説明

圧電セラミックスの製造方法、圧電素子、液体噴射ヘッド及び液体噴射装置

【課題】均質で高密度な焼結体を形成することで圧電特性を向上した圧電セラミックスを製造することができる圧電セラミックスの製造方法、圧電素子、液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】レーザー回折散乱式粒度分布測定による体積累積粒径D50が50nm以上、800nm以下のチタン酸バリウムからなるナノ粒子粉末と重合度が1500以上の有機バインダー水溶液とを乾式混合して混合物を作成する工程と、前記混合物に極性有機溶媒を前記ナノ粒子粉末に対して40質量%以上、100質量%以下添加して混合し、且つ前記極性有機溶媒を揮発させる工程と、前記極性有機溶媒を揮発させた前記混合物を成型する工程と、成型した前記混合物を焼成して焼結体を形成する工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス材料の粉末を成型及び焼結することにより圧電セラミックスを形成する圧電セラミックスの製造方法、圧電素子、液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドに用いられる圧電アクチュエーターや、圧電トランス、超音波振動子、センサー等に用いられる圧電セラミックスとしては、チタン酸ジルコン酸鉛や、チタン酸バリウムを用いたものが知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
セラミックス材料の粉末に比較的少量の有機バインダー水溶液を乾式混合して造粒し、金型に充填して加圧成型したのち、焼結することで圧電セラミックスを製造する製造方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−223404号公報
【特許文献2】特開2000−72539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、環境汚染の観点から鉛を使用しない無鉛圧電セラミックスが求められているものの、無鉛圧電セラミックスは鉛系圧電セラミックスに比べて圧電定数が低く、所望の変位量などの圧電特性を得ることができないという問題がある。
【0006】
そこで、チタン酸バリウムのナノ粒子粉末を成型及び焼結して圧電セラミックスを形成することで、圧電セラミックスの焼結密度を上げることができると考えられるが、乾式混合にナノ粒子粉末を使用した場合は、ナノ粒子粉末の流動性が低くなることから、有機バインダーがナノ粒子粉末の周囲に均一に回り込まないことが多く、成型性が悪くなってしまう。このように、成型性が悪化すると、均質で高密度な焼結体である圧電セラミックスを製造することができないという問題がある。ちなみに、均質で高密度ではない焼結体は、圧電定数が低く、所望の圧電特性を得ることができない。
【0007】
ちなみに、圧電セラミックスを湿式混合で製造しようとすると、その後の乾燥工程で急激な粒子の凝集などによるひび割れ等が発生してしまい、密度が低い圧電セラミックスが形成されるという問題がある。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑み、均質で高密度な焼結体を形成することで圧電特性を向上した圧電セラミックスを製造することができる圧電セラミックスの製造方法、圧電素子、液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の態様は、レーザー回折散乱式粒度分布測定による体積累積粒径D50が50nm以上、800nm以下のチタン酸バリウムからなるナノ粒子粉末と重合度が1500以上の有機バインダー水溶液とを乾式混合して混合物を作成する工程と、前記混合物に極性有機溶媒を前記ナノ粒子粉末に対して40質量%以上、100質量%以下添加して混合し、且つ前記極性有機溶媒を揮発させる工程と、前記極性有機溶媒を揮発させた前記混合物を成型する工程と、成型した前記混合物を焼成して焼結体を形成する工程と、を有することを特徴とする圧電セラミックスの製造方法にある。
かかる態様では、極性有機溶媒を混合して揮発させることで、ナノ粒子粉末の周囲に亘って有機バインダーを十分に回り込ませることができるため、圧電セラミックスの焼結密度を高めることができ、圧電セラミックスの圧電定数を向上することができる。また、重合度が1500以上の有機バインダーを有する有機バインダー水溶液を用いることで、圧電セラミックスを比較的高い焼結密度で形成することができる。さらに、極性有機溶媒を40質量%〜100質量%添加することで、圧電セラミックスの焼結密度にばらつきが生じるのを低減することができ、安定して高い焼結密度で形成することができる。
【0010】
ここで、前記有機バインダー水溶液に含まれる有機バインダーが、ポリビニルアルコールであることが好ましい。これによれば、有機バインダーとしてナノ粒子粉末を結合させることができる。
【0011】
また、前記極性有機溶媒がエタノール及びイソプロピルアルコールから選択される少なくとも一種であることが好ましい。これによれば、圧電セラミックスを高い焼結密度で形成することができる。
【0012】
