説明

圧縮機

【課題】吐出流体の冷却機能を有しつつ、騒音の低減を図る圧縮機を提供することを目的とする。
【解決手段】圧縮機101は、吸入した空気を圧縮したのち吐出するための圧縮機構10aと、吐出された空気を冷却し圧力変動を緩和するインタクーラコア32とを共に含むハウジング1を備える。ハウジング1は、圧縮機構10aを収容するロータ室3a1と、インタクーラコア32を収容する消音冷却室31と、ロータ室3a1を消音冷却室31に連通する吐出孔3dとを備えるよう一体形成されたシリンダブロック3を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素の排出削減のために燃料電池を使用した電気自動車の開発が行われている。燃料電池は、カソード極に供給される酸素と、アノード極に供給される水素との電気化学反応によって発電する。そして、電気自動車では、燃料電池のカソード極へ酸素を供給するために、圧縮機(コンプレッサ)で圧縮供給して得られる空気中の酸素を使用している。
【0003】
しかしながら、圧縮機では、吸気口側及び吐出口側から様々な騒音が発生するという問題がある。
さらに、燃料電池を搭載した電気自動車においては、燃料電池の反応温度や耐熱性の面から、圧縮機から吐出される空気の温度を低下させる必要があり、吐出空気の温度を低下させるためにインタクーラ等の熱交換器が設けられるが、他に多数の補機類が搭載されることもあり、搭載スペースの確保が難しいという問題がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、燃料電池自動車に搭載される2つのロータを有したスクリュー型のコンプレッサにおいて、吐出口側からの騒音を低減するための消音機能と吐出される流体(空気)の冷却機能とを兼ねた消音器兼冷却器を備えるものが記載されている。この特許文献1では、コンプレッサのハウジングの外側に、その内部に付加的な空間を形成するカバーが取り付けられ、付加的な空間は、2つのロータの平行な2つの中心軸を結ぶ平面に対して直交するようにして延び且つ2つの中心軸のそれぞれを通る2つの平面の間に、形成されている。すなわち、付加的な空間は、一対のロータによってハウジングの一部に谷間が形成される位置に形成される。
【0005】
さらに、付加的な空間は、ロータが納められる空間の吐出ポートに接続する入口側空間と、カバーの開口である吐出口に接続する出口側空間とを形成している。そして、入口側空間と出口側空間との間は、付加的な空間内に設けられた複数の熱交換用チューブによって接続されている。さらに、複数の熱交換用チューブの中には熱交換用の流路が形成され、複数の熱交換用チューブ同士の間には冷却水路が形成されている。そして、熱交換用チューブの外側に取り付けられた熱交換用フィンが冷却水路に突出している。これによって、吐出ポートから付加的な空間に吐出された空気等の流体は、入口側空間から出口側空間に流れる際に、熱交換用チューブ内に形成される絞られた熱交換用の流路を流れる間に、吐出脈動が平滑化されて消音作用を受けると同時に、冷却水路の冷却水と熱交換を行って冷却作用を受ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−184767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1におけるコンプレッサ(圧縮機)では、ハウジングに対してカバーが別体で取り付けられているため、コンプレッサが発生する機械振動によってハウジングとカバーとが別個の振動を発生させ、発生した振動によってカバー自体が騒音を発生させることや、発生した振動によってカバーが変形し、変形箇所が振動することによって騒音を発生させる可能性があるという問題がある。
【0008】
この発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、吐出流体の冷却機能を有しつつ、騒音の低減を図る圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、この発明に係る圧縮機は、吸入した流体を圧縮したのち吐出するための圧縮機構と、吐出された流体を冷却し圧力変動を緩和する消音冷却器とを共に含むハウジングを備え、ハウジングは、圧縮機構を収容する圧縮空間と、消音冷却器を収容する消音冷却空間と、圧縮空間を消音冷却空間に連通する連通孔とを備えるよう一体形成されたシリンダブロックを有する。
【0010】
消音冷却空間は底部を有する凹形状であってもよい。
ハウジングは、外部と消音冷却空間とを連通する吐出口を有し、シリンダブロックのうち消音冷却空間をはさんで連通孔と対向する部位は、吐出口の形成位置から圧縮空間側へと傾斜する形状であってもよい。
ハウジングは、外部と消音冷却空間とを連通する開口部を有し、開口部は制振材料により形成された壁部材によって閉塞されてもよい。
【0011】
壁部材は、開口部からハウジングの外部に向かって滑らかな凸型の形状を有していてもよい。
ハウジングは、消音冷却空間を囲む壁部に設けられて上記壁部との間に空洞を形成する仕切板を有し、仕切板には、消音冷却空間を空洞に連通する穴が形成されていてもよい。
仕切板の穴は、複数設けられ、仕切板の穴の中心軸に沿って消音冷却空間から空洞に向かう方向の空洞の厚さは、仕切板の各穴で異なっていてもよい。
ハウジングは圧縮機構を駆動するための駆動装置を収容するシェルを有してもよい。
圧縮機構は複数の回転体を係合させたものであり、ハウジングは、駆動装置の駆動力を回転体に伝達するためのギヤ機構を含むギヤカバーを有し、シェルとギヤカバーとは、シリンダブロックを通る締結具によって、直列に固定されてもよい。
シリンダブロックは、金属材料を使用して一体成型されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係る圧縮機によれば、吐出流体の冷却機能を有しつつ、騒音を低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態1に係る圧縮機の構成を示す模式的な斜視図である。
【図2】図1のy−y方向の線及びz―z方向の線を含む断面を方向IIから見た断面を示す模式図である。
