経て加工された順送プレス状態が示されている。具体的に例示すると、かかるプレスステージは、(1)打抜き加工により素板32に通孔18を形成する第一ステージ(図示せず)と、(2)プレス加工により素板32に複数の凹溝26を形成する第二ステージ40と、(3)プレス加工(打抜き加工)により素板32の幅方向一方の側を成形する第三ステージ42と、(4)プレス加工(打抜き加工)により素板32の幅方向他方の側を成形する第四ステージ44と、(5)プレス加工により素板32に一対の屈曲部24,24を形成する第五ステージ46と、(6)プレス加工により一対のかしめ部分22,22を形成する第六ステージ48と、(7)打抜き加工により幅方向中央の連結部51を切除して目的とする端子金具10を得る第七ステージ(図示せず)とを、含んで構成される。
【0045】
公知のとおり、これら第一〜第七ステージは、直列的に配列されて設置されており、例えば通孔18を利用した送りピッチ制御で素板32を長さ方向に順送りして、各ステージに順次に導くことにより、順送プレスが行われることとなる。
【0046】
なお、第一ステージで通孔18を貫設した後に、第二ステージ40において、通孔18から送り方向の後方(図5中、右)に所定距離を隔てて複数の凹溝26を形成するが、これら通孔18と凹溝26とを同時に一つのプレスステージで加工するようにしても良い。なお、図5に示された実施形態では、凹溝26が素板32の送り方向(図5中、右から左)と平行に延びているが、後述する別態様のように、凹溝26が素板32の送り方向に直交する方向に延びるようにして、目的とする端子金具10が図5に対して略90度回転した方向に並ぶ状態で、順送プレスすることも可能である。
【0047】
また、第三ステージ42と第四ステージ44で、平板形状のままの端子金具10の幅方向左右外縁を順次に打抜形成しているが、これら第三ステージ42と第四ステージ44を同時に一つのプレスステージで加工することで、端子金具10の幅方向左右外縁を同時に打抜形成しても良い。
【0048】
さらに、第六ステージ48で底壁部分20の幅方向両側を立ち上げることにより、一対のかしめ部分22,22を形成しているが、このかしめ部分22,22の立ち上げ加工を、複数のステージに亘って次第に大きく立ち上げるようにしても良い。
【0049】
特に、このような端子金具10の製造方法に従えば、素板32を第一ステージに送って通孔18を形成し、更に第二ステージ40で凹溝26を形成した後、第三及び第四ステージ42,44を経て、凹溝26が形成された部分に対して打抜加工が施されるようになっているが、例えば素板に凹溝を形成するステージの前に、素板を複数のステージに順送して複数のプレス加工を施した後に、凹溝形成ステージにて凹溝を形成し、その後、別のステージにおいて凹溝の形成部分に打抜加工を施すことも可能である。要するに、本製造方法では、素板32にプレス加工を施して素板32の表面に導通用凹凸(凹溝26)を形成した後に、素板32に打抜き加工を施して圧着部16を形成することとなる。また、順送用素板32を第一乃至第六ステージに順送させつつ、順送用素板32の複数の箇所に、第一乃至第七ステージの加工を同時に施すことも可能であることから、図5に示されるように、素板32の送り方向の先端側(図5中、左)から順に端子金具10を形成することも可能となる。
【0050】
これにより、順送プレス加工で得られた端子金具10において、導通用凹凸を形成したことに起因する外周縁部におけるバリ状の張り出しが完全に防止される。即ち、順送プレス加工だけで、バリ取り等の後加工も必要とすることなく、高精度な寸法と品質を備えた端子金具10の製品を得ることが出来るのである。
【0051】
加えて、先に凹溝26をプレス形成し、その後のステージにおいて、凹溝26に沿って屈曲や湾曲(立ち上げ)のプレス成形を行うようにしたことから、かしめ部分22,22を備えた圧着部16のプレス成形が容易となり、プレス加工による成形寸法精度の向上も図られ得る。
【0052】
なお、本実施形態の端子金具10の製造方法は、このような順送プレスによるものに限定されるものでなく、単品のプレス加工等で製造することも、勿論可能である。また、順送プレスによって端子金具10を製造するに際しても、具体的な順送プレス加工の態様は限定されるものでない。
【0053】
具体的に例示すると、図6に示されているように、帯板形状の素板50から端子金具10の単体を打抜きプレスで切り離して単体成形しても良い。なお、このように単体で打抜加工する場合においても、端子金具10の外形を打ち抜く前の工程で、通孔18の打抜加工と、凹溝26のプレス成形とを、予め行っておくことが望ましいし、それらの加工を順送プレスを利用して行うことも可能である。
【0054】
また、図7に示されているように、端子金具10の全長の2倍より短い幅寸法、より具体的には略1.5倍の幅寸法をもった帯板形状の素板52を採用し、素板52の幅方向で成形品(端子金具10)を2個取りする順送プレス成形を行うことも可能である。
【0055】
例えば、素板52の幅方向中央において、端子金具10の成形領域を避けた位置に一定間隔の送りピッチ孔54を打ち抜くステージを設け、この送りピッチ孔54で順送ピッチを制御する。また、送りピッチ孔54と同じステージで、或いは次のステージで、隣り合う端子金具10の間の不要部分56を打ち抜き、次の別ステージで、凹溝26をプレス成形する。次に、隣り合う端子金具10,10における圧着部16の両端縁部(かしめ部分22の先端縁部)を取り離す打抜加工を施し、続いて、かしめ部分22の先端部分に対して屈曲部24,24をプレス成形する。更に、続くステージで、圧着部16に曲げ加工を施してかしめ部分22,22を立ち上げると共に、補強部23,23をプレス成形する。その後、接続部14の先端部分を打ち抜いて外形形状を成形することにより、目的とする端子金具10を切り離して得る。
【0056】
このような順送プレスによる成形方法に従えば、幅広の素板52を採用して、幅方向で端子金具10を複数個取りすることが出来、端子金具10の生産効率の向上が図られ得る。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、かかる実施形態における具体的な記載によって、本発明は、何等限定されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様で実施可能であり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【0058】
例えば、図8に示されているように、二本の電線12,12の端部同士を相互に電気接続するための接続用の端子金具60に対しても、本発明は適用可能である。具体的には、端子金具60に設けられた二つの圧着部16,16の少なくとも一方において、(図示はされていないが)その内面に対して電線12の長さ方向に延びる凹凸を設けることによって、本発明が適用され得る。
