説明

圧電デバイス

【課題】 可変感度等の発振特性を維持したまま、回路母基板の搭載面積を縮小することができる圧電デバイスを提供することにある。
【解決手段】 本発明の圧電デバイスは、絶縁基体に圧電振動素子が搭載され、該絶縁基体に搭載されている該圧電振動素子を覆う蓋体が配置されており、該蓋体と該絶縁基体に設けた導体パターンとを固着している圧電デバイスにおいて、前記圧電振動素子が前記絶縁基体との間で傾斜角45±10度を設けて搭載されていることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯用通信機器や電子計算機等の電子機器に用いられる水晶振動子等の圧電デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より圧電素板の両主面に電極を形成した圧電振動素子をパッケージ内部に搭載した、例えば、圧電振動子や、圧電振動子と発振回路とを同一のパッケージ内に搭載した圧電発振器、あるいは、特定の周波数帯を分離する圧電フィルタ等の圧電デバイスが、携帯用通信機器や電子計算機等の電子機器に多用されている。そして近年、表面実装に対応した形状の圧電デバイスが開発され、電子機器の小型化に伴って、これらの圧電デバイスも小型化が進められている。
【0003】
かかる従来の圧電デバイスの一例としては、図6に圧電材として水晶を使用した水晶振動子を示す。容器体21の凹部空間内底面には、一対の素子接続用電極パッドが設けられている。この素子接続用電極パッド上には、導電性接着剤を介して電気的に接続される一対の励振電極を表裏主面に有した水晶振動素子22が搭載されており、この水晶振動素子22を囲繞する容器体21の側壁頂部にはシールリング23が取着されている。
このシールリング23の上に金属製の蓋体24を被せ、シーム溶接等でシールリング23と蓋体24とを接合することにより、水晶振動素子22の搭載空間(凹部空間)を気密封止した水晶振動子である。(例えば、下記特許文献1を参照。)
【0004】
かかる水晶振動子は、容器体21の下面に設けられる入出力端子並びにグランド端子等の外部端子25を介して水晶振動素子22の励振電極間に外部からの変動電圧が印加されると、水晶振動素子22の特性に応じた所定の周波数で厚みすべり振動を起こすようになっており、その共振周波数に基づいて外部の発振回路で所定周波数の基準信号が発振・出力される。このような基準信号は携帯用通信機器等の電子機器におけるクロック信号として利用されることとなる。
【0005】
前述のような水晶振動子等を含む圧電デバイスについては、以下のような文献が開示されている。
【特許文献1】特開2001−274649号公報
【特許文献2】特開2004−236183号公報
【特許文献3】特開2003−078373号公報
【0006】
尚、出願人は、前記した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を本件出願時までに発見するに到らなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、携帯用通信機器等の多機能化に伴い機器の回路母基板上に搭載する電子素子の数が多くなっており、圧電デバイスに与えられる回路母基板の搭載面積も従来より更に縮小する傾向にある。このことから更なる圧電デバイスの小型化が要求されているが、圧電デバイスを小型化すると、圧電デバイス内部に搭載する圧電振動素子も小型化する為、例えば水晶振動子や水晶発振器の場合は、内部に搭載する圧電振動素子の1つである水晶振動素子のクリスタルインピーダンス(CI)値が小型化により急激に大きくなる。その影響により可変感度等の水晶振動素子の発振特性が劣化してしまうという欠点があった。
【0008】
本発明は上記欠点に鑑みて発明されたものであり、その目的は、可変感度等の発振特性を維持したまま、回路母基板の搭載面積を縮小することができる圧電デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の圧電デバイスは、絶縁基体に圧電振動素子が搭載され、該絶縁基体に搭載されている該圧電振動素子を覆う蓋体が配置されており、該蓋体と該絶縁基体に設けた導体パターンとを固着している圧電デバイスにおいて、前記圧電振動素子が前記絶縁基体との間で傾斜角45±10度(略45度)を設けて搭載されていることを特徴とするものである。
【0010】
更に本発明の圧電デバイスは、前記絶縁基体が容器形状であり、側壁に傾斜が施されており、前記蓋体が前記圧電振動素子と平行になるように、側壁上面に載置接続されてなることを特徴とするものである。
【0011】
