説明

圧電アクチュエーター、液体噴射ヘッド、および液体噴射装置

【課題】信頼性が向上した圧電アクチュエーター等を提供すること。
【解決手段】本発明に係る圧電アクチュエーターは、基面を有する振動板と、前記振動板の前記基面の上に形成された第1電極と、前記振動板の前記基面の上および前記第1電極の上に形成された圧電体層層と、前記圧電体層層の上において、第1の方向に延びるように形成された第2電極と、を含み、前記第2電極は、第1の幅を有する第1の部分と、前記第1の幅よりも小さい第2の幅を有する第2の部分と、前記第1の部分と前記第2の部分とを接続する第3の部分と、を有し、前記第1電極は、前記基面の法線方向から見た平面図において前記第1電極の外周をなし、第1の方向と直交する第2の方向に延びる、第1の辺を有し、前記第2電極の前記第3の部分は、前記第1電極の前記第1の辺の上方に配置され、前記第3の部分の第3の幅は、前記第1の部分から前記第2の部分へ向かうほど狭くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電アクチュエーター、液体噴射ヘッド、および液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばインクジェットプリンター等の液体噴射装置において、インク等の液滴を噴射する液体噴射ヘッドが知られている。液体噴射ヘッドは、圧力発生室内の圧力を変化させるために圧電アクチュエーターを備えている。圧電アクチュエーターは、上部電極および下部電極に挟まれた圧電体層を有し、駆動信号等によって圧電体層が変形することにより、振動板を屈曲させることができる。これにより、液体噴射ヘッドは、ノズル孔から圧力発生室内に供給されたインク等を噴射させることができる。
【0003】
このような圧電アクチュエーターの圧電体層は、上部電極および下部電極に挟まれた駆動領域と、上部電極および下部電極に挟まれていない非駆動領域と、を有する(特許文献1参照)。駆動領域の内側では、駆動信号等により電界が印加されるため、圧電体層が能動的に変形するが、駆動領域の外側である非駆動領域では、電界がほとんど印加されないため、圧電体層は能動的に変形することができない。そのため、駆動領域と非駆動領域との境界付近において、歪などの応力が局所的に集中し、圧電体層にクラックを生じる可能性がある。
【0004】
以上から、駆動領域と非駆動領域との境界付近において、クラックが生じにくく、信頼性が向上した圧電アクチュエーター等が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2005/028207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、クラックの発生を抑制でき、高い信頼性を有する圧電アクチュエーターを提供することにある。また、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、上記圧電アクチュエーターを有する液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る圧電アクチュエーターは、
基面を有する振動板と、
前記振動板の前記基面の上に形成された第1電極と、
前記振動板の前記基面の上および前記第1電極の上に形成された圧電体層層と、
前記圧電体層層の上において、第1の方向に延びるように形成された第2電極と、
を含み、
前記第2電極は、第1の幅を有する第1の部分と、前記第1の幅よりも小さい第2の幅を有する第2の部分と、前記第1の部分と前記第2の部分とを接続する第3の部分と、を有し、
前記第1電極は、前記基面の法線方向から見た平面図において前記第1電極の外周をなし、第1の方向と直交する第2の方向に延びる、第1の辺を有し、
前記第2電極の前記第3の部分は、前記第1電極の前記第1の辺の上方に配置され、前記第3の部分の第3の幅は、前記第1の部分から前記第2の部分へ向かうほど狭くなる。
【0008】
このような圧電アクチュエーターによれば、第2電極が、幅が前記第1の部分から前記第2の部分へ向かうほど狭くなる第3の部分を備える。これにより、圧電体層の駆動領域の境界面に、直角または鋭角な内角を有する角部が形成されないため、駆動領域と非駆動領域の境界周辺における応力の過度な集中を緩和させることができる。したがって、応力の集中を起因としたクラックの発生を抑制することができ、高い信頼性を有する圧電アクチュエーターを提供することができる。
【0009】
さらに、このような圧電アクチュエーターによれば、能動領域およびその周辺の圧電体層に接触する第1電極の端面を第1の辺のみとすることができる。このような構造によれば、圧電体層の製造段階において、圧電体層のより多くの部分を第1電極の上面において結晶成長させることができる。したがって、圧電体層をクラックが発生しにくく信頼性の高い圧電体層とすることができる。