また、前記混合物を成型する工程では、成型圧が274MPa以上であることが好ましい。これによれば、圧電セラミックスをさらに高い焼結密度で形成することができる。
【0013】
また、前記有機バインダー水溶液に含まれる有機バインダーの濃度が10質量%以上であることが好ましい。これによれば、圧電セラミックスを比較的高い焼結密度で形成することができる。
【0014】
また、前記有機バインダー水溶液を混合する工程では、前記有機バインダー水溶液を前記ナノ粒子粉末に対して0.6〜2.0質量%混合することが好ましく、1.0質量%混合することが好適である。これによれば、圧電セラミックスを比較的高い焼結密度で形成することができる。
【0015】
さらに本発明の他の態様は、上記態様の製造方法により形成された圧電セラミックスと、前記圧電セラミックスに電圧を印加する電極と、を有することを特徴とする圧電素子にある。
かかる態様では、低い電圧で優れた変位量を得ることができる、圧電特性に優れた圧電素子を実現できる。
【0016】
また本発明の他の態様は、上記態様の圧電素子を、液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室に圧力変化を生じさせる圧力発生手段として具備することを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる態様では、液体噴射特性に優れた液体噴射ヘッドを実現できる。
【0017】
さらに本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
かかる態様では、印刷品質に優れた液体噴射装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】一実施形態に係る圧電素子の断面図である。
【図2】実施例及び比較例を示す表である。
【図3】実施例1及び比較例1の圧電素子の試験結果を示すグラフである。
【図4】実施例1及び比較例1の圧電セラミックスのSEM画像である。
【図5】実施例2の圧電素子の試験結果を示すグラフである。
【図6】比較例2の圧電素子の試験結果を示すグラフである。
【図7】実施例3、比較例3及び4の圧電素子の試験結果を示すグラフである。
【図8】実施例4及び5の圧電素子の試験結果を示すグラフである。
【図9】実施例5〜8の圧電素子の試験結果を示すグラフである。
【図10】実施例9の圧電素子の試験結果を示すグラフである。
【図11】本発明の一実施形態に係る液体噴射ヘッドを示す断面図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る液体噴射装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(圧電素子)
図1は、本発明の一実施形態に係る圧電素子を示す断面図である。
【0020】
図1に示すように、圧電素子40は、圧電セラミックス44と、その両面に設けられた一対の電極43、45と、を具備する。
【0021】
このような圧電素子40では、一対の電極43、45に電圧を印加することで圧電セラミックス44に電界を発生させて、圧電セラミックス44を伸張・収縮させる。
【0022】
本実施形態の圧電セラミックス44は、チタン酸バリウム(BaTiO)の焼結体である。
【0023】
(圧電セラミックスの製造方法)
本実施形態の圧電セラミックス44は、チタン酸バリウム(BaTiO)からなるナノ粒子粉末を成型及び焼結することにより製造することができる。
【0024】
圧電セラミックス44に用いられるチタン酸バリウムからなるナノ粒子粉末は、レーザー回折散乱式粒度分布測定による体積累積粒径D50が50nm以上、800nm以下のものである。特に好ましくは、ナノ粒子粉末の体積累積粒径D50は100nmである。このように、チタン酸バリウムの粉末として、ナノ粒子粉末を用いることで、高密度な圧電セラミックス44を製造することができる。なお、ナノ粒子粉末として使用できるチタン酸バリウム(BaTiO)は、チタン酸バリウムだけではなく、チタン酸バリウムに他の材料を添加したものであってもよい。すなわち、ナノ粒子粉末であるチタン酸バリウムとは、チタン酸バリウムに添加物が添加されたものを含む。
【0025】
具体的な製造方法としては、まず、上述したレーザー回折散乱式粒度分布測定による体積累積粒径D50が50nm以上、800nm以下のチタン酸バリウムのナノ粒子粉末と、含まれる有機バインダーの重合度が1500以上の有機バインダー水溶液と、を乾式混合して混合物を作成する。
【0026】
有機バインダー水溶液は、純水に有機バインダーを混合した溶液であり、有機バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)等が挙げられる。
【0027】
有機バインダー水溶液に含まれる有機バインダーの濃度は、10質量%以上が好ましい。このように、有機バインダー水溶液の濃度を10質量%以上とすることにより、焼結密度を向上して、圧電特性に優れた焼結体である圧電セラミックス44を得ることができる。
【0028】
