説明

圧電アクチュエータ、レンズ鏡筒及びカメラ

【課題】圧電体の電極に対する改良された電気配線を有する圧電アクチュエータを提供する。
【解決手段】本発明の圧電アクチュエータ10は、互いに対向する第1の面11Fと第2の面11Rとを有する凹部11が形成されたベース部材10と、前記凹部11内に配置された際に、前記第1の面11Fと前記第2の面11Rのそれぞれに対向する第3の面31Fと第4の面31Rとを有する駆動部材と、前記第3の面31Fと前記第1の面11Fとの間に配置された第1の圧電体33F、及び前記第4の面31Rと前記第2の面11Rとの間に配置された第2の圧電体33Rと、前記ベース部材10の表面に形成され、前記第1の圧電体33Fと前記第2の圧電体33Rとを電気接続する導電材料40と、前記第1の圧電体33F及び前記第2の圧電体33Rへの電力供給を行う電源と前記導電材料40とを接続する電気配線45と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電アクチュエータ、レンズ鏡筒及びカメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電アクチュエータにおいて、圧電体への電圧供給は、それぞれの圧電体の電極に直接接続されたリード線等を介して行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−231969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、近年、圧電アクチュエータが小型化している。小型化した圧電アクチュエータへ複数のリード線の接続は、スペース的にも困難であり、また、リード線同士の絡み合い等の問題も生じる。
【0005】
本発明の課題は、圧電体の電極に対する改良された電気配線を有する圧電アクチュエータ、レンズ鏡筒及びカメラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0007】
請求項1に記載の発明は、互いに対向する第1の面(11F)と第2の面(11R)とを有する凹部(11,111)が形成されたベース部材(10,110)と、前記凹部(11,111)内に配置された際に、前記第1の面(11F)と前記第2の面(11R)のそれぞれに対向する第3の面(31F)と第4の面(31R)とを有する駆動部材と、前記第3の面(31F)と前記第1の面(11F)との間に配置された第1の圧電体(33F)、及び前記第4の面(31R)と前記第2の面(11R)との間に配置された第2の圧電体(33R)と、前記ベース部材(10,110)の表面に形成され、前記第1の圧電体(33F)と前記第2の圧電体(33R)とを電気接続する導電材料(40,140)と、前記第1の圧電体(33F)及び前記第2の圧電体(33R)への電力供給を行う電源と前記導電材料(40,140)とを接続する電気配線(45)と、を備えること、を特徴とする圧電アクチュエータ(1,100)である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の圧電アクチュエータ(1,100)であって、前記導電材料(40,140)は、前記ベース部材(10,110)の表面に貼着された金属箔を含むこと、を特徴とする圧電アクチュエータ(1,100)である。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の圧電アクチュエータ(1,100)であって、前記導電材料(40,140)は、前記ベース部材(10,110)の表面に塗布された導電性ペーストを含むこと、を特徴とする圧電アクチュエータ(1,100)である。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ(100)であって、前記第1の圧電体(33F)と前記第2の圧電体(33R)との組が、2以上形成されていること、を特徴とする圧電アクチュエータ(100)である。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ(1,100)であって、前記導電材料(40,140)と前記ベース部材(10,110)との間が絶縁されていること、を特徴とする圧電アクチュエータ(1,100)である。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ(1,100)を備えること、を特徴とするレンズ鏡筒(300)である。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ(1,100)を備えること、を特徴とするカメラ(200)である。