【0059】
また、図9に示されているように、接続部14から延び出して一体形成された圧着部16の先端側から更に延び出して絶縁被覆用固定部としての被覆圧着部62が一体形成されている。この被覆圧着部62は、圧着部16と略同様に、底壁部分の幅方向の両側縁部から立ち上がる一対のかしめ部分64,64を備えており、全体として凹溝形状とされている。そして、電線12を覆う絶縁被覆30に対して、その外周面に対して密接するようにかしめ固定されている。なお、かかる被覆圧着部62の内面には、電線12の長さ方向に直交する周方向に延びる固定用凹凸としての凹凸が形成されていても良い。このような周方向に延びる凹凸を形成することにより、絶縁被覆30に対して抜け方向の拘束力を有利に及ぼすことが可能となる。
【0060】
更にまた、図10,11に示されているように、電線12の外周面に対して巻き付けられて圧着固定される端子金具66に対しても、本発明は適用可能である。即ち、この端子金具66には、接続部14から直線的に延び出した平形の短冊形状を有する圧着部68が一体形成されている。そして、この圧着部68には、その一方の面の実質的に全体に亘って、電線12の長さ方向に延びる複数条の凹凸67が形成されている。なお、本実施形態では、かかる凹凸67が、全体として波形の一定断面形状をもって、圧着部68の全体に亘って形成されており、特に、滑らかな略サイン波形断面とされている。
【0061】
この端子金具66は、圧着部68の内面(凹凸67の形成面)に対して電線12が重ね合わされて、その後、圧着部68が電線12の外周面に対して巻き付けられるようにしてかしめ固定される。それによって、凹凸67が付された圧着部68の内面が、電線12の外周面に対して圧着されることとなる。
【0062】
従って、かかる端子金具66でも、電線12に対する接触面積の増大に基づく通電抵抗の低減などの各種効果が有効が発揮され得る。特に、電線12の長さ方向中間部分にもかしめ固定して装着することが可能である。
【0063】
また、図12,13に示されている端子金具70においては、接続部14から直線的に延び出した平形の短冊形状を有する圧着部72が一体形成されている。そして、この圧着部72には、その延出方向の略中央部分から接続部14に向かう方向に矩形の切り起こし片74が形成されている。この切り起こし片74は、圧着部72の幅方向中央部分において、圧着部72の延び出し方向に向かって開口するコ字形状で切断線76が設けられることによって形成されている。なお、切断線76は、プレス加工やレーザー加工で形成可能である。
【0064】
また、圧着部72の内面(図示しない電線への当接側面)には、電線の長さ方向となる図12中の上下方向に直線的に延びる複数条の凹溝26が、その実質的全面に亘って形成されている。これにより、圧着部72の内面が、切り起こし片74の形成部分を含んで、全体的に凹凸形状とされている。
【0065】
また、図13に示されているように、かかる圧着部72は、延び出し方向の中央よりも先端部分と切り起こし片74が、それぞれ、内面側に向かって適当な角度(例えば30度〜90度)で立ち上げられるようにプレス加工で屈曲されている。これにより、圧着部72が、全体として電線の長さ方向に延びる凹溝形状とされている。
【0066】
このような構造の端子金具70においても、図10〜11に示された端子金具66と同様に、電線の長さ方向の中間部分に対してその外周面に圧着固定することが出来る。また、電線の外周面に当接される圧着部72の内面には、電線の長さ方向に延びる複数の凹凸条(凹溝26)が形成されていることから、電線との通電抵抗低減等の前述の実施形態と同様な効果が何れも有効に発揮される。
【0067】
さらに、本発明において端子金具の圧着部の内面に形成される凹凸の形態は、各種のものが採用される。例えば、図14に示されているように、圧着部16の凹溝の内面において、電線12の長さ方向で異なる位置に、電線12の長さ方向に延びる複数条の導通用凹凸としての凹溝26と、電線12の周方向に延びる複数条の係止用凹凸としての周溝80とを、形成しても良い。このような周溝80を形成することにより、端子金具82に対する電線12の抜け方向の固定力を向上させることが可能となる。本具体例では、端子金具82における電線12の外周面に当接せしめられる領域において、電線12の長さ方向で凹溝26が形成された領域の両側に周溝80が形成された領域が設けられている。このことからも明らかなように、周溝80と凹溝26が、電線12の長さ方向で交互に少なくとも各一つ形成されている。
【0068】
また、図15に示されているように、端子金具84において、電線12の外周面に当接せしめられる領域に、電線12の長さ方向に延びる本発明に従う導通用凹凸を形成する凹溝26を形成すると共に、それと別の領域において、格子状の凹凸86等を形成しても良い。なお、図中、88は、絶縁被覆層30へかしめ固定される被覆圧着部62の内面に形成された、電線12の周方向に延びる固定用凹凸としての凹溝である。
【0069】
さらに、本発明は、単心の電線に対してかしめ等で固定される端子金具に対しても同様に適用可能である。その場合に、好適には、例えば図16に示されているように、比較的滑らかに連続した波線形の断面形状をもって単心電線90の長さ方向(紙面に垂直の方向)に延びる凹凸条92を内面に備えた圧着部94を有する端子金具や、或いは、図17に示されているように、尖鋭形状の突出角部をもった山形断面をもって単心電線90の長さ方向に延びる凸条96の複数からなる凹凸面を備えた圧着部98を有する端子金具などが、採用され得る。
【0070】
このような端子金具では、単心電線90の外周面に対して、その凹凸面における接触面積が一層効果的に向上されて確保され得ることとなる。
【0071】
また、前記実施形態では、端子金具の製造に際して、順送用素板32を用いた順送プレスが採用されていたが、これに限定されるものでなく、例えば素板の適当な箇所に複数のプレス加工を施して一又は二以上の端子金具を形成したり、或いは鋳造成形により通孔や凹溝が形成された金具に対して、必要に応じてプレス加工(打抜加工)を施して端子金具を形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一実施形態としての端子金具の平面図。
【図2】図1に示された端子金具の図1中の下端面の拡大説明図。
【図3】図1に示された端子金具が取り付けられた圧着端子付き電線の平面図。
【図4】図3におけるIV−IV断面の拡大説明図。
【図5】図1に示された端子金具の順送プレスによる製造工程を説明するための素板の平面説明図。