また、ここで言う乾式混合とは、混合物をスラリー(泥漿)とする湿式に比べて、スラリーとならない程度に有機バインダー水溶液の混合量が少ないものである。なお、有機バインダー水溶液の混合量は、チタン酸バリウムのナノ粒子粉末に対して0.6〜2.0質量%が好ましく、1.0質量%が好適である。有機バインダー水溶液が多すぎる(2.0質量%より多い)と造粒時に固化してしまい、また、有機バインダー水溶液が少ない(0.6より少ない)と成型不可となる。したがって、有機バインダー水溶液をチタン酸バリウムのナノ粒子粉末に対して0.6〜2.0質量%、さらに好適には1.0質量%混合することで、焼結密度を向上して圧電特性に優れた焼結体である圧電セラミックス44を得ることができる。
【0029】
次に、ナノ粒子粉末と有機バインダー水溶液とを混合した混合物に、極性有機溶媒を添加して混合し、且つ極性有機溶媒を揮発させて造粒する。
【0030】
極性有機溶媒とは、高い誘電率をもつ極性分子からなる極性溶媒であると共に有機溶媒であるものを指す。このような極性有機溶媒としては、エタノール、イソプロピルアルコール及びアセトンから選択される少なくとも一種が挙げられる。
【0031】
極性有機溶媒の添加量は、ナノ粒子粉末に対して40質量%以上、100質量%以下である。極性有機溶媒の添加量が40質量%未満である場合は、焼結体として十分な焼結密度を得られず、所望の圧電特性を得ることができないと共に圧電特性にばらつきが大きくなる。また、極性有機溶媒の添加量が100質量%より多い場合は、蒸発に時間がかかり、製造時間がかかると共に製造コストが高騰し、且つ圧電特性にばらつきが大きくなり、安定した圧電特性の圧電セラミックス44を得ることができない。
【0032】
また、極性有機溶媒を添加した混合物を十分に攪拌し、且つ極性有機溶媒を揮発させて造粒する。極性有機溶媒が添加された混合物は、攪拌して混合することで、有機バインダーをナノ粒子粉末の周囲に亘って均一に回り込ませることができる。また、攪拌によって極性有機溶媒の揮発は促進される。
【0033】
次に、極性有機溶媒を完全に揮発させた混合物を、例えば、ペレット状、角柱状、平板状等の適宜な形状に成型する。この成型では、例えば、直径10mmのシリンダーを移動させて加圧する1軸成型において、単位面積当たりの圧力を147MPa以上とするのが好ましく、単位面積当たりの圧力を274MPa以上とするのが好適である。このように、成型圧力を147MPa以上、さらに好ましくは274MPa以上とすることによって、焼結密度を向上して圧電特性に優れた焼結体である圧電セラミックス44を得ることができる。
【0034】
このように成型した後は、成型した混合物を焼成することで焼結体からなる圧電セラミックス44を形成することができる。焼成温度は、例えば、1150〜1200℃が好ましい。これは、焼成温度が1150℃より低いと、混合物を十分に焼成することができず、焼結密度が低下する。また、焼成温度が1200℃よりも高いと、粒が成長しずぎて圧電特性が低下するからである。
【0035】
このように形成した圧電セラミックス44は、高い焼結密度の焼結体とすることがきる。これは、ナノ粉末粒子と有機バインダー水溶液との混合物に極性有機溶媒を添加することによって、極性有機溶媒によって有機バインダー水溶液に含まれる純水の水素結合性を弱めて、ナノ粒子粉末の凝集を抑制して、ナノ粒子粉末の周囲に亘って均一に有機バインダーを回り込ませることができる。そして、ナノ粒子粉末の周囲に亘って有機バインダーが均一に回り込んだものを成型すれば、成型性を向上することができ、焼成することによって均質で高密度な焼結体を得ることができるからである。
【0036】
そして、このように高い焼結密度の焼結体である圧電セラミックス44は、圧電定数(d33)が高く、優れた圧電特性を有する。すなわち、このような圧電セラミックス44を用いた圧電素子40は、低い駆動電圧で高い圧電変位を得ることができる、いわゆる圧電特性に優れた圧電素子40とすることができる。
【0037】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明する。なお、図2は、各実施例及び比較例を示す表である。
【0038】
(実施例1)
上述した製造方法及び図2に示す表に基づいて圧電セラミックスを形成した。具体的には、まず、レーザー回折散乱式粒度分布測定による体積累積粒径D50が100nmのチタン酸バリウム(BaTiO)(堺化学工業株式会社製BT01)のナノ粒子粉末に有機バインダー水溶液を乾式混合した混合物を作成する。
【0039】
有機バインダー水溶液としては、純水にポリビニルアルコール(PVA)を混合したポリビニルアルコール水溶液(和光純薬工業株式会社製♯1500)を使用した。
【0040】
この有機バインダー水溶液に含まれる有機バインダー(ポリビニルアルコール)は、重合度が1500である。また、有機バインダー水溶液に含まれる有機バインダー(ポリビニルアルコール)の濃度は10質量%である。
【0041】
なお、実施例1では、有機バインダー水溶液をナノ粒子粉末に対して1.0質量%混合した。
【0042】
次に、ナノ粒子粉末と有機バインダー水溶液との混合物に、極性有機溶媒を添加して混合し、且つ極性有機溶媒を揮発させて造粒する。実施例1では、ナノ粒子粉末と有機バインダー水溶液との混合物に、ナノ粒子粉末に対して50質量%のエタノールからなる極性有機溶媒を添加した。
【0043】
