説明

圧電アクチュエータ、レンズ鏡筒及びカメラ

【課題】駆動力や駆動効率が向上された圧電アクチュエータを提供する。
【解決手段】本発明の圧電アクチュエータは、第1の方向に変位可能な第1圧電素子21、及び第1の方向と交差する第2の方向に変位可能な第2圧電素子22を有し、複数のグループに分けられた複数の圧電部材20と、前記圧電部材20と接触する接触面12Aを有し、前記圧電部材に対して第1の方向に相対移動する相対移動部材12と、複数のグループのうちの1つのグループの圧電部材20Aが接触面に接触している状態のときに、その圧電部材20Aの第1圧電素子を駆動することにより相対移動部材を第1の方向に相対移動させ、圧電部材20Aの第1圧電素子を駆動する際に、他のグループの圧電部材20Bの第2圧電素子を駆動することにより、他のグループの圧電部材を接触面から離間させた状態とする駆動部30と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電アクチュエータ、レンズ鏡筒及びカメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動方向と加圧方向との振動を分離した異モード型超音波アクチュエータが知られている(特許文献1参照)。この異モード型超音波アクチュエータは、移動子の駆動方向と平行な方向の振動(ねじり振動)と加圧方向と平行な方向の振動(縦振動)とを組み合わせた駆動原理の超音波アクチュエータである。
【0003】
この異モード型超音波アクチュエータは、振動子に発生する縦振動による変位で移動子を押し上げ、その時に移動子の駆動方向と同じ方向の振動子のねじり振動による変位を発生させて移動子を駆動する。また、縦振動は移動子を押し上げる方向と逆の方向にも振動するため、振動子と移動子は、この逆方向の振動の際に離間する。この瞬間にねじり振動により、振動子を移動子の駆動方向とは逆方向に変位させる。この様に縦振動とねじり振動を組み合わせることにより、移動子は所望の一方向に駆動される。
【0004】
一方、2種類の圧電素子を組み合わせて、移動子を駆動させる圧電アクチュエータも開示されている(特許文献2参照)。特許文献2は、圧電すべり効果素子と圧電横効果素子とを組み合わせた圧電アクチュエータで、圧電すべり効果素子を移動子の駆動方向に変位させ、圧電横効果素子を加圧方向に変位させて、これを組み合わせることで移動子を駆動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−84367号公報
【特許文献2】特開昭62−71480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示されている異モード型超音波アクチュエータは、駆動原理上、移動子と振動子が離間する瞬間が発生する。そのため、移動子への駆動力の伝達が時系列的に細切れとなり、それが駆動力や駆動効率向上の障害となる。
【0007】
また、特許文献2に開示されている尺取型の圧電アクチュエータも移動子と振動子が離間する瞬間が発生する。そのため、移動子への駆動力の伝達が時系列的に細切れとなり、駆動力や駆動効率向上の障害となる。
【0008】
本発明の課題は、駆動力や駆動効率が向上された圧電アクチュエータ、レンズ鏡筒及びカメラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下のような解決手段により前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0010】
請求項1に記載の発明は、第1の方向に変位可能な第1圧電素子(21,121,221)、及び前記第1の方向と交差する第2の方向に変位可能な第2圧電素子(22,122,222)を有するとともに、複数のグループにグループ分けされている複数の圧電部材(20,120,220)と、前記圧電部材(20,120,220)と接触する接触面(12A)を有し、前記圧電部材(20,120,220)に対して前記第1の方向に相対移動する相対移動部材(12,212)と、前記複数のグループのうちの1つのグループの前記圧電部材(20A,120A,220A)が前記接触面(12A)に接触している状態のときに、前記1つのグループの前記圧電部材(20A,120A,220A)の前記第1圧電素子(21,121,221)を駆動することにより前記相対移動部材(12,212)を前記第1の方向に相対移動させ、前記1つのグループの前記圧電部材(20,120,220)の前記第1圧電素子(21,121,221)を駆動する際に、前記複数のグループのうちの他のグループの前記圧電部材(20B,120B,220B)の前記第2圧電素子(22,122,222)を駆動することにより、前記他のグループの前記圧電部材(20,120,220)を前記接触面(12A)から離間させた状態とする駆動部(30,130)と、を備えることを特徴とする圧電アクチュエータ(1,10,200)である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の圧電アクチュエータ(1,10,200)であって、前記駆動部(30,130)は、前記第1圧電素子(21,121,221)を前記第1の方向の変位を制御する第1駆動信号と、前記第2圧電素子(22,122,222)の前記第2の方向の変位を制御するとともに該第1駆動信号と異なる波形を有する第2駆動信号と、を発振すること、を特徴とする圧電アクチュエータ(1,10,200)である。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の圧電アクチュエータ(1,10,200)であって、前記第1駆動信号は三角波信号で、前記第2駆動信号は矩形波信号であること、を特徴とする圧電アクチュエータ(1,10,200)である。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ(1,10,200)であって、前記複数のグループは3以上であること、を特徴とする圧電アクチュエータ(1,10,200)である。