説明

圧縮機システム及び圧縮機システムの制御方法

【課題】無負荷運転モードと負荷運転モードとの切替可能な圧縮機システムにおいて、無負荷運転モードから負荷運転モードへの切替時における放風ロスを低減すると共に必要量の圧縮ガスを短時間で吐出可能とする。
【解決手段】直前の負荷運転モードから無負荷運転モードへの切替時における流量調節弁3の開度を記憶しており、無負荷運転モードから負荷運転モードへの切替の際に、当該記憶した流量調節弁3の開度に合わせた初期開度で流量調節弁3を開放する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機システム及び圧縮機システムの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、大量の圧縮ガスを必要とするプラントには、必要な圧縮ガスを生成するための圧縮機システムが設置されている。
このようなプラントにて必要とされる圧縮ガスの流量は、経時的に変化する。このため、圧縮機システムは、圧縮機の上流側にインレットガイドベーンを備え、圧縮機へのガスの供給量を調節することによって、圧縮ガスの吐出量を調整可能とされている。
【0003】
ところが、例えば、特許文献1〜4に示されているように、サージングの発生を防止するためには、圧縮機に供給するガス流量の減少には限界がある。
このため、プラントが圧縮ガスを必要としない場合には、圧縮機の後段に設けられた放風弁を開放し、圧縮機で生成した圧縮ガスを大気放風しており、いわゆる放風ロスが発生する。
放風ロスの発生を低減させる方法として、特許文献1〜4に示されているような運転制御方式が提案されている。代表的な方法として、放風弁を全開に開き、インレットガイドベーンを全閉付近まで閉じて圧縮機軸動力を低減し、省エネ対策を行う方式がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−28492号公報
【特許文献2】特公昭63−56440号公報
【特許文献3】実公昭62−2315号公報
【特許文献4】実公昭59−39197号公報
【特許文献5】特開2009−7949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の圧縮機が無負荷状態となる無負荷運転モードから、圧縮機が負荷状態となって圧縮ガスを生成する負荷運転モードに移行する場合には、一旦、インレットガイドベーンを全閉状態から全開状態(あるいは全開状態近く)に、また放風弁を全開状態から全閉状態にし、その後プラントの圧縮ガスの使用量に応じてインレットガイドベーンの開度を調整している。
【0006】
しかしながら、インレットガイドベーンも放風弁も瞬時に全開状態と全閉状態とが切り替わるものではなく、またサージングを防止するために放風弁を閉鎖する速度をインレットガイドベーンを開放する速度よりも遅くしてインレットガイドベーンを先行して開放させる必要がある。
このため、インレットガイドベーンを全閉状態から全開状態(あるいは全開状態近く)に移行するまでの間、圧縮機で生成された圧縮ガスは、放風弁から大気開放されてしまい、放風ロスとなる。
プラント側の圧縮ガスの使用状態によっては、負荷運転モードと、無負荷運転モードとを頻繁に繰り返す場合がある。このような場合には、上述のように、無負荷運転モードから負荷運転モードへ切り替わる際の放風ロスが積み重なり、トータルとしての放風ロスが非常に大きくなる。
【0007】
特許文献5には、無負荷運転モードから負荷運転モードへの切替の際ではなく、圧縮機システムの立ち上げの際に、インレットガイドベーンを最大開度手前に設定された開度で停止することによって放風ロスを低減させる技術が提案されている。
そこで、特許文献5に開示された技術を応用し、最大開度手前の開度を予め記憶しておき、無負荷運転モードから負荷運転モードへの切替の際に、予め記憶した開度にインレットガイドベーンの開度を調節することで放風ロスを低減させることが考えられる。
【0008】
しかしながら、予め記憶する開度による圧縮ガスの流量と、プラント側が必要とする圧縮ガスの流量が大きく乖離する可能性がある。
例えば、予め記憶する開度による圧縮ガスの流量が、プラント側が必要とする圧縮ガスの流量に対して非常に少ない場合には、プラント側が必要とする圧縮ガスとするために、インレットガイドベーンを制御する動作が必要となり、結果として、プラント側が必要とする圧縮ガスの流量に合わせるのに非常に長い時間が必要となる。
