説明

圧縮機

【課題】ピストンヘッドに吸気用のフラップ弁が設けられた往復動ピストン式の圧縮機において、消費電力の低減を図る。
【解決手段】圧縮機Xは、ハウジング1と、ハウジング1内に収容されたピストンヘッド23と、モータによって旋回させられる偏心軸22と、偏心軸22の旋回運動をシリンダ13内におけるピストンヘッド23の揺動をともなった往復運動に伝達するピストンロッド21と、を備える。ハウジング1内の空間は、ピストンヘッド23を境界として吸気室1Aと圧縮室1Bとに分離され、ピストンヘッド23は、ピストンヘッド23とシリンダ13との間をシールするシールリング233と、吸気室1Aと圧縮室1Bとを連通させる通気路234と、吸気室1Aから圧縮室1Bへの通気を許容するように通気路234の一端に設けたフラップ弁235と、を有する。フラップ弁235は、モータの出力軸31と略直交する面内に沿って揺動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気などのガスを圧縮するための圧縮機に関し、特にシリンダ内を往復動するピストンヘッドを備えたガス圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、医療用途の酸素濃縮装置に使用されるガス圧縮機は、主として病院や家庭で使用されることから、駆動時に静寂であることが望まれる。また、携帯用の酸素濃縮装置に使用されるガス圧縮機については、持ち運び易さの観点から小型であることが望まれており、また、バッテリ駆動であることから、消費電力の低減が求められている。ガス圧縮機に関する技術は、たとえば特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に記載されたガス圧縮機は、同文献の図1〜図9等に表れているように、シリンダ(24)を有するハウジング(14)内にピストン(27)が収容されて構成された、いわゆる往復動ピストン式の圧縮機である。ピストン(27)は、ピストンロッドおよびピストンヘッド(48)を備えており、ピストンロッドの下端(一端)はベアリング(軸受108)を介して偏心軸(偏心器94)に回転可能に連結され、ピストンロッドの上端(他端)はピストンヘッドに直結されている。特許文献1の図5、図6A〜図6C、図9等から理解されるように、ピストンヘッドの外周には、このピストンヘッドとシリンダの内面との間をシールするためのシールリングが装着されており、このシールリングは、リング状部材を圧入することによってピストンヘッドに挟持固定されている。偏心軸は、たとえばモータ(16)の出力軸(主軸100)にビス止めにより固定されている。かかる構成により、モータが駆動すると、偏心軸がモータの出力軸周りに旋回させられる。この偏心軸の旋回運動により、シールリングがシリンダ内面を摺動しながら、ピストンヘッドは、シリンダ内において揺動をともないつつ往復動させられる。
【0004】
ハウジング内の空間は、ピストンヘッドを境界として、下側の吸気室と上側の圧縮室とに分離されている。ハウジングの底部には、上記吸気室に通じる吸気口(ポート44)が設けられている。特許文献1の圧縮機では、ピストンヘッドには、吸気室と圧縮室とを連通させる通気路と、この通気路の上端を開閉させる吸気用のフラップ弁(46a)とが設けられ、吸気室から圧縮室への通気が許容されるようになっている。シリンダの上部には、シリンダヘッドにより押圧された仕切板(弁板28)が設けられており、この仕切板、シリンダ、およびピストンヘッドによって圧縮室が規定される。仕切板には、排気口とこの排気口の上端を開閉させる排気用の弁(28a)が設けられ、圧縮室からシリンダヘッド側への通気が許容されるようになっている。
【0005】
特許文献1に開示されたガス圧縮機においては、ピストンヘッドに吸気用のフラップ弁が設けられているため、たとえばシリンダヘッド等に吸気弁および排気弁を並べて設ける場合に比べて、これら弁設置のためのスペースを実質的に削減することができ、圧縮機全体の小型化に適している。
【0006】
