説明

圧迫バルーンによる体管に隣接する組織の治療方法および装置

本願の国際出願時において、要約書の提出はありません。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般には、組織内の肉眼で見える腫瘍および顕微鏡でしか見えない悪性および良性細胞を温熱療法により治療するために、単一エネルギー・アプリケータあるいは複数マイクロ波アプリケータのいずれかおよび流体を充填したバルーンによる体の圧迫を用いて体に集中エネルギーを与える装置および方法に関する。特に本発明は尿道に隣接する前立腺組織の圧迫を伴う熱および加温療法用経尿道カテーテルに関し、圧迫バルーンに薬物を塗布して薬物注入生体ステントを作製する。
【背景技術】
【0002】
前立腺を温熱療法で治療するためには、患者の前立腺内の健康な組織も尿道および直腸壁を含む周囲の組織も残しつつ前立腺の大部分を加熱する必要がある。前立腺は膀胱の真下の尿道を取り囲んでいる。すべての内臓のうち最も高い頻度で病変する前立腺は、良性前立腺肥大(BPH)、急性前立腺炎もさらに深刻な病気、癌も年配男性の間に共通して心配な部位である。BPHは主に前立腺の移行帯内に発生する前立腺組織の非悪性の両方向結節性腫瘍状の拡大である。治療せずに放置すると、BPHは尿道の閉塞を引き起こし、これが一般に頻尿、切迫尿、失禁、夜間多尿および遅尿流あるいは断尿流につながる。
【0003】
BPHの最近の治療には経尿道マイクロ波温熱療法があり、マイクロ波エネルギーを用いて尿道前立腺部を取り囲む組織の温度を上昇させて約45℃より高くすることにより、腫瘍前立腺組織に熱的に損傷を与える。特許文献1および特許文献2は、経尿道温熱療法により前立腺腫瘍組織を取り除く方法を記載しており、その内容を本明細書に引用して援用する。しかし温熱療法治療後に尿道の開通性をさらに維持あるいは向上させるためにこのタイプの療法においてさらに改良を行なうことが必要である。特に経尿道温熱療法治療により生じた水腫が尿道通路を遮断するため、尿道の狭窄を引き起こしている腫瘍組織の除去にもかかわらず尿流が必ずしも改善されるとは限らず、上記の方法で治療された患者は温熱療法治療の後数日から数週間カテーテルを装着することになる。
【0004】
特許文献3、特許文献4、および特許文献5は、繋留バルーンまたはフォーリーバルーンに加えて冷却バルーンを備えた経尿道カテーテルを開示しており、本明細書に引用して援用する。しかしこれらの特許は隣接する非前立腺組織から選択的に熱を除去する冷却剤として作用する流体を冷却バルーン内を循環させる。特許文献5の特許はさらに、冷却剤として約12℃〜15℃の冷水を利用する特許文献6により教示された温熱療法カテーテルシステムの利用を開示している。冷水は冷却バルーンに隣接する尿道を大幅に冷却する。同様に、特許文献4の特許は、尿道壁温度を冷たく保つ流体としての冷却剤を記載している。この尿道の冷却は冷却バルーンを取り除いた後、加熱された尿道内の開口を維持する役には立たず、尿道壁に直に隣接する組織での治療効果を減じる。
【0005】
温熱処置の他の周知の代替例は、特許文献7に記載されているように、尿道内に拡張バルーンを挿入して拡張バルーンを拡張させて閉塞尿道を圧迫することである。しかし拡張バルーンの拡張は24時間以上行われるとともに、患者の病変前立腺がそれでもなお治癒しない。さらに拡張が悪影響(例えば尿道壁の引裂)を引き起こす恐れがある。特許文献8は術後手順を記載しているが、手術手順後に前立腺組織を拡張させることにより尿道を拡大して患者が快適に放尿することができるようにする。この拡張には他の装置の挿入が必要であるとともに、その装置を1日以上患者の体内に残しておくことが必要である。
【0006】
医学界でいまだに治療後カテーテルあるいは他の装置が必要であると考えられているという事実からすると、水腫により生じる閉塞を防止するとともに尿道の開口を維持して向上するために、温熱療法にさらなる改良が必要である。
【特許文献1】米国特許第5,330,518号
【特許文献2】米国特許第5,843,144号
【特許文献3】米国特許第5,007,437号
【特許文献4】米国特許第5,496,271号
【特許文献5】米国特許第6,123,083号
【特許文献6】米国特許第5,413,588号
【特許文献7】米国特許第5,499,994号
【特許文献8】米国特許第6,102,929号
【非特許文献1】グスタフソン(Gustavson)、コラーゲンの化学的性質と反応(The Chemistry and Reactivity of Collagen)アカデミック・プレス・インコーポレーション(Academic Press Inc.)、ニューヨーク(New York)、1956年、特に211−220頁
【非特許文献2】アガー(Agah)ら「血管組織熱損傷に対するレートプロセスモデル(Rate Process Model For Arterial Tissue Thermal Damage):血管光凝固への影響(Implications on Vessel Photocoagulation)、外科および内科におけるレーザー(Lasers in Surgery and Medicine)、15:176−184(1994年)
【非特許文献3】トレンブリー(Trembly)ら、角膜の組み合わせマイクロ波加熱及び表面冷却(Combined Microwave Heating and Surface Cooling of the Cornea)、生体工学に関する米電気電子学会会報(IEEE Transactions On Biomedical Engineering)、Vol.ナンバー1、第1、1991年
【非特許文献4】ストリンガー(Stringer)ら、目のコラーゲンの収縮温度(Shrinkage Temperature of Eye Collagen)、ネイチャー(Nature)、ナンバー4965、1307頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、水腫による体管の閉塞を予防するとともに薬物(drug)または薬剤(medicine)を標的領域に送達しつつ尿道などの体管に隣接する組織を熱的に治療する装置および方法を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために本発明はエネルギー放出源と流体によって膨張されるエネルギー放出源を取り囲む圧迫バルーンとを有するカテーテルを採用し、流体は圧迫し、準備し、圧迫バルーンに隣接する体管壁への良好なエネルギー結合を可能にする。圧迫バルーンを所望の直径まで膨張させた後、圧迫バルーンを膨張させている流体を圧力下に維持し、さらに好適な実施形態では循環させないため熱が体管壁から運び去られず、特に圧迫バルーンに直に隣接するエリアおよび組織内での生体ステントの形成を向上させるとともに生体ステントの形成を持続する。
【0009】