次に、極性有機溶媒が揮発した混合物を、ペレット状に成型した。この成型では、直径10mmのシリンダーで、単位面積当たりの圧力が147MPaの成型圧で1軸成型を行った。
【0044】
次に、成型した混合物を1150℃で15時間焼成して、焼結体からなる圧電セラミックスを形成した。
【0045】
このように形成した圧電セラミックスの表面を研磨し、その研磨面に銀ペーストを塗布して700℃で焼成することで、圧電セラミックスの厚さ方向の両側に一対の電極を形成して圧電素子を形成した。
【0046】
そして形成した圧電素子をシリコンオイルに浸漬した状態で、2kV/mmの電界を3分間印加することで、圧電素子の分極処理を行った。
【0047】
なお、実施例1では、1人の作成者(A)が同じ材料・製造条件で5個の圧電素子を形成した。
【0048】
(比較例1)
極性有機溶媒を添加する工程と、極性有機溶媒を揮発させる工程とを実施しない以外は、上述した実施例1と同様の製造方法によって比較例1の圧電素子を形成した。なお、比較例1では、2人の作成者(A及びB)がそれぞれ4個の圧電素子と5個の圧電素子とを形成することで、合計9個の比較例1の圧電素子を形成した。
【0049】
(試験例)
実施例1及び比較例1の各圧電素子について、電極を形成する前に研磨した圧電セラミックスの密度をアルキメデス法(%)により測定した。この結果を図3(a)に示す。なお、アルキメデス法による密度の測定では、理論密度を6.02g/cmで計算した。
【0050】
また、分極処理を行った圧電素子の圧電定数(d33)をd33メーター(Piezotest社製)で測定した。この結果を図3(b)に示す。なお、図3は、実施例1及び比較例1の試験結果を示すグラフである。
【0051】
また、上述した実施例1及び比較例1の各圧電素子について、電極を形成する前に研磨した圧電セラミックスの表面を走査型電子顕微鏡(SEM)によって撮影した。この結果を図4に示す。なお、図4(a)は実施例1の5000倍のSEM画像であり、図4(b)は比較例1の5000倍のSEM画像である。
【0052】
図3に示す結果から分かるように、極性有機溶媒(エタノール)を添加した実施例1の圧電素子は、焼結密度(焼結度)が95%以上であった。これに対して、比較例1の圧電素子は、焼結密度が95%より低くなった。特に低いものでは焼結密度が85%以下であった。このため、実施例1の圧電素子は、比較例1の圧電素子に比べて焼結密度が高くなることが分かった。また、図4に示すSEM画像から分かるように、比較例1の圧電セラミックスでは、結晶粒内での破壊が大部分を占め、結晶粒界に線状の空孔が観察されたのに対し、実施例1の圧電セラミックスでは、結晶の多面体が多く観られ、空孔が点で発生していることが判明した。このSEM画像からも実施例1の圧電素子は、焼結密度が高いことが分かる。
【0053】
また、実施例1の圧電素子の圧電定数は、300pC/N以上と高くなったのに対し、比較例1の圧電素子の圧電定数は、300pC/Nより低くなった。このため、圧電素子はその焼結密度が高くなるに従い、圧電特性(圧電定数d33)も高くなることが分かった。
【0054】
さらに、図3に示すように、実施例1の全ての圧電素子において、同じ材料・製造条件であれば、焼結密度が高く、圧電特性(圧電定数d33)も高くすることができるため、作成者に拘わらず材料及び製造条件によって再現性があることが明確となった。
【0055】
(実施例2)
単位面積当たりの成型圧を274MPaにした以外は、上述した実施例1と同様の材料・製造条件にて圧電素子を形成した。すなわち、成型時に、直径10mmのシリンダーで、単位面積当たりの圧力(成型圧)を274MPaとして1軸成型を行った以外は、上述した実施例1と同様の材料・製造条件にて圧電素子を形成した。なお、実施例2では、3人の作成者(A〜C)が同じ材料・製造条件でそれぞれ5個の圧電素子を形成することで、合計15個の実施例2の圧電素子を形成した。
【0056】
この実施例2についても上述した試験例と同様の試験を行い、アルキメデス法による焼結密度と圧電特性(d33;分極直後)とを測定した。この結果を図5に示す。なお、図5は、実施例2の試験結果を示すグラフである。
【0057】
図5に示す結果から分かるように、成型圧(単位面積当たりの圧力)が274MPaで形成した実施例2の圧電素子は、その焼結密度が95%以上となり、比較例1に比べて高い焼結密度となった。
【0058】
また、図3及び図5に示す結果から分かるように、成型圧を147MPaとして形成した実施例1の圧電素子と、成型圧を274MPaとして形成した実施例2の圧電素子とを比較すると、成型圧を274MPaとして形成した実施例2の圧電素子の方が、成型圧を147MPaとして形成した実施例1の圧電素子に比べて高い焼結密度となった。このため、圧電セラミックスの製造時には、単位面積当たりの圧力が274MPa以上の成型圧で成型するのが好ましい。
【0059】
(比較例2)
有機バインダー水溶液として、有機バインダーの重合度が500の有機バインダー水溶液を使用した以外、実施例2と同様の材料及び製造条件にて圧電素子を形成した。具体的には、有機バインダー水溶液として、純水に重合度500のポリビニルアルコール(PVA)を混合したポリビニルアルコール水溶液(和光純薬工業株式会社製♯500)を使用した。なお、比較例2では、同じ材料・製造条件で6個の圧電素子を形成した。