【図3】図2のIII−III線に沿った断面を示す模式図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係る圧縮機の構成を示す模式的な斜視図である。
【図5】図4のy−y方向の線及びz―z方向の線を含む断面を方向Vから見た断面の一部を示す模式図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿った断面を示す模式図である。
【図7】図4の圧縮機を側方から見た模式図である。
【図8】この発明の実施の形態3に係る圧縮機のシリンダブロックを斜め後方から見た模式的な斜視図である。
【図9】図8のy−y方向の線及びz―z方向の線を含む断面を方向IXから見た断面を示す模式図であり、ギヤカバーを付け加えたものである。
【図10】この発明の実施の形態4に係る圧縮機の一部の示す模式的な断面側面図である。
【図11】図10のXI−XI線に沿った断面を示す模式図である。
【図12】この発明の実施の形態2に係る圧縮機の変形例を示す模式的な断面側面図である。
【図13】この発明の実施の形態4に係る圧縮機の変形例を示す模式的な断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態について添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
まず、この発明の実施の形態1に係る圧縮機101の構成を説明する。なお、以下の実施の形態において、圧縮機101として、車両に搭載された燃料電池システムの一部を構成し且つ大きい音を発生する吐出脈動を生じるルーツ式のエアコンプレッサを使用した場合の例について説明する。
【0015】
図1を参照すると、圧縮機101は、流体として空気を圧縮する圧縮機構を内部に有する圧縮機構部10と、水冷式のインタクーラコアを内部に有する消音冷却部30とを一体に備えている。また、圧縮機101は、圧縮機構部10に一体に連結され、且つ圧縮機構部10の圧縮機構を駆動するための駆動装置であるモータ40を備えている。つまり、圧縮機101は、圧縮機のアッセンブリとして、圧縮機構部10、消音冷却部30、及びモータ40を備えた状態で市場に供給される。
【0016】
ここで、圧縮機構部10から消音冷却部30に向かってz軸が延び、圧縮機構部10から消音冷却部30に向かう方向を+z方向とし、+z方向と反対の方向を−z方向とする。さらに、圧縮機構部10からモータ40に向かってz軸と垂直にy軸が延び、圧縮機構部10からモータ40に向かう方向を+y方向とし、+y方向と反対の方向を−y方向とする。そして、y軸及びz軸と垂直にx軸が延び、紙面上で左から右に向かう方向を+x方向とし、+x方向と反対の方向を−x方向とする。
【0017】
図2を参照すると、図1のy−y方向の線及びz―z方向の線を含む圧縮機101の断面、すなわちy軸及びz軸を含む平面に平行な圧縮機101の断面を+x方向から−x方向に向かって見た図、つまり、圧縮機構部10の主回転シャフト6及びモータ40の駆動シャフト42の中心軸を通る圧縮機101の断面図が示されている。
【0018】
圧縮機101は、中央のハウジングであるシリンダブロック3と、モータ40と反対側でシリンダブロック3と接合されるフロントハウジング2と、モータ40側でシリンダブロック3と接合されるリアハウジング4と、リアハウジング4に対してモータ40側で接合されるギヤカバー5とから一体に形成されるハウジング1を有している。さらに、ギヤカバー5におけるリアハウジング4と反対側には、モータ40のケーシングを構成するシェル41が一体に連結され、ハウジング1を構成している。
【0019】
シリンダブロック3は、圧縮機構部10を形成する第一シリンダブロック部3aと、消音冷却部30を形成する第二シリンダブロック部3bとが同じ金属材料で鋳造成型等によって一体成型された構成を有している。第一シリンダブロック部3aは、+y方向の1つの面が開放されているロータ室3a1を内部に形成し、第二シリンダブロック部3bは、+y方向及び−y方向の両側が開放した角柱状の貫通部3b1を形成している。ここで、ロータ室3a1は、圧縮空間を構成している。
リアハウジング4は、圧縮機構部10を形成する第一リアハウジング部4aと、消音冷却部30を形成する第二リアハウジング部4bとが同じ金属材料で鋳造成型等によって一体成型された構成を有している。第一リアハウジング部4aは、ロータ室3a1の開放された面を閉鎖するようにして第一シリンダブロック部3aと接合されている。第二リアハウジング部4bは、−y方向の面で開放し且つ貫通部3b1に整合する角柱状の凹部4b1を形成し、第二シリンダブロック部3bと接合されている。
ギヤカバー5は、圧縮機構部10側で第一リアハウジング部4aと共に、閉鎖されたギヤ室5aを形成する。
【0020】
また、圧縮機構部10は、第一シリンダブロック部3a及び第一リアハウジング部4aを貫通してギヤ室5aの内部に延びる主回転シャフト6を有し、主回転シャフト6は、モータ40の駆動シャフト42と第一ギヤ11を介して一体に回転するように連結されている。そして、主回転シャフト6は、第一シリンダブロック部3aに設けられたボールベアリング12及び第一リアハウジング部4aに設けられたボールベアリング13によって径方向に支持されている。
さらに、圧縮機構部10は、第一シリンダブロック部3a及び第一リアハウジング部4aを貫通してギヤ室5aの内部に延びる従回転シャフト7(図3参照)を有している。従回転シャフト7はギヤ室5a内の図示しない第二ギヤに一体に回転するように連結され、第二ギヤは、第一ギヤ11とギヤ係合している。
【0021】
そして、フロントハウジング2は、圧縮機構部10を形成する第一フロントハウジング部2aと、消音冷却部30を形成する第二フロントハウジング部2bとが同じ金属材料で鋳造成型等によって一体成型された構成を有している。第一フロントハウジング部2aは、主回転シャフト6及び従回転シャフト7(図3参照)の端部を覆うようにして第一シリンダブロック部3aと接合されている。第二フロントハウジング部2bは、+y方向の面で開放し且つ貫通部3b1に整合する角柱状の凹部2b1を形成し、第二シリンダブロック部3bと接合されている。
よって、凹部2b1、貫通部3b1及び凹部4b1は、消音冷却部30の内部に、略直方体状の1つの消音冷却空間である消音冷却室31を形成する。