圧迫バルーンに、癌治療を助け、感染症を治療し、痛みを緩和しおよび/またはより強いステントを生じることにより再狭窄の可能性を制限するように構成された薬物または薬剤もしくは変更遺伝子(gene modifier)を塗布する。薬物または薬剤治療と一緒にまたは単独で変更遺伝子を遺伝子治療用の圧迫バルーンに塗布してもよい。被覆圧迫バルーンに直に隣接して生成されるマイクロ波、高周波、超音波または同様なエネルギー放出源からの熱および/またはレーザーなどの任意の発光源からの光は、変更遺伝子、薬物または薬剤を標的エリア内に効果的に放出、吸収および/または活性化することができる。圧迫バルーンに任意の標準的細胞毒性薬を塗布し、これを例えば癌の被治療標的エリアに隣接して放出してもよい。体管を取り囲む良性症状を治療する場合には、感染症または前立腺炎などの良性症状の1つに効く抗生物質または他の薬物を圧迫バルーンに塗布し得る。治療によっては一般に鎮痛緩和剤を圧迫バルーンの外側に単独で、または体管を介して容易にアクセス可能な特定の病気に対する他の薬物または変更遺伝子と一緒に塗布してもよい。
【0010】
体管が尿道であり前立腺組織を温熱治療により治療する好適な実施形態を参照して本発明を説明するが、圧迫と、マイクロ波、高周波、超音波、加熱流体またはレーザーなどのエネルギー源と、遺伝子または薬物治療との組み合わせを用いて、限定しないが心臓血管、食道、鼻、咽頭、直腸腔または体管によりアクセス可能な肺臓、肝臓、卵巣等などの臓器を始めとする他の体管または腔内部位において上記の目的を達成することができる。つまり本発明の目的は体管を開放してその体管の通常の機能が阻害されないようにするとともに、利用可能な変更遺伝子、薬物または薬剤を標的エリアに送達することにより鎮痛緩和に加えて病変および/または良性部位の両方を治療することである。熱または光用のエネルギー放出源への電力、ならびに圧迫バルーンおよびカテーテルの直径および形状は、治療対象の組織または体管または臓器および圧迫バルーン上の塗布材料によって変わる。
【0011】
流体を循環させて尿道壁から熱を除去する周知の技術とは異なり、本発明は好適な実施形態において、体管壁に隣接する組織を加熱する低エネルギーと圧迫とを用いることにより、体管壁からより離れた組織が低エネルギーを用いて加熱しやすくなる一方で尿道の温度を30℃を超える温度に維持するとともに尿道の過熱を防止する。出願人は尿道壁または標的エリアを流体を生体ステントとして循環させることにより冷却すべきではなく、または成型開口は冷却循環流体(すなわち25℃〜30℃以下の範囲の患者体内を循環する流体)では効果的に形成されないと考える。循環流体がないと流体が膨張圧迫バルーン内で循環せずにすなわち残留すれば熱が治療部位から奪われないため、低エネルギーを用いて前立腺または他の治療部位を治療的加熱し得る点で有利である。さらに循環流体がないと圧迫バルーン上の塗布材料内に配置された変更遺伝子、薬物および/または薬剤の加熱および/または活性化または放出を損なわない。水を循環をさせないことは好適な実施形態であるが、非冷却流体の循環は用い得る。
【0012】
例示的実施形態によれば尿道またはこれに直に隣接するエリアを取り囲むコラーゲン含有組織の選択量を、43℃を超える温度まで、選択量の組織をほぼ破壊または変更するのに十分な時間加熱する。エネルギー放出源に通電する前に、事前形状化被覆圧迫バルーンを流体で満たして前立腺を圧迫している尿道壁を拡張させることにより尿道壁を取り囲む前立腺内の血流を減少させ、その結果抑制血液供給領域でエネルギー吸収加熱がより効率的になる。またこの圧迫は体管壁の表面エリアを拡張させるため、組織エリア当りより多くの薬物が効率的に送達される。さらに圧迫バルーンによるこのエリアの圧迫がバルーンの表面から全標的組織までの距離を減少させることによって必要に応じて治療区域を増加させることもできる。圧迫は循環流体の不在とあいまって、前立腺組織または他の組織を治療的温度まで加熱するために以前に可能であると考えられていたものより少量のエネルギーを理論上可能にする一方、エネルギー放出源から放出された熱の存在下で尿道壁のタンパク質を変性または分解させる。すなわちエネルギー放出源110を0ワットからおよそ20ワットの範囲の低電力まで通電し得る。代替的にはエネルギー放出源単独で水などの加熱流体を放出して必要な熱を提供したり、加熱流体と一緒に用いる他のエネルギー源であり得る。その結果この好適な実施形態は被覆バルーンと共に、より低い治療または放出温度、例えば38℃以上で、可能であると考えられていたものより永続的なステントまたはより有効な治療を提供し得ることが考えられる。
【0013】
圧迫バルーンを拡張させて膨張バルーン内に残留する流体は、流体が尿道壁から熱を奪わないため生体ステントを形成する変性プロセスを損なわない。本発明の一実施形態では非循環流体は膨張バルーンの材料と共に、尿道壁に対してより長持ちする有効な生体ステントを、または、熱、圧迫および塗布材料の結果として閉鎖小胞を形成する能力を提供する。本発明は圧迫バルーンに薬物、遺伝子療法化合物または他の薬剤を一意に塗布し、被覆バルーンを循環または非循環流体で圧迫し、さらに熱または光エネルギー源により塗布された材料の薬物、遺伝子療法化合物または他の薬剤を活性化することによって、温熱療法の新しい改善且つより効果的な方法に対応する。
【0014】
本発明の第2の態様は患部エリアを治療するための薬物療法および/または遺伝子療法化合物を有する標的直接治療送達システムを対象とする。非循環流体はアンテナまたは低エネルギーを放出する他のエネルギー放出源に直接接触しているため、放出された低エネルギーの良好なエネルギー結合をもたらし圧迫前立腺組織または他の組織内に熱を生成する。これは非循環流体がアンテナまたは他のエネルギー源から放出されたエネルギーを圧迫前立腺組織に伝える、直接結合技術と称されている。膨張流体がアンテナまたは他のエネルギー源に直接接せずになお必要な熱または光を提供して病変組織を治療的に処置する場合、本発明による低エネルギー放出装置のある用途が考えられる。圧迫バルーン内の流体が低放出エネルギーを前立腺および尿道に結合する結果、バルーン内のエアポケットが最低限に減少するため、エアポケットの結果として発生する「ホットスポット」が大した問題ではなくなり、熱治療に対する患者の耐容性が良好になるとともに前立腺全体への加熱がより好適に均一になる。
【0015】
尿道壁のタンパク質を43℃より高く加熱することによりタンパク質が変性または分解する。変性により尿道壁が圧迫バルーンによって作製された尿道の拡張形状に合致するとともに尿道壁の弾性が低減するため、加熱後のステント補強期間は拡張形状を自然に固化して生体ステントを生じる。すなわち拡張体管壁は圧迫バルーンが収縮して除去された後その以前の形状に戻ることはなく体管内に自然の開口を達成する。例えば細胞毒性薬の添加は熱または光との相互作用で、生体ステントを生じる、および/または病変組織を治療する所望の薬物または化合物の活性化および/または送達する能力を助け得る。
【0016】