また、予め記憶する開度による圧縮ガスの流量が、プラント側が必要とする圧縮ガスの流量に対して非常に少ない場合には、放風ロスの削減効果が低減する。
【0009】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、無負荷運転モードと負荷運転モードとの切替可能な圧縮機システムにおいて、無負荷運転モードから負荷運転モードへの切替時における放風ロスを低減すると共に必要量の圧縮ガスを短時間で吐出可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0011】
第1の発明は、ガスを圧縮して圧縮ガスとして圧送する圧縮機と、当該圧縮機に供給するガスの流量を調節する流量調節弁と、上記圧縮ガスを圧力開放して放出する放風弁とを備え、上記流量調節弁を全閉とすると共に上記放風弁を開放する無負荷運転モードと、上記流量調節弁を開放すると共に上記放風弁を全閉とする負荷運転モードとを有する圧縮機システムであって、直前の負荷運転モードから無負荷運転モードへの切替時における上記流量調節弁の開度を記憶しており、無負荷運転モードから負荷運転モードへの切替の際に、当該記憶した上記流量調節弁の開度に合わせた初期開度で上記流量調節弁を開放する制御手段を備えるという構成を採用する。
【0012】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記圧縮機に供給されるガスの温度を計測する温度計を備え、上記制御手段が、直前の負荷運転モードから無負荷運転モードへの切替時におけるガスの温度と、無負荷運転モードから負荷運転モードへの切替の際のガスの温度とに基づいて上記初期開度を補正するという構成を採用する。
【0013】
第3の発明は、上記第1の発明において、上記制御手段が、上記圧縮機に供給されるガスの温度差に起因する流量変化に基づいて予め設定されたマージンを足すことにより上記初期開度を補正するという構成を採用する。
【0014】
第4の発明は、上記第1〜第3いずれかの発明において、上記圧縮ガスの圧力を計測する圧力計と、上記圧縮ガスの流量を直接的または間接的に計測する計測手段とを備え、上記制御手段は、無負荷運転モードから負荷運転モードに移行中に、上記圧縮ガスの圧力と流量との関係が、サージングの発生を防止するために設定された条件に合致した場合には、上記初期開度に関わらず上記流量調節弁の開度を大きくするという構成を採用する。
【0015】
第5の発明は、ガスを圧縮して圧縮ガスとして圧送する圧縮機と、当該圧縮機に供給するガスの流量を調節する流量調節弁と、上記圧縮ガスを圧力開放して放出する放風弁とを備え、上記流量調節弁を全閉とすると共に上記放風弁を開放する無負荷運転モードと、上記流量調節弁を開放すると共に上記放風弁を全閉とする負荷運転モードとを有する圧縮機システムの制御方法であって、直前の負荷運転モードから無負荷運転モードへの切替時における上記流量調節弁の開度を記憶しており、無負荷運転モードから負荷運転モードへの切替の際に、当該記憶した上記流量調節弁の開度に合わせた初期開度で上記流量調節弁を開放するという構成を採用する。
【発明の効果】
【0016】
圧縮ガスの使用量は、操業状態に応じて変化するため、圧縮ガスの使用量がインレットガイドベーンの絞り限界を下回ることがある。この場合、省エネを目的として無負荷運転モードに切り替えて対応するが、この状態を継続すると圧縮ガスの圧力が徐々に低下するため、圧力が規定値を下回ったとき再び負荷運転モードに切り替える操作が必要になり、結果として負荷/無負荷運転モードの切替が一日の中で何度も繰り返し行われる。
つまり、一般的に、負荷運転モードから無負荷運転モードに切り替わる直前に使用されていた圧縮ガスの流量は、次に再びプラント等が圧縮ガスを必要とする際の流量に近い。
【0017】
これに対して、本発明によれば、直前の負荷運転モードから無負荷運転モードへの切替時における上記流量調節弁の開度が記憶されており、無負荷運転モードから負荷運転モードへの切替の際に、記憶された流量調節弁の開度に合わせた初期開度で流量調節弁が開放される。
つまり、本発明によれば、無負荷運転モードに移行する直前に吐出していた圧縮ガスの流量とほぼ等しい流量の圧縮ガスが、再び負荷運転モードとなった際に吐出される。
このため、本発明によれば、無負荷運転モードから負荷運転モードに切り替わる際に吐出する圧縮ガスの流量が、プラント等が必要とする流量近傍となる確率が極めて高い。
【0018】