【0022】
また、圧縮機構部10は、ロータ室3a1の内部に設けられて主回転シャフト6に一体に回転するようにして連結された第一ロータ8と、ロータ室3a1の内部に設けられて従回転シャフト7(図3参照)に一体に回転するようにして連結された第二ロータ9(図3参照)とを有している。ここで、第一ロータ8及び第二ロータ9は、回転体を構成している。
【0023】
図3を参照すると、第一ロータ8及び第二ロータ9はいずれも、3つの突出部をもつ三葉式のロータとなっており、互いに同形状をしている。そして、第一ロータ8及び第二ロータ9は互いに、一方のロータの突出部同士の間に他方のロータの突出部がはまり込むようにして係合している。
さらに、第一ギヤ11(図2参照)と図示しない第二ギヤとが互いにギヤ係合しているため、駆動シャフト42(図2参照)を介して主回転シャフト6が回転駆動されると従回転シャフト7が主回転シャフト6と同じ回転速度で従動回転し、それにより、第一ロータ8及び第二ロータ9が同じ回転速度で互いに反対方向に回転する。
【0024】
そしてまた、図2及び図3をあわせて参照すると、シリンダブロック3の第一シリンダブロック部3a、リアハウジング4の第一リアハウジング部4a、ギヤカバー5、第一ロータ8、第二ロータ9、主回転シャフト6、従回転シャフト7、第一ギヤ11、図示しない第二ギヤ、及びこれらの内部に含まれる部材は、吸入した空気を圧縮したのち吐出するための圧縮機構10aを構成している。さらに、ロータ室3a1は、圧縮機構10aにおける空気を圧縮する部位を収容している。
【0025】
また、図3を参照すると、シリンダブロック3には、ロータ室3a1を消音冷却室31に連通する連通孔である吐出孔3dが、ロータ室3a1と貫通部3b1(図2参照)との間に形成され、吐出孔3dは、消音冷却室31の入口33で開口している。さらに、シリンダブロック3の第一シリンダブロック部3aには、ロータ室3a1に対して吐出孔3dと反対側の位置に、吸入孔3cが形成されている。
【0026】
図2に戻り、圧縮機構部10において、吸入孔3cの外部への吸入開口部20には、圧縮機101の車両への搭載時、図示しないエアクリーナ等が取り付けられた吸気管が接続される。
【0027】
また、消音冷却部30において、シリンダブロック3の第二シリンダブロック部3bにおける−x方向の側部3ba(図3参照)には、消音冷却室31を外部に連通する吐出口34が形成されている。そして、吐出口34は、入口33に対して方向を変えて消音冷却部30の外部に開口しており、図示しない燃料電池のカソード極に配管を介して連通する。
さらに、消音冷却室31には、吐出口34と吐出孔3dとの間に、内部に冷却水が流れる冷却管及び冷却管に取り付けられたフィンによって構成される水冷式のインタクーラコア32が設けられている。フィンは、冷却管同士の間に形成される流体の流路に対して突出させて設けられ、流体の流路を格子状の流路に区分している。そして、フィンは、流路を流れる流体と冷却管との伝熱面積を増大させ、互いの熱交換効率を向上させている。
【0028】
また、インタクーラコア32は、消音冷却室31を、入口33を含む第一消音冷却室部31aと吐出口34を含む第二消音冷却室部31bとに区画するようにして延在している。このため、入口33から第一消音冷却室部31aに吐出された空気は、インタクーラコア32を必ず通過して第二消音冷却室部31bに流入し、その後方向を変えて吐出口34から外部に吐出される。
ここで、インタクーラコア32は、消音冷却器を構成している。
【0029】
次に、この発明の実施の形態1に係る圧縮機101の動作を説明する。
図2を参照すると、圧縮機101では、モータ40は、稼働されるとその駆動シャフト42を回転駆動させ、それに伴い、圧縮機構部10において、駆動シャフト42と一体の第一ギヤ11及び主回転シャフト6が回転され、さらに、主回転シャフト6と共に第一ロータ8が回転される。それによって、第一ギヤ11とギヤ係合している図示しない第二ギヤが回転され、さらに、第二ギヤと共に従回転シャフト7(図3参照)及び第二ロータ9(図3参照)が回転される。
【0030】
図3を参照すると、このとき、主回転シャフト6及び第一ロータ8は、紙面上で反時計回りの方向となる方向Pへ回転し、従回転シャフト7及び第二ロータ9は、紙面上で時計回りの方向となる方向Qへ回転する。
【0031】
これによって、吸入側となるロータ室3a1内の吸入孔3c付近に負圧が発生し、吸入孔3c及び吸入開口部20を介して、圧縮機101の外部からロータ室3a1内に外気である空気が吸入される。吸入された空気は、第一ロータ8とロータ室3a1の内周面3a1aとで囲まれる空間3e1、及び、第二ロータ9とロータ室3a1の内周面3a1aとで囲まれる空間3e2内に閉じ込められる。空間3e1及び3e2に閉じこめられた空気は、ロータ室3a1の内周面3a1aに沿って、方向P及び方向Qにそれぞれ運ばれ、吐出側となる吐出孔3dに昇圧された状態で吐出される。吐出孔3dに吐出された圧縮空気は全て、吐出孔3dを通過後に入口33から消音冷却室31の第一消音冷却室部31aに吐出され、さらにインタクーラコア32を通過して第二消音冷却室部31bに吐出され、そして、吐出口34から圧縮機101の外部に吐出されて、図示しない燃料電池のカソード極へ酸化剤として供給される。
【0032】
このとき、インタクーラコア32では図示しない冷却管を冷却水が流通しているため、消音冷却室31では、圧縮機構10aでの圧縮作用によって温度を上昇させた圧縮空気が、インタクーラコア32を通過する際に、冷却管の冷却水と熱交換することによって冷却される。
【0033】
また、空間3e1及び3e2に閉じこめられた空気はそれぞれ、吐出孔3dに吐出される際に吐出脈動を伴い、この吐出脈動が騒音を発生させる要因となる。
しかしながら、吐出孔3dを介して第一消音冷却室部31aに吐出された圧縮空気は、インタクーラコア32の図示しない格子状のフィンの間を通過する際に整流されて圧力変動が緩和され、それにより、吐出脈動を低減させて第二消音冷却室部31bに吐出される。よって、吐出口34から圧縮機101の外部に吐出された圧縮空気は、吐出脈動を低減させた状態となっており、発生する騒音が低くなる。また、インタクーラコア32を通過する前の圧縮空気についても、吐出脈動によって放射音を発生させる部位の面積が、第一消音冷却室部31aの周囲を取り囲むハウジング1の壁部の面積でしかなく、小さいものであるため、発生する放射音は低くなっている。
