説明

圧着端子及び端子付電線の製造方法

【課題】電線の端末の導体に対する導体バレルの圧着状態の良否、特にその圧着度合いの良否を容易に判定することが可能な圧着端子及びこれを備えた端子付電線の製造方法を提供する。
【解決手段】圧着端子10は、電線20の導体22に圧着される一対の導体バレル16を有する。導体バレル16の表面には、その圧着度合いの良否を判定するための圧着状態識別標識が設けられる。この標識は、導体バレル16の圧着度合いに応じて端子表側に露出する部分の内側端の位置が端子軸方向に変化する形状を有するマーク17でもよいし、端子軸方向と直交する方向に互いに間隔をおいて配列される複数のマークを含むものでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に配索される電線の端末に圧着される圧着端子と、当該圧着端子を有する端子付電線の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁電線の端末に端子を装着するための手段として、圧着技術が多用されている。この圧着は、予め前記端子に形成されている導体バレルを金型によって前記絶縁電線の導体の端末にかしめることにより、行われる(例えば特許文献1)。
【0003】
図11及び図12は、従来の典型的な圧着端子を備えた端子付電線の構造を示したものである。この端子付電線は、電線20と、この電線20の端末に圧着される圧着端子10とを有する。
【0004】
前記電線20は、導体22と、この導体22を径方向外側から覆う絶縁被覆24とからなり、その端末には、前記絶縁被覆24を部分的に除去して前記導体22を露出させる処理が施されている。
【0005】
前記圧着端子10は、電気接続部12と電線圧着部とを前後に有する。図に示される電気接続部12は雌型であって図略の雄型端子が嵌入可能な箱型に成形されている。前記電線圧着部は、前記電気接続部12から軸方向に沿って後方に延びる基部である底壁14と、この底壁14から前記軸方向と直交する方向に延びる左右一対の導体バレル16と、これらの導体バレル16と略並行に延びる左右一対のインシュレーションバレル18とを含む。前記両導体バレル16及びインシュレーションバレル18は、加工前の状態では軸方向から見て略U字状をなすものである。
【0006】
前記圧着端子10の圧着に際しては、その底壁14上に前記電線20の端末がセットされ、その状態で金型を用いたプレス成型により前記各導体バレル16及び前記各インシュレーションバレル18が内向きに曲げ加工される。これにより、両導体バレル16は前記電線20の端末において露出した導体22を両側から抱き込むような形状で当該導体22に圧着され、この圧着により当該導体22と電気的に導通可能な状態となる。同様に、両インシュレーションバレル18は、前記導体22に隣接する絶縁被覆24を両側から抱き込むような形状で当該絶縁被覆24に圧着される。
【特許文献1】特開2001−357901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記端子付電線において、良好な電気接続を保証するためには、その検査段階において、前記導体22に対する両導体バレル16の圧着状態の良否を判定することが求められる。しかし、当該圧着状態、特に前記導体22に対する導体バレル16の圧着度合い(食い込み深さ)を外観から判断することは容易でない。しかも、その困難性は、電線20の細線化及び圧着端子10の小型化が進むにつれてより顕著となる。
【0008】
なお、前記特許文献1には、導体バレルの裏面に形成されるセレーション(すなわち端子軸方向と直交する方向の溝)に対応して当該導体バレルの表側にも識別用の溝が形成され、当該溝同士の間に目盛が配されたものが示されているが、これらの溝及び目盛は前記導体バレルの圧着度合いを示す指標とはならない。すなわち、当該溝等は、電線の導体に対する前記セレーションの相対位置を確認することを目的として、当該セレーションと同様に端子軸方向と直交する方向(すなわち導体バレルの長手方向)に延びる形状に形成されたものであるから、当該溝やマークを見ても当該導体バレルの前記導体に対する圧着度合い(食い込み深さ)を判定することはできない。