説明

圧電インバータ装置

【課題】 圧電インバータ装置の出力電圧の平均値を駆動に最適な一定の値に保持することが可能であり、低消費電力を保つことが可能な圧電インバータ装置を提供すること。
【解決手段】 圧電トランス1と、前段昇圧用トランス2と、前段昇圧用トランス駆動回路3と、前段昇圧用トランス2および前段昇圧用トランス駆動回路3を制御する制御回路5とからなり、前段昇圧用トランス駆動回路3は直流の入力電圧4を交流電圧10に変換するためのFETからなるスイチッング素子を有し、圧電トランス1の出力側に接続された放電灯である冷陰極管7が点灯されるように構成され、前段昇圧用トランス2の出力電圧を検出する前段昇圧用トランス出力電圧検出回路8を有し、前段昇圧用トランス出力電圧検出回路8の出力が制御回路5に入力され、制御回路5は前段昇圧用トランス2の出力電圧の平均値を一定に保持するよう制御する機能を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧電トランスを駆動して放電灯を点灯させる圧電インバータ装置に関し、特に消費電力の変動抑えた低消費電力駆動に好適な圧電インバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放電灯の一種である冷陰極管は主に液晶ディスプレイのバックライトとして用いられるが、使用時には数百Vの高電圧で交流駆動する必要がある。そのため、圧電トランスとそれを駆動する駆動回路などから構成される圧電インバータ装置が用いられている。圧電トランスは、特許文献1などに示されるように、圧電材料に一次側及び二次側電極を設置し、一次側電極に圧電トランスの共振周波数付近の入力交流電圧を印加して圧電トランスを共振させ、機械的振動により二次側電極に発生する出力交流電圧を取り出す素子である。
【0003】
圧電インバータ装置には特許文献1のように圧電トランスからの出力電圧などをフィードバックして制御する方式もあるが、単板の圧電トランスを用いて低コスト化を目的とする用途には駆動回路側だけで制御を行なう方式が主として用いられている。図5はこのような制御方式による従来の圧電インバータ装置の構成例を示すブロック図である。
【0004】
図5において、圧電インバータ装置19は、圧電トランス11と、前段昇圧用トランス12と、前段昇圧用トランス駆動回路13と、前段昇圧用トランス12および前段昇圧用トランス駆動回路13を制御する制御回路15とからなり、前段昇圧用トランス駆動回路13は直流の入力電圧14を交流電圧20に変換するためのFETからなるスイチッング素子を有し、その交流電圧20が前段昇圧用トランス12に入力され昇圧されて圧電トランス11に印加され、圧電トランス11の出力側に接続された放電灯である冷陰極管17が点灯されるように構成されている。ここで、従来の圧電インバータ装置では入力電圧14を検出する入力電圧検出回路18を備え、入力電圧検出回路18の出力信号が制御回路15に入力され、前段昇圧用トランス駆動回路13が制御される。
【0005】
図6は制御回路15の内部の機能を示すブロック図であり、図6において、入力電圧検出回路18からの出力が入力電圧のインターフェイス部151に入力されて処理され、駆動信号制御部152を経て前段昇圧用トランス駆動回路13に入力される。このように、従来の圧電インバータ装置19においては圧電インバータ装置19に入力される入力電圧14を計測し、その計測値をもとに冷陰極管17の点灯に最適となるように前段昇圧用トランス駆動回路13の制御を行なっている。
【0006】
【特許文献1】特開平8−107678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の圧電インバータ装置19には、以下の問題点があった。帰還信号を使用せず、圧電インバータ装置19に入力される入力電圧14の電圧値による制御だけで圧電インバータ装置19を動作させているため、入力電圧以外の前段昇圧用トランス駆動回路および前段昇圧用トランスの出力電圧が負荷である冷陰極管のインピーダンス変化などにより変動することなどによる要因の制御が行われていないので、前段昇圧用トランス12からの出力電圧が変動するために、この出力電圧の平均値を圧電トランス駆動に最適な一定の値とすることが難しかった。このため消費電力も変動し、一定の低消費電力を保つことが困難であった。
【0008】