従って、圧縮機101は、上述の2つの作用によって吐出脈動による騒音を低減している。
【0034】
上述で説明するように、この発明に係る圧縮機101は、吸入した空気を圧縮したのち吐出するための圧縮機構10aと、吐出された空気を冷却し圧力変動を緩和するインタクーラコア32とを共に含むハウジング1を備える。ハウジング1は、圧縮機構10aを収容するロータ室3a1と、インタクーラコア32を収容する消音冷却室31と、ロータ室3a1を消音冷却室31に連通する吐出孔3dとを備えるよう一体形成されたシリンダブロック3を有している。
【0035】
このとき、圧縮機101では、インタクーラコア32は、吐出される空気を冷却すると共に、吐出される空気の圧力変動を緩和することによって吐出脈動による騒音を低減することができる。また、圧縮機101は、インタクーラコア32が空気の消音及び冷却機能の両方を有することによって、空気の消音及び冷却のための構造を小型化することができ、さらに、消音冷却室31をロータ室3a1の吐出側に連通させてロータ室3a1と一体に含むことによって、消音冷却室31とロータ室3a1との間の配管が不要になるため、さらなる小型化を図ることができる。そして、消音冷却室31とロータ室3a1との間において配管が不要であることから、吐出脈動により放射音を発生させる発音面積が小さくなるため吐出脈動の放射による騒音を低減することができる。
【0036】
さらに、圧縮機101では、ロータ室3a1を収容する第一シリンダブロック部3aと、消音冷却室31を収容する第二シリンダブロック部3bとを一体形成しているため、互いの連結部の剛性及び強度が向上している。これにより、圧縮機構10aの機械振動によって、第一シリンダブロック部3aと第二シリンダブロック部3bとが、一体に振動する。このため、シリンダブロック3の各部が別個に振動することによってそれぞれの間で騒音を発生させることや、シリンダブロック3の各部が別個に振動することによってシリンダブロック3が変形し、変形箇所が振動することによって騒音を発生させるという問題の発生を抑えることができる。また、ロータ室3a1を収容する第一フロントハウジング部2a及び第一リアハウジング部4aと、消音冷却室31を収容する第二フロントハウジング部2b及び第二リアハウジング部4bとをそれぞれ一体形成している。これによっても、各ハウジング部が別個に振動することによって、ハウジング部同士の間で騒音を発生させることや、ハウジング部が変形して変形箇所が振動することを抑えることができる。
従って、圧縮機101は、吐出される空気の冷却機能を有しつつ、騒音を低減することを可能にする。
【0037】
なお、インタクーラコア32は、水冷式の場合、インタクーラコア32の内部の冷却管を流通する冷却水と、インタクーラコア32を通過する吐出された空気とを熱交換させ、吐出された空気の温度を低下させることができる。また、インタクーラコア32は、空冷式の場合、インタクーラコア32の内部を流通する気体と、インタクーラコア32を通過する吐出された空気とを熱交換させ、吐出された空気の温度を低下させることができる。さらに、インタクーラコア32では、吐出された空気が流通する流路にフィンを突出させることによって、吐出された空気の熱交換効率を向上させている。そして、このフィンの間を通過する際に、吐出された空気が整流されて圧力変動が低減されるため、その吐出脈動が低減される。よって、インタクーラコア32は、吐出された空気の消音及び冷却機能を兼ねることができるため、消音用のサイレンサ等を廃止して消音冷却室31の小型化を図ることも可能にする。
【0038】
また、圧縮機101では、消音冷却室31から外部に吐出される空気が冷却されているため、消音冷却室31の吐出口34に接続される配管に要求される耐熱性が低くなる。よって、吐出口34に接続される配管には、金属製ではなく樹脂製の配管を使用することができ、それにより、圧縮機101を搭載する車両の軽量化を図ることが可能になる。
【0039】
また、圧縮機101のハウジング1は、圧縮機構10aを駆動するためのモータ40を収容するシェル41を有している。このとき、圧縮機101は、圧縮機構部10、消音冷却部30、及びモータ40を備えた状態で、圧縮機のアッセンブリとして供給される。よって、駆動装置及び吐出空気の消音・冷却機能を備えた小型の圧縮機の提供が可能になる。
【0040】
また、圧縮機101において、第一フロントハウジング部2a、第一シリンダブロック部3a及び第一リアハウジング部4aと、第二フロントハウジング部2b、第二シリンダブロック部3b及び第二リアハウジング部4bとはそれぞれ、金属材料を使用して一体成型されている。これによって、フロントハウジング2、シリンダブロック3及びリアハウジング4はいずれも、継ぎ目のない1つの連続した部材から構成される。よって、第一フロントハウジング部2a、第一シリンダブロック部3a及び第一リアハウジング部4aと、第二フロントハウジング部2b、第二シリンダブロック部3b及び第二リアハウジング部4bとの間の剛性及び強度を向上させることが可能になる。
【0041】
また、実施の形態1において、消音冷却部30の消音冷却室31は、フロントハウジング2、シリンダブロック3及びリアハウジング4によって形成されていたが、これに限定されるものでない。シリンダブロック3とフロントハウジング2、又は、シリンダブロック3とリアハウジング4によって、消音冷却室31が形成されてもよい。
【0042】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る圧縮機201は、実施の形態1の圧縮機101のフロントハウジング2、シリンダブロック3及びリアハウジング4を1つの部品からなる一体構造としたものである。さらに、圧縮機201では、実施の形態1の圧縮機101における第一シリンダブロック部3aと第二シリンダブロック部3bとの幅が実質的に同一となるように構成されている。
なお、以下の実施の形態において、前出した図における参照符号と同一の符号は、同一又は同様な構成要素であるので、その詳細な説明は省略する。
【0043】