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑み、電線の端末の導体に対する導体バレルの圧着状態の良否、特にその圧着度合いの良否を容易に判定することが可能な圧着端子及びこれを備えた端子付電線の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、端末において導体が露出する電線の当該端末に圧着される導体圧着部とを有する圧着端子であって、前記導体圧着部は、当該圧着端子の軸方向に延びる基部と、この基部から前記軸方向と直交する方向の両側に延び、前記端末の導体を抱き込むように当該導体に圧着されるべく曲げ加工される一対の導体バレルとを有し、前記各導体バレルの表面には、当該導体バレルの圧着度合いに応じて端子表側に露出する部分の内側端の位置が端子軸方向に変化する形状を有する圧着状態識別指標が設けられているものである。
【0011】
なお、前記導体バレルについて「前記軸方向と直交する方向の両側に延び」るとは、当該導体バレルの具体的な形状及び長手方向を厳密に限定する趣旨ではなく、当該導体バレルの長手方向が当該軸方向と直交する方向に対してある程度傾斜しているものや、当該導体バレルの軸方向の寸法がこれと直交する方向の寸法より大きいものも含む趣旨である。
【0012】
また、圧着状態識別標識について「端子表側に露出する部分の内側端」とは、当該露出する部分のうち最も内寄りの位置、すなわち他方の導体バレルに最も近接する位置を意味するものである。
【0013】
この圧着端子では、その導体バレルに圧着状態識別標識が設けられ、かつこの圧着状態識別標識のうち前記導体バレルの圧着後に露出する部分の内側端の位置が当該導体バレルの圧着度合いに応じて端子軸方向に変化するので、その内側端の位置に基いて、両導体バレルの圧着状態、特にその圧着度合いの良否を容易に判定することが可能である。
【0014】
具体的に、前記各導体バレルに設けられる圧着状態識別指標としては、端子軸方向に対してこれと直交する向きに傾斜する線状マークを含むものが、好適である。かかる線状マークは、簡単な形状でありながら、前記圧着後に露出する部分の内側端の位置が導体バレルの圧着度合いによって端子軸方向に変化するため、当該圧着度合いを示す指標として機能することができる。
【0015】
前記各導体バレルに設けられる圧着状態識別指標は、当該圧着端子の中心軸を挟んで互いに対称となる形状を有することが、より好ましい。かかる形状は、両圧着状態識別指標同士の端子軸方向の位置のずれに基いて両導体バレルの圧着状態のバランスの良否を容易に判定することを可能にする。
【0016】
前記各導体バレルに設けられる圧着状態識別指標は、例えば、当該導体バレルの表面に凹設された溝からなるものが、好適である。
【0017】
また本発明は、端末において導体が露出する電線と、その端末に圧着される圧着端子とを有する端子付電線を製造するための方法であって、前記の圧着端子を成形する工程と、成形した前記圧着端子の導体バレルを曲げ加工して前記電線の端末の導体に圧着する圧着工程と、前記圧着後に露出する前記導体バレル上の圧着状態識別標識の内側端の位置に基いて端子付電線の圧着状態の良否を判定する工程とを含むものである。
【0018】
また本発明に係る圧着端子は、前記各導体バレルの表面に、前記形状の圧着状態識別指標に代え、もしくはこれに加え、端子軸方向と直交する方向に互いに間隔をおいて配列される複数のマークを含む圧着状態識別指標が設けられたものでもよい。
【0019】
この圧着端子によれば、前記導体バレルの圧着度合いによって、その圧着後に露出する前記導体バレル上のマークの数及びその位置が変わるので、当該数や位置に基づき、その圧着状態の良否、特に圧着度合いの良否を容易に判定することができる。
【0020】
具体的に、前記各マークは、前記端子軸方向と平行な方向に延びる線状であるものが、好適である。かかる形状のマークは、端子軸方向と平行な方向に沿って延びるので、当該方向と直交する方向の位置の確認が容易であるとともに、端子軸方向に対する導体バレルの傾き具合(すなわち端子軸方向についての圧着度合いのバラツキ)も容易に確認することができる。
【0021】
この圧着状態識別指標も、当該圧着端子の中心軸を挟んで互いに対称となる形状を有することが、より好ましく、また、例えば当該導体バレルの表面に凹設された溝により構成されることが可能である。
【0022】