上記特許文献1に記載された圧縮機においては、同文献の図5、図6A〜図6C、図9等から理解されるように、ピストンヘッドに設けられたフラップ弁は、モータの出力軸と略平行な方向に沿って延びている。これにより、フラップ弁の開閉作動時には、当該フラップ弁は、出力軸と略平行な直線を含む所定の面内に沿って揺動する。一方、モータの駆動時には、偏心軸がモータの出力軸周りに旋回することにより、ピストンヘッドは、モータの出力軸と略平行な軸周りに揺動する。したがって、シリンダ内でのピストンヘッドの往復動によりフラップ弁が開閉作動する際には、本願の図14に概略を示すように、フラップ弁91の揺動面Sは、シリンダ92の軸方向に対して傾斜している。しかしながら、このようにフラップ弁91の揺動面Sがシリンダ92の軸方向に対して傾斜した構成では、フラップ弁91が開く際に、通気路を通過したガス(たとえば空気)によるフラップ弁91への押圧力が、当該フラップ弁91を捻る力に費やされてしまう。このようにフラップ弁91の開閉時に無駄なエネルギーが使われると、結果として消費電力の増加を招き、好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−322459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、ピストンヘッドにシールリングおよび吸気用のフラップ弁が設けられた往復動ピストン式の圧縮機において、消費電力の低減を図るのに適した圧縮機を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を採用した。
【0010】
本発明によって提供される圧縮機は、シリンダが形成されたハウジングと、上記ハウジング内に収容されて往復動可能なピストンヘッドと、モータによって旋回させられる偏心軸と、上記偏心軸に一端が連結され、他端が上記ピストンヘッドに直結され、上記偏心軸の旋回運動を上記シリンダ内における上記ピストンヘッドの揺動をともなった往復運動に伝達するピストンロッドと、を備え、上記ハウジング内の空間は、上記ピストンヘッドを境界として、吸気口に通じる吸気室と、排気口に通じる圧縮室とに分離されており、上記ピストンヘッドは、このピストンヘッドと上記シリンダの内面との間をシールするシールリングと、上記吸気室と上記圧縮室とを連通させる通気路と、上記圧縮室から上記吸気室への通気を阻止し、上記吸気室から上記圧縮室への通気を許容するように上記通気路の一端に設けたフラップ弁と、を有している、圧縮機であって、上記フラップ弁は、上記モータの出力軸と略直交する面内に沿って揺動するように構成されていることを特徴としている。
【0011】
好ましい実施の形態においては、上記フラップ弁は、上記シリンダの軸方向視において上記ピストンヘッドの中心を通って上記モータの出力軸と略直交する方向に延びており、上記通気路の一端は、上記ピストンヘッドの径方向の周縁近傍に位置する。
【0012】
好ましい実施の形態においては、上記ピストンヘッドは、上記ピストンロッドの他端が直結された第1部分と、この第1部分に着脱可能に取り付けられた第2部分とを備え、上記シールリングは、上記第1部分と第2部分とによって挟持されており、上記フラップ弁は、上記第2部分に設けられている。
【0013】
好ましい実施の形態においては、上記第2部分は、上記シリンダの軸方向視における上記フラップ弁を挟んだ両側の部位において、ビスによって上記第1部分に取り付けられている。
【0014】
本発明のその他の特徴および利点は、図面を参照して以下に行う詳細な説明から、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る圧縮機の一例を示す全体斜視図である。
【図2】図1に示す圧縮機の分解斜視図である。
【図3】図1のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図1のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】ピストンの斜視図である。
【図6】ピストンの分解斜視図である。
【図7】(a)は、ピストンヘッドの第2部分を裏返した状態の斜視図であり、(b)は、ピストンヘッドの第2部分を裏返した状態の平面図である。
【図8】図5のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【図9】一部の部材(第2部分を含む)を取り外した状態の平面図である。
【図10】図1に示す圧縮機の組み立て手順を説明するための図である。