図4を参照すると、圧縮機201は、内部にロータ室220及び消音冷却室231を含むシリンダブロック210と、シリンダブロック210に連結されたギヤカバー25と、ギヤカバー25に連結されたモータ240のシェル241とを有している。シリンダブロック210、ギヤカバー25及びシェル241は、圧縮機201のハウジング200を構成している。
【0044】
シリンダブロック210は、実施の形態1の圧縮機101におけるフロントハウジング2、シリンダブロック3及びリアハウジング4を一体にしたものである。ロータ室220は、主回転シャフト6及び第一ロータ8と、従回転シャフト7及び第二ロータ9とを内部に有している。消音冷却室231は、ロータ室220の吐出側に形成され、内部にインタクーラコア32を有している。
【0045】
図4のy−y方向の線及びz―z方向の線を含むシリンダブロック210及びギヤカバー25の中央での断面を方向Vから見た図である図5をあわせて参照すると、シリンダブロック210は、ギヤカバー25と反対側となるフロント側に、実施の形態1の圧縮機101におけるフロントハウジング2に相当する前壁210fを一体に有している。前壁210fは、ロータ室220及び消音冷却室231をフロント側より塞いでいる。また、シリンダブロック210は、ギヤカバー25側となるリア側に、実施の形態1の圧縮機101におけるリアハウジング4の一部に相当し且つ消音冷却室231を塞ぐ後壁210eを一体に有している。なお、シリンダブロック210におけるリア側の後端部210e1では、ロータ室220が開口しており、この開口はギヤカバー25によって閉鎖されるようになっている。つまり、ギヤカバー25は、実施の形態1の圧縮機101におけるリアハウジング4の一部を構成している。
【0046】
また、前壁210fでは、インタクーラコア32を外部から消音冷却室231内に挿入して設置するためのコア挿入開口210f2が形成されており、さらに、コア挿入開口210f2に対してロータ室220と反対側の上方(+z方向)に、消音冷却室231を外部に連通する吐出口234が形成されている。
【0047】
そして、前壁210fの外表面210f1には、吐出管部材251が取り付けられている。吐出管部材251は、ボルト等の締結具によって前壁210fに固定される板状のフランジ部251bと、フランジ部251bと一体に設けられた管路部251aとを有している。フランジ部251bを前壁210fに固定したとき、フランジ部251bはコア挿入開口210f2を塞ぎ、管路部251aは、その内部の管路251a1が吐出口234に整合し消音冷却室231を外部に連通する。さらに、管路部251aは、図示しない燃料電池のカソード極に連通する配管に接続される。なお、図4は、吐出管部材251を省略して描かれている。
【0048】
また、前壁210fは、吐出口234のある中央部210fcで、吐出口234の形状にあわせて両側部より上方側に突出している。
さらに、シリンダブロック210において消音冷却室231の天井を形成する上壁210aが、前壁210fから、より低く形成された側壁210b及び210c並びに後壁210eへと、下方へ傾斜して延在するように形成されている。
これにより、シリンダブロック210は、低頭化されており、側壁210b及び210c並びに後壁210eを前壁210fと同一の高さで形成する場合より、消音冷却室231を囲む壁の面積を大幅に低減している。
【0049】
また、シリンダブロック210において、消音冷却室231を下方のロータ室220側から塞いでロータ室220と消音冷却室231とを仕切る仕切壁210gには、消音冷却室231の入口233を形成する吐出孔210iが後壁210e側に形成されている。また、シリンダブロック210において、その側壁210b及び210cに連続し且つ湾曲した底壁210d(図6参照)には、吸入孔210hが形成されている。
よって、ロータ室220から入口233を通って消音冷却室231内に吐出された空気は、インタクーラコア32を通過した後に吐出口234及び管路251a1から外部に吐出される。
【0050】
また、消音冷却室231は、上壁210a、側壁210b及び210c、仕切壁210g、前壁210f、並びに後壁210eによって囲まれ、コア挿入開口210f2、吐出口234、及び入口233で開口するように構成されている。このため、消音冷却室231は、シリンダブロック210に対して、後壁210eを底部として有して前壁210fから後壁210eに向かう水平方向に向かって延びる凹状の空間をつくることによって、形成されている。
【0051】
また、図6を参照すると、シリンダブロック210の側壁210b及び210cは、側方(x軸方向)へ出入り、屈折等をせずに互いに平行に延びて、ロータ室220から消音冷却室231にわたって実質的に一定の幅Bを有するシリンダブロック210を形成している。さらに、図5を参照すると、シリンダブロック210の前壁210f及び後壁210eは、前後方向(y軸方向)へ出入り、屈折等をせずに互いに平行に延びて、ロータ室220から消音冷却室231にわたって実質的に一定の長さLを有するシリンダブロック210を形成している。
【0052】
また、図7を参照すると、モータ240のシェル241は、駆動部分と、駆動部分に電力を供給するための電源装置とを内部に含み、その端部にフランジ241aを有している。そして、シェル241は、フランジ241aを貫通し且つギヤカバー25を貫通する締結具であるボルト241cを、シリンダブロック210の後端部210e1の図示しない雌ねじ穴に締結することによって、ギヤカバー25と共にシリンダブロック210に固定されている。つまり、シェル241及びギヤカバー25は、これらを貫通するボルト241cによってシリンダブロック210に一体に固定されている。
【0053】
また、この発明の実施の形態2に係る圧縮機201のその他の構成及び動作は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
そして、実施の形態2における圧縮機201によれば、上記実施の形態1の圧縮機101と同様な効果が得られる。
【0054】