用途段階では治療を通して様々な特定期間に圧迫バルーンの圧迫または減圧による物理的パルシングを行うことにより圧迫組織内外の血液の急増を可能にし得る。またこの被覆圧迫バルーンの物理的または機械的操作を薬物および/または遺伝子療法化合物を必要とする状況で用いて、パルシングにより静脈注射または注射方法により患者に投与された化合物材料を活性化/放出することで、活性化または放出される熱または光に応じた化合物が標的組織に送達される。またこの機械的圧迫および減圧は薬物および/または遺伝子療法化合物の標的タンパク質および/またはDNA組織への機械的固定を助けることができる。なおこの機械的方法の固定はタンパク質および/またはDNAへの被覆圧迫バルーンに配置された薬物および/または遺伝子療法化合物の結合を生じ得る。その結果得られた標的タンパク質および/またはDNAへの薬物または遺伝子療法化合物の結合は、確実に所望の化合物を標的組織に効果的に固定または送達する主たる新たな革新である。
【0017】
本発明の好適な実施形態によればおよそ10分以下までのステント補強期間が加熱ステップに続く。ステント補強期間はエネルギー放出源への電力が切られた後圧迫バルーンの圧力を維持するため、温熱療法の数分後に固化拡張尿道が達成されるとともにカテーテルまたは他の装置は必要ない。またこの補強期間中圧迫バルーンは低減血流の結果として放出薬物および/または遺伝子療法化合物を圧迫組織内に固定する。
【0018】
流体がバルーン内で循環されないという事実により、圧迫バルーンをシリコン材料などの適合材料またはPETなどの非適合材料のいずれかにより作製し得るとともに、さらに流体により拡張または膨張が容易である。好適な実施形態では圧迫バルーンは一般に圧迫バルーンの両側に傾斜エリアを有する円筒状であるとともに、好適な実施形態による直径の長さに沿って対称である。好適な実施形態のエネルギー放出源の位置は固定し得る。しかし圧迫バルーンは、体管または尿道内に所望の型またはステントを作製するいかなる形状でもよく、カテーテルの長さに沿って非対称でもよい。PETなどの非適合材料の利用により、バルーンが膨張したときに固有の一定拡張形状を形成することができる。
【0019】
圧迫バルーンはカテーテルの長さに沿った尿道壁または他の標的組織エリアに対して約5〜25psiの圧力を維持することが必要であり、好適な圧力レベルは約10〜25psiである。圧迫バルーンのサイズおよび形状に応じて、バルーンをその所望形状に膨張または拡張させるのに必要な流体量は膨張圧迫バルーンにおいて適当な圧力量を達成すように変動する。圧迫バルーンはカテーテルの長さに沿った変動直径を有し得るとともに、単一バルーンまたは複数のバルーンにより形成し得る。
【0020】
尿道壁に接する圧迫バルーン材料は通常、圧迫バルーン材料の厚さの5倍すなわち1cmまでの従来の低温カテーテルの厚さに比べて非常に薄い。尿道壁に接する膨張圧迫バルーンの材料の好適な厚さはおよそ2mm未満であり、圧迫の結果流体結合と前立腺組織との間の移行帯が最小限になる。さらに圧迫バルーンを膨張させるのに用いられる流体の温度は用途によって予め決められ、約0℃〜50℃の範囲にわたり変動する。これはバルーンを所望のサイズおよび硬さまで圧迫するのに用いられる非循環流体の開始温度を示す。流体はエネルギーが流体によって吸収されるか流体内で透明であるかによって高損失液体または低損失液体であり得る。流体は加熱されてエネルギーを体管または臓器内に均一に拡散し得るか、または透明な流体を用いる場合にはエネルギー放出源により生成される熱は被覆バルーンを直接および/または隣接の組織を加熱する。また圧迫バルーンを膨張させる流体の開始温度は、塗布材料内に配置された薬物および/または化合物の特定の放出および/または活性特性に依存する。この流体の開始温度(エネルギー放出源による加熱前)は約0〜50℃になると考えられる。
【0021】
本発明によれば前立腺を加熱する用途では、標準フォーリー膀胱位置決めバルーンをカテーテルの端部に配置するとともに、圧迫バルーンの遠位端部をフォーリー膀胱バルーンの頚部に近接して装着して圧迫バルーンの遠位端部が頚部から2cm以下離間するようにする。他の部位の場合、物理的構造の他の形状または撮像技術が送達部位への直接配置を提供すると考えられる。しかし例えば前立腺を加熱する好適な実施形態では圧迫バルーンの遠位端部を膀胱頚部の1cm以内に装着する。
【0022】
マイクロ波アンテナなどのエネルギー放出源を圧迫バルーン内に固定または移動可能に装着し得る。エネルギー放出源が移動可能である場合には、最大加熱域を圧迫バルーンに対して前後に移動可能である。すなわちエネルギー放出部分の位置を変えて特定の療法に対する組織の加熱を最適化することができる。エネルギー放出源の好適な配置および移動がある場合には、これらは圧迫バルーンのサイズおよび形状ならびに塗布材料のタイプまたは治療対象の隣接組織に依存する。例えば移動可能なエネルギー放出源(例えばマイクロ波アンテナ)をより長い長さを有する圧迫バルーンと共に用いることもできる。代替的にはエネルギー放出源を1つの圧迫バルーンから取り外し、異なる長さおよび直径の他の圧迫バルーンと共に用い得る。これはアンテナを異なる圧迫バルーンと共に複数回用いることができる多目的の装置を提供する。この特徴は本発明による熱圧迫装置を製作するのに必要な装置が少なく、カテーテル装置の製造がより容易に且つより安価になる。
【0023】
本発明のこれらおよび他の特徴と利点とは添付の図面を参照して以下の好適な実施形態の詳細な説明からさらに理解できるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、水腫による体管の閉塞を予防するとともに薬物または薬剤を治療対象組織の標的領域に送達しつつ尿道などの体管に隣接する組織を熱的に治療する装置および方法を対象とする。本発明による方法および装置の実施例および代替例は以下にコラーゲンの簡単な説明の後に説明するとともに図示する。
【0025】
コラーゲンは結合組織および線維性筋性組織の主たる成分である。またコラーゲンは高温(例えば約60℃〜70℃)にさらされたときの可塑的再構成などの周知の特性を有する。具体的な再構成温度は一般に体の特定箇所における組織のタイプおよび年齢に対してより正確に特定可能である。本発明による実施形態では出願人は、体管が再形成されて体管に隣接する組織が圧迫されて血流を大きく減少させる結果として再構成温度が低下するという理論を立てた。コラーゲンの一般的な原理および熱治療に対するコラーゲン反応は当業者には周知であり特に以下の非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4の論文で説明されている。
【0026】
特に重要なことは、コラーゲンが繊維性筋性組織および体内の様々な管の一部分を形成するまたは取り囲む他の間質性結合組織に見出せることである。例えば尿管は流体を膀胱から前立腺を通りペニスを介して体外へと通過させる下部尿路内の管である。尿道前立腺部の近位部分は輪状繊維性筋性組織によりおよび前立腺内の間質性組織により取り囲まれており、両タイプの組織ともコラーゲンを含んでいる。本発明の方法ではこのコラーゲンの操作を用いて前立腺および/または尿道の様々な機能障害、例えば良性前立腺肥大を治す。従って尿道は、本発明の方法が対応するコラーゲンに富む周囲組織と通常機能を維持するように注意深く制御しなければならない直径とを有する体内の管の一例である。