また本発明は、端末において導体が露出する電線と、その端末に圧着される圧着端子とを有する端子付電線を製造するための方法であって、前記の複数のマークを含む圧着状態識別標識が設けられた圧着端子を成形する工程と、成形した前記圧着端子の導体バレルを曲げ加工して前記電線の端末の導体に対して外側から圧着する圧着工程と、前記圧着後に露出する前記導体バレル上のマークの数及びその位置に基いて端子付電線の圧着状態の良否を判定する工程とを含むものである。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、導体バレルの圧着後にその表面上で露出する圧着状態識別標識の内側端の位置や、同標識に含まれる複数のマークの端子軸方向と直交する方向についての位置や個数に基いて、当該導体バレルの圧着状態、特にその圧着度合いを容易に判定することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の好ましい実施の形態を図1〜図10を参照しながら説明する。なお、以下に示す各実施の形態に係る圧着端子10の基本構成、および当該圧着端子10が圧着される電線の構成は、いずれも前記図11および図12に示されたものと同等であるため、これらの図面と共通の参照符を付してその説明を簡略し、各実施の形態に係る圧着端子10の特徴部分を主に説明する。
【0025】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る圧着端子の原板のうち電線圧着部に相当する部分を示したものである。この原板は、他の圧着端子の(同一形状の)原板及びこれらの原板同士をつなぐキャリア11とともに、1枚の金属板から打ち抜かれる。
【0026】
各原板は、図11及び図12に示される電気接触部(相手方端子と嵌合する部分;雄型のものも含む。)を構成する部分と、図示の電線圧着部を構成する部分とを有し、後者の部分は、端子軸方向(図1では左右方向)に延びる基部である底壁14と、この底壁14から前記端子軸方向と直交する方向の両側に延びる一対の導体バレル16と、当該導体バレル16の後方で同じく前記端子軸方向と直交する方向の両側に延びる一対のインシュレーションバレル18とを有する。そして、前者の部分が曲げ加工されることにより前記電気接触部を成形し、かつ、後者の部分が曲げ加工されることにより各導体バレル16及び各インシュレーションバレル18を成形した後、当該インシュレーションバレル18の直ぐ後方の部分が前記キャリア11から切離されることにより、圧着端子が製造される。
【0027】
この圧着端子の特徴として、前記各導体バレル16の表側面にそれぞれ圧着状態識別標識が設けられる。各圧着状態識別標識は、前記導体バレル16が前記図11及び図12に示した電線20の端末の導体22に圧着された後にその圧着状態(特に圧着度合い)の良否を判定するためのものである。
【0028】
前記各圧着状態識別標識は、この実施の形態では、線状マーク17により構成される。各線状マーク17は、この実施の形態では、圧着端子の軸方向(図1では左右方向)に対し、当該圧着端子の先端側に向かうに従って当該軸方向と直交する方向の外側(すなわち導体バレル16の先端側)に向かうように傾斜する直線状をなす。
【0029】
これらの線状マーク17は、例えば、図2に示すように導体バレル16の表面に凹設された溝によって構成されることが可能であり、この溝は、例えば前記原板の打ち抜きと同時に前記導体バレル16に効率よく形成されることが可能である。しかし、前記線状マーク17は溝により構成されたものに限られず、例えば導体バレル16の表面に印刷されたものでもよい。このことは、後述の他の実施の形態に係る圧着状態識別標識についても同様である。また、当該線状マーク17は逆向きに傾斜するもの、すなわち、端子先端側に向かうに従って内側に向かうように傾斜するものであってもよい。
【0030】
前記圧着端子によれば、その成形後、次の圧着工程及び検査工程を経て高品質の端子付電線を提供することが可能である。
【0031】
1)圧着工程
この工程では、前記圧着端子における底壁14の上に前記電線20の端末がセットされ、その状態で導体バレル16及び前記インシュレーションバレル18が従来の圧着端子と同様に例えば金型台及び金型を用いてかしめられる(すなわち曲げ加工される)ことにより、両バレル16,18が前記電線20の端末における導体22及びその直ぐ後ろ側の絶縁被覆24にそれぞれ圧着される。より具体的には、前記各バレル16,18がそれぞれ前記導体22及び絶縁被覆24を抱き込むように曲げ加工される。