また、圧縮機201のシリンダブロック210において、消音冷却室231が後壁210eを底部する凹形状に形成されたものであるため、消音冷却室231は、剛性のある構造によって周囲が囲まれている。よって、消音冷却室231は、実施の形態1の消音冷却室31より剛性の高い壁によって囲まれている。これにより、消音冷却室231を囲う壁が、圧縮機構10aの吐出脈動によって、シリンダブロック210のその他の部分に対して相対振動することや変形することがさらに低減され、それ故共振することによって振動が増幅されることが抑制されるため、騒音を低減することが可能になる。
また、圧縮機201のシリンダブロック210では、ロータ室220から消音冷却室231にわたって、幅及び長さが実質的に一定となっている。よって、シリンダブロック210は、内部で吐出脈動が発生しても複雑な振動を起こさない。
【0055】
また、圧縮機201のシリンダブロック210は、外部と消音冷却室231とを連通する吐出口234を有し、シリンダブロック210のうち消音冷却室231をはさんで吐出孔210iと対向する部位である上壁210aは、吐出口234の形成位置からロータ室220側へと傾斜する形状である。これにより、シリンダブロック210は、低頭化されるため、消音冷却室231を囲む壁による音響放射面積が低減されて、その放射音が低減される。また、低頭化によりシリンダブロック210の剛性が増大することによっても、その振動を低減することができる。
【0056】
また、圧縮機201では、モータ240のシェル241と、モータ240の駆動力を全てのロータ8及び9に伝達するためのギヤ機構を含むギヤカバー25とが、シリンダブロック210を通るボルト241cによって、直列に固定されている。シリンダブロック210、ギヤカバー25及びシェル241が、これらを通るボルト241c等の締結具によって、一列になって一緒に連結・固定されるため、各連結部の剛性が増大し、シリンダブロック210とシェル241との間における相対振動を低減することができる。なお、ボルト241cがシリンダブロック210を貫通していても、同様の効果が得られる。
【0057】
また、実施の形態2の圧縮機201では、シリンダブロック210は、実質的に一定の幅B及び長さLを有していたが、これに限定されるものでない。ロータ室220から消音冷却室231に向かって、シリンダブロック210の幅及び長さの少なくとも一方が狭くなっていてもよい。
【0058】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係る圧縮機301は、実施の形態2の圧縮機201におけるシリンダブロック210の上壁210aを制振性を有する材料からなる部材にしたものである。
【0059】
図8及び図9をあわせて参照すると、圧縮機301のシリンダブロック310は、実施の形態2の圧縮機201と同様に、上壁310a、側壁310b及び310c、底壁310d、前壁310f、ロータ室320、消音冷却室331、吸入孔310h、吐出孔310i、並びに吐出口334を有している。さらに、シリンダブロック310は、上壁310aに、消音冷却室331を外部に連通する矩形状の開口部310a1を有し、後端部310e1に後壁を有さずに消音冷却室331をリア側に開口する冷却室開口310e2を有している。そして、冷却室開口310e2はコア挿入開口を兼ねており、インタクーラコア32は、冷却室開口310e2から消音冷却室331の内部に挿入されて設置されるように構成されている。
【0060】
また、圧縮機301は、開口部310a1を外側から塞ぐ制振カバー350を有している。
制振カバー350は、開口部310a1の周囲で上壁310aの外表面に整合する板状の縁部350aと、縁部350aの内側に一体に形成された板状の本体部350bとによって構成されている。そして、制振カバー350は、縁部350aがボルト350cによって上壁310aに固定されている。さらに、制振カバー350は、本体部350bが消音冷却室331の入口333(吐出孔310i)に対向する位置となるように、形成されている。
【0061】
なお、制振カバー350は、制振性を有する材料によって形成されている。制振性を有する材料には、金属板の間に樹脂を挟んだ制振鋼板若しくは貼付型積層板等の拘束型制振材、金属板に樹脂を貼り付ける、塗布する若しくは吹き付けた非拘束型制振材、又は、金属自体に振動吸収能力をもつ制振合金を使用することができる。なお、制振合金には、片状黒鉛鋳鉄等の複合構造型、サイレンタロイ(Fe−Cr−Al)等の強磁性型(内部摩擦によるもの)、マグネシウム合金等の転移型、Mn−Cu合金等の相晶変形型の合金を使用することができる。さらに、制振性を有する材料は、その損失係数(η)が10−2以上の特性を有している。
ここで、制振カバー350は、シリンダブロック310における制振材料によって形成される壁部材を構成している。
【0062】
また、この発明の実施の形態3に係る圧縮機301のその他の構成及び動作は、実施の形態2と同様であるため、説明を省略する。
そして、実施の形態3における圧縮機301によれば、上記実施の形態2の圧縮機201と同様な効果が得られる。
また、圧縮機301において、シリンダブロック310は、外部と消音冷却室331とを連通する開口部310a1を有し、開口部310a1は、制振材料により形成された制振カバー350によって閉塞されている。制振カバー350は、圧縮機構10aの吐出脈動が発生する振動による変形を減衰させるため、シリンダブロック310の振動を抑え、圧縮機301の騒音を低減することを可能にする。さらに、制振カバー350を用いることによって、シリンダブロック310の壁部の剛性を低下させても騒音が増大しないため、圧縮機301の軽量化も可能にする。
【0063】
また、実施の形態3の圧縮機301では、シリンダブロック310の上壁310aにのみ制振カバー350を設けていたが、これに限定されるものでなく、前壁310f、並びに側壁310b及び310cのいずれに対しても、制振カバー350を設けてもよい。また、制振カバー350は、ボルト350cを使用してシリンダブロック310に取り付けられていたが、シリンダブロック310の成型時に一体となるように埋め込まれてもよい。
また、制振カバー350は、実施の形態1のフロントハウジング2、シリンダブロック3及びリアハウジング4、並びに、実施の形態2のシリンダブロック210の上壁210a、側壁210b、側壁210c、前壁210f及び後壁210eに適用してもよい。
【0064】
実施の形態4.
