圧電アクチュエータおよび機器
【課題】 駆動性能の確実性を向上させることができる圧電アクチュエータおよび機器を提供すること。
【解決手段】 検出電極82D,82Eを、屈曲振動モードの振動の腹を含む位置に形成した。このため、屈曲の歪も最大となり縦振動モードの位相差の影響を打ち消すことができる。また、屈曲振動モードを励振するのに使用する側の駆動電極82B,82Cの位置にそれぞれ検出電極82D,82Eを形成した。これにより、縦振動モードとは逆符号の屈曲振動モードの位相差が生じるので、縦振動モードが主である周波数と、屈曲振動モードが主である周波数との位相差による区別が容易になり、各周波数の振動挙動に基づいて的確に制御できる。したがって、縦振動モードの振動による良好な駆動力の確保が確実となる。
【解決手段】 検出電極82D,82Eを、屈曲振動モードの振動の腹を含む位置に形成した。このため、屈曲の歪も最大となり縦振動モードの位相差の影響を打ち消すことができる。また、屈曲振動モードを励振するのに使用する側の駆動電極82B,82Cの位置にそれぞれ検出電極82D,82Eを形成した。これにより、縦振動モードとは逆符号の屈曲振動モードの位相差が生じるので、縦振動モードが主である周波数と、屈曲振動モードが主である周波数との位相差による区別が容易になり、各周波数の振動挙動に基づいて的確に制御できる。したがって、縦振動モードの振動による良好な駆動力の確保が確実となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子の振動により被駆動体を駆動する圧電アクチュエータおよびこの圧電アクチュエータを備えた機器に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子の振動を利用した圧電アクチュエータは、構成要素が少なく、素子自体が微細加工に適していて小型化が可能であり、小型レンズ駆動機構や時計の日付表示駆動機構などの小型機器の駆動源として使用されている。
圧電アクチュエータは、圧電素子が振動することによって当接している被駆動体であるロータ等を駆動する。例えば、縦振動モードと屈曲振動モードの双方を利用した圧電アクチュエータでは、当接部を楕円運動させてロータを駆動する。この時、縦振動モードを主振動モードとして楕円運動をさせると、ロータの回転数やトルクが最大となる。
ここで、縦振動モードと屈曲振動モードとはそれぞれ別の共振周波数(変位が最大となる周波数)を持つので、共振周波数の間の最適な駆動周波数で圧電素子を振動させることによって、当接部に最適な楕円運動を行わせることができる。
しかし、圧電アクチュエータは、その形状のばらつきによって個々の適切な駆動周波数が異なる。したがって、圧電アクチュエータを安定して確実に駆動するためには、圧電アクチュエータごとに、駆動周波数を制御する必要がある。また、周囲の温度等の環境によってもその適切な駆動周波数は変化する。
【0003】
従来、被駆動体であるロータからの力で歪を生じやすい圧電素子の位置に検出電極を設けて、その位置で検出される電圧がピークとなる周波数とロータの回転数がピークとなる周波数とが略一致することを利用して駆動周波数の制御を行う方法、あるいは駆動信号と検出信号との位相差を検出して駆動周波数の制御を行う方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、検出電極を縦振動モードの検出電圧と屈曲振動モードの検出電圧とがそれぞれ大きくなる位置に設けて、それぞれの検出電圧を検出する。そして、その検出電圧(実効値)の乗算値がピークとなる周波数とロータの回転数がピークとなる周波数とが近いことを利用して、圧電アクチュエータの駆動周波数を制御する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−291264号公報(第9〜第10頁、15図)
【特許文献2】特開2003−304693号公報(第6〜第8頁、12図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1または特許文献2において、検出される電圧値をもとに駆動周波数を制御する方法では、この電圧値はロータから圧電アクチュエータへの力のかかり具合によって大きさが変動し、ノイズも乗りやすいという課題がある。
また、特許文献1では、検出信号と駆動信号の位相差を利用した方法も開示されているが、特許文献1で示された検出電極の位置では、駆動信号と検出信号との位相差の周波数特性において、縦振動モードに起因する位相差と屈曲振動モードに起因する位相差が同じ符号(正負が同じ)で略同じ大きさで現れてくる。
例えば、図15には、特許文献1の圧電アクチュエータの駆動周波数に対する位相差特性が示されている。圧電アクチュエータは、圧電素子の長手方向に伸縮する縦振動モードと縦振動モードの振動方向に略直交する方向に屈曲する屈曲振動モードとを有し、図15に示されるように、それぞれの振動モードの振動の共振周波数f1,f2近傍で位相差が高くなる。したがって、制御しようとする位相差θ0に対して駆動周波数が複数(図15では三つの駆動周波数fb1,fb2,fb3)存在することとなる。
このような場合には、位相差が所定値θ0となるように駆動周波数を制御しても、駆動周波数が一つに決まらず、適切な振動モードの振動成分比が得られない場合があり、圧電アクチュエータの駆動性能の確実性に欠ける。
【0006】
本発明の目的は、駆動性能の確実性を向上させることができる圧電アクチュエータおよびこれを備えた機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の圧電アクチュエータは、主振動モードと屈曲振動モードとを含む圧電素子の振動により、被駆動体を駆動する圧電アクチュエータであって、前記圧電素子に駆動信号を印加して当該圧電素子を振動させるための駆動電極と、前記圧電素子の振動挙動を検出するための検出電極と、前記駆動信号と前記検出電極で検出される検出信号との位相差に基づいて前記駆動信号を制御する制御手段とを備え、前記検出電極は、前記屈曲振動モードに起因する位相差と前記主振動モードに起因する位相差とが逆符号で現れてくる位置に形成されていることを特徴とする。
この発明では、検出電極は屈曲振動モードに起因する位相差と前記主振動モードに起因する位相差とが逆符号で現れてくる位置に形成されている。ここで、屈曲振動モードに起因する位相差とは、屈曲共振周波数付近で山型もしくは谷型に現れる位相差であり、主振動モードに起因する位相差とは、主振動モードの共振周波数付近で変化する位相差である。
したがって、駆動周波数に対する位相差特性において、主振動モードの共振周波数付近の駆動周波数での位相差と同符号の屈曲振動モードに起因する位相差の山が現れてこない。つまり、主振動モードと屈曲振動モードとの振動成分比率が適切となる位相差を所定値として設定すると、位相差に対する駆動周波数が一つに決まるので、制御手段がこの位相差に基づいて駆動信号を制御することにより、駆動信号を最適に調整することが可能となる。したがって、それぞれの振動成分が適切に調整され、駆動性能の確実性が向上する。
【0008】
本発明の圧電アクチュエータでは、前記圧電素子は、略矩形板状に形成されているとともに、前記圧電素子の長手方向に沿って伸縮する前記主振動モードである縦振動モードの振動と、前記縦振動モードの振動方向に対して略直交方向に屈曲する前記屈曲振動モードの振動を同時に励振し、前記検出電極は、前記屈曲振動モードの振動の腹を含む位置で、かつ前記圧電素子の幅方向を分ける中心線よりも前記屈曲振動モードを励振する機構のある側に形成されているのが好ましい。
この発明によれば、圧電素子の振動モードは、縦振動モードと屈曲振動モードとを含んでいる。一般に、縦振動モードは屈曲振動モードよりも駆動力が大きくなるため、縦振動モードを主として使用する振動モードに設定することにより、大きな駆動力が得られる。ここで、検出電極は、屈曲振動モードの振動の腹を含む位置に形成されているので、屈曲の歪は最大となり縦振動モードの位相差の影響を打ち消しやすい。また、屈曲振動モードを励振する機構のある側に検出電極を形成することにより、縦振動モードとは逆符号の屈曲振動モードの位相差が生じ、縦振動モードが主である周波数と、屈曲振動モードが主である周波数との位相差による区別が容易になり、各周波数の振動挙動に基づいた的確な制御が可能となる。これにより、縦振動モードの振動による良好な駆動力の確保が確実となる。
【0009】
本発明の圧電アクチュエータでは、前記検出電極は、前記圧電素子の長手方向の外側縁に接するように形成されているのが好ましい。
この発明によれば、検出電極は、屈曲振動モードの腹の位置で一番歪の大きい略矩形状の圧電素子長手方向の外側縁に接する位置に形成されるので、縦振動モードとは逆符号の屈曲振動モードの位相差が大きくなり、より縦振動モードが主である周波数と、屈曲振動モードが主である周波数との位相差による区別が行いやすくなる。よって、より適切な振動挙動に基づいた的確な制御が可能となる。
【0010】
本発明の圧電アクチュエータでは、屈曲振動モードの振動方向を正逆変更可能に構成されていることが望ましい。
この発明によれば、屈曲振動モードの振動方向を正逆変更可能に構成されているので、振動軌跡が正逆変更可能となり、被駆動体を正逆両方向に駆動可能となる。これにより、被駆動体の駆動可能動作範囲が広くなる。なお、この場合にも、検出電極は屈曲振動モードの腹の位置を含んで、屈曲振動モードを励振する機構のある側の位置に形成されているので、屈曲振動モードの振動方向が正逆変更となった場合でも、縦振動モードと屈曲振動モードとの区別が行いやすい。
【0011】
本発明の圧電アクチュエータでは、検出電極の面積は、駆動電極の面積の30分の1以上7分の1以下であることが望ましい。
この発明によれば、検出電極の面積が適切に設定されているので、振動検出に必要な面積が確保されるとともに、駆動電極の面積を過度に小さくすることがないので圧電アクチュエータの駆動力が良好に確保される。
ここで、検出電極の面積が駆動電極の面積の30分の1より小さい場合には、検出電極自体の面積が小さすぎるため、圧電素子の振動を良好に検出できない。また、検出電極の面積が駆動電極の面積の7分の1より大きい場合には、駆動電極の面積が相対的に小さくなるため、必要な駆動力を確保することが困難となる。
【0012】
本発明の機器は、前述の圧電アクチュエータを備えたことを特徴とする。
この発明によれば、機器が前述の圧電アクチュエータを備えているので、前述の圧電アクチュエータの効果と同様の効果が得られる。つまり、駆動信号と検出信号との位相差に対して駆動信号が一つに定まるので、制御手段が位相差に基づいて駆動信号を適切な値に設定することにより、主振動モードと屈曲振動モードがそれぞれ適切に制御され、駆動性能の確実性が向上する。これにより機器の動作が安定する。
【0013】
本発明の機器では、レンズと、圧電アクチュエータの振動によりレンズを駆動する駆動ユニットとを備えていることを特徴とする。
この発明によれば、機器が駆動ユニットを備えているので、レンズの駆動が確実となる。これは例えば機器が携帯機器などの小型のものである場合には、レンズも小型となるが、圧電アクチュエータは小さな寸法で比較的大きな駆動力が得られるため、特に有用である。
【0014】
本発明の機器は、圧電アクチュエータの振動によって駆動される時計であることを特徴とする。
この発明によれば、機器が時計であり、この時計が前述の圧電アクチュエータの振動によって駆動されるので、前述の圧電アクチュエータの効果と同様の効果が得られ、複数の振動モードがそれぞれ適切に制御され、時計の駆動性能の確実性が向上する。これは例えば時計が腕時計などの小型のものである場合には、圧電アクチュエータは小さな寸法で比較的大きな駆動力が得られるため、特に有用である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の圧電アクチュエータおよび機器によれば、駆動信号と検出信号との位相差に基づいて駆動信号を制御する際に、検出電極が主振動モードに起因する位相差と屈曲振動モードに起因する位相差が逆符号で現れてくる位置に形成されているので、適切な位相差に対する駆動信号が一つに決まる。したがって、制御手段が駆動信号を適切かつ確実に制御できるから、駆動性能の確実性を向上させることができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、後述する第二実施形態以降で、以下に説明する第一実施形態での構成部品と同じ部品および同様な機能を有する部品には同一符号を付し、説明を簡単にあるいは省略する。
【0017】
[第一実施形態]
以下、本発明の第一実施形態にかかるレンズ駆動ユニットとしてのレンズユニット10について説明する。なお、レンズユニット10は、機器としてのカメラに搭載され、または、カメラと一体に製造され、利用されるものである。
また、このカメラは、前記レンズユニット10の他、このレンズユニットを構成するレンズ30,40,50によって結像される像を記録する記録媒体と、各レンズ30,40,50を駆動する駆動装置1と、これら全てが収納されるケースとを備えている。ただし、カメラ、記憶媒体、およびケースの図示は省略してある。
図1は、レンズユニット10を右上方から見た斜視図であり、図2は、レンズユニット10を左上方から見た斜視図である。図3(A)、(B)は、カム部材60の動作図であり、図4(A)、(B)は、カム部材70の動作図である。図5は、カム部材60を駆動する振動体66の拡大図である。
【0018】
図1ないし図5において、レンズユニット10は、全体略角筒状の筐体20と、被駆動体としての第1レンズ30,第2レンズ40および第3レンズ50と、第2レンズ40および第3レンズ50を進退駆動するカム部材60と、第1レンズ30を進退駆動するカム部材70と、カム部材60を回動駆動する圧電アクチュエータとしての振動体66と、カム部材70を回動駆動する圧電アクチュエータとしての振動体76とを備えている。そして、これらの内、カム部材60,70および振動体66,76により、各レンズ30,40,50を駆動するための駆動装置1が構成されている。以下には、各構成について具体的に述べる。
【0019】
筐体20には、正面から背面に向かって棒状の案内軸21が平行に2本設置されている。この案内軸21は、レンズ30,40,50が進退駆動されるのを案内する部材であり、レンズ30,40,50を進退方向(光軸方向)に貫通している。また、この案内軸21は、レンズ30,40,50が前後に倒れるのを防止する役目を担っている。
さらに、筐体20の両側の側部22には、長孔形状の開口部23A,23B,23Cが設けられ、これらの開口部23A,23B,23Cは、レンズ30,40,50に設けられたカム棒31,41,51が十分動ける大きさに形成されている。