なお、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、圧電体の電極に対する改良された電気配線を有する圧電アクチュエータ、レンズ鏡筒及びカメラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態である圧電アクチュエータの構成を概念的に示す図である。
【図2】圧電アクチュエータの駆動説明図である。
【図3】本発明における圧電アクチュエータの第2実施形態である圧電モータの正面図である。
【図4】圧電モータの断面図である。
【図5】圧電モータにおける支持駆動部の斜視図である。
【図6】各駆動機構への模式的な配線図であり、(a)は、リフト駆動体への配線図、(b)はスライド駆動体への配線図である。
【図7】駆動機構における前部リフト駆動体および後部リフト駆動体への電源供給配線を示す支持駆動部の部分拡大図である。
【図8】第2実施形態における圧電モータを備えるレンズ鏡筒およびそのレンズ鏡筒が装着されたカメラの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、図面等を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態である圧電アクチュエータ1の構成を概念的に示す図である。図2は、圧電アクチュエータ1の駆動説明図である。
なお、以下の説明では、図中に示すように、X−Y座標によって方向を示す。すなわち、図中左右方向をX軸方向とし、左側をプラス側、右側をマイナス側とする。また、X軸と直交する図中上下方向をY軸方向とし、上側をプラス側、下側をマイナス側とする。さらに、X−Y平面と直交する方向をZ軸方向とする。
【0011】
図1に示す圧電アクチュエータ1は、ベース部材10と、ベース部材10に対して移動可能な移動体20と、移動体20を移動駆動する駆動機構30と、を備えている。なお、本実施形態では、ベース部材10に対して移動体20がX軸マイナス方向に直線的に移動する例を説明するが、その移動は直線に限るものではなく、例えば円弧状(回転)であっても良い。
【0012】
ベース部材10は、概略形状が所定厚さの板状であって、その板面をX軸方向として配設されている。ベース部材10は、その上面側に、駆動機構30が構成される保持凹部11と、移動体20を支持する支持凸部12とを備えている。
支持凸部12は、正面形状(Z軸方向に見た形状)が所定高さの矩形であって、その上面は移動体20における後述する被駆動面21と対応する平坦な支持面12Aとなっている。
【0013】
移動体20は、所定厚さの板状であって、その下面は、平坦な被駆動面21となっている。また、移動体20は、図示しない付勢手段(移動体20の自重でも良い)によってベース部材10に向けて所定の力で付勢されている。これにより、移動体20は、ベース部材10における支持凸部12の上面に支持されている。
【0014】
保持凹部11は、正面形状が矩形であって、Z軸方向に貫通して形成されている。
駆動機構30は、リフタ31と、スライダ32と、を備えている。また、リフタ31とベース部材10との間に配置されたリフト駆動体33と、リフタ31とスライダ32との間に配置されたスライド駆動体34とを備えている。
【0015】
リフタ31は、直方体状であって、たとえばアルミニウム合金等の軽金属によって形成され、ベース部材10における保持凹部11に収容されている。その上面は、ベース部材10の上面より所定量上側に突出している。リフト駆動体33(33F,33R)は、リフタ31におけるX軸方向前後の外面31F,31Rと、保持凹部11におけるX軸方向前後の内壁面11F,11Rとの間に、それぞれ配置されている。すなわち、リフタ31のX軸マイナス側の外面31Fと保持凹部11の内壁面11Fとの間に前部リフト駆動体33Fが配置され、リフタ31のX軸プラス側の外面31Rと保持凹部11の内壁面11Rとの間に後部リフト駆動体33Rが配置されている。
【0016】
前後のリフト駆動体33(前部リフト駆動体33Fおよび後部リフト駆動体33R)は、それぞれZ軸方向に並列配置された二組の圧電素子33a,33bを備えている。
各圧電素子33a,33bは、たとえばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)によって、所定の縦横比および厚さの薄い矩形の板状に形成され、圧電効果を有している。その振動モードは厚み滑り振動であって、長手方向の変形を利用するように形成されている。
【0017】
そして、各圧電素子33a,33bは、リフタ31の外面31F,31Rに導電性の接着剤によって接着され、保持凹部11の内壁面11F,11Rには絶縁性の接着剤によって接着されて、その振動方向をY軸方向(すなわち保持凹部11に対してリフタ31を昇降移動させる方向)として設けられている。