【図11】圧縮機の作動時の一状態を示す図4と同様の図である。
【図12】圧縮機の作動時の一状態を示す図4と同様の図である。
【図13】圧縮機の作動時の一状態を示す図4と同様の図である。
【図14】従来の圧縮機の一例を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0017】
図1〜図4に示すように、本実施形態の圧縮機Xは、ハウジング1と、このハウジング内に収容されたピストン2と、ピストン2を往復駆動させるためのモータ3とを、備え、往復動ピストン式のガス圧縮機として構成されたものである。
【0018】
ハウジング1は、ケース本体11と、側面カバー12と、円筒状のシリンダ13と、仕切板14と、シリンダヘッド15とを備えている。図3によく表れているように、ケース本体11は、後述するピストンヘッド23を収容しており、側面と上部とのそれぞれに開口部111,112を有し、他の側面にモータ取付孔113を有する。側面カバー12は、ケース本体11の開口部111に芯合わせ状態で嵌合しており、開口部111を閉塞している。側面カバー12は、ボルト締結によってケース本体11に固定されている。側面カバー12の下部には、吸気ポート121(吸気口)が設けられている。
【0019】
ケース本体11の他の側面には、モータ3が芯合わせ状態で取り付けられている。モータ3はモータケース4に覆われており、モータ3の出力軸31がモータ取付孔113からケース本体11内に臨む姿勢でモータ3およびモータケース4がボルト締結によってケース本体11に固定されている。なお、出力軸31の先端は、ベアリング16を介して側面カバー12に支持されている。
【0020】
シリンダ13は、その基端がケース本体11の開口部112に芯合わせ状態で嵌合しており、シリンダ13の内面が後述するシールリング233の摺動面となっている。シリンダ13の内径寸法は、たとえば30mm程度である。
【0021】
仕切板14は、概略円盤状とされており、シリンダ13の先端(上部)に取り付けられている。シリンダヘッド15は、仕切板14の上部に取り付けられている。シリンダヘッド15には、排気ポート151が設けられている。
【0022】
図3に表れているように、ケース本体11と側面カバー12との間、ケース本体11とシリンダ13との間、シリンダ13と仕切板14との間、仕切板14とシリンダヘッド15との間、およびケース本体11とモータ3との間には、それぞれOリングが介装されている。これにより、ハウジング1の内部空間は、吸気ポート121および排気ポート151を除いて外部空間に対する気密性が保持されている。また、図3、図4、図11〜図13に表れているように、ハウジング1内の空間は、ピストンヘッド23を境界として、下側(シリンダ13の基端側)に位置する吸気室1Aと、上側(シリンダ13の先端側)に位置する圧縮室1Bとに分離されている。吸気室1Aは、ケース本体11、シリンダ13、およびピストンヘッド23によって規定されており、圧縮室1Bは、仕切板14、シリンダ13、およびピストンヘッド23によって規定されている。
【0023】
図3〜図6に表れているように、ピストン2は、ピストンロッド21と、偏心軸22と、ピストンヘッド23とを備えて構成されている。ピストンロッド21の下端は、リング状部211とされている。
【0024】
偏心軸22は、リング状部211に嵌入させられる偏心コア221と、この偏心コア221につながるバランサ222とを有している。偏心コア221およびバランサ222は、互いの中心位置がずれた円柱状とされている。上記のリング状部211にはベアリング24が圧入され、このベアリング24に偏心コア221が圧入されている。これにより、リング状部211(ピストンロッド21)は、ベアリング24を介して偏心軸22に回転可能に連結されている。
【0025】
偏心コア221およびバランサ222には、モータ3の出力軸31を嵌挿させるための軸孔22aが形成されている。軸孔22aは、偏心コア221の中心に対して偏倚しており、また、バランサ222の中心に対して偏倚している。軸孔22aが偏心コア221の中心に対して偏倚する方向と、軸孔22aがバランサ222の中心に対して偏倚する方向とは、正反対である。バランサ222には、軸孔22aから径方向に沿って外周面まで通じるネジ孔22bが形成されている。このネジ孔22bにセットビス25をねじ込むことにより、偏心軸22はモータ3の出力軸31に固定される。