【図6】図1に示された端子金具の別の製造方法の一例を説明するための素板の平面説明図。
【図7】図1に示された端子金具の更に別の製造方法の一例を説明するための素板の平面説明図。
【図8】本発明の別の一実施形態としての端子金具が取り付けられた圧着端子付き電線の平面図。
【図9】本発明の更に別の一実施形態としての端子金具が取り付けられた圧着端子付き電線の平面図。
【図10】本発明の更に別の一実施形態としての端子金具が取り付けられた圧着端子付き電線の平面図。
【図11】図10におけるXI−XI断面の拡大図。
【図12】本発明の更に別の一実施形態としての端子金具の平面図。
【図13】図12におけるXIII−XIII断面図。
【図14】本発明の更に別の一実施形態としての端子金具を示す平面説明図。
【図15】本発明の更に別の一実施形態としての端子金具を示す平面説明図。
【図16】本発明の更に別の一実施形態としての端子金具が取り付けられた圧着端子付き電線の横断面図。
【図17】本発明の更に別の一実施形態としての端子金具が取り付けられた圧着端子付き電線の横断面図。
【符号の説明】
【0073】
10:端子金具、12:電線、16:圧着部、26:凹溝
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線に圧着されて取り付けられる導電型の圧着端子と、かかる圧着端子を備えた電線と、かかる圧着端子の製造方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電線の他部材に対する電気的な接続部分には、導通の安定化や接続部分における着脱作業の容易化などの目的をもって各種の端子が用いられている。かかる端子の一種として、端子に圧着部を一体形成し、この圧着部を電線の外周面に巻き付けるようにかしめ固定等して直接に電線に圧着することにより取り付ける圧着端子が知られている。
【0003】
ところで、電線の他部材への接続部分では、電力損失を抑えるために電気抵抗を充分に小さくすることが要求される。そして、電気抵抗を抑えるためには、例えば、電線を大径化したり、圧着端子を大きくすることが考えられる。
【0004】
ところが、電線の大径化や圧着端子の大型化は、配設スペースによって制限されたり、取り扱いが面倒になったり、大幅なコストアップになったりするために、容易に採用され難い。
【0005】
しかも、たとえ電線を大径化したり圧着端子を大型化することによって電線や圧着端子それ自体の電気抵抗を抑えることは可能であるものの、電線と圧着端子の接続部位の接触抵抗を充分に抑えることが難しい。それ故、かかる接続部位の電気抵抗がネックとなってしまって、電気抵抗の低下が充分に達成され難いという問題があった。
【0006】
特に、圧着端子に対する電線の抜けを防止するために、実開平05−23389号公報(特許文献1)に記載されているように、電線に圧着される圧着端子の内面に対して、電線の周方向に延びる周方向突条を形成し、この周方向凸条を電線に対して食い込ませるようにして係止することが提案されているが、このような周方向凸条を形成すると、電線の長手方向において周方向突条を挟んだ両側部分で圧着端子内面との間に隙間が発生し易い。そして、この隙間によって電線と圧着端子との接触面積が小さくなってしまうことから、電線と圧着端子の接続部位における電気抵抗が一層大きくなってしまうおそれもあった。
【0007】
【特許文献1】実開平05−23389号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここにおいて、本発明は上述の如き事情を背景として為されたものであり、その解決課題とするところは、電線に対する接続部位における電気抵抗を低下させることが出来、それによって、電線や圧着端子の大型化を回避しつつ通電に際しての電力損失を効果的に抑えることの出来る、新規な構造の圧着端子を提供することにある。
【0009】
また、本発明は、かくの如き圧着端子を備えた圧着端子付き電線と、かかる圧着端子の好適な製造方法とを、提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、前述の課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0011】
すなわち、本発明の特徴とするところは、電線の外周面に圧着される圧着端子であって、電線の外周面に圧着される圧着部の内面には、電線の周方向で半周以上に亘る領域において電線と同じ方向に延びる複数条の導通用凹凸が形成されている圧着端子にある。
【0012】
このような本発明に従う構造とされた圧着端子においては、圧着部の内面の面積が導通用凹凸によって大きくされていることにより、圧着部と電線の接触面積が大きくされる。
【0013】
しかも、導通用凹凸が電線と同じ方向に延びていることから、導通用凹凸における凹部の底面や凸部の先端面においても電線の外周面に沿った形状で有効に当接せしめるられる。これにより、導通用凹凸を備えた圧着部と電線の当接面間に大きな隙間が生ぜしめられるような不具合も回避されて、接触面積が十分に確保される。
【0014】
従って、本発明の圧着端子によれば、電線との接触面積が効果的に増大されることから、電線の大径化や圧着端子の大型化を伴うことなく、電線への圧着端子の取付部位における通電抵抗が低減されて通電時の電力損失が抑えられると共に、接触面積と当接圧力に比例する摩擦力が大きくなることに基づき、端子の電線からの耐引抜き力も増大されて、端子の電線に対する固着強度も向上されるのである。
【0015】
また、本発明に係る圧着端子にあって、圧着部の内面には、導通用凹凸が形成された領域とは別の領域において、電線の周方向に延びる係止用凹凸が形成されて、電線の外周面に対して係止用凹凸が当接するようになっている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、係止用凹凸が電線に対して、電線の抜け方向である長手方向で部分的に噛み込むように圧着されることで、圧着端子の電線からの抜け出しを抑える係止作用が発揮され得る。特に本態様では、導通用凹凸による電線への圧着端子の接触面積の増大が、係止用凹凸によって阻害されることもない。
【0016】
尤も、係止用凹凸として、電線の周方向に傾斜して延びる態様の凹凸等を採用することも可能であり、また、係止用凹凸として、電線の周方向に延びる態様の凹凸に加えて電線の長さ方向に延びる凹凸を重ねて形成しても良い。導通用凹凸の形成領域において、圧着端子に対する電線の接触面積が充分に確保されることにより、係止用凹凸の形成領域においては、電線への接触面積の確保をそれ程重要視することなく、電線への係止作用を重視することが出来るから、各種の形態の係止用凹凸を採用することが出来るのであり、そのような各種の形態の係止用凹凸を採用した場合でも、前述の如き、導通用凹凸による通電抵抗の低減や電線抜け効力の増大といった本発明の効果は発揮され得る。