【0060】
比較例2の各圧電素子についても上述した試験例と同様の試験を行い、アルキメデス法による焼結密度と圧電特性(d33;分極直後)とを測定した。この結果を図6に示す。
【0061】
図6に示す結果から分かるように、重合度が500の有機バインダーを用いた比較例2の圧電素子は、焼結密度が94%よりも低くなった。これに対して、図3及び図5に示すように、実施例1及び実施例2の圧電素子は、何れも焼結密度が95%以上となった。したがって、実施例1及び2のように、焼結密度を上げるためには、重合度が1500以上の有機バインダーを有する有機バインダー水溶液を用いる必要がある。
【0062】
(実施例3)
実施例3として、極性有機溶媒のナノ粒子粉末に対する添加量を100質量%とした以外、上述した実施形態1と同様の材料・製造条件で実施例3の圧電素子を形成した。また、実施例3では、同じ材料・製造条件で5個の圧電素子を形成した。
【0063】
実施例3の圧電素子についても上述した試験例と同様の試験を行い、アルキメデス法による焼結密度を測定した。この結果を図7に示す。
【0064】
(比較例3及び4)
比較例3及び4及として、極性有機溶媒のナノ粒子粉末に対する添加量を、それぞれ25質量%、150質量%とした以外、上述した実施例1と同様の材料・製造条件で各比較例3〜5の圧電素子を形成した。なお、比較例3及び4では、それぞれ5個の圧電素子を形成した。
【0065】
比較例3及び4の圧電素子についても上述した試験例と同様の試験を行い、アルキメデス法による焼結密度を測定した。この結果を図7に示す。
【0066】
図7に示す結果から分かるように、極性有機溶媒を100質量%で形成した実施例3のほとんどの圧電素子は、焼結密度が95%以上となった。また、実施例3の圧電素子には、焼結密度が95%を下回るがほとんど95%に近いものがあった。これに対して、極性有機溶媒を25質量%、150質量%で形成した比較例3及び4の圧電素子は、実施例3の焼結密度(約95%)よりも低くなるものが多く存在した。また、実施例3の圧電素子は、焼結密度のばらつきが小さかったのに対し、比較例3及び4の圧電素子は、焼結密度にばらつきが大きくなった。なお、比較例4の圧電素子は、実施例3の圧電素子よりも焼結密度が低くなったものの、比較例3の圧電素子に比べて焼結密度が高くなったが、極性有機溶媒の量が多いことから、蒸発に時間がかかり製造コストが高騰してしまうため、比較例4のように極性有機溶媒を150質量%添加するものは製造方法として好ましくない。
【0067】
さらに、図3に示すように、極性有機溶媒を50質量%とした実施例1は、上述のように焼結密度が95%以上となり、比較例3及び4の圧電素子に比べて焼結密度が高く、ばらつきが少なく、優れた圧電特性を有する。したがって、極性有機溶媒の添加量は、ナノ粒子粉末に対して40〜110質量%程度が好ましく、50〜100質量%が好適である。
【0068】
(実施例4及び5)
実施例4の圧電素子は、有機バインダー水溶液として重合度が1500のポリビニルアルコールからなる有機バインダーの濃度が5質量%のポリビニルアルコール水溶液(和光純薬工業株式会社製#1500)を使用した以外、上述した実施例1と同様の方法及び製造条件で形成した。なお、実施例4では、同じ材料・製造条件で5個の圧電素子を形成した。
【0069】
また、実施例5の圧電素子は、有機バインダー水溶液として重合度が1500のポリビニルアルコールからなる有機バインダーの濃度が5質量%のポリビニルアルコール水溶液(和光純薬工業株式会社製♯1500)を使用した。また、実施例5の圧電素子は、有機バインダー水溶液を、ナノ粒子粉末に対して、1.5質量%添加した以外、上述した実施例1と同様の方法及び製造条件で形成した。なお、実施例5では、同じ材料・製造条件で5個の圧電素子を形成した。
【0070】
これら実施例4及び5についても上述した試験例と同様の試験を行い、アルキメデス法による焼結密度を測定した。この結果を図8に示す。
【0071】
図8に示す結果から分かるように、有機バインダーの濃度が5質量%の有機バインダー水溶液を使用して形成した実施例4及び5の圧電素子は、焼結密度(焼結度)が94%以上と高い焼結密度を示した。これに対して、図3に示すように比較例1の圧電素子は、焼結密度が94%よりも低い。したがって、実施例4及び5の圧電素子のように、有機バインダーの濃度が5質量%であっても、極性有機溶媒を添加することによって、比較例1よりも焼結密度を高くすることができる。なお、比較例3及び4の圧電素子は、図7に示すように、94%以上の焼結密度のものも存在するが、最も低い圧電素子の焼結密度は94%より低く、ばらつきが大きい。また、蒸発に時間がかかることから製造時間が長時間になる。このことから、実施例4及び5の方が安定して高い焼結密度を有する圧電素子を短時間で低コストに製造できるものである。
【0072】
また、図3及び図8に示す結果から分かるように、有機バインダーの濃度が10質量%の有機バインダー水溶液を用いた実施例1の圧電素子の方が、有機バインダーの濃度が5質量%の有機バインダー水溶液を用いた実施例4及び5の圧電素子に比べて焼結密度が高くなる。従って、有機バインダー水溶液に使用する有機バインダーの濃度は、10質量%以上であるのが好適である。