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ(10)であって、前記圧電部材(120)を保持する保持部(11)を備え、該保持部(11)と前記圧電部材(120)との間に、前記第2の方向に変位可能であって、前記第1の方向に沿って配置された第1の部分と第2の部分とを有する第3圧電素子(124A)を備えること、を特徴とする圧電アクチュエータ(10)である。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の圧電アクチュエータ(10)であって、前記駆動部(130)は、前記第1圧電素子(121)を前記第1の方向へ変位させることにより前記相対移動部材(12,212)を前記第1の方向に移動させた後、前記第2圧電素子(122)を前記第2の方向に変位させることにより前記相対移動部材(12,212)と前記圧電部材(120)とを離間させたときに前記圧電部材(120)に加わる衝撃により生じる前記圧電部材(120)の振動を打ち消すように、前記第3圧電素子(124A)の前記第1の部分と前記第2の部分とに異なる波形の電圧信号を加えること、を特徴とする圧電アクチュエータ(10)である。
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の圧電アクチュエータ(10)であって、前記第1の部分と前記第2の部分に生じる電圧を検出する検出部(35)を前記保持部(11)と前記第3圧電素子(124A)との間に備え、前記駆動部(130)は、前記第1圧電素子(121)を前記第1の方向へ変位させることにより前記相対移動部材(12,212)を前記第1の方向に移動させた後、前記第2圧電素子(122)を前記第2の方向に変位させることにより前記相対移動部材(12,212)と前記圧電部材(120)とを離間させたときに前記検出部で検出される電圧を打ち消すような電圧信号を、前記第3圧電素子(124A)の前記第1の部分と前記第2の部分とにそれぞれ加えること、を特徴とする圧電アクチュエータ(10)である。
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ(1,10,200)であって、前記第1圧電素子(21,121,221)が前記第2圧電素子(22,122,222)よりも前記相対移動部材(12,212)側に配置されていること、を特徴とする圧電アクチュエータ(1,10,200)である。
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ(1,10,200)を備えるレンズ鏡筒(201)である。
請求項10に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ(1,10,200)を備えるカメラ(201,205)である。
なお、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、駆動力や駆動効率が向上された圧電アクチュエータ、レンズ鏡筒及びカメラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態における圧電アクチュエータの構成を概念的に示す図である。
【図2】第1実施形態の圧電アクチュエータの圧電部材の拡大図である。
【図3】第1実施形態における圧電部材による移動部材の移動駆動をステップ毎に説明する図である。
【図4】圧電アクチュエータを駆動制御する駆動制御装置のブロック構成図である。
【図5】各圧電部材に入力される駆動信号のタイムチャートである。
【図6】図5における特定の時点における圧電アクチュエータの状態を概念的に示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態における圧電アクチュエータの構成を概念的に示す図である。
【図8】第2実施形態における圧電アクチュエータの圧電部材の拡大図である。
【図9】振動発生のメカニズムを説明する図である。
【図10】第2実施形態における圧電アクチュエータを駆動制御する駆動制御装置のブロック構成図である。
【図11】第2実施形態における圧電部材の振動抑制作動を説明する駆動信号のタイムチャートである。
【図12】図11に示すタイムチャートにおける特定の時点における圧電部材の状態を概念的に示す図である。
【図13】第3実施形態のレンズ鏡筒の概略断面図である。
【図14】第3実施形態の圧電アクチュエータ概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、図面等を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態である圧電アクチュエータ1の構成を概念的に示す図である。図2は、圧電アクチュエータ1の圧電部材20の拡大図である。なお、以下の説明では、図中に示すように、X−Y座標によって方向を示す。すなわち、図中左右方向をX軸方向とし、右側を+側、左側を−側とする。また、X軸と直交する図中上下方向をY軸方向とし、上側を+側、下側を−側とする。
【0014】
図1に示す圧電アクチュエータ1は、ベース部材11と、ベース部材11に対して移動可能な移動部材12と、移動部材12を移動駆動する圧電部材20と、を備えている。
ベース部材11と移動部材12とは、それぞれ所定厚さの板状体で、X軸方向に延在している。圧電部材20は、ベース部材11と移動部材12との間に配置されている。移動部材12は、図示しない付勢手段によって、ベース部材11に向けて(Y軸方向−側に)所定の力Fで押圧付勢されている。これにより、ベース部材11と移動部材12とは、圧電部材20によって規定される間隔で、平行に配置されている。
【0015】
圧電部材20は、ベース部材11における移動部材12と向かい合う上面(対向面11A)に立設されている。
圧電部材20は、3組の圧電部材20A,20B,20Cにより構成されている。3組の圧電部材20A,20B,20Cは、後述する制御が異なる以外は全く同一に構成されており、以下の説明では、特に必要のある場合を除いて、圧電部材20として説明する。なお、図1は、3組の圧電部材20A,20B,20Cを全て同一の作動状態として示しているが、実際にはそれぞれが異なる作動状態をとる。その作動については後に詳述する。