更にまた本発明の圧電デバイスは、前記蓋体を被覆するように樹脂層が形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の圧電デバイスによれば、前記圧電振動素子が前記絶縁基体との間で傾斜角を設けて搭載されていることによって、従来配置する圧電振動素子よりも寸法サイズの大きい圧電振動素子を使用することができるので、クリスタルインピーダンス(CI)値が向上し、その影響により可変感度等の水晶振動素子の発振特性を向上させることが可能となる。
【0013】
また本発明の圧電デバイスによれば、前記圧電振動素子と該絶縁基体とで形成されている傾斜角が45±10度であることによって、搭載面積を変更することなく圧電振動素子の長辺側寸法を1.4倍にすることができるので、圧電振動素子の発振特性を向上させることが可能となる。
【0014】
更に本発明の圧電デバイスによれば、前記絶縁基体が容器形状であり、側壁に傾斜が施され、前記蓋体が前記圧電振動素子と平行になるように側壁上面に載置接続されてなることによって、前記蓋体が前記圧電振動素子と常に平行に配置されるので、浮遊容量等による発振周波数の変動を防止することが可能となる。
【0015】
更にまた本発明の圧電デバイスによれば、前記蓋体を被覆するように樹脂層が形成されていることによって、落下等による衝撃を緩和するのことが可能となる。蓋体と絶縁基体の接合部分の応力も緩和するので、気密性を更に向上させることが可能となる。また、前記絶縁基体には凹部が形成されると共に、前記絶縁基体の凹部を形成している側壁に傾斜が施され、蓋体が前記水晶振動素子と常に平行に側壁上面に配置された場合には、蓋体の上面に樹脂層を形成することで平坦度を保つことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の圧電デバイスの断面図である。同図に示す圧電デバイスは、大略的に、絶縁基体1と、圧電振動素子としての水晶振動素子2と、蓋体3とで構成されている。
【0017】
前記絶縁基体1は、例えば、アルミナセラミックス、ガラス−セラミック等のセラミック材料から成る絶縁層を複数層、積層することによって形成されており、その上面には、環状の導体層5が形成され、下面には入力端子、出力端子及びグランド端子を含む複数個の外部端子6がそれぞれ設けられている。
【0018】
また図2及び図3が示すように、前記絶縁基体1には凹部4が形成されると共に、前記絶縁基体1の凹部4を形成している側壁7に傾斜が施され、蓋体3が前記水晶振動素子2と常に平行に側壁上面に配置されるので、浮遊容量等による発振周波数の変動を防止することが可能となる。
【0019】
かかる絶縁基体1に設けられている一対の搭載パッド8は、その上面側で後述する水晶振動素子2の励振電極に導電性接着剤9を介して電気的に接続され、下面側で絶縁基体1上の導体層5や絶縁基体内部のビア導体等を介して容器体下面に入出力端子(入力端子、出力端子)に電気的に接続される。
【0020】
一方、前記導体層5は、その上面側で後述する蓋体3に封止材10を介して電気的に接続され、下面側で絶縁基体内部のビア導体等を介して絶縁基体下面のグランド端子に電気的に接続される。
【0021】
水晶振動素子2は、所定の結晶軸でカットした水晶片の両主面に一対の励振電極を被着・形成してなり、外部からの変動電圧が一対の励振電極を介して水晶片に印加されると、所定の周波数で厚みすべり振動を起こす。
このような水晶振動素子2は、その両主面に被着されている励振電極と絶縁基体上面の対応する搭載パッド8とを導電性接着剤9を介して電気的・機械的に接続することによって絶縁基体1に搭載される。
【0022】
このような絶縁基体1に該水晶振動素子2を搭載する際に、前記水晶振動素子2が前記絶縁基体1との間で傾斜角を設けて搭載されていることによって、従来配置する水晶振動素子2よりも寸法サイズの大きい水晶振動素子2を使用することができるので、クリスタルインピーダンス(CI)値が向上し、その影響により可変感度等の水晶振動素子2の発振特性を向上させることが可能となる。
また、前記水晶振動素子2を搭載する際には、絶縁基体1の上面にバンプを形成し、前記水晶振動素子を該バンプに接した状態で、導電性樹脂を硬化させることによって傾斜角を設ける。
【0023】
また、前記水晶振動素子2と該絶縁基体1とで形成されている傾斜角αが
45±10度であり、搭載面積を変更することなく水晶振動素子2の長辺側寸法を1.1〜1.4倍にすることができるので、水晶振動素子2の発振特性を向上させることが可能となる。
【0024】
前記導電性接着剤9は、シリコン樹脂やポリイミド樹脂等から成る樹脂材料中にAg等から成る導電性粒子を所定量、添加・混合してなるものである。
【0025】