【0018】
スライダ32は、平面形状がリフタ31と同一形状(矩形)の直方体状にステンレス合金鋼等によって形成され、スライド駆動体34を介してリフタ31の上面に配設されている。スライダ32の上面は、移動体20の被駆動面21と対応する平坦な駆動面32Aとなっている。
【0019】
スライド駆動体34は、リフト駆動体33と同様に、Z軸方向に並列配置された二組の圧電素子34a,34bを備えている。圧電素子34a,34bは、リフト駆動体33における圧電素子33a,33bと同様に、所定の縦横比で所定厚さの薄い板状であって、振動方向をX軸方向(すなわちリフタ31に対してスライダ32を前後移動させる方向)として設けられている。
【0020】
リフト駆動体33における圧電素子33a,33bと、スライド駆動体34における圧電素子34a,34bとには、図示しない制御装置によって制御される駆動回路からそれぞれ駆動電圧が印加されるようになっている。駆動電圧は、たとえば±1.0Vで変化するように設定され、この駆動電圧によってリフト駆動体33が振動してリフタ31を昇降駆動すると共に、スライダ32を前後駆動する。
【0021】
すなわち、リフト駆動体33は、電圧の印加による各圧電素子33a,33bの変形振動によって、リフタ31を保持凹部11に対してY軸方向に所定のストロークで移動駆動する。また、スライド駆動体34は、電圧の印加による圧電素子34a,34bの変形振動によって、スライダ32をリフタ31に対して(すなわちベース部材10に対して)X軸方向に所定のストロークで移動駆動する。
【0022】
上記のように構成された圧電アクチュエータ1は、制御装置に制御された駆動装置から、リフト駆動体33およびスライド駆動体34にそれぞれ所定の位相で駆動電圧が印加され、駆動機構30が下記のように作動して移動体20をX軸マイナス方向に移動駆動する。
図2(a)は、リフト駆動体33およびスライド駆動体34ともに非駆動の状態である。非駆動状態では、駆動機構30(スライダ32)と支持凸部12とで移動体20を支持している。この非駆動状態から、図2(b)に示すようにリフト駆動体33を下降(Y軸マイナス)駆動すると共に、スライド駆動体34を後退(X軸プラス)駆動する。この状態では、移動体20は支持凸部12に支持される。
【0023】
ついで、図2(c)に示すようにリフト駆動体33を上昇(Y軸プラス)駆動して、スライダ32によって移動体20を持ち上げて駆動面32Aに支持する。そして、図2(d)に示すように、スライド駆動体34を前進(X軸マイナス)駆動する。これにより、スライダ32に支持された移動体20は前進移動する。その後、図2(e)に示すように、リフト駆動体33を下降駆動して、移動体20を支持凸部12に支持させ、スライド駆動体34を後退駆動して図2(b)の状態に戻る。
以下、上記ステップを繰り返すことで、移動体20をX軸マイナス方向に移動駆動することができる。
【0024】
すなわち、圧電アクチュエータ1は、リフト駆動体33とスライド駆動体34との協動によってスライダ32を略円運動((図1において時計回り)させ、これによって移動体20をステップ移動駆動する。この動作を高速で繰り返すことで、移動体20を円滑に移動駆動することができる。
なお、駆動機構30を複数備えてそれぞれ異なる位相で駆動して移動体20を交互に支持する構成とすれば、支持凸部12は備えなくても良い。
【0025】
つぎに、リフト駆動体33における前部リフト駆動体33Fおよび後部リフト駆動体33R(各二組の圧電素子33a,33b)に駆動電圧を印加する電源供給配線について説明する。
リフト駆動体33を構成する圧電素子33a,33bには、ベース部材10における保持凹部11の内壁面11F,11Rと対向する側の面に、導電部40を介して電圧が印加されるようになっている。圧電素子33a,33bの他方の面(リフタ31の外面31F,31Rと対向する面)は、リフタ31を介して接地電極に接続されている。
【0026】
導電部40は、ベース部材10の正面(図1において手前側の面)に、保持凹部11の周縁に沿って設けられた連結部41と、連結部41から連続してベース部材10の上面を保持凹部11の縁に沿って延びる接点部42とを備えている。
連結部41は、保持凹部11の下縁に沿って設けられた架橋部41Aと、架橋部41Aの両端からそれぞれ保持凹部11の前後の側縁に沿ってそれぞれ延設された腕部41F,41Rとから成り、略U字状を呈している。
接点部42は、連結部41の腕部41Fからベース部材10の上面を保持凹部11の縁に沿って延びる前部接点部42Fと、連結部41の腕部41Rからベース部材10の上面を保持凹部11の縁に沿って延びる後部接点部42Rとから成る。