【0027】
本発明による尿道などの体管に隣接する組織を熱的に治療する装置および方法は、図1〜6に図示するように遺伝子化合物または薬物または薬剤を標的組織エリアに送達するとともに、尿道への開通性を復元するための良性前立腺肥大に対するマイクロ波温熱療法治療後、拡張した尿道の直径を選択尿道形状に維持する。図1は泌尿器への良性前立腺肥大(BPH)の影響を示す男性骨盤領域の縦断面図である。尿道10は膀胱11から前立腺12および陰茎端14の外開口部13を介して通じる管路である。尿道10の周囲の前立腺12内の良性腫瘍組織の成長が尿道10の狭窄を引き起こしており、膀胱11から開口部13への尿流を妨害している。前立腺12の腫瘍組織は尿道10を侵害して狭窄(図示せず、圧迫バルーン112が膨張しているため)を引き起こしているが、侵害する腫瘍組織を加熱して壊死させることにより効果的に除去することができる。これは本発明によれば、カテーテル100を含むエネルギー放出源を体管(例えば尿道)内に挿入して、体管に隣接する治療対象組織を加熱するためのエネルギーを放射するようにエネルギー放出源110を臓器(例えば前立腺)の領域内に配置することにより達成される。本発明により尿道10および括約筋17、直腸18、および膀胱頚部19などの隣接する健康な組織に対する不要且つ無用な損傷を防止しながら、尿道10の前方および外側にある前立腺12の尿道周囲腫瘍組織を加熱して壊死させることが理想的である。
【0028】
図2は尿道10および膀胱11を含む特定の解剖学的特徴を図示するとともに、膨張させた圧迫バルーン112および膨張させたフォーリーすなわち繋留バルーン118を備えたカテーテル100を示す、図1の拡大断面図である。図1〜4に示すように本発明は、エネルギー放出源110と放出源110のエネルギー放出部を取り囲んでいる圧迫バルーン112とを備えたカテーテル100を用いており、圧迫バルーン112は、圧力で圧迫バルーンを膨張させるとともに圧迫バルーンに隣接する尿道壁の温かさを維持する加温流体で満たされている。圧迫バルーン112に、癌治療を助け、感染症を治療し、痛みを緩和するおよび/またはより強い生物ステントを生じる、変更遺伝子(遺伝子療法化合物)または薬物または薬剤の少なくとも1つを含む材料111を塗布してもよい。本発明のエネルギー放出を含むカテーテル100により前立腺12内の良性腫瘍組織を選択的加熱(経尿道温熱療法)が可能になる。エネルギー放出源110はマイクロ波、高周波、超音波等エネルギーにより熱を生成し得る。エネルギー放出源110からの熱および/またはレーザーなどの任意の光放出源からの光は、変更遺伝子または薬物または薬剤の少なくとも1つを標的組織エリア内に活性化して放出することができる。そのためエネルギー放出源の熱および/または光放出源の光は隣接の組織を病変組織を除去する温度に加熱するとともに、塗布材料111と一緒に動作して変更遺伝子、薬物または薬剤を活性化して放出することにより、遺伝子または薬物が標的組織内に吸収される。多数のセンサを備えた直腸プローブ102を直腸18に挿入して直腸壁で吸収された放出エネルギーによる発熱量を測定する。
【0029】
図2に示したように、3つのセンサ104がプローブ102上に搭載されている。これらのセンサはプローブ上の異なる半径方向位置に一体に搭載するとともに互いに約1センチメートル離れていることが好ましい。フォーリーバルーン118を患者の膀胱に挿入して、圧迫バルーンの近位端が膀胱頚部の遠位端の間近で患者の前立腺に配置されるようにする。圧迫バルーン112の長さは患者の膀胱のサイズによって変わる。圧迫バルーンの一般的な長さは約40ミリメートルであり、この長さは25〜60ミリメートルの範囲になりうる。圧迫バルーン112を被覆する変更遺伝子、薬物または薬剤の少なくとも1つを有する材料111は圧迫バルーンの全長を覆って変更遺伝子、薬物または薬剤を隣接の組織に放出し得る。他の実施形態では材料111を有する圧迫バルーン112のコーティングを、変更遺伝子、薬物または薬剤が所望の標的エリアに放出されるように圧迫バルーンの一部分上に配置し得る。圧迫バルーンに、癌の治療に用いられる標準的な細胞毒性薬、良性症状または感染症を治療するための抗生物質、および/または一般的な痛みの緩和に用いられる鎮痛剤のいずれかを塗布し得る。例えば良性前立腺肥大を治療するために、圧迫バルーン112にプロスカー(Proscar)、ハイトリン(Hytrin)、フローマックス(Flowmax)、カドラ(Cadora)あるいは症状を改善するまたは前立腺疾患を治す薬物のうちの1つを有する材料111を塗布し得る。治療によって一般的な鎮痛緩和剤を、単独でもしくは、体管を介して容易に接近可能な特定の疾患用の他の薬物または変更遺伝子と一緒に圧迫バルーンの外側に塗布し得る。
【0030】
カテーテル100は約18フレンチ(フレンチは.333mmすなわち.013インチに等しい寸法である)である。男性成人の平均直径は約22フレンチであるため、カテーテルを取り囲む収縮した圧迫バルーン112は約2フレンチ足してカテーテル100およびバルーン112の直径が患者の尿道の直径より小さくなるようにして、挿入を容易にするとともに患者の痛みを少なくしている。マルチルーメン・シャフト100および付随する成形部品は、商標C−Flex商標でコンセプト・ポリマー・インコーポレイテッド(Concept Polymer Incorporated)により発売されている医用ポリマで好適に押し出し成形されたものである。圧迫バルーンは商標PET商標でアライド(Allied)により発売されている医用ポリエステル材料で好適に押し出し成形されたものであり、その当初の最大成形形状に基づく伸長限度を有する。代替材料にはダウ・コーニング・インコーポレーション(Dow Corning Inc.)により製造されたシリコン材料の、軸押し出し成形および成形マニフォールド用の商品名シラスティック(Silastic)R商標Q7−4850型およびQ7−4765型、および繋留バルーン118用のエラストシル(Elastosil)LR3003/30Us型もある。カテーテル100の材料は50D〜80Dのショアー(Shore)D硬度を有することが好ましい。
【0031】