【0020】
第1レンズ30は、筐体20の内部に配置されると同時に、筐体20の開口部23C内に位置するカム棒31を備えている。第2レンズ40は、筐体20の内部に設置されると同時に、筐体20の開口部23B内に位置するカム棒41を備えている。第3レンズ50も同様に、筐体20の内部に配置されると同時に、筐体20の開口部23A内に位置するカム棒51を備えている。
【0021】
これらの第1〜第3レンズ30,40,50は、中央の集光部32,42および図示しない第3レンズ50の集光部とその周囲の枠取付部33,43および図示しない第3レンズ50の枠取付部とが、レンズ材料で一体に形成されたものであり、これらを保持する保持枠34,44,54を備えている。そして、この保持枠34,44,54に、前述のカム棒31,41,51が設けられている。
【0022】
なお、第1レンズ30はフォーカスレンズであり、第2レンズ40,第3レンズ50はズームレンズである。また、第3レンズ50は、ズームレンズに限らず、フォーカスレンズであってもよい。その場合、各レンズ30,40,50の構成や、各レンズ30,40,50の光学特性を適宜設定することで、レンズユニット10をフォーカスレンズ用ユニットとして利用可能である。
【0023】
そして、第2レンズ40は、凹レンズおよび凸レンズを組み合わせた構成となっているが、各レンズ30,40,50の構造等もその目的を考慮して任意に決められてもよい。
さらに、レンズ30,40,50は、本実施形態では、集光部32,42および第3レンズ50の集光部と枠取付部33,43および第3レンズ50の枠取付部とがレンズ材料で一体に形成されていたが、集光部32,42および第3レンズ50の集光部のみをレンズ材料で形成し、枠取付部33,43および第3レンズ50の枠取付部側を別材料で保持枠34,44,54と一体に形成してもよい。また集光部32,42および第3レンズ50の集光部、枠取付部33,43および第3レンズ50の枠取付部、ならびに保持枠34,44,54が一体のレンズ材で構成されていてもよい
【0024】
カム部材60,70は、筐体20の両側にある外面部25A,25Bと、この外面部25A,25Bの外側にそれぞれ3本の足部26により固定されたカバー部材100との間に設置されている。
【0025】
カム部材60は、回動軸61を有する略扇状の形状をしており、筐体20の外面部25Aに対して、回動軸61を回動中心として回動自在に支持されている。また、カム部材60の面状部分には、駆動用案内部としての2つのカム溝62A,62Bが形成されている。このカム溝62A,62Bは、湾曲また屈曲した長孔状に形成されており、カム溝62Bには第2レンズ40のカム棒41が係合し、カム溝62Aには第3レンズ50のカム棒51が係合し、これによりカム部材60が回動すると、カム棒51,41がカム溝62A,62Bに誘導され、これらカム溝62A,62Bの形状に応じたスピードおよび移動範囲で動き、第2レンズ40,第3レンズ50が進退する。
【0026】
カム部材70は、回動軸71を有する略レバー状の形状をしており、筐体20のもう一方の外面部25Bに対して、回動軸71を回動中心として回動自在に支持されている。また、カム部材70の面状部分には、駆動用案内部としての1つのカム溝62Cが形成されている。このカム溝62Cは、直線の長孔状に形成されており、カム溝62Cには第1レンズ30のカム棒31が係合し、これによりカム部材60が回動すると、カム棒31がカム溝62Cに誘導され、これらカム溝62Cの形状に応じたスピードおよび移動範囲で動き、第1レンズ30が進退する。
【0027】
これらのカム部材60,70において、回動軸61,71の外周面には、回動軸61,71に略直交する平面内で振動する振動体66,76が当接されている。この際、回動軸61,71に対する振動体66,76の当接方向は特に限定されず、回動軸61,71を回動させることができる方向であればよい。
ここで、振動体66,67は、カム部材60,70の面状部分とカバー部材100との間に位置し、カバー部材100に支持されている。そのほか、カム部材60,70の面状部分に開口を設け、この開口内に振動体66,76を配置し、回動軸61,71の外周面に振動体66,76を当接してもよい。この場合、開口の大きさは、カム部材60,70が回動しても、振動体66,76と接触しない大きさを有する。そして、この場合の振動体66,76の支持は、筐体20の外面部25A,25B又はカバー部材100のどちら側であってもかまわない。
また、回動軸61,71の外周面においては、特に振動体66,76の当接部分は、摩耗を防ぐために、凹凸無く仕上げられている。振動体66,76の当接部分の外径は、大きければ大きいほどよく、このことで振動数に対する回動角度が少なくなるため、レンズ30,40,50を微細に駆動可能となる。そして、回動軸61,71の外径形状は、当接部分のみが円弧で、それ以外の面は特に円弧でなくてもよい。
【0028】
振動体66は、図5に示すように、略矩形平板状に形成された補強板81と、この補強板81の表裏両面に設けられた略矩形平板状の圧電素子82とを備えている。
補強板81は、その長手方向の両端の短辺略中央に凹部811(一端側のみを図示)が形成され、この凹部811に略楕円形状の凸部材81Aが配置されている。これらの凸部材81Aは、セラミックスなどの高剛性の任意の材料で構成され、その略半分が補強板81の凹部811内に配置され、残りの略半分は、補強板81の短辺から突出して配置されている。これらの凸部材81Aのうち、一方の凸部材81A先端が当接回動軸61の周面に当接されている。
補強板81の長辺略中央には、幅方向の外側に向けて腕部81Bが一体的に突設されている。腕部81Bは、補強板81からほぼ直角に突出しており、これらの端部がそれぞれ図示しないビスによってカバー部材100に固定されている。このような補強板81は、ステンレス鋼、その他の材料から形成されている。
【0029】
補強板81の両面の略矩形状部分に接着された圧電素子82は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、水晶、ニオブ酸リチウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、メタニオブ酸鉛、ポリフッ化ビニリデン、亜鉛ニオブ酸鉛、スカンジウムニオブ酸鉛等の材料の中から、適宜選択した材料により形成されている。
また、圧電素子82の両面には、ニッケルめっき層および金めっき層などが形成されて電極が形成されている。この電極は、切欠溝によって互いに電気的に絶縁された複数の電極が長手方向に沿った中心線を軸として線対称に形成されている。具体的には、長手方向に沿う二つの溝83Aによって駆動電極82Aが長手方向に渡って形成されている。また、長手方向中央の外側縁の両方から溝83Aまで達する二つの溝83Bによって長手方向に二つに分離された駆動電極82B,82Cが、駆動電極82Aの両側に計4つ形成されている。二つの駆動電極82Bは対角に位置し、二つの駆動電極82Cも残りの対角に位置している。そして、回転軸61側の駆動電極82B,82Cの領域に位置して、駆動電極82B,82Cの長手方向の略中央でかつ外側縁に接するように、振動挙動を検出するための矩形の検出電極82D,82Eがコの字型の溝83Cによって形成されている。
【0030】
ここで本実施形態においては、圧電素子82は短辺が約2mm、長辺が約7mmの矩形状に形成されている。また、検出電極82D,82Eのそれぞれの面積は、駆動電極82A,82Bの面積、あるいは駆動電極82A,82Cの面積、つまり駆動電極82Aの面積と対角にある一対の駆動電極面積との合計に対して30分の1以上7分の1以下に設定されており、より望ましくは、15分の1以上10分の1以下に設定されている。
駆動電極82Aおよび一対の駆動電極82B,82Cは、それぞれ互いに図示しないリード線で接続されており、これらのリード線は、振動体66の振動挙動を制御する制御手段としての印加装置84(図6参照)に接続されている。また、検出電極82D,82Eは、図示しないリード線によって制御手段としての印加装置84に接続され、さらに補強板81は図示しないリード線によってグラウンドに接続されている。
なお、これらの電極82A,82B,82C,82D,82Eは、補強板81を挟む表裏両方の圧電素子82に同様に設けられており、例えば電極82Aの裏面側には電極82Aが形成されている。
【0031】
このように形成された圧電素子82は、表面の駆動電極82A,82Bおよび82Cのうち、所定の電極を選択して、印加装置84により電圧を印加することにより、振動体66の長手方向に沿った往復振動である主振動モードとしての縦振動モードと、振動体66の幅方向(短手方向)に屈曲振動する屈曲振動モードとを振動体66に生じさせることができる。つまり、例えば、駆動電極82Aのみに電圧を印加すると、駆動電極82Aが形成された部分の圧電素子82が板状面内方向に伸縮することにより縦振動モードの振動を励振する。
屈曲振動モードは、対角上にある一対の駆動電極82Bに電圧を印加すると駆動電極82Bが屈曲振動モードを励振し、また、駆動電極82Cに電圧を印加すると駆動電極82Cが屈曲振動モードを励振する駆動電極として働く。つまり、それぞれの駆動電極は、屈曲振動モードを励振する機構として働く。
以上の縦振動モードと屈曲振動モードが発生することにより、振動体66の凸部材81Aは、縦振動モードの振動と屈曲振動モードの振動とを組み合わせた略楕円軌道を描いて振動する。この略楕円軌道の一部において、凸部材81Aが回動軸61を接線方向に回転させる。
検出電極82D,82Eは、駆動電極82B,82C内において、その歪みが最大となる屈曲振動モードの振動の腹の位置にそれぞれ形成されている。検出電極82Dは、駆動電極82Bで屈曲振動モードを励振する時に、検出電極82Eは、駆動電極82Cで屈曲振動モードを励振する時に使用される。
【0032】
また、圧電素子82に印加する電圧の電極を駆動電極82Bと82Cと適宜切り替えることにより、振動体66を振動させると、回動軸61の回動方向を正転および逆転させることができる。このとき、駆動電極82Aには両方の場合とも電圧を印加する。
例えば、駆動電極82Bに電圧を印加した時の回転方向を正転とすれば、電極82Cに電圧を印加すると、屈曲振動モードの振動の方向が逆になり、回動軸61の回転方向が逆転するのである。
ここで、圧電素子82に印加する駆動電圧(駆動信号)の周波数は、振動体66の振動時に縦振動モードの振動の共振点近傍に屈曲振動モードの振動の共振点も現れて、凸部材81Aが良好な略楕円軌道を描くような周波数に設定される。
さらに、振動体66全体の振動により検出電極82D,82Eが形成された部分の圧電素子82に歪みが生じるため、この歪みによって検出電極82D,82Eからは振動体66の振動に応じた検出信号が検出される。
【0033】
なお、圧電素子82の寸法や、厚さ、材質、縦横比、電極の分割形態などは、圧電素子82に電圧が印加された時に、凸部材81Aが良好な略楕円軌道を描きやすいように適宜決定される。
そして、振動体66に印加される交流電圧の波形は特に限定されず、例えばサイン波、矩形状波、台形波などが採用できる。
また、振動体76については、振動体66と同様な構成であり、振動体66を説明することで理解できるため、ここでの説明を省略する。
【0034】
図6には、印加装置84の構成ブロック図が示されている。この図6において、印加装置84は、位相差−電圧変換回路841と、定電圧回路842と、比較回路843と、電圧調整回路844と、電圧制御発信回路845と、ドライバ回路846と、リセット回路847とを備えている。
位相差−電圧変換回路841は、検出電極82C,82Dから検出された検出信号Vaの位相と、駆動電極82A,82B,82Cに印加される駆動信号Vhの位相との位相差を検出し、平均位相差に相当する電圧値を有する位相差電圧信号Vjを比較回路843に出力する。
図7は、駆動信号Vhと検出信号Vaとの位相差θを示した図である。この図7に示されるように、位相差θは、駆動信号Vhを基準として検出信号Vaが進む方向にずれた場合をプラス(+)として検出される。
位相差−電圧変換回路841は、位相差検出部841Aと、平均電圧変換部841Bとを備えている。位相差検出部841Aは、検出信号Vaおよび駆動信号Vhが入力されると、両信号の位相差に相当するパルス幅を有する位相差信号Vpdを生成し、平均電圧変換部841Bに出力する。平均電圧変換部841Bは、図示しない積分回路により位相差信号Vpdのパルス幅に相当する平均電圧値Vav1を有する位相差電圧信号Vjを生成し、比較回路843に出力する。
【0035】
定電圧回路842は、検出信号Vaの位相と駆動信号Vhの位相との最適な位相差に相当する電圧値を有する所定の基準位相差信号Vkを予め求めて比較回路843に出力するものである。
ここで、基準位相差信号Vkは、振動体66が最も効率よく振動し、縦振動モードと屈曲振動モードとの振動成分の比が適切となる駆動周波数に対応した位相差に設定されることが望ましい。また、温度による位相差に対する補償値を予め記憶させておき、温度計測を行うことにより、それぞれの温度に応じた基準位相差信号Vkを出力することも可能である。
図8は、駆動周波数に対する振動体66の挙動特性をそれぞれ模式的に示したものである。図8(A)は、駆動周波数に対する縦振動モードと屈曲振動モード各々の位相差θの理論値を示したものである。また、図8(B)は、駆動周波数に対する検出される位相差θの値を示したものである。ここで、縦振動モードに起因する位相差とは、縦振動モードの共振周波数f1付近で変化する位相差特性θ1,θ1rであり、屈曲振動モードに起因する位相差とは、屈曲共振周波数f2付近で山型もしくは谷型に現れる位相差θ2a,θ2b,θ2rである。
図8(C)は、駆動周波数に対する回動軸61の駆動(回動)速度の関係を示したものである。振動体66の駆動には、駆動電極82A,82Bを使用し、振動挙動の検出には、検出電極82Dを使用した。図8(B)の実線に示されるように、振動体66の駆動周波数を小さい方から大きい方へ変化させると、縦振動モードの振動の共振周波数f1付近で位相差θはプラスで大きい値であるが、徐々に減少し、屈曲振動モードの振動の共振周波数f2付近で位相差θは逆符号であるマイナス方向で大きくなり、θ2のピークを持つことがわかる。二点鎖線で示した位相差θの挙動は、比較のために屈曲振動モードを励振する位置とは反対側にあたる検出電極82Eを使用した場合を示した。
つまり、屈曲振動モードを励振する駆動電極82Bに位置する検出電極82Dでは、縦振動モードに起因する位相差θとは逆符号の屈曲振動モードに起因する位相差θが得られる。