【0016】
移動部材12は、前述したように、ベース部材11の上側(Y軸方向+側)に、圧電部材20によって規定される間隔を有して平行に位置している。移動部材12のベース部材11と対向する側の面(下面)は、平坦な被駆動面12Aとなっている。
【0017】
3組の圧電部材20(20A,20B,20C)は、ベース部材11の対向面11Aに、X軸方向に所定間隔で配置されている。
圧電部材20A,20B,20Cは、それぞれ駆動信号を受けて、移動部材12を移動駆動する動作を異なるタイミングで行う。各圧電部材20A,20B,20Cにおける上面(後述する摩擦材23の上面)は、研削またはラッピング加工されて同一の作動状態においてY方向の同一の位置(同一平面)となるように形成されている。
【0018】
つぎに、圧電部材20の構成および作動について詳細に説明する。
図2に示すように、圧電部材20は、4枚の圧電素子21A,21B,22A,22Bが積層一体化されると共に、その最上面に摩擦材23が貼着されて構成されている。
【0019】
積層された4枚の圧電素子21A,21B,22A,22Bは、正方形または長方形形状であり、表裏両面に銀電極が施されていて、電極板と交互に接合し、かつ、分極方向が交互になる様に接合されている。なお、本実施形態では正方形または長方形形状としたが、変形の方向性が特定できれば例えば円形等他の形状であっても良い。
圧電素子21A,21B,22A,22Bは、上下2枚ずつで機能が異なり、図2中上側2枚の圧電素子21A,21Bは駆動用圧電素子部21を構成し、下側2枚の圧電素子22A,22Bはクラッチ用圧電素子部22を構成している。
【0020】
駆動用圧電素子部21を構成する圧電素子21A,21Bは、移動部材12を駆動する方向(X軸方向)に分極処理が施されている。2枚の圧電素子21A,21Bは、A相入力電極21Cを挟んで分極方向が反対になるように積層されている。これにより、両圧電素子21A,21Bに厚さ方向に直流電圧を印加すると、図2中に矢印で示すように、駆動用圧電素子部21はせん断方向(両圧電素子21A,21Bが図中左右にずれる方向)に変位する(d15の圧電効果)。
この駆動用圧電素子部21(圧電素子21A,21B)には、後述の図4に示すように、駆動制御装置30のA相信号発生部32AからのA相駆動信号(電圧)が印加されるようになっている。
【0021】
一方、クラッチ用圧電素子部22を構成する圧電素子22A,22Bは、厚さ方向(Y軸方向)に分極処理が施されている。2枚の圧電素子22A,22Bは、B相入力電極22Cを挟んで分極方向が反対になるように積層されている。これにより、両圧電素子22A,22Bに厚さ方向に直流電圧を印加すると、図2中に矢印で示すように、クラッチ用圧電素子部22は圧縮方向(両圧電素子22A,22Bの積層方向)に変位する(d33の圧電効果)。
この、クラッチ用圧電素子部22の圧電素子22A,22Bには、後述の図4に示すように、駆動制御装置30のB相信号発生部32BからB相駆動信号(電圧)が印加されるようになっている。
本実施形態では、クラッチ用圧電素子部22(圧電素子22A,22B)には分極方向と反対の直流電圧が印加されるように構成されており、電圧の印加によって厚さ方向に収縮するように設定されている。
【0022】
摩擦材23は、移動部材12を効率良く駆動するために設けられているものである。摩擦材23は、移動部材12(被駆動面12A)に対する摩擦係数が0.5以上であることが好ましい。例えば、移動部材12を表面にアルマイト処理を施したアルミニウム材によって形成した場合、摩擦材23はガラス繊維を混入したポリカーボネートが適する。しかし、これに限らず他の組み合わせでも摩擦係数が大きければ構わない。
【0023】
上記のように、駆動用圧電素子部21(圧電素子21A,21B)とクラッチ用圧電素子部22(圧電素子22A,22B)とが積層されて構成された圧電部材20は、駆動信号電圧の0N/0FFによって、それぞれ直交する方向に変位を生ずる。駆動用圧電素子部21の変位方向は、移動部材12を移動駆動する方向(X軸方向)となっている。以下、このX軸方向の変位を駆動変位と呼ぶ。また、クラッチ用圧電素子部22の変位方向は、駆動用圧電素子部21の変位方向と直交する高さ方向(Y軸方向)となっている。以下、このY軸方向の変位をクラッチ変位と呼ぶ。
【0024】
なお、本実施形態におけるクラッチ用圧電素子部22は、前述したように電圧の印加によって厚さ方向に収縮するように設定されている。このような構成により、前述した摩擦材23の上面の精度を出すための加工をB相駆動信号0FFで(電圧を印加せずに)行うことができ、加工時における作業性が良い。しかし、これに限定されるものではなく、B相駆動信号が0Nの場合に厚さ方向に膨張する構成であってもよい。
【0025】
上記のように構成された圧電部材20は、駆動変位とクラッチ変位を繰り返すことで、移動部材12をX軸方向に移動駆動する。
図3は、圧電部材20による移動部材12の移動駆動をステップ毎に説明する図である。図3(a)に示す状態を初期状態とする。初期状態は、クラッチ用圧電素子部22に電圧が印加されていない状態で摩擦材23の上面は移動部材12の下面(被駆動面12A)に圧接されている。
そして、図3(b)に示すように、駆動用圧電素子部21を駆動変位させて移動部材12を移動駆動させる。
移動部材12が移動駆動された後、図3(c)に示すようにクラッチ用圧電素子部22に電圧を印加し、クラッチ用圧電素子部22を圧縮させてクラッチ方向に変位させ、摩擦材23の移動部材12への圧接を解除する。
この状態で、図3(d)に示すように駆動用圧電素子部21を変位ゼロの状態に復帰させる。
これらのステップを繰り返すことで、移動部材12をX軸+方向に移動駆動することができる。なお、図3(c)および図3(d)に示す摩擦材23の移動部材12への圧接が解除された状態では、図示しない他の圧電部材が移動部材12に圧接して移動部材12の位置を規定している。