この発明の実施の形態4に係る圧縮機401は、実施の形態3の圧縮機301における制振カバー350及びその周辺の構造を変更したものである。
【0065】
図10及び図11をあわせて参照すると、圧縮機401のシリンダブロック410は、実施の形態2の圧縮機201のシリンダブロック210と同様の構成のものが用いられており、上壁410a、側壁410b及び410c、底壁410d、前壁410f、後壁410e、ロータ室420、消音冷却室431、吸入孔410h、吐出孔410i、並びに吐出口434を有している。さらに、シリンダブロック410は、上壁410aに、消音冷却室431を外部に連通する矩形状の開口部410a1を有している。
【0066】
また、圧縮機401は、開口部410a1を外側から塞ぐ制振カバー450を有している。制振カバー450は、実施の形態3の制振カバー350と同様の制振性を有する材料によって形成され、開口部410a1の周囲で上壁410aの外表面に整合する板状の縁部450aと、縁部450aの内側に一体に形成された板状の本体部450bとによって構成されている。本体部450bは、消音冷却室431の内部からシリンダブロック410の外部に向かって突出するように湾曲し、滑らかな凸型の形状を有している。つまり、本体部450bは、前壁410fから後壁410eに向かう方向及び側壁410bから側壁410cに向かう方向のいずれの方向においても湾曲し、卵殻状のシェル形状を有している。
【0067】
また、圧縮機401は、上壁410aと制振カバー450との間に、仕切板451を有している。仕切板451は、開口部410a1の周囲で上壁410aの外表面に整合する板状の縁部451aと、縁部451aの内側に一体に形成された板状の本体部451bとによって構成されている。本体部451bは、シリンダブロック410の外部から消音冷却室431の内部に向かって突出するようにして前壁410fから後壁410eに向かう方向及び側壁410bから側壁410cに向かう方向のいずれの方向においても湾曲しており、卵殻状のシェル形状を有している。さらに、仕切板451には、本体部451bを貫通する複数の貫通穴451cが形成されている。
【0068】
そして、制振カバー450及び仕切板451は、それぞれの縁部450a及び451aを一緒にボルト452によって上壁410aに固定されている。これにより、仕切板451が消音冷却室431の一部を仕切り、制振カバー450及び仕切板451によって囲まれる空洞453が、消音冷却室431の入口433(吐出孔410i)に対向する位置に形成される。
【0069】
空洞453では、貫通穴451cの中心軸451ccに沿って消音冷却室431から空洞453に向かう方向の厚さDが、中央から端に向かって薄くなっており、各貫通穴451cでの厚さDが同一となっていない。
【0070】
よって、入口433から消音冷却室431内に吐出された脈動を伴った空気は、インタクーラコア32を通過した後、仕切板451に向かって流れ、貫通穴451cを通って空洞453に流入する。空気が流入することによって空洞453内にあった空気がバネとして作用し、それにより、空洞453内では共鳴(ヘルムホルツ共鳴)が発生して、貫通穴451cにおける摩擦損失が増大し、空気の脈動が低減される。さらに、空洞453の厚さDが、貫通穴451cの位置によって異なることによって、低減される脈動の周波数が異なる。これにより、空洞453において広い周波数帯域で空気の脈動が低減される。
【0071】
さらに、制振カバー450の本体部450bは、シェル形状を有しているため、平板状の実施の形態3の制振カバー350と比較して、その剛性が高くなっている。これにより、制振カバー450は、高い剛性による自身の振動を抑制することができると共に制振性のある材料特性を有することによって、制振カバー450を介した振動の放射を抑える。
【0072】
従って、消音冷却室431内に吐出された空気は、インタクーラコア32で脈動が低減された後、空洞453において広い周波数帯域で脈動がさらに低減され、さらに剛性が高く制振性を有する制振カバー450によって外部への振動の放射つまり音の放射が抑えられる。
【0073】
また、この発明の実施の形態4に係る圧縮機401のその他の構成及び動作は、実施の形態3と同様であるため、説明を省略する。
そして、実施の形態4における圧縮機401によれば、上記実施の形態3の圧縮機301と同様な効果が得られる。さらに、制振カバー450の内側に隣接して、複数の貫通穴451cを介して消音冷却室431に連通し且つその厚みが変化する空洞453が設けられているため、制振カバー450に伝達する振動は広い周波数帯域で低減され、また、剛性の高い形状をしている制振カバー450はそれ自体の振動も低減し、それにより振動による音の放射が低減される。よって、圧縮機401は、実施の形態3の圧縮機301よりもさらに騒音を低減することができる。
【0074】
また、実施の形態4の圧縮機401では、シリンダブロック410の上壁410aにのみ制振カバー450及び仕切板451を設けていたが、これに限定されるものでなく、前壁410f、並びに側壁410b及び410cのいずれに対して設けてもよい。また、制振カバー450及び仕切板451は、ボルト452を使用してシリンダブロック410に取り付けられていたが、シリンダブロック410の成型時に一体となるように埋め込まれてもよい。
また、実施の形態4の圧縮機401では、いずれもシェル形状をした制振カバー450及び仕切板451を設けていたが、仕切板451が平板状であってもよく、また、制振カバー450又は仕切板451が一方向にのみ湾曲するかまぼこ状であってもよい。この場合も、各貫通穴451cでの厚さDが同一とならない空洞453が形成される。
【0075】
また、実施の形態4の圧縮機401では、シリンダブロック410の上壁410aに別部材の制振カバー450を設けていたが、上壁410a自体をシェル形状にしてもよい。この場合も、各貫通穴451cでの厚さDが同一とならない空洞453が形成され、さらに、上壁410aの剛性が向上して放射音が低減される。また、実施の形態1のフロントハウジング2、シリンダブロック3及びリアハウジング4、並びに、実施の形態2のシリンダブロック210において、壁をシェル形状にしてもよい。例えば、実施の形態2のシリンダブロック210は、図12に示すように上壁210aをシェル形状にすることができる。このとき、上壁の剛性が向上するため、この壁からの音の放射が低減される。
【0076】