無負荷運転モードから負荷運転モードに切り替わる際に吐出する圧縮ガスの流量が、プラント等が必要とする流量近傍となることにより、吐出量をプラント等が必要とする流量に合わせる時間が短くなると共に放風ロスを低減することができる。
したがって、本発明によれば、無負荷運転モードと負荷運転モードとの切替可能な圧縮機システムにおいて、無負荷運転モードから負荷運転モードへの切替時における放風ロスを低減すると共に必要量の圧縮ガスを短時間で吐出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態における圧縮機システムの概略構成を模式的に示すフロー図である。
【図2】発明の一実施形態における圧縮機システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】発明の一実施形態における圧縮機システムにおける圧縮空気の吐出圧力と圧縮空気の流量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明に係る圧縮機システム及び圧縮機システムの制御方法の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0021】
図1は、本実施形態の圧縮機システム1の概略構成を模式的に示すフロー図である。
この図に示すように圧縮機システム1は、フィルタ2と、インレットガイドベーン3(流量調節弁)と、圧縮機4と、モータ5と、ガスクーラ6と、流量計7と、圧力計8と、温度計9と、放風弁10と、制御装置11(制御手段)と、配管A〜Dと、圧縮空気を一時的に貯留するレシーバタンクEとを備えている。
【0022】
フィルタ2は、圧縮機4に供給する空気に含まれる異物を除去するものであり、圧縮機4に空気を供給するための配管Aの途中部位に設置されている。
【0023】
インレットガイドベーン3は、フィルタ2と圧縮機4との間に設置されており、配管Aの開口面積を調節することによって、圧縮機4に供給される空気の流量を調節するものである。
なお、本実施形態においては、インレットガイドベーン3は、全閉状態であっても、僅かな流量の空気を通気可能に構成されている。
【0024】
圧縮機4は、供給される空気を圧縮して圧縮空気として圧送するものであり、図1に示すように、遠心式の圧縮機とされている。
【0025】
モータ5は、圧縮機4のラジアルインペラを回転駆動する動力を発生するものであり、不図示のシャフトやギアボックス等を介して圧縮機4のラジアルインペラと接続されている。
【0026】
ガスクーラ6は、圧縮機4から排出された圧縮空気を冷却するものであり、配管Bを流れる圧縮空気を冷却可能とするために、配管Bの途中部位に設置されている。
なお、多段圧縮を行うシステム構成を採用する場合には、各圧縮段の中間部位にもガスクーラが設置される。
【0027】
流量計7は、圧縮機4から排出された圧縮空気の流量を計測するものであり、配管Bの途中部位に設置されている。
【0028】
なお、図1に示すように、圧縮機4から排出された圧縮空気が流れる配管Bは、供給先のプラント等と接続された配管Cと、一端が大気開放された配管Dとに分岐されている。
そして、圧力計8は、プラント等に供給される圧縮空気の圧力を計測するものであり、配管Cの途中部位に接続されている。
また、配管Cには逆止弁Fが設置されており、レシーバダンクEからの圧縮空気の逆流を抑止している。
【0029】
温度計9は、圧縮機4に供給される空気の温度を計測するものであり、配管Aの途中部位に接続されている。具体的には、フィルタ2とインレットガイドベーン3との間に温度計9が設置されている。
【0030】
放風弁10は、圧縮空気を大気開放して放出するためのものであり、配管Dの途中部位に設置されている。
【0031】
制御装置11は、本実施形態の圧縮機システム1の動作全体を制御するものであり、インレットガイドベーン3と、モータ5と、流量計7と、圧力計8と、温度計9と、放風弁10とに電気的に接続されている。
【0032】
そして、制御装置11は、本実施形態の圧縮機システム1を、圧縮機4において空気の昇圧を行って圧縮空気を生成する負荷運転モードでの運転、あるいは、圧縮機4において空気の昇圧を行わない無負荷運転モードでの運転が可能に構成されている。
【0033】
具体的には、負荷運転モードの場合には、制御装置11は、インレットガイドベーン3を開放すると共に放風弁10を閉鎖する。