【0026】
図4は、圧電アクチュエータ1を駆動制御する駆動制御装置30のブロック構成図である。前述した3組の圧電部材20A,20B,20Cは、図4に示すように、駆動制御装置30によって駆動制御される。駆動制御装置30は、制御部31と、信号発生部32A,32B及び移相部33A,33Bを備える。
【0027】
制御部31は、例えば、被駆動体に設けられたセンサ(検出部34)による被区動体の位置の検出結果に基づいて、信号発生部32A,32Bへ指令を与える。
A相信号発生部32Aは、駆動用圧電素子部21に加えるA相駆動信号を発生する。
A相駆動信号は、非対称のこぎり波である。このA相駆動信号のピーク電圧値を変えることで、速度を制御する。
B相信号発生部32Bは、クラッチ用圧電素子部22に加えるB相駆動信号を発生する。
B相駆動信号は、負(−)の矩形波である。B相駆動信号は、速度の制御に関わらず、ピーク電圧値は一定である。
【0028】
A相移相部33AとB相移相部33Bとは、A相信号発生部32AおよびB相信号発生部32Bによって生成された駆動信号(A相駆動信号およびB相駆動信号)を、それぞれの圧電部材20A,20B,20Cに分配する。
すなわち、A相移相部33Aは、A相信号発生部32Aによって生成されたA相駆動信号を、位相をずらして圧電部材20A,20B,20Cにそれぞれ入力する。
B相移相部33Bは、B相信号発生部32Bによって生成されたB相駆動信号を、位相をずらして圧電部材20A,20B,20Cにそれぞれ入力する。
【0029】
検出部34は、当該圧電アクチュエータ1の駆動結果(状態)を検出し、制御部31に制御情報としてフィードバックする。そして、制御部31は、信号発生部32a,32B及び移相部33A,33Bを制御して、前述した各圧電部材20A,20B,20Cにおける移動部材12の移動駆動を、タイミングをずらして行う。これによって移動部材12は切れ目無く連続的に移動駆動される。
【0030】
つぎに、前述した図3および図4に加え、図5および図6を参照して、駆動制御装置30の制御による圧電部材20A,20B,20Cおよび圧電アクチュエータ1全体の作用について説明する。図5は、各圧電部材20A,20B,20Cに入力されるA相駆動信号およびB相駆動信号のタイムチャートである。図6は、図5における特定の時点(tx)における圧電アクチュエータ1(圧電部材20)の状態を概念的に示す図である。
【0031】
まず、圧電部材20を駆動するA相およびB相駆動信号の基本パターンについて説明する。
前述したように、駆動用圧電素子部21を駆動するA相駆動信号は、非対称のこぎり波である。A相駆動信号は、0Vを挟んで、負(−V1)から正(+V1)へ、正から負へとそれぞれ直線的に変化する。A相駆動信号の負から正方向への変化によって駆動用圧電素子部21はX+軸方向に漸次駆動変位し、正から負方向への変化によってX−方向に戻る。
ここで、A相駆動信号における、負側のピークから正側のピークまでの半周期の時間に対する、正側のピークから負側のピークまでの半周期の時間の比は、0.5に設定されている。つまり、初期状態から駆動変位する時間の半分の時間で、駆動変位から初期状態に戻るように設定されている。
【0032】
クラッチ用圧電素子部22を駆動するB相駆動信号は、負の矩形波である。B相駆動信号は、0Vから所定の負電圧(−V2)へ、負電圧(−V2)から0Vへと変化する。クラッチ用圧電素子部22は、B相駆動信号が0Vの状態である初期状態から、0Vから負電圧(−V2)への変化(電圧ON)によって駆動変位(収縮)する。
【0033】
A相駆動信号とB相駆動信号とのON/OFFのタイミングは、A相駆動信号における正側のピークの直前(ΔT1前)でB相駆動信号がONとなり、A相駆動信号における負側のピークの直後(ΔT2後)でB相駆動信号がOFFとなるように設定されている。つまり、駆動用圧電素子部21がX+方向に最大に変位した状態からX−方向に最大に変位した状態に戻る動作を行っている時間の前後に所定時間(ΔT1およびΔT2)加えた間、B相駆動信号がONとなってクラッチ用圧電素子部22が収縮した状態となる。
【0034】
上記のような設定により、先に図3を用いて説明したように、クラッチ用圧電素子部22に加える電圧がゼロの状態で摩擦材23の上面を移動部材12の下面(被駆動面12A)に圧接させ、駆動用圧電素子部21の駆動変位によって移動部材12をX+方向に移動駆動する。そして、クラッチ用圧電素子部22に−V2の電圧を加えて圧縮する方向にクラッチ変位させて摩擦材23の移動部材12への圧接を解除し、駆動用圧電素子部21をX−方向に駆動変位をさせる、といった一連の動作が行われる。
【0035】
各圧電部材20A,20B,20Cには、前述した基本パターンのA相駆動信号およびB相駆動信号が、時間Tずれた位相で入力される。時間Tは、A相駆動信号における、正側のピークから負側のピークまでの半周期の時間と等しく設定されている。
【0036】
つぎに、各圧電部材20A,20B,20Cにおけるそれぞれの駆動用圧電素子部21およびクラッチ用圧電素子部22の作用と、移動部材12の動きと、を時系列のステップ毎に説明する。
[時間:t1]
圧電部材20A:A相駆動信号は負の値であるが増加する方向に変化している。B相駆動電圧は、0Vである。
圧電部材20B:A相駆動信号は正の値でありさらに増加する方向に変化している。B相駆動電圧は、0Vである。
圧電部材20C:A相駆動信号は、正の値から負の値に変化しており、B相駆動電圧は−V2である。
【0037】
すなわち、時間t1においては、図6(a)に示すように、圧電部材20Aと圧電部材20Bとは、クラッチ変位方向において収縮していない状態にあって移動部材12に圧接し、移動部材12をX+方向に駆動変位している。
圧電部材20Cは、クラッチ変位方向において収縮した状態にあって移動部材12と離間し、X−方向に駆動変位している。この時点で圧電部材20Cと移動部材12とは離間しているので、移動部材12は圧電部材20Cによっては駆動変位されない。
【0038】
[時間:t3]