そこで、本発明の課題は、圧電インバータ装置の出力電圧の平均値を駆動に最適な一定の値に保持することが可能であり、低消費電力を保つことが可能な圧電インバータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の圧電インバータ装置は、圧電トランスと、前段昇圧用トランスと、前段昇圧用トランス駆動回路と、前記前段昇圧用トランスおよび前記前段昇圧用トランス駆動回路を制御する制御回路とからなり、前記前段昇圧用トランス駆動回路は入力される直流電圧を交流電圧に変換するためのFETからなるスイチッング素子を有し、前記交流電圧が前記前段昇圧用トランスに入力され昇圧されて前記圧電トランスに印加され、該圧電トランスの出力側に接続された放電灯が点灯されるように構成された圧電インバータ装置において、前記前段昇圧用トランスの出力電圧を検出する出力電圧検出回路を有し、該出力電圧検出回路の出力が前記制御回路に入力され、該制御回路は前記前段昇圧用トランスの出力電圧の平均値を一定に保持する機能を有することを特徴とする。
【0010】
ここで、前記放電灯が冷陰極管であってもよく、また、前記前段昇圧用トランス駆動回路はフルブリッジ型回路またはハーフブリッジ型回路により構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、前段昇圧用トランスの出力電圧を検出して制御回路にフィードバックすることにより、前段昇圧用トランスの出力電圧の平均値を直接制御するために、この出力電圧を圧電インバータ装置の駆動に最適な一定の値に保持することが可能であり、低消費電力を保つことが可能な圧電インバータ装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
図1は、本発明による圧電インバータ装置の実施の形態の構成例を示すブロック図である。図1において、本実施の形態の圧電インバータ装置9は、図5に示した従来の圧電インバータ装置19と同様に圧電トランス1と、前段昇圧用トランス2と、前段昇圧用トランス駆動回路3と、前段昇圧用トランス2および前段昇圧用トランス駆動回路3を制御する制御回路5とからなり、前段昇圧用トランス駆動回路3は直流の入力電圧4を交流電圧10に変換するためのFETからなるスイチッング素子を有し、その交流電圧10が前段昇圧用トランス2に入力され昇圧されて圧電トランス1に印加され、圧電トランス1の出力側に接続された放電灯である冷陰極管7が点灯されるように構成されている。
【0014】
但し、本実施の形態の圧電インバータ装置9では前段昇圧用トランス2の出力電圧を検出する前段昇圧用トランス出力電圧検出回路8を有し、前段昇圧用トランス出力電圧検出回路8の出力が制御回路5に入力され、制御回路5は前段昇圧用トランス2の出力電圧の平均値を一定に保持するよう制御する機能を有している。
【0015】
図2は、制御回路5の内部の機能を示すブロック図であり、図2において、前段昇圧用トランス出力電圧検出回路8からの出力が入力電圧のインターフェイス部51に入力されて処理され、駆動信号制御部52を経て前段昇圧用トランス駆動回路3に入力される。このように、本実施の形態の圧電インバータ装置9では、前段昇圧用トランスの出力電圧を直接検出し、その値の変動が大きい場合、制御回路5が前段昇圧用トランス駆動回路3を制御して、前記前段昇圧用トランスの出力電圧の平均値が一定になるよう制御し保持している。
【0016】
図3は、本実施の形態の圧電インバータ装置において、前段昇圧用トランス駆動回路をフルブリッジ型回路で構成した場合の構成の一例を示す図である。図3において、制御回路25の入力端子の1つには前段昇圧用トランス出力電圧検出回路8の出力端子が接続され、また、制御回路25の出力端子は前段昇圧用トランス駆動回路23のFETからなる4つのスイッチング素子の制御端子に接続されている。フルブリッジ型の前段昇圧用トランス駆動回路23は第1のスイッチング素子6a、第2のスイッチング素子6b、第3のスイッチング素子6c、第4のスイッチング素子6dにより構成され、その出力が前段昇圧用トランス22に接続されている。
【0017】
この回路の動作は、次のとおりである。前段昇圧用トランス駆動回路23に直流の入力電圧4が供給され、制御回路25が動作を開始し、スイッチング素子6aと6dをONとし、スイッチング素子6bと6cはOFF状態で目的とする交流電圧周期の1/2の時間だけ保持する。次の1/2周期はスイッチング素子6aと6dをOFF、スイッチング素子6bと6cをONとする。この後もスイッチング素子6a、6dと6b、6cを交互にON/OFFさせる動作を繰り返すことにより上記周期の交流電圧が出力される。
【0018】
この交流電圧が前段昇圧用トランス22を通して圧電トランス1に印加されることにより、圧電トランス1は共振振動し、その出力端子に接続された冷陰極管7に上記共振周波数の昇圧された正弦波電圧が印加され点灯する。前段昇圧用トランス22の出力電圧は前段昇圧用トランス出力電圧検出回路8で検出され、制御回路25にフィードバックされることにより、その出力電圧の平均値が一定の値になるように制御回路25により制御される。