また、図8(C)に示されるように、振動体66の駆動周波数を変化させると、回動軸61の駆動速度は、縦振動モードの振動の共振周波数f1と、屈曲振動モードの振動の共振周波数f2との間で大きくなり、特に縦振動モードの振動の共振周波数f1に近い側の駆動周波数fkにおいて最大となることがわかる。これは、一般的に縦振動モードの振動の方が屈曲振動モードの振動よりも振動体66の駆動トルクを確保しやすいことからも、駆動周波数fkは、縦振動モードの振動の共振周波数f1と屈曲振動モードの振動の共振周波数f2との間で縦振動モードの振動の共振周波数f1に近い周波数に設定するのが望ましいということがいえる。
したがって、本実施形態では、駆動周波数として回動軸61の駆動速度が最大となる周波数fkが選択され、基準位相差信号Vkは、この周波数における位相差θkに対応する電圧値を有する値に設定されている。なお、図8(B)からわかるように、検出電極82Dを使用すると、位相差θはf1からf2に向かって単調に減少するので、位相差θkに対して、対応する駆動周波数は常に一つに決定される。これに対して、検出電極82Eを使用すると、二点鎖線で示されるようにプラス方向の位相差θの挙動なので、位相差θkに対して、対応する駆動周波数が三つとなる。前述したように、このような場合には、位相差が所定値θkとなるように駆動周波数を制御しても、駆動周波数が一つに決まらず、適切な振動モードの振動成分比が得られない場合があり、圧電アクチュエータの駆動性能の確実性に欠ける。
【0036】
比較回路843は、位相差−電圧変換回路841からの位相差電圧信号Vjと定電圧回路842からの基準位相差信号Vkとを入力し、両者を比較するものである。つまり、位相差電圧信号Vj≧基準位相差信号Vkである場合には、比較回路843は“H”となる比較結果信号Veを電圧調整回路844に出力し、位相差電圧信号Vj<基準位相差信号Vkである場合には、比較回路843は“L”となる比較結果信号Veを電圧調整回路844に出力する。
電圧調整回路844は、比較回路843からの比較結果信号Veを入力し、電圧制御発振回路845に出力される調整信号Vfの電圧値を所定電圧値Vf0単位で変化させるものである。すなわち、電圧調整回路844は、“H”の比較結果信号Veを入力した場合には、調整信号Vfの電圧値を所定電圧値Vf0だけ上昇させ、“L”の比較結果信号Veを入力した場合には、調整信号Vfの電圧値を所定電圧値Vf0だけ下降させる。また、電圧調整回路844には、初期の調整信号である初期値Vf1が記憶されており、印加装置84の起動時には、この初期値Vf1を電圧値とする調整信号Vfを電圧制御発振回路845に出力する。なお、初期値Vf1は、予め設定された駆動周波数の調整範囲の上限値とされており、本実施形態では、駆動周波数の調整範囲は、縦振動モードの振動の共振周波数f1よりも低い周波数から、屈曲振動モードの振動の共振周波数f2よりも高い周波数までに設定され、初期値Vf1は、屈曲振動モードの振動の共振周波数f2よりも高い周波数で設定されている。
【0037】
電圧制御発振回路845は、電圧調整回路844からの調整信号Vfを入力して、ドライバ回路846に出力する基準信号Vgの周波数を調整するものである。すなわち、電圧制御発振回路845は、調整信号Vfの電圧値が前回の調整信号Vfの電圧値よりも高くなった場合、基準信号Vgの周波数を所定値f0だけ上げ、調整信号Vfの電圧値が前回の調整信号Vfの電圧値よりも低くなった場合には、基準信号Vgの周波数を所定値f0だけ下げるように調整される。また、電圧制御発振回路845は印加装置84の起動時に初期値Vf1の調整信号Vfを入力した場合には、予め設定された周波数の基準信号Vgを出力する。
ドライバ回路846は、電圧制御発振回路845からの基準信号Vgを受けて、この基準信号Vgの周波数で一定の電圧値となる駆動信号Vhを振動体66の駆動電極82A,82B,82Cに出力する。
【0038】
リセット回路847は、ドライバ回路846からの駆動信号Vhの周波数が所定値以下となった場合に、基準信号Vgの周波数を初期値Vf1の周波数に変更するリセット信号を電圧調整回路844に出力するものである。ここで、リセット信号が出力される周波数の所定値は、駆動周波数の調整範囲の下限値に設定されており、本実施形態では縦振動モードの振動の共振周波数f1よりも低い周波数に設定されている。電圧調整回路844は、リセット回路847からリセット信号を入力すると、初期値Vf1を電圧値とする調整信号Vfを電圧制御発振回路845に出力する。
なお、振動体76についても同様の構成の印加装置(図示せず)が設けられている。
【0039】
したがって、印加装置84は、初期値Vf1の電圧値に対応する周波数の基準信号Vgに基づいて振動体66に駆動信号Vhを印加する。このとき、初期値Vf1は、駆動周波数の調整範囲の上限値に設定されているので、通常初期の段階では駆動信号Vhと検出信号Vaとの位相差θによる位相差電圧信号Vjは、定電圧回路842からの基準位相差信号Vkよりも小さくなる。したがって、比較回路843では“L”の比較結果信号Veを出力し、電圧調整回路844は、この比較結果信号Veに基づいて調整信号Vfの電圧値を所定電圧値Vf0だけ下降させ、よって電圧制御発振回路845からの基準信号Vgの周波数が所定値f0だけ下がる。
このような動作を繰り返すことにより、振動体66に印加される駆動信号Vhの周波数は減少し、位相差電圧信号Vj≧基準位相差信号Vkとなった場合には、逆に駆動信号Vhの周波数が増加するため、駆動信号Vhと検出信号Vaとの位相差θに相当する位相差電圧信号Vjは基準位相差信号Vk近辺で制御されることとなる。
また、何かの具合により駆動信号Vhの周波数が低くなり、リセット回路847の所定値以下となった場合には、電圧調整回路844の調整信号Vfが初期値Vf1に対応した値にリセットされ、もう一度駆動周波数の調整範囲の上限値から周波数の制御を行う。
【0040】
次に、図3に基づいて、レンズユニット10の動作を説明する。
まず、回動軸61の外周に当接している振動体66が振動することにより、回動軸61が所定角度で回動する。回動することにより回動軸61と一体のカム部材60も所定の角度で回動する。するとカム部材60に形成されたカム溝62A,62Bも回動し、それぞれのカム溝62A,62Bに嵌合されているカム棒51,41の外周面がカム溝62A,62Bの内周面により誘導されながら開口部23A,23Bの中で移動する。
例えば、図3(A)の位置から回動軸61を反時計方向(R1)に回動させると、カム棒41,51を有する第2レンズ40と第3レンズ50とは、互いに離間する方向に移動し、図3(B)のように、第2レンズ40と第3レンズ50との間隔が広がることになる。
反対に、電圧が印加される駆動電極82Bと駆動電極82Cとを切り替えて、図3(B)の位置から回動軸61を時計方向(R2)に回動させると、第2レンズ40と第3レンズ50とは、互いに近接する方向に移動し、図3(A)のように戻る。
これにより第2レンズ40と第3レンズ50は、ズームレンズとして機能することになる。
【0041】
図4においても同様に、回動軸71の外周に当接している振動体76が振動することにより、回動軸71が所定角度で回動する。回動することにより回動軸71と一体のカム部材70も所定の角度で回動する。するとカム部材70に形成されたカム溝62Cも回動し、この62Cに嵌合されているカム棒31の外周面がカム溝62Cの内周面により誘導されながら開口部23Cの中で移動する。
例えば、図4(A)の位置から回動軸71を反時計方向(R1)に回動させると、カム棒51と連結された第1レンズ30は、筐体20の中心方向から外側方向に移動し、図4(B)のように、筐体20の端部側に寄る。
反対に、図4(B)の位置から回動軸71を時計方向(R2)に回動させると、第1レンズ30は、筐体20の中央側へ移動し、図4(A)のように戻る。
これにより第1レンズ30は、フォーカスレンズとして機能することになる。
【0042】
以上のように圧電素子82に印加する電圧の駆動電極82Bと駆動電極82Cとを適宜切り替えながら、カム部材60,70の回動軸61,71に直接振動を与えることにより、第1レンズ30,第2レンズ40,第3レンズ50が図3,図4のように進退駆動されることになる。
この際、図示しない読み取りセンサによってレンズ30,40,50の位置を読み取り、制御回路にフィードバックして駆動制御することにより、レンズ30,40,50を任意の位置に静止可能となっている。
【0043】
以上の第一実施形態によれば、次のような効果が得られる。
(1)駆動信号Vhと検出信号Vaとの位相差に基づいて駆動信号Vhを制御する際に、検出電極82D,82Eが主振動モードである縦振動モードに起因する位相差とは逆符号の屈曲振動モードの位相差を生じる位置に形成されているので、図8に示すように検出電極82D,82Eによって検出される振動挙動において、一つの駆動周波数に一つの位相差を対応させることができる。つまり、縦振動モードと屈曲振動モードとの振動成分比率が適切となる位相差θkを所定値として設定すると、位相差θkに対する駆動周波数fkが一つに決まるので、制御手段がこの位相差に基づいて駆動信号Vkを制御することにより、駆動信号Vkを最適に調整できる。したがって、それぞれの振動成分を適切に調整でき、駆動性能の確実を向上させることができる。
【0044】
(2)振動モードは、縦振動モードと屈曲振動モードとを含んでいる。一般に、縦振動モードは屈曲振動モードよりも駆動力が大きくなるため、縦振動モードを主として使用する振動モードに設定することにより、大きな駆動力が得られる。ここで、検出電極82D,82Eは、屈曲振動モードの振動の腹を含む位置に形成されているので、屈曲の歪も最大となり縦振動モードの位相差の影響を打ち消すことができる。また、屈曲振動モードを励振する側の駆動電極82B,82Cの位置に検出電極を形成することにより、縦振動モードとは逆符号の屈曲振動モードの位相差が生じるため、縦振動モードが主である周波数と、屈曲振動モードが主である周波数との位相差による区別を容易にでき、各周波数の振動挙動に基づいて的確に制御できる。これにより、縦振動モードの振動による良好な駆動力を確実に確保できる。
これに対して、前述の図15に示されるような従来の圧電アクチュエータでは、位相差に対する駆動周波数が一つに決まらないので、駆動信号Vhの周波数を常に最適に制御することができない。
【0045】
(3)検出電極82D,82Eは、屈曲振動モードの腹の位置で一番歪の大きい略矩形状の圧電素子66長手方向の外側縁に接する位置に形成されるので、縦振動モードとは逆符号の屈曲振動モードの位相差が大きくなり、より縦振動モードが主である周波数と、屈曲振動モードが主である周波数との位相差による区別を行うことができる。よって、より適切な振動挙動に基づいて的確に制御できる。
【0046】
(4)検出電極82D,82Eのそれぞれの面積が、駆動電極82Aと、82Bまたは82Cとの合計面積に対して30分の1以上7分の1以下、より望ましくは15分の1以上10分の1以下に設定されているので、検出電極82D,82Eでは確実に振動を検出できるとともに、駆動電極82Aと、82Bまたは82Cの合計面積を確保することにより、回動軸61,71の駆動に必要な駆動力を確保できる。
【0047】
(5)駆動信号Vhの制御対象として駆動信号Vhと検出信号Vaとの位相差θを採用しているので、例えば検出信号の電圧や電流を監視する場合に比べて、回動軸61,71からの反力による影響を受けたとしても、位相差のとる値は0〜±180の決まった値であり、大きく基準値を変えることなく、安定した制御対象を得ることができる。これにより、外乱に影響を受けることが少なく、確実に駆動信号Vhを制御できる。
【0048】
(6)振動体66,76が板状に形成されているので、駆動装置1の薄型化を促進でき、これによってレンズユニット10の小型化を促進できる。また、凸部材81Aが回動軸61,71に接触しているので、振動体66,76の振動を停止した場合には、凸部材81Aと回動軸61,71外周との間の摩擦により回動軸61,71の回動角度を維持できる。
【0049】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態は、本発明にかかる圧電アクチュエータを機器としての時計に適用したものである。
図9は、本発明の第二実施形態にかかる時計9の日付表示機構90を示す平面図である。この図9において、日付表示機構90の主要部は、圧電アクチュエータ91と、この圧電アクチュエータ91によって回転駆動される被駆動体としてのロータ92と、ロータ92の回転を減速しつつ伝達する減速輪列と、減速輪列を介して伝達される駆動力により回転する日車93とから大略構成されている。減速輪列は、日回し中間車94と日回し車95とを備えている。これらの圧電アクチュエータ91、ロータ92、日回し中間車94、および日回し車95は、底板9Aに支持されている。
【0050】
日付表示機構90の上方には、円盤状の文字板(図示せず)が設けられており、この文字板の外周部の一部には日付を表示するための窓部が設けられ、窓部から日車93の日付を覗けるようになっている。また、底板9Aの下方(裏側)には、ステッピングモータに接続されて指針を駆動する運針輪列(図示せず)や、電源としての二次電池9B等が設けられている。二次電池9Bは、ステッピングモータや圧電アクチュエータ91、印加装置(図示せず)の各回路に電力を供給する。なお、二次電池9Bに、ソーラー(太陽光)発電や回転錘の回転を利用した発電を行う発電器が接続され、この発電器によって発電した電力が二次電池9Bに充電される構造であってもよい。また、電源は、発電器で充電される二次電池9Bに限らず、一般的な一次電池(例えば、リチウムイオン電池)でもよい。
【0051】
日回し中間車94は、大径部941と小径部942とから構成されている。小径部942は、大径部941よりも若干小径の円筒形であり、その外周面には、略正方形状の切欠部943が形成されている。この小径部942は、大径部941に対し、同心をなすように固着されている。大径部941には、ロータ92の上部の歯車921が噛合している。したがって、大径部941と小径部942とからなる日回し中間車94は、ロータ92の回転に連動して回転する。
日回し中間車94の側方の底板9Aには、板バネ944が設けられており、この板バネ944の基端部が底板9Aに固定され、先端部が略V字状に折り曲げられて形成されている。板バネ944の先端部は、日回し中間車94の切欠部943に出入可能に設けられている。板バネ944に近接した位置には、接触子945が配置されており、この接触子945は、日回し中間車94が回転し、板バネ944の先端部が切欠部943に入り込んだときに、板バネ944と接触するようになっている。そして、板バネ944には、所定の電圧が印加されており、板バネ944が接触子945に接触すると、その電圧が接触子945にも印加される。したがって、接触子945の電圧を検出することによって、日送り状態を検出でき、日車93の1日分の回転量が検出できる。