【0010】
なお、本発明に係る記載では、「上方」という文言を、例えば、「特定のもの(以下、「A」という)の「上方」に他の特定のもの(以下、「B」という)を形成する」などと用いる場合に、A上に直接Bを形成するような場合と、A上に他のものを介してBを形成するような場合とが含まれるものとして、「上方」という文言を用いている。
【0011】
(2)本発明に係る圧電アクチュエーターにおいて、
前記第3の部分は、前記平面図において、前記第2電極の外周をなす第2の辺を有し、
前記第1電極の前記第1の辺の上方における仮想線と前記第2の辺とが形成する角部の角度であって、前記第1の部分側の角度は鈍角であってもよい。
【0012】
(3)本発明に係る圧電アクチュエーターにおいて、
前記第3の部分の前記第2の辺は、直線を含んでいてもよい。
【0013】
(4)本発明に係る圧電アクチュエーターにおいて、
前記第3の部分の前記第2の辺は、弧状曲線を含んでいてもよい。
【0014】
(5)本発明に係る圧電アクチュエーターにおいて、
前記第2電極は、前記第2方向に沿って複数並列され、
複数の前記第2電極は、互いに分離された個別電極であり、
前記第1電極は、複数の前記第2電極に対して共通電極であってもよい。
【0015】
(6)本発明に係る圧電アクチュエーターにおいて、
前記第2の部分に電気的に接続され、前記第2の幅以上の幅を有する第4の部分をさらに含んでいてもよい。
【0016】
(7)本発明に係る液体噴射ヘッドは、
本発明に係る圧電アクチュエーターを含む。
【0017】
このような液体噴射ヘッドによれば、高い信頼性を有することができる。
【0018】
(8)本発明に係る液体噴射装置は、
本発明に係る液体噴射ヘッドを含む。
【0019】
このような液体噴射装置によれば、高い信頼性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係る圧電アクチュエーターを模式的に示す平面図。
【図2】本実施形態に係る圧電アクチュエーターを模式的に示す断面図。
【図3】本実施形態に係る圧電アクチュエーターを模式的に示す平面図。
【図4】本実施形態の変形例に係る圧電アクチュエーターを模式的に示す平面図。
【図5】本実施形態の変形例に係る圧電アクチュエーターを模式的に示す断面図。
【図6】本実施形態に係る圧電アクチュエーターの製造工程を模式的に示す断面図。
【図7】本実施形態に係る圧電アクチュエーターの製造工程を模式的に示す断面図。
【図8】本実施形態に係る圧電アクチュエーターの製造工程を模式的に示す断面図。
【図9】本実施形態に係る圧電アクチュエーターの製造工程を模式的に示す断面図。
【図10】本実施形態に係る圧電アクチュエーターの製造工程を模式的に示す断面図。
【図11】本実施形態に係る液体噴射ヘッドを模式的に示す断面図。
【図12】本実施形態に係る液体噴射ヘッドを模式的に示す分解斜視図。
【図13】本実施形態に係る液体噴射装置を模式的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
1. 圧電アクチュエーター
まず、本実施形態に係る圧電アクチュエーターについて、図面を参照しながら説明する。図1(A)および図1(B)は、本実施形態に係る圧電アクチュエーター100を模式的に示す平面図である。図2(A)は、本実施形態に係る圧電アクチュエーター100を模式的に示す図1(A)のIIA−IIA線断面図である。図2(B)は、本実施形態に係る圧電アクチュエーター100を模式的に示す図1(A)のIIB−IIB線断面図である。図3(A)は、図1(A)の本実施形態に係る圧電アクチュエーター100の要部を模式的に示す拡大平面図であり、図3(B)は、図1(B)の本実施形態に係る圧電アクチュエーター100の要部を模式的に示す拡大平面図である。
【0023】
なお、本発明に係る記載では、「平面図」という文言を、例えば、後述される基板1の基面(圧電アクチュエーター100が形成される面)の法線方向から対象物を見た場合の平面図であるとする。
【0024】
圧電アクチュエーター100は、図1(A)〜図2(B)に示すように、振動板10と、第1電極20と、圧電体層30と、第2電極40と、を含む。圧電アクチュエーター100は、例えば、基板1上に形成されている。
【0025】
基板1は、例えば、導電体、半導体、絶縁体で形成された平板である。基板1は、単層であっても、複数の層が積層された構造であってもよい。基板1は、上面が平面的な形状であれば内部の構造は限定されず、例えば、内部に空間等が形成された構造であってもよい。基板1の材質としては、例えば、シリコンが挙げられる。
【0026】
