説明

圧縮押出成形装置

【課題】固形廃棄物等の減容・再資源化等に用いる二軸押出方式の圧縮押出成形装置として、押出ノズル部の摩耗を生じにくく、ノズルからの材料の押し出しが円滑で詰まりにくく、処理槽内の昇温が不充分なスタートアップ時の負荷も少なく、保全コストが低減されると共に長寿命なものを提供する。
【解決手段】互いの螺旋歯21a,21bを噛み合わせて回転する一対の押出スクリュー軸2A,2Bが配置した処理槽1内に、固形の被処理材料を投入して押出スクリュー軸2A,2Bの回転によって圧縮混練し、圧縮混練物を処理槽1前端のノズル孔30より連続的に押し出すように構成された圧縮押出成形装置において、ノズル孔30の内周面に、表面がバフ仕上げされたクロムメッキ層5を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木屑、古紙、廃プラスチック、建築系廃材、都市ゴミ等の固形廃棄物の減容・再資源化処理に好適な圧縮押出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、危機に瀕する地球環境の保全・回復のために、人間社会から大量に発生する各種廃棄物について、環境負荷をできるだけ少なくし、更に再資源化してリサイクルすることが強く求められている。従来、このような要望に対処する手段の一つとして、木屑や廃プラスチック等を含む固形廃棄物について、予めチップ状等に破砕したものを二軸押出方式の圧縮押出成形装置の処理槽内に投入し、相互に噛み合うスクリュー軸の回転によって減容圧縮すると共に、該処理槽前端の押出ノズルより連続的に押し出して棒状等に固形化した押出成形物とする方法が知られている(特許文献1,2)。なお、通常では廃棄物に含まれる熱可塑性プラスチックの如き熱融性成分は圧縮混練に伴う摩擦熱で溶融して成形物のバインダーとして機能するが、その溶融のために積極的に加熱する場合もある(特許文献3)。
【0003】
そして、このような圧縮押出成形装置によって得られる押出成形物は、高密度で元の固形廃棄物に比較して格段に減容しているため、そのまま廃棄する場合でも所要スペースが非常に少なくて済む上、廃棄物が木材や紙、プラスチックのような可燃物を主体とする場合は取扱い性のよい固形燃料として非常に有用である。
【特許文献1】特開平09−254154号公報
【特許文献2】特開2001−293461号公報
【特許文献3】特開2000−273460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、このような圧縮押出成形装置の押出ノズル部は、一般的に焼入れ鋼が使用されているが、被処理材料が雑多な成分を含むことに加え、砂や金属粉末、金属細片等が混入していることも多々あるために、早期に摩耗して交換を余儀なくされると共に、ノズルの詰まりも生じ易く、もって保全コストが嵩む上、処理槽内の昇温が不充分なスタートアップ時にはノズルの押出性が悪いことから、駆動モーターや減速機等の動力伝達部に大きな負荷がかかり、装置寿命の短縮に繋がるという問題があった。
【0005】
本発明は、上述の情況に鑑み、固形廃棄物等の減容・再資源化等に用いる二軸押出方式の圧縮押出成形装置として、押出ノズル部の摩耗を生じにくい上、ノズルからの材料の押し出しが円滑で詰まりにくく、処理槽内の昇温が不充分なスタートアップ時の負荷も少なく、保全コストが低減されると共に長寿命なものを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための手段を図面の参照符号を付して示せば、請求項1の発明は、互いの螺旋歯21a,21bを噛み合わせて回転する一対の押出スクリュー軸2A,2Bが配置した処理槽1内に、固形の被処理材料を投入して前記押出スクリュー軸2A,2Bの回転によって圧縮混練し、この圧縮混練物を処理槽1前端の押出ノズル(ノズル孔30)より連続的に押し出すように構成された圧縮押出成形装置において、前記押出ノズルの内周面にクロムメッキ層5を有すると共に、該クロムメッキ層5の表面がバフ仕上げされてなることを特徴としている。
【0007】
また、請求項2の発明は、上記請求項1の圧縮押出成形装置において、処理槽1の前端板11に内外に透通するノズル取付穴11a,11bが形成され、前記押出ノズルが各々内周面に前記クロムメッキ層5を設けた複数本のノズル孔30を備えるノズルブロック3A,3Bからなり、このノズルブロック3A,3Bが前記ノズル取付開口部11a,11bに外側から嵌合して前記処理槽1の前端板11に外側から着脱自在にねじ止めされてなるものとしている。