完全挿入(すなわち、収縮したフォーリーバルーンが患者の膀胱内に到達)後、流体(滅菌水)をフォーリー膨張バルブ113を介して注入することにより、フォーリーバルーン118を膨張させてカテーテルを患者の尿道内に保持する。膨張バルブ113は所望の圧力でフォーリーバルーン内の流体を維持してカテーテルを患者に固定するようになっている。しかしこのカテーテルはさらに尿道に対して限定的な長手方向移動が可能である。フォーリーバルーン118を膨張させた後、加温流体、好適には低損失液体(例えば、脱イオンあるいは滅菌水)を1つ以上のカテーテル膨張/循環ルーメン120(図3a)を介して前立腺の圧迫バルーン112内にゆっくりと注入することにより、それを膨張させて尿道壁を拡張するとともに尿道壁の温度を30℃より高く維持する。膨張させた圧迫バルーンの直径はほぼ25〜60フレンチの範囲、好適には約40〜60フレンチの範囲になる。外側表面が体管を拡張するようにおよそ20〜30ccの流体で圧迫バルーン112を満たさなければならない。圧迫バルーン112を膨張させるのに使用する加温流体は、マイクロ波を加熱対象組織により効率的に伝える最小エネルギー吸収溶液であることが好ましい。このように圧迫バルーン112を満たす流体は、エネルギー放出源110に通電する前に体管および体管を取り囲む隣接組織を圧迫して準備する役目をする。さらに流体は放出されたエネルギーを圧迫バルーンに隣接する体管壁に連結してより組織の効率的な加熱をもたらす手段を提供する。用途および塗布材料111から放出される変更遺伝子および/または薬物によっては、流体は熱または光を拡散し、あるいは熱または光が効果的に送達されて塗布材料を効率よく均一に放出および/または作動させるように透明に動作する高損失液体または低損失液体であり得る。
【0032】
本発明によるカテーテルの代表的な実施が図3に示されている。この図ではフォーリーバルーン118が収縮している。この図の左側に示すように、フォーリー膨張バルブ113、加温滅菌流体取り入れ口115aおよび滅菌流体取り出し口115bが設けられて流体を受容する。滅菌流体取り入れ口および取り出し口115a、115bは、温熱療法中必要に応じて圧迫バルーン内の滅菌流体の循環を可能にするとともに、所望の圧力を維持してバルーン内の特定の流体流パターンおよび流体の分配を達成する。流体の循環が望ましくない実施形態では流体は流体取り入れ口115aおよび当業者に周知のバルブに進入し、圧迫バルーン内に満たされた流体の所望圧力を維持し得る。以下に説明するステント補強期間後、流体を取り出し口115bを介して圧迫バルーンから除去し得る。中心ルーメン126はエネルギー放出源110を受容するが、同軸ケーブルの形状のアンテナでもよい。図3aに図示したように、エネルギー放出源110をカテーテル100内で中心に保持するとともに充填流体除去用のチャネルを作製するために、中心チャネル126内に突起127が形成されている。突起127はエネルギー放出源とカテーテルの外壁との間の距離を一定にさせることにより、放出源110のエネルギー放出部における安定した加熱パターンを確保することができる。エネルギー放出源110は低損失流体と結合して放出出力を最大にするとともにエネルギー放出源の軸を冷却するようになっている。
【0033】
図4に図示すように、圧迫バルーン112の両側で1つ以上のカテーテルルーメン120内の開口部122、124を用いているため、加温流体を一端でルーメン120を介して圧迫バルーン112内に注入してこれを満たすとともに多端で取り出して流体を除去することができる。一実施形態では温水はルーメン120内に循環して、圧迫バルーン112内に注入してこれを満たすとともにマイクロ波アンテナなどのエネルギー放出源110を保持する中心開口部126を介して、患者の外部のカテーテル100から流出する。開口部122、124の配置および直径により温熱療法治療の間中、必要に応じて十分な流体流と約10〜25psiの圧力を圧迫バルーン112内に維持することができる。好適な実施形態では、取り出し流体側チャネルを抑制開口部116と嵌合させて圧迫バルーン圧力を制御し、圧迫バルーンが適当な圧力で進入流体で満たされるようにする。圧迫バルーン112内に流体流が注入されないことが望ましい場合には、抑制開口部116のバルブはストッパまたはプラグとして動作してもよく、いくらかの流体流を望む場合には流体流量を決めるようにバルブを開放してもよい。代替実施形態の抑制開口部116を、カテーテルを外部の流体加温ポンプシステム(図3b)に接続するのに使用する接続管(例えば、115a、115b)内でカテーテルのすぐ外側に配置することができる。圧迫バルーン112内に満たされた加温流体の加圧は、膨張バルーン内で空気ポケットを減少させるようにする。従って尿道壁の熱傷を生じる「ホットスポット」につながる圧迫バルーン内の空気ポケットが排除される。これが尿道壁を熱傷することのない前立腺の尿道組織の所望の圧迫をもたらし温熱療法治療中および後も維持される。
【0034】
30℃を超える尿道を覆う非前立腺組織の温度を維持しつつ病変前立腺組織を治療温度(約43℃を超える)に加熱することが望ましい。非前立腺組織は尿道壁と隣接組織とを含み、エネルギー放出源110と前立腺組織12の間に位置する。本発明によればエネルギー放出源110を通電または作動することにより、体管を取り囲む治療対象組織の一部分を被覆バルーンおよび実行する治療に応じて約43℃以下の温度まで加熱する。この組織を所定の温度まで、治療対象の組織の加熱部分をエネルギー放出源により生成された熱によって破壊するのに十分な時間加熱する。放出源110のエネルギー放出部110aを圧迫バルーン112内に留まるようにカテーテル100内に配置する。エネルギー放出部110aは、エネルギー放出部110a(例えばマイクロ波アンテナ)と加熱対象組織との間の距離の逆関数(例えば逆二乗)として変動する照射マイクロ波電界を放出することが好ましい。その結果、前立腺組織12よりエネルギー放出部110aに近い尿道壁10の非前立腺組織は、治療対象の前立腺組織より高い温度に加熱される。同様に近位前立腺組織は遠位前立腺組織よりも高い温度に加熱されることになる。病変または標的組織エリアを破壊するのに十分な時間完了後、エネルギー放出源110による発熱が終了する。
【0035】
ステルツァー(Sterzer)に与えられた特許文献3は、前立腺組織を圧迫するとともに尿道壁を移動させて発熱するマイクロ波アンテナから離間させるためにバルーンの利用を開示している。この方法は尿道壁を発熱アンテナからより遠くに移動させることによりマイクロ波電界強度とその結果得られる尿道壁での発熱を低減した。しかしステルツァー(Sterzer)は尿道壁を膨張させた状態で尿道壁を連続的に冷却するために循環流体も採用した。出願人はこの循環冷却剤が尿道壁および隣接する前立腺組織がタンパク質を変性して可塑的な再構成を可能にするのに十分な温度に達するのを妨げていることを認識した。その結果出願人は図5aおよび5bに図示するように、膨張させた前立腺圧迫バルーンを加温流体の循環とともに利用することが変性問題を軽減するであろうと理論づけた。
【0036】
図5aおよび5bはそれぞれ収縮させた圧迫バルーンの断面図および膨張させた圧迫バルーンの断面図を示している。圧迫バルーン112を収縮させた時のエネルギー放出源、例えばマイクロ波アンテナ110から遠位前立腺組織202ならびに尿道壁および隣接の非前立腺組織を含む近位組織204までの半径距離は、圧迫バルーン112を膨張させた時の距離より小さい。図示のように膨張させた圧迫バルーン112は尿道カテーテルの周囲全体の回りに延びる対称的な環状体を形成する。特に圧迫バルーン112を膨張させた状態のエネルギー放出源110から近位組織204の内周までの半径距離R1bは、圧迫バルーン112を収縮させた状態の対応する半径距離R1aより大幅に大きい。同様に圧迫バルーン112を膨張させた状態の前立腺組織202の内周までの半径距離R2bは、圧迫バルーン112を収縮させた状態の対応する半径距離R2aより大幅に大きい。前立腺組織は柔軟且つ圧迫可能であるため、圧迫バルーン112を膨張させた状態の前立腺組織202の外径と内径R3bとR2bとの差は、圧迫バルーン112を収縮させた状態の対応する径R3aとR2aとの差に対して大幅に減少する。