【0017】
なお、本発明に係る圧着端子では、電線の外周面への当接部分において、電線の周方向に延びる係止用凹凸と導通用凹凸とが電線の長さ方向で交互に形成されている構造が、採用されても良い。
【0018】
また、本発明に係る圧着端子においては、電線が絶縁被覆で外周面が覆われており、電線の長さ方向で部分的に絶縁被覆から露出された電線の露出部分に対して圧着部が圧着されるようになっていると共に、電線を覆う絶縁被覆の外周面に対して圧着される絶縁被覆用固定部が設けられており、この絶縁被覆用固定部の内周面には電線の周方向に延びる固定用凹凸が形成されている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、圧着端子が絶縁被覆に対しても直接に固定されることとなり、絶縁皮膜のめくれあがり等の、絶縁皮膜の電線に対する位置ずれも防止される。
【0019】
また、本発明に係る圧着端子においては、圧着部が、底壁部分と底壁部分の幅方向両側から立ち上がる一対のかしめ部分を含んで構成されており、圧着部の少なくとも底壁部分に導通用凹凸が形成されている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、かしめ部分のかしめ固定を利用して、圧着作業が容易に且つ確実に実現され、また導通用凹凸が少なくとも圧着部の底壁部分に形成されていることによって、電線への当接面積も好適に確保され得る。
【0020】
さらに、本発明の特徴とするところは、前述の圧着端子が固定された圧着端子付き電線であって、圧着端子の圧着部が電線に対して圧着されて、導通用凹凸が電線の外周面に対して半周以上に亘って当接されている圧着端子付き電線にある。
【0021】
また、本発明に係る圧着端子付き電線においては、電線が、複数の細線を並列的に束ねた多心電線とされていると共に、導通用凹凸の凹部が多心電線の細線よりも大きな曲率半径を有する弧状の湾曲凹面形状とされている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、複数の細線を導通用凹凸の凹部に入り込ませるようにして当接させることが可能となり、それによって、導通用凹凸の電線への接触面積を一層効率的に確保することが可能となる。
【0022】
さらに、圧着端子の製造方法に関する本発明の特徴とするところは、素板に対して打抜加工を施すことにより上述の如き本発明に従う構造とされた圧着端子を製造するに際して、素板に対してプレス加工を施すことにより素板の表面に導通用凹凸を形成した後、素板に対して打抜加工を施すことにより圧着部を形成することにある。
【0023】
このような本発明方法に従えば、導通用凹凸が圧着部に先立って形成されることから、例えば、素板を打抜いて圧着部を形成した後にプレス加工を施して導通用凹凸を形成した場合において、導通用凹凸のプレス成形時の塑性変形に伴って、導通用凹凸の端部が圧着部の端縁部にバリとして発生するおそれが回避され得る。
【0024】
また、本発明に係る圧着端子の製造方法においては、素板として長板形状の順送用素板を採用し、順送用素板を複数のステージに順送して複数段階のプレス加工を行うと共に、導通用凹凸を形成するプレス加工のステージの後、別のステージにおいて導通用凹凸が形成された部分に対して打抜加工を施す方法が、採用されても良い。これにより、製造効率が向上されて、圧着端子の大量生産化も有利に実現され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について説明する。先ず、図1〜2には、本発明の圧着端子に係る一実施形態としての端子金具10が示されている。端子金具10は、図3,4にも示されているように、例えば自動車の電気機械や電子機器の各部品間を相互に電気的に接続する電線12に対して、圧着により取り付けられるようになっている。このような端子金具10が圧着された圧着端子付き電線12を具体的に例示すれば、自動車のバッテリーのマイナス端子をボデーにアース接続するアース用の通電ワイヤの端部に対して、締付ボルト挿通用のワッシャを備えた端子金具を固定したものや、各種電子機器の給電コードに接続される通電線であって、給電コードに対する着脱用の平型端子やキボシ端子等の端子金具を固定したものなどが挙げられる。
【0026】
より詳細には、端子金具10は、導電性を有しており、且つプレス加工や打抜き加工等が可能な種々の金属材料、例えば真鍮や銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等を用いて形成されている。本実施形態では、端子金具10の厚さ寸法が全体に亘って略一定とされているが、要求される製作性や電気抵抗等に応じて、厚さ寸法が大きく異なる箇所が部分的に形成されていても良い。この端子金具10は、形状が特に限定されるものでないが、本実施形態では、接続部14と圧着部16を含んで一体成形されている。
【0027】
接続部14は、平面が略楕円形の平板形状を有していると共に、中央部分に通孔18が貫設されている。この通孔18は、例えば前述のアース用の通電ワイヤの場合にボデーアース部に螺着される締付ボルトを挿通するために利用される。
【0028】
圧着部16は、接続部14の外周縁部の周上の一箇所から延び出して一体形成されている。また、かかる圧着部16は、接続部14から外方(図1中の下方)に向かって直線的に延び出す略溝形状とされている。即ち、圧着部16は、長手状の略矩形板形状を有する底壁部分20を備えており、この底壁部分20の幅方向(図1,2中、左右方向)の両側縁部には、一方の面側(図2中の上面側)に立ち上がる一対のかしめ部分22,22が形成されている。これらのかしめ部分22,22は、底壁部分20の長さ方向全長に亘って、略矩形板形状をもって形成されており、底壁部分20の両側壁部を構成しており、以て、圧着部16が、略一定の凹形断面の溝形状とされている。
【0029】
なお、接続部14と圧着部16の連設部分には、圧着部16のかしめ部分22,22の長さ方向各端面から接続部14の外周縁部に沿って延び出す補強部23,23が立ち上がって一体形成されている。また、各かしめ部分22の先端縁部には、内側に向かって僅かに折り曲げられた屈曲部24が一体形成されている。
【0030】