【発明の効果】
【0008】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。まず、請求項1の発明に係る圧縮押出成形装置では、押出ノズル(ノズル孔30)の内周面が硬いクロムメッキ層5によって優れた耐摩耗性を具備することから、該内周面が摩耗しにくく、それだけ押出ノズル部を長期にわたって使用できる上、該クロムメッキ層5の表面がバフ仕上げされて平滑で滑り性に優れるため、ノズルからの材料の押し出しが円滑で詰まりにくく、処理槽1内の昇温が不充分なスタートアップ時の負荷も少なく、もって保全コストが低減されると共に、装置寿命も長くなる。
【0009】
請求項2の発明によれば、押出ノズルが複数本のノズル孔30を設けたノズルブロック3A,3Bより構成され、該ノズルブロック3A,3Bを処理槽1の前端板11のノズル取付開口部11a,11bに外側から嵌合してねじ止めする構造であるから、該ノズルブロック3A,3Bの摩耗や傷損による新品との交換作業を容易に行えると共に、被処理材料の種類や押出成形物の用途に応じてノズル孔30の数や口径、形状等が異なるノズルブロックと着脱交換することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る圧縮押出成形装置の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。図1は第1実施形態の圧縮押出成形装置全体の斜視図、図2は同成形装置の押出出口側の斜視図、図3は同成形装置の要部の横断平面図、図4は同成形装置に用いるノズルブロックの縦断側面図、図5は第2実施形態の圧縮押出成形装置における処理槽の押出出口側の正面図、図6は同成形装置の押出ノズル部の断面図、図7は同成形装置のノズル孔を形成する口金の縦断側面図である。
【0011】
図1に示すように、第1実施形態の圧縮押出成形装置M1は、架台10の前部側に上方に開く材料投入口1aを有する矩形箱型の処理槽1とギアボックス6とが設置されると共に、同後部側に減速機7及び駆動モーター8が設置されており、処理槽1内には前後方向に沿う一対のスクリュー軸2A,2Bが平行に水平配置している。また、図2でも示すように、該処理槽1の厚板状の前端板11の前面には、同一寸法形状の正面視湾曲状に形成された4個のノズルブロック3Aが菱形の各辺に各々長手方向を沿わせる配置で取り付けられると共に、その菱形の縦対角線方向に沿う配置で正面視長形のノズルブロック3Bが取り付けられている。なお、両スクリュー軸2A,2Bの各軸心は、ノズルブロック3Bと2個のノズルブロック3Aとで構成される左右の各三角形の中央部に臨んでいる。
【0012】
ノズルブロック3A,3Bは、前後方向に透通する複数本(図ではノズルブロック3Aが13本、同3Bが10本)のノズル孔30が穿設されたブロック本体31の全周に、フランジ部32を一体形成した構造であり、処理槽1の前端板11に設けた前後方向に透通するノズル取付開口部11a,11bに、ブロック本体31のフランジ部32よりも後部31a側を嵌合し、該フランジ部32に設けた複数個のボルト挿通孔32aを通して、外側から各々取付ボルト33をワッシャー34を介して前端板11の各ねじ孔11cに螺合することにより、当該前端板11に着脱自在にねじ止めされている。なお、ブロック本体31のフランジ部32よりも後部31a側は、ノズル取付開口部11a,11bの前後長さよりも短く設定され、これによってノズル取付開口部11a,11bの内端側に材料溜まり4が形成されている。また、ブロック本体31のフランジ部32よりも前部31b側は、螺入緊締した取付ボルト4の頭部よりも少し前方へ突出している。
【0013】
しかして、図4に示すように、ノズルブロック3A,3Bの各ノズル孔30は、その内周面にクロムメッキ層5が形成され、このクロムメッキ層5の表面がバフ仕上げされたものとなっている。そして、このクロムメッキ層5の厚さは20〜100μm程度に設定されている。
【0014】
なお、図3に示すように、一方のスクリュー軸2Aの支軸20aは駆動モーター8(図1参照)によって回転駆動する駆動軸9に連結し、この一方の支軸20aに対して他方のスクリュー軸2Bの支軸20bがギヤボックス6内においてギヤ22a,22bで噛合しており、これによって両スクリュー軸2A,2Bが同期して互いの対向側で下動する形で逆方向に回転すると共に、両スクリュー軸2A,2Bの3条型の螺旋歯21a,21bが相互に噛み合うように構成されている。なお、両支軸20a,20bは軸受23〜25を介してギヤボックス6に回転自在に保持されている。