【0026】
ピストンヘッド23は、第1部分231および第2部分232と、シールリング233と、通気路234と、吸気用のフラップ弁235とを備えて構成されている。
【0027】
第1部分231は、シリンダ13の内径寸法よりも小さい外径寸法をもった概略円盤状とされており、ピストンロッド21の上端に直結されている。第1部分231は、その外周部から立ち上がる起立壁231aを有している。詳細は後述するが、起立壁231aの内側の板状部には、2つの第1貫通孔231b,231cと、ビス取付用の2つのネジ穴231dと、位置決め穴231eとが形成されている。
【0028】
第2部分232は、シリンダ13の内径寸法よりも小さい外径寸法をもった概略円盤状とされており、薄板状の外縁部232aと、この外縁部232aの内側に形成され、ピストンヘッド23の軸方向に膨出する膨出部232bとを有する(図7参照)。詳細は後述するが、第2部分232には、第2貫通孔232cと、2つのビス用孔232dと、位置決め突起232eとが形成されている。また、図7に表れているように、膨出部232bには、二股状の溝232fが形成されている。
【0029】
図3および図4から理解されるように、第2部分232は、膨出部232bが第1部分231の起立壁231aの内側に嵌まり込んだ状態で、2つのビス26によって第1部分231に取り付けられている。図3に表れているように、上記2つのビス26は、ピストンヘッド23の中心を挟んで、モータ3の出力軸と略平行な所定の径方向(第1の径方向)に離間する部位に取り付けられている。このようなビス止めによって、第2部分232は、第1部分231に対して着脱可能に取り付けられている。
【0030】
シールリング233は、ピストンヘッド23とシリンダ13の内面との間をシールするものであり、たとえばシリコン樹脂などの自己潤滑性に優れた材料からなる。図3および図4によく表れているように、シールリング233は、第1部分231と第2部分232とによって挟持されている。より詳細には、シールリング233の内寄り部が第1部分231の起立壁231aと第2部分232の外縁部232aとに挟まれる一方、外寄り部が第1および第2部分231,232の径方向外方に張り出してシリンダ13の内面に摺接している。
【0031】
通気路234は、吸気室1Aと圧縮室1Bとを連通させるものであり、図3、図4、図8および図9から理解されるように、第1部分231に設けられた2つの第1貫通孔231b,231cと、第2部分232に設けられた第2貫通孔232cと、連絡路234aとを有して構成されている。なお、図8において、第2貫通孔232cを仮想線で表す。また、図9は、シリンダヘッド15、仕切板14、第2部分232およびシールリング233を取り外した状態を示す平面図であり、同図において、連絡路234a、第2貫通孔232c、およびフラップ弁235の位置を仮想線で表している。
【0032】
図9に表れているように、上記2つの第1貫通孔231b,231cは、シリンダ13の軸方向視においてピストンロッド21を挟んでモータ3の出力軸方向に離間した両側の部位に設けられている。なお、図9から理解されるように、シリンダ13の軸方向視において、一方の第1貫通孔231bがピストンヘッド23の中心からモータ3の出力軸方向に偏倚する距離と、バランサ222(偏心軸22)に設けられたネジ孔22bがピストンヘッド23の中心からモータ3の出力軸方向に偏倚する距離とは、略同一である。
【0033】
第2貫通孔232cは、シリンダ13の軸方向視において第1貫通孔231b,231cと異なる位置に設けられている。第2貫通孔232cは、ピストンヘッド23の径方向の周縁近傍に位置している。第1貫通孔231b,231cおよび第2貫通孔232cの寸法の一例を挙げあると、第1貫通孔231b,231cは直径4mm程度、第2貫通孔232cは直径6mm程度である。
【0034】
図8および図9に表れているように、連絡路234aは、各第1貫通孔231b,231cと第2貫通孔232cのそれぞれに通じており、第2部分232に形成された溝232f(図7参照)により構成されている。図3および図4から理解されるように、連絡路234aは、第2部分232の膨出部232bの先端と第1部分231の板状部とが当接することにより形成されている。連絡路234aは、2つの第1貫通孔231b,231cに通じる複数の分岐路234b,234cと、第2貫通孔232cに通じる合流路234dとを有し、各分岐路234b,234cと合流路234dとが通じている。