ここにおいて、圧着部16には、その内面の実質的に全体に亘って複数条の凹溝26が形成されている。凹溝26は、圧着部16における一対のかしめ部分22,22が底壁部分20から立ち上がる側の表面である溝内面(以下、圧着部16の内面とも言う。)、即ち電線12に対する圧着面に形成されている。このことからも明らかなように、本実施形態では、凹溝26が圧着部16の少なくとも底壁部分20に形成されている。また、凹溝26は、略一定の断面形状(本実施形態では、略半円形状)で、溝形状とされた圧着部16の長さ方向、即ち図1中の上下方向に連続して直線的に延びている。
【0031】
各凹溝26は、長さ方向で分断されていたり、圧着部16の長さ方向で部分的に形成されていても良いが、本実施形態では、圧着部16の長さ方向の実質的に全長に亘って連続して形成されており、圧着部16の長さ方向の先端面に各凹溝26が開口している。なお、凹溝26の深さ寸法は特に限定されるものでないが、圧着部16の強度を確保するために、好適には圧着部16の部材厚さの2/3以下、より好ましくは1/2以下とされる。
【0032】
このような凹溝26の複数が、圧着部16の幅方向に所定距離を隔てて設けられている。特に本実施形態では、底壁部分20と両かしめ部分22,22において、互いに略等間隔を隔てて合計8条形成されている。
【0033】
これにより、複数の凹溝26の凹んだ内面と、互いに隣接位置する凹溝26,26の間および各かしめ部分22,22において最も外側に位置する凹溝26よりも更に先端部分における略平坦面とによって、圧着部16の内面が構成されており、全体として凹凸形状とされている。即ち、これら複数の凹溝26と平坦部分によって、圧着部16の内面の実質的に全体に亘って導通用凹凸が構成されている。
【0034】
上述の如き構造とされた端子金具10は、例えば図3〜4に示されるように、電線12に対して圧着されるようになっている。電線12は、電流を通ずる導体として用いられる銅やアルミニウムその他の金属線からなる細線28の複数を並列的に束ね合わせた多心電線とされている。また、電線12において絶縁性が要求される外周面は、エチレン系樹脂やスチレン系樹脂等の電気絶縁性を有する絶縁被覆30で覆われている。
【0035】
特に本実施形態では、細線28が略一定の円形断面で延びており、端子金具10の凹溝26が、細線28の半径よりも大きな曲率半径を有する弧状の湾曲凹面形状とされている。特に好適には、細線28の外径寸法D1に対して凹溝26の内径寸法(曲率半径)D2が、D1/D2≦1/2とされる。更に好適にはD1/D2≦1/3に設定され、一層好適にはD1/D2≦1/5とされる。
【0036】
本実施形態に係る端子金具10をこれら複数の細線28からなる電線12に圧着するには、端子金具10の長手方向、即ち複数の導通用凹凸の延びる方向と電線12の長手方向とが互いに略平行に延びるようにして、圧着部16の溝内の底壁部分20に電線12を載置した状態下、例えば特許文献1(実開平05−23389)に示されるような公知のかしめ装置を用いて、一対のかしめ部分22,22を含む圧着部16にかしめ加工を施す。これにより、図3,4に示されているように、一対のかしめ部分22,22を備えた圧着部16が塑性変形して、電線12を外周面から包み込むようにして、電線12の露出した端部に対して圧着部16が圧着される。これにより、圧着部16の内面が多線からなる電線12の最外周面に対して圧着状態で当接されることとなる。
【0037】
また、本実施形態では、かしめ部分22,22の先端部分にそれぞれ内方に曲げられた屈曲部24,24が形成されていることにより、かしめ加工に際してこれらの屈曲部24,24が、電線12に対して内方にむけて一層強く圧着される。しかも、各かしめ部分22,22の先端部分は、多線の電線12を部分的に抱き込むようにして重ね合わされており、細線28に対してより大きな圧着力が及ぼされると共に、細線28の圧着部16からの抜け出しが防止されるようになっている。
【0038】
かくの如きかしめ加工による圧着により、圧着部16における各凹溝26の内面が全体として電線12の外周面に沿った形状に湾曲されて細線28の表面に当接されている。即ち、電線12と同じ方向に延びる複数条の凹溝26が、圧着部16の内面において、かかる内面と当接される電線12の外周面の周方向で半周以上に亘る領域に形成されている。加えて、凹溝26が細線28の半径に比して十分に大きな曲率半径を有していることに基づき、圧着部16の内面に形成された各凹溝26に細線28が入り込んで当接せしめられている。
【0039】
これにより、圧着部16においては、複数条の凹溝26によって内面の表面積が大きくされており、電線12への接触面積が大きく確保されている。しかも、電線12が多心の細線28で構成されていることにより、圧着部16の内面が凹凸形状とされていても、多数の細線28で構成された電線12の表面が圧着部16の内面形状に沿って変形して大きな接触面積が安定して確保され得る。
【0040】
その結果、圧着部16を大型化したり、電線12を大径化したりすることなく、電線12と圧着部16の接触面積を大きく設定することが可能となるのであり、それにより、電線12と圧着部16の間での電気抵抗を低く抑えることが出来るのである。
【0041】
また、本実施形態のように、圧着部16の内面の実質的に全体に亘って複数の凹溝26を形成したことにより、圧着部16の周方向への曲げ加工が容易となる。その結果、かしめ作業の容易化が図られ得ると共に、圧着部16を電線12の外周面に対して一層高精度に沿わせてかしめ変形させることにより、接触面積の更なる向上とそれに基づく電気抵抗の更なる低減も図られ得る。
【0042】
ところで、上述の如き構造とされた端子金具10の製造方法は、特に限定されるものでないが、例えば、図5に示される順送用素板32を用いた順送プレス加工によって効率的に製造することが出来る。
【0043】
この順送用素板32は、加工前の段階で薄肉の長板形状又は帯板形状を有している。そして、この順送用素板32を順送プレス装置で加工することによって目的とする端子金具10を得ることとなるが、その製造方法に係る工程を簡単に説明する。
【0044】
先ず、図5には、右から左に向かって順に、複数の順送プレスステージを経て加工された順送プレス状態が示されている。具体的に例示すると、かかるプレスステージは、(1)打抜き加工により素板32に通孔18を形成する第一ステージ(図示せず)と、(2)プレス加工により素板32に複数の凹溝26を形成する第二ステージ40と、(3)プレス加工(打抜き加工)により素板32の幅方向一方の側を成形する第三ステージ42と、(4)プレス加工(打抜き加工)により素板32の幅方向他方の側を成形する第四ステージ44と、(5)プレス加工により素板32に一対の屈曲部24,24を形成する第五ステージ46と、(6)プレス加工により一対のかしめ部分22,22を形成する第六ステージ48と、(7)打抜き加工により幅方向中央の連結部51を切除して目的とする端子金具10を得る第七ステージ(図示せず)とを、含んで構成される。