これによって、インレットガイドベーン3の開度に応じた流量の空気が圧縮機4に供給される。ここで放風弁10が閉鎖されていることから、配管Dが大気開放されていない。このため、圧縮機4において供給された空気が圧縮されて配管Bを介して圧送される。そして、配管Bの圧縮空気は、配管C及びレシーバタンクEを介して、要求に応じてプラント等に吐出される。
【0034】
なお、プラント等における圧縮空気の使用量が圧縮機4で生成される圧縮空気よりも多い場合には、圧力計8で検出される圧力が低下するため、制御装置11は、インレットガイドベーン3の開度を拡大し、これに応じて圧縮機4で生成される圧縮空気量が増加する。
また、プラント等における圧縮空気の使用量が圧縮機4で生成される圧縮空気よりも少ない場合には、圧力計8で検出される圧力が上昇するため、制御装置11は、インレットガイドベーン3の開度を縮小し、これに応じて圧縮機4で生成される圧縮空気量が減少する。
そして、制御装置11は、圧力計8の出力が一定値となるように、流量計7の検出結果も考慮しつつ、インレットガイドベーン3をフィードバック制御する。
【0035】
一方、無負荷運転モードは、プラント等における圧縮空気の使用量が低減した場合に、サージングを防止するために、負荷運転モードから移行するモードである。そして、制御装置11は、圧縮機4に供給される空気の流量(すなわちインレットガイドベーン3の開度)と圧力計8の出力との関係が、サージングを防止するために予め設定された移行条件に合致するかを判定し、合致した場合には、無負荷運転モードに移行する。
具体的には、無負荷運転モードの場合には、制御装置11は、インレットガイドベーン3を閉鎖すると共に放風弁10を開放する。
これによって、僅かな量の空気がサージングの防止のために圧縮機4に供給されるが、放風弁10が開放され、配管Dが大気開放されているため、圧縮機4における空気の圧縮は行われない。
【0036】
次に、このような構成を有する本実施形態の圧縮機システム1における、負荷運転モードと無負荷運転モードとの切替の動作(制御方法)について、図2のフローチャートを参照しながら説明する。
なお、以下の動作説明において、その主体となっているのは制御装置11である。
【0037】
まず、圧縮機4の起動を行い(ステップS1)、圧縮機4の起動を完了させる(ステップS2)。ただし、ステップS2においては、制御装置11は、無負荷運転モードにて圧縮機4の起動を完了する。
【0038】
ここで、プラント等が圧縮空気を必要とする場合には、プラント等に空気が引き込まれてレシーバタンクEの圧力は低下した状態となる。
このため、制御装置11は、予め、負荷運転モードに移行するための吐出圧力を再負荷設定値として記憶しており、レシーバタンクEの圧力が再負荷設定値以下となった場合に、次のステップS4に進む(ステップS3)。
【0039】
ステップS4では、インレットガイドベーン3の開度の調節を行う。
なお、圧縮機システム1において無負荷運転モードと負荷運転モードとが繰り返されている状況では、ステップS4におけるインレットガイドベーン3の開度調節は、後述のステップS11で設定された初期開度に合わせて行われる。
これに対して、圧縮機システム1の稼動直後においては、ステップS4におけるインレットガイドベーン3の開度は任意であり、制御装置11が予め記憶する開度や最大開度とされる。
なお、このようなステップS4に合わせて、放風弁10が閉鎖され、本実施形態の圧縮機システム1は、負荷運転モードに移行する。
【0040】
そして、負荷運転モード中は、モータ電流値が定格値以上であるかを判定する(ステップS5)と共に、吐出圧力が定格設定値以上であるかを判定する(ステップS6)。
そして、モータ電流値が定格値以上または吐出圧力が定格設定値以上である場合には、インレットガイドベーン3の開度を減少させる(ステップS7)。
なおインレットガイドベーン3の開度を減少させる目的は、モータ5の電流(もしくは電力)が定格値以上になる場合はモータ5の過負荷保護として、一方で吐出圧力が定格圧力設定値以上になる場合は、圧縮空気の吐出流量がプラント等の要求量に対して過多であることを解消させるためであり、両者は相反する目的で動作する。
【0041】
続いて、現在の圧縮機4に供給される空気の流量(すなわちインレットガイドベーン3の開度)と圧力(圧力計8の出力)との関係が、サージングを防止するために予め設定された移行条件に合致するかを判定(ステップS8)し、合致した場合には、無負荷運転モードに移行することが妥当と判断される。
一方、ステップS8において、流量と圧力との関係がサージングを防止するために予め設定された移行条件に合致しない場合には、繰り返しステップS5及びステップS6が行われる。