【0027】
導電部40は、たとえば、導電性の良い金属泊(金、銀、銅等)を、ベース部材10の外面に貼り付けることによって形成されている。
ここで、ベース部材10が金属等導電性の素材によって形成されている場合には、図1に示すように、導電部40とベース部材10の間には絶縁層44が設けられる。絶縁層44は、シート状の絶縁体をベース部材10の外面に貼り付けることで形成される。また、導電部40を形成する箔の裏面側に絶縁シートを予め貼り付けて一体化した状態でベース部材10の外面に導電部40と同時に貼り付けて形成しても良い。絶縁層44の形成は、これに以外にも、たとえば、ベース部材10の外面に絶縁塗料を塗布して形成しても良い。また絶縁層44の形成領域は、導電部40と対応する領域のみでなく、ベース部材10の外面(保持凹部11を除く)全域に形成しても良い。
【0028】
導電部40における接点部42(42F,42R)と、リフト駆動体33における前部リフト駆動体33Fおよび後部リフト駆動体33Rを構成する各圧電素子33a,33bとは、たとえば、導電性ペースト43によって電気的に接続されている。図1に示すように、圧電素子33a,33bの上縁はベース部材10の上面より突出するように設定されている。この圧電素子33a,33bにおける突出部位の外側(リフタ31とは反対側)の面と、接点部42とを導通可能に接続して、それぞれ導電性ペースト43が塗布されている。なお、接点部42(42F,42R)と各圧電素子33a,33bとの電気的な接続は、導電性ペースト43に限らずハンダ等他の手段によっても良い。
【0029】
導電部40には、その架橋部41Aの中央付近に、図示しない駆動電源に繋がるリード線45が接続されている。このリード線45を介して印加された電源電圧は、導電部40を介してリフト駆動体33を構成する各圧電素子33a,33bに印加される。
【0030】
本構成の圧電アクチュエータ1によれば、駆動機構30における前後のリフト駆動体33(前部リフト駆動体33F,後部リフト駆動体33R)を構成する各圧電素子33a,33bに、ベース部材10の表面に形成された導電部40を介して駆動電圧を供給する。このため、各圧電素子33a,33bにそれぞれリード線を結線する場合に比較して、簡素な結線構成とすることができる。また、各圧電素子33a,33bと導電部40との電気的接続作業は、導電性ペースト43によりスポット的に接続させるのみの作業で良く、リード線を結線するといった煩雑な作業が不要となるために組立作業性が向上する。
【0031】
さらに、導電部40の架橋部41Aの中央付近に、駆動電源に繋がるリード線45を接続することで、各圧電素子33a,33bに位相ずれの無い駆動電圧を印加でき、前部リフト駆動体33Fと後部リフト駆動体33Rとを完全に同期させてリフタ31を安定して円滑に昇降駆動できる。
【0032】
(第2実施形態)
つぎに、図3〜図8を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。本第2実施形態の圧電モータ100は、ベース部材110に設けられた支持駆動部130によってロータ部120を回転させ、その回転力でたとえばカメラにおけるレンズ鏡筒等の光学機器や電子機器を駆動する用途等に用いられる。
【0033】
図3は、本発明における圧電アクチュエータの第2実施形態である圧電モータ100の正面図である。図4は、圧電モータ100の断面図である。図5は、圧電モータ100における支持駆動部130の斜視図である。図6は、各駆動機構30への模式的な配線図であり、(a)は、リフト駆動体33への配線図、(b)はスライド駆動体34への配線図である。図7は支持駆動部130における各駆動機構30の前部リフト駆動体33Fおよび後部リフト駆動体33Rへの電源供給配線を示す部分拡大図である。図8は、圧電モータ100を備えるレンズ鏡筒300およびそのレンズ鏡筒300が装着されたカメラ200の概念図である。
【0034】
図3および図4に示すように、圧電モータ100は、ベース部材110と、ベース部材110に対して直列に隣接配置されたロータ部120と、ベース部材110のロータ部120と対向する側に構成された支持駆動部130と、を備えている。
【0035】
ベース部材110は、例えばステンレス鋼等の金属材料により中空円筒状に形成され、中央に支持軸115が挿通固定されている。
ベース部材110におけるロータ部120と対向する端部には、支持駆動部130における駆動機構30を収容する保持凹部111が、ベース部材110の周方向(すなわちロータ部120の回転方向)に複数(6カ所)設けられている。保持凹部111は、環状のベース部材110の肉厚部分を径方向に通して形成されている。