なお、日車93の回転量は、板バネ944や接触子945を用いたものに限らず、ロータ92や日回し中間車94の回転状態を検出して所定のパルス信号を出力するものなどが利用でき、具体的には、公知のフォトリフレクタ、フォトインタラプタ、MRセンサ等の各種の回転エンコーダ等が利用できる。
【0052】
日車93は、リング状の形状をしており、その内周面に内歯車931が形成されている。日回し車95は、五歯の歯車を有しており、日車93の内歯車931に噛合している。また、日回し車95の中心には、シャフト951が設けられており、このシャフト951は、底板9Aに形成された貫通孔9Cに遊挿されている。貫通孔9Cは、日車93の周回方向に沿って長く形成されている。そして、日回し車95およびシャフト951は、底板9Aに固定された板バネ952によって図9の右上方向に付勢されている。この板バネ952の付勢作用によって日車93の揺動も防止される。
【0053】
図10には、圧電アクチュエータ91およびロータ92の拡大図が示されている。この図10に示されるように、圧電アクチュエータ91は、略矩形板状の補強板911と、補強板911の両面に接着された圧電素子912とを備えている。
補強板911の長手方向略中央には、両側に突出する腕部913が形成されており、この腕部913の一方がビスなどによって底板9Aに固定されている。なお、他方の腕部913は、底板9Aには固定されず、フリーの状態となっており、圧電アクチュエータ91が振動する場合に振動のバランスをとる錘となっている。
補強板911の対角線上両端には、補強板911の長手方向に沿って突出する略半円形の凸部914がそれぞれ形成されている。これらの凸部914のうち一方は、ロータ92の側面に当接されている。
【0054】
圧電素子912は、略矩形板状に形成され、補強板911両面の略矩形状部分に接着されている。圧電素子912の両面には、第一実施形態と同様にめっき層によって電極が形成されている。圧電素子912の表面には、溝でめっき層が絶縁されることにより略矩形状の検出電極912Bが形成されている。この検出電極912Bは、圧電素子912の長手方向中央よりもロータ92側で中央と端の略中間の位置で、かつ、圧電素子912の短手方向中央よりも凸部914側で長手方向の外縁近くに形成されている。検出電極912B以外の部分は駆動電極912Aとなっている。ここで、検出電極912Bの面積は、駆動電極912Aの面積の30分の1以上7分の1以下に設定されており、より望ましくは15分の1以上10分の1以下に設定されている。
【0055】
駆動電極912A、検出電極912B、および補強板911は、それぞれリード線などにより図示しない印加装置に接続されている。印加装置は、第一実施形態の印加装置84と同様に、駆動信号と検出信号との位相差が適切な値となるように駆動信号の制御を行う。
【0056】
そして、圧電アクチュエータ91の駆動電極912Aと補強板911との間に所定周波数の電圧を印加すると、圧電素子912が長手方向に沿って伸縮する縦振動モードの振動を励振する。このとき、圧電アクチュエータ91の対角線上両端には凸部914が設けられているので、圧電アクチュエータ91は全体として長手方向中心線に対して重量がアンバランスとなる。このアンバランスにより、圧電アクチュエータ91は長手方向に略直交する方向に屈曲する屈曲振動モードの振動を励振する(凸部914が励振する機構として働く)。したがって、圧電アクチュエータ91は、これらの縦振動モードおよび屈曲振動モードを組み合わせた振動を励振し、凸部914は、略楕円軌道を描いて振動する。このとき、圧電アクチュエータ91が片側の腕部913のみで固定されていること、および凸部914が対角線上端部に設けられてロータ92からの反力を受けることなどにより、屈曲振動モードは励振される。つまり、検出電極912Bの形成された圧電素子912の長手方向中央よりもロータ92側で、かつ、圧電素子912の短手方向中央よりも凸部914側の位置は、屈曲振動モードの腹の場所で、かつ屈曲振動モードを励振する機構のある位置になる。
【0057】
一方、ロータ92には、板ばね922が取り付けられており、ロータ92が圧電アクチュエータ91側に付勢されている。これにより凸部914とロータ92側面との間に適切な摩擦力が発生し、圧電アクチュエータ91の駆動力の伝達効率が良好となる。
【0058】
このような時計9では、第一実施形態と同様に印加装置が圧電アクチュエータ91への駆動信号を制御することにより、所定の周波数の駆動信号が印加されると、圧電アクチュエータ91は、前述したように、縦振動モードと屈曲振動モードとを組み合わせた振動を励振する。凸部914は、これらの振動モードを組み合わせた略楕円軌道を描いて振動し、その振動軌道の一部でロータ92を押圧することによりロータ92を回転駆動する。
ロータ92の回転運動は、日回し中間車94に伝達され、切欠部943に日回し車95の歯が係合すると、日回し中間車94によって日回し車95が回転し、日車93が回転する。この回転により日車93に表示された日付が変更される。
【0059】
このような第二実施形態によれば、第一実施形態の(1)〜(5)の効果と同様の効果が得られる他、次のような効果が得られる。
(7) 凸部914を圧電アクチュエータ91の対角線両端に設けたので、駆動電極82Aを一つ設けるだけで、重量のアンバランスにより縦一次振動モードに加えて屈曲二次振動モードを励振できる。したがって、圧電素子912の電極の構成を簡単にできる。これに伴って、印加装置での駆動信号の制御も簡略化できる。これは例えば圧電アクチュエータ91が小型である場合などでは、小さな圧電素子914に、溝によって複雑な形状の電極を形成するのが困難であるため、特に有用である。
【0060】
(8) 圧電アクチュエータ91が時計9の日付表示機構90に利用されているので、圧電アクチュエータ91の駆動効率が常に最適に制御されるので、日付表示機構90の駆動の確実性を向上させることができ、日付を正確に表示できる。また、圧電アクチュエータ91の小型化を促進できることにより、時計9の小型化も促進できる。
【0061】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
検出電極の形状、配置などは、例えば図11(B),(C)に示されるような形状、配置であってもよい。
図11(A)には比較のために第一実施形態で使用した圧電アクチュエータ66の平面図を示した。図中の点線は、屈曲振動モードの幅方向の振幅を示す線である。
前述したように、検出電極82D,82Eは、ロータ61側の駆動電極82B,82Cの長手方向外側縁7に接してこれらの電極の長手方向略中央で、屈曲振動モードの腹の位置a(節の位置はbで示した)で屈曲振動モードの歪が最大となる位置に設けられている。駆動電極82Aと駆動電極82Bとを用いて駆動する時は、検出電極は、82Dを用い、駆動電極82Aと駆動電極82Cを用いて駆動する時は、検出電極82Eを用いることで、屈曲振動モードを励振する駆動電極の位置の検出電極を使用できる。
【0062】
図11(B)に示される圧電アクチュエータ102では、(A)に示される検出電極の位置よりも少し内側の位置に検出電極102D,102Eが形成されている。この場合、駆動電極102Aと駆動電極102Bまたは102Cを駆動した場合、(A)の場合よりも、検出信号の出力は落ちるが、駆動力を増すことができる。
【0063】
図11(C)に示される圧電アクチュエータ103では、(A)の第一実施形態の検出電極82D,82Eとは逆側(ロータの逆側)に検出電極103D,103Eを設けた。このように、ロータ側でなくとも屈曲振動モードの腹で屈曲振動モードの歪が最大となる位置で、屈曲振動モードを励振する駆動電極の位置であればよい。
また、検出電極の形状は、略正方形状、多角形状などの他、円形状、楕円形状、変形形状など、任意の形状を採用できる。
【0064】
主振動モードには、縦振動モードに限らず、その他の任意の振動モード、例えば拡がり振動等を採用できる。また、圧電アクチュエータは、二つの振動モードを有するものに限らず、三つ以上の複数の振動モードを有していてもよい。
【0065】
初期値Vf1は、予め設定された駆動周波数の調整範囲の上限値に設定されていたが、これに限らず例えば駆動周波数の調整範囲の下限値に設定していてもよい。この場合でも位相差に対する駆動周波数が一つに決まるので、位相差を所定値に制御すれば、圧電アクチュエータに印加される駆動周波数が最適に制御される。
【0066】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
したがって、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【実施例1】
【0067】
本発明の効果を確認するために以下の実験を行った。
[実施例]
第一実施形態の圧電アクチュエータを用いてシミュレーションを行った。駆動信号の駆動周波数を変化させ、各駆動周波数に対する駆動信号と検出信号との位相差および検出電圧の関係を調べた。
【0068】
[比較例]
図12に示す圧電アクチュエータ110Bを用いてシミュレーションを行った。圧電アクチュエータ110Bの圧電素子111B表面には、実施例の圧電アクチュエータ66と同様に五つの駆動電極112B,113B,114Bが形成されている。駆動電極112Bに駆動信号が入力されている場合には、一対の駆動電極113Bのうち凸部116Bから遠い側の一方を検出電極として使用し、駆動電極113Bに駆動信号が入力されている場合には、一対の駆動電極112Bのうち凸部116Bから遠い側の一方を検出電極として使用した。
その他の条件は、実施例と同じである。
【0069】
[実施例および比較例の結果]
図13には、実施例の結果が示されている。この図13に示されるように、駆動周波数に対する位相差は、駆動周波数が大きくなるにしたがって位相差が徐々に減少し、屈曲振動モードに起因する位相差部分では符号が逆転する。したがって、縦振動モード付近で駆動する場合、駆動周波数の高い位置から周波数を低いほうへモニターすると制御が行いやすい。この場合において、位相差に対する駆動周波数が一つに決定されることがわかる。
【0070】
これに対して、図14には、比較例の結果が示されている。つまり、例えば位相差を70°〜80°の間の所定値に設定して制御しても、一つの位相差に対する駆動周波数が三つ存在する。したがって、駆動周波数はこれら三つの駆動周波数のいずれかに設定されることとなってしまい、ロータの回転速度を良好に確保できる駆動周波数となる場合もあるが、その他の駆動周波数となった場合にはロータの回転速度を良好に維持できないこととなり、ロータの回転駆動性能の確実性に欠ける。
【0071】
以上より、位相差に対する駆動周波数を一つに決めることができ、駆動信号と検出信号との位相差を所定値に制御することで圧電アクチュエータを常に最適な駆動周波数で振動させることができるという本発明の効果を確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第一実施形態にかかるレンズユニットを示す斜視図。
【図2】第一実施形態にかかるレンズユニットを示す斜視図。
【図3】第一実施形態のカム部材の動作図。
【図4】第一実施形態のカム部材の動作図。
【図5】第一実施形態の圧電アクチュエータの拡大斜視図。
【図6】第一実施形態の印加装置の構成ブロック図。
【図7】第一実施形態の駆動信号と検出信号との位相差を示す図。
【図8】第一実施形態の駆動周波数に対する位相差および駆動速度の関係を示す図。
【図9】本発明の第二実施形態にかかる時計を示す図。
【図10】第二実施形態にかかる圧電アクチュエータを示す拡大図。
【図11】圧電アクチュエータの検出電極の変形例を示す図。
【図12】本発明の比較例の圧電アクチュエータを示す図。
【図13】実施例の結果を示す図。
【図14】比較例の結果を示す図。
【図15】従来の圧電アクチュエータの駆動周波数に対する位相差特性を示す図。
【符号の説明】
【0073】
1…駆動装置(駆動ユニット)、9…時計(機器)、10…レンズユニット、30,40,50…レンズ(被駆動体)、66,76…振動体(圧電アクチュエータ)、82,112,111B…圧電素子、82A,82B,82C,912A,102A,102B,102C,103A,103B,103C,112B,113B,114B…駆動電極、82D,82E,912B,102D,102E,103D,103E,…検出電極、84…印加装置(制御手段)、66,91,102,103,110B…圧電アクチュエータ、61,92…ロータ(被駆動体)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子の振動により被駆動体を駆動する圧電アクチュエータおよびこの圧電アクチュエータを備えた機器に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子の振動を利用した圧電アクチュエータは、構成要素が少なく、素子自体が微細加工に適していて小型化が可能であり、小型レンズ駆動機構や時計の日付表示駆動機構などの小型機器の駆動源として使用されている。
圧電アクチュエータは、圧電素子が振動することによって当接している被駆動体であるロータ等を駆動する。例えば、縦振動モードと屈曲振動モードの双方を利用した圧電アクチュエータでは、当接部を楕円運動させてロータを駆動する。この時、縦振動モードを主振動モードとして楕円運動をさせると、ロータの回転数やトルクが最大となる。
ここで、縦振動モードと屈曲振動モードとはそれぞれ別の共振周波数(変位が最大となる周波数)を持つので、共振周波数の間の最適な駆動周波数で圧電素子を振動させることによって、当接部に最適な楕円運動を行わせることができる。
しかし、圧電アクチュエータは、その形状のばらつきによって個々の適切な駆動周波数が異なる。したがって、圧電アクチュエータを安定して確実に駆動するためには、圧電アクチュエータごとに、駆動周波数を制御する必要がある。また、周囲の温度等の環境によってもその適切な駆動周波数は変化する。
【0003】
従来、被駆動体であるロータからの力で歪を生じやすい圧電素子の位置に検出電極を設けて、その位置で検出される電圧がピークとなる周波数とロータの回転数がピークとなる周波数とが略一致することを利用して駆動周波数の制御を行う方法、あるいは駆動信号と検出信号との位相差を検出して駆動周波数の制御を行う方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、検出電極を縦振動モードの検出電圧と屈曲振動モードの検出電圧とがそれぞれ大きくなる位置に設けて、それぞれの検出電圧を検出する。そして、その検出電圧(実効値)の乗算値がピークとなる周波数とロータの回転数がピークとなる周波数とが近いことを利用して、圧電アクチュエータの駆動周波数を制御する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−291264号公報(第9〜第10頁、15図)