【0015】
上記構成の圧縮押出成形装置M1により、固形廃棄物等の被処理材料の減容圧縮処理を行う場合、駆動モーター8の作動によって両スクリュー軸2A,2Bを回転駆動させながら、処理槽1内に該被処理材料を投入すればよい。投入された被処理材料は、スクリュー軸2A,2Bの螺旋歯21a,21b間で細かく破砕されつつ圧縮混練され、次第に減容しながら処理槽1内の前端側へ送られてゆき、該前端側で処理槽1の前端板1の内面とスクリュー軸2A,2Bの前端2aとの間隙を通って材料溜まり4に入り込み、この材料溜まり4内でのある程度の滞留を経てからノズルブロック3A,3Bのノズル孔30より連続的に押し出され、棒状の押出成形物となる。この押出成形物は高圧縮によって固形化した状態であるため、ノズル孔30の出口側に旋回式カッター等の適当な切断機(図示省略)を設置することにより、数cmから数十cm程度の長さに切断して回収できる。
【0016】
なお、被処理材料に含まれる熱融性成分は、スクリュー軸2A,2Bの回転による圧縮混練に伴って発生する摩擦熱によって溶融し、その溶融物が非溶融材料の粒子間に介在することで減容圧縮物全体を塑性化して押出成形性を高めると共に、押し出し後の冷却硬化によって材料全体を一体化させて形崩れしにくい押出成形物とする機能を果たす。
【0017】
しかして、この減容圧縮処理においては、ノズルブロック3A,3Bの各ノズル孔30の内周面が硬いクロムメッキ層5で被覆されていることから、該内周面が摩耗しにくく、それだけノズルブロック3A,3Bの長期にわたって継続使用できる上、該クロムメッキ層5の表面がバフ仕上げされて平滑で高い滑り性を持つため、減容圧縮物の押し出しが円滑になされて詰まりにくく、もって保全コストが従来装置に比較して大幅に低減される。また、処理槽1内の昇温が不充分なスタートアップ時においても、減容圧縮物の押し出しが円滑であるから、駆動モーターや減速機等の動力伝達部の負荷が少なく、もって装置寿命も長くなるという利点がある。なお、クロムメッキ層5の形成には、浸漬メッキを始めとする各種のメッキ手段を採用できる。
【0018】
減容圧縮処理に供する固形の被処理材料としては、特に制約はなく、例えば木屑、古紙、廃プラスチック、建築系廃材、可燃ゴミ、不燃ゴミ等が挙げられるが、熱融性成分としてポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性プラスチックを含むものが望ましい。また、被処理材料して粗大なものを含むと処理効率が悪くなるため、予め破砕処理等でチップ状、断片状、粒状等にある程度細かくした形で用いるのがよい。なお、混合形態の被処理材料における材料種の組み合わせと配合比率は、押出成形物の用途や廃棄手段に応じて必要な性状が得られるように適宜設定すればよい。更に被処理材料には、必要に応じて、金属材の切削や切断加工で生じる鉄粉の如き切粉、おが粉、カーボン粉等の粉末物質を混合することもできる。また、被処理材料にはある程度の水分を含んでいてもよい。
【0019】
しかして、この第1実施形態の圧縮押出成形装置M1にあっては、押出ノズルが複数本のノズル孔30を設けたノズルブロック3A,3Bより構成され、該ノズルブロック3A,3Bを処理槽1の前端板11のノズル取付開口部11a,11bに外側から嵌合してねじ止めする構造であるから、該ノズルブロック3A,3Bの摩耗や傷損による新品との交換作業を容易に行えると共に、被処理材料の種類や押出成形物の用途に応じてノズル孔30の数や口径、形状等が異なるノズルブロックと着脱交換することも可能である。更に、これらノズルブロックの一部をノズル孔のない封鎖ブロックに置き換えることにより、残るノズルブロックに押出圧力を集中させて押出成形物の圧縮率を高めることも可能である。
【0020】
図5〜図7に示す第2実施形態の圧縮押出成形装置M2では、押出ノズルとして前記第1実施形態におけるノズルブロックを用いる代わりに、処理槽1の前端板11に押出ノズルを直接形成した構造になっている。すなわち、この場合の押出ノズルは、図5に示すように前端板11における両スクリュー軸2A,2Bの円周に沿う8字形の領域に、多数本のノズル孔30が配設されている。しかして、図6及び図7に示すように、前端板11の内面側では、これらノズル孔30を配設した8字形の領域が凹陥して材料溜まり4を構成しており、全部のノズル孔30の入口側が該材料溜まり4の底面に開口している。