【0036】
ロータ部120は、ベアリング116を介して支持軸115によって回転自在に軸支され、ベース部材110に対して直列状態に設けられている。ロータ部120の外周面には、回転力を出力するための歯車125が形成されている。ロータ部120は、支持駆動部130によって支持されている。
【0037】
支持駆動部130は、図5に示すように、周方向等間隔(すなわち60°間隔)で6組の駆動機構30を備えている。
各駆動機構30は、形状の詳細な部分等は異なるが、基本的な構成は前述した第1実施形態における駆動機構30と同様である。このため、同一の構成要素には同符号を付して詳細な説明は省略する。
駆動機構30におけるスライダ32は、断面が山形の六角柱状に形成されている。
【0038】
6組の駆動機構30は、1組み置き(交互)の3組でグループ(第1グループG1および第2グループG2)を構成している。
図6(a)に示すように、各グループG1,G2を構成する駆動機構30(図6中符号の末尾にG1またはG2を付して所属グループを示す)における、前部リフト駆動体33Fおよび後部リフト駆動体33Rの圧電素子33a,33bには、電源部150から同一位相の駆動電圧が印加されるようになっている。また、図6(b)に示すように、各グループG1,G2を構成する駆動機構30におけるスライド駆動体34の圧電素子34a,34bには、電源部150から同一位相の駆動電圧が印加されるようになっている。
【0039】
そして、各駆動機構30は、前述した第1実施形態と同様に、スライダ32がベース部材110の中心軸を通る水平な軸回りに略円運動(図3において時計回り)するように駆動される。同一グループ(G1またはG2)を構成する駆動機構30は同位相で作動し、かつ、グループG1またはグループG2を構成する駆動機構30とグループG2を構成する駆動機構30は異なる位相で作動する。これにより、グループG1またはグループG2を構成する駆動機構30がロータ部120を回転軸方向において交互に支持し、ベース部材110に対して相対的に駆動させる。これによって、支持駆動部130は、ロータ部120を図3中矢印Rで示す方向に連続して回転駆動する。
【0040】
支持駆動部130を構成する駆動機構30におけるリフト駆動体33を構成する圧電素子33a,33bには、図7に示すように、ベース部材110の外周面および上面に設けられた導電部140を介して電源部150(図6参照)から駆動電圧が供給されるようになっている。
導電部140は、ベース部材110の外周面に、保持凹部111の周縁に沿って設けられた連結部141と、連結部141から連続してベース部材110の上面を保持凹部111の縁に沿って延びる接点部142とを備えている。
【0041】
連結部141は、保持凹部111の下縁に沿って設けられた架橋部141Aと、架橋部141Aの両端からそれぞれ保持凹部111の前後の側縁に沿ってそれぞれ延設された腕部141F,141Rとから成り、略U字状を呈している。
接点部142は、連結部141の腕部141Fからベース部材110の上面を保持凹部111の縁に沿って延びる前部接点部142Fと、連結部141の腕部141Rからベース部材10の上面を保持凹部111の縁に沿って延びる後部接点部142Rとから成る。
【0042】
前部接点部142Fおよび後部接点部142Rは、ベース部材110の外周面側から中心側に向かって幅が先細りに形成されている。これにより、隣接するグループの異なる駆動機構30における接点部142と接触して短絡することを防いでいる。つまり、複数の駆動機構30が円形に配置される本構成の圧電モータ100では、隣接する駆動機構30の間に形成される扇形の領域に両側の駆動機構30の接点部142が配設されることとなる。中心部付近では配設面積が狭く、必然的に両側の接点部142の間隔は狭くなるため、接点部142を先細りとして接触を防いでいる。
【0043】
導電部140は、前述した第1実施形態における導電部40と同様に、たとえば、導電性の良い金属泊(金、銀、銅等)を、ベース部材110の外周面に貼り付けることによって形成されている。
ここで、ベース部材110が金属等導電性の素材によって形成されている場合には、図示しないが、前述した第1実施形態と同様に、導電部140とベース部材110との間に絶縁層が設けられる。
【0044】
図7に示すように、導電部140における接点部142(142F,142R)と、リフト駆動体33における前部リフト駆動体33Fおよび後部リフト駆動体33Rを構成する各圧電素子33a,33bとは、導電性ペースト143によって電気的に接続されている。すなわち、圧電素子33bの上縁と接点部142とを導通可能に接続して、それぞれ導電性ペースト143が塗布されている。