【0037】
その結果、膨張させた圧迫バルーンが前立腺12を尿道壁から圧迫することにより、尿道の圧迫壁と前立腺被膜の辺縁との間の組織の厚さを減少させる。つまり圧迫バルーン112の薬剤コーティング111と標的エリアとの間の距離を減少させることにより治療区域を増加し得る。より遠位の組織202は尿道により近位組織204ほど圧迫されない。エネルギー放出源110により放出されたエネルギーが通過する実際の組織厚さがより薄いため、蓄積エネルギーは前立腺被膜全体を通してより均等に分配される。これにより非前立腺組織のどの部分もその最高安全温度を超えて加熱することなく、前立腺組織をより均等に且つより高い治療温度に加熱することが可能になる。これは以前には可能であると思われたものより低いエネルギー放出源110からの放出エネルギーレベルで達成できる。さらに体管内の膨張圧迫バルーンを取り囲む組織の圧迫で被覆圧迫バルーンが接触する表面エリアが拡大することにより、組織エリア当りより多くの遺伝子または薬物を効率的に送達する。
【0038】
同時に、膨張させた圧迫バルーン112は圧迫前立腺内の血流を制限するため、照射熱が自然な血流によって運び去られることがなく、そのためこの組織をより放出エネルギーによる加熱を受けやすくすることができる。全体の組織厚さが減少するため、前立腺組織204を治療温度まで効果的に加熱するのに必要なエネルギー量が減少する。これに対して一般的な非圧迫治療では、直腸壁に隣接する可能性のあるより遠位の前立腺組織202の温度を41℃の最高安全温度に上昇させるのに必要なエネルギー量は本発明により必要とされるものより大幅に高くなる。このように非前立腺組織のいかなる部分もその安全最高温度を超えて加熱することなく、前立腺組織をより均等に且つより高い温度に加熱することができる。
【0039】
マイクロ波温熱療法治療中、近位組織204を所定のコラーゲン転移温度より高く加熱するためには冷却剤とは異なり、30℃を超える、好適には約31℃〜60℃の範囲の加温流体で圧迫バルーン112を満たす。その結果、尿道壁および隣接組織が十分に変性する温度に維持すると、温熱療法治療後に自然な生体ステントを体管および隣接組織内に形成することができる。
【0040】
尿道壁を30℃より高く温めるとともにこの温度を維持することは尿道壁のタンパク質を変性することに役立つが最高安全温度を超えて尿道壁を加熱することはない。この変性により尿道壁は圧迫バルーン112により作られた尿道の拡張形状に一致することができるとともに尿道壁の弾性を減じるため、温熱療法治療の加熱に続くステント補強期間により拡張形状が自然に固まり生体ステントになる。つまり圧迫バルーンを収縮させて除去した後も拡張尿道壁は以前の形状に戻らないため、尿道などの体管の自然開口を達成する。
【0041】
前立腺組織の加熱終了に続くステント補強期間は、圧迫バルーンが10〜25psiの所望圧力で約10分未満の間膨張したままでなければならない。この補強期間中、生体ステントを固めるために圧迫バルーン内の充填流体の圧力を維持しなければならない。さらにこの補強期間中の加圧圧迫バルーンは、低下血流の結果として放出薬物および/または遺伝子療法薬物化合物を圧迫組織内に固定することができる。つまりこのステント補強期間はエネルギー放出源への電力を切った後も圧迫バルーンの圧力を維持するため、被覆圧迫バルーンから放出された薬物および/または遺伝子療法化合物が標的組織エリア内に定着するとともに、温熱療法の数分後に凝固した拡張尿道が達成されるため排尿カテーテルや他の装置の必要はない。
【0042】
ステント補強期間中、圧迫バルーン112にさらに熱を加えて、バルーン112の外側を被覆している材料111内の遺伝子化合物および/または薬物の活性化および放出ならびに遺伝子化合物または薬物の1つの標的組織エリア内への吸収を助ける。熱水、高周波、レーザー、マイクロ波、超音波および赤外線のうちの1つにより圧迫バルーンにさらに熱を送達し得る。体管の外側から組織にさらにエネルギーを加え得ると考えられる。出願人はさらなる熱により長持ちするまたは持続的生体ステントが形成されるという理論を立てている。さらなる熱を加えるステップは単独でまたは適当な静脈注射薬物と一緒に鎮痛緩和、傷害の減少および病変組織の治癒を提供し得る。
【0043】
圧迫バルーン112は好適な実施形態によれば圧迫バルーンの両側に傾斜領域を有するほぼ円筒状であるとともに直径の長さに沿って対称である。しかし圧迫バルーン112は体管または尿道内に所望の型またはステントを作製するための任意の形状を有してもよい。図6に図示するように、カテーテル100上の圧迫バルーン112’は、カテーテル100の周囲に非対称に膨張するように設計されている。非対称バルーン112’は、膨張させた圧迫バルーン112’の幅によって体管に隣接する組織の領域がエネルギー放出源110からより多いあるいはより少ない放射エネルギーを受けるように体管を膨張させる。膨張させた圧迫バルーンが幅広いほど、体管に隣接した組織がより圧迫されるとともに発熱源からより遠くなる。被覆圧迫バルーンは尿道前立腺部以外の体管内に挿入され、膨張圧迫バルーンを通常の機能サイズの体管の直径の5倍大きい直径まで拡張し得るということが考えられる。
【0044】
圧迫バルーン112はカテーテルの長さに沿って尿道壁に対して約10〜25psiに維持する必要があり、圧力の好適なレベルは約15psiである。しかし体管のサイズおよび強度次第で、圧迫バルーンを尿道前立腺部に対する好適な範囲未満または超える圧力に膨張し得る。他の実施形態では圧迫バルーンの交互の圧迫および減圧が治療対象の体管に生じるように圧迫バルーンを機械的に操作して、塗布材料111の変更遺伝子および薬物または薬剤の1つを治療対象組織の標的エリアに効果的に送達し且つ固定する。つまり圧迫および減圧の動作が塗布材料111に対して体管を物理的に操作することにより、放出変更遺伝子または薬物を標的エリアに固定させる。材料111が塗布された圧迫バルーン112の圧迫および減圧の動作は、変更遺伝子および薬物または薬剤の少なくとも1つの体管壁および/または隣接組織のタンパク質またはDNAへの結合を生じ得る。
【0045】
本発明の他の態様では変更遺伝子または薬物または薬剤を温熱療法による治療対象組織に静脈注射し得る。注入変更遺伝子または薬物または薬剤は病変組織の標的エリアに隣接して静脈注射することができるため、標的直接治療送達システムは遺伝子化合物または薬剤を患部エリアに効率的に送達する。この直接治療送達システムを熱だけまたは熱プラス圧迫温熱療法治療と共に用い得ることが考えられる。もちろん遺伝子化合物または薬剤を標的組織エリアに送達することが望ましい場合には、塗布材料を有する圧迫バルーンを熱プラス圧迫温熱療法治療で用い得る。