【0042】
無負荷運転モードに移行することが妥当と判断された場合には、現在のインレットガイドベーン3の開度を記録(記憶)し(ステップS9)、さらにインレットガイドベーン3を全閉とし(ステップS10)、これによって無負荷運転モードに移行する。
【0043】
このように負荷運転モードから無負荷運転モードに移行する際には、制御装置11は、図3に示すように、現時点の流量と圧力との関係Xから、ラインL1を通って、流量と圧力との関係を無負荷運転モードであるYに移行させる。なお、図3においてP1は圧縮空気の吐出圧力の目標圧力を示し、P2は無負荷運転モード移行への目標圧力を示し、P3は負荷運転モード移行への目標圧力を示し、Q1は圧縮空気の最大流量を示している。
【0044】
続いて、現在の無負荷運転モードから負荷運転モードへの切替時に用いるインレットガイドベーン3の開度である初期開度の設定を行う(ステップS11)。
具体的には、ステップS9で記憶したインレットガイドベーン3の開度を初期開度に設定する。
その後、必要に応じて初期開度の補正を行う(ステップS12)。なお、当該ステップS12の補正については、後に詳しく説明することとし、ここでは、ステップS12の補正を行わないものとする。
【0045】
そして、ステップS11の初期開度の設定が完了すると、再びステップS3に戻り、レシーバタンクEの圧力が再負荷設定値以下となった場合に、インレットガイドベーン3の開度の調節を行う(ステップS4)。
そして、本実施形態の圧縮機システム1では、ステップS11で初期開度が設定されて以降は、ステップS4におけるインレットガイドベーン3の開度調節が、ステップS11で設定された初期開度に合わせて行われる。
この結果、制御装置11は、図3に示すように、現時点の流量と圧力との関係Yから、ラインL2を通って、流量と圧力との関係を負荷運転モードであるXに移行させる。
【0046】
上述のように、通常、プラント等では、無負荷運転モードと負荷運転モードとの切替が1日の中で何度も繰り返して行われ、負荷運転モードから無負荷運転モードに切り替わる直前に使用されていた圧縮空気の流量は、次に再びプラント等が圧縮空気を必要とする際の流量に近い。
【0047】
従来の方法では無負荷運転モードから負荷運転モードに移行する際、インレットガイドベーンを全開またはそれに近い開度で行っており、ラインL3を通ってZに移行させていた。プラント使用量がX付近またはそれ以下の場合、Z−Xは余剰送気分または放風ロスとなっていた。
【0048】
これに対して、本実施形態の圧縮機システム1及びその制御方法によれば、直前の負荷運転モードから無負荷運転モードへの切替時におけるインレットガイドベーン3の開度が記憶されており、無負荷運転モードから負荷運転モードへの切替の際に、記憶されたインレットガイドベーン3の開度に合わせた初期開度でインレットガイドベーン3が開放される。
つまり、本実施形態の圧縮機システム1及びその制御方法によれば、無負荷運転モードに移行する直前に吐出していた圧縮空気の流量とほぼ等しい流量の圧縮空気が、再び負荷運転モードとなった際に吐出される。
このため、本実施形態の圧縮機システム1及びその制御方法によれば、無負荷運転モードから負荷運転モードに切り替わる際に吐出する圧縮空気の流量が、プラント等が必要とする流量近傍となる確率が極めて高い。
【0049】
無負荷運転モードから負荷運転モードに切り替わる際に吐出する圧縮空気の流量が、プラント等が必要とする流量近傍となることにより、吐出量をプラント等が必要とする流量に合わせる時間が短くなると共に放風ロスを低減することができる。
したがって、本実施形態の圧縮機システム1及びその制御方法によれば、無負荷運転モードから負荷運転モードへの切替時における放風ロスを低減すると共に必要量の圧縮空気を短時間で吐出することが可能となる。
【0050】
なお、圧縮空気の流量は、圧縮機4に供給される空気の温度に依存して多少変化する。このため、無負荷運転モードの途中で大きく空気の温度が変化した場合には、直前の負荷運転モードから無負荷運転モードへの切替時における開度となるようにインレットガイドベーン3を調整しても、同一流量とならない場合もある。
このため、上述のステップS12にて、圧縮機4に供給される空気の温度差に起因する流量変化に基づいて予め設定されたマージンを足すことにより初期開度を補正するようにしても良い。
これによって、流量と圧力との関係がYから、ラインL2を通って、流量と圧力との関係を負荷運転モードであるXに移行させる。