【0045】
ベース部材110の外周縁(上面と外周面とのエッジ部分)は、所定幅および所定角度の面取り112が施されている。この面取り112が形成された部位では外周側の圧電素子33aが露出しており、圧電素子33aと接点部142とを接続する導電性ペースト143はこの面取部位に塗布されている。
なお、接点部142(142F,142R)と各圧電素子33a,33bとの電気的な接続は、導電性ペースト43に限らずハンダ等他の手段によっても良いものことは、前述の第1実施形態と同様である。
【0046】
導電部140には、その架橋部141Aの中央付近に、駆動電源に繋がるリード線145が接続されている。このリード線145を介して印加された電源電圧は、導電部140を介してリフト駆動体33を構成する各圧電素子33a,33bに印加される。これにより、各圧電素子33a,33bに位相ずれの無い駆動電圧を印加でき、前部リフト駆動体33Fと後部リフト駆動体33Rとを完全に同期させてリフタ31を安定して昇降駆動できる。
【0047】
本構成の圧電モータ100によれば、駆動機構30における前後のリフト駆動体33(前部リフト駆動体33F,後部リフト駆動体33R)を構成する各圧電素子33a,33bに、簡素でコンパクトな結線構成で駆動電圧を供給することができる。また、各圧電素子33a,33bにリード線を結線するといった煩雑な作業が不要となって組立作業性が向上する。
【0048】
図8は、本第2実施形態における圧電モータ100を備えるレンズ鏡筒300が装着されたカメラ200の概念図である。
カメラ200は、撮像素子202を有するカメラボディ201と、レンズ鏡筒300とを備えている。レンズ鏡筒300は、カメラボディ201に着脱可能な交換レンズである。なお、本実施形態では、レンズ鏡筒300は、交換レンズである例を示したが、これに限らず、例えば、カメラボディと一体型のレンズ鏡筒としてもよい。
【0049】
レンズ鏡筒300は、フォーカシングレンズ301、カム筒302、圧電モータ100およびこれらを包囲する筐体303等を備えている。
圧電モータ100は、カム筒302と筐体303の間の円環状の隙間に配置されている。圧電モータ100は、そのロータ部120の歯車125が、カム筒302の外周に形成された歯車に噛合して配設され、カム筒302を回転駆動する。これにより、カメラ200のフォーカス動作時においてフォーカシングレンズ301を駆動する。
【0050】
カム筒302は、圧電モータ100による回転操作によって、筐体303内に光軸OAと平行する方向に移動可能に設けられている。
フォーカシングレンズ301は、カム筒302に保持されている。そして、圧電モータ100の駆動によるカム筒302の移動によって光軸OA方向に移動して焦点調節を行う。
なお、図示しないが、レンズ鏡筒300は、フォーカシングレンズ301の他に複数のレンズ群を備えている。
【0051】
そして、カメラ200は、レンズ鏡筒300内に設けられたフォーカシングレンズ301を含むレンズ群によって、撮像素子202の撮像面に被写体像が結像される。撮像素子202によって、結像された被写体像が電気信号に変換され、その信号をA/D変換することによって、画像データが得られる。
【0052】
本構成のカメラ200およびレンズ鏡筒300によれば、圧電モータ100の配線構成が簡素なために小型化することができる。また、組立作業性の向上によってコストダウンが可能となる。
【0053】
以上、本実施形態によると、以下の効果を有する。
(1)駆動機構30における前後のリフト駆動体33(前部リフト駆動体33F,後部リフト駆動体33R)を構成する各圧電素子33a,33bに、ベース部材10(またはベース部材110)の表面に形成された導電部40(導電部140)を介して駆動電圧を供給する。このため、各圧電素子33a,33bにそれぞれリード線を結線する場合に比較して、簡素な結線構成とすることができる。その結果、利用する機器への収納装着が容易となる。
【0054】
(2)各圧電素子33a,33bと導電部40(導電部140)との電気的接続作業は、導電性ペースト等によりスポット的に接続させるのみの作業で良く、リード線を結線するといった煩雑な作業が不要となるために組立作業性が向上する。
【0055】
(3)前後のリフト駆動体33(前部リフト駆動体33F,後部リフト駆動体33R)を構成する各圧電素子33a,33bに位相ずれの無い駆動電圧を印加でき、正確で円滑な駆動機構30の駆動が可能となる。
【0056】
(4)圧電モータ100の配線構成が簡素なため、これを適用するカメラ200およびレンズ鏡筒300を小型化することができ、また、組立作業性の向上によってコストダウンが可能となる。