振動板10は、基板1上に形成されている。振動板10は、板状の部材である。振動板の材質としては、例えば、酸化シリコン、酸化ジルコニウムなどの酸化物や、SUS、ニッケルなどの金属、またはこれらの積層体が挙げられる。振動板10は、可撓性を有し、圧電体層30の動作によって変形(屈曲)することができる。
【0027】
第1電極20は、振動板10上に形成されている。第1電極20の形状は、例えば、層状または薄膜状である。第1電極20の厚みは、例えば、20nm以上300nm以下である。
【0028】
第1電極20は、図1に示すように平面視において、第1方向(図示の例ではX軸方向であり、以下、第1方向を「X軸方向」ともいう)における端面21を有する。端面21は、平面図において、第1電極20の外周をなし、X軸方向と直交する第2の方向(以下、第2方向を「Y軸方向」ともいう))に延びる第1の辺21を構成する。
【0029】
第1電極20の材質としては、例えば、ニッケル、イリジウム、白金などの各種の金属、それらの導電性酸化物(例えば酸化イリジウムなど)、ストロンチウムとルテニウムとの複合酸化物(SrRuOx:SRO)、ランタンとニッケルとの複合酸化物(LaNiOx:LNO)が挙げられる。第1電極20は、上記に例示した材料の単層構造でもよいし、複数の材料を積層した構造であってもよい。第1電極20は、第2電極40と一対になって、圧電体層30に電圧を印加するための一方の電極(例えば、圧電体層30の下方に形成された下部電極)となる。
【0030】
なお、以下に述べる圧電体層30の形成には、例えば、高温(600℃以上)の熱処理が必要となるので、基板1、振動板10、および第1電極20は、高温に耐えうる材料であることが望ましい。
【0031】
なお、図示はしないが、第1電極20と振動板10との間には、例えば、両者の密着性を付与する層が形成されてもよい。このような層の例としては、例えば、ジルコニウムやチタンなどの各種の金属、または、それらの酸化物の層が挙げられる。
【0032】
また、図示はしないが、第1電極20と圧電体層30との間には、例えば、圧電体層30の成膜を補助する、または特性を改善するための層が形成されていてもよい。例えば、圧電体層30の結晶方位を制御するためにチタンが成膜されていてもよい。
【0033】
圧電体層30は、図1(A)〜図2(B)に示すように、振動板10上および第1電極20上に形成されている。圧電体層30の形状は、例えば、層状または薄膜状である。圧電体層30の厚みは、例えば、300nm以上3000nm以下である。
【0034】
圧電体層30は、図1に示すように、Y軸方向に沿う第1の辺21と交差して、X軸方向に延びて形成されている。図1に示す例では、圧電体層30は、Y軸方向における幅を一定として、X軸方向に延びている。圧電体層30の平面形状は、例えば、矩形である。
【0035】
圧電体層30は、図2(A)および図2(B)に示すように、第1の辺21の上方を境として、駆動領域32および非駆動領域34を有する。駆動領域32は、第1電極20と第2電極40とに挟まれており、電極20,40間に電圧が印加されることによって能動的に駆動することができる。非駆動領域34は、第1電極20と第2電極40とに挟まれておらず、能動的に駆動することはできない。
【0036】
圧電体層30は、図2(A)に示すように、上面36および側面38を有する。上面36および側面38は、例えば、互いに鈍角で接続されていてもよい。すなわち、圧電体層30は、上方に向かうにつれて(+Z方向に向かうにつれて)、Y軸方向の幅が小さくなる形状を有し、側面38はテーパー状の側面であってもよい。なお、図示はしないが、上面36および側面38は、互いに直角で接続されていてもよい。
【0037】
圧電体層30としては、ペロブスカイト型酸化物の圧電材料を用いることができる。より具体的には、圧電体層30の材質としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)、ニオブ酸チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti,Nb)O3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、ニオブ酸カリウムナトリウム((K,Na)NbO3)が挙げられる。圧電体層30は、圧電性を有することができる。
【0038】
第2電極40は、圧電体層30上に形成されている。第2電極40の形状は、例えば、層状または薄膜状である。第2電極40の厚みは、例えば、5nm以上300nm以下である。
【0039】
第2電極40は、図1(A)〜図2(B)に示すように、Y軸方向に沿う第1の辺21と交差して、X軸方向(第1の方向)に延びて形成されている。図1に示す例では、第2電極40は、2つの第1の辺21を跨いで形成されているが、例えば、1つの第1の辺21のみを跨いで形成されていてもよい。
【0040】