【0035】
フラップ弁235は、ピストンヘッド23の第2部分232に設けられている。フラップ弁235は、たとえば一定厚みのバネ鋼によって構成されており、基端側が第2部分232の上面にネジ止めされるとともに、自然状態において先端側の弁本体235aが第2貫通孔232cを閉塞している。図4および図9から理解されるように、フラップ弁235は、シリンダ13の軸方向視において、ピストンヘッド23の中心を通ってモータ3の出力軸31と略直交する方向(ピストンヘッド23の径方向)に延びている。
【0036】
図3および図4に表れているように、仕切板14は、シリンダ13の軸方向に貫通する排気口141と、排気口141の一端(上端)を開閉する排気用のフラップ弁(以下、排気弁142という)とを有している。排気弁142は、たとえば一定厚みのバネ鋼によって構成されており、シリンダヘッド15側(外部)から圧縮室1Bへの通気を阻止し、圧縮室1Bからシリンダヘッド15側(外部)への通気が許容されるようになっている。排気弁142の上部には、弁押え143が設けられている。弁押え143は、排気弁142の開度を一定範囲に制限するものであり、たとえば薄鋼板からなる。排気弁142および弁押え143は、これらの基端側が仕切板14の上面にネジ止めされている。
【0037】
次に、上記構成の圧縮機Xの組み立て手順について説明する。なお、組み立てステップ毎の詳細な図示説明は省略するが、図2および図6の分解斜視図を主に参照することによって以下の説明は理解されよう。
【0038】
まず、ケース本体11の開口部112を通じて、ピストンロッド21を挿入する。ここで、ピストンロッド21のリング状部211にはあらかじめ偏心軸22が連結されている一方、ピストンロッド21の上端に直結された第1部分231には、第2部分232が取り付けられていない。
【0039】
次に、モータ3の出力軸31を偏心軸22の軸孔22aに嵌挿し、モータ3およびモータケース4をケース本体11に固定する。次いで、バランサ222のネジ孔22b(第1のネジ孔)にセットビス25をねじ込み、偏心軸22を出力軸31に固定する。ここで、図10に表れているように、ケース本体11の開口部112に筒状の治具5を挿入する。治具5は、その内面部分が上方に向かうほど縮径するテーパー状とされており、偏心軸22が出力軸31に対して回転方向における所定位置にあるとき、ピストンヘッド23(第1部分231)が治具5に当接する。このとき、図9および図10から理解されるように、第1部分231は、モータ3の出力軸方向視において少し傾いており、シリンダ13の軸方向視において、ネジ孔22bと第1貫通孔231bとが重なる。したがって、ネジ孔22bへセットビス25をねじ込む作業は、ケース本体11の開口部112ないし第1部分231の第1貫通孔231bを通じて挿入される工具6(図10において仮想線で表す)を用いて行うことができ、ケース本体11にセットビス取付用の開口を別途設ける必要はない。このことは、ハウジング1の気密性を高めるうえで好ましい。
【0040】
次に、治具5を取り外し、シリンダ13をケース本体11の開口部112に挿入する。次いで、第1部分231に、シールリング233、第2部分232を順に重ね、第1部分231のネジ穴231dにビス26を締め付ける。このとき、第2部分232の位置決め突起232eを第1部分231の位置決め穴231eに嵌入させることにより、第1部分231に対する第2部分232の位置合わせを容易に行うことができる。ここで、第1部分231および第2部分232によってシールリング233が挟持されて、ピストンヘッド23が組み付けられる。
【0041】
次に、シリンダ13の先端に、仕切板14、シリンダヘッド15を順に重ね、固定ボルトを、シリンダヘッド15および仕切板14のボルト取付用のボス孔に挿通させるとともにケース本体11に形成されたネジ穴にねじ込む。これにより、仕切板14およびシリンダヘッド15は、シリンダ13を介してケース本体11に固定される。次に、ケース本体11に側面カバー12を取り付け、ケース本体11の開口部111を塞ぐ。このようにして、圧縮機Xが組み立てられる。