圧電部材20A:A相駆動信号は正の値でありさらに増加する方向に変化している。B相駆動電圧は、0Vである。
圧電部材20B:A相駆動信号は正の値から負の値に変化している。B相駆動電圧は、−V2である。
圧電部材20C:A相駆動信号は負の値であるが増加する方向に変化している。B相駆動電圧は、0Vである。
【0039】
すなわち時間t3においては、図6(b)に示すように、圧電部材20Aと圧電部材20Cとは、クラッチ変位方向において収縮していない状態にあって移動部材12に圧接し、移動部材12をX+方向に駆動変位している。圧電部材20Bは、クラッチ変位方向において収縮した状態であって移動部材12と離間し、X−方向に駆動変位している。この時点で圧電部材20Bと移動部材12とは離間しているので、移動部材12は圧電部材Bによっては駆動変位されない。
【0040】
[時間:t5]
圧電部材20A:A相駆動信号は正の値から負の値に変化しており、B相駆動電圧は−V2である。
圧電部材20B:A相駆動信号は負の値であるが増加する方向に変化している。B相駆動電圧は、0Vである。
圧電部材20C:A相駆動信号は正の値でありさらに増加する方向に変化している。B相駆動電圧は、0Vである。
【0041】
時間:t5においては、図6(c)に示すように、圧電部材20Aは、クラッチ変位において収縮した状態にあって移動部材12と離間し、X−方向に駆動変位している。この時点で圧電部材20Aと移動部材12とは離間しているので、移動部材12は圧電部材20Aによっては駆動変位されない。
圧電部材20Bと圧電部材20Cとは、クラッチ変位方向において収縮していない状態にあって移動部材12に圧接し、移動部材12をX+方向に駆動変位している。
【0042】
[時間:t7]
前述した[時間:t1]と同様である。
【0043】
以上説明したステップを繰り返すことにより、各圧電部材20A,20B,20Cが順番に、移動部材12に圧接すると共にX軸+方向に移動駆動する。これにより、移動部材12を連続的にX軸+方向に移動駆動することができる。
【0044】
なお、上記の制御構成は、移動部材12をX軸+方向へ移動駆動するものであるが、A相駆動信号を正負反転することで、移動部材12をX軸−方向へ移動駆動できる。
【0045】
以上、本実施形態によると、以下の効果を有する。
【0046】
(1)3組の圧電部材20A,20B,20Cを備え、順次移動部材12に圧接すると共にその圧接期間は重合しているため、移動部材12の高さの変化が無い。従って、移動部材12の振動が抑えられ、滑らかな伝達が可能であり、伝達駆動力や駆動効率が向上し、より高回転での駆動が可能となる。
【0047】
(2)移動部材12への圧接をクラッチ用圧電素子部22が行い、移動部材12の移動操作を駆動用圧電素子部21が行う。つまり、移動部材12への圧接および移動の駆動が完全に分離しており、独立して駆動制御できる。このため、制御の自由度が高く、高い駆動精度に構成できる。
(3)また、移動部材12への圧接および移動の駆動が完全に分離しており、独立して駆動制御できるため、圧電部材20と移動部材12との間に不要な相対変位(こすり)が生じない。その結果、こすりに起因する磨耗を抑制できる。
【0048】
(第2実施形態)
つぎに、本発明の第2実施形態について、図7〜図10を参照して説明する。
図7は、本発明の第2実施形態における圧電アクチュエータ10の構成を概念的に示す図である。図8は、圧電アクチュエータ10の圧電部材120の拡大図である。図9は、振動発生のメカニズムを説明する図である。図10は、圧電アクチュエータ1を駆動制御する駆動制御装置130のブロック構成図である。
なお、図中、前述の第1実施形態と同じ機能を有する構成要素には同符号を付し、説明は省略する。
【0049】
圧電アクチュエータ10は、前述の第1実施形態における圧電アクチュエータ1(図1参照)とは、圧電部材120(120A,120B,120C)の構成が異なる。
図8に示すように、圧電部材120は、2枚の圧電素子121A,121Bから成る駆動用圧電素子部121と、2枚の圧電素子122A,122Bから成るクラッチ用圧電素子部122と、最上面に貼着された摩擦材123と、検出用圧電素子部124とが積層されて構成されている。
【0050】
駆動用圧電素子部121および摩擦材123の構成は、前述した第1実施形態における駆動用圧電素子部21および摩擦材23(図2参照)と同一である。すなわち、駆動用圧電素子部121は、圧電素子121A,121Bがその間にA相入力電極121Cを挟んで分極方向が反対になるように積層されている。その他詳細についての説明は省略する。
【0051】
クラッチ用圧電素子部122は、基本的な構成は前述した第1実施形態におけるクラッチ用圧電素子部22(図2参照)と同一であるが、B相入力電極122Cの構成が異なる。すなわち、圧電素子122A,122Bの間に配置されたB相入力電極122Cは、移動部材12を移動駆動する方向(X軸方向)における略中央で、第1入力電極122Caと第2入力電極122Cbとに絶縁状態に分断されている。第1入力電極122Caと第2入力電極122Cbとには、独立的に駆動信号を印加できるようになっている。
【0052】
検出用圧電素子部124は、クラッチ用圧電素子部122とベース部材11との間に配置されている。検出用圧電素子部124とクラッチ用圧電素子部122との間にはGND電極が配置され、検出用圧電素子部124とベース部材11との間には検出用電極124Bが配置されている。
【0053】
検出用圧電素子部124は、クラッチ用圧電素子部122を構成する圧電素子22A,22Bと同様に、厚さ方向(Y軸方向)に分極処理が施された圧電素子124Aによって構成されている。検出用圧電素子部124(圧電素子124A)は、Y軸方向における伸びの変位によって正の電圧を生じ、収縮の変位によって負の電圧を生ずる。(d33の圧電効果)
【0054】
検出用電極124Bは、当該圧電アクチュエータ10における移動部材12の移動駆動方向(X軸方向)の略中央で、第1検出用電極124Baと第2検出用電極124Bbとに絶縁状態に分断されている。これにより、第1検出用電極124Baと第2検出用電極124Bbとから、独立して検出信号を取り出すことができるようになっている。