【0032】
前記導体22の材質は特に限定されない。通常用いられる銅や銅合金の他、アルミニウムやアルミニウム合金であってもよい。特に後者の場合、表面に形成された酸化皮膜を破るべく高圧縮の圧着が要求されるため、本発明の適用は特に有効となる。この点は後述の他の実施の形態についても同様である。
【0033】
2)検査工程
この検査工程では、前記圧着端子と前記導体22との電気的接続を保証するために前記導体バレル16の圧着状態の良否が判定される。この良否は、前記圧着状態識別標識を構成する各線状マーク17の形状、特に、圧着後の両導体バレル16の内側端の位置における端子軸方向についての当該線状マーク17の位置を確認することによって、容易に判定することが可能である。
【0034】
図3は、前記導体バレル16の圧着状態が良好であるときの断面を示したものであり、図4はそのときの導体バレル16の外観を示したものである。図3に示すように、両導体バレル16が導体22(図3では複数本の素線からなる。)に十分に食い込んでいる状態では、図4に示すように、両導体バレル16の内側端における線状マーク17の位置はインシュレーションバレル18側に十分に後退する。
【0035】
これに対し、図5(a)〜(d)の断面図に示すように少なくとも一方の導体バレル16の圧着状態が不良であるときには、その不良である側の導体バレル16の内側端における線状マーク17の位置が前記図4に示す位置から軸方向にずれるため、この位置に基いて当該導体バレル16の圧着度合いの良否を容易に判定することが可能である。
【0036】
具体的に、図5(a)に示すように両導体バレル16の圧着度合いが過度に低い場合や、同図(b)に示すように一方の導体バレル16の圧着度合いのみが過度に低い場合には、その導体バレル16の内側端における線状マーク17の位置が図4に示す位置よりも前側に位置する。逆に、同図(c)に示すように両導体バレル16が過度に食い込んで底壁14に突き当たっている場合や、同図(d)に示すように一方の導体バレル16が過度に巻き込まれて当該導体バレル16自身の基部に突き当たっている場合には、その圧着度合いが過度である導体バレル16の内側端における線状マーク17の位置が図4に示す位置よりもさらにインシュレーションバレル18側に後退する。
【0037】
特に、図1に示される線状マーク17のように、端子中心軸を挟んで互いに左右対象となる形状をもつものは、両導体バレル16の圧着度合いのバランスの良否を顕著に表示することができる利点がある。例えば、図5(b)に示すように両導体バレル16の圧着度合いが不均等である場合、図6に示すように、両導体バレル16の内側端の位置、換言すれば当該導体バレル16同士が最も近接もしくは突き当たる位置での線状マーク17の位置が軸方向に大きくずれるので、このずれの度合いから当該圧着度合いのバランスの良否を容易に判定することができる。
【0038】
また、前記線状マーク17の副次的効果として、両導体バレル16の間からの導体22のはみ出しの確認を容易にすることもできる。例えば図5(a)に示すように両導体バレル16の食い込みが浅くて当該導体バレル16同士の間から導体22を構成する素線がはみ出ている場合において、当該素線の表面色と導体バレル16の表面色が近似している(例えば前記素線がアルミニウムからなり、導体バレル16の表面にスズめっきが施されている)と、前記素線のはみ出しの確認が容易でなくなるが、当該導体バレル16上に前記線状マーク17が設けられていれば、当該導体バレル16と前記素線との識別が容易化される。
【0039】
従って、前記の圧着端子によれば、最終的に高品質の端子付電線のみを市場に提供することが可能である。
【0040】
さらに、第2の実施の形態として図7に示すように、前記の線状マーク17に加え、この線状マーク17の近傍に互いに端子軸方向と平行な方向に間欠的に並ぶ目盛19a,19b,19cが設けられるものでは、その目盛19a,19b,19cによって前記導体バレル16の内側端における線状マーク17の位置をより容易に確認することが可能になる。
【0041】