【特許文献2】特開2003−304693号公報(第6〜第8頁、12図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1または特許文献2において、検出される電圧値をもとに駆動周波数を制御する方法では、この電圧値はロータから圧電アクチュエータへの力のかかり具合によって大きさが変動し、ノイズも乗りやすいという課題がある。
また、特許文献1では、検出信号と駆動信号の位相差を利用した方法も開示されているが、特許文献1で示された検出電極の位置では、駆動信号と検出信号との位相差の周波数特性において、縦振動モードに起因する位相差と屈曲振動モードに起因する位相差が同じ符号(正負が同じ)で略同じ大きさで現れてくる。
例えば、図15には、特許文献1の圧電アクチュエータの駆動周波数に対する位相差特性が示されている。圧電アクチュエータは、圧電素子の長手方向に伸縮する縦振動モードと縦振動モードの振動方向に略直交する方向に屈曲する屈曲振動モードとを有し、図15に示されるように、それぞれの振動モードの振動の共振周波数f1,f2近傍で位相差が高くなる。したがって、制御しようとする位相差θ0に対して駆動周波数が複数(図15では三つの駆動周波数fb1,fb2,fb3)存在することとなる。
このような場合には、位相差が所定値θ0となるように駆動周波数を制御しても、駆動周波数が一つに決まらず、適切な振動モードの振動成分比が得られない場合があり、圧電アクチュエータの駆動性能の確実性に欠ける。
【0006】
本発明の目的は、駆動性能の確実性を向上させることができる圧電アクチュエータおよびこれを備えた機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の圧電アクチュエータは、主振動モードと屈曲振動モードとを含む圧電素子の振動により、被駆動体を駆動する圧電アクチュエータであって、前記圧電素子に駆動信号を印加して当該圧電素子を振動させるための駆動電極と、前記圧電素子の振動挙動を検出するための検出電極と、前記駆動信号と前記検出電極で検出される検出信号との位相差に基づいて前記駆動信号を制御する制御手段とを備え、前記検出電極は、前記屈曲振動モードに起因する位相差と前記主振動モードに起因する位相差とが逆符号で現れてくる位置に形成されていることを特徴とする。
この発明では、検出電極は屈曲振動モードに起因する位相差と前記主振動モードに起因する位相差とが逆符号で現れてくる位置に形成されている。ここで、屈曲振動モードに起因する位相差とは、屈曲共振周波数付近で山型もしくは谷型に現れる位相差であり、主振動モードに起因する位相差とは、主振動モードの共振周波数付近で変化する位相差である。
したがって、駆動周波数に対する位相差特性において、主振動モードの共振周波数付近の駆動周波数での位相差と同符号の屈曲振動モードに起因する位相差の山が現れてこない。つまり、主振動モードと屈曲振動モードとの振動成分比率が適切となる位相差を所定値として設定すると、位相差に対する駆動周波数が一つに決まるので、制御手段がこの位相差に基づいて駆動信号を制御することにより、駆動信号を最適に調整することが可能となる。したがって、それぞれの振動成分が適切に調整され、駆動性能の確実性が向上する。
【0008】
本発明の圧電アクチュエータでは、前記圧電素子は、略矩形板状に形成されているとともに、前記圧電素子の長手方向に沿って伸縮する前記主振動モードである縦振動モードの振動と、前記縦振動モードの振動方向に対して略直交方向に屈曲する前記屈曲振動モードの振動を同時に励振し、前記検出電極は、前記屈曲振動モードの振動の腹を含む位置で、かつ前記圧電素子の幅方向を分ける中心線よりも前記屈曲振動モードを励振する機構のある側に形成されているのが好ましい。
この発明によれば、圧電素子の振動モードは、縦振動モードと屈曲振動モードとを含んでいる。一般に、縦振動モードは屈曲振動モードよりも駆動力が大きくなるため、縦振動モードを主として使用する振動モードに設定することにより、大きな駆動力が得られる。ここで、検出電極は、屈曲振動モードの振動の腹を含む位置に形成されているので、屈曲の歪は最大となり縦振動モードの位相差の影響を打ち消しやすい。また、屈曲振動モードを励振する機構のある側に検出電極を形成することにより、縦振動モードとは逆符号の屈曲振動モードの位相差が生じ、縦振動モードが主である周波数と、屈曲振動モードが主である周波数との位相差による区別が容易になり、各周波数の振動挙動に基づいた的確な制御が可能となる。これにより、縦振動モードの振動による良好な駆動力の確保が確実となる。
【0009】
本発明の圧電アクチュエータでは、前記検出電極は、前記圧電素子の長手方向の外側縁に接するように形成されているのが好ましい。
この発明によれば、検出電極は、屈曲振動モードの腹の位置で一番歪の大きい略矩形状の圧電素子長手方向の外側縁に接する位置に形成されるので、縦振動モードとは逆符号の屈曲振動モードの位相差が大きくなり、より縦振動モードが主である周波数と、屈曲振動モードが主である周波数との位相差による区別が行いやすくなる。よって、より適切な振動挙動に基づいた的確な制御が可能となる。
【0010】
本発明の圧電アクチュエータでは、屈曲振動モードの振動方向を正逆変更可能に構成されていることが望ましい。
この発明によれば、屈曲振動モードの振動方向を正逆変更可能に構成されているので、振動軌跡が正逆変更可能となり、被駆動体を正逆両方向に駆動可能となる。これにより、被駆動体の駆動可能動作範囲が広くなる。なお、この場合にも、検出電極は屈曲振動モードの腹の位置を含んで、屈曲振動モードを励振する機構のある側の位置に形成されているので、屈曲振動モードの振動方向が正逆変更となった場合でも、縦振動モードと屈曲振動モードとの区別が行いやすい。
【0011】
本発明の圧電アクチュエータでは、検出電極の面積は、駆動電極の面積の30分の1以上7分の1以下であることが望ましい。
この発明によれば、検出電極の面積が適切に設定されているので、振動検出に必要な面積が確保されるとともに、駆動電極の面積を過度に小さくすることがないので圧電アクチュエータの駆動力が良好に確保される。
ここで、検出電極の面積が駆動電極の面積の30分の1より小さい場合には、検出電極自体の面積が小さすぎるため、圧電素子の振動を良好に検出できない。また、検出電極の面積が駆動電極の面積の7分の1より大きい場合には、駆動電極の面積が相対的に小さくなるため、必要な駆動力を確保することが困難となる。
【0012】
本発明の機器は、前述の圧電アクチュエータを備えたことを特徴とする。
この発明によれば、機器が前述の圧電アクチュエータを備えているので、前述の圧電アクチュエータの効果と同様の効果が得られる。つまり、駆動信号と検出信号との位相差に対して駆動信号が一つに定まるので、制御手段が位相差に基づいて駆動信号を適切な値に設定することにより、主振動モードと屈曲振動モードがそれぞれ適切に制御され、駆動性能の確実性が向上する。これにより機器の動作が安定する。
【0013】
本発明の機器では、レンズと、圧電アクチュエータの振動によりレンズを駆動する駆動ユニットとを備えていることを特徴とする。
この発明によれば、機器が駆動ユニットを備えているので、レンズの駆動が確実となる。これは例えば機器が携帯機器などの小型のものである場合には、レンズも小型となるが、圧電アクチュエータは小さな寸法で比較的大きな駆動力が得られるため、特に有用である。
【0014】
本発明の機器は、圧電アクチュエータの振動によって駆動される時計であることを特徴とする。
この発明によれば、機器が時計であり、この時計が前述の圧電アクチュエータの振動によって駆動されるので、前述の圧電アクチュエータの効果と同様の効果が得られ、複数の振動モードがそれぞれ適切に制御され、時計の駆動性能の確実性が向上する。これは例えば時計が腕時計などの小型のものである場合には、圧電アクチュエータは小さな寸法で比較的大きな駆動力が得られるため、特に有用である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の圧電アクチュエータおよび機器によれば、駆動信号と検出信号との位相差に基づいて駆動信号を制御する際に、検出電極が主振動モードに起因する位相差と屈曲振動モードに起因する位相差が逆符号で現れてくる位置に形成されているので、適切な位相差に対する駆動信号が一つに決まる。したがって、制御手段が駆動信号を適切かつ確実に制御できるから、駆動性能の確実性を向上させることができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、後述する第二実施形態以降で、以下に説明する第一実施形態での構成部品と同じ部品および同様な機能を有する部品には同一符号を付し、説明を簡単にあるいは省略する。
【0017】
[第一実施形態]
以下、本発明の第一実施形態にかかるレンズ駆動ユニットとしてのレンズユニット10について説明する。なお、レンズユニット10は、機器としてのカメラに搭載され、または、カメラと一体に製造され、利用されるものである。
また、このカメラは、前記レンズユニット10の他、このレンズユニットを構成するレンズ30,40,50によって結像される像を記録する記録媒体と、各レンズ30,40,50を駆動する駆動装置1と、これら全てが収納されるケースとを備えている。ただし、カメラ、記憶媒体、およびケースの図示は省略してある。
図1は、レンズユニット10を右上方から見た斜視図であり、図2は、レンズユニット10を左上方から見た斜視図である。図3(A)、(B)は、カム部材60の動作図であり、図4(A)、(B)は、カム部材70の動作図である。図5は、カム部材60を駆動する振動体66の拡大図である。
【0018】
図1ないし図5において、レンズユニット10は、全体略角筒状の筐体20と、被駆動体としての第1レンズ30,第2レンズ40および第3レンズ50と、第2レンズ40および第3レンズ50を進退駆動するカム部材60と、第1レンズ30を進退駆動するカム部材70と、カム部材60を回動駆動する圧電アクチュエータとしての振動体66と、カム部材70を回動駆動する圧電アクチュエータとしての振動体76とを備えている。そして、これらの内、カム部材60,70および振動体66,76により、各レンズ30,40,50を駆動するための駆動装置1が構成されている。以下には、各構成について具体的に述べる。
【0019】
筐体20には、正面から背面に向かって棒状の案内軸21が平行に2本設置されている。この案内軸21は、レンズ30,40,50が進退駆動されるのを案内する部材であり、レンズ30,40,50を進退方向(光軸方向)に貫通している。また、この案内軸21は、レンズ30,40,50が前後に倒れるのを防止する役目を担っている。
さらに、筐体20の両側の側部22には、長孔形状の開口部23A,23B,23Cが設けられ、これらの開口部23A,23B,23Cは、レンズ30,40,50に設けられたカム棒31,41,51が十分動ける大きさに形成されている。
【0020】
第1レンズ30は、筐体20の内部に配置されると同時に、筐体20の開口部23C内に位置するカム棒31を備えている。第2レンズ40は、筐体20の内部に設置されると同時に、筐体20の開口部23B内に位置するカム棒41を備えている。第3レンズ50も同様に、筐体20の内部に配置されると同時に、筐体20の開口部23A内に位置するカム棒51を備えている。
【0021】
これらの第1〜第3レンズ30,40,50は、中央の集光部32,42および図示しない第3レンズ50の集光部とその周囲の枠取付部33,43および図示しない第3レンズ50の枠取付部とが、レンズ材料で一体に形成されたものであり、これらを保持する保持枠34,44,54を備えている。そして、この保持枠34,44,54に、前述のカム棒31,41,51が設けられている。
【0022】
なお、第1レンズ30はフォーカスレンズであり、第2レンズ40,第3レンズ50はズームレンズである。また、第3レンズ50は、ズームレンズに限らず、フォーカスレンズであってもよい。その場合、各レンズ30,40,50の構成や、各レンズ30,40,50の光学特性を適宜設定することで、レンズユニット10をフォーカスレンズ用ユニットとして利用可能である。
【0023】
そして、第2レンズ40は、凹レンズおよび凸レンズを組み合わせた構成となっているが、各レンズ30,40,50の構造等もその目的を考慮して任意に決められてもよい。
さらに、レンズ30,40,50は、本実施形態では、集光部32,42および第3レンズ50の集光部と枠取付部33,43および第3レンズ50の枠取付部とがレンズ材料で一体に形成されていたが、集光部32,42および第3レンズ50の集光部のみをレンズ材料で形成し、枠取付部33,43および第3レンズ50の枠取付部側を別材料で保持枠34,44,54と一体に形成してもよい。また集光部32,42および第3レンズ50の集光部、枠取付部33,43および第3レンズ50の枠取付部、ならびに保持枠34,44,54が一体のレンズ材で構成されていてもよい
【0024】
カム部材60,70は、筐体20の両側にある外面部25A,25Bと、この外面部25A,25Bの外側にそれぞれ3本の足部26により固定されたカバー部材100との間に設置されている。
【0025】
カム部材60は、回動軸61を有する略扇状の形状をしており、筐体20の外面部25Aに対して、回動軸61を回動中心として回動自在に支持されている。また、カム部材60の面状部分には、駆動用案内部としての2つのカム溝62A,62Bが形成されている。このカム溝62A,62Bは、湾曲また屈曲した長孔状に形成されており、カム溝62Bには第2レンズ40のカム棒41が係合し、カム溝62Aには第3レンズ50のカム棒51が係合し、これによりカム部材60が回動すると、カム棒51,41がカム溝62A,62Bに誘導され、これらカム溝62A,62Bの形状に応じたスピードおよび移動範囲で動き、第2レンズ40,第3レンズ50が進退する。
【0026】
カム部材70は、回動軸71を有する略レバー状の形状をしており、筐体20のもう一方の外面部25Bに対して、回動軸71を回動中心として回動自在に支持されている。また、カム部材70の面状部分には、駆動用案内部としての1つのカム溝62Cが形成されている。このカム溝62Cは、直線の長孔状に形成されており、カム溝62Cには第1レンズ30のカム棒31が係合し、これによりカム部材60が回動すると、カム棒31がカム溝62Cに誘導され、これらカム溝62Cの形状に応じたスピードおよび移動範囲で動き、第1レンズ30が進退する。