第2電極40としては、第1電極20の材質として列挙した上記材料を用いることができる。第2電極40は、第1電極20と一対になって、圧電体層30に電圧を印加するための他方の電極(例えば、圧電体層30の上方に形成された上部電極)となる。
【0041】
第2電極40は、図1(A)、図1(B)および図2(B)に示すように、第1の幅W1を有する第1の部分41と、第1の幅W1よりも小さい第2の幅W2を有する第2の部分42と、第1の部分41と第2の部分42とを接続する第3の部分43と、を有する。ここで、図示はされないが、第2の部分42は第2電極40のX軸方向の両端に配置されず、一方の端部のみに配置されていてもよい。つまりは、第3の部分43が、第2電極40のX軸方向における一方の端部であってもよい。
【0042】
第3の部分43は、図1(A)、図1(B)、図2(B)、図3(A)および図3(B)に示すように、第1電極20の第1の辺21の上方に配置される。すなわち、第3部分43は、平面視において第1の辺21の一部と重なっている。これによれば、圧電体層30の駆動領域32のX軸方向における端面であって、Y軸方向に沿う端面が、第3の部分43の下方に配置される。詳細は後述される。
【0043】
第3の部分43の第3の幅W3(図1(A)および図1(B)には図示せず)は、第1の部分41から第2の部分42へ向かうほど狭くなる。しがたって、第3の幅W3は、W1>W3>W2を満たす。
【0044】
第3の部分43は、図3(A)および図3(B)に示すように、平面図において、第2電極の外周をなす第2の辺44を有する。また、第1の部分41は、平面図において、第2電極の外周をなす第3の辺45を有する。また、第2の部分42は、平面図において、第2電極の外周をなす第4の辺46を有する。第2の辺44は、第3の辺45と第4の辺46とを接続する辺である。図3(A)に示すように、第2の辺44と、第3の辺45との接続部を接続部Cとする。接続部Cの内角(第2の辺44と第3の辺45とが形成する角部の内角)をβとする。ここで、角度βは鈍角である。また、第2の辺44と、第4の辺46との接続部を接続部Dとする。図1(B)および図3(B)に示すように、第2の辺44が曲線である場合も同様である。
【0045】
図1(A)および図3(A)に示すように、第3の部分43の第2の辺44は、直線からなっていてもよい。また、図1(B)および図3(B)に示すように、第3の部分43の第2の辺44は、弧状曲線からなっていてもよい。このとき弧状曲線とは、平面視において第2電極40の外側方向に凸な弧状曲線である。
【0046】
上述のように、第3の部分43は、第1電極20の第1の辺21の上方に配置される。言い換えれば、第1の辺21の上方の仮想線を仮想線Aとしたとき、Y軸方向に延びる仮想線Aは、第2の辺44と交差する。ここで、仮想線Aと第2の辺44とが形成する角部の角度をαとする。ここで、角度αは、図3(A)および図3(B)に示すように、第2電極40の中央部(第1の部分41)側に向く角度であり、鈍角である。
【0047】
ただし、第2の辺44と仮想線Aとは接続部C上を除いて交差する。つまりは、仮想線Aは、第2の辺44の一方の端部である接続部D上において第2の辺44と交差してもよいが、第2の辺44の他方の端部である接続部C上においては、第2の辺44と交差しない。これは、能動領域32の平面視における角部に直角または鋭角となる角部を形成しないためである。
【0048】
ここで、図3(A)における仮想線Bは、従来技術に係る圧電アクチュエーターの第2電極の外周をなす辺の位置を示すものである。従来技術においては、仮想線Aと仮想線Bとの交点における角度γが、駆動領域の平面視における角部を形成し、その角部の内角は直角であった。この場合、第1の辺21の左右で発生する応力の差が上下の角部の間に渡って発生してしまう。したがって、このような角部においては、応力が集中しやすく、角部周辺においてクラック発生の可能性があった。しかしながら、本実施形態に係る圧電アクチュエーター100によれば、能動領域32の平面視における角部の角度が全て鈍角からなり、直角または鋭角となる角部を形成しないため、上記の応力の差の発生する長さが減少し、従来技術にかかる角部と比べて発生する応力を低減することができる。
【0049】
また、より好適には、図3(B)に示すように、第2の辺44が、弧状の曲線からなり、接続部Cにおいて角部が形成されずに第2の辺44と第3の辺45とが連続している形態において、仮想線Aが接続部D上に配置されていてもよい。これによれば、駆動領域32の平面視における外形は角部を有さない。言い換えれば、駆動領域32のZ軸方向に沿った側面である境界面は、角部を有さず、滑らかに連続した平面によって形成される。これによれば、境界面領域において発生する応力をより効果的に抑制することができ、圧電アクチュエーター100の信頼性をより向上させることができる。
【0050】