【0042】
次に、上記構成の圧縮機Xの作用について説明する。
【0043】
本実施形態の圧縮機Xは、たとえば酸素濃縮装置に組み込まれ、酸素濃縮機構部に空気を圧送するのに用いられる。
【0044】
図4、図11〜図13から理解されるように、モータ3の駆動時には、偏心軸22が出力軸31周りに旋回し、この偏心軸22の旋回運動は、ピストンロッド21を介してピストンヘッド23の揺動をともなった往復運動として伝達される。ここで、図11から理解されるように、ピストンヘッド23が下動する過程においては、圧縮室1Bの容積の増加にともなって当該圧縮室1Bが減圧され、フラップ弁235が開く。このとき、吸気室1A内の空気は、通気路234を通じて圧縮室1B内に導入される。より詳細には、吸気室1A内の空気は、第1貫通孔231b,231cを経て分岐路234b,234cおよび合流路234dの順に通過し、第2貫通孔232cを経て圧縮室1Bに送り出される。このとき、ピストンヘッド23は、シリンダ13の径方向に対して傾いた姿勢をとりながら下動する。なお、排気弁142は閉じた状態にあり、シリンダヘッド15側から圧縮室1Bへの通気が阻止されている。
【0045】
図12に表れているように、ピストンヘッド23が下死点に到達すると、ピストンヘッド23は、シリンダ13の径方向に沿った水平姿勢となる。このとき、フラップ弁235および排気弁142のいずれもが閉じている。
【0046】
図13から理解されるように、ピストンヘッド23が上動する過程においては、圧縮室1Bの容積の減少にともなって当該圧縮室1B内の空気が圧縮される。当該圧縮室1B内が所定以上の圧力になると、排気弁142が開き、圧縮室1B内の空気は、排気口141を通じてシリンダヘッド15側へ導出され、排気ポート151を通じて圧縮機Xの外部に送出される。ここで、ピストンヘッド23は、シリンダ13の径方向に対して傾いた姿勢をとりながら上動する。このとき、フラップ弁235は閉じた状態にあり、圧縮室1Bから吸気室1Aへの通気が阻止されている。また、吸気室1Aの容積の増加にともない、吸気ポート121を通じて吸気室1A内に空気が導入される。
【0047】
そして、ピストンヘッド23が上死点に到達すると(図4参照)、ピストンヘッド23は、シリンダ13の径方向に沿った水平姿勢となる。このとき、フラップ弁235および排気弁142のいずれもが閉じている。このようにして、モータ3を駆動させると、ピストンヘッド23は、シリンダ13内において揺動しつつ往復動する。モータ3の回転数は、たとえば3000rpm程度とされる。
【0048】
本実施形態の圧縮機Xにおいて、図4、図11〜図13から理解されるように、フラップ弁235は、シリンダ13の軸方向視においてモータ3の出力軸31と略直交する面内に沿って揺動する。ピストンヘッド23の往復動にともなって当該ピストンヘッド23自体が出力軸31と略平行な軸周りに揺動するが、図4、図11〜図13等から理解されるように、フラップ弁235の揺動面は常にシリンダ13の軸方向に沿っている。そのため、フラップ弁235が開く際に、通気路234を通過した空気による押圧力が、フラップ弁235を開くための力として当該フラップ弁235に効率よく作用する。このことは、圧縮機Xの消費電力を低減するのに適している。
【0049】
フラップ弁235は、シリンダ13の軸方向視においてピストンヘッド23の中心を通って当該ピストンヘッド23の径方向に延びている。また、フラップ弁235の弁本体235aによって塞がれる通気路234の一端(第2貫通孔232c)は、ピストンヘッド23の径方向の周縁近傍に位置している。このような構成によれば、ピストンヘッド23の直径に対して、フラップ弁235の長さ(基端から先端までの寸法)を大きく確保することができる。フラップ弁235の長さを相対的に大にすると、フラップ弁235は相対的に小さな力でも開くようになる。このことは、圧縮機Xの消費電力を低減するうえで好ましい。
【0050】
本実施形態において、ピストンヘッド23に設けられたシールリング233は、ピストンロッド21の先端に連結された第1部分231と、この第1部分231に着脱可能に取り付けられた第2部分232とによって挟持されている。このため、シールリング233を交換する際には、第2部分232を第1部分231から分離すればシールリング233を取り外すことができ、第1部分231については偏心軸22を介してモータ3の出力軸31に連結された状態のままでよい。したがって、上記構成によれば、シールリング233の交換を容易に行うことができる。