【0027】
これらのカム部材60,70において、回動軸61,71の外周面には、回動軸61,71に略直交する平面内で振動する振動体66,76が当接されている。この際、回動軸61,71に対する振動体66,76の当接方向は特に限定されず、回動軸61,71を回動させることができる方向であればよい。
ここで、振動体66,67は、カム部材60,70の面状部分とカバー部材100との間に位置し、カバー部材100に支持されている。そのほか、カム部材60,70の面状部分に開口を設け、この開口内に振動体66,76を配置し、回動軸61,71の外周面に振動体66,76を当接してもよい。この場合、開口の大きさは、カム部材60,70が回動しても、振動体66,76と接触しない大きさを有する。そして、この場合の振動体66,76の支持は、筐体20の外面部25A,25B又はカバー部材100のどちら側であってもかまわない。
また、回動軸61,71の外周面においては、特に振動体66,76の当接部分は、摩耗を防ぐために、凹凸無く仕上げられている。振動体66,76の当接部分の外径は、大きければ大きいほどよく、このことで振動数に対する回動角度が少なくなるため、レンズ30,40,50を微細に駆動可能となる。そして、回動軸61,71の外径形状は、当接部分のみが円弧で、それ以外の面は特に円弧でなくてもよい。
【0028】
振動体66は、図5に示すように、略矩形平板状に形成された補強板81と、この補強板81の表裏両面に設けられた略矩形平板状の圧電素子82とを備えている。
補強板81は、その長手方向の両端の短辺略中央に凹部811(一端側のみを図示)が形成され、この凹部811に略楕円形状の凸部材81Aが配置されている。これらの凸部材81Aは、セラミックスなどの高剛性の任意の材料で構成され、その略半分が補強板81の凹部811内に配置され、残りの略半分は、補強板81の短辺から突出して配置されている。これらの凸部材81Aのうち、一方の凸部材81A先端が当接回動軸61の周面に当接されている。
補強板81の長辺略中央には、幅方向の外側に向けて腕部81Bが一体的に突設されている。腕部81Bは、補強板81からほぼ直角に突出しており、これらの端部がそれぞれ図示しないビスによってカバー部材100に固定されている。このような補強板81は、ステンレス鋼、その他の材料から形成されている。
【0029】
補強板81の両面の略矩形状部分に接着された圧電素子82は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、水晶、ニオブ酸リチウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、メタニオブ酸鉛、ポリフッ化ビニリデン、亜鉛ニオブ酸鉛、スカンジウムニオブ酸鉛等の材料の中から、適宜選択した材料により形成されている。
また、圧電素子82の両面には、ニッケルめっき層および金めっき層などが形成されて電極が形成されている。この電極は、切欠溝によって互いに電気的に絶縁された複数の電極が長手方向に沿った中心線を軸として線対称に形成されている。具体的には、長手方向に沿う二つの溝83Aによって駆動電極82Aが長手方向に渡って形成されている。また、長手方向中央の外側縁の両方から溝83Aまで達する二つの溝83Bによって長手方向に二つに分離された駆動電極82B,82Cが、駆動電極82Aの両側に計4つ形成されている。二つの駆動電極82Bは対角に位置し、二つの駆動電極82Cも残りの対角に位置している。そして、回転軸61側の駆動電極82B,82Cの領域に位置して、駆動電極82B,82Cの長手方向の略中央でかつ外側縁に接するように、振動挙動を検出するための矩形の検出電極82D,82Eがコの字型の溝83Cによって形成されている。
【0030】
ここで本実施形態においては、圧電素子82は短辺が約2mm、長辺が約7mmの矩形状に形成されている。また、検出電極82D,82Eのそれぞれの面積は、駆動電極82A,82Bの面積、あるいは駆動電極82A,82Cの面積、つまり駆動電極82Aの面積と対角にある一対の駆動電極面積との合計に対して30分の1以上7分の1以下に設定されており、より望ましくは、15分の1以上10分の1以下に設定されている。
駆動電極82Aおよび一対の駆動電極82B,82Cは、それぞれ互いに図示しないリード線で接続されており、これらのリード線は、振動体66の振動挙動を制御する制御手段としての印加装置84(図6参照)に接続されている。また、検出電極82D,82Eは、図示しないリード線によって制御手段としての印加装置84に接続され、さらに補強板81は図示しないリード線によってグラウンドに接続されている。
なお、これらの電極82A,82B,82C,82D,82Eは、補強板81を挟む表裏両方の圧電素子82に同様に設けられており、例えば電極82Aの裏面側には電極82Aが形成されている。
【0031】
このように形成された圧電素子82は、表面の駆動電極82A,82Bおよび82Cのうち、所定の電極を選択して、印加装置84により電圧を印加することにより、振動体66の長手方向に沿った往復振動である主振動モードとしての縦振動モードと、振動体66の幅方向(短手方向)に屈曲振動する屈曲振動モードとを振動体66に生じさせることができる。つまり、例えば、駆動電極82Aのみに電圧を印加すると、駆動電極82Aが形成された部分の圧電素子82が板状面内方向に伸縮することにより縦振動モードの振動を励振する。
屈曲振動モードは、対角上にある一対の駆動電極82Bに電圧を印加すると駆動電極82Bが屈曲振動モードを励振し、また、駆動電極82Cに電圧を印加すると駆動電極82Cが屈曲振動モードを励振する駆動電極として働く。つまり、それぞれの駆動電極は、屈曲振動モードを励振する機構として働く。
以上の縦振動モードと屈曲振動モードが発生することにより、振動体66の凸部材81Aは、縦振動モードの振動と屈曲振動モードの振動とを組み合わせた略楕円軌道を描いて振動する。この略楕円軌道の一部において、凸部材81Aが回動軸61を接線方向に回転させる。
検出電極82D,82Eは、駆動電極82B,82C内において、その歪みが最大となる屈曲振動モードの振動の腹の位置にそれぞれ形成されている。検出電極82Dは、駆動電極82Bで屈曲振動モードを励振する時に、検出電極82Eは、駆動電極82Cで屈曲振動モードを励振する時に使用される。
【0032】
また、圧電素子82に印加する電圧の電極を駆動電極82Bと82Cと適宜切り替えることにより、振動体66を振動させると、回動軸61の回動方向を正転および逆転させることができる。このとき、駆動電極82Aには両方の場合とも電圧を印加する。
例えば、駆動電極82Bに電圧を印加した時の回転方向を正転とすれば、電極82Cに電圧を印加すると、屈曲振動モードの振動の方向が逆になり、回動軸61の回転方向が逆転するのである。
ここで、圧電素子82に印加する駆動電圧(駆動信号)の周波数は、振動体66の振動時に縦振動モードの振動の共振点近傍に屈曲振動モードの振動の共振点も現れて、凸部材81Aが良好な略楕円軌道を描くような周波数に設定される。
さらに、振動体66全体の振動により検出電極82D,82Eが形成された部分の圧電素子82に歪みが生じるため、この歪みによって検出電極82D,82Eからは振動体66の振動に応じた検出信号が検出される。
【0033】
なお、圧電素子82の寸法や、厚さ、材質、縦横比、電極の分割形態などは、圧電素子82に電圧が印加された時に、凸部材81Aが良好な略楕円軌道を描きやすいように適宜決定される。
そして、振動体66に印加される交流電圧の波形は特に限定されず、例えばサイン波、矩形状波、台形波などが採用できる。
また、振動体76については、振動体66と同様な構成であり、振動体66を説明することで理解できるため、ここでの説明を省略する。
【0034】
図6には、印加装置84の構成ブロック図が示されている。この図6において、印加装置84は、位相差−電圧変換回路841と、定電圧回路842と、比較回路843と、電圧調整回路844と、電圧制御発信回路845と、ドライバ回路846と、リセット回路847とを備えている。
位相差−電圧変換回路841は、検出電極82C,82Dから検出された検出信号Vaの位相と、駆動電極82A,82B,82Cに印加される駆動信号Vhの位相との位相差を検出し、平均位相差に相当する電圧値を有する位相差電圧信号Vjを比較回路843に出力する。
図7は、駆動信号Vhと検出信号Vaとの位相差θを示した図である。この図7に示されるように、位相差θは、駆動信号Vhを基準として検出信号Vaが進む方向にずれた場合をプラス(+)として検出される。
位相差−電圧変換回路841は、位相差検出部841Aと、平均電圧変換部841Bとを備えている。位相差検出部841Aは、検出信号Vaおよび駆動信号Vhが入力されると、両信号の位相差に相当するパルス幅を有する位相差信号Vpdを生成し、平均電圧変換部841Bに出力する。平均電圧変換部841Bは、図示しない積分回路により位相差信号Vpdのパルス幅に相当する平均電圧値Vav1を有する位相差電圧信号Vjを生成し、比較回路843に出力する。
【0035】
定電圧回路842は、検出信号Vaの位相と駆動信号Vhの位相との最適な位相差に相当する電圧値を有する所定の基準位相差信号Vkを予め求めて比較回路843に出力するものである。
ここで、基準位相差信号Vkは、振動体66が最も効率よく振動し、縦振動モードと屈曲振動モードとの振動成分の比が適切となる駆動周波数に対応した位相差に設定されることが望ましい。また、温度による位相差に対する補償値を予め記憶させておき、温度計測を行うことにより、それぞれの温度に応じた基準位相差信号Vkを出力することも可能である。
図8は、駆動周波数に対する振動体66の挙動特性をそれぞれ模式的に示したものである。図8(A)は、駆動周波数に対する縦振動モードと屈曲振動モード各々の位相差θの理論値を示したものである。また、図8(B)は、駆動周波数に対する検出される位相差θの値を示したものである。ここで、縦振動モードに起因する位相差とは、縦振動モードの共振周波数f1付近で変化する位相差特性θ1,θ1rであり、屈曲振動モードに起因する位相差とは、屈曲共振周波数f2付近で山型もしくは谷型に現れる位相差θ2a,θ2b,θ2rである。
図8(C)は、駆動周波数に対する回動軸61の駆動(回動)速度の関係を示したものである。振動体66の駆動には、駆動電極82A,82Bを使用し、振動挙動の検出には、検出電極82Dを使用した。図8(B)の実線に示されるように、振動体66の駆動周波数を小さい方から大きい方へ変化させると、縦振動モードの振動の共振周波数f1付近で位相差θはプラスで大きい値であるが、徐々に減少し、屈曲振動モードの振動の共振周波数f2付近で位相差θは逆符号であるマイナス方向で大きくなり、θ2のピークを持つことがわかる。二点鎖線で示した位相差θの挙動は、比較のために屈曲振動モードを励振する位置とは反対側にあたる検出電極82Eを使用した場合を示した。
つまり、屈曲振動モードを励振する駆動電極82Bに位置する検出電極82Dでは、縦振動モードに起因する位相差θとは逆符号の屈曲振動モードに起因する位相差θが得られる。
また、図8(C)に示されるように、振動体66の駆動周波数を変化させると、回動軸61の駆動速度は、縦振動モードの振動の共振周波数f1と、屈曲振動モードの振動の共振周波数f2との間で大きくなり、特に縦振動モードの振動の共振周波数f1に近い側の駆動周波数fkにおいて最大となることがわかる。これは、一般的に縦振動モードの振動の方が屈曲振動モードの振動よりも振動体66の駆動トルクを確保しやすいことからも、駆動周波数fkは、縦振動モードの振動の共振周波数f1と屈曲振動モードの振動の共振周波数f2との間で縦振動モードの振動の共振周波数f1に近い周波数に設定するのが望ましいということがいえる。
したがって、本実施形態では、駆動周波数として回動軸61の駆動速度が最大となる周波数fkが選択され、基準位相差信号Vkは、この周波数における位相差θkに対応する電圧値を有する値に設定されている。なお、図8(B)からわかるように、検出電極82Dを使用すると、位相差θはf1からf2に向かって単調に減少するので、位相差θkに対して、対応する駆動周波数は常に一つに決定される。これに対して、検出電極82Eを使用すると、二点鎖線で示されるようにプラス方向の位相差θの挙動なので、位相差θkに対して、対応する駆動周波数が三つとなる。前述したように、このような場合には、位相差が所定値θkとなるように駆動周波数を制御しても、駆動周波数が一つに決まらず、適切な振動モードの振動成分比が得られない場合があり、圧電アクチュエータの駆動性能の確実性に欠ける。
【0036】
比較回路843は、位相差−電圧変換回路841からの位相差電圧信号Vjと定電圧回路842からの基準位相差信号Vkとを入力し、両者を比較するものである。つまり、位相差電圧信号Vj≧基準位相差信号Vkである場合には、比較回路843は“H”となる比較結果信号Veを電圧調整回路844に出力し、位相差電圧信号Vj<基準位相差信号Vkである場合には、比較回路843は“L”となる比較結果信号Veを電圧調整回路844に出力する。
電圧調整回路844は、比較回路843からの比較結果信号Veを入力し、電圧制御発振回路845に出力される調整信号Vfの電圧値を所定電圧値Vf0単位で変化させるものである。すなわち、電圧調整回路844は、“H”の比較結果信号Veを入力した場合には、調整信号Vfの電圧値を所定電圧値Vf0だけ上昇させ、“L”の比較結果信号Veを入力した場合には、調整信号Vfの電圧値を所定電圧値Vf0だけ下降させる。また、電圧調整回路844には、初期の調整信号である初期値Vf1が記憶されており、印加装置84の起動時には、この初期値Vf1を電圧値とする調整信号Vfを電圧制御発振回路845に出力する。なお、初期値Vf1は、予め設定された駆動周波数の調整範囲の上限値とされており、本実施形態では、駆動周波数の調整範囲は、縦振動モードの振動の共振周波数f1よりも低い周波数から、屈曲振動モードの振動の共振周波数f2よりも高い周波数までに設定され、初期値Vf1は、屈曲振動モードの振動の共振周波数f2よりも高い周波数で設定されている。
【0037】
電圧制御発振回路845は、電圧調整回路844からの調整信号Vfを入力して、ドライバ回路846に出力する基準信号Vgの周波数を調整するものである。すなわち、電圧制御発振回路845は、調整信号Vfの電圧値が前回の調整信号Vfの電圧値よりも高くなった場合、基準信号Vgの周波数を所定値f0だけ上げ、調整信号Vfの電圧値が前回の調整信号Vfの電圧値よりも低くなった場合には、基準信号Vgの周波数を所定値f0だけ下げるように調整される。また、電圧制御発振回路845は印加装置84の起動時に初期値Vf1の調整信号Vfを入力した場合には、予め設定された周波数の基準信号Vgを出力する。