ここで、図示はされないが、第3の部分43は、図3(A)と図3(B)との形態を合わせた形態であってもよい。言い換えれば、第2の辺44は、部分的に直線で構成され、接続部C周辺の第2の辺44においては、弧状の曲線からなり、角部を形成しないように、第2の辺44と第3の辺45とが連続していてもよい。
【0051】
第2電極40は、第2の部分42に電気的に接続され、第2の幅W2以上の幅を有する第4の部分47をさらに含んでいてもよい。第4の部分47は、図示されない駆動回路と電気的に接続される部分であり、リード配線であってもよい。第4の部分47は、第2の部分42から次第に幅が広くなる部分と、幅が一定な部分を有していてもよい。第4の部分47の最大の配線幅は、第1の幅W1と同じであってもよい。もしくは、第4の部分47の最大の配線幅は、第1の幅W1よりも大きくてもよい。これによれば、第2電極40の電気抵抗値を小さくすることができ、配線自体の電気抵抗による電圧降下を低減することができるため、圧電素子の変位を一定とし、圧電アクチュエーター100の信頼性を向上させることができる。図示はされないが、第4の部分47は、例えば金などの電気抵抗値が比較的小さく導電性が良好な導電材料から形成されていてもよい。
【0052】
図示はされないが、第1電極20から圧電体層30の側面38を経由し第2電極40の上面まで至るように保護膜を形成してもよい。
【0053】
図4は、本実施形態に係る圧電アクチュエーター100の変形例である圧電アクチュエーター200を模式的に示す平面図である。図5は、本実施形態に係る圧電アクチュエーター200を模式的に示す図4のV−V線断面図である。
【0054】
図4および図5に示すように、第2電極40は、Y軸方向に沿って複数配列されている。同様に、圧電体層30もY軸方向に沿って複数配列されている。図示の例では、第2電極40は、3つ設けられているが、その数は特に限定されない。複数の第2電極40は、互いに電気的に分離されており、個別電極として機能する。すなわち、複数の圧電体層30に対して、個別に電圧を印加することができる。一方、第1電極20は、複数の第2電極40に対して1つ設けられており、共通電極として機能する。
【0055】
本実施形態に係る圧電アクチュエーター100(200)は、例えば、以下の特徴を有する。
【0056】
圧電アクチュエーター100(200)によれば、第2電極40の第3の部分43が、第1電極20の第1の辺21の上方に配置され、第1の辺21の上方の仮想線を仮想線Aとしたとき、Y軸方向に延びる仮想線Aは、第2の辺44と交差する。これによれば、第1電極20の第1の辺21をY軸方向に延びるような形状を維持しつつ、駆動領域32の平面視における外周が、直角または鋭角となる角部を含まないように形成することができる。これにより、圧電体層30の駆動領域32と非駆動領域34との境界面周辺の応力を緩和することができ、クラックの発生を抑制することができる。その結果、圧電アクチュエーター100(200)は、高い信頼性を有することができる。
【0057】
さらに、上述のように、圧電アクチュエーター100(200)によれば、第1電極20の形状を、第1の辺21がY軸方向に延びるような形状を維持することができる。したがって、第1電極20の上に形成される圧電体層30の結晶成長界面において第1電極20の端面上において成長する圧電体層30を最小限とすることができ、圧電体層30の信頼性を低下させることなく、クラックの発生を抑制することができる。詳細は後述される。
【0058】
2. 圧電アクチュエーターの製造方法
次に、本実施形態に係る圧電アクチュエーターの製造方法について、図面を参照しながら説明する。図6〜図10は、本実施形態に係る圧電アクチュエーター100の製造工程を模式的に示す断面図であって、図2(A)に対応している。
【0059】
図6に示すように、基板1上に、振動板10を形成する。振動板10は、例えば、酸化シリコン層および酸化ジルコン層を、この順で積層することにより形成される。酸化シリコン層は、例えば、熱酸化法により形成される。酸化ジルコン層は、例えば、スパッタ法などにより形成される。
【0060】
次に、振動板10上に、第1電極20を形成する。第1電極20は、例えば、導電層(図示せず)を成膜した後、該導電層をパターニングすることにより形成される。導電層は、例えば、スパッタ法、真空蒸着法、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、めっき法により成膜される。
【0061】
次に、振動板10上および第1電極20上に圧電体層層30aを形成する。圧電体層層30aは、例えば、スパッタ法、レーザーアブレーション法、MOCVD法、ゾルゲル法、MOD(Metal Organic Deposition)法などにより成膜される。
【0062】