【0045】
公知のとおり、これら第一〜第七ステージは、直列的に配列されて設置されており、例えば通孔18を利用した送りピッチ制御で素板32を長さ方向に順送りして、各ステージに順次に導くことにより、順送プレスが行われることとなる。
【0046】
なお、第一ステージで通孔18を貫設した後に、第二ステージ40において、通孔18から送り方向の後方(図5中、右)に所定距離を隔てて複数の凹溝26を形成するが、これら通孔18と凹溝26とを同時に一つのプレスステージで加工するようにしても良い。なお、図5に示された実施形態では、凹溝26が素板32の送り方向(図5中、右から左)と平行に延びているが、後述する別態様のように、凹溝26が素板32の送り方向に直交する方向に延びるようにして、目的とする端子金具10が図5に対して略90度回転した方向に並ぶ状態で、順送プレスすることも可能である。
【0047】
また、第三ステージ42と第四ステージ44で、平板形状のままの端子金具10の幅方向左右外縁を順次に打抜形成しているが、これら第三ステージ42と第四ステージ44を同時に一つのプレスステージで加工することで、端子金具10の幅方向左右外縁を同時に打抜形成しても良い。
【0048】
さらに、第六ステージ48で底壁部分20の幅方向両側を立ち上げることにより、一対のかしめ部分22,22を形成しているが、このかしめ部分22,22の立ち上げ加工を、複数のステージに亘って次第に大きく立ち上げるようにしても良い。
【0049】
特に、このような端子金具10の製造方法に従えば、素板32を第一ステージに送って通孔18を形成し、更に第二ステージ40で凹溝26を形成した後、第三及び第四ステージ42,44を経て、凹溝26が形成された部分に対して打抜加工が施されるようになっているが、例えば素板に凹溝を形成するステージの前に、素板を複数のステージに順送して複数のプレス加工を施した後に、凹溝形成ステージにて凹溝を形成し、その後、別のステージにおいて凹溝の形成部分に打抜加工を施すことも可能である。要するに、本製造方法では、素板32にプレス加工を施して素板32の表面に導通用凹凸(凹溝26)を形成した後に、素板32に打抜き加工を施して圧着部16を形成することとなる。また、順送用素板32を第一乃至第六ステージに順送させつつ、順送用素板32の複数の箇所に、第一乃至第七ステージの加工を同時に施すことも可能であることから、図5に示されるように、素板32の送り方向の先端側(図5中、左)から順に端子金具10を形成することも可能となる。
【0050】
これにより、順送プレス加工で得られた端子金具10において、導通用凹凸を形成したことに起因する外周縁部におけるバリ状の張り出しが完全に防止される。即ち、順送プレス加工だけで、バリ取り等の後加工も必要とすることなく、高精度な寸法と品質を備えた端子金具10の製品を得ることが出来るのである。
【0051】
加えて、先に凹溝26をプレス形成し、その後のステージにおいて、凹溝26に沿って屈曲や湾曲(立ち上げ)のプレス成形を行うようにしたことから、かしめ部分22,22を備えた圧着部16のプレス成形が容易となり、プレス加工による成形寸法精度の向上も図られ得る。
【0052】
なお、本実施形態の端子金具10の製造方法は、このような順送プレスによるものに限定されるものでなく、単品のプレス加工等で製造することも、勿論可能である。また、順送プレスによって端子金具10を製造するに際しても、具体的な順送プレス加工の態様は限定されるものでない。
【0053】
具体的に例示すると、図6に示されているように、帯板形状の素板50から端子金具10の単体を打抜きプレスで切り離して単体成形しても良い。なお、このように単体で打抜加工する場合においても、端子金具10の外形を打ち抜く前の工程で、通孔18の打抜加工と、凹溝26のプレス成形とを、予め行っておくことが望ましいし、それらの加工を順送プレスを利用して行うことも可能である。
【0054】
また、図7に示されているように、端子金具10の全長の2倍より短い幅寸法、より具体的には略1.5倍の幅寸法をもった帯板形状の素板52を採用し、素板52の幅方向で成形品(端子金具10)を2個取りする順送プレス成形を行うことも可能である。
【0055】
例えば、素板52の幅方向中央において、端子金具10の成形領域を避けた位置に一定間隔の送りピッチ孔54を打ち抜くステージを設け、この送りピッチ孔54で順送ピッチを制御する。また、送りピッチ孔54と同じステージで、或いは次のステージで、隣り合う端子金具10の間の不要部分56を打ち抜き、次の別ステージで、凹溝26をプレス成形する。次に、隣り合う端子金具10,10における圧着部16の両端縁部(かしめ部分22の先端縁部)を取り離す打抜加工を施し、続いて、かしめ部分22の先端部分に対して屈曲部24,24をプレス成形する。更に、続くステージで、圧着部16に曲げ加工を施してかしめ部分22,22を立ち上げると共に、補強部23,23をプレス成形する。その後、接続部14の先端部分を打ち抜いて外形形状を成形することにより、目的とする端子金具10を切り離して得る。
【0056】
このような順送プレスによる成形方法に従えば、幅広の素板52を採用して、幅方向で端子金具10を複数個取りすることが出来、端子金具10の生産効率の向上が図られ得る。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、かかる実施形態における具体的な記載によって、本発明は、何等限定されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様で実施可能であり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【0058】
例えば、図8に示されているように、二本の電線12,12の端部同士を相互に電気接続するための接続用の端子金具60に対しても、本発明は適用可能である。具体的には、端子金具60に設けられた二つの圧着部16,16の少なくとも一方において、(図示はされていないが)その内面に対して電線12の長さ方向に延びる凹凸を設けることによって、本発明が適用され得る。
【0059】
また、図9に示されているように、接続部14から延び出して一体形成された圧着部16の先端側から更に延び出して絶縁被覆用固定部としての被覆圧着部62が一体形成されている。この被覆圧着部62は、圧着部16と略同様に、底壁部分の幅方向の両側縁部から立ち上がる一対のかしめ部分64,64を備えており、全体として凹溝形状とされている。そして、電線12を覆う絶縁被覆30に対して、その外周面に対して密接するようにかしめ固定されている。なお、かかる被覆圧着部62の内面には、電線12の長さ方向に直交する周方向に延びる固定用凹凸としての凹凸が形成されていても良い。このような周方向に延びる凹凸を形成することにより、絶縁被覆30に対して抜け方向の拘束力を有利に及ぼすことが可能となる。