そして更に、前記絶縁基体1の周縁には、蓋体3が取着されている。蓋体3としては、42アロイやコバール,リン青銅等を用いれば良く、その下端部をAu−Sn等の封止部材10を介して導体層5にロウ付けし、蓋体3の外周部に沿って絶縁基体1の上面に環状に接合することによって絶縁基体1の上面に取着されている。
【0026】
また、図3に示すように、前記蓋体3を被覆するように樹脂層11が形成されている。
樹脂層11は、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂に硬化剤、硬化促進剤、その他必要に応じて無機質充填剤などを添加・混合したものを、従来周知のスクリーン印刷法等により覆うように塗布し、しかる後、加熱硬化することにより形成される。
このように蓋体3を被覆するように樹脂層11を形成することによって、落下等による衝撃を緩和するのことが可能となる。また蓋体3と絶縁基体1の接合部分の応力も緩和するので、気密性を更に向上させることが可能となる。
【0027】
また、前記絶縁基体1には凹部4が形成されると共に、前記絶縁基体1の凹部4を形成している側壁7に傾斜が施され、蓋体3が前記水晶振動素子2と常に平行に側壁上面に配置された場合には、蓋体3の上面に樹脂層11を形成することで平坦度を保つことが可能となる。
【0028】
尚、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【0029】
上述した実施形態においては、水晶振動子で説明を行ったが、集積回路素子を搭載した水晶発振器であっても構わない。
【0030】
また上述した実施形態においては、圧電振動素子として水晶振動素子を用いた水晶振動子を例にとって説明したが、これに代えて、圧電振動素子として弾性表面波(SAW)フィルタ等の他の圧電振動素子を用いる場合にも本発明は適用可能である。
【0031】
なお、本発明の一実施形態に係る圧電デバイス(水晶振動子)を得るための製造フローの一例を図5に示す。図5(a)〜(d)の順番で圧電デバイスを組み立てることができる。まず、図5(a)に示すように、素子2を吸着法などにより保持した状態で、図5(b)に示すように固着部分に導電性接着剤9を塗布し、図5(c)に示すように容器部の実装部と合致させた状態で導電性接着剤が硬化するまで放置した後、図5(d)に示すように容器全体を180度反転し天地を裏返し、蓋体3を被せることで水晶振動子を得ることができる。しかしながら、ここで示す水晶振動子を得る方法に拘るものでは無い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係る圧電デバイス(水晶振動子)の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る圧電デバイス(水晶振動子)の分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る圧電デバイス(水晶振動子)の断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る圧電デバイス(水晶振動子)の断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る圧電デバイス(水晶振動子)を得るための一例を示すフロー図である。
【図6】従来の圧電デバイス(水晶振動子)の断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1・・・絶縁基体
2・・・圧電振動素子(水晶振動素子)
3・・・蓋体
4・・・凹部
5・・・導体層
6・・・外部端子
7・・・側壁
8・・・搭載パッド
9・・・導電性接着剤
10・・・封止材
11・・・樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基体に圧電振動素子が搭載され、該絶縁基体に搭載されている該圧電振動素子を覆う蓋体が配置されており、該蓋体と該絶縁基体に設けた導体パターンとを固着している圧電デバイスにおいて、
前記圧電振動素子が前記絶縁基体との間で傾斜角45±10度を設けて搭載されていることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項2】
前記絶縁基体が容器形状であり、側壁に傾斜が施されており、前記蓋体が前記圧電振動素子と平行になるように側壁上面に載置接続されてなることを特徴とする請求項1記載の圧電デバイス。
【請求項3】
前記蓋体を被覆するように樹脂層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の圧電デバイス。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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