前記線状マーク17は、直線状に限られず、第3の実施の形態及び第4の実施の形態としてそれぞれ図8及び図9に示すように、外向きあるいは内向きに湾曲する曲線であってもよいし、直線と曲線の組合せであってもよい。図8に示す線状マーク17は、導体バレル16の先端から離れるに従って端子軸方向に対する傾きが大きくなる形状を有するので、圧着度合いの良否の判定基準が比較的高い領域に設定されている場合(すなわち比較的高圧縮が要求されている場合)に特に好適である。逆に、図9に示す線状マーク17は、導体バレル16の先端に近づくに従って端子軸方向に対する傾きが大きくなる形状を有するので、圧着度合いの良否の判定基準が比較的低い領域に設定されている場合(すなわち比較的低圧縮が要求されている場合)に特に好適である。以上のことは、前記線状マークが複数の直線が組み合わされてなる折れ線状をなしていて全体として湾曲している場合についても同様である。
【0042】
本発明の第5の実施の形態を図10に示す。この実施の形態においても、各導体バレル16の表側面に圧着状態識別標識が設けられるが、これらの圧着状態識別標識は、複数本(図例では3本)の線状マーク17a,17b,17cにより構成される。これらの線状マーク17a〜17cは、それぞれ端子軸方向と平行な方向に沿って延び、かつ、導体バレル16の基端側(底壁14に近い側)から順に端子軸方向と直交する方向に間隔をおいて配列されている。
【0043】
この実施の形態に係る圧着端子では、その導体バレル16の圧着度合いに応じて、その圧着後の導体バレル16の表面上に露出する線状マークの本数及びその位置(端子軸方向と直交する方向の位置)が変わるため、これを確認することによって、圧着状態の良否を容易に判定することが可能である。
【0044】
例えば、前記図3に示すように圧着状態が良好であるときに導体バレル16の内側端の近傍で中間の線状マーク17bが露出するように各線状マーク17a〜17cの位置が設定されたとすると、その圧着度合いが過度に高い(導体22への食い込みが深い)場合には当該線状マーク17bが隠れて線状マーク17aのみが露出し、かつその位置が内寄りにずれる。逆に、前記圧着度合いが過度に低い(前記食い込みが浅い)場合には、前記線状マーク17bの位置が外寄りにずれて線状マーク17cも露出する状態になる。従って、露出する線状マークの本数及びその位置に基いて、圧着度合いの良否を判定することが可能である。
【0045】
さらに、この実施の形態に係る線状マーク17a,17b,17cのように、前記端子軸方向と平行な方向に延びる線状であるものでは、当該方向と直交する方向の位置の確認が容易であるとともに、端子軸方向に対する導体バレルの傾き具合(すなわち端子軸方向についての圧着度合いのバラツキ)も容易に確認することができる。
【0046】
さらに、当該線状マーク17a,17b,17cのように、その配設位置に応じて互いに長さの異なるものが設けられていれば、その長さから線状マーク17a,17b,17c同士の識別も容易に行うことが可能となる。
【0047】
なお、前記各実施の形態について、圧着状態識別標識の露出部分の位置や形状の確認及びこれに基く圧着状態の良否の判定は、作業者の肉眼により行われてもよいし、当該露出部分を撮像する装置及びそのデータを画像処理する装置により自動的に行われてもよい。
【0048】
また本発明は、前後に並ぶ複数の位置に導体バレル対が設けられた圧着端子にも適用可能であり、その場合、一部のバレル対にのみ前記圧着状態識別標識が設けられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る圧着端子の展開図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】前記圧着端子の圧着が良好である状態を示す断面図である。
【図4】前記圧着端子の圧着状態が図3に示される状態にあるときの当該圧着端子の外観を示す斜視図である。
【図5】(a)〜(d)はそれぞれ前記圧着端子の圧着が不良である状態を示す断面図である。
【図6】前記圧着端子の圧着状態が図5(b)に示される状態にあるときの当該圧着端子の外観を示す斜視図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る圧着端子の展開図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係る圧着端子の展開図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態に係る圧着端子の展開図である。
【図10】本発明の第5の実施の形態に係る圧着端子の展開図である。
【図11】一般的な圧着端子の形態を示す側面図である。