【0019】
図4は、本実施の形態の圧電インバータ装置において、前段昇圧用トランス駆動回路をハーフブリッジ型回路で構成した場合の構成の一例を示す図である。図4において、制御回路35の入力端子の1つには前段昇圧用トランス出力電圧検出回路8の出力端子が接続され、また、制御回路35の出力端子は前段昇圧用トランス駆動回路33のFETからなる2つのスイッチング素子の制御端子に接続されている。ハーフブリッジ型の前段昇圧用トランス駆動回路33は第1のスイッチング素子61a、第2のスイッチング素子61bにより構成され、その出力が前段昇圧用トランス22に接続されている。
【0020】
この回路の動作においても、スイッチング素子61aと61bを交互にON/OFFさせる動作を繰り返すことにより目的とする周期の交流電圧が出力される。また、同様に、前段昇圧用トランス22の出力電圧は前段昇圧用トランス出力電圧検出回路8で検出され、制御回路35にフィードバックされることによりその出力電圧の平均値が一定の値になるように制御回路35により制御される。
【0021】
ハーフブリッジ型の前段昇圧用トランス駆動回路33は簡単な構成で実現でき、部品の削減、制御回路の簡単化により低コスト化に有利であり、一方フルブリッジ型の前段昇圧用トランス駆動回路23は出力電圧の高周波成分を低減させることが可能であるので、高効率化に有利である。
【0022】
以上のように、前段昇圧用トランスの出力電圧を直接制御する本発明により、出力電圧の平均値を圧電インバータ装置の駆動に最適な一定の値に保持することが可能であり、低消費電力を保つことが可能な圧電インバータ装置が得られる。
【0023】
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではないことは言うまでもなく、目的に合わせて回路構成の設計や部品の選択が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による圧電インバータ装置の実施の形態の構成例を示すブロック図。
【図2】制御回路の内部の機能を示すブロック図。
【図3】前段昇圧用トランス駆動回路をフルブリッジ型回路で構成した場合の構成の一例を示す図。
【図4】前段昇圧用トランス駆動回路をハーフブリッジ型回路で構成した場合の構成の一例を示す図。
【図5】従来の圧電インバータ装置の構成例を示すブロック図。
【図6】制御回路の内部の機能を示すブロック図。
【符号の説明】
【0025】
1,11 圧電トランス
2、12、22 前段昇圧用トランス
3、13、23、33 前段昇圧用トランス駆動回路
4、14 入力電圧
5、15、25、35 制御回路
6a、6b、6c、6d、61a、61b スイチッング素子
7、17 冷陰極管
8 前段昇圧用トランス出力電圧検出回路
9、19 圧電インバータ装置
18 入力電圧検出回路
10、20 交流電圧
51、151 インターフェイス部
52、152 駆動信号制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電トランスと、前段昇圧用トランスと、前段昇圧用トランス駆動回路と、前記前段昇圧用トランスおよび前記前段昇圧用トランス駆動回路を制御する制御回路とからなり、前記前段昇圧用トランス駆動回路は入力される直流電圧を交流電圧に変換するためのFETからなるスイチッング素子を有し、前記交流電圧が前記前段昇圧用トランスに入力され昇圧されて前記圧電トランスに印加され、該圧電トランスの出力側に接続された放電灯が点灯されるように構成された圧電インバータ装置であって、前記前段昇圧用トランスの出力電圧を検出する出力電圧検出回路を有し、該出力電圧検出回路の出力が前記制御回路に入力され、該制御回路は前記前段昇圧用トランスの出力電圧の平均値を一定に保持する機能を有することを特徴とする圧電インバータ装置。
【請求項2】
前記放電灯が冷陰極管であることを特徴とする、請求項1に記載の圧電インバータ装置。
【請求項3】
前記前段昇圧用トランス駆動回路はフルブリッジ型回路またはハーフブリッジ型回路により構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の圧電インバータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−290917(P2009−290917A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137468(P2008−137468)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】