図7に示すように、圧電体層層30aをパターニングして、圧電体層30を形成する。パターニングは、圧電体層30の側面38が、上面36に鈍角に接続するように行うことができる。このように、圧電アクチュエーター100の形態を採用することにより、圧電体層30のより多くの部分を第1電極10の上面において形成することができる。
【0063】
図8に示すように、全面に導電層40aを成膜する。導電層40aは、例えば、スパッタ法、真空蒸着法、MOCVD法により成膜される。
【0064】
図2(A)に示すように、例えば、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によって、導電層40aをパターニングして、第2電極40を形成する。
【0065】
なお、上述のように、圧電体層30の上面36および側面38は、互いに鈍角に接続している。そのため、導電層40aのパターニングの際に、仮に、マスクの合わせずれが生じたとしても、側面38によって、第1電極20がエッチングされることを防止することができる。
【0066】
以上の工程により、本実施形態に係る圧電アクチュエーター100を製造することができる。
【0067】
以上では、圧電体層層30aのパターニングと導電層40aのパターニングとを別々の工程で行ったが、以下のとおり、同一の工程で行うこともできる。
【0068】
すなわち、圧電体層層30aを成膜した後、図9に示すように、圧電体層層30a上に導電層40aを成膜する。
【0069】
次に、図10に示すように、例えば、公知のフォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によって圧電体層層30aと導電層40aとを同時にパターニングし、圧電体層30および第2電極40を形成する。このとき、圧電体層30の側面38が、上面36に鈍角に接続することが望ましい。
【0070】
このように導電層40aを成膜後にパターニングすることで、圧電体層層30aと導電層40aとの間の界面を良好に保つことができる。すなわち、パターニングによるプロセスダメージを回避することができ、圧電体層30の信頼性を向上させることができる。
【0071】
なお、上述のように、圧電体層30の上面36および側面38は、互いに鈍角に接続していることが望ましいが、この場合、第1部分42を形成するためのパターニングにおいて、仮に、マスクの合わせずれが生じたとしても、側面38によって、第1電極20がエッチングされることを防止することができる。
【0072】
圧電アクチュエーター100の製造方法によれば、クラックの発生を抑制でき、高い信頼性を有する圧電アクチュエーター100を製造することができる。
【0073】
3. 液体噴射ヘッド
次に、本実施形態にかかる液体噴射ヘッドについて、図面を参照しながら説明する。図11は、液体噴射ヘッド600の要部を模式的に示す断面図である。図12は、液体噴射ヘッド600の分解斜視図であり、通常使用される状態とは上下を逆に示したものである。
【0074】
液体噴射ヘッド600は、本発明に係る圧電アクチュエーターを有する。以下では、本発明に係る圧電アクチュエーターとして、圧電アクチュエーター100を用いた例について説明する。
【0075】
液体噴射ヘッド600は、図11および図12に示すように、例えば、ノズル板610と、流路形成基板620と、圧電アクチュエーター100と、筐体630と、を含む。なお、図12では、圧電アクチュエーター100を簡略化して図示している。
【0076】
ノズル板610は、図11および図12に示すように、ノズル孔612を有する。ノズル孔612からは、インクが吐出される。ノズル板610には、例えば、複数のノズル孔612が設けられている。図12に示す例では、複数のノズル孔612は、一列に並んで形成されている。ノズル板610の材質としては、例えば、シリコン、ステンレス鋼(SUS)が挙げられる。
【0077】
流路形成基板620は、ノズル板610上(図12の例では下)に設けられている。流路形成基板620の材質としては、例えば、シリコンが挙げられる。流路形成基板620がノズル板610と振動板10との間の空間を区画することにより、図12に示すように、リザーバー(液体貯留部)624と、リザーバー624と連通する供給口626と、供給口626と連通する圧力発生室622と、が設けられている。図12に示す例では、リザーバー624と、供給口626と、圧力発生室622と、が区別されているが、これらはいずれも液体の流路(例えば、マニホールドということもできる)であって、このような流路はどのように設計されても構わない。例えば、供給口626は、図示の例では流路の一部が狭窄された形状を有しているが、設計にしたがって任意に形成することができ、必ずしも必須の構成ではない。
【0078】