なお、ステップS12にて行う初期開度の補正は、これに限られるものではなく、直前の負荷運転モードから無負荷運転モードへの切替時における空気の温度と、無負荷運転モードから負荷運転モードへの切替の際の空気の温度とから、圧縮空気の流量差を算出し、この流量差がなくなるように初期開度を補正しても良い。これによって、放風ロスの増加を最小限に抑えつつ、圧縮機4でのサージングを確実に防止することができる。
【0051】
また、無負荷運転モードから負荷運転モードに移行中に、上記圧縮空気の圧力と流量との関係が、サージングの発生を防止するために設定された条件に合致した場合には、初期開度に関わらずインレットガイドベーン3の開度を大きくすることが好ましい。
【0052】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0053】
例えば、上記実施形態においては、本発明におけるガスが空気である構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、他のガスを本発明におけるガスとすることも可能である。
【0054】
また、インレットガイドベーン3で開度調整する流量範囲下においては、モータ5の電流(もしくは電力)は、流量とほぼ比例関係にあるため、間接的に流量を計測する計測手段として、モータ5の電流(もしくは電力)を計測する計測器を設置し、当該計測器を流量計7の代替手段として用いるシステム構成も可能である。
【符号の説明】
【0055】
1……圧縮機システム、3……インレットガイドベーン(流量調節弁)、4……圧縮機、5……モータ、7……流量計、8……圧力計、9……温度計、10……放風弁、11……制御装置(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを圧縮して圧縮ガスとして圧送する圧縮機と、当該圧縮機に供給するガスの流量を調節する流量調節弁と、前記圧縮ガスを圧力開放して放出する放風弁とを備え、前記流量調節弁を全閉とすると共に前記放風弁を開放する無負荷運転モードと、前記流量調節弁を開放すると共に前記放風弁を全閉とする負荷運転モードとを有する圧縮機システムであって、
直前の負荷運転モードから無負荷運転モードへの切替時における前記流量調節弁の開度を記憶しており、無負荷運転モードから負荷運転モードへの切替の際に、当該記憶した前記流量調節弁の開度に合わせた初期開度で前記流量調節弁を開放する制御手段を備えることを特徴とする圧縮機システム。
【請求項2】
前記圧縮機に供給されるガスの温度を計測する温度計を備え、
前記制御手段は、直前の負荷運転モードから無負荷運転モードへの切替時におけるガスの温度と、無負荷運転モードから負荷運転モードへの切替の際のガスの温度とに基づいて前記初期開度を補正する
ことを特徴とする請求項1記載の圧縮機システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記圧縮機に供給されるガスの温度差に起因する流量変化に基づいて予め設定されたマージンを足すことにより前記初期開度を補正することを特徴とする請求項1記載の圧縮機システム。
【請求項4】
前記圧縮ガスの圧力を計測する圧力計と、前記圧縮ガスの流量を直接的または間接的に計測する計測手段とを備え、
前記制御手段は、無負荷運転モードから負荷運転モードに移行中に、前記圧縮ガスの圧力と流量との関係が、サージングの発生を防止するために設定された条件に合致した場合には、前記初期開度に関わらず前記流量調節弁の開度を大きくする
ことを特徴とする請求項1〜3いずれかの記載の圧縮機システム。
【請求項5】
ガスを圧縮して圧縮ガスとして圧送する圧縮機と、当該圧縮機に供給するガスの流量を調節する流量調節弁と、前記圧縮ガスを圧力開放して放出する放風弁とを備え、前記流量調節弁を全閉とすると共に前記放風弁を開放する無負荷運転モードと、前記流量調節弁を開放すると共に前記放風弁を全閉とする負荷運転モードとを有する圧縮機システムの制御方法であって、
直前の負荷運転モードから無負荷運転モードへの切替時における前記流量調節弁の開度を記憶しており、無負荷運転モードから負荷運転モードへの切替の際に、当該記憶した前記流量調節弁の開度に合わせた初期開度で前記流量調節弁を開放することを特徴とする圧縮機システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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