ドライバ回路846は、電圧制御発振回路845からの基準信号Vgを受けて、この基準信号Vgの周波数で一定の電圧値となる駆動信号Vhを振動体66の駆動電極82A,82B,82Cに出力する。
【0038】
リセット回路847は、ドライバ回路846からの駆動信号Vhの周波数が所定値以下となった場合に、基準信号Vgの周波数を初期値Vf1の周波数に変更するリセット信号を電圧調整回路844に出力するものである。ここで、リセット信号が出力される周波数の所定値は、駆動周波数の調整範囲の下限値に設定されており、本実施形態では縦振動モードの振動の共振周波数f1よりも低い周波数に設定されている。電圧調整回路844は、リセット回路847からリセット信号を入力すると、初期値Vf1を電圧値とする調整信号Vfを電圧制御発振回路845に出力する。
なお、振動体76についても同様の構成の印加装置(図示せず)が設けられている。
【0039】
したがって、印加装置84は、初期値Vf1の電圧値に対応する周波数の基準信号Vgに基づいて振動体66に駆動信号Vhを印加する。このとき、初期値Vf1は、駆動周波数の調整範囲の上限値に設定されているので、通常初期の段階では駆動信号Vhと検出信号Vaとの位相差θによる位相差電圧信号Vjは、定電圧回路842からの基準位相差信号Vkよりも小さくなる。したがって、比較回路843では“L”の比較結果信号Veを出力し、電圧調整回路844は、この比較結果信号Veに基づいて調整信号Vfの電圧値を所定電圧値Vf0だけ下降させ、よって電圧制御発振回路845からの基準信号Vgの周波数が所定値f0だけ下がる。
このような動作を繰り返すことにより、振動体66に印加される駆動信号Vhの周波数は減少し、位相差電圧信号Vj≧基準位相差信号Vkとなった場合には、逆に駆動信号Vhの周波数が増加するため、駆動信号Vhと検出信号Vaとの位相差θに相当する位相差電圧信号Vjは基準位相差信号Vk近辺で制御されることとなる。
また、何かの具合により駆動信号Vhの周波数が低くなり、リセット回路847の所定値以下となった場合には、電圧調整回路844の調整信号Vfが初期値Vf1に対応した値にリセットされ、もう一度駆動周波数の調整範囲の上限値から周波数の制御を行う。
【0040】
次に、図3に基づいて、レンズユニット10の動作を説明する。
まず、回動軸61の外周に当接している振動体66が振動することにより、回動軸61が所定角度で回動する。回動することにより回動軸61と一体のカム部材60も所定の角度で回動する。するとカム部材60に形成されたカム溝62A,62Bも回動し、それぞれのカム溝62A,62Bに嵌合されているカム棒51,41の外周面がカム溝62A,62Bの内周面により誘導されながら開口部23A,23Bの中で移動する。
例えば、図3(A)の位置から回動軸61を反時計方向(R1)に回動させると、カム棒41,51を有する第2レンズ40と第3レンズ50とは、互いに離間する方向に移動し、図3(B)のように、第2レンズ40と第3レンズ50との間隔が広がることになる。
反対に、電圧が印加される駆動電極82Bと駆動電極82Cとを切り替えて、図3(B)の位置から回動軸61を時計方向(R2)に回動させると、第2レンズ40と第3レンズ50とは、互いに近接する方向に移動し、図3(A)のように戻る。
これにより第2レンズ40と第3レンズ50は、ズームレンズとして機能することになる。
【0041】
図4においても同様に、回動軸71の外周に当接している振動体76が振動することにより、回動軸71が所定角度で回動する。回動することにより回動軸71と一体のカム部材70も所定の角度で回動する。するとカム部材70に形成されたカム溝62Cも回動し、この62Cに嵌合されているカム棒31の外周面がカム溝62Cの内周面により誘導されながら開口部23Cの中で移動する。
例えば、図4(A)の位置から回動軸71を反時計方向(R1)に回動させると、カム棒51と連結された第1レンズ30は、筐体20の中心方向から外側方向に移動し、図4(B)のように、筐体20の端部側に寄る。
反対に、図4(B)の位置から回動軸71を時計方向(R2)に回動させると、第1レンズ30は、筐体20の中央側へ移動し、図4(A)のように戻る。
これにより第1レンズ30は、フォーカスレンズとして機能することになる。
【0042】
以上のように圧電素子82に印加する電圧の駆動電極82Bと駆動電極82Cとを適宜切り替えながら、カム部材60,70の回動軸61,71に直接振動を与えることにより、第1レンズ30,第2レンズ40,第3レンズ50が図3,図4のように進退駆動されることになる。
この際、図示しない読み取りセンサによってレンズ30,40,50の位置を読み取り、制御回路にフィードバックして駆動制御することにより、レンズ30,40,50を任意の位置に静止可能となっている。
【0043】
以上の第一実施形態によれば、次のような効果が得られる。
(1)駆動信号Vhと検出信号Vaとの位相差に基づいて駆動信号Vhを制御する際に、検出電極82D,82Eが主振動モードである縦振動モードに起因する位相差とは逆符号の屈曲振動モードの位相差を生じる位置に形成されているので、図8に示すように検出電極82D,82Eによって検出される振動挙動において、一つの駆動周波数に一つの位相差を対応させることができる。つまり、縦振動モードと屈曲振動モードとの振動成分比率が適切となる位相差θkを所定値として設定すると、位相差θkに対する駆動周波数fkが一つに決まるので、制御手段がこの位相差に基づいて駆動信号Vkを制御することにより、駆動信号Vkを最適に調整できる。したがって、それぞれの振動成分を適切に調整でき、駆動性能の確実を向上させることができる。
【0044】
(2)振動モードは、縦振動モードと屈曲振動モードとを含んでいる。一般に、縦振動モードは屈曲振動モードよりも駆動力が大きくなるため、縦振動モードを主として使用する振動モードに設定することにより、大きな駆動力が得られる。ここで、検出電極82D,82Eは、屈曲振動モードの振動の腹を含む位置に形成されているので、屈曲の歪も最大となり縦振動モードの位相差の影響を打ち消すことができる。また、屈曲振動モードを励振する側の駆動電極82B,82Cの位置に検出電極を形成することにより、縦振動モードとは逆符号の屈曲振動モードの位相差が生じるため、縦振動モードが主である周波数と、屈曲振動モードが主である周波数との位相差による区別を容易にでき、各周波数の振動挙動に基づいて的確に制御できる。これにより、縦振動モードの振動による良好な駆動力を確実に確保できる。
これに対して、前述の図15に示されるような従来の圧電アクチュエータでは、位相差に対する駆動周波数が一つに決まらないので、駆動信号Vhの周波数を常に最適に制御することができない。
【0045】
(3)検出電極82D,82Eは、屈曲振動モードの腹の位置で一番歪の大きい略矩形状の圧電素子66長手方向の外側縁に接する位置に形成されるので、縦振動モードとは逆符号の屈曲振動モードの位相差が大きくなり、より縦振動モードが主である周波数と、屈曲振動モードが主である周波数との位相差による区別を行うことができる。よって、より適切な振動挙動に基づいて的確に制御できる。
【0046】
(4)検出電極82D,82Eのそれぞれの面積が、駆動電極82Aと、82Bまたは82Cとの合計面積に対して30分の1以上7分の1以下、より望ましくは15分の1以上10分の1以下に設定されているので、検出電極82D,82Eでは確実に振動を検出できるとともに、駆動電極82Aと、82Bまたは82Cの合計面積を確保することにより、回動軸61,71の駆動に必要な駆動力を確保できる。
【0047】
(5)駆動信号Vhの制御対象として駆動信号Vhと検出信号Vaとの位相差θを採用しているので、例えば検出信号の電圧や電流を監視する場合に比べて、回動軸61,71からの反力による影響を受けたとしても、位相差のとる値は0〜±180の決まった値であり、大きく基準値を変えることなく、安定した制御対象を得ることができる。これにより、外乱に影響を受けることが少なく、確実に駆動信号Vhを制御できる。
【0048】
(6)振動体66,76が板状に形成されているので、駆動装置1の薄型化を促進でき、これによってレンズユニット10の小型化を促進できる。また、凸部材81Aが回動軸61,71に接触しているので、振動体66,76の振動を停止した場合には、凸部材81Aと回動軸61,71外周との間の摩擦により回動軸61,71の回動角度を維持できる。
【0049】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態は、本発明にかかる圧電アクチュエータを機器としての時計に適用したものである。
図9は、本発明の第二実施形態にかかる時計9の日付表示機構90を示す平面図である。この図9において、日付表示機構90の主要部は、圧電アクチュエータ91と、この圧電アクチュエータ91によって回転駆動される被駆動体としてのロータ92と、ロータ92の回転を減速しつつ伝達する減速輪列と、減速輪列を介して伝達される駆動力により回転する日車93とから大略構成されている。減速輪列は、日回し中間車94と日回し車95とを備えている。これらの圧電アクチュエータ91、ロータ92、日回し中間車94、および日回し車95は、底板9Aに支持されている。
【0050】
日付表示機構90の上方には、円盤状の文字板(図示せず)が設けられており、この文字板の外周部の一部には日付を表示するための窓部が設けられ、窓部から日車93の日付を覗けるようになっている。また、底板9Aの下方(裏側)には、ステッピングモータに接続されて指針を駆動する運針輪列(図示せず)や、電源としての二次電池9B等が設けられている。二次電池9Bは、ステッピングモータや圧電アクチュエータ91、印加装置(図示せず)の各回路に電力を供給する。なお、二次電池9Bに、ソーラー(太陽光)発電や回転錘の回転を利用した発電を行う発電器が接続され、この発電器によって発電した電力が二次電池9Bに充電される構造であってもよい。また、電源は、発電器で充電される二次電池9Bに限らず、一般的な一次電池(例えば、リチウムイオン電池)でもよい。
【0051】
日回し中間車94は、大径部941と小径部942とから構成されている。小径部942は、大径部941よりも若干小径の円筒形であり、その外周面には、略正方形状の切欠部943が形成されている。この小径部942は、大径部941に対し、同心をなすように固着されている。大径部941には、ロータ92の上部の歯車921が噛合している。したがって、大径部941と小径部942とからなる日回し中間車94は、ロータ92の回転に連動して回転する。
日回し中間車94の側方の底板9Aには、板バネ944が設けられており、この板バネ944の基端部が底板9Aに固定され、先端部が略V字状に折り曲げられて形成されている。板バネ944の先端部は、日回し中間車94の切欠部943に出入可能に設けられている。板バネ944に近接した位置には、接触子945が配置されており、この接触子945は、日回し中間車94が回転し、板バネ944の先端部が切欠部943に入り込んだときに、板バネ944と接触するようになっている。そして、板バネ944には、所定の電圧が印加されており、板バネ944が接触子945に接触すると、その電圧が接触子945にも印加される。したがって、接触子945の電圧を検出することによって、日送り状態を検出でき、日車93の1日分の回転量が検出できる。
なお、日車93の回転量は、板バネ944や接触子945を用いたものに限らず、ロータ92や日回し中間車94の回転状態を検出して所定のパルス信号を出力するものなどが利用でき、具体的には、公知のフォトリフレクタ、フォトインタラプタ、MRセンサ等の各種の回転エンコーダ等が利用できる。
【0052】
日車93は、リング状の形状をしており、その内周面に内歯車931が形成されている。日回し車95は、五歯の歯車を有しており、日車93の内歯車931に噛合している。また、日回し車95の中心には、シャフト951が設けられており、このシャフト951は、底板9Aに形成された貫通孔9Cに遊挿されている。貫通孔9Cは、日車93の周回方向に沿って長く形成されている。そして、日回し車95およびシャフト951は、底板9Aに固定された板バネ952によって図9の右上方向に付勢されている。この板バネ952の付勢作用によって日車93の揺動も防止される。
【0053】
図10には、圧電アクチュエータ91およびロータ92の拡大図が示されている。この図10に示されるように、圧電アクチュエータ91は、略矩形板状の補強板911と、補強板911の両面に接着された圧電素子912とを備えている。
補強板911の長手方向略中央には、両側に突出する腕部913が形成されており、この腕部913の一方がビスなどによって底板9Aに固定されている。なお、他方の腕部913は、底板9Aには固定されず、フリーの状態となっており、圧電アクチュエータ91が振動する場合に振動のバランスをとる錘となっている。
補強板911の対角線上両端には、補強板911の長手方向に沿って突出する略半円形の凸部914がそれぞれ形成されている。これらの凸部914のうち一方は、ロータ92の側面に当接されている。
【0054】
圧電素子912は、略矩形板状に形成され、補強板911両面の略矩形状部分に接着されている。圧電素子912の両面には、第一実施形態と同様にめっき層によって電極が形成されている。圧電素子912の表面には、溝でめっき層が絶縁されることにより略矩形状の検出電極912Bが形成されている。この検出電極912Bは、圧電素子912の長手方向中央よりもロータ92側で中央と端の略中間の位置で、かつ、圧電素子912の短手方向中央よりも凸部914側で長手方向の外縁近くに形成されている。検出電極912B以外の部分は駆動電極912Aとなっている。ここで、検出電極912Bの面積は、駆動電極912Aの面積の30分の1以上7分の1以下に設定されており、より望ましくは15分の1以上10分の1以下に設定されている。
【0055】
駆動電極912A、検出電極912B、および補強板911は、それぞれリード線などにより図示しない印加装置に接続されている。印加装置は、第一実施形態の印加装置84と同様に、駆動信号と検出信号との位相差が適切な値となるように駆動信号の制御を行う。
【0056】