【0051】
また、第2部分232は、シリンダ13の軸方向視におけるフラップ弁235を挟んだ両側の部位において、ビス26を用いて第1部分231に取り付けられている。このような2箇所(複数箇所)でのビス止めによれば、第2部分232の取り付けおよびシールリング233の装着を的確に行うことができる。
【0052】
フラップ弁235は、着脱可能とされた第2部分232に設けられている。これにより、シールリング233の交換時において、フラップ弁235自体を第2部分232から取り外す必要がなく、フラップ弁235の取り付けにともなう調整等も不要である。このことは、シールリング233の交換を容易に行ううえで好ましい。
【0053】
以上、本発明の具体的な実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の思想から逸脱しない範囲内で種々な変更が可能である。本発明に係る圧縮機の各部の具体的な形状や材質なども、上記実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0054】
X 圧縮機
1 ハウジング
2 ピストン
3 モータ
4 モータケース
5 治具
6 工具
1A 吸気室
1B 圧縮室
11 ケース本体
111,112 開口部
113 モータ取付孔
12 側面カバー
121 吸気ポート(吸気口)
13 シリンダ
14 仕切板
141 排気口
142 排気弁
15 シリンダヘッド
151 排気ポート
21 ピストンロッド
211 リング状部
22 偏心軸
221 偏心コア
222 バランサ
22a 軸孔
22b ネジ孔
23 ピストンヘッド
231 第1部分
231b,231c 第1貫通孔
232 第2部分
232c 第2貫通孔
233 シールリング
234 通気路
234a 連絡路
234b,234c 分岐路
234d 合流路
235 フラップ弁
31 出力軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダが形成されたハウジングと、
上記ハウジング内に収容されて往復動可能なピストンヘッドと、
モータによって旋回させられる偏心軸と、
上記偏心軸に一端が連結され、他端が上記ピストンヘッドに直結され、上記偏心軸の旋回運動を上記シリンダ内における上記ピストンヘッドの揺動をともなった往復運動に伝達するピストンロッドと、を備え、
上記ハウジング内の空間は、上記ピストンヘッドを境界として、吸気口に通じる吸気室と、排気口に通じる圧縮室とに分離されており、
上記ピストンヘッドは、このピストンヘッドと上記シリンダの内面との間をシールするシールリングと、上記吸気室と上記圧縮室とを連通させる通気路と、上記圧縮室から上記吸気室への通気を阻止し、上記吸気室から上記圧縮室への通気を許容するように上記通気路の一端に設けたフラップ弁と、を有している、圧縮機であって、
上記フラップ弁は、上記モータの出力軸と略直交する面内に沿って揺動するように構成されていることを特徴とする、圧縮機。
【請求項2】
上記フラップ弁は、上記シリンダの軸方向視において上記ピストンヘッドの中心を通って上記モータの出力軸と略直交する方向に延びており、
上記通気路の一端は、上記ピストンヘッドの径方向の周縁近傍に位置する、請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
上記ピストンヘッドは、上記ピストンロッドの他端が直結された第1部分と、この第1部分に着脱可能に取り付けられた第2部分とを備え、
上記シールリングは、上記第1部分と第2部分とによって挟持されており、
上記フラップ弁は、上記第2部分に設けられている、請求項2に記載の圧縮機。
【請求項4】
上記第2部分は、上記シリンダの軸方向視における上記フラップ弁を挟んだ両側の部位において、ビスによって上記第1部分に取り付けられている、請求項3に記載の圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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