【0057】
(変形形態)
以上、説明した実施形態に限定されることなく、以下に示すような種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の範囲内である。
(1)本実施形態では、ベース部材10(またはベース部材110)の表面に形成された導電部40(導電部140)は、金属箔等を貼り付けることによって形成した。しかし、導電部40(導電部140)はこれに限らず、たとえば、エッチングや印刷等の他の手法を用いて形成しても良い。また、たとえば接点部42のみを導電性ペーストを塗布して形成する等、導電部40(導電部140)の一部を異なる構成としても良い。
【0058】
(2)本実施形態では、リフト駆動体33(前部リフト駆動体33F,後部リフト駆動体33R)をそれぞれ2つの圧電素子33a,33bによって構成した。しかし、圧電素子の数はこれに限らず、3つ以上であっても、また、1つのみであっても良い。
【0059】
(3)第2実施形態における圧電モータ100は、6組の駆動機構30を備えた構成例である。しかし、駆動機構30の数はこれに限らず、これ7組以上または5組以下であっても良い。
【0060】
(4)第1実施形態における移動体20の移動方向、および第2実施形態におけるロータ部120の回転方向は、上記実施形態に限定されず、任意に設定可能である。
【0061】
(5)本第2実施形態においては、圧電モータ100が、カメラ200(レンズ鏡筒300)の焦点調節の駆動源として用いられる例を示したが、これに限らず、例えば、カメラのズーム動作の駆動源や、カメラの撮像系の一部を駆動して手振れを補正する手振れ補正機構の駆動源等に適用することができる。
なお、実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0062】
1:圧電アクチュエータ1、10:ベース部材10、11:保持凹部、11F,11R:内壁面、30:駆動機構、31F,31R:外面、33F:前部リフト駆動体、33R:後部リフト駆動体、33a,33b,34a,34b:圧電素子、40:導電部、43:導電性ペースト、45:リード線、100:圧電モータ、110:ベース部、111:保持凹部、140:導電部、143:導電性ペースト、150:電源部150、200:カメラ、300:レンズ鏡筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1の面と第2の面とを有する凹部が形成されたベース部材と、
前記凹部内に配置された際に、前記第1の面と前記第2の面のそれぞれに対向する第3の面と第4の面とを有する駆動部材と、
前記第3の面と前記第1の面との間に配置された第1の圧電体、及び前記第4の面と前記第2の面との間に配置された第2の圧電体と、
前記ベース部材の表面に形成され、前記第1の圧電体と前記第2の圧電体とを電気接続する導電材料と、
前記第1の圧電体及び前記第2の圧電体への電力供給を行う電源と前記導電材料とを接続する電気配線と、
を備えること、を特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電アクチュエータであって、
前記導電材料は、前記ベース部材の表面に貼着された金属箔を含むこと、
を特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の圧電アクチュエータであって、
前記導電材料は、前記ベース部材の表面に塗布された導電性ペーストを含むこと、
を特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータであって、
前記第1の圧電体と前記第2の圧電体との組が、2以上形成されていること、
を特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータであって、
前記導電材料と前記ベース部材との間が絶縁されていること、
を特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータを備えること、
を特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータを備えること、
を特徴とするカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−41335(P2011−41335A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183326(P2009−183326)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】