【0073】
(実施例6〜8)
有機バインダー水溶液のナノ粒子粉末に対する添加量をそれぞれ1.5質量%、2.0質量%、0.6質量%として実施例6〜8の圧電素子を形成した。なお、有機バインダー水溶液の添加量を変更した以外は、上述した実施例1と同様の材料・製造条件で実施例6〜8の圧電素子を形成した。また、実施例6及び7では、同じ材料・製造条件でそれぞれ5個の圧電素子を形成し、実施例8では、同じ材料・製造条件で3個の圧電素子を形成した。
【0074】
この実施例6〜8についても上述した試験例と同様の試験を行い、アルキメデス法による焼結密度を測定した。これらの結果を上述した実施例5の結果と共に図9に示す。
【0075】
図9に示す結果から分かるように、有機バインダー水溶液の混合量を変化させて形成した実施例5〜8の圧電素子は、焼結密度(焼結度)が94%以上と高い焼結密度を示した。これに対して、図3に示すように比較例1の圧電素子は、焼結密度が94%よりも低い。したがって、実施例5〜8の圧電素子のように、有機バインダー水溶液の添加量を変化させても、極性有機溶媒を添加することによって、比較例1よりも焼結密度を高くすることができる。なお、比較例3及び4の圧電素子は、図7に示すように、94%以上の焼結密度のものも存在するが、最も低い圧電素子の焼結密度は94%より低く、ばらつきが大きい。また、蒸発に時間がかかることから製造時間が長時間になる。このことから、実施例5〜8の方が安定して高い焼結密度を有する圧電素子を短時間で抵抗ストに製造できるものである。以上のことから、有機バインダー水溶液は、ナノ粒子粉末に対して0.6〜2.0質量%であるのが好ましい。
【0076】
また、図3及び図9に示す結果から分かるように、有機バインダー水溶液を1.0質量%混合した実施例1の圧電素子の方が、実施例5〜8の圧電素子に比べて焼結密度が高くなる。したがって、有機バインダー水溶液は、ナノ粒子粉末に対して1.0質量%であるのが好適である。
【0077】
なお、実施例5〜8に示す有機バインダー水溶液の混合量は、ナノ粒子粉末に対してとても少量であるため、このような有機バインダー水溶液をナノ粒子粉末に混合するものは乾式混合である。
【0078】
(実施例9)
極性有機溶媒として、イソプロピルアルコール(IPA)を用いた以外、上述した実施例1と同様の材料・製造条件で実施例9の圧電素子を形成した。なお、実施例9では、同じ条件で3個の圧電素子を形成した。これらの圧電素子について、上述した試験例と同様の試験を行い、アルキメデス法による焼結密度を測定した。この結果を図10に示す。
【0079】
図10に示すように、極性有機溶媒としてイソプロピルアルコールを使用した実施例9の圧電素子は、図3に示す極性有機溶媒としてエタノールを使用した実施例1の圧電素子と同じように95%以上の高い焼結密度で形成されることが分かった。したがって、極性有機溶媒として、エタノールに代わってイソプロピルアルコールを用いることができる。
【0080】
以上、上述した各実施例1〜9及び比較例1〜4の圧電素子の試験結果から分かるように、ナノ粒子粉末と重合度が1500以上の有機バインダー水溶液とを混合した混合物に、エタノールやイソプロピルアルコール等の極性有機溶媒をナノ粒子粉末に対して40〜100質量%添加し、混合して極性有機溶媒を揮発させた後、成型及び焼結することで、圧電セラミックスの焼結密度を高めて、圧電セラミックスの圧電定数を向上することができる。
【0081】
特に、極性有機溶媒をナノ粒子粉末に対して50質量%添加すると、蒸発にかかる時間も短く、製造時間を短時間とすることができると共に、高い焼結密度で、且つばらつきの少ない焼結密度で形成することができる。
【0082】
また、単位面積当たりの成型圧を274MPa以上で成型することで、圧電セラミックスの焼結密度をさらに高めることができる。
【0083】
さらに、有機バインダーの濃度が10質量%以上の有機バインダー水溶液を使用して乾式混合することで、さらに圧電セラミックスを比較的高い焼結密度で形成することができる。
【0084】
また、有機バインダー水溶液をナノ粒子粉末に対して0.6〜2.0質量%乾式混合するのが好ましく、1.0質量%混合するのが好適である。これによれば、圧電セラミックスを比較的高い焼結密度で形成することができる。
【0085】
(液体噴射ヘッド)
以下に上述した圧電素子を用いた液体噴射ヘッドについて説明する。図11は、液体噴射ヘッドの断面図である。
【0086】
図11に示すように、本実施形態の液体噴射ヘッド10は、アクチュエーターユニット20と、アクチュエーターユニット20が固定される1つの流路ユニット30と、アクチュエーターユニット20に接続されるフレキシブルプリント基板50とで構成されている。
【0087】
アクチュエーターユニット20は、圧電素子40を具備するアクチュエーター装置であり、圧力発生室21が形成された流路形成基板22と、流路形成基板22の一方面側に設けられた振動板23と、流路形成基板22の他方面側に設けられた圧力発生室底板24とを有する。
【0088】