【0021】
各ノズル孔30は、図6に示すように、前端板11に厚み方向に貫設した取付孔12に、パイプ状の口金35を該前端板11の内側から挿嵌し、該口金35の内端の環状凸部35aを取付孔12の内端縁の環状段部12aに係止し、該口金35aの外端部を前端板11から突出させた構造であり、該口金35が損耗した際に新品と交換できるようになっている。そして、図7に示すように、各口金35の内周面つまりノズル孔30の内周面は、前記第1実施形態と同様にクロムメッキ層5が形成され、このクロムメッキ層5の表面がバフ仕上げされたものとなっている。
【0022】
従って、この第二実施形態の圧縮押出成形装置M2においても、押出スクリュー軸2A,2Bの回転によって処理槽1内の前端部まで送られてきた材料が材料溜まり4を経てノズル孔30より連続的に棒状に押し出される際、各ノズル孔30の内周面が硬いクロムメッキ層5で被覆されていることから、該内周面が摩耗しにくく、それだけ口金35を長期にわたって継続使用できる上、該クロムメッキ層5の表面がバフ仕上げされて平滑で高い滑り性を持つため、押し出しが円滑になされて詰まりにくく、もって保全コストが低減される。また、処理槽1内の昇温が不充分なスタートアップ時においても押し出しが円滑であるから、駆動モーターや減速機等の動力伝達部の負荷が少なく、それだけ装置寿命が長くなる。
【0023】
なお、本発明においては、第1実施形態のような処理槽の前端板に取り付けるノズルブロックの数及び形状と配置構成、第2実施形態のように該前端板に直接に設けるノズル孔の数と配置構成、ノズル孔の口径と断面形状、一対の押出スクリュー軸の形状と連動機構等、細部構成については実施形態以外に種々設計変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係る圧縮押出成形装置全体の斜視図である。
【図2】同圧縮押出成形装置の押出出口側を一部分解状態で示す斜視図である。
【図3】同圧縮押出成形装置の要部の横断平面図である。
【図4】同圧縮押出成形装置に用いるノズルブロックの縦断側面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る圧縮押出成形装置の押出出口側の正面図である。
【図6】同圧縮押出成形装置の押出ノズル部の断面図である。
【図7】同押出ノズル部の口金の縦断側面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 処理槽
1a 材料投入口
11 前端板
11a,11b ノズル取付開口部
2A,2B 押出スクリュー軸
21a,21b 螺旋歯
3A,3B ノズルブロック
3a 内端面
30 ノズル孔
33 取付ボルト
35 口金
5 クロムメッキ層
8 駆動モーター
M1,M2 圧縮押出成形装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いの螺旋歯を噛み合わせて回転する一対の押出スクリュー軸が配置した処理槽内に、固形の被処理材料を投入して前記押出スクリュー軸の回転によって圧縮混練し、この圧縮混練物を処理槽前端の押出ノズルより連続的に押し出すように構成された圧縮押出成形装置において、
前記押出ノズルの内周面にクロムメッキ層を有すると共に、該クロムメッキ層の表面がバフ仕上げされてなることを特徴とする圧縮押出成形装置。
【請求項2】
前記処理槽の前端板に内外に透通するノズル取付穴が形成され、前記押出ノズルが各々内周面に前記クロムメッキ層を設けた複数本のノズル孔を備えるノズルブロックからなり、このノズルブロックが前記ノズル取付開口部に外側から嵌合して前記処理槽の前端板に外側から着脱自在にねじ止めされてなる請求項1記載の圧縮押出成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−125469(P2010−125469A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300826(P2008−300826)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(593201039)新日本溶業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】