【0060】
更にまた、図10,11に示されているように、電線12の外周面に対して巻き付けられて圧着固定される端子金具66に対しても、本発明は適用可能である。即ち、この端子金具66には、接続部14から直線的に延び出した平形の短冊形状を有する圧着部68が一体形成されている。そして、この圧着部68には、その一方の面の実質的に全体に亘って、電線12の長さ方向に延びる複数条の凹凸67が形成されている。なお、本実施形態では、かかる凹凸67が、全体として波形の一定断面形状をもって、圧着部68の全体に亘って形成されており、特に、滑らかな略サイン波形断面とされている。
【0061】
この端子金具66は、圧着部68の内面(凹凸67の形成面)に対して電線12が重ね合わされて、その後、圧着部68が電線12の外周面に対して巻き付けられるようにしてかしめ固定される。それによって、凹凸67が付された圧着部68の内面が、電線12の外周面に対して圧着されることとなる。
【0062】
従って、かかる端子金具66でも、電線12に対する接触面積の増大に基づく通電抵抗の低減などの各種効果が有効が発揮され得る。特に、電線12の長さ方向中間部分にもかしめ固定して装着することが可能である。
【0063】
また、図12,13に示されている端子金具70においては、接続部14から直線的に延び出した平形の短冊形状を有する圧着部72が一体形成されている。そして、この圧着部72には、その延出方向の略中央部分から接続部14に向かう方向に矩形の切り起こし片74が形成されている。この切り起こし片74は、圧着部72の幅方向中央部分において、圧着部72の延び出し方向に向かって開口するコ字形状で切断線76が設けられることによって形成されている。なお、切断線76は、プレス加工やレーザー加工で形成可能である。
【0064】
また、圧着部72の内面(図示しない電線への当接側面)には、電線の長さ方向となる図12中の上下方向に直線的に延びる複数条の凹溝26が、その実質的全面に亘って形成されている。これにより、圧着部72の内面が、切り起こし片74の形成部分を含んで、全体的に凹凸形状とされている。
【0065】
また、図13に示されているように、かかる圧着部72は、延び出し方向の中央よりも先端部分と切り起こし片74が、それぞれ、内面側に向かって適当な角度(例えば30度〜90度)で立ち上げられるようにプレス加工で屈曲されている。これにより、圧着部72が、全体として電線の長さ方向に延びる凹溝形状とされている。
【0066】
このような構造の端子金具70においても、図10〜11に示された端子金具66と同様に、電線の長さ方向の中間部分に対してその外周面に圧着固定することが出来る。また、電線の外周面に当接される圧着部72の内面には、電線の長さ方向に延びる複数の凹凸条(凹溝26)が形成されていることから、電線との通電抵抗低減等の前述の実施形態と同様な効果が何れも有効に発揮される。
【0067】
さらに、本発明において端子金具の圧着部の内面に形成される凹凸の形態は、各種のものが採用される。例えば、図14に示されているように、圧着部16の凹溝の内面において、電線12の長さ方向で異なる位置に、電線12の長さ方向に延びる複数条の導通用凹凸としての凹溝26と、電線12の周方向に延びる複数条の係止用凹凸としての周溝80とを、形成しても良い。このような周溝80を形成することにより、端子金具82に対する電線12の抜け方向の固定力を向上させることが可能となる。本具体例では、端子金具82における電線12の外周面に当接せしめられる領域において、電線12の長さ方向で凹溝26が形成された領域の両側に周溝80が形成された領域が設けられている。このことからも明らかなように、周溝80と凹溝26が、電線12の長さ方向で交互に少なくとも各一つ形成されている。
【0068】
また、図15に示されているように、端子金具84において、電線12の外周面に当接せしめられる領域に、電線12の長さ方向に延びる本発明に従う導通用凹凸を形成する凹溝26を形成すると共に、それと別の領域において、格子状の凹凸86等を形成しても良い。なお、図中、88は、絶縁被覆層30へかしめ固定される被覆圧着部62の内面に形成された、電線12の周方向に延びる固定用凹凸としての凹溝である。
【0069】
さらに、本発明は、単心の電線に対してかしめ等で固定される端子金具に対しても同様に適用可能である。その場合に、好適には、例えば図16に示されているように、比較的滑らかに連続した波線形の断面形状をもって単心電線90の長さ方向(紙面に垂直の方向)に延びる凹凸条92を内面に備えた圧着部94を有する端子金具や、或いは、図17に示されているように、尖鋭形状の突出角部をもった山形断面をもって単心電線90の長さ方向に延びる凸条96の複数からなる凹凸面を備えた圧着部98を有する端子金具などが、採用され得る。
【0070】
このような端子金具では、単心電線90の外周面に対して、その凹凸面における接触面積が一層効果的に向上されて確保され得ることとなる。
【0071】
また、前記実施形態では、端子金具の製造に際して、順送用素板32を用いた順送プレスが採用されていたが、これに限定されるものでなく、例えば素板の適当な箇所に複数のプレス加工を施して一又は二以上の端子金具を形成したり、或いは鋳造成形により通孔や凹溝が形成された金具に対して、必要に応じてプレス加工(打抜加工)を施して端子金具を形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一実施形態としての端子金具の平面図。
【図2】図1に示された端子金具の図1中の下端面の拡大説明図。
【図3】図1に示された端子金具が取り付けられた圧着端子付き電線の平面図。
【図4】図3におけるIV−IV断面の拡大説明図。
【図5】図1に示された端子金具の順送プレスによる製造工程を説明するための素板の平面説明図。
【図6】図1に示された端子金具の別の製造方法の一例を説明するための素板の平面説明図。
【図7】図1に示された端子金具の更に別の製造方法の一例を説明するための素板の平面説明図。
【図8】本発明の別の一実施形態としての端子金具が取り付けられた圧着端子付き電線の平面図。
【図9】本発明の更に別の一実施形態としての端子金具が取り付けられた圧着端子付き電線の平面図。
【図10】本発明の更に別の一実施形態としての端子金具が取り付けられた圧着端子付き電線の平面図。
【図11】図10におけるXI−XI断面の拡大図。
【図12】本発明の更に別の一実施形態としての端子金具の平面図。
【図13】図12におけるXIII−XIII断面図。