【0055】
上記のように構成された圧電部材120は、検出用電極124(第1検出用電極124Baおよび第2検出用電極124Bb)からの検出出力によって、圧電部材120の移動部材12を移動駆動する方向(X軸方向)における傾きを検知することができる。また、クラッチ用圧電素子部122の入力電極122C(第1入力電極122Caまたは第2入力電極122Cb)に独立した駆動信号を入力することで、X軸方向において傾くように駆動(傾斜駆動)することができる。
【0056】
これにより、圧電部材120が、移動部材12の駆動力の反力を受けることに起因して圧電アクチュエータ10に生ずる揺れ振動を抑制するように制御することができる。
すなわち、図9に図示するように、圧電アクチュエータ10(圧電部材120)を前述の第1実施形態のような制御によって駆動すると、下記のようなメカニズムによって振動が発生する可能性がある。
【0057】
図9(a)に示すように、クラッチ用圧電素子部122がクラッチ変位方向において収縮していない状態(摩擦材123が移動部材12に圧接した状態)で、駆動用圧電素子部121の駆動変位によって、移動部材12を移動駆動する。そして、図9(b)に示すように、移動駆動の終期(移動駆動ストロークの後端近傍)に至ると、図9(c)に示すようにクラッチ用圧電素子部122が収縮する。この収縮により、摩擦材23の移動部材12への圧接が解除され、この状態で駆動用圧電素子部121がX−方向に移動する。
【0058】
ここで、クラッチ用圧電素子部122が収縮した状態になる際には、図9(c)に示すように圧電部材120(摩擦材123)は移動部材12に対して平行状態を保って、前後左右均等な姿勢で移動部材12(被駆動面12A)から離間するのが理想的である。
ところが、圧電部材120が移動部材12から離間する瞬間に、圧電部材20は移動部材12から反力を受け、図9(d)に示すように上面(圧電部材120の上面)に傾きが生ずる。これによって、圧電部材120が図中左右に振動し、図9(e)に示すように、圧電部材120の上面角部が移動部材12の下面(被駆動面12A)に衝突接触し、これが移動部材12の異常振動を誘発して、異音や駆動力低下といった現象を招来する。
【0059】
第2実施形態における圧電部材120では、第1検出用電極124Baおよび第2検出用電極124Bbの検出出力から、X軸方向における傾きを検知し、この検知信号に応じた駆動信号をクラッチ用圧電素子部122の第1入力電極122Caまたは第2入力電極122Cbに入力することで、圧電部材120の傾きを是正して圧電アクチュエータ10の揺れ振動を抑制することができる。
【0060】
たとえば、圧電部材120が図9(d)に示すような姿勢に変形した場合には、図8中左側(X軸方向−側)の第1検出用電極124Baから正の電圧信号が出力され、図8中右側(X軸方向+側)の第2検出用電極124Bbから負の電圧信号が出力される。これにより、圧電部材120の図8中左側(X軸方向−側)が伸び(Y軸方向+側に変位し)、図8中右側(X軸方向+側)が収縮(Y軸方向−側に変位)する変形が生じていることがわかる。
【0061】
そこで、その検出結果に基づいて、クラッチ用圧電素子部122の第1入力電極122Caまたは第2入力電極122Cbに、圧電素子122Aを圧電部材120の変形方向とは逆に変位させる制御信号を加える。すなわち、クラッチ用圧電素子部122の第1入力電極122Caに負の制御信号を加え、第2入力電極122Cbに正の制御信号を加える。これにより、圧電部材120の揺れ振動を相殺して抑制できる。
【0062】
上記のように構成された3組の圧電部材120A,120B,120Cは、図10に示すように、駆動制御装置130によって駆動制御される。駆動制御装置130の構成は、前述の第1実施形態と同様であって説明は省略する。本第2実施形態では、第1実施形態の構成に加えて、各圧電部材120A,120B,120Cの振動を制御するための振動検出部35(35A,35B,35C)と、減衰信号発生部36(36A,36B,36C)とを、それぞれを備えている。
【0063】
振動検出部35は、圧電部材120における検出用圧電素子部124の検出用電極124B(第1検出用電極124Baおよび第2検出用電極124Bb)からの検出出力から振動を検出し、その振動情報を減衰信号発生部36に入力する。
減衰信号発生部36は、振動検出部35から入力された振動情報に基づいて、この振動を打ち消す駆動信号を発生させ、これをクラッチ用圧電素子部122の入力電極122(第1入力電極122Caおよび第2入力電極122Cb)に入力する。
【0064】
つぎに、図11および図12を参照して、第2実施形態における圧電部材120の振動抑制作用について説明する。図11は、圧電部材120における振動抑制作動を説明する駆動信号のタイムチャートである。図中「検出相」は、検出用圧電素子部124の検出用電極124B(第1検出用電極124Ba又は第2検出用電極124Bb)からの検出出力を示している。また、「減衰信号」は、クラッチ用圧電素子部122の第1入力電極122Caまたは第2入力電極122Cbに入力される振動抑制駆動信号である。図12は、図11の特定の時点(tx)における圧電部材120の状態を概念的に示す図である。
【0065】
なお、通常の駆動制御は前述した第1実施形態と同様であるため説明は省略し、一般的な圧電部材120として振動制御についてのみ説明する。このような振動制御が、3組の圧電部材120A,120B,120Cそれぞれについて独立して行われるものである。
【0066】
[時間:t1]
A相駆動信号は正方向に変化している。B相駆動電圧は0Vである。
図11(a)に示すように、圧電部材120は、クラッチ変位方向において収縮していない状態にあって移動部材12に圧接し、移動部材12をX+方向に駆動変位する移動駆動ストロークの始端の状態である。
【0067】
[時間:t3]
A相駆動信号は正方向に変化している。B相駆動電圧は、0Vである。