また、制振カバー450及び仕切板451は、その両方又は片方を、実施の形態1のフロントハウジング2、シリンダブロック3及びリアハウジング4、並びに、実施の形態2のシリンダブロック210の上壁210a、側壁210b、側壁210c、前壁210f及び後壁210eに適用してもよい。また、実施の形態3の平板状の制振カバー350を制振カバー450にしてもよく、仕切板451を実施の形態3の平板状の制振カバー350と組み合わせて設けてもよい。
【0077】
また、図13に示すように、実施の形態4の圧縮機401における空洞453の全体又は一部に、吸音材454を封入してもよい。吸音材454は、脈動を減衰するものであってもよく、又は、弾性を有して空洞453内に別の共鳴を発生させてさらなる別の周波数の脈動を低減するものであってよく、それによって空洞453内の脈動をより低減することができる。例えば、吸音材454は、多孔質体、弾性体、発泡体等とすることができる。
【0078】
また、実施の形態1〜4の圧縮機101〜401において、消音冷却室31,231,331,431には、水冷式のインタクーラコア32が設けられていたが、これに限定されるものでなく、空冷式のインタクーラコアが設けられてもよい。
また、実施の形態1〜4の圧縮機101〜401において、吐出口34,234,334,434はそれぞれ、シリンダブロック3,210,310,410の側部3ba,前壁210f,前壁310f,前壁410fに形成されている。このため、圧縮機101〜401を消音冷却室31,231,331,431が上方となるように車両に搭載する場合、吐出口34,234,334,434は、側方に向くため、吐出口34,234,334,434を車両の乗員へ向く方向以外の方向に向けて圧縮機101〜401を搭載することが容易になる。
【0079】
また、実施の形態1〜4の圧縮機101〜401において、ギヤカバー5,25は、リアハウジング4とモータ40のシェル41との間、又は、シリンダブロック210,310,410とモータ240のシェル241との間に設けられていたが、これに限定されるものでない。ギヤカバー5,25は、フロントハウジング2又はシリンダブロック210,310,410に対してモータ40,240と反対側に取り付けられてもよい。
また、実施の形態1〜4において、圧縮機101〜401は、ルーツ式のエアコンプレッサとしていたが、これに限定されるものでなく、スクリュー式又はターボ式の圧縮機等の吐出脈動を発生する圧縮機を適用することができる。
また、実施の形態1〜4において、圧縮機101〜401は、燃料電池車の燃料電池への流体の圧送に適用されていたが、これに限定されるものでなく、スーパーチャージャの圧縮機構に適用することもできる。
【符号の説明】
【0080】
1,200 ハウジング、3,210,310,410 シリンダブロック、3a1,220,320,420 ロータ室(圧縮空間)、3d,210i,310i,410i 吐出孔(連通孔)、5,25 ギヤカバー、8,9 ロータ(回転体)、10a 圧縮機構、31,231,331,431 消音冷却室(消音冷却空間)、32 インタクーラコア(消音冷却器)、40,240 モータ(駆動装置)、41,241 シェル、101,201,301,401 圧縮機、310a1,410a1 開口部、241c ボルト(締結具)、350,450 制振カバー(壁部材)、451 仕切板、451c 貫通穴、451cc 中心軸(穴の中心軸)、453 空洞。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機において、
吸入した流体を圧縮したのち吐出するための圧縮機構と、吐出された前記流体を冷却し圧力変動を緩和する消音冷却器とを共に含むハウジングを備え、
前記ハウジングは、前記圧縮機構を収容する圧縮空間と、前記消音冷却器を収容する消音冷却空間と、前記圧縮空間を前記消音冷却空間に連通する連通孔とを備えるよう一体形成されたシリンダブロックを有する圧縮機。
【請求項2】
前記消音冷却空間は底部を有する凹形状である請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記ハウジングは、外部と前記消音冷却空間とを連通する吐出口を有し、前記シリンダブロックのうち前記消音冷却空間をはさんで前記連通孔と対向する部位は、前記前記吐出口の形成位置から前記圧縮空間側へと傾斜する形状である請求項1または2に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記ハウジングは、外部と前記消音冷却空間とを連通する開口部を有し、前記開口部は制振材料により形成された壁部材によって閉塞される請求項1〜3のいずれか一項に記載の圧縮機。
【請求項5】
前記壁部材は、前記開口部から前記ハウジングの外部に向かって滑らかな凸型の形状を有する請求項4に記載の圧縮機。
【請求項6】
前記ハウジングは、前記消音冷却空間を囲む壁部に設けられて前記壁部との間に空洞を形成する仕切板を有し、
前記仕切板には、前記消音冷却空間を前記空洞に連通する穴が形成されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の圧縮機。
【請求項7】
前記仕切板の穴は、複数設けられ、
前記仕切板の穴の中心軸に沿って前記消音冷却空間から前記空洞に向かう方向の前記空洞の厚さは、前記仕切板の各穴で異なる請求項6に記載の圧縮機。
【請求項8】
前記ハウジングは前記圧縮機構を駆動するための駆動装置を収容するシェルを有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の圧縮機。
【請求項9】
前記圧縮機構は複数の回転体を係合させたものであり、前記ハウジングは、前記駆動装置の駆動力を前記回転体に伝達するためのギヤ機構を含むギヤカバーを有し、
前記シェルと前記ギヤカバーとは、前記シリンダブロックを通る締結具によって、直列に固定される請求項8に記載の圧縮機。
【請求項10】
前記シリンダブロックは、金属材料を使用して一体成型される請求項1〜9のいずれか一項に記載の圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−108488(P2013−108488A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−273700(P2011−273700)
【出願日】平成23年12月14日(2011.12.14)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】