【図14】本発明の更に別の一実施形態としての端子金具を示す平面説明図。
【図15】本発明の更に別の一実施形態としての端子金具を示す平面説明図。
【図16】本発明の更に別の一実施形態としての端子金具が取り付けられた圧着端子付き電線の横断面図。
【図17】本発明の更に別の一実施形態としての端子金具が取り付けられた圧着端子付き電線の横断面図。
【符号の説明】
【0073】
10:端子金具、12:電線、16:圧着部、26:凹溝
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の外周面に圧着される圧着端子であって、
前記電線の外周面に圧着される圧着部の内面には、該電線の周方向で半周以上に亘る領域において該電線と同じ方向に延びる複数条の導通用凹凸が形成されていることを特徴とする圧着端子。
【請求項2】
前記圧着部の内面には、前記導通用凹凸が形成された領域とは別の領域において、前記電線の周方向に延びる係止用凹凸が形成されて、該電線の外周面に対して該係止用凹凸が当接するようになっている請求項1に記載の圧着端子。
【請求項3】
前記電線の外周面への当接部分において、該電線の周方向に延びる係止用凹凸と前記導通用凹凸とが該電線の長さ方向で交互に少なくとも各一つ形成されている請求項1又は2に記載の圧着端子。
【請求項4】
前記電線が絶縁被覆で外周面が覆われており、該電線の長さ方向で部分的に該絶縁被覆から露出された該電線の露出部分に対して前記圧着部が圧着されるようになっていると共に、該電線を覆う絶縁被覆の外周面に対して圧着される絶縁被覆用固定部が設けられており、該絶縁被覆用固定部の内周面には該電線の周方向に延びる固定用凹凸が形成されている請求項1乃至3の何れか一項に記載の圧着端子。
【請求項5】
前記圧着部が、底壁部分と該底壁部分の幅方向両側から立ち上がる一対のかしめ部分を含んで構成されており、該圧着部の少なくとも該底壁部分に前記導通用凹凸が形成されている請求項1乃至4の何れか一項に記載の圧着端子。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の圧着端子が固定された圧着端子付き電線であって、
前記圧着端子の前記圧着部が前記電線に対して圧着されて、前記導通用凹凸が該電線の外周面に対して半周以上に亘って当接されていることを特徴とする圧着端子付き電線。
【請求項7】
前記電線が、複数の細線を並列的に束ねた多心電線とされていると共に、前記導通用凹凸の凹部が該多心電線の該細線よりも大きな曲率半径を有する弧状の湾曲凹形断面とされている請求項6に記載の圧着端子付き電線。
【請求項8】
素板に対して打抜加工を施すことにより請求項1乃至5の何れか一項に記載の圧着端子を製造するに際して、
前記素板に対してプレス加工を施すことにより該素板の表面に前記導通用凹凸を形成した後、該素板に対して打抜加工を施すことにより前記圧着部を形成することを特徴とする圧着端子の製造方法。
【請求項9】
前記素板として長板形状の順送用素板を採用し、該順送用素板を複数のステージに順送して複数段階のプレス加工を行うと共に、前記導通用凹凸を形成するプレス加工のステージの後、別のステージにおいて該導通用凹凸が形成された部分に対して打抜加工を施す請求項8に記載の圧着端子の製造方法。
【請求項1】
電線の外周面に圧着される圧着端子であって、
前記電線の外周面に圧着される圧着部の内面には、該電線の周方向で半周以上に亘る領域において該電線と同じ方向に延びる複数条の導通用凹凸が形成されていることを特徴とする圧着端子。
【請求項2】
前記圧着部の内面には、前記導通用凹凸が形成された領域とは別の領域において、前記電線の周方向に延びる係止用凹凸が形成されて、該電線の外周面に対して該係止用凹凸が当接するようになっている請求項1に記載の圧着端子。
【請求項3】
前記電線の外周面への当接部分において、該電線の周方向に延びる係止用凹凸と前記導通用凹凸とが該電線の長さ方向で交互に少なくとも各一つ形成されている請求項1又は2に記載の圧着端子。
【請求項4】
前記電線が絶縁被覆で外周面が覆われており、該電線の長さ方向で部分的に該絶縁被覆から露出された該電線の露出部分に対して前記圧着部が圧着されるようになっていると共に、該電線を覆う絶縁被覆の外周面に対して圧着される絶縁被覆用固定部が設けられており、該絶縁被覆用固定部の内周面には該電線の周方向に延びる固定用凹凸が形成されている請求項1乃至3の何れか一項に記載の圧着端子。
【請求項5】
前記圧着部が、底壁部分と該底壁部分の幅方向両側から立ち上がる一対のかしめ部分を含んで構成されており、該圧着部の少なくとも該底壁部分に前記導通用凹凸が形成されている請求項1乃至4の何れか一項に記載の圧着端子。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の圧着端子が固定された圧着端子付き電線であって、
前記圧着端子の前記圧着部が前記電線に対して圧着されて、前記導通用凹凸が該電線の外周面に対して半周以上に亘って当接されていることを特徴とする圧着端子付き電線。
【請求項7】
前記電線が、複数の細線を並列的に束ねた多心電線とされていると共に、前記導通用凹凸の凹部が該多心電線の該細線よりも大きな曲率半径を有する弧状の湾曲凹形断面とされている請求項6に記載の圧着端子付き電線。
【請求項8】
素板に対して打抜加工を施すことにより請求項1乃至5の何れか一項に記載の圧着端子を製造するに際して、
前記素板に対してプレス加工を施すことにより該素板の表面に前記導通用凹凸を形成した後、該素板に対して打抜加工を施すことにより前記圧着部を形成することを特徴とする圧着端子の製造方法。
【請求項9】
前記素板として長板形状の順送用素板を採用し、該順送用素板を複数のステージに順送して複数段階のプレス加工を行うと共に、前記導通用凹凸を形成するプレス加工のステージの後、別のステージにおいて該導通用凹凸が形成された部分に対して打抜加工を施す請求項8に記載の圧着端子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−305571(P2008−305571A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−149236(P2007−149236)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(507184720)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(507184720)
【Fターム(参考)】
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