図11(b)に示すように、圧電部材120は、クラッチ変位方向において収縮していない状態にあって移動部材12に圧接し、移動部材12をX+方向に駆動変位する移動駆動ストロークの終端に近い状態である。
【0068】
[時間:t4]
A相駆動信号は正側のピークとなっている。B相駆動電圧は、−V2となった直後である。
図11(c)に示すように、圧電部材120は、移動部材12から離間する状態となったが、移動部材12への駆動力を与えていたその反力が発生し、駆動方向とは反対の方向へ力を受け、圧電アクチュエータ10の揺れ振動が発生する。その振動状態を検出相が検出し、その検出その振動を押さえるため、減衰信号が、クラッチ用圧電素子部122に印加される。
【0069】
[時間:t5]
A相駆動信号は負方向に変化している。B相駆動電圧は、−V2である。
図11(d)に示すように、圧電アクチュエータ10の揺れ振動が抑えられ、圧電部材120は振動のない状態で、移動部材12離間する。
【0070】
以上、第2実施形態によると、特に高負荷駆動時に発生する圧電アクチュエータの揺れ振動を低減させることができ、伝達駆動力や駆動効率が向上し、高回転での駆動が可能となる。
【0071】
(第3実施形態)
つぎに、本発明の第3実施形態について、図13及び図14を参照して説明する。第3実施形態における圧電アクチュエータ200は、第1実施形態の圧電アクチュエータ1と同様に複数の圧電部材220を備え、個々の圧電部材220の構成も第1実施形態と同様であり、駆動用圧電素子部221とクラッチ用圧電素子部222とを備える。第1実施形態と第3実施形態との相違点は、第3実施形態において圧電部材220が円環状に配置され、レンズ鏡筒の内部に配置されている点である。
【0072】
図13は圧電アクチュエータ200を備えるレンズ鏡筒201の概略断面図である。レンズ鏡筒201はカメラボディ205に着脱可能な交換レンズである。図14はレンズ鏡筒201の光軸C方向の被写体側を図中、上として示した圧電アクチュエータ200の概略図である。なお、図14においては、構造を簡単に説明するために、圧電アクチュエータ200における移動部材212を省略し、ベース部材211を円環状に示す。
【0073】
図13に示すように、レンズ鏡筒201は、レンズ鏡筒201における最も外周側に配置されるとともに、レンズ鏡筒201がカメラボディ205に装着されると、そのカメラボディ205に対して固定される固定筒210を備える。固定筒210の内周側には、圧電アクチュエータ200が取り付けられている。圧電アクチュエータ200のさらに内周側には、カム溝232が形成されたカム筒230が配置され、さらに内周側には、AFレンズ240を保持するAF筒250が配置されている。
【0074】
圧電アクチュエータ200は、光軸Cを中心として配置される円環形状(円筒形状)であり、圧電アクチュエータ200のベース部材211は、レンズ鏡筒201の固定筒210に固定されている。
また、圧電アクチュエータ200のベース部材211は、円筒形状の略中央部が外径側に突出した突出部211Aと、円筒におけるその突出した部分より先(被写体側)の先端部211Bと、先端部211Bより厚い後(像側)の後端部211Cとを有する。
【0075】
圧電アクチュエータ200は、3組の圧電部材220A,220B,220Cを備える。これらの圧電部材220A,220B,220Cは、ベース部材211の突出部211Aの被写体側面に配置されている。圧電部材220A,220B,220Cは、この順番を4回繰り返すように並べられている。すなわち、圧電部材220A,220B,220C,220A,220B,220C…の順で並ぶ合計12個の圧電部材がベース部材211上に配置されている。なお、圧電部材220を駆動する制御駆動装置は第1実施形態の駆動制御装置30と同様である。
【0076】
図13に戻り、移動部材212は、圧電部材220の摩擦材223に加圧接触され、圧電部材220の駆動力により回転する。移動部材212の内径側と、ベース部材211の先端部211Bとの間には、ベアリング215が装着されている。また、ベース部材211の先端部211Bには、ウエーブワッシャ216が取り付けられ、圧電アクチュエータ200は、ウエーブワッシャ216により発生した加圧力をベアリング215を介して受けるようになっている。また、移動部材212の被写体側には、光軸方向被写体側に延びるピン217が設けられている。
【0077】
レンズ鏡筒201のカム筒230の光軸方向被写体側には、フォーク部材231が固定され、移動部材212に設けられた上述のピン217はそのフォーク部材231に係合されている。
【0078】
AF調整を行うAFレンズ240を保持するAF筒250の外周には、移動ピン251が設けられている。移動ピン251はカム筒230に設けられたカム溝232に係合している。
【0079】
本実施形態のレンズ鏡筒201においては、圧電アクチュエータ200に、カメラボディ205からの駆動信号が入力されると、第1実施形態と同様に各圧電部材220A,220B,220Cが、それぞれ順次、移動部材212と接触し、所望の回転方向に移動部材212を移動し、移動部材212から離間するという動作を繰り返す。これにより、移動部材212は光軸Cを中心として回転駆動される。
【0080】
移動部材212が回転すると、ピン217も共に回転し、フォーク部材231を介してカム筒230が回転する。カム筒230が回転することにより、AF筒250が直進移動し、AFレンズ240が光軸方向に駆動され、AF動作が行われる。カム筒230には、不図示のエンコーダが装着されており、エンコーダの検出値によりAFレンズ240が所望の位置に到達したことが確認されると、圧電アクチュエータ200が停止される。
【0081】
以上、本実施形態によると、第1実施形態の効果に加え、レンズ鏡筒内におけるレンズの伝達駆動力や駆動効率を向上することができ、より高回転での駆動が可能となる。
【0082】
(変形形態)
以上、説明した実施形態に限定されることなく、以下に示すような種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の範囲内である。