そして、圧電アクチュエータ91の駆動電極912Aと補強板911との間に所定周波数の電圧を印加すると、圧電素子912が長手方向に沿って伸縮する縦振動モードの振動を励振する。このとき、圧電アクチュエータ91の対角線上両端には凸部914が設けられているので、圧電アクチュエータ91は全体として長手方向中心線に対して重量がアンバランスとなる。このアンバランスにより、圧電アクチュエータ91は長手方向に略直交する方向に屈曲する屈曲振動モードの振動を励振する(凸部914が励振する機構として働く)。したがって、圧電アクチュエータ91は、これらの縦振動モードおよび屈曲振動モードを組み合わせた振動を励振し、凸部914は、略楕円軌道を描いて振動する。このとき、圧電アクチュエータ91が片側の腕部913のみで固定されていること、および凸部914が対角線上端部に設けられてロータ92からの反力を受けることなどにより、屈曲振動モードは励振される。つまり、検出電極912Bの形成された圧電素子912の長手方向中央よりもロータ92側で、かつ、圧電素子912の短手方向中央よりも凸部914側の位置は、屈曲振動モードの腹の場所で、かつ屈曲振動モードを励振する機構のある位置になる。
【0057】
一方、ロータ92には、板ばね922が取り付けられており、ロータ92が圧電アクチュエータ91側に付勢されている。これにより凸部914とロータ92側面との間に適切な摩擦力が発生し、圧電アクチュエータ91の駆動力の伝達効率が良好となる。
【0058】
このような時計9では、第一実施形態と同様に印加装置が圧電アクチュエータ91への駆動信号を制御することにより、所定の周波数の駆動信号が印加されると、圧電アクチュエータ91は、前述したように、縦振動モードと屈曲振動モードとを組み合わせた振動を励振する。凸部914は、これらの振動モードを組み合わせた略楕円軌道を描いて振動し、その振動軌道の一部でロータ92を押圧することによりロータ92を回転駆動する。
ロータ92の回転運動は、日回し中間車94に伝達され、切欠部943に日回し車95の歯が係合すると、日回し中間車94によって日回し車95が回転し、日車93が回転する。この回転により日車93に表示された日付が変更される。
【0059】
このような第二実施形態によれば、第一実施形態の(1)〜(5)の効果と同様の効果が得られる他、次のような効果が得られる。
(7) 凸部914を圧電アクチュエータ91の対角線両端に設けたので、駆動電極82Aを一つ設けるだけで、重量のアンバランスにより縦一次振動モードに加えて屈曲二次振動モードを励振できる。したがって、圧電素子912の電極の構成を簡単にできる。これに伴って、印加装置での駆動信号の制御も簡略化できる。これは例えば圧電アクチュエータ91が小型である場合などでは、小さな圧電素子914に、溝によって複雑な形状の電極を形成するのが困難であるため、特に有用である。
【0060】
(8) 圧電アクチュエータ91が時計9の日付表示機構90に利用されているので、圧電アクチュエータ91の駆動効率が常に最適に制御されるので、日付表示機構90の駆動の確実性を向上させることができ、日付を正確に表示できる。また、圧電アクチュエータ91の小型化を促進できることにより、時計9の小型化も促進できる。
【0061】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
検出電極の形状、配置などは、例えば図11(B),(C)に示されるような形状、配置であってもよい。
図11(A)には比較のために第一実施形態で使用した圧電アクチュエータ66の平面図を示した。図中の点線は、屈曲振動モードの幅方向の振幅を示す線である。
前述したように、検出電極82D,82Eは、ロータ61側の駆動電極82B,82Cの長手方向外側縁7に接してこれらの電極の長手方向略中央で、屈曲振動モードの腹の位置a(節の位置はbで示した)で屈曲振動モードの歪が最大となる位置に設けられている。駆動電極82Aと駆動電極82Bとを用いて駆動する時は、検出電極は、82Dを用い、駆動電極82Aと駆動電極82Cを用いて駆動する時は、検出電極82Eを用いることで、屈曲振動モードを励振する駆動電極の位置の検出電極を使用できる。
【0062】
図11(B)に示される圧電アクチュエータ102では、(A)に示される検出電極の位置よりも少し内側の位置に検出電極102D,102Eが形成されている。この場合、駆動電極102Aと駆動電極102Bまたは102Cを駆動した場合、(A)の場合よりも、検出信号の出力は落ちるが、駆動力を増すことができる。
【0063】
図11(C)に示される圧電アクチュエータ103では、(A)の第一実施形態の検出電極82D,82Eとは逆側(ロータの逆側)に検出電極103D,103Eを設けた。このように、ロータ側でなくとも屈曲振動モードの腹で屈曲振動モードの歪が最大となる位置で、屈曲振動モードを励振する駆動電極の位置であればよい。
また、検出電極の形状は、略正方形状、多角形状などの他、円形状、楕円形状、変形形状など、任意の形状を採用できる。
【0064】
主振動モードには、縦振動モードに限らず、その他の任意の振動モード、例えば拡がり振動等を採用できる。また、圧電アクチュエータは、二つの振動モードを有するものに限らず、三つ以上の複数の振動モードを有していてもよい。
【0065】
初期値Vf1は、予め設定された駆動周波数の調整範囲の上限値に設定されていたが、これに限らず例えば駆動周波数の調整範囲の下限値に設定していてもよい。この場合でも位相差に対する駆動周波数が一つに決まるので、位相差を所定値に制御すれば、圧電アクチュエータに印加される駆動周波数が最適に制御される。
【0066】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
したがって、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【実施例1】
【0067】
本発明の効果を確認するために以下の実験を行った。
[実施例]
第一実施形態の圧電アクチュエータを用いてシミュレーションを行った。駆動信号の駆動周波数を変化させ、各駆動周波数に対する駆動信号と検出信号との位相差および検出電圧の関係を調べた。
【0068】
[比較例]
図12に示す圧電アクチュエータ110Bを用いてシミュレーションを行った。圧電アクチュエータ110Bの圧電素子111B表面には、実施例の圧電アクチュエータ66と同様に五つの駆動電極112B,113B,114Bが形成されている。駆動電極112Bに駆動信号が入力されている場合には、一対の駆動電極113Bのうち凸部116Bから遠い側の一方を検出電極として使用し、駆動電極113Bに駆動信号が入力されている場合には、一対の駆動電極112Bのうち凸部116Bから遠い側の一方を検出電極として使用した。
その他の条件は、実施例と同じである。
【0069】
[実施例および比較例の結果]
図13には、実施例の結果が示されている。この図13に示されるように、駆動周波数に対する位相差は、駆動周波数が大きくなるにしたがって位相差が徐々に減少し、屈曲振動モードに起因する位相差部分では符号が逆転する。したがって、縦振動モード付近で駆動する場合、駆動周波数の高い位置から周波数を低いほうへモニターすると制御が行いやすい。この場合において、位相差に対する駆動周波数が一つに決定されることがわかる。
【0070】
これに対して、図14には、比較例の結果が示されている。つまり、例えば位相差を70°〜80°の間の所定値に設定して制御しても、一つの位相差に対する駆動周波数が三つ存在する。したがって、駆動周波数はこれら三つの駆動周波数のいずれかに設定されることとなってしまい、ロータの回転速度を良好に確保できる駆動周波数となる場合もあるが、その他の駆動周波数となった場合にはロータの回転速度を良好に維持できないこととなり、ロータの回転駆動性能の確実性に欠ける。
【0071】
以上より、位相差に対する駆動周波数を一つに決めることができ、駆動信号と検出信号との位相差を所定値に制御することで圧電アクチュエータを常に最適な駆動周波数で振動させることができるという本発明の効果を確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第一実施形態にかかるレンズユニットを示す斜視図。
【図2】第一実施形態にかかるレンズユニットを示す斜視図。
【図3】第一実施形態のカム部材の動作図。
【図4】第一実施形態のカム部材の動作図。
【図5】第一実施形態の圧電アクチュエータの拡大斜視図。
【図6】第一実施形態の印加装置の構成ブロック図。
【図7】第一実施形態の駆動信号と検出信号との位相差を示す図。
【図8】第一実施形態の駆動周波数に対する位相差および駆動速度の関係を示す図。
【図9】本発明の第二実施形態にかかる時計を示す図。
【図10】第二実施形態にかかる圧電アクチュエータを示す拡大図。
【図11】圧電アクチュエータの検出電極の変形例を示す図。
【図12】本発明の比較例の圧電アクチュエータを示す図。
【図13】実施例の結果を示す図。
【図14】比較例の結果を示す図。
【図15】従来の圧電アクチュエータの駆動周波数に対する位相差特性を示す図。
【符号の説明】
【0073】
1…駆動装置(駆動ユニット)、9…時計(機器)、10…レンズユニット、30,40,50…レンズ(被駆動体)、66,76…振動体(圧電アクチュエータ)、82,112,111B…圧電素子、82A,82B,82C,912A,102A,102B,102C,103A,103B,103C,112B,113B,114B…駆動電極、82D,82E,912B,102D,102E,103D,103E,…検出電極、84…印加装置(制御手段)、66,91,102,103,110B…圧電アクチュエータ、61,92…ロータ(被駆動体)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主振動モードと屈曲振動モードとを含む圧電素子の振動により、被駆動体を駆動する圧電アクチュエータであって、
前記圧電素子に駆動信号を印加して当該圧電素子を振動させるための駆動電極と、
前記圧電素子の振動挙動を検出するための検出電極と、
前記駆動信号と前記検出電極で検出される検出信号との位相差に基づいて前記駆動信号を制御する制御手段とを備え、
前記検出電極は、前記屈曲振動モードに起因する位相差と前記主振動モードに起因する位相差とが逆符号で現れてくる位置に形成されていることを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電アクチュエータにおいて、
前記圧電素子は、略矩形板状に形成されているとともに、前記圧電素子の長手方向に沿って伸縮する前記主振動モードである縦振動モードの振動と、前記縦振動モードの振動方向に対して略直交方向に屈曲する前記屈曲振動モードの振動を同時に励振し、
前記検出電極は、前記屈曲振動モードの振動の腹を含む位置で、かつ前記圧電素子の幅方向を分ける中心線よりも前記屈曲振動モードを励振する機構のある側に形成されていることを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項3】
請求項2に記載の圧電アクチュエータにおいて、
前記検出電極は、前記圧電素子の長手方向の外側縁に接するように形成されていることを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項4】
請求項2または3に記載の圧電アクチュエータにおいて、
当該アクチュエータは、前記屈曲振動モードの振動方向を正逆変更可能に構成されていることを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の圧電アクチュエータにおいて、
前記検出電極の面積は、前記駆動電極の面積の30分の1以上7分の1以下であることを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の圧電アクチュエータを備えたことを特徴とする機器。
【請求項7】
請求項6に記載の機器において、
レンズと、
前記圧電アクチュエータの振動により前記レンズを駆動する駆動ユニットとを備えたことを特徴とする機器。
【請求項8】
請求項6に記載の機器において、
当該機器は、前記圧電アクチュエータの振動により駆動される時計であることを特徴とする機器。
【請求項1】
主振動モードと屈曲振動モードとを含む圧電素子の振動により、被駆動体を駆動する圧電アクチュエータであって、
前記圧電素子に駆動信号を印加して当該圧電素子を振動させるための駆動電極と、
前記圧電素子の振動挙動を検出するための検出電極と、
前記駆動信号と前記検出電極で検出される検出信号との位相差に基づいて前記駆動信号を制御する制御手段とを備え、
前記検出電極は、前記屈曲振動モードに起因する位相差と前記主振動モードに起因する位相差とが逆符号で現れてくる位置に形成されていることを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電アクチュエータにおいて、
前記圧電素子は、略矩形板状に形成されているとともに、前記圧電素子の長手方向に沿って伸縮する前記主振動モードである縦振動モードの振動と、前記縦振動モードの振動方向に対して略直交方向に屈曲する前記屈曲振動モードの振動を同時に励振し、
前記検出電極は、前記屈曲振動モードの振動の腹を含む位置で、かつ前記圧電素子の幅方向を分ける中心線よりも前記屈曲振動モードを励振する機構のある側に形成されていることを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項3】
請求項2に記載の圧電アクチュエータにおいて、
前記検出電極は、前記圧電素子の長手方向の外側縁に接するように形成されていることを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項4】
請求項2または3に記載の圧電アクチュエータにおいて、
当該アクチュエータは、前記屈曲振動モードの振動方向を正逆変更可能に構成されていることを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の圧電アクチュエータにおいて、
前記検出電極の面積は、前記駆動電極の面積の30分の1以上7分の1以下であることを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の圧電アクチュエータを備えたことを特徴とする機器。
【請求項7】
請求項6に記載の機器において、
レンズと、
前記圧電アクチュエータの振動により前記レンズを駆動する駆動ユニットとを備えたことを特徴とする機器。
【請求項8】
請求項6に記載の機器において、
当該機器は、前記圧電アクチュエータの振動により駆動される時計であることを特徴とする機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−33912(P2006−33912A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204793(P2004−204793)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]