【0046】
好適な実施形態を参照して本発明を説明したが、当業者には本発明の精神と範囲とから逸脱することなく形状および細部において変更が可能であることは理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】良性前立腺肥大により影響を受けた泌尿器と膨張させた圧迫およびフォーリーバルーンを備えた本発明による挿入カテーテルとを示す男性の骨盤領域の縦断面図である。
【図2】図1の拡大部分である。
【図3】本発明の尿道カテーテルの平面図である。
【図3a】線a−aにおける図3の尿道カテーテルの断面図である。
【図4】圧迫バルーンの膨張を図示する。
【図5a】本発明による尿道壁および前立腺の拡張を図示するための、それぞれ非膨張および膨張状態の圧迫バルーンを示す尿道の概略断面図である。
【図5b】本発明による尿道壁および前立腺の拡張を図示するための、それぞれ非膨張および膨張状態の圧迫バルーンを示す尿道の概略断面図である。
【図6】本発明による膨張させた非対称圧迫バルーンを図示する尿道の概略断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体管に隣接する組織を治療する温熱療法および/または変更遺伝子または薬物の活性化および放出の方法であって、
カテーテルを含むエネルギー放出源を体管内に挿入して、前記体管に隣接する治療対象組織を加熱するエネルギーを放射するようにエネルギー放出源を前立腺の領域内に配置するステップと、
前記エネルギー放出源を取り囲む前記カテーテル上の圧迫バルーンを流体で膨張させるステップであって、前記圧迫バルーンに変更遺伝子および薬物または薬剤の少なくとも1つが塗布されているステップと、
前記エネルギー放出源に通電するとともに前記体管を取り囲む前記治療対象組織の一部分を、前記エネルギー放出源により生成される熱により前記治療対象組織の加熱部分を破壊するのに十分な温度および時間加熱するステップであって、前記通電エネルギー放出源の熱および加温流体の1つが、前記圧迫バルーン上に塗布された前記変更遺伝子および前記薬物または薬剤の少なくとも1つの放出、活性化および強化のうちの1つを行うステップと、
前記組織の前記加熱部分を破壊するのに十分な前記時間の完了時に前記エネルギー放出源による熱の生成を終了させるステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記治療対象体管に対して前記圧迫バルーンの圧迫および減圧を交互に行って変更遺伝子および薬物または薬剤の少なくとも1つを治療対象組織の標的エリアに効果的に送達するステップをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記圧迫バルーン上に塗布された前記薬物が癌の治療に用いられる標準的な細胞毒性薬、良性症状および任意の感染症の1つを治療するために用いられる抗生物質、ならびに一般的な鎮痛緩和用鎮痛剤のうちの1つであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記良性症状が体管を取り囲む前立腺炎または炎症であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記圧迫または減圧するステップが、前記体管を物理的に操作して前記変更遺伝子および薬物または薬剤の少なくとも1つを前記標的エリア内に固定することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記圧迫または減圧するステップが、前記体管および取り囲む組織を物理的に操作して、前記変更遺伝子および薬物または薬剤の少なくとも1つの前記体管および取り囲む組織のタンパク質またはDNAへの結合を生じることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記圧迫バルーン上に塗布された前記薬物を用いて前立腺疾患を治すことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記圧迫バルーン上に塗布された薬物がプロスカー(Proscar)、ハイトリン(Hytrin)、フローマックス(Flowmax)、カドラ(Cadora)のうちの1つであり、これを用いて良性前立腺肥大を治療することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記通電エネルギー放出源による熱の生成の終了後に前記圧迫バルーンにさらなる熱または光の1つを加えるステップをさらに備え、前記さらなる熱または光が前記圧迫バルーン上に塗布された変更遺伝子および薬物または薬剤の少なくとも1つの放出、活性化および強化のうちの1つを行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記さらなる熱または光を熱水、高周波、レーザー、マイクロ波、超音波および赤外線のうちの1つにより前記圧迫バルーンに送達することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記さらなる熱および光の少なくとも1つを加えるステップで生成された熱または光の量が前記体管を介して前記圧迫バルーン上に塗布された変更遺伝子および薬物または薬剤の少なくとも1つの著しい吸収を提供するため、前記変更遺伝子および薬物または薬剤の少なくとも1つが前記標的エリアに達することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記さらなる熱および光の少なくとも1つを加えるステップで生成された熱または光の量が前記被覆圧迫バルーンの変更遺伝子および薬物または薬剤の少なくとも1つを放出および/または活性化させることにより持続的生体ステントをもたらすことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記圧迫バルーンを膨張させる前記流体が、前記圧迫バルーン中を移動する際に前記エネルギー放出源により加えられた熱または光が拡散されるか否かによって高損失液体および低損失液体の1つであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記さらなる熱および光の少なくとも1つを加えるステップで生成された熱または光の量が、傷害の治療または減少、鎮痛緩和および病変組織の治癒のうちの少なくとも1つに十分であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項15】
温熱療法を必要とする体内の組織の治療用装置であって、
a)体管内に挿入されるカテーテルと、
b)前記カテーテル内に配置されたエネルギー放出源と、
c)前記カテーテル内の前記エネルギー放出源を取り囲む圧迫バルーンであって、弛緩状態の前記体管の直径より大きい膨張直径を有するとともに変更遺伝子および薬物または薬剤の少なくとも1つが塗布された外面を有する圧迫バルーンと、