(1)本実施形態では、クラッチ用圧電素子部21,121および駆動用圧電素子部22,122は、それぞれ2層の圧電素子(圧電素子21A,21Bまたは圧電素子22A,22B)によって構成されている。しかし、これは説明を簡単にするためのものであって、圧電素子を4層以上の多層に積層することも可能である。より多層とすることで、必要な移動量に対する電圧を下げることができる。
【0083】
(2)また、本実施形態では、3組の圧電部材20,120,220を備えた例を説明した。しかし、このような3組を1グループとして多数のグループを備えて構成しても良いことは言うまでもない。また、3組以上の圧電部材20,120でグループを構成する(ストロークサイクルを繰り返す)ように構成しても良い。そうすることにより、より安定した円滑な駆動が可能となる。
(3)第3実施形態では、第1実施形態の圧電アクチュエータを備える円環型アクチュエータについて説明したが、これに限定されず、第2実施形態の圧電アクチュエータを備える円環型アクチュエータであってもよい。
【0084】
なお、実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0085】
1,10,200:圧電アクチュエータ、11,211:ベース部材、212:移動部材、12A:被駆動面、20(20A,20B,20C),120(120A,120B,120C),220(220A,220B,220C):圧電部材、21,121:駆動用圧電素子部、22,122:クラッチ用圧電素子部、30,130:制御部、122Ca:第1入力電極、122Cb:第2入力電極、124:検出用圧電素子部、124A:圧電素子、124B:検出用電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に変位可能な第1圧電素子、及び前記第1の方向と交差する第2の方向に変位可能な第2圧電素子を有するとともに、複数のグループにグループ分けされている複数の圧電部材と、
前記圧電部材と接触する接触面を有し、前記圧電部材に対して前記第1の方向に相対移動する相対移動部材と、
前記複数のグループのうちの1つのグループの前記圧電部材が前記接触面に接触している状態のときに、前記1つのグループの前記圧電部材の前記第1圧電素子を駆動することにより前記相対移動部材を前記第1の方向に相対移動させ、前記1つのグループの前記圧電部材の前記第1圧電素子を駆動する際に、前記複数のグループのうちの他のグループの前記圧電部材の前記第2圧電素子を駆動することにより、前記他のグループの前記圧電部材を前記接触面から離間させた状態とする駆動部と、を備えることを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電アクチュエータであって、
前記駆動部は、前記第1圧電素子を前記第1の方向の変位を制御する第1駆動信号と、前記第2圧電素子の前記第2の方向の変位を制御するとともに該第1駆動信号と異なる波形を有する第2駆動信号と、を発振すること、を特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項3】
請求項2に記載の圧電アクチュエータであって、
前記第1駆動信号は三角波信号で、前記第2駆動信号は矩形波信号であること、を特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータであって、
前記複数のグループは3以上であること、を特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータであって、
前記圧電部材を保持する保持部を備え、
該保持部と前記圧電部材との間に、前記第2の方向に変位可能であって、前記第1の方向に沿って配置された第1の部分と第2の部分とを有する第3圧電素子を備えること、を特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項6】
請求項5に記載の圧電アクチュエータであって、
前記駆動部は、前記第1圧電素子を前記第1の方向へ変位させることにより前記相対移動部材を前記第1の方向に移動させた後、前記第2圧電素子を前記第2の方向に変位させることにより前記相対移動部材と前記圧電部材とを離間させたときに前記圧電部材に加わる衝撃により生じる前記圧電部材の振動を打ち消すように、前記第3圧電素子の前記第1の部分と前記第2の部分とに異なる波形の電圧信号を加えること、を特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項7】
請求項5に記載の圧電アクチュエータであって、
前記第1の部分と前記第2の部分に生じる電圧を検出する検出部を前記保持部と前記第3圧電素子との間に備え、
前記駆動部は、前記第1圧電素子を前記第1の方向へ変位させることにより前記相対移動部材を前記第1の方向に移動させた後、前記第2圧電素子を前記第2の方向に変位させることにより前記相対移動部材と前記圧電部材とを離間させたときに前記検出部で検出される電圧を打ち消すような電圧信号を、前記第3圧電素子の前記第1の部分と前記第2の部分とにそれぞれ加えること、を特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータであって、
前記第1圧電素子が前記第2圧電素子よりも前記相対移動部材側に配置されていること、を特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータを備えるレンズ鏡筒。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータを備えるカメラ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2010−284042(P2010−284042A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136478(P2009−136478)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】