リザーバー624は、外部(例えばインクカートリッジ)から、振動板10に設けられた貫通孔628を通じて供給されるインクを一時貯留することができる。リザーバー624内のインクは、供給口626を介して、圧力発生室622に供給されることができる。圧力発生室622は、振動板10の変形により容積が変化する。圧力発生室622はノズル孔612と連通しており、圧力発生室622の容積が変化することによって、ノズル孔612からインク等が吐出される。
【0079】
なお、リザーバー624および供給口626は、圧力発生室622と連通していれば、流路形成基板620とは別の部材(図示せず)に設けられていてもよい。
【0080】
圧電アクチュエーター100は、流路形成基板620上(図12の例では下)に設けられている。圧電アクチュエーター100は、駆動回路(図示せず)に電気的に接続され、駆動回路の信号に基づいて動作(振動、変形)することができる。振動板10は、圧電体層30の動作によって変形し、圧力発生室622の内部圧力を適宜変化させることができる。
【0081】
筐体630は、図12に示すように、ノズル板610、流路形成基板620、および圧電アクチュエーター100を収納することができる。筐体630の材質としては、例えば、樹脂、金属などを挙げることができる。
【0082】
液体噴射ヘッド600によれば、信頼性の高い圧電アクチュエーター100(200)を有する。したがって、液体噴射ヘッド600は、高い信頼性を有することができる。
【0083】
なお、上記の例では、液体噴射ヘッド600がインクジェット式記録ヘッドである場合について説明した。しかしながら、本実施形態の液体噴射ヘッドは、例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドなどとして用いられることもできる。
【0084】
4. 液体噴射装置
次に、本実施形態にかかる液体噴射装置について、図面を参照しながら説明する。図13は、本実施形態にかかる液体噴射装置700を模式的に示す斜視図である。
【0085】
液体噴射装置700は、本発明に係る液体噴射ヘッドを有する。以下では、本発明に係る液体噴射ヘッドとして、液体噴射ヘッド600を用いた例について説明する。
【0086】
液体噴射装置700は、図13に示すように、ヘッドユニット730と、駆動部710と、制御部760と、を含む。液体噴射装置700は、さらに、液体噴射装置700は、装置本体720と、給紙部750と、記録用紙Pを設置するトレイ721と、記録用紙Pを排出する排出口722と、装置本体720の上面に配置された操作パネル770と、を含むことができる。
【0087】
ヘッドユニット730は、上述した液体噴射ヘッド600から構成されるインクジェット式記録ヘッド(以下単に「ヘッド」ともいう)を有する。ヘッドユニット730は、さらに、ヘッドにインクを供給するインクカートリッジ731と、ヘッドおよびインクカートリッジ731を搭載した運搬部(キャリッジ)732と、を備える。
【0088】
駆動部710は、ヘッドユニット730を往復動させることができる。駆動部710は、ヘッドユニット730の駆動源となるキャリッジモーター741と、キャリッジモーター741の回転を受けて、ヘッドユニット730を往復動させる往復動機構742と、を有する。
【0089】
往復動機構742は、その両端がフレーム(図示せず)に支持されたキャリッジガイド軸744と、キャリッジガイド軸744と平行に延在するタイミングベルト743と、を備える。キャリッジガイド軸744は、キャリッジ732が自在に往復動できるようにしながら、キャリッジ732を支持している。さらに、キャリッジ732は、タイミングベルト743の一部に固定されている。キャリッジモーター741の作動により、タイミングベルト743を走行させると、キャリッジガイド軸744に導かれて、ヘッドユニット730が往復動する。この往復動の際に、ヘッドから適宜インクが吐出され、記録用紙Pへの印刷が行われる。
【0090】
なお、本実施形態では、液体噴射ヘッド600および記録用紙Pがいずれも移動しながら印刷が行われる液体噴射装置の例を示しているが、本発明の液体噴射装置は、液体噴射ヘッド600および記録用紙Pが互いに相対的に位置を変えて記録用紙Pに印刷される機構であればよい。また、本実施形態では、記録用紙Pに印刷が行われる例を示しているが、本発明の液体噴射装置によって印刷を施すことができる記録媒体としては、紙に限定されず、布、フィルム、金属など、広範な媒体を挙げることができ、適宜構成を変更することができる。
【0091】
制御部760は、ヘッドユニット730、駆動部710および給紙部750を制御することができる。
【0092】