d)前記エネルギー放出源と前記圧迫バルーンとを前記治療対象組織に隣接して配置する繋留手段と、
e)前記エネルギー放出源を作動させてエネルギーを放射することにより前記被覆圧迫バルーンおよび治療対象組織を加熱する手段であって、前記通電エネルギー放出源の熱が前記圧迫バルーン上に塗布された前記変更遺伝子および薬物または薬剤の少なくとも1つの放出、活性化および強化のうちの1つを行う手段と、
f)前記病変組織を破壊する期間の完了時に前記エネルギー放出源からのエネルギーの放射を終了させることにより前記加熱被覆圧迫バルーンが前記変更遺伝子および薬物または薬剤の少なくとも1つを前記病変組織の標的エリアに効果的に送達する手段とを備えることを特徴とする装置。
【請求項16】
前記被覆圧迫バルーンを十分な圧力まで膨張させることにより前記体管を拡張させるとともに確実に前記被覆圧迫バルーンの表面を前記体管と直接接させる手段をさらに備えることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記治療対象体管に対して前記被覆圧迫バルーンの圧迫および減圧を交互に行うことにより前記体管を物理的に操作して、前記被覆圧迫バルーンの変更遺伝子および薬物または薬剤の少なくとも1つを前記治療対象組織の標的エリアに効果的に送達する手段をさらに備えることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項18】
温熱療法中および後に前記膨張圧迫バルーンの圧力を維持する手段をさらに備えることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項19】
前記体管が尿道前立腺部であり、前記膨張圧迫バルーンがおよそ40〜60フレンチであることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項20】
前記体管が尿道前立腺部以外であり、前記膨張圧迫バルーンが通常の機能サイズの体管の直径の5倍大きい直径まで拡張されることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項21】
前記体管が尿道前立腺部であり、前記膨張圧迫バルーンの圧力がおよそ10〜25psiの範囲であることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項22】
体管に隣接する組織を治療する温熱療法の方法であって、
カテーテルを含むエネルギー放出源を体管内に挿入して、前記体管に隣接する治療対象組織を加熱するエネルギーを放射するようにエネルギー放出源を前立腺の領域内に配置するステップと、
前記エネルギー放出源を取り囲む前記カテーテル上の圧迫バルーンを流体で膨張させるとともに、前記圧迫バルーンを所望直径まで膨張した時に前記流体の循環を停止するステップと、
電力量が前記被治療体管に依存する場合、前記エネルギー放出源を低電力まで通電するステップと、
前記被覆圧迫バルーンおよび行う治療に応じて前記体管を取り囲む前記組織の一部分を十分に高い温度まで、前記エネルギー放出源により前記組織の加熱部分を破壊するのに十分な時間加熱するステップと、
前記組織の前記加熱部分を破壊するのに十分な前記時間の完了時に前記組織の前記加熱を終了させるステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項23】
前記低電力が0ワットからおよそ20ワットの範囲であることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記十分に高い温度がおよそ43℃であることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記流体が脱イオン水および滅菌水の1つであることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記圧迫バルーンがある長さを有し、前記組織の前記加熱部分が治療区域であり、前記治療区域の長さが前記圧迫バルーンの長さによることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記圧迫バルーンの長さがおよそ25ミリメートルから60ミリメートルの範囲であることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
体管に隣接する組織を治療する温熱療法の方法であって、
変更遺伝子および薬物または薬剤の少なくとも1つを前記治療対象組織に隣接するエリア内に注入するステップと、
カテーテルを含むエネルギー放出源を体管内に挿入して、前記体管に隣接する治療対象組織を加熱するエネルギーを放射するようにエネルギー放出源を前立腺の領域内に配置するステップと、
前記エネルギー放出源を取り囲む前記カテーテル上の圧迫バルーンを流体で膨張させるステップと、
前記治療対象体管に対して前記圧迫バルーンの圧迫および減圧を交互に行うことにより前記体管および取り囲む組織を機械的に操作して、前記静脈注射した変更遺伝子および薬物または薬剤の少なくとも1つを前記治療対象組織の標的エリアに効果的に送達するステップと、
前記エネルギー放出源を0ワットからおよそ20ワットの範囲の低電力まで通電するステップと、
前記体管を取り囲む前記組織の一部分をおよそ43℃の温度まで、前記エネルギー放出源により組織の加熱部分を破壊するのに十分な時間加熱するステップと、
前記組織の前記加熱部分を破壊するのに十分な前記時間の完了時に前記組織の加熱を終了し、前記膨張圧迫バルーンが前記被治療組織内の血流を減少させるとともに前記体管に隣接する組織が30℃を超える温度に維持されて生体ステントを作製するステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項29】
前記被覆圧迫バルーンからの変更遺伝子または薬物の活性化または放出が前記治療対象組織の治療または管理に対する免疫反応を生じることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記被覆圧迫バルーンからの変更遺伝子または薬物の活性化または放出が前記病変組織の治療または管理に対する免疫反応を生じることを特徴とする請求項15に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−528537(P2006−528537A)
【公表日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532966(P2006−532966)
【出願日】平成16年5月11日(2004.5.11)
【国際出願番号】PCT/US2004/014768
【国際公開番号】WO2005/007000
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(504305337)セルシオン コーポレーション (3)
【Fターム(参考)】