流路形成基板22は、例えば、150μm程度の厚みを有するアルミナ(Al23)や、ジルコニア(ZrO2)などのセラミックス板からなり、本実施形態では、複数の圧力発生室21がその幅方向に沿って並設された列が2列形成されている。そして、この流路形成基板22の一方面に、例えば、厚さ10μmのジルコニアの薄板からなる振動板23が固定され、圧力発生室21の一方面はこの振動板23により封止されている。
【0089】
圧力発生室底板24は、流路形成基板22の他方面側に固定されて圧力発生室21の他方面を封止すると共に、圧力発生室21の長手方向一方の端部近傍に設けられて圧力発生室21と後述するリザーバーとを連通する供給連通孔25と、圧力発生室21の長手方向他方の端部近傍に設けられて後述するノズル開口34に連通するノズル連通孔26とを有する。
【0090】
そして、圧電素子40は、振動板23上の各圧力発生室21に対向する領域のそれぞれに設けられている。本実施形態では、圧力発生室21の列が2列設けられているため、圧電素子40の列も2列設けられている。
【0091】
ここで、各圧電素子40は、振動板23上に設けられた一方の電極43と、各圧力発生室21毎に独立して設けられた圧電セラミックス44と、各圧電セラミックス44上に設けられた他方の電極45とで構成されている。また、一方の電極43は、並設された圧電セラミックス44に亘って設けられて各圧電素子40の共通電極となっており、振動板の一部として機能する。勿論、一方の電極43を各圧電セラミックス44毎に設けるようにしてもよい。
【0092】
なお、アクチュエーターユニット20の各層である流路形成基板22、振動板23及び圧力発生室底板24は、粘土状のセラミックス材料、いわゆるグリーンシートを所定の厚さに成形して、例えば、圧力発生室21等を穿設後、積層して焼成することにより接着剤を必要とすることなく一体化される。そして、その後、振動板23上に圧電素子40が形成される。
【0093】
一方、流路ユニット30は、アクチュエーターユニット20の圧力発生室底板24に接合される供給口形成基板31と、複数の圧力発生室21の共通液体室となるリザーバー32が形成されるリザーバー形成基板33と、ノズル開口34が形成されたノズルプレート35とからなる。すなわち、本実施形態では、流路ユニット30を構成する構成部材として、供給口形成基板31、リザーバー形成基板33及びノズルプレート35が挙げられる。
【0094】
供給口形成基板31は、厚さ150μmのジルコニアの薄板からなり、ノズル開口34と圧力発生室21とを接続するノズル連通孔36と、前述の供給連通孔25と共にリザーバー32と圧力発生室21とを接続する液体供給口37を穿設して構成されている。
【0095】
リザーバー形成基板33は、液体流路を構成するに適した、例えば、150μmのステンレス鋼などの耐食性を備えた板材に、外部の液体タンク(図示なし)から液体の供給を受けて圧力発生室21に液体を供給するリザーバー32と、圧力発生室21とノズル開口34とを連通するノズル連通孔39とを有する。
【0096】
ノズルプレート35は、例えば、ステンレス鋼からなる薄板に、圧力発生室21と同一の配列ピッチでノズル開口34が穿設されて形成されている。例えば、本実施形態では、流路ユニット30には、圧力発生室21の列が2列設けられているため、ノズルプレート35にも、ノズル開口34の列が2列形成されている。また、このノズルプレート35は、リザーバー形成基板33の流路形成基板22の反対面に接合されてリザーバー32の一方面を封止している。
【0097】
このような流路ユニット30は、これら供給口形成基板31、リザーバー形成基板33及びノズルプレート35を、接着剤や熱溶着フィルム等によって固定することで形成される。
【0098】
そして、このような流路ユニット30とアクチュエーターユニット20とは、接着剤や熱溶着フィルムを介して接合されて固定されている。
【0099】
また、各圧電素子40の長手方向一端部の圧力発生室21の周壁に相対向する領域には、他方の電極45に接続された金(Au)等からなる個別接続端子46が設けられている。この個別接続端子46は圧電素子40毎に設けられている。また、並設された圧電素子40の列間の圧電素子40の列の両端外側には、一方の電極43に接続された金(Au)からなる共通接続端子(図示無し)が設けられている。そして、圧電素子40の各電極45及び電極43に設けられた個別接続端子46には、フレキシブルプリント基板50に設けられた配線層51が電気的に接続されており、このフレキシブルプリント基板50を介して駆動回路等からの駆動信号が各圧電素子40に供給される。
【0100】
フレキシブルプリント基板50は、2列の圧電素子40に亘って1つ設けられた、例えば、フレキシブルプリンティングサーキット(FPC)や、テープキャリアパッケージ(TCP)などからなる。詳しくは、フレキシブルプリント基板50は、例えば、ポリイミド等のベースフィルム52の表面に銅薄等で所定のパターンの配線層51を形成し、配線層51の圧電素子40と接続される端子部以外の領域をレジスト等の絶縁材料53で覆ったものである。
【0101】
なお、本発明は、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
【0102】
(液体噴射装置)