【図12】図11に示される圧着端子の圧着状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
10 圧着端子
12 電気接続部
14 底壁(基部)
16 導体バレル
17 線状マーク
17a 線状マーク
17b 線状マーク
17c 線状マーク
20 電線
22 導体
24 絶縁被覆

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末において導体が露出する電線の当該端末の導体に圧着される導体圧着部を有する圧着端子であって、
前記導体圧着部は、当該圧着端子の軸方向に延びる基部と、この基部から前記軸方向と直交する方向の両側に延び、前記端末の導体を抱き込むように当該導体に圧着されるべく曲げ加工される一対の導体バレルとを有し、
前記各導体バレルの表面には、当該導体バレルの圧着度合いに応じて端子表側に露出する部分の内側端の位置が端子軸方向に変化する形状を有する圧着状態識別指標が設けられていることを特徴とする圧着端子。
【請求項2】
請求項1記載の圧着端子において、
前記各導体バレルに設けられる圧着状態識別指標は、端子軸方向に対してこれと直交する向きに傾斜する線状マークを含むことを特徴とする圧着端子。
【請求項3】
請求項1または2記載の圧着端子において、
前記各導体バレルに設けられる圧着状態識別指標は、当該圧着端子の中心軸を挟んで互いに対称となる形状を有することを特徴とする圧着端子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の圧着端子において、
前記各導体バレルに設けられる圧着状態識別指標は、当該導体バレルの表面に凹設された溝からなることを特徴とする圧着端子。
【請求項5】
端末において導体が露出する電線と、その端末に圧着される圧着端子とを有する端子付電線を製造するための方法であって、
請求項1〜4のいずれかに記載の圧着端子を成形する工程と、
成形した前記圧着端子の導体バレルを曲げ加工して前記電線の端末の導体に圧着する圧着工程と、
前記圧着後に露出する前記導体バレル上の圧着状態識別標識の内側端の位置に基いてその圧着状態の良否を判定する工程とを含むことを特徴とする端子付電線の製造方法。
【請求項6】
端末において導体が露出する電線の当該端末に圧着される導体圧着部とを有する圧着端子であって、
前記導体圧着部は、当該圧着端子の軸方向に延びる基部と、この基部から前記軸方向と直交する方向の両側に延び、前記端末の導体を抱き込むように当該導体に圧着されるべく曲げ加工される一対の導体バレルとを有し、
前記各導体バレルの表面には、端子軸方向と直交する方向に互いに間隔をおいて配列される複数のマークを含む圧着状態識別指標が設けられていることを特徴とする圧着端子。
【請求項7】
請求項6記載の圧着端子において、
前記各マークは、前記端子軸方向と平行な方向に延びる線状であることを特徴とする圧着端子。
【請求項8】
請求項6または7記載の圧着端子において、
前記各導体バレルに設けられる圧着状態識別指標は、当該圧着端子の中心軸を挟んで互いに対称となる形状を有することを特徴とする圧着端子。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれかに記載の圧着端子において、
前記各導体バレルに設けられる圧着状態識別指標は、当該導体バレルの表面に凹設された溝からなることを特徴とする圧着端子。
【請求項10】
端末において導体が露出する電線と、その端末に圧着される圧着端子とを有する端子付電線を製造するための方法であって、
請求項6〜9のいずれかに記載の圧着端子を成形する工程と、
成形した前記圧着端子の導体バレルを曲げ加工して前記電線の端末の導体に圧着する圧着工程と、
前記圧着後に露出する前記導体バレル上のマークの数及びその位置に基いてその圧着状態の良否を判定する工程とを含むことを特徴とする端子付電線の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−272141(P2009−272141A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121458(P2008−121458)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】