給紙部750は、記録用紙Pをトレイ721からヘッドユニット730側へ送り込むことができる。給紙部750は、その駆動源となる給紙モーター751と、給紙モーター751の作動により回転する給紙ローラー752と、を備える。給紙ローラー752は、記録用紙Pの送り経路を挟んで上下に対向する従動ローラー752aおよび駆動ローラー752bを備える。駆動ローラー752bは、給紙モーター751に連結されている。制御部760によって供紙部750が駆動されると、記録用紙Pは、ヘッドユニット730の下方を通過するように送られる。ヘッドユニット730、駆動部710、制御部760および給紙部750は、装置本体720の内部に設けられている。
【0093】
液体噴射装置700によれば、信頼性の高い液体噴射ヘッド600を有する。したがって、液体噴射装置700は、高い信頼性を有することができる。
【0094】
なお、上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0095】
上記のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できよう。したがって、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0096】
1 基体、10 振動板、20 第1電極、21 第1の辺、30 圧電体層、
32 駆動領域、34 非駆動領域、36 上面、38 側面、40 第2電極、
41 第1部分、42 第2部分、43 第3部分、44 第2の辺、
45 第3の辺、46 第4の辺、47 第4の部分、
100、200 圧電アクチュエーター、600 液体噴射ヘッド、610 ノズル板、612 ノズル孔、620 流路形成基板、622 圧力発生室、624 リザーバー、626 供給口、628 貫通孔、630 筐体、700 液体噴射装置、
710 駆動部、720 装置本体、721 トレイ、722 排出口、
730 ヘッドユニット、731 インクカートリッジ、732 キャリッジ、
741 キャリッジモーター、742 往復動機構、743 タイミングベルト、
744 キャリッジガイド軸、750 給紙部、751 給紙モーター、
752 給紙ローラー、752a 従動ローラー、752b 駆動ローラー、
760 制御部、770 操作パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基面を有する振動板と、
前記振動板の前記基面の上に形成された第1電極と、
前記振動板の前記基面の上および前記第1電極の上に形成された圧電体層層と、
前記圧電体層層の上において、第1の方向に延びるように形成された第2電極と、
を含み、
前記第2電極は、第1の幅を有する第1の部分と、前記第1の幅よりも小さい第2の幅を有する第2の部分と、前記第1の部分と前記第2の部分とを接続する第3の部分と、を有し、
前記第1電極は、前記基面の法線方向から見た平面図において前記第1電極の外周をなし、第1の方向と直交する第2の方向に延びる、第1の辺を有し、
前記第2電極の前記第3の部分は、前記第1電極の前記第1の辺の上方に配置され、前記第3の部分の第3の幅は、前記第1の部分から前記第2の部分へ向かうほど狭くなる、圧電アクチュエーター。
【請求項2】
請求項1において、
前記第3の部分は、前記平面図において、前記第2電極の外周をなす第2の辺を有し、
前記第1電極の前記第1の辺の上方における仮想線と前記第2の辺とが形成する角部の角度であって、前記第1の部分側の角度は鈍角である、圧電アクチュエーター。
【請求項3】
請求項2において、
前記第3の部分の前記第2の辺は、直線を含む圧電アクチュエーター。
【請求項4】
請求項2において、
前記第3の部分の前記第2の辺は、弧状曲線を含む圧電アクチュエーター。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、
前記第2電極は、前記第2方向に沿って複数並列され、
複数の前記第2電極は、互いに分離された個別電極であり、
前記第1電極は、複数の前記第2電極に対して共通電極である、圧電アクチュエーター。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、
前記第2の部分に接続され、前記第2の幅以上の幅を有する第4の部分をさらに含む、圧電アクチュエーター。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の圧電アクチュエーターを含む、液体噴射ヘッド。
【請求項8】
請求項7に記載の液体噴射ヘッドを含む、液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−171096(P2012−171096A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31712(P2011−31712)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】