上述した液体噴射ヘッド10は、液体を貯留するカートリッジ等と連通する液体流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、液体噴射装置に搭載される。図12は、その液体噴射装置の一例を示す概略図である。
【0103】
図12に示すように、液体噴射ヘッド10を有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、液体供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物などの異なる液体を吐出するものとしている。
【0104】
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
【0105】
なお、本実施形態の液体噴射装置Iでは、液体噴射ヘッド10(ヘッドユニット1A、1B)がキャリッジ3に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、液体噴射ヘッド10が固定されて、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0106】
I 液体噴射装置、 10 液体噴射ヘッド、 20 アクチュエーターユニット、 21 圧力発生室、 22 流路形成基板、 23 振動板、 24 圧力発生室底板、 30 流路ユニット、 31 供給口形成基板、 32 リザーバー、 33 リザーバー形成基板、 34 ノズル開口、 35 ノズルプレート、 40 圧電素子、 43 電極、 44 圧電セラミックス、 45 電極、 46 個別接続端子、 50 フレキシブルプリント基板、 51 配線層、 52 ベースフィルム、 53 絶縁材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー回折散乱式粒度分布測定による体積累積粒径D50が50nm以上、800nm以下のチタン酸バリウムからなるナノ粒子粉末と重合度が1500以上の有機バインダー水溶液とを乾式混合して混合物を作成する工程と、
前記混合物に極性有機溶媒を前記ナノ粒子粉末に対して40質量%以上、100質量%以下添加して混合し、且つ前記極性有機溶媒を揮発させる工程と、
前記極性有機溶媒を揮発させた前記混合物を成型する工程と、
成型した前記混合物を焼成して焼結体を形成する工程と、を有することを特徴とする圧電セラミックスの製造方法。
【請求項2】
前記有機バインダー水溶液に含まれる有機バインダーが、ポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1記載の圧電セラミックスの製造方法。
【請求項3】
前記極性有機溶媒がエタノール及びイソプロピルアルコールから選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧電セラミックスの製造方法。
【請求項4】
前記混合物を成型する工程では、成型圧が274MPa以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の圧電セラミックスの製造方法。
【請求項5】
前記有機バインダー水溶液に含まれる有機バインダーの濃度が10質量%以上であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の圧電セラミックスの製造方法。
【請求項6】
前記有機バインダー水溶液を混合する工程では、前記有機バインダー水溶液を前記ナノ粒子粉末に対して0.6〜2.0質量%混合することを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の圧電セラミックスの製造方法。
【請求項7】
前記有機バインダー水溶液を混合する工程では、前記有機バインダー水溶液を前記ナノ粒子粉末に対して1.0質量%混合することを特徴とする請求項6記載の圧電セラミックスの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載の製造方法により形成された圧電セラミックスと、
前記圧電セラミックスに電圧を印加する電極と、を有することを特徴とする圧電素子。
【請求項9】
請求項8に記載の圧電素子を、液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室に圧力変化を生じさせる圧力発生手段として具備することを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項10】
請求項9に記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図11】
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【図12】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−121806(P2011−121806A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279894(P2009−279894)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】